(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-514970(P2015-514970A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】単一パッケージに集積されたハイブリッドレーダ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20150424BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20150424BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20150424BHJP
G01S 13/93 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
G01S7/02 F
H01Q21/06
H01Q3/36
G01S13/93 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-558742(P2014-558742)
(86)(22)【出願日】2013年1月22日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月11日
(86)【国際出願番号】US2013022451
(87)【国際公開番号】WO2013126166
(87)【国際公開日】20130829
(31)【優先権主張番号】13/401,977
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】リ ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ドナルド シュマレンバーグ
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021DB03
5J021GA02
5J021HA04
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD09
5J070AD10
5J070AF03
5J070AK22
5J070BA01
5J070BB16
(57)【要約】
【課題】車両に用いるフェーズドアレイレーダを提供すること。
【解決手段】本発明のレーダ装置は,向きを変えられる受信ビームを有するフェーズドアレイ受信器を含む。受信アンテナはサブアレイにまとめられ,サブアレイはそれぞれサブアレイ信号を混合器に供給する。混合器信号は次に,DBFアルゴリズムが受信ビーム内に狭い仮想ビームを決定するために用いられる。受信ビームは視野のセクタからレーダデータを受信するために用いられ,セクタは概略受信ビームと同じ幅であってよい。セクタが検査される順序は,各セクタ内の以前に追尾した標的の存在,性質及び/又は振舞に関係するセクタ重要度によって決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置である装置であって,
送信器と,
複数のフェーズドアレイ要素を含むフェーズドアレイ受信器であって,各フェーズドアレイ要素はアンテナ素子及び移相器を含み,前記フェーズドアレイ要素はサブアレイにまとめられ,各サブアレイは少なくとも二つのフェーズドアレイ要素を含み,サブアレイ信号を供給する,フェーズドアレイ受信器と,
複数の混合器であって,各混合器は連携するサブアレイから前記サブアレイ信号を受信し,各混合器はさらに,局部発振器信号を受信し,混合器信号を発生する,混合器と,
前記複数の混合器から混合器信号を受信するデジタルビーム形成器と,
前記局部発振器信号を発生する局部発振器と,
前記フェーズドアレイ受信器が受信した受信ビームの方向を変えるように動作できるフェーズドアレイアンテナ制御器であって,前記受信ビームは角度幅を有する,フェーズドアレイアンテナ制御器と,を備え,
前記デジタルビーム形成器は前記混合器信号から仮想ビームを決定し,該仮想ビームは前記受信ビームより狭く,前記受信ビームの角度幅内に配置される,装置。
【請求項2】
前記デジタルビーム形成器は電子制御回路によって提供され,該電子制御回路はプロセッサを含む,請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記デジタルビーム形成器は,前記プロセッサによって実行されるデジタルビーム形成アルゴリズムによって提供される,請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記デジタルビーム形成アルゴリズムは,多信号分類(MUSIC)アルゴリズム及び回転不変技法による信号パラメータの推定(ESPRIT)アルゴリズムからなる一群のアルゴリズムから選択される,請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電子制御回路は,前記フェーズドアレイアンテナ制御器を更に含み,前記受信ビームの方向を変えるように動作できる,請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記送信器はフェーズドアレイ送信器である,請求項1に記載の装置。
