特表2015-519062(P2015-519062A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特表2015519062-メチルメタクリレートの生成方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-519062(P2015-519062A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】メチルメタクリレートの生成方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20060101AFI20150612BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20150612BHJP
【FI】
   C12P7/62
   C08F20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2015-514580(P2015-514580)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(85)【翻訳文提出日】2014年12月22日
(86)【国際出願番号】GB2013051376
(87)【国際公開番号】WO2013179005
(87)【国際公開日】20131205
(31)【優先権主張番号】1209425.6
(32)【優先日】2012年5月28日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500460209
【氏名又は名称】ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】イーストハム、グラハム ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、デイビッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ストラートフ、アドリアヌス ヨハンス ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フラーイエ、マルコ ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンテル、レンコ ツィッベ
【テーマコード(参考)】
4B064
4J100
【Fターム(参考)】
4B064AD13
4B064CA21
4B064CB11
4B064CC01
4B064CD05
4B064DA16
4J100AB02Q
4J100AJ02Q
4J100AL03P
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4J100AM02Q
4J100AS02Q
4J100BA29Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
(57)【要約】
メチルメタクリレート又はその誘導体の生成方法が記載されている。この方法は;(i)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ、及び(ii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップを含む。メチルメタクリレート又はその誘導体のポリマー又はコポリマーを調製する方法もまた記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ、及び
(ii)生成された前記メチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を備える、メチルメタクリレート又はその誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記メチルプロピオネートが、好適な触媒の存在下におけるホルムアルデヒド又はその好適なソースとの反応によって処理されてメチルメタクリレート又はメタクリル酸が生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが野生型酵素であり、前記野生型バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素の細菌ソースが、以下の細菌属;アシネトバクター属(Acinetobacter)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、ブラキモナス属(Brachymonas)、ノカルジア属(Nocardia)、エクソフィアラ属(Exophiala)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ゴードニア属(Gordonia)、ノボスフィンゴビウム属(Novosphingobium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、テルモビフィダ属(Thermobifida)、キサントバクター属(Xanthobacter)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、コマモナス属(Comamonas)、テルモビフィダ属(Thermobifida)又はシュードモナス属(Pseudomonas)からの細菌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、細菌種アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871又はロドコッカスジョスチイ(Rhodococcus jostii)RHA1又はロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31又はキサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)又はブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)由来の野生型酵素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、タイプI、タイプII又はタイプOバイヤービリガーモノオキシゲナーゼである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、以下の酵素群:シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)EC番号1.14.13.22(GenBank:BAA86293.1);フェニルアセトンモノオキシゲナーゼ(PAMO)EC番号1.14.13.92(Swiss−Prot:Q47PU3);4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(HAPMO)EC番号1.14.13.84(GenBank:AAK54073.1);アセトンモノオキシゲナーゼ(ACMO)(GenBank:BAF43791.1);メチルケトンモノオキシゲナーゼ(MEKA)(GenBank:ABI15711.1);シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(CPDMO)(GenBank:BAE93346.1);シクロペンタノンモノオキシゲナーゼ(CPMO)(GenBank:BAC22652.1);ステロイドモノオキシゲナーゼ(STMO)(GenBank:BAA24454.1)の1種から選択されるタイプIバイヤービリガーモノオキシゲナーゼである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、以下の酵素:アシネトバクターカルコア
セチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)(GenBank:AAR99068.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(Q93TJ5.1)、シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(GenBank:BAE93346.1)、又は、ゴードニア属(Gordonia sp.)TY−5(Genbank:BAF43791.1)由来のアセトンモノオキシゲナーゼの1種から選択されるシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ、シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ又はアセトンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが:アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)(GenBank:AAR99068.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、又は、ゴードニア属(Gordonia sp.)TY−5(Genbank:BAF43791.1)由来のアセトンモノオキシゲナーゼから選択されるシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ又はアセトンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ又はシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼがシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)又はロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)から誘導されるシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、蛍光菌(Pseudomonas flourescans)から誘導される4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜7又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)HI−70から誘導されるシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼである、請求項1〜7又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の共溶剤が上記方法の反応混合物に含まれ、前記共溶剤が、以下の:メタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ジオキサン、アセトン又はアセトニトリルの1種から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
用いられる前記共溶剤がメタノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
共溶剤/基質の濃度が、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを基準としたmol:molで1000:1以上である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼによる生成に係るメチルプロピオネート:酢酸エチルの比が少なくとも1:5である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、少なくとも2%の絶対レベルの選択性で2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼが、少なくとも20%の相対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法に従うメチルメタクリレート又はその誘導体の調製;
(ii)任意により1種又は複数種のコモノマーを伴う、そのポリマー又はコポリマーを生成する、(i)において調製された前記メチルメタクリレートの重合
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体のポリマー又はコポリマーの調製方法。
【請求項21】
前記コモノマーが、モノエチレン性不飽和カルボン酸及びジカルボン酸、ならびに、エステル、アミド及び無水物を含むそれらの誘導体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記コモノマーが:アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、イソ−ボルニルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソ−ボルニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、トルエンジイソシアネート及びp,p’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含むイソシアネート、アクリロニトリル、ブタジエン、ブタジエン及びスチレン(MBS)、ならびに、ABSから選択され、ただし、上記のコモノマーがいずれも、(i)における前記酸モノマー又は(ii)における前記エステルモノマーと1種又は複数種の前記コモノマーとの所与の共重合のいずれかにおける、上記の(i)又は(ii)中のメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルから選択される前記モノマーではない、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法で形成された、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ホモポリマー又はコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な酵素により触媒された方法を使用することにより2−ブタノンからメチルメタクリレート又はその誘導体を生成する方法、ならびに、これらから生成されたポリマー及びコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸(MAA)及びそのメチルエステルであるメチルメタクリレート(MMA)は化学産業において重要なモノマーである。これらの主な用途は、種々の用途のためのプラスチックの製造におけるものである。最も重要な重合用途は、高い光学透明性を有するプラスチックを製造するためのポリメチルメタクリレート(PMMA)のキャスティング、成形又は押出し成形である。加えて、多くのコポリマーが用いられており、重要なコポリマーは、メチルメタクリレートとα−メチルスチレン、エチルアクリレート及びブチルアクリレートとのコポリマーである。さらに、単純なエステル交換反応によって、MMAは、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等などの他のエステルに転換され得る。
【0003】
現在、MMA(及びMAA)は多数の化学的手法によって製造されており、MMAがホルムアルデヒドとの無水反応によってエステルメチルプロピオネートから得られる「アルファプロセス」が成功を収めているその一つである。アルファプロセスにおいて、メチルプロピオネートは、エチレンのカルボニル化によって生成される。このエチレン原材料は化石燃料由来のものである。近年においては、サステナブルなバイオマス原材料をソースとすることも化学産業にとって望ましくなっている。従って、アルファプロセスに用いられるメチルプロピオネートに代わる代替的なバイオマスソースが有利となろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、前述の問題を解決し、MMAの生成に生物学的プロセス又は部分生物学的プロセスを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外なことに、本発明者らは、新規プロセスにおいて例外的な酵素を適用してMMAを工業的に適用可能なレベルで形成し、これにより、重要なモノマーに対する新たな実施可能であるバイオ経路を提供する方法を見出した。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
(i)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ、及び
(ii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含む、メチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0007】
上記プロセスは、粗原材料から2−ブタノンを形成するステップをさらに含み得、ここで、「粗原材料」という用語は、特にこれらに限定されないが;2−ブタノール、アセトイン、2,3−ブタンジオール又はメチルビニルケトンなどの2−ブタノンに変換されることが可能であるいずれかの基剤有機化学物質を含み得る。
【0008】
上記プロセスは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガス(C
O及び/又はCOを多く含むガスなど)を発酵させて粗原材料を生成するステップをさらに含み得、ここで、「粗原材料」という用語は、上記において定義されているとおりである。微生物が転換可能なガスの好適なソースとしては、産業煙道ガス、合成ガス及び改質メタンが挙げられる。
【0009】
上記プロセスは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをバイオマスから得るステップをさらに含み得、ここで、「バイオマス」という用語は、本明細書においては生死いずれかの状態の植物又は動物性物質として定義され、老廃物又は本発明において記載されている使用に意図される物質であるとみなされ得る。
【0010】
メチルプロピオネートは、任意の好適な公知の化学又は生化学プロセスによって処理されてメチルメタクリレート又はその誘導体が生成されることが好適である。メチルプロピオネートは好適には、好適な触媒の存在下におけるホルムアルデヒド又はその好適なソースとの反応によって処理されてメチルメタクリレート又はメタクリル酸が生成される。典型的には、この反応は無水条件下で行われる。
