(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514295(P2015-514295A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】燃料電池システムを動力源とする化粧室
(51)【国際特許分類】
H01M 8/06 20060101AFI20150421BHJP
B64D 11/02 20060101ALI20150421BHJP
B64D 41/00 20060101ALI20150421BHJP
H01M 8/04 20060101ALI20150421BHJP
H01M 8/00 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
H01M8/06 S
B64D11/02
B64D41/00
H01M8/04 J
H01M8/06 W
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-501740(P2015-501740)
(86)(22)【出願日】2013年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】US2013030638
(87)【国際公開番号】WO2013142161
(87)【国際公開日】20130926
(31)【優先権主張番号】61/612,504
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】511158649
【氏名又は名称】エムエージー エアロスペイス インダストリーズ, エルエルシィ
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(72)【発明者】
【氏名】ブーダギィャン, ラズミク
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA33
5H127BA43
5H127BB02
5H127BB18
5H127BB20
5H127BB23
5H127DC87
5H127DC88
5H127DC97
5H127DC99
5H127EE02
5H127EE24
5H127EE25
(57)【要約】
航空機等の乗り物において、化粧室ユニットは、燃料電池システムの、一般的には廃棄される副生成物を含む様々な出力によって動力を与えられ得る。限定はされないが例えば、前記燃料電池システムによって生成される、水及び/又は酸素枯渇空気及び/又は熱エネルギー及び/又は電気エネルギーの組合せは、化粧室ユニットの蛇口及び便器に水を供給するために、化粧室ユニットの電気的需要に対し供給を行うために、化粧室ユニット若しくは化粧室ユニットの表面を加熱し及び/又は消毒し及び/又は乾燥するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムの少なくとも1つの出力を動力源とする化粧室ユニットであって、前記少なくとも1つの出力は、電気エネルギー、熱エネルギー、水、酸素枯渇空気の少なくとも1つを含む化粧室ユニット。
【請求項2】
前記燃料電池システムの少なくとも3つを動力源とする請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項3】
前記燃料電池システムは前記化粧室ユニットに近接しており、前記燃料電池システムにより供給された前記水は少なくとも1つの導管によって前記化粧室内の適切な領域又は前記化粧室内の使用者に導かれる請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項4】
前記酸素枯渇空気は、前記化粧室ユニット又は前記化粧室ユニットの表面を加熱し又は乾燥し又は消毒するため前記燃料電池システムから前記化粧室ユニット内に導かれる請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項5】
前記酸素枯渇空気は床又は天井の複数の導風板又は複数のダクトを介して前記化粧室ユニット内に導かれる請求項4に記載の化粧室ユニット。
【請求項6】
前記燃料電池システムの前記熱エネルギーが前記化粧室ユニットに導かれる請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項7】
