(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514854(P2015-514854A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】トリフルオロエチレンの制御フリーラジカル共重合
(51)【国際特許分類】
C08F 2/38 20060101AFI20150424BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
C08F2/38
C08F293/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-507585(P2015-507585)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(85)【翻訳文提出日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】FR2013050920
(87)【国際公開番号】WO2013160621
(87)【国際公開日】20131031
(31)【優先権主張番号】1253838
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】511087176
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・スーぺリウール・ドゥ・シミ・ドゥ・モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アメディール,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】アラディーン,アリ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011BA04
4J011BA06
4J011HA04
4J011HB14
4J011NA26
4J011NA28
4J011NB04
4J026HA09
4J026HA20
4J026HA23
4J026HA32
4J026HA38
4J026HA43
4J026HE01
(57)【要約】
本発明は、トリフルオロエチレンとトリフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種類のさらなるモノマーとの連鎖移動剤の存在下での制御フリーラジカル共重合工程を含む、ブロックコポリマーの調製方法であって、前記連鎖移動剤はキサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物または一ヨウ化物化合物である方法に関する。また、本発明は、この方法によって得られ得るブロックコポリマーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御フリーラジカル共重合によるコポリマーの調製方法であって、開始剤および連鎖移動剤の存在下での、トリフルオロエチレンモノマーと、トリフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種類のさらなるモノマーとの、共重合工程を含み、前記連鎖移動剤はキサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物または一ヨウ素化化合物であり、ここで、調製されるコポリマーはブロックコポリマーであり、および共重合工程中に存在させるモノマーは、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンからなるか;またはフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび少なくとも1種類のさらなるモノマーを含み、ならびにモノマーの量に対する連鎖移動剤の量のモル比は0.001から0.020であり、およびコモノマーの量に対するTrFEモノマーの量の初期モル比は10%から90%、好ましくは20%から50%である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらなるモノマーが、フッ素系モノマーから、および好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3 テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系モノマーから、および好ましくは、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリルモノマー、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテルから選択されるか;またはこれらの組合せから選択される、方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかに記載の方法であって、連鎖移動剤が、式R1−S−C(=S)−Z[式中、R1は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表し、−Zは−O−R2基(ここで、R2は、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアリール基を表す。)を表すか、または−Zは−S−R3基(ここで、R3は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表す。)を表す。]の化合物であるキサンテートまたはトリチオカーボネート化合物である、方法。
【請求項4】
キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物が、O−エチル−S−(1−メチルオキシカルボニル)エチルキサンテートである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1および2のいずれかに記載の方法であって、連鎖移動剤が、1−ヨードフルオロアルカン、および好ましくは、式RF−(CH2CF2)n−I(式中、nは1から500の範囲の整数であり、RFは、ペルフルオロカーボン基を表し、特により好ましくは基CF3、C2F5、C3F7およびCmF2m+1から選択され、mは4から20の範囲の偶数の整数である。)の化合物である一ヨウ素化化合物である、方法。
【請求項6】
トリフルオロエチレン単位およびフッ化ビニリデンとは異なるさらなる単位;またはトリフルオロエチレン単位とフッ化ビニリデン単位のみ;またはトリフルオロエチレン単位およびフッ化ビニリデン単位およびさらなる単位を有し、ならびにキサンテートもしくはトリチオカーボネートまたは一ヨウ素化末端基を有する、熱可塑性ブロックコポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載のコポリマーであって、さらなる単位が、フッ素系単位から、および好ましくは、以下の単位:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系単位から、および好ましくは、以下の単位:酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリル単位、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテル単位から選択されるか;またはこれらの組合せから選択される、コポリマー。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載のコポリマーであって、−S−C(=S)−Z基であるキサンテートまたはトリチオカーボネート末端基を有するものであり、−Zは−O−R2基(ここで、R2は、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアリール基を表す。)を表すか、または−Zは−S−R3基(ここで、R3は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表す。)を表す、コポリマー。