【0011】
メタクリル酸又はエステルの調製に好適なプロセスは、メチルプロピオネートと、以下に定義されている式Iのホルムアルデヒドの好適なソース:
【化1】
(式中、R及びRは、C〜C12炭化水素、好適には、C〜C12アルキル、アルケニルもしくはアリール、又は、H、より好適には、C〜C10アルキル又はH、最適には、C〜Cアルキル又はH、特にメチル又はHから独立して選択され;
XはOであり;
nは、1〜100、好適には1〜10、より好適には1〜5、特に1〜3の整数であり;及び、mは1である)
とを、好適な触媒の存在下、及び、任意によりメタノールの存在下に接触させるステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】5μMのCHMOによる異なる濃度の2−ブタノンの転換を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に好適な実施形態において、式Iの化合物は、メタノール及び/又は水の存在下でホルムアルデヒドから誘導される。このような事例において、式Iの化合物は、ホルムアルデヒドの好適なソースとして定義され得る。
【0014】
明確さを期するために記載すると、ホルムアルデヒドの好適なソースは、ホルムアルデヒドのソースをもたらし得る平衡組成物のいずれかを含む。このようなソースの例としては、特に限定されないが、ネチラール(1,1ジメトキシメタン)、ポリオキシメチレン−(CH−O)i−(式中、i=1〜100)ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)、ならびに、ホルムアルデヒド、メタノール及びメチルプロピオネートの混合物などの他の平衡組成物が挙げられる。
【0015】
典型的には、ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒド及びメタノールCH−O−(
CH−O)−CHの高級ホルマール(「ホルマール−i」)(式中、i=1〜100、好適には、1〜5、特に1〜3である)、又は、少なくとも1個の非メチル末端基を有する他のポリオキシメチレンである。従って、ホルムアルデヒドのソースはまた、式R31−O−(CH2−O−)32のポリオキシメチレン(式中、R31及びR32は同一の基であっても異なる基であってもよく、少なくとも一方はC〜C10アルキル基から選択され、例えばR31=イソブチル及びR32=メチルである)であり得る。
【0016】
ホルムアルデヒドの好適なソースは好適には、1,1ジメトキシメタン、ホルムアルデヒド及びメタノールの高級ホルマール、CH−O−(CH−O)−CH(式中、i=2)、ホルマリン、又は、ホルムアルデヒド、メタノール及びメチルプロピオネートを含む混合物から選択される。
【0017】
ホルマリンという用語は好適には、比25〜65%:0.01〜25%:25〜70重量%のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。より好適には、ホルマリンという用語は、比30〜60%:0.03〜20%:35〜60重量%のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。最適には、ホルマリンという用語は、比35〜55%:0.05〜18%:42〜53重量%のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。
【0018】
ホルムアルデヒド、メタノール及びメチルプロピオネートを含む混合物は好適には、5重量%未満の水を含有する。より好適には、ホルムアルデヒド、メタノール及びメチルプロピオネートを含む混合物は、1重量%未満の水を含有する。最適には、ホルムアルデヒド、メタノール及びメチルプロピオネートを含む混合物は、0.1〜0.5重量%の水を含有する。
【0019】
ホルムアルデヒドを用いるメチルプロピオネート(MEP)のMMAへの触媒転換のための好適な触媒は当業者に公知である。1種の公知の触媒は、例えば、他の金属及び金属化合物を含んでいてもよいシリカといった担体上のアルカリ金属触媒などの塩基性触媒である。好適なシリカは、多孔性大表面積シリカである。シリカの表面積は、少なくとも30m−1であり得る。好適なアルカリ金属はセシウムである。アルカリ金属は、触媒の1〜10重量%のレベルで存在し得る。触媒は、マグネシウム、アルミニウム、ハフニウム、ホウ素及び/又はジルコニウムなどの他の金属を含有し得る。他の金属の量は様々であるが、触媒が、100モルのシリカ当たり合計で0.25〜2グラム原子の前記修飾剤元素を含有するような量で他の金属が存在する場合に、良好な結果を得ることが可能である。
【0020】
他の好適な触媒としては、混合金属酸化物(M)(式中、Mは、周期律表の第4段〜第6段目における第3族もしくは第4族、周期律表の第3段〜第5段目における第13族、又は、ランタノイドにおける残りの元素(すなわち、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム;アルミニウム、ガリウム、インジウム)から選択される少なくとも1種の金属であり、Mは、周期律表の第5段もしくは第6段目における第5族、又は、周期律表の第4段もしくは第5段目における第15族(すなわち、ニオビウム、タンタル、砒素及びアンチモニー)から選択される少なくとも1種の金属である);混合リン含有金属酸化物(M)(式中、Mは第IIIb族金属、好適にはアルミニウムであり、Mは第IVb族金属、好適にはケイ素である);Ta窒化物などの窒化単金属酸化物;窒化混合金属酸化物(M)(式中、Mは、周期律表の第2族、第3族、第4族、第13族(IIIAとも呼ばれる)又は第14族(IVAとも呼ばれる)の金属から選択され、Mは、第5族又は第15族(VAとも呼ばれる)の金属から選択される);ならびに、カルシウム及びストロンチウムヒドロキシアパタイトの特に棒又は針様晶癖といったヒ
ドロキシアパタイト及びオルトリン酸塩などの第II族リン酸塩が挙げられ、すべては、任意により、シリカ又はアルミナなどの好適な担体の存在下で用いられる。
【0021】
ホルムアルデヒドを用いるメチルプロピオネート(MEP)のMMA又はMAAへの触媒転換は、典型的には、通常は250〜400℃の範囲内の高温で実施される。所望される生成物がエステルである場合、反応は、エステルの加水分解を介した対応する酸の形成を最小限とするために、関連するアルコールの存在下で実施されることが好適である。また、簡便性のために、ホルマリンの形態でホルムアルデヒドを導入することが度々望ましい。従って、メチルメタクリレートの生成に関して、触媒に供給される反応混合物は、一般に、メチルプロピオネート、メタノール、ホルムアルデヒド及び水から構成されることとなる。
【0022】
バイヤービリガー酸化とは、エステルを形成するためのケトンへの酸素原子の挿入を指す。非対称ケトンにおいて、この挿入反応は、カルボニル炭素と、ケトンの最も安定なカルボニウムイオンとの間にほぼ限定して生じる。非対称ケトンに対するバイヤービリガーオキシ挿入における転移は、およそ第3級アルキル>第2級アルキル、アリール>第1級アルキル>メチル基の順であることが一般的に公知である(March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure 6th Edition,pg.1619)。従って、2−ブタノンのバイヤービリガー酸化は、従来より、生成物として酢酸エチルに関連するとされている。従って、2−ブタノンのバイヤービリガー酸化は、メチルプロピオネートを介したメチルメタクリレートへの経路として当業者が容易に選択するであろう経路ではない。それにもかかわらず、本発明者らは、一定のバイヤービリガーモノオキシゲナーゼにより、例外的に酸素原子を2−ブタノンに挿入して、可能性の低いメチルプロピオネートの生成物を得ることが可能であることを見出した。
【0023】
意外なことに、これにより、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスのアルコールへの発酵と、例外的なバイヤービリガー酸化を介した2−ブタノン、従って、MEPへのその後の酸化とを介する、ポリマー産業に対するメチルメタクリレートモノマーへの例外的で新規な生物学的経路がもたらされた。
【0024】
バイヤービリガー酸化性酵素は、細菌、植物、動物、古細菌及び真菌を含む種々の生体に共通するものであることが知られている。バイヤービリガー酸化性酵素は、ケトンのエステルへの転換を触媒することが可能である。しかしながら、報告されているこれらの酵素は、単に、生物系において直鎖脂肪族ケトンではなく環系ケトン(ラクトン)で作用すると記載されているのみである。これらの直鎖脂肪族ケトンに対する活性をテストした数少ない研究においても、これらは、きわめて低い活性を有すると報告されている。
【0025】
「バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ」という用語は、本明細書において用いられるところ、EC分類グループ1.14.13.Xに属する酸化反応を触媒可能な酵素を指すことが好ましく、このような、酵素は一般に、以下の特徴的な配列を含む:タンパク質配列のN末端及び中間のそれぞれにおける2つのロスマンフォールドタンパク質配列モチーフ(GxGxxG)、ならびに、折りたたまれたタンパク質のループ領域に位置される典型的なBVMO結合モチーフFxGxxxHxxxW[P/D]。
【0026】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは野生型酵素又は修飾酵素であり得る。加えて、この酵素は、野生型又は修飾型であるかに関わらず合成であり得る。
【0027】
「野生型」という用語は、本明細書において用いられるところ、酵素などのポリペプチド、遺伝子などのポリヌクレオチド、生体、細胞、又は、いずれかの他の物質に言及して
いるかに関わらず、前記物質の天然形態を指す。
【0028】
「修飾型」という用語は、本明細書において用いられるところ、酵素などのポリペプチド、遺伝子などのポリヌクレオチド、生体、細胞、又は、いずれかの他の物質に関連して、野生型とは異なる物質を指す。
【0029】
「微生物が転換可能なガス」という用語は、本明細書において用いられるところ、微生物によって粗原材料に転換されることが可能であるガスを意味する。好適なガスはCOを多く含むガスであり、好適な発酵が米国特許出願公開第2012/0045807A1号明細書に記載されており、これは、クロストリジウムオートエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウムルジュングダーリイ(Clostridium ljundahlii)及びクロストリジウムラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)などのクロストリジウム属(Clostridia)を伴う、適切な培地における当業者に公知である条件下で嫌気性発酵を用いてCOを2,3−ブタンジオールに転換させる。
【0030】
修飾された物質をもたらし得る野生型物質に対する好適な変更は、遺伝物質に対する変更、タンパク質材料に対する変更を含む。
【0031】
遺伝物質に対する変更は、材料を野生型とは異ならせる技術分野において公知であるいずれかの遺伝子修飾を含み得る。
【0032】
このような遺伝子修飾の例としては、これらに限定されないが:欠失、挿入、置換、融合等が挙げられ、これらは、関連する遺伝子又は被修飾遺伝子を含有するポリヌクレオチド配列において行われ得る。
【0033】
本発明の範囲に包含されるこのような遺伝子修飾はまた、任意の好適な後成的修飾を含み得る。後成的修飾は、関連する遺伝子又は被修飾遺伝子を含有するポリヌクレオチド配列の修飾を伴わずに関連する遺伝物質に作用するいずれかの修飾を含み得る。後成的修飾の例としては、これらに限定されないが;核酸メチル化又はアセチル化、ヒストン修飾、擬似突然変異、遺伝子サイレンシング等が挙げられる。
【0034】
タンパク質材料に対する変更は、材料を野生型とは異ならせる技術分野において公知であるいずれかのタンパク質修飾を含み得る。
【0035】
このようなタンパク質修飾の例としては、これらに限定されないが:断片化を含むポリペプチドの切断部;他の生化学的官能基の結合;アミノ酸の化学的性質の変更;保存的及び非保存的置換、欠失、挿入等を含むアミノ酸残渣の変更;ポリペプチド等の結合の変更が挙げられ、これらは、折りたたまれて関連するタンパク質又は被修飾タンパク質を形成するポリペプチド配列について実施され得る。
【0036】
前記材料の構造に対する変更は、遺伝子又はタンパク質材料の構造を野生型とは異ならせる技術分野において公知であるいずれかの構造修飾であり得る。
【0037】
このような構造修飾の例としては、特にこれらに限定されないが、以下の要因:他の構造との相互作用;溶剤との相互作用;基質、生成物、共同因子、補酵素、又は、他のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを含む好適な反応中に存在するいずれかの他の化学物質との相互作用;第4級タンパク質構造の形成;周囲温度又はpHの変更等によって生じる修飾が挙げられ、これらは、対象とされる関連する遺伝子又はタンパク質材料の構造について実施され得る。
【0038】
上記の遺伝子変更、タンパク質変更又は構造変更の群において詳述されている修飾の各々は、当業者に公知である可能性のある修飾に係る広範囲の例示として記載されており、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0039】
好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素は野生型酵素である。より好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素は生体から誘導される野生型酵素であり、ここで、生体は、古細菌、細菌又は真核生物を含むいずれかのドメインに由来するものであり得る。さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素は生体から誘導される野生型酵素であり、ここで、生体は、植物、真菌、古細菌又は細菌界に由来するものである。さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素は細菌又は真菌から誘導される野生型酵素である。
【0040】
野生型バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素の好適な細菌ソースとしては、これらに限定されないが、以下の細菌属;アシネトバクター属(Acinetobacter)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、ブラキモナス属(Brachymonas)、ノカルジア属(Nocardia)、エクソフィアラ属(Exophiala)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ゴードニア属(Gordonia)、ノボスフィンゴビウム属(Novosphingobium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、テルモビフィダ属(Thermobifida)、キサントバクター属(Xanthobacter)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、コマモナス属(Comamonas)、テルモビフィダ属(Thermobifida)又はシュードモナス属(Pseudomonas)由来の細菌が挙げられる。野生型バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素の好適な細菌ソースは、以下の属:アシネトバクター属(Acinetobacter)又はロドコッカス属(Rhodococcus)由来の細菌である。
【0041】
野生型バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素の好適な真菌ソースとしては、これらに限定されないが、以下の真菌属;ギベレラ属(Gibberella)、アスペルギルス属(Aspergillus)、マグナポルテ属(Maganporthe)、シリンドロカルポン属(Cylindrocarpon)、カーブラリア属(Curvularia)、ドレックスレラ属(Drechslera)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クンニングアメラ属(Cunninghamella)、シリンドロカルポン属(Cylindrocarpon)又はシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)由来の真菌が挙げられる。野生型バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素の好適な真菌ソースは、以下の属:ギベレラ属(Gibberella)、アスペルギルス属(Aspergillus)又はマグナポルテ属(Magnaporthe)由来の真菌である。
【0042】
最適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、細菌種アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871又はロドコッカスジョスチイ(Rhodococcus jostii)RHA1又はロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31又はキサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)から誘導される野生型酵素である。
【0043】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、タイプI、タイプII又はタイプOバイヤー
