【実施例】
【0053】
実施例1
CBDは、コラーゲンの部分的にねじれていないか又はねじれが不十分な領域を標的とする
クロストリジウム・ヒストリチカムのコラゲナーゼは、結合組織のコラーゲンを広範囲にわたって分解させ、ガス壊疽を引き起こす。これらの酵素のC末端コラーゲン結合ドメイン(CBD)は、コラーゲン細繊維に結合するのに必要な最小限のセグメントである。CBDは、3重らせんコラーゲンの部分的にねじれていないC末端に一方向性に結合する。CBDが、コラーゲン3重らせんの中央部であっても、ねじれが不十分な領域を標的とすることができるかどうかを試験した。部分的にねじれていないコラーゲン性ペプチドは、コラーゲン([(POG)
xPOA(POG)
y]
3(式中x+y=9でありx>3である))にGly→Ala置換を導入することによって合成した。
15N標識CBDを用いる
1H-
15N異核種単一量子コヒーレンス法核磁気共鳴(HSQC NMR)滴定研究によって、ねじれていないミニコラーゲンは、幅10Å、長さ25Åの溝(cleft)に結合することが明らかになった。次いで、それぞれニトロキシドラジカルで標識された6つのねじれていないコラーゲン性ペプチドを
15N標識CBDで滴定した。常磁性核スピン緩和効果によって、CBDは、Gly→Ala置換部位又は各ミニコラーゲンのC末端のいずれかに近接して結合することが見出された。X線小角散乱(SAXS)測定によって、CBDは、C末端よりはむしろGly→Ala部位に選択的に結合することが明らかになった。
15N標識ミニコラーゲン及びねじれていないミニコラーゲンのHSQC NMRスペクトルは、非標識CBDの滴定によって影響を受けなかった。CBDは部分的に巻き戻されたミニコラーゲンの領域に結合するが、この結果は3重らせんを強くは巻き戻さないことを意味する。
【0054】
材料及び方法
15N標識タンパク質の調製:クロストリジウム・ヒストリチカムクラスIコラゲナーゼ(ColG)由来のs3b(Gly893-Lys1008)ペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として発現させた。以前記載したように、GSTタグをトロンビンで切除し、CBDを精製した(Matsushita, et al., (2001) J Biol Chem 276、8761-8770)。40 mM
15NH
4Clを含むTanaka最小培地を用いて、均一な
15N同位体標識化を行った。マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)によって、標識効率は99.6%であると算出された。
【0055】
ペプチド:(POG)
10(配列番号35)は、株式会社ペプチド研究所(大阪、日本)から購入した。他のペプチドは、リンクアミドレジン(Novabiochem社、ダルムシュタット、ドイツ)を用いる標準的なN-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル(Fmoc)ベース戦略によって構築した。N末端スピンラベルは、樹脂上で、N,N-ジメチルホルムアミド中、室温で2時間、5当量の3-カルボキシ-PROXYL(Aldrich社)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジイソプロピルカルボジイミドで処理することによって行った。標準的なトリフルオロ酢酸(TFA)脱保護カクテル(TFA:m-クレゾール:チオアニソール:水:トリイソプロピルシラン=82.5:5:5:5:2.5、v/v)で処理することによってペプチドの切断及び脱保護ステップを行った。Cys残基におけるスピンラベルは、3-(2-ヨードアセトアミド)-PROXYL(IPSL、Sigma-Aldrich社)を用いて行った。簡潔に言えば、エタノールに溶解したIPSLの10モル過剰量を、0.1Mトリス-HCl(pH8.8)、5mMエチレンジアミン四酢酸に溶解した同じ容量の10mg/mlペプチドに加えた。室温で1時間反応させた後、過剰量のジチオスレイトールを加えることによって反応物をクエンチした。Cosmosil 5C
18 AR-IIカラム(ナカライテスク、京都、日本)を用いる逆相HPLCによってすべてのペプチドを精製し、MALDI-TOF-MSで特徴づけた。測定された質量は、すべて、予想される数値と一致した。合成されたペプチドの化学構造を
図2に示す。
【0056】
円二色性分光法:コラーゲン性ペプチドの3重らせん配座及び安定性はCD分光法を用いて確認した(
図3及び4参照)。ペルチェ温調器を備え、0.5mm石英キュベットを用い、信号加算平均のためにデータステーションに連結したJ-820 CD分光旋光計(ジャスコエンジニアリング、八王子、日本)でCDスペクトルを記録した。すべてのペプチド試料は水に溶解し(1mg/ml)、4℃で24時間保存した。スペクトルは、ペプチド残基1モル当たりの楕円率単位[θ]
mrwによって記録した。3重らせんの耐熱性は、0.3℃/分の速度の温度上昇での、各ペプチドの[θ]
225値によってモニターした。
【0057】
NMR分光法:cryoprobe(登録商標)を備えたBruker 700MHzスペクトロメータでNMR実験を行った。すべてのNMR滴定実験は16±0.5℃で行った。運転温度は、用いたすべての常磁性スピンラベルコラーゲン性ペプチドの融解温度(T
M)(表1)よりも低い。タンパク質の濃度は、100mM NaCl及び20mM CaCl
2を含む50mMトリス-HCl(pH7.5)中0.1mMであった。滴定過程に対する希釈効果は、高濃度(4mM)ペプチド原液の滴定によって最小化した。タンパク質にコラーゲン性ペプチドのアリコートを加え、
1H-
15N HSQCスペクトルを測定する前に5分間平衡化させた。滴定中にモニターしたNMR試料のpHは、有意なpHシフトを示さなかった(±0.2単位以内)。
表1:本明細書に記載のNMR滴定及び実験に用いた種々のミニコラーゲンペプチドの融解温度(Tm)
【0058】
動的光散乱実験:温度調整式マイクロサンプラーを備えたDynaPro-Eを用いて、100mM塩化ナトリウム及び20mM CaCl
