特表2015-514526(P2015-514526A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-514526投与終了条件検出のための薬剤送達装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514526(P2015-514526A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】投与終了条件検出のための薬剤送達装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20150424BHJP
【FI】
   A61M5/145 508
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-507509(P2015-507509)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(85)【翻訳文提出日】2014年12月16日
(86)【国際出願番号】EP2013058456
(87)【国際公開番号】WO2013160333
(87)【国際公開日】20131031
(31)【優先権主張番号】12165249.9
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/639,393
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ホルム, ペア アイナール ポントゥス
(72)【発明者】
【氏名】モンク, イェンス オーウ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066QQ17
4C066QQ24
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ58
4C066QQ73
4C066QQ82
(57)【要約】
加圧されるシステムにおいて投与終了条件を検出するための方法であって、方法は、流体が充填された可変容量リザーバを有するシステムを提供するステップ(a)であって、リザーバは、弾性的変形可能部分と、出口と、加圧手段と、リザーバの内圧に伴い変動する弾性的変形可能部分の属性を検出するための手段とを含む、提供するステップ(a)と、力を加えることによってリザーバを加圧して所望の量の流体を吐出するために、加圧手段を作動させるステップ(b)であって、これにより弾性的変形可能部分を変形させる、作動させるステップ(b)と、作動させるステップの後、弾性的変形可能部分が初期構成に復帰しているときに弾性的変形可能部分の関連する属性を測定するステップ(c)と、測定される属性に対する値を一又は複数の閾値と比較するステップ(d)と、所与の閾値が到達されたとき及び/又は所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときに、表示をユーザに提供するステップ(e)とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されるシステムにおいて投与終了条件を検出する方法であって、
(i)弾性的変形可能部分と出口とを含む、流体が充填された可変容量リザーバであって、前記弾性的変形可能部分は初期構成を有する、リザーバと、
前記リザーバの内部を加圧し、前記加圧により流体を前記出口を通して吐出する手段と、
前記リザーバ内の内圧に伴い変動する、前記弾性的変形可能部分の属性、を測定するための手段と
を含む、システムを提供するステップ、
(ii)前記リザーバを加圧して所望の量の流体を吐出するために、力を加えることによって前記加圧手段を作動させるステップであって、それにより前記弾性的変形可能部分を変形させる、作動させるステップ、
(iii)前記作動させるステップの後、前記弾性的変形可能部分が前記初期構成に復帰しているときに前記弾性的変形可能部分に関連する属性を測定するステップ、
(iv)前記測定される属性に対する値を一又は複数の閾値と比較するステップ、
並びに、
(v)所与の閾値が到達されたとき及び/又は
所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときに、
ユーザに表示を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記所与の閾値が到達されたとき、前記所望の量の流体の吐出が終了したという表示が提供される、及び/又は
前記所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったとき、前記リザーバ出口に閉塞状態が適用されるという表示が提供される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一又は複数の閾値は、
前記リザーバの加圧よりも前に決定される値、
前記リザーバの加圧動作の終端で決定される値
のうちの1つである基準値に基づいて決定される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記提供されるシステムは、
光を反射するよう適合される反射面と、
光を前記反射面上に向ける光源と、
前記反射面から反射した前記光源からの光を測定するよう適合される光センサであって、測定値は前記弾性的変形可能部分の前記変形に伴い変動する、光センサとをさらに含み、
前記測定される属性は前記反射面からの反射光である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記提供されるシステムの前記リザーバは、
概して円筒形の構成を有する主部と、
前記主部に配置され軸方向に変移可能なピストンとを含み、前記ピストンは、
前記弾性的変形可能部分の少なくとも一部と、
前記反射面とを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記測定される属性は、
前記リザーバ内の圧力、
