(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-516869(P2015-516869A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】アミノエーテルガス処理溶液の低温輸送および貯蔵
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20150522BHJP
C01B 17/16 20060101ALI20150522BHJP
C01B 31/20 20060101ALI20150522BHJP
C10K 1/14 20060101ALI20150522BHJP
C10L 3/10 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
B01D53/14 102
C01B17/16 P
C01B31/20 B
C10K1/14
C10L3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-500550(P2015-500550)
(86)(22)【出願日】2013年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2013030790
(87)【国際公開番号】WO2013138440
(87)【国際公開日】20130919
(31)【優先権主張番号】61/610,608
(32)【優先日】2012年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/793,298
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ダージュ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビー・フェディッチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シスキン
【テーマコード(参考)】
4D020
4G146
4H060
【Fターム(参考)】
4D020AA04
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020DA03
4D020DB07
4D020DB20
4G146JA02
4G146JC28
4H060AA01
4H060BB23
4H060DD02
4H060DD11
4H060DD12
4H060FF04
(57)【要約】
アミノエーテルが船舶輸送される寒気候帯において凍結を受ける液体アミノエーテル酸性ガス吸収剤は、寒気候帯を通る輸送前にアミノエーテルを水と混合することによって凍結抵抗性にされ;アミノエーテル/水混合物は典型的には、アミノエーテルの重量を基準として、10〜40重量%の水を含有する。アミノエーテル/水混合物はまた、アミノエーテルの固有の凝固点より高い温度に外部から維持されることなく寒気候帯において貯蔵することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガス処理方法で使用するための−20°F以上の流動点を有する液体アミノエーテル酸性ガス吸収剤を、寒気候帯を通って輸送する方法であって、前記寒気候帯を通って輸送する前に、前記アミノエーテル吸収剤を水と混合して、前記アミノエーテルの重量を基準として、約10〜40重量%の水とアミノエーテル/水混合物を形成する方法。
【請求項2】
前記アミノエーテル/水混合物を、第1気候帯から第2気候帯に輸送する請求項1に記載の方法であって、前記第1気候帯が前記第2気候帯と比べてより温かく、前記第1気候帯が、前記アミノエーテルが凍結しないままである周囲温度を有し、前記第2気候帯が、前記アミノエーテル自体の凝固点より低い周囲温度を有し、前記アミノエーテル/水混合物中の水の濃度が、前記混合物の凝固点を前記第2気候帯の周囲温度より低い温度に低下させるために十分である方法。
【請求項3】
前記アミノエーテル自体の凝固点より低い温度で前記第2気候帯の場所で、前記アミノエーテル/水混合物を貯蔵する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミノエーテルは、高度ヒンダードアミノ基を含有し、少なくとも1.75のEs値(Taft)を有するジエチレングリコール誘導体又はトリエチレングリコール誘導体を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
