【実施例】
【0076】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明を限定しない。
【0077】
セクションIは化学合成に関する。
【0078】
実施例1及び2は式(I)の化合物を製造するために使用される合成中間体の製造に関する。実施例3〜6は式(I)の化合物の製造に関する。
【0079】
セクションIIは式(I)の化合物の生物学的活性に関する。
【0080】
I/化学合成
[実施例1]:7β−アセチルコレステロール(化合物1.4)の製造
反応ダイアグラムを
図1に示す。
【0081】
1)化合物1.1の製造
【0082】
【化2】
【0083】
以下の試薬を使用した。
【0084】
【表2】
【0085】
コンデンサーを備えた1Lの3首フラスコにコレステリルベンゾエート、ジオキサン/水混合物、亜塩素酸ナトリウム及びN−ヒドロキシフタルイミドをその順番で入れる。この混合物を50℃で6時間加熱する。反応の進行をヘキサン/Et
2O 8/2を用いるシリカプレートTLC(TLCシリカゲル60 F254,Merck)によりモニターする。
【0086】
形成速度が許容される値に達したら、粗な反応混合物を10% 亜硫酸ナトリウム溶液(500ml)に注いだ後、エーテルで抽出する。得られた有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、次いで水、最後にブラインで洗浄する。次いで、この有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させる。
【0087】
次いで、得られた着色油状残渣をエタノールから再結晶化することにより精製する。得られた白色固体は十分な純度を有していないので、再びシリカゲルクロマトグラフィー(シリカSDS 60A,35〜70μm)により精製する。この油状物をジクロロメタン中に取ることにより固体沈着物が得られる。精製を98/2〜90/10の範囲のヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いて実施する。生成物が白色固体の形態で得られる。
【0088】
収率:23%
分析:
1H NMR(CDCl
3,BRUKER 400MHz)による分析。HPLCカラム順相CHIRALCEL O−DH(ODH0CE−CE026カラム),溶離液9/1ヘキサン/iPrOH,20分間,波長190nm。 保持時間 6.682分、HPLC 純度99.2%。
【0089】
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.71(s,3H,CH
3),0.89(dd,6H,2CH
3),0.94(d,3H,CH
3),1.02−2.78(m,26H),1.27(s,3H,CH
3),4.99(m,1H,CH),5.76(d,1H,CH),7.44−8.05(m,5H,CHAr)。
【0090】
2)化合物1.2の製造
【0091】
【化3】
【0092】
以下の試薬を使用した。
【0093】
【表3】
【0094】
ケトコレステリルベンゾエート、THF/MeOH溶媒混合物及び塩化セリウム水和物を500mlのフラスコに入れる。ホウ水素化ナトリウムをゆっくり添加する前に、氷浴を用いて粗な反応混合物を0℃に冷却する。ガスの発生が観察され、氷浴を1時間維持した後、周囲温度で18時間撹拌する。進行を80/20 ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLC(TLCシリカゲル 60 F254,Merck)によりモニターする。形成速度が十分でないならば、0.5当量のホウ水素化ナトリウムを添加する。
【0095】
粗な反応混合物に水(50ml)及びジクロロメタン(200ml)を添加する。分液漏斗に移した後、有機相を回収する。水性相を再びDCMで抽出する。有機相を合わせ、1N 塩酸溶液で洗浄した後、飽和NaCl溶液で洗浄する。
【0096】
次いで、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させて、僅かに着色した油状物が得られる。これは自然に結晶化する。
【0097】
残渣をDCM中に取ることにより固体沈着物を得る。この粗な生成物をシリカゲルカラム(シリカSDS 60A,35〜70μm)で9/1ヘキサン/EtOAc溶離液を用いて精製する。生成物が白色固体の形態で得られる。
【0098】
収率:89%
分析:
1H NMR(CDCl
3,BRUKER 400MHz)による分析。HPLCカラム順相CHIRALCEL O−DH(ODH0CE−CE026カラム),溶離液9/1ヘキサン/iPrOH,20分間,波長190nm。 保持時間 7.076分、HPLC 純度98.8%。
【0099】
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.63(s,3H,CH
3),0.79(dd,6H,2CH
3),0.85(d,3H,CH
3),0.89−2.43(m,27H),1.04(s,3H,CH
3),3.81(d,1H,CH),4.81(m,1H,CH),5.29(d,1H,CH),7.34−7.99(m,5H,CHAr)。
【0100】
3)化合物1.3の製造
【0101】
【化4】
【0102】
以下の試薬を使用した。
【0103】
【表4】
【0104】
7β−ヒドロキシコレステリルベンゾエート、ピリジン及び無水酢酸を順次100mlのフラスコ中に入れる。この混合物を周囲温度で16時間撹拌する。進行を9/1ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLC(TLCシリカゲル 60 F254,Merck)によりモニターする。
【0105】
粗な反応混合物を減圧下で蒸発させる。酢酸エチルとの共蒸発を2回実施する。得られた残渣を酢酸エチル中に取る。こうして得た有機相を1N塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で蒸発させる。
【0106】
得られた白色固体を追加精製することなく、直接次の段階において使用する。
【0107】
収率:100%
分析:
1H NMR(CDCl
3,BRUKER 400MHz)による分析。HPLCカラム順相CHIRALCEL O−DH(ODH0CE−CE026カラム),溶離液9/1ヘキサン/iPrOH,20分間,波長190nm。 保持時間 4.972分、HPLC 純度99.6%。
【0108】
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.63(s,3H,CH
3),0.79(dd,6H,2CH
3),0.84(d,3H,CH
3),0.91−2.41(m,26H),1.06(s,3H,CH
3),1.95(s,3H,CH
3 アセチル),4.78(m,1H,CH),4.99(d,1H,CH),5.21(s,1H,CH),7.33−7.98(m,5H,CHAr)。
【0109】
4)化合物1.4の製造
【0110】
【化5】
【0111】
以下の試薬を使用した。
【0112】
【表5】
【0113】
7β−アセチルコレステリルベンゾエート及びメタノール中1% 水酸化ナトリウム溶液を100mlのフラスコに入れる。完全に溶解するまでこの混合物を周囲温度で撹拌する。進行を7/3ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLC(TLCシリカゲル 60 F254,Merck)によりモニターする。
