特表2015-513836(P2015-513836A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-513836音響変換器による再生のためのオーディオ信号を提供する装置、システム、方法及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-513836(P2015-513836A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(54)【発明の名称】音響変換器による再生のためのオーディオ信号を提供する装置、システム、方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20150417BHJP
   H04R 1/10 20060101ALN20150417BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   H04R1/10 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2014-558144(P2014-558144)
(86)(22)【出願日】2013年2月25日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2013053743
(87)【国際公開番号】WO2013124490
(87)【国際公開日】20130829
(31)【優先権主張番号】61/602,767
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100085497
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】レシュカ,フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】プロークスティース,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジルツレ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BB11
5D220AA50
5D220AB01
5D220DD01
5D220DD03
5D220DD05
(57)【要約】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置は、イコライゼーション・パラメータのセットを決定するイコライゼーション・パラメータ決定部と、入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るよう構成されたイコライザとを備える。イコライゼーション・パラメータのセットを決定する種々の概念は、画像認識と、オーディオ接続を介して音響変換器によって提供される識別信号の評価と、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定とを含む。更に、アップロード機能とダウンロード機能とが提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響変換器(130)による再生のためのオーディオ信号(112)を処理する装置(100)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(112)を決定するイコライゼーション・パラメータ決定部(110)と、
入力オーディオ信号(122)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(124)を得るよう構成されたイコライザ(120)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、画像認識を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部(110a)と、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセット(112)を選択するよう構成されたパラメータ選択部とを含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記音響変換器識別部(110a)は、音響変換器の画像又は前記音響変換器に取り付けられたラベルの画像を取得するよう構成され、更に前記画像に基づいて前記音響変換器を識別するよう構成されている、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、前記音響変換器識別部(110a)は、前記音響変換器を識別するために前記音響変換器上に配置された光学的バーコード又は多次元光学的コードを評価するよう構成されている、装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットをサーバーからダウンロードするか、又は、内部データベースに含まれている1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットを使用するよう構成されている、装置。
【請求項5】
音響変換器(230)による再生のためのオーディオ信号(222)を処理する装置(200)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(212)を決定するイコライゼーション・パラメータ決定部(210)と、
入力オーディオ信号(222)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(224)を得るよう構成されたイコライザ(220)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、オーディオ接続を介して前記音響変換器によって提供される識別信号(214)を使用して音響変換器(230)を識別するよう構成された音響変換器識別部(210a)と、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセット(212)を選択するよう構成されたパラメータ選択部とを含む、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記音響変換器識別部(210a)は、前記音響変換器(230)によって提供されかつオーディオ信号接続上にオーバーレイされた非可聴の識別信号(214)を使用して、音響変換器を識別するよう構成されている、装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の装置において、前記音響変換器識別部(210a)は、可聴周波数範囲の外側にある周波数範囲において前記音響変換器によって提供される識別信号(214)に基づいて音響変換器を識別するよう構成されている、装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の装置において、前記音響変換器識別部(210a)は、前記音響変換器により提供される拡散スペクトル識別信号(214)に基づいて、音響変換器(230)を識別するよう構成されている、装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の装置において、前記装置は、1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットをサーバーからダウンロードするよう構成されており、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部(210)は、イコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のダウンロードされたセットに基づいて、現在使用されている音響変換器(230)のためのイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されるか、又は、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部(210)は、内部データベースに含まれたイコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のセットに基づいて、現在使用されている音響変換器(230)のためのイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成される、装置。
【請求項10】
音響変換器(330)による再生のためのオーディオ信号(322)を処理する装置(300)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(312)を決定するイコライゼーション・パラメータ決定部(310)と、
入力オーディオ信号(322)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(324)を得るよう構成されたイコライザ(320)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、周波数に亘る前記音響変換器(330)のインピーダンスの測定値を使用して、イコライゼーション・パラメータのセットを取得するよう構成されている、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して前記音響変換器を識別する音響変換器識別部と、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するパラメータ選択部とを含む、装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る前記音響変換器(330)の測定されたインピーダンスを周波数に亘る複数の参照インピーダンス曲線と比較するよう構成され、更に前記比較の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されている、装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る前記音響変換器(330)の測定されたインピーダンスと周波数に亘る参照インピーダンス曲線との差の尺度を決定するよう構成され、更に前記差の尺度に依存してイコライゼーション・パラメータのセット(312)を選択するよう構成されている、装置。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る参照インピーダンス曲線とイコライゼーション・パラメータの関連するセットとの間の関連付けを含むデータベースにアクセスするよう構成されている、装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、複数の参照音響変換器と関連するイコライゼーション・パラメータを結合して前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を得るよう構成され、前記参照音響変換器の周波数に亘る参照インピーダンス曲線が周波数に亘る前記音響変換器(330)の測定されたインピーダンスと少なくとも1つの特異的な特性において少なくとも類似性を有する、装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(210)は、周波数に亘る参照インピーダンス曲線の1つ又は複数の特異的な特性についての情報を取得し、前記音響変換器(330)の周波数に亘る測定されたインピーダンスと共通する少なくとも1つの特異的な特徴を有する複数の参照インピーダンス曲線を識別し、更にそれら識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータの結合を使用して前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を提供するよう構成されている、装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る異なる参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータの複数のセットの適合する特徴を結合して、前記音響変換器(330)の周波数に亘る前記測定されたインピーダンスに関連する前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を取得するよう構成されている、装置。
【請求項18】
請求項10乃至17のいずれか1項に記載の装置において、前記周波数に亘る参照インピーダンス曲線は、参照音響変換器を使用した事前のインピーダンス測定に基づいており、前記参照音響変換器と関連する前記イコライゼーション・パラメータのセットは、前記参照音響変換器を使用した事前の周波数応答測定に基づく事前計算に基づいている、装置。
【請求項19】
請求項10乃至18のいずれか1項に記載の装置において、前記オーディオ信号を処理する装置は、周波数に亘る前記音響変換器(330)のインピーダンスの測定の結果をインピーダンス測定装置から取得するよう構成されており、前記インピーダンス測定装置は、ある音響変換器接続において、異なる周波数についての電圧と電流との間の比を決定するよう構成されている、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、前記インピーダンス測定装置は、周波数に亘る前記音響変換器(330)の複素値インピーダンスを決定するよう構成されている、装置。
【請求項21】
音響変換器(530)による再生のためのオーディオ信号(522)を処理する装置(500)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(512)を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部(510)と、
入力オーディオ信号(522)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(524)を得るよう構成されたイコライザ(520)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に依存して前記イコライゼーション・パラメータをセットするよう構成され、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、前記イコライゼーション・パラメータのセット(512)と前記音響変換器(530)についての情報とを、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能であるグローバル・イコライゼーション・データベースへとアップロードするよう構成されている、装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部(110a;210a)と、前記音響変換器の識別に基づいてイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されたパラメータ選択部(110b;210b)とを更に含み、
前記装置は、前記グローバル・イコライゼーション・データベースからイコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のセットをダウンロードするよう構成されており、
前記音響変換器識別部は、イコライゼーション・パラメータの前記1つ又は複数のダウンロードされたセットを考慮対象とするよう構成されている、装置。
【請求項23】
グローバル・イコライゼーション・データベース(610)と、
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の音響変換器(650)による再生のためのオーディオ信号を処理する装置(630)と、を含むシステム(600)。
【請求項24】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップは、画像認識を使用して音響変換器を識別するサブステップと、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するサブステップとを含む、方法。
【請求項25】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップは、オーディオ接続を介して前記音響変換器によって提供される識別信号を使用して音響変換器を識別するサブステップと、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するサブステップとを含む、方法。
【請求項26】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータのセットは、前記音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して取得される、方法。
【請求項27】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータは、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に依存してセットされ、
前記イコライゼーション・パラメータのセットと前記音響変換器についての情報とが、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能であるグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースへとアップロードされる、方法。
【請求項28】
コンピュータで実行されたとき、請求項24乃至27のいずれか1項に記載の方法を実行するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の幾つかの実施形態は、音響変換器(sound transducer)による再生のためのオーディオ信号を処理する装置に関する。幾つかの実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置を含むシステムに関する。幾つかの実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法に関する。幾つかの実施形態は、コンピュータプログラムに関する。
【0002】
本発明のある実施形態は、ダウンロード可能なヘッドホン・イコライゼーションに関する。
【背景技術】
【0003】
例えばヘッドホン又はラウドスピーカなどの音響変換器は、リスナーにオーディオ信号を表現するために広く使用されている。幾つかの場合には、音響変換器は、その音響変換器によって表現されるべきオーディオ信号を提供している装置と共に販売されている。しかしながら、多くの場合、音響変換器は消費者によって装置とは別に購入されており、その結果、オーディオ品質の低下を招くことが多い。
【0004】
以下に、音響変換器の可能性のある一例であるヘッドホンに関し、幾つかの問題を挙げる。
【0005】