ビリガーモノオキシゲナーゼであり得る。バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは好適には、タイプIバイヤービリガーモノオキシゲナーゼである。より好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、以下の酵素群;シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)EC番号1.14.13.22(GenBank:BAA86293.1);フェニルアセトンモノオキシゲナーゼ(PAMO)EC番号1.14.13.92(Swiss−Prot:Q47PU3);4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(HAPMO)EC番号1.14.13.84(GenBank:AAK54073.1);アセトンモノオキシゲナーゼ(ACMO)(GenBank:BAF43791.1);メチルケトンモノオキシゲナーゼ(MEKA)(GenBank:ABI15711.1);シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(CPDMO)(GenBank:BAE93346.1);シクロペンタノンモノオキシゲナーゼ(CPMO)(GenBank:BAC22652.1);ステロイドモノオキシゲナーゼ(STMO)(GenBank:BAA24454.1)の1種から選択されるタイプIバイヤービリガーモノオキシゲナーゼである。さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ、シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ又はアセトンモノオキシゲナーゼであり、これらは、以下の酵素:アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)(GenBank:AAR99068.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(Q93TJ5.1)、シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(GenBank:BAE93346.1)、又は、ゴードニア属(Gordonia sp.)TY−5(Genbank:BAF43791.1)由来のアセトンモノオキシゲナーゼの1種から選択され得る。
【0044】
さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ又はアセトンモノオキシゲナーゼであり、これらは、アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、ブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)(GenBank:AAR99068.1)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、又は、ゴードニア属(Gordonia sp.)TY−5(Genbank:BAF43791.1)由来のアセトンモノオキシゲナーゼから選択され得る。
【0045】
意外なことに、本発明者らは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼは、わずかに5mMの2−ブタノン基質の濃度で、メチルプロピオネートを高い割合で生成することが可能であることを見出した。
【0046】
従って、最適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、好適にはアシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871、キサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)(GenBank:CAD10801.1)又はロドコッカス属(Rhodococc
us sp.)HI−31(GenBank:BAH56677.1)から誘導されるシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼである。
【0047】
最適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、細菌種アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)NCIMB9871又はロドコッカスジョスチイ(Rhodococcus jostii)RHA1又はロドコッカス属(Rhodococcus sp.)HI−31又はキサントバクターフラバス(Xanthobacter flavus)又はブラキモナスペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)から誘導される野生型酵素である。
【0048】
さらに、本発明者らは、意外なことに、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ及びシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼもまた、メチルプロピオネートを工業的に有意なレベルで生成することが可能であることを見出した。
【0049】
従って、代替的な好適な実施形態において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ又はシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼである。より好適には、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(Q93TJ5.1)又はシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(GenBank:BAE93346.1)である。
【0050】
4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼは好適には、蛍光菌(Pseudomonas flourescans)由来のものである。
【0051】
シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼは好適には、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)HI−70由来のものである。
【0052】
従って、最適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素は、細菌種蛍光菌(Pseudomonas flourescans)由来の4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ、又は、細菌種シュードモナス属(Pseudomonas sp.)HI−70由来のシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼである。
【0053】
いずれの事例においても、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素は、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ、4−ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ又はシクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼの1種から選択されることが好適である。
【0054】
任意により、本発明において用いられるバイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、上記のバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素の1種又は複数種の混合物として存在し得る。この場合、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)は、上記のソースのいずれか1種又は複数種から、いずれかの組み合わせ又は配合で誘導され得る。例えば、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)は、細菌由来のBVMO酵素と真菌由来のBVMO酵素との混合物であり得、ここで、一方の酵素は修飾酵素であり得、及び、一方は野生型酵素であり得る。
【0055】
あるいは、さらなる実施形態において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、修飾酵素として存在し得る。好適には、修飾BVMO酵素は遺伝子操作された酵素であり、ここで、BVMO酵素の遺伝物質は野生型から変更されたものである。
【0056】
一実施形態において、遺伝子操作されたBVMO酵素は、上記のバイヤービリガーモノオキシゲナーゼの1種又は複数種野生型遺伝子配列の一部から、キメラが形成されるよう
構成された融合タンパク質であり得る。このようなキメラBVMOの好適な例としては、例えば:van Beek et al.,Chemical Communications 2012,48,3288−3290に記載されているとおり、PASTMO(PAMO及びSTMOの融合)又はPACHMO(PAMO及びCHMOの融合)が挙げられる。
【0057】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは好適には、当該技術分野において公知の様式で前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを発現するよう関連する核酸で形質転換された宿主生体を増殖させることにより生成される。好適な宿主生体としては、これらに限定されないが:細菌、真菌、酵母、植物、藻類、原生生物等が挙げられる。
【0058】
関連する核酸は好適には、宿主生体内の発現ベクタで発現される。好適な発現ベクタとしては、これらに限定されないが;ファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド、ホスミド、細菌人口染色体、酵母人口染色体等などの技術分野において公知であるいずれかの市販されているベクタが挙げられる。
【0059】
好適には、細菌について以下に詳述されているとおり、宿主生体におけるBVMO酵素の発現に必要とされる、最適なベクタ、形質転換方法、及び、すべての他の関連するプロセスは、技術分野において公知であるとおり関連する宿主生体について適合される。
【0060】
宿主生体は好適には細菌である。好適には、従って、用いられる発現ベクタは、特にこれらに限定されないが、:pBR、pUC、pBS、pBE、ColE、pUT、pACYC、pA、pRAS、pTiC、pBPS、pUO、pKH、pWKS、pCD、pCA、pBAD、pBAC、pMAK、pBL、pTA、pCRE、pHT、pJB、pET、pLME、pMD、pTE、pDP、pSR等などのいずれかの市販されているプラスミドである。より好適には、用いられる発現ベクタは、以下の市販されているプラスミド;pBAD、pCRE又はpETの1種である。
【0061】
任意により、発現ベクタは、市販されていない修飾発現ベクタであり得、宿主生体内におけるBVMO酵素の特定の発現に対して調整されるよう変更されている。従って、好適な実施形態において、用いられる発現ベクタは、Torres Pazmino et al.ChemoBioChem 10:2595−2598(2009)に記載されているとおり、宿主細菌内におけるBVMO酵素の発現のための市販のpBADプラスミドに基づくpCRE2プラスミドである。
【0062】
宿主細菌は好適には、特にこれらに限定されないが;マイクロインジェクション法、超音波法、凍結融解法、マイクロポレーション又はケミカルコンピテントセルの使用を含む技術分野において公知である任意の好適な手段によって形質転換される。より好適には、宿主細菌はエレクトロポレーションによって形質転換される。
【0063】
好適な宿主細菌としては、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、エスケリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、サルモネラ属(Salmonella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)又はビブリオ属(Vibrio)によるものが挙げられる。好適には、宿主細菌は、エスケリキア属(Escherichia)から選択される。より好適には、宿主細菌は、大腸菌(Escherichia
coli)種である。最適には、宿主細菌は、大腸菌(Escherichia coli)TOP10菌株である。
【0064】
発現ベクタで発現される関連する核酸は好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナー
ゼをコードする遺伝子配列、及び、技術分野において公知である宿主細菌において発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列であり、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子、イニシエータ等である。
【0065】
発現ベクタは好適には、少なくとも1種の発現マーカをコードする遺伝子配列をさらに含む。発現マーカは、正しく形質転換された宿主細菌細胞の識別を可能とする。好適な発現マーカとしては、技術分野において公知であるもののいずれかであって、これらに限定されないが;抗菌性耐性遺伝子、色素生成遺伝子、色素阻害遺伝子、代謝能遺伝子又は代謝不能遺伝子(metabolic incapacity gene)が挙げられる。より好適には、発現マーカは抗菌性耐性遺伝子である。さらにより好適には、抗菌性耐性遺伝子はアンピシリン耐性遺伝子である。従って、アンピシリンを含有する培地上で増殖可能であるこれらの細菌のみが、ベクタを発現し、正しく形質転換される。
【0066】
発現ベクタは好適には、少なくとも1種の活性化因子をコードする遺伝子配列をさらに含む。活性化因子は、形質転換された宿主細菌細胞の刺激が可能となり、誘導物質との相互作用により適切な時間でBVMO酵素を生成させる。好適な活性化因子−誘導因子系としては、技術分野において公知であるいずれかのものであって、具体的には、L−アラビノースが誘導因子であるアラビノースオペロン、又は、誘導因子がアロラクトースもしくはIPTGであるラクトースオペロンが挙げられる。
【0067】
任意により、発現ベクタは、タグをコードする遺伝子配列をさらに含み得る。好適には、前記タグをコードする遺伝子配列は、タグが得られるバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素と共に融合タンパク質を形成するように、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素をコードする遺伝子配列で連続的に転写されるよう作動可能である。タグにより、得られるバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素の宿主細菌溶菌液からの容易な精製が可能である。好適なタグとしては、技術分野において公知であるいずれかのものであって、これらに限定されないが;His−タグ、GSTタグ、MBPタグ又は抗体タグが挙げられる。
【0068】
好適には、宿主細菌は、好適な培地において、技術分野において公知である好適な条件で培養されることにより増殖し、ここで、培地は、液体培地又は硬化ゲルであり得る。好適には、培地は、栄養分のソース、発現マーカの存在を選択する選択性成分、及び、細菌における発現ベクタの発現を誘導する誘導因子を含有し、ここで、選択性成分及び誘導因子は、用いられる発現ベクタに対して特異的である。好適には、培地は液体培地である。より好適には、培地はルリア−ベルターニ液体培地である。
【0069】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、特にこれらに限定されないが;遊離細胞抽出物、合成酵素などの技術分野において公知である任意の好適な形態で上記プロセスの反応混合物中に存在していても、又は、宿主生体細胞中に含有されていてもよく、これらは、特にこれらに限定されないが;溶液中に遊離形態で、膜への保持、又は、カラムへの結合などの技術分野において公知である任意の好適な方法で反応混合物中において形態が特定され得る。
【0070】
BVMOは好適には、溶解酸素の相対レベルで生成が可能であるメチルプロピオネートを必要量で生成するために必要な濃度で反応混合物中に存在する。典型的には、産業上においては、約0.01〜0.5モルのO/1リットル/1時間を反応混合物中に溶解させ、これにより、約0.01〜0.5モルのメチルプロピオネート/1リットル/1時間を得ることが可能である。
【0071】
「約」という用語は、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。好適には、規定される値の上下10%以内である。
【0072】
一実施形態において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは発現元である細胞からの細胞抽出物として反応混合物中に存在し、ここで、細胞は、BVMO酵素の生成に用いられる宿主細菌細胞であることが好適である。細胞抽出物は、特にこれらに限定されないが;超音波処理、DNAse/リソチーム処理、凍結融解処理又はアルカリ処理を含む宿主細菌細胞を溶解することが可能である任意の好適な手段によって入手され得る。
【0073】
細胞抽出物は好適には、次いで、上記プロセスにおいてバイヤービリガーモノオキシゲナーゼのソースとして用いられる前に処理されて、細胞片が除去される。細胞溶菌液は、特にこれらに限定されないが;ろ過、遠心分離、又は、塩による精製を含む技術分野において公知である任意の好適な手段により処理されて、透明な細胞抽出物が得られ得る。
【0074】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素を正常に機能させるために、好適にはさらなる成分が上記プロセスの反応混合物中に存在する。さらなる成分は好適には、緩衝剤又はpHスタット、NADPH、及び、任意によりNADPH再生剤である。
【0075】