【0114】
反応を完了させるために、TLCによるモニタリングを20分毎に実施しながら粗な混合物を40℃に加熱してもよい。
【0115】
酢酸エチル(200ml)及び水(50ml)を添加した後、分液漏斗に移し、相を分離する。水性相を再び酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させて、油状残渣を得る。
【0116】
固体沈着物を生成するために、残渣を酢酸エチル中に取る。精製をシリカゲルカラム(シリカSDS 60A,35〜70μm)で9/1〜7/3の範囲のヘキサン/EtOAc溶離液を用いて実施する。予想される生成物が無色油状物として得られ、これは自然に結晶化して、白色固体が生ずる。形成された7β−ヒドロキシコレステロールを回収するために、カラムを100%酢酸エチルで洗浄する。
【0117】
収率:38%
分析:
1H NMR(CDCl
3,BRUKER 400MHz)による分析。HPLCカラム順相CHIRALCEL O−DH(ODH0CE−CE026カラム)、溶離液9/1ヘキサン/iPrOH,20分間,波長190nm。 保持時間 6.186分、HPLC 純度91.7%。
【0118】
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.62(s,3H,CH
3),0.78(dd,6H,2CH
3),0.85(d,3H,CH
3),0.86−2.28(m,27H),1.03(s,3H,CH
3),1.96(s,3H,CH
3 アセチル),3.47(m,1H,CH),4.94(td,1H,CH),5.13(t,1H,CH)。
【0119】
[実施例2]:7β−tert−ブチルオキシカルボニルコレステロール(化合物1.6)の製造
反応ダイアグラムを
図2に示す。
【0120】
化合物1.6を実施例1の化合物1.2から製造する。
【0121】
1)化合物1.5の製造
【0122】
【化6】
【0123】
以下の試薬を使用した。
【0124】
【表6】
【0125】
7β−ヒドロキシコレステリルベンゾエート、溶媒、2,6−ジメチルアミノピリジン及び無水tert−ブチルオキシカルボニルを順次100mlの一首フラスコ中に入れる。完全に溶解するまでこの混合物を周囲温度で撹拌する。進行を8/2ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLCによりモニターする。
【0126】
EtOAc(50ml)及び水(10ml)を添加する。こうして得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させて、油状残渣を得る。
【0127】
固体沈着物を生成するために、残渣をEtOAc中に取る。精製をシリカゲルカラムで95/5ヘキサン/EtOAc溶離液を用いて実施する。
【0128】
分析:
1H NMR(CDCl
3)による分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.59(s,3H,CH
3),0.77(dd,6H,2CH
3),0.84(d,3H,CH
3),0.86−1.98(m,24H),1.09(s,3H,CH
3),1.41(s,9H,3CH
3,t−Boc),2.42(m,2H,CH
2),4.80(m,1H,CH),4.91(d,1H,CH),5.18(s,1H,CH),7.34−7.97(m,5H,CHAr)。
【0129】
2)化合物1.6の製造
【0130】
【化7】
【0131】
以下の試薬を使用した。
【0132】
【表7】
【0133】
7β−t−ブチルオキシカルボニルコレステリルベンゾエート及びメタノール中1% 水酸化ナトリウム溶液を50mlの一首フラスコに入れる。完全に溶解するまでこの混合物を周囲温度で撹拌する。進行を7/3ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLCによりモニターする。反応を完了させるために、粗な混合物を40℃に加熱してもよい。
【0134】
EtOAc(100ml)及び水(20ml)を添加する。水性相を再びEtOAcで抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させて、油状残渣を得る。
【0135】
固体沈着物を生成するために、残渣をEtOAc中に取る。精製をシリカゲルカラムで9/1〜7/3の範囲のヘキサン/EtOAc溶離液を用いて実施する。形成された7β−ヒドロキシコレステロールを回収するために、カラムを100%EtOAcで洗浄する。
【0136】
分析:
1H NMR(CDCl
3)による分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.60(s,3H,CH
3),0.78(dd,6H,2CH
3),0.84(d,3H,CH
3),0.91−2.29(m,27H),0.97(s,3H,CH
3),1.41(s,9H,3CH
3,t−Boc),3.47(m,1H,CH
B),4.77(td,1H,CH
C),5.17(t,1H,CH
A)。
【0137】
[実施例3]:7−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル2−(2−(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)プロパノエート(分子1.a)の製造
簡易名:3−ベンジルオキシカルボニル−グリシニル−アラニル−7β−O−tert−ブチルオキシカルボニル−コレステロール
【0138】
【化8】
【0139】
分子1.aを中間体化合物1.6から製造する。
【0140】
以下の試薬を使用した。
【0141】
【表8】
【0142】
7β−t−ブチルオキシカルボニルコレステロール(80mg,0.16mmol)、ジペプチド(68mg,0.24mmol,1.5当量)、溶媒混合物(THF/DCE 1:1)(6ml)、DCC(50mg,0.24mmol,1.5当量)及びDMAP(30mg,0.24mmol,1.5当量)を10mlのウィトンボトルに入れる。粗な反応混合物を周囲温度で24時間撹拌する。進行を7/3ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いるTLCによりモニターする。
【0143】
粗な反応生成物に酢酸エチル(30ml)及び水(10ml)を添加する。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させる。固体沈着物を生成するために、得られた油性残渣を酢酸エチル中に取る。
【0144】
精製をシリカゲルカラムで7/3、次いで6/4ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いて実施する。
【0145】
分析:
1H NMR(CDCl
3)による分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.60(s,3H,CH
3),0.79(dd,6H,2CH
3),0.83(d,3H,CH
3),0.94−1.88(m,24H),0.98(s,3H,CH
3),1.19(s,3H,CH
3 Ala),1.40(s,9H,3CH
3,t−Boc),2.27(m,2H,CH
2),3.83(m,2H,CH
