(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-518946(P2015-518946A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(54)【発明の名称】アイソレータ・デカップラ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/36 20060101AFI20150609BHJP
【FI】
F16H55/36 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-516015(P2015-516015)
(86)(22)【出願日】2013年4月22日
(85)【翻訳文提出日】2014年12月3日
(86)【国際出願番号】US2013037519
(87)【国際公開番号】WO2013184241
(87)【国際公開日】20131212
(31)【優先権主張番号】13/487,755
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオファ ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー,ジョン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ププリン,ラディー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ケミング
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アリ,イムティアズ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディーン
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ピーター
【テーマコード(参考)】
3J031
【Fターム(参考)】
3J031AA03
3J031BA09
3J031CA03
(57)【要約】
アイソレータ・デカップラは、シャフト(10)と、シャフト(10)に軸支されたプーリ(30)と、ワンウェイクラッチ(60)を介してシャフト(10)に軸支されたクラッチキャリア(50)と、プーリとクラッチキャリアの間に係合する捻りバネ(40)とを備え、捻りバネは解放方向に負荷をかけることができ、捻りバネとプーリは捻りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有し、捻りバネの外径面とプーリの内径面は、捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに軸支されたプーリと、
前記シャフトに係合するワンウェイクラッチを介して前記シャフトに軸支されたクラッチキャリアと、
前記プーリと前記クラッチキャリアの間に係合する捻りバネと、
前記プーリに固定されるとともに前記クラッチキャリアと前記シャフトの間に配置されたスラストブッシュとを備え、前記スラストブッシュはスラストブッシュ係止部を有し、前記クラッチキャリアはクラッチキャリア係止部を有し、前記スラストブッシュ係止部と前記クラッチキャリア係止部は無負荷状態において、前記捻りバネが前記クラッチキャリアから解放しないように協働的に接触し、
前記捻りバネは解放方向に負荷をかけることができ、
前記捻りバネと前記プーリは捻りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有し、
前記捻りバネの外径面とプーリの内径面は、前記捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合する
アイソレータ・デカップラ。
【請求項2】
前記プーリはニードル軸受を介して前記シャフトに軸支される請求項1に記載のアイソレータ・デカップラ。
【請求項3】
シャフトと、
前記シャフトに軸支されたプーリと、
ワンウェイクラッチを介して前記シャフトに軸支されたクラッチキャリアと、
前記プーリと前記クラッチキャリアの間に係合する捻りバネと、
前記プーリに連結されるとともに前記クラッチキャリアと前記シャフトの間に配置され、係止部を備えるスラストブッシュとを備え、
前記クラッチキャリアは、無負荷状態において前記捻りバネが前記クラッチキャリアから解放しないように、前記スラストブッシュ係止部に協働的に係合して前記プーリに対する前記クラッチキャリアの相対回転を制限する係止部を備え、
前記プーリと前記クラッチキャリアの間に係合する捻りバネを備え、
前記捻りバネは解放方向に負荷をかけることができ、
前記捻りバネと前記プーリは捻りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有し、
前記捻りバネの外径面とプーリの内径面は、前記捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合する