前記加圧手段の一部における張力
のうちの1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジ、又は薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジを受けるよう適合された区画であって、前記カートリッジは、本体部分と、軸方向に変移可能な弾性的変形可能ピストン(20)であって、前記弾性的変形可能ピストンの近位部分は光を反射するよう適合される表面(25)を伴う、弾性的変形可能ピストンと、流体導管と流体連通して配置されるよう適合される遠位出口部分とを含む、カートリッジ又は区画、
装填されたカートリッジの前記ピストン近位部分と係合するよう適合された、軸方向に変移可能なピストン駆動部材(10)、を含む吐出アセンブリであって、前記ピストン駆動部材は遠位方向に移動可能であり、それにより装填されたカートリッジから薬剤が吐出され、それにより前記ピストンは前記ピストン駆動部材により初期構成から弾性的に変形される、吐出アセンブリ、
装填されたカートリッジの前記ピストン近位部分上に少なくとも部分的に向けられる光を提供する光源(12)、
前記ピストン近位部分から反射した前記光源からの光を測定するよう適合される光センサ(11)であって、前記光センサは前記ピストンの前記変形に伴い変動する測定値を提供するよう配置される、光センサ(11)、及び、
前記光センサに結合される制御装置(30)
を含む、薬剤送達装置であって、
前記制御装置は、装填された位置にあるカートリッジを伴い、
前記ピストンが前記カートリッジ内の圧力上昇に対応して前記ピストン駆動部材によって弾性的に変形されることにより特徴付けられるストローク終了状態を、前記ピストン駆動部材が設定投与量の完全な吐出に対応する位置に移動されたそのときに検出するよう、
前記ストローク終了状態の検出後、前記ピストンが前記初期構成に復帰しているときに前記ピストン近位部分から反射した前記光源からの光を測定するよう、
測定される光の値を一又は複数の閾値と比較するよう、
並びに、
所与の閾値が到達されたときにユーザに表示を提供するよう、及び/又は
所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときにユーザに表示を提供するよう、
構成される、薬剤送達装置。
【請求項8】
前記所与の閾値が到達されたときに、前記所望の量の流体の吐出が終了したという表示が提供される、及び/又は
所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときに、前記リザーバ出口に閉塞状態が適用されるという表示が提供される、
請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記閾値は、
前記リザーバの加圧よりも前に決定される値、
前記リザーバの加圧動作の終端で決定される値、
のうちの1つである基準値に基づいて決定される、請求項7又は8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記光源及び前記光センサは、前記ピストン近位部分と前記ピストン駆動部材との間の距離を示す出力を提供するよう適合された、近接度センサシステムを少なくとも部分的に提供する、請求項7から9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記吐出アセンブリが電子的に制御され、前記制御装置は前記吐出アセンブリに結合されて、設定された投与量を吐出するために前記吐出アセンブリを制御するよう適合される、請求項7から10のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記光源及び/又は前記光センサは、前記ピストン駆動部材に連結されて前記ピストン駆動部材と共に移動する、請求項7から11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、薬剤が充填されたカートリッジを受けるよう及び該カートリッジからある投与量を吐出するよう適合された、薬剤送達装置に関する。より詳細には、本発明は、投与終了条件の検出後、ユーザに関連する事象をユーザに知らせることに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示においては糖尿病治療が主に参照されるが、これは本発明の使用の一例に過ぎない。
【0003】
薬剤が充填されたカートリッジを受けるよう及び設定された投与量をカートリッジから吐出するよう適合された、永続的な薬剤送達装置の最も一般的なタイプは、手動の手段により又は投与量設定中に付勢されたばねにより駆動され、カートリッジは、初期には近位位置を占め且つ軸方向に変移可能なピストンを含むタイプである。装置は、ペン型の形態又はより箱型に近いドーザ(doser)と称される形態であり得る。利便性の向上、ユーザフレンドリー性、及び、例えば吐出データの検出と記憶などの付加的なフィーチャを提供するために、薬剤送達装置は、典型的には歯車配置を通してピストンロッドを駆動する電子制御モータの形態の、電気的に駆動される手段を備え、これは例えば米国登録特許第6,514,230号及び米国特許出願公開第2011/306927号に示される。例えば米国登録特許第7,193,521号に示される注入ポンプにも、同じ配置が使用されている。新しいカートリッジがモータ駆動の薬剤送達装置内に装填されるとき、まずピストンが近位方向に移動されることによって、満たされたカートリッジの挿入が可能となり、その後ピストンロッドはカートリッジピストンとの接触へと移動され、薬剤送達装置は操作状態へと移行される。新しいカートリッジの装填は手動で実施されてもよく、すなわち、ピストンロッドを前方及び後方に移動させるボタンをユーザが駆動してもよく、又は、部分的にもしくは完全に自動でもよく、例えば装置がカートリッジカバーが開けられたことを検出してピストンロッドを後方に移動させ、これによりユーザは使用済みカートリッジを取り除くことができ、新しいカートリッジを挿入しカバーを閉じる。カバーが閉じられカートリッジが挿入されたことを装置が検出すると、ピストンロッドは自動的にピストンとの係合へと進行され、その後装置は、使用のための、又は例えばカートリッジ内からもしくは装着された針から空気を追い出すユーザ操作による空打ちなどのさらなる初期操作のための、準備が整う。
