(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-517968(P2015-517968A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】センサ窓を備えた合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20150529BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20150529BHJP
B23K 26/12 20140101ALI20150529BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20150529BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20150529BHJP
【FI】
C03C27/12 K
B23K26/16
B23K26/12
B23K26/57
B60J1/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-560287(P2014-560287)
(86)(22)【出願日】2013年2月5日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2013052202
(87)【国際公開番号】WO2013131698
(87)【国際公開日】20130912
(31)【優先権主張番号】12158021.1
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ルワイエ
(72)【発明者】
【氏名】リー−ヤー イェー
【テーマコード(参考)】
4E168
4G061
【Fターム(参考)】
4E168CB04
4E168CB08
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA06
4E168DA24
4E168DA27
4E168FB03
4E168FC01
4E168FC07
4E168GA01
4E168GA02
4E168HA01
4E168JA17
4G061AA20
4G061BA02
4G061CD18
(57)【要約】
ベースガラス(15)と、第1のラミネートフィルム(16)と、コーティング(1.2)を備えたコーティングされたポリマフィルム(1)と、第2のラミネートフィルム(17)と、カバーガラス(18)とから成る、少なくとも1つのセンサ窓(19)を有する合わせガラスの製造方法であって、a)前記コーティングされたポリマフィルム(1)を、前記コーティング(1.2)を上方に向けて吸引テーブル(3)にわたって緊張させるステップと、b)前記コーティングされたポリマフィルム(1)に、レーザを用いて、コーティングを除去された少なくとも1つの領域(1.3)を形成するステップと、c)前記ベースガラス(15)に、前記第1のラミネートフィルム(16)を配置し、該第1のラミネートフィルム(16)に前記コーティングされたポリマフィルム(1)を配置し、該コーティングされたポリマフィルム(1)に前記第2のラミネートフィルム(17)を配置し、かつ該ラミネートフィルム(17)上に前記カバーガラス(18)を配置するステップと、d)前記配置するステップにより形成されたアセンブリをオートクレーブ処理するステップと、を有し、前記コーティングを除去された領域(1.3)を吸引テーブル(3)に装着されたガラスプレート(2.1,2.2)上で形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースガラス(15)と、第1のラミネートフィルム(16)と、コーティング(1.2)を備えたコーティングされたポリマフィルム(1)と、第2のラミネートフィルム(17)と、カバーガラス(18)とから成る、少なくとも1つのセンサ窓(19)を有する合わせガラスの製造方法であって、
a)前記コーティングされたポリマフィルム(1)を、前記コーティング(1.2)を上方に向けて吸引テーブル(3)にわたって緊張させるステップと、
b)前記コーティングされたポリマフィルム(1)に、レーザを用いて、コーティングを除去された少なくとも1つの領域(1.3)を形成するステップと、
c)前記ベースガラス(15)に、前記第1のラミネートフィルム(16)を配置し、該第1のラミネートフィルム(16)に前記コーティングされたポリマフィルム(1)を配置し、該コーティングされたポリマフィルム(1)に前記第2のラミネートフィルム(17)を配置し、かつ該ラミネートフィルム(17)上に前記カバーガラス(18)を配置するステップと、
d)前記配置するステップにより形成されたアセンブリをオートクレーブ処理するステップと、を有し、
前記コーティングを除去された領域(1.3)を吸引テーブル(3)に装着されたガラスプレート(2.1,2.2)上で形成することを特徴とする、少なくとも1つのセンサ窓(19)を有する合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
旋回アーム(3.3)と、該旋回アーム(3.3)の上の下側のプレート(3.2)と、該下側のプレート(3.2)上の上側のプレート(3.1)とを備えた前記吸引テーブル(3)を使用する、請求項1記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
前記吸引テーブル(3)を鉛直方向に配置する、請求項1または2記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項4】
前記上側プレート(3.1)のフライス加工凹部(25.1,25.2)内に装入されたガラスプレート(2.1,2.2)を備えた前記吸引テーブル(3)を使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項5】
前記ガラスプレート(2.1,2.2)を、エポキシ樹脂、ポリウレタン接着剤、シリコーン、瞬間接着剤および/またはこれらの混合物の群から成る接着剤、特に好適にはエポキシ樹脂を用いて取り付ける、請求項1から4までのいずれか1項記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項6】
搬送ローラ(4.1,4.2)によって前記コーティングされたポリマフィルム(1)を繰り出すことにより連続的に行う方法であって、
m)前記コーティングされたポリマフィルム(1)を、前記吸引テーブル(3)の上側および下側に配置された2つの搬送ローラ(4.1,4.2)を介して、前記吸引テーブル(3)の長さにわたって繰り出し、
