(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-517634(P2015-517634A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20150526BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20150526BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
F17C13/00 302D
B63H21/38 B
B63H21/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-511950(P2015-511950)
(86)(22)【出願日】2013年5月16日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2013001459
(87)【国際公開番号】WO2013170964
(87)【国際公開日】20131121
(31)【優先権主張番号】61/647,556
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508161827
【氏名又は名称】テーゲーエー、マリン、ガス、エンジニヤリング、ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】514291152
【氏名又は名称】シューリンク,ライナー
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】シューリンク,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】カルスバッハ,アネッテ
(72)【発明者】
【氏名】クリック,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン−キューン,ハンス−クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BD01
3E172EA03
3E172EB03
3E172EB10
3E172EB20
3E172GA11
3E172GA28
3E172JA10
3E172KA19
3E172KA22
(57)【要約】
ガス供給装置は、低温液化ガスの貯蔵タンク1から、ガス圧力と質量流量に関する要求が大きく変動する少なくとも1つの消費部8に制御された圧力で蒸発ガスを供給するガス供給装置であって、貯蔵タンク1に接続されて、液化ガスを貯蔵タンク1から輸送し液化ガスの圧力増大させる高圧ポンプ3と、高圧ポンプ3によって輸送される液化ガスの質量流量を調整するための調整部19と、高圧ポンプ3に続く蒸発器6と、蒸発器6に続き、出力が消費部8に接続される圧力制御弁10と、圧力制御弁10の後方の蒸発ガスの圧力を制御変数とし、修正変数が圧力制御弁10の圧力に作用する第1制御部11と、高圧ポンプ3と圧力制御弁10との間の圧力を制御変数とし、修正変数が調整部19に作用する第2制御部15と、制御部11,15の修正変数を結合して第1制御部11の修正変数がさらに調整部19に作用するようにする手段17とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯蔵する貯蔵タンク(1)から、ガスの圧力と質量流量に関する要求が大きく変動する少なくとも1つの消費部(8)に制御された圧力で蒸発した形態のガスを供給するガス供給装置であって、
貯蔵タンク(1)に接続されて、液化ガスを貯蔵タンク(1)から輸送し液化ガスの圧力増大させる液化ガスの高圧ポンプ(3)と、
高圧ポンプ(3)によって輸送される液化ガスの質量流量を調整するための調整部(19)と、
圧力を高められた液化ガスのための高圧ポンプ(3)に続く蒸発器(6)と、
蒸発ガスのための蒸発器(6)に続き、出力が消費部(8)に接続される圧力制御弁(10)と、
圧力制御弁(10)の後方の蒸発ガスの圧力を制御変数とし、修正変数が圧力制御弁(10)の圧力に作用する第1制御部(11)と、
高圧ポンプ(3)と圧力制御弁(10)との間の圧力を制御変数とし、修正変数が質量流量のための調整部(19)に作用する第2制御部(15)と、
2つの制御部(11,15)の修正変数を結合して第1制御部(11)の修正変数がさらに質量流量のための調整部(19)に作用するようにする、手段(17)とを備える、ガス供給装置。
【請求項2】
