(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-519410(P2015-519410A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】フルオロポリマーパイプ
(51)【国際特許分類】
C08F 214/26 20060101AFI20150612BHJP
C08F 216/14 20060101ALI20150612BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20150612BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20150612BHJP
F16L 9/12 20060101ALI20150612BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F216/14
B32B1/08 A
B32B15/082 B
F16L9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-502267(P2015-502267)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2013056237
(87)【国際公開番号】WO2013144074
(87)【国際公開日】20131003
(31)【優先権主張番号】12161236.0
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】コライアンナ, パスクア
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】ミレンダ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】メッシーナ, ニカシオ
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J100
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA15
3H111BA34
3H111DA09
3H111DB08
4F100AB01A
4F100AK17B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DA11
4F100EC10
4F100EH01
4F100GB51
4F100JJ10B
4J100AC26P
4J100AE39Q
4J100CA04
4J100DA24
4J100DA42
4J100JA28
4J100JA58
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、以下の式(I):CF
2=CF−O−R
f (I)[式中、R
fが直鎖または分岐C
3〜C
5過フッ素化アルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル酸素原子を含む直鎖または分岐C
3〜C
12過フッ素化オキシアルキル基である]を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーを少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)少なくとも1つの層を含むパイプに関し、前記TFEコポリマーが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する[ポリマー(F)]。また、本発明は、熱交換器においておよび掘削作業などのダウンホール作業においての前記パイプの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 以下の式(I):
CF2=CF−O−Rf (I)
[式中、Rfが直鎖または分岐C3〜C5過フッ素化アルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル酸素原子を含む直鎖または分岐C3〜C12過フッ素化オキシアルキル基である]を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、より好ましくは97.8重量%〜98.6重量%と
から本質的になるテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーから製造された少なくとも1つの層を含むパイプであって、
前記TFEコポリマー[ポリマー(F)]が、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックス、かつ311℃〜321℃の間、好ましくは311℃〜318℃の間に含まれる融点を有する、パイプ。
【請求項2】
前記ポリマー(F)が、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分の間、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載のパイプ。
【請求項3】
前記過フッ素化アルキルビニルエーテルが以下の式(II):
CF2=CF−O−R’f (II)
[式中、R’fが直鎖または分岐C3〜C5過フッ素化アルキル基である]に従う、請求項1または2に記載のパイプ。
【請求項4】
前記過フッ素化アルキルビニルエーテルがペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパイプ。
【請求項5】
単層パイプまたは複数層パイプである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパイプ。
【請求項6】
フレキシブルライザーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパイプ。
【請求項7】
接着フレキシブルライザーである、請求項6に記載のパイプ。
【請求項8】
粗腔フレキシブルライザーである、請求項6または7に記載のパイプ。
【請求項9】
滑腔フレキシブルライザーである、請求項6または7に記載のパイプ。
【請求項10】
金属パイプラインのライニングのための方法であって、以下の工程:
(i)式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー[ポリマー(F)]を少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)少なくとも1つの層を含むパイプを提供する工程であって、
