特表2015-516386(P2015-516386A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルミラル・ソシエダッド・アノニマの特許一覧

特表2015-5163865−[(1R)−2−({2−[4−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの塩
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-516386(P2015-516386A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(54)【発明の名称】5−[(1R)−2−({2−[4−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/26 20060101AFI20150515BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/50 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/15 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20150515BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150515BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150515BHJP
【FI】
   C07D215/26CSP
   A61K31/573
   A61K31/58
   A61K31/4015
   A61K31/522
   A61K31/44
   A61K31/277
   A61K31/56
   A61K31/46
   A61K31/439
   A61K31/517
   A61K31/40
   A61K31/4525
   A61K31/4375
   A61K31/437
   A61K31/50
   A61K31/15
   A61K31/4704
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-503838(P2015-503838)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2013056786
(87)【国際公開番号】WO2013149959
(87)【国際公開日】20131010
(31)【優先権主張番号】12382134.0
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/641,465
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・プイグ・ドゥラン
(72)【発明者】
【氏名】フランセスク・カレラ・カレラ
(72)【発明者】
【氏名】フアン・バウティスタ・ペレス・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・モイェス・バルス
(72)【発明者】
【氏名】イオランダ・マルクエタ・エレウ
【テーマコード(参考)】
4C031
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C031FA04
4C084AA19
4C084MA43
4C084MA57
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZC202
4C084ZC411
4C084ZC422
4C086AA01
4C086BC07
4C086BC08
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC27
4C086BC41
4C086BC46
4C086CB05
4C086CB07
4C086CB09
4C086CB17
4C086CB22
4C086DA08
4C086DA10
4C086DA12
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206HA08
4C206HA13
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA63
4C206MA77
4C206NA05
4C206ZA59
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、(i) 5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンと(ii) ジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドとの、薬学的に許容される結晶性付加塩またはその薬学的に許容される溶媒和物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンと(ii) ジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドとの薬学的に許容される結晶性付加塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項2】
(ii) がジカルボン酸である、請求項1記載の塩。
【請求項3】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩; または
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩、
である、請求項2記載の塩またはその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項4】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩またはその薬学的に許容される溶媒和物である、請求項3記載の塩。
【請求項5】
(ii)がスルホン酸またはスルフィミドである、請求項1記載の塩。
【請求項6】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩; または
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩、
である、請求項5記載の塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項7】
治療有効量の、請求項1〜6のいずれかに記載の塩と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
乾燥粉末としての吸入による投与用に製剤された、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量の一つ以上の他の治療剤をさらに含む、請求項7または8記載の医薬組成物。
【請求項10】
他の治療剤がコルチコステロイド、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
他の治療剤が、以下からなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項9または10記載の医薬組成物:
プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、ナフロコート (naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RPR-106541、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21-クロロ-11ベータ−ヒドロキシ-17アルファ−[2-(メチルスルファニル)アセトキシ]-4-プレグネン-3,20-ジオン、des-イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、NS-126、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ヒドロコルチゾン プロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾール。
【請求項12】
他の治療剤が、以下からなる群から選択される抗コリン剤であり、それらは全てそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはその混合物の形態であってよく、その薬理学的に適合する酸付加塩の形態であってよい、請求項9または10記載の医薬組成物:
チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、NPC-14695、BEA-2108、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-3-カルボン酸 エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル エステル塩 (DAU-5884)、3-(4-ベンジルピペラジン-1-イル)-1-シクロブチル-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-オン (NPC-14695)、N-[1-(6-アミノピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-4-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロ-1(R)-シクロペンチル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトアミド (J-104135)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-[4(S)-メチルヘキシル]ピペリジン-4-イル]-2-フェニルアセトアミド (J-106366)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-ピペリジニル]-2-フェニルアセトアミド (J-104129)、1-[4-(2-アミノエチル)ピペリジン-1-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロシクロペンタ-1(R)-イル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルエタン-1-オン (Banyu-280634)、N-[N-[2-[N-[1-(シクロヘキシルメチル)ピペリジン-3(R)-イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]-3,3,3-トリフェニルプロピオンアミド (Banyu CPTP)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸 4-(3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル)-2-ブチニル エステル (Ranbaxy 364057)、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-[2-オキソ-2-(3-チエニル)エチル]ピロリジニウム アイオダイド、N-[1-(3-ヒドロキシベンジル)-1-メチルピペリジニウム-3(S)-イル]-N-[N-[4-(イソプロポキシカルボニル)フェニル]カルバモイル]-L-チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB-101333、OrM3(Merck)、7-エンド-(2-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルアセトキシ)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]ノナン塩、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-(2-フェニルエチル)ピロリジニウム アイオダイド、trans-4-[2-[ヒドロキシ-2,2-(ジチエン-2-イル)アセトキシ]-1-メチル-1-(2-フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド (Novartis (412682))、7-(2,2-ジフェニルプロピオニルオキシ)-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン塩、7-ヒドロキシ-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン 9-メチル-9H-フルオレン-9-カルボン酸エステル塩。
【請求項13】
他の治療剤が、以下からなる群から選択されるPDE4阻害剤である、請求項9または10記載の医薬組成物:
二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、ティペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、フィラミナスト、(R)-(+)-4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニルエチル]ピリジン (CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソアセトアミド (GSK-842470)、9-(2-フルオロベンジル)-N6-メチル-2-(トリフルオロメチル)アデニン (NCS-613)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-8-メトキシキノリン-5-カルボキサミド (D-4418)、N-[9-メチル-4-オキソ-1-フェニル-3,4,6,7-テトラヒドロピロロ[3,2,1-jk][1,4]ベンゾジアゼピン-3(R)-イル]ピリジン-4-カルボキサミド 、3-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシベンジル]-6-(エチルアミノ)-8-イソプロピル-3H-プリン ヒドロクロリド (V-11294A)、6-[3-(N,N-ジメチルカルバモイル)-フェニルスルホニル]-4-(3-メトキシフェニルアミノ)-8-メチルキノリン-3-カルボキサミド ヒドロクロリド (GSK-256066)、4-[6,7-ジエトキシ-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン-1-イル]-1-(2-メトキシエチル)ピリジン-2(1H)-オン (T-440)、(-)-trans-2-[3’-[3-(N-シクロプロピルカルバモイル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1-イル]-3-フルオロビフェニル-4-イル]シクロプロパンカルボン酸(MK-0873)、CDC-801、UK-500001、BLX-914、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン1-オン、cis [4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール、CDC-801、5(S)-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-3(S)-(3-メチルベンジル)ピペリジン-2-オン (IPL-455903)、ONO-6126 (Eur Respir J 2003、22(Suppl。45): Abst 2557)およびPCT特許出願国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号に特許請求されている化合物。
【請求項14】
他の治療剤が、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロリウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラストおよびシロミラストからなる群から選択される、請求項9または10記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれかに記載の塩と請求項7〜14のいずれかに記載の一つ以上の他の治療剤とを含む、組合せ剤。
【請求項16】
β2アドレナリン受容体活性に関連する病理学的な症状または疾患の処置に用いるための、請求項1〜6のいずれかに記載の塩、請求項7〜14のいずれかに記載の医薬組成物または請求項15に記載の組合せ剤。
【請求項17】
病理学的症状または疾患が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項16に記載する、塩、医薬組成物または組合せ剤。
【請求項18】
請求項16または17に記載の病理学的症状または疾患の処置用の医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載の塩、請求項7〜14のいずれかに記載の医薬組成物または請求項15記載の組合せ剤の使用。
【請求項19】
請求項16または17に記載の病理学的な症状または疾患に罹患した対象の処置方法であって、該対象に、請求項1〜6のいずれかに記載の塩、請求項7〜14のいずれかに記載の医薬組成物または請求項15に記載の組合せ剤を有効量投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの新規の結晶性塩およびその溶媒和物に関する。本発明はまた、該塩を含む医薬組成物、β2アドレナリン受容体活性に関連する呼吸器疾患の処置のためのその使用方法、ならびに該塩の製造方法および製造に有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2008/046598号は、β2アドレナリン受容体作動薬活性を有することが知られている化合物を記載している。当該分野では、β2アドレナリン受容体作動薬としての活性を有する化合物が多く知られている。知られている種々のβ2作動薬化合物の多くは、乾燥粉末として、吸入により効果的に送達されるように製剤することができない。乾燥粉末としての吸入による送達は、困難なものである。それには、吸入する粒子サイズの注意深い制御、ならびに粒子サイズの分布の注意深い制御が必要である。さらに、粒子の凝集 (agglomeration)または集合 (aggregation)を回避することも重要である。さらに、かかるデバイスに用いるための医薬組成物および製剤を製造する場合、吸湿性でも潮解性でもなく、比較的融点が高い(すなわち150℃より高い)結晶形態であり、そのため、有意に分解されるか、または結晶性が失われることなく、該物質を、微粒化することが可能であるのが、非常に望ましい。
