(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
管材及び管材の成形法を開示する。管材は、ポリマー材料から成形された中空体を含み、前記中空体は内表面と外表面とをもち、前記内表面は内側を画定する。管材はさらに、前記中空体を取り囲み、且つこれに接着されていないバリヤー層を含み、前記バリヤー層は内表面と外表面とをもつ。前記バリヤー層は連続繊維で強化された熱可塑性樹脂材料から成形される。そのような管材は、改善された強度特性を保持しつつ、軽量で且つ柔軟性でありえる。
管材の成形法であって、バリヤー層が中空体の外表面と接触し、且つ接着しないように、中空体をバリヤー層で取り囲む工程を含み、ここで、前記バリヤー層は、連続繊維で強化された熱可塑性樹脂材料から成形される、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[00037]本明細書及び図面において参照文字を繰り返して使用するのは、本発明の同一または類似の特徴または部材を示すことを目的とする。
【0012】
[00038]当業者には、本考察が例示的な態様を記載しただけであり、本発明のより広い側面を限定するものではないと理解されるべきである。
【0013】
[00039]一般に、本開示は、管材及び管材の成形法に関する。得られる管材は、様々な用途、たとえば石油及びガス用途におけるものなど過酷な環境で使用することができる。好都合には、本開示に従った管材を成形するために使用される材料は、特定の環境及び関連する温度、pH、摩擦などに耐えるために、特定の用途に関して調整することができる。本開示に従って成形した管材は、高強度及び耐性に加えて、好都合には軽量であり、且つ柔軟性を示す。
【0014】
[00040]以下詳細に考察するように、本開示に従って成形した多層管材の最内層(innermost layer)、即ち中空コア(hollow core)は、ポリマー材料から成形することができ、これは例示的な態様でな熱可塑性樹脂である。内部コアは、石油若しくはガス、またはその中を通って流れる他の流体若しくはスラリーなどの、比較的過酷な環境に暴露されることがある。中空コアを成形するためにポリマー材料を使用すると、中空コアに耐摩耗性及び耐腐食性などの改善された耐性特性を提供する。この中空コアを取り囲み、且つ接触するバリヤー層は、連続繊維で強化された熱可塑性樹脂(continuous fiber reinforced thermoplastic:CFRT)材料から成形することができる。このバリヤー層と中空コアは、さらに好都合には非接着であることができる。接着されていない強化されたバリヤー層を使用すると、管材全体の強度、特に破裂圧力に対する耐性及びその引張強さをさらに高めつつ、管材の全体的な柔軟性を高めることができる。
【0015】
[00041]従って、本開示に従った管材は、ポリマー中空体と、前記中空体を取り囲んでいる一つ以上のCFRTバリヤー層とを含む。バリヤー層は中空体と非接着であることができる。さらに例示的な態様では、バリヤー層はCFRT材料から成形されたテープである。CFRT材料から成形された接着していないバリヤー層を使用すると、それから成形した管材に多くの好都合な点を与えることができる。特に、そのような管材は、改善された強度特性を示すと共に、軽量且つ柔軟性でありえる。
【0016】
[00042]態様によっては、本開示に従って成形した管材は、石油及びガス用途で使用することができる。たとえば、海中用途では、本開示に従って成形した管材は、ライザー、移送ライン、アンビリカルまたは他の好適な海中管アセンブリで使用することができる。ライザー、移送ラインなどは、その中を石油またはガスが流れることができる。アンビリカルとしては、流体及び/または電流/信号を運ぶために様々な部材を含むことができる。たとえば、アンビリカルは、長いアンビリカル部材(たとえば二つ以上)、たとえば、チャネル部材、流体管、導電体/ワイヤ(たとえば光ファイバーケーブル)、外装ワイヤ(armoring wire)などを含むことができる。管材は、これらの部材を封入することができる。生産現場用途では、本開示に従って成形した管材は、ライザー、インフィールド・フローライン、輸出パイプライン及び/または他の好適な管アセンブリで使用することができる。
【0017】
[00043]
図1は、海中管系(pipe system)10の一つの態様を説明し、これは本開示に従って成形した管材を使用することができる一つの用途である。管系10は、一つ以上の管材100を含むことができ、海中施設14、たとえば裸孔(well bore)と、船舶16、例えば掘削装置、船などの間、または二つの船舶16の間またはその他に伸長する。海中施設14は、水域22の底部20に隣接することができる。船舶16及び/または海中施設14は、水域22内に恒久的に設置することができるか、移動可能でありえる。特定の態様では、海中管系10は、約2,500メートル以上の深さ、態様によっては約4,000メートル以上の深さ、及び態様によっては約5,000〜約15,000メートル以上の深さの水中で使用することができる。海中管系900は、これらの深度のかなりの部分に及ぶことができる。
【0018】
[00044]例示的な態様では、海中管系10は、海中施設14と船舶16との間で液体、例えば石油、若しくはガスを輸送するために、またはその中に様々な部材を含むために使用される。従って管系10は、ライザー24、移送ライン26、アンビリカル、またはそのような用途用の任意の他の好適な管を含むことができる。本開示に従った管材100は、これらの管アセンブリの任意の一つ以上を成形するために使用することができる。
【0019】
[00045]
図2は、様々な管アセンブリにおいて本開示に従った管材を含むことができる典型的な生産現場を説明する。理解できるように、現場は、海底32からプラットフォーム35まで生産流体を運搬できる固定ライザー31を含むことができる。現場は、生産流体、支持流体、アンビリカルなどを現場内で運搬できるインフィールド・フローライン33を含むことができる。さらに、ライザー31とインフィールド・フローライン33の両方は、上記のように束ねられたラインでありえる。この系は、様々なフローラインが合流して、たとえば束ねられたライザーを形成する地点及び/または、個々のフローラインが、たとえば膨張によって変更され得る地点に複数の連結装置(tie-in)34も含む。この系は、炭化水素生産流体が得られる複数のサテライト坑井38とマニホールドも含む。輸出パイプライン37は、プラットフォーム35から、海岸、貯蔵施設または輸送船へ生産流体を運搬することができる。輸出パイプライン37は、他のフローライン、たとえば別のパイプライン39を迂回するために、一つ以上の交差36も含むことができる。本開示に従った管材100は、これらの管アセンブリの任意の一つ以上を成形するために使用することができる。
【0020】
[00046]
図3〜5は、本開示の様々な態様に従った管材100を説明する。管材100は、中空体102を含む。中空体102は、示されているように内表面104と外表面106とをもつ。内表面104は、中空体102の内側108を画定し、その中を通って上記のような液体またはガスなどの好適な材料が流れることができる。中空体102は、例示的な態様では、一般的に、円形または楕円形の断面プロフィールをもつ円筒状でありえる。あるいは、中空体102は、任意の好適な形状でありえ、これは一定でありえるか、または変動し得る。中空体102は、長手方向の軸110に沿って伸長しえる。長手方向110は、一般に中空体102の中心を通る方向であり、且つたとえば中空体102の中を通る流れ方向と一致する。従って、長手方向110は、中空体102の曲がりをベースとして必要により任意の好適な角度で湾曲することができる。
【0021】
[00047]中空体102は、任意の好適な材料から成形することができ、例示的な態様では熱可塑性材料でありえるが、あるいは熱硬化性材料でありえる。たとえば中空体102で使用するための他の好適な熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン類(たとえばポリプロピレン、プロピレン-エチレンコポリマーなど)、ポリエステル類(たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT))、ポリカーボネート、ポリアミド(たとえばPA12、Nylon(商標))、ポリエーテルケトン(たとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK))、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンケトン(たとえばポリフェニレンジケトン(PPDK))、液晶ポリマー、ポリアリーレンスルフィド(たとえばポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(ビフェニレンスルフィドケトン)、ポリ(フェニレンスルフィドジケトン)、ポリ(ビフェニレンスルフィド)など)、フルオロポリマー類(たとえばポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルポリマー、パーフルオロ-アルコキシアルカンポリマー、ぺトラフルオロエチレンポリマー(petrafluoroethylene polymer)、エチレン-テトラフルオロエチレンポリマーなど)、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリカーボネート、スチレン性ポリマー(たとえばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS))などを挙げることができる。
【0022】
[00048]例示的な態様では、
図4及び5に示されるように、ポリマー材料を押し出して中空体102を形成することができる。あるいは
図3に示されるように、中空体102はポリマー材料のテープから成形することができるか、または任意の好適な形状をもつことができる。
【0023】
[00049]本開示に従った管材102はさらに、一つ以上のバリヤー層120を含む。各バリヤー層120は、一般に中空体102を取り囲む。最内バリヤー層120(中空体102に対して)は、中空体102と接触することができ、取り囲んでいる外部バリヤー層120は、
図4に示されているように、それぞれ隣接するバリヤー層120と接触することができる。バリヤー層120は内表面122と外表面124とをもつ。最内バリヤー層120が中空体102を取り囲むとき、内表面122は、中空体102、例えば中空体の外表面106と接触することができる。
【0024】
[00050]バリヤー層20は中空体102とは非接着であることができる。しかしながら二つ以上のバリヤー層120を使用する態様によっては、これらのバリヤー層120は互いに接着することができる。バリヤー層120の接着(bonding)は、バリヤー層120を強固化温度(consolidation temperature)に加熱することを含みえる。加熱は、バリヤー層120若しくはそのテープを成形する間にダイ、ヒーターその他の中で実施することができるか、または別々に実施することができる。好適な加熱源は、例えば赤外線、高温気体、レーザーまたはその他などでありえる。強固化温度は、隣接するバリヤー層120が強固化して、一緒に接着できる温度である。たとえば、特定のポリマー樹脂の強固化温度は、そのポリマー樹脂の融解温度、またはその融解温度よりも約20℃、15℃、10℃、5℃下の温度と、その融解温度との間でありえる。接着はさらに、バリヤー層120を一緒に強固化することを含みえる。強固化は、例えばバリヤー層120を一緒にプレスするか、または単にバリヤー層120を、その加熱後に一緒に接触させたままにすることを含みえる。接着は、強固化後に得られるバリヤー層120を冷却すること、及びこのように接着することを含みえる。
【0025】
[00051]上記のように及び以下詳細に記載するように、本開示に従ったバリヤー層120は、連続繊維で強化された熱可塑性樹脂材料(thermoplastic material)から成形される。本開示に従ったバリヤー層120で使用するのに好適な熱可塑性樹脂材料としては、ポリオレフィン類(たとえばポリプロピレン、プロピレン-エチレンコポリマーなど)、ポリエステル類(たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT))、ポリカーボネート、ポリアミド(たとえばPA12、Nylon(商標))、ポリエーテルケトン(たとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK))、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンケトン(たとえばポリフェニレンジケトン(PPDK))、液晶ポリマー、ポリアリーレンスルフィド(たとえばポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(ビフェニレンスルフィドケトン)、ポリ(フェニレンスルフィドジケトン)、ポリ(ビフェニレンスルフィド)など)、フルオロポリマー類(たとえばポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルポリマー、パーフルオロ-アルコキシアルカンポリマー、ぺトラフルオロエチレンポリマー(petrafluoroethylene polymer)、エチレン-テトラフルオロエチレンポリマーなど)、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリカーボネート、スチレン性ポリマー(たとえばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS))などを挙げることができる。
【0026】
[00052]本開示に従ったバリヤー層120を成形するのに使用される熱可塑性樹脂材料はさらに、熱可塑性樹脂材料を強化するために、その中に埋め込まれた複数の繊維を含むことができる。例示的な態様では、バリヤー層120は複数の連続繊維を含むことができる。しかし、長繊維もさらにその中に含むことができることは理解すべきである。繊維は、バリヤー層120を形成する熱可塑性樹脂中に分散させることができる。本明細書中で使用するように、「長繊維(long fiber)」なる用語は一般に、連続ではない繊維、フィラメント、ヤーンまたはロービングを指し、部品の長さにのみよって一般に限定される長さをもつ繊維、フィラメント、ヤーンまたはロービングをさす「連続繊維(continuous fiver)」とは対照的である。バリヤー層120を成形するためにポリマー材料中に分散される繊維は、当業界で公知の任意の慣用の材料、たとえば金属繊維、ガラス繊維(たとえばE-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラスなどのS-ガラス)、炭素繊維(たとえばグラファイト)、ホウ素繊維、セラミック繊維(たとえばアルミナ若しくはシリカ)、アラミド繊維(たとえばKevlar(登録商標)、E.I.duPont de Nemours製,Wilmington,Del.)、合成有機繊維(たとえばポリアミド、ポリエチレン、パラフェニレン、テレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリフェニレンスルフィド)、並びにポリマー組成物を強化することに関して公知の様々な他の天然または合成の無機または有機繊維状材料から成形することができる。ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維は特に望ましい。
【0027】
[00053]例示的な態様では、連続繊維は、
図16に示されているように一般的に一方向性でありえる。さらに例示的な態様では、バリヤー層120は、CFRT材料から成形されたテープである。他の態様では、バリヤー層120は、中空体102の上に押し出すことができる。
【0028】
[00054]例示的な態様によっては、バリヤー層120は、優れた強度及び柔軟特性並びに、水、石油、ガス、合成または天然化学薬品などとの接触による化学的劣化に対し耐性を示すポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。有益には、本ポリアリーレンスルフィド組成物は、配管用途で遭遇しうるような高温及び低温などの極端な温度での用途で使用されるときでさえも、良好な物理的特性を維持し得る。ポリアリーレンスルフィドは、材料が極端な温度変動に暴露される条件下で良好な物理的特性を維持することもできる。
【0029】
[00055]本開示に従ったポリアリーレンスルフィド組成物は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混和(combine)して、混合物を形成(form)すること、及び前記混合物を動的加硫に暴露することを含む溶融加工技術に従って形成することができる。より具体的には、ポリアリーレンスルフィドを耐衝撃性改良剤と混和し、この混合物を、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中に十分にくまなく分布(分散:distribute)されるように、剪断条件に暴露することができる。混合物を形成した後、多官能性(polyfunctional)架橋剤を添加することができる。多官能性架橋剤は、混合物の成分と反応して、組成物の内部で、たとえば耐衝撃性改良剤のポリマー鎖の内部及び間で架橋を形成することができる。
【0030】