【0004】
上述のように、カートリッジが装填された後、薬剤が針先に現れて目視できるまで空打ちを実施することにより、システムが正しく動作しているかをチェックすることができる。このようなチェックは、新しいカートリッジが装填されたとき及び毎回新しい針が取り付けられたときの両方で初期に実施されることができ、これは針に欠陥もしくは目詰まりがないかをチェックするためであり、新しい針の取り付け時にも推奨される。針を複数回使用することは推奨されていないが、一度使用した針が正しく動作するかも、薬剤送達前にその都度チェックされるべきである。しかしながら、これら推奨に全てのユーザが従うわけではないため、皮膚への挿入中の外的な事象によって又はカートリッジ内に含まれる内的な事象(例えば薬剤中に形成された結晶もしくは前回の注射からの薬剤が乾いたものなど)によって、針が使用中に目詰まりすることもあり得る。
【0005】
これに対応して、モータ駆動の薬剤送達装置における針の目詰まり条件を検出する、又は類似の装置に対しては、継続的な薬剤投与のための薬剤送達ポンプにおける目詰まりした注入針もしくは注入カテーテル検出するよう適合された、検出システムが提案されてきた。これらシステムは、カートリッジの下流にある例えば針又はカテーテルなどの注入導管が目詰まりしていると、システム内の圧力上昇によって直接的もしくは非直接的に目詰まりを検出することができるという事実に基づいている。例えば、ピストンの移動への抵抗が増大するとき、多くの制御システムにおいてモータへの電流が増大し、次いでこれが検出され圧力上昇の決定に使用され、したがって針又はカテーテルの目詰まりが想定されることができる。あるいは米国特許出願公開第2003/0073954号は、閉塞したシステムにおける圧力上昇を検出するため、電子スイッチ及び歪みゲージセンサの使用を開示する。米国特許出願公開第2011/0172594号は、閉塞検出センサが、例えば圧力センサ、静電容量センサ、光学センサ、又は他のタイプのセンサによって、閉塞検出部分の形状変更を検出するよう構成されることができることを開示する。しかしながら、幾つかのシステムにおいて及び幾つかの条件下においては、閉塞が、実際の閉塞を検出するのに十分なパラメータの変化をもたらさないこともあり得る。例えば、設定される投与量が(例えば従来の100IU/mlの3mlインスリンカートリッジにおける5IU未満など)少ないカートリッジベースのシステムでは、例えばピストンロッドなどのピストン駆動部材の対応する軸方向変移が、典型的には高分子ゴム材から製造されるカートリッジピストンに吸収されてしまう場合がほとんどであろう。この方式では、ピストン駆動部が、ピストンを変形することのみを伴い投与終了位置まで完全に前方へ移動されるため、駆動システム内に対応する圧力又は張力の上昇を伴わない。実際に、カテーテル輸液ラインなどのさらなる弾性システムがカートリッジと注入針との間に配置される場合には、ピストン駆動部の移動がさらに、駆動システム内の対応する圧力もしくは張力の上昇なしに吸収され得る。
【0006】
さらに、弾性ゴムピストンを使用する注射システムは、ピストン駆動が前進するとピストンがある程度圧縮されることが特徴である。ピストン駆動が投与終了位置に到達して移動を停止すると、ピストンはもとの形態へと膨張する。選択された投与量は、ピストンが注射を開始する直前の形態に到達するまでは完全に送達されない。どの程度ピストンが圧縮されるかは主にピストンとガラスカートリッジとの間の摩擦に、及びこれに加えて液体が極細の針内を通過するときに上昇する逆圧に、依存する。このことが、ユーザが幾らかの期間、典型的には6秒間、針を挿入したままに保つことを推奨される主な理由である。6秒経過しないうちに針を取り除くと、最大1IUの投与不足となることがあり、これは少ない投与量においてはかなりの量である。6秒間の待機は面倒なことであり、投与不足につながるという危険を伴いながらも、これを無視するユーザが存在するかもしれない。投与量の95%を上回る量が、ピストン駆動を停止してから1〜2秒間で送達される場合がほとんどである。
【0007】
上述を考慮し、本発明の目的は、薬剤が充填されたカートリッジを受けるよう適合される、方法及びモータ駆動薬剤送達装置を提供することであり、方法及び装置は、ユーザに関連する投与終了条件(事象)すなわち投与の形式的な終了に後続する、一又は複数の条件を検出するよう適合される。条件は単純且つ効率的な方式で検出されるべきであり、配置は高感度であって、費用効率及び信頼性が高い。本発明の特有の目的は、所与の投与量が(ほぼ)完全に送達されたことを検出するシステムを提供することであり、これは6秒が経過するよりも前である場合がほとんどである。本発明のさらなる特有の目的は、例えば目詰まりした針など、出口の目詰まりを検出するシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の開示において、上述の一又は複数の目的に対処する、又は、後述の開示から及び例示的実施形態の記載から明らかな目的に対処する、実施形態及び態様が記載される。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、加圧されるシステム内の投与終了条件を検出する方法が提供され、方法は、システムを提供するステップであって、システムは、弾性的変形可能部分と出口とを含む、流体が充填された可変容量リザーバであって、前記弾性的変形可能部分は初期構成を有する、リザーバと、リザーバの内部を加圧することにより流体を出口を通して吐出するための手段と、リザーバ内の内圧に伴い変動する弾性的変形可能部分の属性を測定するための手段とを含む、提供するステップを含む。方法はさらに、力を加えることによってリザーバを加圧して所望の量の流体を吐出するために、加圧手段を作動させるステップであって、これにより弾性的変形可能部分を変形させる、作動させるステップと、作動させるステップの後、弾性的変形可能部分が初期構成に復帰しているときに弾性的変形可能部分の関連する属性を測定するステップと、測定された属性に対する値を一又は複数の閾値と比較するステップと、所与の閾値が到達されたとき及び/又は所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときに、表示をユーザに提供するステップとを含む。