2),4.47(td,H,CH Ala),4.47(m,1H,CH),4.78(td,1H,CH),5.07(s,2H,CH
2 Gly),5.22(t,1H,CH),5.23(m,1H,NH),6.41(sl,1H,NH),7.29(m,5H,CHAr)。
【0146】
[実施例4]:7−アセトキシ−10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル2−(2−(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)−アセトアミド)プロパノエート(分子1.b)の製造
簡易名:3−ベンジルオキシカルボニル−グリシニル−アラニル−7β−O−アセチル−コレステロール
【0147】
【化9】
【0148】
分子1.bを中間体化合物1.4から製造する。
【0149】
以下の試薬を使用した。
【0150】
【表9】
【0151】
7β−アセチルコレステロール(60mg,0.13mmol)、ジペプチド(70mg,0.9mmol,1.5当量)、溶媒混合物(THF/DCE 1:1)(6ml)、DCC(42mg,0.19mmol,1.5当量)及びDMAP(25mg,0.19mmol,1.5当量)を10mlのウィトンボトルに入れる。粗な反応混合物を周囲温度で24時間撹拌する。
【0152】
進行を7/3ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いるTLCによりモニターする。
【0153】
粗な反応生成物に酢酸エチル(30ml)及び水(10ml)を添加する。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させる。固体沈着物を生成するために、得られた油性残渣を酢酸エチル中に取る。
【0154】
精製をシリカゲルカラムで7/3、次いで6/4ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いて実施する。
【0155】
分析:
1H NMR(CDCl
3)による分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.62(s,3H,CH
3),0.78(dd,6H,2CH
3),0.84(d,3H,CH
3),0.91−1.83(m,25H),1.01(s,3H,CH
3),1.17(s,3H,CH
3 Ala),1.94(s,3H,CH
3 アセチル),2.27(m,2H,CH
2),3.82(m,1H,CH),4.47(td,1H,CH Ala),4.56(m,1H,CH),4.95(td,1H,CH),5.06(s,2H,CH
2 Gly),5.17(sl,1H,CH),5.37(t,1H,CH),6.49(dl,1H,NH),7.24(m,5H,CHAr)。
【0156】
[実施例5]:7−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート(分子2.a)の製造
簡易名:3−(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシル−7β−O−tert−ブチルオキシカルボニル−コレステロール
1)ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート基の製造
【0157】
【化10】
【0158】
以下の試薬を使用した。
【0159】
【表10】
【0160】
アセタール、メタノール及び水酸化リチウムを順次50mlのフラスコに入れる。この混合物を周囲温度で16時間撹拌する。
【0161】
粗な反応混合物を減圧下で蒸発させる。得られた残渣を水(75ml)中に取る。次いで、この相を0℃で1N塩酸でpH1に酸性化した後、酢酸エチル(2×100ml)で抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させて、僅かに着色している油性残渣を得る。
【0162】
残渣を追加の精製することなく直接カップリングの段階において使用する。
【0163】
分析:DMSO中
1H NMR,BRUKER 400MHによる分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 1.32(d,3H,CH
3),1.42(s,3H,CH
3),4.14(AB,2H,CH
2),4.55(dd,1H,CH),10.30(sl,1H,OH),7.24(m,5H,CHAr)。
【0164】
収率:94%
【0165】
2)分子2.aの製造
【0166】
【化11】
【0167】
分子2.aを中間体化合物1.4から製造する。
【0168】
以下の試薬を使用した。
【0169】
【表11】
【0170】
7β−t−ブチルオキシカルボニルコレステロール(50mg,9.9mmol)、溶媒混合物(THF/DCE 1:1)(6ml)及び3−(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(16mg,11.9mmol,1.2当量)を10mlのウィトンボトルに入れる。
【0171】
粗な反応混合物を周囲温度で24時間撹拌する前に、DCC(24.5mg,11.9mmol,1.2当量)及びDMAP(14.5mg,11.9mmol,1.2当量)を添加する。進行を8/2ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いるTLCによりモニターする。反応を完了させるために50℃で2時間加熱する。
【0172】
粗な反応生成物に酢酸エチル(30ml)及び水(10ml)を添加する。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させる。固体沈着物を生成するために、得られた油性残渣を酢酸エチル中に取る。
【0173】
精製をシリカゲルカラムで95/5、次いで9/1ヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いて実施する。
【0174】
分析:
1H NMR(CDCl
3)による分析
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.60(s,3H,CH
3),0.79(dd,6H,2CH
3),0.83(d,3H,CH
3),0.74−1.97(m,25H),0.98(s,3H,CH
3),1.33(s,3H,CH
3 アセタール),1.40(s,9H,3CH
3,t−Boc),1.42(s,3H,CH
3 アセタール),2.29(m,2H,CH
2),4.08(AB,2H,CH
2 アセタール),4.48(ddd,H,CH アセタール),4.63(m,1H,CH),4.78(td,1H,CH),5.22(d,1H,CH)。
【0175】
[実施例6]:7−アセトキシ−10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート(分子2.b)の製造
簡易名:3−(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシル−7β−O−アセチル−コレステロール
【0176】
【化12】
【0177】
分子2.bを中間体化合物1.4から製造する。
【0178】
以下の試薬を使用した。
【0179】
【表12】
【0180】
コレステロール、溶媒混合物及び酸を100mlのフラスコに入れる。粗な反応生成物を周囲温度で24時間撹拌する前に、DCC及びDMAPを添加する。進行を8/2ヘキサン/EtOAc溶離液を用いるTLC(TLCシリカゲル 60 F254,Merck)によりモニターする。