[00056]特別な理論に拘束されないが、ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させた後、ポリアリーレンスルフィド組成物に多官能性架橋剤を添加することによって、溶融加工装置内部のポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、及び架橋剤間の相互作用を改善することができ、組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤(crosslinked impact modifier)の分布が改善されると考えられる。組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤の分布が改善されると、組成物の強度及び柔軟特性、たとえば、変形下で組成物が強度を維持する能力を改善することができる、並びに様々な条件下での劣化に対し優れた耐性を示すことができる製品を成形するのに使用し得る良好な加工性を組成物に提供することができる。
【0031】
[00057]一態様に従って、成形プロセスは、ポリアリーレンスルフィドの官能基化(機能化:funcionalization)を含むことができる。この態様は、耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドとの間の結合のために追加の場所(site)を提供することができ、これはポリアリーレンスルフィドの中でくまなく耐衝撃性改良剤の分布をさらに改善して、さらに相分離を防ぐことができる。さらにはポリアリーレンスルフィドの官能基化は、ポリアリーレンスルフィド鎖の切断を含むことができ、これは組成物の溶融粘度を下げて、加工性を改善することができる。これにより、優れた物理的特性及び劣化に対する高い耐性を示す低塩素組成物など、低ハロゲンであるポリアリーレンスルフィド組成物を提供することもできる。
【0032】
[00058]ポリアリーレンスルフィド組成物にさらなる改善点を提供するために、標準的な技法に従って、他の慣用の添加剤、たとえば充填剤(filler)、潤滑剤(lubricant)、着色料などを含めるために組成物を形成することができる。
【0033】
[00059]ポリアリーレンスルフィド組成物の高強度及び柔軟特性は、材料の引張り、曲げ、及び/または衝撃特性を調べることによって明らかにすることができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物は、23℃で、ISO試験No.179-1(ASTM D256、方法Bと技術的に同等)に従って測定して、約3kJ/m
2を超える、約3.5kJ/m
2を超える、約5kJ/m
2を超える、約10kJ/m
2を超える、約15kJ/m
2を超える、約30kJ/m
2を超える、約33kJ/m
2を超える、約40kJ/m
2を超える、約45kJ/m
2を超える、または約50kJ/m
2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができる。ノッチなしシャルピーサンプルは、23℃で、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)の試験条件下で破壊しない。
【0034】
[00060]有益には、ポリアリーレンスルフィド組成物は、高温及び低温の両方を含む極端な温度でさえも良好な物理的特性を維持することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物は、−30℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m
2を超える、約9kJ/m
2を超える、約10kJ/m
2を超える、約14kJ/m
2を超える、約15kJ/m
2を超える、約18kJ/m
2を超える、または約20kJ/m
2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができ;−40℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m
2を超える、約9kJ/m
2を超える、約10kJ/m
2を超える、約11kJ/m
2を超える、約12kJ/m
2を超える、または約15kJ/m
2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができる。
【0035】
[00061]さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物における温度変化の影響は驚くほど小さくなりうる。たとえば、23℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さ対−30℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さの比は、約3.5を超え、約3.6を超え、または約3.7を超えることができる。従って、及び以下の実施例区分により詳細が記載されるように、温度が上昇するにつれて、ポリアリーレンスルフィド組成物の衝撃強さも予想通り上昇するが、衝撃強さの増加の割合は、特に動的に架橋された耐衝撃性改良剤を含まない組成物と比較して、非常に高い。従って、本ポリアリーレンスルフィド組成物は広い温度範囲で優秀な強度特性を示すことができる。
【0036】
[00062]ポリアリーレンスルフィド組成物は非常に良好な引張特性を示すことができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物は、約4.5%を超える、約6%を超える、約7%を超える、約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超える降伏点引張伸び(tensile elongation at yield)をもつことができる。同様に、破断点引張伸び(tensile elongation at break)は非常に高く、たとえば約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超えることができる。破断点歪み(strain at break)は、約5%を超える、約15%を超える、約20%を超える、または約25%を超えることができる。たとえば、破断点歪みは約90%でありえる。降伏歪み(yield strain)は同様に高くなりえ、たとえば約5%を超える、約15%を超える、約20%を超える、または約25%を超える。降伏応力(yield stress)は、たとえば約50%を超えるか、または約53%を超えることができる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点引張強さ(tensile strength at break)をもつことができる。
【0037】
[00063]さらにポリアリーレンスルフィド組成物は、比較的低い引張弾性率をもつことができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定して、約3000MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1500MPa未満、または約1100MPa未満の引張弾性率をもつことができる。
【0038】
[00064]ポリアリーレンスルフィド組成物は、その上、アニール(annealing)後に、良好な特性を示すことができる。たとえば、温度約230℃で約2時間のアニール後、組成物の引張弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、または約2250MPa未満でありえる。温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定したアニール後の破断点引張強さは、約50MPaを超える、または約55MPaを超えることができる。
【0039】
[00065]ポリアリーレンスルフィド組成物は、高い温度、たとえば最高約150℃、約160℃、または約165℃の連続使用温度で、引張り強さが低下することなく、連続して使用することもできる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、165℃で1000時間、熱老化(熱エージング:heat aging)後に、元の引張り強さを約95%を超えて、たとえば約100%を維持することができ、且つ135℃で1000時間、熱老化後に、元の降伏点引張伸びを約95%を超えて、たとえば約100%を維持することができる。
【0040】
[00066]引張特性は、温度23℃及び試験速度5mm/分、または50mm/分でISO試験No.527(23℃におけるASTM D623と技術的に同等)に従って測定することができる。
【0041】
[00067]本組成物の曲げ特性は、温度23℃及び試験速度2mm/分でISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定することができる。たとえば、組成物の曲げ弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1800MPa未満、または約1500MPa未満でありえる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点曲げ強さ(flexural strength at break)をもつことができる。
【0042】
[00068]ポリアリーレンスルフィド組成物の荷重撓み温度(deflection temperature under load)は比較的高くなりうる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物の荷重撓み温度は、1.8MPaにおいて、ISO試験No.75-2(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定して、約80℃を超える、約90℃を超える、約100℃を超える、または約105℃を超えることができる。
【0043】
[00069]ビカット軟化点(Vicat softening point)は、加熱速度50K/時間で荷重10Nを使用するときに、ビカットA試験(Vicat A test)に従って測定して、約200℃を超える、または約250℃を超えることができ、たとえば約270℃である。加熱速度50K/時間で荷重50Nを使用するときに、ビカットB試験に関しては、ビカット軟化点は、約100℃を超える、約150℃を超える、約175℃を超える、または約190℃を超えることができ、たとえば約200℃である。ビカット軟化点は、ISO試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に従って測定することができる。
【0044】
[00070]ポリアリーレンスルフィド組成物は、過酷な環境条件に長期間暴露される間も、優れた安定性を示すことができる。たとえば、酸性環境に長期暴露下(under long term exposure)で、ポリアリーレンスルフィド組成物は、強度特性で殆ど減少を示さない。たとえば強酸(たとえば硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸などの強酸約5%以上の溶液)に500時間暴露した後に、ポリアリーレンスルフィド組成物は、温度約40℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、約17%未満、または約16%未満のシャルピーノッチ付き衝撃強さの減少(loss)を示すことができ、温度約80℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、約25%未満、または約22%未満のノッチ付きシャルピー衝撃強さ(Charpy notched impact strength)の減少を示すことができる。たとえば温度約80℃に保持した10%硫酸溶液中で1000時間のより過酷な条件下でさえも、ポリアリーレンスルフィド組成物は、当初のノッチ付きシャルピー衝撃強さの約80%以上を維持することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、潜在的に分解性の材料、たとえば塩に暴露された後でも所望の強度特性を維持することができる。
【0045】
[00071]透過抵抗(permeation resistance)は、たとえば燃料ライン、貯蔵タンクなどの成形において組成物を使用する際など、ポリアリーレンスルフィド組成物の広範な用途にとって重要である。ポリアリーレンスルフィド組成物は、広範な種類の材料に対して優れた透過抵抗を示すことができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形した成形品は、約3g-mm/m
2-日未満、約2g-mm/m
2-日未満、約1g-mm/m
2-日未満、または約0.5g-mm/m
2-日未満の燃料または燃料源(たとえばガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料、未精製または精製油など)に対する透過抵抗を示すことができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物(またはポリアリーレンスルフィド組成物で成形した製品)は、約3g-mm/m
2-日未満、約2.5g-mm/m
2-日未満、約1g-mm/m
2-日未満または約0.1g-mm/m
2-日未満の、40℃においてエタノール/イソオクタン/トルエンのエタノールブレンド(重量比10:45:45)に対する透過抵抗を示すことができる。40℃における15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料(oxygenated fuel)のブレンド(CM15A)に対する透過抵抗は、約3g-mm/m
2-日未満、約2.5g-mm/m
2-日未満、約1g-mm/m
2-日未満、約0.5g-mm/m
2-日未満、約0.3g-mm/m
2-日未満、または約0.15g-mm/m
2-日未満でありえる。40℃におけるメタノールに対する透過抵抗は、約1g-mm/m
2-日未満、約0.5g-mm/m
2-日未満、約0.25g-mm/m
2-日未満、約0.1g-mm/m
2-日未満、または約0.06g-mm/m
2-日未満でありえる。透過抵抗は、SAE試験法No.J2665に従って測定することができる。さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物は、炭化水素に長期間暴露した後に、元の密度を維持することができる。たとえば、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素または炭化水素の組み合わせに長期間(たとえば約14日を超える)暴露した後に、元の密度の約95%を超えて、元の密度の約96%を超えて維持することができ、たとえば元の密度の約99%を維持することができる。
【0046】
[00072]ポリアリーレンスルフィド組成物は、材料、特に炭化水素の取り込み(hydrocarbon uptake)に対しても耐性でありえる。たとえば本組成物で成形した成形構造体は、温度130℃で約2週間の期間、炭化水素に暴露した後に、約25%未満、約20%未満、または約14%未満の体積変化を示すことができる。
【0047】
[00073]ポリアリーレンスルフィド組成物は、良好な耐熱性及び難燃性を示すことができる。たとえば、本組成物は厚さ0.2ミリメートルでV-0燃焼性規格(flammability standard)を満たすことができる。難燃効力(flame retarding efficacy)は、“Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances”、第5版、1996年10月29日のUL94垂直燃焼試験(Vertical Burn Test)手順に従って測定することができる。UL94試験に従った評価を以下の表に列記する。
【0049】
[00074]残炎時間(afterflame time)とは、全残炎時間(試験したすべてのサンプルの総計)をサンプル数で割ることにより得られる平均値である。全残炎時間は、UL-94 VTM試験で記載したように、火炎を二回、別々に適用した後に、全サンプルが発火したままだった時間(秒)の合計である。時間が短ければ、より良好な耐燃性(難燃性:flame resistance)を示す。すなわち、火炎は早く消えた。V-0の評価に関しては、それぞれ火炎を二回適用する、五つ(5)のサンプルの全残炎時間は、50秒を超えてはいけない。本発明の難燃剤(flame retardant)を使用すると、物品は、厚さ0.2ミリメートルの試験片に関しては、少なくともV-1評価、典型的にはV-0評価を達成することができる。
【0050】
[00075]ポリアリーレンスルフィド組成物は、たとえば組成物の溶融粘度により示されるように、良好な加工特性を示すこともできる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、一定の剪断を5分間適用した後で実施した粘度測定で、316℃及び400秒
-1においてキャピラリーレオメーターで測定して、約2800ポアズ(poise)未満の溶融粘度をもつことができる。さらにはポリアリーレンスルフィド組成物は、架橋耐衝撃性改良剤を含まないポリアリーレンスルフィド組成物と比較して、長期にわたって改善された溶融安定性を示すことができる。架橋耐衝撃性改良剤を含まないポリアリーレンスルフィド組成物は、長期にわたって溶融粘度の上昇を示す傾向があり、対照的に、開示された組成物は、長期にわたって溶融粘度を維持するまたは、低下させることすらできる。
【0051】
