(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
ネガ型平版印刷版原版、ネガ型画像形成性層及びネガ型画像形成性層の直ぐ上に配置されている最外水溶性オーバーコート層。最外水溶性オーバーコート層は、(1)1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー、及び(2)その中に分散した有機ワックス粒子を含む。有機ワックス粒子は、乾燥最外水溶性オーバーコート層の走査型電子顕微鏡写真から測定される、少なくとも0.05μm及び最大で0.7μmの平均最大寸法を有する。有用な有機ワックス粒子には、フッ化又は非フッ化炭化水素ワックス粒子が含まれる。
前記有機ワックス粒子が前記総最外水溶性オーバーコート層重量基準で少なくとも2重量%及び最大で50重量%の量で前記1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に分散しており、且つ、前記最外水溶性オーバーコート層の前記乾燥コーティング被覆度(g/m2)と前記有機ワックス粒子の前記平均最大寸法(μm)の比が1.3:1を超える、請求項1に記載の原版。
前記1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーがカルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、ホスホン酸及びリン酸エステル基からなる群から選択される酸基で修飾された少なくとも1種の修飾ポリ(ビニルアルコール)を含む、請求項1に記載の原版。
前記最外水溶性オーバーコート層が、その少なくとも1種が酸修飾ポリ(ビニルアルコール)又は少なくとも70%のけん化度を有するポリ(ビニルアルコール)である、前記1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーと、ポリエチレンワックス粒子又はポリテトラフルオロエチレンワックス粒子とから本質的になる、請求項1に記載の原版。
少なくとも3及び最大で12のpHを有し、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、親水性膜形成ポリマー、及び、非イオン又はアニオン界面活性剤以外の中性電荷親水性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む処理溶液を使用して処理する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
特に指示しない限り、レーザー彫刻可能な(laser−engraveable)組成物、配合物及び層の種々の成分を定義するために本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、成分の1つ又は複数を含む(すなわち、複数指示対象を含む)ことを意図している。
【0026】
本出願で明示的に定義されない各用語は、当業者により一般的に受け入れられる意味を有すると理解すべきである。用語の解釈がその用語をその文脈中で無意味又は本質的に無意味にする場合には、その用語の定義を標準的な辞書からとるべきである。
【0027】
特に明確に指示しない限り、本明細書で指定される種々の範囲内の数値の使用は、あたかも明言されている範囲内の最大値及び最小値の前に共に「約」という単語があるかのように、近似とみなされる。このように、明言されている範囲より上及び下のわずかな変動を使用して範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。更に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の全ての値を含む連続範囲を意図している。
【0028】
文脈上別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「平版印刷版原版」、「原版」及び「ネガ型平版印刷版原版」という用語は、本明細書の実施形態への言及を意図している。
【0029】
「支持体」という用語は、本明細書において、種々の層でコーティングされる親水性物品を指す「基板」を調製するためにその後処理されるアルミニウム含有材料(ウェブ、シート、箔又は他の形態)を指すために使用される。
【0030】
特に指示しない限り、百分率は、組成物若しくは層の乾燥重量による%、又は溶液の固形分%を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「放射光吸収剤」という用語は、特定の波長の放射光に感受性であり、配置されている層内で光子を熱に変換することができる化合物を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「赤外線」という用語は、少なくとも700nm以上のλ
maxを有する放射光を指す。ほとんどの例で、「赤外線」という用語は、本明細書において少なくとも700nm及び最大で1400nmと定義される電磁スペクトルの「近赤外」領域を指すために使用される。
【0033】
「有機ワックス」という用語は、周囲温度近くで「可塑性」又は展性であり、45℃より上の温度で特徴的に溶融して低粘度液体をもたらす化学化合物を指す。有機ワックスは一般的に水に不溶性であるが、有機、非極性溶媒に可溶性である。有機ワックスは、合成的に調製されていても天然であってもよく、これには、それだけに限らないが、動物ワックス、植物ワックス、及び石油由来ワックスが含まれ得る。天然ワックスは、一般的に脂肪酸及び長鎖アルコールを含む一方、合成ワックスは一般的に官能基を有さないが、フッ化炭化水素を含むこともできる長鎖炭化水素である。
【0034】
ポリマーに関する用語についての定義を明確化するために、国際純正・応用化学連合(「IUPAC」)によって出版されている「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68、2287〜2311(1996)を参照すべきである。しかしながら、本明細書に明示的に示されるいずれの定義もが優先するとみなされるべきである。
【0035】
特に指示しない限り、「ポリマー」及び「ポリマーの」という用語は、オリゴマーを含む高及び低分子量ポリマーを指し、ホモポリマー及びコポリマーを含む。
【0036】
「コポリマー」という用語は、ポリマー骨格に沿ってランダムな、2種以上の異なるモノマーから得られるポリマーを指す。すなわち、これらは異なる化学構造を有する繰り返し単位を含む。
【0037】
「骨格」という用語は、複数のペンダント基が結合することができるポリマー内の原子の鎖を指す。このような骨格の例には、1種又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全炭素」骨格がある。しかしながら、他の骨格はヘテロ原子を含むことができ、ポリマーが縮合反応又はいくつかの他の手段により形成される。
【0038】
基板
基板は、一般的に親水性表面、又は少なくとも画像化側に塗布される画像形成性層よりも親水性である表面を有する。基板は、平版印刷版等の画像形成性要素を調製するために慣用的に使用されている任意の材料で構成され得る支持体を含む。これは通常、シート、膜、箔(又はウェブ)の形態であり、色記録がフルカラー画像を登録するように使用条件下で強く、安定で、可撓性且つ寸法変化抵抗性である。典型的には、支持体は、ポリマー膜(ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー及びポリスチレン膜等)、ガラス、セラミック、金属シート若しくは箔、又は薄板紙(樹脂塗工紙及び金属化紙を含む)、あるいはこれらの材料のいずれかの積層(ポリエステル膜上へのアルミ箔の積層等)を含む任意の自己支持材料であり得る。金属支持体には、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシート又は箔が含まれる。
【0039】
ポリマー膜支持体を「下塗り」層で片平面又は両平面上を修飾して親水性を強化することができる、又は紙支持体を同様にコーティングして平面性を強化することができる。下塗り層材料の例としては、それだけに限らないが、アルコキシシラン、アミノ−プロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピル−トリエトキシシラン及びエポキシ官能性ポリマー、並びにハロゲン化銀写真フィルムに使用されている従来の親水性下塗り材料(ゼラチン並びに他の天然及び合成親水性コロイド並びに塩化ビニリデンコポリマーを含むビニルポリマー等)が挙げられる。
【0040】
1つの有用な基板は、物理的(機械的)粒化、電気化学的粒化又は化学的粒化によるある種の粗化、通常は続く酸陽極酸化を含む当技術分野で既知の技術を使用して処理され得るアルミニウム支持体で構成される。アルミニウム支持体を、物理的又は電気化学的粒化により粗化し、次いで、リン酸又は硫酸、及び従来手順を使用して陽極酸化することができる。有用な親水性平版印刷基板は、平版印刷のための親水性表面を提供する、電気化学的に粒化され、硫酸又はリン酸陽極酸化された支持体である。
【0041】
アルミニウム支持体の硫酸陽極酸化は、一般的に少なくとも1.5g/m
2及び最大で5g/m
2、より典型的には少なくとも3g/m
2及び最大で4.3g/m
2の表面上の酸化物重量(被覆度)を提供する。リン酸陽極酸化は、一般的に少なくとも1.5g/m
2及び最大で5g/m
2、より典型的には少なくとも1g/m
2及び最大で3g/m
2の表面上の酸化物重量を提供する。
【0042】
親水性を増加させるために、例えば、ケイ酸塩、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]又はアクリル酸コポリマーでアルミニウム支持体を処理することによって、中間層を形成することができる。なお更に、アルミニウム支持体を、無機フッ化物(PF)を更に含有することができるリン酸塩溶液で処理することができる。アルミニウム支持体を、電気化学的粒化し、硫酸陽極酸化し、表面親水性を改善するための既知の手順を使用してPVPA又はPFで処理することができる。
【0043】
基板はまた、最外面の円柱状細孔の直径が円柱状細孔の平均直径の少なくとも90%となるような円柱状細孔を有する外面を提供するためにアルカリ性又は酸性細孔拡大溶液(pore−widening solution)で処理もした、粒化及び硫酸陽極酸化アルミニウム含有支持体であってもよい。この基板は、粒化、硫酸陽極酸化及び処理アルミニウム含有支持体の直ぐ上に配置された親水性層を更に含み、親水性層は、カルボン酸側鎖を有する非架橋親水性ポリマーを含む。このような基板及びこれらを調製する方法のさらなる詳細は、同時係属の及び本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第13/221936号明細書(Hayashiにより2011年8月31日に出願)に提供されている。
【0044】
基板の厚さは変えることができるが、印刷からの摩耗に耐えるのに十分であり且つ印刷フォームを包むのに十分な薄さであるべきである。有用な実施形態には、少なくとも100μm及び最大で700μmの厚さを有する処理アルミ箔が含まれる。
【0045】
基板の裏側(非画像化側)を帯電防止剤、滑性層又はマット層でコーティングして画像形成性要素の取り扱い及び「手触り」を改善することができる。
【0046】
ネガ型画像形成性層
本発明の実施形態は、以下に記載されるネガ型放射光感受性組成物を適当な基板に適切に塗布して、フリーラジカル重合性成分、放射光吸収剤(赤外線放射吸収剤等)、画像化放射に露光するとフリーラジカルを生成することができる開始剤組成物、及びポリマーバインダーを含むネガ型放射光感受性画像形成性層を形成することによって形成することができる。一般的には、放射光感受性組成物を含むただ1つのネガ型画像形成性層が存在するが、これは原版で最外層ではない。以下により詳細に記載されるように、最外水溶性オーバーコート層(トップコートとしても知られている)が1つ又は複数のネガ型画像形成性層上に配置される。
【0047】