2を含む10mMトリス-HCl(pH7.5)中のCBD、コラーゲン性ペプチド及びCBD:ミニコラーゲン複合体の試料に関して動的光散乱(DLS)データを採取した。タンパク質試料を10,000rpmで10分間遠心分離し、0.02μm Whatmanシリンジを用いて50μL石英キュベットに直接濾過した。各実験に関して、20回の測定を行った。Dynamics V6(Protein Solutions社)を用いて、平均流体力学半径(RH)、標準偏差、多分散性及びピーク面積パーセントを解析した。流体力学半径及び分子量概算値は、記載に従って、ブラウン運動によって誘導される時間に依存した揺動から算出した。Proteau, et al. (2010) Curr Protoc Protein Sci Chapter 17, Unit 17 10。
【0059】
X線小角溶液散乱実験:DND-CATシンクロトロン研究センター、Advanced Photon Source、Argonne National Laboratory(アルゴンヌ、イリノイ州)の5-ID-Dビームラインに位置するSAXS/WAKSセットアップにおいて、10mMトリス-HCl(pH7.5)、100mM NaCl及び20mM CaCl
2中のCBD、コラーゲン性ペプチド及びCBD-ミニコラーゲン複合体の溶液に関して、X線小角溶液散乱(SAXS)データを採取した。X線散乱の主な利点は、ほぼ生理的条件の溶液中でそれを行うことができることである。Petoukhov et al., (2007) Curr Opin Struct Biol 17, 562-571。Rhコートミラーからの1:1水平集束及び高い高調波排除を用い、ビーム制限スリットを垂直方向0.3mm、水平方向0.25mmにセットしたSi-111モノクロメーターを用いるAPS Undulator A挿入光源からの1.2398Å(10keV)放射線を選択した。直径1.6mmのキャピラリーフローセルを流速4μl/秒で用いて、暴露時間10秒で、4フレームを採取した。用いたSAXS検出器は、Mar165シンチレーター光ファイバーカップリングCCD検出器であり、q=4πsinθ/λ(2θは散乱角度である)で、運動量移行範囲0.005<q<0.198Å
-1をカバーした。WAXS検出器は、注文製のRoperシンチレーター光ファイバーカップリングCCD検出器であった。これは0.191<q<1.8Å
-1Sをカバーした。Weigand, et al. (2009) Advances in X-ray Analysis 52, 58-68。
【0060】
すべての散乱データは試料温度10℃で得た。各検出器からの4つの散乱パターンを平均し、特定範囲外のスキャンを排除してマージした。さらなる解析のために、プログラムIGOR Pro 5.5 A(WaveMetrics社)を用いた。タンパク質、ペプチド及びそれらの複合体の散乱プロフィールは、緩衝液のプロフィールを減算した後に得た。減算した散乱データを散乱強度I(Q)対Qとしてプロットした(
図4A)。回転半径R
gは、前方散乱強度I(0)が、タンパク質複合体の分子量に比例しているQR
g<1領域において、線形最小二乗フィッティングによるGuinier近似から得た。GNOMを用いてI(Q)データを間接フーリエ変換することによって、実空間における粒子分布関数P(r)を得た(
図4B)。Svergun, D. (1992) J Appl Crystallogr 25, 495-503。P(r)とx軸との交点は、全方向で平均した最大粒径D
maxを表す。プログラムGASBORでのab initio計算後に、SAXSデータに基づいて、すべての試料に関して分子のエンベロープを構築した。Svergun, et al. (2001) Biophys J 80, 2946-2953。I(Q)散乱データへのベストフィットを試験した後、ランダムに分散した疑似分子のシミュレートアニーリング最小化によってタンパク質構造に変換した。形状再構成には、いずれも対称拘束は用いなかった。複合体のそれぞれに関して、GASBORで10のab initioモデルを計算し、DAMAVERを用いて平均した。Svergun, D. (2003) J Appl Crystallog 36。直径D
maxを有するビーズのコンパクトな相互に連結した配置として表された原子模型は、誤差を最小限にするために実験データI
exp(s)にフィットするように調整した。プログラムSUBCOMBでab initioエンベロープに原子模型をドッキングさせた。Kozin, M. B., and Svergun, D. (2000) J Appl Crystallogr 33, 775-777。
【0061】
ドッキングモデル:タンパク質データバンクエントリーのColG s3b(1NQD)と部分的にねじれていないコラーゲン性ペプチド1CAG(位置15におけるAla変異)とからCBD-コラーゲン性ペプチド複合体を作成した。[(POG)
10]
3構造由来の断片(1K6F)を用いて1CAGを修飾することによって、他のねじれていないミニコラーゲン分子を作成した。複合体を得るために、ソフトドッキングアルゴリズムBiGGERを用いた。Palma, et al. (2000) Proteins 39, 372-384。NMR滴定データを用いて解をフィルターし、NMR及びSAXSの結果を満足する、スコアの最も高いモデルを選択した。MIFitを用いて、手動調節の手助けをした。McRee. (1999) J Struct Biol 125, 156-165。
【0062】
結果と考察:
1H-
15N HSQC NMR滴定−ねじれが不十分なコラーゲン部位のCBDによる標的化:N末端から21番目の位置にAlaを有するねじれていないコラーゲン性ペプチド[(POG)
6POA(POG)
3]
3(配列番号36)を合成した。N末端に常磁性スピンラベルを有するために、このペプチドをさらに修飾した。[PROXYL-(POG)
6POA(POG)
3]
3(配列番号36)と
15N標識CBDを0.02:1〜1.5:1の比率で用いて
1H-