n)前記搬送ローラ(4.1,4.2)を停止させ、
o)前記吸引テーブル(3)の吸引ノズル(14)を介して、前記吸引テーブル(3)と前記コーティングされたポリマフィルム(1)との間に負圧を供給し、前記コーティングされたポリマフィルム(1)を緊張させ、
p)前記コーティングされたポリマフィルム(1)に、前記ガラスプレート(2.1,2.2)の領域において、レーザを用いて、コーティングを除去された少なくとも1つの領域(1.3)を形成し、
q)前記吸引テーブル(3)に送気し、
この場合に、レーザ加工過程により発生した粒子を粒子吸引部(12)を介して取り除く、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記レーザ加工を、窒素および/またはアルゴンおよび/または窒素およびアルゴンの混合物を含む保護ガス雰囲気を備えたチャンバ(10)内で行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングされたポリマフィルム(1)のコーティングを、該ポリマフィルムに対して垂直方向に配置された少なくとも1つの2Dレーザスキャナ(5.1,5.2)または3Dレーザスキャナ(13)により除去する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングされたポリマフィルム(1)のコーティングを、300nm〜1300nmの波長で除去する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングされたポリマフィルム(1)に、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび/またはこれらの混合物および/またはコポリマーを使用し、前記コーティング(1.2)は、有利には銀、金、銅、インジウム、錫、亜鉛、ロジウム、白金、パラジウムおよび/またはその混合物および/または合金を含む金属コーティングである、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングを除去された領域(1.3)において、前記コーティング(1.2)の少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%を取り除く、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングを除去された領域(1.3)は、300nm〜1300nmの電磁放射線の波長領域において少なくとも75%、有利には少なくとも85%の、電磁放射線のための平均透過率を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
コーティングされたポリマフィルム(1)をレーザ加工する装置であって、
r)旋回アーム(3.3)と、該旋回アーム(3.3)に取り付けられた下側のプレート(3.2)と、該下側のプレート(3.2)に取り付けられた上側のプレート(3.1)とを備えた吸引テーブル(3)と、
s)前記吸引テーブル(3)の前記上側のプレート(3.1)に装入された少なくとも1つのガラスプレート(2.1,2.2)と、
t)前記吸引テーブル(3)の表面に対して垂直方向に配向され、かつ少なくとも前記ガラスプレート(2.1,2.2)の領域を覆う作業領域を有する3Dレーザスキャナ(13)または少なくとも1つの2Dレーザスキャナ(5.1,5.2)と
を備えることを特徴とする、コーティングされたポリマフィルムをレーザ加工する装置。
【請求項14】
保護ガス雰囲気を有するチャンバ(10)内に配置されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記吸引テーブル(3)の下側に下側の搬送ローラ(4.2)が位置しており、前記吸引テーブル(3)の上側に上側の搬送ローラ(4.1)が位置しており、該搬送ローラにより、前記コーティングされたポリマフィルム(1)が部分的に繰り出されかつ巻き上げられ、該搬送ローラは好適には前記チャンバ(10)の外側に位置している、請求項13または14記載の装置。
【請求項16】
前記コーティングされたポリマフィルム(1)のコーティングをレーザにより除去するための請求項13記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ窓を備えた合わせガラスの製造方法に関する。
【0002】
車両における安全性要求の高まりに伴って、車両にはますます頻繁に種々様々な光学センサが装備されるようになっている。この光学センサには、特に駐車補助システムおよび車線アシストのセンサならびに距離センサが含まれる。これらのシステムは、運転者に夜間または困難な道路状況においても障害物について警告することができる。視界が悪い場合、運転者は、車両の前に突然飛び出してくる歩行者や別の車両に対して遅れずに反応することはほとんどできない。カメラシステムは、このような障害物を遅れることなく認識し、運転者に警告を与える。特に高速の場合に、正しい安全距離を判断することは運転者にとって困難である。電子的な距離測定および安全距離が短すぎる場合の運転者への自動的な警告により、追突事故は効果的に阻止され得る。このような補助システムの使用は、道路交通における安全性を能動的に改善する。これらの補助システムは、カメラ、暗視カメラ、残光倍増機、赤外線検出器またはレーザ距離計と共に機能する。この場合、前方に向けられたセンサは、周囲の影響から保護するために、通常はウィンドガラスの背後に配置されている。
【0003】
安全に関する観点の他に、経済的な観点および車両快適性が重要である。汚染物質の排出ひいては燃料消費はできるだけ最小限にされることが望ましい。直射日光における長い停車時間の後に、空調設備のエネルギ消費は高くなる。このことは高められた燃料消費と、汚染物質の排出とにつながる。さらに、車両内室の強い加熱は、乗員の快適性を損なう。車内内室の加熱は、日射防護コーティングを備えた合わせガラスの使用によって阻止することができる。このような合わせガラスは、太陽光の赤外線部分をフィルタリングする。このためには、特にポリエステルフィルムが合わせガラスのフィルム複合体において使用される。この場合、好適にはPETフィルムが使用される。PETフィルムは、2つのPVBフィルムの間に装入される。この場合、PETフィルムには、赤外線を反射するコーティングが備えられている。この目的のためには、金属コーティングされたPETフィルムまたは別のポリエステルフィルムが使用される。有利には、銀コーティングが使用される。択一的には、たとえば紫外線のような、電磁スペクトルの別の部分を反射するコーティングも塗布され得る。このような日射防護コーティングの他に、合わせガラスにおける加熱可能なコーティングも知られている。この加熱可能なコーティングにおいて、同様に金属コーティングされたポリエステルフィルムがフィルム複合体で使用される。