前記TFEコポリマーが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有し、
前記パイプが、金属パイプラインの内径よりも大きい外径を有する工程と、
(ii)前記パイプを変形し、それによって前記金属パイプラインの前記内径よりも小さい外径を有する変形されたパイプを提供する工程と、
(iii)変形されたパイプライナーを前記金属パイプラインに導入する工程と、
(iv)前記変形されたパイプライナーを膨張させて前記金属パイプラインの前記内径とぴったり合うようにする工程と
を含む、方法。
【請求項11】
前記パイプが請求項1〜5のいずれか一項に記載のパイプである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つの同軸パイプ:
− 外部金属パイプラインと、
− 式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー[ポリマー(F)]を少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)少なくとも1つの層を含む内部パイプと
を含むパイプラインシステムであって、
前記TFEコポリマーが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する、パイプラインシステム。
【請求項13】
熱交換器においての請求項1〜9のいずれか一項に記載のパイプの使用。
【請求項14】
ダウンホール作業においての請求項1〜9のいずれか一項に記載のパイプの使用。
【請求項15】
掘削作業においての請求項1〜9のいずれか一項に記載のパイプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年3月26日に出願された欧州特許出願第12161236.0号明細書に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのフルオロポリマー層を含むパイプおよび熱交換器においてならびに掘削作業などのダウンホール作業においての前記パイプの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
テトラフルオロエチレン(TFE)および過フッ素化アルキルビニルエーテル(PAVE)から誘導されたフルオロポリマーは、それらの高い化学的不活性、高い融点、高い使用温度および熱安定性のためにプロセス容器、貯蔵タンク、パイプ、弁および取り付け品のコーティングおよびライニングとして広範な用途がある。
【0004】
特に、パイプは典型的に、用途に応じて、通常100℃超、好ましくは200℃超の温度の油およびガスを搬送するために使用される。例えば、掘削作業において使用されるパイプは、井戸が掘削される場所および深さに応じて、高い温度および圧力に耐える必要がある。掘削作業は確かに、井戸をより一層深くすることを要するが、典型的には、特に井戸の底部付近では、260℃もの温度または260℃を超える温度に達する。
【0005】
テトラフルオロエチレン(TFE)およびペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)から誘導された溶融加工可能なフルオロポリマーは、パイプなどの造形品を製造するために適していることで本技術分野に一般に公知であり、典型的に、前記PAVEから誘導された反復単位1モル%〜5モル%を含む。
【0006】
これらのフルオロポリマーは一般に、少なくとも265℃の融点を有し、その結果、それらは有利には、高い作業温度が必要とされる用途において使用される。特に、溶融加工可能なTFEとペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)とのコポリマーは、典型的に302℃〜310℃の間のそれらの高めの融点のために最も好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、腐蝕性化学薬剤に対する耐薬品性を保持したまま、高い作業温度において改良された機械的性質および改良された耐熱性を与えられるパイプが本技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパイプは、本技術分野において公知のパイプの欠陥を克服することをより良好に可能にすることが見出された。
【0009】
したがって、本発明の目的は、以下の式(I):
CF
2=CF−O−R
f (I)
[式中、R
fが直鎖または分岐C
3〜C
5過フッ素化アルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル酸素原子を含む直鎖または分岐C
3〜C
12過フッ素化オキシアルキル基である]を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーを少なくとも含む、好ましくは、本質的にからなる(またはから製造される)少なくとも1つの層を含むパイプであり、
前記TFEコポリマーは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する[ポリマー(F)]。
【発明を実施するための形態】
【0010】
出願人は、驚くべきことに、本発明によるポリマー(F)が、市販のTFEとPAVEとのコポリマーに対して改良された機械的性質、特により高い降伏強度値およびより低いクリープ歪値を良好に与えられることを見出した。これらの性質は、パイプの耐破裂性および/または圧力衝撃の影響下でのパイプの減圧に関連していることが本技術分野に公知である。
【0011】
したがって、出願人は、本発明のパイプが有利には、過酷な環境においての耐薬品性および高温においての耐熱性を保持したまま、高圧および高温条件に耐えることを見出した。
【0012】
ポリマー(F)の降伏強度は、そこでポリマー(F)が可塑的に変形し始める、加えられる最大応力の尺度である。降伏が生じる応力は、変形速度(歪速度)と、より有意には、変形が生じる温度との両方に依存している。
【0013】
ポリマー(F)のクリープ歪は、加えた応力の影響下で可塑的に変形するその傾向の尺度である。それは、材料の降伏強度未満の高レベルの応力への長時間暴露の結果として生じる。この変形速度は、材料性質、暴露時間、暴露温度および適用された構造負荷の関数である。
【0014】
本発明の目的のために、「塑性変形」という用語は、ポリマー(F)の永久的および不可逆的な変形を意味することが本明細書によって意図される。
【0015】
したがって、ポリマー(F)の降伏強度およびクリープ歪は、特に、高い作業温度において、圧力衝撃の影響下で可塑的に変形するその傾向の尺度である。
