特表2015-514855(P2015-514855A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バラード パワー システムズ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2015-514855パーフルオロポリマイオノマ中の粒子の分散方法
<>
  • 特表2015514855-パーフルオロポリマイオノマ中の粒子の分散方法 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514855(P2015-514855A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】パーフルオロポリマイオノマ中の粒子の分散方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20150424BHJP
   C08L 27/22 20060101ALI20150424BHJP
   C08L 27/02 20060101ALI20150424BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
   C08J3/20 B
   C08L27/22
   C08L27/02
   C08K7/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-508925(P2015-508925)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月26日
(86)【国際出願番号】US2012034664
(87)【国際公開番号】WO2013162499
(87)【国際公開日】20131031
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】504229022
【氏名又は名称】バラード パワー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ズィーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】グマラ,マリカ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA23
4F070AC04
4F070AC06
4F070AE16
4F070FA08
4J002BD011
4J002BD171
4J002FA086
(57)【要約】
パーフルオロポリマイオノマ中の分散粒子の準備方法が、粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合し、その粒子の存在下、パーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合し、
前記粒子の存在下、前記パーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換することを備えた、パーフルオロポリマイオノマ中の粒子の分散方法。
【請求項2】
前記パーフルオロイオノマ前駆体が、直鎖状のパーフルオロカーボン主鎖と、前記直鎖状のパーフルオロカーボン主鎖から延在するパーフルオロペンダント側鎖と、を有し、前記パーフルオロペンダント側鎖が、−SO2X基で終端しており、前記Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、アミン(NH2)およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項3】
前記パーフルオロイオノマ前駆体が、前記粒子の5%〜100%(重量%)の乾燥重量を有することを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項4】
前記パーフルオロイオノマ前駆体が、前記粒子の30%〜70%(重量%)の乾燥重量を有することを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項5】
前記粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合することが、前記粒子を分散させて、該粒子を前記パーフルオロイオノマ前駆体で被覆することを含むことを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項6】
前記粒子に被覆された前記パーフルオロイオノマ前駆体は、均一なナノ厚を有することを特徴とする請求項5に記載の分散方法。
【請求項7】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマが、実質的に前記粒子を取り囲むことを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項8】
前記粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合することが、前記パーフルオロイオノマ前駆体を少なくとも一つの溶媒中に溶解させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項9】