15N HSQC NMR滴定を行った。以前明らかにされたように、合計11のコラーゲン結合面上の残基(S928、W956、G971、K995、Y996、L924、T957、Q972、D974、L991及びV993)が、HSQCスペクトルから消失するか、又は滴定の過程において元の位置からの著しい化学シフト摂動を示した。Philominathan,et al. (2009) J Biol Chem 284, 10868-10876。コラーゲン性ペプチドのN末端のPROXYL基は、滴定の過程において、CBDのNMRシグナルの距離に依存したラインブロードニングを引き起こすことができる。これらの11残基に加えて、さらなる3残基、V973、G975及びS979は、かなりのラインブロードニングを示し、これらの残基は、ついにはCBDの
1H-
15N HSQCスペクトルから消失した(
図5A及び5B)。[PROXYL-(POG)
6POA(POG)
3]
3(配列番号36):CBD複合体がアスコルビン酸で還元された場合、3つの残基は
1H-
15N HSQCスペクトル中に再び現れた。これら3つの残基の消失は、我々の以前の発表における[PROXYL-G(POG)
7]
3(配列番号42)(C末端は、N末端PROXYLから22番目の位置である)滴定と矛盾しなかった。これら2つの滴定結果の比較によって、CBDがGly→Ala置換部位を標的としていることは明らかである。もし、CBDが、[PROXYL-(POG)
6POA(POG)
3]
3(配列番号36)のC末端のみに結合していたのであれば(C末端は、N末端PROXYLから30番目の位置である)、公表された[PROXYL-G(POG)
7(PRG)]
3(配列番号43)の滴定と同様に、精々ただ1つの残基(V973)の消失が観察されることが期待されるであろう。Ca
2+結合部位の遠位側に位置する残基(V973、G975及びS979)の消失(
図5C)によって、CBDが、ねじれていないコラーゲンにも一方向性に結合することが確定された。CBDにおけるコラーゲン結合表面は、幅10Åm、長さ25Åの溝である。CBDにおける結合溝の幅は3重らせんの直径にマッチし、その長さは[(POG)
3]
3(配列番号44)を収容することができる。NMR結果は、CBDが、コラーゲンのねじれが不十分な[(POG)
2POA]
3(配列番号45)領域に結合していることを示唆している。
【0063】
常磁性緩和促進は距離に依存する現象であるため、N末端PROXYL基により近い部位で行われたGly→Ala置換は、CBD上のより多くの残基の消失をもたらすはずである。PROXYL含有コラーゲン性ペプチド、[PROXYL-(POG)
5POA(POG)
4]
3(配列番号37)(N末端PROXYLから18番目の位置におけるAla)、[PROXYL-(POG)
4POA(POG)
5]
3(配列番号38)(PROXYLから15番目の位置におけるAla)及び[PROXYL-(POG)
3POA(POG)
6]
3(配列番号39)(PROXYLから12番目の位置におけるAla)を合成した。前の滴定と全く同様に、
1H-
15N HSQCスペクトルにおける変化から、CBDの残基に対するラインブロードニング効果を解析した。Gly→Ala置換部位とN末端PROXYLとの間の距離が短いほど、CBDにおける消失する残基は多かった(
図6及び表2)。4つの異なるミニコラーゲン分子の4つのアミド共鳴(Q972、G975、S979及びL924)の強度低下の大きさもまた距離の関数であった(
図7)。NMR結果は、4つのねじれが不十分なミニコラーゲンのそれぞれにおける[(POG)
2POA]
3(配列番号45)領域へのCBDの結合と一致している。すべてのNMR滴定から得られた結合定数は<100μMであったが、これは、CBDとねじれが不十分なミニコラーゲンとの間の中程度の結合親和性を示唆している。
表2:コラーゲン性ペプチド配列のN末端、C末端又は中央部のいずれかにおけるPROXYLの存在によって消失する残基
【0064】
[(POG)
2POA]
3(配列番号45)及びC末端[(POG)
3]
3(配列番号44)の両方におけるらせん配座は同様にねじれが不十分である。3重らせんの内部のねじれを説明する対称螺旋軸の周りの回転角度は、らせんねじれ値(helical twist value)κと定義される。[(POG)
10]
3(配列番号35)に関して、κ値は平均値-103°付近を揺れ動く。Bella (2010) J Struct Biol 170, 377-391。ミニコラーゲンのC末端はねじれが不十分であるが(κ値は-103°から-110°にシフトする)、N末端は、通例、ねじれが過剰である。ペプチド配列の中央部にGly→Ala置換を有するコラーゲンペプチドは、なお3重らせんを形成するが、置換部位では突然に不十分なねじれ(κは-103から-115°にシフトする)を生じ、次いで過剰なねじれから正常なねじれに変化する。[(POG)
2POA]
3(配列番号45)領域はC末端[(POG)
3]
3(配列番号44)よりもややねじれが不十分であるため、前者は後者よりもCBDによって選択的に標的化されることができる。しかしながら、CBDは、なおC末端に結合することができる。
【0065】
CBDは、ねじれが不十分なミニコラーゲンのC末端もまた標的とすることができる:CBDが、C末端(POG)
3(配列番号44)にも結合することを明らかにするために、コラーゲン性ペプチド[(POG)
4POA(POG)
5-PROXYL]
3(配列番号38)を合成した。[(POG)
4POA(POG)
5C-PROXYL]
3(配列番号41)を、比率0.02:1〜1.5:1、増分0.02で、
15N標識CBDで滴定し、CBDのHSQCスペクトルの変化をモニターした。これらのミニコラーゲンが溝に結合したとき、前に述べたように、合計11のコラーゲン結合面上の残基が、ラインブロードニングを生じるか、又は化学シフト摂動を示した。Philominathan,et al. (2009) J Biol Chem 284, 10868-10876。PROXYLによって、HSQCスペクトルから、4つのさらなる残基S906、R929、S997及びG998が消失した(
図6A、B及びD)。これらのピークは、アスコルビン酸の添加によって再び現れた。この現象は、CBDがC末端に結合したときの、[GPRG(POG)
7C-PROXYL]