【請求項7】
混合器の数は,サブアレイの数に等しい,請求項1に記載の装置。
【請求項8】
地上車両に搭載するようにした車両レーダである,請求項1に記載の装置。
【請求項9】
レーダ標的を特定するようにレーダを動作させる方法であって,該レーダは受信ビーム及び視野を有し,
フェーズドアレイ受信器を用いて,前記視野のセクタに前記受信ビームを向けるステップと,
前記セクタからレーダデータを受信するステップと,
前記レーダデータを分析するために,デジタルビーム形成アルゴリズムを用いて,前記受信ビーム内に複数の仮想ビームを決定するステップと,を有し,
前記仮想ビームはそれぞれ,前記受信ビームより狭いビーム幅を有し,
前記仮想ビームは前記レーダ標的を特定するために用いられる,方法。
【請求項10】
前記視野を複数のセクタに分割するステップと,
重要度パラメータを前記複数のセクタの各セクタに与えるステップと,
重要度パラメータの降順に,前記複数のセクタの各セクタに前記実ビームを向けるステップと,を更に有する,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重要度パラメータは,先行して収集されたレーダデータから得られた標的追尾データを用いて決定される,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フェーズドアレイ受信アンテナはフェーズドアレイアンテナ素子のサブアレイを含み,
各サブアレイは連携する混合器を有し,該連携する混合器は前記サブアレイから局部発振器信号及びサブアレイ信号を受信し,
前記デジタルビーム形成アルゴリズムは,前記混合器からの出力信号を用いて前記複数の仮想ビームを決定する,請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記レーダは車両レーダであり,前記方法は該車両レーダを動作させる方法である,請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置及び方法に関し,特に,車両に用いるフェーズドアレイレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は,車両において,例えば衝突回避及びほかの応用に用いられる。通常のデジタルビーム形成(DBF)レーダにおいては,広視野が照射され,デジタルビーム形成器を用いて,視野内の標的を追尾する仮想ビームを生成する。別の種類のレーダはフェーズドアレイレーダであり,これは標的を追尾する実ビームを形成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施例は,実ビームを生成するフェーズドアレイレーダと,実ビーム内により狭い仮想ビームを形成するデジタルビーム形成(DBF)法とを用いるハイブリッドレーダを含む。
【0004】
フェーズドアレイレーダはハードウェアによってほとんど完全に実現することができ,デジタル処理に対する要求はDBFレーダに比べて非常に小さい。通常のフェーズドアレイは一つの混合器を必要とするだけであり,大きなアレイを容易に単一チップに収めることができる。しかし,通常のフェーズドアレイは,デジタルビーム形成器が用いる複雑な最適化ルーチンという利点がない。しかし,通常のデジタルビーム形成器は通常,大きなハードウェア面積(footprint)を有し,計算要件が利用可能なチャネルの数を制限し,レーダの性能を低下させる。
【0005】
本発明の実施例においては,フェーズドアレイの態様とDBFレーダ法の態様とが結合されて,それぞれの技術的弱点を他方の強みで補強して解消する。いくつかの実施例においては,レーダ回路を単一シリコンチップに収容して,複雑度を最小化することができる。
【0006】
例示レーダ装置は,送信器(フェーズドアレイ送信器であってもよい)及びフェーズドアレイ受信器を含む。受信器の各フェーズドアレイ要素は,アンテナ素子と,選択的増幅器段と,移相器とを含む。移相器はアンテナ信号を受信し,受信ビームを視野のうち選択したセクタに向けるように電子的に制御することができる。受信ビームはまた,DBF処理によって合成される仮想ビームと区別するために実ビームと呼んでもよい。
【0007】
フェーズドアレイ要素はサブアレイにまとめられ,各サブアレイは少なくとも二つのフェーズドアレイ要素を含む。サブアレイは連携する混合器にサブアレイ信号を供給し,サブアレイ信号は,サブアレイ内のフェーズドアレイ要素からの結合された信号である。装置は複数の混合器を含み,サブアレイ当たり1混合器であり,各混合器は連携するサブアレイからのサブアレイ信号を受信する。混合器はまた,局部発振器からの局部発振信号も受信し,デジタルビーム形成器(DBF)に供給される混合器信号を発生する。次にDBFは,受信ビーム内に仮想ビームを合成(すなわち,デジタルプロセッサによって決定)する。局部発振器は局部発振信号を発生させるために用いられ,電気相互接続装置は局部発振信号を各混合器に運ぶために用いられる。
【0008】
