特表2015-516265(P2015-516265A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-516265埋込み医療デバイスの電線の絶縁を検査するための体外ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-516265(P2015-516265A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(54)【発明の名称】埋込み医療デバイスの電線の絶縁を検査するための体外ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20150515BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20150515BHJP
【FI】
   A61N1/362
   A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-512691(P2015-512691)
(86)(22)【出願日】2013年5月8日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2013040190
(87)【国際公開番号】WO2013173144
(87)【国際公開日】20131121
(31)【優先権主張番号】61/649,057
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/607,309
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514215309
【氏名又は名称】ザ ガイ ピー.カーティス アンド フランセス エル.カーティス トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイ ピー.カーティス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC02
4C053KK02
(57)【要約】
埋込みペースメーカ又は除細動器のリード線の電気的完全性を試験するシステムが提供される。このシステムは、生理食塩水などの導電性溶液を保持する容器を含む。溶液中に電流を通すために電圧源及び2つの電極が設けられる。システムを使用するために、電気リード線の近位端が埋込み電子デバイスから切り離され、生理食塩水中に通されてから、デバイス/モニタに電気的に接続される。試験時、デバイス/モニタは、試験パルスをリード線に通して送出し、リード線中の電気的活動を監視する。近位部分の全長に沿って連続した場所を試験するために、その部分が、試験パルスが送出され監視される間、引っ張られて生理食塩水中の電極の間を通される。モニタは、リード線の絶縁破壊を示すリード線中の異常な電気的活動を検出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心筋活動を刺激/制御する埋込み電子デバイスと一緒に延長リード線が使用される場合に、前記リード線の電気的完全性を試験するシステムであって、前記延長リード線が、軸を画定し、且つ前記リード線の近位端と遠位端の間に延びる絶縁電極線を、前記電子デバイスと前記患者の心筋の間に電気接続を確立するために有し、前記システムが、
前記リード線の電気的活動を監視するための、前記リード線の前記近位端に選択的に接続されたモニタと、
前記リード線の少なくとも一部分を取り囲むように配置された導電性溶液と、
カソード及びアノードを有する電圧源とを備え、前記アノード及びカソードが、前記溶液を通る電流を確立するように、且つ前記リード線の絶縁破壊がある場合に、前記モニタで受信される妨害信号を生じさせるように配置される、システム。
【請求項2】
前記導電性溶液が生理食塩水である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極線が円筒形に成形され、前記電気リード線の軸に沿って同軸状に心合わせされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気リード線の前記電極線が外側電極線及び内側電極線を含み、前記モニタが、前記電気リード線の前記近位端で前記電気リード線のそれぞれの電極線に電子的に接続される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気リード線が前記患者の体内に動作可能に埋め込まれて、タイ・ダウン点から前記心筋の間に延びる前記電気リード線の遠位部分と、前記電子デバイスと前記タイ・ダウン点の間に延びる前記電気リード線の近位部分とが