最初にヘッドホンの一般的な特徴について幾つか説明する。消費者用およびプロ用のオーディオにおいて使用されるヘッドホンには異なるタイプが存在する。即ち、挿入イヤホン(管腔内型)、イヤバッド(イントラコンカ型)、オン・イヤ(耳載せ型)及びオーバー・ザ・イヤ(耳覆い型)などである。移動通信において、ヘッドホンはハンズフリーの音声電話を行うために1つのデバイス内でマイクロホンと結合している場合が多い。単純化するために、これらの「ヘッドセット」もまた本願明細書においてはヘッドホン(又は音響変換器)と呼ぶことにする。
【0006】
ヘッドホンは様々な技術と材料を使用して製造される。それらの多様性が異なる音響特性をもたらす。これは主に、異なるヘッドホンによって生成される周波数応答には違いがあることに起因する(異なるヘッドホンの周波数応答のグラフを示す図8と非特許文献1とを参照)。例えば図8に示すグラフ800において、横軸810は周波数(ヘルツの単位)を対数関数的方法で示す。縦軸820はデシベル単位のレベル(又は相対レベル)を対数関数的方法で示す。グラフから分かるように、曲線830は国際標準ISO−11904−1に従う所謂「拡散フィールド」の周波数応答を示す。第2曲線832は「高品質」のヘッドホンの周波数応答を示す。第3曲線834は「低コスト」のヘッドホンの周波数応答を示す。グラフから分かるように、「高品質」のヘッドホンは「低コスト」のヘッドホンの周波数応答と比較して「拡散フィールド」の周波数応答を良好に近似する周波数応答を含む。
【0007】
更に、ヘッドホンの周波数応答は、その知覚される品質の重要な要素であることに注目すべきである(例えば非特許文献2を参照)。
【0008】
理想的には、ヘッドホンが、定義されたある目標曲線、例えば所謂「拡散フィールド・イコライゼーション」に沿った周波数応答を提供できることが望ましい。詳細については例えば非特許文献3を参照されたい。多くの場合、理想的な周波数応答からかなり外れた周波数応答を有するヘッドホンは劣悪なオーディオ品質を持つと判断される。
【0009】
ヘッドホンの周波数応答は、所定のカプラー(例えば非特許文献4を参照)についての測定によって識別され得る。周波数応答は、特定レベルの電圧がヘッドホンに対して供給されたときに耳の管腔内でどれだけ大きな音圧が生成されるかを示すものである。音圧のレベルは周波数依存である。
【0010】
これらヘッドホンの周波数応答を測定することは相当に困難である。多くの場合、耳のシミュレータ又は音響カプラーと特別なオーディオ測定用ハードウエアとソフトウエアとを備えたダミーの頭部と、適切なノウハウとが適切な結果を得るために必須となる。従って、ヘッドホンの周波数応答の測定はプロによって行われるべきであり、消費者やエンドユーザーによって行われるべきではない。
【0011】
以下にヘッドホン用のフィルタについて説明する。
【0012】
ヘッドホンのオーディオ品質は有意に改善できる。従って、後にヘッドホンへと供給される信号を前処理(例えば「イコライズ」)することが推奨される。これは例えば、取り付けられたヘッドホンの周波数応答に適合するフィルタによって実行され得る(この場合、フィルタリングは「イコライジング」と称することもできる)。詳細については、非特許文献5を参照されたい。これらのフィルタは例えば不完全な周波数応答を補償するよう設計することもでき、これは(ヘッドホンの)イコライゼーションと呼ばれている。このようにしてヘッドホンのオーディオ品質を向上させることができる。
【0013】
現状では、ヘッドホンは略全ての消費者用メディアデバイス、例えばテレビ機器、ゲームコンソール、AV受信機、個人向け音楽プレーヤ、スマートホンなどに対して取り付け可能である。そのようなデバイスにおいて、フィルタはアナログ又はデジタルの形式で構成され得る。
【0014】
幾つかの場合において、ヘッドホンはデバイスと一緒に販売されている。しかし、標準化されたインターフェースによりいずれのヘッドホンもいずれのデバイスに対しても取付け可能である。しかしながら、このような互換性は、デバイスとヘッドホンとの間の整合性が低いという代償の上にもたらされることが多い。
【0015】
ヘッドホンの製造者の中には、フィルタを選択するためにデバイスに取り付けられたヘッドホンを識別しようと試みる者もある。例えば、この識別はBluetooth(登録商標)を介したデジタル接続については可能である。代替的に、RFIDを使用してヘッドホンを識別することもできる(例えば特許文献1を参照)。
【0016】
ヘッドホンジャックを介したアナログ接続について、ヘッドホンのインピーダンスを測定することは可能である。これはヘッドホン増幅器のパワー制御のために実行される(例えば特許文献2を参照)。しかしながら、そのような単純な手段によってヘッドホンの識別を行うことはこれまで不可能であった。
【0017】
以下に、ヘッドホン用のサウンドエンハンスメントについての異なる概念を説明する。
【0018】
品質を強化するためのオーディオ信号処理は、サウンドエンハンスメント、イコライザ、バーチャライザなどと呼ばれる多くのアプリケーションにおいて実行されている。アルゴリズムのうちの幾つかは、ヘッドホンを用いたリスニングの特定の状況を考慮に入れている。それらは、例えばバスブースト又は3D効果のようなヘッドホン効果を提供する。一例として、ヘッドホン用の所謂「ライフバイブズ(Life Vibes)」サウンドエンハンスメントのスクリーンショットを示す図9を参照されたい。しかしながら、これらの概念は特定のヘッドホンモデルについての情報を考慮してはいない。
【0019】
幾つかのマルチメディアプレーヤは、周波数応答を手動で制御するためにイコライザ(典型的には3〜10帯域)の利得をセットする選択肢を備えている。例えば図10を参照されたい。この図は、「ウィンアンプ(Winamp)」メディアプレーヤ内の10帯域イコライザのスクリーンショットを示す。しかし、周波数解像度は高品質のイコライゼーションには十分でなく、セットされるべきフィルタパラメータはユーザーに知られていない。
【0020】
プロ用のオーディオ処理デバイスのための1つのアプリケーションは、10個のプロ用ヘッドホンモデルからなる所定のセットの選択を許可している(詳細については非特許文献6を参照)。更にまた、図11も参照されたい。この図は、ヘッドホンの選択を有する所謂「エンゲージ」アルゴリズムのスクリーンショットを示す。しかし、ヘッドホンフィルタの選択は限られている。更に、ヘッドホン・イコライゼーションはバイノーラル化を伴う場合にのみ適用可能である。
【0021】
以下に、ヘッドホンの自動的な検出とイコライジングについて簡単に説明する。スマートホンのHTC Sensation XLは、Beats Audioのヘッドホンと一緒に出荷されている(詳細については非特許文献7を参照)。このスマートホンはこれらのヘッドホンを自動的に認識して、「完全な音響経験」を約束するイコライゼーションフィルタを適用する。
【0022】
以下に、オーディオスピーカのためのイコライゼーション/補正フィルタのシステムについて簡単に説明する。それらのイコライゼーション/補正フィルタは、特にラウドスピーカのために設計されている。例えば、ドイツ国のスピーカ製造業者であるヌベルト(Nubert)は、彼らのラウドスピーカのためのそのようなデバイスを開発した。詳細については、例えば図12を参照されたい。この図は所謂「ヌベルト・アクティブ・チューニング・モジュール(ATM)デバイス」の一部を示している。更なる詳細については、非特許文献8を参照されたい。
【0023】
フィルタシステムはハードウエア・ベースであり、アナログ信号に対して操作する。それは前増幅器(又は、代替的に例えばCDプレーヤのような再生デバイス)とパワー増幅器との間に接続されなければならない。焦点は主として低いカットオフ周波数を拡張することに当てられている。例えば図13は、低い周波数がヌベルトATMによってどのように拡張されるかを示している。このシステムは、ラウドスピーカの唯一の特定のタイプにしか適合しない。他のタイプのラウドスピーカに対してこのデバイスを適合させる方法は存在しない。異なるラウドスピーカに対しては、異なるATMデバイスを購入/接続する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】[6] US Patent US 2009/0095804 A1
【特許文献2】[7] US Patent number: 8014539, “Method and apparatus to control output power of a digital power amplifier ...", Young-suk Song et al US Patent US 2009/0095804 A1
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】[1]Moller, H.; Jensen, C.; Hammershoi, D. & Sorensen, M. Design Criteria for Headphones J. Audio Eng. Soc, 1995, 43, 218-232
【非特許文献2】[2]Lorho, Gaetan: Subjective Evaluation of Headphone Target Frequency Respon-es. In: Audio Engineering Society Convention 126 # 7770. Munich, Germany, May 2009
【非特許文献3】[3]Bestimmung der Schallimmission von ohrnahen Schallquellen Teil 1: Verfahren mit Mikrofonen in menschlichen Ohren (MIRE-Verfahren), DIN EN ISO 11904-1, Deutsches Institut fur Normung e.V., February 2003
【非特許文献4】[4]Akustik - Simulatoren des menschlichen Kopfes und Ohres - Teil 1: Ohrsimulator zur Kalibrierung von supra-auralen und circumauralen Kopfhorern (IEC 60318-1:2009); Deutsche Fassung EN 60318-1:2009, Deutsches Institut fur Normung e.V., July 2010
【非特許文献5】[5]Fleischmann, Silzle, Plogsties: Headphone Equalization _ Measurement, Design and Psychoacoustic Evaluation, Microelectronic Systems, Springer Verlag 2011, Pages 301-312
【非特許文献6】[8]TC Electronic System 6000; Engage algorithm; http://www.tcelectronic.com/media/Sys6_MKII_algorithms.pdf
【非特許文献7】[9]HTC Sensation, http://www.htc.com/de/smartphones/htc-sensation-xl/#overview
【非特許文献8】[10]Nubert ATM, http://www.nubert.de/index.php? id=111
【非特許文献9】[11]Windows(登録商標)Platform Design Notes - Analog Audio Classification Using Device Impedance Characteristics, Version 1.0 _ April 16, 2002
【非特許文献10】[12]http://www.nxp.com/products/amplifiers/audio_amplifiers/amplifiers_for_portable_devices/TFA9887UK.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
これまでの記述を要約すると、多様に異なる音響変換器(例えば多種多様なヘッドホンタイプ)にとって有効で、音響変換器により生成される音響のオーディオ品質の改善を可能にする概念を得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に従う一実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置を作成する。この装置は、イコライゼーション・パラメータのセットを決定するイコライゼーション・パラメータ決定部と、入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るよう構成されたイコライザとを備える。イコライゼーション・パラメータ決定部は、画像認識を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部と、その音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されたパラメータ選択部とを含む。
【0028】
本発明のこの実施形態は、次のような知見に基づいている。即ち、音響変換器(例えばヘッドホン)の自動的な識別は、イコライゼーション・パラメータの適切なセットの選択を有意に促進することになり、更に、音響変換器の自動的な識別は多くの現代的デバイス、例えばコンピュータ、スマートホン及び他の多くの通信デバイス及びマルチメディアデバイスにおいて既に利用可能な画像認識能力を使用して、多くの現代的デバイスにおいて効果的に実行され得るという知見である。従って、ユーザーは長いリストから手動で音響変換器のタイプを選択する必要がない。更に、画像認識は、典型的なユーザーが手動ですすんで入力しようとするデータよりも遥かに詳細なデータを提供するために使用され得る。そのため、画像認識に基づく音響変換器の識別と、その音響変換器の識別結果に依存するイコライゼーション・パラメータの選択とによって、イコライゼーション・パラメータのセットのユーザーフレンドリーな調整が可能になり、同時に、そのイコライゼーション・パラメータのその選択されたセットを使用して良好な品質のイコライゼーションが可能になり、結果として、良好なオーディオ品質とユーザーの満足度とがもたらされる。
【0029】
好ましい一実施形態において、音響変換器識別部は、音響変換器の画像又はその音響変換器に関連付けられた(例えば音響変換器に取り付けられた)ラベルの画像を取得し、その画像に基づいて音響変換器を識別するよう構成される。そのため、様々な画像認識技術が可能であり、その場合、音響変換器は(形状、色など)それらの特定の外観により及び/又はその音響変換器に関連付けられたラベルに基づいて認識される。
【0030】
好ましい実施形態において、音響変換器識別部は、音響変換器を識別する目的で音響変換器上に配置された(例えば2次元コード、QRコード(登録商標)などの)光学的バーコード又は多次元光学的コードを評価するよう構成されている。光学的バーコード又は多次元光学的バーコードの使用により、手間が掛からず良好な信頼性を有する認識が可能となるよう設計された標準化済みの情報フォーマットの使用が可能となる。更に、光学的バーコード又は多次元光学的バーコードは、比較的大量の情報を伝達するよう設計されることができ、その情報は数字やアルファベットなどでよい。要約すると、光学的バーコード又は多次元光学的バーコードに基づいて音響変換器を識別することにより、標準の画像認識方法を使用しながら音響変換器を高い信頼性を持って識別することが可能になる。
【0031】
ある好ましい実施形態において、本発明の装置は、1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットをサーバーからダウンロードするよう構成されている。これにより、サポートされた音響変換器の数の連続的な拡張が可能になり、その装置自身の中に膨大なデータベースを持つ必要がなくなる。
【0032】
本発明に従う他の実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する他の装置を作成する。この装置は、イコライゼーション・パラメータのセットを決定するイコライゼーション・パラメータ決定部と、入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るよう構成されたイコライザとを備える。イコライゼーション・パラメータ決定部は、オーディオ接続を介して音響変換器によって提供される識別信号を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部と、その音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されたパラメータ選択部とを含む。
【0033】
この実施形態は、以下のような知見に基づいている。即ち、音響変換器の識別のために使用され、かつ結果的にはイコライゼーション・パラメータのセットの選択のために使用される識別信号がオーディオ接続を介して伝送される場合には、音響変換器が手間を掛けずに識別され得るという知見である。そのような識別信号の通信のためにオーディオ接続を再使用することで、音響変換器の識別に係る技術的労力は合理的な低さに維持され得る。例えば、この装置を使えば、いかなる光学的画像手段も持つ必要がない。更に、オーディオ接続を介して識別信号を通信することで、音響変換器の識別のために追加的な接続(例えば追加的なライン、又は追加的な無線周波数リンクなど)が何も必要でなくなる。従って、この概念は、比較的小さなハードウエアの労力によって使用可能となる。
【0034】
好ましい一実施形態において、音響変換器識別部は、音響変換器によって提供されかつオーディオ信号接続上にオーバーレイされた非可聴の識別信号を使用して音響変換器を識別するよう構成されている。そのような概念を使用することで、単一の電気的接続がオーディオ信号の伝送と識別信号の伝送との両方のために使用され得る。換言すれば、単一のライン又は一対のラインがオーディオコンテンツの伝送と識別信号の伝送との両方に対して共用されることができ、その結果、ラインの数及び/又はコネクタのピンの数を可能な限り少数に維持できる。これにより、不要な経費を防止でき、またサイズの削減も可能になる。
【0035】
好ましい一実施形態において、音響変換器識別部は、可聴周波数範囲の外側にある周波数範囲において音響変換器によって提供される識別信号に基づいて、音響変換器を識別するよう構成されている。識別信号のために(例えば約20kHzを超える周波数のような)非可聴の周波数範囲を使用することで、識別信号の存在によってオーディオ品質が劣化しないということが殆ど労力を掛けずに確保できる。
【0036】
好ましい一実施形態において、音響変換器識別部は、音響変換器により提供される拡散スペクトル識別信号(spread spectrum identification signal)に基づいて、音響変換器を識別するよう構成されている。拡散スペクトル識別信号を使用することで、ユーザーに対して識別信号が実質的に非可聴となり、結果的にユーザーの満足度を低下させることがない。
【0037】