ネガ型平版印刷版原版の多くの詳細は、例えば、欧州特許公開第770494A1号明細書(Vermeerschら)、第924570A1号明細書(Fujimakiら)、第1063103A1号明細書(Uesugi)、欧州特許第1182033A1号明細書(Fujimakoら)、欧州特許第1342568A1号明細書(Vermeerschら)、欧州特許第1449650A1号明細書(Goto)及び欧州特許第1614539A1号明細書(Vermeerschら)、米国特許第4511645号明細書(Koikeら)、第6027857号明細書(Teng)、第6309792号明細書(Hauckら)、第6569603号明細書(Furukawaら)、第6899994号明細書(Huangら)、第7045271号明細書(Taoら)、第7049046号明細書(Taoら)、第7261998号明細書(Hayashiら)、第7279255号明細書(Taoら)、第7285372号明細書(Baumannら)、第7291438号明細書(Sakuraiら)、第7326521号明細書(Taoら)、第7332253号明細書(Taoら)、第7442486号明細書(Baumannら)、第7452638号明細書(Yuら)、第7524614号明細書(Taoら)、第7560221号明細書(Timpeら)、第7574959号明細書(Baumannら)、第7615323号明細書(Shrehmelら)及び第7672241号明細書(Munnellyら)、並びに米国特許出願公開第2003/0064318号明細書(Huangら)、第2004/0265736号明細書(Aoshimaら)、第2005/0266349号明細書(Van Dammeら)及び第2006/0019200号明細書(Vermeerschら)に記載されている。他のネガ型組成物及び要素は、例えば、米国特許第6232038号明細書(Takasaki)、第6627380号明細書(Saitoら)、第6514657号明細書(Sakuraiら)、第6808857号明細書(Miyamotoら)及び米国特許出願公開第2009/0092923号明細書(Hayashi)に記載されている。本発明の原版の範囲はこれらの教示に限定されない。
【0048】
このような原版に使用される放射光感受性組成物及びネガ型画像形成性層は、一般的に画像化原版の現像性を促進する1種又は複数のポリマーバインダーを含むことができる。このようなポリマーバインダーには、それだけに限らないが、一般的に架橋性でなく、通常は膜形成性(コーティング溶媒に溶解性)であるものが含まれるが、他のポリマーバインダーが少なくとも部分的に離散粒子(凝集していない)として存在してもよい。このようなポリマーバインダーは、少なくとも10nm及び最大で500nm、典型的には少なくとも100nm及び最大で450nmの平均粒径を有し、一般的にその層内に均一に分布している離散粒子として存在し得る。粒子状ポリマーバインダーは、室温で、例えば、水性分散液中に離散粒子として存在する。このようなポリマーバインダーは、一般的にゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、少なくとも5000、典型的には少なくとも20000及び最大で1000000、又は少なくとも30000及び最大で200000の数平均分子量(M
n)を有する。
【0049】
有用な粒子状ポリマーバインダーには、一般的に例えば、米国特許第6582882号明細書(Pappasら)、第6899994号明細書(Huangら)、第7005234号明細書(Hoshiら)及び第7368215号明細書(Munnellyら)並びに米国特許出願公開第2005/0003285号明細書(Hayashiら)に記載されている、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖(例えば、少なくとも10個のアルキレングリコール単位)、場合によりシアノ若しくはフェニル側鎖基、又は両型の側鎖若しくは側鎖基が直接又は間接的に結合した疎水性骨格を有するポリマーのポリマーエマルジョン又は分散液が含まれる。より具体的には、このようなポリマーバインダーには、それだけに限らないが、疎水性と親水性セグメントの両方を有するグラフトコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)セグメントを有するブロック及びグラフトコポリマー、ポリマー骨格を形成するようランダム様式に配置された繰り返し単位でペンダントポリ(アルキレンオキシド)セグメントとシアノ基の両方を有するポリマー、並びにヒドロキシル、カルボキシ、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチル、スルホノ又は当業者に容易に明らかな他の基等の種々の親水性基を有することができる種々の親水性ポリマーバインダーが含まれる。
【0050】
あるいは、粒子状ポリマーバインダーは、複数(少なくとも2個)のウレタン部分を含む骨格を有することができる。このようなポリマーバインダーは、一般的にゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、少なくとも2000、典型的には少なくとも100000及び最大で500000、又は少なくとも100000及び最大で300000の数平均分子量(M
n)を有する。
【0051】
他の有用なポリマーバインダーは、画像形成性層の全体にわたって(通常は均一に)分布している粒子状ポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッドである。これらのハイブリッドの各々は少なくとも50000及び最大で500000の数平均分子量(M
n)を有し、粒子は少なくとも10nm及び最大で10000nm(典型的には少なくとも30nm及び最大で500nm又は少なくとも30nm及び最大で150nm)の平均粒径を有する。これらのハイブリッドは、製造に使用される具体的な反応物質に応じて性質が「芳香族」又は「脂肪族」となり得る。2種以上のポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッドの粒子のブレンドを使用することもできる。いくつかのポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッドは、Air Products and Chemicals, Inc.(Allentown、PA)から、例えば、Hybridur(登録商標)540、560、570、580、870、878、880というポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッド粒子のポリマー分散液として分散液で商業的に入手可能である。これらの分散液は、一般的に商業的界面活性剤、消泡剤、分散剤、防食剤、並びに任意で顔料及び水混和性有機溶媒も含むことができる適当な水性媒体中少なくとも30%固形分のポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッド粒子を含む。
【0052】
更に他の有用なポリマーバインダーは均質、すなわち、コーティング溶液中で膜形成性、非粒子状又は溶解性であり得る。このようなポリマーバインダーには、それだけに限らないが、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[(メタ)アクリレート等]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレン、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から得られるポリマー、例えば、欧州特許第1182033A1号明細書(Fujimakiら)並びに米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、第6352812号明細書(Shimazuら)、第6569603号明細書(Furukawaら)及び第6893797号明細書(Munnellyら)に記載されているものが含まれる。米国特許第7175949号明細書(Taoら)に記載されているビニルカルバゾールポリマー、及び米国特許第7279255号明細書(Taoら)に記載されているペンダントビニル基を有するポリマーも有用である。ランダム様式及び粒子形態のポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンモノマーから得られるランダムコポリマー、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリルアミド/N−フェニルマレイミドから得られる溶解ランダムコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸から得られるランダムコポリマー、N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸から得られるランダムコポリマー、ウレタン−アクリル中間体A(p−トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシルエチルメタクリレートの反応生成物)/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドから得られるランダムコポリマー、及びN−メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n−フェニルマレイミドから得られるランダムコポリマーが有用である。「ランダム」コポリマーにより、本発明者らはこの用語の従来の使用を意味する、すなわち、同じ構造単位の2つ以上が偶発的に鎖中にあってもよいが、モノマーから得られるポリマー骨格中の構造単位が、ブロックコポリマーと対照的にランダムに配置されている。
【0053】
ポリマーバインダーは、少なくとも20meq KOH/gのポリマー及び最大で400meq KOH/gのポリマーの酸価を有する任意のアルカリ溶液可溶性(又は分散性)ポリマーから選択され得る。以下に記載するポリマーバインダーがこの様式で有用であるが、これは網羅的一覧ではない:
I.例えば、米国特許第7326521号明細書(Taoら)に記載されている、(a)(メタ)アクリロニトリルと、(b)(メタ)アクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステルと、場合により(c)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートエステル、スチレン及びその誘導体、並びに(メタ)アクリルアミドとの組み合わせ又は混合物の重合により形成される膜形成ポリマー。このクラスのいくつかの特に有用なポリマーバインダーは、1種又は複数の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートエステル、スチレン及びその誘導体、ビニルカルバゾール、並びにポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートから得られる。
II.米国特許第7332253号明細書(Taoら)に記載されているペンダントアリルエステル基を有する膜形成ポリマー。このようなポリマーは、ペンダントシアノ基を含むこともできる、又は言及する特許の8段、31行〜10段、3行に記載されている種々の他のモノマーから得られる繰り返し単位を有することもできる。
III.全炭素骨格を形成する炭素原子の少なくとも40mol%及び最大で100mol%(典型的には少なくとも40及び最大で50mol%)が三級炭素原子であり、全炭素骨格中の残りの炭素原子が非三級炭素原子である、全炭素骨格を有する膜形成ポリマー。このようなポリマーバインダーのさらなる詳細は、米国特許出願公開第2008−0280229号明細書(Taoら)にある。
IV.ポリマー骨格に結合した1個又は複数のエチレン性不飽和ペンダント基(反応性ビニル基)を有する膜形成性ポリマーバインダー。このような反応基は、フリーラジカルの存在下で重合又は架橋を受けることができる。ペンダント基は、炭素−炭素直接結合により又は特に限定されない結合基を通してポリマー骨格に直接結合することができる。反応性ビニル基は、少なくとも1個のハロゲン原子、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、又はアルキル、アリール、アルコキシ若しくはアリールオキシ基、特に1個又は複数のアルキル基で置換され得る。いくつかの実施形態では、反応性ビニル基は、例えば、米国特許第6569603号明細書(Furukawaら)に記載されているようにフェニレン基を通してポリマー骨格に結合している。他の有用なポリマーバインダーは、例えば、欧州特許第1182033A1号明細書(Fujimakiら)並びに米国特許第4874686号明細書(Urabeら)、第7729255号明細書(Taoら)、第6916595号明細書(Fujimakiら)及び第7041416号明細書(Wakataら)に記載されているペンダント基中のビニル基を有する。
V.米国特許出願公開第2009−0142695号明細書(Baumannら)に記載されているペンダント1H−テトラゾール基を有することができる膜形成ポリマーバインダー。
VI.更に他の有用なポリマーバインダーは、膜形成性である又は離散粒子として存在することができ、これらには、それだけに限らないが、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[(メタ)アクリレート等]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレン、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から得られるポリマー、例えば、欧州特許第1182033号明細書(上記)並びに米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、第6352812号明細書(Shimazuら)、第6569603号明細書(上記)及び第6893797号明細書(Munnellyら)に記載されているものが含まれる。米国特許第7175949号明細書(Taoら)に記載されているビニルカルバゾールポリマーも有用である。他の有用なポリマーバインダーは、画像形成性層の全体にわたって(通常は均一に)分布している粒子状ポリ(ウレタン−アクリル)ハイブリッドである。これらのハイブリッドの各々は少なくとも50000及び最大で500000の数平均分子量(M