アミノエーテル自体の凝固点より低い周囲温度を有する寒気候帯における酸性ガス処理方法で使用するための液体アミノエーテル酸性ガス吸収剤の貯蔵方法であって、前記寒気候帯における貯蔵前に前記アミノエーテル吸収剤を水と混合して、前記アミノエーテルの重量を基準として、約10〜45重量%の水とアミノエーテル/水混合物を形成する工程を含む方法。
【請求項6】
第1の、比較的より温かい気候帯から前記寒気候帯に、前記アミノエーテル/水混合物を輸送する請求項5に記載の方法であって、前記第1気候帯が、前記アミノエーテルが凍結しないままである周囲温度を有し、前記アミノエーテル/水混合物中の水の濃度が、前記混合物の凝固点を前記寒気候帯の周囲温度より低い温度に低下させるために十分である方法。
【請求項7】
前記アミノエーテル自体の凝固点より低い温度で、前記アミノエーテル/水混合物を、前記第1気候帯から前記寒気候帯の場所に輸送する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アミノエーテルが、少なくとも1.75のEs値(Taft)を有する高度ヒンダードアミノ基を含有するエチレングリコール又はポリエチレングリコール化合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記アミノエーテルが、三級アルキルアミノジエチレングリコール又は三級アルキルアミノトリエチレングリコールを含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記アミノエーテルが、モノ−三級アルキルアミノジエチレングリコール、モノ−三級アルキルアミノトリエチレングリコール、ビス−(三級アルキルアミノ)ジエチレングリコールまたはモノ−三級アルキルアミノトリエチレングリコールを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記三級アルキルアミノ基がtert−ブチルアミノ基を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アミノエーテルが、ビス−(tert−ブチルアミノエトキシ)−エタン(BTEE)とエトキシエトキシエタノール−tert−ブチルアミン(EEETB)との混合物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノエーテルが混合物を含む請求項10に記載の方法であって、前記混合物中の前記ジアミノ化合物と前記モノアミノとの重量比が0.23:1〜2.3:1である方法。
【請求項14】
前記アミノエーテルが、アルコキシ−三級アルキルアミノ−エーテルを含む請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性および非酸性成分を含有する混合ガス流からの酸性ガスの吸収に関する。
【背景技術】
【0002】
CO
2、H
2S、CS
2、HCN、COSおよびC
1〜C
4炭化水素の硫黄誘導体などの酸性ガスを含有するガスおよび液体の、これらの酸性ガスを除去するためのアミン溶液での処理は、十分に確立されている。アミンは通常、水性アミン溶液が酸性流体と向流で通過する吸収剤塔においてアミンを含有する水溶液として酸性ガスおよび液体と接触する。モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、またはヒドロキシエトキシエチルアミン(DGA)などの普通のアミン吸着剤を使用する典型的な場合には。吸着された酸性ガスを含有した液体アミン流れは典型的には、別個の塔において吸着ガスの脱着によって再生され、再生アミンおよび脱着ガスは別個の流れとして塔を出る。利用可能である様々なガス精製プロセスは、たとえば、非特許文献1に記載されている。
【0003】
CO
2およびH
2Sを含有する酸性ガス混合物のアミン溶液での処理は典型的には、相当量のCO
2およびH
2Sの両方の同時除去をもたらす。しかし、混合物から選択的にH
2Sを除去し、それによってCO
2の除去を最小限にするようにCO
2およびH
2Sの両方を含有する酸性ガス混合物を処理することが多くの場合望ましい。H
2Sの選択的な除去は、分離された酸性ガス中の比較的高いH
2S/CO
2比をもたらし、それは、Clausプロセスを用いるH
2Sの元素状硫黄への変換を簡単なものにする。選択的なH
2S除去は、低いH
2S/CO
2比を有するオイルサンドからの炭化水素ガス、石炭およびシェール熱分解、製油所ガスならびに天然ガスの処理などの多数のガス処理操作に適用でき、H