【請求項9】
キサンテートまたはトリチオカーボネート末端基が、−S−C(=S)−O−C2H5または−S−C(=S)−S−C12H25基である、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
少なくとも1つのブロックが、トリフルオロエチレン単位を含むものであるか、またはホモ−ポリ(トリフルオロエチレン)ブロックである、請求項6から9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
少なくとも1つのブロックが、フッ化ビニリデン単位を含む、請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
少なくとも1つのブロックが、フッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含む、請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項13】
請求項10に記載のブロックコポリマーであって、少なくとも1つのブロックが、フッ素系単位から、および好ましくは、以下の単位:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系単位から、および好ましくは、以下の単位:酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリル単位、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテル単位から選択されるか;またはこれらの組合せから選択される単位を含む、ブロックコポリマー。
【請求項14】
請求項10に記載のブロックコポリマーであって、ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位、および場合によりさらなる単位を含む、コポリマーブロック;または
フッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むコポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位、およびさらなる単位を含む、コポリマーブロック
を含む、ブロックコポリマー。
【請求項15】
請求項10に記載のブロックコポリマーであって、ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位と2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位とを含むコポリマーブロック;または
フッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むコポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位と2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位とを含むコポリマーブロック;または
ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位のみを含む、コポリマーブロック
を含む、ブロックコポリマー。
【請求項16】
請求項6から10のいずれか一項に記載のコポリマー(a)を少なくとも1種類のコモノマー(b)と反応させる工程を含む、コポリマー(c)の調製方法。
【請求項17】
コポリマー(c)が、請求項10から15のいずれか一項に記載のものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法であって、コモノマー(b)が、フッ素系モノマーから、および好ましくは、フッ化ビニリデン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系モノマーから、および好ましくは、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリルモノマー、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテルから選択されるか;またはさらなるモノマーがこれらの組合せから選択される、方法。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか一項に記載の方法であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従ってコポリマー(a)を調製する予備工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項6から15のいずれか一項に記載の少なくとも1種類のコポリマーを含む、皮膜または膜。
【請求項21】
請求項20に記載の皮膜を備えた、圧電デバイス。
【請求項22】
請求項20に記載の皮膜を備えた、強誘電デバイス。
【請求項23】
請求項20に記載の皮膜を備えた、焦電デバイス。
【請求項24】
請求項20に記載の皮膜を含む、被覆膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系モノマー、詳しくはトリフルオロエチレンとトリフルオロエチレン以外のさらなるモノマーとのフリーラジカル共重合のための方法であって、キサンテートまたはトリチオカーボネートまたは一ヨウ素化化合物によって制御される方法に関する。また、本発明により、この方法による熱可塑性ブロックコポリマーの調製が可能となる。また、本発明は、かくして得られ得る熱可塑性ブロックコポリマーを提供する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、光学分野、マイクロエレクトロニクスおよび膜技術を含む、塗膜または特殊な被覆膜から気密シール材からまでに及ぶ数多くの用途に対する注目に値する特性を有する類型の化合物である。このようなフルオロポリマーの中でも、コポリマーは、その多様性、形態構造、別格の特性および多用途性のため、特に好都合である。
【0003】
フッ素系コポリマーを調製するために先行技術で行われる共重合反応のほとんどは「慣用的な」フリーラジカル反応である。
【0004】
例えば、Yagi et al.による論文Polymer Journal 6:429−436(1979)には、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの慣用的な共重合が記載されている。このコポリマーは、Higashihata et al.による論文Ferroelectrics 2:85−92(1981)に論考されているように、特に好都合な圧電特性を有する。