n)を有し、粒子はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される少なくとも10nm及び最大で10000nm(典型的には少なくとも30nm及び最大で500nm)の平均粒径を有する。
【0054】
全ポリマーバインダーは、一般的に総乾燥層重量の少なくとも5重量%及び最大で70重量%、典型的には少なくとも40重量%及び最大で70重量%の量でネガ型画像形成性層中に存在する。
【0055】
放射光感受性組成物(及びネガ型画像形成性層)は、その各々がフリーラジカル開始反応を使用して重合され得る1個又は複数のフリーラジカル重合性基を含有する、1種又は複数のフリーラジカル重合性成分を含む。例えば、このようなフリーラジカル重合性成分は、1個又は複数の付加重合性エチレン性不飽和基、架橋性エチレン性不飽和基、開環重合性基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基又はこれらの組み合わせを有する1種又は複数のフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマーを含有することができる。同様に、このようなフリーラジカル重合性基を有する架橋性ポリマーを使用することもできる。ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、並びに不飽和ポリエステル樹脂等のオリゴマー又はプレポリマーを使用することができる。いくつかの実施形態では、フリーラジカル重合性成分がカルボキシル基を含む。
【0056】
フリーラジカル重合性成分には、複数の重合性基を有するウレアウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。例えば、フリーラジカル重合性成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.、Milford, Conn.)をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートと反応させることによって調製することができる。有用なフリーラジカル重合性化合物には、Kowa Americanから入手可能なNK Ester A−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、並びにSartomer Company, Incから入手可能なSartomer 399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)及びSartomer 415[エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が含まれる。
【0057】
多数の他のフリーラジカル重合性成分が当業者に知られており、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists、A Reiser, Wiley、ニューヨーク、1989、102〜177頁、B. M. MonroeによるRadiation Curing: Science and Technology、S. P. Pappas編、Plenum、ニューヨーク、1992、399〜440頁、及び「Polymer Imaging」、A. B. Cohen及びP. Walker、Imaging Processes and Material、J. M. Sturgeら(編)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク、1989、226〜262頁を含むかなりの文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル重合性成分は、欧州特許第1182033A1号明細書(Fujimakiら)、[0170]段落から、並びに米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、第6569603号明細書(Furukawaら)及び第6893797号明細書(Munnellyら)にも記載されている。他の有用なフリーラジカル重合性成分には、米国特許出願公開第2009/0142695号明細書(Baumannら)に記載されているものが含まれ、このラジカル重合性成分は1H−テトラゾール基を含む。
【0058】
上記フリーラジカル重合性成分に加えて又はその代わりに、放射光感受性組成物は、開始剤組成物(下記)によって生成されるフリーラジカルに反応して重合(架橋)することができる1個又は複数のフリーラジカル重合性基(エチレン性不飽和基等)を含む、骨格に結合した側鎖を含むポリマー材料を含むことができる。1分子当たり少なくとも2個のこれらの側鎖が存在し得る。フリーラジカル重合性基(又はエチレン性不飽和基)は、ポリマー骨格に結合した脂肪族又は芳香族アクリレート側鎖の一部であり得る。一般的に、1分子当たり少なくとも2個及び最大で20個の前記基が存在する。
【0059】
このようなフリーラジカル重合性ポリマーは、それだけに限らないが、骨格に直接結合している又はフリーラジカル重合性側鎖以外の側鎖の一部として結合している、カルボキシ、スルホ又はホスホ基を含む親水性基も含むことができる。
【0060】
放射光感受性組成物(ネガ型画像形成性層)は、組成物が画像化放射に露光すると、全ての種々のフリーラジカル重合性成分の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することができる1種又は複数の開始剤を含む開始剤組成物も含む。開始剤組成物は、一般的に、例えば、少なくとも700nm及び最大で1400nm、典型的には少なくとも700nm及び最大で1250nmの放射の広範なスペクトル範囲に対応する赤外線スペクトル領域の電磁放射に反応する。あるいは、開始剤組成物は、少なくとも250nm及び最大で450nm、典型的には少なくとも300nm及び最大で450nmの紫領域の露光放射に反応することができる。
【0061】
より典型的には、開始剤組成物は、1種又は複数の電子受容体と、電子、水素原子又は炭化水素ラジカルを供与することができる1種又は複数の共開始剤(co−initiator)とを含む。
【0062】
一般に、放射光感受性組成物に適した開始剤組成物は、それだけに限らないが、芳香族ハロゲン化スルホニル、トリハロゲノメチルスルホン、イミド(N−ベンゾイルオキシ−フタルイミド等)、ジアゾスルホネート、9,10−ジヒドロアントラセン誘導体、その少なくとも1個がアリール部分の窒素、酸素又は硫黄原子に結合している少なくとも2個のカルボキシ基を有するN−アリール、S−アリール又はO−アリールポリカルボン酸(アニリン二酢酸及びその誘導体並びにWestらの米国特許第5629354号明細書に記載されている他の「共開始剤」等)、オキシムエーテル及びオキシムエステル(ベンゾインから得られるもの等)、α−ヒドロキシ又はα−アミノ−アセトフェノン、トリハロゲノメチル−アリールスルホン、ベンゾインエーテル及びエステル、ペルオキシド(過酸化ベンゾイル等)、ヒドロペルオキシド(クメンヒドロペルオキシド等)、アゾ化合物(アゾビス−イソブチロニトリル等)、例えば、米国特許第4565769号明細書(Dueberら)に記載されている2,4,5−トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビイミダゾール又は「HABI」としても知られている)、トリハロメチル置換トリアジン、ホウ素含有化合物(テトラアリールボレート及びアルキルトリアリールボレート等)及び有機ホウ酸塩、例えば、米国特許第6562543号明細書(Ogataら)に記載されているもの、並びにオニウム塩(アンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩及びN−アルコキシピリジニウム塩等)を含む開始剤を含む。
【0063】
ヘキサアリールビイミダゾール、オニウム化合物及びチオール化合物並びにこれらの2種以上の混合物が望ましい共開始剤又はフリーラジカル発生剤であり、特に、ヘキサアリールビイミダゾール及びそのチオール化合物との混合物が有用である。適当なヘキサアリールビイミダゾールは、米国特許第4565769号明細書(Dueberら)及び第3445232号明細書(Shirey)にも記載されており、トリアリールイミダゾールの酸化二量体化等の既知の方法にしたがって調製することができる。
【0064】
IR放射感受性組成物に有用な開始剤組成物には、特にシアニン赤外線放射感受性染料と組み合わせた、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウム及びホスホニウム化合物を含むオニウム化合物(塩)が含まれる。有用なヨードニウムカチオンはそれだけに限らないが、米国特許出願公開第2002/0068241号明細書(Oohashiら)、国際公開第2004/101280号パンフレット(Munnellyら)、並びに米国特許第5086086号明細書(Brown−Wensleyら)、第5965319号明細書(Kobayashi)及び第6051366号明細書(Baumannら)を含む当技術分野で周知である。例えば、有用なヨードニウムカチオンには、正帯電ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]部分及び適当な負帯電対イオンが含まれる。
【0065】
したがって、ヨードニウムカチオンを1種又は複数のヨードニウム塩の一部として供給することができ、ヨードニウムカチオンを特にシアニン赤外線放射感受性染料と組み合わせて適当なホウ素含有アニオンも含有するヨードニウムボレートとして供給することができる。例えば、ヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンを、米国特許第7524614号明細書(Taoら)の6〜8段に記載されている構造(I)と構造(II)の組み合わせである置換又は未置換ジアリールヨードニウム塩の一部として供給することができる。
【0066】
有用なIR放射感受性開始剤組成物は、1種又は複数のジアリールヨードニウムボレート化合物を含むことができる。本発明で有用な代表的なヨードニウムボレート化合物には、それだけに限らないが、4−オクチルオキシ−フェニルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、[4−(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−ヘキシルフェニル−フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシル−フェニルヨードニウムn−ブチルトリフェニルボレート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2−メチル−4−t−ブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ペンチルフェニルヨードニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、4−メトキシフェニル−4’−シクロヘキシル−フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ−フルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4’−ドデシルフェニルヨードニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)−ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)−ボレート及びビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1−イミダゾリル)ボレートが含まれる。有用な化合物には、ビス(4−t−ブチルフェニル)−ヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2−メチル−4−t−ブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート及び4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレートが含まれる。これらの化合物の2種以上の混合物を開始剤組成物に使用することもできる。米国特許第8043787号明細書(Hauckら)。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態では、画像化放射に露光するとフリーラジカルを生成することができる開始剤組成物がジアリールヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンを含み、ジアリールヨードニウムカチオンが以下の構造(I):