粗な反応混合物に酢酸エチル(100ml)及び水(50ml)を添加する。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧下で蒸発させる。
【0181】
固体沈着物を生成するために、得られた油性残渣を酢酸エチル中に取る。シリカゲルカラム(シリカSDS 60A,35−70pm)で95/5、次いで9/1ヘキサン/EtOAc溶離液を用いる。
【0182】
収率:68%
分析:
1H及び
13C NMR(CDCl
3,BRUKER 400MHz)による分析。HPLCカラム順相CHIRALCEL O−DH(ODH0CE−CE026カラム),溶離液9/1ヘキサン/iPrOH,20分間,波長190nm。 保持時間 5.291分、HPLC 純度98.7%。
【0183】
1H NMR(CDCl
3,400.13MHz):δ 0.62(s,3H,CH
3),0.79(dd,6H,2CH
3),0.84(d,3H,CH
3),0.91−2.30(m,27H),1.01(s,3H,CH
3),1.33(s,3H,CH
3 アセタール),1.42(s,3H,CH
3 アセタール),1.93(s,3H,CH
3 アセチル),4.09(AB,2H,CH
2 アセタール),4.48(dd,1H,CH アセタール),4.62(m,1H,CH),4.96(td,1H,CH),5.18(d,1H,CH)。
【0184】
II/生物学的活性
A/プロトコル
以下のプロトコルをすべての実験に対して使用した。
【0185】
1)細胞培養
細胞培養(Sigma−Aldrich,ref.114754)のために処理したプラスチック製平底96ウェル培養プレート(NUNC,米国)を使用する。1ウェルあたり1500個の細胞を200μlの培地に接種する。処理後、1ウェルあたり100μlの純粋培地、100μlのエタノールまたはリポソームを含有している培地、または100μlの活性成分を含有している培地を添加する;従って、処理後の培地の最終容量は全てのウェルで300μlである。
【0186】
培養物をサンヨーインキュベータ(日本,モデルMCO−19AIC−UV)において37℃、5% CO
2及び飽和湿度の雰囲気中でインキュベートする。細胞を倒立顕微鏡(Nikon Eclipse TS100,日本)を用いて観察し、写真をカメラ(cマウント付きデジタルカメラ;LABOVER,フランス国)で撮る。培養フードは微生物学的安全フードMSC(thermo SCIENTIFIC,モデルHERA SAFE KS12,フランス国)である。
【0187】
細胞倍加時間を式:
倍加時間=(tb−ta)log(2)/(log(b)−log(a))
を用いて計算する。ここで、(a)及び(b)は時間ta及びtb(tb>ta)の細胞の数を表す(15)。
トリプシン(ウシ膵臓タイプ3,Sigma,フランス国)を用いて解離することにより転移を実施する。細胞解離を周囲温度で0.05%(w/v)トリプシンを含有している0.04%(w/v)タイロードKCl溶液を用いて30分間実施する。
【0188】
解離後、細胞に適した培地中に細胞を懸濁し、トーマ細胞を用いてカウントし、1ウェルあたり1500個の細胞となるように同一培地で希釈する。
【0189】
a)細胞株
以下の膠芽細胞腫細胞を使用した:
・C6株
C6型細胞株は、N−メチルニトロソウレアにより誘導したラット脳腫瘍からBendaら(16)により得た。抗GBMポテンシャルを評価するために「インビトロ」及び「インビボ」モデルとしてこの細胞型を使用する。これらの株は作製者Strasbourg Neurochemistry Centre(U44 INSERM及びUPR 416 CNRS)に由来している。
【0190】
培地は70%最少必須培地(MEM;(Fischer Scientifique,ref.61100)及び30%ハンクス溶液(SIGMA,ref.H9269)から構成する。培地に5%(v/v)の最終濃度のウシ胎児血清(FCS;Fischer Scientifique,ref.10108165)、5μg/mLのシプロフロキサシン塩酸塩の抗生物質溶液(EUROMEDEX,ref.UC5074)及び2.5μg/mLのフンギゾン溶液(INVITROGEN,ref.15290−026)を添加する。この細胞型の倍加時間は17時間である。
・ヒト起源のGBM株
ヒト膠芽細胞腫株(GBM,株U−87MG)及びその培地(イーグル最少必須培地、すなわちEMEM)はATCC(米国,ref.ATCC−HTB−14)から入手した。細胞の培養をATCCの推奨に従って開始し、維持する。通常抗GBMポテンシャルを試験するために「インビトロ」及び「インビボ」でこれらの株を使用する。これらの株の倍加時間は16時間である。
【0191】
ヒト細胞の以下の初代培養物も使用した:
・星状膠細胞
使用したヒト起源の星状膠細胞(ref.1800)、及び2%(v/v)FCS血清(ref.0010)、星状膠細胞増殖タンパク質(AGS,ref.1852)及びペニシリン/ストレプトマイシンの溶液(ref.0503)を含有している基本培地から構成したその培地はScienCell,米国から入手した。これらのヒト星状膠細胞の倍加時間は96時間である。
・肝細胞
ヒト起源の肝細胞(ref.50200)、及び10%(v/v)FCSを含有している培地(ref.5201)はScienCell,米国から入手した。これらの倍加時間は24時間である。
・腎細胞
ヒト起源の腎細胞(ref.4120)、及び10%(v/v)FCSを含有している培地(ref.4101)はScienCell,米国から入手した。倍加時間は96時間である。
・心細胞
ヒト起源の心細胞(ref.6300)、及び10%(v/v)FCSを含有している培地はScienCell,米国から入手した。倍加時間は72時間である。
・骨格筋細胞
ヒト起源の骨格筋細胞(ref.3500)、及び10%(v/v)FCSを含有している培地(ref.3501)はScienCell,米国から入手した。これらの細胞の倍加時間は72時間である。
【0192】
ヒト起源の癌細胞の以下の培養物も使用した。
・肝癌細胞
肝癌細胞(ref.ATCC−HB−8065)はATCCから入手した。培地はMEM(Gibco,米国;ref.51200)及び10%(v/v)FCSから構成されている。倍加時間は60時間である。
・前立腺癌細胞
前立腺癌細胞(ref.ATCC−HTB−81)はATCCから入手した。培地は肝癌株に対して使用したものと同一である。倍加時間は60時間である。
・乳癌細胞
乳癌細胞(ref.ATCC−HTB−19)はATCCから入手した。培地は肝癌株に対して使用したものと同一である。倍加時間は20時間である。
・結腸癌(株HT29/219)
結腸癌(Ref.ECACC−85061109)はECACCコレクションから入手した。培養条件はSigma−Aldrich情報リーフレット中の推奨に基づいている。
・神経芽細胞腫(株SH−SY5Y)
神経芽細胞腫(Ref.ATCC−CRL−2266)はATCCコレクションから入手した。培養条件はATCC情報リーフレット中の推奨に基づいている。
・慢性骨髄単球性白血病(CMML)