確立され、前記システムが、前記遠位部分が実質的に攪乱されないままで、前記電気リード線の前記近位部分を試験する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気リード線の前記近位部分が、前記近位部分の必要な可撓性を得るために、前記リード線の余剰部を含み、前記余剰部が、前記電子デバイスと前記タイ・ダウン点の間の皮下ポケットに埋め込まれる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電子デバイスが、ペースメーカ・パルス発生器及び除細動器パルス発生器からなる電子デバイスの群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記リード線を通して試験パルスを送出するための、前記リード線の前記近位端に接続されたデバイスをさらに備え、前記アノード及びカソードが、前記溶液を通る電流を確立するように、且つ前記リード線の絶縁破壊により前記溶液中の電流が前記デバイスからの試験パルスに干渉する場合に、前記モニタで受信されるべき妨害信号を生じさせるように配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
導電性溶液を中に保持するためのチャンバを取り囲む壁がある容器を、前記カソード及び前記アノードがそれぞれ前記容器の前記壁に接続された状態でさらに備え、アクセス・ポートが、前記リード線を前記溶液中に通すために前記容器の前記壁に形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記導電性溶液が前記患者の皮下ポケット内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
非導電性先端部を有するリトラクタを、前記アノード及びカソードが、前記導電性溶液の中に挿入するための前記非導電性リトラクタ先端部上に配置された状態でさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記リトラクタの前記先端部が、前記リード線の一部分を含む平面と実質的に平行な方向に前記アノード及びカソードを並べるためにL字形になっている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
電気リード線の遠位部分が患者の心臓に取り付けられたままで、前記リード線の近位部分の絶縁の完全性を試験するシステムであって、
カソード及びアノードを有する電圧源と、
前記リード線の前記近位部分の少なくとも一部分を取り囲む導電性流体であり、前記流体を通る電流を確立するために前記カソード及びアノードに電気的に接続された導電性流体と、
前記リード線に接続された監視回路であり、前記流体中の前記電流が絶縁破れにより前記リード線に妨害信号を発生していることを示す前記リード線からの入力に応答して、警報信号を出力するように構成された監視回路とを備える、システム。
【請求項14】
前記リード線を通して試験パルスを送出するための、前記リード線の近位端に接続されたパルス発生器をさらに備え、前記監視回路が前記リード線に接続されており、且つ、前記流体中の前記電流が絶縁破れにより前記パルス発生器からの前記試験パルスに干渉する妨害信号を前記リード線に発生していることを示す前記リード線からの入力に応答して、警報信号を出力するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記試験パルスが、心腔収縮を刺激するのに必要な捕獲閾値を超える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記試験パルスが、約0.4msから0.5msの範囲のパルス持続期間を有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記電圧源が前記導電性流体中にパルス電流を生じさせる、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記パルス電流が、約1msから2msの範囲のパルス持続期間を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記流体を保持する容器であって、前記リード線を前記容器の中に入れ前記流体中に通すためのアクセス・ポートを付けて形成される容器をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記リード線が双極ペースメーカ・リード線である、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