レーダ動作において,アンテナ制御器が送信器を励起し,移相器を調整して(フェーズドアレイ受信器が受信した)受信ビームの向きを変える。移相器は,シリコンチップに集積することができる電子的に制御される部品であってよい。受信ビームは角度幅を有する実ビームであり,サブアレイにまとめることによって,通常のフェーズドアレイアンテナのビームに比べて広げることができる。デジタルビーム形成器は,混合器信号から仮想ビームを決定し,仮想ビームは実ビームよりも狭く,実ビームの角度幅の中に配置される。非限定的な例として,実ビームはN本の仮想ビームに細分してもよく,Nは2と4096との間,例えば4と64との間であってよい。このように,DBFは実ビーム内に超解像を提供し,標的識別を支援する。
【0009】
デジタルビーム形成器は,プロセッサを含み,混合器信号を受信する電子制御回路によって提供してもよい。次に,電子制御回路は,例えば距離及びドップラシフトの点で,レーダデータ内の標的を識別することができる。デジタルビーム形成器は,プロセッサが実行するデジタルビーム形成アルゴリズムを用いてもよい。電子制御回路はさらに,例えば送信器を励起し,移相器の電子制御によってフェーズドアレイ受信器の向きを変えることによって,フェーズドアレイアンテナを制御するために用いてもよい。いくつかの例においては,送信器はフェーズドアレイ送信器であってよく,受信ビームが発生した視野の類似の部分に向けられる。
【0010】
レーダ装置,特に車両レーダを動作させる方法の例は,受信アンテナ素子内の移相器を調整することによって,フェーズドアレイ受信器を用いて,視野のセクタに受信ビームを向けるステップを含む。セクタからのレーダデータ及び複数の仮想ビームは,デジタルビーム形成アルゴリズムを用いて,受信ビーム内で決定される。仮想ビームはそれぞれ,受信ビームよりも狭いビーム幅を有する。
【0011】
例示方法において,視野は複数のセクタに分割され,セクタには重要度パラメータが与えられる。重要度パラメータは,車両環境内の標的の存在,距離(range),相対速度及び性質などの車両環境の種々の条件を反映することができる。重要度パラメータは,先行して収集されたレーダデータから取得された標的追尾データを用いて決定してもよい。
【0012】
仮想ビームを特定するために,受信ビームは重要度パラメータの降順に順に各セクタに向けられ,データが収集され,そのデータにDBFアルゴリズムが実行される。視野全体ではなく受信ビーム幅に対応するセクタに超解像を行うためにDBFアルゴリズムが使用され,計算量が減少される。
【0013】
重要度パラメータは,収集されたデータに基づいて見直してもよく,この処理はセクタごとに反復される。フェーズドアレイ受信アンテナは,フェーズドアレイアンテナ素子のサブアレイを含んでもよく,各サブアレイは局部発振信号及びサブアレイ信号を受信する連携する混合器を有し,デジタルビーム形成アルゴリズムは,複数の仮想ビームを決定するために混合器からの出力信号を用いる。
【0014】
本発明の実施例は,車両用,例えば,陸上車両用のレーダを含み,自動車レーダ装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来のDBFレーダ(先行技術)を示す図である。
【
図3】DBF技法を用いて,フェーズドアレイレーダの実ビーム内に仮想ビームを生成することを更に示す図である。
【
図4】フェーズドアレイ要素が,それぞれ独自の混合器を有するサブアレイにまとめられる例示受信フェーズドアレイを示す図である。
【
図5】本発明の実施例によるレーダ装置の更なる概略図である。
【
図6】レーダ動作における最も重要なセクタの特定を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示レーダ装置は,方向を変えられる実受信ビームを有するフェーズドアレイ受信器を含む。フェーズドアレイ受信器要素はサブアレイにまとめられ,各サブアレイは連携する混合器に結合されたサブアレイ信号を供給する。混合器信号は次に,DBFアルゴリズムが受信ビーム内の狭い仮想ビームを決定するために用いられる。
【0017】
受信ビームは視野のセクタからレーダデータを取得するために用いられ,セクタは概略受信ビームと同じ幅であってよい。DBFアルゴリズムは,選択されたセクタ内の高解像度仮想ビームを決定するために用いられる。セクタを検査する順序は,先行して追尾した標的の存在,性質及び振舞に関係するセクタ重要度によって決定してもよい。受信ビームは,フェーズドアレイ受信器によって所望のセクタに向けられ,デジタルビーム形成器(例えば,デジタル信号プロセッサによって提供される)は,受信ビーム内の比較的狭い仮想ビームを決定する。
【0018】
図1は従来のDBFレーダの動作を示している。車両10はDBFレーダを備え,DBFレーダは近隣の車両14及び16を含む広い視野を照射する。三角形16は,レーダの視野の簡略化した表現である。通常のデジタルビーム形成レーダはレーダの視野からすべてのデータを読み込み,同時にすべての角度を計算する。しかし,視野全体を照射することによって,雑音及び多重散乱効果が増加し,レーダの信号対雑音比を減少させることがある。
【0019】