[00076]ポリアリーレンスルフィド組成物は、低剪断(0.1ラジアン/秒(rad/s))及び310℃で測定して、約10kPa/秒を超える、約25kPa/秒を超える、約40kPa/秒を超える、約50kPa/秒を超える、約75kPa/秒を超える、約200kPa/秒を超える、約250kPa/秒を超える、約300kPa/秒を超える、約350kPa/秒を超える、約400kPa/秒を超える、または約450kPa/秒を超える複素粘度(complex viscosity)をもつことができる。低剪断での複素粘度の値がより高いことは、組成物の架橋構造及びポリアリーレンスルフィド組成物のより高い溶融強度の兆候である。さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物は、より高い剪断感受性(shear sensitivity)を示し、このことは、ブロー成形及び押出加工などの成形プロセスで使用するのに優れた特性であることを示している。
【0052】
[00077]
図6は、ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する際に使用することができるプロセスの略図を説明する。示されているように、ポリアリーレンスルフィド組成物は、押出機700などの溶融加工装置で溶融混練することができる。押出機700は、これらに限定されないが、一軸、二軸、または多軸押出機(multi-screw extruder)、共回転若しくは反転押出機、噛み合い(intermeshing)若しくは非-噛み合い(non-intermeshing)押出機など当業界で公知の任意の押出機でありえる。一態様において、本組成物は、多数のゾーンまたはバレルを含む押出機700で溶融加工することができる。図示された態様では、押出機700は、示されているように押出機700の長さに沿って721〜730の番号がつけられた10個のバレルを含む。それぞれのバレル721〜730は、独立して操作することができる供給ライン(feed line)714、716、ベント712、温度調節などを含むことができる。汎用スクリューデザインを使用して、ポリアリーレン組成物を溶融加工することができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、Coperion共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融混合することができる。
【0053】
[00078]ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する際に、ポリアリーレンスルフィドは、主供給口714で押出機700に供給することができる。たとえばポリアリーレンスルフィドは、計量供給装置(metering feeder)により第一のバレル721で主供給口714に供給することができる。ポリアリーレンスルフィドは、押出機700の中を通って前進するにつれて、融解して、組成物の他の成分と混合することができる。耐衝撃性改良剤は、所望により主供給口714でポリアリーレンスルフィド組成物と共に(同時に:in conjunction with)または主供給口の下流で、組成物に添加することができる。
【0054】
[00079]主供給口714の下流地点で、且つ組成物に耐衝撃性改良剤を添加した後、架橋剤を組成物に添加することができる。たとえば例示された態様では、バレル726での第二の供給ライン716を、架橋剤の添加用に使用することができる。架橋剤の添加点は特に限定されない。しかしながら、架橋剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布されるように、ポリアリーレンスルフィドを剪断下で耐衝撃性改良剤と混合した後の時点で、組成物に添加することができる。有益には、ポリアリーレンスルフィド組成物は、可塑剤を添加することなく所望の特徴を示すことができる。たとえば、組成物は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル(trimellitate)、セバシン酸エステル(sebacate)、アジピン酸エステル(adipate)、グルタル酸エステル(gluterate)、アゼライン酸エステル(azelate)、マレイン酸エステル(maleate)、安息香酸エステル(benzoate)などの可塑剤を含まないようにできる。
【0055】
[00080]ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
【0057】
{式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は同一または異なり、6〜18個の炭素原子のアリーレンユニットであり;W、X、Y、及びZは同一または異なり、−SO
2−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−または、1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の結合基(linking group)であり、ここで前記結合基の少なくとも一つは−S−であり;n、m、i、j、k、l、o、及びpは独立してゼロまたは1、2、3、または4であり、但し、その合計は2以上である}の繰り返しユニットを含むポリアリーレンチオエーテルでありえる。アリーレンユニットAr
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は、選択的に置換されるか、または非置換でありえる。好都合なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは典型的には、約30モル%を超え、約50モル%を超え、または約70モル%を超えるアリーレンスルフィド(−S−)ユニットを含む。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも85モル%の、二つの芳香環に直接結合したスルフィド結合を含む。
【0058】
[00081]一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、その成分としてフェニレンスルフィド構造−(C
6H
4−S)
n−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして、本明細書中で定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0059】
[00082]ポリアリーレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する前に合成することができるが、これはプロセスの必要条件ではなく、ポリアリーレンスルフィドは公知の業者から購入することもできる。たとえばティコナ・オブ・フローレンス(Ticona of Florence、Kentucky、USA)より入手可能なFortron(フォートロン)(登録商標)ポリフェニレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィドとして購入することができ、使用することができる。ポリアリーレンスルフィドを合成する態様において、当業界で公知の合成技術を使用することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスは、有機アミド溶媒中でアルカリ金属の硫化物(alkali metal sulfide)などの水硫化物イオン(hydrosulfide ion)を提供する材料と、ジハロ芳香族化合物(dihaloaromatic compound)とを反応させることを含みえる。
【0060】
[00083]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状(semi-linear)、分岐または架橋でありえる。線状ポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返しユニットを主な構成ユニットとして含む。通常、線状ポリアリーレンスルフィドは、この繰り返しユニット約80モル%以上を含むことができる。線状ポリアリーレンスルフィドは、少量の分岐ユニットまたは架橋ユニットを含むことができるが、分岐または架橋ユニットの量はポリアリーレンスルフィドの総モノマーユニットの約1モル%未満でありえる。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記繰り返しユニットを含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーでありえる。
【0061】
[00084]3つ以上の反応性官能基(reactive functional group)をもつ一つ以上のモノマーを少量、ポリマーに導入することにより提供される架橋構造または分岐構造をもちうる半線状ポリアリーレンスルフィドを使用することができる。たとえば、ポリマーの約1モル%〜約10モル%は、三つ以上の反応性官能基をもつモノマーから形成することができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを製造する際に使用できる方法は、通常、当業界で公知である。
【0062】
[00085]ポリアリーレンスルフィド組成物は、組成物の重量の約10wt%〜約99wt%、たとえば組成物の重量の約20%wt%〜約90wt%の量のポリアリーレンスルフィド成分(ポリアリーレンスルフィドのブレンドも包含する)を含むことができる。
【0063】
[00086]ポリアリーレンスルフィドは、一般に、ポリアリーレンスルフィド組成物の所望の最終用途に依存して、任意の好適な分子量及び溶融粘度でありえる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、1200s
-1の剪断速度及び温度310℃で、ISO試験No.11443に従って測定して、約500ポアズ未満の溶融粘度をもつ低粘度ポリアリーレンスルフィド、約500ポアズ〜1500ポアズの溶融粘度をもつ中間粘度(medium viscosity)ポリアリーレンスルフィド、または約1,500ポアズを超える溶融粘度をもつ高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドでありうる。
【0064】
[00087]一態様に従って、ポリアリーレンスルフィドは、官能基化(機能化:functionalize)して、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間の結合形成をさらに促進することができる。たとえばポリアリーレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィド上に末端官能基(functional terminal group)を提供するために、カルボキシル、酸無水物、アミン、イソシアネートまたは他の官能基含有改質化合物(functional group-containing modifying compound)を用いて、形成後にさらに処理することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドは、メルカプト基またはジスルフィド基を含み、且つ反応性官能基も含む改質化合物(modifying compound)と反応することができる。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、有機溶媒中で改質化合物と反応することができる。別の態様では、ポリアリーレンスルフィドは、溶融状態で改質化合物と反応することができる。
【0065】
[00088]一態様において、所望の官能基を含むジスルフィド化合物をポリアリーレンスルフィド組成物形成プロセスに組み入れることができ、ポリアリーレンスルフィドは、組成物の形成と共に官能基化することができる。たとえば、所望の反応性官能基を含むジスルフィド化合物は、ポリアリーレンスルフィドと共に、または架橋剤を添加する前の任意の他の時点若しくは架橋剤の添加と共に、溶融押出機に添加することができる。
【0066】
[00089]ポリアリーレンスルフィドポリマーと反応的に官能基化された(reactively functionalized)ジスルフィド化合物との間の反応は、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度を下げることができるポリアリーレンスルフィドポリマーの鎖切断(chain scission)を含むことができる。一態様において、低ハロゲン含有量の高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドを出発ポリマー(starting polymer)として使用することができる。官能性(functional)ジスルフィド化合物を使用することによってポリアリーレンスルフィドポリマーを反応的に官能基化した後、低ハロゲン含有量の比較的低溶融粘度のポリアリーレンスルフィドを形成することができる。この鎖切断の後、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度はさらなる処理に関して好適でありえ、低溶融粘度ポリアリーレンスルフィドの全体のハロゲン含有量もかなり低くなりうる。低ハロゲン含有量のポリマー材料が環境問題によりますます望ましくなっているため、低ハロゲン含有量に加えて優れた強度及び劣化抵抗性(degradation resistance)を示すポリアリーレンスルフィド組成物は好都合でありうる。一態様において、ポリアリーレンスルフィド組成物は、Parr Bomb燃焼、続いてイオンクロマトグラフィーを使用して元素分析に従って測定して、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、または約400ppm未満のハロゲン含有量を有しえる。
【0067】
[00090]ジスルフィド化合物は一般に、式:
【0069】
{式中、R
1及びR
2は同一または異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を独立して含む炭化水素基である}の構造をもつことができる。たとえば、R
1及びR
2は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは複素環基でありえる。R
1及びR
1は、ジスルフィド化合物の(単数または複数の)末端基に反応性官能基(reactive functionality)を含むことができる。たとえば、R
1及びR
2の少なくとも一つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換アミノ基、ニトロ基などを含むことができる。通常、反応性官能基は、反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤と反応できるように選択することができる。たとえば、エポキシ末端基化(epoxy-terminated)耐衝撃性改良剤を考えるとき、ジスルフィド化合物はカルボキシル及び/またはアミノ官能基を含むことができる。
【0070】
[00091]本明細書において包含されるように、反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、これらに限定されないが、2,2'-ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸(dithiosalicyclic acid)、ジチオグリコール酸、α,α'-ジチオ二乳酸(dithiodilactic acid)、β,β'-ジチオ二乳酸、3,3'-ジチオジピリジン、4,4'-チオモルホリン、2,2'-ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンゾオキサゾール)及び2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを含むことができる。
【0071】
[00092]ポリアリーレンスルフィドの量対ジスルフィド化合物の量の比は、約1000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、または約400:1〜約30:1でありえる。
【0072】
[00093]ポリアリーレンスルフィドポリマーに加えて、本組成物は耐衝撃性改良剤も含む。より具体的には、耐衝撃性改良剤は、オレフィン性コポリマーまたはターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約4〜約10個の炭素原子をもつエチレン性不飽和モノマー単位を含むことができる。
【0073】
[00094]耐衝撃性改良剤は、架橋剤と反応させるために、官能基化を含むように改質(変性)することができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約0.01〜約0.5のモル分率(mole fraction)の、以下のもの:約3〜約8個の炭素原子をもつα,β不飽和ジカルボン酸またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつα,β不飽和カルボン酸またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつ無水物またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつモノエステルまたはその塩;スルホン酸またはその塩;約4〜約11個の炭素原子をもつ不飽和エポキシ化合物の一つ以上で改質することができる。そのような改質官能基化(modification functionality)としては、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。メタクリル酸の塩の例としては、アルカリ金属及び遷移金属塩、たとえばナトリウム、亜鉛、及びアルミニウム塩が挙げられる。
【0074】