前記混合後、前記粒子を前記パーフルオロイオノマ前駆体で均一に被覆するように、前記少なくとも一つの溶媒を除去することを含むことを特徴とする請求項8に記載の分散方法。
【請求項10】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマを形成させるように、前記粒子に被覆された前記パーフルオロイオノマ前駆体を処理することを含むことを特徴とする請求項9に記載の分散方法。
【請求項11】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマで被覆された前記粒子を基体上に適用することを含むことを特徴とする請求項10に記載の分散方法。
【請求項12】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマを形成させるように、前記粒子に被覆された前記パーフルオロイオノマ前駆体を架橋結合させることを含むことを特徴とする請求項9に記載の分散方法。
【請求項13】
前記架橋結合させることが、前記粒子に被覆された前記パーフルオロイオノマ前駆体の2つのパーフルオロペンダント側鎖を共有結合させるように、少なくとも一つのスルホンイミド基−SO2−NH−SO2−を形成させることを特徴とする請求項12に記載の分散方法。
【請求項14】
前記パーフルオロイオノマ前駆体で被覆された前記粒子を基体上に適用し、次いで、前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマを形成させるように前記パーフルオロイオノマ前駆体を処理することを含むことを特徴とする請求項9に記載の分散方法。
【請求項15】
前記粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合することが、前記パーフルオロイオノマ前駆体の少なくとも一つのモノマを提供し、前記少なくとも一つのモノマを前記粒子と混合させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項16】
前記粒子の存在下で前記パーフルオロイオノマ前駆体を生成させるように、前記少なくとも一つのモノマを重合させることを含むことを特徴とする請求項15に記載の分散方法。
【請求項17】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマを形成させるように前記粒子上の前記パーフルオロイオノマ前駆体を処理することを含むことを特徴とする請求項16に記載の分散方法。
【請求項18】
前記粒子がナノ粒子を含み、該ナノ粒子が少なくとも一つの貴金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子が、多孔質炭素、金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択された担体上に担持されることを特徴とする請求項18に記載の分散方法。
【請求項20】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマが、280g/mol〜1500g/molの当量を有することを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項21】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマが、280g/mol〜700g/molの当量を有することを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項22】
(a)貴金属触媒粒子をパーフルオロイオノマ前駆体で被覆するように、前記貴金属触媒粒子と前記パーフルオロイオノマ前駆体とを混合するステップと、
(b)前記ステップ(a)からの前記パーフルオロイオノマ前駆体で被覆された前記貴金属触媒粒子を、高分子基体上に適用するステップと、
(c)前記ステップ(b)後、前記パーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換させるステップと、
を備えた、パーフルオロポリマイオノマ中の粒子の分散方法。
【請求項23】
前記パーフルオロプロトン伝導性イオノマが、280g/mol〜1500g/molの当量を有することを特徴とする請求項22に記載の分散方法。
【請求項24】
前記高分子基体が、パーフルオロスルホン酸であることを特徴とする請求項22に記載の分散方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等の電気化学的装置に使用される、パーフルオロイオノマポリマ中の粒子の均一な分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料源の化学エネルギーを電気と熱に変換する電気化学的装置である。燃料電池は、膜電極アセンブリ(MEA)を含み、このアセンブリは、アノード触媒電極とカソード触媒電極の2つの電極の間に挟持された電解質膜を有する。