2Sの分圧がCO
2のそれと比べて比較的低いガスの処理に特に望ましい、なぜならば、後者タイプのガスからH
2Sを吸収するアミンのキャパシティが非常に低いからである。H
2Sの分圧が比較的低いガスの例には、石炭ガス化によって製造された合成ガス、硫黄プラント排ガスならびに重質残油がより低い分子量の液体およびガスに熱変換される製油所で遭遇する低ジュール燃料ガスが挙げられる。
【0004】
MEA、DEA、DPA、およびDGAなどの一級および二級アミンは、H
2SおよびCO
2ガスを両方とも吸収するが、それらは、水溶液では、アミンがCO
2とのより選択的な反応を受けてカルバメートを形成するので、CO
2を排除したH
2Sの優先的な吸収にとってとりわけ満足できるものと判明してはいない。CO
2を排除してH
2Sの優先的な吸収のためには特に満足できるものではない。三級アミン、MDEAは、CO
2よりもH
2S吸収に向けて高度の選択性を有すると報告されている非特許文献2が、その制限されたH
2SローディングキャパシティおよびガスのCO
2含有率を低下させるその制限された能力のために、その商業的実用性は制限される。同様に、ジイソプロピルアミン(DIPA)は、その使用が、H
2SおよびCO
2を含有するガスからのH
2Sの選択的な除去のために、単独でまたはスルホランなどの物理的溶剤と一緒に、報告されているという点において二級アミノアルコールの中では比較的一意である。
【0005】
特許文献1(Shell)は、ジアルキルモノアルカノールアミン、および特にN,N−ジエチル−モノエタノールアミン(DEAE)の水溶液が、MDEA溶液よりもより高いローディングレベルでH
2S除去の高い選択性およびキャパシティを有することを開示した。それにもかかわらず、DEAEでさえも、産業界で頻繁に遭遇する低いH
2Sローディングに対して非常に有効であるわけではない。また、DEAEは、161℃という沸点を有し、従って、それは、低沸点の、比較的高揮発性のアミノアルコールであると特徴づけられる。ほとんどのガス・スクラビング条件下でのかかる高揮発性は、結果として起こる経済的利点の損失と共に大きな材料損失をもたらす。
【0006】
多数の高度に立体障害のあるアミノエーテル化合物、とりわけアミノエーテルアルコール、ジアミノエーテルおよびアルコキシアミノエーテルアルコールが、CO
2の存在下でのH
2Sの選択的な除去のために開発されている。特許文献2;特許文献3;特許文献4、特許文献5および特許文献6ならびに特許文献7は、これらの非常に有効なヒンダードアミノエーテル、それらの合成および選択的なガス分離プロセスでの使用を開示している。これらの特許に記載されている具体的なアミノエーテルには、tert−ブチルアミンとビス−(2−クロロエトキシ)−エタンとから合成されるBTEE(ビス(tert−ブチルアミノ−エトキシ)−エタンならびにEEETB(tert−ブチルアミンとクロロエトキシ−エトキシエタノールとから合成される、エトキシエトキシエタノール−tert−ブチルアミン)が挙げられる。特許文献6は、BTEEとEEETBとの混合物がCO
2からのH
2Sの選択的な分離のために特に有効であることを示している。特許文献7は、CO
2からH
2Sを分離するための選択的な吸着剤としてのアルコキシ−置換エーテルアミンの製造を記載している。水性MDEAと比べて、これらの高度に立体障害のあるアミンは、高いH
2Sローディングではるかにより高い選択性をもたらす。
【0007】
重大な問題が、製造サイトから寒気候での使用の場所へのそれらの輸送中にこれらの吸収剤材料の幾つかで起こり;この問題は、材料の流動点が比較的高い、典型的には少なくとも−20℃であり、そしてそれらの使用場所での気候条件が当該値よりも下であるかまたはそれに近いときに起こる。かかる気候帯には、たとえば、英国およびノルウェー国の北海、カナダ国、アルバータ州のFt.McMurrayおよびモンタナ州、Billingsが挙げられる。これらなどの地帯においては、液体が凍結して固体になるかまたは、それらが解凍されない限り容易にもしくは便利に移し得ないもしくは使用し得ない程度まで注ぎ得なくなる危険があり、しかしこれは時間を要し、スペースが非常に限られている可能性がある海洋プラットフォーム上でとりわけ、温められた解凍および貯蔵施設の設備必需品が建造される。1つの場所から別の場所へ船舶輸送する間に遭遇する可能性がある温度下で吸着剤を、それらを固化させることなく輸送することがそれ故望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許出願公開第2,017,524−A号明細書
