特表2015-521196(P2015-521196A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-521196LIイオン電池用の二環式芳香族アニオンの塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-521196(P2015-521196A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】LIイオン電池用の二環式芳香族アニオンの塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/90 20060101AFI20150701BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20150701BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150701BHJP
【FI】
   C07D233/90 B
   H01M10/0568
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-514550(P2015-514550)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】FR2013050939
(87)【国際公開番号】WO2013182768
(87)【国際公開日】20131212
(31)【優先権主張番号】1255154
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4H039
5H029
【Fターム(参考)】
4H039CA42
4H039CH10
5H029AJ06
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ28
(57)【要約】
本発明は、一般構造式を有する二環式イミダゾール化合物(V)の塩[式中、Aは一価のカチオンを表し、Xは、独立に、炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表す]を取得するための方法に関する。本発明はまた、関連する生成方法、及び特に電池用の電解質成分としてのその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の拡張された一般式によって表される二環式イミダゾール化合物(V)の塩の調製のための方法:
[式中、Aは一価のカチオンを表し、且つXは、独立に、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又は窒素原子を表す]であって、式(IV)のイミダゾール化合物を塩基AZと反応させることを特徴とし、ここでAは上記と同じ意味を有し、Zは水素化物、水酸化物、又は炭酸アニオンを表す、塩の調製のための方法。
【請求項2】
前記一価のカチオンAが、好ましくはリチウム又はナトリウムから選択されるアルカリ金属であることを特徴とする、請求項1に記載の塩の調製のための方法。
【請求項3】
Xが、炭素、リン又は窒素原子を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の塩の調製のための方法。
【請求項4】
前記炭素又は前記窒素が、好ましくは、シアノ(CN)基、R基、OR型のエーテル基、N(R型のアミノ基、CO型のエステル基、SO型のスルホニル基又はPO型のホスホニル基[ここで、Rは、式CX’を有し、nは0から6の間であり、mは0から13の間であり、X’はハロゲン(F、Cl、Br及びI)であり、且つpは1から13の間である]から選択される、0.7から1の間のハメットパラメータを有する電子求引又は電子供与基によって置換されていることを特徴とする、請求項3に記載の塩の調製のための方法。
【請求項5】
前記電子求引又は電子供与基が、水素、フッ素、シアノ(CN)基、トリフルオロメチル(CF)基、トリフルオロメトキシ(OCF)基又はメトキシ(OCH)基から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の塩の調製のための方法。
【請求項6】
前記塩基AZが、水素化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の塩の調製のための方法。
【請求項7】
前記イミダゾール化合物(IV)が、DAMN(I)による一般式(II)の芳香族アルデヒドの凝縮と、その後の、そのようにして取得された一般式(III)の中間化合物の脱水素とにより取得されることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)式(I)のDAMNを、複数の式(II)の芳香族アルデヒドと、0から80℃の間、好ましくは10から50℃まで、より好ましくは20から30℃までの温度で、任意選択的に溶媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物を得る段階と、その後の、(ii)式(III)の前記化合物の脱水素の段階とを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
段階(i)が、溶媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、ジオキサン、アセトニトリル又はエタノールから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階(i)が、酸触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項7から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸触媒が、硫酸、トリフルオロ酢酸、酢酸又は安息香酸から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記脱水素の段階(ii)が、酸素、過酸化水素、過酸化物、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、次亜塩素酸、次亜フッ素酸、又はキノン型バックボーンを含む化合物といった酸化剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項7から12の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二環式イミダゾール化合物及びそれらの塩、それらの製造方法、並びに、特に電池用の電解質成分としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン又はナトリウムイオン電池は、少なくとも1つの負極、1つの正極、1つのセパレータ及び1つの電解質を備える。電解質は、粘度と絶縁定数との間に良好な妥協を有するように、概して有機カーボネートの混合物である溶媒に溶解されたリチウム又はナトリウム塩から構成される。