図2はセクタ別DBF処理の思想を示している。車両10は実ビーム18を生成するフェーズドアレイレーダを含む。この実施例において,実ビームの視野は車両14だけを含む。
【0020】
ハードウェア移相器又は受信アンテナは,レーダの全視野のうち断片だけが覆われるように,実ビームを形成する。ビームは,通常のフェーズドアレイレーダのビームよりも大きなビーム電力半値幅を有してもよい。しかしビーム幅は,
図1に示した通常のDBFレーダの全視野幅よりずっと狭い。
【0021】
実ビームは,通常のフェーズドアレイ法を用いて,全視野内の所定のセクタに向けることができる。この例において,セクタはレーダの全視野の一部(slice)である。次に,セクタ内に狭い仮想ビームを形成するために,デジタルビーム形成(DBF)最適化技法が用いられる。最適化技法は,多信号分類(MUSIC)及び回転不変技法による信号パラメータ推定(ESPRIT)などのビーム形成アルゴリズムのような,通常のDBFレーダに既に使用されているものであってよい。しかし,準定緩和法(semi−definite relaxation)及び組合せ理論を利用するものなども利用可能である。
【0022】
図3は,
図2に示したものと類似の,実ビーム18を生成する,車両10上のレーダ装置を示し,ビーム形成アルゴリズムは,実ビーム18の幅の中により狭い仮想ビーム20を形成する。DBFアルゴリズムは,実ビームの視野の上の複数の仮想ビームを同時に解決することができる。仮想ビームは,実ビームよりずっと狭くてもよい。データは,実ビームの全角度範囲に渡って生成された仮想ビームから同時に取得することができる。
【0023】
実ビームはレーダの視野内のほかのセクタに向けることができ,セクタごとに対応する仮想ビームが向けられたビーム内に形成される。このようにして,車両環境を高解像度レーダで覆うことが達成される。
【0024】
図4は,例示レーダ装置内の移相器及び混合器の構成を示している。
図4は,サブアレイ出力を混合器42に供給する移相器40を含む第1サブアレイを示す。第2サブアレイの出力は混合器44に供給され,任意の第Nサブアレイの出力は混合器46に供給される。複数の混合器出力が取得され,デジタルビーム形成アルゴリズムの入力に供給される。
【0025】
通常のフェーズドアレイにおいては,すべての移相器の出力が一緒にまとめられて,一つの混合器に供給される。しかし,
図4の構成においては,移相器はサブアレイ内でまとめられ,各サブアレイの出力は個別の混合器に向けられる。各サブアレイの移相器は一緒にまとめられるが,各サブアレイの出力は一緒にまとめられない。いくつかの例においては,各サブアレイに,2と128との間のいずれか,例えば2と32との間の個数の移相器があってよい。
【0026】
各サブアレイは,サブアレイ出力を受信する連携する混合器を有し,各混合器には共通に分配される局部発振(LO)信号が供給される。分配されたLO信号は各混合器の入力で位相及び振幅が一致させられ,それによってLO信号の位相及び振幅はどの混合器も同一である。一つの方法においては,これは,LO発生器と各混合器入力との間に類似の経路長を与える分岐電気コネクタを用いて達成してもよい。各混合器出力はアナログデジタル変換器に送られ,それによってビーム形成アルゴリズムが最適化されたビーム形成を実行できる。
【0027】
いくつかの例において,完全な装置を,単一シリコンチップのような単一チップ内に実現することができ,チップは送受信フェーズドアレイアンテナ,混合器及びLO分配のためのすべてのハードウェア移相器を含む。ほかのレーダ機能もまた,同一のチップ上に含めてもよい。
【0028】
ハードウェア移相器は実ビームを形成し,実ビームはレーダ視野のセクタを照射し,又はセクタから信号を受信する。レーダの視野は先行する測定に基づいて動的にセクタ分けしてもよい。各セクタは,実レーダビームの電力半値幅の幅を有してもよい。
【0029】
図5は例示装置を示す更なる概略図である。この装置は,アンテナ放射素子52と電気通信する移相器50のようなフェーズドアレイ要素を含む送信フェーズドアレイを含む。レーダ装置はまた,移相器54のような移相器と,56のようなアンテナ受信素子とを含む受信フェーズドアレイも含む。各移相器と,連携するアンテナ放射又は受信素子との間に1又は複数の増幅器要素(図示していない)があってもよい。
【0030】
局部発振器60は,混合器58のような各混合器に供給される局部発振信号を供給する。電気接続パタンはこの図に示していないが,局部発振器分配ネットワークは通常,各混合器入力に到着するLO信号が同一の位相及び振幅を有するように構成されるであろう。代替として,各混合器に入力されるLO信号間の位相オフセットのデジタル処理においてソフトウェア調整が行われる。
【0031】
電子制御回路62は混合器信号を受信し,DBFアルゴリズムを実行するプロセッサを含む。電子制御回路はまた,移相器に電子的に位相偏移する信号を供給し(明瞭性のために電気接続は示していない),送信及び受信ビームの向きを変える。
【0032】
