(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
組換えベクターは、サルアデノウイルスA1302(SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及び/又はSAdV−1337配列及び調節配列の調節下における異種遺伝子を含む。サルアデノウイルスSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及び/又はSAdV−1337遺伝子を発現する細胞系も開示される。ベクター及び細胞系の使用方法を提供する。
(a)SAdV−A1302のヘキソンタンパク質、配列番号:9のアミノ酸1〜950;SAdV−A1320のヘキソンタンパク質、配列番号:34のアミノ酸1〜943;SAdV−A1331のヘキソンタンパク質、配列番号:59のアミノ酸1〜944;SAdV−A1337のヘキソンタンパク質、配列番号:86のアミノ酸1〜931;
(b)SAdV−A1302のペントンタンパク質、配列番号:5のアミノ酸1〜528;SAdV−A1320のペントンタンパク質、配列番号:29のアミノ酸1〜542;SAdV−A1331のペントンタンパク質、配列番号:54のアミノ酸1〜539;SAdV−A1337のペントンタンパク質、配列番号:81のアミノ酸1〜532;ならびに
(c)SAdV−A1302の繊維タンパク質、配列番号:19のアミノ酸1〜440;SAdV−A1320の繊維タンパク質、配列番号:44のアミノ酸1〜445;SAdV−A1331の繊維タンパク質、配列番号:69のアミノ酸1〜445;SAdV−A1337の繊維タンパク質、配列番号:96のアミノ酸1〜490;
より成る群から選ばれるキャプシドタンパク質を含んでなるキャプシドを有するアデノウイルスであって、該キャプシドは宿主細胞中における遺伝子の転写、翻訳及び/又は発現を指示する発現調節配列に操作可能に連結された遺伝子を保有する異種分子を包膜しているアデノウイルス。
該ベクターがSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−1337から選ばれる1種より多いキャプシドタンパク質を含む請求項5に従うアデノウイルス。
サルアデノウイルスヘキソンタンパク質のフラグメントを含有するヘキソンを含んでなるキャプシド及びSAdVに異種である核酸配列を有する組換えアデノウイルスであって、SAdVヘキソンタンパク質のフラグメントは長さが約50個のアミノ酸のN−末端もしくはC−末端切断を有する配列番号:9、34、59又は86のSAdVヘキソンタンパク質であるか、あるいは
配列番号:9、34、59又は86のアミノ酸残基125〜443;
配列番号:9、34、59又は86のアミノ酸残基138〜441;
配列番号:9、34、59又は86のアミノ酸残基138〜163;
配列番号:9、34、59又は86のアミノ酸残基170〜176;及び
配列番号:9、34、59又は86のアミノ酸残基404〜430
より成る群から選ばれる組換えアデノウイルス。
キャプシドがさらにSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−1337繊維タンパク質を含む請求項7に従う組換えアデノウイルス。
該アデノウイルスが、複製及び包膜に必要な5’及び3’アデノウイルスシス−要素を含んでなるシュードタイプ(pseudotyped)アデノウイルスであり、該シス−要素はアデノウイルス5’逆方向末端反復及びアデノウイルス3’逆方向末端反復を含んでなる請求項7に従う組換えアデノウイルス。
請求項20に従う組成物を患者に送達することを含んでなるアデノウイルスレセプターを有する細胞を標的化するための方法であって、該組成物はヘキソン、ペントン及び繊維から選ばれる1種もしくはそれより多いサルアデノウイルスSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−1337タンパク質を含む方法。
標的細胞への分子の送達に有用な薬剤の製造における請求項1〜6のいずれか1つに従うアデノウイルス又は請求項7〜14のいずれか1つに従う組換えアデノウイルスの使用。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な記述
すべてチンパンジーの排泄物から単離されたサルアデノウイルス、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337からの新規な核酸及びアミノ酸配列を提供する。
【0014】
組換えタンパク質又はフラグメント又は他の試薬の試験管内作製における使用のための、これらの配列に基づく新規なアデノウイルスベクター及びベクターの作製のためのパッケージング細胞系も提供する。治療又はワクチン目的のための異種分子の送達における使用のための組成物をさらに提供する。そのような治療又はワクチン組成物は、挿入された異種分子を保有するアデノウイルスベクターを含有する。さらに、新規なSAdV配列は
、組換えアデノ−関連ウイルス(AAV)ベクターの作製に必要な必須(essential)ヘルパー機能を与えることにおいて有用である。かくしてそのような作製方法においてこれらの配列を使用するヘルパー構築物、方法及び細胞系を提供する。
【0015】
核酸又はそのフラグメントに言及する場合、「実質的相同性」又は「実質的類似性」という用語は、適したヌクレオチド挿入又は欠失を以て別の核酸(又はその相補体)と最適に整列させた時に、整列した配列の約96%、約97%、約98%及び約99%を含んで少なくとも約95〜99%においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。
【0016】
アミノ酸又はそのフラグメントに言及する場合、「実質的相同性」又は「実質的類似性」という用語は、適したアミノ酸挿入又は欠失を以て別のアミノ酸(又はその相補体)と最適に整列させた時に、整列した配列の約96%、約97%、約98%及び約99%を含んで少なくとも約95〜99%においてアミノ酸配列同一性があることを示す。好ましくは、相同性は全長配列もしくはそのタンパク質又は長さが少なくとも8個のアミノ酸、又はより望ましくは少なくとも15個のアミノ酸であるそのフラグメントに及ぶ。適したフラグメントの例は、本明細書に記載される。
【0017】
核酸配列の関係における「パーセント配列同一性」又は「同一」という用語は、最大の一致に関して整列させた時に、2つの配列中で同じである残基を指す。1つの配列を別の配列と整列させるためにギャップ(gaps)が必要な場合、ギャップのペナルティーなしでより長い方の配列に関してスコアリング(scoring)の程度を計算する。ポリヌクレオチド又はそれによりコードされるポリペプチドの機能性(functionality)を保存している配列は、より密接に同一である。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長(例えば約36kbp)、遺伝子のオープンリーディングフレーム、タンパク質、サブユニットもしくは酵素の全長(例えばアデノウイルスコード領域を与える表を参照されたい)に及ぶことができるか、あるいは少なくとも約500〜5000個のヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしながら、例えば少なくとも約9個のヌクレオチド、通常少なくとも約20〜24個のヌクレオチド、少なくとも約28〜32個のヌクレオチド、少なくとも約36個かもしくはそれより多くのヌクレオチドのより小さいフラグメントの間の同一性も望ましいかも知れない。類似して、「パーセント配列同一性」を、タンパク質の全長又はそのフラグメントに及んで、アミノ酸配列に関して容易に決定することができる。適切には、フラグメントは長さが少なくとも8個のアミノ酸であり、最高で約700個のアミノ酸であることができる。適したフラグメントの例は本明細書に記載される。
【0018】
同一性は、デフォルト設定において本明細書で定義されるようなアルゴリズム及びコンピュータープログラムを用いて容易に決定される。好ましくは、そのような同一性はタンパク質、酵素、サブユニットの全長に及ぶか、あるいは長さが少なくとも8個のアミノ酸のフラグメントに及ぶ。しかしながら、同一性は、同一の遺伝子の産物が供されている使用に適したもっと短い領域に基づくことができる。
【0019】
本明細書に記載される通り、整列は、公共的又は商業的に入手可能な多様な複数配列整列プログラム(Multiple Sequence Alignment Programs)のいずれか、例えばインターネット上のウェブサービスを介してアクセス可能な“Clustal W”を用いて行われる[Thompson et al著,1994,Nucleic Acids Res,22,4673−4680]。あるいはまた、Vector NTI(登録商標)ユーティリティー[In Vitrogen]も用いられる。上記のプログラム中に含有されるものを含む、ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いられ得る当該技術分野において既知の複数のアルゴリズムもある。他の例として、GCG Version 6.1中のプログラムであるFastaを用いてポリヌ
クレオチド配列を比較することができる。Fastaは、クエリー及びサーチ配列(query and search sequences)の間の最大の重なりの領域の整列及びパーセント配列同一性を与える。例えば引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるGCG Version 6.1に与えられるようなそのデフォルトパラメーター(6のワードサイズ(word size)及びスコアリングマトリックスに関するNOPAM因子)を有するFastaを用いて、核酸配列の間のパーセント配列同一性を決定することができる。類似して、アミノ酸整列を行うためのプログラムが入手可能である。一般にこれらのプログラムはデフォルト設定で用いられるが、当該技術分野における熟練者はこれらの設定を必要通りに変えることができる。あるいはまた、当該技術分野における熟練者は、少なくとも言及されたアルゴリズム及びプログラムにより与えられるレベルのような同一性又は整列のレベルを与える別のアルゴリズム及びコンピュータープログラムを用いることができる。
【0020】
ポリヌクレオチドに適用される場合、「組換え」は、ポリヌクレオチドがクローニング、制限又は連結段階ならびに自然において見出されるポリヌクレオチドと異なる構築物を生ずる他の方法の種々の組み合わせの産物であることを意味する。組換えウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含んでなるウイルス粒子である。その用語はそれぞれ最初のポリヌクレオチド構築物の複製物及び最初のウイルス構築物の子孫を含む。
【0021】
典型的に、「異種」は、それが比較されている存在の残部の遺伝子型と遺伝子型が異なる存在から誘導されることを意味する。異種核酸配列は、アデノウイルスベクターの天然に存在する核酸配列から単離されておらず、それから誘導されておらず、又はそれに基づいていない核酸配列を指す。「天然に存在する」は、自然において見出され、合成的に製造されたり改変されたりしていない配列を意味する。配列は、それが供給源から単離されるが、供給源遺伝子の正常な機能を崩壊させないように改変される(例えば欠失、置換(突然変異)、挿入又は他の改変により)時に、供給源に「由来する」。配列は、配列が供給源に実質的に類似である場合に、供給源に「基づく」。
【0022】
例えば遺伝子工学法により異なる種(及び多くの場合に異なる属、亜科又は科)から誘導されるプラスミド又はベクター中に導入されるポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである。本来のコード配列から取り出され、それが天然に連結しているのが見出されないコード配列に操作可能に(operatively)連結したプロモーターは、異種プロモーターである。ウイルス又はウイルスベクターのゲノム中にクローニングされ、ここでウイルスのゲノムはそれを天然には含有していない特定の組換え部位は、異種組換え部位である。異種核酸配列には、アデノウイルスゲノム中に天然に見出されるが、アデノウイルスベクター内で本来の位置ではない位置に置かれた配列も含まれる。リコンビナーゼに関するコード配列を有するポリヌクレオチドが、正常にはリコンビナーゼを発現しない細胞を遺伝子的に改変するために用いられる場合、ポリヌクレオチド及びリコンビナーゼの両方は細胞にとって異種である。
【0023】
異種ワクチンは、1種のウイルス又はウイルスベクターが別の種の病原性ウイルスに対する免疫性を誘導するために導入される状況を指す。この場合、「異種」という用語は、異なる種、属、亜科又は科特異性を有するウイルスから誘導される接種抗原(inoculating antigen)及びチャレンジ抗原(challenge antigen)を指す。
【0024】
本明細書及び請求項を通じて用いられる場合、「含む(comprise)」という用語ならびに他の変形の中でも「含む(comprises)」、「含んでなる(comprising)」を含むその変形は、他の成分、要素、整数、段階などを包含する。「から成る(consists of )」又は「から成る(consisting of)
」という用語は、他の成分、要素、整数、段階などを排除する。
【0025】
I.サルアデノウイルス配列
本発明は、サルアデノウイルスSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337の核酸配列及びアミノ酸配列を提供し、それらはそれらが自然において関連している他の材料から単離される。
【0026】
A.核酸配列
本明細書で提供されるSAdV−A1302核酸配列は、配列番号:1のヌクレオチド1−36430を含む。本明細書のSAdV−A1320核酸配列は、配列番号:25のヌクレオチド1−36603を含む。本明細書で提供されるSAdV−A1331核酸配列は、配列番号:50のヌクレオチド1−36647を含む。本明細書で提供されるSAdV−A1337核酸配列は、配列番号:77の1−36639を含む。引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる配列表を参照されたい。
【0027】
1つの態様において、本発明の核酸配列はさらに、配列番号:1、25、50又は77の配列にそれぞれ相補的である鎖ならびに配列及びそれらの相補体に対応するRNA及びcDNA配列を包含する。別の態様において、核酸配列はさらに、配列表に98.5%より大きく同一、好ましくは約99%より大きく同一である配列を包含する。1つの態様において、配列番号:1、25、50又は77及びそれらの相補体中に与えられる配列の天然の突然変異体及び操作された(engineered)改変も含まれる。そのような改変には、例えば当該技術分野において既知の標識、メチル化及び縮重ヌクレオチドを用いる天然に存在する1個もしくはそれより多いヌクレオチドの置換が含まれる。
【0031】
1つの態様において、配列番号:1、25、50又は77の配列及びそれらの相補体、それに相補的なcDNA及びRNAのフラグメントを、それに実質的な相同性を有するフラグメントと一緒に提供する。適したフラグメントは長さが少なくとも15個のヌクレオチドであり、機能性フラグメント、すなわち生物学的に興味深いフラグメントを包含する。例えば機能性フラグメントは所望のアデノウイルス産物を発現することができるか、あるいは組換えウイルスベクターの作製において有用であり得る。そのようなフラグメントは、本明細書中に挙げられる遺伝子配列及びフラグメントを含む。表は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337配列中の転写領域及びオープンリーディングフレームを与える。ある遺伝子の場合、転写物及びオープンリーディングフレーム(ORFs)は、配列番号:1、25、50又は77において示される鎖に相補的な鎖上に位置する。例えばE2a、E2b及びE4を参照されたい。コードされるタンパク質の計算される分子量も示す。E1aオープンリーディングフレーム、E2bオープンリーディングフレーム及びE4オープンリーディングフレームが内部スプライス部位を含有することに注目されたい。これらのスプライス部位を上記の表中に記す(are noted)。
【0032】
SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルス核酸配列は、治療薬としてならびに多様なベクター系及び宿主細胞の構築において有用である。本明細書で用いられる場合、ベクターには、裸のDNA、プラスミド、ウイルス、コスミド又はエピソームを含むいずれの適した核酸分子も含まれる。これらの配列及び産物を単独で、あるいは他のアデノウイルス配列又はフラグメントと組み合わせてあるいは他のアデノウイルス配列又は非−アデノウイルス配列からの要素と組み合わせて用いることができる。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列は、アンチセンス送達ベクター、遺伝子治療ベクター又はワクチンベクターとしても有用である。かくしてSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列を含有する核酸分子、遺伝子送達ベクター及び宿主細胞をさらに提供する。
【0033】
例えば本発明は、本発明のサルAd ITR配列を含有する天然に存在しない核酸分子を包含する。「天然に存在しない」は、自然において見出され得ず、組換え、遺伝子工学又は他の方法を介して、合成され、配列し直され、又は改変された配列又は遺伝子要素を、それらを含有するベクター及び宿主細胞からの子孫と一緒に指す。別の例において、本発明は、所望のAd遺伝子産物をコードする本発明のサルAd配列を含有する核酸分子を提供する。本発明の配列を用いて構築されるさらに別の核酸分子は、本明細書で与えられる情報を見て、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0034】
1つの態様において、本明細書で同定されるサルAd遺伝子領域を、細胞への異種分子の送達のための多様なベクターにおいて用いることができる。例えばパッケージング宿主細胞においてウイルスベクターを生成させる目的で、アデノウイルスキャプシドタンパク質(又はそのフラグメント)の発現のためのベクターを作製する。そのようなベクターをトランスでの発現(expression in trans)のために設計することができる。あるいはまた、所望のアデノウイルス機能を発現する配列、例えばE1a、E1b、末端反復配列、E2a、E2b、E4、E4ORF6領域の1つもしくはそれより多くを安定して含有する細胞を与えるベクターを設計する。
【0035】
さらに、アデノウイルス遺伝子配列及びそのフラグメントは、ヘルパー−依存性ウイルス(例えば必須の機能が欠失したアデノウイルスベクター又はアデノ−関連ウイルス(AAV))の作製のために必要なヘルパー機能を与えるために有用である。そのような作製法のために、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列を、ヒトAdに関して記載されているやり方に類似したやり方で、そのような方法において利用することができる。しかしながら、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列とヒトAdの配列の間の配列における相違のために、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列の使用は、rAAV作製の間に感染性アデノウイルス性汚染物を作製し得るヒトAd E1機能を保有する宿主細胞、例えば293細胞におけるヘルパー機能を用いる相同的組換えの可能性を非常に縮小するか(greatly minimize)又は排除する。
【0036】
アデノウイルスヘルパー機能を用いるrAAVの作製法は、ヒトアデノウイルス血清型を用いて文献に詳細に記載されている。例えば米国特許第6,258,595号明細書及びそこで引用されている引用文献を参照されたい。米国特許第5,871,982号明細書;国際公開第99/14354号パンフレット;国際公開第99/15685号パンフレット;国際公開第99/47691号パンフレットも参照されたい。これらの方法を、ヒト以下霊長類AAV血清型を含むヒト以下血清型AAVの作製においても用いることができる。必要なヘルパー機能を与えるSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、DNAポリメラーゼ及び/又はE4 ORF6)は、典型的にはヒト起源であるrAAV−パッケージング細胞中に存在する他のアデノウイルスを用いる組換えの可能性を最小にするか又は排除しながら、必要なアデノウイルス機能を与えることにおいて、特に有用であり得る。かくしてSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列の選ばれた遺伝子又はオープンリーディングフレームをこれらのrAAV作製法において利用することができる。
