(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514529(P2015-514529A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】血管内ロータリ血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/10 20060101AFI20150424BHJP
A61M 1/12 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
A61M1/10 530
A61M1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-507537(P2015-507537)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2013058642
(87)【国際公開番号】WO2013160407
(87)【国際公開日】20131031
(31)【優先権主張番号】102012207049.4
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】シエス トーステン
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホフ フランク
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077CC03
4C077DD01
4C077EE01
4C077FF04
4C077HH03
4C077HH09
4C077HH13
4C077HH21
4C077JJ03
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077JJ27
4C077JJ28
4C077KK07
(57)【要約】
血管内ロータリ血液ポンプであって、カテーテル(10)と、そのカテーテル(10)の先端側に固定されたポンピング装置(50)と、ポンピング装置(50)に堅固連結されており且つ感圧エリア(32)を有する少なくとも1個の圧力センサ(30;60)と、を備え、その感圧エリアが、周囲に対し曝露されており且つ血液ポンプの大凡の長軸に対し直交整列されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大凡の長軸を有する血管内ロータリ血液ポンプであって、カテーテル(10)と、そのカテーテル(10)の先端側に固定されたポンピング装置(50)と、ポンピング装置(50)に堅固連結されており且つ感圧エリア(32)を有する少なくとも1個の圧力センサ(27,28A,30;28B,60)と、を備える血液ポンプにおいて、その感圧エリア(32)が、周囲に対し曝露されており且つ上記大凡の長軸に対し直交整列されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の血液ポンプであって、上記少なくとも1個の圧力センサがポンピング装置(50)のポンプハウジングに固定されており、そのハウジング内で少なくとも1個のインペラ(58)が回動する血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2記載の血液ポンプであって、インペラ(58)・カテーテル(10)間に少なくとも1個の第1血液通流開口(56)を備え、その第1血液通流開口(56)の付近且つ先端側に感圧エリア(32)が位置することとなるようポンプハウジングに圧力センサが固定されている血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の血液ポンプであって、ポンピング装置(50)が、少なくとも1個の第2血液通流開口(54)を有するフローカニューレ(53)をその先端に有し、血液ポンプ作動中には、ポンピング装置(50)がその第2血液通流開口を通じ血液を吸引又は吐出し、上記少なくとも1個の圧力センサが、その第2血液通流開口(54)の付近に配置されている血液ポンプ。
【請求項5】
