特表2015-518923(P2015-518923A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-518923めっき組成物を再生するための方法および再生設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-518923(P2015-518923A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】めっき組成物を再生するための方法および再生設備
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/16 20060101AFI20150609BHJP
【FI】
   C23C18/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-515482(P2015-515482)
(86)(22)【出願日】2013年5月30日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013061214
(87)【国際公開番号】WO2013182478
(87)【国際公開日】20131212
(31)【優先権主張番号】12170872.1
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】597075328
【氏名又は名称】アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】キリアン アルント
(72)【発明者】
【氏名】ネスリヒ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー ディーター
(72)【発明者】
【氏名】キューネ ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA03
4K022AA04
4K022AA13
4K022BA21
4K022DA01
4K022DB01
4K022DB22
4K022DB23
(57)【要約】
高速無電解めっきを実現しながら、この目的に使用されるめっき組成物を分解に対して安定させるために、前記めっき組成物の再生方法が提供される。前記めっき組成物は、少なくとも1種類の第1の金属を基板10上に堆積するのに好適であり、少なくとも1つのめっき装置100によって収容される。前記めっき組成物は、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、イオン形態の少なくとも1種類の第2の金属とを含有する。前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合には、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態に還元することができる。前記方法は、以下の方法ステップ:(a)作用電極205および対抗電極206を有する再生装置200を提供するステップであって、前記作用電極205は作用電極室202中に配置され、前記対抗電極206は対抗電極室203中に配置され;前記作用電極室202および前記対抗電極室203はイオン選択性膜204によって互いに分離され;前記対抗電極室203は対抗電極液体を収容するステップと;(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置100から除去するステップと;(c)前記除去されためっき組成物の少なくとも一部を前記再生装置200の前記作用電極205と接触させ、前記作用電極205をカソード分極させ、それによって、より高い酸化状態で提供された前記少なくとも1種類の第2の金属がより低い酸化状態まで還元され、前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で作用電極205上に堆積し、それによって前記除去された組成物の第1の部分が得られるステップと;その後(d)前記第1の部分を前記除去された組成物から除去し、次に前記除去された組成物の残りを、方法ステップ(c)において前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で上に堆積した前記作用電極205と接触させ、前記作用電極205をアノード分極させ、それによって、金属状態で前記作用電極205上に堆積する前記少なくとも1種類の第1の金属が、前記除去された組成物の前記残りの中に溶解して、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属を形成し、それによって前記除去された組成物の第2の部分が得られるステップと;その後(e)前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置100に戻すことで、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記めっき組成物が得られ、それによって前記めっき組成物は、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態に還元可能となる、ステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の第1の金属を基板(10)上に堆積するのに好適であり、少なくとも1つのめっき装置(100)によって収容されるめっき組成物の再生方法であって、前記めっき組成物が、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、イオン形態の少なくとも1種類の第2の金属とを含有し、前記少なくとも1種類の第2の金属を、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合には、前記少なくとも1種類の第1の金属を前記イオン形態から金属状態に還元することができるものであって、この再生方法は:
(a)作用電極(205)と対抗電極(206)を有する再生装置(200)を提供するステップであって、前記作用電極(205)は作用電極室(202)内に配置され、前記対抗電極(206)は対抗電極室(203)内に配置され、前記作用電極室(202)と前記対抗電極室(203)はイオン選択性膜(204)によって互いに分離されており、前記対抗電極室(203)には対抗電極液体が収容されている、提供ステップと;
(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置(100)から除去するステップと;
(c)前記除去されためっき組成物の少なくとも一部を前記再生装置(200)の前記作用電極(205)と接触させ、前記作用電極(205)をカソード分極させて、それにより前記より高い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属は前記より低い酸化状態に還元され、前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で前記作用電極(205)上に堆積し、それによって前記除去された組成物の第1の部分を得るステップと;その後、
(d)前記第1の部分を前記除去された組成物から除去し、次に、前記除去された組成物の残りを、方法ステップ(c)において金属状態で上に前記少なくとも1種類の第1の金属を堆積させた前記作用電極(205)と接触させて、前記作用電極(205)をアノード分極させて、それにより前記作用電極(205)上に金属状態で堆積する前記少なくとも1種類の第1の金属が、前記除去された組成物の前記残りの中に溶解して、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属を形成し、それによって前記除去された組成物の第2の部分を得るステップと;その後、
(e)前記第1と第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置(100)に戻すことによって、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供されている前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記めっき組成物が得られ、それにより前記めっき組成物が、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態に還元可能とするステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の第1の金属がスズである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の第2の金属がチタンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属が二価のスズであり、前記より低い酸化状態の前記少なくとも1種類の第2の金属が三価のチタンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記めっき組成物がピロリン酸イオンを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記めっき組成物が約6〜約9のpHを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記めっき組成物のpHを維持しながら、前記めっき組成物を前記少なくとも1つのめっき装置(100)から除去して、前記作用電極(205)まで移送させて接触させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種類の第1の金属を基板(10)上に堆積するのに好適なめっき組成物を再生するための再生設備(300)であって、前記再生設備(300)が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実施するのに特に適合しており、前記めっき組成物は、少なくとも1つのめっき装置(100)によって収容され、イオン形態の少なくとも1種類の第1の金属とイオン形態の少なくとも1種類の第2の金属とを含有し、前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合には、前記少なくとも1種類の第1の金属を前記イオン形態から金属状態に還元可能であり、前記再生設備(300)が:
(a)少なくとも1つの再生装置(200)であって:
i.作用電極室(202)と対抗電極室(203);
ii.前記作用電極室(202)内に配置される作用電極(205)、と前記対抗電極室(203)内に配置される対抗電極(206);
iii.前記作用電極室(202)と前記対抗電極室(203)を互いに分離するイオン選択性膜(204);
iv.前記作用電極(205)と前記対抗電極(206)に通電するための電流源、
を有する少なくとも1つの再生装置(200)と;
(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置(100)から除去するための手段(250、260、257、267)、および前記除去されためっき組成物を前記作用電極(205)と接触させるための手段(280、285、286)と;
(c)前記除去された組成物の第1の部分を前記再生装置(200)内でカソード処理した後に前記除去された組成物の前記第1の部分を収容するのに適合した少なくとも1つの第1の貯蔵タンク(230)と;
(d)前記除去された組成物の第2の部分を前記再生装置(200)内でアノード処理した後に前記除去された組成物の前記第2の部分を収容するのに適合した少なくとも1つの第2の貯蔵タンク(240)と;
(e)前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置(100)に戻すための手段(250、260、235、245)と、を備え、
前記少なくとも1つの第1の貯蔵タンク(230)および前記少なくとも1つの第2の貯蔵タンク(240)は、前記少なくとも1つの再生装置(200)と流体接続している、再生設備。
【請求項9】
