(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-520867(P2015-520867A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】開口が全体として非円形なマルチチャネル光学系を有する投影表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20150630BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20150630BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20150630BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
H04N5/74 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-510824(P2015-510824)
(86)(22)【出願日】2013年5月8日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2013059674
(87)【国際公開番号】WO2013167705
(87)【国際公開日】20131114
(31)【優先権主張番号】102012207621.2
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ズィーラー,マルセル
【テーマコード(参考)】
2K103
5C058
【Fターム(参考)】
2K103AA05
2K103AA07
2K103AA16
2K103AA19
2K103AB04
2K103BA11
2K103BC51
2K103CA26
2K103CA53
2K103CA57
5C058BA05
5C058EA02
5C058EA26
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 投影表示装置には、画像素子(30)の画像生成面に分布する部分領域(33−1〜33−7)に個々の画像を生成するように実装された画像素子(30)が設けられる。投影表示装置はまた、個々の画像の写像が投影領域における全体画像(5)に合成されるように、チャネル(44−1〜44−7)ごとに画像素子個々に一つ割り当てられた部分領域(33−1〜33−7)を写像するように構成されたマルチチャネル光学系(40)を備える。マルチチャネル光学系(40)の少なくとも一部のチャネルは、全体画像(5)の少なくとも1つの細長い画像特徴に近似する少なくとも一つの曲線に沿って配置されることにより、各投影画像点の二次元異方性の焦点外れの挙動が得られる。このように、大きな焦点深度が、十分な焦点で投影されるべき画像特徴の合焦された表示に対する損失を受けることなく、比較的高い投影明るさで合成される。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像生成面に分布する部分領域(33−1〜33−7)に個々の画像を生成する画像素子(30)と、
複数のチャネル(44‐1〜44‐7)を含み、そのチャネルごとに、前記画像素子のひとつの割り当てられた部分領域(33−1〜33−7)を写像して、個別の画像の写像を投影領域において全体画像に合成するマルチャネル光学系(40)と
を備え、
前記マルチチャネル光学系(40)のチャネルは、前記全体画像の少なくとも一つの細長い画像特徴に相当する方向に引き延ばされた配列に配置され、投影された各画像点に、二次元異方性の焦点外れの挙動を与える
投影表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の前記チャネル(44−1〜44−7)が、幅方向よりも長手方向に多くのチャネルを有する二次元配列を形成する、投影表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の前記チャネル(44−1〜44−7)の前記二次元配列が、連続する領域を形成する、投影表示装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の前記チャネルの前記引き延ばされた配列は、前記全体画像(5)の主たる輝度勾配方向との角度が80度から100度の間である、投影表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記画像素子(30)は静的画像素子であり、前記全体画像(5)はあらかじめ定められている、投影表示装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記画像素子(30)は動的画像素子であり、前記全体画像(5)の前記少なくとも一つの細長い画像特徴の望ましい方向が事前に把握され、または許容範囲内で特定される、投影表示装置。
【請求項7】
請求項1から7のいずれか1項に記載の投影表示装置において、マルチチャネル光学系は、前記個々の画像の写像を部分的に、または完全に重畳するように構成された、投影表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の前記複数のチャネルは、前記複数のチャネルのそれぞれの包絡線を有する1以上の領域を備える二次元配列を形成し、前記領域または前記連続する領域は、その向きに関して、前記少なくともひとつの細長い画像特徴と類似している、投影表示装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の前記複数のチャネルは、マルチチャネル光学系(40)の全体と比べて小さい部分開口および深い焦点深度を有し、前記個々の画像の写像が、個別に行われて、前記マルチチャネル光学系(40)と前記投影領域の間の距離の比較的大きな範囲にわたって合焦される、投影表示装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)の少なくとも一部のチャネルが、投影距離の変化に対して記号状の部分開口配列に対応する記号的な焦点外れ挙動を得るために、記号状の部分開口配列に配置される、投影表示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の投影表示装置において、前記マルチチャネル光学系(40)は、一次元チャネル配列、同心チャネル配列、矩形チャネル配列、六角チャネル配列または確率的チャネル配列を有する、投影表示装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の投影表示装置において、
前記マルチチャネル光学系は、前記引き延ばされた配列を第1の配列とし、この第1の配列と向きが異なって引き延ばされた第2の配列に配置されたチャネルをさらに含み、
前記投影表示装置は、前記全体画像内の主たる画像特徴方向に依存して、前記第1の配列または前記第2の配列または前記第1の配列と前記第2の配列との双方を、前記全体画像の投影に対して、それぞれ作動するチャネルに割り当てられた前記画像素子(30)を作動させることで、作動させる制御手段をさらに備える、
投影表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載の投影表示装置において、個々に制御可能な複数の光源をさらに含み、各光源がマルチチャネル光学系のチャネルおよび前記画像素子(30)の割り当てられた部分領域に割り当てられ、前記画像素子(30)の部分領域を作動させることは、割り当てられた光源を作動させることを含み、または前記画像素子(30)の部分領域の作動が、割り当てられた光源を作動させることの影響を受ける、投影表示装置。
【請求項14】
全体画像(5)を表示する方法において、
画像生成面に分布する部分領域(33−1〜33−7)に個々の画像を生成する画像生成ステップと、
マルチチャネル光学系(40)のチャネル(44−1〜44−7)ごとに、各々ひとつの割り当てられた部分領域(33−1〜33−7)を写像して、個別の画像の写像が投影領域において全体画像(5)に合成する写像ステップと、
を含み、
前記マルチチャネル光学系(40)のチャネルは、前記全体画像の少なくともひとつの細長い画像特徴に相当する方向に引き延ばされた配列に配置され、投影された各画像点に、二次元異方性の焦点外れの挙動が得られる
方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記個々の画像を生成するステップは、前記マルチチャネル光学系(40)と前記投影領域の間の最小距離および最大距離に依存して実行される、、方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法において、
前記写像ステップは、
動的画像素子(30)による投影のための全体画像(5)を受け取るステップと、
前記画像生成面の前記部分領域(33−1〜33−7)に割り当てられる前記全体画像(5)の部分画像データを特定するステップと、
前記全体画像(5)の前記少なくとも一つの細長い画像特徴を検出および場所特定するステップと、
前記少なくとも一つの細長い画像特徴の向きに相当する方向に引き延ばされた配列を形成する前記マルチチャネル光学系(40)のサブセットを識別するステップと、
前記部分画像データを前記動的画像素子(30)に読み込むステップと、
前記サブセットのチャネルに割り当てられた前記画像素子の前記部分領域を作動させるステップと
を含む、
方法。
【請求項17】
コンピュータ上で稼働したときに、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【請求項18】
複数の光学チャネルを含み、少なくとも一つの一時的に異方的な全体開口を有するマルチチャネル光学系(40)と、
各々が前記光学チャネルの一つに割り当てられ、割り当てられた前記光学チャネルによって投影される一つの部分画像を各々表示して、主たるエッジ方向を有する投影全体画像に合成する複数の画像素子(1230)と、
を備え、
前記全体開口は主開口軸とこの主開口軸に垂直な副開口軸とを有し、
前記主開口軸は前記副開口軸よりも前記主たるエッジ方向に対して小さい角度を有する、
投影システム。
【請求項19】
請求項18に記載の投影システムにおいて、前記主たるエッジ方向が、前記投影全体画像が最小平均勾配を有する方向に対応する、投影システム。
【請求項20】
請求項18または19に記載の投影システムにおいて、前記主たるエッジ方向が、前記投影全体画像の主勾配方向に垂直である、投影システム。
【請求項21】
請求項20に記載の投影システムにおいて、
前記主勾配方向が、
【数1】
によって規定され、
pは、前記投影全体画像の画像内容であり、
p
i,jは、位置i,jにおける前記投影全体画像の画素値であり、
∇
xp
i,jは、前記位置i,jにおけるpの勾配のx成分であり、
∇
yp
i,jは、前記位置i,jにおけるpの勾配のy成分である
投影システム。
【請求項22】
請求項20に記載の投影システムにおいて、前記主勾配方向が、最大勾配ヒストグラム値によって規定される、投影システム。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか1項に記載の投影システムにおいて、
前記部分画像から前記投影全体画像の前記主たるエッジ方向を特定または推定する画像解析手段と、
前記マルチチャネル光学系の前記全体開口を前記主たるエッジ方向に向ける全体開口制御部と、
をさらに備える投影システム。
【請求項24】
請求項23に記載の投影システムにおいて、前記全体開口制御部は、前記主たるエッジ方向に基づいて画像素子のサブセットを選択する画像素子セレクタを含み、前記画像素子のサブセットは細長く、前記画像素子のサブセットの長軸が前記主たるエッジ方向と10度未満の角度を有する、投影システム。
【請求項25】
請求項23に記載の投影システムにおいて、強度、それぞれの画像素子に対する位置、およびそれぞれの画像素子に対する配置のうちの少なくとも1つに対して前記部分画像を調整する部分画像アジャスタをさらに備える、投影システム。
【請求項26】
画像を投影する方法において、
前記画像内に主たるエッジ方向を特定するステップと、
マルチチャネル光学系(40)内の画像素子のサブセットおよびそれぞれ割り当てられた光学チャネルのサブセットを選択するステップと、
を含み、
前記画像素子は、前記割り当てられた光学チャネルによって投影される一つの部分画像各々を表示する構成であり、
投影される前記部分画像が投影全体画像に合成され、
前記光学チャネルの選択されたサブセットが、主開口軸およびそれに垂直な副開口軸を持つ一時的な異方性全体開口に合成され、
前記選択が、前記主開口軸が前記副開口軸よりも前記主たるエッジ方向と小さい角度となるように実行される、
方法。
【請求項27】
コンピュータ上で稼働したときに、請求項26に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、投影表示装置に関する。本発明のさらなる実施形態は、全体画像を表示するための方法に関する。さらなる実施形態は、全体画像を表示するための方法を実行するためのコンピュータプログラムに関する。本発明のさらなる実施形態は、異なる投影距離に対する投影装置の写像特性を操作するための配列に関する。本発明のさらなる実施形態は、開口が全体として非円形および/または細長い形状の投影表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投影表示装置あるいは投影システムは、スクリーンや物体などの投影領域上に画像やパターンを投影するために使用される。ここで、画像やパターンとしては、スライドプロジェクタで知られるように、少なくとも比較的長い時間にわたって基本的に静止しているものが用いられる。別のタイプの投影表示装置は、ビデオプロジェクタまたはデジタルプロジェクタとして知られ、動画や画像シーケンスを投影することができる。投影表示装置や投影システムは、縞投影の原理、一般的に言うと1または複数の既知パターンの測定対象への投影、に基づく3D測定調査システムでも使用される。