いずれかの好適な緩衝剤が反応混合物において用いられ得、好適な緩衝剤としては、これらに限定されないが;トリス−HCl、TAPS、ビシン、トリシン、TAPSO、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸塩、SSC又はMESが挙げられる。好適には、反応混合物において用いられる緩衝剤はトリス−HClである。
【0076】
あるいは、pHスタットが、反応混合物のpHを制御するために用いられ得る。
【0077】
緩衝剤又はpHスタットは好適には、反応混合物を、BVMO酵素が機能するために、及び/又は、前記BVMO酵素を含む宿主生体が生きるために好適なpHに維持する。緩衝剤又はpHスタットは好適には、反応混合物を約pH6.5〜pH8.5のpHで維持する。より好適には、緩衝剤又はpHスタットは、反応混合物を約pH7.3〜7.7のpHで維持する。さらにより好適には、緩衝剤又はpHスタットは、反応混合物を約7.5のpHに維持する。
【0078】
「約」という用語は、反応混合物のpHに対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、反応混合物のpHは、規定される値の上下10%以内である。
【0079】
反応混合物における緩衝剤の濃度は好適には約25〜100mMである。より好適には、反応混合物における緩衝剤の濃度は約40〜60mMである。さらにより好適には、反応混合物における緩衝剤の濃度は約50mMである。
【0080】
「約」という用語は、緩衝剤の濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、緩衝剤の濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0081】
NADPHは好適には、BVMO酵素がNADPHで飽和されるようなBVMOに対する開始モル濃度で反応混合物中に存在する。従って、NADPHは好適には、BVMO酵素の濃度に少なくとも等しい濃度で反応混合物中に存在する。
【0082】
一実施形態において、NADPHは好適には、約50〜200μMの開始濃度で反応混合物中に存在する。より好適には、NADPHは、約90〜110μMの開始濃度で反応
混合物中に存在する。さらにより好適には、NADPHは、約100μMの開始濃度で反応混合物中に存在する。
【0083】
「約」という用語は、NADPHの濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、NADPHの濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0084】
NADPH再生剤は好適には、約5〜20μMの濃度で反応混合物中に存在する。より好適には、NADPH再生剤は、約8〜12μMの濃度で反応混合物中に存在する。さらにより好適には、NADPH再生剤は、約10μMの濃度で反応混合物中に存在する。
【0085】
好適には、用いられる場合、NADPH再生剤は、BVMOがNADPHで飽和されるようなBVMOを基準とするモル濃度で反応混合物中に存在する。好適には、従って、用いられる場合、NADPH再生剤のKmは、BVMOによるNADPHの消費速度に少なくとも等しい。
【0086】
「約」という用語は、NADPH再生剤の濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、NADPH再生剤の濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0087】
特にこれらに限定されないが;ホスファイト脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素又はギ酸塩脱水素酵素などのいずれかの好適なNADPH再生剤が反応混合物中において用いられ得る。好適には、特にこれらに限定されないが;グルコース、アルコール、ホスファイト又はギ酸塩などの、NADPH再生剤に対する関連するパートナー基質がまた反応混合物中に存在している。
【0088】
あるいは、NADPHは、例えば膜、樹脂又はゲルといった、担体に結合された巨大分子補因子共有結合的にとして反応混合物に提供され得る。
【0089】
パートナー基質は好適には、5mM〜20mMの濃度、より好適には、約8mM〜12mMの濃度、さらにより好適には、約10mMの濃度で反応混合物中に存在する。
【0090】
パートナー基質は好適には、約1:4000〜1:250のNADPH再生剤を基準としたモル濃度(NADPH再生剤:パートナー基質)で反応混合物中に存在する。より好適には、パートナー基質は、約1:1000のNADPH再生剤を基準としたモル濃度で反応混合物中に存在する。
【0091】
「約」という用語は、NADPH再生剤に対するパートナー基質の濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、NADPH再生剤に対するパートナー基質の濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0092】
好適には、基質は、2−ブタノンのメチルプロピオネートへのBVMO転換を開始させるために上記の反応混合物中に存在する。このような実施形態において、好適には上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約10g/L〜200g/Lである。より好適には、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約50g/L〜130g/Lである。さらにより好適には、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約90g/L〜110g/Lである。
【0093】
「約」という用語は、基質の濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される
値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、基質の濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0094】
好適には、このような実施形態において、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、反応混合物の少なくとも約10重量%、より好適には、反応混合物の少なくとも約20重量%、反応混合物の約80重量%以下である。
【0095】
代替的な実施形態において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、合成酵素として反応混合物中に存在し得る。このような実施形態において、合成酵素は、技術分野において公知である様式でインビトロで合成され、次いで、反応混合物中において用いられる前に精製される。反応混合物は好適には、上記で反応混合物において定義されているものと同一の成分を、実質的に同一の濃度及び比率で含む。
【0096】
さらなる代替的な実施形態において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、細菌細胞などの宿主生体細胞中で反応混合物中に存在し得る。このような実施形態において、宿主細胞は、技術分野において公知である様式で調製され、次いで、反応混合物中において用いられる前に精製される。反応混合物は好適には、上記で反応混合物において定義されている緩衝剤及び基質を含む。緩衝剤は好適には、上記で定義されているものと同一の濃度及び比率で存在する。
【0097】
しかしながら、好適には、このような実施形態において、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、宿主細胞に対して有害となり、及び、宿主細胞への基質の取り込みに最適である濃度限界未満である。好適には、従って、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約0.2g/L〜50g/Lである。より好適には、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約0.2g/L〜30g/Lである。さらにより好適には、上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、約0.2g/L〜20g/Lである。
【0098】
「約」という用語は、基質の濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、基質の濃度は好適には、規定される値の上下10%以内である。
【0099】
このような実施形態において、好適には上記の反応混合物中に存在する2−ブタノン基質の濃度は、反応混合物の少なくとも約1重量%、より好適には、反応混合物の少なくとも約2重量%、反応混合物の約20重量%以下である。
【0100】
好適には、このような実施形態において、反応混合物中に存在するBVMO酵素の濃度は、反応媒体中に存在する宿主細胞の濃度によって判定される。反応媒体中に存在する宿主細胞の濃度は好適には約1g/L〜100g/Lである。より好適には、反応媒体中に存在する宿主細菌細胞の濃度は約5g/L〜50g/Lである。さらにより好適には、反応媒体中に存在する宿主細菌細胞の濃度は約10g/L〜20g/Lである。典型的には、宿主細胞は細菌細胞である。
【0101】
好適には、このような実施形態において、反応混合物は、宿主細胞の生化学中にすでに存在しているため、追加のNADPH又は任意のNADPH再生剤及びパートナー基質を含まない。
【0102】
好適には、反応混合物において用いられるBVMOソースの形態にかかわらず、インサイツ生成物除去系が、反応プロセスにおいて基質供給ストラテジーと共に実施される。Alphand et al.,Trends in Biotechnology Vo
l.21 No.7 July 2003に記載されているとおり、基質を一定に供給しながら生成物を除去することにより、生成物収率をかなり高い値に高めることが可能であることが見出された。技術分野において公知である任意の生成物除去系及び任意の基質供給ストラテジーが実施され得る。しかしながら、好適には、生成物除去系及び基質供給系は、例えば、基質のリザーバ及び生成物のシンクとして同時に作用することが可能であるキャリア材料を用いることにより、同一のテクノロジーを用いて実施される。このようなテクノロジーの1種は、Simpson et al.Journal of Molecular Catalysis B Enzyme 16,pp.101−108に記載されているOptipore L−493樹脂の使用である。
【0103】
有利なことに、本発明者らは、反応混合物における一定の共溶剤を使用することで、メチルプロピオネート生成物の相対的及び/又は絶対レベルを高めることが可能であることをさらに見出した。
【0104】
「絶対レベル」という用語は、本明細書において用いられるところ、2−ブタノンの転換から、溶液において生成物として得られたメチルプロピオネートの実際の割合値を指す。「相対レベル」という用語は、本明細書において用いられるところ、選択性、すなわち、2−ブタノンの転換から、溶液において生成物として得られた代替的な生成物酢酸エチルに比した、溶液において生成物として得られたメチルプロピオネートの割合を指す。
【0105】
好適には、従って、少なくとも1種の共溶剤が上記の反応混合物中に含まれ、好適な共溶剤としては、これらに限定されないが、以下の:メタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ジオキサン、アセトン又はアセトニトリルの1種が挙げられる。
【0106】
任意により、反応混合物における共溶剤の役割は、基質2−ブタノンによっても果たされ得る。従って、基質触媒に必要とされるものに追加した過剰量の2−ブタノンが用いられてもよい。
【0107】
意外なことに、このような酵素転換においてルーチン的に用いられるレベルを超えて基質の濃度を高めることにより、通常の酢酸エチル生成物と比してもたらされる例外的挿入及びメチルプロピオネートが増えるようBVMOの反応選択性が高まる。意外なことに、BVMOを基準としたモル濃度の1000倍の過剰量の濃度では、酢酸エチル生成:メチルプロピオネート生成の比が低減されるよう、BVMO酵素による例外的挿入、例外的なエステルの形成が増加する。従って、共溶剤/基質の濃度は、BVMOを基準としたmol:molで1000:1以上、より好適には、mol:molで5000:1以上、最適には、BVMOを基準としたmol:molで10000:1以上である。最大レベルは特定の反応に応じることとなるが、選択性及び/又は転換率が低減することとなるレベル未満であるべきである。いずれの事例においても、これは、一般にBVMOを基準としたmol:molで<1000000:1のであり、最適にはBVMOを基準とした共溶剤/基質のモル濃度の25000〜125000倍である。
【0108】
有利なことに、本発明者らは、特に共溶剤としてメタノールを用いることにより、酢酸エチル生成物と比したメチルプロピオネート生成物の相対レベルが大きく高まり、また、他の共溶剤のいずれについて見られる増加を超えてメチルプロピオネートの絶対レベルが大きく高まることを見出した。
【0109】
従って、最適には、用いられる共溶剤はメタノールである。
【0110】
意外なことに、メタノールを反応混合物中において高濃度で用いることにより、BVMOの反応選択性が高まって、通常の酢酸エチル生成物と比して、もたらされる例外的挿入
及びメチルプロピオネートがさらに増大する。
【0111】
好適には、従って、上記プロセスにおけるBVMO酵素による生成に係るメチルプロピオネート:酢酸エチルの比は、少なくとも1:5、より好適には、少なくとも1:2、さらにより好適には、少なくとも1:1.5、最適には少なくとも1:0.5である。
【0112】
意外なことに、メタノールを高濃度で用いることにより、上記プロセスにおいて生成されるメチルプロピオネート生成物の絶対レベルもまた高まる。
【0113】
好適には、従って、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、上記プロセスにおいて、少なくとも2%選択性の絶対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。より好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素は、少なくとも5%選択性の絶対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、少なくとも9%選択性の絶対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。
【0114】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは好適には、少なくとも20%の相対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。より好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素は、少なくとも50%の相対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。さらにより好適には、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素は、少なくとも100%の相対レベルで2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換させる。
【0115】
メチルプロピオネートは、任意の好適な公知の化学プロセス又は生化学プロセスによって処理されて、メチルメタクリレート又はその誘導体を生成することが好適である。メチルプロピオネートは好適には、上記のとおり、好適な触媒の存在下におけるホルムアルデヒド又はその好適なソースとの反応によって処理されてメチルメタクリレート又はメタクリル酸が生成される。
【0116】
上記のとおり、プロセスは、2−ブタノンを粗原材料から形成するステップをさらに含み得、ここで、「粗原材料」という用語は、特にこれらに限定されないが;2−ブタノール、アセトイン、2,3−ブタンジオール又はメチルビニルケトンなどの2−ブタノンに変換されることが可能であるいずれかの基剤有機化学物質を含む。
【0117】
従って、本発明の第1の態様の一実施形態によれば;
(i)2−ブタノンを粗原材料から形成するステップ;
(ii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;及び
(iii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0118】
好適には、2−ブタノンを粗原材料から形成するステップは、2−ブタノールの2−ブタノンへの転換を含む。
【0119】
従って、本発明の第1の態様の好適な実施形態によれば;
(i)2−ブタノンを2−ブタノールから形成するステップ;
(ii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;及び
(iii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその
誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0120】
2−ブタノールから2−ブタノンへのこの転換は、化学的又は酵素的に触媒され得る。好適には、この転換は酵素的に触媒される。より好適には、この転換は、脱水素酵素によって触媒される。さらにより好適には、この転換は、ECグループ番号1.1.1.Xのアルコール脱水素酵素によって触媒される。
【0121】