請求項4記載の血液ポンプであって、フローカニューレ(53)が、ソフトフレキシブルチップ(55)を、第2血液通流開口(54)の先端側に有し、圧力センサの先端(30)が、少なくとも部分的に、そのソフトフレキシブルチップ(55)内に配置されている血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の血液ポンプであって、圧力センサが、手元端側から先端側へと外側を通りポンピング装置(50)沿いに案内されており、且つ、ポンピング装置(50)が、圧力センサの先端(30;60)がその中に少なくとも部分的に配置される窪み(36;66)を有する外面を有する血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の血液ポンプであって、圧力センサの先端(30;60)が、ポンピング装置(50)の周を越えて径方向に突出しており、且つ、ポンピング装置(50)上、圧力センサの先端(30;60)の先端側前方に、ポンピング装置(50)の周を越えて同様に突出するバルジ(35;65)が設けられている血液ポンプ。
【請求項8】
請求項7記載の血液ポンプであって、バルジ(35;65)がU字状又はO字状である血液ポンプ。
【請求項9】
請求項7又は8記載の血液ポンプであって、バルジ(35;65)が接合剤のビーズである血液ポンプ。
【請求項10】
請求項7又は8記載の血液ポンプであって、バルジ(35;65)が、ポンピング装置(50)の表面上に熔接又は半田付けされている血液ポンプ。
【請求項11】
請求項7又は8記載の血液ポンプであって、バルジ(35;65)が、ポンピング装置(50)の一体部分を形成する血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の血液ポンプであって、圧力センサが、光ファイバ(28A;28B)を有する光学圧力センサであり、その感圧エリア(32)が膜であり、光ファイバ(28A,28B)がその膜から離隔した場所で終端する血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の血液ポンプであって、感圧エリア(32)が、そのセラミクス面又はガラス面が周囲に対し直に曝露するセラミクス又はガラス膜である血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプを作動させること及び/又は患者の健康状態を評価することにとり重要であるところの、患者の血管系内の圧力を計測するため、1個又は複数個の圧力センサを有する血管内ロータリ血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内ロータリ血液ポンプは、従来の動脈内バルーンポンプ(IABP)に対する興味深い代替物であり、心臓の一時的サポートに使用されている。こうした血液ポンプは、心臓のポンプ作用等をサポートすべく又はこれに代わるべく、経皮的に大腿動脈内等に導入され身体の脈管系を通じ案内される。特許文献1は、ポンピング装置及びそのポンピング装置の手元端(proximal end)に装着されたカテーテルを有すると共に、そのカテーテルを通り延びる様々なライン例えばポンピング装置用電源ラインを有する血管内ロータリ血液ポンプを、開示している。そのポンピング装置自体は、モータ部と、そのモータ部の先端(distal end)に締結されたポンプ部とを備える。そのポンプ部は、その内部で回動するインペラを伴うその管状ポンプハウジングを備え、そのインペラは、モータ部から突出するモータシャフト上に存する。ポンプ部の先端からはフローカニューレが延び、血液ポンプの作動中には、ポンピング装置により血液がそのフローカニューレを通り吸引される(ポンピング方向反転時には同ポンピング装置により吐出される)。作動中は、開状態の噴門弁を通じポンピング装置により血液がポンピングされうるよう、そのポンピング装置のフローカニューレを、噴門弁開口を通じ突出させる。更に、この血液ポンプには、インレット圧及びアウトレット圧を画定するため、ポンプハウジング上及びフローカニューレ上に圧力センサが外付け装備される。それらインレット圧及びアウトレット圧に関するデータは、ポンピング装置の電動モータにおける消費電力と併せ、ポンピング装置のデリバリ速度及び機能に係る一組の関連情報を形成する。加えて、圧力計測値により、脈管系内血液ポンプ位置について推論を導き出すことができる。更に、圧力差をモータの現在の消費電力と比較することにより、ローカル状態と共にキャビテーション及びサッキングを確かめることができる。