【0003】
最も広く使用されている塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含み、これは必要とされる多数の性質の多くを有するが、フッ化水素ガスの形態で分解するという不利点を呈する。これは、特に特定の車両へのリチウムイオン電池の近い将来の使用という文脈において、安全性の問題を提示する。
【0004】
電解質塩を有するための必須条件は、カチオンとアニオンとの間の良好な化学的解離であり、これは、求引効果によって非局在化又は低減するアニオン上の負電荷を暗示する。
【0005】
このように、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)及びLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)等、求引効果に基づく塩が開発されている。
【0006】
今回は電荷の非局在化に基づき、国際公開第2010/023413号において教示されているようなLiTDI(リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド)等の他の塩も開発された。しかしながら、後者は、上記で挙げたものよりも低いイオン伝導率を呈する。
【0007】
出願企業は、第二の芳香族環の存在が、負電荷の非局在化を増大させ、故にこのイオン伝導率を増大させるのを可能にすることを発見した。
【発明の概要】
【0008】
次のものにおいて、
− DAMNはジアミノマレオニトリルを示し、式(I):
I

によって表される。
− 化合物(II)は、以下の拡張された一般式によって表される。該化合物は、芳香族環が6個の原子を含む場合には(IIa)、5個の原子を有する芳香族環については(IIb)と示される。
− 化合物(III)は、以下の拡張された一般式によって表される。該化合物は、芳香族サイクルが6個の原子を含む場合には(IIIa)、5個の原子を含む芳香族環については(IIIb)と示される。
− 二環式イミダゾール化合物(IV)は、以下の拡張された一般式によって表される。該塩は、芳香族環が6個の原子を含む場合には(IVa)、5個の原子を含む芳香族環については(IVb)と示される。
− 二環式イミダゾール化合物(V)の塩は、以下の拡張された一般式によって表される。該化合物は、芳香族環が6個の原子を含む場合には(Va)、5個の原子を含む芳香族環については(Vb)と示される。
【0009】
上記の一般式において、Aは一価のカチオンを表し、Xは、独立に、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又は窒素原子を表す。
【0010】
Xが炭素、リン又は窒素原子を表す場合、置換基は、独立に、−0.7から1.0の間のハメットパラメータ(ハメットパラメータは、一連の置換基群について、対応する安息香酸の解離定数を測定することによって決定された集計定数(tabulated constant)である)によって定義される電子求引又は電子供与基であってよい。好ましくは、置換基は、シアノ(CN)基、R基、OR型のエーテル基、N(R型のアミノ基、CO型のエステル基、SO型のスルホニル基又はPO型のホスホニル基[ここで、Rは、式CX’を有し、nは0から6の間であり、mは0から13の間であり、X’はハロゲン(F、Cl、Br及びI)であり、且つpは1から13の間である]から選択される。
【0011】
本発明は、第一に、二環式イミダゾール化合物(IV)及びそれらの塩(V)に関する。
【0012】
本発明は、第二に、二環式イミダゾール化合物(IV)及びそれらの塩(V)の製造のための方法に関する。
【0013】
本発明は、第三に、式(V)の化合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インピーダンス分光法により測定した、塩(V−1)の異なる濃度におけるイオン伝導率を示している。
図2】サイクリックボルタンメトリーにより決定した、塩(V−1)の、Li/Liに対する電気化学的安定性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本発明について、さらに詳細に、次の記述における暗黙の限定なしに記述する。
本発明による二環式イミダゾール化合物(V)の塩は、上記の一般式[式中、Aは、一価のカチオンA、例えばアルカリ金属を表す]によって表される。
【0016】
好ましいアルカリ金属は、リチウム及びナトリウムから選択される。
【0017】
一般式中のXが、炭素、リン又は窒素原子を表す場合、塩(V)は置換され得る。好ましい置換基は、電子求引又は電子供与基、特に−0.7から1の間のハメットパラメータを有するものである。
【0018】
特に好ましい電子求引及び電子供与基は、シアノ(CN)基、R基、OR型のエーテル基、N(R型のアミノ基、CO型のエステル基、SO型のスルホニル基又はPO型のホスホニル基[ここで、Rは、式CX’を有し、nは0から6の間であり、mは0から13の間であり、X’はハロゲン(F、Cl、Br及びI)であり、且つpは1から13の間である]から選択される。
【0019】
二環式イミダゾール化合物の塩(二環式イミダゾリド)及び二環式イミダゾール化合物の調製
二環式イミダゾリド(V)は、イミダゾール化合物(IV)から、後者を塩基AZ[Aは上記と同じ意味を有し、且つZは、水素化物、水酸化物又は炭酸アニオンを表す]と反応させることによって調製され得る。好ましくは、AZは、水素化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの組み合わせから選択される。
IV+AZ→V+AH
【0020】
化合物(IV)は、一般式(II)及びDAMN(I)の芳香族アルデヒドの凝縮から調製され得る。
【0021】
二環式イミダゾール化合物(IV)の調製のための方法は、(i)式(I)のDAMNを、一般式(II)の芳香族アルデヒドと、0から80℃の間、好ましくは10から50℃まで、より好ましくは20から30℃までの温度で、任意選択的に溶媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物を得る段階、続いて(ii)式(III)の化合物の脱水素化の段階を含む。
DAMN+II→III+HO (i)
III−H→IV (ii)