質量流量のための前記調整部(19)の上流側に備えられて第1制御部(11)の修正変数と第2制御部(15)の修正変数のための加算部(17)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2つの修正変数のための信号制限部(18)であって、2つの修正変数の合計を質量流量のための前記調整部(19)の許容信号範囲に保つ信号制限部(18)を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
変換素子(13)を備え、
前記変換素子(13)の変換関数は、第1制御部(11)が質量流量のための調整部(19)に作用する限り第1制御部(11)の修正変数を修正する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2制御部(15)の設定値(SP2)は第1制御部(11)よりも高い、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
高圧ポンプ(3)を駆動するための電動機(4)と、
質量流量の調整部として電動機(4)の速度制御部(19)とを備え、
電動機(4)の速度は、前記高圧ポンプ(3)によって輸送される液化ガスの質量流量を決定する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
高圧ポンプ(3)に続く第2の圧力制御弁(20)と、
前記第2の圧力制御弁(20)の前における液化ガスの圧力が制御変数であり修正変数が前記第2の圧力制御弁(20)に作用する第3制御部(21)とを備え、
前記第2の圧力制御弁(20)の出力に液化ガスを貯蔵タンク(1)に導く戻り管(22)が接続されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第3制御部(21)の設定値(SP3)は第2制御部(15)の設定値(SP2)よりも高い、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2制御部(15)と前記第3制御部(21)は、制御変数のための共通の圧力検知部(16)に接続されている、請求項7または請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ガスを第2の燃料または代替燃料として舶用ディーゼルエンジンまたは舶用ディーゼルエンジン群に供給する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、低温液化ガス、特に、液化天然ガス(LNG)の貯蓄から消費部にガスを供給する装置に関する。主な消費部は、燃料ガス(例えばエンジン)を使用する消費部である。しかしながら、例えばパージガスを必要とする他の消費部も考慮される。いずれの場合にも、消費部は、ガスが消費部の特定した圧力で正確に維持されて供給されることを期待する。この圧力は、消費部の活動状態によって異なり、さらに、突然変化し得るものである。時間当たりに要求されるガスの量、すなわち、ガスの質量流量は、通常、一定ではなく、消費部の負荷に依存する。
【発明の概要】
【0002】
本願発明に関する典型的な消費部には、舶用推進装置のためのディーゼルエンジン、または、選択的にガスを用いて稼働される、より小型の発電所、すなわち、特定量のガスが稼働サイクル毎に高圧下、いわゆるパイロット油と言われるディーゼル油に加えてシリンダーに導入されるものが含まれる。これらのエンジンのガス需要は急速に変化する可能性がある。要求される圧力は、それぞれのエンジンの能力に依存しており、LNGでは、典型的には、150〜300barである。圧力と質量流量の変化は、例えば発電所群のような消費部群で、例えば緊急遮断によってひとつの消費部またはエンジンが突然、完全に落ちた場合に、特に著しく、突発的に生じる。このような消費部にガスを供給する装置は、このような変化に対応できなければならない。
【0003】
この課題の解決のためのひとつのアプローチは、蒸発した大量のガス、すなわち、気体状態の高圧ガスが、消費の変動を補償することができるように、常に消費部の最大圧に適応して供給されることにある。しかしながら、より大量の高圧ガスは本質的に危険であるから、この手順は安全面で高くつく。
【0004】
別のアプローチは、まだ液体状態にあるガスがポンプ手段で加圧され、実際に必要とされる質量流量に基づいて、その過剰分が貯蔵タンクから取り出され、必要とされなかった量が貯蔵タンク内に再循環されることにある。液化ガスも圧力が増大すると熱を得るので、貯蔵された低温液化ガスに定常的に熱が導入され、その結果、望ましくない貯蔵タンク内のボイルオフガスが増加する。貯蔵タンクは、高圧向けに設計されていないので、貯蔵タンク内の圧力の増加は、特に船中では代表的な問題源となる。
【0005】
