(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-512951(P2015-512951A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/16 20060101AFI20150403BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20150403BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20150403BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20150403BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20150403BHJP
【FI】
C07D471/16CSP
A61P3/04
A61P25/22
A61P25/20
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/06
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P21/02
A61P25/00
A61K31/4985
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-505972(P2015-505972)
(86)(22)【出願日】2013年4月14日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】US2013036514
(87)【国際公開番号】WO2013155505
(87)【国際公開日】20131017
(31)【優先権主張番号】61/624,293
(32)【優先日】2012年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/624,292
(32)【優先日】2012年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/624,291
(32)【優先日】2012年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/671,723
(32)【優先日】2012年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/671,713
(32)【優先日】2012年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シャロン・メイツ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エイ・ラーナー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065AA19
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA70
(57)【要約】
本発明は、本明細書に記載の特定の置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリン、それらのプロドラッグ、遊離形態、固体、薬学的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態、その医薬組成物、ならびに5−HT
2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD
2受容体シグナル伝達経路を伴う経路が関係する疾患の処置におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の、式I:
【化1】
[式中、Xは、N(H)、N(C
1−4アルキル)またはOであり、
R
1は、HまたはC
1−6アルキル(例えば、メチル)であり、
R
2は、HまたはOR
3であって、ここでは、R
3は、HまたはC
1−6アルキル(例えば、メチル)である。
ただし、R
1およびR
2は両方が同時にHではなく、R
1およびR
3は両方が同時にHではない。]
で示される、化合物。
【請求項2】
R2がOR3である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1がC1−6アルキルである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R1がメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R2がOR3であり、R3がC1−6アルキルである、請求項1ないし4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
R2がOR3であり、R3がメチルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
XがN(C1−4アルキル)である、請求項1ないし6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
XがOである、請求項1ないし6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
XがN(H)である、請求項1ないし6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
XがN(CH3)である、請求項7記載の化合物。
【請求項11】
【請求項12】
【請求項13】
該化合物が塩形態である、請求項1ないし12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
該塩が、トルエンスルホン酸、フマル酸およびリン酸付加塩からなる群から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか一項記載の化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせて、または混合して含む、医薬組成物。
【請求項16】
中枢神経系障害の処置または予防方法であって、請求項1ないし14のいずれか一項記載の化合物または請求項15記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項17】
該障害が、肥満、不安、鬱病(例えば、難治性鬱病および大鬱病性障害(MDD))、精神病、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患と関連する睡眠障害)、性的障害、偏頭痛、頭部痛と関係する病状、社交不安障害、動揺、認知症における動揺(例えば、アルツハイマー病における動揺)、自閉症における動揺および関連する自閉性障害、胃腸管の運動機能障害のような消化器系障害、外傷後ストレス障害、衝動調節障害、間欠性爆発性障害からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該障害が、認知症と関連する1種以上の障害、例えば、軽度認知障害および老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺(parasupranuclear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、老人性鬱病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病を含む認知症疾患と関連する障害である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
該障害が、セロトニン5−HT2A、ドーパミンD2および/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路が関係する障害である、請求項16または17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/624,293号、同第61/624,292号および同第61/624,291号、ならびに2012年7月14日に出願された米国仮特許出願第61/671,723号および同第61/671,713号に基づく優先権の利益を主張する。これらの出願の開示は、引用によりその全体を本明細書に包含される。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、本明細書に記載の、遊離形態、薬学的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の特定の置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリン、その医薬組成物、ならびに5−HT
2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD
2受容体シグナル伝達系を含む経路が関係する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性的障害、偏頭痛、頭部痛と関係する病状、社交不安障害、胃腸管の運動機能障害のような消化器系障害、および肥満、鬱病、および精神病またはパーキンソン病と関連する気分障害、鬱病と関連する統合失調症のような精神病、双極性障害、ならびに他の精神神経疾患などの疾患または病状の処置におけるその使用、ならびに他の薬剤との併用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンは、中枢神経系障害の処置において、5−HT2受容体、特に5−HT
2Aおよび5−HT
2C受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;同第7,238,690号;同第6,552,017号;同第6,713,471号;同第7,183,282号;米国再発行特許第39680号、および米国再発行特許第39679号に、肥満、不安症、鬱病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性的障害、偏頭痛、頭部痛と関係する病状、社交不安障害、胃腸管の運動機能障害のような消化器系障害、および肥満のような5−HT
2A受容体調節と関連する障害の処置に有用な新規化合物として開示されている。
【0004】
PCT/US08/03340(WO2008/112280)および米国特許出願番号第10/786,935号は、置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンの製造方法ならびに嗜癖行動および睡眠障害のような中枢神経系障害の調節および予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストなどのこれらのガンマ−カルボリン類の使用を開示している。
【0005】
WO/2009/145900は、精神病と抑鬱障害の組合せ、ならびに精神病またはパーキンソン病患者における睡眠障害、抑鬱障害および/または気分障害の処置のための特定の置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンの使用を開示している。精神病および/または鬱病と関連する障害に加えて、該特許出願は、これらの化合物の低用量での使用が、5−HT
2A受容体に選択的に拮抗し、ドーパミンD
2受容体に影響を与えることがないか、または極僅かに影響を与えるのみあるため、薬物依存、筋緊張低下、筋力低下、頭痛、視力障害、めまい、悪心、嘔吐、胃部不快感、下痢、関節痛、および胸痛の発生を含むが、これらに限定されない、ドーパミンD
2経路の副作用または常套の催眠鎮静薬(例えば、ベンゾジアゼピン)と関係する他の経路(例えば、GABA
A受容体)の副作用のない睡眠障害の処置に有用であることを開示し、特許請求している。
【0006】
WO2009/114181は、特定の置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶、例えば、4−((6bR,10aS)−3−メチル−2,3,6b,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン−8(7H)−イル)−1−(4−フルオロフェニル)−1−ブタノンのトルエンスルホン酸付加塩の製造方法を開示する。
【0007】
WO2011/133224は、改良された製剤、例えば、持続/制御放出製剤用の置換ヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンのプロドラッグ/代謝物を開示する。該特許出願は、4−フルオロフェニル(4−ヒドロキシ)ブタニル部分でN−置換されたヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンが、4−フルオロフェニルブタノンを含むヘテロ環縮合ガンマ−カルボリンと比較してセロトニントランスポーター(SERT)に高い選択性を示すことを開示している。しかしながら、これらの化合物におけるヒドロキシ基は、血漿中および脳内でケトンと相互変換可能であって、4−フルオロフェニルブタノン薬を蓄積する蓄積庫として機能することを可能にしている。