3(配列番号46)の我々の以前の滴定と同一である。もしCBDが部分的に巻き戻されたAla部位のみに結合するのであれば、我々はより少ない残基の消失を観察するであろう。このように、コラーゲン性ペプチドの(POG)
2POA(配列番号45)領域の標的化に加えて、CBDは、C末端(POG)
3(配列番号44)にも結合する。記載されているように、(POG)
2POA(配列番号45)領域及びC末端(POG)
3(配列番号44)のらせん配座は、両方とも、正常なものと比較して同様にねじれが不十分である。Bella. (2010) J Struct Biol 170, 377-391。CBDが、なぜねじれが不十分な領域を標的とするかについての我々の最新の説明は、主鎖カルボニル基の部分巻き戻し位置が、Tyr994のヒドロキシル基との水素結合相互作用に好都合であるというものである。Tyr994のPheへの変異は、ミニコラーゲンへの結合の12倍の低下をもたらし、Alaへの変異は結合能を消失させた。Wilson, et al. (2003) EMBO J 22, 1743-1752。
【0066】
(POG)
2POA(配列番号45)領域及びC末端(POG)
3(配列番号44)領域の両方を標的とするCBDの能力を明らかにするために、中央部(11番目の位置)にPROXYL基を収容するように修飾されたコラーゲン性ペプチド[11PROXYL-(POG)
3PCG(POG)
4]
3(配列番号40)を合成した。PROXYL基はシステイン残基に共有結合される。嵩高いPROXYL基の存在によって、このペプチドは部分的にねじれていないと予想される。このペプチドに関して不十分なねじれの正確な角度は知られていないが、GPX反復配列を有するミニコラーゲンは、中程度に不十分なねじれを示す(κ=-105°)。Bella. (2010) J Struct Biol 170, 377-391。嵩高いPROXYL基は、κ=-105°よりも大きい非ねじれを誘導すると考えられる。11のアミド共鳴に加えて、ラインブロードニング又はシフトいずれかで、
1H-
15N HSQC NMR滴定は2つの異なる現象を示した。低めの比率(0.2:1)では、S906、R929、S997及びG998に対応するアミド共鳴はCBD(
図8E、F及びH)のHSQCスペクトルから消失した。次いで、高めの比率(0.3:1)では、V973、G975及びS979に対応する追加のアミド共鳴がCBDのHSQCスペクトルから消失した(
図8E、F及びH)。4つの残基(S906、R929、S997及びG998)の消失を引き起こすためには、CBDはN末端(POG)
3(配列番号44)に初めに結合しなければならない。共鳴V973、G975及びS979の消失は、CBDがミニコラーゲンのC末端(POG)
3(配列番号44)に結合する場合に説明することができる。しかしながら、最初の現象は、CBDが、C末端のねじれが不十分な中央部分に優先的に結合することを示している。
【0067】
PROXYLがラインブロードニングを引き起こし、Ala又はCys残基が引き起こさなかったことを立証するために、PROXYL基を欠く3つのさらなる対照ペプチド、[(POG)
4POA(POG)
5]
3(配列番号38)、[(POG)
4POA(POG)
5C-カルバミドメチル]
3(配列番号41)及び[(POG)
3PCG(POG)
4]
3(配列番号40)を合成し、NMR滴定を繰り返した(それぞれ、
図6F、8C及び8G)。滴定結果は、[(POG)
10]
3(配列番号35)の滴定結果とほぼ同じであった。1:1(ミニコラーゲン:CBD)比でさえも、11のアミド共鳴のみがラインブロードニング又はシフトのいずれかを引き起こした。これらの対照ペプチドは同じ溝に結合したが、PROXYLは、さらなる残基にラインブロードニングを引き起こした。
【0068】
CBDが、コラーゲンペプチドの中央部の部分的にねじれていない部位及び/又はミニコラーゲンのC末端にのみ結合するかどうかを明らかにするために、動的光散乱実験(DLS)を行った。DLS実験は、コラーゲン:CBD複合体の化学量論を提供した。[(POG)
4POA(POG)
5-PROXYL]
3(配列番号38):CBD及び[11PROXYL-(POG)
3PCG(POG)
4]
3(配列番号40):CBDの流体力学半径は3nmであり、複合体の見かけの分子量は42±1kDaであったが、これは、[(POG)
10]
3(配列番号35):CBD複合体に関して観察されたものと同様である(表3)。他の複合体もまた、同様の値を示した。これまで、すべてのミニコラーゲンとCBDは、常に1:1複合体を形成した。CBDは、ミニコラーゲンの利用可能な部位のうちのいずれか1つに結合するが、両方の部位を占めて1:2複合体を形成することをしない。
表3:種々のCBD:コラーゲン性ペプチド複合体に関して動的光散乱(DLS)及びX線小角散乱(SAXS)から算出した流体力学半径(RH)、見かけの分子量(Mw)、回転半径(Rg)及び最大粒径(Dmax)。
【0069】
X線小角散乱実験(SAXS):CBD-コラーゲン性ペプチド複合体の三次元分子形状をSAXS測定を用いて構築した。SAXS測定の主な利点は、ほぼ生理的条件の溶液中でその実験を行うことができることである。我々の以前の研究において、CBDと、ミニコラーゲンのC末端(POG)
3(配列番号44)との非対称結合を明らかにするためにこれらの三次元分子エンベロープを用いた。CBDと、6つの異なるねじれていないミニコラーゲン分子との複合体に関して分子形状が構築された。すべての場合において、CBDは、C末端(POG)
3(配列番号44)よりも(POG)
2POA(配列番号45)領域に優先的に結合した(
図9A〜F)。例えば、ねじれていないコラーゲン(pdbアクセッションコード1CAG)の(POG)
2POA(配列番号45)領域に相互作用するCBD(pdbアクセッションコード1NQD)の結晶構造を用いて構築されたCBD:[(POG)
4POA(POG)
5]
3(配列番号38)のドッキングモデルはエンベロープによくフィットする(
図9B)。NMR結果は、CBDが、[(POG)
4POA(POG)
5-PROXYL]
3(配列番号38)のC末端(POG)
3(配列番号44)にも結合することを明らかにしているが、CBDは、そのペプチドの(POG)