[00095]使用しえる耐衝撃性改良剤の非限定的な例としては、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸ターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸アルカリ金属塩(アイオノマー)ターポリマーなどが挙げられる。たとえば一態様において、耐衝撃性改良剤としては、エチレン、メチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマーが挙げられる。ターポリマーは、約5%〜約20%、たとえば約6%〜約10%のグリシジルメタクリレート含有量を有することができる。ターポリマーは、約20%〜約30%、たとえば約24%のメチルアクリレート含有量を有することができる。
【0075】
[00096]一態様に従って、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化(epoxy functionalization)、たとえば末端エポキシ基、骨格オキシランユニット(skeletal oxirane unit)及び/またはペンダントエポキシ基を含む線状若しくは分岐、ホモポリマーまたはコポリマー(たとえばランダム、グラフト、ブロックなど)でありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含む少なくとも一つのモノマー成分を含むコポリマーでありえる。耐衝撃性改良剤のモノマーユニットは変動し得る。一態様において、たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能性メタクリル酸モノマーユニット(epoxy-functional methacrylic monomer unit)を含むことができる。本明細書中で使用するように、「メタクリル(メタクリル酸:methacrylic)」なる用語は一般に、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩及びエステル、たとえばアクリレート及びメタクリレートモノマーを指す。耐衝撃性改良剤に組み入れることができるようなエポキシ官能性メタクリルモノマーとしては、1,2-エポキシ基を含むもの、たとえばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート及びグリシジルイタコネートが挙げられる。
【0076】
[00097]他のモノマーユニットは、追加としてまたはその代わりに耐衝撃性改良剤の成分でありえる。他のモノマーの例としては、たとえばエステルモノマー、オレフィンモノマー、アミドモノマーが挙げられる。一態様において、耐衝撃性改良剤としては、少なくとも一つの線状または分岐α-オレフィンモノマー、たとえば2〜20個の炭素原子または2〜8個の炭素原子をもつようなものが挙げられる。具体的な例としては、エチレン;プロピレン;1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘキセン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘプテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-オクテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ノネン;エチル、メチル、若しくはジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。
【0077】
[00098]エポキシ官能基化を含む耐衝撃性改良剤に配合されるモノマーとしては、ポリマーのモノマーユニットの少なくとも一部がエポキシ官能基化されている限りは、エポキシ官能基化を含まないモノマーを含むことができる。
【0078】
[00099]一態様において、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むメタクリル酸成分、α-オレフィン成分と、エポキシ官能基化を含まないメタクリル酸成分を含むことができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0080】
{式中、a、b及びcは1以上である}をもつ、ポリ(エチレン-コ-メタクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)でありえる。
【0081】
[000100]別の態様では、耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0083】
{式中、x、y及びzは1以上である}をもつエチレン、エチルアクリレート及び無水マレイン酸のランダムコポリマーでありえる。
【0084】
[000101]コポリマー性(copolymeric)耐衝撃性改良剤の様々なモノマー成分の相対割合は特に限定されない。たとえば一態様において、エポキシ官能性メタクリル酸モノマー成分は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約1wt%〜約25wt%または約2wt%〜約20wt%を構成(form)しえる。a-オレフィンモノマーは、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約55wt%〜約95wt%、または約60wt%〜約90wt%を構成しえる。使用する際、他のモノマー成分(たとえば、非エポキシ官能性メタクリル酸モノマー)は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約5wt%〜約35wt%、または約8wt%〜約30wt%を構成することができる。
【0085】
[000102]一般的に当業界で公知のように、耐衝撃性改良剤は標準的な重合法に従って形成することができる。たとえば極性官能基(polar functional group)を含むモノマーをポリマー幹(backbone)にグラフトして、グラフトコポリマーを形成することができる。あるいは、公知のフリーラジカル重合法、たとえば高圧反応、チーグラー-ナッタ触媒反応系、シングルサイト触媒(たとえばメタロセン)反応系などを使用して、官能基を含むモノマーをモノマーと共重合して、ブロックまたはランダムコポリマーを形成することができる。
【0086】
[000103]あるいは、耐衝撃性改良剤は小売市場で入手することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤として使用するのに好適な化合物は、商品名Lotader(登録商標)のもと、Arkemaから入手することができる。
【0087】
[000104]耐衝撃性改良剤の分子量は広範囲を変動しえる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、約7,500〜約250,000グラム/モル、態様によっては約15,000〜約150,000グラム/モル、態様によっては約20,000〜100,000グラム/モルの数平均分子量をもつことができ、多分散性指数(polydispersity index)は通常、2.5〜7である。
【0088】
[000105]通常、耐衝撃性改良剤は、組成物中に、約0.05重量%〜約40重量%、約0.05重量%〜約37重量%、または約0.1重量%〜約35重量%の量で存在することができる。
【0089】
[000106]
図6を参照して、耐衝撃性改良剤は、溶融加工装置の主供給口714でポリアリーレンスルフィド組成物と共に組成物に添加することができる。これは本組成物の形成プロセスの必要条件ではないが、他の態様では、耐衝撃性改良剤は主供給口の下流で添加することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融加工装置に供給される地点より下流の位置であるが、それでもやはり溶融区分、すなわち、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる溶融加工装置の長さより前で添加することができる。別の態様では、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる地点より下流の位置で添加することができる。
【0090】
[000107]所望により、一つ以上の分配混合部材(distributive mixing element)及び/または分散混合部材(dispersive mixing element)を溶融加工装置の混合区分内部で使用することができる。一軸押出機に好適な分配ミキサーとしては、サキソン(Saxon)、ダルマージ(Dulmage)、キャビティトランスファーミキサー(Cavity Transfer mixer) などが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、好適な分散ミキサーとしては、ブリスターリング(Blister ring)、レオリー/マドック(Leroy/Maddock)、CRDミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。当業界で公知のように、バスニーダー押出機(Buss Kneader extruder)、キャビティトランスファーミキサー及びボルテックス・インターメッシング・ピンミキサー(Vortex Intermeshing Pin mixer)で使用されるもののような、ポリマー溶融物の折り畳み及び再配向をつくりだすバレル内でピンを使用することにより、混合をさらに促進することができる。
【0091】
[000108]ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤に加えて、ポリアリーレン組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、耐衝撃性改良剤の官能基と反応して、耐衝撃性改良剤のポリマー鎖内部及びポリマー鎖間に架橋を形成できる多官能化合物またはそれらの組み合わせでありえる。通常、架橋剤は、非ポリマー性化合物(non-polymeric compound)、即ち、結合または非ポリマー性(繰り返しでない)結合成分によって結合された二つ以上の反応的に官能性末端部分(機能性末端部分:reactively functional terminal moiety)を含む分子化合物(molecular compound)でありえる。たとえば、架橋剤は、ジエポキシド、多官能性エポキシド、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、多価アルコール、水溶性カルボジイミド、ジアミン、ジアミノアルカン、多官能性カルボン酸(polyfunctional carboxylic acid)、二酸ハロゲン化物(diacid halide)などが挙げられうるが、これらに限定されない。たとえば、エポキシ官能性耐衝撃性改良剤を考えるとき、非ポリマー性多官能性カルボン酸またはアミンを架橋剤として使用することができる。
【0092】
[000109]多官能性カルボン酸架橋剤の具体的な例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-二安息香酸、1,4-または1,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cisとtransの両方)、1,4-ヘキシレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられるが、これらに限定されない。対応するジカルボン酸誘導体、たとえばアルコール基に1〜4個の炭素原子をもつカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライド(carboxylic acid halide)も使用することができる。
【0093】
[000110]架橋剤として有用な典型的なジオールとしては、脂肪族ジオール、たとえばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブト-2-エンジオール、1,3-1,5-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられえるが、これらに限定されない。芳香族ジオール類、たとえば、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、フェノールフタレインなども使用しえるが、これらに限定されない。使用しえる典型的な脂環式ジオールは、脂環式部分を含むことができ、たとえば1,6-ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール(そのcis-及びtrans-異性体を含む)、トリエチレングリコール、1,10-デカンジオールなどがある。
【0094】
[000111]架橋剤として使用し得る典型的なジアミンとしては、イソホロン-ジアミン、エチレンジアミン、1,2-、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン、N,N'-ジメチル-エチレン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオイレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン、及び第一オルト-、ジ-、トリ-及び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニル-メタン、(シクロ)脂肪族ジアミン、たとえばイソホロン-ジアミン、エチレンジアミン、1,2-、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン、N,N'-ジメチル-エチレン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオイレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン及び第一オルト-、ジ-、トリ-及び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニルメタンが挙げられえるが、これらに限定されない。
【0095】
[000112]一態様において、組成物はジスルフィドを含まない(disulfide-free)架橋剤を含むことができる。たとえば架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと反応しえるジスルフィド基を全く含まずに、カルボキシル及び/またはアミン官能基(functionality)を含むことができる。組成物を形成する間に、架橋剤によるポリアリーレンスルフィドの過剰な鎖切断を避けるために、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することができる。しかしながら、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することは、ポリアリーレンスルフィドを官能基化するために反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を使用することをいかなる意味においても全く制限しないことを理解すべきである。たとえば一態様において、ポリアリーレンスルフィドを反応的に官能基化し得る、反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を溶融加工装置に添加することを含むプロセスに従って組成物を形成することができる。この態様で使用される架橋剤は、耐衝撃性改良剤と、並びに反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドと反応性である官能基を含むことができる、ジスルフィドを含まない架橋剤でありえる。従って、組成物は、ポリアリーレンスルフィドポリマー鎖を過剰に切断することなく、高度に架橋することができる。
【0096】
[000113]別の態様では、架橋剤及び(存在するときには)ポリアリーレンスルフィド官能基化化合物は、ポリアリーレンスルフィドの鎖切断を促進するように選択することができる。このことは、たとえば鎖の切断が、ポリアリーレンスルフィドポリマーの溶融粘度を下げるために有益であろう。
【0097】
[000114]ポリアリーレンスルフィド組成物は、通常、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量の約0.05wt%〜約2wt%、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量の約0.07wt%〜約1.5wt%、または約0.1wt%〜約1.3wt%の量で架橋剤を含むことができる。
【0098】
[000115]架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混合した後に、溶融加工装置に添加することができる。たとえば、
図6に示されているように、架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤を(一緒にまたは別々に)溶融加工装置に添加した後に、下流の位置716で組成物に添加することができる。これによって確実に、耐衝撃性改良剤は、架橋剤を添加する前にポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分散できるようにする。
【0099】
[000116]架橋剤を添加する前に、溶融物の中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させやすくするために、様々なパラメーターを選択的に制御することができる。たとえば、溶融加工装置のスクリューの長さ(L)対直径(D)の比を選択して、処理量(押出量)と耐衝撃性改良剤分布との間の最適バランスを達成することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤が供給された地点より後の地点でL/D比を制御して、耐衝撃性改良剤の分布を促進することができる。特に、スクリューは、耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドの両方が装置に供給される地点(即ち、これらの両方が一緒に供給される地点か、二つのうち後者が供給される地点)から、架橋剤が供給される地点までを画定するブレンド長さ(blending length)(L