【0003】
特許文献2は、動脈内バルーンカテーテルと共に採用されうる別種の圧力計測システムを提示すると共に、そのシステムの短所を指摘している。同文献内で提案されていることは、代わりに、光ファイバ式圧力センサを伴う動脈内バルーンカテーテルを採用することである。その光ファイバ式圧力センサの感圧センサヘッドは、薄膜によって周囲に対し封止された液充満室内で終端する。その薄膜は、ポンピング装置のハウジングの一部を形成し、且つ周囲の圧力をその室内の液体に伝達する。その室内で変化する圧力が圧力センサによって検出される。フレキシブルな膜により封止された液充満室内にセンサヘッドを配置することで、心臓サポートポンプの導入及び配置に伴う損傷に抗し圧力センサが保護される。
【0004】
特許文献3は、血管内ロータリ血液ポンプに関連して、光導波路を有する光学圧力センサの採用を記述している。ここでも、やはり、ポンプ部のハウジング上にセンサヘッドが外付け配置される。第2圧力センサは、カテーテルホース本体内を通りポンピング装置の少し手前でカテーテルホースから出て大動脈弁を通り十分に左心室内に自在突出する、別の圧力計測用カテーテルとして構成される。同文献記載の光学圧力センサはファブリ・ペロー則に則り働くものであり、本発明との関連でも好適に採用される。この圧力センサのセンサヘッドは、一方で薄い感圧ガラス膜により終端され他方でその内部に光ファイバの端が突出する、キャビティを有する。感圧ガラス膜は、センサヘッド上に作用する圧力の大きさに応じ変形する。そのガラス膜上での反射を通じ、光ファイバからの出射光が変調的に反射され、同光ファイバ内に再び送給される。光ファイバの手元端には一体型CCDカメラを有する評価ユニットが配置され、その評価ユニットにより、干渉パターンの形態で得られた光が評価される。その結果に基づき、圧力依存電気信号が生成される。
【0005】
しかしながら、他種圧力センサ、特に諸種の光ファイバ式圧力センサもまた、本発明との関連で適切である。ここに、例えば特許文献4では、いずれも動脈内バルーンカテーテルで採用可能な歪みゲージ型圧力センサ(特にシリコン等の半導体素材を基礎とするセンサ)及び光ファイバ式圧力センサが併記されている。論じられているのは、就中、光が第1ファイバを介しミラー上に送られ、そのミラーで反射された光が第2ファイバを介し戻り評価される、光ファイバ式圧力センサである。そのミラーは、片側で血圧に対し、他側で参照圧に対し曝露されるダイアフラムの一部である。但し、参照圧の必要がない変形構成についても特記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5911685号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1911484号明細書(A2)
【特許文献3】国際公開第WO2011/039091号パンフレット(A1)
【特許文献4】米国特許第6398738号明細書(B1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した圧力計測システム(ともかく血管内ロータリ血液ポンプに適用されるもの)は、十分に情報に富む計測データをもたらさないときがある。特に、生理学的高周波圧力フラクチュエーションを、スプリアス信号から曖昧さ無しに弁別することができない。
【0008】
従って、本発明の目的は、血管内ロータリ血液ポンプに係る圧力計測を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1記載の特徴を有する血管内ロータリ血液ポンプにより達成される。これに従属する請求項に述べられているのは、本発明の秀逸な実施形態及び展開である。
【0010】
この目的に鑑み、本発明に係る血管内ロータリ血液ポンプの好適な実施形態では、一方ではその圧力が計測されるべき周囲に対し曝露されるよう且つ他方ではそのロータリ血液ポンプの大凡の長軸に対し直交整列されるよう、その圧力センサの感圧エリアをポンピング装置に堅固に連結することで、カテーテルの先端側に固定されたポンピング装置が圧力センサと組み合わされる。
【0011】