2POA(配列番号45)領域に主に結合する(
図9E及び9F)。
【0070】
[11PROXYL-(POG)
3PCG(POG)
4]
3(配列番号40)に関するシミュレートアニーリング計算を用いるSAXSプロフィールによって導かれた構造(
図9G及び9H)は、PROXYL基に帰することができるさらなる密度を示した。SAXSによって導かれた[11PROXYL-(POG)
3PCG(POG)
4]
3(配列番号40):CBD複合体の三次元形状は、NMRによって導かれた複合体、すなわち、N末端(POG)
3(配列番号44)に結合したCBD又はC末端(POG)
3(配列番号44)に結合したCBDとよく重ね合わさる(
図9G及び9H)。
【0071】
CBD結合による
15N-ミニコラーゲンの小さな構造変化:これまでの研究は、CBDが、ねじれが不十分な領域に関してコラーゲン細繊維をスキャンすることを示唆している。あまり構造化されていない領域への結合によって、その結合は、コラーゲンを能動的に巻き戻さないだろうか?CBDによる能動的巻き戻しは、コラーゲン分解を容易にするであろう。[(POG)
10]
3(配列番号35)のN末端付近又はC末端付近を
15Nで選択的に標識された2つのコラーゲン性ペプチドを研究するために合成し(表4、ペプチドA、B)、
1H-
15N HSQC滴定を用いて、非標識CBDの結合による構造変化をモニターした。
【0072】
15N-Gly標識ペプチドは、
1H-
15N HSQCスペクトルにおいて、2つの異なるクロスピークを示した(
図10A及び10B)。これらのクロスピークは、以前のNMR研究において割り当てられた巻き戻されたモノマー及び3重らせん配座に対応する。Liu, et al.(1996) Biochemistry 35, 4306-4313 及びLi, et al. (1993) Biochemistry 32, 7377-7387。末端のトリプレットに近いGly残基は、HSQCスペクトルにおいてモノマーピーク及び三量体ピークの両方を示すが、3重らせんの中央部におけるGly残基は、強い三量体クロスピークを示す。もしCBDが結合によって3重らせんを曲げるか、又は何らかの巻き戻しを引き起こすのであれば、3重らせんに対応するクロスピークが、滴定過程においてラインブロードニングを起こすか又は消失し、一本鎖に対応するクロスピークが増強されると予想される。しかしながら、滴定の過程において、CBDは、コラーゲン性ペプチドの
1H-
15N HSQCスペクトルに何ら変化を誘発しなかった。従って、C末端(POG)
3(配列番号35)に結合するCBDは、3重らせんにほとんど構造変化を生じさせなかった。
【0073】
N末端又はC末端付近のいずれかで、
15N-Glyで選択的に標識されたねじれていないミニコラーゲン分子(表4C及びD)を非標識CBDで滴定した。HSQCスペクトル上でモノマー及び3重らせんに対応するクロスピークを同定した(
図10C及び10D)。非標識CBDの滴定によって、モノマー又は三量体クロスピークの強度にほとんど変化を生じなかった。部分的に巻き戻されたミニコラーゲンへの結合によってさえも、CBDは、なんらさらなる巻き戻しを開始しない。
【0074】
CBDは、3重らせんコラーゲンのねじれが不十分な部位に一方向性に結合する。CBDは、コラーゲン細繊維の解体に役立つことはできるが、3重らせんを巻き戻しはしない。トロポコラーゲンのねじれが不十分な領域の標的化によって、3重らせんの巻き戻しに必要なエネルギー障壁を回避することができる。CBDがドラッグデリバリー分子として用いられる場合、注入された分子は、主に椎間板のエンドプレート、脛骨及び腓骨の成長板に分布し、皮膚にも分布する。CBDは、リモデリングを受けており、従ってねじれが不十分な領域が豊富な、大部分の血液が到達しうるコラーゲンにそのペイロードを渡すことができる。
【0075】
実施例2
ColH及びColGコラーゲン結合ドメインの構造比較
コラゲナーゼのC末端コラーゲン結合ドメイン(CBD)は、不溶性コラーゲン細繊維への結合とその後のコラーゲン分解に必要である。ColG-CBD(s3b)及びColH-CBD(s3)の高分解能結晶構造において、配列同一性がわずか30%であるにもかかわらず、これらの分子は互いによく似ている(r.m.s.d. Cα = 1.5Å)。Ca
2+をキレートする6つの残基のうち、5つが保存されている。s3における二重のCa
2+結合部位は、機能的に同等なアスパラギン酸によって完結されている。s3bにおけるコラーゲン相互作用に最も重要な3つの残基は、s3において保存されている。結合ポケットの一般形状は、改変されたループ構造及び側鎖位置によって保持されている。X線小角散乱データによって、s3が、ミニコラーゲンに非対称に結合することもまた明らかにされた。カルシウム結合部位及びコラーゲン結合ポケット以外にも、cis-ペプチド結合の周りの構造的に重要な疎水性残基及び水素結合ネットワークは、メタロペプチダーゼサブファミリーM9Bにおいてよく保存されている。
【0076】
上記及びBauer et al. (2012) J Bacteriol November 9 (参照によりその全体が本願に組み込まれる)における共通の構造的特徴は、M9BサブファミリーにおけるCBDの配列のアラインメントをアップデートすることを我々に可能にした(
図1)。保存された残基は、4つの理由のうちの1つにとって重要である:カルシウムキレート化(赤色)、リンカーのシス−トランス異性化(黄色)、コラーゲン結合(青色)又はタンパク質フォールディング(緑色)。
図1は、図の上部に沿って、ストランド構造を示している。
【0077】