【0008】
本発明は、ヒドロキシおよびケトン間のインビボ相互変換を阻止する初めての化合物として、5−HT2A受容体に拮抗し、またセロトニン再取り込みトランスポーターを阻害する化合物を提供する。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
第一の面において、本発明は、遊離形態または塩形態の、式I:
【化1】
[式中、Xは、N(H)、N(C
1−4アルキル)またはOであり、
R
1は、HまたはC
1−6アルキル(例えば、メチル)であり、
R
2は、HまたはOR
3であって、ここで、R
3は、HまたはC
1−6アルキル(例えば、メチル)である。
ただし、R
1およびR
2は両方が同時にHではなく、R
1およびR
3は両方が同時にHではない。]
で示される、化合物を提供する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、以下に記載される遊離形態または塩形態の式Iの化合物を提供する。
1.1 式Iの化合物(式中、R
2はOR
3である。);
1.2 式Iの化合物または1.1(式中、R
1は、C
1−6アルキル(例えば、メチル)である。);
1.3 式Iの化合物、1.1または1.2(式中、R
1はメチルである。);
1.4 式Iの化合物または1.1−1.3のいずれか(式中、R
2は、OR
3であり、R
3は、C
1−6アルキル(例えば、メチル)である。);
1.5 式Iの化合物または1.1−1.4のいずれか(式中、R
2は、OR
3であり、R
3はメチルである。);
1.6 式Iの化合物または1.1−1.5のいずれか(式中、Xは、N(H)、N(C
1−4アルキル)またはOである。);
1.7 式Iの化合物または1.1−1.6のいずれか(式中、XはOである。);
1.8 式Iの化合物または1.1−1.6のいずれか(式中、XはN(H)である。);
1.9 式Iの化合物または1.1−1.6のいずれか(式中、Xは、N(C
1−4アルキルである。);
1.10 式Iの化合物または1.1−1.6のいずれか(式中、Xは、N(CH
3)である。);
【0011】
1.11 式Iの化合物または1.1−1.10のいずれか。ここで、化合物は、
【化2】
である。
【0012】
1.12 式Iの化合物または1.1−1.11のいずれか。ここで、化合物は、
【化3】
である。
【0013】
1.13 式Iの化合物または1.11−1.12のいずれか。ここで、化合物は、実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない);
1.14 式Iの化合物または1.1−1.13のいずれか。ここで、化合物は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上のジアステレオマー過剰率を有する。
【0014】
第一の面のさらなる態様において、本発明は、以下に記載される遊離形態または塩形態の式Iの化合物を提供する。
4.1 式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか(ここでは、塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、パモ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタン二スルホン酸塩、シュウ酸塩、イセチオン酸塩などからなる群より選択される。);
4.2 式Iの化合物または4.1(ここでは、塩は、フマル酸付加塩である。);
4.3 式Iの化合物または4.1(ここでは、塩は、リン酸付加塩である。);
4.4 式Iの化合物または4.1(ここでは、塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。);
【0015】
第二の面において、本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式Iの化合物、または1.1−1.14もしくは4.1−4.4のいずれか(本発明の化合物)を、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0016】
第二の面のさらなる態様において、本発明の医薬組成物は、持続放出または遅延放出型、例えば、デポー製剤である。一態様において、デポー製剤は、ポリマーマトリックス中の本発明の化合物を含む。別の態様において、本発明の化合物は、ポリマーマトリックス中に分散または溶解されている。さらなる態様において、ポリマーマトリックスは、ヒドロキシ脂肪酸およびその誘導体のポリエステルより選択されるポリマー、またはアルキルアルファ−シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリオルソカーボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステル、およびそれらの混合物のポリマーなどのデポー製剤に使用される標準的ポリマーを包含する。さらなる態様において、ポリマーは、ポリラクチド、ポリd,l−ラクチド、ポリグリコリド、PLGA 50:50、PLGA 85:15およびPLGA 90:10ポリマーからなる群より選択される。別の態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、それらのコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート(copolyoxalate)、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノネ、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル類、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリ無水物、ならびにアルブミン、カゼインおよびグリセロールモノ−およびジステアレートのようなワックスなどを含む天然ポリマー類から選択される。特定の態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)を含む。上記の医薬組成物はいずれも、該組成物が薬学的に許容される希釈剤または担体と混合されている医薬組成物であり得る。
【0017】
上記の(医薬)デポー製剤は、持続放出または遅延放出にとりわけ有用であり、ここでは、本発明の化合物は、ポリマーマトリックスの分解により放出される。これらの医薬組成物(例えば、デポー組成物)は、本発明の化合物を180日以内、例えば、約14日から約30日ないし約180日間、制御放出および/または持続放出するために製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは分解されて、本発明の化合物を約30日、約60日または約90日間に亘り放出し得る。別の例において、ポリマーマトリックスは分解されて、本発明の化合物を約120日または約180日間に亘り放出し得る。
【0018】
さらに別のさらなる態様において、本発明の医薬組成物、特に本発明のデポー組成物は、注射による投与用に製剤される。
【0019】
第三の面において、本発明は、WO2000/35419およびEP1539115(米国特許出願公開番号2009/0202631)(各特許出願の開示は、引用によりその全体を本明細書中に包含させる)に記載される浸透圧を用いる放出制御システム(osmotic controlled release oral delivery system (OROS))を用いる上記の本発明の化合物を提供する。故に、第三の面の一態様において、本発明は、(a)上記の遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセル、(b)カプセルの外側に向かって順に、(i)バリア層、(ii)拡張層、および(iii)半透層を含むゼラチンカプセル上に重ね合わせられた多層壁、ならびに(c)該壁を通して形成されるか、または形成され得る開口部(オリフィス)、を含む医薬組成物またはデバイス(組成物P.1)を提供する。
【0020】
第三の面の別の態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接触するバリア層、バリア層と接触する拡張層、拡張層を取り囲む半透層、および複合壁(多層壁)に形成されるか、または形成され得る出口開口部、を含む複合壁に囲まれている(組成物P.2)。
【0021】
第三の面のさらに別の態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接するバリア層、バリア層と接する拡張層、拡張層を取り囲む半透層、および複合壁に形成されるか、または形成され得る出口開口部、を含む複合壁に囲まれており、バリア層は出口開口部で拡張層と外部環境の間のシール部(seal)を形成する(組成物P.3)。
【0022】
第三の面のさらに別の態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接するバリア層、バリア層の一部と接する拡張層、拡張層を少なくとも取り囲む半透層、およびゼラチンカプセルの外表面から使用環境へ拡散する投与量形態中に形成されるか、または形成され得る出口開口部に囲まれている(組成物P.4)。拡張層は、1個またはそれ以上の不連続な区画、例えば、ゼラチンカプセルの対向する両側面または両端部に位置する2個の区画に形成されてもよい。
【0023】
第三の面の特定の態様において、浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)を用いる本発明の化合物(すなわち、組成物P.1−P.4)は、液体製剤であり、該製剤は、原液の液体活性剤、溶液中の液体活性剤、懸濁液、エマルジョン溶液または自己乳化型組成物などであってよい。
【0024】
ゼラチンカプセル、バリア層、拡張層、半透層および開口部の特性を包含する浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)を用いる組成物のさらなる情報は、WO2000/35419に見出すことができ、その開示は、引用により本明細書中に包含させる。本発明の化合物または医薬組成物のための他の浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)は、EP1539115(米国特許出願公開番号2009/0202631)に見出すことができ、その開示は、引用により本明細書中に包含させる。
【0025】
故に、第三の面の別の態様において、本発明は、(a)第一層および第二層を含む2以上の層であって、該第一層は、遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の医薬組成物を含み、該第二層は、ポリマーを含む、2以上の層;(b)該2以上の層を取り囲む外部壁;および、(c)該壁中の開口部、を含む組成物またはデバイス(組成物P.5)を提供する。
【0026】
組成物P.5は、好ましくは、3層コアを取り囲む半透膜を使用する。これらの態様において、第一層は第一薬剤層と述べられ、少量の薬剤(例えば、本発明の化合物)および塩のような浸透物質を含み、中間層は第二薬剤層と述べられ、より多量の薬剤、添加剤を含むが、塩は含まず、そして第三層はプッシュ層(push layer)と述べられ、浸透物質を含むが、薬剤は含まない。少なくとも1個の開口部は、カプセル型錠剤の第一薬剤層上の膜にドリルで穴を開けられている(組成物P.6)。
【0027】
組成物P.5またはP.6は、構成成分を定める膜を含んでいてよく、該膜は、内部の保護サブコート(subcoat)を取り囲み、そこに形成されたか、または形成可能な少なくとも1個の出口開口部を有し、該膜の少なくとも一部は半透性であり;出口開口部から離れた区画内、および該膜の半透性部分との流体連結(fruid communication)部分に存在する拡張層を有し;出口開口部に隣接して第一薬剤層があり;第一薬剤層と拡張層の間の区画内に第二薬剤層があり;該薬剤層は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を含む。第一薬剤層および第二薬剤層の相対粘度によっては、異なる放出特性が得られる。各層の最適な粘性を同定することが不可欠である。本発明において、粘性は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロフィールは、重量、製剤および該薬剤層の各々の厚さよって変わる(組成物P.7)。
【0028】
特定の態様において、本発明は、塩を含む第一薬剤層および塩を含まない第二薬剤層からなる組成物P.7を提供する。組成物P.5−P.7は、要すれば、膜と薬剤層の間に流動促進層を含んでいてよい。組成物P.1−P.7は、一般的に、浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物と述べられる。