【0016】
「パイプ」という用語は、上に規定されたようにポリマー(F)から製造されるかまたは少なくとも含む連続したチューブ状パイプまたは上に規定されたようにポリマー(F)から製造されるかまたは少なくとも含むチューブ状層で内面がコートされる連続したチューブ状パイプを意味することが本明細書によって意図される。
【0017】
本発明のパイプは、単層パイプまたは複数層パイプであってもよい。
【0018】
「単層パイプ」という用語は、ポリマー(F)から製造されるかまたは少なくとも含む1つのチューブ状層からなるパイプを意味することが本明細書によって意図される。
【0019】
「複数層パイプ」という用語は、互いに隣接した少なくとも2つの同心層を含むパイプを意味することが本明細書によって意図され、そこで少なくとも内層がポリマー(F)を含むか、または好ましくは本質的にからなる。
【0020】
本発明のパイプの前記少なくとも1つの層は少なくとも、ポリマー(F)を含むが、好ましくは本質的にからなる。これは、前記層が他の層成分と組合せてポリマー(F)を含む実施形態が本発明の範囲に包含されることを意味する。それにもかかわらず、ポリマー(F)が唯一のポリマー成分である実施形態が好ましいことは理解される。より詳しくは、ポリマー(F)の性質を実質的に変えない顔料、添加剤、潤滑剤等の少量の付加的な成分をおそらく添加して、層がポリマー(F)から製造される実施形態が好ましい。
【0021】
本発明のパイプのポリマー(F)は典型的に、水性乳化重合または水性懸濁重合プロセスによって製造される。
【0022】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは、水性乳化重合によって製造される。
【0023】
水性乳化重合は典型的に、無機水溶性ラジカル開始剤、例えば過酸化物、過炭酸塩、過硫酸塩またはアゾ化合物などの存在下で水性媒体中で実施される。開始剤の分解をより容易にするために還元剤を添加することができる。適した還元剤の非限定的な例には、鉄塩などがある。使用される開始剤の量は、反応温度および反応条件に依存する。重合プロセスは、典型的に50℃〜90℃の間、好ましくは70℃〜80℃の間に含まれる温度において実施される。また、連鎖移動剤を重合反応の間に導入してもよい。適した連鎖移動剤の非限定的な例には、エタン、メタン、プロパン、クロロホルム等が含まれる。重合は、フッ素化界面活性剤の存在下で、例えばペルフルオロアルキル−カルボン酸塩(例えばペルフルオロカプリル酸アンモニウム、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム)または他の化合物、例えば1986年6月11日に出願された欧州特許第184459A号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)に記載されているような、例えばペルフルオロアルコキシベンゼンスルホン酸塩などの存在下で実施されてもよい。重合プロセスにおいて使用され得るいくつかの他のフッ素化界面活性剤は、1966年9月6日に出願された米国特許第3271341号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)、2007年1月25日に出願された国際公開第2007/011631号パンフレット(3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY)および2010年1月14日に出願された国際公開第2010/003929号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)に記載されている。ペルフルオロポリエーテルの存在下で水性相において重合を実施するのが特に有利であり、それは、1987年12月2日に出願された欧州特許第247379A号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に記載されているように、適した分散助剤の存在下で水性エマルションの形態で、または、好ましくは、1989年9月5日に出願された米国特許第4864006号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に記載されているように、水性ミクロエマルションの形態で反応媒体に添加され得る。
【0024】
次に、このように得られたラテックスを凝固させ、回収された固体を乾燥させ、粗砕する。粒体は、従来の溶融加工技術によって押出される。
【0025】
本発明のパイプのポリマー(F)は有利には溶融加工可能である。
【0026】
「溶融加工可能な」という用語は、従来の溶融加工技術によって加工され得るポリマー(F)を意味することが本明細書によって意図される。
【0027】
メルトフローインデックスは、規定負荷重量を使用して規定温度において、ASTM D1238標準試験法に従って、ダイを通して押し出され得るポリマーの量を測定する。したがって、メルトフローインデックスは、ポリマー(F)を溶融加工するための適性の尺度である。これは典型的に、メルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.1g/10分より大きいことを必要とする。
【0028】
本発明のパイプのポリマー(F)は、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有することが重要である。
【0029】
ポリマー(F)のメルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5g/10分より低いとき、公知の溶融加工技術を使用してポリマー(F)を溶融加工することによってパイプを容易に製造することができないことが見出された。
【0030】
他方、ポリマー(F)のメルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに6.0g/10分より高いとき、そこから得られたパイプは、高温および高温条件下で必要とされる性能に準拠しないことが見出された。
【0031】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0032】
本発明のパイプのポリマー(F)の式(I)の過フッ素化アルキルビニルエーテルは好ましくは、以下の式(II):
CF
2=CF−O−R’
f (II)
[式中、R’
fが直鎖または分岐C
3〜C
5過フッ素化アルキル基である]に従う。
【0033】
式(II)の適した過フッ素化アルキルビニルエーテルの非限定的な例には、特に、R’
fが−C
3F
5、−C
4F
7または−C
5F