二重カルシウム結合部位は、N末端リンカー内の4つのキレート残基(Glu899、Glu901、Asn903及びAsp904)、β-ストランドCからの2つのキレート残基(Asp927及びAsp930)ならびに不変(invariant)のTyr1002水素結合及び配向Asp930によって形成される。このパラグラフに用いられる残基番号はs3bのものである。同様に、他の脇役、例えばGly921は、β-ストランドの中央部に保存され、Glu899の空間をあけるために戦略的に置かれている。二重カルシウムキレート化部位は、機能的に同等な残基によって変えられている場合もある。上記のように、s3のAsp897は、s3bのAsp927と等価に機能する。Asp897等価体は、B.ブレビス(B. brevis)のs3a及びs3b、C.ボツリナム(C. botulinum)のA3 s3aならびにC.ヒストリチクム(C. histolyticum)のColG s3aにおいて試験的に同定されている。三座配位及び二価のAsp及びGlu残基は、例外的に、C.ソルデリ(C. sordellii)s3aのみに保存されている。一座配位のAsp904残基は、Asnによって置換されている場合がある。これらの置換に関して、二重カルシウム部位の正味電荷は-1よりはむしろ中性である。
【0078】
s3b及びs3の両方に関して、holo状態で、残基901-902間のペプチドはシス立体配座を有する。他のCBD分子における位置902はPro、Asp又はAsnである。トランス-シス異性化を容易にするために、しばしば、Proがこのペプチド結合の後にくる。s3分子はProを有する。s3bにおいて、Asn902のODは、Asp904の主鎖Nと水素結合している。ペプチド異性化には水素結合は重要である。Spiriti and van der Vaart. (2010) Biochemistry 49:5314-5320(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。Aspをその位置に有するCBD分子の残りに関して、AspのODは、Asn902のODと同じ役割を果たすことができる。移行状態の安定化に重要な、シミュレーション研究によって同定された他の水素結合は、よく保存されている。s3及びs3bにおけるこれらのドナー‐アクセプター対を表で示す(表5)。カルシウムイオンは、すべてのCBD分子において異性化を触媒することができ、それらの移行状態及び触媒機構は、大変類似しているとみることができる。
表5:s3bにおけるトランス-シスペプチド異性化に重要な水素結合とそれらのs3におけるカウンターパート
【0079】
フォールディング又は構造的安定性のいずれかに重要な非機能性残基は保存されている。β-シート間にパッキングされている疎水性残基は、それらが機能的に重要な残基の近くに位置する場合、よりよく保存されている。例えば、ストランドEの不変のTrp956は、β-シート間にパッキングされている。隣接する残基(Thr955及びThr957)は、ミニコラーゲンと相互作用する。Tyr932は該シート間にパッキングされ、Tyr1002の位置決めに役立つ。タイトターン(tight turn)における残基もまた保存されている。Gly975はよく保存されており、s3bにおけるII型ターンを可能にする。s3におけるGly942(Gly975等価体)は、Asp941側鎖に逆ターンを安定化させることを可能にする。残基986と991の間の高度に保存された6つの残基ストレッチはタイトターンを採用し、昨日的に重要なストランドHの前にくる。この領域は、低い温度因子での結晶構造中に高秩序であり、NMRに基づいて最も揺らぎが小さく、MALDI-TOF MSでは、限定されたタンパク質分解が観察される(25)。Philominathan, et al. (2009) J Biol Chem 284:10868-10876 and Sides et al. J Am Soc Mass Spectrom. (2012) 23(3):505-19 (これらは共に、参照によりその全体が本願に組み込まれる)。主鎖カルボニル及びArg985のアミノ基は、Tyr989のOHと水素結合してターンを安定化させる。Gly987のみが、嵩高いTyr989側鎖の場所をあけることができる。Tyr990は、不変のAla909及び保存された3
10へリックスに対してパッキングされる。Ala909は、α-へリックス→β-ストランド変換を受けるリンカーの基部にある。タイトターンは、Leu992、Tyr994、及びTyr996と相互作用するコラーゲンが正確に配置されることを確実にすることができる。コラーゲン性ペプチドとの相互作用において、Tyr994は最も重要な残基である。Wilson, et al. (2003) EMBO J 22:1743-1752。ストランドHに隣接したストランド、すなわちストランドC及びEは、大変よく保存されている。3つの逆平行ストランドは、コラーゲン結合ポケットを形づくる。両方のシートと相互作用することによって、ストランドFはβ-シートをつなぎとめる。β-ストランドは、最初に逆平行方向でストランドEと相互作用し、次いでGly971でその方向を脱してストランドGと相互作用する。そのストランドがその忠誠を交代する位置において、Gly971の代わりにAla又はProがみられる。ストランドの二重相互作用は、ミニコラーゲンと相互作用するためのTyr970の位置決めに役立つ。
【0080】
ミニコラーゲンと強く相互作用することが示されている3つの残基は保存されている。不変のTyr994はよく保存されており、Tyr970及びTyr996は”ホットスポット”を構成する。Y994A変異は結合能を消失させた。Y994Fはミニコラーゲンに対する結合の12倍の減少をもたらしたため、Tyr994のヒドロキシル基は、水素結合を介してコラーゲンと相互作用することができる。ミニコラーゲンとの結合における重要な残基であるTyr996は、あまりよく保存されていない。Y996Aは、ミニコラーゲンに対する結合の40倍の減少を引き起こした。s3bにおけるY996は、s3におけるPheで置き換えられるが、両方の側鎖は同一の方向を有する。他のCBD分子において、芳香族残基、例えばPhe又はHisは、その部位に見られることがある。Y970Aは、ミニコラーゲンに対する結合の12倍の減少をもたらす。Thr957は、
15N-HSQC-NMR滴定によって、ミニコラーゲンと相互作用することが見出された。β-分枝鎖アミノ酸残基又はLeuは、CBDの大部分において、Thr957と等価な位置で見出される。ミニコラーゲンと相互作用することが
15N-HSQC-NMR滴定によって同定された他の6つの残基は、あまりよく保存されていない。互いに異なるCBD(s3及びs3b)が、同様のサドル型結合ポケットを採用していたため、他のCBDもまた、同様のコラーゲン結合戦略を採用している可能性がある。