【0003】
固体高分子型燃料電池(PEMFC)は、輸送用途および定置用途の高効率発電用に検討されている燃料電池の一種である。固体高分子型燃料電池の一般的な膜電極アセンブリは、プロトン伝導性ポリマ電解質膜と、アノードおよびカソード電極を含む2つの電極と、を含む。電極は、通常、多孔質炭素に担持された、白金または白金合金などのナノ粒子触媒と、パーフルオロプロトン伝導性ポリマイオノマと、を含む。電極は、ガス(反応物および生成物)、電子、およびプロトンの効率的な輸送を可能にしながら、電気化学的反応に必要な三相接触を提供する。
【0004】
従来の電極の製造方法は、通常、パーフルオロポリマイオノマの分散溶液と、触媒ナノ粒子とを混合して触媒インクを形成させ、電解質膜に触媒インクを被覆することを含む。電解質膜への触媒インクの被覆法は、例えば、スクリーン印刷、溶液噴霧、または転写を含む。
【0005】
ポリマイオノマの選択や、イオノマと触媒ナノ粒子材料との混合を含む、触媒インクの準備が、固体高分子型燃料電池の膜電極アセンブリの動作に多大な影響を及ぼす。現在、850g/mol〜1500g/molの当量(EW)を有する水溶性パーフルオロスルホン酸(PFSA)のポリマ分散体(すなわち、Nafion(登録商標)分散体)が、固体高分子型燃料電池の電極用途の触媒インクの準備用イオノマ材料として、独占的に使用されている。当量とは、例えばパーフルオロスルホン酸ポリマの−SO3H酸性基などの、ポリマにおけるプロトン交換部位として機能する活性官能基1モルを含む物質の質量(g)を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマイオノマおよび触媒材料は、好ましくは十分に混合される。しかしながら、周知のように、超音波高剪断混合および/またはボールミリングを用いたこれに限定しない機械的分散を含む、触媒インクの従来の準備方法では、触媒インク溶液中の触媒ナノ粒子の凝集体を十分に分解することはできず、したがって、電極の製造に用いられるパーフルオロスルホン酸のイオノマ溶液/インク中に触媒ナノ粒子の均一な分散体が形成されないおそれがある。
【0007】
さらに、パーフルオロスルホン酸ポリマイオノマの当量は、電極中でのプロトンの輸送能力に強く影響を及ぼす。現在、市販のパーフルオロスルホン酸イオノマ分散体の通常の当量の範囲は850g/mol〜1100g/molであり、高温、低湿度の固体高分子型燃料電池の動作条件では、電極に十分なプロトン伝導性を提供することができない。約700g/mol未満の当量を有する直鎖型のパーフルオロスルホン酸イオノマは優れたプロトン伝導性を提供するが水溶性であり、したがって、従来の電極の製造法を通じて電極に効率的に適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に開示のパーフルオロポリマイオノマ中の分散粒子の準備方法が、粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合物中で混合し、その粒子の存在下、パーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換することを含む。
【0009】
別の態様では、パーフルオロポリマイオノマ中に粒子を分散させる方法が、貴金属触媒粒子をパーフルオロイオノマ前駆体で被覆するように、貴金属触媒粒子とパーフルオロイオノマ前駆体とを混合物中で混合し、パーフルオロイオノマ前駆体で被覆された貴金属触媒粒子を高分子基体上に適用し、パーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】パーフルオロポリマイオノマ溶液中の触媒粒子材料の均一な分散体の一例の準備方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、パーフルオロポリマイオノマ(perfluorinated polymer ionomer)溶液中に粒子材料を分散させる一例の方法20の選択された部分を示す。粒子材料は、マイクロサイズの粒子のみならず、ナノ粒子を含む。更なる例では、触媒粒子材料は、多孔質炭素や金属酸化物などの担体の有無によらない、貴金属または貴金属合金の触媒ナノ粒子である。触媒粒子材料は、本明細書では触媒材料あるいは触媒粒子とも呼ぶ。触媒粒子材料は、水性溶媒または非水溶媒とのパーフルオロイオノマ混合物中に十分に分散されて触媒インクを形成する。インクが電解質膜に被覆されて、膜電極アセンブリを形成する。方法20およびパーフルオロイオノマ混合物中に分散されたナノ粒子材料は、こうした用途に限定されるものではなく、その他の装置も本開示から利益を享受できることを理解されたい。本明細書中の用語「ナノ粒子」とは、平均粒径が1〜500nmの粒子を意味する。更なる例では、それらの粒子は、平均粒径が1〜100nmであり、あるいは平均粒径が1〜50nmである。
【0012】
固体高分子型燃料電池およびその他の電気化学的装置では、ポリマイオノマの選択や、電極の製造に用いられる方法が、電圧−電流特性、燃料電池の耐久性、効率等に関する装置の性能を制御する。一例として、触媒電極層のポリマイオノマコーティングの均一性やその厚さが、電極中のガス、プロトン、電子の輸送、延いては装置の運転効率に直接影響を及ぼす。ポリマイオノマの選択や、イオノマの当量が、特に相対的に高温、低相対湿度の運転条件下では、電極の性能や耐久性に直接影響を及ぼす。