【0003】
画像やパターンを合焦状態で投影領域に投影するために、投影領域は、投影表示装置またはシステムから、投影表示装置の投影光学系により合焦される所定の距離に、または少なくともこの距離近辺の許容範囲内にあるべきである。この許容範囲は、プロジェクタすなわち投影表示装置のスクリーン側焦点深度とも呼ばれる。多くの投影表示装置において、投影光学系の焦点距離は、投影表示装置と投影領域の間の所与または所望の距離に、手動または自動で調整することができる。しかし、投影光学系によって予め定められた投影方向に対して投影領域が傾斜し、それによって、投影表示装置と投影領域との距離が画像内で大きく変わってしまうことがある。例えば、投影画像の底辺が、同じ投影画像の上辺よりも投影表示装置に対して短い距離となることがある。湾曲し、不連続な、または段差のある投影領域においても、投影画像内で距離の大きな変動が起こる。この距離の変動が、場合によって、投影表示装置が確保できるスクリーン側焦点深度よりも大きくなることがある。その場合、投影光学系の最適な合焦があったとしても、投影画像の個々の領域は焦点が外れたり、ぼけて見えたりすることを考慮する必要がある。
【0004】
大きな焦点深度は、通常、高いF数によって得られる。しかし、F数が高いと、光伝搬に利用可能な有効領域も減少してしまう。したがって、F数を増大すると通常は明度が低下し、それによって、特に投影表示装置に十分に強い光源を設ける場合には、別の問題が引き起こされる。
【0005】
十分な明度を有する投影表示装置に要求される小型化に関して、マルチチャネル光学系の使用が提案されている。特許文献1には、光源と等間隔の光学チャネルとを有する投影表示装置が開示されている。投影レンズのピッチを画像化する構造に対してわずかに小さくすることによって、各画像化構造と各投影光学系とのオフセットが配列の中心から外側に増加することとなり、有限の距離で実際の個々の投影画像写像が重畳されることになる。いくつかのチャネルへ分離することで、画像化する構造物と投影光学系との間の距離、すなわち構造的な高さを削減することが可能となるので、他の有利な効果とともに小型化が実現できる。特許文献1に開示される投影表示装置では、しかし、光学チャネルが均等に配置されているため全体的な開口が対称的な設計となり、そのため、焦点深度範囲が対称配置となる。
【0006】
投影表示装置の利用分野によっては、投影される画像または少なくともそこに含まれる画像特徴について、事前に把握される。例えば、対象物の3D測定のための縞投影の場合、縞パターンの向きが既知である。この結果、第一の方向、例えば縞パターンの縞に基本的に平行な方向と、第二の方向、例えば第一の方向に基本的に垂直な方向とで、投影表示装置によって得られる焦点深度に対する要求が異なることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 102009024894(特表2012530263号公報)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W.J.Smith“Modern Optical Engineering” by ,McGraw-Hill,2007
【非特許文献2】M.Sieler,P.Schreiber,P.Dannberg、A.BraeuerおよびA. Tuennermann“Ultraslim fixed pattern projectors with inherent homogenization of illumination”Appl.Opt.51、64−74(2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、可能な限りの投影明るさが、投影すべき画像またはパターンの少なくともひとつの画像特徴にその方向が対応する方向依存焦点深度と同時に実現される、全体画像を表示する投影表示装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1または請求項18に記載される投影表示装置、請求項14または請求項26に記載される全体画像を投影する方法、もしくは請求項17または27に記載されるコンピュータプログラムによって解決される。
【0011】
本発明の実施形態は、画像素子とマルチチャネル光学系とを有する投影表示装置を提供する。画像素子は、個々の画像を画像素子の画像生成面の部分領域の分布に生成するように構成される。マルチチャネル光学系は、チャネルを備え、チャネルの各々ごとに画像素子の一つの割り当てられた部分領域を写像して、個別の画像の写像が投影領域において全体画像に合成される。マルチチャネル光学系のチャネルは、全体画像の少なくとも一つの細長い画像特徴に相当する方向に引き延ばされた配列(細長い配列)に配置される。このようにして、マルチチャネル光学系は、各投影画像点または画素の二次元的な異方的焦点外れの挙動を示す。
【0012】
実施形態は、画像の明るさおよび十分な焦点深度に対する要求を、投影される画像またはパターンについての特定の(事前の)情報(および画像自体の適切な構図)と統合することが可能であるということに基づく。したがって、投影される画像についての事前情報を用いて、画像内でわずかにだけ変化する画像、または全く変化しない画像の方向および/または領域を識別することができる。この/これらの方向に沿っては、少なくとも焦点外れの影響が特に投影全体画像の辺縁部で起きても許容される場合に、比較的浅い焦点深度しか得られなくても良いはずである。例えば、3D測定に使用される縞パターンでは、縞はそのような方向を定義しており、縞に平行な方向では焦点深度が比較的浅くても、画像内容はこの方向に沿ってどのようにも変化しない、または非常にわずかにしか変化しないので、通常は十分である。これに対し、この方向を全体画像内で使用して、より広い光伝搬領域をより明るい投影明度で提供することができる。言い換えると、マルチチャネル光学系の全体開口を投影方向に垂直な平面内で異方的とすることができ、これにより、マルチチャネル光学系は、少なくともひとつの画像特徴に沿う方向に、それに垂直な方向よりも大きな全体開口を有することができる。全体開口の異方性、またはマルチチャネル光学系の焦点外れの挙動は、特に、部分開口配列による写像の変動および/または「ぼけ」の形状となって現れる。投影距離の理想投影距離からのずれが増大すると、ぼけは、部分開口配列の形状を帯びるようになる。焦点外れの挙動の異方性は、マルチチャネル光学系の投影方向および/または光軸に垂直なひとつの平面内に延びる方向に対して方向依存性であると考えられる。実施形態によると、マルチチャネル光学系の全体開口のこの異方性は、画像内容に見込まれる異方性に従って方向付けられるので、一方向に小さい全体開口は、投影される画像の合焦された表示には(可視的なおよび/またはスプリアスな)影響しない。これは、投影される画像内での投影距離が、例えば投影方向に対して傾斜または湾曲した投影領域に起因して大きく変動する場合にも当てはまる。マルチチャネル光学系の個々のチャネルは(高いスクリーン側F数に従って)各々比較的小さな個々の開口を有するので、個々の画像自体もそれぞれ比較的高い焦点深度で写像され、そのため、画像の上記異方性方向(例えば、縞パターンの縞に平行な方向)に対して斜めにまたは垂直に変化する画像内容は、個々の画像内でより大きい焦点深度範囲で投影される。より大きい焦点深度範囲が、意義あるまたは重要な画像特徴の合焦表示における損失を被る必要なしに、比較的高い投影明度と同時に実現される。
【0013】
投影される画像の画像内容は、全体画像の少なくともひとつの細長い画像特徴を含んでいればよい。そのような画像特徴は、例えば、明暗のエッジ、明度勾配、階調レベル勾配、色勾配などである。画像特徴の長手方向は、画像値(例えば、階調レベル値)がこの方向においてわずかにだけ変動することによって規定できる。例えば、画像特徴の長手方向は、勾配の積分値が画像特徴の範囲にわたって最小となる方向であればよい。細長い画像特徴は、必ずしも直線である必要はなく、曲線であってもよい。マルチチャネル光学系の細長配列(またはその部分)は、そのような曲線を、いくつかのチャネルの湾曲した配列として写像するか、あるいは直線チャネル配列によってそれを近似することができる。
【0014】
マルチチャネル光学系は、第1の方向における第1の全体開口と、第2の方向における第1の全体開口とは異なる第2の全体開口とを有することができる。第2の方向は第1の方向とは異なり、第1の方向に対して斜めまたは垂直である。
【0015】
マルチチャネル光学系のチャネルは、幅方向よりも長手方向に多くのチャネルを有する二次元配列を形成していればよい。長手方向は、細長い画像特徴、またはその方向から最大で±20度、好ましくは最大で±10度、より好ましくは最大で±20度ずれた方向に対応する。このように、マルチチャネル光学系が長手方向に、上述のようなより大きな人為的開口を、少なくともひとつの画像特徴に沿う方向で有する構成を実現することができる。
【0016】
マルチチャネル光学系のチャネルの細長配列は、全体画像の主たる強度勾配方向と80〜100度の角度を有することができる。主たる強度勾配方向は、例えば、全体画像の解析に基づいて決定できる。例えば、強度勾配を全体画像のいくつかの位置に特定すること、および結果を平均化することが可能である。そして、平均強度勾配の方向が主たる強度勾配方向となる。強度勾配は、マルチチャネル光学系のチャネルに割り当てられる全体画像の部分領域に関連するものでもよい(例えば、この部分領域内で発生する最大勾配という意味において)。強度勾配は、明度値、階調レベル、色強度、または画像処理において一般的な他の量に関するものでよい。
【0017】
代替の実施形態によると、マルチチャネル光学系の上記チャネルを列状に配置することができる。ここで、列の数は、1列内の最大チャネル数よりも少なければよい。
【0018】
画像素子は静止画像素子であり、全体画像が予め定められる、すなわち、全体画像が既知であるものとすることができる。これは、例えば縞パターンによる3D測定の適用分野が特にそうである。例えばシャドウマスクのような受動画像素子を静止画像素子として使用することができる。代替の実施形態では、デジタル画像素子のような動的画像素子または能動画像素子を使用できる。画像内容に合う投影明るさおよび焦点深度に関してマルチチャネル光学系の異方的全体開口から得られる選択肢を動的画像素子でも利用するために、全体画像の少なくともひとつの画像特徴の好適な方向が、動作中に(投影前に)既知であるか、または特定されることを想定することができる。ある実施形態では、方向が少なくとも許容範囲内(例えば、±5度から20度)で既知であり、または特定できれば、十分である。好適な方向(例えば、主たる境界(エッジ)方向)を知ることによって、この方向に可能な限り近似する画像素子の部分領域の配列(および、おそらくは、これらの部分領域に割り当てられた光源)を、具体的に選択および使用することができる。この場合、マルチチャネル光学系は、例えば、個々のチャネルについて少なくとも2方向において基本的に同じ全体開口を有する矩形、円形または六角配列を備えることもできる。マルチチャネル光学系内で、画像素子のそれぞれの部分領域、およびおそらくは投影表示の動作中に割り当てられた光源のそれぞれの作動によって、全体画像の少なくとも1つの画像特徴に近似する上記少なくともひとつの細長配列に配置されるマルチチャネル光学系の少なくとも一部のチャネルの集合を作動させることができる。二つの例でこれを示す。投影すべき第1の画像が、基本的に鉛直な好適な方向からなる、すなわち鉛直の縞パターン内あるものとする。この好適な方向を特定した後に、画像素子の部分領域および/または場合によっては割り当てられている光源を作動させ、これによって、基本的に鉛直な配列が得られる(ここで、「鉛直」方向は、投影された全体画像を見る者の視覚に対するものである)。これに対し、投影すべき第2の画像が、基本的に水平の好適な方向からなり、例えば、水平縞パターンの形態であるとする。この水平な好適な方向を特定した後に、画像素子の別の部分領域および/または場合によっては割り当てられている光源を作動させ、これによって、基本的に水平な配列が得られる。ある実施形態によると、画像素子およびマルチチャネル光学系は、例えば、部分領域またはチャネルの十字形または丁字形部品を備え、基本的に鉛直な好適な方向では、十字の鉛直部分の部分領域またはチャネルを使用し、本質的に水平な好適な方向では、水平部分の部分領域またはチャネルを使用することができる。しかし、マルチチャネル光学系の画像素子の部分領域またはチャネルの一部は使用されないままであるので、画像の明度に寄与することができない。しかし、少なくとも可能な限り高い焦点深度が必要となる方向において、画像の明るさは、1つの部分領域/チャネルのみを用いる場合よりも明るく、同時に焦点深度は、全ての部分領域/チャネルを用いる場合よりも深い。
【0019】