【0081】
互いに異なるCBDは、異なるコラーゲン配列を標的とする可能性があり、恐らくは、異なるコラーゲンタイプを標的とする可能性があった。しかしながら、本構造研究は、それとは異なることを示唆している。むしろ、すべてのCBDドメインは、ねじれが不十分な領域、例えばコラーゲン細繊維のC末端に同様に結合することができる。X線繊維回折実験に基づいて、細繊維表面におけるI型コラーゲンのC末端が公表され、この部位が、細菌性コラゲナーゼが攻撃を開始するための最もアクセス可能な部位である。しかしながら、トロポコラーゲンのC末端領域においてだけは、CBD結合は見出されていない。I型コラーゲン細繊維に結合した金粒子で標識された金粒子標識タンデムColG-CBD(s3a-s3b)は、周期性を示さなかった。コラーゲン細繊維において、分子は、互いに約67nm離れて互い違いに配置されている。従ってCBDは、トロポコラーゲンの中央部における部分的にねじれが不十分な領域を標的にすることが可能であり、これらは攻撃に無防備でもある。
【0082】
s3bと同様に、s3は共にコンパクトであり、生理学的Ca
2+の存在下で極めて安定である。従って、酵素は、長期間細胞外マトリックスを分解することができる。構造変換を誘導するリンカーはM9Bコラゲナーゼにおいて見られる共通の特徴である。このリンカーは、酵素活性化の手段としてドメイン再編成を引き起こすCa
2+センサーとして機能することができる。細胞外マトリックスにおけるCa
2+濃度は、細菌の内部よりも高い。s3及びs3bは、共にミニコラーゲンに同様に結合する。従って、M9Bコラゲナーゼ分子は、種々のコラーゲン細繊維における類似した構造的特徴からコラーゲン分解を開始することができる。M9Bコラゲナーゼ由来の任意のCBDと増殖因子との融合タンパク質は、類似の臨床結果をもたらすであろう。
【0083】
実施例3
CBD-PTHアゴニストは発毛を刺激し、CBD-PTHアンタゴニストは発毛を抑制する
CBDが結合したPTH化合物のin vitro解析:各ペプチドのコラーゲン結合は、米国特許公開第2010/0129341号(参照によりその全体が本願に組み込まれる)に記載されているようにして、フロースルーコラーゲン結合アッセイで立証した。コラーゲン結合ドメインに直接的に結合したPTHの最初の33アミノ酸からなるPTH-CBD(配列番号1)は最も強力なアゴニストであり、cAMP集積に関してPTH(1-34)(配列番号7)の効果と同様な効果を示した。Ponnapakkam et al. (2011) Calcif 88:511-520. Epub 2011 Apr 2022。アンタゴニストの中で、PTH(7-33)-CBD(配列番号10)は、発毛研究に用いたものを含め、他のPTHアンタゴニストにおいて見られたものと同様な、低い固有の活性と高い受容体遮断の最良の組み合わせを有していた(図示せず)。Peters, et al. (2001) J Invest Dermatol 117:173-178。
【0084】
PTH-CBDのin-vivo分布:
35S標識したPTH-CBDを皮下注射によって投与し、次いで全組織標本を凍結し、全身オートラジオグラフィーを行って組織分布を評価した。PTH(1-33)とCBDの間にリン酸化部位を有するPTH-CBDを精製し、活性化し、前述のように[ガンマ-35]ATPで標識した。Tamai et al. (2003) Infect Immun. 71:5371-5375。7週齢マウス(32〜35g)におおよそ10.8mcgの
35S-PTH-CBD(122kcm/mcg)を皮下注射した。注射後、1時間又は12時間でマウスを屠殺し、次いでドライアイス-アセトンで凍結した。オートクライオトームで凍結切片(50μm)を作成し、-20℃で乾燥し、イメージプレートに4週間暴露した。注射部位周辺皮膚の広い領域に
35S-PTH-CBDの最初の分布がみられ、次いで、全動物の皮膚ならびにいくつかの他の組織(すなわち骨、腸、膀胱)への迅速な再分布がみられた(
図11)。このように、PTH-CBDは、皮下投与による分布及び皮膚への保持という所望の特性を示した。
【0085】
PTH-CBDは、マウスの化学療法誘発性脱毛症における脱毛を逆行させる:CBDが結合していないPTH化合物に関して、Petersらによって公表された実験計画を利用して、我々は、化学療法誘発性脱毛症において、CBDが結合したPTHアゴニストとアンタゴニストの有効性を比較した。Peters, et al. (2001) J Invest Dermatol 117:173-1781。C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、バーハーバー、メイン州)を除毛して毛包を同調させ、化学療法誘発性損傷を最大化するために、9日目にシクロホスファミド(CYP、150mg/kg)を投与した。化学療法の2日前にアゴニスト(PTH-CBD)及びアンタゴニスト(PTH(7-33)-CBD)を投与し、皮膚に化合物が長期に保持されている場合は、Petersらによる研究におけるPTHアゴニスト及びアンタゴニストの複数の注射のタイミングを相殺するために、我々は、単回量のみを投与した。CBDが結合した化合物の投与量(320mcg/kg)は、マウスに認容性が良好である。Ponnapakkam et al. (2011) Calcif 88:511-520. Epub 2011 Apr 2022。
【0086】
写真ドキュメンテーション記録の結果は、アゴニストであるPTH-CBDが、アンタゴニストよりも発毛の刺激にずっと有効であったことを示している(
図12)。組織学的検査は、ジストロフィー性成長期及び退行期の特徴である、より表面上に位置し、毛球の周りに凝集したメラノサイトを示すCYP療法後の毛包における形態学的変化を明らかにした(
図13)。アンタゴニストPTH(7-33)-CBDは有益な効果を示さなかったが、アゴニストPTH-CBDでの治療は、より深部の発毛及びメラノサイト凝集の低下をもたらし、従って、ジストロフィー性変化を逆行させた。高倍率視野(HPF)当たりの成長期VI毛包数を群間で比較した。PTH-CBDで治療した動物は、より高い毛包数を有し、化学療法を受けなかった動物の毛包数に近づいたが(