【0069】
(式中、R及びR’は独立に、ハロゲン、ニトロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、ジアルキルイミノ、アルキルアミド、アリールアミド、カルボニル、カルボキシ、スルホニル、チオアルキル又はチオアリール基を表す、又はR及びR’基の2つ以上が結合してそれぞれのフェニル基を有する縮合炭素環又は複素環を形成してもよく、n及びmは独立に、0又は1〜5の整数である)
により表される。mとnの和は1〜6となり得る。
【0070】
ホウ素含有アニオンは、以下の構造(II):
B
−(R
1)(R
2)(R
3)(R
4) (II)
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は独立に、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又は複素環基を表す、又はR
1、R
2、R
3及びR
4の2つ以上が結合してホウ素原子を有する複素環を形成してもよく、前記環は最大で7個の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する)
により表される。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3及びR
4の全てが置換又は未置換フェニル基等の、同じ若しくは異なる置換又は未置換アリール基である、あるいはよりもっともらしくは、これらの基の全てが未置換フェニル基である。
【0071】
ネガ型画像形成性層中の開始剤組成物の量は、当業者に容易に明らかになるだろう、また使用される特定の放射光感受性組成物に依存するだろう。
【0072】
ネガ型画像形成性層は、1種又は複数の放射光吸収剤(赤外線放射吸収剤等)と、1種又は複数のUV増感剤とを含む放射光感受性画像化組成物を含む。1種又は複数の赤外線放射吸収剤又はUV増感剤の総量は、ネガ型画像形成性層の総固形分基準で少なくとも1重量%及び最大で30重量%、典型的には少なくとも5重量%及び最大で20重量%である。
【0073】
いくつかの実施形態では、フリーラジカル発生化合物がUV放射感受性である(すなわち、少なくとも150nm及び最大で475nm)場合に、放射光感受性組成物はUV増感剤を含有し、それによって光重合が促進される。他の実施形態では、放射光感受性組成物が、少なくとも375nm及び最大で475nmの範囲の「紫」放射に感光性となる。このような組成物に有用な増感剤には、特定のピリリウム及びチオピリリウム染料並びに3−ケトクマリンが含まれる。このようなスペクトル感度のためのいくつかの他の有用な増感剤は、例えば、米国特許第6908726号明細書(Korionoffら)、並びに有用なビスオキサゾール誘導体及び類似体を記載している国際公開第2004/074929号パンフレット(Baumannら)、並びに米国特許出願公開第2006/0063101号明細書及び第2006/0234155号明細書(共にBaumannら)に記載されている。
【0074】
更に他の有用な増感剤には、2個のヘテロ原子間に共役π系を提供する適当な芳香族又は複素芳香族単位を有する、国際公開第2006/053689号パンフレット(Strehmelら)に定義されている構造(I)単位を有するオリゴマー又はポリマー化合物がある。
【0075】
追加の有用な「紫」−可視光放射増感剤には、国際公開第2004/074929号パンフレット(Baumannら)に記載されている化合物がある。これらの化合物は、芳香族複素環基と共役した少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むスペーサー部分によって結合した同じ又は異なる芳香族複素環基を含み、言及する刊行物の式(I)によってより詳細に表される。
【0076】
紫領域の増感に有用な他の増感剤には、国際公開第2004/074930号パンフレット(Baumannら)に記載されている2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体がある。これらの化合物を単独で又は上記のように共開始剤と共に使用することができる。有用な2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体は、構造G−(Ar
1)
3(式中、Ar
1は環内に6〜12個の炭素原子を有する同じ若しくは異なる置換又は未置換炭素環アリール基であり、Gはフラン又はオキサゾール環である)又は構造G−(Ar
1)
2(式中、Gはオキサジアゾール環である)によって表すことができる。Ar
1基は、1個又は複数のハロ、置換若しくは未置換アルキル、置換若しくは未置換シクロアルキル、置換若しくは未置換アリール、アミノ(一級、二級若しくは三級)、又は置換若しくは未置換アルコキシ又はアリールオキシ基で置換されていてもよい。したがって、アリール基は、それぞれ、独立に、水素又は1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは未置換アルキル基(メチル、エチル、イソ−プロピル、n−ヘキシル、ベンジル及びメトキシメチル基等)、環内に6〜10個の炭素原子を有する置換若しくは未置換炭素環アリール基(フェニル、ナフチル、4−メトキシフェニル及び3−メチルフェニル基等)、環内に5〜10個の炭素原子を有する置換若しくは未置換シクロアルキル基、−N(R’
4)(R’
5)基、又はOR’
6基(式中、R’
4〜R’
6は独立に、上に定義される置換若しくは未置換アルキル又はアリール基を表す)である1個又は複数のR’
1〜R’
3基で置換されていてもよい。R’
1〜R’
3の少なくとも1つは、−N(R’
4)(R’
5)基(式中、R’
4及びR’
5は同じ又は異なるアルキル基である)である。各Ar
1基に有用な置換基には、同じ又は異なる一級、二級及び三級アミンが含まれる。
【0077】
更に別のクラスの有用な紫放射光増感剤には、構造Ar
1−G−Ar
2(式中、Ar
1及びAr
2は環内に6〜12個の炭素原子を有する同じ若しくは異なる置換又は未置換アリール基である、あるいはAr
2はアリーレン−G−Ar
1又はアリーレン−G−Ar
2基であってもよく、Gはフラン、オキサゾール又はオキサジアゾール環である)によって表される化合物が含まれる。Ar
1は上に定義されるのと同じであり、Ar
2はAr
1と同じ又は異なるアリール基であり得る。「アリーレン」はAr
1について定義されるアリール基のいずれかであり得るが、二価の性質を与えるために水素原子が除去されている。
【0078】
いくつかの有用な赤外線放射吸収剤は、(典型的には少なくとも700nm及び最大で1400nmの)赤外線放射と(典型的には少なくとも450nm及び最大で700nmの)可視光放射の両方に感受性である。これらの化合物はまた、テトラアリールペンタジエン発色団を有する。このような発色団は、一般的に結合基の各末端に2個の置換又は未置換アリール基が結合した、鎖内に5個の炭素原子を有するペンタジエン結合基を含む。これらのアリール基は、同じ又は異なる三級アミン基で置換されていてもよい。ペンタジエン結合基が水素原子の代わりに1個又は複数の置換基で置換されていてもよいし、又は、鎖内に代替炭素−炭素単結合及び炭素−炭素二重結合が存在する限り、2個以上の水素原子が原子で置換されて結合基内に環を形成してもよい。このような化合物の他の詳細は、米国特許第7429445号明細書(Munnellyら)に提供されている。
【0079】
他の有用な赤外線放射吸収剤には、それだけに限らないが、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、及び上記染料クラスの任意の置換又はイオン形態が含まれる。適当な染料は、米国特許第5208135号明細書(Patelら)、第6153356号明細書(Uranoら)、第6264920号明細書(Achilefuら)、第6309792号明細書(Hauckら)、第6569603号明細書(上記)、第6787281号明細書(Taoら)、第7135271号明細書(Kawaushiら)及び欧州特許第1182033A2号明細書(上記)にも記載されている。赤外線放射吸収N−アルキル硫酸シアニン染料は、例えば、米国特許第7018775号明細書(Tao)に記載されている。1つのクラスの適当なシアニン染料の一般的な説明は、国際公開第2004/101280号パンフレット(Munnellyら)の[0026]段落の式によって示される。
【0080】
低分子量IR吸収染料に加えて、ポリマーに結合したIR染料発色団も同様に使用することができる。更に、IR染料カチオンも同様に使用することができる、すなわち、カチオンが側鎖にカルボキシ、スルホ、ホスホ又はホスホノ基を含むポリマーとイオン相互作用する染料塩のIR吸収部分である。
【0081】
近赤外吸収シアニン染料も有用であり、例えば、米国特許第6309792号明細書(上記)、第6264920号明細書(Achilefuら)、第6153356号明細書(上記)及び第5496903号明細書(Watanabeら)に記載されている。適当な染料は従来法及び出発材料を使用して形成することができる、又はAmerican Dye Source(Baie D’Urfe、ケベック、カナダ)及びFEW Chemicals(ドイツ)を含む種々の商業的供給源から得ることができる。近赤外ダイオードレーザービームに有用な他の染料は、米国特許第4973572号明細書(DeBoer)に記載されている。
【0082】
有用なIR放射感受性組成物は、例えば、米国特許第7452638号明細書(Yuら)、並びに米国特許出願公開第2008/0254387号明細書(Yuら)、第2008/0311520号明細書(Yuら)、第2009/0263746号明細書(Rayら)及び第2010/0021844号明細書(Yuら)に記載されている。
【0083】
したがって、放射光吸収剤は赤外線放射吸収剤であり、ネガ型画像形成性層は赤外線放射に感受性である。
【0084】
画像形成性層は、少なくとも200及び最大で4000の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)又はそのエーテル若しくはエステルも含むことができる。画像形成性層は、画像形成性層の総乾燥重量基準で最大で20重量%の量のポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)又はポリエステルを更に含むことができる。
【0085】
画像形成性層への追加の添加剤には、カラー現像剤又は酸性化合物が含まれる。カラー現像剤として、本発明者らは、モノマーフェノール化合物、有機酸又はその金属塩、オキシ安息香酸エステル、酸性粘土、及び例えば、米国特許出願公開第2005/0170282号明細書(Innoら)に記載されている他の化合物を含めることを意図している。画像形成性層は、それだけに限らないが、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、被覆性又は他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー改質剤又はこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷分野で一般的に使用されている任意の他の添加剤(addenda)を含む種々の任意の化合物を従来の量で含むこともできる。画像形成性層は、場合により米国特許第7429445号明細書(Munnellyら)に記載されている、一般的に250を超える分子量を有するホスフェート(メタ)アクリレートも含む。
【0086】
最外水溶性オーバーコート層
原版は、1つ又は複数のネガ型画像形成性層の上に配置された最外水溶性オーバーコート層(時々、「酸素不透過性トップコート」又は「酸素障壁層」としても知られている)を有する。水溶性オーバーコートは、原版の最外層である。このような最外水溶性オーバーコート層は、少なくとも70%のけん化度、又は少なくとも75%若しくは少なくとも90%のけん化度さえ有するポリ(ビニルアルコール)等の1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーを含む。
【0087】
更に、1種又は複数の酸修飾ポリ(ビニルアルコール)を、最外水溶性オーバーコート層に膜形成水溶性ポリマーバインダーとして使用することができる。少なくとも1種の修飾ポリ(ビニルアルコール)を、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、ホスホン酸及びリン酸エステル基からなる群から選択される酸基で修飾することができる。
【0088】