【0013】
耐久性に不利な影響を与える要因の一つは、ポリマイオノマの化学構造である。電気化学的セルの過酷な/腐食性の運転環境のために、異なるプロトン伝導性ポリマの中でも、パーフルオロポリマイオノマが燃料電池に独占的に使用されている。
【0014】
性能に不利な影響を与える要因の一つは、ポリマイオノマの当量である。通常のパーフルオロポリマイオノマである、パーフルオロスルホン酸(PFSA)は、ポリマのペンダント基のパーフルオロ側鎖が終端するプロトン伝導部位としてのスルホン酸基−SO3Hを含む。低当量のパーフルオロスルホン酸ポリマは多くの場合より優れたプロトン伝導性を提供し、したがって電極内での優れたプロトン輸送を提供する。燃料電池電極に広く使用されるパーフルオロスルホン酸の当量は、通常850g/mol〜1100g/molである。約700g/molに近いほどの低当量の従来のパーフルオロスルホン酸ポリマイオノマもまた燃料電池電極に適用可能である。しかしながら、さらに低当量の(約700g/mol未満の)パーフルオロスルホン酸ポリマイオノマは水溶性であり、したがって、燃料電池電極のイオノマとして直接適用可能ではない。
【0015】
パーフルオロスルホンイミド(PFSI)ポリマは、パーフルオロカーボン間の直鎖状の主鎖(perfluorinated carbon-carbon linear backbone chains)と、それらのパーフルオロカーボン間の直鎖状主鎖から延在するパーフルオロ側鎖と、を有する。パーフルオロスルホンイミドは、側鎖構造の一部である少なくとも一つのスルホンイミド基−SO2−NH−SO2−を含み、その窒素原子からプロトンを提供することにより、プロトン交換部位として機能する。パーフルオロ側鎖は、−CF3またはスルホン酸基で終端するペンダント鎖(pendent chains)と、架橋ポリマを形成するように別のパーフルオロカーボン間の主鎖に共有結合した架橋鎖と、を含みうる。極めて低い当量(280〜700)の架橋パーフルオロスルホンイミドポリマは高プロトン伝導性かつ水に不溶性であり、したがって、燃料電池電極のイオノマ材料として使用されるのに適している。
【0016】
記載のように、一例の方法20は、約280g/mol〜約1500g/molの範囲の望ましい当量のパーフルオロイオノマの準備方法を提供するとともに、燃料電池電極の性能、耐久性、および効率を向上させるように触媒材料全体に亘るパーフルオロイオノマの均一な分散体の準備方法を提供する。
【0017】
図1を参照すると、この方法20は概ね混合ステップ22と、変換ステップ24と、を含む。一方、混合ステップ22および変換ステップ24とともに追加のステップが用いられうることを理解されたい。一実施例では、混合ステップ22は、触媒粒子または触媒粒子材料などの粒子と、溶液などのパーフルオロイオノマ前駆体と、を混合物中で混合することを含み、変換ステップ24は、その粒子の存在下でパーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換することを含む。したがって方法20は、所望の目標イオノマ当量および重量百分率を有するパーフルオロイオノマ前駆体溶液に分散された触媒材料の準備を可能にするように順応性がある。さらに、触媒材料の存在下でのパーフルオロプロトン伝導性イオノマの形成により、イオノマの均一なコーティングを有する触媒粒子の均一な分散を提供する。すなわち、イオノマと触媒粒子の凝集が低減される。この方法20は、触媒粒子に加えて、または触媒粒子の代替例として、他種の粒子にも用いられうることを理解されたい。
【0018】
更なる例では、方法20のパーフルオロイオノマ前駆体溶液に分散された結果として得られた触媒材料は、乾燥触媒材料の50%〜95%(重量)、または59%〜77%(重量)の組成を有し、残余がパーフルオロイオノマであり、このイオノマは、700g/mol未満の当量、または280g/mol〜700g/molの当量を有する。
【0019】
その他の例では、当量は、700g/molよりも大きく、または700g/mol〜1100g/molの間である。更なる実施例では、触媒材料は、炭素担体の有無によらない少なくとも一つの貴金属のマイクロサイズの粒子のみならずナノ粒子を含む。一つまたは複数の貴金属は、例えば、白金、金、コバルト、鉄、ニッケル、イリジウム、クロム、モリブデン、パラジウム、ルテニウム、スカンジウム、ロジウム、バナジウム、またはそれらの組合せを含む。更なる例では、一つまたは複数の貴金属は、白金およびパラジウムの少なくとも一つを含む。更なる例では、一つまたは複数の貴金属は、平均粒径が1〜100nm、平均粒径が1〜30nm、または平均粒径が1〜15nmである。更なる例では、一つまたは複数の貴金属が、多孔質炭素粒子によって担持される。例えば、炭素粒子は、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ブラックパール、黒鉛化炭素、または、親水性または疎水性部分を有する機能性炭素である。