判明したところによれば、圧力センサの感圧エリアをポンピング装置に堅固に連結し、且つその圧力センサを血液ポンプの長軸に対し直交整列させることで、信号データから最高250Hzに至る生理学的高周波信号を導出することが可能となる。そうした情報は、心臓の状態又は回復状態を診断する上でかなり重要である。鑑みるに、従来の圧力センサによる圧力計測では、ロータリ血液ポンプ作動中にアンバランスその他の動的影響でもたらされる高周波スプリアス信号が、その結果上に重畳する。特に、試行結果によれば、血管内ロータリ血液ポンプが、作動中に径方向、即ち大凡の長軸を横断する方向に沿い動いて行ったり来たりする。提案の如く、圧力センサの感圧エリアを長軸に対し直交整列させることで、そうした横断方向運動で感圧エリア上に圧縮力がもたらされることが全くなくなる。ポンピング装置の作動によって圧力計測結果上に引き起こされる影響、特に高周波域でのそれは、こうしてほとんど解消される。
【0012】
感圧エリアは、例えば、ファブリ・ペロー則に則り働く上述の圧力センサに備わるセンサヘッドのガラス膜でありうる。しかしながら、センサヘッド自体の計測対象がその前方にある圧力室内の圧力のみで、その圧力室が感圧膜等によって周囲から分離されている場合は、前方に存するこの膜が本発明の企図に従い圧力センサの感圧エリアを構成する。重要なのは、その圧力が計測されるべき周囲に対し圧力伝達エリアが直に接していることである。
【0013】
圧力センサとしては、光ファイバを有していて、その間厚保エリアが膜であり、且つその膜から離隔した位置で当該光ファイバが終端する、光学圧力センサが好適に使用される。この点に関しては特許文献3のコンテンツを参照されたい。これは、光学圧力センサのセンサヘッドが前方にある圧力室内の圧力を計測しないが、計測対象となる外部の圧力に対し直に曝露されることを意味している。従って、この圧力センサの応答はより迅速であり、しかも、前方に存する圧力室内で増強されかねないところの、あらゆる発振に影響されない。特に、圧力信号が圧力室内媒体の影響を受けない。こうした影響は、さもなければ、温度及び湿度の影響を通じ非常にたやすく生じうる。
【0014】
更に好適なのは、感圧膜として、その表面がその周囲に対し直に接するガラス膜(SiO
2)又はセラミクス膜(例えばSi
3N
4)を用いることである。特に、この膜は、その表面のうち周囲と対面する面上に付加的な被覆を設けることなく血液と接触させる。従来、この種の膜はポリマ例えばシリコーンで被覆されていて、その被覆が膨張すること、及び/又は、その被覆の熱膨張係数が膜自体の熱膨張係数と異なる値を呈することがあり得た。これは、計測結果のドリフトにつながる応力がその膜上に作用する原因となっていた。従って、周囲に曝露される感圧エリアとして、全く被覆のない膜を採用することにより、そうした短所を克服し、ひいては計測結果をより良質化することができる。
【0015】
計測対象となる圧力イベントに応じ、ロータリ血液ポンプには1個、2個又は3個以上の圧力センサを装備することができ、またその圧力センサは、ポンピング装置の手元端及び/又は先端等にて血液ポンプ上に外付け配設すること、及び/又は、ポンピング装置内例えばフローカニューレ内にも配設することが可能である。
【0016】
好ましくは、第1圧力センサをポンピング装置のポンプハウジングに固定し、そのハウジング内で、そのロータリ血液ポンプに備わる1個又は(可能な場合)複数個のインペラを回動させる。そのポンピング装置のインペラ・カテーテル間には1個又は複数個の血液通流開口を設け、その血液通流開口の付近好ましくは当該血液通流開口の先端側に感圧エリアを配する。この構成では、噴門弁を通じカテーテルを十分先方まで進めると、圧力センサが噴門弁の付近に進入した後、更なる進入によって、噴門弁による血液通流開口の閉止が引き起こされる。血液ポンプがそのポンプアウトレット(又はインレット)と共にスライドして大動脈弁の付近に進入したことが直ちにわかる。従って、この圧力センサにより、生理学的圧力を計測して心臓の健康状態についての情報を得る、という本来のタスクに加え、患者の脈管系内で血液ポンプを正確に位置決めする、という機能も実現される。この構成では、厳密に確実に、且つ圧力を基にした形態で、インレット開口を心腔内に配し且つアウトレット開口を大動脈内に配することができる。アウトレット開口の先端側にて圧力センサが1個だけ用いられる構成では、この目的で、ポンプが作動し且つ心臓が収縮しているときにそのポンプのモータ電流の変調が付加的に考慮される。これにより、インレット開口が心臓内に位置し且つアウトレット開口が大動脈内に位置しているときに、脈動ポンプ流、ひいてはまた脈動ポンプモータ電流がもたらされる。