【0005】
Wang et al.による論文Macromolecules 39:4268−4271(2006)、Lu et al.による論文Macromolecules 39:6962−6968(2006)およびZhang et al.による論文Macromolecules 40:783−785(2007)には、フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合の後、クロロトリフルオロエチレン単位の塩素原子の低減を行うことによるフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのターポリマーの調製方法が記載されている。
【0006】
さらに、制御フリーラジカル共重合のための手法、即ち、ポリマーのモル質量と多分散指数の制御を得ること、また、制御された構造(ブロック、グラフト、交互、勾配、超分枝など)のコポリマーの合成を可能にすることも提案されている。
【0007】
文献US6355749には、ボラン化合物による酸素の存在下での制御共重合法によるフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびコモノマー(クロロトリフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロペンなど)のターポリマーの調製が記載されている。同様に、Chung et al.による論文Macromolecules 35:7678−7684(2002)には、これもボラン化合物による制御共重合によるフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび塩素化コモノマーのターポリマーの作製が記載されている。この手法は、ボラン化合物の高いコストおよび該化合物の爆発が生じるリスクのため、実際に実行することは困難である。
【0008】
さらに、一部のコポリマーは、連鎖移動剤としてMADIX(「Macromolecular Design via Interchange of Xanthates」)という名称のキサンテート化合物によって;または連鎖移動剤としてのヨウ素化化合物によって他の様式で制御されるフリーラジカル共重合方法によって調製することが可能になっている。
【0009】
当該技術分野において関連する研究をまとめた2例の総説が、Macromolecules 43:10163−10184(2010)およびChem.Rev.109:6632−6686(2009)に公表されている。
【0010】
Kostov et al.による論文Macromolecules 44:1841−1855(2011)には、MADIX型の手法を用いたフッ素系ブロックコポリマーの作製が記載されている。同じストラテジーにより、Girard et al.による論文ACS MacroLetters,2012,1,270−274には、フッ化ビニリデンとペルフルオロメチルビニルエーテルを主体とするコポリマーの合成が報告されている。
【0011】
Liu et al.による論文Chem.Comm.,47:7839−7841(2011)には、排他的にクロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルを主体とするコポリマーに関するキサンテート制御型共重合法の別の例が示されている。
【0012】
Boyer et al.による論文Journal of Polymer Science A,47:4710−4722(2009)には、ヨウ素化化合物を連鎖移動剤として使用したフッ化ビニリデンとα−トリフルオロメタクリル酸のコポリマーの合成が記載されている。
【0013】
Boyer et al.による論文Macromolecules 43:3652−3663(2010)には、ヨウ素化化合物を連鎖移動剤として使用したフッ化ビニリデンとペルフルオロメチルビニルエーテルとの共重合が記載されている。文献US2009/0105435には、同じ方法によるペルフルオロメチルビニルエーテル系二ヨウ素化コオリゴマーが記載されている。
【0014】
文献WO01/60869には、水性媒体中での、VDFと、HFP、TFE、CTFEまたはPAVE(ペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル)および続いて架橋をもたらす臭素化またはヨウ素化された架橋部位を有するモノマーであるとみなされる第3のコモノマーとの共重合によるフッ素系エラストマーの合成が記載されている。
【0015】
最後に、文献US2008/0081195には、末端官能基を2つ有し、ボランまたは二ヨウ素化型移動剤によって制御される重合によって調製されるターポリマー(例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのターポリマー)が記載されている。
【0016】
しかしながら、依然として、特に制御フリーラジカル共重合法による新しい熱可塑性フッ素系コポリマーが開発される必要性が存在している。
【0017】
かなり具体的には、トリフルオロエチレンを主体とする(特に、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンを主体とする)ブロックコポリマーが、制御フリーラジカル共重合によって、先行技術よりも簡単に確実に作製される必要性が存在している。
【0018】
また、トリフルオロエチレンを主体とする、特に、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンを主体とする、またはフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび第3のコモノマーを主体とするブロックコポリマーが得られることも必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6355749号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0105435号明細書
【特許文献3】国際公開第2001/60869号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0081195号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Yagi et al.、Polymer Journal 6:429−436(1979)
【非特許文献2】Higashihata et al.、Ferroelectrics 2:85−92(1981)
【非特許文献3】Wang et al.、Macromolecules 39:4268−4271(2006)
【非特許文献4】Lu et al.、Macromolecules 39:6962−6968(2006)
【非特許文献5】Zhang et al.、Macromolecules 40:783−785(2007)
【非特許文献6】Chung et al.、Macromolecules 35:7678−7684(2002)
【非特許文献7】Macromolecules 43:10163−10184(2010)
【非特許文献8】Chem.Rev.109:6632−6686(2009)