前記熱エネルギーと前記酸素枯渇空気との組合せが、前記化粧室ユニットを消毒するために使用される請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項8】
前記燃料電池システムにより供給された前記水は、前記適切な領域又は前記使用者に導かれる前に貯蔵タンクに導かれる請求項3に記載の化粧室ユニット。
【請求項9】
前記化粧室ユニットは航空機内で使用するように構成されている請求項1に記載の化粧室ユニット。
【請求項10】
さらに、前記水が前記適切な領域又は前記使用者に導かれる前に前記水を冷却する熱交換器を含む請求項3に記載の化粧室ユニット。
【請求項11】
航空機で使用する化粧室ユニットに動力を与えるために燃料電池システムを使用する方法であって、
前記燃料電池システムによって供給された水を前記化粧室ユニットの適切な領域又は前記化粧室ユニットの使用者に導くこと、
前記燃料電池システムによって生成された熱エネルギーを前記化粧室ユニットの適切な領域又は前記化粧室ユニットの使用者に導くこと、
前記燃料電池システムによって生成された電気エネルギーを前記化粧室ユニットの適切な領域又は前記化粧室ユニットの使用者に導くこと、
前記燃料電池システムによって生成された酸素枯渇空気を前記化粧室ユニットの適切な領域又は前記化粧室ユニットの使用者に導くことの少なくとも1つを含む方法。
【請求項12】
さらに、前記燃料電池システムによって供給された前記水を便器、洗面台、シャワーの少なくとも1つに導くことを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
重力が、前記水を前記適切な領域又は前記使用者に導く請求項11に記載の方法。
【請求項14】
機構が、前記水を前記適切な領域又は前記使用者に導く請求項11に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記化粧室ユニット若しくは前記化粧室ユニットの様々な表面を消毒し又は加熱し又は乾燥するために前記酸素枯渇空気を前記適切な領域に導くことを含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記燃料電池システムにより供給された前記水を前記適切な領域又は前記使用者に導く前又は後に、前記水を処理することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記酸素枯渇空気を前記適切な領域又は前記使用者に導く前に、前記酸素枯渇空気を処理することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項18】
航空機の化粧室ユニットを洗浄するために燃料電池システムの出力を使用する方法であって、
前記燃料電池システムにより生成された電気エネルギーを前記化粧室ユニットに入るための扉を施錠するため、及び少なくとも前記化粧室ユニットが使用不可能であるか又は洗浄中であることを示す状態表示を明るくするために使用することと、
前記燃料電池システムによって生成された、水、熱エネルギー、酸素枯渇空気の少なくとも1つを前記化粧室ユニットの表面を消毒するために使用することと、
前記状態表示の停止且つ前記化粧室ユニットに入るための扉の開錠を行うこととを含む方法。
【請求項19】
前記熱エネルギーと前記酸素枯渇空気の少なくとも1つが前記化粧室ユニットの表面を乾燥する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記化粧室ユニットが洗浄済みであることを示すために前記状態表示を開始することを含む請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報:本出願は、2012年3月19日に出願された、「燃料電池によって動力を与えられる化粧室」と題された米国仮出願第61/612,504号の優先権を主張し、その内容を援用してここに組み入れる。
【0002】
燃料電池システムを動力源とする化粧室に関するシステム及び方法。
【背景技術】
【0003】