【0037】
あるいはまた、組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターをこれらの方法において利用することができる。そのような組換えアデノウイルスサルベクターには、例えばチンパンジーAd配列が、例えばAAV3’及び/又は5’ITRsならびに導入遺伝子の発現を調節する調節配列の調節下における導入遺伝子から成るrAAV発現カセットにフランキングしているハイ
ブリッドチンパンジーAd/AAVが含まれ得る。当該技術分野における熟練者は、さらに別のサルアデノウイルスベクター及び/又はSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337遺伝子配列がrAAV及びアデノウイルスヘルパーに依存性の他のウイルスの作製に有用であろうことを認識するであろう。
【0038】
さらに別の態様において、核酸分子は、所望の生理学的効果を達成するために、宿主細胞における選ばれたアデノウイルス遺伝子産物の送達及び発現のために設計される。例えばSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337 E1aタンパク質をコードする配列を含有する核酸分子を、ガン治療薬としての使用のために患者に送達することができる。場合により、そのような分子は脂質に基づく担体中で調製され、優先的にガン細胞を標的とする。そのような調製物を他のガン治療薬(例えばシスプラチン、タキソールなど)と組み合わせることができる。本明細書に与えられるアデノウイルス配列に関するさらに別の使用は、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0039】
さらに、当該技術分野における熟練者は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列を、治療用分子及び免疫原性分子の試験管内、生体外又は生体内送達用の多様なウイルス及び非−ウイルスベクター系のための使用に容易に適合させ得ることを容易に理解するであろう。例えばSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337サルAd配列を多様なrAd及び非−rAdベクター系において利用することができる。そのようなベクター系には、中でも例えばプラスミド、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクチニアウイルス及びアデノ−関連ウイルス系が含まれ得る。これらのベクター系の選択は、本発明の制限ではない。
【0040】
本発明はさらに、本発明のサル及びサル−由来タンパク質の作製のために有用な分子を提供する。本発明のサルAd DNA配列を含むポリヌクレオチドを保有するそのような分子は、裸のDNA、プラスミド、ウイルス又は他の遺伝子要素の形態にあることができる。
【0041】
B.SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルスタンパク質
本明細書に記載されるアデノウイルス核酸によりコードされるタンパク質、酵素及びそれらのフラグメントのようなSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルスの遺伝子産物を提供する。他の方法により作製される、これらの核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337タンパク質、酵素及びそれらのフラグメントがさらに包含される。そのようなタンパク質には、上記の表中で同定されたオープンリーディングフレームによりコードされるもの、配列表中で与えられる配列番号に関連して(with reference to)下記の表中で同定されるタンパク質ならびにそれに実質的な相同性を有する配列が含まれる。本明細書で同定されるタンパク質及びポリペプチドのフラグメントも、それに実質的な相同性を有するフラグメントとともに示す。
【0043】
かくして1つの側面において、実質的に純粋である、すなわち他のウイルス性及びタン
パク質性タンパク質を含まない独特のサルアデノウイルスタンパク質を提供する。好ましくは、これらのタンパク質は少なくとも10%均一(homogeneous)であり、より好ましくは60%均一であり、そして最も好ましくは95%均一である。
【0044】
1つの態様において、独特のサル−由来キャプシドタンパク質を提供する。本明細書で用いられる場合、サル−由来キャプシドタンパク質には、上記で定義されたSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドタンパク質又はそれらのフラグメントを含有するいずれのアデノウイルスキャプシドタンパク質も含まれ、キメラキャプシドタンパク質、融合タンパク質、人工キャプシドタンパク質、合成キャプシドタンパク質及び組換えキャプシドタンパク質が含まれるがこれらに限られず、これらのタンパク質作製の手段への制限はない。本明細書で記載されるキャプシドは完全にSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337の1つのものであることができるか、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337の1つより多くのキャプシドタンパク質を含有することができるか、あるいは別のアデノウイルスのキャプシドタンパク質を含有することができる。
【0045】
適切には、これらのサル−由来キャプシドタンパク質は、1つもしくはそれより多いSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337領域又はそれらのフラグメント(例えばヘキソン、ペントン、繊維又はそれらのフラグメント)を、種々のアデノウイルス血清型のキャプシド領域又はそのフラグメントあるいは本明細書で記載される改変されたサルキャプシドタンパク質又はそのフラグメントと組み合わせて含有する。本明細書で用いられる場合、「改変された親和性と関連するキャプシドタンパク質の改変」は、特異性が変わるように改変されたキャプシドタンパク質、すなわちペントン、ヘキソン又は繊維タンパク質領域又はそれらのフラグメント、例えば繊維領域のノブ(knob)ドメイン又はそれをコードするポリヌクレオチドが含まれる。サル−由来キャプシドを、本発明のサルAdの1つもしくはそれより多くあるいはヒト又はヒト以下起源のものであることができる別のAd血清型を用いて構築することができる。ATCC、商業的及び学術的供給源を含む多様な供給源からそのようなAdを得ることができるか、あるいはGenBank又は他の適した供給源からAdの配列を得ることができる。
【0046】
SAdV−A1302[配列番号:5]、SAdV−A1320[配列番号:29]、SAdV−A1331[配列番号:54]又はSAdV−A1337[配列番号:81]のペントンタンパク質のアミノ酸配列を提供する。適切には、このペントンタンパク質又はその独特のフラグメントを多様な目的のために利用することができる。適したフラグメントの例には、上記及び配列番号:5、29、54又は81中に与えられるアミノ酸番号付けに基づく、約50個、100個、150個又は200個のアミノ酸のN−末端及び/又はC−末端切断(truncation)を有するペントンが含まれる。他の適したフラグメントには、もっと短い内部、C−末端又はN−末端フラグメントが含まれる。さらに、当該技術分野における熟練者に既知の多様な目的のためにペントンタンパク質を改変することができる。
【0047】
SAdV−A1302[配列番号:9]、SAdV−A1320[配列番号:34]、SAdV−A1331[配列番号:59]又はSAdV−A1337[配列番号:86]のヘキソンタンパク質のアミノ酸配列も提供する。適切には、このヘキソンタンパク質又はその独特のフラグメントを多様な目的のために利用することができる。適したフラグメントの例には、上記及び配列番号:9、34、59又は86中に与えられるアミノ酸番号付けに基づく、約50個、100個、150個、200個、300個、400個又は500個のアミノ酸のN−末端及び/又はC−末端切断を有するヘキソンが含まれる。他の適
したフラグメントには、もっと短い内部、C−末端又はN−末端フラグメントが含まれる。例えば1つの適したフラグメントは、DE1及びFG1と称されるヘキソンタンパク質のループ領域(ドメイン)又はその超可変領域である。そのようなフラグメントには、配列番号:9、34、59又は86を参照して、サルヘキソンタンパク質のアミノ酸残基の大体(about)125−443;大体138−441に及ぶ領域あるいはもっと小さいフラグメント、例えば大体残基138−残基163;大体170−大体176;大体195−大体203;大体233−大体246;大体253−大体374;大体287−大体297;及び大体404−大体430に及ぶフラグメントが含まれる。当該技術分野における熟練者は、他の適したフラグメントを容易に同定することができる。さらに、当該技術分野における熟練者に既知の多様な目的のためにヘキソンタンパク質を改変することができる。ヘキソンタンパク質はアデノウイルスの血清型に関する決定因子であるので、そのような人工のヘキソンタンパク質は人工の血清型を有するアデノウイルスを生ずる。本発明のチンパンジーAdペントン配列及び/又は繊維配列及び/又はそれらのフラグメントを用いて、他の人工のキャプシドタンパク質を構築することもできる。
【0048】
1つの態様において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ヘキソンタンパク質の配列を利用して改変されたヘキソンタンパク質を有するアデノウイルスを作製することができる。1つの適したヘキソンタンパク質の改変法は、米国特許第5,922,315号明細書に記載されており、その記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。この方法では、アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域が別のアデノウイルス血清型の少なくとも1つのループ領域を用いて変更される。かくして、そのような改変されたアデノウイルスヘキソンタンパク質の少なくとも1つのループ領域は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337のサルAdヘキソンループ領域である。1つの態様において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ヘキソンタンパク質のループ領域を、別のアデノウイルス血清型からのループ領域により置き換える。別の態様において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ヘキソンのループ領域を用いて、別のアデノウイルス血清型からのループ領域を置き換える。本明細書に記載する通り、ヒト及びヒト以下血清型の中から適したアデノウイルス血清型を容易に選ぶことができる。適した血清型の選択は、本発明の制限ではない。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ヘキソンタンパク質配列に関するさらに別の使用は、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0049】
SAdV−A1302[配列番号:19]、SAdV−A1320[配列番号:44]、SAdV−A1331[配列番号:69]又はSAdV−A1337[配列番号:96]の繊維タンパク質のアミノ酸配列を提供する。適切には、この繊維タンパク質又はその独特のフラグメントを多様な目的のために利用することができる。1つの適したフラグメントは、配列番号:19、44、69又は96内に位置するファイバーノブ(fiber
knob)である。他の適したフラグメントの例には、配列番号:19、44、69又は96中に与えられるアミノ酸番号付けに基づく約50個、100個、150個又は200個のアミノ酸のN−末端及び/又はC−末端切断を有する繊維が含まれる。さらに別の適したフラグメントには内部フラグメントが含まれる。さらに、当該技術分野における熟練者に既知の多様な方法を用いて、繊維タンパク質を改変することができる。
【0050】
SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337のタンパク質の独特のフラグメントは、長さが少なくとも8個のアミノ酸である。しかしながら、他の所望の長さのフラグメントを容易に利用することができる。さらに、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV
−A1337遺伝子産物の収率及び/又は発現を強化するために導入され得るような改変、例えばSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337遺伝子産物のすべて又はフラグメントを強化のための融合パートナーと融合させる(直接又はリンカーを介して)融合分子の構築を本明細書で提供する。他の適した改変には、通常切断されるプレ−又はプロ−タンパク質を除去するため及び成熟タンパク質又は酵素を与えるためのコード領域(例えばタンパク質又は酵素)の切断ならびに/あるいは分泌性遺伝子産物を与えるためのコード領域の突然変異が含まれるが、制限ではない。さらに別の改変は、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。本明細書で提供されるSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337タンパク質に少なくとも約98%、約99%、約99.5%又は約99.9%の同一性を有するタンパク質がさらに包含される。
【0051】
本明細書に記載する通り、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337のアデノウイルスキャプシドタンパク質を含有する本発明のベクターは、中和抗体が他のAd血清型に基づくベクターならびに他のウイルスベクターの有効性を低下させる用途における使用に特に十分に適している。rAdベクターは、繰り返し遺伝子治療又は追加の免疫反応(boosting immune response)(ワクチン力価)のための再投与において特に有利である。
【0052】
ある状況下では、抗体を作製するためにSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337遺伝子産物(例えばキャプシドタンパク質又はそのフラグメント)の1つもしくはそれより多くを用いるのが望ましいかも知れない。本明細書で用いられる場合、「抗体」という用語は、エピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。抗体は、例えば高親和性ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、キメラ抗体、組換え抗体及びヒト化抗体を含む多様な形態で存在することができる。そのような抗体は、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEに由来する。
【0053】
当該技術分野において既知の複数の方法を用いて、そのような抗体を作製することができる。周知の通常の方法、例えばKohler and Milstein及びその多くの既知の修正法により、適した抗体を作製することができる。類似して、望ましい高力価抗体は、これらの抗原に対して生じた(developed)モノクローナル又はポリクローナル抗体に既知の組換え法を適用することにより作製される[例えばPCT特許出願番号PCT/GB85/00392;英国特許出願番号GB2188638A;Amit
et al.,1986 Science,233:747−753;Queen et al.,1989 Proc,Nat’l.Acad.Sci.USA,86:10029−10033;PCT特許出願番号PCT/WO9007861;及びRiechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Huse et al.,1988a Science,246:1275−1281を参照されたい]。あるいはまた、本発明の抗原への動物又はヒト抗体の相補性決定領域を操作することにより、抗体を作製することができる。例えばE.Mark andPadlin,“Humanization of Monoclonal Antibodies”,Chapter 4,The Handbook of Experimental Pharmocology,Vol.113,The Pharmacology of
Monoclonal Antibodies,Springer−Verlag(June,1994);Harlow et al.,1999,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.1989,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,198
8,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;及びBird et al.,1988,Science 242:423−437を参照されたい。本発明はさらに、抗イディオタイプ抗体(Ab2)及び抗−抗−イディオタイプ抗体(Ab3)を提供する。例えばM.Wettendorff et al.,”Modulation of anti−tumor immunity by anti−idiotypic antibodies.”In Idiotypic Network and Diseases,ed.by J.Cerny及びJ.Hiernaux,1990 J.Am.Soc.Microbiol.,Washington DC:pp.203−229を参照されたい。これらの抗−イディオタイプ及び抗−抗−イディオタイプ抗体は、当該技術分野における熟練者に周知の方法を用いて作製される。これらの抗体を、診断及び臨床法ならびにキットを含む多様な目的のために用いることができる。
【0054】
ある状況下では、本発明のSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337遺伝子産物、抗体又は他の構築物の上に検出可能な標識又はタグを導入するのが望ましいかも知れない。本明細書で用いられる場合、検出可能な標識は、単独で、又は別の分子と相互作用すると、検出可能なシグナルを与えることができる分子である。最も望ましくは、標識は、免疫組織化学的分析又は免疫蛍光顕微鏡における即時の(ready)使用のために視覚により、例えば蛍光により検出可能である。例えば適した標識にはフルオレセインイソチオシアナート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、コリホスフィン−O(CPO)又はタンデム染料、PE−シアニン−5(PC5)及びPE−Texas Red(ECD)が含まれる。これらの蛍光染料のすべては商業的に入手可能であり、それらの使用は当該技術分野に既知である。他の有用な標識には、コロイド金標識が含まれる。さらに別の有用な標識には放射性化合物又は元素が含まれる。さらに標識には、アッセイにおいて発色シグナル(colorimetric signal)を現すように働く多様な酵素系が含まれ、例えばグルコースオキシダーゼ(基質としてグルコースを用いる)は生成物として過酸化物を放出し、それはペルオキシダーゼ及びテトラメチルベンジジン(TMB)のような水素ドナーの存在下で酸化されたTMBを与え、それは青色として見られる。他の例にはホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ(AP)及びATP、グルコース及びNAD+と反応して、他の生成物の中でも340nmの波長における吸光度の向上として検出されるNADHを与えるグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼと結びついたヘキソキナーゼが含まれる。