B)をもち、このブレンド長さは通常、スクリューの全長よりも短い。たとえば、全L/Dが40である溶融加工装置を考えるとき、スクリューのL
B/D比は、約1〜約36、態様によっては約4〜約20、態様によっては約5〜約15でありえる。一態様において、L/L
B比は、約40〜約1.1、約20〜約2、または約10〜約5でありえる。
【0100】
[000117]架橋剤を添加した後、組成物を混合して、組成物の中にくまなく架橋剤を分布させて、架橋剤、耐衝撃性改良剤と、一態様においてポリアリーレンスルフィドとの間の反応を促進させることができる。
【0101】
[000118]当業界で一般的に公知のように、CFRT組成物を成形するために使用される組成物は一種以上の添加剤も含むことができる。たとえば、一種以上の充填剤は組成物に含めることができる。一種以上の充填剤は、通常、CFRT組成物の重量の約5wt%〜約70wt%、または約20wt%〜約65wt%の量で組成物に含めることができる。
【0102】
[000119]充填剤は、標準的技法に従って組成物に添加することができる。たとえば充填剤は、組成物と連続繊維とを混和する前に、または混和する間に、組成物に添加することができる。
【0103】
[000120]一態様において、非連続繊維(non-continuous fiber)を連続繊維と共に組成物に含めることができる。繊維は、これらに限定されないが、ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、玄武岩繊維などを含む一種以上の繊維種、または繊維種の組み合わせを含むことができる。非連続繊維のサイズは、当業界で公知のように変動し得る。一態様において、繊維は約3mm〜約5mmの初期長さをもつことができる。繊維径は、使用する特定の繊維に依存して変動し得る。たとえば繊維は、約100μm未満、たとえば約50μm未満の直径を有することができる。たとえば非連続繊維または連続繊維は、約5μm〜約50μm、たとえば約5μm〜約15μmの繊維径をもつことができる。繊維は、当業界で公知のようにサイジング(sizing)で前処理することができる。
【0104】
[000121]他の充填剤を使用することができる。たとえば、粒子状充填剤をCFRT組成物に組み入れることができる。一般に粒子状充填剤は、約750μm未満、たとえば約500μm、または約100μm未満のメジアン粒径をもつ任意の粒子状材料を包含することができる。一態様において、粒子状充填剤は、約3μm〜約20μmの範囲のメジアン粒径をもつことができる。さらに、粒子状充填剤は、公知のように中実(solid)または中空でありえる。粒子状充填剤は、当業界で公知のように表面処理も含みえる。
【0105】
[000122]粒子状充填剤は、一種以上の無機充填剤を包含しえる。たとえばCFRT組成物は、組成物の約1wt%〜約60wt%の量で一種以上の無機充填剤を含むことができる。無機充填剤としては、シリカ、石英粉末、ケイ酸塩、たとえばケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、マイカ、粘土、珪藻土、珪灰石、炭酸カルシウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0106】
[000123]多様な充填剤、たとえば粒子状充填剤と非連続繊維充填剤とを組み入れるとき、充填剤は一緒にまたは別々に溶融加工装置に添加することができる。たとえば、粒子状充填剤は、繊維充填剤を添加する前に熱可塑性ポリマーと一緒にまたは下流で添加することができ、繊維充填剤は、粒子状充填剤の添加点よりもさらに下流で添加することができる。一般に、非連続繊維充填剤は、粒子状充填剤などの任意の他の充填剤の下流で添加することができるが、これは必要条件ではない。
【0107】
[000124]充填剤は、導電性充填剤(electrically conductive filler)、たとえばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末などでありえるが、これらに限定されない。組成物が導電性充填剤を含むそれらの態様では、好適な導電性充填剤は、組成物が約10
9オームcm(ohm cm)以下の体積固有抵抗(volume specific resistance)をもつように含めることができる。
【0108】
[000125]一態様において、CFRT組成物は添加剤としてUV(紫外線)安定剤を含むことができる。たとえばCFRT組成物は、約0.5wt%〜約15wt%、約1wt%〜約8wt%、または約1.5wt%〜約7wt%の量でUV安定剤を含むことができる。使用しえる特に好適なUV安定剤は、ヒンダードアミンUV安定剤である。好適なヒンダードアミンUV安定剤化合物は、置換ピペリジン、たとえばアルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから誘導することができる。たとえばヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから誘導することができる。ヒンダードアミンは、たとえば約1,000以上、態様によっては約1000〜約20,000、態様によっては約1500〜約15,000、及び態様によっては約2000〜約5000の数平均分子量をもつオリゴマー性またはポリマー化合物でありえる。そのような化合物は典型的には、ポリマー繰り返しユニット当たり、少なくとも一つの2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(たとえば1〜4個)を含む。特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、Hostavin(登録商標)N30(数平均分子量1200)のもと、Clariantより市販されている。別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、記号ADK STAB(登録商標)LA-63及びADK STAB(登録商標)LA-68のもと、Adeka Palmarole SASより市販されている。
【0109】
[000126]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも使用することができる。そのようなヒンダードアミンは、一般に本質的にモノマー性であり、約1000以下、態様によっては約155〜約800、及び態様によっては約300〜約800の分子量をもつ。
【0110】
[000127]他の好適なUV安定剤は、UV吸収剤、たとえばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノン類を含むことができ、これらはUV照射を吸収することができる。
【0111】
[000128]CFRT組成物に含めることができる添加剤は、一般に、当業界で公知のように一種以上の着色料である。たとえば組成物は、約0.1wt%〜約10wt%、または約0.2wt%〜約5wt%の一種以上の着色料を含むことができる。本明細書中で使用されるように、「着色料(colorant)」なる用語は、一般に、材料に色を付与し得る任意の物質をさす。従って、「着色料」なる用語は、水溶液で水溶性を示す染料と、水溶液で殆どまたは全く溶解性を示さない顔料の両方を包含する。
【0112】
[000129]CFRT組成物に配合し得る他の添加剤としては、抗菌剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、例えば、ポリアリーレンスルフィド組成物に関して上記したようなもの、酸化防止剤、安定剤(有機ホスファイト(organophosphite)、たとえばDoverphos(登録商標)製品、Dover Chemical Corporation製などを含む熱安定剤)、界面活性剤、流動促進剤、固体溶媒並びに、特性及び加工性を促進するために添加される他の材料が包含されるが、これらに限定されない。そのような任意選択の材料は、溶融加工装置の主供給口で組成物に添加することなどにより、慣用の加工技術に従って、慣用量でCFRT組成物中に使用することができる。
【0113】
[000130]組成物に全ての成分を添加した後、組成物は、連続繊維強化(continuous fiber reinforcement)で十分に混合され、混和することができる。最終押出物は、引抜きテープまたはリボンの形状でありえる。
【0114】
[000131]
図4に示されているように、態様によっては、本開示に従ったバリヤー層120は、以下に記載するように、CFRT材料から成形したテープ152またはテープ156などのテープである。テープは、中空体102を取り囲むために中空体102の周りに巻きつけることができる。たとえば
図4に示されているように例示的な態様によっては、テープは、中空体102の長手方向の軸110に関して一般に螺旋状に中空体102の周りに巻きつけることができる。
【0115】
[000132]本開示に従ったテープは、任意の好適なプロセスまたは装置を使用して成形することができる。本開示に従ったバリヤー層120でありえるテープを成形するための、引抜きプロセス及び装置などの好適なプロセス及び装置の例示的な態様は、以下に記載する。
【0116】
[000133]
図7を参照して、そのような押出装置の一態様が示されている。特に、装置は、バレル132の内部に据え付けられたスクリューシャフト134を含む押出機130を含む。ヒーター136(たとえば電気抵抗ヒーター)を、バレル132の外側に据え付ける。使用する間は、ホッパー138の中を通して供給原料137を押出機130に供給する。供給原料は上記のように熱可塑性樹脂材料から形成される。供給原料137は、スクリューシャフト134によりバレル132内側に運ばれて、バレル132内の摩擦力とヒーター136により加熱される。加熱されると、供給原料137はバレルフランジ138の中を通ってバレル132を出て、含浸ダイ150のダイフランジ139に入る。
【0117】
[000134]連続繊維ロービング142または複数の連続繊維ロービング142は、単数または複数のリール144からダイ150に供給される。ロービング142は通常、並べて(side-by-side)配置され、含浸前には隣接するロービングとの間の距離は最小〜すぐ近く(no distance)である。供給原料137はさらに、ダイ150の中に、またはその周囲に据え付けられたヒーター146によりダイの内側で加熱することができる。ダイは一般に、熱可塑性樹脂材料の適切な融解温度(melt temperature)をもたらす及び/または維持するのに十分な温度で操作し、これによって熱可塑性樹脂材料でロービングの所望のレベルを含浸することができる。典型的には、ダイの操作温度は熱可塑性樹脂材料の融解温度よりも高く、たとえば約200℃〜約450℃の温度である。このようにして加工すると、連続繊維ロービング142は熱可塑性樹脂材料内に埋め込まれ、これは供給原料137から加工された樹脂214でありえる。次いでこの混合物は、湿潤複合体または押出物、またはテープ152として含浸ダイ150から出ることができる。
【0118】
[000135]本明細書中で使用するように、「ロービング(roving)」なる用語は、一般に、個別(individual)繊維300の束をさす。ロービング内に含まれる繊維300は撚ることができるか、まっすぐであることができる。ロービングは、単一種の繊維(single fiber type)300または異なる種類の繊維を含むことができる。異なる繊維は個別ロービングに含まれえるか、あるいは、ロービングのそれぞれは異なる繊維種を含むことができる。ロービングで使用される連続繊維は、その質量に対して高度の引張り強さをもつ。たとえば、繊維の極限引張り強さ(ultimate tensile strength)は典型的には、約1,000〜約15,000メガパスカル(MPa)であり、態様によっては約2,000MPa〜約10,000MPaであり、及び態様によっては約3,000MPa〜約6,000MPaである。そのような引張り強さは、繊維が比較的軽量、たとえば約0.05〜約2グラム/メートル、態様によっては約0.4〜約1.5グラム/メートルの単位長さ当たりの質量(mass per unit length)であっても達成することができる。引張り強さ対単位長さ当たりの質量の比はかくして、約1,000メガパスカル/グラム/メートル(MPa/g/m)以上であり、態様によっては約4,000MPa/g/m以上であり、及び態様によっては約5,500〜約20,000MPa/g/mである。炭素繊維は連続繊維として使用するのに特に好適であり、これは典型的には、約5,000〜約7,000MPa/g/mの範囲の引張り強度対質量比をもつ。連続繊維は、約4〜約35マイクロメートルの公称直径、態様によっては約9〜約35マイクロメートルの公称直径をもつことが多い。各ロービングに含まれる繊維の数は一定であるか、ロービングごとに変動することがある。典型的には、ロービングは個別の繊維を約1,000本(fiber)〜約50,000本、態様によっては約5,000本〜約30,000本含む。
【0119】
[000136]圧力センサ147は含浸ダイ150の近くの圧力を検知して、スクリューシャフト134の回転速度、またはフィーダーの供給速度を制御することにより、押出速度を制御できるようにする。すなわち、押出機130が繊維ロービング142との相互作用に関して正確な量の樹脂214を送達するために操作できるように、圧力センサ147は含浸ダイ150の近く、たとえばマニホールドアセンブリ220の上流に配置される。含浸ダイ150を離れた後、CFRT組成物を含むことができる、含浸済ロービング142または押出物またはテープ152は、任意選択の予備造形若しくは誘導区分(示されていない)及び/または押出物の温度を制御するために予熱装置に入ってから、二つの隣接するローラー190の間に形成されたニップに入ることができる。任意選択であるが、ローラー190は含浸済ロービング142をテープ156に強固化するか、テープ152を最終テープ156に強固化(consolidate)し、並びに繊維の含浸を促進して、過剰の空隙を絞り出しやすくできる。ローラー190に加えて、他の造形装置、例えばダイシステムも使用することができる。いずれにせよ、得られる強固化テープ156はローラー上に据え付けられたトラック162と164により引っ張られる。トラック162及び164も、含浸ダイ150から、及びローラー190の中を通して含浸済ロービング142またはテープ152を引っ張る。所望により、強固化テープ156は区分171で巻き取ることができる。一般的に言えば、得られるテープは比較的薄く、典型的には約0.05〜約1ミリメートル、態様によっては約0.1〜約0.8ミリメートル、態様によっては約0.1〜約0.4ミリメートルの厚さを有する。
【0120】
[000137]本開示に従ったダイ150の一態様の斜視図は、さらに
図7及び8に示されている。示されているように、樹脂214は、樹脂の流れ方向244により示されているようにダイ150の中に流れる。樹脂214はダイ150の中に分配され、そしてロービング142と相互作用する。ロービング142はロービング走行方向282でダイ150の中を通って横に移動され、そして樹脂214でコーティングされる。次いでロービング142は樹脂214で含浸されて、これらの含浸済ロービング142はダイ150を出る。
図7に示されているように、態様によっては、含浸済ロービング142は、樹脂214によって接続され、テープ152として存在する。
図8及び9に示されているように、他の態様では、含浸済ロービング142は、ダイを別々に出て、それぞれは樹脂214で含浸されている。
【0121】
[000138]含浸ダイの中では、ロービングにポリマー樹脂214を含浸させるために、含浸ゾーン250の中を通ってロービング142が横に移動する(traverse)のが一般に、好ましい。含浸ゾーン250では、ポリマー樹脂は一般に、含浸ゾーン250に作り出された剪断力と圧力とによりロービングの中を通って横方向に推し進められて、これにより含浸の程度を大きく増進させる。これは、高い繊維含有量、たとえば約35%重量分率(weight fraction:Wf)以上、及び態様によっては約40%Wf以上のテープから複合体を成形する際に特に有用である。典型的には、ダイ150は複数の接触面252、たとえば少なくとも2つ、少なくとも3つ、4〜7つ、2〜20、2〜30、2〜40、2〜50、またはより多くの接触面252を含んで、ロービング142上に十分な程度の浸透力及び圧力を作りだす。これらの特有の形状は変動することができるが、接触面252は典型的には、湾曲した突出部片(curved lobe)、ピンなどの曲線のある表面をもつ。接触面252も典型的には、金属材料から製造される。
【0122】
[000139]
図9は、含浸ダイ150の断面図を示す。示されているように、含浸ダイ150は、マニホールドアセンブリ220及び含浸区分を含む。含浸区分は、含浸ゾーン250を含む。態様によっては、含浸区分はさらに、ゲート通路270を含む。マニホールドアセンブリ220は、その中を通ってポリマー樹脂214を流すように設けられている。たとえばマニホールドアセンブリ220は、チャネル222または複数のチャネル222を含むことができる。含浸ダイ150に提供される樹脂214は、チャネル222の中を通って流れることができる。
【0123】
[000140]