【0029】
第四の面において、本発明は、中枢神経系障害の処置または予防方法(方法I)であって、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか、4.1−4.4のいずれか、または上記の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0030】
第四の面のさらなる態様において、本発明は、以下にさらに例示される方法Iを提供する。
7.1 方法I(ここでは、中枢神経系障害は、認知症と関連する1種以上の障害、例えば、軽度認知障害および老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺(parasupranculear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、老人性鬱病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病を含む認知症疾患と関連する障害である。);
7.2 方法Iまたは7.1(ここでは、認知症と関連する障害は、(1)精神的動揺/刺激、攻撃的行動、怒り、身体的または感情的爆発のような行動障害または気分障害、(2)精神病、(3)鬱病、および(4)睡眠障害、からなる群より選択される。);
7.3 方法Iまたは7.1(ここでは、中枢神経系障害は、精神的動揺/刺激、攻撃的行動、怒り、身体的または感情的爆発である。);
7.4 方法I(ここでは、中枢神経系障害は、肥満、不安、鬱病(例えば、難治性鬱病および大鬱病性障害(MDD))、精神病、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神疾患および神経疾患と関連する睡眠障害)、性的障害、偏頭痛、頭部痛と関係する病状、社交不安障害、認知症における動揺(例えば、アルツハイマー病における精神的動揺)、自閉症における精神的動揺および関連する自閉性障害、および胃腸管の運動機能障害のような消化器系障害からなる群より選択される障害である。)
【0031】
7.5 方法Iまたは7.1−7.4のいずれか(ここでは、中枢神経系障害は、WO/2009/145900(その開示は、引用によりその全体を本明細書中に包含させる)に同様に記載されるセロトニン 5−HT
2A、ドーパミンD2受容体システムおよび/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路が関係する障害である。);
7.6 方法Iまたは7.1−7.5のいずれか(ここでは、中枢神経系障害は、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路が関係する障害である。);
7.7 方法Iまたは7.1−7.6のいずれか(ここでは、中枢神経系障害は、(1)鬱病患者における精神病、例えば、統合失調症;(2)精神病、例えば、統合失調症患者における鬱病;(3)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する気分障害;および(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;(5)鬱病;(6)不安症;(7)外傷後ストレス障害;または(8)衝動調節障害、例えば、間欠性爆発性障害、から選択される障害である。);
【0032】
7.8 方法Iまたは7.1−7.7のいずれか(ここでは、中枢神経系障害は、精神病、例えば、統合失調症であり、該患者は鬱病患者である。);
7.9 方法Iまたは7.1−7.8のいずれか(ここでは、患者が、従来の抗精神病薬、例えば、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、クロザピン、アリピパラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えられない。);
【0033】
7.10 方法Iまたは7.1−7.9のいずれか(ここでは、患者が、従来の抗精神病薬、例えば、ハロペリドール、アリピパラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジパシドン(zipasidone)の副作用に耐えられない。);
7.11 方法Iまたは7.1−7.11のいずれか(ここでは、該障害は鬱病であり、患者は精神病、例えば、統合失調症またはパーキンソン病に罹患している。);
7.12 方法Iまたは7.1−7.6のいずれか(ここでは、該障害は睡眠障害であり、患者は鬱病に罹患している。);
7.13 方法Iまたは7.1−7.6のいずれか(ここでは、1種以上の障害は、睡眠障害であり、患者は、精神病、例えば、統合失調症に罹患している。);
7.14 方法Iまたは7.1−7.6のいずれか(ここでは、1種以上の障害は、睡眠障害であり、患者はパーキンソン病に罹患している。);
【0034】
7.15 方法Iまたは7.1−7.6のいずれか(ここでは、1種以上の障害は、睡眠障害であり、患者は、鬱病および精神病、例えば、統合失調症、またはパーキンソン病に罹患している。);
7.16 上記の方法のいずれか(ここでは、有効量が、1mg−1000mg、好ましくは2.5mg−50mg、さらに好ましくは1−40mg、例えば、1−10mg、例えば、10mg、20mg、より好ましくは20mg、例えば、30mg、40mgである。);
7.17 上記の方法のいずれか(ここでは、有効量は、1mg−100mg/日、好ましくは2.5mg−50mg/日、さらに好ましくは1−40mg/日、例えば、1−10mg/日、例えば、10mg/日、20mg/日、より好ましくは20mg/日、例えば、30mg/日、40mg/日である。);
7.18 上記の方法のいずれか(ここでは、処置すべき病状は、例えばドーパミン作動薬、例えばレボドパおよびレボドパ補助薬(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO−B阻害剤)、ドーパミンアゴニスト、および抗コリン作動薬、例えばレボドパなどから選択される薬剤の投与を受けている患者におけるジスキネジアである。);
7.19 上記の方法のいずれか(ここでは、患者はパーキンソン病を発症している。)
【0035】
7.20 上記の方法のいずれか(ここでは、患者は、例えば、シタロプラム(Celexa、Cipramil、Cipram、Dalsan、Recital、Emocal、Sepram、Seropram、Citox、Cital);ダポキセチン(Priligy);エスシタロプラム(Lexapro、Cipralex、Seroplex、Esertia);フルオキセチン(Depex、Prozac、Fontex、Seromex、Seronil、Sarafem、Ladose、Motivest、Flutop、Fluctin(EUR)、Fluox(NZ)、Depress(UZB)、Lovan(AUS);フルボキサミン(Luvox、Fevarin、Faverin、Dumyrox、Favoxil、Movox);インダルピン(Upstene);パロキセチン(Paxil、Seroxat、Sereupin、Aropax、Deroxat、Divarius、Rexetin、Xetanor、Paroxat、Loxamine、Deparoc);セルトラリン(Zoloft、Lustral、Serlain、Asentra);ビラゾドン(Viibyrd);または、ジメリジン(Zelmid、Normud)(括弧内は商品名)の1種以上より選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤に対して応答しない。);
【0036】
7.21 上記の方法のいずれか(ここでは、患者はまた、シタロプラム(Celexa、Cipramil、Cipram、Dalsan、Recital、Emocal、Sepram、Seropram、Citox、Cital);ダポキサティン(Priligy);エスシタロプラム(Lexapro、Cipralex、Seroplex、Esertia);フルオキセチン(Depex、Prozac、Fontex、Seromex、Seronil、Sarafem、Ladose、Motivest、Flutop、Fluctin(EUR)、Fluox(NZ)、Depress(UZB)、Lovan(AUS)、Prodep(IND));フルボキサミン(Luvox、Fevarin、Faverin、Dumyrox、Favoxil、Movox);インダルピン(Upstene);パロキセチン(Paxil、Seroxat、Sereupin、Aropax、Deroxat、Divarius、Rexetin、Xetanor、Paroxat、Loxamine、Deparoc);セルトラリン(Zoloft、Lustral、Serlain、Asentra);ビラドゾン(Viibryd);または、ジメリジン(Zelmid、Normud)(括弧内は商品名)の1種以上より選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤の投与を受けている。);
【0037】
7.22 上記の方法のいずれか(ここでは、患者は、自閉症スペクトラム障害、例えば、自閉症またはアスペルガー症候群を発症している。);
7.23 上記の方法のいずれか(ここでは、患者は、認知症、例えば、軽度認知障害、および老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺(parasupranculear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、老人性鬱病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病を含む認知症疾患と関連する障害を発症している。);
【0038】
7.24 上記の方法のいずれか(ここでは、患者はまた、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはN−メチル D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストの投与を受けている。);
7.25 方法7.24(ここでは、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)、およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと呼ばれていた))からなる群より選択される。);
7.26 方法7.24(ここでは、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである。);
7.27 方法7.24(ここでは、NMDA受容体アンタゴニストは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチン(memantine)である。)。
【0039】
第四の面の特定の態様において、本発明は、上記の中枢神経系障害の処置または予防方法であって、以下を、それを必要とする患者に投与することを含む方法(方法I
P)を提供する。
7.4P 4.1−4.4のいずれかに記載の遊離形態または(薬学的に許容される)塩形態の式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか;
7.8P 上記の医薬組成物またはデポー組成物;または
7.11P 上記の浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物。
【0040】
第四の面のさらなる態様において、本発明は、7.1−7.27のいずれかにさらに記載される方法I
Pを提供する。
【0041】
第四の面の特定の態様において、本発明は、方法Iまたは7.1−7.27のいずれか(ここでは、障害は、統合失調症または睡眠障害である。)を提供する。
【0042】
第四の面の特定の態様において、本発明は、方法Iまたは7.1−7.27のいずれか(ここでは、障害は、鬱病または不安症である。)を提供する。
【0043】
第四の面の特定の態様において、本発明は、方法Iまたは7.1−7.27のいずれか(ここでは、障害は、外傷後ストレス障害または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害である。)を提供する。
【0044】
第四の面の特定の態様において、本発明は、方法Iまたは7.1−7.27のいずれか(ここでは、障害は、認知症、例えば、老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺(parasupranculear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、老人性鬱病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病を発症している患者における外傷後ストレス障害または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害である。)を提供する。
