(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-520638(P2015-520638A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】マイクロアクチュエーター
(51)【国際特許分類】
A61F 11/00 20060101AFI20150630BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20150630BHJP
【FI】
A61F11/00 310
H04R25/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-511724(P2015-511724)
(86)(22)【出願日】2013年5月9日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月9日
(86)【国際出願番号】US2013040454
(87)【国際公開番号】WO2013170105
(87)【国際公開日】20131114
(31)【優先権主張番号】13/468,983
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514184038
【氏名又は名称】オトキネティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OTOKINETICS INC.
(71)【出願人】
【識別番号】514184016
【氏名又は名称】コスコヴィチ、グレゴリー エヌ.
【氏名又は名称原語表記】KOSKOWICH, Gregory, N.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】コスコヴィチ、グレゴリー エヌ.
(57)【要約】
マイクロアクチュエーターは、電気シグナルを受信するように構成された近位端と耳骨の開創部へ挿入して対象者の蝸牛の側壁を通じてのアクセスができるように構成された遠位端とを備える。マイクロアクチュエーターは、メンブレンに配置された圧電振動子(対応するメンブレンの寸法よりも小さい寸法を有する圧電振動子)を具備する圧電振動子アセンブリと、上記圧電振動子アセンブリの第一サイドに関する第一末端とダイアフラムに関する第二末端とで封止された、流体で満たされた密閉流体キャビティと、上記圧電振動子アセンブリの第二サイドに関する第一末端とエンドキャップに関する第二末端とで封止された、真空又はガスを有する第二キャビティと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と、
遠位端と、
圧電振動子メンブレンアセンブリと、
流体キャビティと、
バックキャビティと、を備え、
前記近位端は、電気シグナルを受信するように構成され、
前記遠位端は、対象者の耳骨の開創部に挿入するように構成され、
前記圧電振動子メンブレンアセンブリは、メンブレンに配置された圧電振動子を備え、
前記圧電振動子は、前記メンブレンに対応する軸断面寸法よりも小さい軸断面寸法を有し、
前記流体キャビティは、流体を含み、前記圧電振動子メンブレンアセンブリの第一サイドに関する第一末端とダイアフラムに関する第二末端とで封止され、
前記バックキャビティは、前記圧電振動子メンブレンアセンブリの第二サイドに関する第一末端とエンドキャップに関する第二末端とで封止されている、マイクロアクチュエーター。
【請求項2】
前記バックキャビティは、ある程度排気されている、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項3】
前記キャビティは、完全に排気されている、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項4】
前記バックキャビティは、ガスを含む、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項5】
前記ガスは、空気を含む、請求項4に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項6】
前記ガスは、アルゴンを含む、請求項4に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項7】
前記ガスは、窒素を含む、請求項4に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項8】
前記圧電振動子メンブレンアセンブリは、円形軸断面を有する、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項9】
前記圧電振動子は、円形軸断面を有し、
前記寸法は、直径である、請求項8に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項10】
前記メンブレンは、円形であり、前記圧電振動子の直径よりも大きい直径を有する、請求項9に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項11】