上述したように、画像素子は部分領域の、それによってそれぞれの個々の画像が生成される部分領域の分布を構成することができる。マルチチャネル光学系の各チャネルは、通常は画像素子の部分領域の1つに割り当てられるので、画像素子の部分領域も、全体画像の少なくとも1つの伸長画像特徴に近似する細長配列に配置されることができる。このように、画像素子は、マルチチャネル光学系と同様に、何らかの方向依存型の見かけ上の開口(全体開口)を有することもできる。
【0020】
ある実施形態では、マルチチャネル光学系は、画像生成面に基本的に平行な投影面において投影光学系の一次元配列を構成することができる。投影光学系配列は、個々の画像の写像が投影領域における全体画像に重畳されるように、投影領域の方向における各々の光軸に沿う画像素子の1つの割り当てられた個々の画像各々を写像するように構成されることができる。したがって、個々の画像の写像のこの重畳は、個々の画像の写像を全体画像に合成する特別な場合である。代替の実施形態において、個々の画像の写像の部分的な重畳、すなわち、個々の画像の写像の重なりがもたらされるような混合形態も可能である。
【0021】
マルチチャネル光学系のチャネルは、チャネルのそれぞれの包絡線を持つ1以上の領域を備える二次元配列を形成することができる。領域または複数の領域は連続領域であればよい。あるいは、代替的に、2以上の領域が配置されることが前提とされてもよい。
【0022】
マルチチャネル光学系全体の全体開口と比較して、マルチチャネル光学系のチャネルは小さい部分開口および高い焦点深度を有することができるので、個々に考慮される個々の画像の写像は、マルチチャネル光学系と投影領域の間の距離の(全体画像の投影と比較して)比較的大きな範囲にわたって合焦される。マルチチャネル光学系のチャネルは、過焦点の挙動を示し得る。
【0023】
マルチチャネル光学系のチャネルの少なくともいくつかは、投影距離を変えるための記号(シンボル)状の焦点外れの挙動を得るために、記号状の部分開口配列に配置されることができ、それは記号状の部分開口配列に対応する。投影距離の理想投影距離からのずれが増大すると、マルチチャネル光学系の焦点外れの挙動が増大するので、全体画像は合焦されないで重畳されるだけであるが、個々の画像の写像は、記号状の部分開口配列に対応する投影領域上の記号を形成していく。例えば、画像素子の部分領域は、文字またはレタリングを投影するように構成されることができる。部分開口配列は、ロゴまたはグラフィックサインの形態でシンボリックにデザインされることができる。投影領域が理想投影距離、または少なくともマルチチャネル光学系の焦点深度範囲内にある場合、文字またはレタリングは投影領域上に投影される。一方、投影領域が投影表示装置に向かって近づくように移動された場合には、ロゴ/グラフィックサインの形態の文字/レタリングは、ぼやける。投影領域が、理想投影距離または焦点深度範囲から、投影表示装置からさらに離れるように移動された場合には、文字/文書もぼやけ、記号状の部分領域配列の形状に対応する点模様が投影領域に発生する。
【0024】
マルチチャネル光学系は、一次元チャネル配列、同心チャネル配列、矩形チャネル配列、六角チャネル配列または確率的チャネル配列を備えることができる。
【0025】
マルチチャネル光学系内において、チャネルの各々は、例えば、フィールドレンズおよび投影レンズを含む投影光学系を備えることができる。フィールドレンズは、例えば、光源と画像素子の間に配置される。投影レンズは、例えば、画像素子と投影領域の間に配置される。言い換えると、各チャネルは、伝搬方向において画像素子のそれぞれの部分領域の前方に置かれたフィールドレンズ、および伝搬方向においてそれぞれの部分領域に背後に置かれた投影レンズを備える。投影表示装置のマルチチャネル光学系の投影光学系は、画像素子の割り当てられた部分領域に対する分散を示し得るので、投影領域に重畳された全体画像は実像または虚像である。投影光学系と画像素子の割り当てられた部分領域との間の分散または中心への圧縮若しくは拡大によって、特に、投影領域における全体画像の投影距離を調整することができる。
【0026】
マルチチャネル光学系は、投影光学系からの平行化ビームを再合焦するのに実装される個々のチャネルの投影光学系と協働する下流側全体レンズをさらに備えることができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態では、下流側全体レンズが可変焦点長を有する光学系として実装されることができるので、平均投影距離が調整可能となる。
【0028】
さらなる実施形態は、いくつかの光学チャネルを含むマルチチャネル光学系を有する投影システムを提供する。マルチチャネル光学系は、主開口軸およびそれに垂直な副開口軸を有する少なくとも一時的に異方性の全体開口を備える。また、投影システムは、光学チャネルの1つに各々が割り当てられ、割り当てられた光学チャネルによって投影される1つの部分画像を各々表示するように構成された複数の画像素子を備える。投影された部分画像は、主たるエッジ方向を構成する投影された全体画像に合成される。主開口軸は、主たるエッジ方向に対して副開口軸よりも小さい角度を囲む。
【0029】
マルチチャネル光学系の全体開口は、永続的に異方性となり、または単に一時的に異方性となることができる。一時的な異方性は、例えば、個々の光学チャネルを非作動とすることによって起こるので、残りの作動光学チャネルは細長配列を有する。そのような細長配列は、(通常は長手方向といわれる)空間的な方向に、他の方向(例えば、通常は伝搬方向といわれる方向)よりも大きな伸張を有する。全体開口は、通常は、マルチチャネル光学系の単数の光軸/複数の光軸に垂直な平面において走査される。マルチチャネル光学系の全体開口の少なくとも一時的な異方性によって、異方性の焦点外れの挙動が引き起こされる。少なくとも一時的な異方性の全体開口および投影される全体画像は、理想的には主開口軸が主たるエッジ方向に平行に向かうように、投影システムの合焦の挙動を向上するために相互に方向付けられる。マルチチャネル光学系の個々の光学チャネルまたは個々の割当て画像の既述の選択的な非作動および作動とは別に、全体投影システム(またはその一部のみ)も光軸の周りに回転することができる。通常は、投影される全体画像の画像内容の補償回転も、全体画像が通常の向きで投影される範囲で実行されるべきである。ある実施形態では、主開口軸は連続的な態様では回転されずに、不連続な段階でのみ回転されることができる。これらの場合、投影システムの合焦の挙動の改善は、主開口軸が主たるエッジ方向に対して可能な最小角度(いずれの場合でも、主たるエッジ方向と副開口軸との角度よりも小さい)を構成することにおいても実現できる。主開口軸および副開口軸の原理は、例えば、楕円の記述の関連において知られている。
【0030】
主たるエッジ方向は、表示される画像内容からもたらされる。特に、主たるエッジ方向は、(例えば、3D測定の目的で使用されるような縞パターンの場合において)事前に知得されることができ、全体画像の内容または画像片にわたる算術的平均化によって、幾何学的平均化によって、勾配ヒストグラムを評価することによって、または他の統計的評価によって特定されることができる。画像内容は、同時に所望の照射強度などを維持しつつ(または少なくとも照射強度などにおける深刻な損失を受けなければならないことなく)、技術的効果を取得するために、すなわち、特に、投影システムの(主体的な)合焦の挙動を改善するために評価および使用される情報を転送する。言い換えると、提案される投影システムは、投影全体画像を見る者によって視認されるぼけを、表示された画像内容との関連であまり強く視認されないように変換することができる。この効果は、人間によって視認されないオーディオ信号の部分が符号化中にあまりまたは全く考慮されないためにノイズフロア内に消えるといった感覚的オーディオ符号化の効果と比較されることができる。用語「エッジ方向」または「主たるエッジ方向」は、エッジ(例えば、明暗のエッジまたは色のエッジ)に限定されず、移動する、またはなだらかな色遷移に関するものとすることもできる。一方で、ぼけは、通常は急峻なエッジおよび角で最も強く視認されるので、ハードエッジのための重み付けを与えることができる。
【0031】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照して以下により詳細に記載され、ここで、同じまたは等しい要素は同じ参照符号で示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、標準的な単一開口プロジェクタの焦点深度を求めるための光学系の模式側面図である。
【
図2A】
図2Aは、線格子の拡大写像する標準的な単一開口プロジェクタの模式斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、線格子の拡大写像する標準的な単一開口プロジェクタの別の模式斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、線格子の拡大写像する標準的な単一開口プロジェクタのさらに別の模式斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、y軸に平行な向きを有する構造についての焦点深度を増大させるために適合した射出瞳を有する標準的な単一開口プロジェクタの模式斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、y軸に平行な向きを有する構造についての焦点深度を増大させるために適合した射出瞳を有する標準的な単一開口プロジェクタの別の模式斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、y軸に平行な向きを有する構造についての焦点深度を増大させるために適合した射出瞳を有する標準的な単一開口プロジェクタのさらに別の模式斜視図である。
【
図4】
図4は、均等に配置された投影チャネルを持つアレイプロジェクタの模式斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態によるレンズ投影のためのアレイプロジェクタの模式斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態によるレンズ投影のためのアレイプロジェクタの別の模式斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、投影距離に依存して変動する投影表示の焦点外れの挙動の斜視図であり、マルチチャネル光学系はシンボル状の部分開口配列または配列を備える。
【
図6B】
図6Bは、投影距離に依存して変動する投影表示の焦点外れの挙動の別の斜視図であり、マルチチャネル光学系はシンボル状の部分開口配列または配列を備える。
【
図6C】
図6Cは、投影距離に依存して変動する投影表示の焦点外れの挙動の更に別の斜視図であり、マルチチャネル光学系はシンボル状の部分開口配列または配列を備える。
【
図7】
図7は、実施形態による、全体画像を表示するための方法を示す模式フロー図である。
【
図8】
図8は、ここに記載される実施形態の基礎または開始点となる投影表示装置の模式ブロック図である。
【
図9】
図9は、ここに記載される実施形態の基礎または開始点となる投影表示装置の模式側面図である。
【
図10】
図10は、ここに記載される実施形態の基礎または開始点となる投影表示装置の模式側面図である。
【
図11】
図11は、ここに記載される実施形態の基礎または開始点となる投影表示装置の側面図である。
【
図12】
図12は、さらなる実施形態による投影システムの模式図である。
【
図14】
図14は、異なるエッジ方向を有するさらに異なる画像の投影中の
図12の投影システムの模式図である。
【
図15】
図15は、マルチチャネル光学系の現在の主開口軸の動的特定のための画像解析手段を持つ投影システムの模式ブロック図である。
【
図16】
図16は、
図15の投影システムに基づき、さらに画像素子セレクタを備える投影システムの模式ブロック図である。
【
図17】
図17は、画像内の平均主勾配方向の特定についての模式図である。
【
図18】
図18は、ヒストグラムに基づく画像内の主勾配方向の特定についての模式図である。
【
図19】
図19は、主たるエッジ方向と画像内の主勾配方向との関連についての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を図面に基づいて以下により詳細に説明する前に、以降の実施形態では、図面において同じ要素または機能的に等しい要素には同じ参照符号が付されることを注記しておく。したがって、同じ参照符号を有する要素の説明は相互に交換可能であり、および/または異なる実施形態においても使用できる。
【0034】
以下に説明する実施形態は、システムの小型化および投影光束に関する高い要求の取り扱い(例えば焦点深度の増大)に関する。
【0035】
プロジェクタのスクリーン側焦点深度は、
図1による投影距離D、瞳経Aおよび許容可能な焦点外れ角βから、幾何学的考察に従って、以下の式によって得られる(非特許文献1)。
【数1】
【0036】
図1は、標準的な単一開口プロジェクタの焦点深度を求めるための2Dレイアウトを示す。光ビームが、画像素子3(スライドまたは構造化マスク)によって、投影レンズ4の方向に出射される。光は、
図1に不図示の光源または画像素子3自体のいずれかから発生する。光が光源から発生する場合、それは画像素子3の左側に配置されていればよく、この場合、画像素子は、光源から出射された光によって照射される。あるいは、光源が画像素子の右側に配置されていてもよく、この場合、画像素子3は、例えば、反射画像素子として動作する。投影レンズ4は、画像素子3によって出射された光を、投影レンズから距離Dにある投影領域上に合焦する。