9基である過フッ素化アルキルビニルエーテルが含まれる。
【0034】
本発明のパイプのポリマー(F)の式(I)の過フッ素化アルキルビニルエーテルは、より好ましくはペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)である。
【0035】
本発明のパイプのポリマー(F)は、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むことが重要である。
【0036】
式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位の量が0.8重量%未満であるとき、そこから得られたパイプは、高温および高圧条件下で必要とされる性能に準拠しないことが見出された。
【0037】
他方、式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位の量が2.5重量%より高いとき、それから得られたパイプは、特に、高い作業温度において、内圧衝撃の影響下で塑性変形を受けることが見出された。
【0038】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%を含む。
【0039】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに好ましくは、0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0040】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに好ましくは、0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0041】
ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)から誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに、0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有するポリマー(F)を使用して良い結果が得られた。
【0042】
本発明のパイプのポリマー(F)は、上に規定されたように式(I)を有する過フッ素化アルキルビニルエーテルと異なった1つまたは複数のフッ素化コモノマー(F)から誘導された反復単位をさらに含んでもよい。
【0043】
「フッ素化コモノマー(F)」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和コモノマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0044】
適したフッ素化コモノマー(F)の非限定的な例には、特に、以下:
(a)C
2〜C
8フルオロ−および/またはペルフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフロオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレン、
(b)C
2〜C
8水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレン、
(c)式CH
2=CH−R
f0[式中、R
f0がC
1〜C
6ペルフルオロアルキル基である]のペルフルオロアルキルエチレン、
(d)クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、
(e)式CF
2=CFOR
f1[式中、R
f1がC
1〜C
2フルオロ−またはペルフルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5である]の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル、
(f)式CF
2=CFOX
0[式中、X
0がC
1〜C
12オキシアルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル基を有するC
1〜C
12(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である]の(ペル)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル、
(g)式CF
2=CFOCF
2OR
f2[式中、R
f2がC
1〜C
6フルオロ−またはペルフルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7であるかまたは1個または複数のエーテル基を有するC
1〜C
6(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えば−C
2F
5−O−CF
3である]のフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル、
(h)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5およびR
f6の各々が、等しいかまたは互いに異なっており、が独立にフッ素原子、場合により1個または複数の酸素原子を含む、C
1〜C
6フルオロ−またはペル(ハロ)フルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である]のフルオロジオキソールなどが含まれる。
【0045】
1つまたは複数のフッ素化コモノマー(F)が存在している場合、本発明のパイプのポリマー(F)は、典型的に、前記フッ素化コモノマー(F)から誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含む。
【0046】
それにもかかわらず、ポリマー(F)が、前記付加的なコモノマー(F)を含有しない実施形態が好ましい。
【0047】
これらの好ましい実施形態のパイプのポリマー(F)は有利には、本質的に、
− 上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、より好ましくは97.8重量%〜98.6重量%とからなり、
前記TFEコポリマーは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0048】
鎖末端、欠陥または他の不純物タイプの部分がポリマー(F)中に含まれる場合があるが、これらはその性質を損なわないということは理解されたい。
【0049】
これらの好ましい実施形態のパイプのポリマー(F)は好ましくは、本質的に、