【0003】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンは、国際公開第2008/046598号およびその特許請求の範囲に記載されている。
【0004】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンが適当な薬理学的な挙動を示すことは示されているが、吸湿性でも潮解性でもなく、微粒子化の可能な結晶性の塩の形態で得ることが困難であることが示されている。
【0005】
これまで、所望の性質を持つ、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]-エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの結晶性塩は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/046598号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、吸湿性が許容されるレベルであり、融点が比較的高い、安定な、非潮解性のこの化合物の塩が必要とされている。
【0008】
β2作動薬の化合物である、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの特定の塩が、吸入により効果的に投与される乾燥粉末に製造し得る、安定な塩を形成することが明らかになっている。5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンは、国際公開第2008/046598号に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(i) 5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンと(ii) ジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドの薬学的に許容される結晶性付加塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
【0010】
本発明はまた、治療有効量の本発明の塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はさらに、本発明の塩と一つ以上の他の治療剤とを含む組合せ剤を提供する。
【0012】
本発明は、また、β2アドレナリン受容体活性に関連する病理学的な症状または疾患の処置に使用するための、本発明の塩、本発明の医薬組成物または本発明の組合せ剤を提供する。
【0013】
本発明はさらに、β2アドレナリン受容体活性に関連する病理学的な症状または疾患の処置用の医薬の製造における、本発明の塩、本発明の医薬組成物、または本発明の組合せ剤の使用を提供する。
【0014】
本発明はまた、β2アドレナリン受容体活性に関連する病理学的な症状または疾患に罹患している対象を処置する方法であって、該対象に、有効量の本発明の塩、本発明の医薬組成物または本発明の組合せ剤を投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの1H-NMR (400 MHz、d4-メタノール) を示す。
図2】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
図3】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩の1H-NMR (400 MHz、d4-メタノール)を示す。
図4】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩の示差走査熱量測定 (DSC) 分析を示す。
図5】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩の熱重量 (TG) 分析を示す。
図6】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す。
図7】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩のPXRD分析を示す。
図8】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩の1H-NMRスペクトルを示す。
図9】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩のDSC分析を示す。
図10】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩のTG分析を示す。
図11】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩のFTIRスペクトルを示す。
図12】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩のPXRD分析を示す。
図13図12の一部を拡大した図を示す。
図14】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩の1H-NMRスペクトルを示す。
図15】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩のDSC分析を示す。
図16】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩のさらなるDSC分析を示す。
図17】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩のTG分析を示す。
図18】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩のFTIRスペクトルを示す。
図19】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 半水和物のPXRD分析を示す。
図20】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 半水和物の1H-NMRスペクトルを示す。
図21】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸 半水和物のDSC分析を示す。
図22】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 半水和物のTG分析を示す。
図23】5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 半水和物のFTIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の塩、組成物および方法を表す場合、以下の用語は、特にことわらない限り以下の意味を持つ。
【0017】
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与した場合に、処置の効果を生じるのに十分な量を指す。
【0018】
本明細書で用いる用語「処置」は、ヒト患者における疾患または医学的症状の処置を指し、以下を含む:
(a) 疾患または医学的症状が発症するのを防ぐ、すなわち患者の予防的処置;
(b) 疾患または医学的症状の改善、すなわち、患者における該疾患または医学的症状の退行を引き起こすこと;
(c) 疾患または医学的症状の抑制、すなわち、患者における該疾患または医学的症状の進行の遅延化; または
(d) 患者における疾患または医学的症状の症候の軽減。
【0019】
「β2アドレナリン受容体活性に関連する症状または疾患」という語は、β2アドレナリン受容体活性と関連があることが現在認識されているか、または将来明らかになる全ての疾患状態および/または症状を含む。該疾患状態は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎および肺気腫)を含むが、これらに限定されない。
【0020】
「溶媒和物」という用語は、一つ以上の溶質分子、すなわち本発明の塩またはその薬学的に許容される塩と、一つ以上の溶媒の分子により形成される複合体または凝集体を指す。該溶媒和物は典型的に、実質的に溶質と溶媒の比が固定された、結晶性固体である。例えば、代表的な溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。好ましい溶媒和物は水和物、例えば半水和物である。
【0021】
薬学的に許容される結晶性塩
本発明の薬学的に許容される結晶性塩は、(i) 5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンと(ii)ジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドとの付加塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物である。
【0022】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンは以下の構造を有する:
【化1】
【0023】
典型的には、該塩は、(ii) ジカルボン酸の付加塩である。該ジカルボン酸は、好ましくはフマル酸またはコハク酸である。フマル酸が特に好ましい。したがって、本発明の好ましい塩は: 5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩および5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩、ならびにその薬学的に許容される溶媒和物である。特に好ましいのは、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩およびその薬学的に許容される溶媒和物である。
