(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-521388(P2015-521388A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネル
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20150701BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20150701BHJP
B62D 25/06 20060101ALI20150701BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20150701BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20150701BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 570
B62D25/06 Z
B60R16/04 U
B32B7/02 104
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-515457(P2015-515457)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2013060245
(87)【国際公開番号】WO2013182398
(87)【国際公開日】20131212
(31)【優先権主張番号】12170870.5
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ノズィチュカ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル レミュー
(72)【発明者】
【氏名】マーク−オリヴァー プラスト
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト シュトッフェル
【テーマコード(参考)】
3D203
4F100
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、熱可塑性層(3)を介して層状に互いに接合されている基板(1)と外側パネル(2)とを少なくとも有している、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルであって、光起電性の層システム(6)が前記熱可塑性層(3)内に埋め込まれており、前記基板(1)は少なくとも1種のポリマを含んでいることを特徴とする、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性層(3)を介して層状に互いに接合されている基板(1)と外側パネル(2)とを少なくとも有している、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルであって、
光起電性の層システム(6)が前記熱可塑性層(3)内に埋め込まれており、前記基板(1)は少なくとも1種のポリマを含んでいることを特徴とする、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネル。
【請求項2】
前記基板(1)はフレキシブルなフィルムとして形成されていて、好適には0.02〜2mmの、特に好適には0.1mm〜1.5mmの、極めて特に好適には0.15mm〜0.8mmの厚さを有している、請求項1記載のルーフパネル。
【請求項3】
前記基板(1)は、少なくともポリフッ化ビニル、及び/又はポリフッ化ビニリデン、及び/又はエチレンテトラフルオロエチレン、及び/又はポリテトラフルオロエチレンである、請求項2記載のルーフパネル。
【請求項4】
前記基板(1)は剛性のパネルとして形成されていて、好適には0.8mm〜25mmの、特に好適には0.8mm〜4mmの厚さを有しており、好適には少なくともポリカーボネート及び/又はポリメチルメタクリレートを含む、請求項1記載のルーフパネル。
【請求項5】
前記光起電性の層システム(6)は、前側電極層(12)と背側電極層(10)との間に少なくとも1つの光起電に関して活性の吸収層(11)を有しており、該光起電に関して活性の吸収層(11)は少なくとも、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、又は多結晶シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化カドミウム(CdSe)、ガリウムヒ素(GaAs)、半導体の有機ポリマ又はオリゴマ、又は銅−インジウム(ガリウム)硫黄/セレン(CI(G)S)を含んでいて、好適には半導体の有機ポリマ、又はオリゴマ、又は銅−インジウム(ガリウム)硫黄/セレン(CI(G)S)を含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項6】
前記外側パネル(2)はガラス、好適には平面ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又はソーダ石灰ガラス、又は少なくとも1つのポリマ、好適にはポリカーボネート、及び/又はポリメチルメタクリレートを含み、好適には1.0mm〜12mmの、特に好適には1.4mm〜5mmの厚さを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項7】
前記光起電性の層システム(6)はサブセクション(7)に分割されていて、これらのサブセクションは、導電性接続エレメント(8)及び/又はバスバーを介して直列にかつ/又は並列に互いに接続されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項8】