【0010】
このように方法は、加圧手段の作動が停止した後に起こる、ユーザに関連する「投与終了」条件を検出するよう適合されて提供され、例えば、所与の閾値が到達されたときには所望の量の流体の吐出が(ほぼ)終了したという表示が提供される、及び/又は、所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときにはリザーバ出口に閉塞状態が適用されるという表示が提供される。
【0011】
本発明の文脈において、到達される閾値は、測定される属性の特有の値であるのみならず測定された属性の変化率の形態であり得る。
【0012】
作動させるステップの後に測定された属性に対する値は、属性の幾つかの離散測定又は連続測定に基づいて決定され得る。実際、連続測定も所与のサンプリングレートで通常は行われ得る。
【0013】
一又は複数の閾値は、リザーバの加圧よりも前に決定される値又はリザーバ加圧動作の終端で決定される値などの、基準値に基づいて決定され得る。例えば、基準値はリザーバの加圧の直前に決定されていてもよい。この値に基づいて投与終了値との差が計算され、これは閾値の計算に再度使用されることができる。例えば閾値は、2つの値の間の差の90%が復帰されたときに対応してもよく、これは設定された投与量がほぼ完全に吐出されたときすなわち典型的には1〜2秒後を示す。これに対応して、例えば上記と同じ所与の閾値が、例えば6秒間の所与の期間内に到達されなかったとき、閉塞状態が検出され得る。他の値が使用されてもよい。
【0014】
提供されるシステムは、光を反射するよう適合された反射面と、光を反射面上に向ける光源と、反射面から反射した光源からの光を測定するよう適合された光センサとさらに含み、測定された光の値は弾性的変形可能部分の変形に伴って変動し、測定される属性は反射面から反射した光である。
【0015】
提供されるシステムのリザーバは、概して円筒形の構成を有する主部と、主部に配置され且つ軸方向に変移可能なピストンとを含み、ピストンは弾性的変形可能部分の少なくとも一部と、反射面とを含む。
【0016】
反射光の代替として、測定される属性はリザーバ内の圧力又は加圧手段の一部における張力であり得る。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジ、又は薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジを受けるよう適合された区画、を含む薬剤送達装置が提供され、カートリッジは概して円筒形の本体部分と、軸方向に変移可能な弾性的変形可能ピストンであって、弾性的変形可能ピストンの近位部分は光を反射するよう適合される表面を伴う、弾性的変形可能ピストンと、流体導管と流体連通して配置されるよう適合される遠位出口部分とを含む。装置は、軸方向に変移可能なピストン駆動部材を含む吐出アセンブリであって、ピストン駆動部は装填されたカートリッジのピストンの近位部分と係合するよう適合され、ピストン駆動部材は遠位方向に移動可能であり、これにより装填されたカートリッジから薬剤を吐出し、これによりピストンはピストン駆動部材によって初期構成から弾性的に変形される、吐出アセンブリと、装填されたカートリッジのピストンの近位部分上に少なくとも部分的に向けられる光を提供する光源と、ピストンの近位部分から反射した光源からの光を測定するよう適合される光センサであって、光センサはピストンの変形に伴い変動する測定値を提供するよう配置される、光センサと、光センサに結合される制御装置とをさらに含む。制御装置は、設定された投与量の吐出に相当する位置にピストン駆動部材が移動されたそのときに、ストローク終了状態を(装填された位置にあるカートリッジを伴い)検出するよう構成され、ストローク終了位置は、ピストンがカートリッジ内の圧力上昇に対応してピストン駆動部材によって弾性的に変形されることによって特徴付けられ、制御装置は、ストローク終了状態の検出後、ピストン近位部分から反射した光源からの光を測定するよう、及び、測定された光の値を一又は複数の閾値と比較するよう構成される。制御装置は、所与の閾値が到達されたとき及び/又は所与の時間期間内に所与の閾値が到達されなかったときに、ユーザに(例えば、所望の量の流体の吐出が終了したという)表示を提供するようさらに構成され、表示は例えば、リザーバ出口に閉塞状態が適用されることであり得る。
【0018】
閾値は、リザーバの加圧よりも前に決定される値及びリザーバを加圧する動作の終端で決定される値、のうちの1つである基準値に基づいて、決定され得る。光源及び光センサは、ピストン近位部分とピストン駆動部材との間の距離を示す出力を提供するよう適合された、近接度センサシステムを少なくとも部分的に提供する。
【0019】