【0055】
本明細書に記載される方法において用いられる他の標識系は他の手段により検出可能であり、例えば染料が埋め込まれた着色ラテックス微粒子[Bangs Laboratories,Indiana]が酵素の代わりに用いられ、標的配列と共役体を形成し、適用可能なアッセイにおいて得られる複合体の存在を示す可視のシグナルを与える。
【0056】
標識を所望の分子と結合させるか又は会合させる方法は、同様に当業者に慣用であり既知である。標識結合の既知の方法は記載されている[例えばHandbook of Fluorescent probes and Research Chemicals,6th Ed.,R.P.M.Haugland,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR,1996;Pierce Catalog and Handbook,Life Science and Analytical Research Products,Pierce Chemical Company,Rockford,IL,1994/1995を参照されたい]。かくして標識及び結合法の選択は本発明を制限しない。
【0057】
組換え体作製、化学合成又は他の合成手段を含むいずれの適した手段によっても、SA
dV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337の配列、タンパク質及びフラグメントを作製することができる。適した作製法は当該技術分野における熟練者に周知である。例えばSambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。あるいはまた、周知の固相ペプチド合成法によりペプチドを合成することもできる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1962);Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis(Freeman,San Francisco,1969)pp.27−62)。これらの及び他の適した作製法は、当該技術分野における熟練者の知識の範囲内であり、本発明の制限ではない。
【0058】
さらに当該技術分野における熟練者は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337配列を、治療用分子及び免疫原性分子の試験管内、生体外又は生体内送達用の多様なウイルス及び非−ウイルスベクター系のための使用に容易に適合させ得ることを容易に理解するであろう。例えば1つの態様において、本明細書に記載されるサルAdキャプシドタンパク質及び他のサルアデノウイルスタンパク質は、遺伝子、タンパク質及び他の望ましい診断分子、治療用分子及び免疫原性分子の非−ウイルス性のタンパク質に基づく送達のために用いられる。1つのそのような態様において、本発明のタンパク質は、アデノウイルスに関するレセプターを有する細胞を標的とするために、分子に直接又は間接的に連結される。好ましくは、細胞表面レセプターに関するリガンドを有するヘキソン、ペントン、繊維のようなキャプシドタンパク質又はそれらのフラグメントがそのような標的化のために選ばれる。送達のために適した分子は、本明細書に記載される治療用分子及びそれらの遺伝子産物の中から選ばれる。脂質、ポリリシン(polyLys)などを含む多様なリンカーをリンカーとして利用することができる。例えばMedina−Kauwe LK,et al,Gene Ther.2001 May;8(10):795−803及びMedina−Kauwe LK,et al,Gene Ther.2001 Dec;8(23):1753−1761に記載されているやり方に類似のやり方でサルペントン配列を用いる融合タンパク質の作製により、サルペントンタンパク質をそのような目的のために容易に利用することができる。あるいはまた、米国特許出願第20010047081号明細書に記載されている通り、ベクターを標的として細胞表面レセプターに向けるために、サルAdタンパク質IXのアミノ酸配列を利用することができる。適したリガンドにはCD40抗原、RGD−含有又はポリリシン−含有配列などが含まれる。例えばヘキソンタンパク質及び/又は繊維タンパク質を含むさらに別のサルAdタンパク質を、これらの及び類似の目的のために用いることができる。
【0059】
さらに別のSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルスタンパク質を単独で、又は他のアデノウイルスタンパク質と組み合わせて多様な目的のために用いることができ、目的は当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。さらに、SAdVアデノウイルスタンパク質に関するさらに別の使用は、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0060】
II.組換えアデノウイルスベクター
本明細書に記載される組成物は、治療目的又はワクチン目的のいずれかのために異種分子を細胞に送達するベクターを含む。本明細書で用いられる場合、ベクターには裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミド又はウイルスを含むが制限ではない遺伝子要素が含まれ得る。そのようなベクターは、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337のサルアデノウイルスDNA及びミニ遺伝子を含有する。「ミニ遺伝子」又は「発現カセット」により
、選ばれた異種遺伝子ならびに翻訳、転写及び/又は宿主細胞における遺伝子産物の発現の駆動に必要な他の調節要素の組み合わせを意味する。
【0061】
典型的には、SAdV−A1302−、SAdV−A1320−、SAdV−A1331−又はSAdV−A1337−由来アデノウイルスベクターは、選ばれたアデノウイルス遺伝子にとって本来の領域に他のアデノウイルス配列を含有する核酸分子中にミニ遺伝子が置かれるように設計される。必要なら、ミニ遺伝子を現存する遺伝子領域中に挿入し、その領域の機能を崩壊させることができる。あるいはまた、部分的に又は完全に欠失したアデノウイルス遺伝子の部位中にミニ遺伝子を挿入することができる。例えば、選ばれ得る他の中でも機能性E1欠失又は機能性E3欠失の部位のような部位中にミニ遺伝子を置くことができる。「機能的に欠失した」又は「機能性欠失」という用語は、例えば突然変異又は改変により遺伝子領域の十分な量が除去されるか又はそうでなければ損傷を受け、遺伝子領域がもはや遺伝子発現の機能性産物を生産できないことを意味する。望ましければ、遺伝子領域全体を除去することができる。遺伝子崩壊又は欠失に関する他の適した部位は、出願中の他所で議論される。
【0062】
例えば組換えウイルスの作製のために有用な生産ベクター(production vector)のために、ベクターはミニ遺伝子及びアデノウイルスゲノムの5’末端又はアデノウイルスゲノムの3’末端あるいはアデノウイルスゲノムの5’末端と3’末端の両方を含有することができる。アデノウイルスゲノムの5’末端は、パッケージング及び複製に必要な5’シス−要素;すなわち5’逆方向末端反復(ITR)配列(複製の起点として機能する)及び天然の(native)5’パッケージングエンハンサードメイン(線状Adゲノム及びE1プロモーターのためのエンハンサー要素のパッケージングに必要な配列を含有する)を含有する。アデノウイルスゲノムの3’末端は、パッケージング及び包膜に必要な3’シス−要素(ITRsを含む)を含む。適切には、組換えアデノウイルスは5’及び3’の両方のアデノウイルスシス−要素を含有し、ミニ遺伝子は5’アデノウイルス配列と3’アデノウイルス配列の間に位置する。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337に基づくアデノウイルスベクターは、追加のアデノウイルス配列も含有することができる。
【0063】
適切には、これらのSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337に基づくアデノウイルスベクターは、本発明のアデノウイルスゲノムから誘導される1つもしくはそれより多いアデノウイルス要素を含有する。1つの態様において、ベクターはSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337及び同じアデノウイルス血清型からの追加のアデノウイルス配列からのアデノウイルスITRsを含有する。別の態様において、ベクターは、ITRsを与える血清型と異なるアデノウイルス血清型から誘導されるアデノウイルス配列を含有する。
【0064】
本明細書で定義される場合、シュードタイプ(pseudotyped)アデノウイルスは、アデノウイルスのキャプシドタンパク質がITRsを与えるアデノウイルスと異なるアデノウイルスからのものであるアデノウイルスを指す。
【0065】
さらに、当該技術分野における熟練者に既知の方法を用い、本明細書に記載されるアデノウイルスを用いて、キメラ又はハイブリッドアデノウイルスを構築することができる。例えば米国特許第7,291,498号明細書を参照されたい。
【0066】
ITRsのアデノウイルス源及びベクター中に存在する他のアデノウイルス配列の供給源の選択は、本態様の制限ではない。多様なアデノウイルス株がAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginiaか
ら入手可能であるか、あるいは多様な商業的及び研究的供給源から依頼により入手可能である。さらに、多くのそのような株の配列は、例えばPubMed及びGenBankを含む多様なデータベースから入手可能である。他のサル又はヒトアデノウイルスから調製される相同性アデノウイルスベクターは、公開文献中に記載されている[例えば米国特許第5,240,846号明細書を参照されたい]。Ad5型[GeneBank Accession No.M73370]を含む複数のアデノウイルス型のDNA配列がGenBankから入手可能である。血清型2、3、4、7、12及び40のような、及びさらに現在同定されているヒト型を含むいずれの既知のアデノウイルス型からもアデノウイルス配列を得ることができる。類似して、ヒト以下の動物(例えばサル)に感染することが知られているアデノウイルスを本発明のベクター構築物において用いることもできる。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照されたい。
【0067】
本明細書に記載されるベクターの構築において用いられるウイルス配列、ヘルパーウイルス(必要なら)及び組換えウイルス粒子ならびに他のベクター成分及び配列は、上記の通りに得られる。本発明のSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337サルアデノウイルスのDNA配列は、ベクター及びそのようなベクターの作製において有用な細胞系の構築に用いられる。
【0068】
配列欠失、挿入及び他の突然変異を含む本発明のベクターを形成する核酸配列の改変は、標準的な分子生物学的方法を用いて起こされ得、本態様の範囲内である。
【0069】
A.「ミニ遺伝子」
導入遺伝子の選択、クローニング及び「ミニ遺伝子」の構築及びそのウイルスベクター中への挿入にために用いられる方法は、本明細書に与えられる説明を得て、当該技術分野における熟練の範囲内である。
【0070】
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、導入遺伝子にフランキングするベクター配列にとって異種の核酸配列であり、それは問題のポリペプチド、タンパク質又は他の産物をコードする。核酸コード配列は、宿主細胞における導入遺伝子の転写、翻訳及び/又は発現を可能にするやり方で調節要素に操作可能に連結している。
【0071】
導入遺伝子配列の組成は、得られるベクターが供されるであろう使用に依存するであろう。例えば1つの型の導入遺伝子配列はリポーター配列を含み、それは発現されると検出可能なシグナルを生ずる。そのようなリポーター配列には、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリ性ホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を含む膜結合タンパク質、インフルエンザ血球凝集素タンパク質ならびにそれに向けられた高親和性抗体が存在するか又は通常の手段により作製され得る当該技術分野において周知の他のものならびに中でも血球凝集素又はMycからの抗原タグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列が含まれるが、制限ではない。これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節要素と連合すると、酵素、ラジオグラフィー、発色(colorimetric)、蛍光又は他の分光写真的アッセイ、蛍光活性化細胞分離アッセイならびに酵素結合免疫吸着法(ELIZA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む通常の手段により検出可能なシグナルを与える。例えばマーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを保有するベクターの存在はベータ−ガラクトシダーゼ活性に関するアッセイにより検出される。導入遺伝子がGFP又はルシフェラーゼである場合、シグナルを保有するベクターを、色又はルミノメーターにおける発光により視覚的に測定することができる。
【0072】
1つの態様において、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素又は触媒RNAのような生物学及び医学において有用な産物をコードする非−マーカー配列である。望ましいRNA分子にはtRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNAs及びアンチセンスRNAsが含まれる。有用なRNA配列の1つの例は、処置された動物において標的とされる核酸配列の発現を絶やす配列である。
【0073】
導入遺伝子を、例えば遺伝的欠損(genetic deficiencies)の処置のために、ガン治療薬又はワクチンとして、免疫反応の誘導のために、及び/又は予防的ワクチン目的のために用いることができる。本明細書で用いられる場合、免疫反応の誘導は、分子へのT細胞及び/又は体液性免疫反応を引き起こすその分子(例えば遺伝子産物)の能力を指す。本発明はさらに、例えばマルチ−サブユニットタンパク質(multi−subunit protein)により引き起こされる状態を修正するか又は改善するための多数の導入遺伝子の使用を含む。ある状況において、タンパク質の各サブユニットをコードするため、あるいは種々のペプチド又はタンパク質をコードするために異なる導入遺伝子を用いることができる。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来成長因子又はジストロフィンタンパク質のために望ましい。細胞がマルチ−サブユニットタンパク質を生産するために、細胞を種々のサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに感染させる。あるいはまた、タンパク質の種々のサブユニットを同じ導入遺伝子によりコードすることができる。この場合、1つの導入遺伝子がサブユニットのそれぞれをコードするDNAを含み、各サブユニットのためのDNAは内部リボザイム進入部位(IRES)により隔てられている。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAのサイズが小さい場合、例えばサブユニット及びIRESをコードするDNAの合計サイズが5キロベースより小さい場合に望ましい。IRESの代わりに、DNAは2Aペプチドをコードする配列により隔てられていることができ、それは翻訳後の事象において自己−切断する。例えばM.L.Donnelly,et al,J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13−21(Jan 1997);Furler,S.,et al,Gene Ther.,8(11):864−873(June 2001);Klump H.,et al.,Gene Ther.,8(10):811−817(May 2001)を参照されたい。この2AペプチドはIRESより有意に小さく、空間が制限因子である場合の使用にそれを十分に適したものとしている。しかしながら、選ばれる導入遺伝子はいずれの生物学的に活性な産物又は他の産物も、例えば研究のために望ましい産物をもコードすることができる。
【0074】
当該技術分野における熟練者は容易に適した導入遺伝子を選択することができる。導入遺伝子の選択は、本態様の制限であると思われない。
【0075】
2.調節要素
ミニ遺伝子に関して上記で同定した主要な要素の他に、ベクターは必要な通常の調節要素も含み、それはプラスミドベクターがトランスフェクションされたか、又は本発明により作製されるウイルスに感染した細胞におけるその転写、翻訳及び/又は発現を可能にするやり方で導入遺伝子に操作可能に連結している。本明細書で用いられる場合、「操作可能に連結した」配列は、問題の遺伝子と隣接している発現調節配列及びトランスで(in
trans)又はある距離で作用して問題の遺伝子を調節する発現調節配列の両方を含む。
【0076】
発現調節配列は、適した転写開始、終止、プロモーター及びエンハンサー配列;有効なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシング及びウサギベータ−グロブリンpolyAを含むボリアデニル化(polyA)シグナル;細胞質RNAを安定化する配列;
翻訳有効性を強化する配列(例えばコザック共通配列);タンパク質安定性を強化する配列;ならびに望ましい場合はコードされる産物の分泌を強化する配列を含む。他の配列の中で、キメライントロンを用いることができる。
【0077】
天然の、構成的、誘導可能及び/又は組織−特異的であるプロモーターを含む多数の発現調節配列が当該技術分野において既知であり、利用され得る。構成的プロモーターの例には、TBGプロモーター、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを伴うことができる)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを伴うことができる)[例えばBoshart et al,Cell,41:521−530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター及びEF1αプロモーター[Invitrogen]が含まれるが、制限ではない。
【0078】
誘導可能プロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物により、温度のような環境因子により又は特殊な生理学的状態、例えば急性期(acute phase)、細胞の特定の分化状態の存在により、あるいは複製中の細胞のみにおいて調節され得る。誘導可能プロモーター及び誘導可能系は、Invitrogen、Clontech及びAriadを含むが制限ではない多様な商業的供給源から入手可能である。他の多くの系が記載されており、当該技術分野における熟練者が容易に選択することができる。例えば誘導可能プロモーターには、亜鉛−誘導可能ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター及びデキサメタゾン(Dex)−誘導可能マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーターが含まれる。他の誘導可能系には、T7ポリメラーゼプロモーター系[国際公開第98/10088号パンフレット];エクジソン昆虫プロモーター[No et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351(1996)]、テトラサイクリン−抑制可能系[Gossen et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリン−誘導可能系[Gossen et al,Science,378:1766−1769(1995)、Harvey et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512−518(1988)も参照されたい]が含まれる。他の系にはFK506ダイマー、カストラジオールを使用するVP16又はp65、ジフェノールムリスレロン、RU486−誘導可能系[Wang et al,Nat.Biotech.,15:239−243(1997)及びWang et al,Gene Ther.,4:432−441(1997)]及びパラマイシン−誘導可能系[Magari et al,J.Clin.Invest,100:2865−2872(1997)]が含まれる。いくつかの誘導可能プロモーターの有効性は、時間を経て向上する。そのような場合、複数のリプレッサーを縦列に挿入することにより、そのような系の有効性を強化することができ、例えばIRESによりTetRに連結されたTetRがそうである。あるいはまた、所望の機能に関するスクリーニングの前に少なくとも3日間待つことができる。この系の有効性を強化することが知られている手段により、所望のタンパク質の発現を強化することができる。例えばウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)の使用。