【非特許文献9】Kostov et al.、Macromolecules 44:1841−1855(2011)
【非特許文献10】Girard et al.、ACS MacroLetters,2012,1,270−274
【非特許文献11】Liu et al.、Chem.Comm.,47:7839−7841(2011)
【非特許文献12】Boyer et al.、Journal of Polymer Science A,47:4710−4722(2009)
【非特許文献13】Boyer et al.、Macromolecules 43:3652−3663(2010)
【発明の概要】
【0021】
本発明は、第1に、トリフルオロエチレンモノマーとトリフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種類のさらなるモノマーとの連鎖移動剤の存在下での制御フリーラジカル共重合工程を含む熱可塑性コポリマーの調製方法であって、前記連鎖移動剤がキサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物または一ヨウ素化化合物である方法に関する。
【0022】
共重合工程に存在させるモノマーは:
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンからなるものであるか;または
フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび少なくとも1種類のさらなるモノマーを含むものである。
【0023】
一実施形態によれば、該さらなるモノマーは、フッ素系モノマー、好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系モノマー、好ましくは、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリルモノマー、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテルから選択されるか;またはこの組合せから選択される。
【0024】
調製されるコポリマーは熱可塑性ブロックコポリマーである。これは、本発明によるコポリマーが半結晶性の融体ポリマーであることを意味する。使用される制御フリーラジカル共重合法は、RAFT/MADIX型のもの(可逆的付加/断片化連鎖移動によるもの)である。
【0025】
一実施形態によれば、連鎖移動剤は、式R
1−S−C(=S)−Z(式中、R
1は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表し、−Zは−O−R
2基(ここで、R
2は、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアリール基を表す。)を表すか、または−Zは−S−R
3基(ここで、R
3は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表す。)を表す。)の化合物であるキサンテートまたはトリチオカーボネート化合物である。
【0026】
一実施形態によれば、キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物はO−エチル−S−(1−メチルオキシカルボニル)エチルキサンテートである。
【0027】
一実施形態によれば、連鎖移動剤は、1−ヨードフルオロアルカン、好ましくは、式R
F−(CH
2CF
2)
n−I(式中、nは1から500の範囲の整数であり、R
Fは、ペルフルオロカーボン基を表し、特により好ましくはCF
3、C
2F
5、C
3F
7およびC
mF
2m+1基から選択され、mは4から20の範囲の偶数の整数である。)の化合物である一ヨウ素化化合物である。
【0028】
また、本発明は、トリフルオロエチレン単位を有するものであり、キサンテートもしくはトリチオカーボネートまたは一ヨウ素化末端基を有するコポリマーに関する。
【0029】
一実施形態によれば、該コポリマーは:
トリフルオロエチレン単位およびフッ化ビニリデンとは異なるさらなる単位;または
トリフルオロエチレン単位とフッ化ビニリデン単位のみ;または
トリフルオロエチレン単位およびフッ化ビニリデン単位およびさらなる単位
を有するものである。
【0030】
一実施形態によれば、該さらなる単位は、フッ素系単位、好ましくは、以下の単位:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系単位、好ましくは、以下の単位:酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリル単位、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテル単位から選択されるか;またはこの組合せから選択される。
【0031】
一実施形態によれば、該コポリマーは、−S−C(=S)−Z基であるキサンテートまたはトリチオカーボネート末端基を有するものであり、−Zは−O−R
2基(ここで、R
2は、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアリール基を表す。)を表すか、または−Zは−S−R
3基(ここで、R
3は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族基を表す。)を表す。
【0032】
一実施形態によれば、キサンテートまたはトリチオカーボネート末端基は−S−C(=S)−O−C
2H
5または−S−C(=S)−S−C
12H
25基である。
【0033】
一実施形態によれば、該コポリマーは、少なくとも1つのブロックがトリフルオロエチレン単位を含むものであるか、またはホモ−ポリ(トリフルオロエチレン)ブロックであるブロックコポリマーである。
【0034】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブロックがフッ化ビニリデン単位を含むものである。
【0035】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブロックがフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むものである。
【0036】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブロックが、フッ素系単位、好ましくは、以下の単位:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系単位、好ましくは、以下の単位:酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリル単位、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテル単位から選択されるか;またはこの組合せから選択される単位を含むものである。
【0037】
一実施形態によれば、該ブロックコポリマーは:
ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック(ホモ−ポリ(トリフルオロエチレン))、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むコポリマーブロック、および場合によりさらなる単位;または
フッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むコポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位とさらなる単位とを含むコポリマーブロック
を含むものである。
【0038】
一実施形態によれば、該ブロックコポリマーは:
ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位と2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位とを含むコポリマーブロック;または
フッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位を含むコポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位と2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位とを含むコポリマーブロック;または
ポリ(フッ化ビニリデン)ホモポリマーブロック、およびフッ化ビニリデン単位とトリフルオロエチレン単位のみを含むコポリマーブロック
を含むものである。
【0039】
また、上記のコポリマー(a)を少なくとも1種類のコモノマー(b)と反応させる工程を含むコポリマー(c)の調製方法も本発明の主題である。
【0040】
一実施形態によれば、コポリマー(c)は上記のブロックコポリマーである。
【0041】
一実施形態によれば、コモノマー(b)は、フッ素系モノマー、好ましくは、フッ化ビニリデン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系モノマー、好ましくは、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリルおよびアリルモノマー、例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテルから選択されるか;または該さらなるモノマーはこの組合せから選択される。
【0042】
一実施形態によれば、該方法は、上記の方法に従ってコポリマー(a)を調製する予備工程を含む。
【0043】
また、上記の少なくとも1種類のコポリマーを含むものである皮膜または膜も本発明の主題である。
【0044】
また、上記の皮膜を備えた圧電デバイスも本発明の主題である。
【0045】
また、上記の皮膜を備えた強誘電デバイスも本発明の主題である。
【0046】
また、上記の皮膜を備えた焦電デバイスも本発明の主題である。
【0047】
また、上記の皮膜を含む被覆膜も本発明の主題である。
【0048】
本発明により、先行技術に存在している必要性を満たすことが可能である。より詳しくは、本発明により、トリフルオロエチレンを主体とする(特に、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンを主体とする、またはフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンと第3のコモノマーとを主体とする)コポリマーの制御フリーラジカル共重合のための、ボランの使用に基づいた既知の方法よりも簡単で確実な方法が提供される。
【0049】
また、本発明により、トリフルオロエチレンを主体とする熱可塑性ブロックコポリマーを提供する。
【0050】
一部の特定の具体的な実施形態によれば、本発明はまた、以下に示す好都合な特徴のうちの1つまたは好ましくはこれ以上を有するものである。
【0051】
キサンテートもしくはトリチオカーボネート化合物または一ヨウ素化化合物の使用により、トリフルオロエチレンをそのコモノマーとのフリーラジカル共重合のための反応を制御することが可能である。
【0052】
本発明により、キサンテートまたはトリチオカーボネートまたは一ヨウ素酸塩化(monoiodated)末端基を有するポリマーまたはコポリマーとさらなるコモノマーとから多種多様なブロックコポリマーを得ることが可能である。
【0053】
本発明によるコポリマーは多種多様な様式で官能化され得る。例えば、このコポリマーは、続いて架橋工程またはグラフト工程で使用され得る。
【0054】
本発明は、圧電性、強誘電性または焦電性の化合物の作製に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】PVDF−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)ブロックコポリマー(実施例1参照)の重水素化アセトンでの
1H NMRスペクトルを表す。
【
図2】同じブロックコポリマーの重水素化アセトンでの
19F NMRスペクトルを表す。
【
図3】キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)コポリマー(実施例2参照)の重水素化アセトンでの
1H NMRスペクトルを表す。
【
図4】同じコポリマーの重水素化アセトンでの
19F NMRスペクトルを表す。
【
図5】キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)ブロックコポリマー(実施例3参照)の重水素化アセトンでの
1H NMRスペクトルを表す。
【
図6】同じブロックコポリマー重水素化アセトンでの
19F NMRスペクトルを表す。
【
図7】キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−PVDFブロックコポリマー(実施例4参照)の重水素化アセトンでの
1H NMRスペクトルを表す。
【
図8】同じブロックコポリマー重水素化アセトンでの
19F NMRスペクトルを表す。 上記の図において、化学シフト(単位:ppm)をx軸上に示す。
【
図9】キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)コポリマー(実施例2参照)、およびキサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)ブロックコポリマー(実施例3参照)のサイズ排除クロマトグラム(SECまたはGPC)を表す。
【
図10】キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)コポリマー(実施例2参照)、およびキサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−PVDFブロックコポリマー(実施例4参照)のサイズ排除クロマトグラム(SECまたはGPC)を表す。 上記の図において、保持時間(単位:分)をx軸上に示し、強度(単位:mV)をy軸上に示す。最高モル質量は最小保持時間に対応する。
【
図11】一ヨウ素化末端基を有するPVDF−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)コポリマー(実施例1参照)、キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)コポリマー(実施例2参照)、キサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)コポリマー(実施例3参照)およびキサンテート末端基を有するポリ(VDF−コ−TrFE)−b−PVDFコポリマー(実施例4参照)の熱重量分析の(大気下で実施)のサーモグラムを表す。図に表示した数字は実施例番号に対応する。温度(単位:℃)をx軸上に示し、残留質量%をy軸上に示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