− 上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、より好ましくは97.8重量%〜98.6重量%とからなり、好ましくは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分の間、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0050】
これらの好ましい実施形態のパイプのポリマー(F)はより好ましくは、本質的に、
− 上に規定されたように式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、より好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、より好ましくは97.8重量%〜98.6重量%とからなり、好ましくは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分の間、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0051】
本質的に、
−ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)から誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、好ましくは97.8重量%〜98.6重量%とからなり、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間、より好ましくは0.7〜4.5g/10分の間、さらにより好ましくは1.2〜3.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有するポリマー(F)を使用してすぐれた結果が得られた。
【0052】
本発明のパイプのポリマー(F)は有利には熱可塑性である。
【0053】
「熱可塑性」という用語は、それが半結晶質である場合その融点未満、室温(25℃)で存在し、非晶質である場合そのT
g未満で存在しているポリマー(F)を意味することが本明細書によって意図される。これらのポリマーは、明らかな化学変化なしに、加熱されると軟化し、冷却されると再び硬くなる性質を有する。このような定義は、例えば、1989年にElsevier Applied Scienceによって出版された、百科事典“Polymer Science Dictionary”,Mark S.M.Alger,London School of Polymer Technology,Polytechnic of North London,UKに見出すことができる。
【0054】
本発明のパイプのポリマー(F)は好ましくは半結晶質である。
【0055】
「半結晶質」という用語は、ASTM D 3418に従って10℃/分の加熱速度で示差走査熱分析(DSC)によって測定した場合に、1J/gより大きい融解熱を有するポリマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0056】
本発明のパイプのポリマー(F)は有利には、311℃〜321℃の間、好ましくは311℃〜318℃の間に含まれる融点を有する。
【0057】
312℃〜317℃の間に含まれる融点を有するポリマー(F)を使用して非常に良好な結果が得られた。
【0058】
本発明のパイプの最も好ましいポリマー(F)は、式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%を含み、
− 5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間のメルトフローインデックスを有し、
− 311℃〜318℃の間に含まれる融点を有する。
【0059】
本発明のパイプのさらにより好ましいポリマー(F)は、本質的に、
− 上に規定されたように式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%とからなり、
− 、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.6〜5.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有し、
− 311℃〜318℃の間に含まれる融点を有するポリマーである。
【0060】
本発明のパイプは典型的に、溶融押出などの公知の溶融加工技術によって製造される。
【0061】
出願人は、驚くべきことに、ポリマー(F)の有利な固有の機械的性質のために、本発明のパイプは280℃までの温度、好ましくは300℃までの温度に良好に耐えることを発見した。
【0062】
また、本出願は、本発明のパイプが有利には平滑な内面を有することを見出した。
【0063】
本発明の第1の実施形態によって、複数層パイプはフレキシブルライザーである。
【0064】
「フレキシブルライザー」という用語は、構成層が、封止機能を提供するためのポリマーシースと、機械力を吸収することが意図され、金属ワイヤまたはストリップまたは複合材から製造された様々なテープまたは切片を巻き付けることによって形成される強化層とを含むチューブ状フレキシブルパイプを意味することが本明細書によって意図される。
【0065】
本発明のフレキシブルライザーは、非接着フレキシブルライザーまたは接着フレキシブルライザーであってもよい。
【0066】
「接着フレキシブルライザー」という用語は、2つ以上の同心層同士が付着されるフレキシブルライザーを意味することが本明細書によって意図される。
【0067】
「非接着フレキシブルライザー」という用語は、2つ以上の重ねられた同心層を含み、そこでこれらの層が互いに相対移動する特定の自由な状態を有するフレキシブルライザーを意味することが本明細書によって意図される。
【0068】
本発明のパイプがフレキシブルライザーである場合、それは好ましくは接着フレキシブルライザーである。
【0069】
本発明のこの第1の実施形態の第1の変型によって、フレキシブルライザーは粗腔フレキシブルライザーである。
【0070】
「粗腔フレキシブルライザー(rough−bore flexibleriser)」という用語は、フレキシブルライザーにおいて、最内側要素が、それを屈曲させることを可能にする内側カーカスの湾曲部の間の間隙のために粗腔を形成するカーカスであるフレキシブルライザーを意味することが意図される。
【0071】
本発明のこの実施形態のこの第1の変型の粗腔フレキシブルライザーは典型的に、内部から外部に向かって、