アイソレータ・デカップラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捩りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有する、捩りバネとプーリを有するアイソレータ・デカップラに関し、捩りバネの外径面とプーリの内径面は、捩りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合する。
【背景技術】
【0002】
乗用車に使用されるディーゼルエンジンは、良好な燃費により増加している。さらに、ガソリンエンジンは燃費を改善するために圧縮比を増加させている。この結果、ディーゼルとガソリンエンジンのアクセサリ駆動システムは、エンジンの上述した変化により、クランクシャフトからのより大きな振動に打ち勝たなければならない。
【0003】
増加したクランクシャフトの振動と高い加減速度とオルタネータの慣性のため、エンジンのアクセサリ駆動システムは、ベルトのスリップによるベルトの軋み音をしばしば経験している。これはまた、ベルトの作動寿命を短縮させる。
【0004】
クランクシャフトのアイソレータ・デカップラとオルタネータのアイソレータ・デカップラは、エンジンの作動スピード範囲における変化を除去し、またベルトの軋み音を制御するために、高い角振動を伴うエンジンに広く用いられてきた。
【0005】
この技術の代表は、米国特許第7,766,774号明細書であり、これは、オルタネータが自動車のエンジンにおいてサーペンタインベルトによって回転駆動されるようにし、またオルタネータに対してベルトのスピードが変化することができるようにするデカップラを開示する。ハブは、オルタネータとともに回転するために、オルタネータの駆動軸に固定的に支持される。プーリは、ボール軸受によってハブに回転自在に軸支される。むきだしのヘリカルクラッチバネは、サーペンタインベルトによってハブに対してプーリを加速する間、プーリからハブに回転運動を伝達するために、また、ハブに対してプーリを減速する間、ハブがプーリに対してオーバーランすることを可能にするために、ハブとプーリの間に協働的に連結される。好ましくはバネあるいはスリーブであるトルクリミッタは捩りバネの周囲に巻き付けられ、捩りバネを所定の限界値以上のトルクから遮断することにより、捩りの外方への拡大を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされるのは、捩りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有する捩りバネとプーリを有し、捻りバネの外径面とプーリの内径面が、捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合するアイソレータ・デカップラである。本発明はこの必要に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な特徴は、捩りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有する捩りバネとプーリを有し、捻りバネの外径面とプーリの内径面が、捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合するアイソレータ・デカップラである。
【0008】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記述と添付した図面により説明され、明らかになる。
【0009】
本発明は、シャフトと、シャフトに軸支されたプーリと、ワンウェイクラッチを介してシャフトに軸支されたクラッチキャリアと、プーリとクラッチキャリアの間に係合する捻りバネとを備え、捻りバネは解放方向に負荷をかけることができ、捻りバネとプーリは捻りバネの外径面とプーリの内径面の間に所定のクリアランスを有し、捻りバネの外径面とプーリの内径面は、捻りバネのトルク負荷に依存する径方向の拡大によって連続的に摩擦係合するアイソレータ・デカップラである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図6】スラストブッシュとクラッチキャリア係止部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明装置の断面図である。アイソレータ・デカップラはシャフト10を備える。プーリ30は、プーリ30とシャフト10の間に配設されたニードルベアリング20によってシャフト10に軸支される。捻りバネ40はプーリ30とクラッチキャリア50の間に係合する。クラッチキャリア50は、ワンウェイクラッチ60を介してシャフト10に軸支される。例えば、バネ40のバネ定数は約0.27Nm/degであるが、この装置の作動の要求に合わせて、他のバネ定数がユーザによって選択されてもよい。
【0012】
プーリ30はさらに、プーリ30とシャフト10の間に配設された軸受70によってシャフト10に軸支される。
【0013】
スラストブッシュ80はクラッチキャリア50と軸受70の間に配設される。ダストカバー90は異物が外部から本装置に入り込むのを防止する。カバー33はプーリ30に圧入される。バネ40の端部はカバー33の受容部34に係合する。
【0014】