ガスの緩衝量の供給をやめ、通常の制御手段のみによって、消費部の需要を満たす圧力と質量流量のガスを供給しようとすれば、すぐに限界に直面するであろう。通常の制御は遅すぎて、数秒間という短期間の圧力増大または圧力降下を再現できず、また、ガス圧の変動を、制御されていない状態でフィードバックする傾向がある。
【0006】
本願の請求項1に記載する発明に従った装置は、消費部の要求する条件特性に一致するように、例えばディーゼルガスエンジンのような、ガスの圧力が静的にも動的にも正確であることに関する非常に高い要求を有する難しい消費部の場合であっても、消費部に輸送されるガスの圧力を厳密に維持するために役立つ。
【0007】
本願発明に従った装置においては、液化ガスはまず公知の方法で高圧にされ、高圧の状態で、例えば熱交換器によって熱を供給されることによって、蒸発し、すなわち、気体状態に移される。2つの制御部が存在し、第1制御部は、消費部に輸送されるガスの圧力を、流れ方向において蒸発器の後方にある圧力制御弁によって制御し、一方、第2制御部は、圧力制御弁の前であって、高圧ポンプによって輸送されるガスの質量流量を調整することによって圧力を増大させる高圧ポンプの後方でガスの圧力を制御する。本願発明に従った装置において、この質量流量は、第2制御部の修正変数によってだけでなく、さらに、蒸発器の後方で圧力制御弁に作用している第1制御部の修正変数によっても影響を受ける。
【0008】
ガスの質量流量の調整と均等であるものは、ガスの体積流量の調整である。いずれの変数も、調整の場所で比例定数として、密度、より厳密には、ガスの質量の容量密度と互いに比例する。
【0009】
2つの制御部の修正変数を結合するための好ましい手段は、請求項2,3,4において特徴づけられる。従って、質量流量は、好ましくは、可能であれば質量流量の調整部の許容可能な信号範囲に一致する合計の制限下で、可能であればさらに好ましくは、第1制御部の修正変数も質量流量の調整に用いられる限りにおいて、好ましくは特定の動的変換関数に従った第1制御部の修正変数の独立した影響下で、2つの修正変数の合計に依存する。
【0010】
請求項6に従えば、質量流量の調整は、好ましくは、高圧ポンプを駆動するために市販の速度制御器とともに電動機を提供することによって、質量流量を決定する高圧ポンプの速度によって実現される。速度調整には、2つの修正変数の組を用いる。
【0011】
請求項7に記載の発明に従って装置を拡張することは、恒常的な装置の「過剰」運転を意図していない。むしろ、この発展形は、通常の高圧ポンプは、流量の下限を有しており、それ以下ではもはや満足に稼働しないという事実を考慮している。従って、それ以下ではポンプが駆動しない、ガスの最低質量流量がある。通常、第3制御部が動作するのは、消費部が求める質量流量が小さすぎて高圧ポンプの最小限の値以下である時、関係する第2の圧力制御弁を開け始めて、その結果貯蔵タンクに液体ガスを再循環させることによってのみである。
【0012】
第2と第3制御部は、それぞれ圧力検知部を備えることができるが、共通の圧力検知部に接続されていることが好ましい。原則として、圧力検知部が流れ方向において蒸発器の前後いずれに配置されるかということは、決定的ではない。好ましい実施形態において、圧力検知部は、蒸発気の前で液化ガスの圧力を検知する。
【0013】
請求項6,8において特徴づけられる設定値は、本願発明に従った装置の通常の稼働に適用できる。しかし、他の設計も、恒久的にも可能であるし、例えば消費部の緊急停止、ガスの急速停止、装置の出力における非常に急速なガス圧の変化の場合など、一定の例外的な場合にも可能である。
【0014】
本願発明に従った装置は、好ましくは、舶用推進システムに天然ガス(LNG)を供給するために、特に、舶用推進システムが、上述のようにディーゼルエンジンとガスで稼働されるいわゆるMEGIエンジンを備える場合に、船中で使用される。これらのエンジンは、LNGが、高い正確さで特定の圧力で、エンジンの入力に供給されることを要求する。圧力値は、広い圧力範囲で非常に変動し得る;典型的な値は150〜300barである。本願発明に従った装置は、急速な圧力の傾斜が生じた時に、厳密に追従することが可能である。このことは、たとえ、舶用エンジンによって要求される質量流量が、圧力の必要条件とは独立して完全に異なり得ても、本願発明に従った装置において実現される。
【0015】