前記光起電性の層システム(6)の面積は、前記ルーフパネルの面積の50%〜100%である、請求項1から7までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項9】
前記熱可塑性層(3)は少なくともエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでいて、好適には0.5mm〜5mmの、特に好適には1mm〜3mmの厚さを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項10】
湾曲されており、少なくとも1つの領域で600mm〜900mmの曲率半径を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項11】
組み込まれた光起電力モジュールの電力密度は、10W/m2〜300W/m2、好適には50W/m2〜150W/m2である、請求項1から10までのいずれか1項記載のルーフパネル。
【請求項12】
光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルを製造する方法であって、少なくとも、
(a)光起電性の層システム(6)を熱可塑性層(3)内に設けるステップと、
(b)前記熱可塑性層(3)を、少なくとも1種のポリマを含む基板(1)と外側パネル(2)との間に層状に配置するステップと、
(c)前記基板(1)を前記外側パネル(2)に前記熱可塑性層(3)を介して、熱作用下で、かつ/又は真空作用下で、かつ/又は圧力作用下で接合させるステップと、を有することを特徴とする、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルを製造する方法。
【請求項13】
前記方法ステップ(a)において、前記光起電性の層システム(6)を少なくとも1つの第1の熱可塑性フィルム(4)と第2の熱可塑性フィルム(5)との間に配置し、次いで前記両熱可塑性フィルムを、熱作用下で、かつ/又は真空作用下で、かつ/又は圧力作用下で、予め貼り合わせられた1つの熱可塑性層(3)となるように接合させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法ステップ(b)の前に、支持パネル(14)を分離フィルム(13)を介して、前記基板(1)の、前記外側パネル(2)とは反対側を向いた表面上に配置し、前記分離フィルム(13)は好適には少なくとも1つのポリテトラハロゲンエチレン(polytetrahalogen ethylene)、特に好適にはポリテトラフルオロエチレン、及び/又はポリクロロトリフルオロエチレンを含み、好適には0.01mm〜10mmの厚さを有する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
陸上交通、航空交通、水上交通における乗り物での、好適には、列車、市街電車、船、自動車、例えばバス、トラック、特に乗用車での請求項1から11までのいずれか1項記載のルーフパネルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネル、並びに該ルーフパネルを製造する方法、並びに該ルーフパネルの使用に関する。
【0002】
光起電力モジュールを車両のルーフパネルに組み込むことができることは公知である。このようなルーフパネルは例えば、独国特許出願公開第3713854号明細書、独国特許出願公開第4006756号明細書、独国特許第4105389号明細書、米国特許出願公開第20120097218号明細書により公知である。
【0003】
光起電力モジュールが組み込まれた従来のルーフパネルは典型的には2つのガラスパネルから成る複合パネルとして形成されていて、これら2つのガラスパネルの間に光起電力モジュールが配置されている。このようなルーフパネルには、高い重量を有しているという欠点がある。光起電力モジュールが組み込まれた、特に結晶シリコンをベースとした光起電力モジュールが組み込まれた従来の多くのルーフパネルはさらに、僅かな面積にしか光起電力モジュールを設けることができず、ルーフパネルは僅かな湾曲しか有することができないという欠点を有している。
【0004】
本発明の課題は、光起電力モジュールが組み込まれた改善されたルーフパネルを提供することである。このルーフパネルは僅かな重量を有するのが望ましい。さらに、ルーフパネルの面積の大部分に光起電力モジュールを設けることができ、ルーフパネルに大きな湾曲を設けることができるのが望ましい。さらにルーフパネルは簡単かつ安価に製造できるのが望ましい。
【0005】
この課題は本発明によれば、独立請求項1に記載の光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルにより解決される。好ましい構成は従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明による光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルは、熱可塑性層を介して層状に互いに接合されている少なくとも1つの基板と外側パネルとを有しており、光起電性の層システムが前記熱可塑性層内に埋め込まれていて、前記基板は少なくとも1種のポリマを含んでいる。
【0007】
本発明によるルーフパネルは、例えば車両の内室を屋根の領域で外部環境から区切るために設けられている。この場合、外側パネルは本発明によれば、外部環境に面している。基板は内室に面している。太陽放射は外側パネルを介してルーフパネル内部に入射し、熱可塑性層内部の光起電性の層システムに到る。
【0008】
本発明による利点は、本発明による基板が少なくとも1種のポリマを含んでいることにある。先行技術によると、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルは典型的に、貼り合わせにより互いに接合された2つのガラスパネルを有している。これに比べて、本発明によるポリマ基板によれば、ルーフパネルの重量を著しく減じることができる。本発明によるルーフパネルは、ポリマ基板であるにもかかわらず、例えば自動車で使用するのに十分な安定性を有している。さらに、本発明によるルーフパネルは、従来のルーフパネルよりも安価に製造することができる。光起電性の層システムは、熱可塑性層に大面積で配置することができ、著しい湾曲を有したルーフパネルを形成することができる。