【0017】
これに加え又は代え、ポンピング装置の先端に第2圧力センサが配される。ポンピング装置の先端は通常はフローカニューレで形成され、そのフローカニューレには、そのポンピング装置内に血液を取り込む(又はそこから出す)ことができるよう1個又は複数個の更なる血液通流開口が設けられる。即ち、血液ポンプの作動中はそのポンピング装置により且つフローカニューレを通し血液が吸引(又は吐出)される。圧力センサは、例えばそのフローカニューレが心腔壁に対し吸引されていることを認識することができるよう、フローカニューレ内に配することができる。反面、その血液通流開口の付近に位置するようフローカニューレ上に圧力センサを外付けし、そこでの生理学的圧力を計測することもまた重要である。この構成では、心室内圧を、狙いを定めた形態で且つ高い分解能(最高250Hz)で検出することができる。そこから、圧力ベース心臓拡張(期)の形態で緩和速度(≒拡張期充満相(diastolic filling phase)の始まり)を計測することにより間接的に受動的心臓壁ストレスを、或いは心収縮性の形態で心臓の回復を検出することが可能である。更に、拡張末期充満圧力(end-diastolic filling pressure)を検出することができるので、血液をまた、所要の如くにポンプで除き、心臓回復の邪魔になるところの、高い拡張末期圧力での高い壁ストレスを排することができる。
【0018】
圧力センサのセンサヘッド(より一般的な語では圧力センサの先端)がポンピング装置上、例えばポンプハウジング上又はフローカニューレ上に外付け固定された構成では、少なくともポンピング装置の一部に亘り手元側から先端側へと、ポンピング装置の外面に設けられていて圧力センサの先端が少なくとも部分的に受容される窪み又はその付近まで、ポンピング装置に沿い且つその外側で圧力センサを案内するのが望ましい。これにより、敏感なセンサヘッド及び特にその感圧膜を保護し、血液ポンプが患者の脈管系内に導入されたときにスルース弁又は止血弁と衝突しないようにすることができる。
【0019】
しかしながら、ポンピング装置の壁厚が十分でなく、センサヘッドが完全に収まる深さの窪みを形成できないため、圧力センサの先端がポンピング装置の周を越え径方向に突出することもあり得る。そうした場合、特に、血液ポンプが患者の脈管系内に導入されたときに止血弁又はスルース弁が圧力センサの先端で捉えられることを防ぐため、センサヘッドから見て先端側前方に、ポンピング装置の周を越え同様に突出するバルジを設けることが有益である。この点との関連で特に望ましいのは、その窪みを巡り少なくともU字状、可能なら更に完全にO字状に、そのバルジを導くことである。こうしたバルジは、例えば接合剤のビーズにより形成することができ、それはまたセンサヘッドが窪み内に固定された後だけで適用することも可能である。そのバルジ特にU字状バルジは、また、そのコンポーネント上に熔接若しくは半田付けすることも、或いは同コンポーネントの一体部分とすることも可能である。
【0020】
以下、別紙図面を参照しつつ例示により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】大動脈を通り、大動脈弁を通じ左心室内に延びていて、集積型圧力及びキンクセンサを有する血液ポンプを示す図である。
【
図2】光ファイバを有する光学圧力センサを示す図である。
【
図3】
図1に示した血液ポンプに備わるポンピング装置をより詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、遡行方向に沿い下行大動脈11内に導入されたカテーテル10を有する血管内血液ポンプを示す。下行大動脈は大動脈12の一部であり、その大動脈は、ひとまず心臓から上行した後下行しており且つ大動脈弓14を有している。大動脈12の始点には左心室16を大動脈12につなぐ大動脈弁15が存しており、血管内血液ポンプはその大動脈弁を通り延びている。その血管内血液ポンプは、カテーテル10に加え、カテーテルホース20の先端に締結されたロータリポンピング装置50を備えており、そのロータリポンピング装置は、モータ部51及び及びそこから軸方向に離隔配置されたポンプ部52を有すると共に、そのポンプ部52のインフロー端から先端方向に突出しており且つその端部にサクションインレット54が存するフローカニューレ53を有している。サクションインレット54の先端側にはソフトフレキシブルチップ55があり、これは例えば“豚の尾”状又はJ字状に構成することができる。カテーテルホース20内には、ポンピング装置50を作動させる上で肝要な様々なライン及び装置が延びている。