【0045】
第四の面のさらに別の態様において、本発明は、方法Iまたは7.1−7.27のいずれかを提供する(ここで、本発明のデポー組成物は、投与されて、本発明の化合物を約14日から約30ないし約180日の期間、好ましくは約30日、約60日または約90日の期間、制御放出および/または持続放出する。)。制御放出および/または持続放出は、療法、特に服薬計画に対する不履行または不順守が頻繁に起こる抗精神病薬療法の早期中止を避けるのに特に有用である。
【0046】
第五の面において、本発明は、以下に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、1種以上の睡眠障害、精神的動揺、攻撃的行動、外傷後ストレス障害および/または衝動調節障害、例えば、間欠性爆発性障害の予防または処置方法(方法II)を提供する。
8.1 4.1−4.4のいずれかに記載の遊離形態または(薬学的に許容される)塩形態の式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか;
8.2 上記の医薬組成物またはデポー組成物;
8.3 上記の浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物。
【0047】
第五の面の一態様において、本発明は、方法IIまたは8.1−8.3のいずれか(ここで、該障害は睡眠障害である。)を提供する。第五の面の別の態様において、本発明は、方法II(ここで、該障害は、精神的動揺、攻撃的行動、外傷後ストレス障害および/または衝動調節障害、例えば、間欠性爆発性障害である。)を提供する。
【0048】
第五の面のさらなる態様において、本発明は、方法IIまたは8.1−8.3のいずれか(ここで、該睡眠障害としては、睡眠持続障害不眠症、中途覚醒および熟眠障害が挙げられる。)を提供する。
8.11 上記の方法のいずれか(ここで、睡眠障害は睡眠持続障害不眠症である。);
8.12 上記の方法のいずれか(ここで、有効量は、1mg−10mg/日、例えば、lmg−5mg/日、好ましくは2.5−5mg/日、さらに好ましくは10mg/日である。);
8.13 上記の方法のいずれか(ここで、有効量は、2.5mg/日、5mg/日、または10mg/日である。);
8.14 上記の方法のいずれか(ここで、睡眠障害は、ジスキネジア発現患者またはその危険のある患者、例えば、ドーパミン作動薬、例えば、レボドパおよびレボドパ補助薬(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO−B阻害剤)、ドーパミンアゴニスト、および抗コリン作動薬、例えばレボドパから選択される薬剤を投与されている患者における障害である。)
8.15 上記の方法のいずれか(ここで、患者は、パーキンソン病患者である。)。
【0049】
本発明の化合物は、5−HT
2A、SERTおよび/またはD
2受容体関連障害の効果的な処置を、WO2009/145900(その開示は、引用により本明細書中に包含される)に記載され、特許請求されているのと同様に、錐体外路系の副作用がないか、または副作用がほとんどない状態で提供する。故に、本発明の化合物、医薬組成物またはデポー組成物は、従来の単剤療法において頻繁に生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく、組合せ薬剤の治療効果を高めるために、第2の治療薬と組み合わせて、特に、個々の薬剤が単剤療法で用いられるときよりも低用量にて用いられ得る。故に、本発明の化合物は、他の抗鬱薬、抗精神病薬、他の催眠薬、および/またはパーキンソン病もしくは気分障害または認知症を処置するために使用される薬剤と同時に、逐次に、または同時期に投与され得る。別の例において、本発明の化合物を遊離形態または塩形態の1種以上の第2の治療薬と組み合わせて投与することにより、副作用を軽減または最小化することができ、ここで、(i)第2の治療薬の投与量、または(ii)本発明の化合物および第2の治療薬の両方の投与量は、該薬剤/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。特定の態様において、本発明の化合物は、例えばレボドパおよびレボドパ補助薬(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO−B阻害剤)、ドーパミンアゴニストから選択されるドーパミン作動薬、ならびに例えばパーキンソン病の処置に用いられるような抗コリン作動薬を投与される患者におけるジスキネジアを処置するのに有用である。
【0050】
故に、第六の面において、本発明は、方法I、例えば、7.1−7.27のいずれか、または方法IIもしくは8.1−8.15のいずれかであって、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABAシグナル伝達を促進する)化合物、GABA−Bアゴニスト、5−HTモジュレーター(例えば、5−HT
1Aアゴニスト、5−HT
2Aアンタゴニスト、5−HT
2Aインバースアゴニストなど)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えば、遮断薬)、セロトニン−2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン−1受容体拮抗薬、抗鬱薬、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態から選択される1種以上の治療薬をさらに含む方法(それぞれ、方法I−AおよびII−A)を提供する。
【0051】
第六の面の別の態様において、方法I−AおよびII−A、方法I、例えば、7.1−7.27のいずれか、または方法IIもしくは8.1−8.15のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはN−メチル D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストから選択される1種以上の治療薬をさらに含む。特定の態様において、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)、およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと呼ばれていた))からなる群より選択される。さらなる態様において、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである。別の態様において、NMDA受容体アンタゴニストは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチン(memantine)である。
【0052】
第六の面のさらなる態様において、本発明は、1種以上の治療薬をさらに含む、以下に示す方法I−AまたはII−Aを提供する。
9.1 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABAシグナル伝達を促進する)化合物である。);
9.2 方法I−AまたはII−Aまたは9.1(ここでは、GABA化合物は、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム(temazapam)、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガバクサドール(gabaxadol)、ビガバトリン、チアギャビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1種以上からなる群より選択される。);
9.3 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、付加的5HT
2Aアンタゴニストである。);
9.4 方法I−AまたはII−Aまたは9.3(ここでは、該付加的5HT
2Aアンタゴニストは、1種以上のケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi−Aventis, France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi−Aventis, France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmacenticals, San Diego, CA)、およびAVE8488(Sanofi−Aventis, France)から選択される。);方法I−AまたはII−A、9.3または9.4(さらに、ピマバンセリン(ACP−103)およびピゾチフェンから選択される。);
【0053】
9.5 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、メラトニンアゴニストである。);
9.6 方法I−AまたはII−Aまたは9.5(ここでは、メラトニンアゴニストは、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、武田薬品、日本)、VEC−162(Vanda Pharmaceuticals, Rockville, MD)、PD−6735(第2相開発中)、およびアゴメラチンの1種以上からなる群より選択される。);
9.7 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、イオンチャネル遮断薬である。);
9.8 方法I−AまたはII−Aまたは9.7(ここでは、該イオンチャネル遮断薬は、ラモトリジン、ギャバペンチンおよびプレガバリンの1種以上である。)。
9.9 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、オレキシン受容体アンタゴニストである。);
9.10 方法I−AまたはII−Aまたは9.9(ここでは、オレキシン受容体アンタゴニストは、オレキシン、1,3−ビアリールウレア、SB−334867−a(GlaxoSmithKline, UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、およびベンズアミド誘導体からなる群より選択される。);
【0054】
9.11 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、セロトニン−2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)である。);
9.12 方法I−AまたはII−Aまたは9.11(ここでは、セロトニン−2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)は、1種以上のOrg 50081(Organon−Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾンおよびトラゾドンからなる群より選択される。);
9.13 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、5HT1aアゴニストである。);
9.14 方法I−AまたはII−Aまたは9.13(ここでは、5HTIaアゴニストは、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、およびMN−305(MediciNova, San Diego, CA)の1種以上からなる群より選択される。);
9.15 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、ニューロキニン−1受容体拮抗薬である。);
【0055】
9.16 方法I−AまたはII−Aまたは9.15(ここでは、ニューロキニン−1受容体拮抗薬は、カソピタント(GlaxoSmithKline)である。);
9.17 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、抗精神病薬である。);
9.18 方法I−AまたはII−Aまたは9.17(ここでは、抗精神病薬は、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、クロザピン、アリピパラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される。);
9.19 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、抗鬱薬である。);
9.21 方法I−AまたはII−Aまたは9.19(ここでは、抗鬱薬は、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム(escitaloprame)、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン(phenlzine sulfate)、プロチプチリン(protiptyline)、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラファキシン(velafaxine)から選択される。);