航空機に搭載されている多くの構成要素(部品)は、起動のために電気的な力を必要とする。これらの構成要素の多くは、実際に航空機を航行するために必要とされる電気的構成要素(すなわち、ナビゲーションシステム、燃料計、フライトコントロール、液圧系)からは分離されている。例えば、航空機は、同様に動力を必要とする配膳設備、加熱/冷却システム(暖房/冷房システム)、化粧室、パワーシート、給湯器その他の構成要素も備える。外部からの動力を必要とするであろう具体的な構成要素は、(調理室又は化粧室の)ごみ圧縮器、表面洗浄、エリアヒーター、乗客室換気装置、独立換気装置、エリアライト又はスポットライト(例えば乗客室ライト及び/又は乗客席の読書灯)、給水、凍結を防止するための送水管加熱、乗客の電子機器のための充電ステーション、電気ソケット(電気コンセント)、真空発生器、真空式トイレアセンブリ、雑排水インターフェース弁、非常灯、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0004】
現在、航空機の化粧室ユニットは、地上電源ユニット又は(航空機のエンジン又は補助動力装置(APU)などの)航空機動力発生システムにより動力を与えられている。場合によっては、動力発生ユニットは、化石燃料を必要とし、騒音を伴い、二酸化炭素(CO
2)を排出する。また場合によっては、このようなシステムは航空機エンジンの駆動力発生器から引き出せる動力よりも多くの動力を必要とし、ケロシン燃焼補助動力装置(APU)(又は航空機が飛行中ではない場合には地上電源ユニット)のような追加的な動力源が必要となる。もし追加的な動力源が使用されれば、APUまたは地上電源ユニットが作動されるまで、乗客は化粧室ユニットを使用することができない。化粧室における動力消費(電力消費)はかなり大きくなり得るものであり、何百人もの乗客を乗せた長距離フライトでは殊更大きくなり得る。さらに、場合によっては、動力は使用地点に至るために長い距離を移動しなければならず、その結果、動力が散逸する可能性が生じる。
【0005】
さらに、化粧室の作動には水が必要とされ、よって化粧室は管又はその他の部材によって航空機の主飲料水タンクに連結されなければならない。例えば、水が流れるのを可能とするためにAPU又は電気スイッチがオンとされるまで、コーヒーを淹れることもできず、乗客は化粧室を使用することもできず、手洗い用の水を供給すること等もできない。航空機に搭載されて化粧室ユニット内で水を消費するものの例として、水を供給する蛇口及び便器の真空システムがある。一般的に航空機は、飲料水タンク内に、航空機が地上にある時に積み込まれた大量の飲料水を搭載している。化粧室ユニットは時には熱も必要とし、この熱も一般的には分離したユニットによって生成される。例えば手洗い用の水を温めるため(及び送水管の凍結を防止するため)には加熱された水を用いることが望ましく、乗客室暖房装置においても同様である。
【0006】
燃料電池システムの比較的新しい技術は、圧縮水素である燃料源を空気中の酸素と化合して主生成物として電気エネルギーを生成する。
図4に示すように、燃料電池システムは電気的動力に加えていくつかの出力(出力成分)を有し、これらの他の出力は大抵は活用されておらず、ゆえに廃棄されている。例えば熱出力(熱)、水、及び酸素枯渇空気(ODA)が副生成物として生成される。これらの副生成物は、現在の航空機の動力生成プロセスからのCO
2排出に比べてはるかに有害性が低い。
【発明の概要】
【0007】
本特許において使用されている「発明」、「該発明」、「この発明」、「本発明」の用語は、本特許及び以下の請求項の主題事項のすべてに広く言及することを意図するものである。これらの用語を含む記載は、ここに記載された主題事項を限定しないように、又は、以下の請求項の意味や範囲を限定しないように理解されるべきである。本特許においてカバーされる発明の実施形態は、以下の請求項によって規定されるものであり、この概要によって規定されるものではない。この概要は、発明の様々な態様の高度の概観であり、以下の「詳細な説明」欄で更に記載される概念のいくつかを紹介するものである。この概要は、請求項に記載された主題事項の鍵となる特徴、または本質的な特徴を特定することは意図しておらず、請求項に記載された主題事項の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題事項は、本特許の明細書全体、いずれかの図面又は全ての図面、及び各請求項の適切な部分を参照して理解されなければならない。