前記少なくとも1つの作用電極(205)が、前記金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属でできている、請求項8に記載の設備(300)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの作用電極(205)が、前記金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属の破片でできており、前記金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属の前記破片が、不活性材料でできた容器(207)中に収容される、請求項8または9に記載の設備(300)。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の第1の金属がスズである、請求項10に記載の設備。
【請求項12】
前記イオン選択性膜(204)がカチオン選択性膜である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類の第1の金属を基板上に堆積するのに好適なめっき組成物の再生方法、および前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に堆積するのに好適な前記組成物を再生するための再生設備に関する。このような方法および設備は、金属の無電解めっき、すなわち、自己触媒めっきによって、ニッケル、コバルト、またはスズの膜などの金属膜を、プラスチック、セラミック、ガラス、および/または金属の部品などの基板上に形成するのに好適な組成物の再生に使用される。
【背景技術】
【0002】
金属堆積は数十年にわたってよく知られており、最初に管材料、フィッティング、バルブなどの金属部品のめっきに使用されている。これらの金属堆積物は外部電流源を使用し、部品と、めっき組成物に接触する対抗電極とに電流を供給する電着を使用して形成された。
【0003】
プラスチックおよび他の非導電性基板の上に金属をめっきするため、ならびに個別に電気的に接触できない絶縁された金属領域を上に有する部品上に金属をめっきするためには、無電解めっきが開発された。この場合、めっきされる金属のイオンと、めっきされる金属を還元可能な還元剤とを含有するめっき組成物が使用される。このような無電解めっき組成物は、広範に研究されており、産業で使用されている。銅のめっきに好適な無電解めっき組成物は、銅塩および銅イオンの錯化剤に加えて、ホルムアルデヒドを還元剤として含有する。これらの溶液は強いアルカリ性である。ニッケルのめっきに好適な無電解めっき組成物は、ニッケル塩およびニッケルイオンの錯化剤に加えて、次亜リン酸塩またはその酸、ジメチルアミンボラン、ホウ水素化物、またはヒドラジニウム塩を還元剤として含有する。次亜リン酸塩またはその酸が還元剤として使用される場合、堆積物の12at%ほどにもなりうるリンがニッケル堆積物に混入する。ジメチルアミンボランまたはホウ水素化物塩が還元剤として使用される場合、堆積物の5at%ほどにもなりうるホウ素がニッケル堆積物に混入する。ヒドラジニウム塩が還元剤として使用される場合、ニッケル堆積物は、少量の窒素を最終的には含有する純ニッケルから本質的に形成することができる(非特許文献1)。
【0004】
実質的に不純物を全く含まないニッケルの無電解めっきの場合、硫酸ニッケルに加えて、塩化チタン(TiCl)を還元剤として含有するニッケルめっき組成物が提案されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献1)。
【0005】
非特許文献2には、無電解ニッケルめっき組成物が、硫酸ニッケル、三価の塩化チタン、クエン酸三ナトリウム、ニトリロ三酢酸、およびアミノ酸を含有することが報告されている。この組成物のpHは8〜9であり、水酸化アンモニウムを用いて調整される。浴温度は50℃である。堆積速度は、約0.1〜約0.2μm/hの範囲内であると報告されている。ウレタンフォームを使用したニッケル堆積の実現可能性を示す実験が行われている。これによって、電池の集電体として使用できる多孔質ニッケル(Celmet)が得られた。センシタイザー−アクチベーター法によって触媒として吸収されるPdをフォームと接触させることによって、無電解ニッケル堆積の前にウレタンフォームの前処理が行われた。
【0006】
非特許文献1には、160nmの小ささの線および間隔を有するシリコン半導体デバイス上の微細なパターン上へのニッケル堆積の実施が報告されている。このめっき組成物は非特許文献2の組成物と類似している。
【0007】
非特許文献3には、三価のチタンイオンの濃度が制御されない場合に、めっき時間の増加とともに堆積速度が低下することがさらに報告されている。このような低下は、ニッケル堆積による消費に加えて、溶液中の溶存酸素による自然酸化のために、三価チタンイオン濃度が時間とともに減少することが原因である。三価のチタンイオンの濃度を一定に維持することによって、堆積速度を一定にするために、堆積溶液の電解再生が行われた。このような再生のための設備は、陰極液としてのめっき浴と、陽極液としての硫酸ナトリウム溶液と、それらの間のイオン交換膜を含む液体接続とを含むことが示されている。
【0008】
特許文献1では、スズ、コバルト、および鉛を堆積することもでき、三価チタンとは別に、コバルト、スズ、バナジウム、鉄、およびクロムも還元剤として使用できることにさらに言及されている。この文献には、調製タンクのイオン交換膜がアニオン交換膜であることが明記されている。さらに、特許文献1には、堆積される金属と同じ金属でできていてよいアノードとしての電極の使用を含むめっき浴の調製のための活性化方法の使用が報告されている。アノード室中のアノード溶解反応によって金属イオンをめっき浴に供給することができ、カソード室中のカソード反応によってめっき浴の活性化が同時におこるので、浴の組成物を容易に再生することができる。カソードおよびアノードを含み、カソードは白金で被覆されたチタンでできており、アノードはニッケルでできている第1の設備が示されている。カソード上のニッケルの堆積を抑制するために、カソードの電流密度がニッケル電着の限界電流密度より高く設定されるように、その領域が低く維持される。特許文献1には、酸化過程で活性化される炭素電極の使用も報告されており、それによって活性化ステップ中のこの電極の堆積金属の堆積がより確実に防止される。カソードを有するカソード室と、アノードを有するアノード室とを含み、これら2つの室がアニオン交換膜によって互いに分離される第2の設備も示されている。カソード室はめっきタンクに接続され、アノード室はアノード液体タンクに接続される。アノード液体は希硫酸である。この場合、カソードおよびアノードの両方が炭素フェルトでできている。代わりにカソードとしてニッケル箔を使用すると、はるかに低い効率が実現された。さらに、特許文献1には、浴の次の活性化プロセスにおいてこの電極が使用されると、カソード上に堆積されたニッケルをめっき浴中に溶解させることができると報告されている。
【0009】
特許文献1のめっき浴のめっき速度は非常に遅いことが分かった。たとえば、2時間以内に、Pd活性化ABS樹脂板上に0.6μmのニッケルが堆積される。このようなめっき速度は、プリント回路基板、IC基板などの製造などのほとんどの工業目的には遅すぎる。さらに、堆積される金属で形成されるアノードを使用するため、めっき浴中の金属濃度が絶え間なく増加することも分かった。したがって、定常状態条件は容易に実現できない。さらに、めっき浴が高速めっきに調整される場合に、再生セル中で堆積される金属のプレートアウトが容易に生じることも分かった。アノード室とカソード室とを分離するイオン選択性膜が容易に破壊されうるので、この挙動は有害となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,338,787 B1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S. Yagi,K. Murase,S. Tsukimoto,T. Hirota,Y. Awakura:“Electroless Nickel Plating onto Minute Patterns of Copper Using Ti(IV)/Ti(III) Redox Couple”,J. Electrochem. Soc., 152(9),C588−C592(2005)
【非特許文献2】M. Majima,S. Inazawa,K. Koyama,Y. Tani,S. Nakayama,S.Nakao,D.-H. Kim,K. Obata:“Development of Titanium Redox Electroless Plating Method”,Sei Technical Review,54,67−70(2002)
【非特許文献3】S. Nakao,D.-H. Kim,K. Obata,S. Inazawa,M. Majima,K. Koyama,Y. Tani:“Electroless pure nickel plating process with continuous electrolytic regeneration system”,Surface and Coatings Technology,169−170,132−134(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的の1つは、上記問題、すなわち、めっき組成物中のめっき速度が非常に遅いこと、前記めっき組成物中の少なくとも1種類の第1の金属の濃度が一定レベルに容易に設定できないこと、および前記めっき組成物からの少なくとも1種類の第1の金属のプレートアウトが起こること、が発生することなく、少なくとも1種類の第1の金属を基板上に堆積するのに好適なめっき組成物を再生するための方法および設備を提供することである。したがって、本発明の目的の1つは、十分速いめっき速度で少なくとも1種類の第1の金属を基板上に堆積するのに好適であり、同時に、めっき組成物中の少なくとも1種類の第1の金属の濃度を一定レベルに容易に調整し、プレートアウトした第1の金属から再生セルを保護ために、分解に対する十分な安定性をめっき組成物に付与する機会が得られる、前記めっき組成物を再生するための方法および設備を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的の1つは、本明細書で前述のように設定される再生方法および再生設備を含む、前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に連続的に堆積するための方法および設備を提供することである。
【0014】
以上の目的およびさらなる目的は、少なくとも1種類の第1の金属を基板上に堆積するのに好適なめっき組成物を再生するための方法によって、および前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に堆積するのに好適な前記めっき組成物を再生するための設備によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の前記めっき組成物を再生するためのこの方法において、めっき組成物は、少なくとも1つのめっき装置に収容されている。これは、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、イオン形態の少なくとも1種類の第2の金属とを含有し、前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態へ還元することが可能である。前記方法は以下の方法ステップを含む:
(a)再生装置を提供する。この装置は作用電極と対抗電極を有する。前記作用電極は作用電極室内に配置され、前記対抗電極は対抗電極室内に配置される。前記作用電極室と前記対抗電極室は、イオン選択性膜によって互いに分離している。前記対抗電極室は対抗電極液体を収容している。
(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのめっき装置から除去する。