電気リード線の遠位部分が患者の心臓に取り付けられたままで、前記リード線の近位部分の絶縁の完全性を試験する方法であって、
前記リード線の前記近位部分の少なくとも一部分を導電性流体で取り囲むステップと、
前記流体中に電流を通すステップと、
前記リード線からの出力を監視するステップと、
前記流体中の前記電流が絶縁破れにより前記リード線に妨害信号を発生していることを示す前記リード線からの入力に応答して、警報信号を発生するステップとを含む、方法。
【請求項22】
パルス発生器を前記リード線の近位端に接続し、前記リード線に通す試験パルスを送出するステップをさらに含み、前記警報信号が、絶縁不良により前記流体中の前記電流が前記パルス発生器からの前記試験パルスに干渉していることを示す前記リード線からの出力に応答して発生される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記通すステップが、前記リード線の遠位端が患者の心臓に取り付けられている状態で実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記リード線の前記近位部分の一部分だけが一時点に前記流体によって取り囲まれており、前記リード線の前記近位部分を前記流体中に通過させて近位部分の複数の部分を前記流体で順次に取り囲むステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記取り囲むステップが、アクセス・ポートを付けて形成された容器を使用して達成される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年5月18日出願の米国特許仮出願第61/649057号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に医療デバイスに関する。より詳細には、本発明は、双極ペースメーカ・リード線の絶縁を検査する試験機器に関する。本発明は特に、それだけには限らないが、ペースメーカ・リード線の遠位部分が患者の体内に動作可能に配置されたままで、リード線の近位部分を検査するデバイスとして有用である。
【背景技術】
【0003】
患者の心筋活動を刺激及び/又は制御することを目的とするペースメーカ及び/又は除細動器などの医療機器の埋込みには、患者の体内に1つ又は複数の電気リード線を配置することが伴う。具体的には、これらの電気リード線は、皮下に配置された電子デバイスと心臓の間で体内に延びる。
【0004】
各電気リード線は、その全長に沿って本質的に一体であるが、リード線のそれぞれ異なる部分が、異なる機能的環境の影響下に置かれる。1つには、心筋と直接接触して配置されている電気リード線の遠位部分は、相対的に固定しておかなければならない。一方で、電子デバイス(例えば、ペースメーカ又は除細動器のパルス発生器)と電気的に接続されている電気リード線の近位部分は、患者の物理的な動きに対し可撓性及び応答性のあるものでなければならない。これらの異なる環境(すなわち、安定性及び可撓性)を効果的に確立するために、電気リード線の近位部分と遠位部分は、電気リード線の遠位部分だけを効果的に安定させる、いわゆる「タイ・ダウン(tie down)」によって分離される。
【0005】
医療デバイスが適正に動作するには、各埋込みリード線の電気的完全性が、その全長にわたって維持され、損なわれないことが必須である。実際問題として、この部分は、電気リード線の近位部分において通常受ける作用により、損傷をより受けやすい。しかし、この近位部分は、より容易にアクセス可能であり、実際、遠位部分の安定性を不利に乱すことなくアクセスすることが可能である。しかしながら、両方の部分(近位及び遠位)とも、電気的に完全であるか定期的に調べられるべきである。これがいつ、どのように行われるべきかは、主治医の判断にゆだねるのが最善になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を念頭において、本発明の目的は、埋込み医療デバイスと共に使用される電気リード線の近位部分の電気的な完全性を試験するシステム及び方法を提供することである。本発明の別の目的は、リード線の遠位部分が患者の体内に動作可能に配置されたままで、ペースメーカ又は除細動器のリード線の近位部分を検査するデバイスを提供することである。本発明のさらに別の目的は、埋込み医療デバイスの電線の絶縁を検査するための、使いやすく、実施するのに相対的に簡単で、費用対効果が比較的大きい体外ユニット、及び対応する使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、患者の心筋活動を刺激/制御する埋込み電子デバイスと共にリード線が使用される場合に延長リード線の電気的完全性を試験するシステムが提供される。例えば、この電子デバイスは、ペースメーカ・パルス発生器/センサ、除細動器パルス発生器/センサ、又は一体型ペースメーカ/除細動器であってよい。本発明で想起されるように、本発明のシステムによって試験されるべき延長リード線は軸を画定し、管腔付きで形成されると共に、リード線の近位端と遠位端の間に延びる絶縁電極線を有する。本発明の文脈においては、電気リード線は、電子デバイスと患者の心筋の間の電気的接続を確立するために使用される。