【0020】
更なる例では、イオノマ前駆体は(−SO2Fの形態の)パーフルオロスルホン酸ポリマ樹脂、パーフルオロスルホンアミド(−SO2NH2)のポリマ、または目標イオノマのモノマである。一例では、最終的なポリマイオノマは、直鎖状または架橋結合したパーフルオロスルホン酸、直鎖状または架橋結合したパーフルオロスルホンイミド、またはそれらの組合せである。別の例では、最終的なポリマは、一側鎖につき2つ以上のプロトン交換部位を有するとともに、直鎖状でも架橋結合してもよい。架橋鎖もまた2つ以上のプロトン交換部位を有する。
【0021】
更なる実施例では、混合ステップ22は、溶液混合法26またはその場重合法(in-situ polymerization)28を含む2つの異なる方法のいずれかを用いることにより実行される。溶液混合法26の一例では、混合ステップ22は、溶媒または溶媒の混合物中で、粒子とパーフルオロイオノマ前駆体を混合することを含む。一例では、溶媒または溶媒の混合物は、選択されたパーフルオロイオノマ前駆体を容易に溶解して溶液を形成するのに効果的である。溶媒は、これに限定しないが、テトラデカフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、およびトリクロロトリフルオロエタンを含む。別の例として、溶媒または混合溶媒は、選択されたパーフルオロイオノマ前駆体を容易に溶解して実在溶液を形成するのに効果的な非フルオロ極性溶媒である。極性溶媒は、これに限定しないが、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびn,n−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む。
【0022】
更なる例では、パーフルオロイオノマ前駆体が溶媒に溶解され、次いで粒子が、溶媒と溶解したイオノマ前駆体の溶液の混合物中に添加される。一例では、混合物は非水性である。別法として、パーフルオロイオノマ前駆体を溶媒に溶解させる前に、またはそれと組み合わせて、粒子が溶媒に添加される。
【0023】
一実施例では、イオノマ前駆体と粒子の混合物を生成する混合ステップ22の後、次いでナノ厚のパーフルオロイオノマ前駆体が粒子を均一に被覆するように、溶媒が除去される。用語「ナノ厚」とは、本明細書では100nm以下の平均厚さを意味する。更なる例では、平均ナノ厚は、5nm以下である。
【0024】
一例として、溶媒がスプレー乾燥、オーブン乾燥、真空蒸留/乾燥、または回転蒸発(rotoevaporation)によって除去されるが、その他の方法を用いてもよい。溶媒の除去により、パーフルオロイオノマ前駆体が実質的に粒子を取り囲む。
【0025】
更なる例では、溶媒の除去後、得られた(溶媒の無い)「乾燥」パーフルオロイオノマ前駆体で被覆された粒子が、変換ステップ24で適切な溶媒および反応物(reagents)を用いて処理され、パーフルオロイオノマ前駆体がパーフルオロプロトン伝導性ポリマイオノマに変換される。したがって、粒子の存在下でプロトン交換部位が形成され、粒子全体に亘ってパーフルオロイオノマの均一層が付与される。
【0026】
更なる実施例では、十分に分散された粒子およびイオノマは、これに限定しないが、超音波分散、高剪断混合、および/またはボールミリングを含む周知の方法を用いることにより、電極「インク」として準備され、直接被覆または転写により、基体上に適用される。更なる例では、インクの準備時にパーフルオロイオノマが被覆された粒子にバインダが添加される。一例では、バインダは(NAFION分散体などの)パーフルオロスルホン酸分散溶液である。一実施例では、基体はパーフルオロスルホン酸膜などのプロトン交換膜である。
【0027】
代替的に、得られた(溶媒の無い)「乾燥」パーフルオロイオノマ前駆体が被覆された粒子が、ポリマ交換膜などの基体に直接被覆される。次いでポリマ交換膜とイオノマ前駆体で被覆された粒子とが、変換ステップ24において適切な溶媒および反応物を用いて処理され、触媒材料上のイオノマ前駆体が、粒子および基体の存在下で、パーフルオロプロトン伝導性ポリマイオノマに変換される。これらの材料は、イオノマ内部の結合を向上させるように任意選択的に加熱処理してもよい。
【0028】
(一つまたは複数の)非パーフルオロ極性溶媒が用いられる更なる実施例では、パーフルオロイオノマ前駆体と粒子との混合溶液を生成する混合ステップ22後、溶媒を除去することなく反応物(reagents)を混合溶液中に直接添加して、変換ステップ24においてパーフルオロイオノマ前駆体をパーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換し、電極用途の均一なパーフルオロイオノマが分散された粒子を生じさせる。
【0029】
混合ステップ22のその場重合法28を利用する一実施例では、目標パーフルオロイオノマ前駆体の一つ以上のモノマが、混合ステップ22において粒子と混合される。それにより粒子の存在下、ラジカル重合によりパーフルオロイオノマ前駆体が形成される。次いで粒子に被覆されたパーフルオロイオノマ前駆体が変換ステップ24で、上記のように基体への被覆の前後のいずれかにおいて、パーフルオロプロトン伝導性イオノマに変換される。