図1および式(1)によると、焦点深度範囲は、近焦点深度範囲δNと遠焦点深度範囲δFとに分割され、D−δNからD−δFの範囲となる。関係式(1)をより詳細に検討すると、「開口」ともいわれる瞳径Aが分母にあり、瞳径が大きいほど焦点深度が低くなることを示していることが分かる。一方で、瞳径Aはまた、プロジェクタによって投影できる光の量に影響する。より高い焦点深度のために瞳径を小さくすると、瞳を通過できる光は少なくなり、これによってはやり投影画像は暗くなる。
【0037】
上述の要求は、例えば、標準的な単一開口プロジェクタによって満たすことができる。
図2A、2Bおよび2Cは、そのような標準的な単一開口プロジェクタを異なる斜視図で表すものである。単一開口プロジェクタは、その光学構造に起因して、小型化(最小焦点長)と伝搬可能な光束(スライド領域)とのトレードオフが常に存在する(非引用文献1参照)。
図2A−2Cは、そのような標準的な投影システムによる、一次元構造物がy軸に平行に延びる線パターンの投影領域上への拡大された写像を示す。投影レンズ4の射出瞳が円形であることに起因して、上述の関係式(1)により、x方向における焦点深度がy方向の焦点深度に対応する。
【0038】
好適な方向(本例では、x方向)における焦点深度の増加は、投影光学系の射出瞳(
図1における開口A)を狭めるか、または制限することで達成される。これは、機械的開口によって、または瞳の非対称照射によって実現される。
図3A、3Bおよび3Cは、瞳34がx方向にかなり狭められた状態の
図2A−2Cのシステムのそれぞれの模式斜視図を示す。特に、
図3A−3Cは、y軸に平行な向きを有する構造物についての焦点深度を増加するための適合された射出瞳を有する標準的な単一開口プロジェクタを示す。この配列によって、x軸における焦点深度は、スクリーン距離をz方向に変える場合に、y方向における焦点深度に対して大幅に増加する。再合焦せずにスクリーン距離を変化させると、特にy方向にぼけが発生する一方で、x軸に沿う焦点またはコントラストはほとんど維持される。例えば、眼科的な試験のためのいくつかのスリットランプは、そのような配列を有している。ケーラーによる照射光学系は、投影光学系の瞳内の光源の写像を生成する。投影光学系は、上流側のスリット形状の開口を患者の目に写像する。あるシステムでは、投影光学系の瞳にフィラメントの非常に非対称な写像を照射するために、光源のフィラメントがスリットの向きに平行に向けられることが好適である。したがって、光源の線形状は、瞳を非常に非対称に照射する。したがって、投影された線の焦点深度は、その向きに鉛直に増加する。投影されたスリットは、異なる距離のために、特に延在方向に沿って拡散される。これによって、目の検査中に、合焦された線を広い動作範囲にわたって写像することが可能となる。
【0039】
さらなる例は、いわゆるScheinerまたはHartmann開口であり、それは写像光学系の瞳内に直接配置され、光学装置を調整するための補助手段となる。Scheiner開口は、対象点の平行化ビームが、正しく合焦された場合に点画像に単に重畳されるように、光学装置の焦点深度を操作する。それが誤配列されると、写像が所定の瞳形状に従って再び離散される。このようにして人工的に低減または操作された焦点深度は、望遠鏡などの光学構造体の配列を容易とする。
【0040】
他の変形例は、特許文献1および非特許文献2に詳細が記載されるマイクロプロジェクタの多開口配列(配列投影)である。この多開口アプローチによって、投影システムのシステム構造長を伝搬光束(光束)から分離することが可能となり、小型かつ明るい投影システムが可能となる。プロジェクタ配列内の部分開口の均等な二次元配列が記載され、全長の焦点深度は配列の全長によって決定される。
図4に、均等に配置された投影チャネルを有するアレイプロジェクタの模式斜視図を示す。光源1によってバックライト点灯する領域を有する四角形において7×7の密に詰められた個々のプロジェクタの配列が例示される。個々のプロジェクタは、それぞれ、フィールドレンズ2、画像素子(例えばスライド、構造マスク、LCD素子、またはより一般的には画像素子の部分領域)、および投影レンズ4を備える。
【0041】
図4に示すアプローチでは、許容投影距離が比較的狭い範囲に限定される。これは、アレイプロジェクタの個別のプロジェクタによって投影される個々の画像の写像の重畳が、この距離範囲に対してのみ所望の態様で作用することによる。理想投影距離からのずれの中で、個々の写像はもはや一致しては重畳されないので、個々の画像の個別の写像は大きな焦点で個々に投影されるが、全体画像は焦点外れとなる。
【0042】
実施形態は、投影システムの焦点をぼかすときの一般的な写像特性の操作(例えば、焦点深度の増大)を行うようにして、アレイプロジェクタ内の部分開口の配列またはそれらの全体周囲形状(エンベロープ)を開示する。
【0043】
ある実施形態では、瞳全体の形または部分開口の包絡線(全体周囲形状)が、投影される画像またはパターンに適合される。これらの実施形態の一部では、一次元構造物を投影するための焦点深度の増大がこのようにして得られる。これらの実施形態の他のサブグループにおいては、部分開口の配列がパターンの形態で与えられる。
【0044】
一例として、
図5Aおよび5Bに基づき、まず、列方向に配置された投影チャネルによって焦点深度を増大させること、すなわち、一次元構造物を投影するために焦点深度を増加させることを示す。例えば、楕円、長方形または線形(例えば、x:y=1:7の辺比を有する)という、全体として非常に非対称な瞳を形成することによって、スクリーンをz軸に沿ってずらすときに主にy方向の投影パターンのぼけが発生する。線がy軸に平行に向いた線格子の投影中に、スクリーン距離をz軸に沿って変化させるときに画像のぼけは主に縞パターンに平行に発生する。グリッドパターンに垂直なコントラストが、非常に大きな焦点深度範囲(距離範囲)にわたって維持される。個々のチャネル内の短い焦点距離に起因して、多開口配列によって短い投影光学系が可能となり、同時に領域配列によって大きな光束の伝搬が確保される。
【0045】
図5Aおよび5Bに示す投影表示装置は、画像素子30およびマルチチャネル光学系40を備える。ここに示す例において、画像素子30は、7個の部分領域33−1〜33−7を備える。これらの部分領域33−1〜33−7は、画像素子30の画像平面において、一次元配列として配置される。部分領域33−1〜33−7の各々は、それぞれのパターンを有する画像素子30を通過または反射された光を投影表示装置の動作中に 与える構造物を備える。部分領域33−1〜33−7のそれぞれの構造物は、ガラス構造物上のカラーマスクのような静的(例えば、不変の)構造物として構成されることができる。
【0046】
特に、縞パターンによる3D測定に使用される投影表示装置では、縞パターンは、画像素子のそれぞれの部分領域における静的構造物として実装される。縞パターンは、例えば、三角法のパターン、すなわち、例えば細かい2値線パターンによって再現される、三角関数に従って変化する階調レベル勾配または明度勾配とすることができる。それぞれの部分領域に実装された静的構造物は、マルチチャネル光学系の最大全体開口の方向に平行または本質的に平行に延びる向きを有することができる。このように、マルチチャネル光学系の全体開口、および画像素子の静的構造物によって生成された全体画像は相互に調整され、これにより、焦点深度は全体画像内の異なる画像方向に対して異なることになり、したがって、画像構造体の合焦表示に対する要件に適合される。
【0047】
代替の実施形態では、動作中に部分領域33−1〜33−7を構成可能または制御可能とすることができ、異なるパターンが異なる時間に(動的に)部分領域によって生成されることができる。この目的のため、それぞれの技術、例えば、LCD(液晶表示装置)、LCOS(liquid crystal on silicon)またはDMD(デジタルマイクロミラー装置)を用いることができる。使用される技術に応じて、投影に用いられる光は、画像素子30の部分領域を通過し、またはそれに反射されればよい。個別のチップが各部分領域33−1〜33−7に対して与えられ、または一部もしくは全部の部分領域33−1〜33−7が1つのチップ上に一体化される。
【0048】
マルチチャネル光学系40は7個の光学チャネル44−1〜44−7を備え、
図5Aおよび5Bに、それぞれの投影レンズにより模式的に表される。光学チャネル44−1〜44−7の各々は、画像素子30の部分領域33−1〜33−7の1つに割り当てられて、それを写像する。画像素子30のそれぞれの部分領域の個々の画像の写像は、投影領域内または投影領域上の全体画像5に合成される。この個々の画像の写像の合成は、重畳、「タイル状に並べられた」配列、または個々の画像の写像の部分的な重なりとすることができる。
図5Aおよび5Bにおいては、全体画像5は、投影領域上に投影された鉛直縞パターンとして表示される。投影例では、全体画像5は、個々の画像の写像の重畳によって生成される。比較において、
図5Aおよび5Bは、低い投影距離での個々の画像の写像の重畳に起因して得られる第2の全体画像51を示す。第2の全体画像51に基づいて、非常に短い投影距離であっても、縞パターンを十分な焦点で投影できることが分かる。
【0049】
図5Aおよび5Bに示す実施形態では、マルチチャネル光学系のチャネルは細長配列に配置される。この例では、細長配列は直線的である。投影された全体画像5におけるように、縞パターンは、y方向(以降において、「鉛直」方向ともいう)に平行に延びる複数の細長画像特徴を備える。細長画像特徴は、例えば、縞パターンの5本の黒い鉛直バーとなる。あるいは、明暗の遷移を細長画像特徴とみなすことも可能である。
図5Aおよび5Bにおいて、マルチチャネル光学系40のチャネルによって形成された細長配列が、その向きに関して、縞パターン5に含まれる細長鉛直画像特徴に近似することが分かる。したがって、y方向において、すなわち、少なくとも1つの細長画像特徴に沿って、マルチチャネル光学系40は、それに垂直、すなわち、ここではx方向に鉛直な方向よりも大きな人工的開口を備える。このように、y方向に比較的大きな開口に起因して、比較的大きなぼけがy方向にもたらされる。しかし、縞パターン5の細長画像特徴もy方向に延びるので、このy方向におけるぼけは全体画像5を見る者には視認されず、または少なくともほとんど視認されない。全体画像5は画像特徴に沿って拡散され、これにより、もともと非常に近似しているだけの、または同等の画像領域が重畳される。縞パターン5は高い空間周波数の大部分をy方向よりもx方向に含む(すなわち、全体画像5がy方向よりもx方向で大きく変化する)ので、x方向のぼけは、これらの全体画像5の詳細が十分な焦点で投影領域上に投影されることができるように、可能な限り小さいままとしなければならない。これは、マルチチャネル光学系40の全体開口がy方向における全体開口よりもx方向において非常に小さい投影表示装置によって確保される。特に、細長配列は単列であるので、x方向における全体開口は光学チャネルの開口に対応する。一方で、説明に係る実施形態においては、マルチチャネル光学系40の投影される光束に利用可能な領域は、単一のチャネル44−1〜44−7よりも7倍大きい。したがって、1つのチャネルの場合よりも非常に明るい全体画像5を投影することができる。同時に、単一のチャネルと比べて、マルチチャネル光学系の光学写像特性は、全体画像5内の方向に対してのみ領域増大を伴う開口増大によって変化し、結果として生じる大きなぼけの効果はそれほど大きくはない。
【0050】
マルチチャネル光学系40が、その個々のチャネルのアレイに関して、投影される全体画像5の1以上の画像特徴に適合させられ、または適合可能であることに起因して、可能な限り大きい投影明度(すなわち、可能な限り大きな口径)、および大きな焦点深度(すなわち、可能な限り小さい口径)に対する要求を、第1の画像方向において大きな投影明度が重視され、第2の画像方向において大きな焦点深度が重視されるように、相互に組み合わせることが可能となる。上述したマルチチャネル光学系40の代替として、マルチチャネル光学系40が投影方向に垂直な2方向に異なる全体開口を有し、より大きな全体開口が、全体画像5の画像動態が最も小さい画像軸に対して最大で20度、好ましくは最大で10度、さらに好ましくは最大で5度の角度があっても、同様の効果が得られる。
【0051】
部分開口の配列に関しては、配列内でパターンを形成し、それらの包絡線が規定の形状、シンボル、テキストなどとなるような形状で配置することができる。したがって、この形状は、目で直接に、またはニアフィールドにおいてスクリーン上で投影表示を見るときに、観察者により視認することができる。ひとつの(単一の)写像チャネルを有する標準的なシステムと比較して、この特性は、配列照射との組合せにおいて、効率を損なうことなく実現される。
【0052】
図7A、7Bおよび7Cは、投影表示装置の異なる斜視図を示す。この投影表示装置は、シンボル状に配置されその焦点外れの挙動が投影距離に応じて変動するマルチチャネル光学系を有する。
【0053】
マルチチャネル光学系40は、この例では文字「F」のような形状のシンボル状部分開口配列を有する。画像素子30も、このシンボル状配列を有する。この場合、マルチチャネル光学系40は、30個のチャネルを備える。したがって、画像素子30は、30個の部分領域を備える。
【0054】