図1には、それらのうち、その手元端が評価装置100に装着された2本の光ファイバ28A,28Bのみが示されている。これらの光ファイバ28A,28Bはそれぞれ光学圧力センサの一部であり、その光学圧力センサのセンサヘッド30及び60は、一方ではポンプ部52のハウジングの外面上に、他方ではサクションインレット54の外面上に配置されている。センサヘッド30及び60によりもたらされた圧力は評価装置100にて電気信号に変換され、例えば表示スクリーン101上に表示される。
【0023】
センサヘッド60で大動脈圧を計測すること及びセンサヘッド30で心室内圧を計測することによって、実際の圧力信号を得ることに加え、心臓の回復を調べるための収縮性計測、ポンピング装置の流量を算出するのに使用される圧力差の画定等を行うことができる。
【0024】
次に、電光圧力計測の原理について、
図2を参照しつつより綿密に説明する。
図2に、その内部で光ファイバ28A(複数本の光ファイバ或いは光ファイバ28Bであってもよい)を自在に動かすことが可能なルーメン27を有する圧力計測用カテーテル26を示す。ルーメン27は、ポリマ特にポリウレタンで形成することやニチノールその他の形状記憶合金で好適に形成することができ、出口点57(
図1参照)にてカテーテルホース20から出すことができ、且つフレキシブルなフローカニューレ53に沿い例えば外側に配することができる。カテーテルホース20内では独立したルーメン27を省略することができる。光ファイバ28Aの先端34には圧力計測用カテーテルのセンサヘッド30があり、そのセンサヘッドは、キャビティ33を終端する薄いセラミクス又はガラス膜32が組み込まれたヘッドハウジング31を有している。その膜32は感圧性であり、センサヘッド30上に作用する圧力の大きさに応じ変形する。光ファイバ28Aから出射された光は、この膜上での反射を通じ変調的に反射され、その光ファイバに帰還結合される。これには、キャビティ33を光ファイバ34で終端することが必要とされない。それは、ヘッドハウジング31を通じ同様に成し遂げられうる。確実にすべきことは、光が入出射時に低損失で結合されることのみである。光ファイバ28Aの手元端、即ち評価装置100内にはCCDカメラ、CMOS等のディジタルカメラが配されており、干渉パターンの形態をとる入来光はそのカメラにより評価される。その結果に基づき圧力依存電気信号が生成される。カメラによりもたらされた光学パターン又は光像の評価並びに圧力の算出はそのカメラに接続されたコンピュータにより実行され、またそのコンピュータにより、モータ作動型ポンピング装置50に対する電源供給が圧力信号の評価結果に応じ制御される。
【0025】
図2を参照して説明した光学圧力センサはファブリ・ペロー則に則り機能するものであるが、ポンピング装置50の長軸に対し直交配置され且つ周囲に対し曝露している感圧エリア(例えば諸種ダイアフラム又は膜)を有する圧力センサである限り、他種圧力センサ、特に1本又は複数本の光ファイバを有する光学圧力センサを採用することもできる。
【0026】
図1に示したポンピング装置50を
図3により詳細に示す。看取できる通り、モータ部51からポンプ部52内に突出しているドライブシャフト57でインペラ58が駆動されるので、血液ポンプ作動中には、フレキシブルなフローカニューレ53の先端にある血液通過開口54を通じ血液が吸引され、血液通流開口56を通じその血液がインペラ58付近で吐出されることになる。また、適宜適合させることで、ポンピング装置50に逆方向のポンピングを行わせることもできる。カテーテル10のカテーテルホース20を通じポンピング装置50に導かれているものとしては、上述の光ファイバ28A,28Bの他に、モータ部51用電源ライン59Aとパージ流体ライン59Bがある。
【0027】