例示的実施形態では吐出アセンブリが電子制御され、制御装置は吐出アセンブリに結合されて、設定された投与量を吐出するために吐出アセンブリを制御するよう適合される。光源及び/又は光センサは、ピストン駆動部材に結合され得る及びピストン駆動部材と共に移動し得る。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、例示的な薬剤送達装置が提供され、装置は、薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジ、又は薬剤が充填され装填された位置にあるカートリッジを受けるよう適合された区画を含み、カートリッジは本体部分と、軸方向に変移可能な弾性的変形可能ピストンであって、弾性的変形可能ピストンの近位部分は光を反射するよう適合される表面を伴う、弾性的変形可能ピストンと、流体導管と流体連通して配置されるよう適合される遠位出口部分とを含む、カートリッジ又は区画、並びに、装填されたカートリッジのピストン近位部分と係合するよう適合され且つ軸方向に変移可能な、ピストン駆動部材、を含む吐出アセンブリであって、ピストン駆動部材は遠位方向に移動可能であり、これにより装填されたカートリッジから薬剤を吐出し、これによりピストンはピストン駆動部材によって弾性的に変形される、吐出アセンブリ、を含む。光源は、装填されたカートリッジのピストン近位部分上に少なくとも部分的に向けられる光を提供し、光センサは、ピストン近位部分から反射した光源からの光を測定するよう適合され、光センサはピストンの変形に伴って変動する測定値を提供するよう配置される。制御装置が光センサに結合される。装填された位置にあるカートリッジを伴い、制御装置は、ピストン駆動部材が設定投与量の吐出に相当する位置へと移動されたそのときに、第1の「ストローク終了」状態を検出するよう構成され、第1の状態は、ピストンがカートリッジ内の圧力上昇に対応してピストン駆動部材により弾性的に変形されることにより特徴付けられる。次いで、所与の時間の経過後、近位ピストン部分からの反射光に基づいて投与終了センサ値を決定し、投与終了センサ値を基準値と比較するよう構成される。制御装置は、投与終了センサ値と基準値との間の差に基づいて、(i)弾性的に変形されたピストンが弛緩したときに非閉塞状態を決定するよう構成され、弛緩の程度は、変形されたピストンに蓄えられたエネルギーにより、カートリッジから接続された流体導管を介し薬剤が吐出されたことによって、カートリッジ内で上昇した圧力が減少したことを示す程度であり、及び、(ii)弾性的に変形されたピストンが弛緩できないときに閉塞状態を決定するよう構成され、弛緩できないことより、接続された流体導管が閉塞されていることが示される。この配置によって、薬剤送達装置からの比較的少ない投与量の薬剤の送達における閉塞状態を検出することが可能となる。代替的に、光源及び光センサの代わりに音波発生器及び音響センサが使用されることもできる。
【0021】
吐出アセンブリは機械的に又は電子的に制御され得、制御装置は吐出アセンブリに結合されて、設定された投与量を吐出するために吐出アセンブリを制御するよう適合される。光源及び/又は光センサは、ピストン駆動部材に結合され得る及びピストン駆動部材と共に移動し得る。
【0022】
基準センサ値は種々の方式で決定され得、例えばピストン駆動が設定投与量を吐出するために移動されるよりも前に、又はピストン駆動が設定投与量の吐出に対応する位置へと移動されたそのときに、決定されてもよい。基準センサ値は既定値であってもよく、又は、一又は複数の決定された値から計算されてもよい。代替的に、投与終了センサ値を決定する代わりに、例えばセンサ値の変化率を決定することによって、センサ出力がある時間期間に渡り分析され、閉塞又は非閉塞状態の決定に使用されてもよい。
【0023】
光源及び光センサは、ピストン近位部分とピストン駆動部材との間の距離を示す出力を提供するよう適合された、近接度センサシステムを少なくとも部分的に提供し得る。このような出力は、初期のカートリッジ装填中にピストン駆動部材の移動を制御するために使用され得る。
【0024】
制御装置、及び、それらの支持コンポーネントもしくは本明細書に記載の機能に適した電子コンポーネントの他の任意の構成は、CPUもしくはマイクロコントローラの形態であり得る。
【0025】
上述の薬剤送達装置は、薬剤が充填されたカートリッジとの組み合わせで提供され得、カートリッジは、近位部分を有し且つ軸方向に変移可能なピストンを含み、近位部分は光を反射するよう適合された表面とピストン駆動部材を係合するよう適合された係合部分とを含む。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、加圧されるシステムからの出口の閉塞を検出する方法が提供され、方法は、(a)システムを提供するステップであって、システムは、弾性的変形可能部分及び出口を含み且つ薬剤が充填された可変容量リザーバと、リザーバの内部を加圧するための手段であって、これにより流体を出口を通して吐出する、加圧するための手段と、リザーバ内の内圧に伴い変動する弾性的変形可能部分の属性を検出するための手段とを含む、提供するステップと、(b)力を加えることによりリザーバを加圧して所望の量の流体を吐出させるために加圧手段を作動させるステップであって、これにより弾性的変形可能部分が変形される、作動させるステップと、(c)作動させるステップの後、所与の時間経過後にもしくは所与の時間に渡り、弾性的変形可能部分に関連する属性を測定するステップと、(d)測定された属性を基準値と比較するステップと、(e)比較するステップの結果に基づいて、リザーバ出口に適用される(i)非閉塞状態もしくは(ii)閉塞状態を決定するステップとを含む。システムの正確性を向上させるため複数の基準値が使用されてもよい。記載された方法により、通常はシステムの正常動作に関連付けられる圧力上昇に基づいて、閉塞の検出が可能となる。
【0027】
所与の基準値は、測定された属性の変化率、リザーバの加圧よりも前に決定されるセンサ値、リザーバの加圧動作の終端で決定されるセンサ値、及び、既定値のうちの1つであり得る。
【0028】
例示的実施形態で、提供されるシステムは、光を反射するよう適合された反射面と、光を反射面上に向ける光源と、反射面から反射した光源からの光を測定するよう適合された光センサとをさらに含み、測定値は弾性的変形可能部分の変形を伴って変動し、測定される属性は反射面から反射した光である。代替的に、光源及び光センサの代わりに音波発生器及び音響センサが使用されることもできる。
【0029】
提供されるシステムのリザーバは、概して円筒形の構成を有する主部と、主部に配置され且つ軸方向に変移可能なピストンとをさらに含み、ピストンは弾性的変形可能部分の少なくとも一部と、反射面とを含む。
【0030】