好ましい一実施形態において、本発明の装置は、1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットをサーバーからダウンロードするよう構成されている。この場合、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器の識別に応じてイコライゼーション・パラメータのダウンロードされた1つ又は複数のセットのうちの1つを選択するよう構成されている。サーバーからイコライゼーション・パラメータのセットをダウンロードすることで、本発明のシステムは通常、多数の異なる音響変換器に対して適応可能となり、同時に、本発明の装置内のオーディオ信号を処理するためのメモリ要件を合理的に小さく維持することができる。更に、音響変換器の新たなモデルも柔軟に追加できる。
【0038】
本発明に従う別の実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する別の装置を作成する。この装置は、イコライゼーション・パラメータのセットを決定するイコライゼーション・パラメータ決定部と、入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るよう構成されたイコライザとを備える。イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用してイコライゼーション・パラメータのセットを取得するよう構成されている。
【0039】
本発明に係るこの実施形態は、次のような知見に基づいている。即ち、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスは、音響変換器の特徴的な特性であって、典型的にはイコライゼーション・パラメータの適切なセッティングを可能にする特性であるという知見である。音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して、音響変換器を特異的に識別できる場合が幾つもある。なぜなら、周波数に亘るインピーダンスの変化は音響変換器の特定の設計に強く関連しており、その音響変換器の「指紋」と考えることもできるからである。更に、たとえ(例えば類似の音響変換器が多数存在する場合や製造許容誤差または測定許容誤差が存在する場合などのように)音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して音響変換器を特異的に識別することが不可能な場合でも、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値からイコライゼーション・パラメータの適切なセットを導出することはまだ可能である。なぜなら、音響変換器のインピーダンスは、音響変換器の特定の設計と相互に関連している(即ち適切なイコライゼーション・パラメータとも相互に関連している)からである。換言すれば、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定は典型的には適度の回路上の労作で可能であるが、特定の音響変換器が特異的に識別可能か否かは別として、イコライゼーション・パラメータの適切な選択のための非常に良好な基準を提供することが分かってきた。更に、この概念を使用すれば、音響変換器が識別のために特別に適応される必要もない。なぜなら、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスは各音響変換器の固有の特性だからである。
【0040】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して音響変換器を識別し、かつその音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成された音響変換器識別部を含む。この実施形態は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値に基づいて音響変換器を(特異的に)識別することが可能な場合が多いという考察に基づいている。この場合、その識別の結果に基づいて(例えばデータベース内に記憶されている)イコライゼーション・パラメータのセットを選択することが効果的な解決策となる。
【0041】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器の周波数に亘る(即ち、例えば複数の周波数値についての)測定されたインピーダンスを周波数に亘る複数の参照インピーダンス曲線と比較するよう構成され、各参照インピーダンス曲線は例えば複数の異なる周波数に関連する複数のインピーダンス値によってそれぞれ表現され、参照音響変換器と関連付けられており、データベース内に記憶されていてもよく、更にイコライゼーション・パラメータ決定部は、その比較の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されている。実際に使用される音響変換器の周波数に亘る測定されたインピーダンスと、周波数に亘る複数の参照インピーダンス曲線との比較は、参照音響変換器の製造者または任意の他者によって事前に測定されていてもよいが、音響変換器を識別するための簡素でかつ信頼性の高い手法であることが分かってきた。
【0042】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、周波数に亘る(実際に使用された)音響変換器の測定されたインピーダンスと、周波数に亘る(参照音響変換器の)参照インピーダンス曲線との差の尺度(例えば平均二乗差など)を決定するよう構成され、更に、その差の尺度に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されている。音響変換器の周波数に亘る測定されたインピーダンスと、周波数に亘る複数の参照インピーダンス曲線との比較は、適度の演算量で決定できる。例えば、たとえインピーダンスが複素値で記述されている場合でも、実際に使用された音響変換器の測定された複素インピーダンス値と、事前に測定された複素参照インピーダンス値との間の差(差の値)は計算可能である。これらの差の値は、例えば重み付けされて、例えば単一の数値(「差の尺度」)として、周波数に亘る実際に使用された音響変換器の測定されたインピーダンスと、事前に測定された参照インピーダンス曲線と、の差を記述するノルムを形成してもよい。しかしながら、差の尺度を決定する他の概念も当然ながら適用可能である。その場合、インピーダンスの大きさにおける差と、インピーダンスの位相における差とは、異なるように重み付けされてもよい。しかしながら、実際に使用された音響変換器の周波数に亘る測定されたインピーダンスと、周波数に亘る参照インピーダンスとの間の差の尺度を決定することで、その差の尺度を決定するために使用された規則又はノルムに関し、周波数に亘るどの参照インピーダンス曲線が実際に使用された音響変換器の周波数に亘る測定されたインピーダンスに対して「最も類似している」か、を決定することができる。従って、周波数に亘る参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータのセットであって、実際に使用された音響変換器の周波数に亘る測定されたインピーダンスに「最も類似している」セットを(例えばデータベースから)選択することが容易に可能となる。
【0043】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、周波数に亘る参照インピーダンス曲線とイコライゼーション・パラメータの関連するセットとの間の関連付けを含むデータベースにアクセスするよう構成されている。従って、周波数に亘る参照インピーダンス曲線を効率的に管理することが可能である。また、データベースにエントリを追加することで、周波数に亘る参照インピーダンス曲線のセットを更新することも可能である。更に、オーディオ信号を処理するために装置内にローカルに記憶されてもよく、サーバー上に遠隔的に記憶されてもよく、又はオーディオ信号を処理するためにサーバーから装置へと部分的にダウンロードされてもよい、データベースを使用することは、最大限の柔軟性を達成する助けとなる。
【0044】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、複数の参照音響変換器と関連するイコライゼーション・パラメータであって、それら参照音響変換器の周波数に亘る参照インピーダンス曲線が、少なくとも1つの特異的特性(又は等化的に特徴的特性)において、周波数に亘る(実際に使用された)音響変換器の測定されたインピーダンスと類似性を(又は、特別な場合には同一性をも)有するイコライゼーション・パラメータを結合させて、(実際に使用された音響変換器のための)イコライゼーション・パラメータのセットを得るよう構成されている。この概念は、実際に使用された音響変換器のために利用可能なイコライゼーション・パラメータのセットがない場合に、特に有利である。しかしながら、周波数に亘る類似のインピーダンス曲線を有する「類似の」音響変換器のイコライゼーション・パラメータは、互いに典型的に類似していることが分かってきた。例えば、ある特定の周波数範囲において類似のインピーダンス曲線を有する音響変換器は、典型的に少なくともその特定の周波数範囲について、同一(又は類似)のイコライゼーション・パラメータを使用して良好な音響品質で操作し得ることが分かってきた。しかしながら、インピーダンス曲線の異なる「全体的特徴」もまた識別されてもよく、更に、音響変換器の(幅広い周波数範囲に亘る)「全体的インピーダンス曲線」においてそのような類似性を有する音響変換器のイコライゼーション・パラメータは、典型的に類似のイコライゼーション・パラメータを使用してもよい。換言すれば、音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと共通する少なくとも1つの特異的特性を有する(又は少なくとも1つの特異的特性において十分な類似性を有する)複数の参照インピーダンス曲線が識別された場合には、それらの識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータが結合されてもよく、この結合の結果(即ち組合せによって得られたイコライゼーション・パラメータのセット)は、典型的に実際に使用される音響変換器と共に用いた場合でも合理的に良好な結果をもたらすであろう。例えば、多数の特異的特性(例えば低い周波数インピーダンス特性、高い周波数インピーダンス特性、共振周波数、又は周波数に亘る測定されたインピーダンスの任意の他の特性)が評価されてもよく、更に、考慮対象となる各特徴的な特性について、その考慮対象となる特徴的な特性を最良に近似する参照インピーダンス曲線が識別されてもよい。次に、(測定されたインピーダンス曲線と共通する1つ又は複数の特異的特性を持つ)識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータ(又はイコライゼーション・パラメータのセット)同士が結合される。この結合は、例えば重み付き結合を含んでもよく、その重みがプリセットされていてもよい。更に、識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータ同士はまた、以下のように結合されてもよい。即ち、識別された参照曲線同士の差に関連するイコライゼーション・パラメータは、周波数にわたって相互に異なるように重み付けされて、その結果、例えば第1の識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータが第1周波数領域において第2周波数領域よりも強く重み付けされ、他方、第2の識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータが第2周波数領域において第1周波数領域よりも強く重み付けされてもよい。このように、複数の異なる識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータを結合する概念は、イコライゼーション・パラメータのセットを提供することを可能にし、そのセットは、たとえ参照インピーダンス曲線のどれもが周波数に対して測定されたインピーダンスに完全に合致しない場合でも、周波数に亘る実際に使用された音響変換器の測定されたインピーダンスに対して良好に適応される。
【0045】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、周波数に亘る異なる参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータの複数のセットの適合する特徴(fitting features)(例えばフィルタ設定又はフィルタ係数など)を組み合わせて、音響変換器の測定されたインピーダンスに関連するイコライゼーション・パラメータの上述のセットを得るよう構成される。
【0046】
好ましい一実施形態において、周波数に亘る参照インピーダンス曲線は参照音響変換器を使用した事前のインピーダンス測定に基づいている。この場合、イコライゼーション・パラメータのセットは、好ましくは参照音響変換器を使用した事前の周波数応答測定に基づく事前計算に基づいている。つまり、「未知の」(現時点で使用されている)音響変換器のためのイコライゼーション・パラメータのセットを、信頼性の高い方法(例えば製造者側又は何らかのオーディオスペシャリスト側)で取得されていた参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータの結合により取得することが可能である。そのような方法で良好な結果を得ることができる。
【0047】
好ましい一実施形態において、オーディオ信号を処理する装置は、周波数に亘る(実際に使用されている)音響変換器のインピーダンスの測定結果をインピーダンス測定装置から受信するよう構成されており、そのインピーダンス測定装置は、ある音響変換器接続(又は等価的に信号を音響変換器へと供給している増幅器のある点)において種々の周波数について電圧と電流との間の比を決定するよう構成されている。これにより、オーディオ信号を処理する装置は電圧についての情報と電流についての情報とに基づいてインピーダンスを計算できる。
【0048】
好ましい一実施形態において、インピーダンス測定装置は、音響変換器の周波数に亘る複素値インピーダンスを例えば直交座標表現又は極座標表現において決定するよう構成されている。これにより、(実際に使用されている)音響変換器のインピーダンスの振幅と位相との両方が考慮対象となり得る。
【0049】
本発明に係る他の実施形態は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置を創造する。この装置は、イコライゼーション・パラメータのセットを決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部と、入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るよう構成されたイコライザとを含む。イコライゼーション・パラメータ決定部は、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に依存してイコライゼーション・パラメータをセットするよう構成されている。イコライゼーション・パラメータ決定部はまた、イコライゼーション・パラメータのセットと音響変換器についての情報をグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースへとアップロードするよう構成されており、そのデータベースは多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能である。従って、他のユーザーと「良好な」イコライゼーション・パラメータのセッティングを共有することが可能である。音響変換器についてアップロードされた情報は、例えば音響変換器識別子(例えば音響変換器モデルナンバーなど)や音響変換器の特性についての情報(例えば測定されたインピーダンス値など)を含んでもよい。その結果、特定の音響変換器についての「良好な」イコライザ・セッティングを識別できる経験豊富なユーザーは、グローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースの進歩に貢献することができ、その結果、そのデータベースにアクセスする可能性のある他のユーザーのためにイコライゼーション・パラメータのセットの「容易で」自動化された選択を可能にする。従って、ますます多量のイコライゼーション・パラメータ情報が収集され、これによりユーザーの満足度を向上させることが可能になる。
【0050】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器を識別し、かつその音響変換器の識別に基づいてイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成された音響変換器識別部を更に含む。この装置はまた、好ましくはグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースから、イコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のセットをダウンロードするよう構成されている。音響変換器識別部は、好ましくはイコライゼーション・パラメータのその1つ又は複数のダウンロードされたセットを考慮対象とするよう構成されている。本発明のこの実施形態は多様な状況においてこの実施形態が使用可能であるという利点を提供する。グローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースの中で、ある識別された音響変換器のためにあるイコライゼーション・パラメータのセットが利用可能である場合、その装置は、その1つ又は複数のダウンロードされたイコライゼーション・パラメータのセットを単純に使用(又はより一般的には考慮)してもよい。反対に、音響変換器を識別できない場合、又は(例えばグローバル・データベースの中にその識別された音響変換器のために使用可能なイコライゼーション・パラメータがない、などの理由で)識別された音響変換器のためのイコライゼーション・パラメータのセットを取得できない場合には、ユーザーは適切なユーザーインターフェースを使用しながら、依然として手動によりイコライゼーション・パラメータをセットしてもよい。また、このような状況において、ユーザーはグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースの進歩に対して貢献することができ、適切なイコライゼーション・パラメータを発見することができるユーザーは同一の装置を持つ他のユーザーの生活を容易にすることができる。その結果、ユーザーの満足度を有意に向上できる。
【0051】
本発明に係る他の実施形態はあるシステムを創造する。このシステムは、グローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースと、上述のようなオーディオ信号を提供する装置とを含む。このようなシステムは、オーディオ信号を提供する装置についてこれまで説明した利点と同じ利点をもたらす。