【特許文献2】米国特許第4,405,581号明細書
【特許文献3】米国特許第4,405,583号明細書
【特許文献4】米国特許第4,405,585号明細書
【特許文献5】米国特許第4,471,138号明細書
【特許文献6】米国特許第4,894,178号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0037775号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gas Purification,Fifth Ed.,Kohl and Neilsen,Gulf Publishing Company,1997,ISBN−13:978−0−88415−220−0
【非特許文献2】Frazier and Kohl,Ind.and Eng.Chem.,42,2288(1950)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は、高い流動点の液体アミノエーテル吸着剤が、賢明な量の水の添加によって凍結するという有意の危険なしに寒気候条件下で輸送できることを今見いだした。アミノエーテルそれら自体および水は両方とも、それらの同じ条件下で凍結するであろうが、2つの混合物は凍結に抵抗する。他の流動点降下剤もまた有効であると予期され得るが、アミンは水溶液の形態で典型的には使用されるので、水の使用が特に魅力的であり、添加水入りでの船舶輸送はそれ故、処理を妨害する可能性がある添加剤の使用が回避されることを可能にする。さらに、水の使用は経済的であり、高価であろう化学薬品の使用を回避する。海洋場所では、船舶輸送の前の水の添加はまた、供給される淡水が制限され得る海洋使用サイトで添加される必要がある水の量を低減する。
【0011】
本発明によれば、それ故、−20℃以上の流動点(ASTM D−97または同等物、たとえばAutopour)のために寒気候帯において凍結を受ける液体の、高度に立体障害のある、アミノエーテル酸性ガス吸収剤は、アミノエーテルを事前に水と混合することによって凍結抵抗性にされ;アミノエーテル/水混合物は、正確な割合が吸収剤それ自体および輸送、貯蔵および使用中に予想される温度に応じて調整され得るが、アミノエーテルの重量を基準として、典型的には10〜80、より典型的には10〜50重量%の水を含有する。必要な水の量は、流動点の有用な低下のために10または20%ほどに低くてもよい。アミノエーテル/水混合物は、低下した凍結リスクで寒気候帯を通ってまたは寒気候帯中へ輸送することができ、アミノエーテルの凝固点よりも上の温度に維持されることなくそこに貯蔵することができる。水性混合物の形態での処理アミノエーテル吸収剤はそれ故、利便性が増加して酸性ガス処理プロセス(又は方法)で使用するために寒気候帯における第1場所から第2場所へ輸送することができる。
【0012】
典型的な場合には、アミノエーテル/水混合物は、その温度ではアミノエーテルが凍結しないままである周囲温度を有する第1の、比較的(又は相対的に)より温かい気候帯から、アミノエーテルそれ自体の凝固点よりも下の周囲温度を有する、第1気候帯と比べてより低温の、第2の気候帯へ輸送され、アミノエーテル/水混合物中の水の濃度は、混合物の凝固点を第2気候帯の周囲温度よりも下の温度まで低下させるのに十分であるように調整される。アミノエーテル/水混合物は、アミノエーテルそれ自体の凝固点よりも下の温度の第2気候帯における場所に、たとえば加熱されていない倉庫に貯蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アミノエーテル吸収剤
提案される輸送スキームは、天然ガス、合成ガスのようなガス流からのH
2SおよびCO
2などの酸性ガスの吸収のために使用されてもよい幅広いクラスの液体アミンに適用できるが、好ましいアミン吸着剤は、H
2SとCO
2ならびにCS
2、HCN、COSおよびC
1〜C
4炭化水素の硫黄誘導体などの他の酸性ガスとの混合物である酸性ガス流からのH
2Sの選択的な吸着のために使用されてもよいものである。この好ましいクラスのアミノエーテルは、高度に立体障害のあるアミノ基を含有するジエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールの誘導体でならびに相当するエーテルもしくはエステル誘導体とそれらの相当するスルホネートおよびホスホネート塩とを形成するためにアルコール基上で誘導体化されたそれらの相当する誘導体で表される。一般に、好ましい高度に立体障害のあるアミノエーテル誘導体は、1.75よりも大きい累積Es(Taft立体障害定数)値を有するであろう(この定数およびその計算のさらなる説明については下を参照されたい)。