エンジンの加速または一定スピードのための作用において、バネ40は解放方向に負荷がかかり、ワンウェイクラッチ60はロックされる。力はベルト(図示せず)からプーリ30に伝達され、バネ40、クラッチキャリア50およびワンウェイクラッチ60からシャフト10へ伝わる。力が駆動方向にかかるとき、バネ40は解放しようとし、この結果、バネの外径(OD)の面42は、各バネの渦巻きの半径(R)の増加により、径方向の外方に拡大する。バネ40の解放の最大量は、プーリ30の内径(ID)の面32に徐々に接触する、各バネ40の渦巻きの外径の面42によって制限される。解放の程度は作用するトルク負荷に依存する。したがって、トルク負荷が増加すると、面32に接触するバネ面42の大きさは増加し、トルク負荷が減少すると、面32に接触するバネ面42の大きさは減少する。
【0015】
バネの外径とプーリの内径の間のクリアランス(C)は、バネ40の解放された半径の拡大を決定するとともに制限し、これは、延いてはバネ40が過負荷になるのを防止する。バネ面42が十分に拡大して面32に接触したときである完全なロックアップ状態において、バネ40はプーリ面32の内側に完全に閉じ込められ、これにより、作用するトルク負荷が増加し続けるとしても、損傷が防止される。
【0016】
エンジンの減速状態において、駆動ベルト(図示せず)は遅くなり、したがってプーリ30も遅くなるが、その慣性のため、シャフト10に連結されたオルタネータ(図示せず)は、ほとんどの場合、プーリ30と同じくらいに早く回転数を下げない。実際には、オルタネータがエンジン(図示せず)を駆動しようとし、動力の向きは逆になる。これはシステムを過回転させ、ベルトがプーリに対してスリップするときに、ベルトの軋み音を生じさせる。本発明装置を使用すると、減速度における差により、ワンウェイクラッチが過回転するシャフト10をプーリ30から外させる。オルタネータとシャフト10は、プーリ30の速さにほぼ合致するまで、一定の減速度で減速し続け、そのときワンウェイクラッチ60は再び係合する。このような非結合は、通常の使用においてエンジンが加減速するときに、衝撃がベルトシステムに作用することを防止する。
【0017】
図2は分解図である。スラストブッシュ80はプーリ30の内径内に圧入される。軸受70はシャフト10のカラー11に係合する。ダストカバー90はプーリ30にスナップ結合する。ワンウェイクラッチ60はシャフト10に対して軸方向に摺動自在に嵌合し、反転トルクによってロックアップする。クラッチキャリア50はワンウェイクラッチ60に圧入される。捻りバネ40の渦巻きは矩形断面を有する。矩形断面はプーリの内径に接触するのに有効な表面積を増加させる。軸受20はシャフト10に摺動自在に嵌合する。
【0018】
スラストブッシュ80は軸受70に係合し、プーリ30とクラッチキャリア50の軸方向の変位を防止する。
【0019】
図3は本発明装置の側面図である。プーリ係合面31はマルチリブド面であるが、歯付き、平、あるいは単一のV溝を含む、いかなる表面形状であってもよい。
【0020】
図4はクラッチキャリアの詳細である。バネ受容部52は、本装置が駆動方向に動作しているときに捻りバネ41の端部を受容する。
【0021】
図5はスラストブッシュの詳細である。スラストブッシュ80はプーリの内径内に圧入される鋼製リングを備える。スラストブッシュ80は鋼製リング82にオーバーモールドされたプラスチック81を備える。
【0022】
スラストブッシュの摺動面81は、クラッチキャリア50の係止部51に係合する係止部83を備える。負荷がかかったバネが動作中に解放されると、スラストブッシュはバネを制限し、クラッチキャリアは係止部83と係止部51の接触により逆方向に移動し、これによりバネの端部41がクラッチキャリア50内のバネ連結スロット52から外れるのを阻止する。さらに、係止部同士の係合はクラッチキャリアの相対回転を制限し、捩じりバネのプーリに対する相対回転を制限する。
【0023】
本装置は以下のようにして製造される。プーリのIDは±0.015mmの公差である。バネのODは±0.03mmの公差で研磨される。組立ての間、グリースがバネ42のODとプーリ32のIDの間に塗布され、係止部51、83の係合が和らげられる。例えば、バネのOD=42mmに対し、開始時において、バネのODは約0.024mm/degで拡大する。
【0024】
組立ての間、スラストブッシュ81は、係止部83がクラッチキャリア係止部51に係合するように装着される。係止部83、51の機能は、バネのエネルギの解放あるいは負荷の逆転時に、バネの端部41が部分52から脱落することを阻止することである。係止部はバネ40にいかなる予負荷を与えることも意図しておらず、また本装置の無負荷状態のときに接触しない。しかし、組立て工程の違いによって、組立てられる装置はごくわずかの予負荷、あるいは係止部83、51またはバネの端部の受容部の間の非常に小さな間隙を有しているかもしれず、これらは組立て工程において調製可能である。
【0025】
開始時にクラッチキャリア50とクラッチキャリア係止部51は、スラストブッシュ係止部83に対して、無負荷の係合位置から約60度撓む。
図6はスラストブッシュとクラッチキャリアの係止部の斜視図である。
【0026】
本発明の形態が説明されたが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と関連した部分に種々の変形を施すことは、当業者にとって自明である。
【国際調査報告】