【0079】
別の態様において、導入遺伝子のための天然のプロモーターが用いられるであろう。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣するべきであることが望まれる場合に、天然のプロモーターが好ましいかも知れない。導入遺伝子の発現が一時的に又は発生的に(developmentally)、又は組織−特異的様式で、又は特定の転写刺激に反応して調節されねばならない時に、天然のプロモーターを用いることができる。さらに別の態様において、エンハンサー要素、ボリアデニル化部位又はコザック共通配列のような他の天然の発現調節要素を、天然の発現を模倣するために用いることもできる。
【0080】
導入遺伝子の他の態様は、組織−特異的プロモーターに操作可能に連結された導入遺伝子を含む。例えば骨格筋における発現が望まれる場合、筋肉において活性なプロモーターが用いられるべきである。これらには骨格β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋肉クレアチンキナーゼをコードする遺伝子からのプロモーターならびに天然に存在するプロモーターより高い活性を有する合成筋肉プロモーターが含まれる(Li et
al.,Nat.Biotech.,17:241−245(1999))。組織−特異的であるプロモーターの例は、中でも肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002−9(1996);アルファ−フェトタンパク質(AFP)、Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503−14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185−96(1997));骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654−64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal
et al.,J.Immunol.,161:1063−8(1988);免疫グロブリン重鎖;T細胞レセプター鎖)、ニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Anderson et al.,Cell Mol.Neurobiol.,13:503−15(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子(Piccioli
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611−5(1991))及びニューロン−特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373−84(1995))のようなニューロン性に関して既知である。
【0081】
場合により、治療的に有用な、又は免疫原性である産物をコードする導入遺伝子を保有するベクターは、選択可能なマーカー又はリポーター遺伝子も含むことができ、それには中でもジェネチシン(geneticin)、ハイグロマイシン(hygromicin)又はピューリマイシン(purimycin)耐性をコードする配列が含まれ得る。そのような選択可能なリポーター又はマーカー遺伝子(好ましくはウイルス粒子中に詰め込まれるべきウイルスゲノムの外側に位置する)を用い、アンピシリン(ampicillin)耐性のように、バクテリア細胞中のプラスミドの存在を知らせることができる。ベクターの他の成分には、複製の起点が含まれ得る。これらの、及び他のプロモーターならびにベクター要素の選択は慣習的であり、多くのそのような配列が利用可能である[例えばSambrook et al及びそこで引用されている参照文献を参照されたい]。
【0082】
これらのベクターは、当該技術分野における熟練者に既知の方法と合わせて本明細書において提供される方法及び配列を用いて作製される。そのような方法には、教科書[Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold
Spring Harbor,NY]中に記載されているもののような通常のcDNAのクローニング法、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応及び所望のヌクレオチド配列を与える適した方法が含まれる。
【0083】
III.ウイルスベクターの作製
1つの態様において、サルアデノウイルスプラスミド(又は他のベクター)を用いてアデノウイルスベクターを作製する。1つの態様において、アデノウイルスベクターは、複製−欠損であるアデノウイルス粒子である。1つの態様において、アデノウイルス粒子はE1a及び/又はE1b遺伝子における欠失により複製−欠損とされる。あるいはまた、アデノウイルスは、場合によりE1a及び/又はE1b遺伝子を保持しながら他の手段によって複製−欠損とされる。類似して、いくつかの態様において、E2b及び/又はDN
Aポリメラーゼ遺伝子における欠失により、ベクターへの免疫反応を低下させることができる。アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムへの他の突然変異、例えば温度−感受性突然変異又は他の遺伝子における欠失を含有することもできる。他の態様において、アデノウイルスベクター中に無損傷のE1a及び/又はE1b領域を保持するのが望ましい。そのような無損傷のE1領域はアデノウイルスゲノム中のその天然の位置に位置するか、又は天然のアデノウイルスゲノム中の欠失の部位(例えばE3領域中)に置かれることができる。
【0084】
ヒト(又は他の哺乳類)細胞への遺伝子の送達のための有用なサルアデノウイルスベクターの構築において、ある範囲のアデノウイルス核酸配列をベクター中で用いることができる。例えばアデノウイルス後初期遺伝子(dalayed early gene)E3の全部又は一部を、組換えウイルスの一部を形成するサルアデノウイルス配列から除外することができる。サルE3の機能は、組換えウイルス粒子の機能及び作製と無関係であると思われる。E4遺伝子の少なくともORF6領域、そしてより望ましくはこの領域の機能における重複性の故に、全E4領域の欠失を有するサルアデノウイルスベクターを構築することもできる。本発明のさらに別のベクターは、遅延初期遺伝子E2aにおける欠失を含有する。サルアデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1〜L5のいずれかにおいて欠失を形成することもできる。類似して、中期遺伝子(intermediate genes)IX及びIVa
2における欠失はいくつかの目的のために有用であり得る。他の構造又は非−構造アデノウイルス遺伝子において、他の欠失を形成することができる。上記で議論された欠失を個別に用いることができ、すなわち本明細書に記載される使用のためのアデノウイルス配列は、1つの領域のみに欠失を含有することができる。あるいはまた、遺伝子全体又はその生物学的活性を破壊するのに有効なその一部の欠失を、いずれかの組み合わせにおいて使用することができる。例えば1つの代表的なベクターにおいて、アデノウイルス配列はE1遺伝子とE4遺伝子又はE1、E2a及びE3遺伝子又はE1及びE3遺伝子又はE3遺伝子の欠失を伴うかもしくは伴わないE1、E2a及びE4遺伝子などの欠失を有することができる。上記で議論した通り、そのような欠失を他の突然変異、例えば温度−感受性突然変異と組み合わせて用い、所望の結果を達成することができる。
【0085】
必須のアデノウイルス配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、E4 ORF6、L1、L2、L3、L4及びL5)を欠いているアデノウイルスベクターを、欠けているウイルスの感染性及びアデノウイルス粒子の増殖に必要なアデノウイルス遺伝子産物の存在下で培養することができる。これらのヘルパー機能を、1種もしくはそれより多いヘルパー構築物(例えばプラスミド又はウイルス)あるいはパッケージング宿主細胞の存在下でアデノウイルスベクターを培養することにより与えることができる。例えば1996年5月9日に公開され、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる国際特許出願国際公開96/13597号パンフレットにおいて、「最小」ヒトAdベクターの作製に関して記載されている方法を参照されたい。
【0086】
1.ヘルパーウイルス
かくしてミニ遺伝子の保有のために用いられるウイルスベクターのサルアデノウイルス遺伝子の内容に依存して、ミニ遺伝子を含有する感染性組換えウイルス粒子の作製に必要な十分なサルアデノウイルス遺伝子配列を与えるために、ヘルパーアデノウイルス又は非−複製性ウイルスフラグメントが必要であり得る。有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクター構築物中に存在しない、及び/又はベクターがトランスフェクションされるパッケージング細胞系により発現されない選ばれたアデノウイルス遺伝子配列を含有する。1つの態様において、ヘルパーウイルスは複製−欠損であり、上記の配列に加えて多様なアデノウイルス遺伝子を含有する。そのようなヘルパーウイルスは、望ましくはE1−発現細胞系と組み合わされて用いられる。
【0087】
Wu et al,J.Biol.Chem.,374:16985−16987(1989);K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.,299:49(April 1,1994)に記載されている通り、ヘルパーウイルスをポリ−カチオン共役体中に形成することもできる。ヘルパーウイルスは、場合により第2のリポーターミニ遺伝子を含有することができる。複数のそのようなリポーター遺伝子が当該技術分野に既知である。アデノウイルスベクター上の導入遺伝子と異なるリポーター遺伝子がヘルパーウイルス上に存在することは、Adベクターとヘルパーウイルスの両方を独立して監視することを可能にする。この第2のリポーターは、精製時に、得られる組換えウイルスとヘルパーウイルスの間の分離を可能にするために用いられる。
【0088】
2.補完(complementation)細胞系
上記の遺伝子のいずれかにおいて欠失した組換えサルアデノウイルス(Ad)を作製するために、欠失した遺伝子領域の機能を、もしウイルスの複製及び感染性に必須であったら、ヘルパーウイルス又は細胞系、すなわち補完もしくはパッケージング細胞系により組換えウイルスに供給しなければならない。多くの状況において、チンパンジーAdベクターをトランス補完する(transcomplement)ために、ヒトE1を発現する細胞系を用いることができる。本発明のチンパンジーAd配列と現在入手可能なパッケージング細胞中に見出されるヒトAdE1配列の間の多様性の故に、現在のヒトE1−含有細胞の使用は複製及び生成過程の間に複製−能力を有するアデノウイルスの生成を妨げるので、これは特に有利である。しかしながらある状況において、E1−欠失サルアデノウイルスの作製に用いられ得るE1遺伝子産物を発現する細胞系を用いることは望ましいであろう。そのような細胞系は記載されている。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照されたい。
【0089】
望ましければ、最低でも、選ばれる親細胞系における発現のためのプロモーターの転写調節下でSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337からのアデノウイルスE1遺伝子を発現するパッケージング細胞又は細胞系を作製するために、本明細書において提供される配列を利用することができる。誘導可能又は構成的プロモーターをこの目的のために用いることができる。そのようなプロモーターの例は、本明細書中の他所に詳細に記載されている。親細胞は、いずれかの所望のSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337遺伝子を発現する新規な細胞系の作製のために選ばれる。そのような親細胞系は、中でもHeLa[ATCC Accession No.CCL 2]、A549[ATCC Accession No.CCL 185]、HEK 293、KB[CCL
17]、Detroit[例えばDetroit 510,CCL 72]及びWI−38[CCL 75]細胞であることができるが、制限ではない。これらの細胞系はすべてAmerican Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209から入手可能である。他の供給源から他の適した親細胞系を得ることができる。
【0090】
そのようなE1−発現細胞系は、組換えサルアデノウイルスE1欠失ベクターの作製において有用である。さらに、又は代わりに、1種もしくはそれより多いサルアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2a及び/又はE4 ORF6を発現する細胞系を、本質的に同じ方法を用いて構築することができ、組換えサルウイルスベクターの作製において用いる。そのような細胞系を、それらの産物をコードする必須の遺伝子において欠失したアデノウイルスベクターをトランス補完するため、あるいはヘルパー−依存性ウイルス(例えばアデノ−関連ウイルス)のパッケージングに必要なヘルパー機能を与えるために用いることができる。宿主細胞の作製は、選ばれたDNA配列の集成のような方
法を含む。通常の方法を用いてこの集成を行うことができる。そのような方法には、周知であり且つ上記で挙げたSambrook et al.に記載されているcDNA及びゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わされたアデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、合成的方法ならびに所望のヌクレオチド配列を与える他の適した方法が含まれる。
【0091】
さらに別の代替法において、必須のアデノウイルス遺伝子産物は、アデノウイルスベクター及び/又はヘルパーウイルスによりトランスで与えられる。そのような場合、適した宿主細胞を、原核(例えばバクテリア)細胞ならびに昆虫細胞、酵母細胞及び哺乳類細胞を含む真核細胞を含むいずれの生物からも選ぶことができる。特に望ましい宿主細胞は哺乳類種の中から選ばれ、A549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK 293細胞もしくはPERC6(それらの両方は機能性アデノウイルスE1を発現する)[Fallaux,FJ et al,(1998),Hum Gene Ther,9:1909−1917]、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2ならびにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ及びハムスターを含む哺乳類に由来する一次線維芽細胞、肝細胞及び筋芽細胞のような細胞を含むが、制限ではない。細胞を与える哺乳類種の選択は本発明の制限ではなく;哺乳類細胞の型の選択、すなわち線維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞なども本発明の制限ではない。
【0092】
3.ウイルス粒子の組み立て及び細胞系のトランスフェクション
一般に、ミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する場合、約1x10
4個の細胞〜約1x10
13個の細胞、そして好ましくは約10
5個の細胞に約5μg〜約100μgのDNA、そして好ましくは約10〜約50μgのDNAの量でベクターを送達する。しかしながら、選ばれるベクター、送達法及び選ばれる宿主細胞のような因子を考慮して、宿主細胞に対するベクターDNAの相対的な量を調整することができる。
【0093】
ベクターは、裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルスなどを含む当該技術分野で既知の、あるいは上記で開示されたいずれのベクターであることもできる。宿主細胞中へのベクターの導入は、トランスフェクション及び感染を含む当該技術分野において既知の、あるいは上記で開示されたいずれの手段によっても行われ得る。1種もしくはそれより多いアデノウイルス遺伝子を、宿主細胞のゲノム中に安定して組み込むか、エピソームとして安定して発現させるか、あるいは過渡的に発現させることかできる。遺伝子産物のすべてが過渡的に、エピソーム上で、発現されるか、又は安定して組み込まれることができるか、あるいは遺伝子産物のいくつかは安定して発現され得るが、他は過渡的に発現される。さらに、アデノウイルス遺伝子のそれぞれのためのプロモーターを、構成的プロモーター、誘導可能プロモーター又は天然のアデノウイルスプロモーターから独立して選ぶことができる。例えば生物又は細胞の特定の生理学的状態により(すなわち分化状態により、又は複製細胞もしくは静止細胞において)あるいは外から加えられる因子により、プロモーターを調節することができる。
【0094】
宿主細胞中への分子の導入(プラスミド又はウイルスとして)を、熟練者に既知の、且つ明細書を通じて議論される通りの方法を用いて行うこともできる。好ましい態様において、標準的なトランスフェクション法、例えばCaPO
4トランスフェクション又はエレクトロポレーションが用いられる。
【0095】
選ばれるアデノウイルスのDNA配列(ならびに導入遺伝子及び他のベクター要素)の、種々の中間プラスミドへの組み立てならびに組換えウイルス粒子の作製のためのプラスミド及びベクターの使用はすべて、通常の方法を用いて行われる。そのような方法には、教科書[上記で挙げたSambrook et al]中に記載されているもののような
通常のcDNAのクローニング法、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応及び所望のヌクレオチド配列を与える適した方法が含まれる。標準的なトランスフェクション法及びコ−トランスフェクション法、例えばCaPO
4沈降法が用いられる。用いられる他の通常の方法は、ウイルスゲノムの相同的組換え、寒天重層(agar overlay)におけるウイルスのプラーク形成、シグナル発生の測定の方法などを含む。
【0096】
例えば所望のミニ遺伝子−含有ウイルスベクターの構築及び集成に続き、ベクターをヘルパーウイルスの存在下でパッケージング細胞系中に試験管内でトランスフェクションする。ヘルパー及びベクター配列の間で相同的組換えが起こり、それはベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列が複製され、ビリオンキャプシド中に詰め込まれるのを可能にし、組換えウイルスベクター粒子を生ずる。そのようなウイルス粒子の作製のための現在の方法はトランスフェクションに基づく。しかしながら、本発明はそのような方法に制限されない。
【0097】