【0008】
構造上、本発明のシステムは、試験時にリード線の近位端と電気的に接続されるモニタを含む。これは電気的接続であり、その目的は、リード線中の電気的活動を監視することである。モニタは、本明細書で説明される必要な機能を実施することができる、関連技術分野でよく知られている任意のタイプとすることができる。
【0009】
以下でさらに説明するように、ペースメーカに依存する患者については、モニタ/パルス発生器が、試験時にリード線の近位端に電気的に接続される。モニタ/パルス発生器の目的は、本質的に2つある。1つに、モニタ/パルス発生器は、試験パルス及び/又はペーシング・パルスをリード線に通して送出するために使用される。他の目的として、モニタ/パルス発生器は、リード線中の電気的活動を監視するために使用される。この二機能構成要素(すなわちモニタ/パルス発生器)は、必要な機能を実施することができる、関連技術分野でよく知られている任意のタイプとすることができる。
【0010】
本発明の第1の実施例では、システムはまた、チャンバを取り囲む壁がある容器を含む。詳細には、この容器は、生理食塩水などの導電性流体を保持するために設けられる。電圧源もまた容器と組み合わせて含まれる。構造上、電圧源は、容器の壁にそれぞれ接続されたカソードとアノードの両方を有する。この接続で電圧源が使用され、それによってチャンバ内の溶液中を通る電流が確立される。通常、電圧源はパルス電圧源である。
【0011】
この実施例の動作では、電気リード線の近位端はまず、埋込み電子デバイス(例えばペースメーカ・パルス発生器)から切り離される。次に、電気リード線の近位端は、容器の壁に形成されているアクセス・ポートを通して挿入され、生理食塩水中に通される。次いで、電気リード線の近位端は、モニタ(又は、ペースメーカに依存する患者の場合にはモニタ/パルス発生器)に電気的に接続される。モニタに接続された後、溶液中に電流を生じさせるように電圧源が起動されると、電気リード線の近位部分は、引っ張られて各部分ごとに溶液中を通される。これが行われるとき、リード線の絶縁破壊があるといつでも、妨害信号がモニタで受信されて電気リード線が不良であることが表示される。
【0012】
ペースメーカに依存する患者については、処置時に試験/ペーシング信号をモニタ/パルス発生器から患者へとリード線を通して送出することができる。これが行われるとき、生理食塩水中の電流が試験/ペーシング信号に干渉するといつでも、妨害信号がモニタで受信される。具体的には、モニタは、リード線の絶縁破壊があるといつでも、電気リード線が不良であることを示す妨害信号を受信する。
【0013】
試験が実施された後、モニタ/パルス発生器は、電気リード線の近位端から切り離すことができる。電気リード線が動作的に正常であると判定された場合、電気リード線は医療デバイスと再び接続することができる。そうでなければ、電気リード線は交換する必要がある。
【0014】
本発明の別の実施例では、リード線の一部分が、その部分が患者の皮下ポケット内に埋め込まれたままで、試験される。この実施例では、導電性溶液は、患者の皮下ポケット内に配置される。この実施例ではまた、電圧源アノード及びカソードは、間隔を置いて配置され、リトラクタの非導電先端部に取り付けられる。電気リード線の近位端がモニタに電気的に接続されると、導電性溶液中に電流(例えばパルス電流)を生成するために、リトラクタ先端部が導電性溶液に浸漬される。電気的結合を改善するために、リトラクタの先端部はL字形として、アノード及びカソードを、試験されるリード線の一部分を含む平面と実質的に平行な方向に並べることができる。電流が溶液中に生成されると、リード線の絶縁破壊がある場合、妨害信号がモニタで受信されて電気リード線が不良であることが表示される。ペースメーカに依存する患者では、モニタは、上述のようにモニタ/パルス発生器に置き換えられる。この場合には、生理食塩水中の電流が試験/ペーシング信号に干渉するといつでも、妨害信号がモニタで受信される。具体的には、モニタは、リード線の絶縁破壊があるといつでも、電気リード線が不良であることを示す妨害信号を受信する。
【0015】