投影領域が投影表示装置から離れ、それが理想投影距離あたりのマルチチャネル光学系40の焦点深度範囲内にある場合、全体画像5は、画像素子30によって決定される投影領域上に投影される。個々の画像の写像は、相互に属する個々の画像の画像点が基本的に投影領域の同じ位置に投影されるように、焦点深度範囲内の投影領域上に重畳される。このように、画像素子30によって規定された全体画像5は、投影領域上に合焦されて投影される。他の画像点に対する代表として、
図6A〜6Cはそれぞれ、ひとつの中心画像点を、割り当てられた光ビームとともに示す。これらの中心画像点は、投影領域が理想投影距離にある場合には全体画像5の中心に投影されることが分かる。
【0055】
図6A〜6Cはまた、投影表示装置から、理想投影距離よりも大きく離れた一例の第2の投影領域50´を示す。中心画像点から放射されたビームは再度扇状に拡がり、全体 画像が第2の投影領域上に投影されるときに、全体画像の非合焦写像をもたらす。一方で、ビームの扇状の拡がりはまた、複数の中心画像点が文字「F」を第2の投影領域50´上に形成する一方で、光路に起因してマルチチャネル光学系40の配列に対して180度回転されるように、シンボル状の部分開口配列をたどる。
図6A〜6Cに示す距離では、個々の画像の写像の部分的な重なりがまだある。第2の投影領域50´が投影表示装置よりもさらに離れていたとすると、個々のチャネルによって投影される個々の画像の写像は、もはや部分的にも重ならず、一層離れていくことになり、一方で、シンボル状部分開口配列の「F」形状をそれらの全体に維持する。個々のチャネルは大きな焦点深度範囲を有することができるので、個々の画像の写像は投影距離の広い範囲にわたって合焦されたままとなる。
【0056】
第2の投影領域50´が理想投影距離よりも投影表示装置に近い場合も、同様に、チャネルのシンボル状配列によって予め定められた「F」の形態のシンボルが投影され、それは特に
図6Bにおいてそれぞれのビームの光路から見ることができる。
【0057】
マルチチャネル光学系は、一次元チャネル配列、同心チャネル配列、矩形チャネル配列、六角チャネル配列または確率的チャネル配列を有することができる。
【0058】
図7は、実施形態により全体画像を表示するための方法の模式フロー図を示す。この方法は、画像生成面の部分領域の分布内に個々の画像を生成するステップ702を有する。個々の画像の生成は、静的に、すなわち静的画像素子(例えば、カラーマスク)を照射することによって、実行される。あるいは、個々の画像の生成は、動的に、例えば、それぞれの光学アクチュエータによって、例えば、LCD、LCOSまたはDMD技術に基づいて実行される。
【0059】
実施形態において、個々の画像の生成は、マルチチャネル光学系と投影領域との間の最小距離および最大距離に依存して行われる。このように、必要とされる焦点深度範囲は、個々の画像を生成するときに、例えば、最小および最大距離に応じて個々の画像の位置およびスケーリングを決定することによって判断される。この測定は、投影表面への個々の画像の写像の所望の(相乗的または相殺的)重畳がもたらされるという作用を有することができる。
【0060】
また、全体画像を表示するための方法は、ステップ704を有し、このステップ中に画像生成面の部分領域が写像され、1つの部分領域各々がマルチチャネル光学系各々の1つの割り当てチャネルに対応する。画像生成面の割り当て部分領域への写像は、個々の写像が投影領域内または投影領域上の全体画像に合成されるように行われる。マルチチャネル光学系の少なくとも一部のチャネルは、基本的に全体画像の少なくともひとつの細長画像特徴と同様に向けられる細長配列に配置されるので、マルチチャネル光学系は、少なくとも1つの画像特徴に沿う方向において、それに垂直な方向よりも大きい見かけ上の開口または全体開口を有する。
【0061】
実施形態において、個々に制御可能な光源が、マルチチャネル光学系の各チャネルに割り当てられる。そして、それぞれに割り当てられた部分領域の写像は、以下のサブアクションまたはサブステップ:投影のための全体画像を動的画像素子によって受信するステップ、画像生成面の部分領域に割り当てられた全体画像の部分画像データを特定するステップ、全体画像の少なくとも1つの細長画像特徴を検出および場所特定するステップ、少なくとも1つの細長画像特徴に近似する配列を形成するマルチチャネル光学系のチャネルのサブセットを識別するステップ、部分画像データを動的画像素子に読み込むステップ、およびサブセットのチャネルに割り当てられたそれらの光源を作動させるステップを有することができる。
【0062】
このように、マルチチャネル光学系の見かけ上の全体開口は、現在投影されるべき画像およびそこに含まれる画像特徴に適合させることができる。特に、画像を解析し、画像に対する画像動態が最も小さい画像軸または方向を特定することができる。投影された全体画像の観察者にとって、投影画像が合焦されてないということが、特定された画像軸または方向では他の方向よりも分かりにくくなるという前提の下、マルチチャネル光学系の見かけ上の全体開口を、特定された画像軸または方向に向けることができる。これにより、この方向において他の方向よりも大きな見かけ上の全体開口が得られ、投影すべき光束の増加を利する。マルチチャネル光学系の最大の見かけ上の全体開口の方向がどの程度正確に調整されるかに応じて、有用な効果が、画像強弱の最も小さい画像軸、および最大の人工的全体開口の方向が20度まで、好ましくは10度まで、より好ましくは5度までの角度を含む場合に得られる。この目的のため、マルチチャネル光学系および場合によって画像素子が、例えば、光学チャネルまたは部分領域の一次元もしくは細い配列をいくつか含む十字形または星形の配列を備えることができ、画像強弱が最も小さいと特定された画像軸に応じて、それらの配列を切り替えることができる。
【0063】
マルチチャネル光学系のチャネルに対して個々に制御可能な光源を存在させることの代替として、またはそれに加えて、画像動態が最も小さい画像軸に調整されるチャネルの選択を、必要とされていない画像素子の部分領域を調光または点滅することによって行うこともできる。
【0064】
したがって、実施形態は、部分開口の非対称または異方性配列によって、一次元構造に対する焦点深度の増加を示す。投影パターンの焦点外れの挙動を適合させるために、部分開口をシンボルなどとして配置することも可能である。したがって、各画像点のいわゆるぼけは、部分開口のシンボル配列に対応する。
【0065】
標準式な投影システムと比較すると、一次元の周期的および非周期的な光パターンに対して、大きく変動する動作距離内で、状況に応じた焦点深度または写像特性の選択肢がある。本発明を適用できる分野としては、3D測定技術、照明および情報表示がある。
【0066】
以下に説明する投影表示装置の1以上の特徴によって実施形態を補完することもできる。
【0067】
実施形態によっては、投影表示装置は、個々の画像の写像が投影領域における全体画像に重畳されるように、チャネルごとに画像素子各々の一つの割当て部分領域を写像するように構成されたマルチチャネル光学系だけでなく、画像素子の画像生成面の部分領域の分布において個々の画像を生成するように実装された画像素子を含むことができる。投影領域は、平面でない自由形状領域であり、または画像生成面に対して傾けられている。マルチチャネル光学系によって、全体画像において各々がそれぞれの共通点において重畳される、個々の画像における点配置が、マルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて異なるように、画像素子が実装される。
【0068】
実施形態によっては、マルチチャネル光学系は、画像生成面に本質的に平行な投影光学系平面における投影光学系の二次元配列を備えることができ、投影光学系配列は、個々の画像の写像が投影領域における全体画像に重畳されるように、投影領域の方向におけるそれぞれの光軸に沿って画像素子各々に割り当てられた個々の画像を写像するように構成される。
【0069】
実施形態によっては、投影光学系を、割り当てられた部分領域に対して偏心させ、投影光学系のピッチを、割り当てられる部分領域のピッチよりも小さくすることができる。これにより、投影領域に重畳された全体画像は実像となる。
【0070】
実施形態によっては、投影光学系を、割り当てられた部分領域に対して偏心させ、投影光学系のピッチを、割り当てられる部分領域のピッチよりも大きくすることができる。これにより、投影領域に重畳された全体画像は虚像となる。
【0071】
実施形態によっては、投影光学系の中心を割り当てられる部分領域と一致させ、平行化効果を得ることができる。
【0072】
実施形態によっては、投影光学系は、全体レンズをさらに備えることができる。この全体レンズは、投影光学系の二次元配列に対して下流側に配置され、投影光学系の二次元配列と協働する。全体レンズは、割り当てられた部分領域に対して中心が一致させられていて平行化効果を有する投影光学系からの平行化ビームを、全体レンズの焦点面において再合焦するように、または、投影光学系からの発散/収束するビームを、一方では投影光学系、他方では部分領域の間の偏心と、下流側の全体レンズによる収光とから生じる実効的な焦点面に合焦するように実装される。
【0073】
実施形態によっては、全体レンズは可変焦点長を有する光学系として実装されることができるので、平均投影距離が調整可能となる。
【0074】
実施形態によると、可変焦点長を有する光学系をズームレンズまたは液体レンズとすることができる。
【0075】
実施形態によっては、各投影光学系は、それぞれの投影光学系の開口に対して偏心したレンズ頂点を有することができる。ここで、レンズ頂点のピッチは、割り当てられる部分領域のピッチよりも大きい、または小さく、レンズは、それぞれの部分領域の個々の画像の光軸に沿った投影に、発散的または収束的に影響を与える。
【0076】
実施形態によっては、部分領域とそれぞれの投影光学系の間の距離は、基本的にそれぞれの投影光学系の焦点長に対応する。
【0077】
実施形態によると、部分領域とそれぞれの投影光学系の間の距離は、軸外投影レンズが、それらのチャネルのより長い画像距離に起因する焦点ずれを修正するために長い焦点長を有するように、基本的にそれぞれの投影光学系の焦点長に対応する。
【0078】
実施形態によっては、画像素子はさらに、マルチチャネル光学系の写像誤差を補償するために、マルチチャネル光学系から見て、それぞれの共通点が存在する立体角範囲に依存して点配置がさらに異なるように実装されることができる。
【0079】
実施形態によっては、画像素子はさらに、マルチチャネル光学系の写像誤差がチャネルごとに補償されるように、マルチチャネル光学系から見て、それぞれの共通点が存在する立体角範囲に依存して点配置がさらに異なるように実装されることができる。
【0080】
実施形態によっては、画像素子は、マルチチャネル光学系からの全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて、点配置間での中心からの距離により点配置間の差が出るように、実装されることができる。これにより、第2の点配置がマルチチャネル光学系によって個々の画像において重畳される全体画像におけるそれぞれの共通点よりもマルチチャネル光学系から離れていない全体画像におけるそれぞれの共通点において、マルチチャネル光学系によって各々が重畳される、個々の画像における点の第1の点配置が、第2の点配置と比べて横方向に引き延ばされる。
【0081】
実施形態によっては、全体画像にわたる照度を均質化するために、点の明度の変動および/またはそれぞれの点配置についてのそれぞれの点に寄与する部分領域の数の変動によって、マルチチャネル光学系に対して、それぞれの点配置がマルチチャネル光学系によって重畳される、全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて画像生成面における点配置の明度の合計を変化させるように、画像素子が実装されることができる。
【0082】
実施形態によっては、点の明度の変動および/またはそれぞれの点配置に対するそれぞれの点に寄与する部分領域数の変動が、軸外チャネルの画像領域の点が全体画像にあまり寄与しないものとなるように、画像素子が実装されることができる。
【0083】
実施形態によっては、画像素子は、画素配列データを予め歪ませることによって全体画像を表す画素配列データから個々の画像を生成するように実装されることができるので、画像平面に対してそれを傾けることに起因する投影領域における全体画像の歪が、そのように補正される。
【0084】
実施形態によっては、画像素子をバックライト点灯もしくは反射バックグランド付きの反射型画像素子、透過型画像素子、または発光画像素子とすることができる。
【0085】
実施形態によると、画像素子を、透過性の横方向の変動によって個々の画像を表示するように実装された透過型画像素子とすることができ、ここで、投影表示装置は光源およびフィールドレンズまたはフィールドレンズ配列を備え、フィールドレンズは個々の画像に対して離れて配置されるので、マルチチャネル光学系のケーラー照射が実現される。
【0086】
実施形態によっては、投影表示装置は、テレセントリック照射を行うためのさらなるフィールドレンズをさらに備えることができる。
【0087】
実施形態によっては、投影表示装置において、画像素子の少なくとも一部は、微細構造マスクの形態のように受動的に実装されることができる。
【0088】
実施形態によっては、異なる部分領域からの同一の個々の画像が高精細な態様で投影領域に重畳されるように、画像素子およびマルチチャネル光学系が実装されることができる。
【0089】