得られる組換えサルアデノウイルスは、選ばれる導入遺伝子の選ばれる細胞への導入において有用である。パッケージング細胞系中で生育した組換えウイルスを用いる生体内実験において、本発明のE1−欠失組換えサルアデノウイルスベクターは、非−サル細胞、好ましくはヒト細胞への導入遺伝子の導入において有用性を示す。
【0098】
IV.組換えアデノウイルスベクターの使用
組換えサルアデノウイルスA1302(SAdV−A1302)、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337に基づくベクターは、ヒト患者又は非−サルの獣医学的患者への試験管内、生体外及び生体内における遺伝子導入のために有用である。
【0099】
本明細書に記載される組換えアデノウイルスベクターを、異種遺伝子によりコードされる産物の試験管内における生成のための発現ベクターとして用いることができる。例えばE1欠失の位置中に挿入された遺伝子を含有する組換えアデノウイルスを、上記のようなE1−発現細胞系中にトランスフェクションすることができる。あるいはまた、別の選ばれた細胞系において複製能力のあるアデノウイルスを用いることができる。トランスフェクションされた細胞を、次いで通常の方法で培養し、組換えアデノウイルスがプロモーターから遺伝子産物を発現するのを可能にする。次いで遺伝子産物を、培養物からのタンパク質単離及び回収の既知の通常の方法により培地から回収することができる。
【0100】
SAdV−A1302−、SAdV−A1320−、SAdV−A1331−又はSAdV−A1337−由来組換えサルアデノウイルスベクターは、生物が1種もしくはそれより多いAAV血清型への中和抗体を有する場合でさえ、生体内又は生体外において選ばれた宿主細胞に選ばれた導入遺伝子を送達することができる有効な遺伝子導入ビヒクルを与える。1つの態様において、rAAV及び細胞を生体外で混合し;通常の方法を用いて感染細胞を培養し;そして形質導入された細胞を患者中に再−注入する。これらの組成物は、治療目的のため、及び防御免疫の誘導を含む免疫化のための遺伝子送達に特に十分に適している。
【0101】
より普通には、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337組換えアデノウイルスベクターは、下記のような治療用分子又は免疫原性分子の送達に用いられるであろう。両方の用途に関し、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、組換えアデノウイルスベクターの繰り返し送達を含む療法における使用に特に十分に適していることが容易に理解されるであろう。そのような療法は、典型的にはウイルスキャプシドが改変されている一系列のウイルスベクターの送達を含む。連
続的な投与のそれぞれに関して、あるいは特定の血清型のキャプシドのあらかじめ選ばれた回数(1回、2回、3回、4回又はもっと多く)の投与の後に、ウイルスキャプシドを変更することができる。かくして療法は、第1のサルキャプシドを有するrAdの送達、第2のサルキャプシドを有するrAdを用いる送達及び第3のサルキャプシドを用いる送達を含むことができる。単独で、互いに組み合わせて、あるは他のアデノウイルス(好ましくは免疫学的に交差反応性でない)と組み合わせて本発明のAdキャプシドを使用する多様な他の療法が、当該技術分野における熟練者に明らかであろう。場合により、そのような療法は他のヒト以下の霊長類のアデノウイルス、ヒトアデノウイルス又は本明細書に記載されるような人工の配列のキャプシドを有するrAdの投与を含むことができる。療法の各段階(phase)は、単一のAdキャプシドを用いる一系列の注入(又は他の送達経路)及びそれに続く異なるAd源からの別のキャプシドを用いる一系列の投与を含むことができる。あるいはまた、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを、他のウイルス系、非−ウイルス送達系、タンパク質、ペプチド及び他の生物学的に活性な分子を含む他の非−アデノウイルス−媒介送達系を含む療法において用いることができる。
【0102】
以下の節は、本発明のアデノウイルスベクターを介して送達され得る代表的な分子に焦点を当てる。
【0103】
A.治療用分子のAd−媒介送達
1つの態様において、上記の組換えベクターを、公開されている遺伝子治療のための方法に従ってヒトに投与する。選ばれた導入遺伝子を保有するサルアデノウイルスベクターを、好ましくは生物学的に適合性の溶液又は製薬学的に許容され得る送達ビヒクル中に懸濁させて、患者に投与することができる。適したビヒクルには無菌食塩水が含まれる。製薬学的に許容され得る担体であることが既知であり、且つ当該技術分野における熟練者に周知の他の水性及び非−水性等張無菌注入溶液ならびに水性及び非−水性無菌懸濁液をこの目的のために用いることができる。
【0104】
標的細胞への分子の送達における使用のための、本明細書に記載されるアデノウイルス又は組換えアデノウイルスも提供する。標的細胞への分子の送達のために有用な薬剤の調製における、本明細書に記載されるアデノウイルス又は組換えアデノウイルスの使用をさらに提供する。
【0105】
サルアデノウイルスベクターは、標的細胞を形質導入し、不必要な不利な影響なく、あるいは医学的に許容され得る生理学的影響を以て治療的利益を与えるのに十分なレベルの遺伝子導入及び発現を与えるのに十分な量で投与され、その量は医学的分野における熟練者により決定され得る。通常の、及び製薬学的に許容され得る投与経路には、網膜への直接送達及び他の眼内送達法、肝臓への直接送達、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸的、経口的及び他の非経口的投与経路が含まれるが、これらに限られない。投与経路を、必要なら組み合わせることができるか、あるいは導入遺伝子もしくは状態に依存して調整することができる。投与経路は、主に処置されている状態の性質に依存するであろう。
【0106】
ウイルスベクターの投与量は、主に処置されている状態、患者の年令、体重及び健康のような因子に依存し、かくして患者間で様々であり得る。例えばウイルスベクターの治療的に有効な成人の投与量又は獣医学的投与量は、一般に約1x10
6〜約1x10
15個の粒子、約1x10
11〜1x10
13個の粒子又は約1x10
9〜1x10
12個の粒子の濃度のウイルスを含有する約100μL〜約100mLの担体の範囲内である。投与量は、動物の大きさ及び投与経路に依存して変動するであろう。例えば筋肉内注入のために適したヒトの又は獣医学的(約80kgの動物の場合)投与量は、1つの部位に関してmL当た
りに約1x10
9〜約5x10
12個の粒子の範囲内である。場合により、複数の投与部位を送達することができる。別の例において、経口用調製物のために適したヒトの又は獣医学的投与量は、約1x10
11〜約1x10
15個の粒子の範囲内であることができる。当該技術分野における熟練者は、投与経路及び組換えベクターが用いられる治療的又はワクチン的用途に依存してこれらの用量を調整することができる。導入遺伝子の発現のレベルあるいは免疫原の場合には循環する抗体のレベルを監視して、投与量の投与の頻度を決定することができる。投与のタイミング又は頻度の決定のためのさらに別の方法は、当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0107】
方法の場合による段階は、ウイルスベクターの投与と同時に、あるいはその前又は後に、適した量の短時間作用性免疫モジュレーターを患者に共−投与することを含む。選ばれる免疫モジュレーターは、本発明の組換えベクターに向けられる中和抗体の形成を妨げることができるか、あるいはベクターの細胞溶解性Tリンパ球(CTL)除去を妨げることができる薬剤として本明細書で定義される。免疫モジュレーターは、Tヘルパーサブセット(T
H1又はT
H2)とB細胞の間の相互作用を妨害し、中和抗体生成を妨げることができる。あるいはまた、免疫モジュレーターはT
H1細胞とCTLsの間の相互作用を妨げ、ベクターのCTL除去の発生を低下させることができる。多様な有用な免疫モジュレーター及びその使用のための投与量は、例えばYang et al.,J.Virol.,70(9)(Sept.,1996);1996年5月2日に公開された国際特許出願国際公開96/12406号パンフレット;及び国際特許出願番号PCT/US96/03035号明細書に開示されており、それらのすべての記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。
【0108】
1.治療用導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療用産物には、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor)(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子I及びII(IGF−I及びIGF−II)、TGF、アクチビン、インヒビンを含むトランスフォーミング増殖因子スーパーファミリー(superfamily)のいずれか1つ、あるいは骨形態形成タンパク質(BMP)BMPs1−15のいずれか、成長因子のヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン(neuregulin)/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3及びNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニューツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1つ、ネトリン−1及びネトリン−2、肝細胞成長因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホグ(sonic hedgehog)ならびにチロシンヒドロキシラーゼを含むがこれらに限られないホルモンならびに成長及び分化因子が含まれる。
【0109】
他の有用な導入遺伝子産物には、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12及びIL−18を含む)、単球化学誘引性タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子及びインターフェロンのようなサイトカインおよびリンホカインならびに幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドを含むが、これらに限られない免疫系を調節するタンパク質が含まれる。免疫系により生成する遺伝子産物
も本発明において有用である。これらには、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgD及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞レセプター、キメラT細胞レセプター、一本鎖T細胞レセプター、クラスI及びクラスII MHC分子ならびに操作された免疫グロブリン及びMHC分子が含まれるが、制限ではない。有用な遺伝子産物には、補体調節タンパク質、膜補因子タンパク質(membrane cofactor protein)(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2及びCD59のような補体調節タンパク質も含まれる。
【0110】
さらに別の有用な遺伝子産物には、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質及び免疫系タンパク質に関するレセプターのいずれか1つが含まれる。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)レセプター、高密度リポタンパク質(HDL)レセプター、超低密度リポタンパク質(VLDL)レセプター及びスカベンジャーレセプターを含むコレステロール調節のためのレセプターを包含する。本発明は、グルココルチコイドレセプター及びエストロゲンレセプターを含むステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーのメンバー、ビタミンDレセプターならびに他の核レセプターのような遺伝子産物も包含する。さらに、有用な遺伝子産物には、jun、fos、max、mad、血清応答因子(serum response factor)(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoD及びミオゲニン、ETS−ボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAAT−ボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS−結合タンパク質、STAT、GATA−ボックス結合タンパク質、例えばGATA−3及びウィングドヘリックスタンパク質(winged helix proteins)のフォークヘッドファミリー(forkhead family)のような転写因子が含まれる。
【0111】
他の有用な遺伝子産物には、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネートシンテターゼ、アルギノスクシネートリアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテートヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、因子VIII、因子IX、シスタチオンベータ−シンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル−coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ−グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(transmembrane regulator)(CFTR)配列及びジストロフィンcDNA配列が含まれる。
【0112】
他の有用な遺伝子産物には、挿入、欠失もしくはアミノ酸置換を含有する天然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラもしくはハイブリッドポリペプチドのような天然に存在しないポリペプチドが含まれる。例えば一本鎖の操作された免疫グロブリンは、ある種の免疫無防備状態の患者において有用であり得る。他の型の天然に存在しない遺伝子配列には、標的の過剰発現を低下させるのに用いられ得るアンチセンス分子及びリボザイムのような触媒的核酸が含まれる。
【0113】
遺伝子の発現の低下及び/又はモジュレーションは、ガン及び乾癬がそうであるような過剰増殖細胞を特徴とする過剰増殖状態の処置に特に望ましい。標的ポリペプチドには、過剰増殖細胞中で独占的に又は正常細胞と比較してより高レベルで生成するポリペプチドが含まれる。標的抗原には、myb、myc、fynのようなガン遺伝子ならびに転位遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trk及びEGRFによりコードされるポリペプチドが含まれる。標的抗原としてのガン遺伝子産物に加え、抗ガン処置
及び防御的療法の標的ポリペプチドには、いくつかの態様において自己免疫疾患のための標的抗原としても使用されるB細胞リンパ腫により作られる抗体の可変領域及びT細胞リンパ腫のT細胞レセプターの可変領域が含まれる。モノクローナル抗体17−1A及び葉酸結合ポリペプチドにより認識されるポリペプチドを含む、腫瘍細胞中でより高レベルで見出されるポリペプチドのような他の腫瘍−関連ポリペプチドを、標的ポリペプチドとして用いることができる。
【0114】
他の適した治療用ポリペプチド及びタンパク質には、細胞レセプターを含む自己免疫と関連する標的及び自己に向けられた抗体を生成する細胞に対する広範囲にわたる(broad based)防御免疫反応を与えることにより、自己免疫疾患及び障害に苦しむ患者を処置するのに有用であり得るものが含まれる。T細胞媒介自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎(reactive arthritis)、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病及び潰瘍性大腸炎が含まれる。これらの疾患のそれぞれは、内在性抗原に結合し、且つ自己免疫疾患と関連する炎症カスケードを開始するT細胞レセプター(TCRs)を特徴とする。
【0115】
本発明のサルアデノウイルスベクターは、導入遺伝子の複数回のアデノウイルス−媒介送達が望ましい治療的療法に、例えば同じ導入遺伝子の再送達を含む療法又は他の導入遺伝子の送達を含む組み合わせ療法において、特に十分に適している。そのような療法は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337サルアデノウイルスベクターの投与及び続く同じ血清型のアデノウイルスからのベクターを用いる再−投与を含むことができる。特に望ましい療法は、第一の投与で送達されるベクターのアデノウイルスキャプシド配列の供給源がその後の投与の1回もしくはそれより多くで用いられるウイルスベクターのアデノウイルスキャプシド配列の供給源と異なる、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337サルアデノウイルスベクターの投与を含む。例えばある治療的療法は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターの投与ならびに同じ又は異なる血清型の1種もしくはそれ多いアデノウイルスベクターを用いる繰り返し投与を含む。別の例において、治療的療法は、アデノウイルスベクターの投与及び続く第一に送達されるアデノウイルスベクター中のキャプシドの供給源と異なるキャプシドを有するSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを用いる繰り返し投与及び場合により、前の投与段階のベクターのアデノウイルスキャプシドの供給源と同じであるかもしくは好ましくは異なる別のベクターを用いるさらなる投与を含む。これらの療法は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337サル配列を用いて構築されるアデノウイルスベクターの送達に限られない。そうではなくて、これらの療法は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターと組合せて、他のサルアデノウイルス配列(例えばPan9もしくはC68、C1など)、他のヒト以下霊長類アデノウイルス配列又はヒトアデノウイルス配列を含むがこれらに限られない他のアデノウイルス配列を容易に利用することができる。そのようなサル、他のヒト以下霊長類及びヒトアデノウイルス血清型の例は本文書の他所で議論される。さらに、これらの治療的療法は、非−アデノウイルスベクター、非−ウイルスベクター及び/又は多様な他の治療的に有用な化合物もしくは分子と組み合わされたSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルスベクターの同時もしくは逐次的送達を含むことができる。本発明はこれらの治療的療法に制限されず、多様な治療的療法が当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0116】
B.免疫原性導入遺伝子のAd−媒介送達
組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを、免疫原性組成物として用いることもできる。本明細書で用いられる場合、免疫原性組成物は、哺乳類、そして好ましくは霊長類への送達の後に免疫原性組成物により送達される導入遺伝子産物に対し、体液性(例えば抗体)もしくは細胞性(例えば細胞傷害性T細胞)反応が高まる(mounted)組成物である。組換えサルAdは所望の免疫原をコードする遺伝子を、そのアデノウイルス配列欠失のいずれか中に含有することができる。サルアデノウイルスは、ヒト起源のアデノウイルスと比較して、種々の動物種における生の組換えウイルスワクチンとしての使用により良好に適しているようであるが、しかしそのような使用に制限されない。組換えアデノウイルスを、免疫反応の誘導に非常に重要であり、且つ病原体の拡散を制限することが可能な抗原が同定されており、且つcDNAが利用可能であるいずれの病原体に対する予防的もしくは治療的ワクチンとしても用いることができる。