− 一緒に留められた湾曲部を有する螺旋状に巻き付けられた異形部材によって形成された、内側カーカスと呼ばれる内側の可撓性金属チューブと、
−上に規定されたポリマー(F)を少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)内側ポリマーシースと、
− 内側ポリマーシースの周りに巻き付けられる1つまたは複数の外装単板と、
− 外側ポリマーシースと
を含む。
【0072】
内側ポリマーシースは典型的に、粗腔フレキシブルライザーの内側カーカスの上にコートされ、上に規定されたポリマー(F)を少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)連続したチューブ状層が得られるようにする。
【0073】
内側ポリマーシースは好ましくは、従来の溶融加工技術によって粗腔フレキシブルライザーの内側カーカスの上に押出される。
【0074】
本発明のこの第1の実施形態の第2の変型によって、フレキシブルライザーは滑腔フレキシブルライザーである。
【0075】
「滑腔フレキシブルライザー」という用語は、内側カーカスを含有しないフレキシブルライザーを意味することが本明細書によって意図され、そこで最内側要素は、平滑壁を有する不浸透性ポリマーチューブである。
【0076】
本発明の第2の実施形態によって、本発明のパイプは、金属パイプラインのライニングのための方法において使用するために適したパイプライナーである。
【0077】
したがって、本発明はまた、以下の工程:
(i)金属パイプラインの内径よりも大きい外径を有する本発明によるパイプを提供する工程と、
(ii)前記パイプを変形し、それによって前記金属パイプラインの内径よりも小さい外径を有する変形されたパイプを提供する工程と、
(iii)変形されたパイプを前記金属パイプラインに導入する工程と、
(iv)変形されたパイプを膨張させて前記金属パイプラインの内径とぴったり合うようにする工程と
を含む、金属パイプラインのライニングのための方法に関する。
【0078】
金属パイプラインは通常、鉄または鋼パイプライン、好ましくは鋼パイプライン、より好ましくは炭素、合金またはステンレス鋼パイプラインである。
【0079】
本発明のこの第2の実施形態の変型によって、金属パイプラインは、既存の損傷を受けた金属パイプラインであってもよい。金属パイプラインが既存の損傷を受けた金属パイプラインである場合、本発明のライニング方法は、ライニング復旧方法である。
【0080】
出願人は、本発明のパイプは有利には、塑性変形に対する著しい耐性を与えられて金属パイプラインのライニングのための方法においてパイプライナーとして好適に使用され、そこで、変形されたパイプライナーの膨張がその弾性変形の回復によって良好に得られる場合があることを見出した。
【0081】
金属パイプラインのライニングのための方法は好ましくは、以下の工程:
(i)金属パイプラインの内径よりも大きい外径を有する本発明によるパイプを提供する工程と、
(ii)前記パイプを変形し、それによって前記金属パイプラインの内径よりも小さい外径を有する変形されたパイプを提供する工程と、
(iii)変形されたパイプを前記金属パイプラインに導入する工程と、
(iv)変形されたパイプを膨張させて前記金属パイプラインの内径とぴったり合うようにする工程とを含み、
そこで前記パイプが、
− 以下の式(I):
CF
2=CF−O−R
f (I)
[式中、R
fが直鎖または分岐C
3〜C
5過フッ素化アルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル酸素原子を含む直鎖または分岐C
3〜C
12過フッ素化オキシアルキル基である]を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.2重量%〜2.5重量%、好ましくは1.4重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜98.8重量%、より好ましくは97.8重量%〜98.6重量%とから本質的になるテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー[ポリマー(F)]から製造された少なくとも1つの層を含み、
前記TFEコポリマーが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.5〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0082】
金属パイプラインのライニングのための方法のパイプは、上記のように規定される。
【0083】
金属パイプラインのライニングのためのこの方法において使用するために適したパイプは、上に規定されたように単層パイプまたは複数層パイプであってもよい。
【0084】
本発明の目的のために、弾性変形は塑性変形とは区別される。「弾性変形」という用語は、ポリマー(F)の一時的および可逆的な変形を意味することが本明細書によって意図される。
【0085】
金属パイプラインのライニングのための方法の工程(ii)でポリマー(F)に適用された応力が前記ポリマー(F)の降伏強度よりも低い場合、変形されたパイプは有利には、その弾性変形の回復によって前記方法の工程(iii)で膨張され得る。
【0086】
金属パイプラインのライニングのための方法の工程(ii)において、パイプは好ましくは、半径方向または軸方向圧縮によってその断面積を低減することによって変形される。
【0087】
1つのタイプの技術、いわゆるロール・ダウン法によって、パイプの断面積は、典型的に数組の圧縮ローラーを使用する半径方向圧縮によって低減される。
【0088】
別のタイプの技術によって、パイプの断面積は、典型的にパイプライナーを縮径ダイを通して引っ張る軸方向圧縮によって低減される。縮径はパイプ上の軸力が維持される間達成されるにすぎない。伴なう圧縮歪は典型的に約10%〜15%である。このタイプの方法の非限定的な例は、Swageliningのダイ・ドローイング・アンド・タイトライナー(Die−drawing and Titeliner)として公知の技術である。
【0089】
金属パイプラインのライニングのための方法の工程(iii)において、変形されたパイプは、典型的に弾性回復によってパイプラインの内径にぴったり合うように膨張させられる。また、変形されたパイプは、油およびガスによる熱および/または加圧によって膨張させられてもよい。
【0090】
また、本発明の目的は、少なくとも2つの同軸パイプ:
− 外部金属パイプラインと、
− 本発明による内部パイプと
を含むパイプラインシステムである。
【0091】
パイプラインシステムは好ましくは、2つの同軸パイプを含み、そこで内部パイプの外径は、金属パイプラインの内径とぴったり合う。