実施形態によっては、投影表示装置は、第1の階調/色レベル解像度で投影される画像を受け取るように実装されることができ、ここで、画像素子は、第1の階調/色レベル解像度よりも小さい第2の階調/色レベル解像度で個々の画像を表示するように実装され、投影表示装置は、個々の画像が全体画像において画像点に対応する位置で階調/色レベル値に対応する階調/色レベル値の合計となるように、投影される画像の階調/色レベル値に応じて、投影される画像の画像点の部分領域を制御するように実装される。
【0090】
実施形態によっては、部分画素が相互にオフセットした状態で投影領域における個々の画像の写像が重畳されるように画像素子および投影光学系配列が実装されるので、画像平面において重畳された全体画像が個々の画像よりも高い解像度を有する。
【0091】
実施形態によっては、画像素子は、相互に独立した利用設定について、以下の選択肢の1以上を可能とすることができる:
a)投影領域の位置のそれぞれの並進シフトを含む投影領域のマルチチャネル光学系からの平均投影距離の変化がもたらされるように、個々の画像を変化させる、
b)画像生成面に対する投影距離の傾斜における変化がもたらされるように、個々の画像を変化させる、
c)画像生成面に対して同じ相対性の傾斜に起因する投影領域における全体画像の歪を補償するために同時に台形歪補正を適用することによって、画像生成面に対する投影領域の傾斜における変化がもたらされるように個々の画像を変化させる、
d)画像生成面に対して面平行の向きに関して投影領域の歪みにおける変化がもたらされるように個々の画像素子を変化させる、および
e)画像生成面に対して面平行の向きに関して同じ相対性のゆがみに基づいて、局所写像の変動に起因する投影領域における全体画像の歪を補償するために同時に台形歪補正を適用することによって、画像生成面に対する投影領域の傾斜における変化がもたらされるように個々の画像を変化させる。
【0092】
実施形態によっては、投影表示装置は、カメラおよびカメラアジャスタをさらに備えることができ、アジャスタは、反復処理により、画像素子がテスト画像を表示するように画像素子を制御することによって、投影領域を調整する構成であり、この投影領域に、マルチチャネル光学系は、投影領域が実際の投影面に近似されるように全体画像を記録することにより、個々の画像を全体画像に重畳する。
【0093】
実施形態によっては、全体画像を表示するための方法がさらに:
画像生成面の部分領域の分布において個々の画像を生成するステップと、
個々の画像の写像が投影領域において全体画像に重畳されるように、画像生成面各々の1つの割当て部分領域を、マルチチャネル光学系各々の1つのチャネルによって、写像するステップと
を含むことができ、
投影領域は平面でない自由形状領域であり、または画像生成面に対して傾けられ、個々の画像を生成するステップは、マルチチャネル光学系によって全体画像におけるそれぞれの共通点において各々重畳される、個々の画像における点配置がマルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて異なるように行われる。
【0094】
実施形態によっては、投影表示装置は、画像生成面の部分領域の分布において個々の画像を生成するように実装された画像素子と、個々の画像の写像が投影領域において全体画像に重畳されるように、画像生成面各々のひとつの割り当てられた部分領域をチャネルごとに写像するように構成されたマルチチャネル光学系とをさらに備えることができる。投影領域は、平面でない自由形状領域とすることができ、または画像生成面に対して傾けられることができ、画像素子およびマルチチャネル光学系は、マルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて全体画像への各チャネルの寄与の特性が全体画像にわたって局所的に変化するように、実装されることができる。
【0095】
実施形態によっては、画像素子およびマルチチャネル光学系は、重畳されたチャネル数がマルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて、全体画像にわたって局所的に変化するように実装されることができる。
【0096】
実施形態によっては、画像素子およびマルチチャネル光学系は、第1のセットのチャネルが、マルチチャネル光学系までの距離の第1の間隔にある全体画像の第1の部分に対する全体画像への重畳を制限するように実装され、第1のセットから外れた第2のセットのチャネルが、第1の間隔の全ての距離よりも大きい距離からなるマルチチャネル光学系までの距離の第2の間隔にある全体画像の第2の部分に対する全体画像への重畳を制限するように実装され、全体画像における第1の部分におけるそれぞれの共通点におけるマルチチャネル光学系の第1のセットのチャネルによって各々重畳された個々の画像における点配置が基本的に、第1のセットのチャネルの開口中心の投影が配置される位置の点配置からの第1の拡大比での同心拡大によってもたらされ、全体画像における第2の部分におけるそれぞれの共通点におけるマルチチャネル光学系の第2のセットのチャネルによって各々重畳された個々の画像における点配置が基本的に、第2のセットのチャネルの開口中心の投影が配置される位置の点配置からの第2の拡大比での同心拡大によってもたらされるように実装されることができ、第1の拡大比は第2の拡大比よりも大きい。
【0097】
実施形態によっては、第1のセットのチャネルが第2のセットのチャネルよりも短い距離でマルチチャネル光学系に合焦されるように、マルチチャネル光学系が実装されることができる。
【0098】
実施形態によっては、マルチチャネル光学系の第1のセットのチャネルによって全体画像におけるそれぞれの共通点に各々重畳された個々の画像における点配置、またはマルチチャネル光学系の第2のセットのチャネルによって全体画像におけるそれぞれの共通点に各々重畳された個々の画像における点配置がマルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて相互に異なるように、画像素子が実装されることができる。
【0099】
実施形態によっては、全体画像を表示するための方法は:
画像生成面の部分領域の分布において個々の画像を生成するステップと、
個々の画像の写像が投影領域において全体画像に重畳されるように、画像生成面各々のひとつの割り当てられた部分領域を、マルチチャネル光学系各々のひとつのチャネルによって写像するステップと、
を含むことができ、
投影領域は平面でない自由形状領域であり、または画像生成面に対して傾けられ、生成するステップおよび写像するステップは、全体画像への各チャネルの寄与の特性がマルチチャネル光学系に対する全体画像におけるそれぞれの点の距離に応じて全体画像にわたって局所的に変化するように、実行される。
【0100】
図8から11についての以下の記載は、ここに開示される実施形態を展開するための可能な開始点としてみることができる投影表示装置に関する。
図8から11において用いられる符号は、必ずしも上記で用いた符号に対応するわけではない。
【0101】
図8は、ここに開示する実施形態の進展のための可能な開始点を示す投影表示装置100を示す。投影表示装置100は、画像素子120およびマルチチャネル光学系130を備える。画像素子120は、画像素子の画像生成面129の部分領域124の分布において個々の画像を生成または表示するのに実装される。マルチチャネル光学系130は、個々の画像の写像が投影領域150における全体画像160に少なくとも部分的に重畳されるように、チャネルごとに画像素子120のひとつの割り当てられた割当て部分領域124を写像するように構成される。
【0102】
図8において、投影表示装置100は、4チャネルの構成例であり、、画像素子120は4個の部分領域124において個々の画像を生成し、それに従ってマルチチャネル光学系130は、チャネルごとに1つのそれぞれの投影光学系134を有する4個のチャネルで構成される。ただし、数値は単なる例示である。部分領域124および投影光学系134の二次元分布も単なる例示である。分布はまた、線に沿って実現されてもよい。さらに、分布は、二次元分布にさえ限られない。より詳細に記載するように、投影光学系134のピッチは、例えば、画像生成面129における部分領域124のピッチに対して小さくされる。これに関する詳細を以下に示す。
【0103】
図8の投影表示装置100は、投影領域が画像生成面129に対して平行な平面投影領域とならなくてもよいように実装される。全体画像がもたらされる投影領域、すなわち、個々の画像が合焦状態、すなわちある程度の焦点範囲の深度で重ね合わされる投影領域は、
図8に例示するように、自由形態領域または画像生成面129に対して傾けられた投影領域150とすることができる。
【0104】
画像生成面129に対する投影領域150の面平行な向きに対するずれを補償するために、画像生成面120は、マルチチャネル光学系130によって全体画像160におけるそれぞれの共通点に各々重畳された個々の画像における点配置がマルチチャネル光学系130に対する全体画像におけるそれぞれの共通点の距離に応じて異なるように、実装される。
図8に、全体画像160における2つのそのような共通点、すなわち、一方をxで、他方をoで例示する。マルチチャネル光学系130にわたるこれらの点に対応する部分領域124の個々の画像における点は、それに従って、xおよびoによって示される。画像生成面129における点oの位置または点xの位置は各々点配置を形成する。投影表示装置の光軸に沿う共通点xの投影表示装置100またはマルチチャネル光学系130に対する距離が、
図8では例示的に、画像生成面129に対する法線方向、すなわちz軸において共通点oの距離よりも小さくなるということを補償するために、点oの点配置および点xの点配置は異なる。以下により詳細に記載するように、異なる距離によってもたらされる点配置の差は、主に、点oの点配置との関係において点xの点配置の同心拡大の意味でより大きく拡大して示される。しかし、点配置はまた、マルチチャネル光学系130または個々の投影光学系134の写像誤差を補償するために、マルチチャネル光学系130から見て、それぞれの共通点oまたはxが光軸、ここでは例示的にz軸に関して位置する立体角範囲に応じて、異なる。特に、立体角範囲の差は、マルチチャネル光学系130の写像誤差がチャネルごとに補償されるように実現されることができる。以降の記載において、厳密な関係性をより詳細に述べる。
【0105】
再度、言い換えると、
図8の投影表示装置は特定の実装に基づいて説明され、ここでは例示的に、4個のチャネル全ての詳細な画像が完全にまたは調和して互いに重なり合う。ただし、既に述べたように、これは必須ではない。全体画像160からの個々の画像の異なる重なりも可能である。
【0106】
したがって、部分領域124の個々の画像は、内容に関しては実質的に等しい。それらは全て、全体画像160の所定のバージョンを表す。おそらくは、部分領域124の個々の画像または部分領域自体は、例えば、個々の画像全てに対して同じとなり得る予歪(プレディストーション)をもって矩形全体画像160に対して歪められる。焦点長および投影領域までの距離、および現実の画像生成面からマルチチャネル光学系130までの投影領域150の、例えば、無限となり得るずれに起因して全体画像160にわたってもたらされるスケールの変化に応じて、予歪は、例えば、歪を、それがチャネルごとの写像の光路の発散またはチャネルごとの写像による拡大からもたらされるにつれて補正する。予歪は、全てのチャネルにわたって同じでなくてもよい。それぞれのチャネルの異なる分散が存在するので、1次収差(台形)を超える歪(3次)に対処するために、個々の画像または部分領域124を異なる態様で予歪すると有利となる。傾斜投影領域に対する配列にわたる点配置の変化について、以下にさらに記載する。
【0107】
全体画像160における共通点に対応する部分領域124における点の上述した点配置を実現するために、全体画像160に対して予歪された部分領域124の個々の画像は、投影表示装置100の光軸zに沿う投影領域150の深度の変動にもかかわらず全体画像160の焦点は横幅全体にわたって維持されるように、相互に異なる。
【0108】
部分領域124における個々の画像のさらなる相違は、マルチチャネル光学系130の写像誤差の、上述したチャネルに基づく補正からもたらされ得るが、それは、例えば、投影領域の投影表示装置100からの距離の横方向の変動に依存しない。
【0109】
このように、全体画像160は、それが歪まされずに、投影領域150上に垂直などの特定の視野角から合焦されて見えるように、投影領域150上に投影されることができる。
【0110】
図11の投影表示装置100は、別の目的を担い、別の利用分野においても使用されることができる。
図8の投影表示装置は、投影表示装置100に対して一定かつ静止した位置の所定の投影領域150上に、合焦状態で特定の全体画像を投影することを目的とする。例えば、投影表示装置100は、例えばロゴまたは他のコンテンツを表示する、外表面が投影領域150を形成する彫刻上に全体画像160を投影することを目的としてもよく、ここで、このタイプの利用形態では、投影表示装置100は彫刻に対して固定の位置にあり、設置されたままであることが意図されている。この場合、例えば、画像120は、例えば、ケーラー照射などによってマルチチャネル光学系130に対向する後方側から照射されるシャドウマスクまたは他の微細構造マスクであればよい。個々の画像は、アナログ、連続または画素化された形態において、二値符号化された階調レベルまたは色符号化された部分領域120において実現される。特に、マスク120はスライドであってもよいし、部分領域124は個々のスライドであってもよい。画像情報の符号化は、特に、透過スケール上に画像情報を写像する手段によって実現されてもよい。バックライト点灯の一例を以下に記載する。一方、マスクの形態の画像素子120は、部分領域124における静的な個々の画像を生成するために反射的に動作することもできる。