最近では、LPG(主にプロパン、プロペン、ブタン、ブテン、イソブタンおよび/またはイソブテンからなる古典的な液化ガス)を燃焼するエンジンを有する舶用推進システムも議論されている。この媒体を用いると、要求される圧力は、LNGを用いる場合と比較してかなり高く、600barに上る。一方、最低温度はLNGほど低くはなく、そのためボイルフオフガスの問題は生じにくい。にもかかわらず、舶用エンジンにガスも供給する本願発明に従った装置は、公知の装置よりも好まれるはずである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好ましい代表的な実施形態に従って詳細に説明する。図面は、本願発明に従った装置の工程系統図を示す。
【0017】
貯蔵タンク1は、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する。電動機4で駆動される高圧ポンプ3は、戻り管2を通して貯蔵タンク1に接続されている。接続管5は、高圧ポンプの出力から蒸発器6まで通じる。出力管7は、蒸発器6から、高圧ガスでも使用可能である、ここではディーゼル・エンジンの形態である消費部8に至る。高圧ポンプの出力は、ダンパー9にも接続される。
【0018】
電動機4で駆動される高圧ポンプ3は、貯蔵タンク1から低温液化ガスを取り込んで、低温液化ガスを高圧にする。ダンパー9は、部分的に液化ガスで満たされ部分的に自己蒸発ガスで満たされる容器であり、その結果、液化ガスに生じる圧力振動を抑制する。液化ガスは、高圧ポンプ3から、管5を通って、蒸発器6へと流れる。詳細に図示しないが、蒸発器は熱交換器を備え、液化ガスが加熱されて蒸発する。蒸発したガスは、気体状態で、高圧ポンプで発生された高圧を有している状態であり、出力管7を通してディーゼル・ガス・エンジン8へと流れる。
【0019】
出力管7には、第1制御部11で調整される圧力制御弁10が挿入される。制御部11は、流れ方向において圧力制御弁10の後方において、圧力検知部12に検知されたガスの圧力を制御変数として検知する。そして、制御部11は、この制御変数と、外部から設定された設定値SP1とから、圧力制御弁10のための修正変数を作成する。
【0020】
第2制御部15は、接続管5において、圧力検知部16によって液体ガスの圧力を制御変数として検知して、この制御変数と、外部から設定された設定値SP2とから、加算部17に伝えられて入力される修正変数を作成する。加算部13の他の入力としては、第1制御部11の修正変数が変換素子13によって伝えられる。変換素子13は、この修正変数が加算部17に供給される限り、変換素子で実現される、装置の個々の状況に適応され得る動的変換関数に従ってこの修正変数を修正する。
【0021】
加算部17の出力には、電動機4の速度制御部19が制限器18を通して接続される。制限器18は、加算部17で作成される2つの修正変数の合計を、速度制御部19の許容信号範囲に制限する。速度制御部19は、例えば、周波数変換器として形成され、電動機4に供給される供給流の周波数を通して、制御部11,15から2つの修正変数の制限された合計に従って電動機の速度を調整する。その結果、高圧ポンプ3で輸送される液化ガスの質量流量も調整される。
【0022】
圧力制御弁20が最後に接続管5に接続され、弁20の出力は、戻り管22を通して貯蔵タンク1に接続される。圧力制御弁20が開くと、液化ガスは戻り管22を通して貯蔵タンク1へ流れることができる。第3制御部21は、制御部15のように、制御変数として高圧ポンプ3の後ろで液化ガスの圧力を圧力検知部16によって受けて、外部に指定された設定値SP3と制御変数とから、圧力制御弁20のための修正変数を作成する。圧力制御弁20は、第3制御部21の修正変数で作動される。
【0023】
通常、第2制御部15の設定値SP2は第1制御部11の設定値SP1よりも高い。そして順に、第3制御部21の設定値SP3は、第2制御部15の設定値SP2よりも高い。
【0024】
制御部11,15は、共に、ディーゼル・ガス・エンジン8に流れる蒸発ガスの圧力を調節する。高圧ポンプ3の下限速度に達し、ポンプに影響を与えるだけではさらなる減速ができない時、第3制御部21は、高圧ポンプの出力でガスの圧力を減少させるように動作する。
【0025】
第1制御部11は、速いパラメータ表示、高い増幅率、小さな集積時間定数に調整された標準的な産業用PIコントローラとして実現される。
【0026】
第2制御部15は、通常の機能をさらに有する産業用PIDコントローラとして設計され、Pコントローラとして稼働する。第3制御部21も同様である。
【0027】
以下は、2例の荷重の場合について、圧力、温度、質量流量、高圧ポンプの速度の典型的な値である。
【0028】
1)荷重25%の場合:
圧力:
高圧ポンプ前 5.4bar
高圧ポンプ後 203bar
蒸発器後 202bar
ディーゼル・ガス・エンジン前 174bar
温度:
高圧ポンプ前 −157℃
高圧ポンプ後 −145℃