代替的に、他の属性が測定されることができる。例えば、弾性的変形可能ピストンが空気とは異なる誘電率を有する材料から少なくとも部分的に作製される場合、センサシステムは、静電容量を使用して変形の変化を測定するよう適合されることができる。弾性的変形可能ピストンが、変形を伴う磁気特性を有する材料から少なくとも部分的に作製される場合、センサシステムはそのような特性を使用して変形の変化を測定するよう適合されることができる。さらなる代替として、弾性的変形可能ピストンが変形を測定できる歪みゲージを備えてもよい。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達装置が提供され、装置は、ハウジングと、薬剤が充填されたカートリッジを装填された位置に受ける及び保持するための手段であって、カートリッジは、軸方向に変移可能なピストンを含む円筒形の構成を有し且つ薬剤との流体連通を伴い中空針とフィットするよう適合され、装填されたカートリッジにフィットされた針が装置の遠位端から突出する、受ける及び保持するための手段と、ピストンを装填されたカートリッジと係合するよう適合されるピストン駆動を含む、モータ駆動薬剤吐出手段であって、ピストン駆動は遠位方向へと全体軸に沿って軸方向移動が可能であり、これにより装填されたカートリッジから薬剤を吐出する、モータ駆動薬剤吐出手段と、全体軸の垂直位置に対する傾きを測定するよう適合される位置検出手段であって、位置検出手段が、垂直位置に対し既定の範囲内に向けられていることを測定するときにフローチェック状態が決定される、位置検出手段と、位置検出手段に連結され吐出手段を制御するよう適合される制御装置と、を含む。このような装置で制御装置は、フローチェック状態が決定されるときにピストン駆動を遠位方向に移動させるよう適合され、これによりピストン駆動が、中空針がフィットされ装填されたカートリッジのピストンと係合したときに、薬剤がカートリッジから吐出される。この方式でユーザは、いかなるボタンも操作する必要なく容易且つ便利な方式で空打ちを実施することができる。
【0032】
薬剤送達装置は、薬剤送達装置に解放可能に取り付け可能であって且つフィットされた針を覆うためのキャップと、制御装置に連結されキャップ外れ状態もしくはキャップ装着状態を検出するよう適合されるキャップ感知手段とをさらに含み、キャップ装着状態が検出されるとき制御装置は、位置検出手段からの入力に基づきピストン駆動を移動させない。条件が満たされると、制御装置は、既定の遅延時間の後にピストンの移動を開始する。吐出される薬剤の噴出(jet)を避けるため、制御装置はより小さなステップでピストンを前進させてもよく、これにより装着された針の遠位先端に液滴が適切に形成されることができる。近接度感知手段は制御装置に連結されて、装置の遠位端の皮膚表面からの距離を測定するよう適合されてもよく、近接状態は既定の範囲内の距離が測定されたときに決定され、これはフローチェック状態及び近接状態が検出されるときに、制御装置がピストン駆動を移動させないようにするためであり、これにより自動化された吐出の誤使用が防止される。例えば吐出される空打ちの投与量の最大サイズ及び最大数など、自動化された吐出に対するさらなる抑止が実装され得る。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達装置が提供され、装置は、ハウジングと、充填されたカートリッジを装填された位置に受ける及び保持するための手段であって、カートリッジは薬剤との流体連通を伴って中空針とフィットするよう適合され、装填されたカートリッジにフィットされた針は突出し又は装置の遠位端から突出するよう適合される、受ける及び保持するための手段と、装填されたカートリッジと係合するよう適合される吐出手段とを含む。装置は、送達条件を測定する及び決定するよう適合される検出手段と、検出手段に連結されて吐出手段を制御するよう適合される制御装置とをさらに含み、制御装置は、送達条件が決定されるときに吐出手段を作動させるよう適合され、これにより、中空針がカートリッジに連結されるときに薬剤がカートリッジから吐出される。この配置により、ユーザが吐出機構を解放又は作動させる必要がもはやないため、薬剤送達の使用が簡易化される。
【0034】
針はハウジングから突出した固定位置に取り付けられ、したがって手動で挿入されるよう適合されてもよく、又は、初期には後退位置に配置され、次いで例えば送達条件の検出により起動されて、薬剤の吐出前に自動的に挿入されてもよい。検出手段は、例えば装置の表面に対する近接度(例えば上述の光反射もしくは音反射など)、機械的部材の作動(例えば機械的スイッチ)、皮膚への接触(例えば皮膚の表面に固有の属性に基づく)、及び、手動で実施されるときは針の挿入(例えば挿入されると変化する属性を有するもしくは備える針に基づく)、を測定するよう適合され得る。カートリッジは軸方向に変移可能なピストンを含み、吐出手段は対応するピストン駆動部材を含み得る。
【0035】
本明細書で使用する「薬剤」という語は、カニューレ又は中空針などの送達手段を制御された手法で通過させることができる、液体、溶剤、ゲル、もしくは微粒子懸濁液などであり、一又は複数の薬剤を包含する任意の流動可能な医薬製剤を網羅することを意図している。代表的な薬剤はペプチド(例えばインスリン、インスリン含有薬剤、GLP−1含有薬剤及びその誘導体)、タンパク質、ホルモン、生物学的由来製剤又は生理活性製剤、ホルモン製剤及び遺伝子製剤、栄養処方並びにその他の固形状(調合したもの)もしくは液体状双方の物質、などの医薬を含む。例示的実施形態の記載においてはインスリン含有薬剤が参照され、これは一又は複数の他の薬剤との組み合わせと共にインスリン含有薬剤のアナログ製剤も含む。
【0036】
下記の図面を参照し、本発明の例示的実施形態がさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】装填中の状態にある薬剤送達装置のコンポーネントの概略図である。
図2】装填された状態にある薬剤送達装置を示す。
図3】加圧された状態にある薬剤送達装置を示す。