このような材料の例としては、それだけに限らないが、スルホン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)、カルボン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)及び四級アンモニウム塩修飾ポリ(ビニルアルコール)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。酸修飾ポリ(ビニルアルコール)の具体的な商業的例としては、Kurarayから入手可能なSD1000、並びにNippon Gohseiから入手可能なGohsefimer K−210、Gohseran L−3266及びGohseran CKS−50が挙げられる。
【0089】
最外水溶性オーバーコート層は、ポリ(ビニルアルコール)ではない1種又は複数の他の第2の膜形成水溶性ポリマーを例えば、少なくとも2重量%及び最大で38重量%の量で更に含むことができ、このような第2の膜形成水溶性ポリマーには、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(ビニルカプロラクトン)、又はビニルピロリドン、エチレンイミン、ビニルカプロラクトン及びビニルイミダゾール、及びビニルアセトアミドの2種以上から得られるランダムコポリマーが含まれる。
【0090】
あるいは、最外水溶性オーバーコート層は、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、並びにビニルピロリドン、エチレンイミン及びビニルイミダゾールの2種以上から得られるランダムコポリマー、並びにこのようなポリマーの混合物等の膜形成水溶性ポリマーバインダーの1種又は複数を主に使用して形成することができる。最外水溶性オーバーコート層配合物は、カチオン、アニオン及び非イオン湿潤剤又は界面活性剤、流動性向上剤又は増粘剤、消泡剤、着色剤、並びに殺生物剤も含むことができる。このような添加剤についての詳細は、国際公開第99/06890号パンフレット(Pappasら)に提供されている。
【0091】
最外水溶性オーバーコート層の乾燥コーティング被覆度(g/m
2)と有機ワックス粒子の平均最大寸法(μm)の比は1.1:1を超える、典型的には1.3:1を超える。
【0092】
最外水溶性オーバーコート層は、1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に(一般的には均一に)分散した有機ワックス粒子も含む。これらの有機ワックス粒子は、一般的に少なくとも0.001g/m
2及び最大で0.4g/m
2の乾燥被覆度、典型的には少なくとも0.006g/m
2及び最大で0.1g/m
2又は少なくとも0.006g/m
2及び最大で0.03g/m
2の乾燥被覆度で存在する。有機ワックス粒子は、総最外水溶性オーバーコート層重量基準で少なくとも1.3重量%及び最大で60重量%、典型的には少なくとも2重量%及び最大で50重量%の量で1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に分散することができる。
【0093】
これらの炭化水素ワックス粒子は、一般的に乾燥最外水溶性オーバーコート層の走査型電子顕微鏡写真(SEM)像を使用して測定される、少なくとも0.05μm及び最大で0.7μmの平均最大寸法(例えば、概して球状の場合、平均直径又は円相当径、ECD)、典型的には少なくとも0.15μm及び最大で0.6μmの平均最大寸法を有する。
【0094】
更に、炭化水素ワックス粒子は、一般的に少なくとも100℃及び最高で180℃、典型的には少なくとも115℃及び最高で150℃の融点を有する。
【0095】
したがって、これらの有機ワックス粒子は、それだけに限らないが、フッ化及び非フッ化ポリオレフィン、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン又はこれらの混合物を含むフッ化又は非フッ化炭化水素を含むことができる。高密度及び低密度ポリエチレンワックス粒子並びにポリテトラフルオロエチレンが特に有用である。
【0096】
有用な有機ワックス粒子は、例えば、国際公開第96/010599号パンフレット(Soler)に記載されている既知の手順を使用して調製することができる。いくつかの有用なフッ化及び非フッ化炭化水素ワックス粒子は、Mitsui Chemical Inc.又はMunzing Liquid Technologies GmbH等のいくつかの商業的供給源から購入することもできる。
【0097】
最外水溶性オーバーコート層は、一般的に少なくとも0.1g/m
2及び0.9g/m
2未満の乾燥コーティング被覆度、典型的には少なくとも0.15g/m
2及び最大で0.4g/m
2の乾燥コーティング被覆度で存在する。
【0098】
例えば、水溶性オーバーコート層中の1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー及び炭化水素ワックス粒子の総乾燥被覆度は、0.8g/m
2未満若しくはこれに等しい、又は少なくとも0.15g/m
2及び最大で0.4g/m
2である。
【0099】
多くの実施形態では、ネガ型画像形成性層の乾燥平均厚さと最外水溶性オーバーコート層の乾燥平均厚さの比が0.5:1〜40:1である。各層の乾燥平均厚さは、いくつかの特定の領域中の水溶性オーバーコート層及びネガ型画像形成性層を後で取り出す工程と、重量法を使用して乾燥平均厚さを評価する工程とにより測定することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、最外水溶性オーバーコート層が、その少なくとも1種が酸修飾ポリ(ビニルアルコール)又は少なくとも70%のけん化度を有するポリ(ビニルアルコール)である1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーと、1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に分散したポリエチレンワックス粒子又はポリテトラフルオロエチレンワックス粒子とから本質的になる。
【0101】
ネガ型平版印刷版原版
上記ネガ型放射光感受性組成物をコーティング液体中の溶液又は分散液として、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティング等の任意の適当な装置及び手順を使用して基板に塗布することができる。放射光感受性組成物を、適当な支持体上に噴霧することによって塗布することもできる。典型的には、放射光感受性組成物を塗布し、乾燥させてネガ型画像形成性層を形成する。
【0102】
このような製造法の実例に、適当な有機溶媒又はその混合物[メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、イソ−プロピルアルコール、アセトン、γ−ブチロラクトン、n−プロパノール、テトラヒドロフラン及び当技術分野で容易に知られるその他、並びにこれらの混合物等]中で画像化化学に必要とされる種々の成分を混合し、得られた溶液を基板に塗布し、適当な乾燥条件下での蒸発によって溶媒を除去することがある。いくつかの代表的なコーティング溶媒及び画像形成性層配合物を、以下の発明実施例に記載する。適切な乾燥後、ネガ型画像形成性層のコーティング重量は、一般的に少なくとも0.1g/m
2及び最大で5g/m
2又は少なくとも0.5g/m
2及び最大で3.5g/m
2である。
【0103】
ネガ型画像形成性層の下に層を存在させて現像性を強化する、又は断熱層として作用させることもできる。
【0104】
適当な最外水溶性オーバーコート層配合物を、下記のように適切に、一般的には水溶性溶媒なしで乾燥ネガ型画像形成性層に塗布し、次いで、乾燥させることができる。
【0105】
一旦種々の層を基板に塗布し乾燥させたら、ネガ型平版印刷版原版を、要素へ及び要素からの水分の移動を実質的に阻害する遮水材料中に封入し、米国特許第7175969号明細書(上記)に記載されているように「熱調整(heat conditioned)」することができる。
【0106】
平版印刷版原版は、当技術分野で既知の適当な包装及び容器内の原版のスタックとして保管及び輸送することができる。
【0107】
画像化条件
使用中、平版印刷版原版を、放射光感受性組成物中に存在する放射光吸収剤に応じた露光放射の適当な光源に露光させて、少なくとも150nm及び最大で475nm(「UV」若しくは「紫」)又は少なくとも700nm及び最大で1400nmの赤外線の波長である特定の感度を得る。いくつかの実施形態では、UV若しくは「紫」放射光に感受性のネガ型平版印刷版原版では少なくとも350nm及び最大で450nmの範囲内のλ
max、又はネガ型平版印刷版原版が赤外線放射に感受性である場合には適当なエネルギー源を使用して少なくとも700nm及び最大で1400nmの範囲内のλ
maxを有する放射光を使用して、画像様露光を行う。
【0108】
例えば、放射光発生レーザー(又はこのようなレーザーの配列)からの画像化又は露光放射を使用して、画像化を行うことができる。所望であれば、同時に複数の波長の画像化放射を使用して画像化を行うこともできる。平版印刷版原版を露光するために使用するレーザーは、通常はダイオードレーザーシステムの信頼性及び低保守性のためにダイオードレーザーであるが、ガス又は固体レーザー等の他のレーザーを使用することもできる。レーザー画像化のための力、強度及び露光時間の組み合わせは、当業者に容易に明らかになるだろう。
【0109】
画像化装置は、平台型記録装置、又は平版印刷版原版がドラムの内部若しくは外部円筒面に載ったドラム型記録装置として構成することができる。有用な画像化装置の例は、約830nmの波長の近赤外放射を放射するレーザーダイオードを含有する、Eastman Kodak Companyから入手可能なKodak(登録商標)Trendsetterプレートセッターのモデルとして入手可能である。他の適当な画像化供給源には、1064nmの波長で作動するCrescent 42T Platesetter(Gerber Scientific、シカゴ、ILから入手可能)及び810nmの波長で作動するScreen PlateRite 4300シリーズ若しくは8600シリーズプレートセッター(Screen USA、シカゴ、ILから入手可能)が含まれる。
【0110】
赤外光放射による画像化は、画像形成性層の感度に応じて、一般的に少なくとも30mJ/cm
2及び最大で500mJ/cm
2、典型的には少なくとも50mJ/cm
2及び最大で300mJ/cm
2の画像化エネルギーで行うことができる。これらのプレートセッターでは、段階的画像化工程で露光領域と非露光領域との間のコントラストの差を観察することによって、Magnus 800プレートセッター(Eastman Kodak Company)の「表面深さ」パラメータ又はPlateRite 4300プレートセッター(Dainippon Screen Company)の「焦点」パラメータ等の任意の画像化パラメータを決定する。段階的画像化平版印刷版原版等を使用することによって、印刷ランの短縮が可能となり、得られる印刷物もこのような画像化パラメータを決定するために有用である。
【0111】
有用なUV及び「紫」画像化装置には、Prosetter(Heidelberger Druckmaschinen、ドイツ製)、Luxel V−8(Fuji、日本製)、Python(Highwater、UK)、MakoNews、Mako 2、Mako 4又はMako 8(ECRM、US製)、Micra(Screen、日本製)、Polaris and Advantage(AGFA、ベルギー製)、Laserjet(Krause、ドイツ製)及びAndromeda(登録商標)A750M(Lithotech、ドイツ製)、イメージセッターが含まれる。
【0112】
一般的に少なくとも0.01mJ/cm
2及び最大で0.5mJ/cm
2、典型的には少なくとも0.02mJ/cm
2及び最大で約0.1mJ/cm
2のエネルギーを使用して、UVから可視領域のスペクトル、特にUV領域(例えば、少なくとも150nm及び最大で475nm)の画像化放射を行うことができる。例えば、エネルギーの供給源(紫レーザー又はエキシマレーザー)に応じて、少なくとも0.5kW/cm
2及び最大で50kW/cm
2、典型的には少なくとも5kW/cm
2及び最大で30kW/cm
2の範囲の出力密度でUV/可視光放射感受性画像形成性要素を画像化することが望ましいだろう。
【0113】
本発明の実施においてはレーザー画像化が望ましいが、画像様様式で熱エネルギーを供給する任意の他の手段によって、熱画像化を提供することができる。例えば、画像化を、例えば、米国特許第5488025号明細書(Martinら)に記載されている「サーマルプリント」として知られているもので耐熱ヘッド(サーマルプリントヘッド)を使用して達成することができる。サーマルプリントヘッドは商業的に入手可能である(例えば、Fujitsu Thermal Head FTP−040 MCS001及びTDK Thermal Head F415 HH7−1089)。
【0114】
現像及び印刷