前記流体は、水を含む、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項12】
前記流体は、生理食塩水を含む、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項13】
前記流体キャビティ及び前記バックキャビティは、軸断面において円形である、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項14】
前記圧電振動子は、約25umから約500umまでの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項15】
前記メンブレンは、約5umから約100umまでの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項16】
前記ダイアフラムは、約5umから約100umまでの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項17】
対象者の耳骨の開創部への永続的な挿入のために構成された埋込型スリーブを更に備え、
前記マイクロアクチュエーターは、前記スリーブにフィットして係止するように構成されている、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項18】
Oリングを更に備え、
前記Oリングは、前記マイクロアクチュエーター周りに配置され、前記対象者への取り付けの際には、前記マイクロアクチュエーター及び前記スリーブと接触するように構成されている、請求項17に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項19】
前記マイクロアクチュエーターの前記近位端に配置され、シーラントで満たされているシーラントキャビティと、
前記シーラントキャビティ中で前記マイクロアクチュエーターに結合しているリード線と、を更に備える、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項20】
前記シーラントは、シリコーンを含む、請求項19に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項21】
前記流体キャビティは、少なくとも一つの封止可能なポートを備える、請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項22】
電気シグナルを受信するように構成された近位端と、対象者の耳骨の開創部に挿入するように構成された遠位端とを備えるマイクロアクチュエーターを製造する方法であって、
第一直径を有する第一円形軸断面を有する近位端における第一円柱型部分と、前記第一直径よりも小さい第二直径を有する第二円形軸断面を有する遠位端における第二円柱型部分を有するマイクロアクチュエーターフランジを形成する工程と、
マイクロアクチュエーター遠位メンブレンを前記マイクロアクチュエーターフランジアセンブリの前記遠位端に取り付けて、封止されたフランジアセンブリを形成する工程と、
第一直径を有する第一円形断面を有する圧電振動子を、前記第一直径よりも大きい第二直径を有する第二円形断面を有するメンブレンに取り付けることによって圧電振動子メンブレンアセンブリを形成する工程と、
前記圧電振動子とマイクロアクチュエーターエンドキャップの第一電気接点との間にリード線を取り付ける工程と、
前記封止されたフランジアセンブリ、前記圧電振動子メンブレンアセンブリ及び前記マイクロアクチュエーターエンドキャップを、流体キャビティ及びバックキャビティを備える部分的なマイクロアクチュエーターアセンブリに組み立てる工程と、
前記部分的なマイクロアクチュエーターアセンブリに、シーラントキャビティを規定するフィードスルーフランジを取り付ける工程と、
前記流体キャビティに流体を充填する工程と、
前記流体キャビティを封止する工程と、
前記シーラントキャビティにおいて前記マイクロアクチュエーターにリード線を取り付ける工程と、
前記シーラントキャビティにシーラントを充填して、それを硬化させる工程と、を有する方法。
【請求項23】
前記マイクロアクチュエーターフランジ周りにOリングを設置する工程を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記キャビティを排気する工程を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記バックキャビティにガスを充填する工程を更に含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、概して、マイクロアクチュエーター(時には、振動子と称されるもの)に関する。特に、完全埋込型補聴器システムに用いるためのマイクロアクチュエーターに関する。
【0002】