図10に示されているように、例示的な態様では、チャネル222のそれぞれの少なくとも一部は曲線をなすことができる。曲線部分によって、マニホールドアセンブリ220の中を通って樹脂214を分配するために様々な方向に樹脂214を比較的滑らかに向けなおす(redirection)ことができ、チャネル222の中を通って樹脂214を比較的滑らかに流すことができる。あるいは、チャネル222は線状でありえ、樹脂214を向けなおすのは、チャネル222の直線部分の間の比較的角張った移行領域によることができる。さらにチャネル222は、任意の好適な形状、サイズ及び/または輪郭を有することができると理解すべきである。
【0124】
[000141]
図10に示されているように、例示的な態様では、複数のチャネル222は複数の分岐ランナー(branched runner)222でありえる。ランナー222は、第一の分岐ランナー群232を含むことができる。前記第一の分岐ランナー群232は、樹脂214をマニホールドアセンブリ220に提供する最初の単数または複数種類のチャネル222から分岐している(branch off)複数のランナー222を含む。第一の分岐ランナー群232は、最初のチャネル222から分岐する2つ、3つ、4つまたはそれ以上のランナー222を含むことができる。
【0125】
[000142]所望により、ランナー222は、示されているように、第一の分岐ランナー群232から分出する(diverge from)第二の分岐ランナー群234を含むことができる。たとえば、第二の分岐ランナー群234からの複数のランナー222は、第一の分岐ランナー群232の一つ以上のランナー222から分岐することができる。第二の分岐ランナー群234は、第一の分岐ランナー群232のランナー222から分岐する2つ、3つ、4つ以上のランナー222を含むことができる。
【0126】
[000143]所望により、ランナー222は、示されているように、第二の分岐ランナー群234から分出する第三の分岐ランナー群236を含むことができる。たとえば、第三の分岐ランナー群236からの複数のランナー222は、第二の分岐ランナー群234の一つ以上のランナー222から分岐することができる。第三の分岐ランナー群236は、第二の分岐ランナー群234のランナー222から分岐する2つ、3つ、4つ以上のランナー222を含むことができる。
【0127】
[000144]示されているように、幾つかの例示的な態様によっては、複数の分岐ランナー222は、中心軸224に沿って対称の位置づけになっている。分岐ランナー222及びその対称の位置づけは、一般に、マニホールドアセンブリ220を出て、ロービング142をコーティングする樹脂214の流れが実質的にロービング142上に均一に分配されるような具合に、樹脂214を均一に分配する。これによって、一般にロービング142の均一な含浸が望ましく可能になる。
【0128】
[000145]さらに、マニホールドアセンブリ220は、態様によっては出口領域242を画定する。出口領域242は、樹脂214がマニホールドアセンブリ220を出るマニホールドアセンブリ220のその部分である。従って、出口領域242は、一般に、樹脂214が出るチャネルまたはランナー222の少なくとも下流部分を含む。態様によっては、示されているように、出口領域242に配置されたチャネルまたはランナー222の少なくとも一部は、樹脂214の流れ方向244の領域(area)が次第に増加する。領域が次第に増加すると、樹脂214がマニホールドアセンブリ220の中を通って流れるにつれて樹脂214を拡散でき、より分配することができるので、ロービング142上に樹脂214を実質的に均一に分配できる。これに加えて、またはあるいは、出口領域242に配置された様々なチャネルまたはランナー222は、樹脂214の流れ方向244に一定の領域を持つことができるか、または樹脂214の流れ方向244の領域が減少することもできる。
【0129】
[000146]示されているように、態様によっては、出口領域242に配置されたチャネルまたはランナー222のそれぞれは、そこから流れる樹脂214が、出口領域242に配置された他のチャネルまたはランナー222からの樹脂214と混和する(combine)ように配置される。出口領域242に配置された様々なチャネルまたはランナー222からの樹脂214が混和することにより、マニホールドアセンブリ220から樹脂214の単一且つ均一に分配した流れを生み出して、ロービング142を実質的に均一にコーティングする。あるいは、出口領域242に配置された様々なチャネルまたはランナー222は、そこから流れる樹脂214が、出口領域242に配置された他のチャネルまたはランナー222からの樹脂214とは別々になる(discrete)ように配置することができる。これらの態様において、複数の別々の、しかし一般に、均一分配された樹脂の流れ214は、ロービング142を実質的に均一にコーティングするためのマニホールドアセンブリ220により生み出すことができる。
【0130】
[000147]
図9に示されているように、出口領域242に配置されたチャネルまたはランナー222の少なくとも一部は、曲線の断面プロフィールをもつ。これらの曲線プロフィールにより、樹脂214は、チャネルまたはランナー222からロービング142の方へ、一般に、徐々に下向きに向けることができる。あるいは、これらのチャネルまたはランナー222は、任意の好適な断面プロフィールをもつことができる。
【0131】
[000148]
図9及び10にさらに示されているように、マニホールドアセンブリ220の中を通って流れた後、樹脂214はゲート通路270の中を通って流れることができる。ゲート通路270はマニホールドアセンブリ220と含浸ゾーン250との間に配置され、樹脂214がロービング142をコーティングするように、マニホールドアセンブリ220から樹脂214を流すために設けられる。従って、たとえば出口領域242の中を通ってマニホールドアセンブリ220を出る樹脂214は、ゲート通路270に入り、その中を通って流れることができる。
【0132】
[000149]
図9に示されているように、態様によっては、ゲート通路270は、マニホールドアセンブリ220と含浸ゾーン250との間を垂直に伸長する。しかしながら、あるいはゲート通路270は、樹脂214がその中を通って流れるように、垂直と水平との間の任意の好適な角度で伸長することができる。
【0133】
[000150]さらに
図9に示されているように、態様によっては、ゲート通路270の少なくとも一部は、樹脂214の流れ方向244で断面プロフィールが縮小する。ゲート通路270の少なくとも一部がテーパー状になっていると、その中を通って流れる樹脂214の流速を強めてからロービング142と接触できるので、ロービング142上で樹脂214を衝突(impinge)させることができる。樹脂214によるロービング142の初期衝突により、以下に記載するように、ロービングのさらなる含浸を提供する。さらに、ゲート通路270の少なくとも一部をテーパー状にすることにより、ゲート通路270とマニホールドアセンブリ220の背圧を上げることができ、これにより樹脂214がより均一に分配して、ロービング142をコーティングすることができる。あるいは、ゲート通路270は、所望によりまたは必要により、増加する断面プロフィールまたは、一般に一定の断面プロフィールをもつことができる。
【0134】
[000151]
図9に示されているように、ダイ150のマニホールドアセンブリ220及びゲート通路270を出ると、樹脂214は、ダイ150の中を通って横に移動するロービング142と接触する。上記のように、マニホールドアセンブリ220及びゲート通路270に樹脂214が分配されるため、樹脂214はロービング142を実質的に均一にコーティングすることができる。さらに態様によっては、樹脂214は、ロービング142のそれぞれの上部表面、またはロービング142のそれぞれの下部表面、またはロービング142それぞれの上部及び下部表面の両方に衝突することができる。ロービング142上で最初に衝突することによって、さらにロービング142に樹脂214を含浸させる。ロービング142上での衝突は、樹脂がロービング142に衝突するときは樹脂214の速度、樹脂がマニホールドアセンブリ220若しくはゲート通路270を出るときはロービング142の樹脂214への近接性、または他の様々な変数により促進することができる。
【0135】
[000152]
図9に示されているように、コーティングされたロービング142は、含浸ゾーン250の中を通って走行方向282に横に移動する。含浸ゾーン250は、たとえばその間に配置されたゲート通路270の中を通ってマニホールドアセンブリ220と流体連通している。含浸ゾーン250は、ロービング142に樹脂214を含浸させるように構成されている。
【0136】
[000153]たとえば上述のように、
図9及び11〜13に示されているように例示的態様においては、含浸ゾーン250は複数の接触面252を包含する。ロービング142は、含浸ゾーンの接触面252上を横に移動する。接触面252上にロービング142が衝突すると、ロービング142をコーティングする樹脂214をロービング142に含浸させるのに十分な剪断力と圧力を生み出す。
【0137】
[000154]
図9、
図12及び13に示されているように、態様によっては、含浸ゾーン250は、二つの相隔たって対向する(opposing)含浸プレート256と258の間に画定され、これは含浸区分に含むことができる。第一のプレート256は第一の内部表面257を画定し、第二のプレート258は第二の内部表面259を画定する。含浸ゾーン250は第一のプレート256と第二のプレート258との間に画定される。接触面252は、第一及び第二の内部表面257と259の両方の上で画定されるか、若しくはその両方から伸長するか、または第一及び第二の内部表面257と259の一方のみの上で画定されるか、若しくはそこから伸長することができる。
【0138】
[000155]
図9、12及び13に示されているように、例示的な態様では、接触面252は、ロービングが第一及び第二の表面257と259の上の接触面252上で交互に衝突するように、第一及び第二の表面257と259上で交互に画定することができる。かくして、ロービング142は、波形、蛇行(tortuous)または正弦曲線型の通路で接触面252を通過して、これにより剪断力が増強する。
【0139】
[000156]ロービング142が接触面252を横断する角度254は、一般に剪断力及び圧力を増強するのに十分に大きくてもよいが、繊維を破壊する過剰な力をもたらすほど大きくてはいけない。かくして、たとえば角度254は約1°〜約30°の範囲、態様によっては約5°〜約25°の範囲でありえる。
【0140】
[000157]上記のように、接触面252は典型的には、湾曲した突出部片(curved lobe)、ピンなどの曲線のある表面をもつ。示されているように例示的な態様では、このように接触面252を形成することができる複数の峰部(peak)と谷部(valley)とが画定される。さらに多くの例示的な態様では、含浸ゾーン250は波形の断面プロフィールをもつ。
図9、11〜13に示されているように例示的な一態様では、接触面252は、第一及び第二のプレート256及び258の両方の波形表面の一部を形成し、且つ波形の断面プロフィールを画定する突出部(lobe)である。
図11は、これらの態様の幾つかに従った含浸ゾーン250の少なくとも一部を形成する、その上の第二のプレート258及び様々な接触面を示す。
【0141】
[000158]他の態様では、接触面252は、第一または第二のプレート256または258のたった一方の波形表面の一部を形成する突出部である。これらの態様において、衝突は、一つのプレートの表面上の接触面252の上でのみ起きる。もう一つのプレートは、一般に平坦であるか、またはコーティングされたロービングと相互作用が全くおきないように形作ることができる。
【0142】
[000159]他の態様では、含浸ゾーン250は、複数のピン(またはロッド)を含むことができ、それぞれのピンは接触面252をもつ。ピンは、固定(static)されているか、自由回転であるか(示されていない)、または回転駆動でありえる。さらにピンは、含浸ゾーンを画定しているプレート表面に直接据え付けることができるか、または表面から隔てることができる。ピンはヒーター143により加熱できるか、または個別にその他所望により若しくは必要により加熱できることに留意すべきである。さらにピンはダイ150の内部に含まれるか、またはダイ150から外側に伸長して、その中に完全に包み込まれなくてもよい。
【0143】
[000160]さらなる態様では、接触面252及び含浸ゾーン250は、所望により若しくは必要により、ロービング142に樹脂214を含浸させるための任意の好適な形状及び/または構造体を含むことができる。
【0144】
[000161]上記のように、本開示に従った含浸ゾーン250の中を横に移動されたロービング142は、樹脂214によって含浸状態になり、含浸済ロービング142となり、場合によりテープ152は少なくとも一つのロービング142を含み、走行方向282の接触面252の下流などの、含浸ゾーン250を出ることができる。含浸ゾーン250を出る含浸済ロービング142及び場合によりテープ152は、かくして上記のように繊維含浸されたポリマー材料から成形される。少なくとも一つの繊維ロービング142は、上記のように熱可塑性樹脂材料、または樹脂214内に含まれて、CFRT材料と得られたテープ152またはテープ156を形成することができる。
【0145】
[000162]さらに
図8及び
図9に示されているように、態様によっては、面板290は含浸ゾーン250に隣接(adjoin)または隣接することができる。面板290は、含浸ゾーン250、含まれる場合には走行方向282にランドゾーン280の下流に配置することができる。面板290は、ダイ150の他の部品、例えば含浸ゾーン250若しくはランドゾーン280と接触することができるか、またはそこから間隔をあけることができる。面板290は一般に、ロービング142から余分の樹脂214を計量調節(meter)するように構成される。かくしてロービング142がその中を通って横に移動する面板290の開口部は、ロービング142がその中を通って横断するときに、開口部のサイズが、ロービング142から余分の樹脂214を除去するような大きさにすることができる。
【0146】
[000163]
図7に示されているように、他の態様では、ダイ150には面板290がなくてもよい。さらに態様によっては、本開示のダイ150の内部またはダイ150から出たテープ152の成形及び保持は、ダイ150の面板がないこと、またはダイ150から面板を除去することによって容易にすることができる。面板290を除去することによって、ダイ150を出る複数のロービング142が、面板を通って計量することによる、離れ離れになったロービング142ではなく、単一のシートまたはテープ152として出ることができる。これは潜在的に、これらのロービング142をそのようなシートまたはテープ156に後で成形する必要を排除するかもしれない。面板290を除去することによって、さらに好都合な点があるかもしれない。たとえば、除去することによって、その中をロービング142が横に移動するのを妨害しかねない、面板が樹脂214で閉塞するのを防ぐことができる。さらに、除去によって含浸ゾーン250に容易にアクセスすることができ、従って始動の間、ロービング142の破損による一時的な中断の後、または任意の好適な時間の間に、ロービング142を含浸ゾーン250に導入及び再導入しやすくできる。
【0147】
[000164]本開示に従ったテープ152、156は、任意の好適な断面形状及び/またはサイズをもちうることは理解すべきである。たとえば、そのようなテープ152、156は、一般に長方形の形状であるか、一般的に楕円若しくは円形、または他の好適な多角形あるいはその他の形状をもつことができる。さらに、含浸ゾーン250を通って横に移動した一つ以上の含浸済ロービング142は、一緒になってテープ152、156を形成することができ、様々なロービング142の樹脂214はつながってそのようなテープ152、156を形成すると理解すべきである。従って例示的な態様では、樹脂214内に埋めこまれ、通常、分散された任意の好適な数の含浸済ロービング142をもつテープ152に関して、上記の様々な量、範囲、及び/または割合を決定することができる。
【0148】
[000165]ロービング142をさらに含浸し易くするために、ダイ150内、特に含浸ゾーン250内に存在している間にこれらを張力下で保持することもできる。張力は、ロービング142または繊維のトウ当たり、約5〜約300ニュートン、態様によっては約50〜約250ニュートン、態様によっては約100〜約200ニュートンを変動することができる。
【0149】
[000166]
図14及び15に示されているように、態様によっては、ランドゾーン280は、ロービング142の走行方向282の含浸ゾーン250の下流に配置することができる。ロービング142は、ダイ150を出る前にランドゾーン280の中を横に移動することができる。
図14に示されているように、態様によっては、ランドゾーン280の少なくとも一部は、ランドゾーン280の領域が増加するように、走行方向282において増加する断面プロフィールをもつことができる。増加する部分は、ロービング142がダイ150を出やすくするように、ランドゾーン280の下流部分でありえる。あるいは、断面プロフィール若しくはその任意の部分は、減少してもよいし、また
図15に示されているように一定のままであってもよい。
【0150】
[000167]さらに、他の成分を場合により使用して、繊維の含浸を助けることができる。たとえば、「ガスジェット」アセンブリを特定の態様で使用して、個別の繊維のロービングを均等に散布しやすくすることができ、これは合体させたトウの幅全体にわたって、24,000本もの繊維まで含むことができる。これにより強度特性を均等に分散させるのに役立つ。そのようなアセンブリとしては、出口ポートを通過する移動ロービング上に一般に、垂直様式で衝突する圧縮空気または他の気体の供給を含むことができる。次いで散布したロービングを、上記のように含浸させるためにダイに導入することができる。