【0117】
そのようなワクチン(もしくは他の免疫原性)組成物は、上記のような適した送達ビヒクル中で調製される。一般に免疫原性組成物に関する用量は、治療用組成物に関して上記で定義された範囲内である。選択された遺伝子の免疫のレベルを監視して追加免疫の必要性(あれば)を決定することができる。血清中の抗体力価の評価に続き、場合による追加免疫免疫化が望ましいかもしれない。
【0118】
場合により、本発明のワクチン組成物を、例えばアジュバント、安定剤、pH調整剤、防腐剤などを含む他の成分を含有するように調製することができる。そのような成分はワクチンの技術分野における熟練者に周知である。適したアジュバントの例には、リポソーム、ミョウバン、モノホスホリル脂質A(monophosphoryl lipidA)及びサイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、リガンドのようないずれかの生物学的に活性な因子ならびに最適にはそれらの組合せが含まれるが、制限ではない。これらの生物学的に活性な因子のあるものを、例えばプラスミド又はウイルスベクターを介して生体内で発現させることができる。例えばそのようなアジュバントを、抗原をコードするDNAワクチンのみを用いるプライミング(priming)に際して生ずる免疫反応と比較して抗原−特異的免疫反応を高めるように、抗原をコードするプライミングDNAワクチンと一緒に投与することができる。
【0119】
組換えアデノウイルスは「免疫原性量」で、すなわち所望の細胞をトランスフェクションし、且つ免疫反応を誘導するのに十分なレベルの選ばれた遺伝子の発現を与えるために、ある投与経路で有効である組換えアデノウイルスの量で投与される。防御免疫が与えられる場合、組換えアデノウイルスは、感染及び/又は再発性疾患の予防において有用なワクチン組成物であると考えられる。
【0120】
あるいはまた、もしくはさらに、本発明のベクターは、選ばれた免疫原に対する免疫反応を誘導するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードする導入遺伝子を含有することができる。本明細書に記載される組換えSAdVベクターは、ベクターにより発現される挿入された異種抗原タンパク質に対する細胞溶解性T細胞及び抗体の誘導において、高度に有効であると期待される。
【0121】
例えば、免疫原を多様なウイルス科から選ぶことができる。それに対する免疫反応が望ましいウイルス科の例には、感冒の症例の約50%の原因であるライノウイルス属を含むピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス及びA型肝炎ウイルスのようなヒトエンテロウイルスを含むエンテロウイルス属;ならびに主にヒト以下の動物における口蹄疫の原因であるアフトウイルス属が含まれる。ウイルスのピコルナウイルス科内で、標的抗原にはVP1、VP2、VP3、VP4及びVPGが含まれ
る。別のウイルス科には、流行性胃腸炎の重要な原因病原体(causative agent)であるノーウォーク群のウイルスを包含するカルシウイルス科が含まれる。ヒト及びヒト以下の動物において免疫反応を誘導するための抗原の標的化における使用に望ましいさらに別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラ、東部及び西部ウマ脳炎を含むアルファウイルス属ならびに風疹ウイルスを包含するルビウイルスを包含するトガウイルス科である。フラビウイルス科には、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎及びダニ媒介脳炎ウイルスが含まれる。他の標的抗原は、C型肝炎、あるいは感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような複数のヒト以下ウイルス及び感冒を引き起こしうるヒト呼吸器コロナウイルスを包含するコロナウイルス科ならびに/あるいは非A、非Bもしくは非C型肝炎から生じ得る。コロナウイルス科内で、標的抗原には、E1(Mもしくはマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(Sもしくはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEもしくはヘマグルチン−エルテロース(hemagglutin−elterose)とも呼ばれる)糖タンパク質(すべてのコロナウイルスに存在するわけではない)又はN(ヌクレオキャプシド)が含まれる。さらに別の抗原を、ベシクロウイルス属(例えば水疱性口内炎ウイルス)及び一般的リッサウイルス(例えば狂犬病)を含むラブドウイルス科に対し標的化することができる。
【0122】
ラブドウイルス科内で、適した抗原をGタンパク質又はNタンパク質から誘導することができる。マールブルグ及びエボラウイルスのような出血熱ウイルスを包含するフィロウイルス科は、適した抗原の供給源であり得る。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(流行性耳下腺炎ウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹及びイヌジステンパーを含むモルビリウイルスならびにRSウイルスを含むニューモウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科内に分類され、抗原(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)の適した供給源である。ブニヤウイルス科には、ブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス(リフトバレー熱)、ハンタウイルス(プレマラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス(ナイロビ羊病)及び多様な指定されていないブンガウイルスが含まれる。アレナウイルス科はLCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルス科には、レオウイルス、ロタウイルス(小児で急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス及びクルチウイルス(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)属が含まれる。
【0123】
レトロウイルス科には、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス及びスプマウイルスを含む)のようなヒトの疾患及び獣医学的疾患を包含するオンコウイルス(oncorivirinal)亜科を包含する。レンチウイルス内で、多くの適した抗原が記載されており、容易に選択され得る。適したHIV及びSIV抗原の例には、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef及びRevタンパク質ならびにそれらの種々のフラグメントが含まれるが、制限ではない。例えば、Envタンパク質の適したフラグメントには、gp120、gp160、gp41のようなそのサブユニット又は例えば長さが少なくとも約8個のアミノ酸のもっと小さいそれらのフラグメントのいずれも含まれ得る。類似して、tatタンパク質のフラグメントを選ぶことができる。[米国特許第5,891,994号明細書及び米国特許第6,193,981号明細書を参照されたい。]D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462−2467(Ma
rch 2001)及びR.R.Amara et al,Science,292:69−74(6 April 2001)に記載されているHIV及びSIVタンパク質も参照されたい。別の例において、HIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質又はペプチドを用いて、融合タンパク質又は他の免疫原性分子を形成することができる。例えば、2001年8月2日に公開された国際公開第01/54719号パンフレット及び1999年4月8日に公開された国際公開第99/16884号パンフレットに記載されているHIV−1 Tat及び/又はNef融合タンパク質ならびに免疫化療法を参照されたい。本発明は、本明細書に記述されるHIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質もしくはペプチドに制限されない。さらに、これらのタンパク質への多様な改変が記載されているか、あるいは当該技術分野における熟練者が容易にそれを成すことができる。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記述されている改変gagタンパク質を参照されたい。さらに、いかなる所望のHIV及び/又はSIV免疫原も単独で、又は組合せて送達することができる。そのような組合せは単一のベクターから、又は複数のベクターからの発現を含むことができる。場合により、別の組合せは、タンパク質の形態における1種もしくはそれより多い免疫原の送達を用いる1種もしくはそれより多い発現された免疫原の送達を含むことができる。そのような組合せを下記においてより詳細に議論する。
【0124】
パポバウイルス科には、ポリオーマウイルス亜科(BKU及びJCUウイルス)ならびにパピローマウイルス亜科(ガン又は乳頭腫の悪性の進行と関連する)が含まれる。アデノウイルス科には、呼吸器疾患及び/又は腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルス科にはネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス及びブタパルボウイルスが含まれる。ヘルペスウイルス科には、シンプレックスウイルス(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス(偽性狂犬病、帯状疱疹)属を含むアルファヘルペスウイルス亜科ならびにサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を含むベータヘルペスウイルス亜科ならびにリンホクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス及びラジノウイルス属を含むガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。ポックスウイルス科には、オルトポックスウイルス(大疱瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス属を包含するコルドポックスウイルス亜科ならびにエントモポックスウイルス亜科が含まれる。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスが含まれる。抗原の適する供給源となりうる1種の分類されないウイルスは、デルタ肝炎ウイルスである。さらに別のウイルス源には、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及びブタ呼吸及び繁殖症候群(respiratory and reproductive syndrome)ウイルスが含まれ得る。アルファウイルス科には、ウマ動脈炎ウイルス及び種々の脳炎ウイルスが含まれる。
【0125】
他の病原体に対してヒト又はヒト以下の動物を免疫化するのに有用である免疫原は、例えば、ヒト及びヒト以下の脊椎動物に感染するバクテリア、菌・カビ、寄生性微生物もしくは多細胞寄生動物あるいはガン細胞又は腫瘍細胞からのものを包含する。バクテリア性病原体の例には、肺炎双球菌;ブドウ球菌;及び連鎖球菌を含む病原性グラム−陽性球菌が含まれる。病原性グラム−陰性球菌にはメニンゴコックス(meningococcus);淋菌が含まれる。病原性腸グラム−陰性桿菌には、腸内細菌科(enterobacteriaceae);シュードモナス、アシネトバクテリア(acinetobacteria)及びエイケネラ(eikenella);メリオイドシス(melioidosis);サルモネラ(salmonella);シゲラ(shigella);ヘモフィルス(haemophilus);モラクセラ(moraxella);H.ドゥクレイイ(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ(brucella);フラニセラ・ツラレンシス(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア(yersinia)(パスツレラ);ストレプトバシル
ス・モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)及びスピリルム(spirillum)が含まれ;グラム−陽性桿菌には、リステリア・モノシトゲネス(listeria monocytogenes);エリジペロスリクス・ルシオパチエ(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis)(炭疽);ドノヴァン症(そ径部肉芽腫);及びバルトネラ症が含まれる。病原性嫌気性バクテリアにより引き起こされる疾患には、破傷風;ボツリヌス中毒;他のクロストリジウム;結核;らい;及び他のマイコバクテリアが含まれる。病原性スピロヘータ疾患には、梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタ及び風土病性梅毒;ならびにレプトスピラ症が含まれる。より病原性の高いバクテリア及び病原性菌・カビにより引き起こされる他の感染には、放線菌症;ノカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症及びコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症及びムコール菌症;スポロトリクス症;パラコクシジオイデス真菌症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫及びクロモマイコーシス;ならびに皮膚糸状菌症が含まれる。リケッチア感染には、発疹チフス、ロッキー山熱、Q熱及びリケッチア痘が含まれる。マイコプラスマ及びクラミジア感染の例には:マイコプラスマ肺炎;性病性リンパ肉芽腫;オウム病;及び周産期クラミジア感染が含まれる。病原性真核生物には、病原性原生動物及び蠕虫が含まれ、それらにより起こされる感染には:アメーバ症;マラリア;リーシュマニア;トリパノソーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii);トリカンス(Trichans);トキソプラスマ・ゴンジイ(Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫(trematodes)もしくは吸虫(flukes);及び条虫(cestode)(条虫(tapeworm))感染が含まれる。
【0126】
これらの生物及び/又はそれらにより作られる毒素の多くは、生物学的攻撃における使用に関する可能性を有する薬剤として疾病対策センター(Centers for Disease Control)[(CDC)、米国保健福祉省(Department of Health and Human Services,USA)]により同定されている。例えば、これらの生物学的薬剤のいくつかには、現在すべてカテゴリーA薬剤として分類されている炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)及びその毒素(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、大疱瘡(天然痘)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)ならびにウイルス性出血熱[フィロウイルス(例えばエボラ、マールブルグ)]ならびにアレナウイルス(例えばラッサ(Lassa)、マチュポ(Machupo));現在すべてがカテゴリーB薬剤として分類されているコクシエラ・ブルネティ(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ種(Brucella species)(ブルセラ症)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)(鼻疽)、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(メロイドシス(meloidosis))、リシヌス・コムニス(Ricinus communis)及びその毒素(リシントキシン)、クロスツリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)及びその毒素(イプシロン毒素)、ブドウ球菌種及びそれらの毒素(エンテロトキシンB)、クラミジア・プシタシ(Chlamydia psittaci)(オウム病)、水の安全性に対する脅威(例えばビブリオ・コレラ(Vibrio chlerae)、クリトスポリジウム・パルブム(Crytosporidium parvum))、発疹チフス(リケッチア・ポワゼキ(Richettsia powazekki))ならびにウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);ならびに現在カテゴリーC薬剤として分類されているニパンウイルス(Nipan virus)及びハン
タウイルス(hantavirus)が含まれる。さらに、そのように分類されるか又は異なって分類される他の生物を、将来そのような目的のために同定及び/又は使用することができる。本明細書に記載されるウイルスベクター及び他の構築物が、これらの生物、ウイルス、それらの毒素又は他の副生成物からの抗原を送達するのに有用であり、その抗原はこれらの生物学的薬剤への感染又はそれらとの他の有害な反応を予防及び/又は処置するであろうことが容易に理解されるであろう。
【0127】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するためのSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターの投与は、CTLsを含む免疫反応を引き出し、それらのT細胞を除去することが予期される。RAにおいて、疾患に含まれるTCRsのいくつかの特定の可変領域が特性化されている。これらのTCRsはV−3、V−14、V−17及びVα−17を含む。かくしてこれらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、RAに含まれるT細胞を標的とするであろう免疫反応を引き出すであろう。MSにおいて、疾患に含まれるTCRsのいくつかの特定の可変領域が特性化されている。これらのTCRsはV−7及びVα−10を含む。かくしてこれらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、MSに含まれるT細胞を標的とするであろう免疫反応を引き出すであろう。強皮症において、疾患に含まれるTCRsのいくつかの特定の可変領域が特性化されている。これらのTCRsはV−6、V−8、V−14ならびにVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28及びVα−12を含む。かくしてこれらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする組換えサルアデノウイルスの送達は、強皮症に含まれるT細胞を標的とするであろう免疫反応を引きき出すであろう。
【0128】
C.Ad−媒介送達法
選ばれる遺伝子の治療レベル又は免疫性のレベルを監視して、追加免疫(booster)の必要性(あれば)を決定することができる。血清中のCD8+ T細胞反応又は場合により抗体力価の評価に続き、場合による追加免疫免疫化が望ましいかもしれない。場合により、組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを、一回の投与で、あるいは種々の組合せ療法において、例えば他の活性成分を含む処置の療法もしくは経路と組合せて、あるいはプライム−ブースト療法(prime−boost regimen)において送達しうる。多様なそのような療法が当該技術分野で記載されており、且つ容易に選択され得る。