アルコール脱水素酵素は好適には、EC番号1.1.1.1のものなどの、ブタノールを脱水素することが可能である酵素である。より好適には、アルコール脱水素酵素は、生体由来のブタノールを脱水素することが可能である酵素である。さらにより好適には、ブタノールを脱水素することが可能である脱水素酵素は、例えば、以下の生体の1種に由来し得る:アセトバクターパステウリアヌス(Acetobacter pasteurianus)、アシネトバクターカルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)、アエロピュルムペルニクス(Aeropyrum pernix)、アナストレファ属(Anastrepha)種、アベナサチバ(Avena sativa)、ブラシカナプス(brassica napus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)種、チャノキ(Camellia sanensis)、カンジダ属(Candida)種、クラミドモナスモエブシイ(Chlamydomonas moewussi)、シトリルスラナツス(Citrillus lanatus)、コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ヨーロッパウズラ(Coturnix coturnix)、モンゴルキヌゲネズミ(Cricetulus griseus)、サフラン(Crocus salivas)、メロン(Cucumis melo)、デスルホビブリオギガス(Desulfovibrio gigas)、デボシアリボフラビナ(Devosia riboflavina)、ジポダスクスカピタツス(Dipodascus capitatus)、ショウジョウバエ種、エメリクラニデュランス(Emericulla nidulans)、エンタモエバヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、大腸菌(Escherichia coli)、ユーグレナ属(Euglena)種、フラボバクテリウムフリギジマリス(Flavobacterium frigidimaris)、ニワトリ(Gallus gallus)、イチゴ(Fragaria ananassa)、ゲオバチルス(Geobacillus)種、ハフニアアルベイ(Hafnia alvei)、オオムギ(Hordeum vulgare)、クレブシエラ属(Klebsiella)種、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)種、レイフソニア属(Leifsonia)種、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)種、ニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)、アジアイネ(Oryza sativa)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、ロドコッカス属(Rhodococcus)種、サッカロマイセス属(Saccharomyces)種、スルホブルス属(Sulfobulus)種、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)種、テルモミクロビウムロゼウム(Thermomicrobium roseum)、テルモプラズマアキドピルム(Thermoplasma acidophilum)、テルムス属(Thermus)種、トリチクム属(Triticum)種、ソラマメ(Vicia fabia)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)、トウモロコシ(Zea mays)、ジゴサッカロマイセスロウキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)又はサイモモナスモビリス(Zymomonas mobilis)。
【0122】
特に好適な実施形態において、アルコール脱水素酵素は、ECグループ番号1.1.1.2の熱安定性NADP−依存アルコール脱水素酵素である。より好適には、アルコール脱水素酵素は、好熱性微生物由来の熱安定性NADP−依存アルコール脱水素酵素である
。さらにより好適には、アルコール脱水素酵素は、好熱性細菌由来の熱安定性NADP−依存アルコール脱水素酵素である。最適には、アルコール脱水素酵素は、サーモアナエロバクターブロキイ(Thermoanaerobacter brockii)(Swiss−Prot:P14941.1)細菌由来の熱安定性NADP−依存アルコール脱水素酵素である。
【0123】
アルコール脱水素酵素は好適には、好適には細菌である宿主生体においてBVMO酵素と共発現される。好適には、従って、上記で考察されている発現ベクタは、アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子配列、及び、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子等などの宿主細菌における発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列をさらに含む。
【0124】
あるいは、アルコール脱水素酵素は、宿主生体中において、BVMO酵素とは異なるベクタで発現され得る。
【0125】
有利なことに、アルコール脱水素酵素はまた、NADPH再生系をもたらすために作動可能であることが見出された。2−ブタノールの2−ブタノンへの転換の最中に、アルコール脱水素酵素は、2−ブタノールを酸化し、これにより、2−ブタノンのメチルプロピオネートへの転換の最中にBVMOによって生成されたNADP+からNADPHを再生するために容易に利用可能である電子を供給することとなる。アルコール脱水素酵素及びBVMO酵素の両方が共発現される場合、NADPH再生剤を外部からこの系に投入することを必要とせずに、閉鎖循環式のNADPH再生が生じることが可能である。これにより、化学量論が改善されて、BVMO触媒により生じる潜在的なレドックス隘路が解消され、2−ブタノン、さらにメチルプロピオネートへの2−ブタノールの反応が、真のカスケード反応のようにより速く及びより効率的に進行可能となる。
【0126】
このステップは好適には、少なくともアルコール脱水素酵素及び基質2−ブタノールを含む反応混合物において、技術分野において公知である様式で、所与の酵素に対する至適条件下で行われる。このような条件は、当業者の知識におけるルーチンプロセスを介して推定される至適濃度及び比を含む。
【0127】
あるいは、2−ブタノンを粗原材料から形成するステップは、アセトインの2,3−ブタンジオールへの転換、及び、2,3−ブタンジオールの2−ブタノンへの転換を含み得る。
【0128】
従って、本発明の第1の態様のさらに好適な実施形態によれば;
(i)アセトインから2,3−ブタンジオールを形成するステップ;
(ii)2,3−ブタンジオールから2−ブタノンを形成するステップ;
(ii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;及び
(iii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0129】
これらの転換は、化学的又は酵素的に触媒され得る。これらの転換は酵素的に触媒されることが好適である。
【0130】
より好適には、アセトインの2,3−ブタンジオールへの転換は、脱水素酵素によって触媒され、及び、2,3−ブタンジオールの2−ブタノンへの転換は、デヒドラターゼ酵
素によって触媒される。さらにより好適には、アセトインの2,3−ブタンジオールへの転換は、ECグループ番号1.1.1.Xのアルコール脱水素酵素によって触媒され、及び、2,3−ブタンジオールの2−ブタノンへの転換は、ECグループ番号4.2.1.Xのジオールデヒドラターゼ酵素によって触媒される。
【0131】
アルコール脱水素酵素は好適には、ECグループ番号1.1.1.4又は1.1.1.76のものなどのアセトインを脱水素することが可能である酵素である。より好適には、アルコール脱水素酵素は、生体から誘導されるアセトインを脱水素することが可能である酵素である。さらにより好適には、アセトイン脱水素酵素を脱水素することが可能であるアルコール脱水素酵素は、例えば、以下の生体の1種から誘導され得る:アエロモナスヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バチルス(Bacillus)種、ブレビバチルス(Brevi Bacillus)種、エンテロバクター属(Enterobacter)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種、グルコノバクターオキシダンス(Gluconobacter oxydans)、クレブシエラ(Klebsiella)種、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus
lactis)、マイクロコッカス属(Micrococcus)種、パエニバチルスポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パラコッカスデニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、ピュロコックスフリオスス(Pyrococcus furiosus)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)種、コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)又はセラチアマルセスセンス(Seratia marcescens)。
【0132】
ジオールデヒドラターゼ酵素は好適には、ECグループ番号4.2.1.28のものなどの2,3−ブタンジオールを脱水することが可能であるジオールデヒドラターゼ酵素である。より好適には、2,3−ブタンジオールを脱水することが可能であるジオールデヒドラターゼは、生体から誘導されるジオールデヒドラターゼである。さらにより好適には、2,3−ブタンジオールを脱水することが可能であるジオールデヒドラターゼは、例えば、以下の生体の1種から誘導され得る:アセトバクテリウム属(Acetobacterium)種、シトロバクターフロインディ(Citrobacter freundii)、クロストリジウムグリコリクム(Clostridium glycolicum)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)種、クレブシエラ属(Klebsiella)種、レクトバチルス(Lactobacillus)種、サルモネラ属(Salmonella)種又はプロピオニバクテリウムフロイデンライシイ(Propionibacterium freudenreichii)。
【0133】
好適には、アルコール脱水素酵素及びジオールデヒドラターゼ酵素は、好適には細菌である宿主生体においてBVMO酵素と共発現される。好適には、従って、上記で考察されている発現ベクタは、アルコール脱水素酵素及びジオールデヒドラターゼ酵素、ならびに、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子等などの宿主細菌における発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列をさらに含む。
【0134】
あるいは、アルコール脱水素酵素及び/又はジオールデヒドラターゼ酵素は、宿主生体中において、BVMO酵素とは異なるベクタで発現され得る。
【0135】
このステップは好適には、少なくともアルコール脱水素酵素、ジオールデヒドラターゼ酵素及び基質アセトインを含む反応混合物において、技術分野において公知である様式で、所与の酵素に対する至適条件下で行われる。このような条件は、当業者の知識におけるルーチンプロセスを介して推定される至適濃度及び比を含む。
【0136】
あるいは、2−ブタノンを粗原材料から形成するステップは、アセトインのメチルビニルケトンへの転換、及び、メチルビニルケトンの2−ブタノンへの転換を含み得る。
【0137】
従って、本発明の第1の態様のさらに好適な実施形態によれば;
(i)メチルビニルケトンをアセトインから形成するステップ;
(ii)2−ブタノンをメチルビニルケトンから形成するステップ;
(ii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;及び
(iii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0138】
これらの転換は、化学的又は酵素的に触媒され得る。これらの転換は好適には酵素的に触媒される。
【0139】
より好適には、アセトインのメチルビニルケトンへの転換はアルコールデヒドラターゼ酵素によって触媒され、及び、メチルビニルケトンの2−ブタノンへの転換はエノンレダクターゼによって触媒される。さらにより好適には、アセトインのメチルビニルケトンへの転換は、ECグループ番号4.2.1.Xのアルコールデヒドラターゼ酵素によって触媒され、及び、メチルビニルケトンの2−ブタノンへの転換は、ECグループ番号1.1.1.X又は1.3.1.Xのエノンレダクターゼによって触媒される。
【0140】
アルコールデヒドラターゼ酵素は好適には、ECグループ番号4.2.1.53もしくは4.2.1.43もしくは4.2.1.3の酵素、又は、Jianfeng et al.,Chemical Communications,2010,46,8588−8590に記載のものなどのアセトインを脱水することが可能である酵素である。より好適には、アルコールデヒドラターゼ酵素は、生体から誘導されるアセトインを脱水することが可能である酵素である。さらにより好適には、アセトインを脱水することが可能であるアルコールデヒドラターゼは、例えば、以下の生体の1種から誘導され得る:シュードモナス属(Pseudomonas)種、エリザベトキンギアメニンゴセプチカ(Elizabethkingia meningoseptica)、アゾスピリラムブラシレンス(Azospirillium brasilense)、ヘルバスピリラムセロペジカエ(Herbaspirillium seropedicae)、ペロモナスサッカロフィラ(Pelomonas saccharophila)、リゾビウム属(Rhizobium)種、スルホロブス属(Sulfolobus)種、セイヨウカジカエデ(Acer pseudoplatanus)、シロイヌナズナ(Arabidopiss thaliana)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、アゾトバクタービネランジイ(Azotobacter vinelandii)、バチルス(Bacillus)種、バクテロイデスフラギリス(Bacteroides
fragilis)、ボースタウルス(Bos taurus)、エレガンスセンチュウ(Caenorhabditis elegans)、コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ショウジョウバエ種、大腸菌(Escherichia coli)、アメリカガキ(Crassostrea
virginica)、カボチャ属(Cucurbita)種、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ハツカネズミ(Mus musculus)、タバコ属(Nicotiana)種、プラスモディウムファルシパルム(Plasmodium falciparum)、クマネズミ属(Rattus)種、サッカロマイセス属(Saccharomyces)種、サルモネラ属(Salmonella)種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)種、トウモロコシ(Zea
mays)又はキサントモナス カムペストリス(Xanthomonas campestris)。
【0141】
エノンレダクターゼ酵素は好適には、ECグループ番号1.1.1.54もしくは1.3.1.31の酵素、又は、Yamamoto et al.により米国特許第6780967号明細書に記載されているものなどのメチルビニルケトンを還元することが可能である酵素である。より好適には、エノンレダクターゼ酵素は、生体から誘導されるメチルビニルケトンを還元することが可能である酵素である。さらにより好適には、メチルビニルケトンを還元することが可能であるエノンレダクターゼは、例えば、以下の生体の1種から誘導され得る:クロストリジウムチロブチリクム(Clostridium tyrobutyricum)、クロストリジウムクルイベリ(Clostridium kluyveri)、サッカロマイセスポムベ(Saccharomyces pombe)、ニコタニアタバクム(Nicotania tabacum)、ミドリムシの一種(Euglena gracilis)、アスタシアロンガ(Astasia longa)、クリベロマイセスラクチス(Klyveromyces lactis)、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)、大腸菌(Escherichia coli)又はクマネズミ(Rattus)種。
【0142】
好適には、エノンレダクターゼ酵素及びアルコールデヒドラターゼ酵素は、好適には細菌である宿主生体においてBVMO酵素と共発現される。好適には、従って、上記で考察されている発現ベクタは、アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子配列、及び、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子等などの宿主細菌における発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列をさらに含む。
【0143】
あるいは、エノンレダクターゼ及び/又はアルコールデヒドラターゼ酵素は、宿主生体中において、BVMO酵素とは異なるベクタで発現され得る。
【0144】
このステップは好適には、少なくともエノンレダクターゼ、アルコールデヒドラターゼ酵素及び基質アセトインを含む反応混合物において、技術分野において公知である様式で、所与の酵素に対する至適条件下で行われる。このような条件は、当業者の知識におけるルーチンプロセスを介して推定される至適濃度及び比を含む。
【0145】
上記のとおり、プロセスは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガス(CO及び/又はCOを多く含むガスなど)を発酵させて粗原材料を生成するステップをさらに含み得、ここで、「粗原材料」という用語は、特にこれらに限定されないが;2−ブタノール、アセトイン、2,3−ブタンジオール又はメチルビニルケトンなどの2−ブタノンに変換されることが可能であるいずれかの基剤有機化学物質を含む。
【0146】