図4図3に示すシステムに類似したセットアップで行われた実験からのデータを示す。
図5図3に示すシステムに類似したセットアップで行われた実験からのデータを示す。
図6図3に示すシステムに類似したセットアップで行われた実験からのデータを示す。
【0038】
図面において、類似の構造物は主として類似の符号で特定される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
後述で「上方」及び「下方」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」などの語、又は類似の相対的表現が使用される場合、これらは添付図面にのみ言及するものであり実際の使用状況を指すものではない。示される図面は概略表現であり、このため種々の構造体の構成及びそれらの相対的寸法は例示目的のみを意図する。
【0040】
本発明の例示的実施形態は、電子制御モータにより駆動される薬剤送達装置に実装され、薬剤送達装置は、薬剤が充填されたカートリッジを受けるよう適合され、カートリッジは、出口と軸方向に変移可能なピストンとを含み、装置は、ハウジングと、カートリッジを受ける及び保持するよう適合される区画と、電子制御の吐出アセンブリとを含み、吐出アセンブリは、ピストンを装填されたカートリッジと係合させるよう適合された軸方向に変移可能なピストン駆動部材と、吐出アセンブリに結合されて吐出アセンブリを制御しピストンを遠位方向へと移動させるよう適合される制御装置であって、この遠位方向への移動により、装填されたカートリッジから薬剤が吐出される、制御装置と、吐出される薬剤の所望の投与量を設定するためのユーザ駆動入力手段とを含む。このような薬剤送達装置そのものは既知であり、例えば、米国登録特許第6,514,230号に開示される可撓性ピストンロッドを組み込んだコンパクトなドーザの形態、米国特許出願公開第2011/306927号に開示される硬質ピストンロッドを組み込んだペン型装置、又は、米国登録特許7,193,521第号に開示される注入ポンプであり、これは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
初めに記載したように、モータ駆動の薬剤送達装置において空のカートリッジが新しいカートリッジと交換されるよう適合され、この過程でピストンロッドは、モータ駆動の吐出アセンブリにより、装填中位置へと通常近位に移動され、この作動は例えばカバーが開けられること又はボタンが押されることにより、作動される。これに対応して、新しいカートリッジがピストンロッドに挿入されたときは通常、モータ駆動の吐出アセンブリによって自動的にピストンとの接触を伴う装填された位置へと遠位に移動され、この作動は、カバーが開けられること又はボタンが押されることにより作動される。装置はさらに、取り付けられているカートリッジがないときの初期化手順を防止するため、カートリッジが装填されていることを検出するための手段を備えてもよい。
【0042】
図1を参照すると薬剤送達装置のコンポーネントの概略図が示されているが、図は本発明の一実施形態を示すのに適切な構造体のみを示す。より詳細には、薬剤送達装置は、ピストンロッド(図示せず)に取り付けられて電子制御モータ駆動機構(図示せず)により駆動される、ピストンロッドワッシャ10の形態のピストン駆動部材と、カートリッジ(図示せず)に装着されたピストン20と、制御装置30とを含む。ピストンロッドワッシャは、ピストンの近位面25と係合するよう適合される遠位面15を含み、遠位面は中央空洞16を備え、中央空洞には光センサ11とIR LEDの形態の光源12とが、間に取り付けられたバリア部材13を挟み、隣り合って配置される。IR LEDはIR光をピストンの近位面へと向けるよう配置され、光センサはピストンの近位面から反射した光を検出するよう配置され、バリアはIR LEDからの光がセンサに直接到達することを防止する又は限定する。
【0043】
図1でピストンロッドワッシャはピストンから約2ミリメートルに相当する距離まで前進され、これにより反射したIR光及びバックライトが(周辺光と共に)センサへ到達することができる。この状態は、本発明の諸態様による操作状態に相当しないが、反射し感知された光は装填手順中のピストンロッドの前進を制御するために使用され得る。しかしながら、この態様は本発明の一部ではないものの、提供される構造体の任意選択的な使用を表し得る。
【0044】
図2ではピストンロッドワッシャがさらに前進してピストンに係合しており、ここでピストンは変形されておらず、この状態は設定された投与量が完全にカートリッジから吐出された条件に対応する。この状態で、ピストンからの反射したIR光はセンサに到達することをほぼ防止されているが、この反射光の「漏れ」が、後述のように閉塞状態を検出するための基準として使用され得る、光の測定レベルとなることが目的とされる。
【0045】
図3はピストンロッドワッシャが、設定投与量の吐出に対応するストローク終了位置へと移動された直後の状態を示し、第1の状態は、ピストンがカートリッジ内の圧力上昇に対応してピストン駆動により弾性的に変形されることにより、特徴付けられる。この状態で、吐出すべき薬剤の設定投与量に従ってピストンロッドの吐出ストロークを制御する制御システムは、ピストンロッドが計算されたストローク終了位置に到達したことを自記(register)し、従来のシステムではこのことが、設定投与量の薬剤がカートリッジから装着された皮下注射針などの流体導管を通って吐出されることに成功したということを示すであろう。しかしながら、図3に示すように、この時点で弾性的変形可能ピストンは依然として変形されており、カートリッジ内の圧力が依然として高く且つ設定された投与量の薬剤の実際の吐出が未だ行われていないことを示している。例えば装着された針を通る、閉塞されていないフローを伴う通常の条件下では、残りの薬剤が、弾性的変形可能ピストンがその形態に復帰することにより駆動されて数秒間に吐出され、これに対応する状態は図2に示されている。しかしながら、図3に示すストローク終了状態で出口が閉塞されている場合、ピストンは(少なくともより長い間)変形されたままであり、これは出口が少なくとも部分的に閉塞されていることを示す。閉塞はより大きな投与量の送達の終端で起こり得、例えば40IUの投与量のインスリンのうち3IUが吐出されずに残ることであり得るが、この状況は起こりにくく、40IUのインスリンの代わりに37IUを注入することはユーザにとってさほど致命的な重要性を持たない。しかしながら、より小さな投与量の開始時に閉塞が起こる、例えば3IUの投与量のインスリンのうち3IU全量が吐出されないことが起こり得、この状況は(例えば欠陥のある針又は初めから目詰まりしていた針により)発生しやすく、3IUのインスリンのうち3IUが注入されないということは、ユーザにとってはるかに致命的な重要性を持つ。