【0052】
本発明に係る更に他の実施形態は、オーディオ信号を処理する方法であって上述した装置と同様の考え方や考察に基づく方法を創造する。
【0053】
本発明に係る更に他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するコンピュータプログラムを創造する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明に係る実施形態について、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
図1】第1実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。
図2】第2実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。
図3】第3実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。
図4a-1】2つの異なるタイプ、即ちイントラコンカ型(上側)と耳覆い型(下側)のヘッドホンに関する音響的応答の一例のグラフを示す。
図4a-2】2つの異なるタイプ、即ちイントラコンカ型(上側)と耳覆い型(下側)のヘッドホンに関する電気的インピーダンス応答の一例のグラフを示す。
図4b】2つの異なるタイプのヘッドホンに関するインピーダンス応答における差を表で示す。
図5】第4実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。
図6】本発明の一実施形態に係る、音響変換器イコライゼーションのためのシステムの概略図を示す。
図7】音響変換器イコライゼーション(例えばヘッドホン・イコライゼーション)を適用するための種々の手法の概略図を示す。
図8】種々のヘッドホンの周波数応答のグラフを示す。
図9】ヘッドホン用の所謂「ライブバイブズ」サウンドエンハンスメントのスクリーンショットを示す。
図10】「ウィンアンプ」メディアプレーヤ内の10帯域イコライザのスクリーンショットを示す。
図11】ヘッドホンの選択を有する所謂「エンゲージ」アルゴリズムのスクリーンショットを示す。
図12】「ヌベルト」ATMデバイスのグラフを示す。
図13】「ヌベルト」ATMによる低いカットオフ周波数のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
1.図1に係るオーディオ信号を処理する装置
図1は、本発明の第1実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。図1の装置は、その全体が番号100で示されている。
【0056】
装置100は、イコライゼーション・パラメータのセット112を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部110を含む。装置100はまた、入力オーディオ信号122をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号124を得るよう構成されたイコライザ120を含む。イコライザ120は、典型的には、イコライゼーションのためにイコライゼーション・パラメータ決定部110によって提供されるイコライゼーション・パラメータのセット112を受信する。
【0057】
イコライズ済みのオーディオ信号124は音響変換器130による再生のために意図されており、音響変換器130は典型的には装置100の一部ではない。むしろ音響変換器130は、典型的には、例えば外部ラウドスピーカ、ヘッドホン、ヘッドセットなどのような外部の音響変換器である。
【0058】
イコライゼーション・パラメータ決定部110は、画像認識を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部110aを含む。例えば、音響変換器識別部110aは、音響変換器130の画像又はその音響変換器130に関連するラベルの画像の表現114を受信してもよい。イコライゼーション・パラメータ決定部はまた、音響変換器の識別結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成された、パラメータ選択部110bを含む。
【0059】
このように、イコライゼーション・パラメータ決定部110は、音響変換器の識別に基づいて、イコライザ120によって使用されるためのイコライゼーション・パラメータのセット112を提供し、音響変換器識別部は、音響変換器130の画像の表現又はその音響変換器130に関連するラベルの画像の表現を入力情報として使用するものである。音響変換器識別部110aが一旦音響変換器130を識別できると、即ち音響変換器(又はより詳細には音響変換器のタイプ)を(特異的に又は少なくとも特定のカテゴリ若しくはクラスについて)識別する(例えば数字、ストリングなどの)識別子を供給できると、パラメータ選択部110bは、音響変換器識別部110aによって提供された識別子情報に基づいて、イコライザ120により使用されるべくイコライゼーション・パラメータのセットを選択してもよい。従って、画像認識を使用しながら音響変換器130を識別できる場合で、かつ識別された音響変換器のためにあるイコライゼーション・パラメータのセットが利用可能である場合には、イコライゼーション・パラメータの適切なセットが自動的に決定できる。
【0060】
画像認識は種々のメカニズムに基づくことができる。例えば、画像認識は、音響変換器の特定の形状に基づいて音響変換器を識別してもよい。例えば、第1のステップにおいて、異なるタイプの音響変換器は、それらの全く異なる外観(管腔内型か、イントラコンカ型か、耳載せ型か、耳覆い型)によって容易に識別され得る。更に詳細な識別は、追加的な特徴、例えば音響変換器の特定要素の寸法、音響変換器の異なる要素の寸法間の比、音響変換器上に配置された文字または記号などに基づいて行われてもよい。幾つかの実施形態において、音響変換器識別部110aは、音響変換器の特定のモデルを識別するのに十分な精度を持っていてもよい。しかしながら、他の場合には、音響変換器識別部110aは、音響変換器が分類され得る(即ち音響変換器の特定のグループ又はクラスに割り当てられ得る)ように、音響変換器の一般的なタイプ、及び可能性としては鍵となる特徴(例えば寸法、異なる寸法間の比など)を識別すれば十分であり得る。このように、音響変換器識別部110aによって提供される音響変換器識別子は、異なる実施形態においては異なる精度を有してもよい。
【0061】
パラメータ選択部110bは、音響変換器識別部110aによって識別された音響変換器(又は音響変換器のクラス)のイコライゼーション・パラメータのセットを取得するために、装置100の内部に含まれたデータベースを使用してもよく、又は、外部のデータベースにアクセスしてもよい。換言すれば、音響変換器の画像又はその音響変換器に関連するラベルの画像に基づいて音響変換器識別部110aにより提供される音響変換器識別情報は、イコライゼーション・パラメータのセットを音響変換器識別子に関連付けているデータベース(又はテーブル)を照会するために使用されてもよい。このようにして、音響変換器識別部110aにより提供された音響変換器識別子に関連付けられたイコライゼーション・パラメータの適切なセットが、イコライザ120に対して供給されてもよい。
【0062】
代替的な実施形態においては、音響変換器の形状ではなく、音響変換器に関連付けられた(例えば音響変換器又は音響変換器のパッケージに取り付けられた)ラベルが音響変換器識別部110aの画像認識によって評価されてもよい。例えば、光学的バーコード又は多次元光学的バーコード(例えばQRコード(登録商標)のような2次元光学的コード)が音響変換器識別部110aの画像認識によって評価されて、音響変換器識別子が取得されてもよい。例えば、バーコード又は多次元光学的バーコードの数字コンテンツ又は文字コンテンツが音響変換器識別子として使用されて、イコライゼーション・パラメータのセットの選択が行われてもよい。
【0063】
従って、音響変換器の画像又はその音響変換器に関連するラベルの画像を受け取るだけで、その音響変換器に適合するイコライゼーション・パラメータを自動的に選択することが可能となり得る。例えば、そのような画像は、スマートホン、ラップトップコンピュータ、又は他のマルチメディアデバイスの中に典型的に統合されているカメラ内で容易に取得し得る。その結果、装置100を含むそのようなデバイスのユーザーにとって、イコライゼーション・パラメータの適切なセットを取得することは非常に容易である。そのため、ユーザーの満足度が典型的に向上する。
【0064】
音響変換器識別子に関する更なる詳細と、装置100の可能性のある拡張に関する更なる詳細については、(例えば図6及び図7を参照しながら)後段で説明する。
【0065】
2.図2に係るオーディオ信号を処理する装置
図2は、本発明の第2実施形態に従う、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。図2の装置は、その全体が番号200で示されている。
【0066】
装置200は、イコライゼーション・パラメータのセット212を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部210を含む。装置200は、入力オーディオ信号222をイコライズして、イコライズ済みオーディオ信号224を得るよう構成されたイコライザ220を更に含み、イコライズ済みオーディオ信号224は、典型的には装置200の外部にある音響変換器230によって再生されるよう意図されている。
【0067】
イコライゼーション・パラメータ決定部210は、音響変換器によってオーディオ接続を介して供給される識別信号214を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部210aを含む。このイコライゼーション・パラメータ決定部はまた、音響変換器識別部210aの結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されたパラメータ選択部210bを含む。例えばパラメータ選択210bは、音響変換器識別部210aから音響変換器識別子を受け取り、その音響変換器識別子に基づいて、イコライザが使用するためのイコライゼーション・パラメータの対応するセット212を選択してもよい。
【0068】
識別信号214は、音響変換器230からオーディオ接続を介して装置200(又はイコライゼーション・パラメータ決定部210)によって受信されてもよく、そのオーディオ接続は、イコライズされた出力信号224又はその増幅され及び/又は後処理されたバージョンを音響変換器230へと供給する。例えば、ある共通のライン又は共通のコネクタピンが、音響変換器230によって出力されるべきオーディオ信号を出力するため、及び識別信号214を受信するための両方に使用されてもよい。このように、オーディオ接続(又はより詳細には、オーディオ接続の特定のライン又はオーディオ接続の特定のピン)がオーディオ情報(例えばアナログオーディオ情報、即ちアナログ時間ドメイン信号)と識別信号214との両方を伝達するために再使用されてもよい。
【0069】
従って、装置200は、イコライゼーション・パラメータの適切なセットの選択を比較的中程度の技術的労力を用いて実行できる。例えば、装置200と音響変換器230との間の幾つかの接続(又は接続コンダクタ若しくはコネクタピン)は、そのオーディオ接続を介して(例えばその識別信号の送信のために共用されているオーディオラインを介して)識別信号を受信することで、小さく維持することが可能である。識別信号は、オーディオ接続上のオーディオコンテンツからフィルタ(例えば高帯域通過フィルタ)又は拡散スペクトル検出部を使用して分離され得る。このように、符号化された情報であって、識別信号内に含まれるか又は識別信号によって表現されている情報は、パラメータ選択部210bに供給される音響変換器識別情報を取得するために、音響変換器識別部210aによって使用されてもよい。幾つかの実施形態においては、例えば共用された接続上のオーディオ信号から識別信号を分離した後に、何らかの追加的な復調又は復号化が識別信号の情報コンテンツの抽出のために実行されてもよい。
【0070】
上述の記載を要約すると、オーディオ接続を介して音響変換器によって供給された識別信号の情報コンテンツは、音響変換器識別情報を提供する目的と、その音響変換器識別情報に応じて識別された音響変換器230に関連するイコライゼーション・パラメータの適切なセットを選択する目的とに使用されてもよい。このようにして、イコライザ220のイコライゼーション・パラメータは、識別された音響変換器230に適合するようセットされてもよい。従って、イコライザ220を自動的に調整して良好な(又は最適とも言える)ヒヤリングの印象を得ることが可能となる。つまり、ユーザーの満足度を有意に向上させることができる。
【0071】
装置200に関する更なる詳細と、音響変換器によって提供される識別信号を使用した音響変換器の識別に関する更なる詳細とについては、例えば図6及び図7を参照しながら後段で説明する。
【0072】
3.図3に係るオーディオ信号を処理する装置
図3は、本発明の第3実施形態に従う、オーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。図3の装置は、その全体が番号300で示されている。
【0073】
装置300は、イコライゼーション・パラメータのセット312を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部310を含む。この装置300は、入力信号322をイコライズしてイコライズ済みオーディオ信号324を取得するよう構成されたイコライザ320を更に含み、イコライズ済みオーディオ信号324は、(典型的には装置300の外部にある)音響変換器330によって出力されるよう意図されている。
【0074】
イコライゼーション・パラメータ決定部310は、周波数に亘る音響変換器330のインピーダンスの測定値を使用しながら、イコライゼーション・パラメータのセット312を取得するよう構成されている。幾つかの実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部310は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスのそのような測定を実行するよう構成されてもよい。しかし、代替的に、イコライゼーション・パラメータ決定部310は、(装置330の一部であってもよく、又は装置330の外部であってもよい)インピーダンス測定デバイスから、周波数に亘る音響変換器330のインピーダンスを記述する測定された情報を受信してもよい。
【0075】
周波数に亘る音響変換器330のインピーダンスの測定値(又は等価的に音響変換器の周波数に亘るインピーダンスを記述する測定された情報)を使用して、イコライゼーション・パラメータ・セットを得るための種々の概念が存在する。例えば、周波数に対する音響変換器のインピーダンスを記述する測定された情報は、音響変換器330を識別するために使用されてもよい。例えば、周波数に対する音響変換器のインピーダンスを記述する測定された情報は、製造者または任意の他者によって特徴付けられていてもよい複数の参照音響変換器の周波数に対する複数の参照インピーダンス曲線と比較されてもよい。そして、実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと、事前に特徴付けられた音響変換器の参照インピーダンス曲線のうちの1つと、の間に十分良好な(例えば差の測定のための閾値により定義された許容範囲内の)合致が見いだされた場合には、イコライゼーション・パラメータ決定部は、実際に使用された音響変換器が事前に特徴付けられた対応する音響変換器と同一タイプ(又は少なくとも非常に類似したタイプ)のものである、と結論付けてもよい。このようにして、事前に特徴付けられた対応する音響変換器(対応する音響変換器の参照インピーダンス曲線が実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと十分に調和しているもの)と関連するイコライゼーション・パラメータのセットが、イコライザ320によって使用されるイコライゼーション・パラメータのセット312として取得されてもよい。つまり、この実施形態において、現在使用されている音響変換器が、周波数に対するそのインピーダンスに関し、ある事前に特徴付けられた音響変換器であってそれについてイコライゼーション・パラメータの適切なセットが既知である音響変換器に対して十分な類似性を持つと認識された場合、イコライゼーション・パラメータ決定部310は、イコライゼーション・パラメータの適切なセットを取得してもよい。
【0076】
代替的な実施形態においては、又は、実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスが、事前に特徴付けられた音響変換器の利用可能な参照インピーダンス曲線のいずれに対しても十分な類似性を持たない場合には、イコライゼーション・パラメータ決定部は、周波数に対するインピーダンスに関して実際に使用された音響変換器と少なくとも幾分か類似する多数の参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータから、イコライゼーション・パラメータのセットを導出するよう構成されてもよい。換言すれば、イコライゼーション・パラメータ決定部は、実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスの「最も特異的な」(又は最も特徴的な)1つ又は複数の特性を識別し、更に、複数の参照音響変換器であって、それらの参照インピーダンス曲線が実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと同一の特異的(又は特徴的)な特性(又は少なくとも十分に類似する特異的特性若しくは特徴性特性)を有する参照音響変換器を識別するよう構成されてもよい。このようにして、イコライゼーション・パラメータ決定部は、実際に使用された音響変換器と同一または類似する(周波数に対するインピーダンスの)特徴的特性を有する参照音響変換器と関連するイコライゼーション・パラメータを、(例えば重み付きの方法で)結合させてもよい。例えば、実際に使用された音響変換器の周波数に対するインピーダンスが複数の最も特異的(又は最も特徴的)な特性を含む場合には、実際に使用された音響変換器と共通する前記特徴的特性のうちの少なくとも1つを特徴的インピーダンスが有する参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータが(例えば重み付きの方法で)選択的に結合されて、イコライザ320による使用のためにイコライゼーション・パラメータのセット312が取得されてもよい。
【0077】