【0024】
あるいは、該塩は(ii)スルホン酸の付加塩である。該スルホン酸は好ましくはメシル酸である。したがって、本発明のさらに好ましい塩は、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物である。
【0025】
あるいは、該塩は (ii) スルフィミドの付加塩である。該スルフィミドは、好ましくは サッカリンである。したがって、本発明のさらに好ましい塩は、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩、またはその薬学的に許容される溶媒和物である。 好ましい溶媒和物形態は、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 ヘミメタノレートおよび5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩 半水和物である。半水和物が特に好ましい。
【0026】
一般的な合成手法
本発明の塩は、本明細書中に記載の方法および手法を用いるか、同様の方法および手法を用いて製造し得る。典型的な、または好ましい反応条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のmol比、溶媒、圧力など)が示されている場合、特にことわらない限り、他の反応条件も用い得ることは理解される。最適な反応条件は、用いる特定の反応物または溶媒により変わり得るが、該条件は、当業者により、通常の最適化手法によって決定され得る。
【0027】
本発明の塩を製造する方法は、本発明のさらなる態様として提供され、以下の手法により例示される。
【0028】
本発明の塩は、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンと、一般的に、例えば、Aldrichより市販されている、適当なジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドとから合成できる。例えば、
− 該フマル酸塩は典型的にフマル酸より製造され;
− 該コハク酸塩は典型的にコハク酸より製造され;
− 該メシル酸塩は典型的にメシル酸から製造され;
− 該サッカリン酸塩は典型的にサッカリンより製造される。
【0029】
この反応の適当な溶媒は、技能を有する化学者によって選択され、かつ、形成される特定の塩によって決められ得る。適当な溶媒の混合を用いてよく、水を含んでいてよい。例えば、
− 該フマル酸塩は、典型的に、溶媒として、アセトン、酢酸エチル、イソプロパノールまたは2-ブタノール、好ましくはイソプロパノールを用いて製造され;
− 該コハク酸塩は、典型的に、溶媒として、イソプロパノールまたは2-ブタノール、好ましくはイソプロパノールを用いて製造され;
− 該メシル酸塩は、典型的に、溶媒として、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたは2-ブタノール、好ましくはメタノールを用いて製造され;
− 該サッカリン酸塩は、典型的に、溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたは2-ブタノール、好ましくはメタノールを用いて製造される。
【0030】
前述の反応のいずれかが完了すると、該塩は、任意の慣用的な方法、例えば沈殿、濃縮、遠心分離などによって、該反応混合物から単離し得る。
【0031】
特定の反応条件(すなわち反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が示されていても、特にことわらない限り、他の反応条件も使用し得ることは理解される。
【0032】
本発明の塩を製造するために、典型的には、遊離塩基を適当な溶媒に溶解させた後、これを約60〜80℃に加熱する。その後、適当なジカルボン酸、スルホン酸またはスルフィミドの、適当な溶媒、好ましくは遊離塩基を溶解させたものと同じ溶媒の溶液を、典型的に、前述の加熱した溶液に添加する。その後、該混合物を、60〜80℃にて、60〜120分間撹拌してもよい。その後、典型的には、該混合物を、例えば20〜25℃または0〜5℃に冷却する。形成した沈殿を濾過により単離し、適当な溶媒で洗浄し、例えば、真空にて乾燥させる。
【0033】
本発明のフマル酸塩を製造するために、該遊離塩基は、好ましくはイソプロパノールに溶解させた後、これを70〜80℃に加熱する。その後、フマル酸をイソプロパノールに溶解させた溶液をゆっくりと添加する。その後、該混合物を70〜80℃にて60〜120分間撹拌する。その後、該混合物を典型的には20〜25℃に冷却する。形成した沈殿を濾過により単離し、イソプロパノールで洗浄し、乾燥させる。
【0034】
本発明のコハク酸塩を製造するためには、該遊離塩基を、好ましくはイソプロパノールに溶解させた後、これを70〜80℃に加熱する。その後、コハク酸をイソプロパノールに溶解させた溶液をゆっくりと添加する。その後、該混合物を70〜80℃にて60〜120分間撹拌する。その後、該混合物を典型的には20〜25℃に冷却する。形成した沈殿を濾過により単離し、イソプロパノールで洗浄して乾燥させる。
【0035】
本発明のメシル酸塩を製造するためには、遊離塩基を、好ましくはメタノールに溶解させた後、これを60〜70℃に加熱する。その後、メシル酸をメタノールに溶解させた溶液をゆっくりと添加する。該混合物を冷却し、1〜5℃にて、50〜100時間保つ。形成した沈殿を濾過により単離し、メタノールで洗浄して乾燥させる。
【0036】
本発明のサッカリン酸を製造するためには、遊離塩基を、好ましくはメタノールに溶解させた後、これを60〜70℃に加熱する。その後、サッカリンをメタノールに溶解させた溶液をゆっくりと添加する。該混合物を冷却し、1〜5℃にて25〜75時間保つ。形成した沈殿を濾過により単離し、メタノールで洗浄する。これにより、ヘミメタノレート溶媒和物形態が得られる。該ヘミメタノレート溶媒和物を真空下にて、4〜6時間、80〜100℃に加熱することにより、溶媒和したメタノールを除去する。半水和物は、典型的には、引き続いて、湿度の高い雰囲気に暴露することにより製造される。
【0037】
医薬組成物
本発明はまた、治療有効量の本発明の塩またはそのエナンチオマーまたは薬学的に許容される溶媒和物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0038】
典型的に、本医薬組成物は、吸入、好ましくは乾燥粉末としての吸入投与用に製剤される。
【0039】
典型的に、本医薬組成物はさらに、治療有効量の一つ以上の他の治療剤を含む。
【0040】
本医薬製剤は、有利に単位剤形であっても、薬学の分野でよく知られている任意の方法により製造されてもよい。全ての方法は、有効成分を、担体に結合させる工程を含む。一般的に、製剤は、有効成分を液体担体または細かく分割された固体担体またはその両方に均一および密接に結合させ、その後、必要であれば該生成物を所望の製剤に成形することにより製造する。
【0041】
吸入により肺に局所送達するための乾燥粉末組成物は、例えば吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジまたは、例えばラミネートしたアルミニウムホイルの、ブリスターの形態であってよい。製剤は一般的に、本発明の塩の吸入のための粉末の混合物および、適当な粉末基剤(担体物質)、例えばラクトースまたはデンプンを含む。ラクトースを使用するのが好ましい。粉末基材は、防腐剤、安定化剤、吸収促進剤または空気力学調節剤などの追加的な成分を含んでいてよい。
【0042】
各カプセルまたはカートリッジは、一般的に、それぞれ治療上有効な成分を0.1μg〜150μg含んでいてよい。あるいは、該有効成分は、賦形剤を用いない状態であってもよい。
【0043】
製剤の包装は、単位用量または複数の用量の送達に適したものであってよい。複数用量送達の場合、製剤は、先に計量しても、使用時に計量してもよい。乾燥粉末吸入器は3つの群に分類される: (a) 単回用量、(b) 複数単位用量および(c) 複数用量のデバイス。
【0044】
第一の種類の吸入器について、単回用量は、製造者によって計量され、ほとんどがゼラチンカプセルである小さい容器に入れられている。カプセルは、別々の箱または容器から取られ、吸入器の置き場所に挿入されなければならない。次に、吸気の流れの一部がカプセルを通って、粉末が同調するかまたは吸入時の遠心力を用いて穿孔を通って粉末がカプセルから放出されるように、該カプセルをピンまたは切刃で開けるかまたは穿孔処理しなければならない。吸入後、空のカプセルを再び吸入器から除かなければならない。殆どの場合、カプセルの挿入および除去のためには、吸入器を分解することが必要であり、これは患者によっては困難で厄介な操作となり得る。
【0045】
吸入粉末のための硬ゼラチンカプセルの使用に関連する他の欠点は、(a) 外気からの湿気の取りこみに対する保護が弱いこと、(b) 該カプセルが先に、分解するか、またはひび割れを起こす、極度の相対湿度に暴露された後の、カプセルの開放または穿孔処理に問題があること、および(c) カプセルの断片を肺に吸入する可能性があること、である。さらに、多数のカプセル吸入器について、排出が不完全であることが報告されている(例えば、Nielsen et al, 1997)。