【0008】
電気エネルギー、熱エネルギー、水、及び/又は酸素枯渇空気等の燃料電池システムの出力の少なくとも1つを動力源とする化粧室ユニットが開示される。いくつかの実施形態においては、化粧室ユニットは、燃料電池システムの出力の2つ又は3つ又はそれ以上によって動力が与えられる。いくつかの実施形態に従えば、燃料電池システムは化粧室ユニットの近傍に配置され、燃料電池システムの水は複数の導管によって化粧室ユニットの適切な領域又は化粧室ユニットの使用者に導かれる。
【0009】
燃料電池システムによって生成された水及び/又は電気エネルギー及び/又は熱エネルギー及び/又は酸素枯渇空気を航空機に連結された化粧室ユニットの適切な領域又は該化粧室ユニットの使用者に導いて、該化粧室ユニットに動力を与えるための燃料電池システムの使用方法も開示される。
【0010】
航空機の化粧室ユニットを洗浄するために(水、電気エネルギー、熱エネルギー及び/又は酸素枯渇空気のような)燃料電池システムの出力を使用する方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書は、以下の添付図を参照する。図内において、異なる図での類似の参照番号の使用は、類似した又は相似した構成要素を示すことを意図している。
【0012】
【
図1】
図1は、燃料電池システムの入力成分及び出力成分、及び出力成分がどのように使用され得るかの非限定的な例を示す線図である。
【
図2】
図2は、ある実施形態に係る、燃料電池システムによって動力を与えられるように構成された化粧室ユニットを前側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の化粧室ユニットを後側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、燃料電池で使用し得る入力成分、及び出力成分(H
2O、電気、酸素枯渇空気(ODA)、及び熱)の概略的な例を示す。
【
図5】
図5は、ある実施形態に係る、燃料電池システムと連通した貯蔵タンクの斜視図である。
【
図6】
図6A、
図6Bは、燃料電池システムの副生成物の少なくとも1つが化粧室ユニットの中に導かれる、ある実施形態に係る化粧室ユニットの一部を示す。
【
図7】
図7は、燃料電池システムの副生成物の少なくとも1つが化粧室ユニットの中に導かれる、他の実施形態に係る化粧室ユニットの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されるのは、燃料電池システム又はその他の好適な動力源によって動力が供給される化粧室を提供するためのシステム及び方法である。この化粧室は、航空機において使用するものとして論じられるが、決してそのような用途に限定されるものではなく、化粧室を備える、バス、電車又はその他の形態の輸送機関において使用し得る。本明細書において論じられる化粧室はまた、その他の任意の好適な状況で使用される独立型の手洗所(レストルーム)又は可搬式の手洗所であってよい。適切な燃料電池システムによって動力が供給されるときは、化粧室の作動を、輸送機関の(又は周囲環境の)電力系から独立して(又は依存度を減らして)行うことができる。
【0014】
燃料電池システムは、水素又は他の燃料源と酸素リッチガス(例えば空気)とが関わる化学反応からの化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。
図1に示されるように、水素又は他の燃料源は、燃料電池システム内で酸素と化合し、電気エネルギー(電力)を生成する。
図4に示す通り、燃料電池システムは、電気エネルギーとともに、副生成物として水、熱出力(熱)、酸素枯渇空気(酸素減少空気、酸素欠乏空気、酸欠空気;ODA)を生成する。本明細書において開示されるように、電気エネルギー、熱、水、及びODAのいくつかまたは全てを、化粧室(限定はされないが、例えば航空機用の化粧室)に動力を供給するために使用し得る。
【0015】