従って、本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば;
(i)前記糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させて粗原材料を生成するステップ;
(ii)前記粗原材料から2−ブタノンを形成するステップ;
(iii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(iv)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0147】
糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させて粗原材料
を生成するステップは好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させて2−ブタノールを生成するステップを含む。
【0148】
従って、本発明の第1の態様のさらに好適な実施形態によれば;
(i)糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させて2−ブタノールを生成するステップ;
(i)2−ブタノンを2−ブタノールから形成するステップ;
(ii)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(iii)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0149】
糖質の2−ブタノールへの発酵は好適には酵素的に触媒される。このような発酵を行うプロセスは技術分野において周知であり、例えば、このような一プロセスは、米国特許第5753474号明細書において記載されており、又は、より最近においては国際公開第2007/130521号パンフレットにおいて記載されている。
【0150】
特に、国際公開第2007/130521号パンフレットには、産業規模での2−ブタノールの生成に用いられ得る(国際公開第2007/130521号パンフレットの図1を参照のこと)、バイオマスの発酵、具体的には、発酵性糖のソースであるバイオマス(第59及び60ページに記載のリストを参照のこと)からの4種の異なる経路が開示されている。
【0151】
好適には、発酵生体は炭水化物利用生体であり、従って、バイオマスにおいて利用可能な糖質は天然経路によって取り込まれ、炭水化物から増殖のためのエネルギーを提供する中央代謝経路である、エムデン−マイヤーホフ−パルナス(EMP)経路、エントナー・ドゥドロフ経路、及び、ペントースリン酸経路に入る。これらの経路に対して重要なのは、呼吸の最中にピルベートに転換されてエネルギーをもたらす中間体グリセルアルデヒド−3−リン酸である。従って、ピルベートは、ほとんどの炭水化物利用生体において形成される容易に利用可能な天然化学物質である。
【0152】
国際公開第2007/130521号パンフレットにおいて記載されているとおり、ピルベートは、適切な生化学的特長を含有して図1における上記の4種の経路のいずれかが実施されるよう遺伝子改変された修飾された炭水化物利用生体を用いることにより、2−ブタノールに転換可能である。例えば、経路1が用いられ得、経路1は、転換ステップa、b、c、d、e及びfを含む。
【0153】
ステップ(a)は、2つの分子のピルベートのα−アセト乳酸への転換を含む。好適には、例えば:アセト乳酸シンターゼ又はアセトヒドロキシ酸などのECグループ番号EC2.2.1.6の酵素が用いられてこの反応が触媒される。より好適には、この反応の触媒に用いられる酵素はアセト乳酸シンターゼである。さらにより好適には、以下のアセト乳酸シンターゼの1種である:古草菌(Bacillus subtilis)(GenBank:AAA22222 NCBI L04470)、クレブシエラテリゲナ(Klebsiella terrigena)(GenBank:AAA25055 NCBI L04507)又はクレブシエラニューモニエ(Klebisella Pneumoniae)(GenBank:AAA25079 NCBI M73842)。
【0154】
ステップ(b)は、α−アセトラクトンのアセトインへの転換を含む。好適には、例えば:アセト乳酸デカルボキシラーゼなどのECグループ番号EC4.1.1.5の酵素が
用いられてこの反応が触媒される。より好適には、以下のアセト乳酸デカルボキシラーゼの1種である:古草菌(Bacillus subtilis)(GenBank:AAA22223 NCBI L04470)、クレブシエラテリゲナ(Klebsiella terrigena)(GenBank:AAA25054 NCBI L04507)又はクレブシエラニューモニエ(Klebisella Pneumoniae)(GenBank:AAU43774 NCBI AY22056)。
【0155】
ステップ(c)は、アセトインの3−アミノ−2−ブタノールへの転換を含む。好適には、例えば:アセトインアミナーゼとみなすことが可能であるピリドキサールリン酸依存トランスアミナーゼといったトランスアミナーゼ又は還元性アミナーゼの一般的な群の酵素が用いられてこの反応が触媒される。より好適には、ピリドキサールリン酸依存トランスアミナーゼは、アミノ:ピルベートトランスアミナーゼである。さらにより好適には、ビブリオフルビアリス(Vibrio Fluvialis)JS17由来のアミノ:ピルベートトランスアミナーゼである(国際公開第2007/130521号パンフレットの実施例13を参照のこと)。
【0156】
ステップ(d)は、3−アミノ−2−ブタノールの3−アミノ−2−ブタノールO−リン酸への転換を含む。好適には、例えば:アミノブタノールキナーゼとみなすことが可能であるEC番号2.7.1.82のATP依存エタノールアミンキナーゼといったアミノアルコールキナーゼの一般的な群の酵素が用いられてこの反応が触媒される。より好適には、ATP依存エタノールアミンキナーゼは、シュードモナス属(Pseudomonas)又はエルウィニア属(Erwinia)の種に由来する。さらにより好適には、エルウィニアカロトベラ(Erwinia carotovera)菌株SCRI1043由来のATP依存エタノールアミンキナーゼである(国際公開第2007/130521号パンフレットの実施例14を参照のこと)。
【0157】
ステップ(e)は、3−アミノ−2−ブタノールO−リン酸の2−ブタノンへの転換を含む。好適には、例えば:アミノブタノールリン酸ホスホリアーゼとみなすことが可能であるピロキシダルリン酸依存ホスホエタノールアミンホスホリアーゼといったアミノアルコールリン酸ホスホリアーゼの一般的な群の酵素が用いられてこの反応が触媒される。より好適には、ピロキシダルリン酸依存ホスホエタノールアミンホスホリアーゼは、シュードモナス属(Pseudomonas)又はエルウィニア属(Erwinia)の種に由来する。さらにより好適には、エルウィニアカロトベラ(Erwinia carotovera)菌株SCRI1043由来のピロキシダルリン酸依存ホスホエタノールアミンホスホリアーゼである(国際公開第2007/130521号パンフレットの実施例15を参照のこと)。
【0158】
ステップ(f)は、2−ブタノンの2−ブタノールへの転換を含む。好適には、例えばブタノール脱水素酵素又はシクロヘキサノン脱水素酵素などのECグループ番号EC1.1.1.2の酵素が用いられてこの反応が触媒される。より好適には、この反応の触媒に用いられる酵素はブタノール脱水素酵素である。さらにより好適には、この反応の触媒に用いられる酵素は、以下のブタノール脱水素酵素の1種である:ピュロコックスフリオスス(Pyrococcus furiosus)(GenBank:AAC25556 NCBI AF013169)又は大腸菌(Escherichia coli)(GenBank:NP_417484 NCBI NC_000913)。
【0159】
国際公開第2007/130521号パンフレットには、宿主生体において経路(実証として経路3が完全に例示される)が発現可能であるよう種々の酵素をコードするプラスミドベクタの構築に用いることが可能な技術分野において公知の技術及び手法がさらに記載されている。
【0160】
さらに、関連する特許出願である国際公開第2007/146377号パンフレットには、2−ブタノールの産業的生成に係るこのようなプロセスにおいて用いられ得る種々のブタノール耐性生体であって、具体的には、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の生体が記載されている。特に有利なブタノール耐性種を、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0510、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)(PN0511)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)(PN0512)及びラクトバチルスアリゾネンシス(Lactobacillus arizonensis)PN0514と同定した。本発明の特に好適な実施形態において、これらの特定のブタノール耐性種の少なくとも1種が、国際公開第2007/130521号パンフレットに記載されている上記の経路のいずれか1つを発現するための宿主生体として用いられる。
【0161】
グリセロールの2−ブタノールへの発酵は好適には酵素的に触媒される。この発酵を行うためのプロセスは技術分野において周知であり、例えば、このようなプロセスの1つが、米国特許第8119844B2号明細書に、及び、より近年においては米国特許出願第2011/207191号明細書に記載されている。
【0162】
特に、米国特許第8119844号明細書には、クロストリジウムパステウリアナム(Clostridium pasteurianum)生体を用いて市販のグリセロール又は産業廃棄物由来のグリセロール含有副生成物を嫌気性発酵してブタノールを生成することが開示されている。
【0163】
米国特許第8119844号明細書には、嫌気性発酵は、例えば、Biebel(Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology(2001)27,pp.18−26)から技術分野において公知であるバイオリアクタにおいて、天然の経路を介してグリセロール基質を2−ブタノールに転換することが可能である野生型クロストリジウムパステウリアナム(Clostridium pasteurianum)細菌を伴って実施されることが記載されている。
【0164】
従って、好適には、グリセロールを2−ブタノールに転換するステップにおいて用いられる細菌は野生型細菌であって、より好適には、クロストリジウム属(Clostridium)の野生型細菌、さらにより好適には、種クロストリジウムパステウリアナム(Clostridium pasteurianum)DSMZ525の野生型細菌である。
【0165】
任意により、グリセロールを2−ブタノールに転換するステップにおいて用いられる細菌は、技術分野において公知である関連する技術によって、このような転換の実施能が有利に増強又は改変されるよう修飾されていてもよい。
【0166】
グリセロール基質は好適には、本発明のプロセスに係る全体的な生態学的影響又は化石燃料の使用が最小限となるよう、産業廃棄物の副生成物由来のものである。このような廃棄物グリセロールの好適なソースとしては、これらに限定されないが:バイオディーゼルの生産、脂肪の鹸化、アルコール飲料の生産、ヤシ油の生産、又は、油脂化学プロセスが挙げられる。グリセロール基質は好適には、バイオディーゼル生産に由来するものである。
【0167】
好適には、グリセロールの2−ブタノールへの転換に用いられる細菌はグリセロール基質を供給しながら発酵され、2−ブタノール生成物が発酵培地から単離される。米国特許
第8119844号明細書に記載されているとおり、いずれかの適切な発酵技術が用いられ得る。しかしながら、発酵培地は米国特許第8119844号明細書の実施例に記載のとおり調製されることが好ましく、発酵技術は米国特許第8119844号明細書に記載の実施例に基づいて産業上の条件に対して外挿されることが好ましく、ブタノール生成物の単離は、米国特許第8119844号明細書の第10欄及び第11欄に記載されているとおりに実施されることが好適である。
【0168】
任意により、グリセロールからの2−ブタノールの生成を増大させるために酢酸塩を存在させてもよく、任意によりメタノールをグリセロール基質から除去してグリセロールからの2−ブタノールの生成を増大させてもよい。酢酸塩は好適には、少なくとも1g/Lの濃度で発酵培地中に存在している。好適には、グリセロール基質中のメタノールの濃度は10g/L以下である。メタノールをグリセロール基質から除去する方法は、米国特許第8119844号明細書における「Glycerol Preparation from Biodiesel Waste」の第8欄及び実施例に記載されている。
【0169】
発酵は好適には、1種又は複数種の生体により実施される。より好適には、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに転換するために必要な酵素を生成可能である生体によって行われる。発酵は好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに転換するために必要な関連する酵素を自然に発現する野生型生体によって行われる。より好適には、従って、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに転換するために必要な酵素をコードする内因性遺伝子配列を含む野生型生体によって行われる。本発明において好ましく用いられるこのような生体の例は、このような発酵手法が記載されている上記の文献に詳述されている。
【0170】
あるいは、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに転換するために必要な酵素を発現するよう修飾された遺伝子操作された生体によって行われ得る。好適には、従って、組み替え生体の各々は発現ベクタを含み、そしてこの発現ベクタは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに転換するために必要な酵素をコードする外因性遺伝子配列と、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子等などの宿主生体における発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列とを含む。
【0171】
好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスの2−ブタノールへの発酵に用いられる1種又は複数種の宿主生体は、細菌又は真菌である。好適には、従って、宿主細菌又は真菌は、生成された2−ブタノールの細菌細胞から周囲の培地への移出能をコードする遺伝子配列をさらに含む。これらの遺伝子配列は、内因性のものであっても外因性のものであってもよい。2−ブタノールの周囲の培地への移出能は、経膜輸送経路、細胞膜に対する標的経路、細胞膜に対する排出経路をコードする遺伝子配列によって付与され得、又は、単に、細胞膜をまたぐ拡散勾配によって付与され得る。
【0172】
例えば、細菌の場合、経膜経路は以下のいずれか1種であり得る;グラム陰性細菌の膜に存在するタイプI、II、III、IV、V、VI輸送体;グラム陽性細菌の膜に存在するSec又はTaT経路;グラム陰性細菌におけるベシクルエキソサイトーシス経路;又は、グラム陽性細菌におけるN端子タグ経路。
【0173】
しかしながら、好適には、2−ブタノール生成物は、単純な拡散によって細菌性又は真菌性細胞から移出される。
【0174】
好適な実施形態において、発酵ステップに用いられる生体は、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスアリゾネンシス(Lactobacillus arizonensis)及び/又はクロストリジウムパステウリアナム(Clostridium pasteurianum)である。
【0175】
あるいは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させて粗原材料を生成するステップは、アセトインを生成する糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスの発酵を含み得る。
【0176】
従って、本発明の第1の態様のさらに好適な実施形態によれば;
(i)糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させてアセトインを生成するステップ;
(ii)アセトインから2,3−ブタンジオールを形成するステップ;
(iii)2,3−ブタンジオールから2−ブタノンを形成するステップ;
(iv)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(v)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0177】
あるいは、本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば;
(i)糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを発酵させてアセトインを生成するステップ;
(ii)メチルビニルケトンをアセトインから形成するステップ;
(iii)2−ブタノンをメチルビニルケトンから形成するステップ;
(iv)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(v)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0178】
好適には、糖質のアセトインへの発酵は酵素的に触媒される。このような発酵を行うプロセスは技術分野において周知であり、例えば、このようなプロセスの1つは、Hespell,Current Microbiology Vol.32(1996),pp291−296に記載されており、さらなるプロセスが、欧州特許第0430406B1号明細書にも記載されている。
【0179】
特に、欧州特許第0430406B1号明細書には、転換が乳酸細菌によって行われる振盪発酵培養物を用いることによる糖質ソースの高収率でのアセトインへの転換が開示されている。