様々なタイプの半埋込型および完全埋込型補聴器が、長年にわたって開発または提案されてきた。移植蝸牛刺激装置では、ヒト対象者が知覚可能なシグナルを伝えるためにヒト蝸牛の電気刺激を直接利用する。中耳移植では、ヒト対象者が知覚可能なシグナルを伝えるために小骨又は中耳骨の機械的刺激を利用する。気導式補聴器は、スピーカー素子を使用して、耳の空気において知覚可能な音圧シグナルを発生させる。いくつかの埋込型補聴器は、圧電スタック又はプレ-ストレス型(pre-stressed)圧電素子を使用して充分な変位量を有する圧電振動子を形成し、ヒト対象者が知覚可能なシグナルを伝達している。例えば、米国特許第5,772,575号("Implantable Hearing Aid")及び第6,561,231号、("Method for filling acoustic Implantable Transducers")並びに米国特許公開公報US2002/0062875A1、("Method for filling acoustic implantable transducers")及びUS2003/0055311A1("Biocompatible Transducers")を参照。必要とされているものは、改良された完全埋込型補聴器マイクロアクチュエーターである。
【0003】
概要
マイクロアクチュエーターは、電気シグナルを受信するように構成された近位端と耳骨の開創部へ挿入して対象者の蝸牛の側壁を通じてのアクセスができるように構成された遠位端とを備える。マイクロアクチュエーターは、メンブレンに配置された圧電振動子(対応するメンブレンの寸法よりも小さい寸法を有する圧電振動子)を具備する圧電振動子アセンブリと、上記圧電振動子アセンブリの第一サイドに関する第一末端とダイアフラムに関する第二末端とで封止された、流体で満たされた密閉流体キャビティと、上記圧電振動子アセンブリの第二サイドに関する第一末端とエンドキャップに関する第二末端とで封止された、真空又はガスを有する第二キャビティと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面は、この明細書に組み込まれて明細書の一部を構成するものであり、実施形態にかかる1又は複数の例を示して、実施形態例の記述と共に実施形態の原理及び実装の説明を補助している。
【0005】
【
図1】
図1は、一実施形態による、埋込型スリーブ中にある完全埋込型補聴器マイクロアクチュエーターの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のライン2-2に沿った、
図1の埋込型スリーブ中にある完全埋込型補聴器マイクロアクチュエーターの断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの分解正面斜視図である。
【
図4】
図4は、別の視点からの
図3のマイクロアクチュエーターの他の分解図である。
【
図5】
図5は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの正面図である。
【
図6】
図6は、
図5のライン6-6に沿った、マイクロアクチュエーターの断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態による、マイクロアクチュエータースリーブの平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のライン8-8に沿った、マイクロアクチュエータースリーブの断面図である。
【
図9】
図9は、
図7のライン9-9に沿った、マイクロアクチュエータースリーブの断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの平面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの側面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態による、マイクロアクチュエータースリーブの平面図である。
【
図13】
図13は、一実施形態による、マイクロアクチュエータースリーブの側面図である。
【
図14】
図14は、一実施形態による、埋込型スリーブに位置するマイクロアクチュエーターの平面図である。
【
図15】
図15は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの透視図である。
【
図16】
図16は、一実施形態による、マイクロアクチュエーターの組み立てのためのステップを示す製造に関する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
実施形態例の記述
実施形態例は、本願明細書において、完全埋込型補聴器と共に使用するマイクロアクチュエーターについて記載されている。当業者であれば、以下の記述は単なる解説であり、如何なる限定をも意図するものではないことを理解しているだろう。この開示から利益を得るかかる当業者であれば、他の実施形態が容易に示唆されるだろう。参照符号は、添付の図面にて示しているように、実施形態例の実装のために詳細に作成されている。図面全体及び以下の記述にわたって可能な限り同じ参照符号指示を使用して、同一又は類似の項目を示している。