【0004】
合わせガラスのフィルム複合材においてこのような金属コーティングされたフィルムを使用することは、カメラシステムと組み合せた場合、ほとんど不可能である。カメラシステムは、スペクトルの可視領域の光だけでなく、赤外線および紫外線の波長領域の光も利用する。合わせガラス中の日射防護コーティングは、この波長領域の幾らかの割合をフィルタリングし、したがってガラスの背後におけるカメラシステムの使用を困難にする。フィルム複合材の金属製のコーティングは、したがってカメラの領域で取り除かれる必要がある。このようなセンサ窓は、たとえばフィルム複合材の対応する箇所におけるPETフィルムの切出しによって達成され得る。しかしこれによって、PTEフィルムを有しないセンサ窓と、PETフィルムを備えた残りのガラス面との間の境界面における皺形成が生じる。
【0005】
欧州特許出願公開第1605729号は、センサ窓を有する、電気的に加熱可能な合わせガラスを開示している。センサ窓の背後にはカメラが取り付けられている。カメラの視野において、合わせガラスが加熱され、これによりこの領域における凝縮水および氷の形成を阻止することができる。この場合、まず、センサ窓の領域において、合わせガラスのフィルム中間層の一部分が取り除かれる。この切取り部に、加熱エレメントが挿入される。この加熱エレメントは、フィルム中間層に適合する部材に設けられている。この加熱エレメントは、合わせガラスのフィルム複合材に貼り込まれている。付加的に、第2の加熱エレメントがガラス表面に取り付けられ得る。
【0006】
英国特許第2458986号は、連続的なフレキシブルな基板上で薄いフィルムを構造化する方法が開示されている。フレキシブルな基板は、この場合、ロール形状で提供されている。装置の一方の側で、基板が搬送ローラによって繰り出され、他方の側で加工後に第2の搬送ローラにより再び巻き上げられる。基板表面の加工は、インクジェットプリンタによる印刷によって、またはレーザを用いた構造化によって行われ得る。このためには、基板は両搬送ローラの間で吸引テーブル上に位置固定され、これにより加工中の皺形成を阻止することができる。印刷ヘッドまたはレーザは、フィルム表面に対して垂直方向に位置している。この装置は、コーティングを薄いフィルムの表面からレーザによって除去することを可能にしている。
【0007】
欧州特許第2325002号は、センサ窓を備えた合わせガラスの製造方法を開示している。センサ窓の領域のポリマフィルムの金属コーティングはレーザ加工法により除去される。ポリマフィルムは、これによってセンサ窓の領域で切り取られる必要はない。したがって、センサ窓の縁部における皺形成は阻止され、この領域において光学的な不規則性は生じない。
【0008】
金属コーティングされたポリマフィルムをレーザ加工する従来公知の方法では、ポリマフィルムが吸引テーブル上に位置固定され、レーザを用いて加工される。この場合、レーザは、ポリマフィルムを通じて吸引テーブルに衝突する。しかしこの場合、レーザは吸引テーブルを損傷し、テーブル表面から金属粒子を剥離する。この金属粒子は、フィルムの表面に極めて容易に付着する。加工されたコーティングされたポリマフィルムの巻取り時に、付着した金属粒子は、巻き上げられたフィルムの中間空間に入り込む。このようにして金属粒子は、コーティングされたポリマフィルムのコーティングとも接触し、このコーティングを損傷する。コーティングにおけるこのような損傷およびひっかき傷は、完成した製品において光学的なエラーとして見えるだけでなく、コーティングの腐食の原因ともなる。この理由からコーティングの損傷はいかなる場合も阻止されなければならない。したがって、この金属粒子を取り除くために、吸引テーブルは規則的にクリーニングされる必要がある。択一的には、ポリマフィルムと吸引テーブルとの間に保護フィルムが装入されてよく、これにより金属粒子が保護フィルムに付着し、ポリマフィルムには接触しない。保護フィルムの被着もしくは吸引テーブルのクリーニングは、付加的な手動の作業ステップをなし、これにより製品プロセスは遅延される。
【0009】
本発明の課題は、少なくとも1つのセンサ窓を備えた合わせガラスの製造方法を改良して、ポリマフィルムの、レーザによる全自動の加工を可能にし、吸引テーブルがレーザ光線によって損傷されず、吸引テーブルのクリーニングが不要であるようにすることにある。
【0010】
本発明の課題は、本発明により、請求項1に記載の、少なくとも1つのセンサ窓を備える合わせガラスの製造方法および請求項15に記載の、レーザによりポリマフィルムを加工する装置により解決される。本発明の好適な態様は、従属請求項2〜14から明らかである。
【0011】
センサ窓を備える合わせガラスの製造方法は、コーティングされたポリマフィルムを、ガラスプレートが配置された吸引テーブル上でレーザを用いて加工することと、この加工されたコーティングされたポリマフィルムを使用して合わせガラスを製造することとを含む。コーティングされたポリマフィルムは、第1のステップでは、コーティングを上方に向けて吸引テーブル上に載置され、負圧の供給により緊張される。ここで、「上方に向けて」とは、吸引テーブルから離れる方向に向けられていることであると理解され得る。この場合、ポリマフィルムのコーティングされていない側またはポリマフィルムの加工すべきでない側が、吸引テーブルの表面に直接に載置されている。これに対して、コーティングされたポリマフィルムのレーザによって加工されるべきコーティングは、レーザの方向に向いていて、したがって吸引テーブル上へのポリマフィルムの載置後には、この吸引テーブルから離れるように上向きになっている。ガラスプレートの領域で、コーティングされたポリマフィルムに、レーザによってコーティングを除去された領域が生じる。コーティングを除去されたこの領域では、コーティングされたポリマフィルムのコーティングがレーザによって除去されている。コーティングを除去された領域を備える、加工されたコーティングされたポリマフィルムは、さらに合わせガラスのフィルム複合材に挿入される。このためには、ベースガラスに第1のラミネートフィルムが載置され、該第1のラミネートフィルムにコーティングを除去された領域を備えるコーティングされたポリマフィルムが載置される。コーティングされたポリマフィルムには第2のラミネートフィルムが載置され、このフィルム積層体は、カバーガラスにより閉じられる。さらにこのアセンブリは、次いでまずプラスチック袋内で予備脱気され、次いでオートクレーブ内で処理される。オートクレーブ内での処理は、50℃〜150℃で行われ、有利には80℃〜120℃で、かつ5bar〜15bar、有利には8bar〜13barの圧力で、1時間〜4時間、有利には2時間〜3時間の間行われる。