【0056】
9.21 方法I−AまたはII−A、9.17または9.18(ここでは、抗精神病薬は、非定型抗精神病薬である。);
9.22 方法I−AまたはII−A、または9.17−9.21のいずれか(ここでは、非定型抗精神病薬は、クロザピン、アリピパラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、およびパリペリドンからなる群より選択される。);
9.23 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、方法9.1−9.22のいずれかから選択され、例えば、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガボクサドール(gabaxadol)、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi−Aventis, France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi−Aventis, France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals, San Diego, CA)、AVE8488(Sanofi−Aventis, France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN−305(MediciNova, San Diego, CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標),武田薬品,日本)、VEC−162(Vanda Pharmaceuticals, Rockville, MD)、PD−6735(第2相開発中)、アゴメラチン、ラモトリジン、ギャバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3−ビアリールウレア、SB−334867−a(GlaxoSmithKline,UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org 50081(Organon−Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロチプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、クロザピン、アリピパラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される。);ここに列記される治療薬に加えて、方法I−AまたはII−Aは、ピマバンセリン(ACP−103)およびピゾチフェンからさらに選択される;
【0057】
9.24 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、H3アゴニストである。);
9.25 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、H3アンタゴニストである。);
9.26 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニストである。);
9.27 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、ガラニンアゴニストである。);
9.28 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、CRHアンタゴニストである。);
9.29 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、ヒト成長ホルモンである。);
9.30 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、成長ホルモンアゴニストである。);
【0058】
9.31 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、エストロゲンである。);
9.32 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、エストロゲンアゴニストである。);
9.33 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、ニューロキニン−1受容体拮抗薬である。);
9.34 方法I−AまたはII−A(ここでは、治療薬は、式(I)の化合物と組み合わせられ、かつ、治療薬は、抗パーキンソン薬、例えばL−ドーパ、コ−カレルドパ、デュオドパ、スタロバ(stalova)、シンメトレル、ベンゾトロピン(Benzotropine)、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである。);
【0059】
9.35 方法I−AまたはII−A(ここでは、式(I)の化合物は、列挙された疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者における、睡眠障害、鬱病、精神病またはそれらの任意の組合せを処置するために使用され得る。);
9.36 方法I−AまたはII−A(ここでは、障害は、精神病、例えば統合失調症、鬱病、気分障害、睡眠障害(例えば、睡眠持続および/または入眠)、またはそれらの疾患の任意の組合せの少なくとも1種以上から選択される。);
9.37 上記の方法のいずれか(ここでは、障害は睡眠障害である。);
9.38 上記の方法のいずれか(ここでは、障害は、精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する睡眠障害である。)。
【0060】
第六の面の別の態様において、本発明は、上記の方法I
Pまたは方法II
Pを提供し、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABAシグナル伝達を促進する)化合物、GABA−Bアゴニスト、5−HTモジュレーター(例えば、5−HT
1Aアゴニスト、5−HT
2Aアンタゴニスト、5−HT
2Aインバースアゴニストなど)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えば、遮断薬)、セロトニン−2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン−1受容体拮抗薬、抗鬱薬、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態から選択される1種以上の治療薬をさらに含む方法(それぞれ、方法I
P−AまたはII
P−A)を提供する。この面のさらなる態様において、本発明は、9.1−9.38のいずれかに同様に記載される方法と同様の方法I
P−AまたはII
P−Aを提供する。
【0061】
第六の面のさらに別の態様において、上記の方法I
Pまたは方法II
Pは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはN−メチル D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストから選択される1種以上の治療薬をさらに含む。特定の態様において、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)、およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと呼ばれていた))からなる群より選択される。さらなる態様において、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである。別の態様において、NMDA受容体アンタゴニストは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチン(memantine)である。
【0062】
本発明の第七の面において、本発明の化合物と方法I−A、II−Aまたは9.1−9.38のいずれかに記載の1種以上の第2治療薬の組み合わせは、上記の医薬組成物またはデポー組成物として投与することができる。同様に、本発明の化合物と方法I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかに記載の1種以上の第2治療薬との組み合わせは、上記の医薬組成物またはデポー組成物として投与することができる。この組み合わせ組成物は、併用薬の混合物、ならびに2種以上の別個の薬剤組成物を含んでいてよく、個々の組成物は、例えば、患者に共に同時投与され得る。
【0063】
特定の態様において、方法I−A、II−A、I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を、非定型抗精神病薬、例えば、クロザピン、アリピパラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンまたはパリペリドンから選択される化合物と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含み、例えば、非定型抗精神病薬の投与量が低減され、かつ/または副作用が軽減される。
【0064】
別の態様において、方法I−A、II−A、方法I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を、抗鬱薬、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロチプリン、セルトラリン、トラニルシプラミン、トラゾドン、トリミプラミンまたはベンラファキシンと組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む。あるいは、抗鬱薬は、本発明の化合物に加えて補助的薬物として用いてもよい。
【0065】
さらに別の態様において、方法I−A、II−A、I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えば、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガバクサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムからなる群から選択される化合物、またはそれらのいずれかの組合せと組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0066】
別の特定の態様において、方法I−A、II−A、I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物をドキセピンと組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む。ドキセピンの投与量は、当業者に公知の任意の範囲で可変である。一例では、10mg用量のドキセピンを任意の投与量の本発明の化合物と組み合わせることができる。
【0067】
別の態様において、方法I−A、II−A、I
p−A、II
p−Aまたは9.1−9.38のいずれかは、本発明の化合物を、非定型刺激薬、例えば、モダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて(1日投与量レジメンの一部として含む)、それを必要とする患者に投与することを含む。本発明の化合物をかかる薬剤とともに組み込んだ投与レジメンは、より規則的な睡眠を促し、例えば、双極性鬱病、統合失調症に関連する認知症、ならびにパーキンソン病および癌などの病状における過剰な眠気および疲労の処置における、より高レベルのかかる薬剤に関連する精神病または躁病などの副作用を回避する。
【0068】
第八の面において、本発明は、例えば、方法I、7.1−7.27のいずれか、方法II、8.1−8.15のいずれか、方法I−A、II−A、9.1−9.38のいずれか、方法I
P、方法II
P、方法I
P−A、II
P−A、または第六もしくは第七の面に記載のいずれかの方法のいずれかにおける、上記の1種以上の障害の処置または予防のための(医薬の製造における)、以下に記載の化合物の使用を提供する。
11.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか;
11.2 上記の医薬組成物;
11.3 上記のデポー組成物;または、
11.4 上記の浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物。
【0069】
第九の面において、本発明は、例えば、方法I、7.1−7.27のいずれか、方法II、8.1−8.15のいずれか、方法I−A、II−A、9.1−9.38のいずれか、方法I