画像化後、画像化ネガ型平版印刷版原版を、本明細書に記載されて適当な処理溶液を使用して、例えば、水又は以下に記載される処理溶液を使用して「オフプレス」処理することができる。このような処理を、画像化ネガ型画像形成性層及び最外水溶性オーバーコート層の非露光領域を除去して、基板の親水性表面を明らかにするのに十分であるが、有意な量の硬化していない露光領域を除去するほど十分に長くはない時間、画像化ネガ型原版に行う。明らかになった親水性基板表面はインクをはじくが、露光領域はインクを受容する。したがって、除去される予定の非露光領域は、残る予定の領域よりも容易に処理溶液中に除去、溶解又は分散するので、処理溶液に「可溶性」又は「除去可能」である。「可溶性」という用語は「分散性」も意味する。
【0115】
「手動」現像、「浸漬」現像又は自動現像装置(処理装置)による処理として知られているものを使用して、オフプレス現像を達成することができる。「手動」現像の場合、画像化原版全体を適当な現像液(下記)を十分含浸させたスポンジ又は綿パッドで擦り、引き続いて水ですすぐことによって現像を行う。「浸漬」現像は、画像化原版を攪拌下で適当な現像液を含有するタンク又はトレイに少なくとも10秒及び最長で60秒(特に、少なくとも20秒及び最長で40秒)間浸漬し、引き続いてスポンジ又は綿パッドで擦って又は擦らないで、水ですすぐことを含む。自動現像装置の使用は周知であり、一般的に現像液又は処理溶液を現像タンクにポンプで注入する、又はこれを噴霧ノズルから排出することを含む。画像化原版を適当に現像液と接触させる。装置は、適当な摩擦機構(例えば、ブラシ又はローラー)及び適当な数の運搬ローラーも含むことができる。いくつかの現像装置はレーザー露光手段を含み、これらの装置は画像化部と現像部に分けられる。
【0116】
水性アルカリ性現像液と有機溶媒含有現像液又は処理溶液の両方を使用することができる。いくつかの有用な現像液溶液は、例えば、米国特許第7507526号明細書(Millerら)及び第7316894号明細書(Millerら)に記載されている。現像液溶液は、界面活性剤、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸の塩等)、有機溶媒(ベンジルアルコール等)、及びアルカリ性成分(無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物及び重炭酸塩等)を含むことができる。
【0117】
有用なアルカリ性水性現像液溶液には、3000 Developer、9000 Developer、GOLDSTAR Developer、GREENSTAR Developer、ThermalPro Developer、PROTHERM Developer、MX1813 Developer及びMX1710 Developer(全てEastman Kodak Companyから入手可能)が含まれる。
【0118】
有機溶媒含有現像液は、一般的に水と混和性の1種又は複数の有機溶媒の単相処理溶液である。有用な有機溶媒には、フェノールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの反応生成物[エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)等]、ベンジルアルコール、6個以下の炭素原子を有するエチレングリコール及びプロピレングリコールと酸のエステル、6個以下の炭素原子を有するエチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールとアルキル基のエーテル、例えば、2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。有機溶媒は、一般的に総現像液重量基準で約0.5%及び最大で15%の量で存在する。有機溶媒含有現像液は、pHが中性、アルカリ性又はわずかに酸性であり、典型的にはpHがアルカリ性である。代表的な有機溶媒含有現像液には、ND−1 Developer、Developer 980、Developer 1080、2 in 1 Developer、955 Developer、D29 Developer(下記)及び956 Developer(全てEastman Kodak Companyから入手可能)が含まれる。
【0119】
本発明の方法のいくつかの有用な実施形態では、現像に使用される処理溶液は、少なくとも3及び12以下のpHを有し、典型的には、pHは少なくとも6及び最大で12又は少なくとも7.5及び最大で11.5である。更に、処理溶液は、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、非イオン又はアニオン界面活性剤以外の中性電荷親水性化合物、及び親水性膜形成ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含むことができる。親水性膜形成ポリマー(下記のような)の存在は、いくつかの現像液溶液で特に有用となり得る。このような処理溶液は、1種又は複数のアルカノールアミン、有機溶媒、有機ホスホン酸、又はポリカルボン酸若しくは塩も含む。
【0120】
いくつかの例では、水性処理溶液を使用して、ネガ型画像形成性層の非露光領域を除去することにより画像化原版を現像することと、画像化及び現像(処理)原版印刷面全体にわたって保護層又はコーティングを提供することの両方が可能である。この態様では、水性アルカリ性溶液が、いくぶん印刷版上の平版印刷画像を汚染又は損傷(例えば、酸化、指紋、塵埃又は引っ掻き)から保護(又は「ガム化」)することができるガムのようにふるまう。このような処理溶液は、一般的に、適量の酸又は塩基を使用して調整される、2を超える及び最大で約11、典型的には約6〜約11、又は約6〜約10.5のpHを有する。水性処理溶液は、一般的に300℃未満の(及び典型的には少なくとも50℃の)沸点を有する有機アミン、膜形成親水性ポリマー、及び場合によりアニオン又は非イオン界面活性剤を含む。水性アルカリ性溶液のpHは、適量のケイ酸アルカリ(メタケイ酸塩を含む)、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等)、及び四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性成分を添加することによって調整することができる。水道水を使用して溶液を構成することができ、一般的に少なくとも45及び最大で98重量%の溶液が得られる。
【0121】
このような処理後、平版印刷版を、すすぎ、ガム化、又は後処理硬化若しくはUV処理等のいずれの後処理工程もなしに印刷機に載せることができる。
【0122】
有用な有機アミンは、それだけに限らないが、少なくとも0.1重量%及び一般的に最大で50重量%の総量で存在する、アルカノールアミン(シクロアルキルアミンを含む)、炭素環芳香族アミン及び複素環アミンを含む比較的揮発性の有機一級、二級及び三級アミンである。有用なアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びモノ−n−プロパノールアミン、又はこれらの化合物の組み合わせ等のモノ−、ジ−及びトリアルカノールアミンである。
【0123】
1種又は複数の膜形成水溶性又は親水性化合物は、処理溶液中に少なくとも0.25重量%及び最大で30重量%、典型的には少なくとも1重量%及び最大で15重量%の量で存在することができる。この種の有用な親水性化合物の例としては、非イオン界面活性剤でもアニオン界面活性剤でもない、親水性ポリマー並びに非ポリマー親水性化合物(1000未満の分子量)が挙げられる。有用な非ポリマー及びポリマー親水性化合物には、それだけに限らないが、アラビアガム、プルラン、セルロース誘導体(ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチル−セルロース、カルボキシエチルセルロース及びメチルセルロース等)、デンプン誘導体[(シクロ)デキストリン、デンプンエステル、デキストリン、カルボキシメチルデンプン及びアセチル化デンプン等]、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリヒドロキシ化合物[多糖、ソルビトール等の糖アルコール、ミソ−イノシト(miso−inosit)、(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリルアミドのホモ−及びコポリマー等]、ビニルメチルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマー、酢酸ビニル及び無水マレイン酸のコポリマー、スチレン及び無水マレイン酸のコポリマー、並びにカルボキシ、スルホ若しくはホスホ基を有する繰り返し単位を有するコポリマー、あるいはこれらの塩が含まれる。有用な親水性化合物には、アラビアガム、(シクロ)デキストリン、多糖、糖アルコール、又は(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位を有するホモ−若しくはコポリマーが含まれる。
【0124】
水性処理溶液は、場合により1種又は複数のアニオン、両性又は非イオン界面活性剤(又はいずれも)を少なくとも0.25重量%及び最大で50重量%、典型的には少なくとも0.25重量%及び最大で30重量%の量で含む。所望であれば任意の成分(非イオン界面活性剤等)が存在することができるが、これらには一般的に1種又は複数のアニオン界面活性剤が含まれる。有用なアニオン界面活性剤には、カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸基(又はこれらの塩)を有するものが含まれる。スルホン酸(又はその塩)基を有するアニオン界面活性剤が特に有用である。例えば、このようなアニオン界面活性剤には、脂肪酸の塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホノフェニルエーテルの塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム、モノアミドN−アルキルスルホコハク酸二ナトリウム、石油スルホン酸塩、硫酸化ヒマシ油、硫酸化獣脂油、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーの部分的けん化化合物、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーの部分的けん化化合物及びナフタレンスルホネートホルマリン縮合物が含まれ得る。アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩(ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム等)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、スルホン化アルキルジフェニルオキシド、及びメチレンジナフタレンスルホン酸が主要なアニオン界面活性剤として特に有用である。このような界面活性剤は、McCutcheon’s Emulsifiers & Detergents、2007版に記載されている種々の供給業者から得ることができる。
【0125】
本発明に使用される水性アルカリ性溶液の追加の任意の成分には、消泡剤、緩衝剤、殺生物剤、錯化剤、及び少量の水混和性有機溶媒(フェノールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの反応生成物、ベンジルアルコール、6個以下の炭素原子を有するエチレングリコール及びプロピレングリコールと酸のエステル等)、スラッジ抑制剤(フィルター染料及びフリーラジカル抑制剤等)、付臭剤、防食剤及び染料が含まれる。
【0126】
処理溶液(又は現像液)は、ラビング、噴霧、噴射、ディッピング、浸漬、スロットダイコーティング(例えば、Maruyamaらの米国特許第6478483号明細書の
図1及び
図2を参照)若しくはリバースロールコーティング(Kuruiらの米国特許第5887214号明細書の
図4に記載)により、又は外層を処理溶液で払拭する、又は外層をローラー、含浸パッド若しくは塗布器と接触させることによって画像化原版に塗布することができる。例えば、画像化原版に処理溶液をブラシがけすることができる、又は例えば、欧州特許第1788431A2号明細書(上記)の[0124]及び米国特許第6992688号明細書(Shimazuら)に記載されているスプレーノズルシステムを使用して非露光領域を除去するのに十分な力で噴霧することによって画像化面に処理溶液をかける若しくは塗布することができる。上記のように、画像化原版を処理溶液に浸漬し、手又は装置によって擦ることができる。裏側コーティングの除去を助けるために、処理中にブラシローラー又は他の機械的部品を裏側コーティングと接触させて配置することができる。あるいは、十分な力を用いて、スプレーバーを使用して処理溶液を噴霧することができる。
【0127】