【0046】
これに対応して制御装置30は、ピストン駆動部材が設定投与量の完全な吐出に相当するストローク終了位置に移動されたときに、ストローク終了(又は投与終了)状態を検出するよう構成され、ストローク終了状態は、ピストンがピストン駆動部材によって弾性的に変形されることにより特徴づけられ、ピストンの変形はカートリッジ内の圧力上昇に対応する。所与の時間(例えば3秒間)の後、近位ピストン部分からの反射光に基づいて投与終了センサ値が決定され、次いでこれが基準値と比較される。投与終了センサ値と基準値との間の差に基づき、制御装置は、システムが(i)弾性的に変形されたピストンが弛緩している非閉塞状態であって、弛緩の程度は、カートリッジから接続された流体導管を介し薬剤が吐出されたことによって、カートリッジ内で上昇した圧力が減少したことを示す程度である、非閉塞状態にあるか、又は、(ii)弾性的に変形されたピストンが、接続された流体導管が閉塞されていることを示すと決定されることができる程度弛緩できない、閉塞状態にあるか、を決定する。閉塞状態が決定される場合、制御装置はこれを、聴覚、視覚、及び/又は振動アラームなどの適切な信号手段でユーザに示し得る。
【0047】
図4から6は、図2及び3に示すシステムと類似した設定に対する実験データを示す。より詳細には、ワッシャ遠位面15(図1を参照)に相当する「ピストンロッド」位置が、標準的な3ml100IU/mlのNovoNordisk社のPenfill(登録商標)インスリンカートリッジに対応してIUで測定され、ゼロは、ピストンがその最近位位置に位置する装填中位置に対応する。図は、モータ駆動に対する「スロットル」、「速度」及び「電流」、並びに測定された光に対する「ピストンIR」を示す。
【0048】
図4は空中に注射された1IUの投与量の注入を示す。「投与開始」における開始位置で、ピストンロッドは図2に示す位置にあり、光の2.2%が検出されることを可能にしている。次いで、(上述の投与終了状態に対応する)「投与待機状態」で1IU全体が送達されると、ピストン近接度近位の光レベルは最小(0.5%)に到達し、次いで、システムの弛緩を示しゆっくりと上昇する。6秒後、「投与完了状態」で光レベルは1.6%であり、これは注射前のレベル(2.2%)まで半分を上回る程度戻っており、注射は成功したと見なされる。
【0049】
図4の例では、非閉塞状態を検出するために下記の計算が使用される。第1の測定基準値「ref1」は、投与開始直前の「投与開始」時点で決定され、第2の測定基準値「ref2」は、ピストンロッドが移動を停止したときの「投与待機状態」時点で決定される。図4から、値はおよそref1=2.2及びref2=0.5と決定されることができる。6秒後、投与終了センサ値「L」が決定され、これは図4からおよそL=1.6と決定されることができる。
【0050】
図示の例では、L−ref2>k(ref1−ref2)である場合に目詰まり条件が決定され、ここでkは、初期の反射レベルの復元の期待されるレベルを示す定数である。図示の例では、理想的にはk=100%であるが、k=50%である。L>ref2且つref1>ref2という条件も満たされねばならない。そうでない場合にはエラー条件が検出される。図示の実施形態では1.6−0.5=1.1>0.5(2.2−0.5)=0.85が、非閉塞状態の期待される発見を示す。言及された全てのセンサ値は、同じセンサによる測定値である。
【0051】
基準値の決定は、例えばセンサ、材料及び取り付けにおける変動を補償するために使用される。例えばセンサシステムからの非線形な出力を補償するために、さらなる基準値の決定が使用されることもできる。
【0052】
図5は、装着された目詰まりした針を伴う1IUの投与量の注入を示す。図5のように光レベルは注射中に減衰するが、再上昇しない。6秒後光レベルは投与前のレベルの50%未満であり、針の目詰まり状態が検出される。
【0053】
図5に従い実験に使用されるアルゴリズムは、針が抜かれるまで、ユーザが推奨される6秒間完全に待機することを要求するが、この期間を短縮することが可能となり得る。図4図5とを比較すると、最初の秒の間に目詰まりした針を検出することが可能であり得るということが示されるが、これは、変動する逆圧、針サイズ、ピストンの異なる形式などを伴うより制御された実験により検証されなければならない。「センサヘッド」の物理的構成も、ピストンの変形に対する感受性を改善するために微調整され得る。
【0054】
これに対応して、図6は本発明の一実施形態による一例を示し、ここでは6IUの投与量に対する「投与待機」状態に到達した後に反射光が測定される。反射したIR光が所与のレベルに到達したとき、「投与完了」状態が決定される。図示の実施形態では6IUの95%が投与終了状態のおよそ2秒後に吐出されている。
【0055】
好ましい実施形態の上述の記載において、種々のコンポーネントに対して記載された機能を提供する種々の構造体及び手段は、本発明のコンセプトが当業者たる読者にとっては自明である程度に示されたものである。種々のコンポーネントにおける詳細な構築及び仕様は、本発明の仕様の規定に沿って当業者により実施される通常の設計工程の対象と見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】