【0180】
欧州特許第0430406B1号明細書には、クエン酸又はグルコースなどのピルビン酸ソースからアセトインを高レベルで生成可能である乳酸細菌が記載されている。具体的には、高レベルのアセトインを、金属塩及びポルフィリン鉄のソースを添加した振盪発酵技術における糖質ソースを伴う乳酸細菌の好気性発酵から生成可能である。
【0181】
従って、好適には、糖質をアセトインに転換するステップにおいて用いられる細菌は野生型細菌であり、より好適には、野生型乳酸細菌、さらにより好適には、ラクトコッカス属(Lactococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)又はラクトバチルス属(Lactobacillus)の野生型乳酸細菌、さらにより好適に
は、ストレプトコッカスラクチス(Streptococcus lactis)(ATCC 11007)、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)(FERM−BP−2805)、ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus
casei)(FERM−BP−2806)、ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)(ATCC334)又は(ATCC19254)種の野生型乳酸細菌である。
【0182】
任意により、糖質をアセトインに転換するステップにおいて用いられる細菌は、技術分野において公知である関連する技術によって、このような転換の実施能が有利に増強又は改変されるよう修飾されていてもよい。
【0183】
糖質基質は好適には、発酵菌により利用可能であるいずれかの炭素ソースに由来するものである。より好適には、糖質基質は、グルコース又はラクトースである。
【0184】
好適には、糖質のアセトインへの転換に用いられる細菌は糖質基質を供給しながら発酵され、アセトイン生成物が発酵培地から単離される。いずれかの適切な発酵技術が用いられ得る。しかしながら、発酵培地は好適にはMRS培地であり、より好適には、MRS培地は、産業上の条件に対して外挿可能である、欧州特許第0430406B1号明細書の第4ページ、第5行に記載されているとおり調製される。好適には、用いられる発酵技術は、産業上の条件に対しても外挿可能である欧州特許第0430406B1号明細書の実施例のいずれかに記載されているとおりであり、より好適には、用いられる発酵技術は、欧州特許第0430406B1号明細書の実施例3に記載されているものである。
【0185】
グリセロールのアセトインへの発酵は好適には、酵素的に触媒される。このような発酵を行うためのプロセスは技術分野において周知であり、例えば、このようなプロセスの1つが、上記の国際公開第2007/130521号パンフレットに記載されており、より以前にはDobrogosz et al.Journal of Bacteriology vol.84(1962)pp.716−723により公表されている。
【0186】
特に、Dobogosz et al.では、アセトインをグリセロールから直接的に生成する一定の生体に関する知見が、早くも1962年には存在していたことが実証されている。表3は、細菌ペジオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)におけるアセトインの顕著な蓄積を示す。
【0187】
Dobrogoszには、好気性発酵条件下では、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)の細菌(又は乳酸細菌)は、重要な中間体であるピルビン酸を介して(図4を参照のこと)進行する固有の経路を介してグリセロール基質からアセトインを生成可能であることが記載されている。
【0188】
従って、グリセロールをアセトインに転換するステップにおいて用いられる細菌は好適には野生型細菌であり、より好適には、野生型乳酸細菌、さらにより好適には、ペジオコッカス属(Pediococcus)又はストレプトコッカス属(Streptococcus)の野生型乳酸細菌、さらにより好適には、種ペジオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)Az−25−5/ペジオコッカスセレビシアエ(Pediococcus cerevisiae)又はストレプトコッカスファエカリス(Streptoccocus faecalis)B33A/10C1の野生型乳酸細菌である。
【0189】
任意により、グリセロールをアセトインに転換するステップにおいて用いられる細菌は、技術分野において公知である関連する技術によって、このような転換の実施能が有利に
増強又は改変されるよう修飾されていてもよい。
【0190】
グリセロール基質は好適には、本発明のプロセスに係る全体的な生態学的影響又は化石燃料の使用が最小限となるよう、産業廃棄物の副生成物由来のものである。このような廃棄物グリセロールの好適なソースとしては、これらに限定されないが:バイオディーゼルの生産、脂肪の鹸化、アルコール飲料の生産、ヤシ油の生産、又は、油脂化学プロセスが挙げられる。グリセロール基質は好適には、バイオディーゼル生産に由来するものである。
【0191】
好適には、グリセロールのアセトインへの転換に用いられる細菌はグリセロール基質を供給しながら発酵され、アセトイン生成物が発酵培地から単離される。いずれかの適切な発酵技術が用いられ得る。しかしながら、発酵培地は好適には、グリセロール基質が添加されたNYE基本培地であり、より好適には、発酵培地は、Dobrogoszの表3に記載されているとおり少なくとも0.163Mグリセロールが添加されたDobrogoszの第717ページに記載されているNYE基本培地である。好適には、用いられる発酵方法はDobrogoszの第717ページに記載されているとおりであり、これは、産業条件に外挿可能であり、ここで、NYE培地中にはグリセロールのみが存在しており、グルコースは添加されず、グリセロール基質が増殖可能であるよう有気生活が好適に維持される。好適には、発酵はバッチタイプ装置において実施され、ここで、バッチ発酵の各々は24〜48時間の間実施される。
【0192】
発酵は好適には、1種又は複数種の生体により実施される。より好適には、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをアセトインに転換するために必要な酵素を生成可能である生体によって行われる。発酵は好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをアセトインに転換するために必要な関連する酵素を自然に発現する野生型生体によって行われる。より好適には、従って、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをアセトインに転換するために必要な酵素をコードする内因性遺伝子配列を含む野生型生体によって行われる。本発明において好ましく用いられるこのような生体の例は、このような発酵手法が記載されている上記の文献に詳述されている。
【0193】
あるいは、発酵は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをアセトインに転換するために必要な酵素を発現するよう修飾された遺伝子操作された生体によって行われ得る。好適には、従って、組み替え生体の各々は発現ベクタを含み、そしてこの発現ベクタは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをアセトインに転換するために必要な酵素をコードする外因性遺伝子配列と、特にこれらに限定されないが;プロモータ、ターミネータ、下流又は上流エフェクタ、サプレッサ、活性化因子、エンハンサ、結合補因子等などの宿主生体における発現をもたらすために必要とされるいずれかのさらなる遺伝子配列とを含む。
【0194】
好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスのアセトインへの発酵に用いられる1種又は複数種の宿主生体は、細菌又は真菌である。好適には、従って、宿主細菌又は真菌は、生成されたアセトインの細菌細胞から周囲の培地への移出能をコードする遺伝子配列をさらに含む。これらの遺伝子配列は、内因性のものであっても外因性のものであってもよい。アセトインの周囲の培地への移出能は、経膜輸送経路、細胞膜に対する排出経路、細胞膜に対する標的経路をコードする遺伝子配列によって付与され得、又は、単に、細胞膜をまたぐ拡散勾配によって付与され得る。
【0195】
例えば、細菌の場合、経膜経路は以下のいずれか1種であり得る;グラム陰性細菌の膜に存在するタイプI、II、III、IV、V、VI輸送体;グラム陽性細菌の膜に存在
するSec又はTaT経路;グラム陰性細菌におけるベシクルエキソサイトーシス経路;又は、グラム陽性細菌におけるN端子タグ経路。
【0196】
しかしながら、好適には、アセトイン生成物は、単純な拡散によって細菌性又は真菌性細胞から移出される。
【0197】
好適な実施形態において、発酵ステップに用いられる生体は、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)及び/又はペジオコッカスペントサセオウス(Pediococcus pentosaceous)である。
【0198】
発酵において用いられる糖質は好適には、天然単糖又は二糖である。このような糖質としては、これらに限定されないが;グルコース、フコース、アラビノース、リボース、リブロース(rubulose)、アロース、アルトロース、ガラクトース、キシロース、フルクトース、グロース、リキソース、マンノース、ラムノース、トレオース、タロース、イオドース、スクロース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノーゼ、ゲンチオビウロース、マンノビース、メリビオース、ルチノース、ルチヌロース又はキシロビオースが挙げられる。より好適には、糖質は、グルコース又はマルトースである。さらにより好適には、糖質は、グルコース、特にD−グルコースである。
【0199】
あるいは、発酵において用いられる糖質は天然多糖類として提供され得、これらは、発酵生体又は他の追加の酵素によって加水分解されて上記の単糖及び二糖を生成可能である。好適な多糖類としては、これらに限定されないが:セルロース、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、アラビノキシラン、キチン、ペクチン等が挙げられる。
【0200】
生体による発酵は好適には、嫌気的に、又は、微好気的に実施される。
【0201】
好適な嫌気性発酵技術としては、特にこれらに限定されないが;深部発酵、表面発酵、半固体発酵又は固体発酵などの一般に技術分野において公知であるものが挙げられる。用いられる発酵技術は好適には、自動化が容易であり、従って、効率が高いために深部発酵である。
【0202】
生体による発酵は好適には、技術分野において公知である好適な発酵液体培地において実施される。好適には、発酵液体培地は;水と混合された糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガス、生体、富栄養培地又は最少培地と、特にこれらに限定されないが;アンモニア溶液などの窒素ソース;カルシウム、マグネシウム、亜鉛及び銅などの無機塩;ならびに、セレニウム、ホウ素、鉄、マンガン、亜リン酸及びスルフルなどの微量元素;EDTAなどのキレート化剤;フェロシアン化物;チャコール;カチオン交換樹脂;ステアリルアルコール、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油、シリコーン又はスルホン酸塩などの消泡剤;ならびに、メタノールなどの追加の成分とを含む。
【0203】
好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガス基質が、酵素プロセスの基質阻害を防止するために、発酵の過程において発酵液体培地に供給される。発酵液体培地中の糖質及び/又はグリセロールの濃度は好適には少なくとも約25g/Lで維持される。より好適には、発酵液体培地中の糖質及び/又はグリセロールの濃度は約25〜125g/Lで維持される。好適には、糖質及び/又はグリセロールは発酵液体培地に基質を一定に供給することによりこれらのレベル間で維持され、ここで、供給濃度は、少なくとも大部分の宿主生体を生かし続けるのには十分であるが、生成物の形成を阻害するほどではない。
【0204】
微生物が転換可能なガスは、0.1〜15mol/L.hrのレベル、より好適には、0.2〜5mol/L.hrのレベル、最適には、0.3〜1mol/L.hrで発酵基質に供給され得る。
【0205】
本発明の発酵及びBVMO触媒反応は、連続又はバッチ式であり得、好適には、連続プロセスが用いられる。
【0206】
「約」という用語は、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスの濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスの濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0207】
好適には、発酵液体培地から生成される生成物2−ブタノール又はアセトインが、酵素プロセスの生成物阻害を防止するためにインサイチュで除去される。好適には、従って、発酵液体培地中の2−ブタノール及び/又はアセトインの濃度は、発酵プロセスを阻害可能なレベルより低く維持され、これは、好適には約50g/L未満、より好適には、約25g/L未満、さらにより好適には、約10g/L未満である。
【0208】
「約」という用語は、2−ブタノール及び/又はアセトインの濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、2−ブタノール及び/又はアセトインの濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0209】
窒素ソースは好適には注意深く制御される。窒素ソースは好適にはアンモニウム溶液であり、窒素ソースは好適には、液体培地中に約0〜4g/Lの濃度で存在する。
【0210】
「約」という用語は、窒素ソースの濃度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で20%の範囲的限定を示す。しかしながら、好適には、窒素ソースの濃度は、規定される値の上下10%以内である。
【0211】
液体培地は好適には、産業目的に相応しいサイズの容器中に保持される。この容器は、40〜200立方メートルの範囲内のタンク、又は、200〜900立方メートルの容量の範囲内のより大型の発酵槽であり得る。
【0212】
発酵液体培地は好適には、いずれかの異質微生物の増殖を防止するために無菌状態に維持される。
【0213】
発酵は好適には、生体からの所望される生成物の収量を最大化するために至適温度で実施される。好適には、発酵は、約20〜50℃、好適には約20〜35℃、最適には約28〜32℃の温度で実施される。
【0214】
「約」という用語は、温度に対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で10%の範囲的限定を示す。しかしながら、温度は好適には、規定される値の上下5%以内である。
【0215】
発酵は好適には、細菌代謝に係る至適pHである6.5〜pH8.5で実施される。より好適には、緩衝剤は、反応混合物をpH約7.3〜7.7のpHで維持する。さらにより好適には、緩衝剤は、反応混合物を約7.5のpHで維持する。
【0216】
「約」という用語は、pHに対する言及に伴って用いられるところ、規定される値の上下に最大で10%の範囲的限定を示す。しかしながら、pHは好適には、規定される値の上下5%以内である。
【0217】
好適には、発酵液体培地は撹拌され;好適には、発酵液体培地は激しく撹拌される。撹拌は、生体の周囲に糖質基質を均一に循環させて、所望の生成物への転換のために糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスの生体への取り込みを高める。撹拌は、例えば;エアリフト技術、阻流板、Rushtonブレード又はディスクタービン、オープンタービンインペラ、又は、マリンインペラといった、技術分野において公知である任意の好適な手段によって達成され得る。
【0218】
上記の通り、このプロセスは、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをバイオマスから得るステップをさらに含み得、ここで、「バイオマス」という用語は、本明細書においては生死いずれかの状態の植物又は動物性物質として定義され、老廃物又は本発明において記載されている使用に意図される物質であるとみなされ得る。
【0219】
従って、本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば;
(i)糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをバイオマスから得るステップ;
(ii)前記糖質又はグリセロールを発酵させて粗原材料を得るステップ;
(iii)前記粗原材料から2−ブタノンを形成するステップ;
(iv)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(v)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0220】
用いられるバイオマスは好適には、炭水化物、特に好適には、特にこれらに限定されないが;デンプン、セルロース、グリコーゲン、アラビノキシラン、キチン又はペクチンなどのグルコースのソースである炭水化物を多量に含む。
【0221】
あるいは、用いられるバイオマスは脂肪を多量に含み、特に好適には、グリセロール、具体的にはトリグリセリドのソースである脂肪又は油である。好適なトリグリセリドは、植物性又は動物性ソースから容易に入手可能であるいずれかの油又は脂肪を含む。このような油及び脂肪の例としては:ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、ラード、バター、ニシン油、ココナツ油、植物油、ヒマワリ油、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、コカバター、ギー、鯨脂等が挙げられる。