蒸発器後 50℃
質量流量:
戻り管22 650kg/h
出力管7 1140kg/h
速度:
150m
−1
【0029】
1)荷重85%の場合:
圧力:
高圧ポンプ前 5.4bar
高圧ポンプ後 291bar
蒸発器後 289bar
ディーゼル・ガス・エンジン前 278bar
温度:
高圧ポンプ前 −157℃
高圧ポンプ後 −141℃
蒸発器後 50℃
質量流量:
出力管7 3580kg/h
速度:
300m
−1
【0030】
3.制御実績
具体的な実施形態に従った装置においては、圧力と質量流量の設定値からの最大偏差は、静的最大偏差が1%未満、動的最大偏差が5%未満であった。
【0031】
動的制御実績の検査は、2つの事例、すなわち、消費部側の出力を2分以内に0%から100%に増大させる場合と、緊急停止のシミュレーションとして消費部側の出力を10秒以内に100%から0%に減少させる場合に基づいた。
【手続補正書】
【提出日】2015年1月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、低温液化ガス、特に、液化天然ガス(LNG)の貯蓄から消費部にガスを供給する装置に関する。主な消費部は、燃料ガス(例えばエンジン)を使用する消費部である。しかしながら、例えばパージガスを必要とする他の消費部も考慮される。いずれの場合にも、消費部は、ガスが消費部の特定した圧力で正確に維持されて供給されることを期待する。この圧力は、消費部の活動状態によって異なり、さらに、突然変化し得るものである。時間当たりに要求されるガスの量、すなわち、ガスの質量流量は、通常、一定ではなく、消費部の負荷に依存する。
【0002】
本願発明に関する典型的な消費部には、舶用推進装置のためのディーゼルエンジン、または、選択的にガスを用いて稼働される、より小型の発電所、すなわち、特定量のガスが稼働サイクル毎に高圧下、いわゆるパイロット油と言われるディーゼル油に加えてシリンダーに導入されるものが含まれる。これらのエンジンのガス需要は急速に変化する可能性がある。要求される圧力は、それぞれのエンジンの能力に依存しており、LNGでは、典型的には、150〜300barである。圧力と質量流量の変化は、例えば発電所群のような消費部群で、例えば緊急遮断によってひとつの消費部またはエンジンが突然、完全に落ちた場合に、特に著しく、突発的に生じる。このような消費部にガスを供給する装置は、このような変化に対応できなければならない。
【0003】
この課題の解決のためのひとつのアプローチは、蒸発した大量のガス、すなわち、気体状態の高圧ガスが、消費の変動を補償することができるように、常に消費部の最大圧に適応して供給されることにある。しかしながら、より大量の高圧ガスは本質的に危険であるから、この手順は安全面で高くつく。
【0004】
別のアプローチは、まだ液体状態にあるガスがポンプ手段で加圧され、実際に必要とされる質量流量に基づいて、その過剰分が貯蔵タンクから取り出され、必要とされなかった量が貯蔵タンク内に再循環されることにある。液化ガスも圧力が増大すると熱を得るので、貯蔵された低温液化ガスに定常的に熱が導入され、その結果、望ましくない貯蔵タンク内のボイルオフガスが増加する。貯蔵タンクは、高圧向けに設計されていないので、貯蔵タンク内の圧力の増加は、特に船中では代表的な問題源となる。
【0005】
ガスの緩衝量の供給をやめ、通常の制御手段のみによって、消費部の需要を満たす圧力と質量流量のガスを供給しようとすれば、すぐに限界に直面するであろう。通常の制御は遅すぎて、数秒間という短期間の圧力増大または圧力降下を再現できず、また、ガス圧の変動を、制御されていない状態でフィードバックする傾向がある。
【0006】
米国特許第4887857号公報によって、低温液化ガスの充填設備が知られており、そこでは、媒体の損失が最小化されている。これは、測定された温度と圧力値に依存して弁と圧縮機をコンピュータ制御する制御部によって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4887857号公報
【発明の概要】
【0008】
本願の請求項1に記載する発明に従った装置は、消費部の要求する条件特性に一致するように、例えばディーゼルガスエンジンのような、ガスの圧力が静的にも動的にも正確であることに関する非常に高い要求を有する難しい消費部の場合であっても、消費部に輸送されるガスの圧力を厳密に維持するために役立つ。
【0009】