【0007】
明確化のために、本願明細書に記載した実装における全ての定型的な特徴を開示または記述してはいない。任意のかかる実際の実装を行う際に、開発業者の特定の目標(例えば、用途及びビジネスに関連する制約の順守)を達成するために、実装に特徴的な決定を数多く行わなければならず、これら特定の目標は、ある実装と別の実装とでは異なるものであり、そして、ある開発業者と別の開発業者とでは異なることは当然理解されるだろう。さらに、かかる開発努力は、複雑で時間がかかるものであるが、それにもかかわらず、この開示から利益を得る当業者にとっては、日常的な技術的作業であることはいうまでもない。
【0008】
図を参照する。
図1は、埋込型スリーブ12中に位置している、一実施形態による、近位端10a及び遠位端10bを備える完全埋込型マイクロアクチュエーター10の正面図である。埋込型スリーブは、多くの方法で形成することができ、マイクロアクチュエーター10を受け入れるように対象者の頭に挿入することができる。
【0009】
図2は、マイクロアクチュエーター10の断面図及びそのライン2-2に沿った
図1のスリーブ12である。スリーブ12は、対象者の蝸牛内の耳骨に開けられたホールに挿入される狭端部(または、遠位端部)14を備え、適切な技術(例えば、接着剤、機械的な締め付け、締まりばめ等)によってその適切な場所で保持されるように構成されている。マイクロアクチュエーター10は、マイクロアクチュエーター10から延在する1又は複数のピン16を具備した付勢差し込み型ロック構造を備えた一実施形態のスリーブ12に係止され、スリーブ12の1又は複数の対応する収容スロット18に係合する。部分的に圧縮されたOリング20(一実施形態においてシリコーンで製造されたもの)は、マイクロアクチュエーター10とスリーブ12との間で外向きの付勢を提供して、係合したピン-スロット差し込み型ロック構造の状態を保持して液密封止するように構成されている。従って、スリーブ12を最初に取り付けてマイクロアクチュエーター差込口を提供し、次に、マイクロアクチュエーター10を上記差込口に取り付けてもよく、修復、維持管理および/またはアップグレードのために必要な時に適宜取り換えを行なってもよい。スリーブ12の狭端部14における、スリーブ12とマイクロアクチュエーター10との間の第一隙間22は、実施形態において、約0.05mmであってもよい。圧縮されたOリング20の領域におけるマイクロアクチュエーター10とスリーブ12との間の第二隙間24は、実施形態において、約0.24mm(0.051mmのノミナル断面直径及び1.21mmのノミナル内径を有するOリングでの場合)であってもよい。
【0010】
マイクロアクチュエーター10は、第一電気接点30に連結するホットリード線(hot lead)28と、マイクロアクチュエーター10のケース34に連結してそこを通じて第二電気接点36に連結するアース線32と、を具備する圧電振動子メンブレンアセンブリ26を備える。第一電気接点30は、マイクロアクチュエーター10のケース34から絶縁されている。圧電振動子メンブレンアセンブリ26は、第一直径を有する円柱状(円形軸方向断面)圧電振動子26a(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)結晶又は結晶(または、他の適切な圧電物質又は材料)のスタック)と、圧電振動子26aが固定され、より大きい第二直径を有する円形軸方向断面の薄チタンメンブレン26bと、を備える。圧電振動子の寸法を、それを固定しているメンブレンよりも小さくすることによって、圧電振動子26aがケース34から若干離れて、メンブレン26bの柔軟性により応答性が向上する。
【0011】
図3は、一実施形態による、マイクロアクチュエーター10の分解正面斜視図である。底部から上部までのマイクロアクチュエーター10の主要部品は、フィードスルーフランジ38と、マイクロアクチュエーターエンドキャップ40と、(圧電振動子26a及びメンブレン26bを具備する)圧電振動子メンブレンアセンブリ26と、ピン16及び(ピン16におけるポートを塞ぐための)プラグ44を具備するマイクロアクチュエーターフランジ42と、(一実施形態において、薄い(厚さ19um+/-1um)チタンで形成された)マイクロアクチュエーター遠位ダイアフラム46(厚さ約5umから100umの範囲が適切である)と、Oリング20である。マイクロアクチュエーターエンドキャップ40は、圧電振動子メンブレンアセンブリ26と共に気密密閉されたバックキャビティ(back cavity)60を形成し、圧電振動子26aを電気的に隔離することによって対象者の組織と接触しないようにしているセラミック性フィードスルーであってもよい。バックキャビティ60は、ある程度又は完全に排気されていてもよく、ガス(例えば空気、窒素、アルゴン等又はその組み合わせ)を含ませていてもよい。