最も特異的な異なる特性が異なる周波数範囲に関連している場合には、イコライゼーション・パラメータ決定部は、イコライゼーション・パラメータのセット312のイコライゼーション・パラメータを異なる周波数範囲ごとに個別に決定してもよく、その場合、所与の周波数範囲のための(イコライゼーション・パラメータのセット312の)実際に使用されるイコライゼーション・パラメータは、1つ又は複数の参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータに基づいて取得されてもよく、それら参照音響変換器の参照インピーダンス曲線は、(1つ又は複数の特徴的特性において、又はそれらの全体的な展開において)その所与の周波数範囲についての周波数に対する測定されたインピーダンスに最も類似するものである。
【0078】
しかし、イコライゼーション・パラメータのセット312を得るために多数の参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータを結合させる方法についての異なる概念も、また可能である。しかしながら、典型的に見られる点は、イコライゼーション・パラメータがイコライゼーション・パラメータのセット312の決定において考慮対象となる参照音響変換器の参照インピーダンス曲線は、実際に使用される音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスの最も特徴的な特性の1つ又は複数に対して、少なくとも類似性を有しているという点である。
【0079】
以下に、周波数に亘る電気的インピーダンスの測定値を使用する、自動的な音響変換器識別に関する幾つかの可能性について簡単に説明する。ヘッドホンの検出のために、(例えば実際に使用された音響変換器の)周波数に対する電気的インピーダンス曲線が、特定のヘッドホン又は少なくとも特定のヘッドホンクラスに対して整合されてもよい。幾つかの基本的な考察に関し、非特許文献9を参照されたい。例えばスピーカダメージを防止するための電流検出を実行できる増幅器のような現在開発中のデバイスを使用して、周波数に対する電気的インピーダンスの曲線が測定され得る(例えば非特許文献9を参照されたい)。
【0080】
例えば、新たなヘッドホンを(例えば装置300に対して)プラグインした後で、周波数に対する複素インピーダンスを計算するために、電圧と電流とを記録しながらある測定プロセスが実行されてもよい。換言すれば、(例えば音響変換器330の)複数のインピーダンス値が、複数の異なる周波数(好ましくは少なくとも5個又は少なくとも10個の異なる周波数)について測定される。更に、音響変換器(例えば音響変換器330)のインピーダンスの実数部と虚数部との両方を記述する、好ましくは複素インピーダンス値が決定される。これらの複素インピーダンス値を記述するために、種々のタイプの表現(実数部/虚数部、又は大きさ/位相)が使用され得る。そのため、典型的には、実際に使用された音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスを記述する、複数の周波数(例えば少なくとも5個の異なる周波数、又は少なくとも10個の異なる周波数)についての複数の複素値が存在する。
【0081】
さらに注意すべき点は、異なるタイプのヘッドホンのインピーダンス曲線が特異的な差及び特性を示すという点である。例えば、図4aの右側(右列、参照番号420、440)を参照されたい。この図は、2つの異なるタイプのヘッドホンに関する音響的応答(左)対電気的インピーダンス応答(右)のグラフ表現を示している。換言すれば、図4aは、イントラコンカ型(上側、参照番号410、420)と耳覆い型(下側、参照番号430、440)の例を示す。更に、図4bの表を参照されたい。この表は、2つの異なるタイプのヘッドホンのインピーダンス応答における差を示している。換言すれば、図4bは、差の表を示している。図4aを参照すれば、第1グラフ410はイントラコンカ型ヘッドホンの音響的周波数応答の大きさ412を表すことが分かる。横軸410aはHz単位の周波数を示し、縦軸はデシベル単位のレベル(又は相対レベル)を表している。第2グラフ420は、イントラコンカ型ヘッドホンの電気的インピーダンス応答の大きさ422と位相424とを表している。横軸420aはHz単位の周波数を示し、第1縦軸420bはオーム単位のインピーダンスの大きさを表し、第2縦軸420cは位相の角度を表す。第3グラフ430は、耳覆い型ヘッドホンの音響的周波数応答の大きさ432を表す。横軸430aはHz単位の周波数を示し、縦軸430bはデシベル単位のレベル(又は相対レベル)を表している。第4グラフ440は、耳覆い型ヘッドホンの電気的インピーダンス応答の大きさ442と位相444とを表している。横軸440aはHz単位の周波数を示し、第1縦軸440bはオーム単位のインピーダンスの大きさを表し、第2縦軸440cは電気的応答の位相の角度を表す。
【0082】
図4aから分かるように、異なるヘッドホンの音響的周波数応答の大きさと電気的インピーダンス応答の大きさ及び位相との両方は有意に異なる。更に、(例えば装置300により又はイコライゼーション・パラメータ決定部310により)周波数に対するヘッドホン(音響変換器)のインピーダンスを記述する測定された情報から、異なる特異的特性が抽出され得ることが分かる。例えば、イコライゼーション・パラメータ決定部は、特徴的な特性として所定の周波数範囲に対する平均インピーダンスを抽出するよう構成されてもよい。図から分かるように、イントラコンカ型ヘッドホンのインピーダンスの平均的な大きさは、図4aに示された周波数範囲に亘っては凡そ21.5オームである。対照的に、耳覆い型ヘッドホンのインピーダンスの平均的な大きさは、図4aに示された周波数範囲に亘っては凡そ300オームである。従って、所与の周波数範囲に対する平均的インピーダンスは、特異的特性として考えることができる。更に、インピーダンスがピークに到達する周波数もまた、イコライゼーション・パラメータ決定部310によって特徴的特性として抽出され得る。例えば、イントラコンカ型ヘッドホンは凡そ6kHzにおいてインピーダンスの極大値を示し、他方、耳覆い型ヘッドホンは凡そ100Hzにおいてインピーダンスのそのような最大値を持つ(この場合、電気的インピーダンスの大きさの最大値がある周波数は、共振周波数または主共振周波数として考慮され得る点に注意すべきである)。更に、所与の周波数範囲に対する電気的インピーダンスの大きさの変化と、所与の周波数範囲に対する電気的インピーダンス応答の位相の変化とは、イコライゼーション・パラメータ決定部310によって特異的特性として判定されてもよい。図から分かるように、電気的インピーダンス応答の大きさの変化(又は偏差)は、イントラコンカ型ヘッドホンの方が比較的小さい。対照的に、所与の周波数範囲に対する電気的インピーダンス応答の大きさと位相との変化は、耳覆い型ヘッドホンについて比較的大きい。図4bは、上述した2つの例示的ヘッドホンの特異的特性の要約を示す。ここで、これらの特異的特性は、イコライゼーション・パラメータ決定部によって決定することができ、更に、現在使用されている音響変換器にどの参照音響変換器が十分類似していると考えられるかを決定するために使用できる点に注意すべきである。周波数に対する測定されたインピーダンスの他の任意の特異的特性もまた、イコライゼーション・パラメータ決定部によって決定され得る。
【0083】
現在プラグインされているヘッドホンの周波数応答(例えば周波数に亘る測定されたインピーダンス)(一例として図4aの左側、即ちグラフ410と130を参照)に最高に合致するフィルタ(又は、より一般的にはイコライゼーション・パラメータのセット)を最終的に見つけるために、結合のための以下の2つの手法(手法A,手法B)のうちの1つが(例えばイコライゼーション・パラメータ決定部によって)データベースの助けを得て使用される。
【0084】
データベースは2つのコラムを持つテーブルであってもよい。即ち、(例えば、参照音響変換器の参照インピーダンス曲線であって、複数の異なる周波数のための複数の参照インピーダンス値によって表される)電気的複素インピーダンス曲線を一方(例えば1つのテーブル又は1つのテーブルのコラム内)に持ち、対応する適合ヘッドホンフィルタ(又は、より一般的にはイコライゼーション・パラメータのセット)を他方(例えば他のリンクされたテーブル又はテーブルの他のコラム内)に持ってもよい。
【0085】
上述したように、フィルタ(又は、より一般的にはイコライゼーション・パラメータのセット)は典型的には音響的な測定から創造され、その測定はエンドユーザーによって実行できるものではない。
【0086】
以下に、イコライゼーション・パラメータ決定部310によって実行され得る、イコライゼーション・パラメータのセット312の決定のための可能性のある幾つかの異なる手法について説明する。
【0087】
手法A:テーブルルックアップ識別
装置300に接続されている実際に使用された音響変換器について測定された周波数に対する電気的インピーダンス曲線(例えば大きさ及び位相)と、データベース内に記憶されている(参照音響変換器の参照インピーダンス曲線とも呼ばれる)事前に測定された電気的インピーダンス曲線とを比較するために、ある誤差アルゴリズム(例えば最小平均二乗アルゴリズム)が適用されてもよい。もしその誤差アルゴリズムが、(装置300に実際に接続されている音響変換器の)現在測定されている曲線と、データベースの1つ(即ち参照インピーダンス曲線の1つ)とを合致させることに成功した場合には、プラグインされているヘッドホン(即ち装置300に接続された実際に使用されているヘッドホン)が識別されて、適合するフィルタ(又は一般的にはイコライゼーション・パラメータの適合するセット)が(例えばデータベースから)ロードされ得る。
【0088】
換言すれば、2つのインピーダンス曲線間の差の測定を提供する「誤差アルゴリズム」を使用して、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスが、データベース内に記憶された参照インピーダンス曲線の1つと同一である、又は(その誤差アルゴリズムによって定義された所定の許容範囲内で)十分に類似していることを、イコライゼーション・パラメータ決定部310が発見した場合には、イコライゼーション・パラメータ決定部は、その識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータのセットをイコライザ320が使用するよう選択する。
【0089】
手法B:フィルタ生成
手法A(テーブルルックアップ識別)が不可能であるか成功しない場合には、適合するフィルタが生成されてもよい。手法A(テーブルルックアップ識別)の場合とは異なり、リスト内(例えばデータベース内)にある事前に測定された多数の電気的インピーダンス曲線に対し、(例えばPCA分析または主成分分析などの)アルゴリズムが実行される。例えば、イコライゼーション・パラメータ決定部は、多数の参照インピーダンス曲線(即ち参照音響変換器の事前に測定された電気的インピーダンス曲線)に対し、そのようなアルゴリズムを実行するよう構成されており、イコライゼーション・パラメータ決定部は、参照インピーダンス曲線についての情報をデータベースから取得するよう構成されてもよい。データベースは、装置300上にローカルに記憶されてもよく、又は、サーバーから部分的に又は完全にダウンロードされてもよい。このようにして、イコライゼーション・パラメータ決定部は、参照インピーダンス曲線から1つ又は複数の「特異的特性」を抽出してもよい。
【0090】
現在測定されているヘッドホンの電気的インピーダンス応答(即ち、装置300に接続されており現在使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンス応答)の最も特異的な特性(即ち1つ又は複数の特異的または特徴的な特性)を使用することで、多数のヘッドホンのための種々のフィルタの適合する特徴が結合されて、現在測定されている特定のヘッドホンに適合した周波数ドメインの対応するフィルタが生成されてもよい。換言すれば、イコライゼーション・パラメータ決定部は、現在使用されているヘッドホンの周波数に対する測定されたインピーダンスの1つ又は複数の「最も特異的な」特性を決定してもよく、更に、(参照インピーダンス曲線の表現とイコライゼーション・パラメータの対応するセットの表現とを含む、データベースエントリ又はテーブルエントリによって記述される)複数の参照音響変換器を識別してもよく、それら参照音響変換器とは、周波数に対する(参照)インピーダンス曲線の1つ又は複数の「特異的特性」が、現在使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスの最も特異的な特性と(類似性の尺度に関して)十分な類似性を持つものである。次に、これら識別された参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータが結合されてイコライゼーション・パラメータのセット312が取得され、イコライザ320によって使用される。従って、たとえ参照音響変換器の参照インピーダンス曲線のどれもが実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと「完全に」合致しない場合でも、周波数に対するインピーダンス曲線の1つ又は複数の特徴(特異的特性)に関し、現在使用されている音響変換器と共通している(又は十分類似性がある)音響変換器が識別され、更に、これら識別された参照音響変換器のために事前に決定されたイコライゼーション・パラメータが結合されて、現在使用されている音響変換器のためのオーディオ信号のイコライゼーションのためのイコライゼーション・パラメータが取得される。この結合における識別された参照音響変換器のイコライゼーション係数の重み付けは、例えば、参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと、の間の類似性の尺度に依存して決定されてもよい。その重み付けはまた周波数依存の方法で選択されてもよく、その方法は例えば、第2参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と比較して第1参照音響変換器の参照インピーダンス曲線が、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスに対して低い周波数範囲においてより強い類似性を示す場合には、第1参照音響変換器の低周波数イコライゼーション・パラメータが第2参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータよりも強く選択的に重み付けされ得る方法でよい。対照的に、前記結合においては、第1参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と比較して第2参照音響変換器の参照インピーダンス曲線が、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスに対してより強い類似性を示す場合には、第2参照音響変換器の高周波数イコライゼーション・パラメータが選択的により強く重み付けされることなどが可能である。
【0091】
従って、単一の参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と、現在使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスとの間に十分良好な合致が見いだせない場合には、イコライゼーション・パラメータ決定部は、多数の参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータを効率的に結合させて、イコライゼーション・パラメータのセット312を取得してもよいことが分かる。
【0092】
更に結論付けると、現在使用されている音響変換器の周波数に対するインピーダンスを記述する測定された情報に基づいて、イコライゼーション・パラメータ決定部310がイコライゼーション・パラメータのセット312を効率的に取得し得る方法には、多数の選択肢が存在する。実際に使用されている音響変換器のインピーダンスが相当な周波数範囲(例えば複数の異なる周波数)に亘って考慮される場合には、特に良好な結果が得られる。この場合、少なくとも5個又は10個の周波数に亘ってインピーダンスを考慮することが推奨される。
【0093】
4.図5に係るオーディオ信号を処理するための装置
図5は、音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する装置の概略的なブロック図を示す。図5に係る装置は、その全体を参照番号500で示す。装置500は、イコライゼーション・パラメータのセット512を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部510を含む。装置500はまた、入力オーディオ信号522をイコライズして、イコライズ済みオーディオ信号524を得るよう構成されたイコライザ520を含む。
【0094】
イコライゼーション・パラメータ決定部510は、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に基づいて、イコライゼーション・パラメータ512をセットするよう構成されている。イコライゼーション・パラメータ決定部510はまた、イコライゼーション・パラメータのセット512と、(典型的には装置500の外部である)音響変換器530についての情報とを、グローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースへとアップロードするよう構成されており、そのデータベースは、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するために多数の装置によりアクセス可能である。
【0095】
更に、イコライゼーション・パラメータ決定部510は、ユーザーがそのヒヤリング印象に従って、イコライゼーション・パラメータのセット512のイコライゼーション・パラメータをセットすることを可能にしている。従って、少なくとも経験のあるユーザーは、満足のいくヒヤリング印象を与え得るイコライゼーション・パラメータの適切なセットを決定できる可能性がある。更に、ユーザーインターフェースを使用してイコライゼーション・パラメータをセットしたことのあるユーザーは、音響変換器についての情報と組み合わせられたイコライゼーション・パラメータのそのセットについての情報を、典型的には多数のユーザーの多数の装置によってアクセス可能な所謂「グローバル」イコライゼーション・パラメータ・データベースに対してアップロードすることにより、そのイコライゼーション・パラメータを他のユーザーと共用できるであろう。好ましくは、ユーザーインターフェースは、ユーザーが(例えば周波数に対するフィルタ曲線を定義するために)イコライゼーション・パラメータを設定することを可能にするであろうし、また、(例えば音響変換器のモデル番号など)音響変換器についての情報を入力することも可能にするであろう。このようにして、有意な情報が「グローバル」イコライゼーション・パラメータ・データベースへとアップロードされることが可能である。
【0096】
ユーザーインターフェースに関する詳細とグローバル・フィルタパラメータ・データベースに関する詳細とを以下に説明する。
【0097】
5.図6に係るシステム