【0046】
カプセル吸入器には、国際公開第92/03175号に記載されているように、個々のカプセルがそこから受容チャンバーに移動しうるマガジンを有しており、該チャンバー中で穿孔処理および空にする処理が行われるものがある。また、カプセル吸入器には、用量を排出するために、空気路に沿って運ばれるカプセルチャンバーを有する回転式マガジンを持つものもある(例えば国際公開第91/02558号および独国特許第2242134号)。それらには、ディスクまたはストリップ上で供給される、限られた数の単位用量の、ブリスター吸入器とともに複数単位用量の型の吸入器が含まれる。
【0047】
ブリスター吸入器は、カプセル吸入器よりも医薬の湿度からの保護において優れている。カバーならびにブリスターホイルに穿孔処理をするかまたはカバーホイルを剥ぐことにより、粉末に近づくことができる。ディスクの代わりにブリスターストリップを用いる場合、用量の数は増加し得るが、患者が空のストリップを置きかえるのが不便である。したがって、かかるデバイスは、該ストリップを輸送し、ブリスターポケットを開けるのに用いる技術を含む、組み込まれた用量システムとともに、使い捨てであることがしばしばである。
【0048】
複数用量吸入器は、予め計量した量の粉末製剤を含まない。それらは、比較的大きい容器と、患者が操作しなければならない、用量を計量する仕組みからなる。該容器は、容積測定置換により、大量の粉末から個々に単離される複数の用量を有する。回転可能な膜(例えば欧州特許第0069715号) またはディスク(例えば英国特許第2041763号; 欧州特許第 0424790号; 独国特許第4239402号および欧州特許第0674533号)、回転可能なシリンダー (例えば欧州特許第0166294号; 英国特許第2165159号および国際公開第92/09322号) および回転可能な円錐台形構造 (例えば国際公開第92/00771号)を含む、様々な用量計量用の仕組みが存在し、これらは全て、容器からの粉末で満たさなければならない空洞を有する。他の複数用量デバイスには、容器から特定の体積の粉末を、送達チャンバーまたは空気路に移すための、局所的なまたは周囲に凹部を持つ測定プランジャーを持つ (例えば欧州特許第0505321号、国際公開第92/04068号および国際公開第92/04928号)か、または、以下の特許出願:国際公開第97/000703号、国際公開第03/000325号および国際公開第03/061742号に記載されている、Genuair(登録商標) デバイス(以前はNovolizer SD2FLとして知られていた)のような測定スライドを有するものがある。
【0049】
追加的な治療剤
本発明の塩はまた、一つ以上の他の治療剤、特に、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤からなる群から選択される一つ以上の薬剤を含んでいてよい。したがって、本発明はまた、本発明の塩を、呼吸器障害の処置に有用であることが知られている一つ以上の他の治療剤、特に、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤からなる群から選択される一つ以上の薬剤とともに含む組合せ剤に関する。本発明の医薬組成物はまた、呼吸器障害の処置に有用であることが知られている一つ以上の他の治療剤、例えばPDE4阻害剤、コルチコステロイドおよび/または抗コリン剤を治療有効量含んでいてもよい。
【0050】
治療効果を達成するのに必要なそれぞれの有効物質の量は、当然のことながら、特定の活性、投与経路、処置を行う対象および処置する特定の障害または疾患により変化する。
【0051】
有効成分は1日に、1〜6回、所望の活性を示す程度に投与してよい。好ましくは、有効成分は1日に1回または2回、最も好ましくは1日に1回投与される。
【0052】
β2−作動薬と組合せ得る適当なPDE4阻害剤の例は、二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、ティペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、フィラミナスト、(R)-(+)-4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニルエチル]ピリジン (CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソアセトアミド (GSK-842470)、9-(2-フルオロベンジル)-N6-メチル-2-(トリフルオロメチル)アデニン (NCS-613)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-8-メトキシキノリン-5-カルボキサミド (D-4418)、3-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシベンジル]-6-(エチルアミノ)-8-イソ−プロピル-3H-プリン ヒドロクロリド (V-11294A)、6-[3-(N,N-ジメチルカルバモイル)-フェニルスルホニル]-4-(3-メトキシフェニルアミノ)-8-メチルキノリン-3-カルボキサミド ヒドロクロリド (GSK-256066)、4-[6,7-ジエトキシ-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン-1-イル]-1-(2-メトキシエチル)ピリジン-2(1H)-オン (T-440)、(-)-trans-2-[3'-[3-(N-シクロプロピルカルバモイル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1-イル]-3-フルオロビフェニル-4-イル]シクロプロパンカルボン酸 (MK-0873)、CDC-801、UK-500001、BLX-914、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン1-オン、cis [4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール、CDC-801、5(S)-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-3(S)-(3-メチルベンジル)ピペリジン-2-オン (IPL-455903)、ONO-6126 (Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)ならびにPCT特許出願、国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号にて特許請求されている塩である。
【0053】
β2−作動薬と組合せ得る適当なコルチコステロイドおよび糖質コルチコイドの例は、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RPR-106541、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21-クロロ-11ベータ−ヒドロキシ-17アルファ−[2-(メチルスルファニル)アセトキシ]-4-プレグネン-3,20-ジオン、des-イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、NS-126、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびヒドロコルチゾン プロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾールである。
【0054】
β2−作動薬と組合せ得る適当なM3拮抗薬 (抗コリン薬) の例は、チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、NPC-14695、BEA-2108、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、より好ましくは臭化アクリジニウム)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-3-カルボン酸 エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルエステル塩 (DAU-5884)、3-(4-ベンジルピペラジン-1-イル)-1-シクロブチル-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-オン (NPC-14695)、N-[1-(6-アミノピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-4-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロ-1(R)-シクロペンチル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトアミド (J-104135)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-[4(S)-メチルヘキシル]ピペリジン-4-イル]-2-フェニルアセトアミド (J-106366)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-ピペリジニル]-2-フェニルアセトアミド (J-104129)、1-[4-(2-アミノエチル)ピペリジン-1-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロシクロペンタ-1(R)-イル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルエタン-1-オン (Banyu-280634)、N-[N-[2-[N-[1-(シクロヘキシルメチル)ピペリジン-3(R)-イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]-3,3,3-トリフェニルプロピオンアミド (Banyu CPTP)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸 4-(3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル)-2-ブチニル エステル (Ranbaxy 364057)、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-[2-オキソ-2-(3-チエニル)エチル]ピロリジニウム アイオダイド、N-[1-(3-ヒドロキシベンジル)-1-メチルピペリジニウム-3(S)-イル]-N-[N-[4-(イソプロポキシカルボニル)フェニル]カルバモイル]-L-チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB-101333、OrM3 (Merck)、7-エンド-(2-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルアセトキシ)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]ノナン塩、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-(2-フェニルエチル)ピロリジニウム アイオダイド、trans-4-[2-[ヒドロキシ-2,2-(ジチエン-2-イル)アセトキシ]-1-メチル-1-(2-フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド(Novartis (412682))、7-(2,2-ジフェニルプロピオニルオキシ)-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン塩、7-ヒドロキシ-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン 9-メチル-9H-フルオレン-9-カルボン酸エステル塩であり、これらはすべて、場合により、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物の形態であってよく、その薬理学的に適合する酸付加塩の形態であってよい。塩の中では、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩およびメシル酸塩が好ましい。
【0055】
特に好ましい本発明の医薬組成物および組合せ剤は、本発明の塩と、治療有効量の、以下からなる群から選択される一つ以上の追加的な治療剤とを含む: フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、好ましくは臭化アクリジニウム)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストならびにPCT特許出願である国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号に特許請求されている化合物。
【0056】
さらに特に好ましい本発明の医薬組成物および組合せ剤は、本発明の塩と、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、好ましくはアクリジニウム ブロマイド)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラストおよびシロミラストから選択される一つ以上の追加的な治療有効量の治療剤とを含む。
【0057】
したがって、本発明の局面の一において、本組成物または組合せ剤は、本発明の塩とコルチコステロイドとを含む。特に好ましいコルチコステロイドは、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるものである。
【0058】
本発明の他の局面において、本組成物または組合せ剤は、本発明の塩と、抗コリン剤とを含む。特に好ましい抗コリン剤は、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]-オクタン塩および1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]-オクタン塩からなる群から選択されるものである。本組成物または組合せ剤はさらに、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含んでいてよい。
【0059】
本発明のさらに他の局面において、本組成物は、本発明の塩とPDE4阻害剤とを含む。特に好ましいPDE4阻害剤は、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストおよびPCT特許出願、国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号にて特許請求されている化合物からなる群から選択されるものである。本組成物は、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含んでいてよい。本組成物または組合せ剤は、本発明の塩と該PDE4阻害剤に加え、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩および1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩からなる群から選択される抗コリン剤をさらに含んでいてよい。
【0060】
本発明の特に好ましい態様において、本組成物または組合せ剤は、本発明の塩と、治療有効量の3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩とを含む。また、本組成物または組合せ剤はさらに、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤を含んでいてよい。
【0061】
本発明の他の特に好ましい態様において、本組成物または組合せ剤は、本発明の塩と治療有効量のフロ酸モメタゾンとを含む。また、本組成物はさらに、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤を含んでいてよい。
【0062】
本発明のさらに他の態様において、本組成物または組合せ剤は、本発明の塩、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤を含む。
【0063】
β2アドレナリン受容体活性に関連する病理学的な症状または疾患の処置
本発明の塩、医薬組成物および組合せ剤は、β2アドレナリン受容体活性と関連する病理学的な症状または疾患、典型的には呼吸器疾患の処置に用い得る。該呼吸器疾患は、好ましくは、気管支拡張剤の使用が有益な効果を示すことが期待されるもの、例えば喘息、急性または慢性の気管支炎、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。より好ましいのは喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0064】
本組合せ剤における有効な化合物および塩、すなわち、本発明のβ2作動薬とPDE4阻害剤、コルチコステロイドまたは糖質コルチコイドおよび/または抗コリン剤は、同一の医薬組成物中でともに投与されても、同一または異なる経路による、別々の、同時の、併用または連続的な投与を意図した異なる組成物で投与してもよい。
【0065】
全ての有効剤を同時または非常に近いタイミングで投与することが期待される。あるいは、一つか二つの有効剤を午前中に、残りを同じ日に後で摂取してもよい。また、他の場合においては、一つまたは二つの有効剤を一日に二回、その他を一日に一回摂取してよく、これは一日に二回のうちの一回と同時であっても別々であってもよい。好ましくは、少なくとも二つ、より好ましくは全ての有効物質は同時に投与される。好ましくは、少なくとも二つ、より好ましくは全ての有効物質は、混合物として投与される。
【0066】
本発明の有効物質は、好ましくは、吸入器、特にネブライザーおよび定量吸入器を用いて吸入用の組成物の形態で投与されるが; 局所、非経口または経口適用の他の任意の形態が可能である。ここで、吸入組成物の適用が、とくに閉塞性肺疾患の治療または喘息の処置のための好ましい適用形態の態様である。
【0067】
有効化合物の製剤は一般的に、適当な担体を含み、該担体は、MDI投与用の噴射剤または、ネブライザーを用いた投与用の水であり得る。該製剤は、例えば防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール);pH安定剤(例えば、酸性剤、アルカリ性剤、緩衝系);等張安定化剤(例えば、塩化ナトリウム);界面活性剤および湿潤剤(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル);および/または吸収促進剤(例えば、キトサン、ヒアルロン酸、界面活性剤)のような追加的な成分を含んでいてよい。該製剤はまた、本発明の塩と混合した場合の、他の有効化合物の溶解性を改善するために、添加剤を含んでいてよい。該溶解促進剤は、例えば、シクロデキストリン、リポソームまたは共溶媒、例えばエタノール、グリセロールおよびプロピレングリコールなどの成分を含んでいてよい。