次に、本発明を以下の説明において、より詳細に非限定的な様式で説明する。
【0057】
本説明全体を通して、TrFEまたはVF
3はトリフルオロエチレンを表し、VDFはフッ化ビニリデンを表し、PVDFはポリ(フッ化ビニリデン)を表し、1234yfは2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを表す。
【0058】
本発明は、TrFEと少なくとも1種類のさらなるモノマー、場合により数種類のさらなるモノマーとの共重合反応による熱可塑性ブロックコポリマーの調製であって、該共重合反応の制御を可能にする連鎖移動剤としてキサンテートもしくはトリチオカーボネート化合物または一ヨウ素化化合物の存在下での該コポリマーの調製を提供する。
【0059】
Xで示すさらなるモノマーを1種類使用する場合、TrFE単位および該さらなるモノマーXに対応する単位を有するコポリマーが得られる。得られるコポリマーは、ポリ(TrFE−コ−X)またはポリ(X−コ−TrFE)と示される。
【0060】
VDFをさらなるモノマーとして使用することは特に好都合であり、その場合、得られるコポリマーはポリ(VDF−コ−TrFE)またはポリ(TrFE−コ−VDF)と示される。
【0061】
または、例えば、フッ素系モノマー、好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)、フッ化ビニル、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペン、1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、1H−ペンタフルオロプロペン、2H−ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、α−トリフルオロメタクリル酸およびこの誘導体から選択されるか;または水素系モノマー、好ましくは、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリル、および例えば、アリルアルコール、酢酸アリル、ハロゲン化アリルもしくはアリルグリシジルエーテル型のアリルモノマーから選択される別のさらなるモノマーを使用することも可能である。
【0062】
また、2種類、3種類または3種類より多くの異なるさらなるモノマーを使用することも可能である。この場合、これらのモノマーのうちの1種類は好ましくはVDFである。
【0063】
このようなさらなるモノマーは、好ましくは上記に挙げたものから選択される。
【0064】
一例として、本発明により、ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)コポリマーを得ることが可能である。
【0065】
好ましくは、キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物は、式(I):
(I) R
1−S−C(=S)−Z
(式中、R
1は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族(好ましくは、アルキル)基を表し、−Zは−O−R
2基(ここで、R
2は、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアリール基を表す(この場合は、キサンテート化合物である。))を表すか、または−Zは−S−R
3基(ここで、R
3は、1から20個の炭素原子を含む脂肪族(好ましくは、アルキル)基を表す(この場合は、トリチオカーボネート化合物である。)を表す。)の化合物である。
【0066】
R
1、R
2および/またはR
3に芳香族基が存在しないと反応収率が改善される傾向を有することがみとめられている。
【0067】
R
1、R
2およびR
3基は置換されていても非置換であってもよく、好ましくは非置換である。好ましくは、R
1、R
2およびR
3は線状または分枝状の基であり、好ましくは飽和型の基である。
【0068】
次いで、本発明の方法に従って得られるコポリマーは、キサンテートまたはトリチオカーボネート末端基、即ち、−S−C(=S)−Z基(即ちZは上記の意味を有する。)が鎖の末端に存在するものになる。
【0069】
キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物の代わりに一ヨウ素化化合物を使用することが可能である。キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物では、通常末端基(CH
2CF
2−SC(S)R、R=アルキルまたはSR’、R’アルキル)とまさに同様に活性な反転末端基(CF
2CH
2−SC(S)R、R=アルキルまたはSR’、R’アルキル)が生じるという利点を有するが、一ヨウ素化化合物の場合はそうでない。
【0070】
さらに、キサンテートまたはトリチオカーボネート化合物から調製されるコポリマーでは、一ヨウ素化化合物から調製されるコポリマーと比べて改善された熱安定性が得られ得る(これに関しては
図11参照)。
【0071】
一ヨウ素化化合物は単一のヨウ素原子を含む化合物である。該化合物は、特に1−ヨードフルオロアルカン、特に、式R
F−(CH
2CF
2)
n−I(式中、nは1から500の範囲の整数であり、R
Fは、ペルフルオロカーボン基を表し、好ましくは基CF
3、C
2F
5、C
3F
7およびC
mF
2m+1から選択され、mは4から20の範囲の偶数の整数である。)の化合物であり得る。
【0072】
次いで、本発明の方法に従って得られるコポリマーは1つ(単一)の一ヨウ素化末端基、即ち単一の末端ヨウ素原子を有するものになる。
【0073】
共重合反応は、開始剤の存在下で行われる。前記開始剤は、例えば、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−アミルパーオキシピバレート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロキシペルオキシド、tert−ブチルペルオキシドまたは2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンであり得る。
【0074】
反応は、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよび水、ならびにこの混合物から選択される溶媒中で行われる。
【0075】
反応は、10から200℃、好ましくは35から170℃の温度、および10から120バール、好ましくは20から80バールの圧力で好ましく行われる。至適温度の選択は、使用される開始剤に依存する。一般的に、反応は少なくとも6時間、開始剤の半減期の期間がおよそ1時間となる温度で行われる。
【0076】
モノマーの量に対する連鎖移動剤の量のモル比によりコポリマーのモル質量を制御することが可能である。好ましくは、この比は0.001から0.020、より優先的には0.005から0.010である。