【0111】
一方、受動または静的画像素子120の代わりに、デジタル画像素子120のような能動画像素子を用いることもできる。画像素子は、透過的または反射的に動作することができる。一方、OLEDまたはLEDディスプレイのように、画像素子120が自己照射することも可能である。これらの場合、以下により詳細に記載するように、画像素子120によって続けて表示され、投影表示装置100に対する投影領域150の特定の相対位置に適合され、それにより、適宜事前処理を適合または再実行することによって、特に異なる投影領域の幾何への適合が可能となるようにするために、画像素子は、内部的に実装されて、全体画像160を表す入力画素配列データから位置および内容、すなわち、部分領域124の個々の画像を与えるだけの上述の処理を実行することが可能となる。これも、以下により詳細に記載する。
【0112】
まず、注目すべきことは、画像素子120およびマルチチャネル光学系130が、筐体に組み込まれるなどして、相互に静止して維持されることである。特に、投影表示装置100は、携帯電話、PDA、ノートパソコンまたは他の可搬コンピュータなどのような移動体装置に組み込まれることができる。
【0113】
投影表示装置を概略説明したので、ここでは、
図9および10を参照して、投影装置100の光学または機械系がどのように設計されるのかについて、それぞれの選択肢を記載する。
【0114】
図9は、
図8による投影表示装置の実施形態を示す。ここで、画像素子120は、透過的に作用し、または伝搬中の横方向の変化によって個々の画像における明度変化もしくは色変化を表示もしくは符号化することによって、部分領域124における個々の画像を表示する。
図9に示すように、バックライト点灯、すなわち、マルチチャネル光学系130の反対方向を向く画像素子120の側からの点灯または照射を実現するため、投影装置は、光源110およびフィールドレンズ115を備えることができる。好ましくは、画像素子120の完全な照射を実現するために、部分領域124およびフィールドレンズ115の間の距離は小さくなるように選択される。好ましくは、マルチチャネル光学系134のケーラー照射が追加的または代替的に実現され、それによって、フィールドレンズ115が光源110を投影光学系130の瞳の開口に写像する。
【0115】
図10は、フィールドレンズの代わりにフィールドレンズ配列116が用いられてもよいこと、および点状光源110の代わりに平面光源111が追加的または代替的に背後に配置されて照射を行ってもよいこと、すなわち、フィールドレンズ配列116またはフィールドレンズ115が光源111と画像素子120の間に配置されるようにしてもよいことを示す。ここでも、ケーラー照射が実現される。平面光源は、例えば、非常に平坦に構成された照射ユニットを実現するために、割り当てられた平行化光学系を有するLEDの配列であればよい。
【0116】
画像素子120は、例えば、反射型LCD画像素子120であってもよいし、同様に、
図9および10による画像素子は、例えば、透過型LCD画像素子であってもよい。
【0117】
図8の投影表示装置の基本的実装選択肢は上述したので、投影表示装置の光学配列の可能な詳細を以降の図面に基づいて説明する。光学構造を説明するために、投影領域150が、平面であり、画像素子の画像生成面に平行に延びる場合を想定する。一方、これらの記述は、マルチチャネル光学構造に起因して、光学焦点深度が基本的にどのようにも存在することにおいて、投影表示装置の光学構造は、異なる形状または位置の投影領域への合焦投影についての要求を満たすことも示す。例えば、数ミリメートルの通常通り非常に短い焦点距離に基づいて、各個々のプロジェクタまたは配列132における各チャネルの焦点深度範囲は、従来の単一チャネル配列と比べて非常に高くなる。この状況は、個々の画像または部分領域が投影領域の面平行な向きに対して適宜変化されることにおいて、傾斜されまたは自由形態の投影領域上への投影の実際の焦点を再現するために、
図8から11に示す投影表示装置において用いられ、それは、デジタル画像素子の場合には、例えばデジタル画像事前処理を単に必要とする。個々の画像を変化させるこの方策は、上述の方策に加えて実行されることができ、これにより、マルチチャネル光学系の異なる全体開口およびそれゆえ異なる焦点深度が、画像構造体(例えば、1以上の細長画像特徴)に対応するために、全体画像内で異なる方向に対して与えられる。
【0118】
図11は、ここに開示される実施形態の進展のための可能な開始点としてみることができる投影表示装置100の側面図を示す。
図11に示す投影表示装置100は、光源110、ここでは例示的に反射的に実装される画像素子120、マルチチャネル光学系130としての投影光学系134の二次元配列132、およびビームスプリッタ140を備える。ここで、画像素子120は、その部分領域124の二次元分布122において個々の画像を表示するように実装される。また、投影光学系134の二次元配列132は、光軸103に沿って画像素子120の割り当てられた部分領域125を写像するように構成されるので、個々の画像の写像は投影領域150における全体画像160に重畳される。最後に、ビームスプリッタ140は、一方で画像素子120と投影光学系の二次元配列132の間の光路に、他方で光源110と画像素子120の間の光路に配置される。
【0119】
特に、さらなる実施形態において、ビームスプリッタ140が偏光効果を有し、反射型画像素子120が偏光の影響の形態において個々の画像を表示するように実装されることができる。
【0120】
投影表示装置は、例えば、液晶画像素子121として実装される画像素子120上の画像領域の通常の二次元配列と、例えば偏光ビームスプリッタ142として実装されるビームスプリッタ140と、投影光学系134の二次元配列132とを備えることができる。
図11に示すように、例えばLED112として実装される光源110からの光は、まず集光光学系115を通過してから、偏光ビームスプリッタ142上に向けられる。そこから、それは、例えばLCoS画像素子である反射型画像素子120の方向に偏光状態で反射される。
【0121】
表示される画像点の階調値に応じて、例えばデジタルの画像素子は、それに反射された光の偏光方向を回転して、偏光ビームスプリッタを介して第2の通過中の透過を制御する。電圧または結晶回転の画素ごとの速いスイッチングによって、動画コンテンツの表示が可能となる。
【0122】
図11に示す投影光学系134は、例えば、投影対象物としての均等な二次元配列において実装されたマイクロレンズであればよく、各々は投影領域150またはスクリーン上に画像素子120の部分領域125を写像する。そのような投影光学系配列を用いることによって、同じ画像サイズの従来の単一チャネル投影に対して、システム全体の構造長を大幅に減少させることが可能となる。数ミリメートルの投影光学系またはレンズの焦点長によって投影表示装置または投影システムの構造長は短くなり、例えば、それらの焦点長はここでもビームスプリッタの寸法に依存するが、対象領域またはそれらの横幅を乗ずることによって画像明度は比例的に増加する。したがって、小型化された単一チャネルプロジェクタと比べて、かなりの横幅および投影距離で、数ミリメートルだけビームスプリッタの厚さを超える構造長が得られる。
【0123】
さらなる実施において、投影画像を、配列の個々のチャネルの重畳、または写像をインターリーブもしくは結合することによっても得ることができる。
【0124】
さらなる実施において、
図11に例示するように、投影光学系134は、割り当てられた部分領域124に対する偏心を示す。
【0125】
通常、偏心は、中心光軸101に対する中心への縮小または中間からの拡大として、または画像素子120の割り当てられた部分領域124に対する投影光学系134の横方向オフセットとしてみることができる。割り当てられた個々の画像に対する投影光学系の偏心は、投影距離に対して決定的なものとなる。部分画像の高い焦点深度に起因して、投影距離における焦点は、個々の投影光学系のスクリーン側の合焦に限定的にしか依存しない。既に述べたように、対象側において、投影光学系134の合焦は、厳密に画像生成面129が投影光学系130の焦点長内となるように、例えば、投影光学系の短い焦点長との関係で調整される。ただし、これは必須ではない。既に述べたように、虚像または非常に近い投影距離のために、画像生成面129は、その前後の短い距離となる。これに応じて、スクリーン側の合焦は、例えば、無限であるが、個々のチャネルの焦点深度範囲は比較的短い焦点長に起因して大きくなる。この状況は、
図8、および画像または投影領域150が画像生成面129に対して面平行には延びていないが、それから傾斜し、または自由形態領域によって異なる態様で変化している場合の以降の記載に従って用いられる。
【0126】
画像構造体に対する投影光学系または投影光学レンズのわずかに小さいピッチに起因して、それぞれの画像構造体およびぞれぞれの投影光学系のオフセット135がもたらされ、それは、投影光学系134の二次元配列132の中心光軸101から、または配列中心(ラスタ中心)から外側に向けて大きくなる。外部の投影光学系134またはプロジェクタの光軸103にもたらされる中心光軸101または中心チャネルに対するわずかな傾斜によって、全体画像160への画像生成面または投影領域150における個々の写像の重畳が与えられる。ここで、画像生成面または投影領域は、無限となり、または画像素子の前方または画像素子の後方の投影光学系からの有限の距離となり得る。
図8に示すように、画像素子の前方の領域は、投影光学系134の二次元配列132の右、すなわち後方の光路における領域102によって画定される一方、画像素子の後方の領域は、画像素子120の左側、すなわちビームスプリッタ140の逆を向く画像素子120の側における領域104によって画定される。個々の写像は、例えば、スクリーン上の全体画像に重畳されることができる。
【0127】
ここで、光路において、投影のためのマクロ視点的なさらなる光学要素は不要である。例えば、面平行でない投影領域150の場合における平均投影距離である配列投影表示装置の投影距離L(すなわち、それに垂直な投影光学系134の二次元配列132からの投影領域150の平均距離L)は、投影光学系の焦点長f、投影光学系のピッチpPLおよび画像のピッチpOBJから得られる。写像の拡大値Mは、投影レンズの焦点長fに対する投影距離Lの比から得られる。ここで、以下の関係が当てはまる。:
【数2】
【0128】
したがって、投影光学系に対する対象構造物のピッチの比またはそれらの差によって、投影距離が制御される。ここで、面平行でない投影領域150の場合において、部分領域124のピッチpOBJは、例えば、個々の画像における全ての対応点の平均、または、例えば、一方で
図8を参照して上述したように光学歪を補償するために、他方で局所的な焦点再調整のために歪まされ得る部分領域124の重心の距離の平均を表すことが検討されるべきである。
【0129】
投影光学系のピッチが画像構造のものよりも小さい場合、規定の距離に実像がもたらされる。
図8に示す場合では、投影光学系134のピッチpPLは、割り当てられた部分領域124のピッチpOBJよりも小さい。したがって、
図8の構成において、投影領域150に重畳される全体画像162は実像となる。
図11も、この例に基づく。
【0130】
図12は、投影システムおよび投影システムによって投影される全体画像5の模式説明図を示す。投影システムは、いくつかの光学チャネル(ここでは、4×4配列における16個の光学チャネル)を含むマルチチャネル光学系40を含み、主開口軸1274およびそれに垂直な副開口軸1276を有する少なくとも一時的な異方性の全体開口を備える。一時的な異方性の全体開口を一点鎖線枠1272によって
図12に示す。また、投影システムは複数の画像素子1230を備え、各々が光学チャネルの1つに割り当てられ、割り当てちれた光学チャネルによって投影される1つの部分画像を各々表示するように構成され、ここで、投影部分領域は投影全体画像2に合成される。図示する例では、複数の画像素子は、16個の画像素子1233−1〜1233−16を含む。投影全体画像2は、矢印1280によって
図12に示す主たるエッジ方向を備える。矢印1280はまた、投影全体画像5の画像内容を表す。この図示する例では、矢印180のエッジ1284が主たるエッジ方向と同じ方向に延在することが分かる。通常は、比較的長いエッジ1284が可能な限り合焦されて写像されるが、短いエッジ1285および1286についてのある程度のぼけを許容することができる。これを得るために、主開口軸1274が副開口軸1276よりも主たるエッジ方向1280との小さい角度を含むように、一時的な異方性の全体開口1272が向けられる。一時的な異方性の全体開口は、画像素子1230の4×4配列の右下の角におけるのと同様に左上の角においていくつかの画像素子を非作動とすることによって得られる。
【0131】
図13は、(矢印1280によって示される)主たるエッジ方向がここでは上方を指す別の画像内容を有する全体画像5を投影する
図12の投影システムの模式説明図を示す。これに伴い、主開口軸1274は、ここでは上方を指す。16個の画像素子および光学チャネルのうち、4×4配列の第2および第3の列の8個の画像素子が使用される。左列および右列の画像素子は非作動とされる。あるいは、例えば、第1および第2の列または第3および第4の列が使用されてもよい。