【0068】
本発明の有効な塩の製剤のために適したさらなる担体は、Remington: The ScienceおよびPractice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2000に記載されている。以下の例は、本発明の代表的な医薬組成物を例示するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本発明はさらに、β2アドレナリン受容体活性に関連する疾患または症状、典型的に は、哺乳類における呼吸器疾患、例えば喘息または慢性閉塞性肺疾患の処置方法であって、該哺乳類に、治療有効量の、本発明の塩、医薬組成物または組合せ剤を投与することを含む方法を含む。該哺乳類は、好ましくはヒトである。
【実施例】
【0070】
試薬、出発物質、および溶媒は市販品を業者より購入し、そのまま使用した。
【0071】
5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンの、広範囲の薬学的に許容される酸 (特に、 フマル酸、コハク酸、硫酸、硫化水素酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、L-酒石酸、臭化水素酸、D/L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸、塩酸、メシル酸、ナフタレン-2-スルホン酸、サッカリン酸、L-マンデル酸、マレイン酸、1S-カンファー-10-スルホン酸、L-リンゴ酸、L-ピログルタミン酸およびナフタレン-1,5-ジスルホン酸) との塩の結晶性試験を、種々の範囲の薬学的に許容される溶媒 (特に、アセトン、酢酸エチル、イソプロパノール、2-ブタノール、エタノール、クロロホルム、メタノール、テトラヒドロフランおよび水またはその混合物) 中にて行った。
【0072】
D/L-アスコルビン酸およびL-アスコルビン酸からは塩が得られなかった。硫酸、硫化水素酸および塩酸からは、固体として塩が得られたが、それらは非結晶であるか、または結晶性が非常に低かった。一方、臭化水素酸からの塩は不安定であった。
【0073】
本発明の塩のみが結晶性が高かった。さらに、この結晶性塩は、吸湿性でも潮解性でもなく、比較的融点が高く、そのため、微粒子化することが可能で、長期の安定性を示す。
【0074】
FTIR スペクトルは、MKII golden gate single reflection ATR System、励起源としての中赤外線源およびDTGS detectorを備えたBruker Tensor 27を用いて記録した。該スペクトルは、4 cm-1にて分解して、32スキャンで得た。該分析を行うのに、サンプル調整は必要でなかった。
【0075】
DSC分析は、Mettler Toledo DSC822eに記録した。試料1〜2mgを、ピンホール蓋(pinholen lid)を備えた40 μLアルミニウムるつぼに秤入れ、窒素 (50 mL/分)下にて、実験によって、2〜20℃/分の加熱速度で30℃から250℃に加熱した。データの集積および評価は、ソフトウェアSTAReを用いて行った。
【0076】
熱重量分析は、Mettler Toledo SDTA851eに記録した。試料3〜4 mgを、 (microscale MX.5, Mettlerを用いて) 量り、ピンホール蓋を備えた、開いた状態の40μLアルミニウムるつぼに入れ、窒素 (80 mL/分)下にて、10℃/分の加熱速度にて、30℃から、300℃にまで加熱した。データ集積および評価はソフトウェア STAReを用いて行った。
【0077】
プロトン核磁気共鳴分析は、重水素化クロロホルム (CDCl3)中で、ATMおよびautomatic BACS-120 autosamplerを有するz-勾配 5 mm BBO (BroadBand Observe) プローブを備えた、Bruker Avance 400 Ultrashield NMR spectrometerにて記録した。スペクトルは、試料2〜10 mgを重水素化溶媒 0.6mLに溶解させて得た。
【0078】
得られた固体の粉末回折パターンを得るために、非処置サンプル約20 mgを、ポリアセテートのホイルを用いて、標準的なサンプルホルダーに調製した。
【0079】
粉末回折パターンは、伝導ジオメトリーにおけるCu放射を用いて、D8 Advance Series 2シータ/シータ粉末回折システムにて得た。該システムは、VANTEC-1 single photon counting PSD、ゲルマニウムモノクロメーター、90試料の自動交換試料ステージ、一定の分岐スリットおよびラジアルソーラーを備える: 使用するプログラム:データ集積にはDIFFRAC plus XRD Commander V.2.5.1、評価にはEVA V.12.0を使用する。
【0080】
実施例1−5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン フマル酸塩の製造
フマル酸 (119mg、1.03mmol、0.5当量) のイソプロパノール(5 mL)溶液を5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (0.982g、2.04 mmol)のイソプロパノール(35 mL)溶液に75℃にてゆっくりと添加した。添加の間に、白色沈殿が形成された。生じた懸濁液を75℃にて90分間撹拌し、室温にゆっくりと冷却した。該白色固体を濾去し、イソプロパノール10mLで洗浄し、真空下(10 mm Hg)、65℃にて5時間乾燥させ、フマル酸塩を白色個体として得た(0.934 g、収率85%)。
【0081】
図2は、該フマル酸塩の粉末X-線回折(PXRD) パターンを示す。測定した2θの範囲全体に多数のピークが観察され、これは結晶性の高い試料に相当する。
【0082】
図3は、フマル酸塩の1H-NMR (400 MHz、d4-メタノール) を示す。遊離塩基(図1)から塩への化学シフトの予測される変動を観察する。該フマル酸塩の水素原子に相当するシグナルの出現およびその積分により、該フマル酸塩の形成が確認される。シグナルはδ: 2.89−2.97 (m, 2H), 3.12−3.22 (m, 4H), 4.44 (t, J = 12Hz, 2H), 5.35 (dd, J = 5 Hz, J = 8 Hz, 1H), 6.67 (d, J = 10 Hz, 1H), 6.70 (s, 1H), 6.88 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.00 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.44−7.52 (m, 3H), 7.56−7.63 (m, 2H), 8.35 (d, J = 10 Hz, 1H)にて見られた。
【0083】
図4は、該フマル酸塩の示差走査熱量測定 (DSC) 分析を示す。10℃/分の加熱速度では、177℃において、強い吸熱ピークが観察される。勾配温度が変化すると、吸熱のピークは: 2℃/分の速度にて170℃に下がり、20℃/分の速度にて187℃に上がるようにシフトする。さらに、高温顕微鏡による視覚的な観察により、同じ温度範囲における、結晶の融解に伴う、白色から黄色への色の変化が示される。
【0084】
図5は、該フマル酸塩の熱重量 (TG) 分析を示す。175℃より高い温度にて、質量の損失が観察され、これは、DSCにおける吸熱ピークの温度範囲と一致する。これにより、DSCにおいて観察される吸熱ピークは、融点ではなく、吸熱分解に相当することが示される。
【0085】
図6は、フマル酸塩のフーリエ変換型赤外分光(FTIR) スペクトル (ATR)を示す。シグナルは、υ: 3384、3307、1657、1611、1542、1514、1367、1322、1249、1212、1169、1070、1051、991、926、830および679 cm-1にて見られた。
【0086】
実施例2−5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン コハク酸塩の製造
コハク酸 (140 mg、1.186 mmol、0.5当量) の、イソプロパノール(5 mL) 溶液を、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (1.146 g、2.385 mmol)のイソプロパノール(35 mL)溶液に、75℃にてゆっくりと添加した。添加の間に、黄色がかった沈殿が形成した。生じた懸濁液を、75℃にて2時間撹拌し、ゆっくりと室温に冷却した。該固体を濾去し、イソプロパノール6mLで洗浄し、真空下(10 mm Hg)、65℃にて5時間乾燥させ、コハク酸塩を白色固体として得た (1.02g、収率79%)。
【0087】
図7は、該コハク酸塩のPXRD分析を示す。測定した2θの範囲全体において、多数のピークが観察され、これは、結晶性の高い試料に相当する。さらに、該コハク酸塩は、フマル酸塩と同じ回折パターンを示し、このことは、これらの塩が同形であることを示し、これは、フマル酸塩とコハク酸塩の構造の高い類似性により引き起こされるものである。このことにより、コハク酸水素塩でなく、コハク酸塩が形成していることが確認される。