【0022】
段階(i)は、好ましくは、溶媒の存在下で行われる。反応物質(一又は複数)を溶解することを可能にする任意の化合物が溶媒として使用され得る。指標として、ジオキサン、アセトニトリル又はエタノールを挙げることができる。
【0023】
段階(i)が溶媒の存在下で行われる場合、反応媒質中におけるDAMNの濃度は、好ましくは0.001から2mol/lまで、より好ましくは0.1mol/lから1mol/lまでである。化合物(I)対化合物(II)のモル比は、好ましくは0.25から1.5まで、より好ましくは0.5から1.25までである。
【0024】
段階(i)の持続時間は、好ましくは1から12時間まで、より詳細には1から5時間まで、例えばおよそ2時間である。
【0025】
好ましくは、段階(i)は、酸触媒の存在下で、任意選択的に、反応媒質への、トリフルオロ酢酸、酢酸又は安息香酸等のカルボン酸又は硫酸の添加により、行われる。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、反応温度は第一段階の全体にわたって一定であってよい。
【0027】
本発明の別の実施態様によれば、温度は、段階(i)の全体にわたって増大してよい。
【0028】
段階(ii)は、酸素、過酸化水素及び過酸化物といった水素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、次亜鉛素酸、次亜フッ素酸、又はキノン型バックボーンを有する化合物と反応できる化合物の存在下で実行することができる。
【0029】
この反応の終わりに、式(IV)の二環式イミダゾール化合物を好ましくは単離及び精製する。
【0030】
故に、反応媒質は濃縮することができ、その後濾過によって回収される水からイミダゾール(III)が結晶化し得る。取得された固体を、塩基AZ、好ましくはリチウム又はナトリウム塩基の水溶液に、10−5mol/lから飽和濃度の範囲の濃度で溶解してよい。式(IV)の化合物塩が形成されたら、溶液に、活性炭による数回の処理を受けさせてよい。その後、溶液を濃縮させて、式(IV)の塩を得ることができる。
【0031】
電解質の調製
式(V)の化合物は、それらを適切な溶媒に溶解することにより、電解質の調製において使用することができる。
【0032】
溶媒は、カーボネート、グリム、ニトリル及びスルホンから選択される少なくとも1つの化合物から構成され得る。
【0033】
カーボネートとしては、特に、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート又はグリセロールカーボネートを挙げることができる。
【0034】
グリムとしては、特に、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールtert−ブチルメチルエーテルを挙げることができる。
【0035】
ニトリルとしては、特に、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メトキシプロピオニトリル、イソブチロニトリル、及び上記化合物に由来するフッ素化化合物を挙げることができる。
【0036】
スルホンとしては、特に、ジメチルスルホン、スルホラン、エチルメチルスルホン、プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、tert−ブチルエチルスルホン、tert−ブチルメチルスルホン及びtert−ブチルプロピルスルホンを挙げることができる。
【0037】
溶媒は、好ましくは、上述のカーボネート及び/又はグリム及び/又はスルホンから選択される、有利には2から5つまでの化合物の混合物から構成される。
【0038】
溶媒を構成する化合物のそれぞれの重量での割合は、好ましくは、最小量の構成要素に対して好ましくは1から10の間、より好ましくは1から8の間である。
【0039】
電解質中における式(V)の化合物の濃度は、好ましくは0.1mol/lから5mol/lまで、より好ましくは0.2mol/lから2.5mol/lまでである。好ましくは、電解質は、イミダゾリド塩(IV)、LiPF、LiBF、CFCOOLi、CFSOLi、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTDI(リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド)及びLiPDI(リチウム4,5-ジシアノ-2-(ペンタフルオロエチル)イミダゾリド)から選択される少なくとも二つのリチウム塩の混合物から構成される。混合物中に存在する各リチウム塩の量は、広い範囲内で変動し得、概して、混合物中に存在する塩の総重量に対して0.1から99.9重量%の間、好ましくは1から99重量%の間を表す。
【実施例】
【0040】
下記の実施例は、本発明を限定することなく例証するものである。
【0041】
硫酸数滴を、1.19gの事前溶解させたDAMN及び1.47gのp−CN−ベンズアルデヒドを含むアセトニトリル50mlに添加する。すると黄色の沈殿が現れる。反応混合物を3時間攪拌する。溶液を濾過により除き、アセトニトリル、次いでエーテルを用いて固体を洗浄する。その後110℃の真空下で固体を乾燥させる。
【0042】
50mlの丸底フラスコ中で25mlのジメチルホルムアミドに溶解させた、上述のようにして得られた固体1.0gに、0.94gのKCOと、次いで0.90gのN−クロロスクシンイミドとを添加する。溶液を、室温で終夜攪拌する。反応の最後に150mlの水を添加する。溶液を、硫酸を用いてpH=1まで酸性化する。次いで、100mlの酢酸エチルを2回用いて水相を抽出する。有機相を乾燥させ、次いで濃縮させる。残留物のNMR解析により、所望の生成物の存在を示す。残留物を、過剰量の炭酸リチウムの存在下で水中に取る。溶液を室温で3時間攪拌する。溶液を濾過し、次いで250mlのエーテルを2回用いて抽出する。続いて水相を2時間50℃で活性炭により処理する。溶液を濾過し、次いで濃縮させる。残留物をアセトニトリル中に取り、炭酸リチウムに対応する不溶部分を濾過により取り除く。次いで濾液を濃縮し、以下の式のリチウム塩である黄色の固体を生じさせる。

(V-1)
【0043】
続いてこの塩(V−1)を、エチレンカーボネートと炭酸ジメチルとの重量比1の混合物中で異なる濃度に溶解させる。続いてインピーダンス分光法により異なる濃度のイオン伝導率を測定する(図1)。次に、塩(V−1)の、Li/Liに対する電気化学的安定性を、エチレンカーボネートと炭酸ジメチルとの重量比1の混合物中1mol/lの塩(V−1)の溶液の、サイクリックボルタンメトリーにより決定する(図2)。
図1
図2
【国際調査報告】