P、方法II
P、方法I
P−A、II
P−A、または第六もしくは第七の面に記載のいずれかの方法のいずれかにおける、上記の1種以上の障害の処置または予防において使用するための、以下に記載の上記の医薬組成物を提供する。
12.1 上記の医薬組成物;
12.2上記のデポー組成物;または、
12.3 上記の浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物。
【0070】
発明の詳細な説明
他に特記されないか、または文脈中明白でない場合、本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
a. 本明細書で用いる“アルキル”は、飽和または不飽和炭化水素基、例えば、1ないし6個の炭素原子、例えば、1ないし4個の炭素原子を有し、特記されない限り、直鎖または分枝状(例えば、n−ブチルまたはtert−ブチル)であってよい。
【0071】
特記しない限り、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物または1.1−1.14のいずれか、または4.1−4.4のいずれかは、遊離形態または塩形態、例えば、酸付加塩の形態で存在し得る。十分に塩基性の本発明の化合物の酸付加塩は、例えば、無機または有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸などとの酸付加塩が挙げられる。加えて、十分に酸性の本発明の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩もしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩、アンモニウム塩または生理的に許容されるカチオンを提供する有機塩基、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンもしくはトリス(2−ヒドロキシエチル)−アミンとの塩である。特定の態様において、本発明の化合物の塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。別の特定の態様において、本発明の化合物の塩は、フマル酸付加塩である。特定の態様において、本発明の化合物の塩は、リン酸付加塩である。
【0072】
本発明の化合物は医薬としての使用が意図され、故に、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適当でない塩も、例えば、本発明の遊離化合物の単離または精製に有用である場合があり、従ってそれらもまた包含される。
【0073】
本発明の化合物は、1個またはそれ以上のキラル炭素原子を含み得る。故に、化合物は、個々の異性体、例えば、エナンチオマーまたはジアステレオマー形態または個々の形態の混合物、例えば、ラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。異性体はいずれも、不斉中心が、(R)−、(S)−、または(R,S)−立体配置で存在していてよい。本発明は、両方の個々の光学的に活性な異性体、ならびにその混合物(例えば、ラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含するものと理解されるべきである。従って、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってよいか、または、大部分が、例えば純粋な、または実質的に純粋な異性体形態、例えば、70%以上のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(“ee”)、好ましくは80%以上のee、より好ましくは90%以上のee、最も好ましくは95%以上のeeであり得る。該異性体の精製および該異性体混合物の単離は、当技術分野で公知の標準的技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床法(Simulated Moving Bed)などにより達成され得る。
【0074】
二重結合または環についての置換基の本来の幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)形態で示され得て、両異性体形態は、本発明の範囲内に包含される。
【0075】
本発明の化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態で存在していてもよい。用語「プロドラッグ」は、一般に認められている用語であり、投与前の薬物前駆体を意味するが、投与後にはインビボにてある化学的または生理的過程を通して活性代謝産物を生成または放出する。ある例において、本発明の化合物は、プロドラッグならびに代謝産物であり得る。本発明者らは、活性な1−(4−フルオロ−フェニル)−4−((6bR、10aS)−3−メチル−2,3,6b,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1H,7H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン−8−イル)−ブタン−1−オンのインビボでの逆形成を阻止することにより、本発明の化合物が、5−HT
2AおよびSERTへの結合を維持しながらドーパミン拮抗作用を阻害し得ることを見出した。
【0076】
Xが−N(CH
3)−であるとき、本発明の化合物は、インビボでさらに代謝されて、脱メチル誘導体(すなわち(式中、Xは−N(H)−である。))を形成し得る。特に、式Iの化合物(式中、Xは−N(CH
3)であり、Yは−C(H)(OH)−または−C(=O)である。)は代謝されて、脱メチル誘導体(例えば(式中、Xは−N(H)−であり、Yは−C(H)(OH)または−C(=O)−である。))を形成し得て、ここでは、該ヒドロキシ化合物は、インビボで酸化されて、式Q(式中、Xは−N(H)−であり、Yは−C(=O)である。)の各活性な脱メチル化合物を形成し得る。
【0077】
同様に、本発明の化合物がアミン基を含むとき、かかるアミンのプロドラッグ、例えば、メチルアミンプロドラッグが存在してもよく、このとき該プロドラッグは、投与後にインビボにて切断されて、アミン代謝産物を放出する。
【0078】
あるいは、かつ/またはさらに、本発明の化合物は、例えば、第二および第三の面に記載のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解またはカプセル封入することによりデポー製剤として含まれ得て、ポリマーが時間経過により分解されると、該化合物が継続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、例えば、医薬的デポー組成物から対象への、例えば、該医薬的デポー組成物が投与されるヒトのような温血動物への該化合物の制御放出および/または遅延放出および/または持続放出を提供する。故に、該医薬的デポー組成物は、本発明の化合物を、特定の疾患または病状の処置に有効な濃度で長期間、例えば、14−180日、好ましくは約30日、約60日または約90日間、対象に送達する。
【0079】
本発明の組成物(例えば、本発明のデポー組成物)のポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸およびその誘導体のポリエステル、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、イプシロン−カプロ−ラクトン開環ポリマー、乳酸−グリコール酸コポリマー、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸コポリマー、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールコポリマーまたはポリグリコール酸−ポリエチレングリコールコポリマー、アルキルアルファ−シアノアクリル酸(例えば、ポリ(ブチル 2−シアノアクリル酸))のポリマー、ポリアルキレンオキサレート(例えば、ポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート(例えば、ポリエチレンカーボネートまたはポリエチレンプロピレンカーボネート)、ポリオルトカーボネート、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−γ−L−アラニン、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸またはポリ−y−メチル−L−グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのような他の物質を含んでいてよく、これらのポリマーの1種以上が用いられ得る。
【0080】
ポリマーがコポリマーであるとき、それらは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフトコポリマーのいずれかであり得る。上記のアルファ−ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸がそれらの分子中に光学活性を有するとき、D−異性体、L−異性体および/またはDL−異性体のいずれか1種を用いてよい。とりわけ、アルファ−ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸−グリコール酸ポリマー)、そのエステル、ポリ−アルファ−シアノアクリル酸エステルなどを用いることができ、乳酸−グリコール酸コポリマー(ポリ(ラクチド−アルファ−グリコリド)またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(以下、PLGAと述べる)が好ましい。故に、一面において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーはPLGAである。本明細書で用いる用語「PLGA」は、乳酸のポリマー(ポリラクチド、ポリ(乳酸)、またはPLA)を含む。最も好ましくは、ポリマーは、生分解性のポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーである。
【0081】
好ましい態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性のポリマー材である。用語“生体適合性”は、有毒でなく、発癌性がなく、かつ体内組織における炎症の発生が軽微なポリマー材を意味する。該マトリックス材は生分解性であるべきであり、ポリマー材が体内で分解され、体内から容易に排出され得る生成物に分解され、体内に蓄積すべきでない。生分解生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体に生体適合性であるという点で、身体に生体適合性であるべきである。特に有用なポリマーマトリックス材の例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、それらのコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート(copolyoxalate)、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノネ、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル類、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリ無水物、ならびにアルブミン、カゼインおよびグリセロールモノ−およびジステアレートのようなワックスなどを含む天然ポリマーが挙げられる。本発明の実施における使用に好ましいポリマーは、dl(ポリラクチド−コ−グリコリド)である。ラクチド対グリコライドのモル比が、約75:25ないし50:50の範囲にあるコポリマーが好ましい。
【0082】
有用なPLGAポリマーは、約5,000ないし500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンの平均分子量を有していてよい。達成しなければならない分解速度によって、異なる分子量のポリマーが用いられ得る。薬剤放出の拡散機序のため、ポリマーは、全ての薬剤がポリマーマトリックスから放出され、その後分解されるまで元の形のままであるべきである。薬剤はまた、ポリマーマトリックスからポリマー添加物の生分解物バイオエロード(bioerodes)としても放出され得る。
【0083】
PLGAは、いずれかの常套法により製造され得るか、または市販されている。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適当な触媒を用いて開環重合することにより製造することができる(EP−0058481B2を参照のこと; Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structure).