図6は、ヘッドホン・イコライゼーションのためのシステムの概略表現を示す。図6に係るシステムは、その全体が番号600で示される。そのシステムは、例えば中央サーバー内に配置されていてもよいグローバル・フィルタパラメータ・データベース610を含む。システム600はまた、例えばローカル・フィルタパラメータ・データベース620と、イコライゼーション・パラメータ決定部630と、フィルタリング及び/又はイコライザ640とを含んでもよいユーザーデバイス610を含む。
【0098】
ヘッドホン650(又は他のタイプの音響変換器)が、ユーザーデバイス610に接続されて、イコライザ640を用いて提供されたオーディオ信号を受信してもよい。
【0099】
グローバル・フィルタパラメータ・データベース610は、例えば参照音響変換器の複数の参照インピーダンス曲線と、関連するイコライゼーション・パラメータとを記憶してもよい。グローバル・フィルタパラメータ・データベース610内に記憶されたイコライゼーション・パラメータは、例えば参照ヘッドホン(又は一般的には参照音響変換器)のヘッドホン測定値(又は一般的には音響変換器の測定値)と目標イコライゼーション設計とに基づいていてもよく、イコライゼーション・パラメータがそれぞれのヘッドホンの測定された音響的周波数応答から導出される。換言すれば、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610内に記憶されたイコライゼーション・パラメータは、参照ヘッドホンの不完全な音響的周波数応答を補償するのに適切であり得る。しかしながら、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610は、参照ヘッドホンタイプとイコライゼーション・パラメータの対応するセットとの間の関連を定義してもよい。しかしながら、代替的または追加的に、グローバル・フィルタパラメータ・データベースは、イコライゼーション・パラメータ・セットと周波数に対する参照音響変換器の参照インピーダンス曲線との間の関連を定義してもよい。換言すれば、データベースは、イコライゼーション・パラメータのどのセットが周波数に対する特定の参照インピーダンス曲線を有するヘッドセットに属しているかを定義してもよい。
【0100】
ユーザーデバイス610は、任意ではあるが(必須ではないが)、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620を含んでもよい。特に、ユーザーデバイスは、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610のコンテンツの一部(又はグローバル・フィルタパラメータ・データベース610の全体的なコンテンツ)をダウンロードできてもよい。しかしながら、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610からの情報は、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620に対して事前にダウンロードされてもよく、又は特定の要求に基づいて(例えば未知のヘッドホンがユーザー装置610にプラグインされたときに)ダウンロードされてもよい。
【0101】
ユーザー装置610は、フィルタリング/イコライゼーション640のためのフィルタパラメータ(又は一般的にはイコライゼーション・パラメータ)の適切なセットを得るために、(「方法A」から「方法D」と示された)4通りの方法のうちの1つ又は複数を使用するよう更に構成されている。
【0102】
第1の方法(「方法A」)に従えば、ユーザー装置610のフィルタパラメータ決定部(又はイコライゼーション・パラメータ決定部)は、自動的なヘッドホン識別を実行する。そのため、(例えば自動パラメータ選択部を使用する)自動的なパラメータ選択が実行されてもよい。換言すれば、方法Aに従えば、装置610(又はそのイコライゼーション・パラメータ決定部630)は、自動的にヘッドホンを識別して、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620又はグローバル・フィルタパラメータ・データベース610から、フィルタリング/イコライゼーション640のためのフィルタパラメータ(又はイコライゼーション・パラメータ)の適切なセット632aを取り出してもよい。例えば、方法Aに従えば、図1,図2及び/又は図3を参照しながら説明したように、イコライゼーション・パラメータ決定部110及び/又は210及び/又は310の機能が、ユーザーデバイス610のイコライゼーション・パラメータ決定部630において使用されてもよい。従って、イコライゼーション・パラメータ・セット632aは、イコライゼーション・パラメータのセット112,212,312に対応してもよい。この場合、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620は、イコライゼーション・パラメータ決定部110,210,310によって要求された参照入力情報を記憶してもよい。
【0103】
しかしながら、ユーザーデバイス610のイコライゼーション・パラメータ決定部630は、代替的または追加的に、第2の方法(「方法B」)を使用して、フィルタリング/イコライゼーション640による使用のためのフィルタパラメータ・セット632bを選択してもよい。その第2の方法によれば、ユーザーインターフェースが音響変換器のタイプの手動選択のために提供される。そのため、ユーザーは、ユーザーデバイスに取り付けられたヘッドホン(又は音響変換器)のモデル番号、モデル識別子などを手動で選択する。ユーザーはモデル番号またはモデル識別子を直接的に入力してもよく、又はモデル番号またはモデル識別子をリストから選択し、そのリストが例えばローカル・フィルタパラメータ・データベース620のエントリに基づいて準備されてもよい。ユーザーがモデル番号またはモデル識別子を入力していた場合には、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620は、ユーザーによって特定されたモデル番号またはモデル識別子の音響変換器に関連付けられたイコライゼーション・パラメータ・セットを出力するよう照会されてもよい。代替的又は追加的に、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610が、ユーザーによって特定されたモデル番号またはモデル識別子に関連付けられたイコライゼーション・パラメータのセットについて(例えばネットワーク接続を介して)照会されてもよい。したがって、フィルタパラメータ・セット632b(又はイコライゼーション・パラメータのセット)は、音響変換器のタイプの手動選択に基づいて、更にローカル・フィルタパラメータ・データベース620及び/又はグローバル・フィルタパラメータ・データベース610の照会に基づいて、提供されてもよい。
【0104】
代替的又は追加的に、第3の概念(「方法C」)がユーザー装置610内又はそのイコライゼーション・パラメータ決定部630内において実行されて、フィルタリング/イコライゼーション640のためのフィルタパラメータ・セットを提供してもよい。第3の概念(「方法C」)によれば、ユーザーインターフェースがパラメータ生成部と共に準備されて、フィルタパラメータ・セット632cを提供してもよい。第3の概念に従って使用されるパラメータ生成部は、ユーザー入力に基づいてフィルタパラメータ・セット632cを提供してもよい。例えば、ユーザーは、ユーザーインターフェースを使用して多帯域イコライザのパラメータを調整してもよい。
【0105】
代替的又は追加的に、フィルタパラメータのセットを提供するために第4の概念(「方法D」)が使用されてもよい。その第4の概念に従えば、フィルタパラメータのセット632dがユーザーインターフェースからの入力に基づいて取得されてもよい。この目的で、パラメータ生成部が使用されてもよい。しかしながら、フィルタパラメータ・セット632d(又はイコライゼーション・パラメータ・セット632d)の値を決定するユーザー入力に加え、ユーザーデバイス610に接続されているヘッドホン(又は音響変換器)650を特徴付ける何らかの情報が、ユーザーインターフェースから受信されてもよい。例えば、ヘッドホン650のモデル名または他のモデル識別子が、概念4(「方法D」)に従ってユーザーインターフェースを介して入力されてもよい。従って、ユーザーの査定によれば、ヘッドホン650により表現されるオーディオ信号の許容可能な又は十分に良好なオーディオ品質につながるような、「十分良好な」フィルタパラメータ・セットをもたらす情報を、ユーザーがユーザーインターフェースを介して提供してきた場合には、ユーザーデバイス610のイコライゼーション・パラメータ決定部630は、フィルタパラメータ・セット(又は一般的にイコライゼーション・パラメータのセット)と現在使用されているヘッドホン650を識別するモデル識別子とを含む情報を、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610にアップロードするよう構成されてもよい。換言すれば、ユーザーインターフェースは、ユーザーに対して以下のような可能性を提供してもよい。即ち、ヘッドホン650によりユーザーに対して表現されているオーディオ信号のオーディオ品質がユーザーの期待を満足させるまでフィルタパラメータ・セット632dを調整(及び/又はチューニング)する可能性と、現在選択(又は調整)されているフィルタパラメータ・セット632dを使用してイコライズされたオーディオ信号のオーディオ品質がユーザーの期待を満足するものであることを確認する可能性と、をユーザーに提供してもよい。現在選択(又は調整)されているフィルタパラメータ・セット632dを使用しながらヘッドホン650によって提供されているオーディオコンテンツのオーディオ品質が十分良好であることを示す、ユーザーインターフェースを介したユーザーの入力に応じて、イコライゼーション・パラメータ決定部630は、ユーザーによって承認され現在使用されているフィルタパラメータ・セットの組合せと、現在使用されているヘッドホン650のモデル識別子とを、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610にアップロードしてもよい。従って、グローバル・フィルタパラメータ・データベース610は、現在使用されているヘッドホン650のモデル識別子と、(ユーザーの査定及び確認作業に従えば十分良好なオーディオ品質をもたらす)現在使用されているフィルタパラメータ・セット632dと、の間の関連付けを記憶し、その結果、他のユーザー(又はユーザーデバイス610と略同一であり得るユーザーデバイス)が適度に良好なフィルタパラメータ・セット632dを見つけるために現在のユーザーが掛けた労力からの利益を、他のユーザー(又はユーザーデバイス610と略同一であり得るユーザーデバイス)も享受できるようにしてもよい。このようにして、ユーザーインターフェースを介したフィルタパラメータ・セットの手動調整に基づいて識別されたフィルタパラメータ・セット632dは、(例えば第1の概念(「方法A])又は第2の概念(「方法B])に従って実行され得る)自動的又は半自動的なフィルタパラメータ・セットの選択において、他のユーザーデバイスによっても実質的に使用可能となる。
【0106】
従って、システム600は、異なる手法を使用するフィルタパラメータ・セット(又は一般的にはイコライゼーション・パラメータのセット)の選択を可能にする。(自動的なヘッドホン識別と組み合わされた自動的なパラメータ選択部を使用する)自動的なパラメータ選択と、(ユーザーインターフェースと組み合わされた手動のパラメータ選択部を使用する)手動のパラメータ選択と、(パラメータ生成部及びユーザーインターフェースを使用する)フィードバックなしの手動のパラメータ生成と、(パラメータ生成部とユーザーインターフェース、及びフィードバックを使用した)フィードバックを有する手動のパラメータ生成とを使用できる。手動により生成されたフィルタパラメータ・セットは、グローバル・フィルタパラメータ・データベースに対してフィードバック可能であり、かつ、その後そのグローバル・フィルタパラメータ・データベースからダウンロード可能となって、手動のパラメータ生成の労力を再利用することができる。そのため、多くの状況において、十分に良好なフィルタパラメータ・セットが適度に少ない労力で取得可能となる。
【0107】
図7は、ヘッドホン・イコライゼーション(例えば、それぞれに決定されたフィルタパラメータ・セット632a,632b,632c,632dにより定義されたもの、又は装置100,200,300,500のうちの1つによって決定されたイコライゼーション・パラメータのセット)を適用するための異なる手法を説明するブロック図である。
【0108】
参照番号710で示す1番目の例において、ヘッドホン・イコライゼーションは、非常に高いレベル、例えばアプリケーションレベルにおいて適用されてもよい。換言すれば、実際のアプリケーションを結合させるコンピュータプログラムと、グラフィック・ユーザーインターフェースと、信号処理とが存在してもよく、その場合、このコンピュータプログラム712により実行される信号処理は音響変換器イコライゼーション(ヘッドホン・イコライゼーション)を含んでいる。コンピュータプログラム712は、例えばコンピュータシステム又はスマートホンの主要マイクロプロセッサであり得るアプリケーション・プロセッサによって実行される。従って、(ヘッドホン・イコライゼーションが既に適用されている)イコライズ済みのオーディオ信号714が、デジタルからアナログへの変換器とオーディオコーデックとデジタル信号プロセッサとの組合せを含み得る更なる専用の信号処理716へと出力される。従って、専用のオーディオ信号処理716は、その出力信号として、アナログ信号でもよいイコライズ済みのオーディオ信号718をヘッドホン増幅器720へと供給する。ヘッドホン増幅器は、イコライズ済みの(典型的にはアナログの)オーディオ信号718を増幅して、増幅されたオーディオ信号をヘッドホン722へと供給する。要約すると、実際のヘッドホン・イコライゼーションは、非常に高いレベル、即ちアプリケーションプログラムのレベルにおいて、アプリケーション・プロセッサを使用しながら実行されてもよい。
【0109】
参照番号730で示す2番目の例に従えば、アプリケーションとグラフィック・ユーザーインターフェースとを含むプログラム732はヘッドホン・イコライゼーションを実行しない。換言すれば、ヘッドホン・イコライゼーションは、(例えば主要プロセッサである)アプリケーション・プロセッサによって実行される訳ではない。むしろアプリケーション・プロセッサは、ヘッドホン・イコライズされていないオーディオ信号734と、フィルタパラメータ又はイコライゼーション・パラメータのセット735とを専用のオーディオ信号処理736に対して提供し、その処理736は、デジタルからアナログへの変換器とオーディオコーデックとデジタル信号プロセッサとを含んでいてもよい。この場合、専用のオーディオ処理736のデジタル信号プロセッサはヘッドホン・イコライゼーションを適用し、その結果、イコライズ済みの(典型的にはアナログの)オーディオ信号738をヘッドホン増幅器740に対して供給してもよい。ヘッドホン増幅器740は、イコライズ済みのオーディオ信号738を増幅して増幅されたオーディオ信号をヘッドホン742へと供給する。
【0110】
参照番号750で示す3番目の例に従えば、ヘッドホン・イコライゼーションはヘッドホン増幅器においてのみ適用される。換言すれば、アプリケーションとグラフィック・ユーザーインターフェースとを構成し、かつアプリケーション・プロセッサによって実行されるコンピュータプログラム752は、ヘッドホン・イコライゼーションを実行しない。むしろアプリケーション・プロセッサは、ヘッドホン・イコライズされていないオーディオ信号を専用のオーディオ処理756へと供給する。また、アプリケーション・プロセッサは、フィルタパラメータを記述する情報755をヘッドホン増幅器760に対して直接的に供給する。専用のオーディオ信号処理756は、典型的にはアナログのオーディオ信号758をヘッドホン増幅器760へと供給し、典型的にはアナログのイコライゼーションがヘッドホン増幅器760によって実行され、かつ、フィルタパラメータを記述している情報755に基づいて調整される。従って、ヘッドホン増幅器760が実際のヘッドホン・イコライゼーションを実行し、その結果、イコライズ済みの増幅されたオーディオ信号をヘッドホン762へと供給する。
【0111】
以下に、本発明の実施形態の根底にある全体的な概念について短く要約する。
【0112】
まず、本発明の実施形態の主要な考え方の幾つかについて説明する。本発明の主要な考え方の1つは、特定のフィルタ又はフィルタパラメータが(ヘッドホン・イコライゼーションの機能的な原理を示す図6に示すように)ヘッドホン再生用に設計されたあるデバイス上にダウンロード又は選択され得るというものである。ユーザーは、ヘッドホン特有の処理機能を、あるデバイスへとダウンロード及びインストールできる。
【0113】
フィルタはアナログ又はデジタルのフィルタとして構成され得る。このヘッドホン・イコライゼーションは、接続されたヘッドホンの知覚されるオーディオ品質を向上させる。この技術は、あらゆる種類のヘッドホンに対して使用可能である。1つの特定のヘッドホンタイプ又はブランドに限定されるものではない。
【0114】
主要な考え方の幾つかを以下に挙げる。
・ヘッドホンの特定のペアに適合するヘッドホン・イコライゼーション・フィルタを適用する。
・これらのフィルタパラメータは、再生デバイスに対して(例えばインターネットを通じて)伝送され得る。
・他のヘッドホンのための他のフィルタパラメータもその後に選択又はダウンロードされることができる。
・特定のヘッドホンのための使用可能なフィルタパラメータがない場合には、デバイス上のユーザーフレンドリーなパラメータ生成部が使用可能である。その生成部は、このヘッドホンに対して最も適合する(最適なオーディオ品質を提供する)フィルタを生成する。
【0115】
以下に、グローバル・フィルタパラメータの生成について説明する。
【0116】
導入部においてヘッドホンのためのフィルタについて説明したときに述べたように、ヘッドホン・イコライゼーションのフィルタパラメータは、好ましくはヘッドホンの周波数応答から導出される。従って、ヘッドホンの周波数応答は既知でなければならない。典型的に、これは人工耳または音響カプラーを用いた測定によって知ることができる。
【0117】
ここで、目標周波数応答(望ましい周波数挙動)が設定されなければならない。理論的には、目標応答は如何なる形状であってもよい。2つ以上の目標イコライゼーション曲線を設定することさえも可能である。より高いオーディオ品質のために、目標応答は所謂「拡散フィールド」に類似するイコライゼーション曲線に沿っていてもよい。
【0118】
測定された周波数応答と目標イコライゼーション曲線とを結合して、(イコライゼーションフィルタの)フィルタパラメータが計算され得る(例えば非特許文献5を参照)。全てのサポートされた/測定されたヘッドホンのフィルタパラメータは、(必ずしも再生デバイス又はユーザーデバイス上でなくてよい)データベース内に記憶されてもよく、従って、グローバル・フィルタパラメータ(GFP)として参照され得る。例えば、図6を参照されたい。
【0119】
高度な要件に起因して、ヘッドホンの測定と目標イコライゼーションの設計と計算とは、典型的にはこの先進技術の提供者によって実行される。