慢性骨髄単球性白血病(CMML)を患っている患者の血液サンプルから精製した細胞はClinical Haematology Centre及びBiotherapy Centre of the Saint Eloi Hospital(CHU de Montpellier)から入手した。フィード層に接種する技術により培養を実施した。細胞を、当該細胞に対して意図されている処理により影響されず、当該細胞の生理を大きく変化させないフィード層に対して接種する。CMML細胞をヒト胚脊髄を起源とする細胞株で培養した(17)。
【0193】
これら全ての培養物に関して、培養を供給業者の推奨に従って開始し、維持した。
【0194】
b)培養物の処理
活性成分は無水エタノール(AnalaR,NORMAPUR,VWR,フランス国)中に溶解させるかまたはリポソーム溶液、例えば990μlで希釈したストック溶液(10μl)の形態であり、その後30.0、15.0、7.5及び3.3μΜの濃度を与えるように培養ウェル(200μlの培地)に添加する(1ウェルBI−GBMあたりの培地の最終容量:300μl)。
【0195】
活性成分がエタノール溶液中にある場合、培地は3.3% エタノール(v/v)を含有している。
【0196】
2)リポソームの作成
a)基本的方法はWerthleら(10)に記載されている。
【0197】
簡単に説明すると、試験しようとする化合物、すなわち本発明の化合物(活性成分)または7β−OHCH−C3−エステル(3位をオレエート基でエステル化した7β−ヒドロキシステロールの誘導体,その合成はRakotoariveloら(18)に記載されており、対照として使用する)、大豆ホスファチジルコリン(Sigma)及びコレステリル−3−スルフェート(Sigma)をそのストック溶液から得る。前記ストック溶液は活性成分及び7β−OHCH−C3−エステルの場合にはジクロロエタンから、ホスファチジルコリンの場合にはクロロホルム:メタノール混合物(9:1,v/v)から、コレステリル−3−スルフェートの場合にはクロロホルムから調製した。モル比はホスファチジルコリン、コレステリル−3−スルフェート、及び7β−OHCH−C3−エステル及び活性成分それぞれについて1M/0.1M/0.25Mである。
【0198】
蒸発させた後、Ca
2+及びMg
2+を含まないPBS生理食塩液の溶液,pH7.2(BioRad)を乾燥化合物に添加する。90μlの培地に添加した20または10μlのリポソームが所望の最終濃度を与えるように緩衝液の容量及び生成物の質量を調節する。リポソームはリポソファスト(Sodexim,SA Muizon,フランス国)を用いて押し出し技術により形成する。溶液をポリカーボネート濾過膜(100nm)に41回通す。22μmミリポア膜を用いてリポソームを濾過することにより滅菌する。
【0199】
インビトロで他のヒト細胞型に対する分子の活性を試験するために、リポソームの製造を上記した2つの異なる方法で、すなわち一方では均質粒度分布に関して、他方では活性分子の濃度に関して最適化した。
【0200】
b)
同一の粒度分布及び経時的に安定な組成を有するリポソーム(「改良リポソーム」)を得る
溶媒を蒸発させた後、脂質フィルムを再びジクロロエタン:エタノール(3.3:1.5;v:v)中に溶解し、溶液を窒素流下で再び蒸発させる。激しく撹拌しながら、PBS(1ml)を添加し、脂質残渣が再び溶解するように残渣をこすり落とし、5分間激しく撹拌した後、20℃を超えない温度で1分に10パルスの超音波処理を加える(Elma,S 60H,Elmasonic)。得られた小胞を押し出し、溶液を濾過膜に2回通した以外は上記したように滅菌する。
【0201】
これらのリポソームは40〜80nmの粒度分布を有しており、0.086mg/mlの分子2.bを含有している。
【0202】
c)
より高濃度の分子2.bを有するリポソーム(「濃厚リポソーム」)を得る
脂質フィルムを作成するために、ホスファチジルコリンの濃度を2倍とする;他の化合物の濃度は改良リポソームについて上記した濃度と同一のままである。
【0203】
これらのリポソームを作成するための手順は、(1)超音波処理は1分に20パルスであり、(2)溶媒をロータリーエバポレータ(Buchi,モデルV 850及びR 215)を用いて減圧(約3kPa;30mbar)下で蒸発させる以外は改良リポソームについて上記した手順と同一である。
【0204】
これらのリポソームは40〜80nmの粒度分布を有しており、0.133mg/mlの分子2.bを含有している。
【0205】
抽出前に500μlのリポソームの溶液を10μlの2%(v:v)トリトンX−100(Sigma)と40℃で18時間インキュベートする以外は、脂質化合物を抽出した後、リポソームを構成する分子の特性評価、リポソームの安定性及び組成の評価をFolchら(19)の方法に従って実施する。
【0206】
ルーチンの技術に従ってメチル化した後、ホスファチジルコリンを構成する脂肪酸の分析を、ガスクロマトグラフを連結した質量分析(GC/MS)により実施する。
【0207】
ホスファチジルコリンのコリン基の特性評価をReineckate(20)の方法に従って実施する。
【0208】
分子2.bを上記(化合物の製造)したHPLCにより、または以下のポイント5)に記載するシリカ薄層クロマトグラフィーにより定量する。
【0209】
リポソームの粒度分布は蛍光リポソームに対して測定し、形態分析は落射蛍光顕微鏡(Axivert,Zeiss)を用いて像を得た後Sertプログラムにより実施する。
【0210】
使用するホスファチジルコリンが改良リポソームの場合には5.0%、濃厚リポソームの場合には2.5%の蛍光ホスファチジルコリン(NBD−PC−オレイル;Avanti;励起/発光=460nm/534nm)を含有している以外は、改良または濃厚リポソームについて記載したのと同一量のホスファチジルコリンを用いて蛍光リポソームを作成する。
【0211】
まずポリ−D−リシン(Sigma,水中1% w:v)で被覆した後、ラミニン(Sigma,水中0.6%)で被覆したガラス培養スライドにリポソームを沈降させる。画像を得る前に、リポソームをグルタルアルデヒド(Merck)(リポソーム:グルタルアルデヒド:PBS;15:37.5:97.5,v.v.v)で固定する。
【0212】
3)活性及び毒性の測定
同一方法を両ケースに対して使用する。活性の場合、試験化合物の抗GBMポテンシャルを使用し、毒性をインビトロで維持したヒト起源の正常細胞に対して試験する。
【0213】
以下の測定方法を使用する:
a)細胞計数
写真での細胞計数方法を使用する。
【0214】
例えば、96ウェルプレート中の培養物の場合、使用した顕微鏡の倍率(対物×10または×20,接眼×10)の関数として、撮った写真はウェルの直径の1/5に等しい直径を有する視野を表す。従って、ウェル中の細胞の総数は1写真あたりの細胞数の5倍に等しい。C6細胞の場合、この技術を標準技術(細胞層のトリプシン処理、細胞の遠心、細胞の生理的塩類液中への懸濁、及びトーマ細胞を用いる計数)と比較した。得られた結果は両方法で同一である。
【0215】
b)タンパク質アッセイ
培地を各ウェルから取り出し、50μl/ウェルのレムリ緩衝液(0.1mlのトリス,0.8mlのグリセロール,1.6mLの10% SDS,8mlのq.s.f超純水)を添加する。
【0216】
対照ウェルでは、10μlのウシ血清アルブミン範囲(結晶化BSA,Sigma)の溶液を添加する;範囲は0〜20μg/ウェルである。次いで、ウェルに40μlのレムリ緩衝液を補充する。最後に、200μlのBCA試薬(Pierce,米国;BCAタンパク質アッセイキット;ThemoScientific,フランス国)の溶液を添加する。
【0217】