(c)前記除去された組成物の少なくとも一部を、前記再生装置の前記作用電極と接触させる。前記除去された組成物の前記一部、または前記除去された組成物と、前記作用電極とを接触する間、前記作用電極をカソード分極させ、それにより、より高い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属がより低い酸化状態に還元され、前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で作用電極上に堆積する。この接触および電気分解の処理によって、前記除去された組成物の第1の部分が得られる。
(d)次に前記第1の部分を前記除去された組成物から除去し、次に前記除去された組成物の残り(第1の部分を有さない)を、方法ステップ(c)において金属状態で上に堆積した前記少なくとも1種類の第1の金属を有する前記作用電極と接触させる。前記除去された組成物の前記残りの前記接触中、前記作用電極をアノード分極させ、それにより前記作用電極上に金属状態で堆積する前記少なくとも1種類の第1の金属が、前記除去された組成物の前記残りの中に溶解して、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属を形成する。除去された組成物の残りのこの接触と電気分解の処理によって、前記除去された組成物の第2の部分が得られる。
(e)その後、前記第1と第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置に戻すことで、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供されている前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記めっき組成物が得られ、それにより前記めっき組成物は、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態に還元可能とする。第1と第2の部分は、好ましくは前記少なくとも1つのめっき装置に別々に戻され、すなわち、それらが前記少なくとも1つのめっき装置中に入るまでに、それらを互いに接触させない。
【0016】
本発明による前記めっき組成物を再生するための上記再生設備は、本発明の再生方法の実施に特に適合している。前記再生設備は:
(a)少なくとも1つの再生装置であって、それぞれが:
i.作用電極室および対抗電極室;
ii.前記作用電極室中に配置される作用電極、および前記対抗電極室中に配置される対抗電極;
iii.前記作用電極室および前記対抗電極室を互いに分離するイオン選択性膜;
iv.前記作用電極および前記対抗電極に通電するための電流源
を含む少なくとも1つの再生装置と;
(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置から除去するための手段、および前記除去されためっき組成物を前記作用電極と接触させるための手段と;
(c)前記除去された組成物の第1の部分が前記再生装置によってカソード処理された後に、前記除去された組成物の前記第1の部分を収容するのに適合した少なくとも1つの第1の貯蔵タンクと;
(d)前記除去された組成物の第2の部分が前記再生装置によってアノード処理された後に、前記除去された組成物の前記第2の部分を収容するのに適合した少なくとも1つの第2の貯蔵タンクと;および
(e)前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置に戻すための手段とを含み;前記戻すための手段は、好ましくは、前記第1および第2の部分を別々に前記少なくとも1つのめっき装置に戻すように設計されている。
さらに、前記少なくとも1つの第1の貯蔵タンクおよび前記少なくとも1つの第2の貯蔵タンクは、前記少なくとも1種類の再生装置と流体接続している。
【0017】
以上の目的およびさらなる目的は、前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に連続的に堆積する方法によって、および前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に連続的に堆積するための設備によってさらに実現される。
【0018】
本発明の前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に連続的に堆積するこのさらなる方法は、以下の方法ステップを含む:
(a)前記少なくとも1つのめっき装置によって収容される前記めっき組成物を提供する。前記組成物は、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、イオン形態の前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する。前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合、前記少なくとも1種類の第1の金属のイオン形態から金属状態への還元が可能である。
(b)より低い酸化状態にある前記少なくとも1種類の第2の金属を、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と反応させ、それによって前記少なくとも1種類の第1の金属は金属状態で前記基板上に堆積し、前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態に酸化する。
(c)作用電極および対抗電極を有する再生装置を提供する。前記作用電極は作用電極室中に配置され、前記対抗電極は対抗電極室中に配置される。前記作用電極室および前記対抗電極室は、イオン選択性膜によって互いに分離される。前記対抗電極室は対抗電極液体を収容する。
(d)前記少なくとも1種類の第1の金属が前記基板上に堆積された後、前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置から除去する。
(e)前記除去された組成物の少なくとも一部を、前記再生装置の前記作用電極と接触させる。前記除去された組成物の前記一部、または前記除去された組成物と、前記作用電極との接触の間、前記作用電極をカソード分極させ、それによって、より高い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属がより低い酸化状態に還元され、前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で作用電極上に堆積する。この接触および電気分解処理によって、前記除去された組成物の第1の部分が得られる。
(f)次に、前記第1の部分を前記除去された組成物から除去し、次に前記除去された組成物の残りを、方法ステップ(e)において金属状態で上に堆積した前記少なくとも1種類の第1の金属を有する前記作用電極と接触させる。前記除去された組成物の前記残りの前記接触中、前記作用電極をアノード分極させ、それによって前記作用電極上に金属状態で堆積する前記少なくとも1種類の第1の金属が、前記除去された組成物の前記残りの中に溶解して、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属が形成される。除去された組成物の残りのこの接触および電気分解処理によって、前記除去された組成物の第2の部分が得られる。
(g)その後、前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置に戻すことで、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記めっき組成物が得られ、それによって前記めっき組成物は、前記少なくとも1種類の第1の金属をイオン形態から金属状態に還元可能となる。第1および第2の部分は、好ましくは前記少なくとも1つのめっき装置に別々に戻され、すなわち、それらが前記少なくとも1つのめっき装置中に入るまでに、それらを互いに接触させない。
【0019】
本発明による前記少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上に連続的に堆積するための上記設備は、本発明の上記めっき方法の実施に特に適合している。前記設備は:
(A)イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、イオン形態の前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記組成物を収容するための前記少なくとも1つのめっき装置であって、前記少なくとも1種類の第2の金属は、より高い酸化状態およびより低い酸化状態で提供することができ、より低い酸化状態で提供される場合、前記少なくとも1種類の第1の金属のイオン形態から金属状態への還元が可能である、前記少なくとも1つのめっき装置と;
(B)再生設備であって:
(a)少なくとも1つの前記再生装置であって、それぞれが:
i.前記作用電極室および前記対抗電極室;
ii.前記作用電極室中に配置される作用電極、および前記対抗電極室中に配置される対抗電極;
iii.前記作用電極室および前記対抗電極室を互いに分離する前記イオン選択性膜;
iv.前記対抗電極室に収容される前記対抗電極液体;
v.前記作用電極および前記対抗電極に通電するための前記電流源
を含む少なくとも1つの再生装置と;
(b)前記めっき組成物の少なくとも一部を前記少なくとも1つのめっき装置から除去するための前記手段、および前記除去されためっき組成物を前記作用電極と接触させるための手段と;
(c)前記除去された組成物の第1の部分が前記再生装置によってカソード処理された後に、前記除去された組成物の前記第1の部分を収容するのに適合した前記少なくとも1つの第1の貯蔵タンクと;
(d)前記除去された組成物の第2の部分が前記再生装置によってアノード処理された後に、前記除去された組成物の前記第2の部分を収容するのに適合した前記少なくとも1つの第2の貯蔵タンクと;および
(e)前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置に戻すための前記手段とを含む再生設備と
を含む。
【0020】
本発明のこれらの方法および設備は、従来技術の方法および設備の欠陥を克服するために設計されている。
【0021】
以上から、少なくとも1種類の第1の金属が少なくとも1つの再生装置の作用電極上に最初に堆積し、同時にこの作用電極のカソード分極が起こることが明らかである。この(第1の)プロセスステップ中、より高い酸化状態にある少なくとも1種類の第2の金属のより低い酸化状態への変換も起こる。したがって少なくとも1種類の第1の金属がめっき組成物から欠乏するので、後に作用電極の極性を反転させることによって、それに補給される。この(第2の)回復ステップ中、めっき組成物中に依然として含有される限り、より低い酸化状態にある少なくとも1種類の第2の金属は、アノード作用電極の酸化作用のためにさらに欠乏する。したがって、米国特許第6,338,787B1号明細書に記載の方法とは逆に、本発明は、作用電極においてカソード処理されるめっき組成物の第1の部分と、この同じ作用電極においてアノード処理されるめき組成物の第2の部分との使用を提供する。したがって、除去されためっき組成物の残りが、アノードとして分極する作用電極において電気分解して第2の部分が得られるときに、第1の部分が得られる再生方法のプロセスステップ(c)において作用電極上に堆積された少なくとも1種類の第1の金属は、この方法の次のプロセスステップ(d)においてめっき組成物に戻る。次に、めっき組成物のこれら2つの部分は少なくとも1つのめっき装置に戻されて、少なくとも1種類の第1の金属を基板上にめっき可能となるめっき組成物が形成される。これら2つのプロセスステップのために、少なくとも1種類の第1の金属は、めっき組成物の第1の部分において欠乏し、より低い酸化状態の少なくとも1種類の第2の金属は、この第1の部分において多くなり、より低い酸化状態の少なくとも1種類の第2の金属は、めっき組成物の第2の部分において欠乏し、少なくとも1種類の第1の金属は、この第2の部分において多くなるため、これら2つの部分はいずれも、少なくとも1種類の第1の金属がプレートアウトする危険性がない。したがって、本発明の方法は、プロセスの分解に対する高い安定性が得られる。これは、2つの部分はいずれもめっき組成物の使用条件には近くなく、むしろ離れていることによる。さらに、米国特許第6,338,787 B1号明細書で行われるような少なくとも1種類の第1の金属の作用電極上への堆積を抑制しようとする必要はない。実際、除去された組成物の降りの処理中の、より低い酸化状態の少なくとも1種類の第2の金属の酸化は、作用電極がアノードとして機能するときには、あまり顕著でないことが分かった。