【0012】
ベースガラスおよびカバーガラスは、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスまたはポリメチルメタクリレートを含む。
【0013】
ベースガラスおよびカバーガラスは、1mm〜20mm、有利には2mm〜6mmの厚さを有している。
【0014】
コーティングされたポリマフィルムを位置固定する吸引テーブルは、旋回アームと、該旋回アームに組み付けられた下側のプレートと、該下側のプレートに取り付けられた上側のプレートとを有している。下側のプレートと上側のプレートとは、吸引テーブルの旋回アームに対して相対的な配置により定義されている。したがって、旋回アームの旋回時にも、旋回アームに直接に組み付けられたプレートを下側のプレートと定義し、下側のプレートに取り付けられているプレートを上側のプレートと定義する。旋回アームは、フィルム表面への吸引テーブルの正確な接近を可能にする。負圧が供給されていない場合、ポリマフィルムは吸引テーブルに接触しないので、フィルムは、搬送ローラによる搬送時にひっかき傷をうけない。しかし、フィルム表面に対する吸引テーブルの距離は、フィルムが負圧の供給時に完全にテーブル表面に対して吸い込まれるように、大きすぎてはならない。さらに、吸引テーブルは、旋回アームを介して側方に取り除かれ得る。これによって、吸引テーブルの上側のプレートの簡単な交換が可能である。
【0015】
吸引テーブルは、上側のプレートとして金属プレートまたはセラミックプレートを有している。上側のプレートには、複数の孔が設けられている。これらの孔は、吸引ノズルとして機能する。金属プレートは、好適にはアルミニウムを含んでいる。セラミックプレートの使用時には、多孔性の材料も使用され得るので、追加的な孔を上側のプレートに加工形成する必要がない。
【0016】
吸引テーブルは、好適には鉛直方向に配置されており、これにより設備のために必要となる据付け面積は縮小され、設備をできるだけ省スペースに構成することができる。吸引テーブルの平面の法線ベクトルは、この場合水平方向に向けられている。吸引テーブルのこのような鉛直方向の配置でも、旋回アームに対する下側のプレートおよび上側のプレートの相対的な配置は維持され、かつコーティングされたポリマフィルムの、吸引テーブルに対して相対的な配置も維持される。さらに、吸引テーブルの鉛直方向の配置は、コーティングされたポリマフィルムの別の加工を容易にする。別の加工がたとえばその上方に位置する階層で行われ得る場合、フィルムはレーザ加工後に搬送ローラを介して鉛直方向で上方に向かって次の階層へと搬送され得る。
【0017】
ガラスプレートは、吸引テーブルの上側のプレートに設けられたフライス加工凹部内に装入される。このためには、吸引テーブルの上側のプレートに凹部がフライス加工される。この凹部の形状およびサイズはガラスプレートに一致する。この場合、フライス加工凹部の深さは、ガラスプレートの厚さにより得られる。ガラスプレートは、正確に加工される必要がある。なぜならば、ガラスプレートと吸引テーブルとの間の移行部において、ガラスプレートの装入後にエッジが残ってはならないからである。吸引テーブルの表面における不規則性は、負圧の供給時に、コーティングされたポリマフィルムの損傷をもたらす。ガラスプレートの位置は、後に形成される合わせガラスのセンサ窓の位置に依存する。なぜならば、ガラスプレートは、コーティングされたポリマフィルムの加工されるべき領域においてのみ、吸引テーブルに設けられるからである。ガラスプレートは、吸引テーブルの取り外し可能な上側のプレートにのみ取り付けられる。したがって、個別の吸引テーブルは、上側のプレートの簡単な交換によって、種々のガラスモデルのために使用することができる。
【0018】
ガラスプレートの取付けは、有利にはエポキシ樹脂、ポリウレタン接着剤、シリコーン、瞬間接着剤のおよび/またはこれらの混合物の群から成る接着剤、特に好適にはエポキシ樹脂を介して行われる。択一的には、ガラスプレートは、接着テープを介して取り付けられ得る。ガラスプレートは、意想外にも、吸引テーブルの損傷を阻止し、したがってコーティングされたポリマフィルムに付着し、該ポリマフィルムを損傷する金属粒子の形成の形成を阻止する。
【0019】
ガラスプレートは、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスを含み、有利にはフロートガラスが使用される。
【0020】
ガラスプレートは、1mm〜10mm、有利には2mm〜6mmの厚さを有している。
【0021】
コーティングされたポリマフィルムは、吸引テーブルの上側および下側の2つの搬送ローラを介して部分的に繰り出されかつ巻き上げられるので、フィルムのコーティングされるべき区分だけが繰り出された状態にある。この場合、吸引テーブルの上側および下側という概念は、鉛直方向に配置された吸引テーブルに関連する。吸引テーブルの別の配置では、搬送ローラは、吸引テーブルの側方に配置されている。一般的には、搬送ローラの位置決めは、吸引テーブルに隣接して行われる。この場合、吸引テーブルは、2つの搬送ローラの間にあるので、コーティングされたポリマフィルムは吸引テーブルの表面に対して平行に搬送ローラを介して繰り出され、かつ巻き上げられ得る。したがって、フィルムは、直接にロールから連続的な方法において加工され得る。さらに、逐次的な加工は、フィルムの損傷を阻止する。なぜならば、フィルムの表面が巻き上げられた状態で最適に保護されているからである。コーティングされたポリマフィルムが加工後に再び上側の搬送ローラにより巻き上げられる代わりに、フィルムが変向ローラを介して直接に別の加工に供給されてもよい。
【0022】