【0132】
通常は、主たるエッジ方向は180度点対称であるので、
図13において、主たるエッジ方向は下方を指していてもよい。異方性全体開口も、通常は180度点対称となる。
【0133】
図14は、投影全体画像の主たるエッジ方向が右を指す他の状況を示す。これに伴い、一時的な異方性の全体開口も、その主開口軸1274が右を指すように選択され、それは、割り当てられた光チャネルと同様に、画像素子の4×4配列の2つの中心行を用いることによって得られる。あるいは、また、第1および第2の行または第3および第4の行が使用されてもよい。
【0134】
図15は、マルチチャネル光学系40、複数の画像素子1230、画像解析手段1592および全体開口制御部1594を有する投影システムの模式ブロック図を示す。画像解析手段1592は、部分画像の画像データから、または投影される全体画像の画像データから、投影全体画像の主たるエッジ方向を特定または推定するように構成される。全体開口制御部1594は、マルチチャネル光学系40の全体開口を、主たるエッジ方向に向けるように構成される。画像解析手段1594は、主たるエッジ方向を全体開口制御1594に送信してから、全体画像5の投影に使用される複数の画像素子1230のうちのサブセットを選択する。
【0135】
図16は、さらなる実施形態による投影システムを示す模式ブロック図を示す。
図15に示す構成要件に加えて、
図16における投影システムは、全体開口制御1594の一部として画像素子セレクタ1695を含む。画像素子セレクタ1695は、主たるエッジ方向に基づいて画像素子1233−1〜1233−16のサブセットを選択するように構成され、ここで、画像素子のサブセットは細長く、画像素子のサブセットの長軸は30度よりも小さい主たるエッジ方向との角度を含む。さらなる実施形態では、この角度は45度より小さく(または0度から45度の間であり)、35度よりも小さく、25度よりも小さく、20度よりも小さく、15度よりも小さく、10度よりも小さく、または5度よりも小さい。通常は、画像素子のサブセットの長軸は、主開口軸1274に対応する。長軸は、サブセットを囲む包絡または外接楕円によって決定される。
【0136】
また、
図16における投影システムは、強度、それぞれの画像素子に対する位置、およびそれぞれの画像素子に対する向きのうちの少なくともひとつに対して、部分画像を調整するように構成された選択的部分画像アジャスタ1696を備えることもできる。このように、例えば明るさおよび強度の減少といった部分画像セットの選択によってもたらされる投影システムの写像挙動における起こり得る変化は、可能な限り補償される。概略として、投影システムは、残りの光チャネルが非作動とされつつも現存の光チャネルの一部だけが使用されれば十分となるように寸法が決められる。それぞれの配分(アクティブな画像素子の最小数/画像素子の総数)は、例えば、50%、60%、70%、80%または90%であればよい。
【0137】
図17は、全体画像5の主たるエッジ方向または主たる輝度勾配方向の特定を示す。全体画像5は、階調レベル情報、色情報またはいくつかの色チャネル情報を含む画素p
ijによって記述されるものとする。ここで、iは行インデックスであり、jは列インデックスである。各ピクセルp
ijについて、方向および量を示す局所的な勾配∇p
i,jが計算される(符号1704)。局所的な勾配は、直交座標においても∇
xp
i,jおよび∇
yp
i,jとして表現されることができる。画像5の平均主勾配方向を以下の式によって計算することができる。
【数3】
ここで、
pは、投影全体画像の画像内容であり、
p
i,jは、位置i,jにおける投影全体画像の画素値であり、
∇
xp
i,jは、位置i,jにおけるpの勾配のx成分であり、
∇
yp
i,jは、位置i,jにおけるpの勾配のy成分である。
【0138】
180度点対称であることから、局所的な勾配のy成分の量を検討すれば十分である。分数の分子では、局所的な勾配が、全体画像5にわたって成分ごとに合計される。分母は、合計によって得られる分子におけるベクトルの量に基づいて主勾配方向を正規化する。正規化は省略されてもよい。また、合計する前に勾配成分を二乗すること、すなわちΣΣ(∇
xp
i,j)
2によって、幾何平均を決定することも可能である。一方で、x成分をy成分よりもより強く重み付けすることも、またその逆も可能である。計算は、極座標に基づいて実行されることもでき、この場合、異なる勾配方向が異なる態様で重み付けされればよい。主勾配方向1780は、
図17の下部に、左下から右上に向けられた矢印としてシンボル的に示される。なお、主勾配方向または主たる勾配方向1780は、通常は厳密に、またはほぼ近似的に画像5の主たるエッジ方向に垂直である。
【0139】
図18は、ヒストグラム評価による主勾配方向または主たる(強度)勾配方向の特定を模式的に示す。
図17にあるように、まず、画像5内の局所的な勾配が計算される。あるいは、局所的な勾配は、単に1つの画像部分において、いくつかの画像部分において、またはランダムに計算されることも可能である。ここで、局所的な勾配は、計画されるさらなる処理のために極座標で表現され、ここで、|∇p
i,j|は位置i,jにおける量を表し、ψ(∇p
i,j)は角度を示す。評価された局所的な勾配の総計は、評価された局所的な勾配のどれだけが特定方向を有し、または特定方向セクタ内にあるかを表す勾配ヒストグラム1810の形式で表されることができる。180度点対称であることから、0度から180度の角度範囲が検討されれば十分である。この角度範囲は、ここでは、複数の角度間隔に、例えば、10度ずつでK=18の角度間隔で分割されることができる。インデックスkは0からK−1までであるので、k番目の角度間隔はψk=k*10度からψk+1=(k+1)*10度の方向を含む。局所的な勾配の量は、
【数4】
とすることもできる。
【0140】
そして、主勾配方向は、ヒストグラム値内の最大値として特定されることができる。主たるエッジ方向は、それに垂直な方向と推定することができる。合計内で、局所的な勾配の量を重み付け関数によって、例えば局所的な勾配の量を二乗することによって重み付けすることができるので、それに従って、高い勾配量(すなわち、より急峻な明暗遷移または色遷移)が、緩やかな明暗または色遷移以上に検討される。
【0141】
図19は、180度点対称を模式的に示す。第1の全体画像5は、約−60度の角度で走る明暗エッジ(
図19左側)を有し、暗い画像の領域はエッジの左下に、明るい画像の領域はエッジの右上にあるものとする。第2の全体画像5は、約−60度の角度で走る明暗エッジ(
図19左側)を有し、暗い画像の領域はここではエッジの右上に、明るい画像の領域はエッジの左下にある。(
図19の左側の)第1の場合においては、勾配は明から暗に−150度の方向を有する。(
図19の右側の)第2の場合においては、勾配は+30度の方向を有する。主開口軸を方向付ける目的のため、両勾配方向は実質的に等しい。したがって、例えば、0度から180度の角度範囲を検討すれば十分である。
【0142】
上述した実施形態の可能な利用分野としては、家庭用および携帯端末におけるパーソナル通信、娯楽機器および家庭用データ可視化がある。さらなる利用分野としては、自動車および航空機の分野において、運転者補助システムとして運転状況情報、ナビゲーション、環境情報を投影表示するため、または乗客を楽しませるための「ヘッドアップディスプレイ」がある。測定および医療技術における利用も、工業および生産プラントにおける表示装置利用と同様に可能である。自動車用などのための照明ユニット、前照灯、効果照明として、上述の投影表示装置を使用することも可能である。
【0143】
さらなる利用分野としては、3D測定、機械視覚、自動車、建築、家庭用娯楽情報(例えば、家庭用通信の分野、キッチン投影)、照明、眼科および一般の医療アプリケーション(例えば、曲面の網膜を照射する)において、傾斜および選択的に湾曲した領域に関する投影および照明システムの実現がある。
【0144】
いくつかの側面を装置との関連で説明したが、それらの側面が対応の方法の説明も表すことは明らかであるので、装置のブロックまたは構成要素を、それぞれの方法ステップまたは方法ステップの特徴としてみることができる。同様に、方法ステップに関連して説明した側面はまた、それぞれの装置のそれぞれのブロック、内容または特徴の記載も表す。方法ステップの一部または全部は、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路といったハードウェア装置によって(またはハードウェア装置を用いることによって)実行されることができる。実施形態によっては、最も重要な方法ステップの一部は、そのような装置によって実行されることができる。
【0145】
特定の実施要件に応じて、発明の実施形態はハードウェアで、またはソフトウェアで実施されることができる。その実施形態は、例えば、それぞれの方法が実行されるようにプログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、または協働する電気的に可読な制御信号が記憶されたフレキシブルディスク、DVD、ブルーレイディスク(登録商標)、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM(登録商標)もしくはフラッシュメモリ、ハードドライブ、または他の何らかの磁気的もしくは光学的メモリのようなデジタル記憶媒体を用いて実行することができる。したがって、デジタル記憶媒体はコンピュータ可読であればよい。
【0146】
発明によるいくつかの実施形態は、ここに記載された方法の1つが実行されるようにプログラマブルコンピュータシステムと協働することができる電子的に読み取り可能な制御信号を備えるデータキャリアを備える。
【0147】
概略として、本発明の実施形態は、プログラムコードを持つコンピュータプログラム製品として実施でき、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で稼働したときにプログラムコードが有効化されて方法の1つを実行する。
【0148】
プログラムコードは、例えば、機械可読キャリアに記憶されることもできる。
【0149】
他の実施形態は、ここに記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを備え、コンピュータプログラムは機械可読キャリアに記憶される。
【0150】
言い換えると、発明の方法の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で稼働したときに、ここに記載された方法の1つを実行するためのプログラムコードを備えるコンピュータプログラムである。
【0151】
したがって、発明の方法のさらなる実施形態は、ここに記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムが記録されたデータキャリア(すなわち、デジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。
【0152】
したがって、発明の方法のさらなる実施形態は、ここに記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、データ通信接続、例えば、インターネットを介して転送されるために構成されることができる。
【0153】
さらなる実施形態は、ここに記載された方法の1つを実行するように構成または適合された、例えば、コンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスといった処理手段を含む。
【0154】
さらなる実施形態は、ここに記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータを含む。
【0155】
発明によるさらなる実施形態は、ここに記載される方法の少なくとも1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機に送信するように実現された装置またはシステムを含む。送信は、例えば、電子的に、または光学的に行われればよい。受信機は、例えば、コンピュータ、移動体デバイス、メモリデバイスまたは同様の装置であればよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に送信するためのファイルサーバであればよい。
【0156】
実施形態によっては、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ、FPGA)が、ここに記載された方法の機能の一部または全部を実行するのに使用できる。実施形態によっては、ここに記載された方法の1つを実行するために、フィールドプログラマブルゲートアレイはマイクロプロセッサと協働することができる。概略として、それらの方法はあらゆるハードウェア装置によって実行される。それは、コンピュータプロセッサ(CPU)のような汎用的に使用できるハードウェアまたはASICのような当該方法に特化したハードウェアであればよい。
【0157】
上述した実施形態は本発明の原理についての単なる例示である。ここに記載された配列のその詳細の変形例およびバリエーションは当業者に明白ものとなることは明らかある。したがって、それは、実施形態の説明および解説に基づいてここに提示された具体的詳細によってではなく、専らこの直後の特許請求の範囲によって限定されることを意図するものである。
【国際調査報告】