【0092】
パイプラインシステムのパイプは上記のように規定される。
【0093】
金属パイプラインは通常、鉄または鋼パイプ、好ましくは鋼パイプ、より好ましくは炭素、合金またはステンレス鋼パイプラインである。
【0094】
本発明の別の目的は、熱交換器においての本発明のパイプの使用である。
【0095】
また、本発明の別の目的は、ダウンホール作業においての本発明のパイプの使用である。
【0096】
さらに、本発明の別の目的は、掘削作業においての本発明のパイプの使用である。
【0097】
本発明の粗腔フレキシブルライザーは、掘削作業などのダウンホール作業において使用するために特に適しており、そこで内側カーカスは、パイプが圧力衝撃の影響下で破損するのを防ぐ。
【0098】
出願人は、驚くべきことに、本発明のパイプはより高い降伏応力値およびより低いクリープ歪値を良好に与えられて、有利には、過酷な環境において耐化学薬品性のまま、パイプが高圧および高温度条件に耐えなければならない多種多様な用途において使用され得ることを見出した。
【0099】
参照により本明細書に援用される一切の特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語を不明確にさせ得る程度まで本出願の説明と矛盾する場合は、本説明が優先するものとする。
【0100】
ここで以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらの実施例は単に例示を目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【0101】
メルトフローインデックスの測定(MFI)
5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238標準試験法に従ってMFIの定量を実施した。
【0102】
第2の融解温度(T(II)融点)の測定
第2の融解温度をASTM D4591標準試験法に従って測定した。第2の加熱時間において観察された融点を記録し、これによってポリマーの融点と称する。
【0103】
ポリマー中の過フッ素化アルキルビニルエーテル(I)の重量百分率の測定
過フッ素化アルキルビニルエーテルモノマー(I)の定量をFT−IR分析によって実施し、重量パーセントとして表わす。過フッ素化アルキルビニルエーテルモノマー(I)の含有量を以下の条件下で定量した:994cm
−1の帯域光学濃度(OD)を以下の式によって2365cm
−1の帯域光学濃度(OD)によって正規化した。
モノマー(I)[重量%]=(994cm
−1の光学濃度)/(2365cm
−1の光学濃度)×0.99
【0104】
引張特性の測定
ASTM D3307標準試験法において報告されているように微小引張試験片を使用してInstron 4203装置によって本発明の実施例1〜3および比較例1および2によるポリマー(F)について引張試験を実施した。試験片を1.5mmの厚さを有する圧縮成形シートからホロー・パンチによって切り分け、必要とされる温度において15分の状態調節時間の後に50mm/分に等しい速度において伸長した。降伏応力は、応力−歪曲線上の最初のゼロ勾配点においての公称応力として評価された。
【0105】
本発明の実施例4または5によるポリマー(F)から製造されたパイプの引張試験は、65mmのグリップ距離および12.5mmのゲージ長において7mmの厚さを有するタイプIVの試験片を使用してASTM D638標準手順に従って実施された。弾性率値は1mm/分のクロスヘッド速度において測定されたが、破断点歪および降伏応力値は、50mm/分のクロスヘッド速度において測定された。降伏応力は、応力−歪曲線上の最初のゼロ勾配点においての公称応力として評価された。破裂は、急激な負荷の低下が起こり、試験片が破断する時点である。
【0106】
降伏応力値がより高くなると、ポリマーの塑性変形に対する耐性がより高くなる。
【0107】
ASTM D2990標準試験法に従って本発明の実施例1〜3および比較例1および2によるポリマー(F)について引張クリープ実験を実施したが、ISO 527−1Aに記載された試験片の寸法を使用した。伸び計は使用されなかったが、良い歪評価を得るために試験片の形状補正が使用された。試験片を1.5mmの厚さを有する圧縮成形シートからのホロー・パンチによって切り分けた。
【0108】
ASTM D2990標準試験法に従って実施例4または5によるポリマー(F)での引張クリープ試験を実施したが、ISO 527−1Aに記載された試験片の寸法を使用した。伸び計は使用されなかったが、良い歪評価を得るために試験片の形状補正が使用された。7mmの厚さを有するパイプからのホロー・パンチによって試験片を切り分けた。
【0109】
クリープ歪値がより低くなると、ポリマーの塑性変形に対する耐性がより高くなる。
【0110】
パイプの加工
12mmの外径および10mmの内径を有するパイプを製造するヘッドを備えた45mm押出機でポリマーを押出した。装置の温度分布を280℃〜380℃の間に設定した。ヘッドの出口の円錐部は透明に見え、このように得られたパイプの表面は平滑であり、全く欠陥はなかった。
【0111】
収縮の測定
パイプを400mmの長さに縦方向に切断した。1時間300℃において熱処理した後、それらの長さを23℃において測定し、このようにパーセント変化を得た。
【0112】
急速ガス減圧の測定
本発明の実施例5によるポリマー(F)から製造されたパイプから切り分けた試験片で急速ガス減圧(RGD)試験をISO13628−2標準手順(API17J)に従って実施した。
試料を蒸気圧下で185℃のNORSOK(登録商標)M710油中で30日間にわたって予備状態調節し、その後に、メタン中15モル%の二酸化炭素の混合物を使用して185℃および1000バールにおいて20回の急速ガス減圧サイクルを実施した。減圧速度は70バール/分であった。
【0113】
実施例1:TFE/PPVE98.2/1.8(重量比)
400rpmにおいて運転する攪拌機を備えたAISI 316鋼縦形22リットルオートクレーブ内に、真空を形成した後、連続して導入した:
− 13.9リットルの脱塩水、
− 32.0gのペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、
− 1989年9月5日に出願された米国特許第4864006号明細書(AUSIMONT S.P.A.)の実施例1に従って調製された、約7.5のpHを有するミクロエマルション138.0g。
次に、オートクレーブを60℃の反応温度まで加熱し、この温度に達するとき、0.60バールのエタンを導入した。