処理溶液を塗布しながら、画像化原版を擦る又はブラシがけするための少なくとも1個のローラーを有する適当な装置中の処理装置(又はステーション)で、処理溶液を塗布することもできる。残留処理溶液を(例えば、スキージ又はニップローラーを使用して)除去する、又はすすぎ工程なしで得られた平版印刷版上に残しておくことができる。過剰の処理溶液は、タンクに回収し、数回使用することができ、必要に応じて貯蔵所から補充することができる。処理溶液補充液は、処理に使用されるのと同じ濃度のものであってもよいし、濃縮形態で供給して適当な時に水で希釈してもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、画像化平版印刷版原版を上記のように処理することができるが、印刷機に載せる前に、得られた平版印刷版を、水、水溶液若しくは他の適当な溶液によるすすぎ、ガム化、又は乾燥、あるいはこれらの手順の任意の組み合わせによって更に処理することができる。更に、このような画像化原版を、処理工程前に予熱することができる。
【0129】
オフプレス現像後、得られた平版印刷版をUV又は可視光放射へのブランケット又はフラッド様(floodwise)露光を用いて又は用いないで、後焼成(postbaked)することができる。あるいは、後焼成操作を行わないで、ブランケットUV又は可視光放射露光を行うことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、現像後すすぎ又はガム化がないが、平版印刷版をこれらの一般的な工程なしで印刷に使用することができる。
【0131】
画像化及び現像平版印刷版を適当な印刷機に載せることによって印刷を行うことができる。平版印刷版を、一般的には適当なクランプ又は他の保持装置を使用して印刷機に固定する。一旦平版印刷版を印刷機に固定したら、平版印刷インク及び湿し水を平版印刷版の印刷面に塗布することによって印刷を行う。湿し水は画像化及び処理工程によって明らかにされた親水性基板の表面によって吸収され、インクは画像形成性層の残りの領域によって吸収される。次いで、インクが適当な受容材料(布、紙、金属、ガラス又はプラスチック等)に転写されて、その上に所望の画像の刷りが得られる。所望であれば、中間「ブランケット」ローラーを使用してインクを平版印刷版から受容材料(例えば、用紙)に転写することができる。所望であれば、従来の洗浄手段を使用して、刷りの間に平版印刷版を洗浄することができる。
【0132】
本発明は、少なくとも以下の実施形態及びその組み合わせを提供するが、当業者がこの開示の教示から認識するような特徴の他の組み合わせは本発明内にあるとみなされる。
1.基板と、
基板上に配置されたネガ型画像形成性層であって、フリーラジカル重合性成分、画像化放射に露光するとフリーラジカルを生成することができる開始剤組成物、放射光吸収剤、及びポリマーバインダーを含むネガ型画像形成性層と、
ネガ型画像形成性層の直ぐ上に配置されている最外水溶性オーバーコート層であって、(1)存在する1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー、及び(2)総最外水溶性オーバーコート層重量基準で少なくとも1.3重量%及び最大で60重量%の量の、1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に分散した有機ワックス粒子を含む最外水溶性オーバーコート層と
を含むネガ型平版印刷版原版であって、
有機ワックス粒子が乾燥最外水溶性オーバーコート層の走査型電子顕微鏡写真から測定される、少なくとも0.05μm及び最大で0.7μmの平均最大寸法を有するネガ型平版印刷版原版。
2.有機ワックス粒子が少なくとも100℃及び最高で180℃の融点を有する、実施形態1の原版。
3.有機ワックス粒子がフッ化又は非フッ化炭化水素ワックス粒子である、実施形態1又は2の原版。
4.有機ワックス粒子がフッ化又は非フッ化ポリオレフィンを含む、実施形態1から3のいずれかの原版。
5.最外水溶性オーバーコート層が少なくとも0.1g/m
2〜0.9g/m
2の乾燥コーティング被覆度で存在する、実施形態1から4のいずれかの原版。
6.最外水溶性オーバーコート層の乾燥コーティング被覆度(g/m
2)と有機ワックス粒子の平均最大寸法(μm)の比が1.1を超える、実施形態1から5のいずれかの原版。
7.有機ワックス粒子が総最外水溶性オーバーコート層重量基準で少なくとも2重量%及び最大で50重量%の量で1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダー中に分散しており、且つ最外水溶性オーバーコート層の乾燥コーティング被覆度(g/m
2)と有機ワックス粒子の平均最大寸法(μm)の比が1.3:1を超える、実施形態1から6のいずれかの原版。
8.最外水溶性オーバーコート層中の有機ワックス粒子の乾燥被覆度が少なくとも0.001g/m
2及び最大で0.4g/m
2である、実施形態1から7のいずれかの原版。
9.最外水溶性オーバーコート層中の有機ワックス粒子の乾燥被覆度が少なくとも0.006g/m
2及び最大で0.03g/m
2である、実施形態1から8のいずれかの原版。
10.炭化水素ワックス粒子が少なくとも0.15μm及び最大で0.6μmの平均最大寸法を有する、実施形態1から9のいずれかの原版。
11.1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーが少なくとも70%のけん化度を有するポリ(ビニルアルコール)を含む、実施形態1から10のいずれかの原版。
12.1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーがカルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、ホスホン酸及びリン酸エステル基からなる群から選択される酸基で修飾された少なくとも1種の修飾ポリ(ビニルアルコール)を含む、実施形態1から11のいずれかの原版。
13.最外水溶性オーバーコート層が少なくとも0.15g/m
2及び最大で0.4g/m
2の乾燥コーティング被覆度で存在する、実施形態1から12のいずれかの原版。
14.放射光吸収剤が赤外線放射吸収剤であり、ネガ型画像形成性層が赤外線放射に感受性である、実施形態1から13のいずれかの原版。
15.画像化放射に露光するとフリーラジカルを生成することができる開始剤組成物がジアリールヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンを含み、ジアリールヨードニウムカチオンが以下の構造(I):
【0134】
(式中、R及びR’は独立に、ハロゲン、ニトロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、ジアルキルイミノ、アルキルアミド、アリールアミド、カルボニル、カルボキシ、スルホニル、チオアルキル又はチオアリール基を表す、又はR及びR’基の2つ以上が結合してそれぞれのフェニル基を有する縮合炭素環又は複素環を形成してもよく、n及びmは独立に、0又は1〜5の整数である)
により表され、
ホウ素含有アニオンが、以下の構造(II):
B
−(R
1)(R
2)(R
3)(R
4) (II)
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は独立に、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又は複素環基を表す、又はR
1、R
2、R
3及びR
4の2つ以上が結合してホウ素原子を有する複素環を形成してもよく、前記環は最大で7個の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する)
により表される、実施形態1から14のいずれかの原版。
16.ホウ素含有アニオンが同じ置換又は未置換フェニル基を表すR
1、R
2、R
3及びR
4を含み、mとnの和が1〜6である、実施形態15の原版。
17.最外水溶性オーバーコート層が、その少なくとも1種が酸修飾ポリ(ビニルアルコール)又は少なくとも70%のけん化度を有するポリ(ビニルアルコール)である、1種又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーと、ポリエチレンワックス粒子又はポリテトラフルオロエチレンワックス粒子とから本質的になる、実施形態1から16のいずれかの原版。
18.平版印刷版を調製する方法であって、
実施形態1から17のいずれかのネガ型平版印刷版原版を画像様に露光して、ネガ型画像形成性層中に露光領域及び非露光領域を有する画像化原版を形成する工程と、
画像化原版をオフプレス処理して、ネガ型画像形成性層中の非露光領域を除去して、平版印刷版を調製する工程と
を含む方法。
19.ネガ型平版印刷版原版が赤外線放射に感受性であり、画像様露光が少なくとも700nm及び最大で1400nmのλ
maxの画像化エネルギーを提供するレーザーを使用して行われる、実施形態18の方法。
20.いかなる後処理工程もなしで、処理後に平版印刷版を印刷機に載せる工程を更に含む、実施形態18から19の方法。
21.少なくとも3及び最大で12のpHを有し、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、親水性膜形成ポリマー、及び非イオン又はアニオン界面活性剤以外の中性電荷親水性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む処理溶液を使用して処理する工程を含む、実施形態18から20のいずれかの方法。
22.ネガ型画像形成性層の非露光領域の除去と処理した原版印刷面上への保護コーティングの提供の両方を行う処理溶液を使用して処理する工程を含み、
いかなる後処理工程もなしで、処理後に平版印刷版を印刷機に載せる工程を含む、実施形態18から21のいずれかの方法。
23.平版印刷版をすすぐ又はガム化する工程と、
平版印刷版を乾燥させる工程と、
場合により処理工程前に画像化原版を予熱する工程と
を更に含む実施形態18、19及び21のいずれかの方法。
【0135】
以下の実施例は、本発明の実施を示すために提供されるが、何ら限定するものとなることを意図されていない。実施例に使用した成分及び材料は以下の通りであった。
【0136】
Aerosil(登録商標)W630は、Evonikから入手可能な酸化アルミニウム粒子(140nmの平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0137】
Aerosil(登録商標)W1836は、Evonikから入手可能な二酸化ケイ素粒子(300nmの平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0139】
Byk(登録商標)307は、Byk Chemieから入手可能なポリエトキシ化ジメチルポリシロキサンである。
【0140】
CD9053は、Sartomerから入手可能な接着促進剤である。
【0141】
CS10 PS−720はMicrobeadsから入手可能なポリスチレン粒子(10μm平均最大寸法;平均粒径)の水性分散液である。
【0142】
Dowanol(登録商標)PMは、Dow Chemicalから入手可能なプロピレングリコールメチルエーテルである。
【0143】
Emulan(登録商標)TO40は、BASFから入手可能な非イオン界面活性剤である。
【0144】
Hybridur(登録商標)580は、Air Products and Chemicalsから入手可能なウレタン−アクリルハイブリッドポリマー分散液である。
【0145】
IB05は、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレートを表す。
【0146】
Klebosol(商標)50R50は、AZ Electronic Materialsから入手可能な二酸化ケイ素(50nm平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0147】
LUBA−print VP499/Aは、Munzing Liquid Technologies GmbHから入手可能なワックス粒子(ポリエチレンで構成されている;150nm平均最大寸法又は平均粒径)のPE分散液である。
【0148】
LUBA−print VP5500は、Munzing Liquid Technologies GmbHから入手可能なワックス粒子(ポリエチレンで構成されている;280nm平均最大寸法又は平均粒径)の分散液である。
【0149】
LUBA−print 138/Eは、Munzing Liquid Technologies GmbHから入手可能なワックス粒子(ポリテトラフルオロエチレンで構成されている;200nm平均最大寸法又は平均粒径)の分散液である。
【0150】
Lutensol(登録商標)TO10は、BASFから入手可能なエトキシ化C13アルコールである。
【0152】
Naxan(登録商標)ABLは、Nease Co.から入手可能なアニオン界面活性剤である。
【0153】
Nanobyk(登録商標)3810は、Byk Chemieから入手可能な酸化セリウム(10nm平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0154】