マイクロアクチュエーターフランジ42は、一実施形態において、例えば、金属ディスク部42cと結合している第一近位円柱型部分42aと第二円柱型部分42bとを備えている。第二遠位円柱型部分42bは、第一近位円柱型部分42aよりも直径が小さく、対象者の蝸牛の側壁を通じて到達するように耳骨の開創部を通じて配置されたスリーブ12に取り付けることができる。この構成によって、マイクロアクチュエーターは、対応する円柱型部分の径が異なるスリーブへの挿入が所定の挿入量で停止することができる。第一近位円柱型部分42aは、以下で詳しく述べるように、マイクロアクチュエーターフランジ42内部に形成された流体キャビティ54内に液体を配置させて、その後、プラグ44で封止することができる、ピン16を通る一対のポート42dを備える。
【0012】
バックキャビティ60と流体キャビティ54との間に圧電振動子メンブレンアセンブリ26を設置することによって、圧電振動子26aが、流体キャビティ54に含まれる比較的非圧縮性の流体本体54aを直接励振することができ、これによって遠位ダイアフラム46、蝸牛の内壁と接触している外壁を次々と励振し、この結果、音の感覚が対象者に伝えられる。バックキャビティ60中に(圧電振動子メンブレンアセンブリ26に対して流体キャビティ54とは反対の側に)ガスを配置する又は減圧下にすることによって、圧電振動子メンブレンアセンブリ26の振動動作に対する抵抗性が低下して、性能が向上し、電力消費が低下する。
【0013】
図4は、別の視点からのマイクロアクチュエーター10の他の分解図である。
【0014】
図5は、マイクロアクチュエーター10の正面図である。
図6は、
図5のライン6-6に沿った、その断面図である。
【0015】
図7は、スリーブ12の平面図である。
図8は、
図7のライン8-8に沿った断面図である。
図9は、
図7のライン9-9に沿った断面図である。
【0016】
図10は、一実施形態によるマイクロアクチュエーター10の平面図である。
【0017】
図11は、一実施形態によるマイクロアクチュエーター10の側面図である。
【0018】
図12は、一実施形態によるスリーブ12の平面図である。
【0019】
図13は、一実施形態によるスリーブ12の側面図である。
【0020】
図14は、一実施形態によるスリーブ12に位置するマイクロアクチュエーター10の平面図である。
【0021】
図15は、一実施形態によるマイクロアクチュエーター10の透視図である。
【0022】
(初期状態では上部が開放している)シーラントキャビティ48は、フィードスルーフランジ38の内側における周面で規定されるものであり、一実施形態において、シリコーンシーラント素材が充填されている(但し、当業者であればその他の適切なシーラント素材を代わりに用いることができると理解しているだろう)。このシーラント素材は、第一および第二電気接点(30、36)を保護し、マイクロアクチュエーター10と他の補聴器構成部品(不図示)とを接続するマイクロアクチュエーターリード線50における張力を緩和し、マイクロアクチュエーター10の近位端52からの水の浸透を封止している。
【0023】
上記のように流体本体54aを含むように構成された流体キャビティ54は、マイクロアクチュエーター10の狭窄部分56の内壁における周面、マイクロアクチュエーター10の遠位端58に設置したマイクロアクチュエーター遠位ダイアフラム46における遠位端、及び、圧電振動子メンブレンアセンブリ26における近位端で規定される。流体キャビティ54は、後述するように、対象者の内耳へ音響を伝える際のマイクロアクチュエーターの性能を向上させるために流体で満たされている。
【0024】
一実施形態において、圧電振動子26aは、縦軸方向に沿って、約25umから約500umまでの範囲の厚さ(一例として、100umを使用)を有し、メンブレン26bは、約5umから約100umまでの範囲の厚さ(一例として、25umを使用)を有し、ダイアフラム46は、約5umから約100umまでの範囲の厚さ(一例として、19um+/-1umを使用)を有する。一実施形態として、圧電振動子26aは、メンブレン26bにはんだ付けされる。
【0025】
図16は、マイクロアクチュエーター10を作成する方法を示す製造に関する流れ図である。第一ステップ(62)において、適切な生体適合材料(例えばチタン)から上記の通りのマイクロアクチュエーターフランジ42を形成する。
【0026】
第二ステップ(64)において、ダイアフラム46の外側エッジに沿って、マイクロアクチュエーターフランジ42の遠位(狭)端部にマイクロアクチュエーター遠位ダイアフラム46をレーザー溶接する。
【0027】
第三ステップ(66)において、ホットリード線28(金(例えば金ワイヤボンド)を含んでいてもよい)の一端を圧電振動子メンブレンアセンブリ26に、そしてホットリード線28の他端を圧電振動子メンブレンアセンブリ26に最も近いマイクロアクチュエーターエンドキャップ40の第一電気接点30に取り付ける(レーザー溶接点によって成し遂げられる)。
【0028】