【0222】
バイオマスは、1種又は複数種の異なるバイオマスソースから組成され得る。好適なバイオマスソースの例は以下のとおりである;原木、エネルギー作物、農業残渣、食品廃棄物及び産業廃棄物又は同時生成物。
【0223】
原木バイオマスソースとしては、これらに限定されないが;木材チップ;樹皮;枝くず;丸木;おがくず;木材ペレット又は豆炭が挙げられ得る。
【0224】
エネルギー作物バイオマスソースとしては、これらに限定されないが;短輪作低林もしくは森林;茅、麻、スイッチグラス、葦もしくはライ麦などの非木質の草;糖質、デンプンもしくは油作物などの農業作物;又は、微細もしくは大型藻類、及び、水草などの水生植物が挙げられ得る。
【0225】
農作物残渣としては、これらに限定されないが;包葉;麦わら;コーン葉茎;小麦粉;穀粒;家禽厩肥;有機質肥料;スラリー;又は、サイレージが挙げられ得る。
【0226】
食品廃棄物としては、これらに限定されないが;果皮/外皮;殻;包葉;芯;小さい種/大きい種;動物又は魚の非食用部分;果汁及び油を搾った後に得られるパルプ;醸造由来の使用済みの穀粒又はホップ;家庭台所廃棄物;ラード又は油又は脂肪が挙げられ得る。
【0227】
産業廃棄物としては、これらに限定されないが;パレットを含む未処理の木材、処理済の木材、MDF/OSDを含む木材複合材、木材積層体、紙パルプ/シュレッダー片/廃棄物;繊維を含む生地/編み糸/排液;又は、汚水スラッジが挙げられ得る。
【0228】
糖質が望ましい好適な一実施形態において、好適には、用いられるバイオマスは、異なるリグノセルロースソースの1種又は混合物である。より好適には、用いられるバイオマスは、リグノセルロースエネルギー作物の1種又は混合物である。さらにより好適には、用いられるリグノセルロースエネルギー作物は、グルコース又はマルトースなどの基本的な糖質由来の炭水化物を多く含み、さらに、短輪作草など、高い割合で栽培が比較的容易である。最適には、用いられるバイオマスは茅である。
【0229】
グリセロールが望ましい他の好適な実施形態において、好適には、用いられるバイオマスはトリグリセリドソースの1種又は混合物である。より好適には、用いられるバイオマスは油又は脂肪の混合物の1種又は複数種である。さらにより好適には、用いられる油又は脂肪は、容易に動物性及び/又は植物性廃棄物由来のソースとされる。最適には、用いられるバイオマスはヤシ油である。
【0230】
任意により、上記に列挙されているバイオマスのいずれかの混合バイオマスソースは、糖質及びグリセロールが一緒に生成されるよう用いられ得る。
【0231】
好適には、糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスは、粗バイオマスからの加水分解物の生成によりバイオマスから得られる。好適には、加水分解物は、種々の糖質及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガス、ならびに、他の副生成物又は細胞残屑を含有する。好適には、加水分解物は、発酵のための糖質/グリセロール/ガス基質として用いられる前に種々の精製ステップに供され、このような精製ステップとしては、これらに限定されないが;ろ過、遠心分離及び化学洗浄が挙げられる。
【0232】
好適には、バイオマスから得られる加水分解物中に含有される糖質は、天然の単糖又は二糖である。このような糖質としては、これらに限定されないが;グルコース、フコース、アラビノース、リボース、リブロース(rubulose)、アロース、アルトロース、ガラクトース、キシロース、フルクトース、グロース、リキソース、マンノース、ラムノース、トレオース、タロース、イオドース、スクロース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノーゼ、ゲンチオビウロース、マンノビース、メリビオース、ルチノース、ルチヌロース又はキシロビオースが挙げられる。より好適には、糖質は、グルコース又はマルトースである。さらにより好適には、糖質は、グルコース、特にD−グルコースである。
【0233】
加水分解物は好適には、特にこれらに限定されないが;それぞれ炭水化物及びトリグリセリドから糖質及び/又はグリセロールを遊離させるために、機械的寸断、粉砕、破砕、押し出し、酸/塩基作用などの化学処理、スチーミング又は加水分解などのプロセスによ
って粗バイオマスから生成される。これはバイオマスの木質ソースに特に必要であり得、ここで、セルロース及びリグニンの大型のバイオポリマーは、単純な糖質とするために分解しなければならない。一旦加水分解物を単離及び中和したら、次いで、これを水、富栄養培地又は最少培地と混合して発酵液体培地の基本形態を形成することが好適である。
【0234】
最適には、加水分解物は、常に、発酵ステップにおいて用いられる生体に対して酵素抑制剤として作用し得る微量の重金属を完全に除去するために脱塩に供される。
【0235】
あるいは、加水分解物は、「並行復発酵」を意味する「SSF」という用語により公知であるものなど、上記プロセスの発酵ステップの前ではなく同時にバイオマスから生成され得る。
【0236】
本発明の第1の態様の特に好適な実施形態によれば;
(i)グルコース及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスをバイオマスから得るステップ;
(ii)前記グルコース及び/又はグリセロール及び/又は微生物が転換可能なガスを2−ブタノールに発酵させるステップ;
(iii)前記2−ブタノールを2−ブタノンに転換するステップ;
(iv)バイヤービリガーモノオキシゲナーゼを用いて前記2−ブタノンをメチルプロピオネートに転換するステップ;ならびに
(v)生成されたメチルプロピオネートを処理してメチルメタクリレート又はその誘導体を得るステップ
を含むメチルメタクリレート又はその誘導体の生成プロセスが提供されている。
【0237】
本発明の第2の態様によれば:
(i)本発明の第1の態様に従ってメチルメタクリレート又はその誘導体を調製するステップ;
(ii)任意により1種又は複数種のコモノマーを伴う、そのポリマー又はコポリマーを生成するために、(i)において調製されたメチルメタクリレートを重合するステップを含むメチルメタクリレート又はその誘導体のポリマー又はコポリマーの調製方法が提供されている。
【0238】
有利なことに、このようなポリマーは、化石燃料以外の再生可能なバイオマスソースに由来するモノマー残渣の全部ではなくても相当の部分を有しているであろう。
【0239】
いずれの事例においても、好適なコモノマーは、例えば、モノエチレン性不飽和カルボン酸及びジカルボン酸、ならびに、エステル、アミド及び無水物などのそれらの誘導体を含む。
【0240】
特に好適なコモノマーは、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、イソ−ボルニルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソ−ボルニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、トルエンジイソシアネート及びp,p’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含むイソシアネート、アクリロニトリル、ブタジエン、ブタジエン及びスチレン(MBS)
、ならびに、ABSであるが、ただし、上記のコモノマーはいずれも、(i)における前記酸モノマー又は(ii)における前記エステルモノマーと1種又は複数種のコモノマーとの所与の共重合のいずれかにおける、上記の(i)又は(ii)中のメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルから選択されるモノマーではない。
【0241】
異なるコモノマーの混合物を用いることも当然可能である。コモノマー自体は、上記の(i)でモノマーと同一のプロセスにより調製されても調製されなくてもよい。
【0242】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様の方法で形成されるポリメチルメタクリレート(PMMA)ホモポリマー又はコポリマーが提供される。
【0243】
有利なことに、本発明は、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素を用いて、工業的に適用可能なレベルでの脂肪族ケトン2−ブタノンのメチルプロピオネートへの例外的な転換を触媒することにより生物学的ソースからMMA及びその誘導体を生成するためのプロセスを提供する。
【0244】
本明細書において包含される特性のすべては、BVMO酵素を用いるメチルプロピオネートへの転換のための2−ブタノンの形成が可能である任意の組み合わせで、上記の態様のいずれかと組み合わされ得る。
【0245】
本発明をよりよく理解するために、本発明の実施形態をどのように実行に移し得るかを示すために、ここで、一例として、以下の図面及び実施例を参照する。
(実施例)
【0246】
実施例1−2−ブタノンのメチルプロピオネートへのBVMO転換
化学物質及び酵素
すべての化学物質は分析グレードのものであり、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手した。アシネトバクター属(Acinetobacter)NCIMB9871(CHMO、EC1.14.13.22)由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼを発現させ、精製し、上記のとおり、補因子再生のために熱安定性ホスファイト脱水素酵素のN末端(PTDH、EC1.20.1.1)に融合させた。
【0247】
生体触媒プロトコル
変換を15mlのパイレックス(登録商標)チューブ中で行った。反応体積(1ml)は、5mMの2−ブタノン、100μMのNADPH、10mMのNaHPO、及び、5μMのCHMOを50mMのトリス−HCl、pH7.5中に含有していた。混合物を、オービタルシェーカによる振盪下(200rpm)に24℃でインキュベートした。転換を判定するために、1mlの反応体積を、内標準として0.1%メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)を含有する0.5mlの1−オクタノールで抽出した。サンプルを1分間ボルテックスにかけることにより抽出し、続いて、10分間、遠心分離ステップ(5000rpm)に供した。有機層を取り出し、MgSOで乾燥させ、ガスクロマトグラフィ(GC)バイアルに入れた。GC分析は、Heliflex(登録商標)AT(商標)−5カラム(Grace Discovery Sciences)を取り付けたShimadzu GC機器で行った。以下の温度プロファイルを用いて成分を分離した:40℃で6分間、続いて、20℃/分で250℃に昇温。酵素を含まず、基質(2−ブタノン)及び生成物(メチルプロピオネート、酢酸エチル)の量が様々であるブランク反応を同等の状況下で実施し、これを用いて、転換に係る生成物の識別及び判定のための較正曲線を用意した。
【0248】
GC分析
以下の表1に、50mMのトリス−HCl、pH7.5から1−オクタノール+0.1%メシチレンによる抽出(AT−5カラム、5mMのすべての化合物)に従うGCによる化合物の分離時間が詳述されている。3種の化合物のすべて(1種の基質と2種の生成物)をGCにより確実に分離することが可能であった。
【0249】
【表1】
【0250】
メチルプロピオネートの合成
以下の表2に、CHMOによる2−ブタノンの酢酸エチル及びメチルプロピオネートへの転換が詳述されている。補因子再生を、CHMO融合パートナーPTDH(1)により実施した。明らかに、工業的に有意な量のメチルプロピオネートが24時間後に形成されている。
【0251】
【表2】
【0252】
さらに、BVMO酵素を、表2においてCHMOについて上記に記載されている方法を用いて、2−ブタノンのメチルプロピオネートへの転換についてもテストした。表3には、CHMOを含む10種のBVMO酵素A〜Jをスクリーニングした結果が示されている。BVMO酵素、CPDMO及びHAPMOについては、20時間後に工業的に有意な量のメチルプロピオネートが形成されている。
【0253】
【表3】
【0254】
実施例2−2−ブタノンのメチルプロピオネートへのBVMO転換に対する基質効果
図1には、基質濃度が高いほど、より多くの所望される例外的な生成物が得られることが示されている。例えば:5mMの2−ブタノンを伴うインキュベーションでは5:1の酢酸エチル:メチルプロピオネート比が達成され、1000mMの2−ブタノンを伴うインキュベーションでは1.5:1の比が達成される。
【0255】
実施例3〜10
2−ブタノンの転換に対する共溶剤の効果。
種々の共溶剤を、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)DSM
17874CHMOと2−ブタノンとの反応において形成される生成物の比に対する影響についてテストした。既述の実施例と同様に、200mMの2−ブタノンは、この比に対して好適な効果を有することが観察された。特に、2−ブタノンの濃度を高めることでより多くのメチルプロピオネートが形成される結果となり、酢酸エチル:メチルプロピオネート比が改善される。多数の共溶剤をこの濃度(200mM)でテストした。表4から見ることが可能であるとおり、200mMのメタノールが著しい効果を有しており、メチルプロピオネートが優勢となるよう比率が完全に逆になっている。これらの条件下では、酢酸エチルよりも多くのメチルプロピオネートが形成されている。テストした他の共溶剤も好適な効果を示した。ジオキサン、2−ブタノール、アセトン及びアセトニトリルのすべてが比率に対して顕著に好適な効果を有していた。
【0256】
【表4】
【0257】
実施例11〜13
転換の総量に対する共溶剤の効果についても調査を行い、これらが表5において強調されている。いくつかの場合(ジオキサン、アセトン&アセトニトリル)においては、形成される酢酸エチルの量が減る一方で顕著に多くのメチルプロピオネートが形成されている。
【0258】
【表5】
【0259】
共溶剤の存在下における基質及び生成物の抽出効率の差異を解明するために、ここで、校正を共溶剤で再度行ってすべての顕著な差異を除外した。
【0260】
実施例14〜16
BVMOの新規な組の精製&2−ブタノンの転換に係るそのスクリーニング。
数種の異なるBVMOの過剰発現及び精製が達成され、表6においてまとめられている
。遺伝子をすべてpCRE3Cホスファイト脱水素酵素融合ベクタにクローン化し、大腸菌(E.coli)TOP10において発現させた。培養温度を17℃に限定することにより、顕著な可溶性過剰発現をRmCHMO及びXfCHMOについて得た。顕著な可溶性発現をBpCHMOについて得た。精製プロトコルは、10mMのリン酸ナトリウム緩衝剤(pH7.4)中における、以下の添加剤:10%グリセロール、0.5mMのジチオスレイトール、100mMのNaCl及び25mMのイミダゾールを伴う超音波処理による、細胞を含まない抽出物の調製を含んでいた。
【0261】
【表6】
【0262】
細胞抽出物を遠心分離により清透化し、Ni2+−セファロース樹脂と共に4℃で2時間インキュベートした。カラム材料を同一の緩衝剤で洗浄し、その後、純粋なタンパク質を濃縮された黄色の画分(又は、富化酵素の場合には薄いバンドとして)として溶出し、ゲルろ過により脱塩した。
【0263】
再確認すると、精製したすべてのCHMOは2−ブタノンに対して同様の活性を示し、これをメチルプロピオネート及びエチルプロピオネートに転換し、すべての精製したCHMOは、2−ブタノンの濃度を高めることで形成された生成物の比率がメチルプロピオネートに優勢となるようシフトするという同一の特性を有していた。異なるCHMOがメチルプロピオネートについて同様の転換量を有しているが、形成された生成物の比率は同等ではない。
【0264】
認識されるであろうとおり、いくつかの実施例では、メチルプロピオネート又は酢酸エチルを生成するために異なるBVMO酵素を用いることが示されている。これらの実施例においては、特定のBVMO酵素が、酢酸エチルが優勢なままにメチルプロピオネートを生成することが有利に示されている。しかしながら、テストしたBVMO酵素のいくつかは、転換をまったく示さないか、又は、酢酸エチルへの転換のみを示す。有利なことに、本発明者らはまた、BVMO酵素が例外的な転換において意外にも活性であることを見出した。本発明のこの好適な特性において、メチルプロピオネートに対する転換を示さない
BVMO酵素は、比較例(すなわち、例A、B、D、E及びH〜J)として記載され得る。
【0265】
本出願に関連してこの明細書と共に、又は、過去において提出され、この明細書と共に一般に縦覧に供されるすべての文書及び書面に対して注目されるべきであり、このような文書及び書面の内容のすべてが本明細書において参照により援用される。
【0266】
この明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面のすべてを含む)において開示されている特性のすべて、及び/又は、同様に開示されているいずれかの方法又はプロセスのステップのすべては、このような特性及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0267】
この明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面のすべてを含む)において開示されている各特性は、別段の明確な定めがある場合を除き、同一、均等又は同様の目的に役立つ代替的な特性によって置き換えられ得る。それ故、別段の明確な定めがある場合を除き、開示されている各特性は、一般的な一連の均等又は同様の特性の単なる一例である。
【0268】
本発明は、前述の実施形態の詳細によって限定されない。本発明は、この明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面のすべてを含む)において開示されている特性の新規ないずれか1つ、もしくは、いずれかの新規な組み合わせ、又は、同様に開示されているいずれかの方法もしくはプロセスのステップの新規ないずれか1つ、もしくは、いずれかの新規な組み合わせに拡張される。
図1
【国際調査報告】