【0151】
[000168]本開示に従ったテープ152、156及び含浸済ロービング142は、上記のようにダイ150及び他の装置内で成形される必要がないことは理解すべきである。そのようなダイ150及び装置は単に、テープ152、156を成形するための好適な装置の例として開示されている。テープ152、156を成形するための任意の好適な装置またはプロセスを使用することは、本開示の趣旨及び範囲内である。
【0152】
[000169]本開示に従ったダイ及び方法を使用して得られたテープ152は、非常に低い空隙率(void fraction)をもつことができ、これによりその強度を高めやすくする。たとえば、空隙率は約3%以下、態様によっては約2%以下、態様によっては1.5%以下、態様によっては1%以下、及び態様によっては約0.5%以下でありえる。空隙率は、当業者に公知の方法を使用して測定することができる。たとえば空隙率は、サンプルをオーブン(たとえば約600℃で3時間)に設置して樹脂を燃やし尽くす、「樹脂燃焼(resin burn off)」試験を使用して測定することができる。次いで、残った繊維の質量を測定して、重量と体積分率(volume fraction)を計算することができる。そのような「燃焼」試験は、ASTM D 2584-08に従って実施して、繊維とポリマーマトリックスの重量を測定することができ、次いでこれを使用して、以下の等式:
【0154】
{式中、V
fは百分率としての空隙率である;
ρ
cは、公知方法、たとえば液体または気体比重瓶法(pycnometer)(たとえばヘリウム比重瓶法)を使用して測定した複合体の密度である;
ρ
tは、複合体の理論密度であり、以下の等式より決定される:
【0156】
(ρ
mはポリマーマトリックスの密度である(たとえば好適な結晶度における);
ρ
fは繊維の密度である;
W
fは繊維の重量分率である;及び
W
mはポリマーマトリックスの重量分率である)}をベースとした「空隙率」を計算することができる。
【0157】
[000170]あるいは、空隙率は、ASTM D 3171-09に従って樹脂を化学的に溶解させることによって測定することができる。「燃焼」及び「溶解(dissolution)」法は、通常、融解及び化学溶解に耐性であるガラス繊維に特に適している。しかしながら他の場合には、空隙率は、ASTM D 2734-09(方法A)に従ってポリマー、繊維、及びテープの密度をベースとして間接的に計算することができ、ここで密度はASTM D792-08方法Aにより測定することができる。もちろん、空隙率は慣用の顕微鏡装置を使用して見積もることができる。
【0158】
[000171]上記のように、含浸ダイ150を出た後、含浸済ロービング142は態様によってはテープ152を形成することができる。テープ152は、強固化テープ156に強固化することができる。それぞれのテープ152、156で使用されるロービングの数は変動しえる。しかしながら通常、テープ152、156は、2〜80個のロービングを含み、態様によっては10〜60個のロービング、態様によっては20〜50個のロービングを含むことができる。態様によっては、ロービングは、テープ152、156の中で互いにおおよそ同一距離を離して配置されるのが望ましい。しかしながら、他の態様では、ロービングの繊維が、通常、テープ152、156の隅から隅まで、たとえば上記のように一つ以上の富樹脂部分(resin rich portion)と富繊維部分(fiber rich portion)の隅から隅まで均一に分散されるように、ロービングが混和されるのが望ましい。これらの態様では、ロービングは通常、互いに区別がつかないかもしれない。たとえば
図16及び17を参照して、繊維が通常、その富繊維部分の中に均一に分散されるように混和されているロービングを含むテープ152の態様が示されている。
図16に示されているように、例示的な態様では、繊維は、通常、テープ152の長手方向の軸に沿って一方向に伸長する。
【0159】
[000172]比較的高い割合の繊維をテープ、及びそのCFRT材料で使用して、改善された強度特性を提供することができる。たとえば繊維は通常、テープまたはその材料の約25重量%〜約90重量%、態様によっては約30重量%〜約75重量%、態様によっては約35重量%〜約70重量%を構成する。同様に、(単数または複数種類の)ポリマーは、テープ152、156の約20重量%〜約75重量%、態様によっては約25重量%〜約70重量%、態様によっては約30重量%〜約65重量%を構成する。そのような割合の繊維はさらに、あるいは、体積分率(volume fraction)として測定することができる。たとえば態様によっては、CFRT材料は、約25%〜約80%、態様によっては約30%〜約70%、態様によっては約40%〜約60%、及び態様によっては約45%〜約55%の繊維体積分率を有しえる。
【0160】
[000173]従って、記載したように、例示的な態様では、本開示に従ったバリヤー層120は、CFRT材料テープ152、156から成形することができる。
図3を参照して、管材100の一態様が説明されている。示されているように、管材100は幾つかの同心の層をもつ。最内層は、金属材料から形成される中空体102である。バリヤー層120は、中空体102を取り囲み、且つ中空体102のすぐ近隣にある。バリヤー層120はCFRT材料から成形され、中空体の壁の中を通して中空体102によって運搬される液体の浸透を防ぎつつ、強度と柔軟性を提供する。さらにバリヤー層120は、中空体102によって運搬される流体(たとえば生産流体、注入流体など)並びに、管材100が使用される条件での温度条件の両方による劣化に耐えることができる。
【0161】
[000174]管材100は、多くの他の層も含むことができ、そのそれぞれは隣接する層に接着することができるか、または接着しないままでありえる。たとえば、管材100は、外部スリーブ及び外部流体バリヤーを提供し、並びに摩耗などによる外部損傷からの管材100の保護を提供するか、または環境物質に遭遇する外層822も含むことができる。外層822は、機械的損傷と、管材100の内層への海水の侵入の両方に耐えうるポリアリーレンスルフィド組成物または高密度ポリエチレンなどのポリマー材料で形成することができる。一態様に従って、外層822は、強化材料、たとえば炭素繊維、カーボンスチール繊維またはガラス繊維と共に、ポリマー材料を含む複合材料でありえる。
【0162】
[000175]フープ強度層(hoop strength layer)804は、圧力差によって管材100壁に加わった力により生じたフープ応力に耐える管材100の能力を高めるために、バリヤー層に対して外側に配置することができる。フープ強度層は、通常、厚さ約3ミリメートル〜約7ミリメートルの層を形成し得る、カーボンスチールのらせん状に巻きつけられたストリップなどから形成した金属層でありえる。フープ強度層は、管材100の曲げと内圧の両方に耐えることができる。一態様において、フープ強度層804を形成するカーボンスチールストリップは、隣接する巻き(winding)が互いに組み合って(絡み合って)より強い層を形成するように、インターロッキング・プロフィール(interlocking profile)、たとえばS-またはZ-断面構造を画定することができる。一態様において、フープ強度層は、加えられる強度のために複数の材料を含むことができる。たとえば設計及び圧力必要条件がより高い破裂強度を必要とする一態様では、第二の平坦な金属ストリップを、フープ強度層の組み合った金属ストリップの上にらせん状に巻きつけて、この層にさらなる強度を提供することができる。本明細書中でさらに記載する耐摩耗層などの途中にある(intervening)ポリマー層は、同様に、場合によりフープ強度層の二つの層の間に配置することができる。
【0163】
[000176]追加の強度層(strength layer)818及び820は、らせん状に巻きつけられた金属(一般にカーボンスチール)ストリップから形成することができる。強度層818及び820は、ポリマー性耐摩耗層817及び819によりフープ強度層804から、並びに互いに引き離すことができる。強度層818及び820は、管材100に追加のフープ強度並びに軸方向強度を提供することができる。管材100は二つの強度層818、820を含むが、管材100は、全く強度層を含まない、一つ、二つ、三つ以上の強度層を含むなど、任意の好適な数の強度層を含むことができることは理解すべきである。通常、強度層818及び820のらせん状に巻きつけられた金属ストリップは重ねられるが、組み合わせる必要はない。従って、強度層818、820は、約1ミリメートル〜約5ミリメートルの幅をもつことができる。
【0164】
[000177]途中にある耐摩耗層817、819は、ポリアリーレンスルフィド、ポリアミド、高密度ポリエチレンなどのポリマーから形成することができる。一態様において、耐摩耗層817、819は、一方向繊維、たとえばカーボンまたはガラス繊維を含む複合材料でありえる。たとえば耐摩耗層817、819は、互いの強度層の上に螺旋状に巻きつけられる引き抜き成形ポリマーテープまたはリボンなどの、ポリマーテープまたは繊維強化ポリマーテープから形成することができる。耐摩耗層817、819は、層を形成するストリップの動きにより生じかねない隣接する強度層の磨滅を防ぐことができる。耐摩耗層817、819は、隣接層の鳥かご型変形(birdcaging)も防ぐことができる。管材100の強度層818、820と同様に、耐摩耗層の数は特に限定されず、管材100は、管材100が使用される深さ及び局所的環境、中空体102により運搬される流体などに依存して、全く耐摩耗層を含まないか、または一つの耐摩耗層若しくは複数の耐摩耗層を含むことができる。耐摩耗層817、819は、比較的薄く、たとえば約0.2〜約1.5ミリメートルでありえる。
【0165】
[000178]管材100は、一般に当業界で公知のように追加の層を含むことができる。たとえば管材100は、外層822に対してすぐ内部に、絶縁層を含むことができる。存在するときには、絶縁層は、発泡体、繊維状マット、または公知のように任意の他の絶縁材料から形成することができる。たとえば、絶縁テープの単層または多層を外部強度層の上に巻きつけて、外部強度層820と外層822との間に絶縁層を形成することができる。
【0166】
[000179]
図3に示されているようにバリヤー層120を取り囲んでいる様々な層は、
図4及び5に示されているような任意の好適な管材100で同様に使用することができると理解すべきである。
【0167】
[000180]本開示の態様は、単に態様の説明を目的とする以下の実施例により説明され、本発明の範囲または実施し得る方法を限定するものとみなすべきではない。他に具体的に示さない限り、部及び百分率は重量である。
【0168】
成形及び試験法
[000181]射出成形プロセス:引張試験片は、標準ISO条件に従って、ISO527-1仕様に合わせて射出成形する。
【0169】
[000182]溶融粘度:全ての材料は、試験前に真空下、150℃で1.5時間乾燥する。溶融粘度は、316℃及び400秒
-1でキャピラリーレオメーターで測定し、一定の剪断で5分後に粘度測定を実施する。
【0170】
[000183]引張特性:ISO試験No.527(ASTM D638と技術的に同等)に従って、引張弾性率、降伏応力、降伏歪み、破断点強さ、降伏点伸び、破断点伸びなどを試験する。弾性率、歪み及び強度測定は、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmをもつ同一試験ストリップサンプルで実施する。試験温度は23℃であり、試験速度は5または50mm/分である。
【0171】
[000184]曲げ特性:ISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って、曲げ強さ及び曲げ弾性率などの曲げ特性を試験する。この試験は、64mmサポートスパン上で実施する。試験は、カットしていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部分で実施する。試験温度は23℃であり、試験速度は2mm/分である。
【0172】
[000185]荷重撓み温度(deflection temperature under load:DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2(ASTM D648-07と技術的に同等)に従って測定した。特に、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmの試験ストリップサンプルを、エッジワイズ三点曲げ試験(edgewise three-point bending test)にかけ、ここでは規定荷重(最大外部繊維応力)は1.8メガパスカル(Megapascal)であった。試験片をシリコン油浴中に下げ、試験片が0.25mm(ISO試験No.75-2に関しては0.32mm)に撓むまで、温度を2℃/分で上昇させる。
【0173】
[000186]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1(技術的にASTM D256、方法Bと同等)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチ(0.25mmベース半径)及びタイプ1試験片サイズ(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用して実施する。試験片は、一本歯フライス盤(single tooth milling machine)を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は、以下に報告するように、23℃、−30℃、または−40℃である。
【0174】
[000187]ノッチなしシャルピー衝撃強さ:ノッチなしシャルピー特性は、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)に従って試験する。試験は、タイプ1試験片(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用して実施する。試験片は一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0175】
[000188]アイゾット(Izod)ノッチ付き衝撃強さ:ノッチ付きアイゾット(Izod)特性は、ISO試験No.180(ASTM D256、方法Aと技術的に同等)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチを使用して実施する。試験片は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0176】
[000189]密度及び比重:密度は、ISO試験No.1183(ASTM D792と技術的に同等)に従って測定した。試験片は空気中で秤量し、次いで必要により完全に試験片を沈んだままにするためにおもりとワイヤを使用して蒸留水中23℃に浸漬して秤量した。
【0177】
[000190]ビカット軟化温度(Vicat softening temperature):ビカット軟化温度は、ISO試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に記載されるように、方法Aに従って荷重10Nで、方法Bに従って荷重50Nで測定した。これらはいずれも加熱速度50K/時間を使用した。
【0178】
[000191]水分吸収は、ISO試験No.62に従って測定した。試験片は、水の吸収が本質的に停止するまで(23℃/sat)、蒸留水中、23℃で浸漬する。
【0179】
[000192]複素粘度(complex viscosity):複素粘度は、TRIOSソフトウエアを使用して、25mmSS平行プレートを備えたARES-G2(TA Instruments)試験機を使用して低剪断掃引(low shear sweep)(ARES)により測定する。LVEレジメと最適試験条件を見つけるために、周波数掃引の前に、ペレットサンプル上で動的歪み掃引(dynamic strain sweep)を実施した。歪み掃引は、0.1%〜100%、周波数6.28rad/秒で実施した。それぞれのサンプルに関する動的周波数掃引(dynamic frequency sweep)は、500〜0.1rad/秒で得られ、歪み振幅(strain amplitude)は3%であった。間隙距離(gap distance)は、ペレットサンプルに関して1.5mmに維持した。温度は全てのサンプルに関して310℃に設定した。
【0180】
[000193]溶融強度及び溶融伸びは、EVF設備を備えたARES-G2で実施する。火炎試験片(flame bar)サンプルは、
図18に示されているように切り出した。試験サンプルの結晶化度を保持し、重複試験での変動を最小とするために、それぞれの試験に関して火炎試験片の同一領域を使用した。一時歪み(transient strain)は、それぞれのサンプルに0.2/秒の速度で適用した。代表曲線(representative curve)を得るために、それぞれのサンプルについて少なくとも3回試験を実施した。
【0181】