第四ステップ(68)において、封止されたフランジアセンブリ(42、46)、圧電振動子メンブレンアセンブリ26及びマイクロアクチュエーターエンドキャップ40を組み立てて、部分的なマイクロアクチュエーターアセンブリ(42、46、26、40)を形成する。このステップは、レーザービーム溶接操作中、固定具において、圧電振動子メンブレンアセンブリ26を、(一端を)マイクロアクチュエーターのエンドキャップ40で、(他端を)封止されたフランジアセンブリ(42、46)ではさみ、それらを共に保持することによって実施してもよい。このレーザー溶接は、固定具を回転させながら、マイクロアクチュエーターエンドキャップ40、圧電振動子メンブレンアセンブリ26及び封止されたフランジアセンブリ(42、46)の交わり部分に沿って溶接することによって実施してもよい。これによって、上記の通りに塞がれて、圧電振動子メンブレンアセンブリ26とマイクロアクチュエーターエンドキャップ40との間に位置する、気密密閉されたキャビティであるバックキャビティが完成する。これによって、流体キャビティ54も作成される。バックキャビティは、排気された環境又は選択したガス若しくは複数種のガスで満たされた環境において上記操作を行なうことによって、この時点で、排気されていたり、ある程度排気されていたり、選択したガス又は複数種のガスで満たされていてもよい。
【0029】
第五ステップ(70)において、部分的なマイクロアクチュエーターアセンブリ(42、46、26、40)及びフィードスルーフランジ38を固定具に搭載して、これらの2つの構成部品を結合する周囲溶接を実行する。フィードスルーフランジ38は、マイクロアクチュエーターリード線50の張力を緩和させ、シーラントキャビティ48を規定し、マイクロアクチュエーターリード線50とマイクロアクチュエーターエンドキャップ40との間で接続を電気的に絶縁するために用いるシリコーンシーラントの保持器を提供する。
【0030】
第六ステップ(72)において、減圧工程又は他の適切な方法を使用して流体キャビティ54を流体(一実施形態において、滅菌水又は滅菌生理食塩水溶液であってもよい)で満たす。減圧工程によれば、マイクロアクチュエーターアセンブリ10を、生理食塩水又は他の適切な流体を含む容器に浸漬する。そして、2つのポート42dのうちの1つを上方配向(上部ポート)にし、2つのポート42dのうちのもう1つを下方配向(底部ポート)にして、上記容器を減圧チャンバー内部に設置する。減圧チャンバーを真空引きすると、マイクロアクチュエーター流体キャビティ内部の空気が上部ポートから排出され、流体は底部ポートから流体キャビティに流入する。
【0031】
第七ステップ(74)において、以下の通りに流体キャビティを封止する。プラグ44をポート42dに挿入してレーザー溶接によってそれらを密閉する。溶接由来の熱によって流体キャビティ54の流体を相当加熱してしまう前に、レーザービーム溶接によって封止状態を形成する。単一ポート42d及び対応するプラグ44を用いているが、この開示から利益を得る当業者であれば、2以上のポート42d及び対応するプラグ44であってもよいことは明らかであろう。
【0032】
第八ステップ(76)において、マイクロアクチュエーターリード線50を、マイクロアクチュエーターの外側で第一及び第二電気接点(30、36)に取り付ける。これは、レーザー溶接によって実行してもよい。
【0033】
第九ステップ(78)において、シーラントキャビティ48にシリコーンシーラント材料を充填してそれを硬化させる。
【0034】
第十ステップ(80)において、マイクロアクチュエーターフランジ42の狭窄部分56上にシリコーンOリング20を設置する。これによって、そこは(図に示すように)、マイクロアクチュエーターフランジ42の外径が小さい直径から大きい直径に変化する位置となる。Oリング20は、対象者の蝸牛内の適所で保持されるスリーブ12とマイクロアクチュエーター10との間を湿密封止するように構成されている。このステップは、取付け前であればいつでも実行することができる。
【0035】
上記ステップ1-10は、1つの順序で記載しているが、この開示から利益を得る当業者であれば、ステップをサブステップに細分化して、ステップまたはサブステップを製品環境に都合の良い任意の順序で実行することができると認識するだろう。
【0036】
上述の通り、対象者の身体に対する全ての接触面は、シーラントキャビティに使用可能な医療用グレードのシリコーン及びマイクロアクチュエーターリード線50の絶縁に使用可能な生体適合材料であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を除いて、医療用グレードのチタンであってもよい。
【0037】
実施形態及び用途を示しながら記載しているが、前述したものよりも多くの修正が、本願明細書で開示している本発明の概念を逸脱しない範囲で可能であることは、この開示により利益を有する当業者にとっては明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神以外では制限されるものではない。
【国際調査報告】