【0014】
これらのアミノエーテルの好ましい例は、これらの材料の十分な説明、それらの合成および選択的な酸性ガス分離プロセスでのそれらの使用について言及される、米国特許第4,405,583号明細書;同第4,405,585号明細書、同第4,471,138号明細書、同第4,894,178号明細書ならびに米国特許出願公開第2010/0037775号明細書に開示されている。
【0015】
米国特許第4,405,583号明細書:この特許に開示されているヒンダードジアミノエーテルは、式:
【化1】
(式中、R1およびR8はそれぞれ、C
1〜C
8アルキルおよびC
2〜C
8ヒドロキシアルキル基であり、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ、水素、C
1〜C
4アルキルおよびヒドロキシアルキル基であり、十分にヒンダーされた分子を画定するためにある種の条件付きで、m、n、およびpは2〜4の整数であり、oはゼロまたは1〜10の整数である)
で定義される。このタイプの典型的なジアミノエーテルは、1,2−ビス(tert−ブチルアミノエトキシ)エタン、トリエチレングリコールのジアミノ誘導体である。
【0016】
米国特許第4,405,585号明細書:この特許に開示されているヒンダードアミノエーテルアルコールは、式:
【化2】
(式中、R1は、C
1〜C
8一級アルキルおよび一級C
2〜C
8ヒドロキシアルキル、C
3〜C
8分岐鎖アルキルおよび分岐鎖ヒドロキシアルキルならびにC
3〜C
8シクロアルキルおよびヒドロキシシクロアルキルであり、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ、水素、C
1〜C
4アルキルおよびC
1〜C
4ヒドロキシアルキルラジカルであり、ただし、R1が一級アルキルもしくはヒドロキシアルキルラジカルであるとき、窒素原子に直接結合した炭素原子に結合したR2およびR3は両方とも、アルキルもしくはヒドロキシアルキルラジカルであり、そして窒素原子に直接結合したR1の炭素原子が二級であるとき、窒素原子に直接結合した炭素原子に結合したR2またはR3の少なくとも1つは、アルキルもしくはヒドロキシアルキルラジカルであり、xおよびyはそれぞれ、2〜4の正の整数であり、zは1〜4の整数である)
で定義される。このタイプの例示的な化合物には、アミノエーテルアルコールtert−ブチルアミノエトキシエタノール、ジエチレングリコールの誘導体が挙げられる。
【0017】
米国特許第4,471,138号明細書:この特許は、ジアミノエーテルとアミノエーテルアルコールとの組み合わせを使用することの望ましさを開示している。これらの2つの化合物は、それぞれの式:
【化3】
(式中、xは、2〜6の範囲の整数である)
で表される。この混合物は、ポリアルケニルエーテルグリコール、HO−(CH
2CH
2O)
x−CH
2CH
2−OH、またはハロアルコキシアルカノールの接触tert−ブチルアミノ化によって、新規な一段階合成で製造することができる。たとえば、ビス−(tert−ブチルアミノエトキシ)エタン(BTEE)とエトキシエトキシエタノール−tert−ブチルアミン(EEETB)との混合物は、トリエチレングリコールの接触tert−ブチルアミノ化によって得ることができる。高度ヒンダードアミン混合物、たとえば、水溶液での、BTEE/EEETBは、CO
2の存在下でのH
2Sの選択的な除去のためにおよび、製油所では多くの場合その事例であるように、H
2Sがただ1つの酸性成分であるガス流からのH
2Sの除去のために使用することができる。
【0018】
米国特許第4,894,178号明細書:xが2〜6の範囲の整数であり、そして第1アミン対第2アミンの重量比が0.23:1〜2.3:1、好ましくは0.43〜2.3:1の範囲である状態でのそれぞれの式:
【化4】
で表されるジアミノエーテルとアミノアルコールとの特異的な組み合わせ。この混合物は、相当するポリアルケニルエーテルグリコールの接触tert−ブチルアミノ化によって、たとえば、トリエチレングリコールの接触tert−ブチルアミノ化によって、一段階合成で製造することができる。この混合物は、海洋ガス処理で使用するための好ましい吸収剤の1つである。
【0019】