培養プレートを37℃で30分間インキュベートする。各ウェルの光学密度をプレートリーダー(BioRad,米国,iMarkマイクロプレートリーダー12222)により570nmで測定し、定量化する。
【0218】
c)細胞生存性(MTT試験)
この試験により、細胞呼吸、特にミトコンドリア呼吸を検出することができる。テトラゾリウム塩MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド,Sigma−Aldrich,米国,ref.M5655)のストック溶液を10mgのMTT/ml−PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水,SIGMA,ref.D 1408)を用いて調製する。この溶液を各ウェル中の培地に直接添加する;MTTの最終濃度は25μg/mlである。次いで、プレートを37℃で少なくとも1時間インキュベートする。
【0219】
主にミトコンドリア電子伝達により生成される青色ホルマザン粒が現れたら、高密度ホルマザン粒を有する細胞を計数するために写真を撮った;U87−MG株の場合にこの技術を使用する。次いで、この株及び他の培養物の場合、培地を除去し、ホルマザン沈降物を溶解させるために100μlのジメチルスルホキシド(DMSO,SDS CARLO ERBA,イタリー国)を添加する。
【0220】
光学密度をプレートリーダー(BioRad,iMarkマイクロプレートリーダー)を用いて490nmで測定し、定量する。
【0221】
生存性は時にはトリパンブルー排除技術によっても試験される。
【0222】
4)細胞の免疫標識及び像の獲得
抗CD133(ポリ,Abnova)、抗GFAP(ポリ,Sigma)、抗NFL(モノ,Santa Cruz)及び抗線維芽細胞(ERTR7、Santa Cruz)一次抗体を、最初の3つの抗体の場合には1/100に、最後の抗体の場合には1/50に希釈する。
【0223】
IDH−R132H(低グレード神経膠腫のマーカー(21))及びCD31(内皮細胞のマーカー(22))を検出するために、使用した一次抗体はそれぞれClinisciences(マウス,1/20希釈)及びSpring Bioscience(家兔,1/250希釈)から入手した。
【0224】
一次抗体の認識に対応する二次抗体は、ペルオキシダーゼ(ヤギ,Sigma)にカップリングした抗家兔抗体、Dylight 488(ヤギ,Sigma)にカップリングした抗マウス、Dylight 488(ヤギ、Sigma)にカップリングした抗マウス、及びFITC(家兔,Sigma)にカップリングした抗ラットである。希釈はそれぞれ1/4000、1/1000、1/4000及び1/400である。
【0225】
ペルオキシターゼをカップリングした二次抗体を用いてIDH1−R132H及びCD31を検出する。これらはそれぞれFischer Scientific(抗マウス,1/1000希釈)及びSigma(抗家兔,1/500希釈)から入手する。
【0226】
細胞をPBS(Fisher Scientific)中0.1%トリトンX−100(Sigma)を用いて5分間透過処理する。非特異的部位をPBS中2%BSA(Sigma)でブロックする。抗CD133、抗GFAP、抗NFL及び抗線維芽細胞抗体に対してそれぞれ周囲温度で1時間、4℃で48時間、4℃で24時間及び周囲温度で1時間インキュベーションを実施する。二次抗体とのインキュベーションは周囲温度で1時間実施する。CD133ポジティブ細胞をDAB/H
2O
2システム(Sigma)により検出し、光学顕微鏡を用いて観察する。
【0227】
マーカーIDH1−R132H及びCD31の比色検出を、基質NOVAREDベクター(Eurobio)を用いて実施する。また、光学顕微鏡を用いて着色した細胞を検出する。蛍光を検出し、落射蛍光顕微鏡(Axiovert,Zeiss,ドイツ国)を用いて画像を得る。
【0228】
5)脂質の抽出及びオキシステロールの同定
細胞を0.9%NaClで洗浄し、機械的に収集し、トリス−HCl緩衝液(10mM;pH7.4)中に懸濁し、ポッター(1000r.p.m.及び13往復)を用いて均質化する。均質化は氷中で実施する。1容量の細胞懸濁液に対して19容量のクロロホルム:メタノール(2:1,v/v)を添加した後、抽出をFolchら(19)に従って4℃で実施する。0.2容量の0.74%KCl(w/v)を添加することにより有機相及び水性相を分離する。
【0229】
有機相をロータリーエバポレータ(Buchi,R−215,スイス国)を用いて蒸発させた後、脂質残渣をクロロホルム中に取る。TLC層をクロロホルム:メタノール(1:1,v/v)で予め洗浄し、100℃で1時間活性化する。脂質を石油エーテル(沸点:60〜70℃):エーテル:酢酸(80:20:1.3,v/v/v)で溶離させる。沈降した標準物質はコレステロール、7−ケト−コレステロール、7β−OHCH、7β−OHCH−C3−エステル及び分子2.bである。脂質及び標準物質をMaccala試薬で検出する。Rf値はコレステロール、7−ケト−コレステロール、7β−OHCH、7β−OHCH−C3−エステル及び分子2.bの場合それぞれ0.21、0.09、0.08、0.27及び0.23である。各標準物質について0.5〜2μgの較正範囲を別々に実施する。シリカの展開させた薄層をスキャンした後、当該スポットの強度を標準物質に対して計算する。
【0230】
使用した溶媒はAnalARまたはHPLCグレードを有している。
【0231】
6)LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ:EC 1.1.1.27)の活性及び阻害の分析
LDHの活性及びルーチンの阻害剤であるオキサメート(23)によるその阻害の測定を標準物質としてライヒマン乳酸桿菌(
Lactobacillus leichmannii)(LL)の精製LDH(Sigma)を用いて分光分析法(24)により確認した。
【0232】
次いで、LDH活性及びその阻害を「インゲルアッセイ」技術(25)により検出した。使用した活性のソースはヒトGBM株U87−MG(LDH GBM)から部分精製したLDH LL及びLDHであった。LDH LL及びLDH GBMサンプルの電気泳動ゲルに対して等電点電気泳動(IEF)を実施した後に、「インゲルアッセイ」検出を実施した。
【0233】
a)LDH GBMの部分精製
リン酸緩衝液(50mM,Ph7.2.Pi)中に収集した細胞を数回の凍結(−20℃)/融解サイクルにかけ、細胞材料を均質化する。4℃で10,000gを45分間遠心した後、上清を集め、10% グリセロール(v:v)を含有しているアリコートを−80℃で凍結する。所望のときに、融解後アリコートをPiで作成した濾過カラム(Biogel P−60,BioRad)を用いてクロマトグラフにかける。ゲル容量は9mlであり、カラムの内径は0.4cmである。溶離を大気圧下で実施する。1.4mlの第1分画を除去し、次の2ml中のLDH活性を集める。この分画(LDH GBM)のタンパク質成分をSDS PAGE技術後硝酸銀染色により、またはウェスタンブロットにより特性評価した。LDHの分子量を求める(サブユニットの場合31kDa、またはダイマー中のその会合物の場合62kDa)。
【0234】
b)IEF
冷チャンバでプレフォーカスした後、7.5(T%)及び2.6(C%)のミニゲルをアンフォライン(BioRad)と一緒にPiに注ぎ、7〜5の範囲のpH勾配を形成することができる。使用した容器はミニプロティアン3タイプ(BioRad)のものである。アノード緩衝液は2.0のpHを有しており、カソード緩衝液は10.0のpHを有している。変性させることなくLDH LL及びLDH GBMサンプルを沈着させ、電気泳動を冷チャンバにおいて電圧を100Vから300Vに増加させながら210分間実施する。