コーティングされたポリマフィルムのレーザ加工は、まず、ポリマフィルムの一区分を下側の搬送ローラにより繰り出し、上側の搬送ローラにより巻き上げ、搬送ローラを停止することにより行われる。下側の搬送ローラは、吸引テーブルが鉛直方向に配置されている場合、吸引テーブルの下側に位置しているのに対して、上側の搬送ローラは吸引テーブルの上側に位置している。吸引テーブルが水平方向に配置されている場合、上側の搬送ローラおよび下側の搬送ローラは、吸引ローラの側方で互いに反対の側に位置する縁部に取り付けられている。コーティングされたポリマフィルムは、さらにコーティングを上方に向けて吸引テーブルにわたって位置している。吸引テーブルの上側のプレートに設けられた吸引ノズルを介して、負圧が供給され、吸引テーブルと、コーティングされたポリマフィルムとの間の空気が取り除かれる。吸引テーブルには負圧が供給され、これにより、コーティングされたポリマフィルムが緊張され、加工中の皺形成は阻止される。この場合、ガラスプレート上のフィルム領域には、負圧は供給されていない。なぜならば、吸引ノズルはガラスプレートにより覆われているからである。しかし、ガラスプレートの周辺の領域には負圧が供給されるので、コーティングされたポリマフィルムは、ガラスプレートの領域でも緊張されており、皺を有していない。ガラスプレートにわたるフィルム領域には、レーザにより、コーティングを除去された領域が、コーティングされたポリマフィルムの表面に形成される。その後に負圧は取り除かれ、搬送ローラを介してコーティングされたポリマフィルムの新たな区分が装入される。レーザ加工時に除去された粒子は、粒子吸引部を介して取り除かれる。
【0023】
コーティングされたポリマフィルムのレーザ加工は、保護ガス雰囲気を有するチャンバ内で行われる。保護ガス雰囲気は、コーティングを除去された領域の縁部におけるコーティングの腐食を阻止する。レーザによって、高度のエネルギが入射されるので、これにより、コーティングは、加工された領域において加熱される。コーティングを除去された領域の縁部において、コーティングの金属がこの加熱によって酸素との接触時に酸化することがある。この理由からレーザ加工は、酸素を排出した状態で実行すべきである。保護ガス雰囲気は、有利には窒素、アルゴンおよび/または窒素およびアルゴンの混合物である。
【0024】
レーザ加工は、少なくとも2Dレーザスキャナまたは3Dレーザスキャナを用いて行われる。これらのレーザスキャナは、コーティングされたポリマフィルムの表面に対して垂直方向に配置されている。2Dレーザスキャナは、500mmの幅および500mmの長さの最大作業領域を有している。したがって、大きなガラスまたはガラスの種々の領域において複数のセンサ窓が設けられる場合に、加工すべき領域を完全にカバーするために、複数の2Dレーザスキャナを使用する必要がある。択一的には、2Dレーザスキャナは、1つの軸に組み付けられ得るので、2Dレーザスキャナは、全体的な作業領域において相応して運動可能である。3Dレーザスキャナは、1mの幅および1mの長さの範囲をカバーする。これによって通常は1つの3Dレーザスキャナが完全な作業領域のために十分である。コスト上の理由から、有利には1つまたは複数の2Dレーザスキャナが使用される。
【0025】
レーザ源として、好適にはパルス化された固体レーザが使用される。特に有利には、ネオジムでドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザ(Nd:YAGレーザ)が使用される。択一的には、イッテルビウム(Yb:YAGレーザ)またはエルビウム(Er:YAGレーザ)がドープ材料として使用され得るか、またはチタンサファイヤレーザまたはネオジムでドープしたバナジン酸イットリウムレーザ(Nd:YVO
4レーザ)が使用され得る。Nd:YAGレーザは、1064nmの波長の赤外線を放射する。周波数倍増器もしくは周波数三倍器により、532nmの波長および355nmの波長の放射線を形成することもできる。
【0026】
2Dレーザスキャナの利用時に、レーザ源から生じたレーザ光線は、光線エクスパンダに衝突し、かつ光線エクスパンダからミラーを介して2Dレーザスキャナへと変向される。3Dレーザスキャナの利用時に、レーザ源からのレーザ光線は、直接にミラーを介して3Dレーザスキャナへと変向される。
【0027】
レーザ加工は、300nm〜1300nmの波長で行われる。使用される波長は、コーティングの種類に依存している。有利に使用されるNd:YAGレーザは、355nm、532nmおよび1064nmの波長のレーザ光線を提供することができる。銀コーティングの加工のためには、有利には532nmの波長が使用される。
【0028】
レーザ加工は、有利には1W〜150Wの出力で、特に有利には10W〜50Wの出力で行われる。
【0029】
第1のラミネートフィルムおよび第2のラミネートフィルムは、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタンおよび/またはこれらの混合物および/またはコポリマーである。有利には、ポリビニルブチラールが使用される。
【0030】
第1のラミネートフィルムおよび第2のラミネートフィルムは、0.1mm〜0.8mm、有利には0.3mm〜0.5mmの厚さを有している。
【0031】
ポリマフィルムは、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび/またはこれらの混合物および/またはコポリマーを含む。有利には、ポリエチレンテレフタラートが使用される。
【0032】
ポリマフィルムは、20μm〜120μm、有利には40μm〜60μmの厚さを有している。
【0033】
コーティングされたポリマフィルムのコーティングは、有利には金属含有であり、特に有利には銀、金、銅、インジウム、錫、亜鉛、ロジウム、白金、パラジウムおよび/またはその混合物および/または合金を含む。日射防護コーティングとしての利用のためには、有利には銀が使用される。
【0034】
コーティングは、1nm〜500nm、有利には50nm〜250nmの厚さを有している。
【0035】
コーティングされたポリマフィルムのコーティングを除去された領域では、コーティングの少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%が取り除かれる。
【0036】
レーザの光線は、コーティングされたポリマフィルムのコーティングに焦点を合わされ、コーティングはできるだけ完全に取り除かれる。レーザ光線の正確な焦点合わせ時に、除去されるべきコーティング、場合によってはポリマフィルム、かつせいぜいガラスプレートの一部がこの焦点内にある。ガラスプレートは、レーザ光線によって損傷されない。先行技術から公知のような、ガラスプレートを有しない吸引テーブルとは異なり、ガラスプレートの本発明による使用によって、吸引テーブルの損傷は行われない。レーザ光線の誤った焦点合わせ時に、コーティングを除去されたポリマフィルムおよびガラスプレートを貫通して上側のプレートに衝突するレーザ光線によっても、吸引テーブルの上側のプレートが損傷することがある。上側のプレートのこのような不都合な損傷時ですら、この損傷時に発生した金属粒子はガラスプレートにより留められて、金属粒子によるポリマフィルムの損傷は本発明により回避される。
【0037】
コーティングを除去された領域は、2cm
2〜200cm
2、有利には20cm
2〜120cm
2のサイズを有している。