【0120】
以下に、フィルタパラメータを、デバイス(例えばパーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ若しくはマルチメディアプレーヤ、又はスマートホンのようなユーザーデバイス)への伝送及びデバイスからの伝送について説明する。
【0121】
幾つかの実施形態において、フィルタパラメータは再生デバイス上に記憶され、それはローカル・フィルタパラメータ(LFP)とも呼ぶことができる。そのローカル・フィルタパラメータは、グローバル・フィルタパラメータ(GFP)データベースの全てのヘッドホンを含む必要はない。LFPは以下に記載する幾つかの理由によって、グローバル・フィルタパラメータの部分集合であってもよい。
・メモリ消費の問題
・旧式のヘッドホンモデル
・提供者は彼が選択したセットだけをサポートしたいと望む
・技術の独占的ビジネスモデル
【0122】
ローカル・フィルタパラメータ・セットを含むアプリケーション、又はローカル・フィルタパラメータ自体が、例えばインターネット又はモバイル接続を介してGLPサーバーから再生デバイスへと伝送される。
【0123】
ローカル・フィルタパラメータ・セットは、当該技術のダウンロード能力を使用して事後的に拡張され得る。ローカル・フィルタパラメータ・セットには合致しないがグローバル・フィルタパラメータ・データベース内では使用可能であるようなヘッドホンをユーザーが接続する場合、ローカル・フィルタパラメータ・セットの拡張は必要である。更に、ローカル・フィルタパラメータ・セットは、ヘッドホンタイプ又はモデルの情報とともにデバイスからグローバル・フィルタパラメータへとアップロード可能である。
【0124】
以下に、ヘッドホン・イコライゼーションの選択について説明する。
【0125】
再生デバイスにおいて、現在接続されているヘッドホンに適合するローカル・フィルタパラメータが選択されなければならない。正しいローカル・フィルタパラメータを選択ための様々な方法が存在する(図6を参照)。
【0126】
方法A:自動的なヘッドホン識別
この方法については、ユーザーはデバイスに取り付けられたヘッドホンの詳細を知る必要はない。特定のヘッドホンモデルを識別し、正しいローカル・フィルタパラメータを選択するために、あるアプリケーションが使用される。
【0127】
この方法の実装は、以下のようであってもよい。
・特定のヘッドホン識別子(ID)が(例えばヘッドホン内のチップを使用して)ヘッドホン上で符号化されることができ、更に以下のような方法でアプリケーションに対して転送されることができる。例えば無線周波数伝送を介する方法、(好ましくは20kHzを超える)オーディオ帯域幅外の信号による方法、ヘッドホン増幅器における精巧な回路を使用する方法、ヘッドホンからのID列又はオーディオストリーム内の埋め込みデータを受信する方法、又は光学的手段(例えばバーコード)による方法などである。
・画像認識アプリケーションは、例えばヘッドホン又は光学的コードをスキャンするカメラなど、ヘッドホンを識別するための追加的情報を使用してもよい。
・特定のヘッドホン(又は少なくとも特定のヘッドホンクラス)に対して周波数に亘る電気的インピーダンス曲線がマッチングしているヘッドホンの検出。
【0128】
以下に、周波数に対する電気的インピーダンスの曲線を用いたヘッドホン検出に関する幾つかの詳細について説明する。この概念は、非特許文献9に開示された幾つかの知見に基づいている。周波数に対する電気的インピーダンス曲線は、例えばスピーカの損傷を防止するための電流感知を実行できる増幅器(例えば非特許文献10を参照)のような、現在開発されているデバイスを使用して測定することができる。新たなヘッドホンをデバイス(例えばユーザーデバイス630)にプラグインした後で、電圧及び電流が記録されながら測定プロセスが実行され、それにより周波数に対する複素インピーダンスが計算される。異なるタイプのヘッドホンのインピーダンス曲線は、特異的な差と特徴を示す。例えば、図4aの右側を参照されたい。この図は、音響的インピーダンス(左)対電気的インピーダンス(右)の応答の例を、ヘッドホンの2つの異なるタイプ、例えばイントラコンカ型(上側のプロット)と耳覆い型(下側のプロット)について示している。更に、2つの異なるタイプのヘッドホンのインピーダンス応答における差を示す図4bの表も参照されたい。
【0129】
現在プラグインされているヘッドホンの周波数応答(例として図4aの左側を参照)に最も良好にマッチするフィルタを最終的に見つけるために、以下に記載する2つの手法の1つ又はそれらの組合せがデータベースの助けをかりて使用される。このデータベースは例えば2つのコラムを有するテーブルであり、一方は(典型的には複数の異なる周波数についての複数の複素インピーダンス値により表現されている)電気的複素インピーダンス曲線であり、他方は対応する適合ヘッドホンフィルタである。
【0130】
簡単に上述したように、フィルタは音響学的測定から作成されることが望ましいが、しかしそのような測定は典型的にはエンドユーザーによって実行できるものではない。
【0131】
手法A:テーブルルックアップ識別
ある誤差アルゴリズム(例えば最小平均二乗)が、周波数に対する電気的インピーダンス曲線(大きさ及び位相)とデータベースに記憶された事前に測定済みの電気的インピーダンス曲線とを比較する。その誤差アルゴリズムが現在測定されている曲線とデータベース内の1つとのマッチングに成功した場合には、プラグインされたヘッドホンが識別されて適合フィルタがロード可能となる。
【0132】
手法B:フィルタ生成
手法Aが不可能又は不成功である場合には、適合フィルタが生成されてもよい。手法Aとは異なり、あるアルゴリズム(例えば主成分分析、PCA分析などの)がリスト内にある多数の事前に測定済みの電気的インピーダンス曲線に対して実行される。現在測定されているヘッドホンの電気的インピーダンス応答の最も特異的な特徴を使用することにより、多数のヘッドホンのための様々なフィルタの適合する特徴が、現在測定されているその特定のヘッドホンに適合している対応する1つのフィルタ(又は対応する複数のフィルタ)へと周波数ドメインにおいて結合されてもよい。
【0133】
方法B:ユーザーによる手動選択(ヘッドホンのリスト)
ユーザーは彼/彼女の特定のヘッドホンをリストから選択できる。
【0134】
方法C:パラメータ生成部
この方法は、選択されたヘッドホンタイプに対して使用可能なマッチするLFP/GFPがない場合のフォールバック解決策である。
・フィルタのパラメータは、(例えばクラスター分析又は主成分分析を用いて)GFPを分析しかつ最も重要な属性を抽出することにより取得される。
・ユーザーは、ヘッドホンの一般的なタイプ(例えば大きい/小さいなど)を選ぶか、又は再生しながらフィルタを連続的に変更して知覚によって正しいセッティングを調整するかのいずれかの方法で、フィルタを彼のヘッドホンに適応させなければならない。
・(ユーザーによって調整された)パラメータ・セッティングに基づいて、最も重要なヘッドホンの属性を考慮に入れながら複素フィルタ関数が作成される。
・より容易な選択のためには、ユーザーインターフェースは、種々のフィルタセット及び/又は選択されたフィルタセットと処理せず(迂回)とを比較するA−B比較を許可しなければならない。
【0135】
方法D:アップロード機能を有するパラメータ生成部
この方法の働きは、方法Dの拡張版である。この方法は、ユーザーに選択されたパラメータが、ユーザーによって使用されたタイプ又はモデルの情報と共に、データベースへとアップロードされることを許可する。この方法は、データベースに知られていないヘッドホンモデルについてのデータベースの拡張、及び/又はユーザーの意見に基づくパラメータの改善を可能にする。
【0136】
要約すると、上述した機能のうちの1つ又は複数が本明細書で記載したイコライゼーション・パラメータ決定部110,210,310,510,630によって実行されることができ、この場合、フィルタパラメータのセットはイコライゼーション・パラメータのセットの役割を担い得る。例えば、上述した機能の1つ又は複数は、図1図2図3及び図5に記載の装置内で構成されてもよく、又は図6を参照して記載したシステム内で構成されてもよい。
【0137】
以下に、何処でフィルタリングが発生するかという問題について検討する。ヘッドホンフィルタリングを適用する箇所については、少なくとも3つの異なる解決策があるという点に注意すべきである。詳細については、例えば図7を参照されたい。
【0138】
方法1:アプリケーション・プロセッサ
ある実装例において、オーディオ処理(フィルタリング/イコライゼーション)は、事前にインストールされたソフトウエアにより実行されることができ、又はオーディオ処理は、フィルタパラメータを読み出し且つ適用できるアプリケーション、例えば音楽プレーヤ(又は音楽プレーヤ・ソフトウエア)のイコライザによって実行され得る。
【0139】
方法2:オーディオ・プロセッサ(オーディオコーデック/DAC/DSP)
幾つかの実装例において、オーディオ・プロセッサは、デジタル又はアナログのフィルタを適用する何らかの能力を有する。それらはアプリケーションによって制御され得る。フィルタパラメータは、オーディオ・プロセッサ内で使用可能なフィルタを最高に活用するために変換され得る。
【0140】
方法3:ヘッドホン増幅器
幾つかの実装例においては、本発明が提案するヘッドホン・イコライゼーションを装備するヘッドホン増幅器デバイスに対し、アナログオーディオ信号が入力される。ヘッドホン・イコライゼーション(又はイコライザ)は、その信号に対して適用される。従って、このデバイスは、アナログオーディオ信号を出力する任意のデバイスに対して接続可能である。
【0141】
更なる詳細については、図7及び上述の説明を参照されたい。
【0142】
結論
本発明に従う実施形態は、下記の効果又は特定の改善点の1つ又は複数をもたらすことができる。
・ユーザーにとって最も重要な利点は、(ヘッドホンの欠点が補償されることにより)ヘッドホンのより良好な周波数応答がもたらす改善された音響品質である。
・ユーザーは、良好なオーディオ品質を達成する目的で高価なヘッドホンのための多額の費用を支払う必要がない。
・使用方法が容易である:ユーザーは(イコライゼーションのパラメータ・セッティングのような)詳細を扱う必要がなく、ヘッドホンの周波数応答を測定する必要もない。幾つかの実施形態では、ヘッドホンを選択するだけで十分である
・ヘッドホンの製造者にとって、ダウンロード用又はデバイスにプリインストールされたフィルタパラメータ・セットを提供することにより差別化できることは、有利になり得る。
・廉価な(及び理想的でない)ヘッドホンのオーディオ品質を改善できる。そのため、ヘッドホンを具備した再生用デバイスの販売者は金額を節約できる。より高価なヘッドホンの代わりに、廉価なヘッドホン−上述の解決策でサポートされた−でも同一又はより良好にもなり得る品質を提供できる。
・デバイスの製造者は、ユーザーによる制御又は自動ヘッドホン識別を提供することで、音響品質を向上させることができる。
・マルチメディアソフトウエアの販売者は、オーディオ信号のためのヘッドホン・イコライゼーションを含むアプリケーションを開発することができる。
・柔軟性:新たなフィルタパラメータをダウンロードすることで、デバイスはヘッドホンの特定のペアに制限されなくなる。そのため、未来のヘッドホンをサポートすることも可能になる。
【0143】
幾つかの実施形態においては、多量のデータベースが、選択を可能にしつつ外部のデータベースへの接続なしにローカルに記憶される。換言すれば、上述したグローバル・フィルタパラメータ・データベース610の情報は、ローカル・フィルタパラメータ・データベース620の中に記憶されることができる。
【0144】
更に、本発明幾に従う幾つかの実施形態において、デバイスのヘッドホン出力において異なる出力を生成するアプリケーション内にヘッドホンモデルのリストが存在する。幾つかの実施形態において、情報は外部ソースからモデル又はタイプに依存してダウンロードされなければならない。
【0145】
更に、本発明にかかる実施形態は種々の技術的アプリケーション範囲において適用され得ることに留意すべきである。
・スマートホン
・個人用音楽プレーヤ
・タブレットデバイス
・ブルーレイ/DVD/CDプレーヤ
・AV受信機
・テレビ機器
・車内/機内エンターテイメントシステム
・プロ用オーディオ
・サウンドカード
・ヘッドホン増幅器
【0146】
要約すると、本発明にかかる実施形態は、ヘッドホンの知覚されるオーディオ品質が改善されることを可能にする。より良好な音響品質はヘッドホン用に特別に設計されたフィルタに基づいている。フィルタ及び/又はフィルタパラメータはウエブベースのダウンロードにより受信され得る。
【0147】
本発明の実施形態は、フィルタを調整して特定の取り付けられたヘッドホンにマッチさせる、という問題を克服するものである。
【0148】
更に、本発明の実施形態は、音響品質が大いに改善される可能性があったとしても、フィルタ調整(即ちイコライゼーション)は典型的には消費者メディアデバイスの製造者によって行われないという欠点を克服する。なぜなら、接続されるヘッドホンは従来から多くの場合に未知であるからである。
【0149】
本発明の実施形態は、多くのアプリケーションにおいて、新たなヘッドホンフィルタの将来のダウンロードを可能にする。
【0150】
代替的な構成
これまで装置を説明する文脈で幾つかの態様を示してきたが、これらの態様は対応する方法の説明でもあることは明らかであり、そのブロック又は装置が方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応することは明らかである。同様に、方法ステップを説明する文脈で示した態様もまた対応する装置の対応するブロックもしくは項目又は特徴を表している。方法ステップの幾つか又は全ては、例えばマイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ又は電子的回路などのようなハードウエア装置により(又は使用して)実行されてもよい。幾つかの実施形態において、最も重要な方法ステップのうちのいずれか1つ又は複数はそのような装置によって実行されてもよい。
【0151】
所定の構成要件にも依るが、本発明の実施形態は、ハードウエア又はソフトウエアにおいて実装可能である。この実装は、その中に格納される電子的に読み取り可能な制御信号を有し、本発明の各方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働する(又は協働可能な)、デジタル記憶媒体、例えばフレキシブルディスク,DVD,ブルーレイ,CD,ROM,PROM,EPROM,EEPROM,フラッシュメモリなどを使用して実行することができる。従って、デジタル記憶媒体はコンピュータ読み取り可能であってもよい。
【0152】
本発明に従う幾つかの実施形態は、上述した方法の1つを実行するようプログラム可能なコンピュータシステムと協働可能で、電子的に読み取り可能な制御信号を有するデータキャリアを含んでも良い。
【0153】
一般的に、本発明の実施例は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装することができ、このプログラムコードは当該コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で作動するときに本発明の方法の一つを実行するよう作動できる。そのプログラムコードは例えば機械読み取り可能なキャリアに記憶されても良い。
【0154】
他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するための機械読み取り可能なキャリアに記憶されたコンピュータプログラムを含む。
【0155】
換言すれば、本発明の方法のある実施形態は、そのコンピュータプログラムがコンピュータ上で作動するときに、上述した方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0156】
本発明の他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するために記録されたコンピュータプログラムを含む、データキャリア(又はデジタル記憶媒体又はコンピュータ読み取り可能な媒体)である。そのデータキャリア,デジタル記憶媒体又は記録された媒体は、典型的には有形及び/又は非一時的である。
【0157】
本発明の他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを表現するデータストリーム又は信号列である。そのデータストリーム又は信号列は、例えばインターネットを介するデータ通信接続を介して伝送されるように構成されても良い。
【0158】
他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するように構成又は適応された例えばコンピュータ又はプログラム可能な論理デバイスのような処理手段を含む。
【0159】
他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータを含む。
【0160】
本発明の更なる実施形態は、受信機に対し、本明細書に記載した方法の1つを実行するための(例えば電子的又は光学的な)コンピュータプログラムを伝送するよう構成された装置又はシステムを含む。その受信機は、例えばコンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイスなどであってもよい。その装置又はシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に対して伝送するためのファイルサーバを含んでもよい。
【0161】
幾つかの実施形態においては、(例えば書換え可能ゲートアレイのような)プログラム可能な論理デバイスが、上述した方法の幾つか又は全ての機能を実行するために使用されても良い。幾つかの実施形態では、書換え可能ゲートアレイが上述した方法の1つを実行するためにマイクロプロセッサと協働しても良い。一般的に、そのような方法は好適には任意のハードウエア装置によって実行される。
【0162】
上述した実施形態は本発明の原理を単に例示的に示したにすぎない。本明細書に記載した構成及び詳細について修正及び変更が可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明は、本明細書に実施形態の説明及び解説の目的で提示した具体的詳細によって限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4a-1】
図4a-2】
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2014年6月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響変換器(130)による再生のためのオーディオ信号(112)を処理する装置(100)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(112)を決定するイコライゼーション・パラメータ決定部(110)と、