【0077】
コモノマーの量に対するTrFEモノマーの量の初期モル比は、例えば10%から90%、好ましくは20%から50%であり得る。およそ65%のVDFと35%のTrFE(モル比率で)を含むコポリマーが特に好都合である。
【0078】
得られるコポリマーのモル質量は、好ましくは10000から400000g/mol、より優先的には40000から300000g/molである。モル質量が高いほど、得られる物質の特性は良好である。
【0079】
得られるコポリマー多分散指数は、好ましくは1.2から1.9、より優先的には1.4から1.7である。
【0080】
この合成手法によって得られるコポリマーは、そのキサンテートもしくはトリチオカーボネート末端基または一ヨウ素化末端基のため、さらに、別のブロックコポリマーの調製のための1種類(またはこれ以上)のコモノマーと反応し得る。
【0081】
該コモノマーは、特に、上記に挙げたものから選択され得る。
【0082】
かくして得られるブロックコポリマーは、第1のブロックおよび第2のブロックを含む(または該ブロックからなるもの)ものであり得る。
【0083】
第1のブロックは、特に、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレンのブロックを含むコポリマー、またはフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を主体とするターポリマーであり得る。
【0084】
第2のブロックは、ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーブロックであり得る。
【0085】
例えば、第2のブロックは、ポリ(フッ化ビニリデン)ブロック、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびフッ化ビニルを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび2−ブロモ−1,1−ジフルオロエチレンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび3,3,3−トリフルオロ−2−クロロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび1,1,1,3−テトラフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび2H−ペンタフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび1H−ペンタフルオロプロペンを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびペルフルオロエチルビニルエーテルを主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびα−トリフルオロメタクリル酸を主体とするターポリマー、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルを主体とするターポリマー、VDF、α−トリフルオロメタクリル酸もしくはα−トリフルオロメタクリル酸誘導体、またはポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(アクリル酸アルキル)、ポリアクリルアミド、ポリビニルカルバゾールもしくはポリアクリロニトリルブロックを主体とするコポリマーであり得る。
【0086】
上記に記載のものと同様の条件が、ブロックコポリマーを作製するためのこの反応にも使用され得る。キサンテートもしくはトリチオカーボネートまたは一ヨウ素化末端基を有するコポリマーの量に対するコモノマーの量のモル比は、好ましくは1から200、より優先的には5から100である。
【0087】
本発明に従って得られるコポリマーは、特に、電解質の作製または膜の作製に有用である。また、該コポリマーは、圧電、強誘電または焦電デバイスの作製、および被覆膜の作製にも有用である。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は本発明の例示であり、限定されない。
【0089】
[実施例1]
PVDF−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)の合成
PVDF−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yf)ブロックポリマーの合成は2工程で、以下のようにして行った:
【0090】
【化1】
【0091】
まず初めに、VDFのC
6F
13I制御フリーラジカル重合を、Iodine transfer polymerization(ITP)of vinylidene fluoride(VDF)−Influence of the defect of VDF chaining on the control of ITPというタイトルの論文(Macromolecules,38,10353−10362(2005)に公表)に記載のプロトコルに従って行った。
【0092】
このフリーラジカル共重合は、マノメーター、破裂板ならびにガス導入弁および逃し弁を備えた100mL容Parr Hastelloyオートクレーブ内で行う。調節された電子デバイスにより、オートクレーブの撹拌と加熱の両方を制御する。VDF系テロマーC
6F
13(VDF)
n−I(6.2g、0.026mol、2%、DP
n=26)をオートクレーブ内に導入する。次いで、これを、その気密性を確認するために30バールの窒素圧まで1時間加圧する。窒素がエバキュエーションされたら、反応器を真空下に40分間置き、次いで、t−ブチルパーオキシピバレートTBPPI(0.60g、3.47mmol)および60mLの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンをこの中に導入する。次いで、反応器を−60℃まで冷却し(アセトン/液体窒素混合物)、次いで、1,1,2−トリフルオロエチレンまたはTrFE(7.47g、0.091mol)、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペンまたは1234yf(1.49g、0.013mol)およびフッ化ビニリデンまたはVDF(10g、0.156mmol)を、次いで逐次この中に導入する。
【0093】
反応器を74℃まで徐々に加熱し、圧力および温度の変化を記録する。重合中、反応の発熱による反応器内部の圧力の増大が観察され、その後、ガス状フッ素系モノマーの所望のポリマーへの変換によって引き起こされる前記圧力の低下が観察される。74℃で、圧力は35バールに近くなる(78℃までの温度の急激な上昇が観察され、これにより反応は発熱性であることが示される。)。この発熱後の時間中、74℃に維持した温度で圧力は35バールから12バールまで低下する。反応および冷却後、反応器を氷中に30分間放置し、次いで、ガス抜きをする(未反応フッ素系モノマーの放出)。反応器を開放した後、溶媒を蒸留によって除去し、次いで、生成物を冷ペンタンで析出させ、濾過し、重量が一定になるまで真空乾燥させる(10