[000194]透過抵抗(permeation resistance):燃料透過研究は、SAE試験法No.J2665に従ってサンプルで実施した。すべてのサンプルに関して、ステンレススチールカップを使用した。直径3インチ(7.6センチメートル)の射出成形プラークを試験サンプルとして使用した。それぞれのサンプルの厚さは6つの異なる領域で測定した。O-リングViton(登録商標)フルオロエラストマーを、カップフランジとサンプルの間の下部ガスケット(lower gasket)として使用した(McMaster-Carrより購入、カタログ番号9464K57、A75)。フラットなViton(登録商標)フルオロエラストマー(McMaster-Carrより購入、カタログ番号86075K52、1/16”厚さ、A75)を3インチ(7.6cm)ODと2.5インチ(6.35cm)IDにダイカットし、サンプルと金属スクリーンとの間の上部ガスケットとして使用した。約200mlの燃料をカップに注ぎ、カップ装置を組み立て、蓋を指で締めた。蒸気圧が平衡に達し、蓋がトルク15in-lbに締められるまで、これを40℃のオーブンで1時間インキュベートした。燃料減少(fuel loss)は、最初の2週間は毎日、続いて試験期間の残りに関しては1週間に2回、重量測定法によりモニターした。対照試験(blank run)は、アルミニウムディスク(7.6cm直径、1.5mm厚さ)で同様に実施し、結果はサンプルから差し引いた。すべてのサンプルは二回測定した。正規化透過速度(normalized permeation rate)は、平衡期間の後に計算した。それぞれのサンプルに関する透過速度は、日々の重量減少(weight loss)(gm/日)に合った線形回帰の傾きから得られた。正規化透過速度は、透過速度を有効透過面積で割り、試験片の平均厚さを乗じることによって計算した。平均透過速度を報告する。
【0182】
[000195]耐塩性(salt resistance):塩化亜鉛に対する耐性は、23±2℃で、200時間、塩化亜鉛の50%水溶液(重量)に浸漬した引張試験サンプルを使用して試験した。次いで−30℃において、シャルピーノッチ付き衝撃強さを試験した。塩化カルシウムに対する耐性は、60±2℃で200時間、塩化カルシウムの50%水溶液(重量)に浸漬し、溶液から取り出して60±2℃でさらに200時間の引張試験片サンプルを使用して試験した。次いで、−30℃において、シャルピーノッチ付き衝撃強さを試験した。
【0183】
[000196]炭化水素体積取り込み(hydrocarbon volume uptake):吸収及び拡散試験は、供給された引張り試験片から切り出したタブ端部(tab end)を使用して実施した。それぞれの材料は、ブレント原油、炭化水素/水混合物(単発試験(one-off test)では、炭化水素のみ)に浸漬した。吸収した液体の速度及び量を測定した。炭化水素液体混合物は、以下の組成を有していた。
【0185】
[000197]すべての暴露試験は、空気循環式オーブンを使用して、2週間の期間にわたって130℃で実施し、窒素でパージすることによって空気を試験容器から除去した。試験は、蒸気圧で実施した。
【実施例】
【0186】
実施例1
[000198]組成物を形成するのに使用した材料は以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0187】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0188】
架橋剤:テレフタル酸。
【0189】
ジスルフィド:2,2-ジチオジ安息香酸(dithiodibenzoic acid)。
【0190】
潤滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0191】
[000199]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を融解且つ混合するとすぐに、ジスルフィドを重量測定供給機を使用してバレル6で供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0192】
[000200]サンプルの組成を以下の表1に提供する。サンプルの重量をベースとした重量百分率として量を提供する。
【0193】
【表3】
【0194】
[000201]形成後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表2に提供する。
【0195】
【表4】
【0196】
[000202]サンプルは230℃で2時間アニールし、物理的試験に関して再試験した。結果を以下の表3に提供する。
【0197】
【表5】
【0198】
[000203]理解されるように、サンプル2は、アニール前後でより良い引張り伸び及びより低い弾性率を示した。しかしながら、衝撃強度では改善は見られなかった。これは、ジスルフィドとポリプロピレンスルフィドとの間の鎖切断反応によると考えられる。
【0199】
実施例2
[000204]実施例1の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。ジスルフィドは、重量測定供給機を使用して押出機の様々な位置:主供給口、バレル4及びバレル6で供給した。架橋剤はバレル6で供給した。材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0200】
[000205]比較サンプル3及び4は、同一組成から形成し、異なるスクリュー設計を使用してコンパウンディングした。
【0201】
【表6】
【0202】
[000206]形成後、引張り試験片を成形し、様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表5に提供する。
【0203】
【表7】
【0204】
[000207]サンプルを230℃で2時間アニールし、物理的特性に関して再試験した。結果を以下の表6に提供する。
【0205】
【表8】
【0206】
[000208]理解されるように、サンプル10に関して、最高の引張伸びと、最高の衝撃強さが観察された。これは、加工処理の間に、架橋剤とジスルフィドの両方が同一の下流の地点で添加されたことを含む。
【0207】
[000209]
図19は、サンプル3とサンプル6に関する温度変化に対するノッチ付きシャルピー衝撃強さの関係を説明する。理解されるように、サンプル6のポリアリーレンスルフィド組成物は、温度変化の全過程にわたって優れた特性を示し、比較材料と比較して、温度変化に関して衝撃強さの増加の割合が高い。
【0208】
[000210]
図20は、サンプル3組成物(
図20A)とサンプル6組成物(
図20B)の形成で使用したポリアリーレンスルフィドの走査電子顕微鏡画像を含む。理解されるように、
図20Bの組成物では、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間に明確な境界が全くない。
【0209】
[000211]サンプル3、6及び10の引張試験片を、10wt%硫酸中に40℃または80℃で500時間浸漬した。引張り特性及び衝撃特性を、酸への暴露の前後で測定した。結果を以下の表7に提供する。
【0210】
【表9】
【0211】
[000212]高温において、酸溶液に暴露する間の、シャルピーノッチ付き衝撃強さにおける経時変化の結果を
図21に説明する。理解されるように、サンプル6とサンプル10の強度の相対損失は、比較のサンプルよりもずっと小さい。
【0212】
実施例3
[000213]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤は、重量測定供給機を使用して、主供給口及びバレル6で供給した。材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0213】
[000214]サンプルの組成を以下の表8に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0214】
【表10】
【0215】
[000215]形成後、サンプルから成形した引張り試験片を、様々な物理的特徴に関して試験した。結果を以下の表9に提供する。
【0216】
【表11】
【0217】
[000216]理解されるように、架橋剤を上流で添加したものは、組成物の衝撃特性が低下したが、下流で供給流に添加したものは、引張り伸びが118%だけ、室温における衝撃強さが43%だけ増加した。
【0218】
実施例4
[000217]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤はバレル6で重力測定供給機を使用して供給した。材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0219】
[000218]サンプルの組成を以下の表10に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0220】
【表12】
【0221】
[000219]成形後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表11に提供する。
【0222】
【表13】
【0223】
実施例5
[000220]ポリアリーレンスルフィドに関しては、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキーから入手したFortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィドを使用した以外には、実施例1に記載の材料を使用した。材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤は、バレル6で重量測定機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0224】
[000221]サンプルの組成を以下の表12に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0225】
【表14】
【0226】
[000222]成形後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表13に提供する。
【0227】
【表15】
【0228】
実施例6
[000223]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0229】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)4720−エチレン、エチルアクリレート及び無水マレイン酸のランダムターポリマー、Arkema, Inc.製。
【0230】
【化5】
【0231】
架橋剤:ハイドロキノン。
【0232】
潤滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0233】
[000224]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤は、サンプル24及び25に関しては主供給で、サンプル26及び27に関してはバレル6で、重力測定供給機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0234】
[000225]サンプルの組成を以下の表14に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして、重量百分率として提供する。
【0235】
【表16】
【0236】
[000226]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表15に提供する。
【0237】
【表17】
【0238】
実施例7
[000227]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:
PPS1−Fortron(登録商標)0203、線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0239】
PPS2−Fortron(登録商標)0205線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0240】
PPS3−Fortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0241】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0242】
架橋剤:テレフタル酸。
【0243】
潤滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0244】
[000228]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0245】
[000229]サンプルの組成を以下の表16に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0246】
【表18】
【0247】
[000230]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表17に提供する。
【0248】
【表19】
【0249】
実施例8
[000231]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0250】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0251】
架橋剤:テレフタル酸。
【0252】
潤滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0253】
[000232]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0254】
[000233]サンプルの組成を以下の表18に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0255】
【表20】
【0256】
[000234]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表19に提供する。サンプル39は射出成形可能ではなかった。
【0257】
【表21】
【0258】
実施例9
[000235]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0259】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0260】
架橋剤:テレフタル酸。
【0261】
潤滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0262】
[000236]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0263】
[000237]サンプルの組成を以下の表20に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0264】
【表22】
【0265】
[000238]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表21に提供する。
【0266】
【表23】
【0267】
[000239]サンプル41、42及び43は、複素粘度並びに、ヘンキー(Hencky)歪みの関数として溶融強度及び溶融伸びを測定するために試験した。比較材料として、実施例2に記載のサンプル3を使用した。サンプル41、42及び43は、310℃で実施し、サンプル3は290℃で実施した。結果を
図22、
図23及び
図24に示す。
【0268】
実施例10
[000240]実施例9に記載のサンプル41、42及び43を試験して、CE10(10wt%エタノール、45wt%トルエン、45wt%イソオクタン)、CM15A(15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料)、並びにメタノールなどの様々な燃料の透過を測定した。実施例2に記載のサンプルNo.4を比較材料として使用した。それぞれの材料で二つのサンプルを試験した。
【0269】
[000241]以下の表22は、それぞれの燃料について試験したサンプルに関する平均サンプル厚さ及び有効面積を提供する。
【0270】
【表24】
【0271】
[000242]それぞれの材料及びそれぞれの燃料に関する日々の重量減少を
図25〜27に示す。具体的には、
図25は、CE10の透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、
図26は、CM15Aの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、及び
図27は、メタノールの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示す。
【0272】
[000243]それぞれの燃料を用いるそれぞれのサンプルに関する平均透過速度を表23に提供する。サンプル43は、平衡に到達するのにより長い時間がかかったので、この材料に関しては42日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめ、他の材料に関しては32日と65日の間で線形回帰をあてはめたことに留意すべきである。メタノールに関しては、20日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめたが、サンプルNo.604に関しては、30日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめた。サンプルによっては負の透過を示すものもあるが、これは、アルミニウムブランクに対してサンプルの重量減少が少ないためである。
【0273】
【表25】
【0274】
[000244]本発明のこれら及び他の変形及び変更は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく当業者には実施をすることができる。さらに、様々な態様の側面は、その全体または一部の両方が交換可能であることは理解すべきである。さらに、当業者は、上記記載は単なる例示であって、請求の範囲に記載された本発明を限定するものではないことを理解するだろう。