【0038】
コーティングを除去された領域は、ガラスの全面積において、15%の最大の割合、特に有利には5%の最大の割合を有している。
【0039】
コーティングを除去された領域において、電磁放射線のための平均透過率は、300nm〜1300nmの波長範囲において少なくとも75%であり、有利には少なくとも85%である。
【0040】
本発明は、さらに、フレキシブルな、コーティングされたポリマフィルムをレーザ加工する装置を含む。該装置は、吸引テーブルと、該吸引テーブルに取り付けられた少なくとも1つのガラスプレートと、少なくとも1つの2Dレーザスキャナまたは3Dレーザスキャナと、保護ガスを充填されたチャンバと、2つの搬送ローラとを有している。吸引テーブルは、旋回アームを有しており、該旋回アームには、下側のプレートが組み付けられており、該下側のプレートには上側のプレートが取り付けられている。吸引テーブルには、1つまたは複数のガラスプレートが位置しており、該ガラスプレートは、吸引テーブルの上側のプレートに設けられたフライス加工凹部内に接着されている。レーザスキャナは、吸引テーブルの表面に対して垂直に配向されている。3Dレーザスキャナまたは2Dレーザスキャナの作業領域は、少なくともガラスプレートの領域を覆う。吸引テーブルと、レーザ加工装置とは、保護ガスを有するチャンバにより取り囲まれている。チャンバの外側には、2つの搬送ローラが位置しており、該搬送ローラは、コーティングされたポリマフィルムをチャンバを通じて吸引テーブルを超えて搬送する。
【0041】
本発明に係る方法の有利な態様は、第1のラミネートフィルムとコーティングされたポリマフィルムとから成る2層フィルムの加工を含む。この場合、2層フィルムは、ロール形状で提供され、したがって搬送ローラから繰り出され、この場合、コーティングされたポリマフィルムのコーティングは、レーザスキャナの方向を向いている。本発明に係る方法の別の態様は、コーティングされたガラス基板のような硬い基板の加工を含む。硬い基板は、この場合、ローラにより加工することができず、手動で装入される。
【0042】
以下に、本発明を図面につき詳しく説明する。図面は、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】2Dレーザスキャナを用いてコーティングされたポリマフィルムを加工する本発明の係る装置の概略図である。
【
図1A】2Dレーザスキャナを用いてコーティングされたポリマフィルムを加工する本発明の係る装置の別の概略図である。
【
図2】3Dレーザスキャナを用いてコーティングされたポリマフィルムを加工する本発明の係る装置の概略図である。
【
図3】ガラスプレートが配置された吸引テーブルを、張られたポリマフィフィルムと共に示す概略的な平面図である。
【
図4】ガラスプレートが配置された吸引テーブルの組立てを示す概略図である。
【
図5】本発明に係る方法により製造された合わせガラスの概略図である。
【
図6】センサ窓を備えたウィンドガラスを示す概略図である。
【
図7】センサ窓を備えた合わせガラスを製造する本発明に係る方法のフローチャートである。
【0044】
図1は、コーティングされたポリマフィルム1を、2Dレーザスキャナ5.1,5.2を用いて加工する本発明に係る装置の概略図を示している。コーティングされたポリマフィルム1は、下側の搬送ローラ4.2から繰り出され、上側の搬送ローラ4.1に再びき上げられる。両搬送ローラ4の間で、コーティングされたポリマフィルム1は部分的に吸引テーブル3にわたって緊張される。吸引テーブル3は、旋回アーム3.3を有しており、該旋回アーム3.3には下側のプレート3.2が組み付けられている。下側のプレート3.2には、上側のプレート3.1が取り付けられている。上側のプレート3.1には、第1のガラスプレート2.1と第2のガラスプレート2.2とが面一に嵌め込まれている。吸引テーブル3は、設備の省スペースな構造を可能にするために、鉛直方向に配置されている。2Dレーザスキャナ5.1,5.2は、コーティングされたポリマフィルム1の表面に向かう方向に向けられている。両2Dレーザスキャナ5.1,5.2は固有のレーザ源9.1,9.2を有している。第1のレーザ源9.1から放射されたレーザ光線8.1は、まず第1の光線エクスパンダ7.1に入射し、次いで第1の変向ミラー6.1を介して第1の2Dレーザスキャナ5.1へと導かれる。第2のレーザ源9.2と、第2の光線エクスパンダ7.2と、第2の変向ミラー6.2とから成るアセンブリは、第1の光線経路に対して並行に取り付けられている。第2のレーザ光線8.2は、第2のレーザ源9.2から出発して第2の光線エクスパンダ7.2へ、かつ第2の光線エクスパンダ7.2から第2の変向ミラー6.2を介して第2のレーザスキャナ5.2へ導かれる。2Dレーザスキャナ5.1,5.2の作業領域は、少なくともガラスプレート2.1,2.2にわたるフィルム領域を覆っている。ガラスプレート2.1,2.2を備えた吸引テーブル3と、コーティングされたポリマフィルム1と、レーザ加工装置9,8,7,6,5とは、1つのチャンバ10内に位置している。チャンバ10には保護ガスが充填されており、これにより加工時の表面の酸化を阻止することができる。搬送ローラ4は、チャンバ10の外側に位置している。チャンバ10の底部には、粒子吸引部12が取り付けられており、該粒子吸引部12により加工時に発生する粒子が取り除かれる。
【0045】
図1Aは、
図1に示した本発明に係る装置の概略図を示している。この場合、部分Aが拡大して図示されている。吸引テーブル3の下側のプレート3.2には、上側のプレート3.1が組み付けられている。該上側のプレート3.1内には、第1のガラスプレート2.1および第2のガラスプレート2.2が嵌め込まれている。吸引テーブル3にわたって、第2の搬送ローラ4によりコーティングされたポリマフィルム1が緊張される。搬送ローラ4は、このためには吸引テーブル3の側方に取り付けられている。この場合、下側の搬送ローラ4.2は、鉛直方向に配置された吸引テーブル3の下方に、上側の搬送ローラ4.1は鉛直方向に配置された吸引テーブル3の上方に位置している。コーティングされたポリマフィルム1の、本発明による方法において加工されるべきコーティング1.2は、この場合、2Dレーザスキャナ5.1,5.2に向かう方向に向けられているのに対して、ポリマフィルム1のコーティング1.2とは反対の側に位置する面1.1は、負圧の供給に応じて直接に吸引テーブル3に載置されている。
【0046】