【0084】
PLGAは、生物学的条件下(例えば、水およびヒトのような温血動物の組織にて見出された生物学的酵素の存在下)での加水分解性の、および酵素により切断可能なエステル結合の切断により固体のポリマー組成物全体の分解により生分解可能であり、乳酸およびグリコール酸を形成すると考えられている。乳酸およびグリコール酸は両方とも、水溶性、非毒性の通常の代謝産物であり、さらに生分解されて二酸化炭素および水を形成し得る。言い換えると、PLGAは、例えば、ヒトのような温血動物の体内で、水の存在下、そのエステル基の加水分解により分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、かつ酸性の微気候を生じると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理的条件下で、ヒトのような温血動物の体内での種々の代謝経路の副産物であり、故に、良好な耐容性を示し、全身毒性は最小限である。
【0085】
別の態様において、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星状構造である、星型ポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、中心部分が酸残基鎖により取り囲まれた単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えば、グルコース、または例えば、マンニトールであってよい。これらのエステルは公知であり、GB2,145,422および米国特許番号第5,538,739号に記載されており、その開示は、引用により本明細書中に包含させる。
【0086】
星型ポリマーは、材料物質としてポリヒドロキシ化合物、例えば、ポリオール、例えば、グルコースまたはマンニトールを用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3個のヒドロキシ基を含み、約20,000ダルトンまでの分子量を有し、ポリオールの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、例えば、平均で3個のヒドロキシ基がエステル基の形態であり、ポリラクチドまたはコ−ポリラクチド鎖を含む。分枝状ポリエステル、例えば、ポリ(d, l−ラクチド−コ−グリコリド)は、放射状の線状ポリラクチド鎖を有する中心となるグルコース部分を有する。
【0087】
上記の本発明のデポー組成物は、ポリマーを、微粒子またはナノ粒子の形態にて、または液体形態にて、その中に本発明の化合物が分散またはカプセル封入されるように含んでいてよい。「微粒子」は、本発明の化合物を液体または固体形態のいずれかで含む固体粒子であって、該粒子のマトリックスとして作用するポリマー内にかかる化合物が分散または溶解されている粒子を意味する。ポリマー材を適当に選択することにより、微粒子製剤は、得られた微粒子が核酸放出と生分解放出の両方の特性を示すように製造され得る。
【0088】
ポリマーが微粒子形態であるとき、微粒子は、溶媒蒸発または溶媒抽出方法などの何れかの適当な方法を用いて製造され得る。例えば、溶媒蒸発法において、本発明の化合物およびポリマーは、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンのようなケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンのような環状エーテル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、またはエタノールのようなアルコール)中に溶解され、適当な乳化安定剤(例えば、ポリビニルアルコール、PVA)を含む水層中に分散されてもよい。その後、有機溶媒は蒸発されて、本発明の化合物をカプセル封入して含む微粒子を得る。溶媒抽出法において、本発明の化合物およびポリマーは、極性溶媒(アセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチルなど)中に溶解され、次いで水層(水/PVA溶液など)中に分散されてもよい。エマルジョンを生成し、本発明の化合物をカプセル封入するための微粒子を得る。噴霧乾燥は、微粒子を製造するための別の製造方法である。
【0089】
本発明の微粒子の別の製造方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号にも記載される。
【0090】
本願発明の微粒子は、注射組成物における使用が許容される粒径の微粒子の製造を可能とするいずれかの方法により製造され得る。1つの好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されている方法である。この方法では、活性薬剤を適当な溶媒に溶解または分散させる。該薬剤含有媒体に、ポリマーマトリックス材を、所望の負荷の活性薬剤を有する生成物を供する量であって、活性成分に対して相対的な量にて添加する。所望により、微粒子生成物のすべての成分は、溶媒媒体と共に混合され得る。
【0091】
本発明の実施に用いられ得る本発明の化合物用溶媒およびポリマーマトリックス材としては、アセトンのような有機溶媒;クロロホルム、塩化メチレンなどのようなハロゲン化炭化水素;芳香族性炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族性炭化水素化合物;環状エーテル;ベンジルアルコールのようなアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一態様において、本発明の実施に使用するための溶媒は、ベンジルアルコールおよび酢酸エチルの混合物であってもよい。本発明に有用な微粒子の製造のためのさらなる情報は、米国特許公開番号2008/0069885に見出され得て、その開示は引用により全体を本明細書中に包含させる。
【0092】
微粒子中に包含される本発明の化合物の量は、一般に、約1重量%ないし約90重量%、好ましくは30ないし50重量%、より好ましくは35ないし40重量%の範囲である。重量%は、微粒子の全重量に対する本発明の化合物の部分を意味する。
【0093】
医薬デポー組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性希釈剤または担体を含んでもよい。
【0094】
浸透圧を用いる放出制御システム(OROS)組成物の詳細は、EP1539115(米国特許出願公開番号2009/0202631)およびWO2000/35419に見出され得て、それらの開示は引用によりその全体を本明細書中に包含させる。
【0095】
「治療的有効量」は、疾患または障害に罹患する対象に投与されるとき、治療を意図する期間中に、疾患または障害の軽減、寛解、または緩解をもたらすのに有効な、本発明の化合物の量(例えば、医薬デポーに包含されるような量)である。
【0096】
本発明の実施において用いられる投与量は、もちろん、例えば、処置すべき特定の疾患または病状、用いる本発明の特定の化合物、投与方法および望まれる療法によって異なる。特記しない限り、本発明の化合物の投与量は(遊離塩基形態として投与される場合であれ、塩形態として投与される場合であれ)、遊離塩基形態の本発明の化合物の量を意味するか、またはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0097】
本発明の化合物は、何れかの満足のいく投与経路で投与され得て、経口的、非経腸的(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮的投与が挙げられるが、好ましくは経口投与である。ある態様において、例えば、デポー製剤の本発明の化合物は、好ましくは非経腸的に、例えば、注射により投与される。
【0098】
一般的に、方法Iまたは7.1−7.27のいずれかまたは方法I
Pまたは上記の本発明の化合物の使用であって、例えば、上記の少なくとも鬱病、精神病、例えば、(i)鬱病患者における精神病、例えば、統合失調症;(2)精神病、例えば、統合失調症患者における鬱病;(3)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する気分障害;および(4)精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に関連する睡眠障害の組み合わせのような疾患の組み合わせの処置のための使用における満足のいく結果は、約lmgないしl00mgを1日1回、好ましくは約2.5mg−50mg、例えば、2.5mg、5mg、l0mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgを1日1回の投与量を経口投与することにより、好ましくは経口投与により得られることが示される。
【0099】
方法IIまたは8.1−8.15のいずれか、方法II
Pまたは上記の本発明の化合物の使用に満足のいく結果は、例えば、睡眠障害のみ、または精神的動揺、攻撃的行動、外傷後ストレス障害または衝動調節障害のみ、例えば、間欠性爆発性障害のみの処置に関して、約1mg−10mgを1日1回、例えば、約2.5mg−5mg、例えば、2.5mg、3mg、4mg、5mgまたは10mgの遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を1日1回の投与量を経口投与することにより、好ましくは経口投与により得られることが示される。
【0100】
方法I−Aまたは9.1−9.38のいずれかまたは方法I
P−Aの満足いく結果は、l00mg未満、好ましくは50mg未満、例えば、40mg未満、30mg未満、20mg未満、l0mg未満、5mg未満、2.5mg未満を1日1回投与で得られることが示されている。方法II−Aまたは9.1−9.38のいずれかの満足いく結果は、10mg未満、例えば5mg未満、好ましくは2.5mg未満で得られることが示されている。
【0101】
デポー組成物を用いて長期の作用持続時間が達成される、本明細書に記載の障害の処置のためには、投与量は、より短時間作用の組成物と比較して多く、例えば、1−100mg以上、例えば、25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mg以上であり得る。本発明の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成物、すなわち、ポリマー:薬剤比および微粒子サイズの操作により調整することができる。本発明の組成物がデポー組成物であるとき、注射による投与が好ましい。