入力オーディオ信号(122)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(124)を得るよう構成されたイコライザ(120)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、画像認識を使用して音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部(110a)と、前記音響変換器識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセット(112)を選択するよう構成されたパラメータ選択部とを含み、
前記画像認識は、前記音響変換器の特定形状に基づいて前記音響変換器を識別するものである、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットをサーバーからダウンロードするか、又は、内部データベースに含まれている1つ又は複数の音響変換器に関連付けられた1つ又は複数のイコライゼーション・パラメータのセットを使用するよう構成されている、装置。
【請求項3】
音響変換器(330)による再生のためのオーディオ信号(322)を処理する装置(300)であって、
イコライゼーション・パラメータのセット(312)を決定するイコライゼーション・パラメータ決定部(310)と、
入力オーディオ信号(322)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(324)を得るよう構成されたイコライザ(320)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、前記音響変換器(330)の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して、イコライゼーション・パラメータのセットを取得するよう構成されており、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、複数の参照音響変換器と関連するイコライゼーション・パラメータを結合して前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を得るよう構成され、前記参照音響変換器の周波数に亘る参照インピーダンス曲線が前記音響変換器(330)の周波数に亘る測定されたインピーダンスと少なくとも1つの特異的な特性において少なくとも類似性を有する、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る参照インピーダンス曲線とイコライゼーション・パラメータの関連するセットとの間の関連付けを含むデータベースにアクセスするよう構成されている、装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(210)は、周波数に亘る参照インピーダンス曲線の1つ又は複数の特異的な特性についての情報を取得し、前記音響変換器(330)の周波数に亘る測定されたインピーダンスと共通する少なくとも1つの特異的な特徴を有する複数の参照インピーダンス曲線を識別し、更にそれら識別された参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータの結合を使用して前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を提供するよう構成されている、装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部(310)は、周波数に亘る異なる参照インピーダンス曲線に関連するイコライゼーション・パラメータの複数のセットの適合する特徴を結合して、前記音響変換器(330)の周波数に亘る前記測定されたインピーダンスに関連する前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を取得するよう構成されている、装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の装置において、前記周波数に亘る参照インピーダンス曲線は、参照音響変換器を使用した事前のインピーダンス測定に基づいており、前記参照音響変換器と関連する前記イコライゼーション・パラメータのセットは、前記参照音響変換器を使用した事前の周波数応答測定に基づく事前計算に基づいている、装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか1項に記載の装置において、前記オーディオ信号を処理する装置は、前記音響変換器(330)の周波数に亘るインピーダンスの測定の結果をインピーダンス測定装置から取得するよう構成されており、前記インピーダンス測定装置は、ある音響変換器接続において、異なる周波数についての電圧と電流との間の比を決定するよう構成されている、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記インピーダンス測定装置は、前記音響変換器(330)の周波数に亘る複素値インピーダンスを決定するよう構成されている、装置。
【請求項10】
音響変換器のタイプとイコライゼーション・パラメータの対応するセットとの間の関連付けを定義するグローバル・イコライゼーション・データベースであって、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能であり、それによりあるユーザーによって識別されたイコライゼーション・パラメータ・セッティングを他のユーザーと共用可能にするグローバル・イコライゼーション・データベースと、
音響変換器(530)による再生のためのオーディオ信号(522)を処理する装置(500)と、を備え、前記装置は
イコライゼーション・パラメータのセット(512)を決定するためのイコライゼーション・パラメータ決定部(510)と、
入力オーディオ信号(522)をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号(524)を得るよう構成されたイコライザ(520)と、を備え、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に依存して前記イコライゼーション・パラメータをセットするよう構成され、
前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、前記イコライゼーション・パラメータのセット(512)と前記音響変換器(530)についての情報とを、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能である前記グローバル・イコライゼーション・データベースへとアップロードするよう構成され、それによりあるユーザーによって識別されたイコライゼーション・パラメータ・セッティングを他のユーザーと共用可能にする、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器を識別するよう構成された音響変換器識別部(110a;210a)と、前記音響変換器の識別に基づいてイコライゼーション・パラメータのセットを選択するよう構成されたパラメータ選択部(110b;210b)とを更に含み、
前記装置は、前記グローバル・イコライゼーション・データベースからイコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のセットをダウンロードするよう構成されており、
前記音響変換器識別部は、イコライゼーション・パラメータの前記1つ又は複数のダウンロードされたセットを考慮対象とするよう構成されている、装置。
【請求項12】
グローバル・イコライゼーション・データベース(610)と、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の音響変換器(650)による再生のためのオーディオ信号を処理する装置(630)と、を備え、
前記グローバル・イコライゼーション・データベースは、音響変換器のタイプとイコライゼーション・パラメータの対応するセットとの間の関連付けを定義し、
前記グローバル・イコライゼーション・データベースは、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能であり、それによりあるユーザーによって識別されたイコライゼーション・パラメータ・セッティングを他のユーザーと共用可能にする、システム(600)。
【請求項13】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップは、画像認識を使用して音響変換器を識別するサブステップと、前記音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するサブステップとを含み、
前記画像認識は、前記音響変換器の特定形状に基づいて前記音響変換器を識別することを含む、方法。
【請求項14】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータのセットは、前記音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して取得され、
前記方法は、複数の参照音響変換器と関連するイコライゼーション・パラメータを結合して前記イコライゼーション・パラメータのセット(312)を得ることを含み、前記参照音響変換器の周波数に亘る参照インピーダンス曲線が前記音響変換器(330)の周波数に亘る測定されたインピーダンスと少なくとも1つの特異的な特性において少なくとも類似性を有する、方法。
【請求項15】
音響変換器による再生のためのオーディオ信号を処理する方法であって、
イコライゼーション・パラメータのセットを決定するステップと、
入力オーディオ信号をイコライズしてイコライズ済みのオーディオ信号を得るステップと、を含み、
前記イコライゼーション・パラメータは、ユーザーインターフェースからのユーザー入力に依存してセットされ、
前記イコライゼーション・パラメータのセットと前記音響変換器についての情報とが、多数のユーザーのオーディオ信号を処理するための多数の装置によってアクセス可能であるグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースへとアップロードされ、
あるユーザーによって識別されたイコライゼーション・パラメータ・セッティングを他のユーザーと共用可能にする、方法。
【請求項16】
コンピュータで実行されたとき、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法を実行するコンピュータプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2014年9月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値を使用して音響変換器を識別する音響変換器識別部と、その音響変換器の識別の結果に依存してイコライゼーション・パラメータのセットを選択するパラメータ選択部とを含む。この実施形態は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスの測定値に基づいて音響変換器を(特異的に)識別することが可能な場合が多いという考察に基づいている。この場合、その識別の結果に基づいて(例えばデータベース内に記憶されている)イコライゼーション・パラメータのセットを選択することが効果的な解決策となる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
好ましい一実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部は、音響変換器を識別する音響変換器識別部と、その音響変換器の識別に基づいてイコライゼーション・パラメータのセットを選択するパラメータ選択部とを更に含む。この装置はまた、好ましくはグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースから、イコライゼーション・パラメータの1つ又は複数のセットをダウンロードするよう構成されている。音響変換器識別部は、好ましくはイコライゼーション・パラメータのその1つ又は複数のダウンロードされたセットを考慮対象とするよう構成されている。本発明のこの実施形態は多様な状況においてこの実施形態が使用可能であるという利点を提供する。グローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースの中で、ある識別された音響変換器のためにあるイコライゼーション・パラメータのセットが利用可能である場合、その装置は、その1つ又は複数のダウンロードされたイコライゼーション・パラメータのセットを単純に使用(又はより一般的には考慮)してもよい。反対に、音響変換器を識別できない場合、又は(例えばグローバル・データベースの中にその識別された音響変換器のために使用可能なイコライゼーション・パラメータがない、などの理由で)識別された音響変換器のためのイコライゼーション・パラメータのセットを取得できない場合には、ユーザーは適切なユーザーインターフェースを使用しながら、依然として手動によりイコライゼーション・パラメータをセットしてもよい。また、このような状況において、ユーザーはグローバル・イコライゼーション・パラメータ・データベースの進歩に対して貢献することができ、適切なイコライゼーション・パラメータを発見することができるユーザーは同一の装置を持つ他のユーザーの生活を容易にすることができる。その結果、ユーザーの満足度を有意に向上できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
イコライゼーション・パラメータ決定部310は、周波数に亘る音響変換器330のインピーダンスの測定値を使用しながら、イコライゼーション・パラメータのセット312を取得するよう構成されている。幾つかの実施形態において、イコライゼーション・パラメータ決定部310は、音響変換器の周波数に亘るインピーダンスのそのような測定を実行するよう構成されてもよい。しかし、代替的に、イコライゼーション・パラメータ決定部310は、(装置300の一部であってもよく、又は装置300の外部であってもよい)インピーダンス測定デバイスから、周波数に亘る音響変換器330のインピーダンスを記述する測定された情報を受信してもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
現在プラグインされているヘッドホンの周波数応答(例えば周波数に亘る測定されたインピーダンス)(一例として図4aの左側、即ちグラフ410と430を参照)に最高に合致するフィルタ(又は、より一般的にはイコライゼーション・パラメータのセット)を最終的に見つけるために、結合のための以下の2つの手法(手法A,手法B)のうちの1つが(例えばイコライゼーション・パラメータ決定部によって)データベースの助けを得て使用される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
現在測定されているヘッドホンの電気的インピーダンス応答(即ち、装置300に接続されており現在使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンス応答)の最も特異的な特性(即ち1つ又は複数の特異的または特徴的な特性)を使用することで、多数のヘッドホンのための種々のフィルタの適合する特徴が結合されて、現在測定されている特定のヘッドホンに適合した周波数ドメインの対応するフィルタが生成されてもよい。換言すれば、イコライゼーション・パラメータ決定部は、現在使用されているヘッドホンの周波数に対する測定されたインピーダンスの1つ又は複数の「最も特異的な」特性を決定してもよく、更に、(参照インピーダンス曲線の表現とイコライゼーション・パラメータの対応するセットの表現とを含む、データベースエントリ又はテーブルエントリによって記述される)複数の参照音響変換器を識別してもよく、それら参照音響変換器とは、周波数に対する(参照)インピーダンス曲線の1つ又は複数の「特異的特性」が、現在使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスの最も特異的な特性と(類似性の尺度に関して)十分な類似性を持つものである。次に、これら識別された参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータが結合されてイコライゼーション・パラメータのセット312が取得され、イコライザ320によって使用される。従って、たとえ参照音響変換器の参照インピーダンス曲線のどれもが実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと「完全に」合致しない場合でも、周波数に対するインピーダンス曲線の1つ又は複数の特徴(特異的特性)に関し、現在使用されている音響変換器と共通している(又は十分類似性がある)音響変換器が識別され、更に、これら識別された参照音響変換器のために事前に決定されたイコライゼーション・パラメータが結合されて、現在使用されている音響変換器のためのオーディオ信号のイコライゼーションのためのイコライゼーション・パラメータが取得される。この結合における識別された参照音響変換器のイコライゼーション係数の重み付けは、例えば、参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスと、の間の類似性の尺度に依存して決定されてもよい。その重み付けはまた周波数依存の方法で選択されてもよく、その方法は例えば、第2参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と比較して第1参照音響変換器の参照インピーダンス曲線が、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスに対して低い周波数範囲においてより強い類似性を示す場合には、第1参照音響変換器の低周波数イコライゼーション・パラメータが第2参照音響変換器のイコライゼーション・パラメータよりも強く選択的に重み付けされ得る方法でよい。対照的に、前記結合においては、第1参照音響変換器の参照インピーダンス曲線と比較して第2参照音響変換器の参照インピーダンス曲線が、実際に使用されている音響変換器の周波数に対する測定されたインピーダンスに対して高い周波数範囲においてより強い類似性を示す場合には、第2参照音響変換器の高周波数イコライゼーション・パラメータが選択的により強く重み付けされることなどが可能である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
方法D:アップロード機能を有するパラメータ生成部
この方法の働きは、方法の拡張版である。この方法は、ユーザーに選択されたパラメータが、ユーザーによって使用されたタイプ又はモデルの情報と共に、データベースへとアップロードされることを許可する。この方法は、データベースに知られていないヘッドホンモデルについてのデータベースの拡張、及び/又はユーザーの意見に基づくパラメータの改善を可能にする。
【国際調査報告】