【0235】
c)LDH活性
LDH活性をラクテート/NAD/MTT/フェナジンメトスルフェート系(IEFゲル中でのホルマジンタイプの沈殿の形成)により検出する;この系は参考文献(25)に記載されている。
【0236】
オキサメート(18mM)またはエタノール形態の分子2.b(36mM)を添加すると、LDH LL及びLDH GBM活性の阻害の程度を測定することができる。
【0237】
B/インビトロでの抗GBM活性
B.1.動物モデル
C6細胞(ラット)の培養物を上述(セクションII,A)した操作条件下で使用した。
【0238】
[実施例7]:C6細胞(ラット)の培養物に対するインビトロでの抗GBM活性
得られた結果を下表1及び
図3に要約する。
【0239】
【表13】
【0240】
図3(倍率20×10)は、上述(セクションII,A)した操作条件下で分子1.a(実施例3)の存在下、または分子1.a、次いで分子2.a(実施例5)を用いて19日及び35日逐次処理した後のC6細胞の培養物の外観を示している。
【0241】
結果(表1)は、エタノール形態の分子1.aが19日処理後細胞毒性であることを示している。15μΜの1.aでは、14日処理後細胞数、タンパク質レベル及びMTTアッセイは30%低下し、少なくとも19日で97%の低下に達する。19日の処理で7.5及び3.3μΜのlaに対して用量依存性も観察され、15μΜでは対照培養物に比して20%のMTT/細胞比の増加が観察される。
【0242】
残留する細胞を除去するために、逐次処理を使用した。細胞をまず15μΜの分子1.aで処理し、処理の19日目に分子2.aを7.5μΜの濃度で添加する。
【0243】
生存細胞は観察されない;
図3に示すように、細胞「死体」のみが細胞培養物の固体基質(ウェルの底)に接着している。
【0244】
要約すると、分子1.a、次いで分子2.aを用いる逐次処理はこの細胞型に対して完全な有効性を示す。この知見は破壊前の細胞の全呼吸の増加を示している。
【0245】
B.2.ヒトモデル:ヒト細胞(株U−87GM)の培養物に対するインビトロでの抗GBM活性
B.2.1 インビトロモデル及び結果の表示の定義
a)各種細胞型の特性評価
U−87GM細胞を上記(セクションI,A)した操作条件下で培養した。
【0246】
培養物は2つの細胞成分、すなわち正常(非癌性)細胞として挙動する細胞及びGBM型細胞から構成される細胞凝集物から構成されている。
【0247】
図4は、培養物の特徴である光学像(10×10)を示す。細胞層(CL)が見られ得、この上に半球形状の細胞凝集物(CA)が固定されるようになる。
図5(20×10)は、免疫標識によりヒトGBM中に示されているCD133+細胞(幹細胞)が細胞凝集物中に存在し、CL中に存在していないことを示している。免疫蛍光標識は、CL及びCA(
図6及び7;20×10)中の正常星状膠細胞のマーカーであるGFAPの存在(
図6及び7;20×10)(26)、及びCL及びCA中のニューロフィラメントの存在を示している。しかしながら、増殖に対して高いポテンシャルを有する細胞である線維芽細胞の特異的標識がCAの場合にのみ見られる。非常に少数のIDH1−R132Hポジティブ細胞がCL及びCAにおいて観察される。逆に、CD31ポジティブ細胞がCL及びCA中に存在している。
【0248】
光学顕微鏡による観察は、CAの細胞は非常に迅速に分裂する(最大16時間の倍加時間)のに対して、CLを構成する細胞は96時間の倍加時間を有していることを明らかに示している。
【0249】
これらの所見は、開発されている細胞計数方法(フォルマザン粒で標識されているかまたは標識されていない細胞)を正当化する;実際、トリプシン処理後の計数はCL及びCAの細胞を区別することができない。像は、CAのみがGBM特性(短い倍加時間、幹細胞及び線維芽細胞の存在)を有していることも示している。従って、得られた結果はCAに対して試験した分子の効果の結果である。
【0250】
b)結果の表示
結果を以下のパラメーターに従って表示する:
(i)本発明の分子の有効性
−残留細胞、特に幹細胞の定量、
−本発明の分子の経時的有効性。
【0251】
本発明の分子を含有している培地を新鮮培地で置換し、「デノボ」細胞増殖を調べる:「デノボ」増殖がないことは幹細胞を含めたGBM細胞の全破壊を表す。
【0252】
(ii)分子のGBM細胞の全呼吸に対する効果
(iii)本発明の分子で得た結果と7β−OHCH−C3−エステル(対照)で得た
結果との比較
B.2.2 結果
U87−MG(ヒト)細胞の培養物を上述(セクションII,A)した操作条件下で使用した。7β−OHCH−C3−エステルを対照として使用した。
【0253】
[実施例8]:リポソーム形態の分子2.a(実施例5)のインビトロでの抗GBM活性の研究
得られた結果を下表2に示す。
【0254】
【表14】
【0255】
これらの結果は3回実施した3つの独立した実験の平均値である。結果を対照に対する%として表示する。
【0256】
所見は、15μΜのリポソーム形態の分子2.aが15日の処理後GBM細胞(CA)の存在をゼロに減らすことを示している。
【0257】
分裂の遅い細胞(CL)のみが残る。効果は用量依存的でない。エタノール形態の7β−OHCH−C3−エステルはGBM(CA)に対して作用せず(実施例9も参照されたい)、リポソーム形態の分子のみが80μMで作用する。その有効性はリポソーム形態の7β−OHCH−C3−エステルの用量を増加させても向上せず、低下することさえある。
【0258】
しかしながら、処理の13日目に7β−OHCH−C3−エステルを含有している培地を除去し、この薬物を含有していない新鮮な培地で置換すると、細胞増殖が観察され、平行してMTT試験では2日後に増加が観察される;この増加は40%である。これは分子2.aには当てはまらない:この分子の非存在下では細胞増殖は観察されない。
【0259】
表2は、殆どの細胞が消えたときに(8日の処理)MTT/細胞が大きく増加する(対照に比して140%)ことも示している。これはリポソームの7β−OHCH−C3−エステルには当てはまらない:80μMでも、MTT/細胞比は変わらない。
【0260】
この所見は2つの分子間の異なる作用を示している:細胞の大量死の前に全細胞呼吸が増加する。これは7β−OHCH−C3−エステルには当てはまらない。
【0261】
[実施例9]:エタノール形態の分子2.b(実施例6)のインビトロでの抗GBM活性の研究
得られた結果を下表3に示す。
【0262】
【表15】
【0263】
これらの結果は各々3回実施した3つの独立した実験の平均値である。結果を対照に対する%として表示する。30μMを超えると、7β−OHCH−C3−エステルはもはやエタノールに溶解し得ない。
【0264】
所見は、エタノール形態の分子2.bが30μMで完全に有効であることを示している:活性成分を除去した後でもGBM細胞が残っていない。リポソーム形態の分子2.aのように、細胞死の前に細胞呼吸が増加する。これはエタノール性7β−OHCH−C3−エステルには当てはまらず、抗腫瘍活性は観察されない。
【0265】
更に、22日目に培地を化合物2.bを含有していない新鮮培地で置換しても細胞増殖は生じない。
【0266】
[実施例10]:CD133+幹細胞のA/Bペルオキシダーゼ系での免疫標識