前に説明したように,フェーズドアレイ要素はサブアレイにまとめられ,各サブアレイ出力は連携する混合器に供給される。サブアレイ当たり一つの混合器があり,したがって,混合器の数はサブアレイの数と同一である。結果として,一つの受信ビームについて複数の混合器出力が得られる。次に混合器出力は,CPU又はほかのプロセッサを含む電子回路のようなデジタル処理回路によって受信され,仮想ビームを決定するためにプロセッサによって実行されるデジタルビーム形成アルゴリズムによって用いられる。
【0033】
視野がセクタに分けられた後で,セクタは,先行する測定値に基づいて,通常追尾フィルタが計算したとおりに,重要度順に順位付けしてもよい。ビームは最初に,最高順位のセクタを覆うように実ビームを調整するために移相器を用いて方向が変えられ,次に別のセクタが重要度の降順に覆われる。いくつかの例においては,低重要度のいくつかのセクタは,視野を反復して覆う前に省略してもよい。視野全体に標的の動きを予測するために追尾フィルタを用いてもよく,これによって先行して収集したデータに基づいてセクタの重要度順位付けを改善することができる。
【0034】
特定された最重要セクタから始めて,セクタごとにレーダ信号が受信され,電算化制御システムの中央処理装置(CPU)のようなプロセッサによって実行されるデジタルビーム形成アルゴリズムを用いて,セクタ内に仮想ビームが形成される。セクタから戻ってきた重要な信号は,最適化アルゴリズムを用いて位置及び速度が解決され,その結果は追尾フィルタを更新するために用いられる。
【0035】
実ビームは次に第2高順位セクタに移動させられ,処理が反復される。ここで説明した方法の利点は,最適化の前にビームの位置が確認され,これによってDBF最適化及びデジタル信号処理要求の範囲が減少することである。考慮下の角度範囲が減少することは計算能力の節約になる。
【0036】
信号対雑音比は,雑音源が減少するため,全レーダ視野から信号が受信される従来のDBFレーダに比べて増加する。レーダの許容更新率もまた増加する。
【0037】
図6はセクタ順位付け法を示すフローチャートである。ボックス80は視野をN個のセクタに分けるステップに対応する。非制限的な例として,Nは2〜64の範囲,例えば4〜32の範囲(4及び32を含む)であってよい。ボックス82はセクタを重要度で1からNまで順位付けするステップに対応する。通常これは,追尾フィルタを用いて達成されるか,そうでなければ先行して収集したデータを用いて達成されるであろう。例えば,最も重要なセクタは,最も多いレーダ標的,最も近い標的又は衝突の危険があると特定された標的を含んでもよい。先行するデータがないときは,セクタは任意の方法で順位付けしてもよいし,別様に順位付けしてもよい。ボックス84は,フェーズドアレイレーダが生成した実ビームを最も重要なセクタに向けるステップに対応する。ボックス86は,セクタのレーダデータを読み込み,ビーム形成の最適化を行うステップに対応する。ボックス88は収集したデータに基づいて,追尾フィルタを更新するステップに対応する。ボックス90は,N番目のセクタかどうかを決定するステップに対応する。この処理はN個のセクタそれぞれごとに反復され,すべてのセクタについて処理が完了した後,処理はボックス80に戻る。しかし,すべてのセクタが検査されなかったときは,ボックス84において次に最も重要なセクタが選択され,ボックス86及び88の処理が反復される。
【0038】
いくつかの例においては,受信ビームはセクタ重要度を特定することなく,視野全体を走査する。
【0039】
いくつかの例においては,単一チップにハイブリッドアレイを集積してもよい。混合器の配置及び局部発振器分配ネットワークは,チャネル信号の位相及び振幅が一致しているとみなされるように構成される。チップ内において,強力な送信信号を比較的低電力の受信信号から隔離するために,隔壁(導体要素を含む)を用いてもよい。チップは種々のシリコンベースの技術,限定するものではないが例えば,SiGe,BiCMOS,Si−RF,等によって実現することができる。いくつかの例においては,干渉を減少させるために電圧制御発振器自体と位相ロックループ検出回路とを別のチップに配置してもよい。
【0040】
いくつかの例においては,N本(Nは混合器の数)までの個別受信ビームを提供するために,受信アンテナを動的に再構成してもよい。実ビームの数がNより少ないときは,実ビームのうちいくつか,又はすべてにDBF分析を適用してもよい。
【0041】
本発明の実施例はまた,車両運転中の衝突回避のための改善された方法及び装置も含む。例えば,DBFによって形成された狭い仮想ビームを用いて標的識別及び特徴付けを改善してもよいし,距離及び相対速度のような標的特徴を用いて,衝突回避のための車両入力,例えばハンドル操作又はブレーキ入力を起動するために用いてもよい。
【0042】
いくつかの例においては,セクタの数を動的に再構成してもよい。例えば,より多くの標的が検出されたときは,セクタの数を増してもよい。
【0043】
本発明は上述の説明的な例に限定されない。説明した実施例は本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば,本発明の変更,要素の別の組合せ及び別の応用を想起するであろう。
【0044】
以上,本発明について説明した。特許請求の範囲は請求項のとおりである。
【国際調査報告】