【0022】
米国特許第6,338,787 B1号明細書には、活性化の次のステップにおいてアノードとして電極を使用することによって、堆積金属イオンのめっき浴への供給を実現できることが単に報告されている。したがって、この従来技術の方法において電極上にコーティングされた堆積金属(米国特許第6,338,787B1号明細書における第2の金属)は、めっき浴中に即座に回収されず、後の時点で回収され、それによってプロセスは制御不能のままとなる。さらに、米国特許第6,338,787B1号明細書には、その同じ堆積金属でできたアノードを使用することによって、堆積金属をめっき浴中に溶解させることもできると報告されている。しかし、この対策によって、米国特許第6,338,787 B1号明細書の活性化プロセス中、カソード電極における還元性金属(米国特許第6,338,787 B1号明細書における第1の金属)の還元とは別に、アノード電極における堆積金属のアノード溶解によって、制御されない方法でさらなる堆積金属イオンがめっき浴に加えられるため、さらにプロセスが非常に不安定になる。さらに、米国特許第6,338,787 B1号明細書には、活性化ステップにおけるカソード反応での金属堆積の抑制は、好ましくはカソードの電流密度を限界電流密度よりも高く調節することによって、または酸化活性炭電極を使用することによって行われると報告されている。このさらなる実施によって、還元性金属イオンの濃度レベルが非常に高くなり、堆積金属のカソード上への堆積がごくわずかとなるために堆積金属イオンの濃度も高くなるという状況の活性化設備が得られる。これらの条件下で、活性化設備においてめっき浴の自発的分解も生じ、それによってそれが破壊されうる。
【0023】
以上の理由から、米国特許第6,338,787 B1号明細書のめっき浴は、自発的分解を回避するために比較的低濃度で成分が構成される必要がある。次にこれによって、低いめっき速度が不可避となり、そのため非経済的となる。
【0024】
対照的に本発明は、少なくとも1種類の第1の金属および少なくとも1種類の第2の金属の濃度を比較的高いレベルで調節することができ、そのため高いめっき速度が達成される。これは、再生装置中に含まれる組成物が2つの独立した部分に分割されることで、分解に対するプロセスの非常に良好な安定性を得ることができるためである。これは組成物を、より低い酸化状態の少なくとも1種類の第2の金属に富む第1の部分と、イオン形態の少なくとも1種類の第1の金属に富む第2の部分とに分離することによって実現される。さらに、第1の部分は、少なくとも1種類の第1の金属が少なく、第2の部分は、より低い酸化状態の少なくとも1種類の第2の金属が少ない。したがって、再生装置中では、条件中に再生装置が運転(堆積)条件に近い液体を含有するような条件は、決して設定されない。第1および第2の部分を組み合わせた後にのみ、そのような条件(少なくとも1種類の第1および第2の金属が高い含有量で提供されることを含む)が再び実現される。この条件は、再生装置の外側、すなわち少なくとも1つのめっき装置の内側で実現される。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態において、めっき組成物第1および第2の部分は適切な比率で混合される。これによって、分解に対する良好な安定性を有し、一定で高いめっき速度が得られる再生めっき組成物が得られる。この比率(第2の部分の体積に対する第1の部分の体積)1.0(50%の第1の部分および50%の第2の部分)以上、または1.0未満であってよく、たとえば最大80%の第1の部分および最小20%の第2の部分、あるいは最大80%の第2の部分および最小20%の第1の部分であってよい。
【0026】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、作用電極における除去された組成物のカソード処理および引き続くアノード処理は、第1の電気分解方法ステップにおいて、除去されためっき組成物の全量を処理し、その一部を除去して第1の部分を得て、その後、第2の電気分解方法ステップにおいて残り、すなわち前にカソード処理された部分を処理して、第2の部分を得ることによる第1の変法で行うことができる。この実施形態の第2の変法では、除去された組成物の作用電極における処理は、第1の電気分解方法ステップにおいて、除去された組成物の一部のみを処理して第1の部分を得て、その後、第2の電気分解方法ステップにおいて、第1の部分とは異なる除去された組成物の第2の部分を処理して第2の部分を得ることによって行うことができる。当然ながら、除去された組成物が第1および第2の電気分解方法ステップにおいて処理されるそれぞれの量を変化させることによってさらなる変法が存在しうる。
【0027】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、第1の変法において、1つのバッチにおいてその一定体積を除去し、この体積を、本明細書において前述したような再生方法により処理することによって、めっき組成物を少なくとも1つのめっき装置から除去することができる。この実施形態の別の変法においては、2つのバッチを同時にまたは連続して除去し、これら2つのバッチを処理して、それぞれ第1の部分および第2の部分を得るか、あるいは、これら2つのバッチを1つにまとめ、1つにまとめた2つのバッチを、本明細書において前述したような再生方法により処理することによって、めっき組成物を少なくとも1つのめっき装置から除去することができる。
【0028】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、除去された組成物の体積は、少なくとも1つのめっき装置に戻される第1および第2の部分の体積に等しい。これによって、プロセスのより容易な制御が可能となるが、その理由は、めっき方法中のめっき組成物の温度が室温よりも高いと、めっき組成物の溶媒の蒸発が重要となり、蒸発した溶媒を少なくとも1つのめっき装置に補給する必要が生じるからである。蒸発した溶媒の量は、めっき組成物に加えられるおよび除去されるバッチの体積を制御することで、容易に求めることができる。
【0029】
少なくとも1つのめっき装置からのめっき組成物の除去は、たとえば、第1および第2の部分を戻すことと関連させることができる。このために2つのポンプを設けることができ、1つの第1のポンプは、再生された第1の部分を少なくとも1つのめっき装置に戻し、さらに同時に、この戻される体積に対して一定およびあらかじめ決定された比率で、再生設備に供給されるめっき組成物を少なくとも1つのめっき装置から除去し、1つの第2のポンプは、再生された第2の部分を少なくとも1つのめっき装置に戻し、さらに同時に、この戻される体積に対して一定およびあらかじめ決定された比率で、再生設備に供給されるめっき組成物を少なくとも1つのめっき装置から除去する。この比率(第2の部分の体積に対する第1の部分の体積)は好ましくは1.0に設定することができ、それによってめっき組成物の除去および返還の間に、少なくとも1つのめっき装置において体積変化が起こらない。
【0030】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、めっき組成物のpHは基本的に維持され、すなわちめっき作業に好適なpHとは異なるpHへのさらなる調整は行われず、その間に前記めっき組成物は、前記少なくとも1つのめっき装置からの除去、あるいは前記作用電極への移動または前記作用電極との接触が行われる。より具体的には、めっき作業に適した値とは別の値にpHを変化させるために、再生装置中での処理の前に、除去されためっき組成物への酸性または塩基性(アルカリ性)物質の添加は不都合が生じることが分かっており、その理由は、これによってそれぞれ酸性またはアルカリ性の物質が増えるからである。再生前のプロセス作業中に酸性またはアルカリ性の物質を添加しない場合でも、イオン選択性膜を含む本発明の再生設定では、再生装置中の電荷移動手段として膜を通したイオン拡散が必要となる。次にこれによって、再生セルのそれぞれの室中のイオンの濃縮または欠乏が起こる。これによって、処理されるめっき組成物のpH変化が生じることがあり、次にこれは、無電解めっき作業に好適な値までpHを戻すために、酸性またはアルカリ性の物質を加えることによって補償する必要がある。めっき組成物が約2〜2.5時間使用されうることを考慮すると、24時間の長さのめっき作業では既に10〜12の再生サイクルが必要となる。したがって、pH調整のための化学物質/物質をそれぞれ添加することによって、めっき組成物中のこれらの物質の濃度が増加し、それによってめっき条件がますます望ましくないものになる。したがって、めっき組成物中にさらなる物質の蓄積を最小限にすることが重要である。
【0031】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、めっき組成物を準備するときに、最初に前駆体組成物が形成される。このため、めっき方法は以下の方法ステップをさらに含む:
−前記少なくとも1種類の第1の金属と、より高い酸化状態およびより低い酸化状態の前記少なくとも1種類の第2の金属とを、前記少なくとも1種類の第1の金属の堆積が前記基板上で起こらないような濃度で含有する前記前駆体組成物を提供するステップであって;前記前駆体組成物が、より好ましくは、より低い酸化状態の第2の金属、たとえば三価のチタンを全く含有しないステップ;
− 前記前駆体組成物の少なくとも一部を前記作用電極と接触させ、前記作用電極をカソード分極させ、それによってより高い酸化状態で提供された前記少なくとも1種類の第2の金属がより低い酸化状態まで還元され、および前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で前記作用電極上に堆積し、それによって、前記前駆体組成物の第1の部分を得るステップ;
− 前記前駆体組成物の前記第1の部分を除去した後、その残りを、前の方法ステップで前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で上に堆積された前記作用電極と接触させ、前記作用電極をアノード分極させ、それによって、前記作用電極上に金属状態で堆積した前記少なくとも1種類の第1の金属を、前記前駆体組成物の前記残りの中に溶解させて、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属を形成し、それによって前記除去された組成物の第2の部分を得るステップ;その後
− 前記第1および第2の部分を前記少なくとも1つのめっき装置に移動させることで、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記めっき組成物を得て、それによって、前記めっき組成物は、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属を金属状態に還元可能となるステップ。
【0032】
この方法では、少なくとも1種類の第2の金属がより低い酸化状態からより高い酸化状態まで酸化される問題が生じることなく、前駆体溶液の製造、取り扱い、および保管を容易に行うことができるという利点が得られる。
【0033】
より具体的には、前記少なくとも1種類の第1の金属としてスズを使用してこの後者のプロセス順序が使用され、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属として二価のスズが使用される。さらに、前記少なくとも1種類の第2の金属としてチタンを使用することができ、三価のチタンが、より低い酸化状態の前記少なくとも1種類の第2の金属となり、および四価のチタンが、より高い酸化状態の前記少なくとも1種類の第2の金属となる。
【0034】
たとえば、四価のチタンを含有し三価のチタンは含有しない前駆体組成物は、三価のチタンおよび/または二価のスズを含有するそれぞれの前駆体組成物よりもはるかに安定である。それぞれスズおよびチタン以外の空気によって酸化しやすいあらゆる他の第1および第2の金属がより低い酸化状態で使用される場合も同じことが言える。さらに、Ti(IV)錯体などの四価のチタンのみと場合により一部の添加剤とを含有する組成物は、四価のチタンは低毒性であるため環境に優しい。