陽子交換膜燃料電池(PEMFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、直接メタノール形燃料電池(DMFC)、アルカリ電解質形燃料電池(AFC)、りん酸形燃料電池(PAFC)を含む、適切な燃料電池システムを使用し得る。しかし、使用し得る燃料電池システムはこれらには限定されない。その他の現存する、又は将来使用される燃料電池システム技術も使用し得る。その非限定的な一例は、ハイブリッドを用いた方法である。
【0016】
図2、3は、
図3に示される燃料電池システム50、又は他の好適な燃料電池システムによって動力が供給されるよう構成された化粧室ユニット10の、非限定的な実施形態を示す。
図2に示されるように、化粧室ユニット10は、便器12、洗面台14、床16、様々な表面18を含み得る。他の実施形態では、化粧室10は、シャワー、ヘアドライヤー、ハンドドライヤー、おむつ交換ステーション、ごみ圧縮器、その他の好適な特徴又は要素を備えてもよい。これらのうちのいくつかについては、以下において取り上げる。
【0017】
図3に示されるように、様々な管(導管)20(パイプ、ホースその他の好適な線状物にし得る)が、燃料電池システム(例えば燃料電池システム50)と化粧室ユニット10とを接続し得る。いくつかの実施形態では、燃料電池システムからの水を貯蔵用タンク(限定はされないが、一例として
図5に示すタンク26)に導くために入力管22を使用し得る。また、この貯蔵された水を貯蔵用タンクから化粧室ユニットの適切な管又は領域に導くために出力管24(
図5)を使用し得る。他の実施形態では、タンクは使用されず、水は、燃料電池システムから直接化粧室ユニットに導かれる。水は、手の洗浄又はその他の洗浄のため洗面台14の蛇口に導かれてよく、便器12に導かれてよく、シャワー(不図示)に導かれてよく、またはその他の目的のために導かれてもよい。燃料電池システムの位置次第で、水を化粧室ユニットの適切な領域に分配するために、ポンプその他の適切な機構を使用し得る。もし燃料電池システムが当該適切な領域の上方に配置されていれば、水はその適切な領域まで、重力によって流れていくであろう。
【0018】
ある実施形態においては、洗面台に導かれて使用された水は、回収され、紫外光その他によって処理され、便器に導かれる。場合によっては、燃料電池システムからの水(又は洗面台からの使用済みの水)は、排泄物保持タンクに導かれて、内部に貯蔵された排泄物を水洗する。
【0019】
燃料電池システム及び貯蔵タンクは化粧室ユニット10の一部であってよいが、燃料電池システム及び/又は貯蔵タンクは、航空機上の任意の好適な位置に置かれてもよい。例えば、航空機の他の箇所(局面)に動力を供給するために使用される燃料電池システムを、化粧室に動力を供給するためにも使用することができ、又は、独立した燃料電池システムを用いて化粧室に動力を供給してもよい。化粧室で必要とされる動力は、1つ又は複数の燃料電池システムによって直接に供給され得る。又は、化粧室で必要とされる動力は、燃料電池システムその他によって生成された電力によって充電された(電池又はスーパーキャパシター等の)任意の好適な電気エネルギー貯蔵器(蓄電器)によって供給又は補充され得る。補充的な動力は、地上電源ユニット又は航空機動力ユニットのような、航空機の典型的な動力源によっても供給され得る。
【0020】
もし燃料電池システムが化粧室ユニットの内部又はその近傍に置かれていれば、動力は使用地点の近傍で生成され、長い距離を進む必要がなく、よって動力の散逸は最小化される。さらに、もし燃料電池システムが化粧室ユニットの内部又はその近傍に置かれていれば、燃料電池システムは、要求されるエネルギー出力/動力出力をより安定させてエネルギーの浪費を少なくすべく、他の航空機システムに動力を供給するために使用されてもよい。ここで、他の航空機システムとしては、限定はされないが一例として、乗客シート、乗客用エンタテイメントシステム、非常用照明、読書灯、調理室などであり、これらのシステムが化粧室の近傍にあるか否かは問わない。
【0021】
必要であれば2つ以上の燃料電池システムを使用してよく、1つ又は複数の燃料電池システムのサイズは、化粧室システム及び/又はその他のシステムのエネルギー要求/動力要求に基づいたものであってよい。いくつかの実施形態においては、燃料電池システムは選択的に(オプションとして)、ピーク時のエネルギー需要/動力需要を能率的に引き受けて燃料電池システムの要求エネルギー出力/要求動力出力の減少を補助するため、とりわけバッテリーシステム、コンデンサバンク及び/又は動力統御システムなどの付属物を有し得る。