図14)、アンタゴニストPTH(7-33)-CBDは有益な効果を示さなかった。
【0087】
重要なことには、PTH-CBD投与による副作用による証拠が観察されなかった。PTH注射は血中カルシウムを上昇させることが知られ、腎結石を引き起こす恐れがあるが、PTH-CBDは、血清カルシウムに影響を示さなかった。さらに、身体上で過剰な毛髪の長さを示す証拠がなく、フルコートが通常は存在しない耳及び尾に過剰な発毛を示す根拠がなかった。臨床プロトコルをより密接に模倣する、脱毛なしの化学療法誘発性脱毛症のモデルにおいて、発毛に対するPTH-CBDの効果が確定された。
【0088】
化学療法誘発性脱毛症におけるPTH-CBDの効果の定量:化学療法誘発性脱毛症におけるPTH-CBDの種々の用量の効果を比較することによって、我々はこれらの研究を行った。これらの研究において、背部のより遠位に注射を行うことによって、発毛量を定量するためのグレースケール解析を行った。背部のより遠位に注射することによって、PTH-CBD治療後の毛髪再生を、マウスにおいては、通常頭から尾まで進行する通常の毛髪再生から干渉をより少なくして比較することが可能になる。結果を
図15に示す。この図は、毛髪再生に関する、定性的かつ定量的な、用量依存的効果を示している。
【0089】
除毛なしの化学療法誘発性脱毛症:化学療法誘発性脱毛症の除毛モデルは、薬効の比較のための均一なモデルを提供するが、除毛プロセスは毛包損傷を引き起こすことが知られ、PTH-CBD投与に対する動物の応答を変える可能性がある。従って、我々は、癌患者が治療を受ける通常の方法と同様に、3コースのシクロホスファミド療法(50mg/kg/wk)を動物に行う、化学療法誘発性脱毛症のもう1つのモデルにおいてPTH-CBDの効果を試験した。このモデルにおいて、脱毛症を発症するのにより多くの期間(4〜6ヶ月間)がかかる。
図16に示すように、第1サイクルの前にPTH-CBDの単回量(320mcg/kg皮下)を行った動物は脱毛を発症しなかった。
【0090】
次の研究において、我々は、化学療法の第1サイクル時に予防的に投与したPTH-CBDの効果と、脱毛を発症した後に治療的に投与したPTH-CBDの効果とを比較した。両例においてPTH-CBDは有効であったが、予防的に投与した場合に効果はより顕著であった。我々の用量反応研究に用いた同じグレースケール解析を用いれば、
図17において、このことは視覚的にも定量的にも明らかである。
【0091】
除毛脱毛症:アゴニストPTH-CBDは、成長期毛包数を増加させることによって発毛を増加させると考えられる。そのようなものとして、発毛効果が、化学療法モデルに限定されるべきであると信じる根拠はない。従って、我々は、ワキシングによってC57/BL6Jマウスから毛髪を除去した後、PTH-CBD及びアンタゴニスト化合物、PTH(7‐33)-CBDの両方を試験した(
図18)。結果は極めて興味深かった。アゴニスト(PTH-CBD)処置動物は、より早期の成長期の発生(ビヒクル対照9日目に対し7日目)を示し、試験の終わりまでには(18日目)、より完全な毛髪再生を示した。アンタゴニスト(PTH(7‐33)-CBD)処置動物もまた、より早期の成長期の発生を示したが、これに続く発毛は著しく減退し、この時点以後に毛周期は停止し、さらなる毛髪再生は観察されなかった。このように、アゴニスト治療は、成長期へのより迅速な移行を促進することによって、より迅速に毛髪再生を促進するように作用するのに対し、アンタゴニストは、この移行を遮断することによって毛髪再生を抑制すると考えられる。
【0092】
PTH-CBDは、副甲状腺ホルモン(PTH)の最初の33アミノ酸と細菌性コラーゲン結合ドメインとの融合タンパク質である。コラーゲン結合活性は、PTH-CBDが皮膚コラーゲンにおけるその作用部位に保持されるように作用し、有効性を最大化し、全身性副作用を低減する。PTH-CBDは、恐らく、WNTシグナル伝達を活性化し、βカテニン産生を増加させることによって、毛包を成長期VI又は成長期に誘導することによって発毛を刺激する。従って、我々は、この作用機構を確認し、WNTシグナル伝達が抑制された2つの異なる遺伝子マウスモデルにおいてPTH-CBDの効果を測定するための以下のさらなる研究を行うことを計画している。これらのデータは、脱毛症の治療としてのPTH-CBDの臨床試験の計画に利用されるであろう。
【0093】
円形脱毛症:円形脱毛症は、毛包の自己免疫破壊によるむらのある脱毛の疾患である。我々は、円形脱毛症の動物モデルである、移植したC3H/Hejマウスにおける、毛髪再生促進におけるPTH-CBDの有効性を試験した。このモデルにおいて、脱毛は、寿命の最初の2ヶ月間にわたって不定に発症する。
図19に、移植部位である、最大脱毛が存在する背部中央部に投与したPTH-CBD(320mcg/kg皮下)の単回投与の結果を示す。この部位において脱毛を続けたビヒクル対照動物と比較して、PTH-CBDを投与した動物は、次の1〜4日間以内に毛髪再生を示し始める。重要なことに、実験過程の2ヶ月間にこの応答が持続したことが観察された。
【0094】
実施例4
CBD-PTHは、副甲状腺機能亢進症を予防し治療することができる
本実験において、ラットは、3ヶ月齢において外科的に卵巣を切除した。9ヶ月齢において、ラットに、PTH-CBDの単回量(320mcg/kg)又はビヒクル対照のいずれかを注射した。治療6ヶ月後(15ヶ月齢)に動物を屠殺した。PTH-CBDの血清レベルを評価するためにヒトインタクトPTHレベルを測定し、両群において検出されないことが見出された。血清カルシウムを測定したが、両群間に差異はなかった(ビヒクル:13.5+/-1.1、PTH-CBD:14.3+/-1.1mg/dl、NS)。内因性PTH産生を評価するためにラットインタクトPTHレベルを測定した。PTH-CBDは、加齢卵巣切除ラットにおいて通常見られる内因性PTHレベルの増加を抑制した。これらの発見は、PTH-CBDの1回の注射によって、内因性PTH産生の長期抑制を提供することができ、卵巣切除したラットモデルにおいて加齢とともにみられる通常の増加を抑制し、従って副甲状腺機能亢進症の治療として役立つことができることを示している。