【0035】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、めっき方法は、最初に、イオン形態であり、たとえばより高い酸化状態である少なくとも1種類の第2の金属を含有し、第1の金属を含有しない前駆体組成物を提供するステップと、前記少なくとも1種類の第1の金属が金属状態で上に堆積された前記作用電極を前記前駆体組成物とさらに接触させるステップと、前記作用電極をアノード分極させるステップとをさらに含み、それによって、前記作用電極上に金属状態で堆積する前記少なくとも1種類の第1の金属が前記前駆体組成物中に溶解して、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属と、より低い酸化状態で提供される前記少なくとも1種類の第2の金属とを含有する前記組成物が得られ、それによって、前記組成物は、イオン形態にある前記少なくとも1種類の第1の金属を金属状態に還元可能となる。より好ましくは、作用電極が少なくとも1種類の第1の金属でできている場合、この好ましい変法は、少なくとも1種類の第1の金属を前駆体組成物中に補給するために好都合に使用することができる。この後者の好ましい実施形態では、このような場合少なくとも1種類の第1の金属の量は限定されないので、必要なだけの少なくとも1種類の第1の金属を前駆体組成物中に溶解させることが可能となる。
【0036】
より具体的には、前駆体組成物は、この好ましい実施形態においては、四価のチタンを含有し、三価のチタンおよび二価のスズを含有しないことができ、あるいは、四価および三価のチタンを含有し、二価のスズを含有しないことができる。これらの場合、作用電極のアノード分極によって、スズは作用電極から前駆体組成物の(第2の)部分中に溶解する。本発明によると、次にこの(第2の)部分は、作用電極でカソード処理された後の前駆体組成物のもう1つの(第1の)部分と1つにまとめられる。四価のチタンを含有し三価のチタンおよび二価のスズを含有しない前駆体組成物は、後者の化学種のいずれか1つを含有する組成物よりもはるかに安定である。この理由は、保管または輸送されるときの空気酸化のために、三価のチタンだけでなく、二価のスズも容易に酸化されるからである。空気によって酸化しやすいあらゆる他の第1および第2の金属がより低い酸化状態で使用される場合にも、同じことが言える。
【0037】
本発明は、第1の再生ステップにおいて前駆体組成物の一部のみを使用し、第2の再生ステップにおいて前駆体組成物の残りを使用して、こうして形成されためっき組成物の第1および第2の部分を形成し、これら2つの部分を新しいおよび再生されためっき組成物として使用することを含む。この手順によって、めっき速度、金属含有量の不変性、および最も重要な分解に対するめっき組成物の安定性に関して十分な結果が得られる。
【0038】
本発明とは逆に、前駆体組成物全体を、最初に作用電極においてカソード的に電気分解し、次にこの電気分解された組成物をこの同じ作用電極においてアノード的に電気分解すると、得られる組成物が不安定となることが分かり、それによって使用される容器の壁に望ましくないスズの堆積が生じ、および/または浴体積中にスズ粒子が形成される。この場合、条件に依存して、前駆体組成物中に含まれる80%〜100%の二価のスズが、第1の再生ステップにおける前駆体組成物から、カソード分極する作用電極上に堆積した。この場合、カソードとしての作用電極を組成物と接触させた後、作用電極の極性を反転させると、作用電極上に堆積したスズが組成物中に再溶解し、同時に、条件に依存して、三価のチタンの十分に少ない部分のみがこの第2の再生ステップにおいて再酸化される。したがって、非常に高いめっき速度を有し、非常に不安定である組成物が得られる。再生装置中の比較的高濃度の三価のチタンによって、この不安定性が生じると考えられ、それによって組成物が非常に活性となり、第2の再生ステップ中、スズが作用電極から再溶解するときにスズコロイドが形成される。これらのコロイド粒子は、その後、作業下の浴中でのスズ粒子のさらなる成長の種として機能し、それによって不安定性が観察される。スズコロイドの除去を試みるためにフィルターを使用しても、浴に必要な安定性は得られない。このような場合、スズの微粒子がフィルター中に蓄積するので、再生ステップ中のスズコロイドの形成によって浴が不安定になるという考えが裏付けられる。
【0039】
本発明によると、めっき組成物は、必要に応じて再生することができる、すなわち、たとえばめっき速度の低下および/または組成物の分解に対する不安定性が検出されてすぐに再生することができる。別の作業形態の1つでは、再生が永続的、すなわち全く中断せずに行われ、あるいは断続的に行うことができ、すなわち、再生が行われない規定の中断時間間隔の後で間隔を開けて行うことができる。
【0040】
この後者の場合、めっき組成物はそれに応じて再生されて、三価のチタンに富む第1の部分と、二価のスズに富む第2の部分とが得られる。これによって、高いめっき速度が可能となる高活性により近い操作位置でめっき組成物を操作することができる。
【0041】
少なくとも1種類の第1の金属としてのスズ、および少なくとも1種類の第2の金属としてのチタンとは別に、少なくとも1種類の第1の金属としてのコバルト、ニッケル、鉛、銀など、ならびに少なくとも1種類の第2の金属としてのセリウム、バナジウム、コバルト、鉄、マンガン、およびクロムなどの別の金属を使用することができる。次に、少なくとも1種類の第1の金属のそれぞれのイオン形態は、それに応じて二価のコバルト、二価のニッケル、二価の鉛、および一価の銀となることができ、次に、少なくとも1種類の第2の金属のそれぞれのより低い/より高い酸化状態は、それに応じて三価/四価のセリウム、二価/より高い価数のバナジウム、三価/四価のコバルト、二価/三価の鉄、二価/より高い価数のマンガン、および二価/より高い価数のクロムとなることができる。
【0042】
本発明のさらなる好ましい一実施形態において、イオン形態の前記少なくとも1種類の第1の金属が二価のスズであり、より低いおよびより高い酸化状態の前記少なくとも1種類の第2の金属がそれぞれ三価および四価のチタンである場合、これらの金属は、適切な錯化剤と場合により錯形成したそれらの塩の形態で提供することができ、それによってこれらの塩は組成物中に溶解して溶液を形成する。塩は塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩などであってよい。
【0043】
めっき組成物は、イオン形態の少なくとも1種類の第1の金属のための、たとえば二価のスズのための、少なくとも1種類の第1の錯化剤をさらに含有することができる。より低い酸化状態、たとえば三価のチタン、またはより高い酸化状態、たとえば四価のチタンのいずれかの少なくとも1種類の第2の金属のため、あるいは両方のための、少なくとも1種類の第2の錯化剤も含有することができる。
【0044】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、前記めっき組成物はピロリン酸イオンを含有する。これらのイオンは、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の形態、あるいはその酸の形態、たとえばナトリウム塩および/またはカリウム塩の形態で加えることができる。これらのイオンは、イオン形態の少なくとも1種類の第1の金属、たとえば二価のスズの錯化剤となる。ピロリン酸イオンとは別に、別の第1の錯化剤も同様に使用することができる。
【0045】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、前記めっき組成物のpHは少なくとも約6である。pHは最高約9であってよい。より好ましくはpHは少なくとも約7であってよい。より好ましくは最高約8.5であってよい。pHは、アルカリまたはアルカリ土類の水酸化物または炭酸塩などのアルカリ性物質、あるいは硫酸、塩素酸、酢酸、メタンスルホン酸などの酸性物質をめっき組成物に加えることによって調整することができる。最も好ましくは、めっき組成物のpHは、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩を前記めっき組成物に加えることによって調整される。pHを安定化するために緩衝系を使用することができる。このような緩衝系は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のイオンとともに使用されるピロリン酸イオンであってよい。
【0046】
めっき組成物は、チオ尿素、グリシルグリシン(gylcylglycine)、チオプロピオン酸、ヒドロキノン、レソルシノール、およびイソプロパノールなどの安定剤および促進剤などの少なくとも1種類の添加剤をさらに含有することができる。安定剤は、容器などの表面上、および/またはめっき組成物全体への少なくとも1種類の第1の金属の自然堆積を防止するにも好適であり、促進剤はめっき速度を高めるのに好適である。
【0047】
めっき組成物は、溶媒をさらに含み、緩衝剤、酸性物質、またはアルカリ性物質に加えて支持電解質をさらに含むことができる。溶媒は好ましくは水であってよく、支持電解質は、好ましくは、硫酸塩、塩化物、臭化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩などのアニオンのいずれかのアルカリまたはアルカリ土類塩であってよい。あるいは、溶媒および支持電解質は有機化合物から選択することができ、特にイオン液体から選択することができる。このような系は、たとえば独国特許出願公開第102009027094 A1号明細書に記載されている。これらの化合物は、たとえば、ハロゲン化物、硫酸塩などのさらなるアニオンを有するイミダゾリウム化合物などの、さらなるアニオンを有する芳香族カチオン性複素環式化合物から選択される塩を含む。
【0048】
再生設備の再生装置のそれぞれは:
i.作用電極室および対抗電極室;
ii.前記作用電極室中に配置される作用電極、および前記対抗電極室中に配置される対抗電極;
iii.前記作用電極室および前記対抗電極室を互いに分離するイオン選択性膜;
iv.前記対抗電極室に収容される対抗電極液体;
v.前記作用電極および前記対抗電極に通電するための電流源
を含む。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、前記少なくとも1種類の作用電極は、金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属でできている。炭素電極または活性化チタン電極などの不活性電極の使用とは逆に、これによって、この作用電極が再生される組成物に接触するときに、その上に堆積する少なくとも1種類の第1の金属が、酸化ステップ中に組成物の残りと接触するときに剥離して液体中に粒子および/または断片を生じて、それによって液体中でこれらの粒子および/または断片において少なくとも1種類の第1の金属の制御できないプレートアウトが生じることがないという利点が得られる。少なくとも1種類の第1の金属を作用電極として使用することによって、この酸化ステップ中に、少なくとも1種類の第1の金属は作用電極から均一に溶解する。さらに、少なくとも1種類の第1の金属が、ニッケルなどの毒性の塩を形成する金属である本発明の方法が使用されると、これらの金属をイオン形態で含有する組成物の輸送及び取り扱いにある問題が発生する。この少なくとも1種類の第1の金属でできた作用電極を使用することによって、堆積される金属が作用電極によって得られるので、少なくとも1種類の第1の金属を補給するための液体の取り扱いおよび輸送が不要となる。このため環境的により良いプロセスとなる。
【0050】