図2は、コーティングされたポリマフィルム1を3Dレーザスキャナ13を用いて加工する本発明に係る装置の概略図を示している。コーティングされたポリマフィルム1は、下側の搬送ローラ4.2から繰り出されて、上側の搬送ローラ4,1に再び巻き上げられる。両搬送ローラ4の間で、コーティングされたポリマフィルム1は部分的に吸引テーブル3にわたって緊張される。吸引テーブル3は、旋回アーム3.3を有しており、該旋回アーム3.3には下側のプレート3.2が組み付けられている。下側のプレート3.2には上側のプレート3.1が取り付けられている。上側のプレート3.1内には、第1のガラスプレート2.1および第2のガラスプレート2.2が面一に嵌め込まれている。吸引テーブル3は、設備の省スペースの構造を可能にするために、鉛直方向に配置されている。3Dレーザスキャナ13は、両ガラスプレート2.1,2.2に向かう方向に向けられている。3Dレーザスキャナ13の作業領域は、少なくとも両ガラスプレート2.1,2.2上のフィルム領域を覆う。第1のレーザ源9.1は、第1のレーザ光線8.1を放射する。該レーザ光線8.1は、第1の変向ミラー6.1を介して3Dレーザスキャナ13へと導かれる。ガラスプレート2.1,2.2を有する吸引テーブル3と、コーティングされたポリマフィルム1と、レーザ加工装置9,8,7,6,5とは、1つのチャンバ10内に位置している。チャンバ10には保護ガスが充填されており、これにより、加工時の表面の酸化を阻止することができる。搬送ローラ4はチャンバ10の外側に位置している。チャンバ10の底部には、粒子吸引部12が取り付けられており、該粒子吸引部12を介して、加工時に発生する粒子が取り除かれる。
【0047】
図3は、ガラスプレート2.1,2.2が配置され、コーティングされたポリマフィルム1が緊張された吸引テーブル3の概略的な平面図を示している。コーティングされたポリマフィルム1は、下側の搬送ローラ4.2から繰り出されて、上側の搬送ローラ4.1に巻き上げられる。両搬送ローラ4.1,4.2の間に吸引テーブル3が位置しており、該吸引テーブル3の上側のプレート3.1にわたって、コーティングされたポリマフィルム1が緊張されている。吸引テーブル3の上側のプレート3.1は、規則的な間隔を置いた複数の孔を有している。これらの孔は吸引ノズル14として機能する。上側のプレート3.1の表面には、面一に第1のガラスプレート2.1および第2のガラスプレート2.2が嵌め込まれている。
【0048】
図4は、ガラスプレート2.1,2.2が配置された吸引テーブル3の組立ての概略図を示している。吸引テーブル3は、旋回アーム3.3を有しており、該旋回アーム3.3には下側のプレート3.2が組み付けられている。下側のプレート3.2には、上側のプレート3.1が取り付けられている。上側のプレート3.1には、第1のフライス加工凹部25.1と、第2のフライス加工凹部25.2が設けられている。該フライス加工凹部25.1,25.2の形状および大きさは、第1のガラスプレート2.1および第2のガラスプレート2.2に相当している。第1のガラスプレート2.1は面一に第1のフライス加工凹部25.1に装入され、第2のガラスプレート2.2は面一に第2のフライス加工凹部25.2に装入される。両ガラスプレート2.1,2.2は、フライス加工凹部25内で好ましくは接着剤で位置固定される。
【0049】
図5は、本発明に係る方法により製造された合わせガラスの概略図を示している。合わせガラスは、ベースガラス15を含んでおり、該ベースガラス15上には第1のラミネートフィルム16が、該ラミネートフィルム16の上にはコーティングされたポリマフィルム1が、該コーティングされたフィルム1上には第2のラミネートフィルム17が、該第2のラミネートフィルム17の上にはカバーガラス18が配置されている。コーティングされたポリマフィルム1は、ポリマフィルム1.1とコーティング1.2とを有している。この場合、コーティング1.2の一部が取り除かれており、コーティングを除去された領域1.3が形成されている。コーティングされたポリマフィルム1のコーティングを除去された領域1.3を含む合わせガラスの領域にはセンサ窓が生じる。
【0050】
図6は、センサ窓20を備えたウィンドガラスの概略図を示している。ウィンドガラスの上側の縁部には、無線式料金収受システム(Funkmaul)21のためのセンサ窓が必要である一方で、アンテナ22のためのセンサ窓はウィンドガラスの側方に、かつレーダー探知機23のためのセンサ窓はウィンドガラスの下縁部に設けられている。黒色塗装部(黒セラ)24を備えるウィンドガラス縁部は、車両へのウィンドガラスの組込み後には、大部分は見えなくなる。
【0051】
図7は、センサ窓を備えた合わせガラスの本発明に係る製造方法のフローチャートを示している。コーティングされたポリマフィルム1は、第1のステップにおいて、コーティング1.2を上方に向けられて、負圧を供給されて1つまたは複数のガラスプレート2.1,2.2が配置された吸引テーブル3にわたって緊張される。次いで、ガラスプレート2.1,2.2の領域において、コーティングされたポリマフィルム1に、コーティングを除去された領域1.3が形成される。コーティングを除去された領域1.3を備えたこのコーティングされたポリマフィルム1は、ウィンドガラスのフィルム複合材に装入される。このためには、ベースガラス15に第1のラミネートフィルム16が載置され、該第1のラミネートフィルム16に、コーティングを除去された領域1.3を備えたコーティングされたポリマフィルム1が載置される。コーティングを除去された領域1.3を備えたコーティングされたポリマフィルム1には、第2のラミネートフィルム17が載置され、このフィルム積層体はカバーガラス18により閉じられる。次いで、ガラスアセンブリはオートクレーブ処理され、これにより合わせガラスが製造される。
【0052】
以下に、本発明を、本発明に係る方法の実施例と比較例とにつき詳しく説明する。
【0053】
2つの一連の実験において、先行技術と、本願発明に係る方法とによるセンサ窓を備えた合わせガラスの製造の経済性が比較された。製造された合わせガラスの面積は、両一連の実験において1.2m
2である。両合わせガラスにおいて、合計100cm