圧縮機によって99.2/0.8の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を、21バールの圧力に達するまで添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:95.9%のTFE、2.0%のPPVE、2.1%のエタン。
次に、計量型ポンプによって、0.035Mの過硫酸アンモニウム溶液100mlを供給した。
上述のモノマー混合物を供給することによって重合圧力を一定に維持した。8.8gの混合物を供給したとき、モノマーの供給を中断した。反応器を室温に冷却し、ラテックスを放出し、HNO
3(65重量%)で凝固させ、ポリマーをH
2Oで洗浄し、約220℃において乾燥させた。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.8重量%
MFI:5.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):314℃
【0114】
実施例2:TFE/PPVE98.6/1.4(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 25.0gのPPVEを供給した。
− 0.50バールのエタンを供給した。
− 99.4/0.6の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:
96.90%のTFE、1.55%のPPVE、1.55%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.4重量%
MFI:3.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):317℃
【0115】
実施例3:TFE/PPVE98.6/1.4(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 25.0gのPPVEを供給した。
− 0.40バールのエタンを供給した。
− 99.4/0.6の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
− 0.035Mの過硫酸アンモニウム溶液150mlを供給した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:
96.2%のTFE、1.7%のPPVE、2.1%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.5重量%
MFI:2.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):316℃
【0116】
以下の表1に示されるように、280℃においての降伏強度試験の結果を報告すると、本発明によるポリマー(F)は有利には、比較例1および2の市販製品と比較したとき280℃までの温度において改良された降伏応力値を示した。
【0118】
以下の表2に示されるように、クリープ歪試験の結果を報告すると、本発明によるポリマー(F)は有利には、比較例2の市販製品と比較したときより低いクリープ歪値を示した。
【0120】
以下の表3に示されるように、本発明によるポリマー(F)を使用して、比較例1の市販品のそれらと比較できる300℃においての収縮値を有利には与えられたパイプが得られた。
【0122】
このように、ポリマー(F)を少なくとも含む、好ましくは本質的にからなる(またはから製造される)少なくとも1つの層を含む本発明のパイプが有利には、短期および長期実験の両方において、特に、高い作業温度において、強化された降伏強度値を示し、その結果、それはその改良された機械的性質のために高い内圧レベルに良好に耐えることができることが見出された。
【0123】
実施例4:TFE/PPVE97.8/2.2(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 38gのPPVEを供給した。
− 0.51バールのエタンを供給した。そして
− 98.8/1.2の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:
93.0%のTFE、6.2%のPPVE、0.7%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):
PPVE:2.2重量%
MFI:3.3g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):311.4℃
【0124】
実施例5:TFE/PPVE97.8/2.2(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 38gのPPVEを供給した。
− 0.35バールのエタンを供給した。そして
− 98.8/1.2の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:
93.5%のTFE、6.0%のPPVE、0.5%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:2.2重量%
MFI:1.7g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):311.6℃
【0125】
以下の表4に示されるように、23℃においての引張試験の結果を報告すると、とりわけ本発明の実施例4または5によって代表される本発明によるポリマー(F)から製造されたパイプは有利には、前記パイプが金属パイプラインのライニングのための方法において好適に使用され得るような機械的性質の組合せを示した。
【0127】
以下の表5に示されるように、クリープ歪試験の結果を報告すると、とりわけ本発明の実施例4によって代表される本発明によるポリマー(F)から製造されたパイプは有利には、3.0MPaおよび4.0MPaの比較的高い応力下で降伏破損を受けずに比較的低いクリープ歪値を示し、金属パイプラインのライニングのための方法において好適に使用される。
【0129】
以下の表6に示されるように、急速ガス減圧(RGD)試験の結果を報告すると、とりわけ本発明の実施例5によって代表される本発明によるポリマー(F)から製造されたパイプは有利には、可視的な亀裂を示さず、圧力衝撃の影響下で減圧を受けずにダウンホール用途において金属パイプラインのライニングのための方法において好適に使用される。
【0131】
したがって、本発明のパイプは、高い作業温度において高い耐熱性が必要とされる作業において使用するために特に適している。
【国際調査報告】