−2バール、60℃)。PVDF−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234yz)ブロックコポリマー(白色粉末の形態)を
1H NMR(
図1)および
19F NMR(
図2)分光法によって特性評価する。収率の計算値は78%である。
【0094】
図1において、符号AはTrFEのCFH基を表し;符号BはCF
2C
H2−I基を表し;符号CはVDFの通常の二連子−CH
2CF
2−C
H2CF
2−および1234yfのCH
2を表し;符号DはVDFの逆転二連子−CF
2C
H2−C
H2CF
2−を表す。TrFEの比率の計算値は20mol%である。
【0095】
図2において、符号Eは1234yfを表す。
【0096】
コポリマーのTGAサーモグラム(大気下で実施)を
図11(曲線番号1)に示す。
【0097】
【化2】
【0098】
[実施例2]
ポリ(VDF−コ−TrFE)−SC(S)OEtの合成
この共重合は、先のとおりに、100mL容HC−276反応器内で、この内部に、それぞれ、t−ブチルパーオキシピバレート(0.904g、5.2mmol)、2−メルカプトプロピオン酸メチルエステルO−エチルジチオカーボネート(Rhodixan;0.811g、3.9mmol)および50mLの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを導入することにより行われる。次いで、反応器を−60℃まで冷却し(アセトン/液体窒素混合物)、次いで、TrFE(12.81g、0.156mol)、続いてVDF(15g、0.234mmol)を、次いで、逐次この中に導入する。
【0099】
反応器を74℃まで徐々に加熱し、圧力および温度の変化を記録する。重合中、反応の発熱による反応器内部の圧力の増大が観察され、次いで、ガス状フッ素系モノマーの消費によって引き起こされる前記温度の下降が観察され、所望のポリマーが得られる。74℃で、圧力は22バールに近くなる(76℃までの発熱と関連)。
【0100】
この発熱後の時間中、74℃に維持した温度で圧力は7バールまで低下する。先のように、反応および冷却後、反応器を氷中に30分間放置し、次いでガス抜きをする。反応器を開放した後、溶媒を留去する。生成物を冷ペンタンで析出させ、濾過し、14時間真空乾燥させる(10
−2バール、60℃)。ポリ(VDF−コ−TrFE)−SC(S)OEtコポリマー(白色粉末の形態)を
1H NMR(
図3)および
19F NMR(
図4)分光法によって特性評価する。収率の計算値は75%である。
【0101】
図3において、符号AはCHF基を表し;符号Bは−CF
2C
H2SC(S)OEt基を表し;符号Cは−CH
2CF
2−C
H2CF
2−を表し;符号DはtBu−VDF基を表し。さらに、符号a、b、cおよびdは、表示したコポリマーの式に示した位置に対応する。
【0102】
【化3】
【0103】
図4において、符号Eは−CH
2CF
2−CH
2を表す。さらに、符号a、b、c、d、e、f、g、hおよびh’は、表示したコポリマーの式に示した位置に対応する。
【0104】
コポリマーのGPCクロマトグラムを
図9と10に示す。このコポリマーのモル質量は40000g/mol(PMMA当量)であり、その多分散指数DPIは1.61である。
【0105】
コポリマーのTGAサーモグラムを
図11(曲線番号2)に示す。
【0106】
[実施例3]
ポリ(VDF−コ−TrFE)−b−ポリ(VDF−ter−TrFE−ter−1234)ブロックポリマーの合成
この共重合は、VDFとTrFEを主体とする実施例2のコポリマー(6.2g、0.026mol、2%)をオートクレーブ内に導入することにより行われる。反応器を真空下に40分間置き、次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(0.60g、3.47mmol)および60mLの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンをこの中に導入する。次いで、反応器を−60℃まで冷却し、次いで、TrFE(7.47g、0.091mol)、1234yf(1.49g、0.013mol)、および最後にVDF(10g、0.156mmol)をそれぞれ、この中に導入する。反応器を74℃まで徐々に加熱し、圧力および温度の変化を報告する。
【0107】
重合中、反応の発熱による反応器内部の圧力の増大が観察され、次いで、溶液中でのガス状フッ素系モノマーの所望のポリマーへの変換によって引き起こされる前記圧力の低下が観察される。74℃で、圧力は42バールに近くなる(79℃までの温度の急激な上昇が観察される。)。この発熱後の時間中、74℃に維持した温度で圧力は42バールから11バールまで低下する。反応および冷却後、反応器を氷中に30分間放置し、次いでガス抜きをする。
【0108】
反応器を開放した後、溶媒を蒸留によって完全に除去し、コポリマーを氷冷ペンタンで析出させ、濾過し、14時間真空乾燥させる(10
−2バール、60℃)。所望のコポリマー(白色粉末の形態)を
1H NMR(
図5)および
19F NMR(
図6)分光法によって特性評価する。収率の計算値は81%である。
【0109】
図6において、2つの符号Aは1234yfの存在を示す。
【0110】
コポリマーのGPCクロマトグラムを
図9に示す。ブロックコポリマーのモル質量は55000g/mol(PMMA当量)であり、DPIは1.71である。コポリマーのTGAサーモグラムを
図11(曲線番号3)に示す。
【0111】
[実施例4]
ポリ(VDF−コ−TrFE)−b−PVDFブロックコポリマーの合成
【0112】
【化4】
【0113】
この共重合は、VDFとTrFEを主体とし、キサンテート末端基を有する実施例2で合成したコポリマー(6.2g、0.026mol、2%)をオートクレーブ内に導入することにより行われる。反応器を真空下に40分間置き、次いで、t−ブチルパーオキシピバレート(0.43g、1.87mmol)および60mLの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンをこの中に導入する。次いで、反応器を−60℃まで冷却し(アセトン/液体窒素混合物)、次いで、VDF(12g、0.187mmol)をこの中に導入する。反応器を74℃まで徐々に加熱し、圧力および温度の変化を記録する。
【0114】
重合中、反応の発熱による反応器内部の圧力の増大が観察され、次いで、ガス状VDFの消費によって引き起こされる前記圧力の低下が観察され、所望のポリマーが得られる。74℃で、圧力は25バールに近くなり(76℃までの温度の急激な上昇が観察される。)、次いで7バールまで下がる(温度は74℃に維持する。)。反応および冷却後、反応器を氷中に30分間放置し、次いでガス抜きをする。反応器を開放した後、溶媒を蒸留によって除去し、次いで、残渣を冷ペンタンで析出し、濾過し、重量が一定になるまで真空乾燥させる(10
−2バール、60℃)。
【0115】
所望のコポリマー(白色粉末の形態)を
1H NMR(
図7)および
19F NMR(
図8)分光法によって特性評価する。収率の計算値は79%である。
【0116】
コポリマーのGPCクロマトグラムを
図10に示す。このブロックコポリマーのモル質量は43000g/mol(PMMA当量)であり、DPIは1.72である。
【0117】
コポリマーのTGAサーモグラムを
図11(曲線番号4)に示す。
【国際調査報告】