Nanobyk(登録商標)3840は、Byk Chemieから入手可能な酸化亜鉛(40nm平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0155】
Pig951は、9重量%の銅フタロシアニンと、39.9mol%のビニルアルコール繰り返し単位、1.2mol%のビニルアセタール繰り返し単位、15.4mol%のアセトアルデヒドからのアセタール基、36.1mol%のブチルアルデヒドからのアセタール基及び7.4mol%の4−ホルミル安息香酸からのアセタール基を含有する1重量%のポリ(ビニルアセタール)バインダーとを含有するプロピレングリコールモノメチルエーテル中の分散液である。
【0156】
ポリマーAは、20/40/20/20のモル比で提供されるメタクリル酸、アリルメタクリル酸エステル、ベンジルメタクリル酸エステル及びイソプロピルアクリルアミドのランダム重合により形成されるコポリマーであり、ポリマーAは87の酸価を有していた。
【0157】
PMMA粒子分散液Aは、標準的文献法にしたがってメタクリル酸メチルの重合によって得られるPMMA粒子(350nm平均最大寸法又は平均粒径)の水性分散液である。
【0158】
SD1000は、Kurarayから得たカルボン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)である。
【0159】
SDY−70は、Eastman Kodak Companyから得た架橋ポリスチレン粒子(6μm平均最大寸法又は平均粒径)を表す。
【0160】
IR染料Aは、1,3,3−トリメチル−2−(2−[3−[2−(1,3,3−トリメチル−1,3−ジヒドロ−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−2−[5−(4−ビニル−ベンジルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル]−シクロヘキサ−1−エニル]−ビニル)−3H−インドリウムクロリドである。
【0161】
Sorbidex(商標)200は、Cerestarから入手可能な糖液である。
【0162】
オリゴマーAは、Sigma Aldrichから入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0163】
発明実施例1:
本発明にしたがって、1.34gのHybridur(登録商標)580、0.44gのポリマーA、2.94gのオリゴマーA、0.12gのCD9053、1.68gのPig951、0.22gのIB05、0.06gのIR染料A及び0.12gのByk(登録商標)307を、2.03gのBLO、7.89gのMEK、7.20gのDowanol(登録商標)PM(2−メトキシプロパノール)及び0.25gの水の混合物に溶解又は分散させることによって、ネガ型画像形成性層配合物を調製した。各平版印刷版原版について、このネガ型画像形成性層配合物を、ポリ(ビニルリン酸)で後処理した電気化学的粒化及び陽極酸化アルミニウム基板に塗布して、約0.9g/m
2の画像形成性層の乾燥コーティング重量を得た。
【0164】
乾燥画像形成性層上に、1.90gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、0.26gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物を塗布することによって水溶性オーバーコート層を形成し、乾燥させて0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート被覆度を得た。
【0165】
発明実施例2:
本発明にしたがって、最外水溶性オーバーコート層(同じ配合)の乾燥被覆度を0.4g/m
2に増加させたことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0166】
発明実施例3:
1.80gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、0.52gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む水溶性オーバーコート層配合物を画像形成性層に塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、別のネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0167】
発明実施例4:
本発明にしたがって、1.60gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、1.05gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、別のネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0168】
発明実施例5:
本発明にしたがって、0.99gのSD1000、0.09gのLutensol(登録商標)TO10、2.70gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、別のネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0169】
比較実施例1:
本発明にしたがって、0.09gのLutensol(登録商標)TO10、5.32gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、別のネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0170】
比較実施例2:
本発明にしたがって、1.98gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、0.05gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0171】
発明実施例6:
本発明にしたがって、1.95gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、0.13gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0172】
比較実施例3:
2.01gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.2g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。したがって、最外水溶性オーバーコート層は、ワックス粒子を含有していな且つた。
【0173】
比較実施例4:
水溶性オーバーコートの乾燥被覆度を1g/m
2としたことを除いて、比較実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この最外水溶性オーバーコート層も、ワックス粒子を含有していな且つた。
【0174】
発明実施例7:
本発明にしたがって、乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を0.08g/m
2としたことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。
【0175】
ネガ型平版印刷版原版の各々について、以下の評価を行った。
【0176】
引っ掻き感受性の評価:
間紙による60回の摩擦及び300gの付加おもりで1分間プライノメーター(plynometer)を使用して、ネガ型平版印刷版原版の各々の試料を引っ掻き試験に供した。原版をKodak(登録商標)Trendsetter 800II Quantumプレートセッター(830nm)に置き、830nmのIRレーザーを使用して40mJ/cm
2で露光した。
【0177】
7.14gのフェノキシエタノール、1.71gのジエタノールアミン、7.14gのEmulan(登録商標)TO40、4.76gのSorbidex(商標)200、1gのNaxan(登録商標)ABL及び67.15gの水を含む現像溶液中での現像後、得られた画像化及び現像平版印刷版を、画像化領域中の引っ掻きについて目視検査した。目視検査を1(引っ掻きなし)〜3(多くの引っ掻き)で格付けした。
【0178】
原版感度の評価:
平版印刷版原版の各々の試料を、105mJ/cm
2でKodak(登録商標)Trendsetter 800II Quantumプレートセッター(830nm)を使用して銀ハーフトーン膜(UGRAグレースケール)下で画像化し、上記現像液中で現像すると、現像後に残っている画像形成性層のグレースケール工程の数が、平版印刷版原版の感度を表した。
【0179】
処理装置清浄度の評価:
平版印刷版原版の各々を、Eastman Kodak Company製のW860SPプロトタイプ処理装置における完全充填試験(サイクル試験)に供した。現像液体積は5lであり、サイクル体積は75m
2であった。処理装置を、ローラー及びタンク壁上の残留物について目視検査し、1(残留物なし)〜3(高い残留物)で格付けした。サイクルの最後で、進入ローラーの滑りやすさを評価し、1(輸送に問題なし)〜3(輸送に相当な問題あり)で格付けした。
【0180】
各発明及び比較実施例の詳細並びに得られた評価データを表Iで以下に提供する。
【0182】
これらの結果は、適当な炭化水素ワックス粒子を本発明による量で層に含めると、原版感度に負の効果を及ぼすことなく、最外水溶性オーバーコート層の被覆度が低い場合でさえ優れた引っ掻き感受性を達成することができることを示している。最外水溶性オーバーコート層の乾燥被覆度が高くてもいくらかの引っ掻き感受性を達成することができるが、被覆度が高いと、望ましくない劣った処理装置清浄度及び処理装置を通る輸送の問題が生じる。
【0183】
比較実施例5:
LUBA−print 499/A粒子をAerosil(登録商標)W630粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の無機粒子を含有していた。
【0184】
比較実施例6:
LUBA−print 499/A粒子をAerosil(登録商標)W1836粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の無機粒子を含有していた。
【0185】
比較実施例7:
LUBA−print 499/A粒子をKlebosol(商標)50R50粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の無機粒子を含有していた。
【0186】
比較実施例8:
LUBA−print 499/A粒子をNanobyk(登録商標)3810粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の無機粒子を含有していた。
【0187】
比較実施例9:
LUBA−print 499/A粒子をNanobyk(登録商標)3840粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の無機粒子を含有していた。
【0188】
比較実施例10:
LUBA−print 499/A粒子をPMMA粒子分散液Aに置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の有機粒子を含有していた。
【0189】
比較実施例11:
LUBA−print 499/A粒子をSDY−70粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の有機粒子を含有していた。
【0190】
比較実施例12:
LUBA−print 499/A粒子をCS10 PS−720粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の有機粒子を含有していた。
【0191】
発明実施例8:
本発明にしたがって、LUBA−print 499/A粒子をLUBA−print 138/E粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の有機粒子を含有していた。
【0192】
発明実施例9:
本発明にしたがって、LUBA−print 499/A粒子をLUBA−print VP5500粒子に置換したことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。したがって、この水溶性オーバーコート層は、最外水溶性オーバーコート層の総固形分基準で5重量%の有機粒子を含有していた。
【0193】
発明実施例10:
本発明にしたがって、1.95gのSD1000、0.08gのLutensol(登録商標)TO10、0.13gのLUBA−print VP499/Aワックス分散液及び50gの水を含む配合物からの水溶性オーバーコート層を塗布して0.6g/m
2の乾燥最外水溶性オーバーコート層被覆度を得たことを除いて、発明実施例1に記載されているのと同じ様式で、ネガ型平版印刷版原版を調製した。