本願発明に従った装置においては、液化ガスはまず公知の方法で高圧にされ、高圧の状態で、例えば熱交換器によって熱を供給されることによって、蒸発し、すなわち、気体状態に移される。2つの制御部が存在し、第1制御部は、消費部に輸送されるガスの圧力を、流れ方向において蒸発器の後方にある圧力制御弁によって制御し、一方、第2制御部は、圧力制御弁の前であって、高圧ポンプによって輸送されるガスの質量流量を調整することによって圧力を増大させる高圧ポンプの後方でガスの圧力を制御する。本願発明に従った装置において、この質量流量は、第2制御部の修正変数によってだけでなく、さらに、蒸発器の後方で圧力制御弁に作用している第1制御部の修正変数によっても影響を受ける。
【0010】
ガスの質量流量の調整と均等であるものは、ガスの体積流量の調整である。いずれの変数も、調整の場所で比例定数として、密度、より厳密には、ガスの質量の容量密度と互いに比例する。
【0011】
2つの制御部の修正変数を結合するための好ましい手段は、請求項2,3,4において特徴づけられる。従って、質量流量は、好ましくは、可能であれば質量流量の調整部の許容可能な信号範囲に一致する合計の制限下で、可能であればさらに好ましくは、第1制御部の修正変数も質量流量の調整に用いられる限りにおいて、好ましくは特定の動的変換関数に従った第1制御部の修正変数の独立した影響下で、2つの修正変数の合計に依存する。
【0012】
請求項6に従えば、質量流量の調整は、好ましくは、高圧ポンプを駆動するために市販の速度制御器とともに電動機を提供することによって、質量流量を決定する高圧ポンプの速度によって実現される。速度調整には、2つの修正変数の組を用いる。
【0013】
請求項7に記載の発明に従って装置を拡張することは、恒常的な装置の「過剰」運転を意図していない。むしろ、この発展形は、通常の高圧ポンプは、流量の下限を有しており、それ以下ではもはや満足に稼働しないという事実を考慮している。従って、それ以下ではポンプが駆動しない、ガスの最低質量流量がある。通常、第3制御部が動作するのは、消費部が求める質量流量が小さすぎて高圧ポンプの最小限の値以下である時、関係する第2の圧力制御弁を開け始めて、その結果貯蔵タンクに液体ガスを再循環させることによってのみである。
【0014】
第2と第3制御部は、それぞれ圧力検知部を備えることができるが、共通の圧力検知部に接続されていることが好ましい。原則として、圧力検知部が流れ方向において蒸発器の前後いずれに配置されるかということは、決定的ではない。好ましい実施形態において、圧力検知部は、蒸発気の前で液化ガスの圧力を検知する。
【0015】
請求項6,8において特徴づけられる設定値は、本願発明に従った装置の通常の稼働に適用できる。しかし、他の設計も、恒久的にも可能であるし、例えば消費部の緊急停止、ガスの急速停止、装置の出力における非常に急速なガス圧の変化の場合など、一定の例外的な場合にも可能である。
【0016】
本願発明に従った装置は、好ましくは、舶用推進システムに天然ガス(LNG)を供給するために、特に、舶用推進システムが、上述のようにディーゼルエンジンとガスで稼働されるいわゆるMEGIエンジンを備える場合に、船中で使用される。これらのエンジンは、LNGが、高い正確さで特定の圧力で、エンジンの入力に供給されることを要求する。圧力値は、広い圧力範囲で非常に変動し得る;典型的な値は150〜300barである。本願発明に従った装置は、急速な圧力の傾斜が生じた時に、厳密に追従することが可能である。このことは、たとえ、舶用エンジンによって要求される質量流量が、圧力の必要条件とは独立して完全に異なり得ても、本願発明に従った装置において実現される。
【0017】
最近では、LPG(主にプロパン、プロペン、ブタン、ブテン、イソブタンおよび/またはイソブテンからなる古典的な液化ガス)を燃焼するエンジンを有する舶用推進システムも議論されている。この媒体を用いると、要求される圧力は、LNGを用いる場合と比較してかなり高く、600barに上る。一方、最低温度はLNGほど低くはなく、そのためボイルフオフガスの問題は生じにくい。にもかかわらず、舶用エンジンにガスも供給する本願発明に従った装置は、公知の装置よりも好まれるはずである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好ましい代表的な実施形態に従って詳細に説明する。図面は、本願発明に従った装置の工程系統図を示す。
【0019】
貯蔵タンク1は、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する。電動機4で駆動される高圧ポンプ3は、戻り管2を通して貯蔵タンク1に接続されている。接続管5は、高圧ポンプの出力から蒸発器6まで通じる。出力管7は、蒸発器6から、高圧ガスでも使用可能である、ここではディーゼル・エンジンの形態である消費部8に至る。高圧ポンプの出力は、ダンパー9にも接続される。