本発明の新規の特徴並びに本発明自体は、その構造と動作の両方に関して、添付の説明と併せ、添付の図面により最もよく理解されよう。図面では、同様の参照文字は同様の部分を指している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電子デバイス及びリード線を含む患者に埋め込まれた医療デバイスを、遠位部分が患者の体内に埋め込まれたままで、リード線の近位部分を試験するシステムと共に示す図である。
図2】本発明によるシステムによって近位リード線部分を試験時の図1の患者及び医療デバイスを示す図である。
図3】本発明により実施される試験処置時に示されるシステムの構成要素の概略図である。
図4図3に示された同軸電気リード線の、図3の線4−4に沿った断面図である。
図5図1〜4に示されたシステムに使用するためのモニタ/パルス発生器の概略図である。
図6】患者の皮下ポケットの生体内原位置でリード線絶縁が試験される、本発明の別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に図1を参照すると、体内に医療デバイス12が埋め込まれている患者10が示されている。図示のように、医療デバイス12は、電子デバイス14及び延長リード線16を含む。医療デバイス12の通常動作では、リード線16の近位端が電子デバイス14に電気的に接続され、リード線16の遠位端が患者の心臓18に取り付けられている。例えば、医療デバイス12は、人工心臓ペースメーカ、埋込み可能除細動器(ICD)、一体型ペースメーカ/除細動器、又は関連技術分野で知られている、心臓18などの患者の臓器との間で電気インパルスを送出若しくは電気信号を受信する埋込みリード線を有する、他の任意の埋込み可能医療デバイスなどの従来デバイスとすることができる。
【0018】
前述の目的のために、電子デバイス14は通常、内蔵電池、パルス発生回路、心臓の電気的活動を監視するセンサ、及びプログラム可能マイクロプロセッサを含む。この構成により、電子デバイス14を使用して、リード線16を介して電気インパルスを心臓18に送出し、且つ/又は心臓活動を監視することができる。リード線16は1つしか示されていないが、患者10の心筋活動を刺激/制御するために複数のリード線を電子デバイス14と共に使用できることを理解されたい。
【0019】
引き続き図1により、リード線16は、電子デバイス14から心臓18まで接合部又は接続部なしで連続して延びていることが分かる。通常、医療デバイス12が埋め込まれるとき、リード線16の遠位端は、左鎖骨下静脈に挿入され、心腔(心房又は心室)の中に案内され、心臓に取り付けられる。例えば、リード16は、能動固定リード線又は受動固定リード線とすることができる。
【0020】
図1はまた、タイ・ダウン20(例えば縫合糸)を使用してリード線16の中央部を患者に取り付けることができることも示す。解剖学的には、図示のように、タイ・ダウン20は通常、リード線16が鎖骨下静脈に入る領域の近くに位置する。この配置では、リード線16は機能上、遠位部分22と近位部分24に分割される。図示のように、遠位部分22は、タイ・ダウン20から心臓18まで延び、近位部分24は、タイ・ダウン20から電子デバイス14まで延びる。電子デバイス14は通常、胸の筋肉及び骨の上(すなわち鎖骨の近く)で、且つ胸壁の皮下脂肪の下に位置する皮下ポケット内に埋め込まれる。前述のように、タイ・ダウン20は、近位部分24が可撓性であることを可能にしながら、動きに対して遠位部分22を安定させる。さらに、図示のように、近位部分24は通常、タイ・ダウン20と電子デバイス14の間に数センチメートルのたるみ(すなわち余剰部)を含むことができる。
【0021】
図1はまた、遠位部分22が患者10に埋め込まれたままで、リード線16の近位部分24を試験するシステム26を示す。図示のように、且つ以下で詳細に説明するように、システム26は、モニタ28、任意選択のパルス発生器29(ペースメーカに依存する患者の場合に使用する)、導電性流体32を保持する容器30、及び導電性流体32中に電流を確立するための電圧源34を含む。
【0022】
図2及び図3は、リード線16の試験時のシステム26を示す。より詳細には、容器30は、チャンバ36を取り囲む壁35を有することが分かる。図示のように、容器30は、生理食塩水などの導電性流体32を保持するために設けられる。図示のように、リード線16の近位端がチャンバ36に入り流体32の中を通ることができるように、アクセス・ポート38が壁35の中に形成される。
【0023】
図2及び図3はまた、システム26が電圧源34を含むことを示し、この電圧源は、電線40を介してカソード42に接続され、且つ線44を介してアノード46に接続されている。図示のように、カソード42及びアノード46は、電流を生成するように壁35に取り付ける(又は流体32に浸漬する)ことができ、この電流は、図示のように、リード線16がチャンバ36の中に延びる方向と実質的に直交する方向に、流体32中を流れることができる。通常、アノードはカソードから約1cmだけ間隔が置かれ、電流は、約1msから2msの範囲のパルス持続期間を有するパルスにされる。