【0102】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般に、かかる塩は、水中または有機溶媒中、またはそれらの混合物中で(一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい)、これらの化合物の遊離塩基形態と化学量論量の適当な酸を反応させることにより製造することができる。これらの塩、例えば、アモルファス形態または結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造に関するさらなる詳細は、PCT/US08/03340および/または米国仮特許出願番号第61/036,069号に見出される。
【0103】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、常用の希釈剤または添加剤(例えば、ゴマ油が挙げられるが、これに限定されない)および生薬分野で公知の技術を用いて製造することができる。よって、経口投与形態は、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁液などを含み得る。
【0104】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物の中間体は、PCT/US08/03340(WO2008/112280);米国特許出願番号第0/786,935号;米国特許第6,548,493号;同第7,238,690号;同第6,552,017号;同第6,713,471号;同第7,183,282号;米国再発行特許39680号、および米国再発行特許39679号に記載の通りに製造され得て、その開示は引用によりその全体を本明細書中に包含させる。本発明の化合物の塩はまた、米国特許第6,548,493号;同第7,238,690号;同第6,552,017号;同第6,713,471号;同第7,183,282号;米国再発行特許39680;米国再発行特許39679;および、WO2009/114181に記載の方法と同様の方法で製造され得て、その開示は引用によりその全体を本明細書中に包含させる。
【0105】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当技術分野で公知の常套法、例えば、カラム精製、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、粉砕、擬似移動床法などにより達成され得る。
【0106】
式Iの化合物(式中、R
2は−OR
3であり、ここでR
3はHである。)は、Int−Aとグリニャール反応材、R
1−MgX
2(ここでは、X
2はハロゲン、例えば、ブロマイドまたはクロライド、好ましくはブロマイドであり、R
1およびXは式Iに定義の通りであり、例えば、R
1はメチルであり、Xは、例えば、N(CH
3)である。)とを、例えば、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルのような溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン中で反応させて製造することができる。該反応は以下の反応スキームに記載され得る。
【化4】
【0107】
式Iの化合物(式中、R
2は−OR
3であり、ここでR
3はC
1−6アルキルである。)は、Int−BとR
3−OHおよびBF
3・OEt(ここでは、R
3はC
1−6アルキルである。)とを反応させて製造することができる。該反応は以下の反応スキームに記載され得る。
【化5】
【実施例】
【0108】
実施例1
2−(4−フルオロ−フェニル)−5−((6bR,10aS)−3−メチル−2,3,6b,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1H,7H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン−8−イル)−ペンタン−2−オール
【化6】
【0109】
1−(4−フルオロ−フェニル)−4−((6bR,10aS)−3−メチル−2,3,6b,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1H,7H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン−8−イル)−ブタン−1−オン(99mg、0.25mmol)のTHF溶液に、3.0Mの臭化メチルマグネシウムのエーテル溶液(0.25mL、0.75mmol)を0℃で滴下する。CH
3MgBrの添加の完了後、冷却浴を取り除き、反応混合物を室温で2時間撹拌する。別バッチの3.0Mの臭化メチルマグネシウムのエーテル溶液(0.25mL、0.75mmol)を追加滴下し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を水で注意深くクエンチし、飽和重炭酸ナトリウムを用いて塩基性とし、その後、塩化メチレンで4回抽出した。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣を塩基性アルミナカラム上で精製して、28mgの純粋な生成物を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz、クロロホルム−d) δ 8.22 (br, 1H), 7.58−7.37 (m, 2H), 7.07 (t, J=8.5 Hz, 1H), 7.01 (t, J=8.7 Hz, 1H), 6.65 (dt, J=10.6, 7.7 Hz, 1H), 6.57−6.29 (m, 2H), 3.59 (td, J=11.1, 3.0 Hz, 1H), 3.37−3.12 (m, 4H), 3.00−2.65 (m, 5H), 2.55−2.13 (m, 5H), 2.12−1.78 (m, 4H), 1.69−1.30 (m, 5H). MS (ESI) m/z 410.2 [M+H]
+.
【0110】
実施例2
(6bR,10aS)−8−[4−(4−フルオロ−フェニル)−4−メトキシ−ブチル]−3−メチル−2,3,6b,7,8,9,10,10a−オクタヒドロ−1H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン
【化7】
【0111】
1−(4−フルオロ−フェニル)−4−((6bR,10aS)−3−メチル−2,3,6b,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1H,7H−ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3−デ]キノキサリン−8−イル)−ブタン−1−オール(225mg、0.57mmol)の無水ジクロロメタン溶液(3mL)に、無水メタノール(100μL、2.28mmol)を添加し、その後、BF
3・OEt(300μL、2.28mmol、THF中1.0M)を室温で滴下する。反応混合物を室温で一晩撹拌し、その後、氷水に注ぐ。混合物をトリエチルアミンを用いて塩基性にした後、有機層を分け、MgSO
4で乾燥させ、その後、減圧下で蒸発乾固させる。得られた残渣を半分取HPLCシステムを用いて精製して、80mgの純粋な生成物を褐色油状物として得る。
1H NMR (500 MHz, DMSO−d
6) δ 7.31 (ddd, J=8.6, 5.6, 1.2 Hz, 2H), 7.18 (t, J=8.7 Hz, 2H), 6.50 (td, J=7.6, 1.3 Hz, 1H), 6.39 (d, J=7.3 Hz, 1H), 6.32 (d, J=7.9 Hz, 1H), 4.15 (td, J=6.5, 3.5 Hz, 1H), 3.49−3.37 (m, 1H), 3.31−3.22 (m, 3H), 3.15−3.04 (m, 4H), 3.02−2.91 (m, 1H), 2.77 (s, 3H), 2.70−2.61 (m, 2H), 2.29−2.11 (m, 2H), 2.09−1.97 (m, 1H), 1.92−1.81 (m, 1H), 1.78−1.63 (m, 3H), 1.60−1.49 (m, 1H), 1.49−1.37 (m, 1H), 1.37−1.22 (m, 1H). MS (ESI) m/z 410.6 [M+H]
+.
【0112】
実施例3:受容体結合活性
5HT
2A、D
2およびSERTへの結合を、WO/2009/145900に記載の方法を用いて評価する。実施例1および2の化合物は、5−HT
2A、SERTおよびD
2に強力に結合し、以下の親和性定数を示すことが見出された(μモル)。
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2015年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
第三の面の別の態様において、本発明は
、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の
液体形態の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接触するバリア層、バリア層と接触する拡張層、拡張層を取り囲む半透層、および複合壁(多層壁)に形成されるか、または形成され得る出口開口部、を含む複合壁に囲まれている(組成物P.2)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第三の面のさらに別の態様において、本発明は
、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の
液体形態の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接するバリア層、バリア層と接する拡張層、拡張層を取り囲む半透層、および複合壁に形成されるか、または形成され得る出口開口部、を含む複合壁に囲まれており、バリア層は出口開口部で拡張層と外部環境の間のシール部(seal)を形成する(組成物P.3)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
第三の面のさらに別の態様において、本発明は
、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、または上記の
液体形態の本発明の医薬組成物を含むゼラチンカプセルを含む組成物を提供し、該ゼラチンカプセルは、ゼラチンカプセルの外表面と接するバリア層、バリア層の一部と接する拡張層、拡張層を少なくとも取り囲む半透層、およびゼラチンカプセルの外表面から使用環境へ拡散する投与量形態中に形成されるか、または形成され得る出口開口部に囲まれている(組成物P.4)。拡張層は、1個またはそれ以上の不連続な区画、例えば、ゼラチンカプセルの対向する両側面または両端部に位置する2個の区画に形成されてもよい。
【国際調査報告】