さらに、このような作用電極の使用は、めっき作業において消費された少なくとも1種類の第1の金属を、再生作業においてめっき組成物に補給できるというさらなる利点を有する。このために、これは除去された組成物の残りに溶解され、したがって最終的にはめっき組成物中に補給される。これによって、めっき組成物から欠乏した後での、少なくとも1種類の第1の金属のめっき組成物中への補給が可能となる。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態において、前記少なくとも1つの作用電極は、金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属の破片でできており、金属状態の前記少なくとも1種類の第1の金属の前記破片は、不活性材料でできた容器中、好ましくは不活性金属でできた、あるいはポリプロピレン(PP)またはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenfluoride)(PVDF)などのプラスチック材料でできているよう基中に収容される。不活性材料としては、好ましくは不活性金属の場合、本明細書および特許請求の範囲において、再生方法の条件下で、めっき組成物またはその一部のあらゆる成分と反応しない、たとえば少なくとも1種類の第1および第2の金属、組成物の溶媒、緩衝剤、添加剤などと反応しない材料であると理解される。このような不活性材料はチタンであってよい。容器はバスケットであってよい。したがって、部品は、チタンでできたバスケット中に収容することができる。このような構成によって、作用電極材料の容易な補給が可能となる。再生装置は好ましくは、可能な限り強く接触させるために、再生されるめっき組成物を、容器中の作用電極材料の充填材料を通過して循環させることができるように構成することができる。この作用電極材料はめっき組成物を補給するために消費されるので、容器の再補充による容易な補給によって処理が促進される。
【0052】
別の一実施形態においては、作用電極は、前記少なくとも1種類の第1の金属の代わりに、当然ながら活性化チタン(白金、またはイリジウム/チタン酸化物などの混合酸化物などで被覆される)などの不活性金属でできていてもよい。この場合、作用電極は、エキスパンドメタルシートなどのエキスパンドメタルの形態であってよい。
【0053】
対抗電極は好ましくは、活性化チタンなどの不活性金属でできている。この場合、作用電極は、エキスパンドメタルシートなどのエキスパンドメタルの形態であってよい。
【0054】
作用電極室はめっき装置と流体接続され、それによって再生されるめっき組成物はそれらを通過して流れることができる。対抗電極室は、好ましくはめっき装置とは流体接続されない。これは好ましくは対抗電極液体を含有し、対抗電極液体は好ましくは不活性の対抗電極液体であり、すなわち、本明細書および特許請求の範囲においては、その中の溶媒を除けば、再生装置の運転条件下で反応して他の化学種が得られる化学種を含有しない対抗電極液体として理解される。したがって、この不活性対抗電極液体は、支持電解質以外を含有しない希硫酸または他のあらゆる電解質の水溶液であってよい。対抗電極液体は、対抗電極室と流体接続される対抗電極液体タンクから対抗電極室に供給することができる。
【0055】
イオン選択性膜は、カチオンまたはアニオンのいずれか、または排他的に一価のカチオン、または排他的に一価のアニオンの1種類のイオンを選択的に透過させることが可能なあらゆる膜であってよい。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態において、前記イオン選択性膜はカチオン選択性膜である。この場合、不活性で酸性の対抗電極液体が対抗電極室に収容され、除去されためっき組成物が作用電極室に収容される場合に、2つの室の間の電荷移動は、除去されためっき組成物のカソード処理中の対抗電極室中に収容される対抗電極液体から作用電極室へのプロトンの移動、および第2の部分のアノード処理中の作用電極室中に収容される除去された組成物の残りから対抗電極室への別のカチオンの移動によって支持することができる。
【0057】
本発明の別の一実施形態においては、再生装置は、作用電極室および対抗電極室に加えて、2つの別の室の間に配置された中央電極室をさらに含むことができる。この場合、作用電極室は、アニオン選択性膜によって中央電極室から分離することができ、対抗電極室は、カチオン選択性膜によって中央電極室から分離することができる。対抗電極液体は、pHが約4〜約10、より好ましくは約5〜約11の支持電解質を含有することができる。中央電極室中に収容される支持電解質は、たとえば対抗電極室中に収容されるものと同じであってよい。さらに、中央電極室は、酸由来のアニオンなどのさらなるアニオンを含有することができる。作用電極のカソード分極および対抗電極のアノード分極によって、対抗電極室に収容される支持電解質のカチオンが中央電極室に移動し、作用電極室中に配置される除去された組成物中に含まれるアニオンも中央電極室に移動する。作用電極のアノード分極および対抗電極のカソード分極によって、前に移動したカチオンが中央電極室から対抗電極室に戻り、前に移動したアニオンが中央電極室から作用電極室に戻る。
【0058】
再生装置は、前記作用電極および前記対抗電極に通電するための電流源をさらに含む。この電流源は好ましくは直流で動作する。それぞれカソード分極またはアノード分極される作用電極の目的に依存して、流される全体的な正味の電荷がカソード的またはアノード的のいずれかである場合は、パルス電流を発生させることもできる。運転方式の1つでは、電流源は、単極性パルス(カソード的またはアノード的のいずれかである独自のパルス)が得られるように動作させることができる。必要に応じて、作用電極のカソード分極またはアノード分極、ならびに対抗電極のそれぞれの逆の分極を行うために、電流源は、好ましくは作用電極へのカソード分極の付与とアノード分極の付与との間で切り替え可能である。
【0059】
再生設備は、少なくとも一部の前記めっき組成物を前記少なくとも1つのめっき装置から除去するための前記手段と、前記作用電極のカソード分極またはアノード分極のそれぞれを行いながら、前記除去されためっき組成物を前記作用電極と接触させるための手段とをさらに含む。このために再生設備はめっき装置と流体接続している。より具体的には、再生装置の作用電極室がめっき装置と流体接続する。これらの手段は、好ましくは、めっき装置を再生装置の作用電極室と接続する適切な接続ライン、好ましくは管であってよい。これらの手段は、これらのラインまたはそれぞれの管を介して少なくとも1つのめっき装置から作用電極室までめっき組成物を供給するポンプをさらに含むことができる。
【0060】
再生設備は、前記組成物が前記再生装置によってカソード処理された後の前記組成物の前記第1の部分を収容するのに適合した前記少なくとも1つの第1の貯蔵タンクをさらに含む。これらの手段は好ましくは、めっき組成物の第1の部分の収容に好適な貯蔵タンクを含む。この部分を貯蔵することができるあらゆるタンクが好適となりうる。三価のチタンおよび二価のスズなどの中に含まれるあらゆる化学種の酸素による酸化を防止するため、内部への空気の流入を排除するために、タンクは環境から遮断されることが好ましい。
【0061】
再生設備は、前記組成物の残りが前記再生装置によってアノード処理された後の前記組成物の前記第2の部分を収容するのに適合した前記少なくとも1つの第2の貯蔵タンクをさらに含む。この部分を貯蔵することができるあらゆるタンクが好適となりうる。三価のチタンおよび二価のスズなどの中に含まれるあらゆる化学種の酸素による酸化を防止するため、内部への空気の流入を排除するために、タンクは環境から遮断されることが好ましい。
【0062】
貯蔵タンクおよび再生装置の作用電極室を接続するために設けられるさらなる接続手段が存在する。このため、第1および第2の貯蔵タンクは再生装置、特にその作用電極室と流体接続する。これらのさらなる手段は、好ましくは接続ライン、好ましくは管、および場合により組成物の一部を送達するためのポンプ、およびさらに場合によりそれぞれの部分を作用電極室からその貯蔵タンクに向かわせるためのバルブを含む。
【0063】
作用電極における除去されためっき組成物の連続電気分解を可能にするため、除去されためっき組成物を貯蔵する再生セルリザーバー、およびこのセルリザーバーと再生装置の作用電極室との間の流体接続手段がさらに存在することができる。
【0064】
再生設備は、前記少なくとも1つの第1の貯蔵タンク中に貯蔵される前記第1の部分、および前記少なくとも1つの第2の貯蔵タンク中に貯蔵される前記第2の部分を、前記少なくとも1つのめっき装置に戻すための前記手段をさらに含む。このため、第1および第2の貯蔵タンクのそれぞれは、少なくとも1つのめっき装置と流体接続される。これらの手段は好ましくは、第1および第2の貯蔵タンクのそれぞれを、めっき装置、および場合によりそれぞれの液体をめっき装置に送達するためのポンプに接続する接続ライン、好ましくは管を含むことができる。
【0065】
めっき設備は、本発明の前記再生設備と、さらに前記少なくとも1つのめっき装置とを含む。少なくとも1つのめっき装置のそれぞれ1つは、めっき組成物を収容するのに好適であり、少なくとも1種類の第1の金属を前記基板上にめっきするのに必要な条件にめっき組成物をさらすために好適なあらゆる従来のめっき装置であってよい。これは、たとえば、めっき組成物を保管するための容器、めっき組成物を基板に供給するための手段、および基板ホルダーを含む。これらの後半の項目は、好適なホルダー、ならびに容器中または処理領域中にある場合は基板をめっき組成物と接触させるための手段、たとえば、めっき組成物を基板に供給するためのポンプおよびノズル、あるいは容器中に収容されるめっき組成物中に基板を移動させ、そこから取り出す移動機構であってよい。めっき組成物の加熱、循環、脱気、分析、補給の手段、基板/基板ホルダーの移動手段などをさらに含むことができる。複数のめっき装置を互いに組み合わせて列などを形成することができる。
【0066】
基板は、プラスチック、セラミック、金属、または他の工作物であってよい。これは少なくとも1種類の第1の金属でめっきする前に適切に前処理することができる。金属でできている場合、めっき前に洗浄、脱脂、および酸洗いを行う必要がある。非導電性材料でできている場合は、めっきの前にパラジウム/スズアクチベータなどの使用などで活性化する必要がある。これらすべての方法は当業者には周知である。
【0067】
以下の実施例および図面によって本発明をより明確に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明の再生設備を含むめっき設備の概略図を示している。
図2】再生セルまたは再生装置の概略図を示している。
図3】4つの方法ステップにおける再生設備の概略図を示している。
図4】第1のめっき実施形態(ケース1)におけるめっき装置の概略図を示している。
図5】第2のめっき実施形態(ケース2)におけるめっき装置の概略図を示している。
図6】第3のめっき実施形態(ケース3)におけるめっき装置の概略図を示している。
図7】第4のめっき実施形態(ケース4)におけるめっき装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図面中の同様の参照符号は、同じ機能を有する要素を示している。
【0070】
再生設備を含むめっき設備の概略図を図1に示す。
【0071】
この設備は、タンク101を含むめっき装置100、タンク101中に保持される基板10、消費されためっき組成物を保管する中間タンク210、再生セルリザーバー220、再生装置200、第1の貯蔵タンク230、第2の貯蔵タンク240、第1の金属、たとえばSn、測定モニター110、より低い酸化状態の第2の金属、たとえばTi+3、測定モニター120、これらの装置を接続する管115、116、215、235、245、255、265、285、286、291、296、およびこれらの装置の間で溶液を運搬するポンプ117、250、260、270、280、290、295を含む。
【0072】
めっき装置100は、めっき組成物、たとえばスズ無電解めっき組成物を収容する単純なタンク101を含むことができる。このような場合、工作物ホルダーおよび工作物ホルダーを上下に移動させる機構(図示せず)によって工作物10を保持することによって、タンク101に入れられためっき組成物に工作物10を浸漬することができる。めっき装置100はさらに、加熱、たとえば電気的加熱、撹拌手段、場合によりガス供給手段、たとえば空気またはN供給手段、それぞれの管、循環ポンプ、および組成物から不純物を除去するためのフィルターを含む外部循環、めっき浴から放出されるガスを除去するための排出装置(図示せず)、ならびにセンサー110、120、およびその他の装置を備えることができる。このめっき装置100は、さらなる処理および/またはめっき装置をさらに含むめっきラインの一部であってよい。あるいは、めっき装置100は、めっき組成物を収容するための装置、ならびに工作物をめっき装置100に通すためのコンベア、およびめっき組成物を移送して工作物10と接触させるノズルなどのさらなる送達手段を有する、コンベアで行われる装置であってよい。このような移送装置は周知である。