【0024】
図4は、典型的な双極リード線16が、円筒形に成形され電気リード線16の軸50に沿って同軸状に心合わせされた、2つの電極線(内側電極線48a及び外側電極線48b)を含むことを示す。図示のように、絶縁中間層52が電極線48aを電極線48bから分離し、内側絶縁層54が電極線48aを密閉する役割を果たし、外側絶縁層56が電極線48bを密閉する役割を果たす。
【0025】
次に図5を参照すると、モニタ28/パルス発生器29のより詳細な図が示されている。図示のように、同軸リード線16は、モニタ28/パルス発生器29内の同軸レセプタクル62にプラグ接続することができ、その場合、同軸レセプタクル62は、パルス発生器29及びモニタ28をリード線16内の電線に接続する役割を果たす。つまみ、ボタン、タッチスクリーンなどで構成することができる使用者入力部64は、mAのパルス・アンペア数、パルス持続期間、及びパルス繰り返し数又は周波数などの、パルス発生器29からのパルス出力の1つ又は複数のパルス・パラメータを調整するように設けることができる。モニタ28は、リード線16のインピーダンスを決定するための電圧計又は他の機器などの監視回路を含むことができ、且つ信号、警報又は読取値を表示器66へ出力することができる。
【0026】
システム26の動作は、図1及び図2を最初に相互参照することにより最もよく理解することができる。これらの図に示されるように、電子デバイス14及びリード線16の近位部分24がまず外科的に露出される。次に、リード線16の近位端が埋込み電子デバイス14から切り離される。切り離された後、リード線16の近位端は、アクセス・ポート38(図3参照)に挿入され、流体32中に通され、レセプタクル62(図5参照)にプラグ接続される。
【0027】
リード線16の近位端がモニタ28(及び任意選択のパルス発生器29)にプラグ接続されると、電圧源34を起動して電極(すなわちカソード42及びアノード46)間に電圧を生じさせることができる。例えば、一連の比較的低い電圧の電気パルスを電極に印加して、流体32中を通る電流を生じさせることができる。電圧源34が起動されると、リード線16の近位部分24をゆっくり引っ張って流体32中の電極(すなわちカソード42及びアノード46)の間を通すことができる。これが行われるとき、リード線の絶縁破壊があるといつでも、妨害信号がモニタ28で受信されて電気リード線が不良であることが表示される。
【0028】
患者がペースメーカに依存している場合、パルス発生器29によって1つ又は複数の試験パルス/ペーシング・パルスを発生させ、リード線16を通して送出することができる。例えば、試験パルスは、心腔を刺激して収縮させるのに必要な捕獲閾値を超えることも下回ることもある。例えば、試験パルスは、約0.4msから0.5msの範囲のパルス持続期間を有することができる。リード線16の近位部分24がゆっくり引っ張られて流体32中の電極(すなわちカソード42及びアノード46)の間を通されるとき、導電性流体32中の電流が試験/ペーシング信号に干渉するといつでも、妨害信号がモニタ28で受信される。具体的には、モニタ28は、リード線の絶縁破壊があるといつでも、電気リード線16が不良であることを示す妨害信号を受信する。
【0029】
図6は、患者の皮下ポケット68の生体内原位置でリード線16の近位部分24の絶縁が試験される、本発明の別の実施例を示す図である。先に図1を参照して説明したように、リード線16の中央部は、タイ・ダウン20(例えば縫合糸)を使用して患者に取り付けることができる。解剖学的には、図示のように、タイ・ダウン20は通常、リード線16が鎖骨下静脈に入る領域の近くに位置する。この配置では、リード線16は機能上、遠位部分22と近位部分24に分割される。図1に示されるように、遠位部分22は、タイ・ダウン20から心臓18まで延び、近位部分24は、タイ・ダウン20から電子デバイス14まで延びる。電子デバイス14は通常、胸の筋肉及び骨の上(すなわち鎖骨の近く)で、且つ胸壁の皮下脂肪の下に位置する皮下ポケット内に埋め込まれる。さらに前述のように、タイ・ダウン20は、近位部分24が可撓性であることを可能にしながら、動きに対して遠位部分22を安定させる。さらに、図1及び図6に示されるように、近位部分24は通常、タイ・ダウン20と電子デバイス14の間に数センチメートルのたるみ(すなわち余剰部)を含むことができる。
【0030】