免疫標識を上記(セクションII,A)したように実施する。
【0267】
得られた結果を下表4に示す。
【0268】
【表16】
【0269】
これらの結果は各々3回実施した2つの独立した実験の平均値である。結果を対照に対するCD133
+細胞の%として表示する。これらの実験は実施例8及び9に記載されている実験と独立している。
【0270】
表2及び3に記載されている所見のように、リポソーム形態の7β−OHCH−C3−エステル及びエタノール形態の分子2.bはタンパク質のレベルを未処理の対照細胞に比して85%及び100%低下させる。
【0271】
結果は、幹細胞が分子2.bにより完全に破壊されることを示している。これは、リポソーム形態で投与しても7β−OHCH−C3−エステルには当てはまらない。
【0272】
図9(CD133
+細胞の免疫標識)は、細胞が22日の処理後に消失することを明らかに示している。これはリポソーム形態の7β−OHCH−C3−エステルには当てはまらない(
図10,CD133
+細胞の免疫標識);この場合、CD133
+細胞の50%が残留細胞中になお存在している。22日目に培地を化合物2.bを含有していない新鮮培地で置換してもCD133+幹細胞は出現しない。
【0273】
[実施例11]:ヒト起源のGBMにおけるインビトロでのエタノール形態の分子2.b(実施例6)の運命の研究
30μMのエタノール形態の分子2.bで処理したGBM由来の脂質の抽出及び分析は24時間または10日の処理後に7β−OHCH−C3−エステルの存在を示さない。後者の時間は細胞死が始まるときである。しかしながら、7β−OHCHに形質転換した分子2.bの0.12%及び0.18%がそれぞれ1日及び10日の処理後に観察される。対照実験はこうした非常に低レベルの7β−OHCHはGBMの死を誘導しないことを示している。
【0274】
[実施例12]:毒性の研究
毒性をインビトロでヒト起源の各種正常細胞に対して試験した。
【0275】
a)星状膠細胞に対して
使用した細胞は上記(セクションII,A)したヒト起源の細胞(ScienCell,米国,ref.1800)である。
【0276】
星状膠細胞型を正常星状膠細胞の標準マーカーであるGFAPの存在により確認する(
図11;倍率×200)。
【0277】
分子2.a(リポソーム形態)及び2.b(エタノール形態)は、30μMで30日の処理後正常な(非癌性)ヒト星状膠細胞の一次培養物に対して毒性でない。
【0278】
b)他の細胞に対して
使用した細胞は、上述(セクションII,A)したヒト起源の肝細胞(ScienCell,米国,ref.50200)、腎細胞(ScienCell,米国,ref.4120)、骨格筋細胞(ScienCell,米国,ref.3500)及び心細胞(ScienCell,米国,ref.6300)である。
【0279】
分子2.a(リポソーム形態)及び2.b(エタノール形態)は、30μMで少なくとも30日の処理後ヒト起源の肝細胞、腎細胞、骨格筋細胞及び心細胞の一次培養物に対して毒性でない。
【0280】
[実施例13]:他の癌に対するインビトロでの分子2.b(実施例6)の活性の研究
使用した癌細胞は、上述したヒト起源の肝癌(ref.ATCC−HB−8065)、前立腺癌(ref.ATCC−HTB−81)、乳癌(ref.ATCC−HTB−19)癌細胞及び結腸癌細胞(ECACC−HT29/219)由来である。
【0281】
30μMでエタノール形態の分子2.bはヒト起源の肝癌、前立腺癌または乳癌細胞の細胞分裂及び呼吸に対して効果を示さない。
【0282】
15μMで、改良リポソーム形態の分子2.bは結腸癌細胞に対して毒性でない。
【0283】
[実施例14]:慢性骨髄単球性白血病(CMML)に対するインビトロでの改良リポソーム形態の分子2.bの活性の研究
CMMLを患っている患者から白血球を集めた血液サンプルから単離する。フィード層(17)に接種することにより培養から24時間後、細胞を10μMの改良リポソーム形態の分子2.bで1回処理する。
【0284】
結果を
図12の写真(倍率20×10)に示す。
【0285】
対照は未封入リポソームで処理した細胞である:文字Aを付けた左上の写真は48時間の処理後に撮ったものであり、文字Bを付けた左下の写真は72時間の処理後に撮ったものである。
【0286】
2.bで処理した細胞の場合、文字Cを付けた右上の写真は48時間の処理後に撮ったものであり、文字Dを付けた右下の写真は72時間の処理後に撮ったものである。
【0287】
結果は、72時間の処理後の分子2.bの著しい効果を示している。細胞増殖は対照に比してかなり遅くなり、壊死性外観を有する多くの細胞が観察される。
【0288】
[実施例15]:ヒト神経芽細胞腫(ATCC−CRL−2266)に対するインビトロでの分子1.b及び2.bの活性の研究
培養を開始してから24時間後に、神経芽細胞腫を未封入リポソーム(対照)または分子1.bまたは2.bを含有しているリポソームで処理した。細胞を22μMの分子1.bまたは22μMの分子2.bで1回処理する。リポソーム形態を濃縮する。
【0289】
結果を
図13の写真(倍率10×10)に示す。
【0290】
対照細胞の場合、文字Aを付けた左上の写真は7日の処理後に撮ったものであり、文字Bを付けた左下の写真は28日の処理後に撮ったものである。
【0291】
濃厚リポソーム分子1.bで処理した細胞の場合、文字Cを付けた写真(中間、上)は7日の処理後に撮ったものであり、文字Dを付けた写真(中間、下)は28日の処理後に撮ったものである。濃厚リポソーム分子2.bで処理した細胞の場合、文字Eを付けた写真は7日の処理後に撮ったものである。
【0292】
結果は、分子1.bに比して分子2.bの著しい活性を示している。28日の処理後、分子lbは対照細胞に比して殆ど全ての細胞に対して毒性である。分子2.bの場合、ラジカル毒性作用が7日の処理後にすでに観察される;生存細胞は観察されない。
【0293】
[実施例16]:ヒトGBH(U87−MG株)から抽出したLDHの活性のインビトロでの分子2.bによる阻害の研究
これらの実験の目的は、シリーズ2分子のLDHの酵素活性の阻害のポテンシャルを立証することであった。研究は分子2.bを用いて実施し、その阻害ポテンシャルをライヒマン乳酸桿菌(
Lactobacillus leichmannii)(LL)由来のLDH及びセクション“A/プロトコル6)”に上記したヒトGBM株(U87−MG)由来の部分精製したLDHに対して試験した。
【0294】
LDHの活性を、セクション“A/プロトコル6)”に記載したIEF電気泳動ゲルを用いる「インゲルアッセイ」技術により検出する(25):この技術の精度は0.2単位のpHである。LDHの活性を、LDH活性が見られる部位であるホルマザンタイプの暗青色沈殿により検出される。
【0295】
図14(A)は、pHi 6.2でのLDH LL、pHi 6.4でのLDH GBMのLDH活性を示す。
【0296】
結果は、水性形態のオキサメート(18mM)またはエタノール形態の分子2.b(36mM)を添加するとLDH LLの酵素活性がほぼ完全に阻害され、LDH GBM(B)の酵素活性が部分的に阻害されることを示している。
【0297】
GBMの細胞死の前のMTT染色の増加と共にLDH GBMの酵素活性の分子2.bによる阻害の可能性により(表2及び3;
図8及び9)、式(I)の化合物の作用メカニズムの仮説が確認される:本発明の分子はLDHの活性を阻害し、その結果ミトコンドリア呼吸のバーストが引き起こされる。
【0298】
【表17】