【0020】
電動機4で駆動される高圧ポンプ3は、貯蔵タンク1から低温液化ガスを取り込んで、低温液化ガスを高圧にする。ダンパー9は、部分的に液化ガスで満たされ部分的に自己蒸発ガスで満たされる容器であり、その結果、液化ガスに生じる圧力振動を抑制する。液化ガスは、高圧ポンプ3から、管5を通って、蒸発器6へと流れる。詳細に図示しないが、蒸発器は熱交換器を備え、液化ガスが加熱されて蒸発する。蒸発したガスは、気体状態で、高圧ポンプで発生された高圧を有している状態であり、出力管7を通してディーゼル・ガス・エンジン8へと流れる。
【0021】
出力管7には、第1制御部11で調整される圧力制御弁10が挿入される。制御部11は、流れ方向において圧力制御弁10の後方において、圧力検知部12に検知されたガスの圧力を制御変数として検知する。そして、制御部11は、この制御変数と、外部から設定された設定値SP1とから、圧力制御弁10のための修正変数を作成する。
【0022】
第2制御部15は、接続管5において、圧力検知部16によって液体ガスの圧力を制御変数として検知して、この制御変数と、外部から設定された設定値SP2とから、加算部17に伝えられて入力される修正変数を作成する。加算部13の他の入力としては、第1制御部11の修正変数が変換素子13によって伝えられる。変換素子13は、この修正変数が加算部17に供給される限り、変換素子で実現される、装置の個々の状況に適応され得る動的変換関数に従ってこの修正変数を修正する。
【0023】
加算部17の出力には、電動機4の速度制御部19が制限器18を通して接続される。制限器18は、加算部17で作成される2つの修正変数の合計を、速度制御部19の許容信号範囲に制限する。速度制御部19は、例えば、周波数変換器として形成され、電動機4に供給される供給流の周波数を通して、制御部11,15から2つの修正変数の制限された合計に従って電動機の速度を調整する。その結果、高圧ポンプ3で輸送される液化ガスの質量流量も調整される。
【0024】
圧力制御弁20が最後に接続管5に接続され、弁20の出力は、戻り管22を通して貯蔵タンク1に接続される。圧力制御弁20が開くと、液化ガスは戻り管22を通して貯蔵タンク1へ流れることができる。第3制御部21は、制御部15のように、制御変数として高圧ポンプ3の後ろで液化ガスの圧力を圧力検知部16によって受けて、外部に指定された設定値SP3と制御変数とから、圧力制御弁20のための修正変数を作成する。圧力制御弁20は、第3制御部21の修正変数で作動される。
【0025】
通常、第2制御部15の設定値SP2は第1制御部11の設定値SP1よりも高い。そして順に、第3制御部21の設定値SP3は、第2制御部15の設定値SP2よりも高い。
【0026】
制御部11,15は、共に、ディーゼル・ガス・エンジン8に流れる蒸発ガスの圧力を調節する。高圧ポンプ3の下限速度に達し、ポンプに影響を与えるだけではさらなる減速ができない時、第3制御部21は、高圧ポンプの出力でガスの圧力を減少させるように動作する。
【0027】
第1制御部11は、速いパラメータ表示、高い増幅率、小さな集積時間定数に調整された標準的な産業用PIコントローラとして実現される。
【0028】
第2制御部15は、通常の機能をさらに有する産業用PIDコントローラとして設計され、Pコントローラとして稼働する。第3制御部21も同様である。
【0029】
以下は、2例の荷重の場合について、圧力、温度、質量流量、高圧ポンプの速度の典型的な値である。
【0030】
1)荷重25%の場合:
圧力:
高圧ポンプ前 5.4bar
高圧ポンプ後 203bar
蒸発器後 202bar
ディーゼル・ガス・エンジン前 174bar
温度:
高圧ポンプ前 −157℃
高圧ポンプ後 −145℃
蒸発器後 50℃
質量流量:
戻り管22 650kg/h
出力管7 1140kg/h
速度:
150m
−1
【0031】
1)荷重85%の場合:
圧力:
高圧ポンプ前 5.4bar
高圧ポンプ後 291bar
蒸発器後 289bar
ディーゼル・ガス・エンジン前 278bar
温度:
高圧ポンプ前 −157℃
高圧ポンプ後 −141℃
蒸発器後 50℃
質量流量:
出力管7 3580kg/h
速度:
300m
−1
【0032】
3.制御実績
具体的な実施形態に従った装置においては、圧力と質量流量の設定値からの最大偏差は、静的最大偏差が1%未満、動的最大偏差が5%未満であった。
【0033】
動的制御実績の検査は、2つの事例、すなわち、消費部側の出力を2分以内に0%から100%に増大させる場合と、緊急停止のシミュレーションとして消費部側の出力を10秒以内に100%から0%に減少させる場合に基づいた。
【国際調査報告】