【0030】
以下の実施例は、混合ステップ22の溶媒法26およびその場重合法28、および、後続の変換ステップ24の実施例をさらに示す。
【実施例】
【0031】
(実施例1:高当量イオノマベースのインクへの中間生成物)
一例では、イオノマ前駆体は、約700g/molまたはこれを上回る当量を有する(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂である。(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が、部分的にフッ素化されたまたはパーフルオロ化された(一つまたは複数の)溶媒中に溶解されて、溶液を形成する。この溶媒は、これに限定しないが、テトラデカフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、および1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC 43−10)を含む。溶液温度を上昇させることは、このステップでは(一つまたは複数の)溶媒中のポリマの溶解度を向上させるのに概ね有用である。次いで触媒ナノ粒子が所望の量で溶液に添加されて、目標混合物を生成する。次いで(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が触媒材料を均一に被覆するように、(一つまたは複数の)溶媒が除去される。次にその触媒材料上の(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が、KOHまたはNaOH溶液などの塩基性溶液中で加水分解され、次いで酸ですすぎ洗いまたは洗浄されて、−SO2F基を−SO3H基に変換し、均一な(−SO3H形態の)パーフルオロスルホン酸イオノマが分散された触媒ナノ粒子材料を生じさせる。加水分解および酸性化の条件は一般に周知のものである。例えば、(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂で被覆された触媒ナノ粒子は、KOH:水:DMSO(15:25:60重量%)の溶液中、60°Cで6時間攪拌し、次いで脱イオン水で2〜3回すすぎ、酸性化のために2M HNO3中、60°Cで3時間攪拌し、次いで洗浄水が中性になるまで脱イオン水で繰返し洗浄する。
【0032】
(実施例2:低当量架橋イオノマインク用)
別の例では、イオノマ前駆体は、約700g/mol未満の当量を有する(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂である。(−SO2F形態の)低当量のパーフルオロスルホン酸樹脂が、部分的にフッ素化されたまたはパーフルオロ化された(一つまたは複数の)溶媒中に溶解されて、実施例1に記載の溶液を形成する。次いで触媒ナノ粒子材料が所望の量で溶液に添加されて、目標混合物を生成する。次いで低当量の(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が触媒材料を均一に被覆するように、(一つまたは複数の)溶媒が回転蒸発によって除去される。
【0033】
次いで触媒材料上の低当量の(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が塩基性溶液中で、架橋剤で処理されて、−SO2Fを−SO2NHSO2−に変換し、それにより触媒材料に被覆された、架橋結合した不水溶性のパーフルオロスルホンイミドイオノマを生じさせる。架橋剤は、一般式H2NSO2−Rf−SO2NH2を有するパーフルオロジスルホンアミド(perfluorinated di-sulfonamide)化合物であり、ここでRfは、1〜10個の炭素原子と、0〜4個の酸素原子と、を備えた分枝状のまたは非分枝状のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基である。塩基性溶液は少なくとも一つの第3級アミン塩基および少なくとも一つの極性溶媒を含む。第3級アミン塩基は、これに限定しないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を含む。極性溶媒は、これに限定しないが、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはこれらの組合せを含む。
【0034】
(実施例3)
一例では、ポリマ前駆体は、約280g/mol〜約1500g/molの当量、好ましくは約280g/mol〜約700g/molの当量を有する(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂である。(−SO2F形態の)パーフルオロスルホン酸樹脂が気体NH3を用いることにより処理されて、(−SO2−NH2形態の)パーフルオロスルホンアミドポリマに変換される。パーフルオロスルホンアミドポリマは、これに限定しないが、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはn,n−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む極性溶媒に溶解されて、溶液を形成する。溶液温度を上昇させることは、このステップでは(一つまたは複数の)溶媒中のポリマの溶解度を向上させるのに概ね有用である。次いで触媒ナノ粒子が所望の量で溶液に添加されて、目標混合物を生成する。