【0129】
例えば、プライム−ブースト療法は、タンパク質のような通常の抗原又はそのような抗原をコードする配列を保有する組換えウイルスを用いる第二の追加免疫投与に対して免疫系をプライミングするためのDNA(例えばプラスミド)に基づくベクターの投与を含むことができる。例えば引用することにより記載事項が本明細書の内容となる2000年3月2日に公開された国際公開第00/11140号パンフレットを参照されたい。あるいはまた、免疫化療法は、抗原を保有するベクター(ウイルス又はDNAに基づく)又はタンパク質に対する免疫反応を強化(boosting)するための組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターの投与を含むことができる。さらに別の代替案において、免疫化療法は、タンパク質の投与及び続く抗原をコードするベクターを用いる追加免疫の投与を含む。
【0130】
1つの態様において、選ばれた抗原を保有するプラスミドDNAベクターの送達及び続く組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを用いる強化による、その抗原に対する免疫反応のプライミング及び強化の方法を記載する。1つの態様において、プライム−ブースト療法はプライミング及び/又は強化ビヒクルからのマルチタンパク質(multiproteins)の発現を含む。例えば、HIV及びSIVに対する免疫反応を生じさせるのに有用なタンパ
ク質サブユニットの発現のためのマルチタンパク質療法を記述するR.R.Amara,Science,292:69−74(6 April 2001)を参照されたい。例えば、DNAプライミング(DNA prime)は、1つの転写物からのGag、Pol、Vif、VPX及びVprならびにEnv、Tat及びRevを送達することができる。あるいはまた、SIV Gag、Pol及びHIV−1 Envは、組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337アデノウイルス構築物中で送達される。さらに別の療法は国際公開第99/16884号パンフレット及び国際公開第01/54719号パンフレットに記載されている。
【0131】
しかしながら、該プライム−ブースト療法はHIVに関する免疫化又はこれらの抗原の送達に制限されない。例えば、プライミングは、第一のSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを用いる送達を含むことができ、それに第二のAdベクターを用いる、又はタンパク質の形態における抗原自身を含有する組成物を用いる強化が続くことができる。1つの例において、プライム−ブースト療法は、抗原が由来するウイルス、バクテリア又は他の生物に対する防御免疫反応を提供することができる。別の態様において、プライム−ブースト療法は、治療が施されている状態の存在の検出のための通常のアッセイを用いて測定され得る治療効果を与える。
【0132】
所望の免疫反応が目的とされている抗原に依存する用量依存的やり方で、体内の種々の部位においてプライミング組成物を投与することができる。注入の量又は部位あるいは製薬学的担体は制限ではない。むしろ、療法はプライミング及び/又は強化段階を含むことができ、それらのそれぞれは毎時、毎日、毎週もしくは毎月又は毎年投与される単一用量又は投与量を含むことができる。1つの例として、担体中に約10μg〜約50μgのプラスミドを含有する1又は2用量を哺乳類に与えることができる。DNA組成物の所望の量は約1μg〜約10,000μgのDNAベクターの範囲である。投与量は患者の体重の約1kg当たり約1μg〜1000μgのDNAで変動しうる。送達の量又は部位は、望ましくは哺乳類の正体及び状態に基づいて選択される。
【0133】
哺乳類への抗原の送達に適したベクターの投与量単位を本明細書に記載する。ベクターを、等張の食塩水;等張塩溶液又はそのような投与における熟練者に明らかな他の調製物のような製薬学的に、又は生理学的に許容され得る担体中に懸濁又は溶解することにより、投与用に調製する。適した担体は当該技術分野における熟練者に明らかであり、且つ大部分において投与経路に依存するであろう。本明細書に記載される組成物を、生物分解性の生物適合性ポリマーを用いる徐放性調製物中で、又はミセル、ゲル及びリポソームを用いるその場での(on−site)送達により、上記の経路に従って哺乳類に投与することができる。場合により、プライミング段階は、本明細書に定義されるもののような適した量のアジュバントをプライミング組成物と一緒に投与することも含む。
【0134】
好ましくは、強化組成物は、哺乳類患者にプライミング組成物を投与してから約2〜約27週間後に投与される。強化組成物の投与は、プライミングDNAワクチンにより投与されると同じ抗原を含有するか又は送達することができる強化組成物の有効量を用いて行われる。強化組成物は、同じウイルス源(例えば本発明のアデノウイルス配列)又は別の供給源から誘導される組換えウイルスベクターから構成されていることができる。あるいはまた、「強化組成物」は、プライミングDNAワクチン中でコードされると同じであるが、タンパク質又はペプチドの形態における抗原を含有する組成物であることができ、その組成物は宿主中で免疫反応を誘導する。別の態様において、強化組成物は、哺乳類細胞中でのその発現を指示する調節配列の調節下で抗原をコードするDNA配列、例えば周知のバクテリアもしくはウイルスベクターのようなベクターを含有する。強化組成物の主要件は、組成物の抗原がプライミング組成物によりコードされるものと同じ抗原又は交差反
応性抗原であることである。
【0135】
別の態様において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターは、多様な他の免疫化及び治療的療法における使用にも十分に適している。そのような療法は、異なる血清型キャプシドのAdベクターと同時もしくは逐次的なSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターの送達、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターを非−Adベクターと同時もしくは逐次的に送達する療法、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターをタンパク質、ペプチド及び/又は他の生物学的に有用な治療もしくは免疫原性化合物と同時もしくは逐次的に送達する療法を含むことができる。そのような用途は当該技術分野における熟練者に容易に明らかになるであろう。
【0136】
さらに別の態様において、本発明は、患者にアデノウイルスSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを送達することにより、免疫調節効果反応(immunomodulatory effect
response)を誘導するため、あるいは他の活性薬剤への細胞障害性T細胞反応を強化するか又は助けるための、これらのウイルスのキャプシドの使用(場合により無損傷の又は組換えウイルス粒子あるいは中空キャプシドが用いられる)を提供する。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを単独で、あるいは活性薬剤への免疫反応を強化するためのそれとの組み合わせ療法において、送達することができる。有利なことに、宿主を亜群Eアデノウイルスに感染させることなく、所望の効果を達成することができる。他の側面において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを患者に送達することを含んでなる、インターフェロンアルファの生成が必要な患者においてそれを誘導する方法を提供する。さらに別の側面において、培養物において1種もしくはそれより多いサイトカイン(例えばIFN−α)/ケモカインを生成させる方法を提供する。この方法は、樹状細胞及び本明細書に記載されるSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを含有する培養物を、中でもアルファインターフェロンを含むサイトカイン/ケモカインの生成に適した条件下でインキュベーションすることを含む。
【0137】
そのようにして生成するサイトカインは多様な用途において有用である。例えばIFNαの場合、本明細書に記載される生成は特に望ましく、それは、バクテリア中で作られるIFNαの1つもしくは2つのサブタイプしか含有しない商業的に入手可能な組換え的に作製されるIFNαを超える利点をそれが与えるであろうと思われるからである。対照的に、方法は天然のヒトIFNαの多数のサブタイプを生ずることが予想され、それはより広い作用範囲を生むことが期待される。各サブタイプは特定の生物学的活性を用いると思われる。さらに、本明細書で提供される方法により作製される天然のインターフェロンは、天然に作られる患者のインターフェロンと免疫学的に区別され得ず、それにより、通常組換え的に作製されるインターフェロンに対する中和抗体の形成により引き起こされる患者の免疫系による薬剤の拒絶の危険が低下すると予想される。
【0138】
亜群Eアデノウイルスにより作製される他のサイトカインには、インターロイキン(IL)−6、IL−8、IP−10、マクロファージ炎症タンパク質(macrophage inflammatory protein)−1アルファ(MIP−1α)、RANTES及び腫瘍壊死因子アルファが含まれる。培養物からのこれらのサイトカイン/ケモカインの精製法ならびにこれらのサイトカイン/ケモカインの治療的又はアジュバント(adjuvant)使用は、文献に記載されている。さらに、本発明に従って作製されるサイトカイン/ケモカインの精製のために、商業的に入手可能なカラム又はキットを用いることができる。本発明を用いて作製されるサイトカイン/ケモカインを、多様な適応症における使用のために調製することができる。
【0139】
例えば本明細書で記載されるサイトカインには、インターフェロンアルファ(IFNα)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、IP−10(インターフェロンガンマ誘導性タンパク質)、インターロイキン−6(IL−6)及びIL−8が含まれる。IFNαは、インフルエンザ、肝炎(例えばB型及びC型肝炎を含む)ならびに多様な新生物、例えば腎臓(腎細胞ガン)、黒色種、悪性腫瘍、多発性骨髄腫、カルチノイド、リンパ腫及び白血病(例えば慢性骨髄性白血病及びヘアリーセル白血病)の処置において有用であることが記載されている。本明細書に記載される通りに作製されるIFNαサブタイプの混合物を、既知の方法を用いて精製することができる。例えばモノクローナル抗体及びカラム精製の使用を記載する国際公開第2006/085092パンフレットを参照されたい。他の方法は文献に記載されている。本明細書に記載される通りに作製されるIFNαを、既知の方法を用いて精製することができる。例えば米国特許第4,680,260号明細書、米国特許第4,732,683号明細書及びG.Allen,Biochem J.,207:397−408(1982)を参照されたい。TFNαは、例えば乾癬及び慢性関節リウマチを含む自己免疫疾患における処置に有用であることが記載されている。IP−10、インターフェロンガンマ誘導性タンパク質は脈管形成の有力な阻害剤として用いられ得、且つ有力な胸腺−依存性抗−腫瘍効果を有する。
【0140】
樹状細胞及びSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを含有する培養物を、サイトカインの生成に適した条件下でインキュベーションすることによりIFNαを作製する方法を提供する。1つの態様において、健康なドナー(好ましくはヒト)から血液を採取し、既知の方法を用いて末梢血白血球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)を調製する。1つの態様において、PBLを本発明の方法に従うサイトカイン−生成細胞として用いる。別の態様において、PBMCをサイトカイン−生成細胞として用いる。別の態様において、既知の方法を用いて、例えば商業的に入手可能なキット、Miltenyl Biotec GmbH(Germany)による「ヒト形質細胞様樹状細胞単離キット(human plasmacytoid dendritic cell isolation kit)」を用いて、PBL又はPBMCから形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cells)を単離する。選ばれた細胞を、適した培地及びアデノウイルス亜群Eキャプシドタンパク質を有する懸濁液中で培養する。適した培地は、当該技術分野における熟練者により容易に決定され得る。しかしながら1つの態様において、培地はRPMI−1640培地である。あるいはまた、他の培地を容易に選ぶことができる。適した容器、例えばマイクロタイターウェル、フラスコ又はもっと大きな容器中で細胞を培養することができる。1つの態様において、細胞の濃度は培地のmL当たりに約百万個の細胞である。しかしながら、他の適した細胞濃度が当該技術分野における熟練者により容易に決定され得る。本発明は、プライマーとしてのインターフェロンの使用を必要としない。しかしながら、望ましければ、細胞成長を刺激するために、培地は適したサイトカイン、IL−3を含むことができる。1つの適した濃度は約20ng/mLである。しかしながら、他の濃度を用いることができる。1つの態様において、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドタンパク質を、細胞を含有する培養物中に導入する。本明細書に記載されるいずれの形態(例えば中空キャプシド粒子を含むウイルス粒子、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを有するウイルスベクターなど)においても、アデノウイルスキャプシドタンパク質を培養物に送達することができる。典型的には、キャプシドタンパク質は適した担体、例えば培地、食塩水などの中に懸濁されるであろう。適切には、細胞当たりに約100〜100,000個のアデノウ
イルス亜群E粒子の量で、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシドを培養物に加える。次いで混合物を、例えば約28℃〜約40℃の範囲内、約35℃〜約37℃の範囲内あるいは約37℃においてインキュベーションする。典型的には、約12〜96時間又は約48時間後に、細胞を遠心沈殿させ、上澄み液を集める。適切には、細胞ライシスを避ける条件下でこれを行い、それにより上澄み液中の細胞破片の存在を減らすか又は排除する。遠心分離は、細胞からのサイトカインの分離を可能にし、それにより雑に単離されたサイトカインを与える。アデノウイルス及びアデノウイルスキャプシドなどからのサイトカインのさらなる精製のために、サイジングカラム(sizing columns)ならびに他の既知のカラム及び方法が利用可能である。そのように精製されるこれらのサイトカインは、多様な用途における調製及び使用のために利用可能である。
【0141】
1つの態様において、中空SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337粒子(すなわちアデノウイルス又は導入遺伝子産物を発現するDNAが詰め込まれていないアデノウイルスキャプシド)を細胞に送達することができる。別の態様において、非−感染性野生型SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337粒子あるいはSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337キャプシド(粒子)中に詰め込まれた組換えアデノウイルスベクターを用いることができる。そのようなウイルス粒子を不活化するための適した方法は当該技術分野において既知であり、例えばUV照射(それはゲノムDNAを有効に架橋して発現を妨げる)が含まれ得るが、制限ではない。
【0142】
以下の実施例は、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337のクローニング及び代表的な組換えSAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337ベクターの構築を記載している。これらの実施例は単に例示的であり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例1】
【0143】
サルアデノウイルスの単離
University of Louisiana New Iberia Research Center,4401 W.Admiral Doyle Drive,New Iberia,Louisiana,USAにおいて、チンパンジーコロニーから糞便試料を得た。糞便懸濁液から濾過された上澄み液をヒト細胞系A549の培養物中に接種した。培養物中で約1〜2週間の後、いくつかの接種材料を有する細胞培養物において、可視の細胞変性効果(CPE)が明らかであった。この方法によって単離されたウイルスを、塩化セシウム勾配バンディング(cesium chloride gradient banding)の標準的なアデノウイルス精製法を用い、A549細胞を用いて大規模調製に拡大した。精製されたアデノウイルスからのDNAを単離し、Qiagen Genomics services,Hilden,Germanyにより完全に配列決定した。完全なゲノム配列の分析は、単離されたウイルスが以前に報告されたことがない新規な配列を有することを示した。
【0144】
ウイルスDNA配列の系統発生分析に基づき、サルアデノウイルスA1302(SAdV−A1302)、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337と称されるアデノウイルスが、亜群(種)Eと同じ亜群内にあることが決定された。ウイルス拡大に関する平均収率は以下の通りであった:A1302(1.45x10
13)、SAdV−A1320(1.35x10
13)、SAdV−A1331(5.62x10
13)及びSAdV−A1337(6.54x10
13)。
【実施例2】
【0145】
ベクター構築
一般的に記載されている通りに、SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337(亜群E)を用いるE1欠失ベクターを作製することができる。
【0146】
SwaIがフランキングするSmaI、ClaI、XbaI、SpeI、EcoRV部位を含有するリンカーを、EcoRI及びNdeIを用いて切断されたpBR322中にクローニングする。XbaIを用いてウイルスDNAを消化し、6kbのフラグメント(左及び右末端)をゲル精製し(gel purified)、SmaI及びXbaIを用いて消化されたpSR5中に連結する。SmaIを用いて12個のミニプレップ(minipreps)を診断し、予測されるフラグメントのサイズに関して評価する。ミニプレップを配列決定して、ウイルスDNA末端の一体性(integrity)を検査する。得られる配列を用いて左末端Qiagen配列を修正し、同様に正しい右ITR配列を推定する。
【0147】
SnaBI+NdeIを用いてプラスミドを消化し、NdeI部位をクレノウ(Klenow)で満たす(filled in)。pBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメントを連結して入れる。あるいはまた、SnaBI及びNdeIによりプラスミドを消化し、CeuI及びPI−SceIに関する認識部位を含有する二本鎖オリゴヌクレオチドを欠失したE1コード領域の代わりに連結する。PstIを用いてミニプレップを診断する。得られるプラスミドを、XbaI+EcoRVを用いて消化する。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337からの右末端(XbaI消化)フラグメントを連結して入れる。ApaLIを用いてミニプレップを診断する。得られるプラスミドを、次いでXbaI+EcoRVを用いて消化する。SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331又はSAdV−A1337DNAからのフラグメントを連結して入れ、MfeIを用いてミニプレップを診断する。次いでリン酸カルシウム又はリポフェクタミン法を用い、製造者の案に従って293細胞をトランスフェクションする。