米国特許出願公開第2010/0037775号明細書:有用なアミノエーテル吸収剤を形成するためのポリアルケニルエーテルグリコールとtert−ブチルアミンなどのヒンダードアミンとの反応は、望ましくない環状副生成物、tert−ブチルモルホリン(TBM)の形成を起きないようにするためにアルコキシ−キャップドグリコールの使用によって改善される。好ましいキャップドグリコールは、エトキシ−、プロポキシ−およびブトキシ同族体もまた使用されてもよいが、メトキシ−トリエチレングリコールである。トリエチレングリコールとtert−ブチルアミンとの間の反応は、長い反応時間にわたって約95%の混合物の全収率について約65〜67%:33%の重量比でのビス−(tert−ブチルアミノエトキシ)エタンとtert−ブチルアミノエトキシエトキシエタノールとの混合物を生成することが示されているが、アルコキシ−キャップドグリコールでの反応は、著しくより短い反応時間後に匹敵する収率でモノ−アミノ反応生成物を生成する。
【0020】
アミノエーテル化合物は、米国特許第4,618,481号明細書に記載されているようなアミン塩などの他の関連材料と併せて使用されてもよい。高度に立体障害のあるアミノ化合物は、二級アミノエーテルアルコールまたはジ二級アミノエーテルであり得る。アミン塩は、高度に立体障害のあるアミノ化合物、三級アルカノールアミンまたはトリエタノールアミンなどの三級アミノ化合物の強酸との反応生成物、または強酸の熱分解可能な塩、すなわち、アンモニウム塩もしくは強酸を形成することができる成分であり得る。
【0021】
同様に、米国特許第4,892,674号明細書は、非ヒンダードアミンと高度ヒンダードアミン塩の添加剤および/または高度ヒンダードアミノ酸とを含む吸収剤組成物を使用するガス流からのH
2Sの選択的な除去方法を開示している。このアミン塩は、アルカリ性の高度ヒンダードアミノ化合物と強酸との反応生成物または強酸の熱分解可能な塩、すなわち、アンモニウム塩である。
【0022】
海洋用途向けの好ましいクラスのアミノエーテルは、式:
R1−NH−[CnH2n−O−]
x−OY
[式中、R1は、3〜8個の炭素原子の二級もしくは三級アルキル基、好ましくは4〜8個の炭素原子の三級基であり、Yは、Hまたは1〜6個の炭素原子のアルキルであり、nは、3〜8の正の整数であり、xは、3〜6の正の整数である]
によって定義される。好ましいR1基はtert−ブチルであり、最も好ましいアミノエーテルは、トリエチレングリコール(nは2であり、xは3である)から誘導されるものである。YがHであるとき、アミノエーテルは、トリエチレングリコールから誘導される、tert−ブチルアミノエトキシエトキシエタノールなどのアミノエーテルアルコールであり;Yがアルキル、好ましくはメチルであるとき、アミノエーテルは、アルコキシアミノエーテルであり、tert−ブチルアミノメトキシ−エトキシエトキシエタノールが好ましい。モノアミノエーテルは、エーテルアルコールの末端OH基またはアルコキシアミノエーテルの末端アルコキシ基が、式:
R1−NH−[CnH2n−O−]
x−NHR2
(式中、R1、nおよびxは、上に定義された通りであり、R1と同じものであっても異なるものであってもよい、R2は、3〜8個の炭素原子の二級もしくは三級アルキル基である)
で表されるようにさらなるヒンダードアミノ基で置き換えられているジアミノエーテルとのブレンドで使用されてもよい。このタイプの好ましいジアミノエーテルは、約65〜67重量%:33〜35重量%の重量比でのtert−ブチルアミノメトキシ−エトキシエトキシエタノールとの混合物として便利に使用されてもよいビス−(t−ブチルアミノエトキシ)エタンである。
【0023】
上述の高度に立体障害のある二級アミノエーテルは、アミノ窒素原子に結合した非環状もしくは環状部分で特徴づけられる。用語「高度に立体障害のある」は、アミノ部分の窒素原子が1つ以上の嵩高い炭素グルーピングに結合していることを示す。典型的には、高度に立体障害のあるアミノエーテルアルコールは、このパラメーターの記載について言及される、D.F.DeTar,Journal of Organic Chemistry,45,5174(1980)の表Vに一級アミンに対して与えられた値から計算されるように1.75よりも大きい累積Es値(Taftの立体障害定数)のような立体障害の程度を有する。
【0024】
二級アミノ化合物が「高度に立体障害のある」のかどうかを決定する別の方法は、その15N核磁気共鳴(NMR)化学シフトを測定することによる。立体障害のある二級アミノ化合物は、35℃での10重量%D