2の面積を備えるそれぞれ2つのセンサ窓が形成された。両一連の実験において、約2.1mmの厚さを有するフロートガラスから成る同一のガラスが使用された。ベースガラス15と、カバーガラス18とは一緒に重力曲げ法により予め屈曲されている。第1のラミネートフィルム16および第2のラミネートフィルム17として、0.38mmの厚さを有するPVBフィルム(Solutia/Safllex(RK11))が使用された。ポリマフィルム1.1として、Southwall社の50μmの厚さの、銀コーティングを備えたPETフィルム(XIR75−G2)が使用された。コーティングされたポリマフィルム1のコーティング1.2が、2つの2Dレーザスキャナ5.1,5.2により532nmの波長と20Wの出力で取り除かれることによって、コーティングを除去された領域1.3が形成された。レーザ源9.1,9.2として、Nd:YAGレーザが使用された。実施例1または比較例2により加工された、コーティングを除去された領域1.3を備えたコーティングされたポリマフィルム1は、合わせガラスのフィルム複合材に挿入された。ベースガラス15には、第1のラミネートフィルム16が載置された。第1のラミネートフィルム16には、実施例1または比較例2により加工されたポリマフィルム1が配置された。コーティングされたポリマフィルム1には、第2のラミネートフィルム17が載置され、フィルム積層体は、カバーガラス18により閉じられた。このアセンブリは、プラスチック袋(COEX,BUERGOFOL GmbH社 D−93354、Siegenburg)内で、1mbarの圧力で、室温において5分間、予備排気された。このように製造された合わせガラス前駆体は、次いで2.5時間の間、80℃〜120℃で、8bar〜13barの圧力でオートクレーブ内で貼り合わせされた。
【0054】
a)実施例1:本発明に係る方法によるセンサ窓を備えた合わせガラスの製造
コーティングされたポリマフィルム1は、ロール形状で提供され、下側の搬送ローラ4.2から繰り出され、上側の搬送ローラ4.1に巻き上げられた。吸引テーブル3は、旋回アーム3.3を有し、該旋回アーム3.3には下側のプレート3.2が配置され、下側のプレート3.2には上側のプレート3.1が配置されている。上側のプレート3.1の材料は、アルミニウムである。上側のプレート3.1は、2つのフライス加工凹部25.1,25.2を有している。該フライス加工凹部25.1,25.2には、2.1mmの厚さを有する2つのガラスプレート2.1,2.2が面一に嵌め込まれて接着された。ガラスプレート2.1,2.2の位置は、後に形成されるセンサ窓19の位置に相当する。レーザ加工装置9,8,7,6,5、ガラスプレート2.1,2.2を備える吸引テーブル3およびコーティングされたポリマフィルム1は、保護ガスを有するチャンバ10の内部に位置しており、該チャンバ10には粒子吸引部12が接続された。コーティングされたポリマフィルム1は、搬送ローラ4を介して部分的に繰り出される。この場合、コーティングされたポリマフィルム1のコーティング1.2は、上方に向かって2Dレーザスキャナ5に向かう方向に配向されていた。搬送ローラ4は停止され、かつ負圧が吸引テーブル3に供給される。吸引テーブル3と、コーティングされたポリマフィルム1との間の空気は、この場合、上側のプレート3.1の吸引ノズル14を介して取り除かれ、コーティングされたポリマフォルム1は、緊張される。次いで、コーティングされたポリマフィルム1のコーティング1.2は、ガラスプレート2.1,2.2の領域において、2つの2Dレーザスキャナ5.1,5.2により除去される。この場合、吸引テーブル3の上側のプレート3.1は、ガラスプレート2.1,2.2により保護されている。これにより、吸引テーブル3の表面は損傷されない。これにより、金属粒子の剥離は阻止される。したがって、吸引テーブル3のクリーニングは、不要である。負圧は取り除かれ、搬送ローラ4を介して新たなフィルム区分が装入される。
【0055】
b)比較例2:先行技術による、センサ窓を備えた合わせガラスの製造
比較例2では、センサ窓を備えた合わせガラスが、実施例1におけるのと同様に形成されるが、以下の点で異なっている。すなわち、吸引テーブル3の上側のプレート3.1にガラスプレート2が嵌め込まれていない。これにより、吸引テーブル3の上側のプレート3.1は、コーティングされたポリマフィルム1のレーザ加工時に損傷され、このことはテーブル表面における金属粒子の剥離をもたらす。これらの金属粒子は、コーティングされたポリマフィルム1に付着し、該ポリマフィルムの損傷をもたらす。コーティングされたポリマフィルム1のコーティング1.2の損傷をできるだけ少なく維持するために、フィルム部分を100個加工した後に、吸引テーブルの手動のクリーニングが必要である。
【0056】
表1は、本発明に係る方法(実施例1)と、先行技術(比較例2)とによる、吸引テーブル3の上側のプレート3.1のクリーニングサイクルと、これにより生じた製造個数の上昇を示している。
【0057】
【0058】
先行技術では、吸引テーブル3の上側のプレート3.1が、それぞれ100個のフィルム部分の加工後に、レーザ加工時の上側のプレート3.1の損傷により発生した金属粒子をクリーニングされる。上側のプレート3.1の損傷は、本発明に係る方法では完全に排除することができる。
【0059】
これにより、本発明に係る方法によって、吸引テーブル3のクリーニングおよびクリーニングに伴う製造工程の停止時間は不要となる。したがって、本発明に係る方法によって、吸引テーブル3をクリーニングするための作業員が削減され得るだけなく、設備の生産性も高められる。先行技術により比較例2において製造された、時間単位あたりのガラスの個数を100%の規準とする。本発明に係る方法では、少なくとも50%の生産増加が見込まれる。本発明に係る方法は、さらに、かなり大きな経済的な利点を有している。なぜならば、設備の生産性が高められており、同時に人員削減によりコストが減じられ得るからである。
【符号の説明】
【0060】
1 コーティングされたポリマフィルム
1.1 ポリマフィルム
1.2 コーティング
1.3 コーティングを除去された領域
2 ガラスプレート
2.1 第1のガラスプレート
2.2 第2のガラスプレート
3 吸引テーブル
3.1 上側のプレート
3.2 下側のプレート
3.3 旋回アーム
4 搬送ローラ
4.1 上側の搬送ローラ
4.2 下側の搬送ローラ
5 2Dレーザスキャナ
5.1 第1の2Dレーザスキャナ
5.2 第2の2Dレーザスキャナ
6 変向ミラー
6.1 第1の変向ミラー
6.2 第2の変向ミラー
7 光線エクスパンダ
7.1 第1の光線エクスパンダ
7.2 第2の光線エクスパンダ
8 レーザ光線
8.1 第1のレーザ光線
8.2 第2のレーザ光線
9 レーザ源
9.1 第1のレーザ源
9.2 第2のレーザ源
10 チャンバ
12 粒子吸引器
13 3Dレーザスキャナ
14 吸引ノズル
15 ベースガラス
16 第1のラミネートフィルム
17 第2のラミネートフィルム
18 カバーガラス
19 センサ窓
20 センサ窓を備えたウィンドガラス
21 無線式料金収受システムのためのセンサ窓
22 アンテナのためのセンサ窓
23 レーダー探知機のためのセンサ窓
24 黒色塗装部を有するウィンドガラス縁部
25 フライス加工凹部
25.1 第1のフライス加工凹部
25.2 第2のフライス加工凹部
A 部分
【国際調査報告】