【0022】
図2、
図3に示されるような、化粧室に動力を供給するために1つ又は複数の独立した燃料電池システムが使用される実施形態においては、(限定はされないが、例えば
図5に示すタンク25のような)水貯蔵タンクは、選択的に(オプションで)、航空機の主飲料水タンクと連通していてもよい。このようにして、もし燃料電池システムから生成された水が化粧室ユニットにおける水の需要を十分に満たせない場合には、航空機の主水タンクからの水も使用することができる。また、燃料電池システムから生成された水が超過となれば、この水は航空機の主飲料水タンクに導かれ得る。燃料電池システムからの熱水も、主飲料水タンクに導かれ得る。これにより、関与する量次第で、燃料電池システムからの熱水が適温に薄められ(冷却され)、及び/又は既に主飲料水タンクに貯蔵されている水が熱せられる。
【0023】
燃料電池システム50のような燃料電池システムは、副生成物として水蒸気を生成する。この水蒸気を凝縮し、これから水を回収するために、熱交換器を使用し得る。熱交換器は、シャワー、手、顔又はその他の体の一部の洗浄、排泄物保持タンクの水洗、その他の用途に適するよう水を冷却するためにも使用し得る。燃料電池システムから回収される水は約摂氏65度〜約摂氏80度であるから、燃料電池システムからの水を化粧室の洗面台及び/又はシャワーで使用すれば、化粧室に供給される水を加熱するために一般的に使用される給湯器が必要でなくなり、コスト及び必要な貯蔵空間の削減となり、エネルギーの節約となる。もし熱交換器が使用されるのであれば、熱交換器は、燃料電池システムから回収された熱水が適切な温度及び/又は所望の温度に冷却され得るように、制御器を有してもよい。
【0024】
水蒸気から一旦水が回収されれば、この水は選択的に(オプションで)上述の貯蔵タンクに導かれてもよく、及び/又は更なる処理を受けてもよい。例えば、この水は、水中の病原微生物を駆除するために紫外光に当てられてもよい。代替的に又は追加的に、この水は、バクテリアその他の病原微生物を取り除くために塩素処理されてよく、フィルターにかけられてよく、又はその他の処理を受けてもよい。
【0025】
燃料電池システムのその他の副生成物は、高温の酸素枯渇空気(ODA)である。高温のODAは、便器の座面、シンク領域、床、任意のハンドル、ごみ箱、及びその他の所望の表面など、化粧室の表面18を乾燥及び/又は消毒及び/又は加熱するのに十分な温度で生成される。ここで、その他の所望の表面とは、限定はされないが、例えばおむつ替えステーションの表面である。
【0026】
時として、燃料電池システムによって生成されるODAは水蒸気を含む。この水蒸気を取り除くか又は別の方法で使用前にODAを乾燥させるために、凝縮器その他の好適な機構を使用し得る。
図6A、
図6Bに示される通り、燃料電池システムからの高温のODA(及び/又は熱)は、天井又はその他の好適な位置にある空気導管28を通して、化粧室ユニットの内部に導かれ得る。高温のODA及び/又は熱は、化粧室ユニット及び/又は化粧室ユニットの表面を温めるために、任意の濡れた面を乾燥するために、及び/又は空気中や任意の表面の病原微生物を殺すために使用し得る。いくつかの実施形態においては、高温のODA及び/又は熱は、導管を通って化粧室ユニットの中に、定期的又は不定期の噴出等によって、断続的に導かれる。ある実施形態では、この洗浄工程の間は乗客が化粧室ユニット内部に入れないように、化粧室ユニット10に鍵がかけられる。
【0027】
図7に示される通り、燃料電池システムからのODA(及び/又は熱)は、導風板(側板、シュラウド)、又はその他の床の近くの排出口30、及び/又は限定はされないが例えば化粧室ユニットの床沿いの微小穴40のような床上に設けられたあるいは床に沿って設けられた排出口を通して、化粧室ユニットに導かれ得る。このODAは、上方に移動して化粧室ユニットのその他の表面を乾燥し、加熱し及び/又は消毒する前に、床を加熱し、乾燥し及び/又は消毒するために使用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、高温のODA及び/又は熱は、使用者の手又は髪を乾かす電気的ハンドドライヤー又はヘアドライヤーの代わりとして又はそれに加えて使用し得る。高温のODA及び/又は熱はまた、おむつ交換ステーションの表面を温めるため及び/又は消毒するため及び/又は乾燥するために導かれ得る。高温のODA及び/又は熱は化粧室ユニット自体を温めるためにも使用され得る。