【実施例3】
【0148】
交差−中和抗体(cross−neutralizing antibodies)の評価
A.野生型SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337を、直接免疫蛍光法により監視される感染阻害中和抗体アッセイ(infection inhibition neutralizing antibody assay)を用いて、ヒトアデノウイルス5(亜種C)及びチンパンジーアデノウイルス7(SAdV−24)ならびにヒトプールIgG(human pooled IgG)と比較して交差−中和活性に関して評価する。ヒトプールIgG[HuプールIgG]は商業的に購入され、普遍的ヒト集団がさらされている複数の抗原に対する抗体をそれが含有しているので、免疫無防備状態の患者における投与に関して承認されている。ヒトプールIgGに関するサルアデノウイルスに対する中和抗体の存在又は不在は、普遍的集団におけるこれらのアデノウイルスへの抗体の普及の反映である。
【0149】
アッセイは以下の通りに行われる。あらかじめHAdV−5又はSAdV−24を注入されたウサギから得た血清試料を56℃において35分間、加熱不活化する。野生型アデノウイルス(ウェル当たり10
8個の粒子)を、血清を含まないDulbeccoの改変イーグル培地(DMEM)中で希釈し、DMEM中の熱−不活化血清試料の2−倍連続希釈液と一緒に、37℃において1時間インキュベーションする。続いて、血清−アデノウイルス混合物を、105単層A549細胞(105 monolyer A549 ce
lls)を有するウェル中のスライドに加える。1時間後、各ウェル中の細胞に100μlの20%胎児ウシ血清(FBS)−DMEMを補完し、5%CO
2中で37℃において22時間培養する。次に、PBSを用いて細胞を2回濯ぎ、パラホルムアルデヒド中における固定(4%,30分間)及び0.2% Triton中における浸透性化(permeabilization)(4℃,20分間)の後に、DAPIならびにHAdV−5に対して産生された(raised)、FITC標識され、広く交差反応性のヒツジ抗体(Virostat)を用いて染色する。顕微鏡下でFITC陽性細胞の数を数えることにより、感染のレベルを決定する。天然の(naive)血清標準と比較してアデノウイルス感染を50%かもしくはそれより多く阻害する最高血清希釈としてNAB力価を報告する。<1/20の力価値が示される場合、中和抗体濃度は検出限界、すなわち1/20より低い。
【0150】
B.野生型SAdV−A1302、SAdV−A1320、SAdV−A1331及びSAdV−A1337を、ヒトアデノウイルス5(HAdV−5;亜種C)と比較して交差−中和活性に関して評価した。結果を下記の表3に示す。HAdV−5に関する約40%に対し、ヒト試料(n=20)の集団の約15%より少ない数が、同定されるアデノウイルスに関して200より大きい中和抗体力価(Nab力価)を有した。
【0151】
【表3】
【実施例4】
【0152】
分子クローン構築
A.SAdV−A1302
SnaBI+Ndeを用いてpSR7プラスミド(配列番号:202)を消化することにより、E1欠失SAdV−A1302クローンを作製し、末端をCIPで処理し、野生型SAdV−A1302配列(配列番号:1)をNdeIで消化して、プラスミド中への導入のための〜3021bpの左末端(Start−NdeI)フラグメントを作製する。得られるプラスミド(pS240−1302)をSnaBI+Ndeで消化し、末端にクレノウを満たし、CIPで処理する。pBleuSK I−PIプラスミド(配列番号:203−I−CeuI及びPI−SceIのための部位を宿している)をSmaI及びポリメラーゼIを有するHindIIIで消化し、プラスミドpS241−A1302を作製する。pS241−A1302を、次いでPac/exonuc−inact/Nde/CIPで処理し、野生型SAdV−A1302配列(配列番号:1)の〜7071bpの右末端(Nde−末端)フラグメントをその中にクローニングして、pS242_A1302プラスミドを生ずる。pS242_A1302プラスミドを、次いでNdeIで消化し、CIPで末端を処理し、野生型SAdV−A1302配列(配列番号:1)の〜
26kbpのフラグメントをその中にクローニングして、pS243−A1302プラスミドを生ずる。
【0153】
次いで適した導入遺伝子発現カセットをpS243−A1302中に導入する。導入遺伝子は、例えばpBleuSK I−PIプラスミドフラグメントのI−CeuI及びPI−SceI部位を介するeGFP、インフルエンザA核タンパク質又はHIV−gag(例えばpSh−HIV−short−gag(配列番号:198)から)のようなリポーターであることができる。HIV gag short配列を、p2311(配列番号:391)又はp0621(配列番号:394)らのメガヌクレアーゼカセットから、そのI−CeuI及びPI−SceI部位を介して得ることもできる。本明細書に記載される、及び当該技術分野において既知の、本実施例及び当該技術分野における熟練と矛盾しない追加の導入遺伝子を用いることができ、それらは本明細書により意図されている。
【0154】
提案されるHIV−gag導入遺伝子を含有するE1欠失SAdV−A1302クローンを配列番号:104において同定する。
【0155】
B.SAdV−A1320
E1欠失SAdV−A1320クローン(配列番号:206)、p2870を以下の通りに作製し、すべての段階は標準的な分子生物学的方法を用いて行われた。野生型A1320配列(配列番号:25)の5’(左末端)、5’ITRからNheI部位までをシャトルプラスミドpSR7(配列番号:202)中にSma/NheI部位において挿入した。配列番号:25のNdeI/EcoRVフラグメント(E1a、E1b 19k及びE1bの〜75%に関するコード配列)をメガヌクレアーゼクローニングカセット(EcoRV/EcoRV制限部位)で置き換えた。次いで野生型A1320配列(配列番号:25)の3’(右末端)、NheI部位から3’ITRまでをシャトルプラスミド中に挿入した(NheI/EcoRVフラグメントの置き換え)。アデノウイルスゲノム(配列番号:25)の残る中間部分(NheI/NheI)を、次いでNheI部位を介してシャトルプラスミドに加えた。
【0156】
HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1320クローンも作製した(配列番号:246;p2876)。E1欠失SAdV−A1320クローン(配列番号:206)、p2870をI−CeuI及びPI−SceIで消化し、除去されたフラグメントをp0621(配列番号:394)からのメガヌクレアーゼカセットと、そのI−CeuI及びPI−SceI部位を介して置き換えた。
【0157】
C.SAdV−A1331
pSR5プラスミド(配列番号:201)をSmaI+SpeIで消化することによりE1欠失SAdV−A1331クローンを作製し、末端をCIPで処理し、野生型SAdV−A1331配列(配列番号:50)をSpeIで消化していくつかのフラグメントを作製する。〜10,629bpのフラグメントをプラスミド中に導入する。得られるプラスミド(pS230−1331)をBsiWI+NdeI又はSnaBI+NdeIで消化し、SnaIB(BsiWI)+NdeI部位を介して、ICeuPISceIメガヌクレアーゼカセット(配列番号:205)をその中にクローニングする。得られるプラスミド(pS231−1331)を次いでEcoRV+SpeIで消化し、SpeIで消化された野生型SAdV−A1331配列(配列番号:50)の〜1301bpのフラグメントをその中にクローニングし、pS232−A1331プラスミドを生ずる。pS232−A1331を次いでSpeIで消化し、CIPで処理し、SpeIで消化された野生型SAdV−A1331配列(配列番号:50)の〜24,718bpのフラグメントをその中にクローニングし、pS233−A1331プラスミドを生ずる。
【0158】
次いで適した導入遺伝子発現カセットをpS233−A1331プラスミド中に導入する。導入遺伝子は、メガヌクレアーゼカセットのI−CeuI及びPI−SceI部位を介するeGFP、インフルエンザA核タンパク質又はHIV−gag(例えばpSh−HIV−short−gag(配列番号:198)から)のようなリポーターであることができる。HIV gag short配列を、p2311(配列番号:391)又はp0621(配列番号:394)らのメガヌクレアーゼカセットから、そのI−CeuI及びPI−SceI部位を介して得ることもできる。本明細書に記載される、及び当該技術分野において既知の、本実施例及び当該技術分野における熟練と矛盾しない追加の導入遺伝子を用いることができ、それらは本明細書により意図されている。
【0159】
提案されるHIV−gag導入遺伝子を含有するE1欠失SAdV−A1331クローンを配列番号:151において同定する。
【0160】
D.SAdV−A1337
E1欠失SAdV−A1337クローン(配列番号:287)、p2875を以下の通りに作製し、すべての段階は標準的な分子生物学的方法を用いて行われた。野生型A1337配列(配列番号:77)の5’(左末端)、5’ITRからNheI部位までをシャトルプラスミドpSR7(配列番号:202)中にSnaBI/NdeI部位において挿入した。配列番号:77のSnaBI/SmaIフラグメント(E1a、E1b 19k及びE1bの〜50%に関するコード配列)をメガヌクレアーゼクローニングカセット(EcoRV/EcoRV制限部位)で置き換え、PI−SceI/NdeIフラグメントをPI−SceI/NdeIリンカーで置き換えて、さらにE1bから400bpを欠失させた。次いで野生型A1337配列(配列番号:77)の3’(右末端)、NdeI部位から3’ITRまでをシャトルプラスミド中に挿入した(NdeI/EcoRVフラグメントの置き換え)。アデノウイルスゲノム(配列番号:77)の残る中間部分(NdeI/NdeI)を、次いでNdeI部位を介してシャトルプラスミドに加えた。
【0161】
HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1337クローンも作製した(配列番号:336;p2878)。E1欠失SAdV−A1337クローン(配列番号:287)、p2875をI−CeuI及びPI−SceIで消化し、除去されたフラグメントをp0621(配列番号:394)からのメガヌクレアーゼカセットと、そのI−CeuI及びPI−SceI部位を介して置き換えた。
【実施例5】
【0162】
ベクター発現及び初期特性化
HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1320クローン(配列番号246;p2876)及びHIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1337クローン(配列番号:336;p2878)を、実施例4,B及びDに記載した通りに作製した。通常の方法に従ってクローンをレスキューし、ベクターを増殖した(expanded)。保護時の特性化は、両方のベクターが細胞変性効果(CPE)を示すことを明らかにした。A1320及びA1337ベクターに関し、それぞれmL当たりに5.26x10
12個及び5.55x10
12個の粒子の力価が得られた。両方のベクターは、内毒素の生成なく作製された。
【実施例6】
【0163】
ベクター特性化−感染力価比
A.方法
Taqman TCID50
TMアッセイを用い、各ベクターに関して感染力価比を決定する。感度、再現性及び一巡時間を向上させるために、アデノウイルスベクターに関する感染力アッセイを開発し、プラークアッセイのような標準的な方法の代わりとして用いた
。Taqman TCID50
TMアッセイは、ベクターの限界希釈及び陽性ウェルの感受性で定量的な合図(calling)のためにリアルタイムPCR(real−time
PCR)を用いるウイルスDNA複製の50%終点決定に基づく。要するに、ベクターを連続希釈し(10−倍希釈)、96−ウェルプレートフォーマットにおいて293細胞に感染させるのに用いる(希釈当たりに8個の複製ウェル)。3日間のインキュベーション期間の後、複製されたDNAを抽出し、導入遺伝子発現カセットに特異的なリアルタイムPCRプライマー−プローブセット(例えばpolyA)を用いて定量する。Karbers式に基づく基本的なコンピュータープログラムにより、50%終点決定を行う。アッセイの有効性確認(validation)は、力価(IU/ml)及び粒子対感染力(P:I)比の優れた再現性を示した(データは示されていない)。P:I比を試料(preparation)の感染力の尺度として用い、低いP:I比はより感染性のベクター試料を示す。アッセイは一貫してP:I比を繰り返し(returns)、それらはプラークアッセイを用いて、あるいは細胞変性効果(CPE)の観察に基づくTCID50アッセイを用いて達成されるものよりずっと低い。Taqman TCID50由来のP:I比は、ベクターサブタイプ内のロット間の一貫性の尺度として最も有用である。
【0164】
B.結果
上記Aの方法に従って、HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1320クローン(配列番号246;p2876)を調べた。8617の感染力価比が見出された。
【0165】
上記Aの方法に従って、HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1337クローン(配列番号:336;p2878)を調べた。278の感染力価比が見出された。
【実施例7】
【0166】
T−細胞誘導
HIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1320クローン(配列番号246;p2876)及びHIV gag(short)配列を有するE1欠失SAdV−A1337クローン(配列番号:336;p2878)を、実施例4,B及びDに記載した通りに作製した。通常の方法に従ってクローンを保護し、ベクターを拡大した。引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるRoy, et al.[“Partial protection against H5N1 influenza in mice with a single dose of a chimpanzee adenovirus vector expressing nucleoprotein”,Vaccine 25:6845−6851(August 6,2007)]に含有される案を用い、得られる組換えアデノウイルスウイルスによるT細胞誘導を評価することができる。
【0167】
各ベクターの1x10
10個の粒子を、HIV−1−gag−short導入遺伝子を保有する標準ベクターとしてのHAdV5と一緒に、BALBcマウス中に筋肉内に注入する。ベクター投与から後の7又は8及び14日に動物を犠牲にする。IFN−γ ELISPOTアッセイにより、HIV−1 gag−shortへのT細胞反応を分析する。T細胞反応は検出可能であり、7又は8日から14日まで向上する。
【実施例8】
【0168】
サイトカイン誘導
酵素結合イムノソルベントアッセイ、インターフェロン−γ 酵素結合イムノスポットアッセイ(enzyme−linked immunospot assay)及び細胞内サイトカイン染色(ICCS)を含むLin et al.,J Virol.200
7 November;81(21):11840−11849(Vaccines Based on Novel Adeno−Associated Virus Vectors Elicit Aberrant CD8
+ T−cell Responses in Mice)及びLin et al.,Hum.Gene Ther.2008 July;19(7):663−669(Impact of Preexisting Vector Immunity on the Efficacy of Adeno−Associated Virus−Based HIV−1 Gag Vaccines)の方法に従って、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターへのサイトカイン反応の特性化を行う。
【0169】
特性化は、ベクター投与に続くアデノウイルスサイトカインプロファイルを反映することが期待される。
【0170】
B.SAdV−A1320(
図1中で「SAdV1320」)及びSAdV−A1337(
図1中で「SAdV1337」)ベクターの1x10
10個の粒子を、HadV5、SAdV36、SAdV1295、SAdV1309及びSAdV1321ベクターと一緒に、BALBマウス中に筋肉内注入し、8日及び14日にHIV−1 gag−shortへのT細胞反応をIFN−γ ELISPOTにより分析した。免疫優性HIV gag short CD8 T細胞エピトープAMQMLKETI(配列番号:410)を用いてT細胞反応を分析した。このペプチドはMimotopes(Clayton,Victoria,Australia)により合成され、2mg/mlにおいてジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解された。すべての実験においてペプチドは2μg/mlの濃度で用いられ、DMSO濃度はすべての最終的なアッセイ混合物において0.1%(v/v)より低く保たれた。ベクター当たり及び時点当たりに(per time point)3個のBALB/cマウスに、対応するベクターを注入した。8日及び14日におけるT細胞データの概要を
図1に示す。
【0171】
上記で引用したすべての文書、配列表ならびに2012年5月18日に申請された米国暫定特許出願第61/649,007号明細書及び2013年3月14日に申請された米国暫定特許出願第61/784,142号明細書の記載事項全体は、引用することにより本明細書の内容となる。多数の修正及び変動が上記で同定された明細書の範囲内に含まれ、当該技術分野における熟練者に明らかであると思われる。そのような組成物及び方法への修正及び改変、例えば異なるミニ遺伝子の選択あるいはベクター又は免疫モジュレーターの選択もしくは投与量は、本明細書に付随する請求項の範囲内であると思われる。
【0172】
【表4-1】
【0173】
【表4-2】
【0174】
【表4-3】
【0175】
【表4-4】
【0176】
【表4-5】
【0177】
【表4-6】
【0178】
【表4-7】
【0179】
【表4-8】
【0180】
【表4-9】
【0181】
【表4-10】
【0182】
【表4-11】
【0183】
【表4-12】
【0184】
【表4-13】
サルアデノウイルスヘキソンタンパク質のフラグメントを含有するヘキソンを含んでなるキャプシド及びSAdVに異種である核酸配列を有する組換えアデノウイルスであって、SAdVヘキソンタンパク質のフラグメントは長さが約50個のアミノ酸のN−末端もしくはC−末端切断を有する配列番号:86、9、34又は59のSAdVヘキソンタンパク質であるか、あるいは
配列番号:86、9、34又は59のアミノ酸残基125〜443;
配列番号:86、9、34又は59のアミノ酸残基138〜441;
配列番号:86、9、34又は59のアミノ酸残基138〜163;
配列番号:86、9、34又は59のアミノ酸残基170〜176;及び
配列番号:86、9、34又は59のアミノ酸残基404〜430
より成る群から選ばれる組換えアデノウイルス。
該アデノウイルスが、複製及び包膜に必要な5’及び3’アデノウイルスシス−要素を含んでなるシュードタイプアデノウイルスであり、該シス−要素はアデノウイルス5’逆方向末端反復及びアデノウイルス3’逆方向末端反復を含んでなる請求項7に従う組換えアデノウイルス。
請求項20に従う組成物を患者に送達することを含んでなるアデノウイルスレセプターを有する細胞を標的化するための方法であって、該組成物はヘキソン、ペントン及び繊維から選ばれる1種もしくはそれより多いサルアデノウイルスSAdV−A1337、SAdV−A1302、SAdV−A1320又はSAdV−1331タンパク質を含む方法。
標的細胞への分子の送達に有用な薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか1つに従うアデノウイルス又は請求項7〜14のいずれか1つに従う組換えアデノウイルスの使用。