【0073】
めっき装置100は、二価のスズおよび三価のチタンの濃度を監視するためのセンサーとしての測定モニター110、120を有する。これらのモニター110、120およびセンサーポンプ117は、バイパスでライン115、116によってめっき装置100に接続される。このバイパスは、めっき組成物がセンサー110、120と接触する前に、この組成物を冷却する冷却装置118をさらに含む。第1のセンサー110は、たとえばXRF技術を技術して全体的な二価のスズの含有量を検知する。第2のセンサー120は、UV/VIS分光技術を使用して三価のチタンの含有量を検知する。センサー110、120は、これらの化学種のそれぞれの濃度に比例するデジタル信号を発生し、得られた信号を第1の供給ポンプ260および第2の供給ポンプ250の2つのポンプに送る。
【0074】
再生装置200、めっき組成物を保管する中間タンク210、再生セルリザーバー220、第1の貯蔵タンク230、および第2の貯蔵タンク240、ならびにこれらの装置を接続する管115、116、215、235、245、255、265、285、286、291、296、およびこれらの装置の間で溶液を送達するポンプ117、250、260、270、280、290、295をまとめたものが再生設備300を形成する。
【0075】
第1の供給ポンプ260は、カセットチューブポンプまたはバルブレスピストン式ポンプ(Fluid Metering Inc., USのCeramPump(登録商標)など)であってよく、これは、消費されためっき組成物の第1の部分をめっき装置100からライン255を介して、消費されためっき組成物を保管する中間タンク210まで送達する。このため、第1の供給ポンプ260は、めっき装置100に接続され、ライン265を介して中間タンク210に接続される。この第1の供給ポンプ260はさらに、めっき組成物のTi+3に富む第1の部分を第1の貯蔵タンク230からライン235を介してめっき装置100のタンク101まで送達し、このため、このライン235を介して第1の貯蔵タンク230にも接続される。第1の供給ポンプの代わりに、さらなる供給タンクがめっきタンクの上方に配置されるように設置されると、再生された組成物は重力によってめっきタンク101に再循環させることができる。
【0076】
第2の供給ポンプ250も、カセットチューブポンプであり、これは、消費されためっき組成物の第2の部分をめっき装置100からライン255を介して中間タンク210まで送達する。このために第2の供給ポンプ250は、めっき装置100に接続され、このライン255を介して中間タンク210に接続される。この第2の供給ポンプ250はさらに、再生されためっき組成物のSn+2に富む第2の部分を第2の貯蔵タンク240からライン245を介してめっき装置100のタンク101まで送達し、このため、このライン245を介して第2の貯蔵タンク240にも接続される。
【0077】
ライン255、265を介して送達される消費されためっき組成物は、第1および第2の貯蔵タンク230、240から送られる第1および第2の部分を逆方向に流すことによって、熱交換器257、267中で冷却される。
【0078】
移送ポンプ270は、中間タンク210中に含まれる消費されためっき組成物をライン215を介して再生セルリザーバー220まで送達する機能を果たす。このために、中間タンク210はこのライン215を介して再生セルリザーバー220と接続される。
【0079】
循環ポンプ280は、再生セルリザーバー220と再生装置200との間のライン285、286によって形成された循環路中で消費されためっき組成物を循環させる機能を果たす。
【0080】
第1の部分ポンプ290は、再生セルリザーバー220から送られるめっき組成物の第1の(Ti+3に富む)部分をライン291を介して第1の貯蔵タンク230に送達する機能を果たす。このため、再生セルリザーバー220はこのライン291を介して第1の貯蔵タンク230と接続される。
【0081】
第2の部分ポンプ295は、再生セルリザーバー220からのめっき組成物の第2の(Sn+2に富む)部分をライン296を介して第2の貯蔵タンク240に送達する機能を果たす。このため、再生セルリザーバー220はこのライン296を介して第2の貯蔵タンク240と接続される。
【0082】
再生装置200(電流源を含まない)が図2に概略的に示されている。再生装置200は、ポリプロピレンなどのプラスチックでできていてよく流体密封の再生セルハウジング201を含む。再生セルハウジング201は、めっき組成物が循環するように収容されるよう設計された作用電極室202、および対抗電極室203の2つの電解質室を収容する。2つの室202、203は、カチオン選択性膜204によって互いに分離される。作用電極205は作用電極室202中に配置され、対抗電極206は対抗電極室203中に配置される。作用電極205は、チタンメッシュまたはチタンエキスパンドメタルで好ましくはできているチタンバスケット207中に含まれるスズの破片、たとえば0.5cmの大型スズペレットによって形成される。当然ながらバスケットは、有孔材料のように液体で通過できる限りはあらゆる他の不活性材料でできていてもよい。対抗電極206は好ましくは不活性電極である。これは、混合酸化物被覆(酸化イリジウム/酸化チタン混合物)で活性化されたチタンでできたエキスパンドメタルシートで形成されてよい。2つの電極205、206には、電流源(図示せず)によって直流電流が供給される。
【0083】
さらに、ライン209を介して対抗電極室203と流体接続される対抗電極液体タンク208が存在する。対抗電極室203および対抗電極液体タンク208は、希硫酸、たとえば10重量%の硫酸であってよい対抗電極液体を含有する。ポンプ(図示せず)によって対抗電極液体が対抗電極室203に供給される。作用電極室202にはめっき組成物が満たされる。めっき組成物はライン285を介してこの室202に供給され、ライン286を介して排出される。
【0084】
比較例:
本発明の再生方法は、二価のスズ(Sn+2)含有量が非常に少ないため、めっき組成物中に存在する三価のチタン(Ti+3)の含有量よりも実質的に多い全体的なチタン(Ti)含有量を含有する組成物を配合できることに基づいている。めっき組成物は、たとえば80mmol/lのTi+3および40mmol/lのTi+4を含有することができる。この比較例において、めっき組成物の一部を再生セルリザーバー220に移動させ、次にめっき組成物をこのリザーバー220と再生装置200の作用電極室202との間で循環させ、作用電極205をカソード分極させることによって、めっき組成物が再生装置200中で完全に還元される。このカソード処理のため、少なくとも本発明による実施のように作用電極205からの金属スズが溶解して二価のスズ(Sn+2)電流を反転させなければ、最大120mmol/lのTi+3含有量が実現される。120mmol/lのTiは、安定なめっき組成物の配合に有用となるよりも高いと思われる。しかし、めっき組成物(たとえば80mmol/l未満のTi+3を有する)の一部を除去し、再生装置200中でめっき組成物のこの部分を再生した後、再生後に120mmol/lのTi+3を有する同じ堆積のめっき溶液で置換することによって、この組成物は、120mmol/l未満のTi+3を有するめっき組成物にTi+3を補給することができる。この再生溶液がめっき作業に適切な量のSn+2(たとえばSn+2のさらなる補給のために40mmol/lのSn+2)を含有する場合は、高Ti+3含有量のために、めっき装置100に供給される前にこの溶液がめっき温度まで加熱されるとプレートアウトが起こる可能性がある。実際には、金属スズを溶解させて補給用のSn+2を生成するために作用電極205の電流反転によってTi+3からTi+4への部分的な酸化も起こるので、これらの条件下でTi+3の濃度は120mmol/l未満となる。しかし、他の方法では補給スキームが機能しないので、Ti+3濃度は、めっき組成物に必要な濃度よりも依然としてはるかに高い。
【0085】
本発明の実施例:
上記手順の問題を克服するために、2つの異なる補給溶液(これらはめっき組成物の第1および第2の部分である)を形成する2ステップの本発明による再生を行う:第1の再生ステップ中、再生セル200に供給される消費されためっき組成物中に含まれる四価のTiは完全に三価のTiまで還元されて、最大120mmol/lのTi+3を有する溶液が得られるが、Snが作用電極205上に堆積するためSn+2は少ない。ある量のめっき組成物(第1の部分)が再生装置200から送出された後、プロセスは再生装置200中に残存するめっき組成物の残りに対して反転電流を用いて続けられて、Sn+2は多い(たとえば、120mmol/l)がTi+3は少ない溶液が得られ、これは作用電極205からスズが溶解し、少ない程度でTi+3からTi+4への酸化も起こるためである。
【0086】
本発明による再生方法が行われるめっき装置100中に含まれるめっき組成物は以下の組成を有することができる。
SnClとして加えられた40mmol/lのSn+2
TiClとして加えられた70mmol/lのΤi+3
TiOClとして加えられた40mmol/lのΤi+4
1200mmol/lのピロリン酸イオン
1000mmol/lの塩化物イオン
pH:8
【0087】
タンク101中に含まれる消費されためっき組成物の一部は、第1および第2の供給ポンプ250、260によってめっき装置100から、消費された浴を維持するために設けられた中間タンク210に送達される。この移動中、めっき浴は第1および第2の熱交換器257、267を通過し、それによって、移動した浴は30℃などの低温に冷却される。次にめっき組成物は、移送ポンプ270を使用しライン215を介して、中間タンク210から再生セルリザーバー220まで送達される。このリザーバー220は再生装置200に接続されているので、次にめっき組成物は、循環ポンプ280を使用しライン285、286を介して、再生装置200の作用電極室202に連続的に通され、セルリザーバー220に戻される。この循環中、電流源(図示せず)を使用して、再生装置200の対抗電極室203に収容される対抗電極206に対して作用電極205をカソード分極させる。この電気分解作業により、Ti+3がTi+4から形成される。同時に、Sn+2が電解により還元されて、金属スズが作用電極205上に堆積する。この第1の再生サイクルが終了した後、再生セルリザーバー220中に含まれるめっき組成物中のTi+3の濃度は158mmol/lまで増加し、Sn+2濃度は4mmol/lまで低下した。
【0088】
その後、この組成物の一部は、第1の部分ポンプ290によって再生セルリザーバー220からライン291を介して第1の貯蔵タンク230まで送達される。再生された組成物の第1の貯蔵タンク230に移動したこの第1の部分は、再生セルリザーバー220中に依然として残存する組成物の残りよりも多い。これによって、第1の貯蔵タンク230中に含まれるめっき組成物の第1の部分はTi+3に富む溶液となり、Sn+2は全く含有しないかごく少量のみ含有する。
【0089】
続いて、再生セルリザーバー220中に残存するめっき組成物の残りは、循環ポンプ280を使用して連続的に圧送されて、ライン285、286を介して作用電極室202に連続的に通され、セルリザーバー220に戻される。この循環中、電流源(図示せず)を使用して、再生装置200中に収容される対抗電極206に対して作用電極205をアノード分極させる。この電気分解作業により、金属スズが、電気分解により作用電極205から溶解して、Sn+2に富む溶液が得られる。さらに、めっき組成物のこの残りの中に依然として存在するTi+3の一部が酸化されてTi+4となる。この第2の再生サイクルが終了した後、こうして形成されためっき組成物の第2の部分中のSn+2濃度は200mmol/lまで増加し、Ti+3濃度は46mmol/lまで低下した。
【0090】