【0088】
図8は、コハク酸塩の1H-NMRスペクトルを示す。遊離塩基(図1)から塩への化学シフトについての予測される変動を観察する。該コハク酸塩の水素原子に相当するシグナルの出現およびその積分から、コハク酸塩の形成が確認される。1H-NMR (400 MHz、d4-メタノール) δ: 2.52 (s, 2H), 2.84 -2.92 (m, 2H), 3.03−3.14 (m, 4H), 4.43 (t, J = 12 Hz, 2H), 5.30 (dd, J = 5 Hz, J = 8 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 10 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 9 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.45−7.52 (m, 3H), 7.57−7.63 (m, 2H), 8.35 (d, J = 10 Hz, 1H)。
【0089】
図9は、コハク酸塩のDSC分析を示す。10℃/分の加熱速度にて、強い吸熱ピークが160℃にて観察された。高温顕微鏡による視覚的な観察により、同じ温度範囲における結晶の融解に伴う、白色から黄色への変化が示される。
【0090】
図10は、コハク酸塩のTG分析を示す。159℃より高い温度において、質量の損失が観察され、これは、DSCにおける吸熱ピークの温度範囲と一致する。これらの2つの観察により、DSCにおいて観察される吸熱ピークは、融点ではなく、吸熱分解に相当することが示される。
【0091】
図11は、コハク酸塩のFTIRスペクトル (ATR)を示す。シグナルは、υ: 3384、3326、1658、1611、1544、1514、1387、1322、1250、1222、1168、1050、991、925、830および664 cm-1にて見られた。
【0092】
実施例3−5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン メシル酸塩の製造
メシル酸 (72μL、1.12 mmol、1当量) のメタノール(1 mL) 溶液を、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (532 mg、1.107 mmol) のメタノール溶液(5 mL)に、65℃にてゆっくりと添加した。生じた溶液を、室温に冷却し、72時間4℃にて保った。形成した白色固体を濾去し、冷メタノール3 mLで洗浄し、真空下 (10 mm Hg)、50℃にて5時間乾燥させ、メシル酸塩を白色固体として得た(385 mg、収率60%)。
【0093】
図12および13は、該メシル酸塩のPXRD分析を示す。低い角度において、強い回折ピークが観察され、その後、2θ全体の範囲において、より低い強度のピークが多数観察された。
【0094】
図14は、該メシル酸塩の1H-NMRスペクトルを示す。遊離塩基(図1)から塩への化学シフトについて、予期される変動を観察する。メシル酸塩のメチル基の水素原子に相当するシグナルの出現およびその積分により、該塩の形成が確認される。1H-NMR (400 MHz、d4-メタノール) δ: 2.70 (s、3H)、2.94−3.02 (m、2H)、3.23-3.30 (m、4H)、4.44 (t、J = 12Hz、2H)、5.39 (dd、J = 5 Hz、J = 8 Hz、1H)、6.69 (d、J = 10 Hz、1H)、6.91 (d、J = 9 Hz、2H)、7.03 (d、J = 8 Hz、1H)、7.21 (d、J = 9 Hz、2H)、7.29 (d、J = 8 Hz、1H)、7.45−7.51 (m、3H)、7.57−7.62 (m、2H)、8.36 (d、J = 10 Hz、1H)。
【0095】
図15は、該メシル酸塩のDSC分析を示す。2つの吸熱ピークが観察された。10℃/分の速度にて、118℃にて最大になる弱い、幅の広いピークおよび中程度の強度の、幅の広いピークが189℃から始まるのが見られる。高温顕微鏡による視覚的な観察では、第一のバンドの温度範囲では、変化は全く示されないが、結晶の融解に関連する、白色から褐色への色の変化が、180℃より高い温度で観察される。
【0096】
DSC分析についてのさらなる実験により、前述の低い吸熱ピークは、加熱速度が変わった場合にシフトせず、その一方、第二のピークは、加熱速度が上昇すると、より高温にシフトした。2つの加熱速度におけるDSCの比較を、図16の上に示す。第一のピークは、該塩を150℃に加熱し、室温に冷却し、300℃に再加熱した場合のDSC実験にて示されるように、可逆性である(図16下)。期待した通りに、加熱時のピークは吸熱性であり、冷却時は発熱性である。該ピークの位置は、加熱または冷却過程で変化しないため、この遷移にはほとんどヒステリシスが見られない。このことにより、この過程が、高速の動態を示すこと、ならびにDSCにおいてこれらのピークが見られる温度が、熱力学的な遷移点に非常に近いことが示される。これらの観察結果より、DSCで観察される第一の吸熱ピークが、多型の可逆性遷移に相当し、第二のピークが、融点ではなく吸熱分解に相当することが結論づけられる。
【0097】
図17は、メシル酸塩のTG分析を示す。189℃より高い温度において、質量の損失が観察され、これは、DSCにおける第二の吸熱バンドの温度の範囲と一致する。DSCの第一にピークの温度範囲では、質量損失は全く見られない。
【0098】
図18は、メシル酸塩のFTIR (ATR)スペクトルを示す。シグナルは、υ: 3391、3035、2934、1635、1596、1512、1451、1298、1227、1152、1040、987、928、829、765および695 cm-1にて見られた。
【0099】
実施例4−5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン サッカリン酸塩の製造
サッカリン (197 mg、1.074 mmol、1当量) のメタノール(2 mL)溶液を、5-[(1R)-2-({2-[4-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)フェニル]エチル}アミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (516 mg、1.074 mmol)のメタノール(3 mL)溶液に、65℃にてゆっくりと添加した。生じた溶液を室温に冷却し、溶媒の約半分を蒸発させ、生じた溶液を、48時間、4℃に保った。形成した白色固体を濾去し、冷メタノール1 mLで洗浄し、真空下 (10 mm Hg)、50℃にて5時間乾燥させて、ヘミメタノレートの形態のサッカリン酸塩を、白色固体として得た(500 mg、収率67%)。
【0100】
得たヘミメタノレートを真空下、90℃にて5時間加熱し、溶媒を除いた。その後、該固体を24時間、湿度の高い雰囲気におき、2日間大気中に開放した。この過程により、サッカリン酸塩を半水和物の形態で、白色固体として得た。
【0101】
図19は、サッカリン酸 半水和物のPXRD分析を示す。測定した2θの範囲全体において、多数のピークが観察され、これは、結晶性の高い試料に相当する。
【0102】
図20は、サッカリン酸塩 半水和物の1H-NMRスペクトルを示す。1H-NMRスペクトルにおいて、遊離塩基(図1)から塩への化学シフトについての通常の変動が観察される。サッカリンの水素原子に相当するシグナルの出現およびその積分により、該塩の形成が確認される。 1H-NMR (400 MHz, d4-メタノール) δ: 2.94−3.03 (m, 2H), 3.24−3.30 (m, 4H), 4.43 (t, J = 12 Hz, 2H), 5.41 (t, J = 7 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 10 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.28 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.44−7.51 (m, 3H), 7.56−7.62 (m, 2H), 7.65−7.72 (m, 2H), 7.73−7.81 (m, 2H), 8.35 (d, J = 10 Hz, 1H)。
【0103】
図21は、サッカリン酸塩 半水和物のDSC分析を示す。三つの吸熱ピークが観察される。10℃/分の速度にて、68℃ (弱い、溶媒蒸発)、132℃および159℃ (吸熱分解) にて開始する吸熱ピークが観察された。DSC分析 (図31)において、三つの吸熱ピークが観察される。高温顕微鏡による視覚的な観察により、第一および第二のピークの周辺では、全く変化を示さないが、160〜170℃周辺において、結晶の融解に伴う、白色から褐色への色の変化を示す。第一のピークは、溶媒の損失に相当する。
【0104】
図22は、サッカリン酸半水和物のTG分析を示す。168℃より高い温度にて、質量の損失が見られ、これは、DSCの第三の吸熱ピークに一致する。
【0105】
図23は、サッカリン酸半水和物のFTIRスペクトル(ATR) を示す。シグナルは、υ: 3043、1638、1608、1570、1513、1452、1252、1144、1108、1048、991、945、830、755、700および678 cm-1にて見られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】