【0035】
一例では、次いで溶媒が除去され、異なる極性溶媒、架橋剤、および(一つまたは複数の)第3級アミン塩基が添加されて、触媒材料の存在下、−SO2NH2を−SO2NHSO2−に変換し、その結果、触媒材料上に均一な、ナノ厚の架橋結合したパーフルオロスルホンイミドイオノマを生じさせる。架橋剤は、一般式FSO2−Rf1−SO2Fを有するパーフルオロジスルホニルフッ化物化合物(perfluorinated di-sulfonyl fluoride compound)であり、ここでRf1は、1〜10個の炭素原子と、0〜4個の酸素原子と、を備えた分枝状のまたは非分枝状のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基である。(一つまたは複数の)溶媒および(一つまたは複数の)第3級アミン塩基は、実施例2に記載の通りである。代替的に、(一つまたは複数の)溶媒を除去することなく、パーフルオロジスルホニルフッ化物架橋剤および(一つまたは複数の)第3級アミン塩基が溶液混合物中に直接添加されて、−SO2NH2を−SO2NHSO2−に変換し、触媒材料上に均一な、ナノ厚の架橋結合したパーフルオロスルホンイミドイオノマを生じさせる。
【0036】
更なる例では、パーフルオロイオノマ前駆体である、−SO2F形態のパーフルオロスルホン酸樹脂が、実施例1に記載のようにまず触媒ナノ粒子材料上に均一に被覆され、次いで気体NH3で処理されて、触媒材料の存在下、−SO2Fを−SO2−NH2に変換し、パーフルオロスルホンアミドポリマで被覆された触媒材料を生じさせ、次いで塩基性溶液中で、架橋剤で処理されて、上記のように、触媒材料上に均一な、ナノ厚の架橋結合したパーフルオロスルホンイミドイオノマを生じさせる。
【0037】
更なる例では、パーフルオロイオノマ前駆体は、一般式CF2=C(F)−Rf2−SO2Fを有するパーフルオロアルキルビニルエーテルのモノマからなるホモポリマであり、ここでRf2は、1〜10個の炭素原子と、0〜4個の酸素原子と、を備えた分枝状のまたは非分枝状のパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基である。
【0038】
(実施例4)
その場重合法を利用する実施例では、重合が触媒ナノ粒子の存在下で行われるように、(上記のように)パーフルオロアルキルビニルエーテルのモノマが混合ステップ22において触媒ナノ粒子材料、テトラフルオロエチレン、および(一つまたは複数の)遊離基開始剤と混合される。実施例では、重合は、溶液重合またはエマルジョン重合である。溶液重合では、モノマが、(一つまたは複数の)パーフルオロ溶媒または部分的にフッ素化された溶媒に溶解され、次いで触媒ナノ粒子が添加される。エマルジョン重合では、触媒ナノ粒子表面の疎水性のため、触媒ナノ粒子が(一つまたは複数の)モノマとともに分散されて、水溶液中でミセルを形成する。両者の場合においてもラジカル重合が行われて、触媒ナノ粒子表面上に被覆されたナノ厚の(−SO2F形態の)イオノマ前駆体を直接生じさせる。
【0039】
形成されたイオノマ前駆体が700g/molを上回る当量、または700g/mol〜1500g/molの当量を有する例では、イオノマ前駆体が被覆された触媒材料が、実施例1に記載のように処理されて、均一な、ナノ厚のプロトン伝導性イオノマが被覆された触媒材料を形成する。
【0040】
その他の例では、形成されたイオノマ前駆体が700g/mol未満の当量、または280g/mol〜700g/molの当量を有し、イオノマ前駆体が被覆された触媒材料が、実施例2に記載のように処理されて、ナノ厚の、架橋結合したプロトン伝導性イオノマが被覆された触媒材料を形成する。代替的に、イオノマ前駆体が被覆された触媒材料がNH3ガスで処理されて、−SO2F基を−SO2NH2に変換し、次いで実施例3に記載のように更に処理されて、−SO2NH2基を、スルホンイミド基−SO2−NH−SO2に変換し、均一な、ナノ厚の架橋結合した低当量のパーフルオロスルホンイミドポリマが被覆された触媒ナノ粒子材料を生じさせる。
【0041】
特徴部の組合せを図示の例に示すが、本発明の様々な実施例の利点を実現するために全ての特徴部を組み合わせる必要はない。換言すれば、本発明の実施例に従って設計されたシステムは、必ずしも図の一つに示された全ての特徴部または図に概略的に示す全ての部位を含むものではない。さらに、一実施例の選択された特徴部をその他の実施例の選択された特徴部と組み合わせてもよい。
【0042】
上記の記載は本質的に限定的なものではなく例示に過ぎない。本発明の真意を逸脱することなく開示の実施例に対する種々の変形や修正が当業者にとって明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定される。
図1
【国際調査報告】