その後、めっき組成物の第2の部分は、再生セルリザーバー220から、ポンプ295によってライン296を介して第2の貯蔵タンク240まで送達される。これによって、第2の貯蔵タンク240中に含まれるめっき組成物の第2の部分はSn+2に富む溶液となり、ある程度のTi+4および通常はめっき組成物よりも少ないTi+3も含有する。
【0091】
第1の貯蔵タンク230中に含まれる再生されためっき組成物の第1の部分、および第2の貯蔵タンク240中に含まれる再生されためっき組成物の第2の部分は、第1および第2の供給ポンプ250、260によって、ライン235、245を介してめっき装置100に送達される。めっき装置100に戻される間に、めっき組成物の第1および第2の部分は、熱交換器257、267中で加熱されて、めっき装置100中の温度設定がほぼ達成される。これら2つの部分の加熱は、スズのプレートアウトの危険性が生じずに行うことができる。溶液がめっき装置100に入る場所での激しい混合によって、この位置でのスズのプレートアウトが防止される。めっき装置100中のめっき組成物に溶液が加えられる場合、浴の体積を一定に維持するために、カセットチューブポンプ250、260を使用することによって同量のめっき組成物が除去される。
【0092】
めっき組成物の再生後は、以下の組成を有する。
SnClとしての40mmol/lのSn+2
TiClとしての76mmol/lのΤi+3
TiOClとしての44mmol/lのΤi+4
1200mmol/lピロリン酸イオン
1000mmol/lの塩化物イオン
pH:8
【0093】
めっき装置100中に含まれるめっき組成物は、活性化させたプラスチック部品上への約1.0〜1.2μm/hのめっき速度での無電解スズめっきが可能であることが分かった。この時間の間、めっき装置100の容器壁、ライン/管材料、ポンプ、および/または再生装置200、およびめっき組成物の全体の体積中での検出可能な量でのスズのプレートアウトは起こらなかった。
【0094】
めっき装置100中に含まれるめっき組成物をそれぞれの補給溶液(再生された第1および第2の部分)と交換する第1および第2の供給ポンプ250、260は、めっき装置100から送出される量と流入する量との一致を保証するべきであるが、その理由は実際の設定では蒸発を補償するための水の供給も必要となるからである(または浴は水の供給またはオーバーフローによって希釈されうる)。したがって、これらのポンプ250、260は、このために(図1に示されるように)連結され、これは2つのカセットチューブポンプ250、260によって最も容易に実現されうる。これらのポンプ250、260は、めっき装置100中に含まれるめっき組成物中のSn+2種およびTi+3種の含有量のための測定装置110、120によって制御される。Sn+2含有量および/またはTi+3含有量がそれぞれの所定の値未満まで減少すると、第1および第2の供給ポンプ250、260は、消費されたされためっき組成物をめっき装置100から、めっき組成物を貯蔵する中間タンク210まで圧送し、さらにそこから再生装置200中で再生される再生セルリザーバー220まで圧送することによる、循環サイクルを開始する。
【0095】
本明細書で前述した方法は、めっき装置100からめっき組成物の一部を連続的に除去し、この部分を本明細書で前述した再生スキームにより処理することによる永続的で断続的な基礎に基づいて行うことができる。別の変法の1つでは、めっき装置100からのめっき組成物の一部のこのような除去は、めっき装置100からこのような部分を除去し、めっき組成物の再生が再生装置200中で全く行われないアイドルタイムが間に存在する時間に断続的に生を行うことによって実施可能である。
【0096】
めっき組成物の2つの補給溶液(めっき組成物の第1および第2の部分)への分割は、Ti+3のみが消費されるアイドルタイム、および低/高表面積がめっきされて種々のSn+2消費が得られる時間などの種々の作業条件に対してより高い自由度で系を反応可能というさらなる利点を有する。
【0097】
以下の表1および2は、ポンプの個別の役割および運転方式を示している。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
以下の表3は、本発明の再生方法のステップを示している。
【0101】
【表3】
【0102】
再生装置の構成
再生装置200の構成を最適化し、再生手順中のイオン濃縮を最小限にするために、Ti+3の寄生消費野性質を考慮する。Ti+3からTi+4への酸化はSn堆積がなくても進行し、これはTi+4の空気酸化によるものである。これによってH生成またはO還元のいずれかが生じうる。
酸化半反応:
Ti+3→Ti+4+e(酸性媒体中H/Hに対してEred=0.1V)
還元半反応:
+e→1/2H↑(酸性媒体中H/Hに対してEred=0V)
または:
2H+2e+1/2O→HO(酸性媒体中H/Hに対してEred=1.23V)
【0103】
再生される組成物から酸素(空気)が排除され、溶液が脱気されると、第1の半反応のみが可能となる。第2の反応のより大きな正の還元電位によって、酸素の存在下でのTi+3の消費が促進される。しかし、N雰囲気下の予備的実験では、還元されたTi+3の消費速度は示されなかった。類似の観察がTi(III)/Ni(II)自触媒浴に関する文献に報告されており、めっき速度の空気またはNの撹拌による影響はなかった(前述のS.Yagiら)。密封された瓶(瓶の中の液体の上を除けば酸素が排除された)中のTi錯化剤溶液は、暗所よりも露光した場合にはるかに速く反応することが観察されたので、最終的には露光がさらなる役割を果たす。還元半反応に関わらず、電子1つ当たり、すなわち1つの酸化するTi+3イオン当たり1つのプロトンが消費されて、より塩基性の溶液が得られる。
Ti+3+H→Ti+4+1/2H↑ (A)
Ti+3+H+1/4O→Τi+4+1/2HO (B)
【0104】
これによってTi+3の寄生消費中にpHが増加するはずであり、これは本発明の溶液において観察されている。示されるように、再生装置200の配置は、膜204を介する必要なイオン輸送によって、このpH増加がほぼ補償されるように選択することができる。これによってイオン濃縮が最小限となる。
【0105】
再生スキーム
以下の再生スキームを考慮する:
実施形態1:
カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体としてHSO
【0106】
実施形態2:
カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体としてpH=浴pH(=7)のK/H
【0107】
実施形態3:
カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体として酸性K−塩溶液。
【0108】
実施形態4:
アニオン(塩化物イオン)選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体。
【0109】
実施形態4では一価のアニオン選択性膜204が必要である。この場合、再生中の電荷移動は、作用電極室202中に含まれるめっき組成物から膜204を通って移動するめっき組成物中に含まれる塩化物アニオンによって起こるが、SnまたはTi錯体などの他の一価アニオンも移動することができる。このスキームでは、アノード分極するときの対抗電極206に塩化物イオンが到達する(この場合、塩化物イオンから有毒の塩素が形成される)のを防止するために再生装置200中に第3の(中央)電極室が必要となる。
【0110】
再生装置200に関して3つの運転条件を考慮する必要がある:条件1:開路(電流の印加なし、たとえば、セル200の充填/空にする間)、条件2:Ti+3を形成する電流方向(作用電極205のカソード分極)、および条件3:Sn溶解の電流方向(作用電極205のアノード分極)。これら3つの運転条件を、再生装置200の種々の配置で以下の表4〜7に示している。条件1:(開路)は、好適な配置では条件2(Ti+3再生)に切り替えるために非常に短縮可能なことが強調される。
【0111】
条件2の効率(電荷当たりに形成されるTi量)はあまり高くない(本発明者らの測定では、印加電圧に依存して約20〜40%)ことを知るのも重要であり、おそらくその理由はH生成のためであり、これは気泡形成によって観察可能である。同じ測定では、条件3:Sn溶解においてはるかに良好な効率が示されている。
【0112】
実施形態1:カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体としてHSO
【0113】
【表4】
【0114】
再生スキームの運転時間がより長い場合、Kが対抗電極室203中に蓄積することがあり、それによって経時により状況が実施形態3により類似するようになる。これを防止するため、対抗電極液体(希薄HSO)を頻繁に交換することができる。より洗練された方法では、Kを吸収するイオン交換樹脂を通過するように対抗電極液体を循環させることである。
【0115】
実施形態1の明らかな利点の1つは、条件2(Ti+3再生)の間に、電流の顕著な部分が流れ、それによって膜204を通過して移動するイオンが消費され、同時にHが形成されると、Hのみが移動する場合には(2H+2e→H)、pH変化およびイオン蓄積が起こらないことである。膜204を通過するために、Ti+3形成のみには、1つのTi+3当たり1つのHが必要であるが、前述のように、浴使用中のTi+3の寄生消費によって、1つのTi+3当たり1つのHが消費されるので、再生中にHイオンのみが移動する場合には、これによってバランスが取れる。同様に、Sn堆積によるTi+3消費には、Sn+2を補給するために条件3中により多くのSn溶解が必要となり、再びこの場合も、全体的なイオン移動のバランスを取るために膜204を通って移動する同じ量のHが必要となる。
【0116】
実施形態2:カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体としてpH=浴pH(=7)のK/H
【0117】
【表5】
【0118】
この場合に配置された再生装置200の運転は、アイドルタイム中に大きなpH変化が起こらないので、非常に好都合であるにもかかわらず、最終的には作用電極室202中により多くのイオンが蓄積することが分かった。これは、電荷移動の手段として、膜204を透過するKの拡散によって生じるpH変化を補償するために作用電極室に加える必要があるClが原因である。たとえば、条件2で観察されるHの発生によって、作用電極室202中にK(およびpH維持のためのCl)が蓄積するが、一方、実施形態1では、2Hイオンの拡散によって必要な電荷移動が起こるので、反応2H+2e→HのpHは中性である。
【0119】
さらに、実施形態2では異なる堆積挙動(より高い速度であるが、より多くのSnのスケール/変色)が生じたが、おそらくはCl濃度の制御が困難であるためと思われる。別のビーカー試験においてCl濃度がめっき速度および浴安定性に影響を与えることが示された。
【0120】
実施形態1および2から判断すると、2〜4の範囲内のpH値、および作用電極室202中のような好適なK濃度が対抗電極室203中で維持される組み合わせが最良となりうる。次にアイドルタイム中のpH変化が遅くなりながら、実施形態2と同様にHCl添加がないことが必要である。
【0121】
実施形態3:カチオン選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体として酸性K−塩溶液。
【0122】
【表6】
【0123】
3つの実施形態を比較すると、自触媒浴の最も強いイオン濃縮のため、実施形態2が最も好ましくないことが明らかである(対抗電極液体のイオン濃縮は、低コストでありイオン交換樹脂を用いて改善の可能性があるので、あまり問題とならない)。実施形態3は制御がより困難と思われるが、実施形態1ではKCOの実質的な添加が必要であり(KOHの添加される場所でpHの増加が大きいと沈殿が生じやすいため、KOHの添加はあまり好ましくない)、自触媒浴のイオン濃縮は最小である。
【0124】
実施形態4:アニオン(塩化物イオン)選択性膜204、対抗電極室203中のアノード液体
前述したように、アノード分極させるときに対抗電極でのClの発生を防止するために追加の室が必要である。
【0125】
【表7】
【0126】
室の数が多いため、この配列はより複雑である。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】