2O中の90重量%アミン溶液が、ゼロ基準値として、25℃での液体(ニート)アンモニアを使用して分光計によって測定されるときに、約δ+40ppmよりも大きい15N NMR化学シフトを有することが分かっている。これらの条件下で、比較のために使用される三級アミノ化合物、メチルジエタノールアミンは、δ27.4の測定15N NMR化学シフト値を有する。たとえば、2−(2−tert−ブチルアミノ)プロポキシエタノール、3−(tert−ブチルアミノ)−1−プロパノール、2−(2−イソプロピルアミノ)−プロポキシエタノールおよびtert−ブチルアミノエトキシエタノールは、それぞれ、δ+74.3、δ+65.9、δ+65.7およびδ+60.5ppmの測定15N NMR化学シフト値を有したが、通常の立体障害のあるアミン、二級ブチルアミノエトキシエタノールおよび立体障害のないアミンn−ブチルアミノエトキシエタノールは、それぞれ、δ+48.9およびδ35.8ppmの測定15N NMR化学シフト値を有した。累積Es値が上述のアミノ化合物の15N NMR化学シフト値に対してプロットされるとき、直線が観察される。これらの試験条件下でδ+50ppmよりも大きい15N NMR化学シフト値を有するアミノ化合物は、δ+50ppm未満の15N NMR化学シフト値を有するそれらのアミノ化合物よりも高いH
2S選択性を有した。
【0025】
低温貯蔵、輸送および使用中に特別の注意を要する立体障害のあるアミノエーテル吸収剤は、−20℃以上の流動点(ASTM D−97または同等物)を有するものである。より低い流動点の吸収剤は一般に何の問題も提起せず、したがってそれらが製造場所から出荷される前に水と混合されることが必要であるとは普通は考えられない。アミノエーテル吸収剤の混合物は、それらの凝固点が、十分に低い凝固点/流動点を有する混合物の個々の成分のそれらよりも下で変動する場合、水での処理を必要とする可能性がある。
【0026】
アミノエーテルブレンディング、輸送、貯蔵
アミノエーテル吸収剤またはアミノエーテル吸収剤の混合物は、船舶輸送および貯蔵中の凍結に対する所望の抵抗力を与えるために水とブレンドされる。他の好適な流動点降下剤の使用が同様に有効となるであろうが、水の使用は、アミンが水溶液の形態で典型的には使用されるので特に魅力的であり;添加水入りでの船舶輸送はそれ故、他の高価であろう添加物の使用を回避する。
【0027】
H
2S選択的ヒンダードアミノエーテル吸収剤の例示的凝固点は、次表の通りである。
【0029】
BisTEGTBおよびMEEETBの凝固点は、何の問題も普通は陸環境で予期されないほど十分に低いが、EETBおよびアミノエーテルのブレンドは、それらがより高い緯度での通常の冬条件下に凍結すると予期し得るほど十分に高い流動点/凝固点を有する。しかし、水を添加することによって、凝固点は有用な程度に下げることができ、これらの材料に水を添加することによって達成される流動点を報告する次のデータによって示されるように厳しい気候の地域における輸送および貯蔵を容易にする。
【0031】
アミンの重量を基準として、約10〜50、好ましくは20〜40重量%の量での、水は、従来型混合技術、たとえば、攪拌タンクミキサーを用いて液体アミノエーテルに簡単に混ぜ込まれる。混合水/アミノエーテルは次に、たとえば、200−lドラム、ISO液体コンテナ、バルク液体コンテナ、Flexitank、道路タンクローリー、鉄道タンク車などへ積み込むことによって船舶輸送の準備をされる。混合液体は次に、凍結よりも上の温度にそれを維持する必要なしに従来型手段を用いて寒気候場所に船舶輸送される。寒気候場所に到着すると、アミノエーテル/水ブレンドは、最終所望濃度、典型的には5〜30v/v%に必要ならば希釈し、吸着プロセスに使用することができる。あるいは、それは、使用を望まれるまで非加熱場所に貯蔵することができる。
【0032】
本輸送スキームは、典型的には約0℃よりも下の、アミノエーテルのサブ凍結温度が広く行き渡っている気候帯を通ってアミノエーテルが船舶輸送されるときに有用である。それは、温度がアミノエーテルの凍結温度よりも約10℃超下であると予期される地帯を通っての船舶輸送のときに、特にアミノエーテルの凝固点よりも約20℃超下である温度が予期されるときにとりわけ有用である。
【0033】
凍結に対する抵抗力を与えるために必要な水の量は、アミノエーテルのアイデンティティに依存するであろう。上述の通り、10〜45重量%が普通は十分であり、この範囲内の量は、アミノエーテルの未希釈凝固点に従って変わる。
【国際調査報告】