第1圧力センサのセンサヘッド60は、ポンプ部52のポンプハウジング上に外付け固定されている。付随する光ファイバ28Bのうちカテーテルホース20内の部分は、カテーテルホース20の同領域内でカテーテル10が強湾曲したとき光ファイバ28Bが破損することがないようにするため、ある短距離例えば5cmに亘り細いプラスチックホース21内で案内されている。光ファイバ28Bのうちポンピング装置50外の部分は自在可動に配され、ポンピング装置50の外壁に接合剤で接合されるに留まっている。こうすることで、ポンピング装置50の外断面寸法を抑えることができる。同領域ではポンピング装置50がリジッドであり、従って光ファイバ28Bをポンピング装置50に対し可動にする必要がないため、こうした光ファイバ28Bの接合が可能である。
【0028】
これに対し、第2圧力センサのセンサヘッド30に至る光ファイバ28Aは、ポンピング装置50の全周に沿いホース又はチューブレット17、好ましくはニチノールチューブレット内に自在可動に配されているので、フローカニューレ53の曲がり具合が変化したときに当該ホース又はチューブレット内でポンピング装置50に対しシフトさせることができる。
【0029】
その中を光ファイバ28A,28Bが通っているホース及び/又はチューブレット27は、カテーテルホース20内へと僅かに延びる形態でもよいが、カテーテルホース20内を完全に通り抜け、対応する圧力センサを評価装置100の接続部内に挿入するためのラインの端にある対応するプラグで終端する形態でもよい。光ファイバ28B及び光ファイバ28Aはグラスファイバ、一般にはポリイミド(Kapton(登録商標))等によるアイソレーション用ポリマ被覆が施されたものするのが望ましい。
【0030】
センサヘッド30及び60の先端側前方には、それぞれ、止血弁又はスルース弁を通じ血液ポンプが導入されることによる損傷からそのセンサヘッド30及び60を保護するバルジ35,65が設けられている。更に、センサヘッド30及び60は、それぞれ、ポンピング装置50の窪み36,66内にセットされている。これは
図3には示されていないので、以下、
図4A,
図4B及び
図5A,
図5Bを参照して説明する。
【0031】
図4Aに、
図3中の細部Aをより詳細に、且つ部分的に断面にして示す。
図4Bは、基本的に同じ細部Aを示すものであるが、上方からの平面図となっている。図中、センサヘッド60は、ポンプ部52の外面上に設けられた窪み66内に皿孔入り形態(countersunk manner)で受容されており、その窪み66は馬蹄状又はU字状のバルジ65で取り囲まれている。このバルジは、O字状になるよう閉じることも可能である。同バルジはポンプ部52上に接合又は熔接されているが、そのポンプ部の一体部分を形成するようにしてもよい。光ファイバ28Bは、同面上に接合されており、且つ2個の血液通流開口56間のバーに沿って延びている。
【0032】
同様にして、第2圧力センサのセンサヘッド30も、フローカニューレ53の先端にて外面上の窪み36内に皿孔入り形態で受容されている。ここでもまた、その中を光ファイバ28Aが通っているニチノールチューブレット27が、2個の血液通流開口54間のバーの上方を通り抜けている。窪み36の先端側前方にある点状のバルジ35は、血液ポンプの導入に伴う衝突損傷からセンサヘッド30を保護している。このバルジ35もまた、同形態に代えU字状又はO字状に形成することが可能であり、且つ、特に、フローカニューレ53上に接合若しくは熔接すること又はその一体部分とすることが可能である。
【0033】
図4A,
図4B及び
図5A,
図5Bにより示したこれら二種類の眺望から、個々の感圧エリア即ちセラミクス又はガラス膜32がポンピング装置50の長軸に対し直交整列されていることを、看取することができる。
【0034】
また、センサヘッド30をホース又はチューブレット27と共にソフトフレキシブルチップ55上の任意個所まで到達させることや、ソフトフレキシブルチップ55の壁囲い等によってそこで機械的に保護することも可能である。センサ膜が壁囲いに対し直交配置されるので、曲げに起因する圧力偽像は少なくなる。曲げに対して保護する必要があるのは、光導波路34・センサヘッド30間の接合連結のみである。これは、チューブレット27を通じ、或いは接合領域における付加的な硬化を通じ、実現することができる。
【国際調査報告】