図6はまた、遠位部分22が患者10に埋め込まれたままで、リード線16の近位部分24を試験するシステム26’を示す。図示のように、且つ以下で詳細に説明するように、システム26は、両方とも前述したモニタ28及び任意選択のパルス発生器29(ペースメーカに依存する患者の場合に使用する)を含む。図6に示されたこの実施例では、生理食塩水などの導電性流体32’が、患者の皮膚70の下に確立されているポケット68の中に配置される(すなわち注入又は注射される)。例えば、電子デバイス14(図1参照)を埋め込むのに使用された皮下ポケットを使用することができる。
【0031】
この実施例について図6にやはり示されている、電圧源34’に電気的に接続されているアノード46’及びカソード42’は、間隔を置いて配置され、リトラクタ74の非導電先端部72に取り付けられる。例えば、リトラクタ74は医療用プラスチックで作ることができる。図示のように、リトラクタの先端部72はL字形とすることができ、アノード46’及びカソード42’は、L字形先端部72の底面に取り付けられる。通常、アノード46’とカソード42’は約1cmだけ分離される。この配置では、リード線16とアノード46’及びカソード42’の間の電気的結合を改善するために、リトラクタ74を使用してアノード46’及びカソード42’を図示のように、試験されるリード線16の一部分を含む平面と実質的に平行な方向に並べることができる。
【0032】
電気リード線16の近位端がモニタ28に電気的に接続されると、流体32’中に電流(例えばパルス電流)を生成するために、リトラクタ先端部72が導電性流体32’に浸漬される。電流が流体32’中に生成されると、リード線の絶縁破壊がある場合、妨害信号がモニタ28で受信されて電気リード線が不良であることが表示される。ペースメーカに依存する患者では、前述のように、パルス発生器29を電気リード線16の近位端に接続することができる。この場合、導電性流体32’中の電流が、パルス発生器29からのリード線16中の試験/ペーシング信号に干渉するといつでも、妨害信号がモニタ28で受信される。具体的には、モニタ28は、リード線の絶縁破壊があるといつでも、電気リード線16が不良であることを示す妨害信号を受信する。
【0033】
本明細書で詳細に図示及び開示された特定の、埋込み医療デバイスの電線の絶縁を検査する体外ユニットは、本明細書で前述した目的を達成し利点を提供することが完全に可能であるが、これは本発明の現在好ましい実施例の例示にすぎないこと、並びに添付の特許請求の範囲に記載されたもの以外の、本明細書で示した構造又は設計の細部の制限が意図されていないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2014年11月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心筋活動を刺激/制御する埋込み電子デバイスと一緒に延長リード線が使用される場合に、前記リード線の電気的完全性を試験するシステムであって、前記延長リード線が、軸を画定し、且つ前記リード線の近位端と遠位端の間に延びる絶縁電極線を、前記電子デバイスと前記患者の心筋の間に電気接続を確立するために有し、前記システムが、
前記リード線の電気的活動を監視するための、前記リード線の前記近位端に選択的に接続されたモニタと、
前記リード線の少なくとも一部分を取り囲むように配置された導電性溶液と、
カソード及びアノードを有する電圧源とを備え、前記アノード及びカソードが、前記溶液を通る電流を流すように、且つ前記リード線の絶縁破壊がある場合に、前記モニタで受信される妨害信号を生じさせるように配置される、システム。
【請求項2】
電気リード線の遠位部分が患者の心臓に取り付けられたままで、前記リード線の近位部分の絶縁の完全性を試験するシステムであって、
カソード及びアノードを有する電圧源と、
前記リード線の前記近位部分の少なくとも一部分を取り囲む導電性流体であり、前記流体を通る電流を流すために前記カソード及びアノードに電気的に接続された導電性流体と、
前記リード線に接続された監視回路であり、前記流体中の前記電流が絶縁破壊により前記リード線に妨害信号を発生していることを示す前記リード線からの入力に応答して、警報信号を出力するように構成された監視回路とを備える、システム。
【請求項3】
電気リード線の遠位部分が患者の心臓に取り付けられたままで、前記リード線の近位部分の絶縁の完全性を試験する方法であって、
前記リード線の前記近位部分の少なくとも一部分を導電性流体で取り囲むステップと、
前記流体中に電流を通すステップと、
前記リード線からの出力を監視するステップと、
前記流体中の前記電流が絶縁破壊により前記リード線に妨害信号を発生していることを示す前記リード線からの入力に応答して、警報信号を発生するステップとを含む、方法
【国際調査報告】