【0029】
高温のODAを、化粧室ユニットに入る際に、又はその前に処理することも可能であろう。例えば、臭気及び病原微生物を取り除くのを補助するため、酸化剤、芳香剤及び/又は空気イオン化剤をODAに混合することが可能である。基本的には、化粧室ユニットに押し込まれた高温のODAは、よどみ、臭気に満ちた空気を新しい空気と入れ替えるのを補助することができるであろう。この方法で、ODAは化粧室ユニットに独立した換気装置を与え得る。いくつかの実施形態では、ODAを真空発生器として使用することができる。
【0030】
上述の通り、燃料電池システムは、化粧室ユニットで使用し得る電気的エネルギーも生成する。燃料電池システムから生成される電気的エネルギーの非限定的な用途は以下を含む。(1)化粧室の(エリアライト又はスポットライトを介した)照明;(2)煙探知機又は消火システムの作動;(3)電気式ハンドドライヤー又は電気式ヘアドライヤーの作動;(4)化粧室の状態を示すサインの照明(限定はされないが、例えば、化粧室は「清掃中である」及び/又は「使用中である」及び/又は「使用可能である(空室である)」及び/又は「清掃済みである」及び/又は「故障中である」など);(5)電気コンセントへの電力の供給;(6)水ポンプ、熱交換機及び/又は化粧室のごみ圧縮器の作動;(7)化粧室ユニットのドアの自動施錠及び自動開錠。燃料電池システムから生成された動力は、化粧室において従来の電気が使用されている、他の任意の好適な方法で使用出来る。例えば、電気的エネルギーは便座シートを温めるためにも使用でき、洗面台又はシャワーで使用するために冷たい水(例えば航空機の主水タンクからの冷たい水)を温めるためにも使用でき、又はその他の好適な目的のために使用できる。場合によっては、燃料電池システムから生成された電気的エネルギーは、化粧室において必要とされる電力の相当部分又は全部を満たすために使用される。
【0031】
上記した燃料電池システムの副生成物の各々は、化粧室ユニットの様々なニーズを満たすため、単独で、又は他の副生成物若しくは他の動力源との組合せで使用され得る。多くの例の1つとして、副生成物である水及び/又はODA及び/又は熱は、表面洗浄のために使用され得る。生成された動力及び水の一方又は両方は、雑排水インターフェース弁、及び送水管の加熱に使用し得る。さらに、上述した化粧室のごみ圧縮器は、燃料電池システムから生成された熱及び電気エネルギーの両方を使用し得る。
【0032】
化粧室ユニットは航空機の主客室(メインキャビン)内、ファーストクラス用キャビン内で使用し得るし、休憩中の乗務員に提供する設備を向上させるため乗務員用の休憩室に適合した構成とし得る。化粧室ユニットは、商業用の航空機又は個人使用の航空機で使用し得る。
【0033】
上述したように、化粧室に動力を供給するために燃料電池システムを使用することにより、化石燃料の使用を低減し得て、騒音及びCO
2の排出も低減し得る。いくつかの実施形態においては、燃料電池システムの副生成物のいくつか又は全部は、化粧室ユニットに動力を与えるのに利用され、これにより燃料電池システムの効率(仕事率)が向上する。加えて、燃料電池システムから回収した水を化粧室内その他で使用することで、航空機内に運び込み、飲料水タンクに貯蔵する必要のある水の量を減らすことができる。これにより、航空機の重量を減らすことができ、離陸時及び航行中のコスト節減につながる。さらに、飲料水タンクに貯蔵するべき水の量が減るということは、より小さいタンクを使用し得るということを意味し、結果として水タンクの重量は軽くなり、水タンクを収容するために割り当てられる空間は小さくなる。
【0034】
上記は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明し、記述するために提示したものである。これらの実施形態に対するさらなる変形、及び調節は当業者にとっては明白であろうし、本発明の範囲や精神から逸脱することなくなされ得る。一例として、燃料電池システムの代わりに、航空機の主動力系から独立した他の好適な動力源を使用し得る。
【国際調査報告】