【0009】
基板と外側パネルの互いに反対側を向いた表面が、好適にはルーフパネルの外面を成している。これは、基板と外側パネルの互いに反対側を向いた表面上には、例えば別のパネルといった別のエレメントが配置されていないことを意味している。特に、ポリマ基板の、外側パネルとは反対側を向いた表面上には、ルーフパネルの十分な安定性を得るために別のガラスパネルを配置する必要はない。特別な利点はルーフパネルの重量が僅かであることにある。しかしながら基板と外側パネルの互いに反対側の表面は被覆を有していて良い。ポリマ基板は例えば保護被覆を有していて良く、例えばUV保護層、又は引っかき傷による損傷を回避するための層を有していて良い。
【0010】
好適には基板はプラスチックから成っている。基板は特に、ガラス、例えばガラスパネルとしてのガラスを含んでいない。特に光起電性の層システムの内室側にはガラスパネルは配置されていない。このことは、本発明によるルーフパネルが、ルーフパネルによって区切られる内室に対して、光起電性の層システムよりも僅かな間隔を有しているガラスパネルを含んでいないことを意味している。
【0011】
本発明の好適な実施態様では、基板は剛性的なパネルとして形成されている。基板は例えば、少なくともポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリルエステルスチレンアクリロニトリル(ASA)、及び/又はこれらのコポリマ又は混合物を含有している。基板は少なくとも1種の熱可塑性ポリマを含んでいる。この基板は特に好適には少なくとも、ポリカーボネート(PC)、及び/又はポリメチルメタクリレート(PMMA)を含んでいる。この材料は、基板の加工、強度、機械的及び化学的耐性に関して特に好適である。基板の厚さは、好適には0.8mm〜25mm、特に好適には0.8mm〜4mm、例えば2.1mmである。剛性のパネルとして形成された基板の特別な利点は、本発明によるルーフパネルの安定性にある。
【0012】
本発明の別の好適な実施態様では、基板はフレキシブルなフィルムとして形成されている。フレキシブルなフィルムの厚さは、好適には0.02mm〜2mm、特に好適には0.1mm〜1.5mm、例えば0.4mm〜1.5mm、極めて特に好適には0.15mm〜0.8mm、特に0.45mm〜0.8mmである。特別な利点は、本発明によるルーフパネルの僅かな重量と僅かな製造コストにある。フレキシブルなフィルムは好適には少なくとも1種の熱可塑性ポリマを含んでいる。この熱可塑性ポリマは好適にはフッ素置換されている。これは、基板の化学的かつ機械的安定性に関して有利である。基板は極めて特に好適には少なくとも、ポリフッ化ビニル及び/又はポリフッ化ビニリデンを含んでいる。エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)も同様に好適である。これは、化学的かつ機械的耐性並びに基板に対する熱可塑性層の付着に関して特に有利である。基板はこれらの材料の混合物又はコポリマを含んでいても良い。
【0013】
本発明の好適な構成では、外側パネルはガラスであって、好適には、フラットガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスである。これは、本発明によるルーフパネルの安定性、及び外的影響、例えば雹やあられのような降水による損傷からの光起電性の層システムの保護に関して特に有利である。外側パネルは、予負荷されていない、又は部分的に予負荷されている、又は予負荷されている、又は硬化されている、例えば熱的又は化学的に硬化されているものであって良い。
【0014】
本発明の好適な別の構成では、外側パネルは少なくとも1種のポリマ、好適には熱可塑性ポリマを含んでいる。外側パネルは例えば、少なくともポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリルエステルスチレンアクリロニトリル(ASA)、及び/又はこれらのコポリマ又は混合物を含有していて、好適にはポリカーボネート(PC)、及び/又はポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有している。ポリマを含む外側パネルを使用することによりルーフパネルの重量をさらに減じることができる。
【0015】
外側パネルを、ポリマを含む外側パネルとして形成する場合、好適な構成では基板はフレキシブルなフィルムとして形成されている。従って、極めて僅かな重量を有したルーフパネルを実現することができる。
【0016】
外側パネルの厚さは、好適には1.0mm〜12mm、特に好適には1.4mm〜5mm、例えば2.1mmである。基板がフレキシブルなフィルムとして形成されている場合、外側パネルの厚さは好適には2.8mm〜5mmである。これによりルーフパネルの好適な安定性が得られる。
【0017】
熱可塑性層は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマ、好適には、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでいる。しかしながら熱可塑性層は例えば少なくとも、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール樹脂、注型用樹脂、アクリレート、フッ化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、及び/又はエチレンテトラフルオロエチレンを含んでいても良い。熱可塑性層は好適には、0.5mm〜5mmの、特に好適には1mm〜3mmの、極めて特に好適には1〜2mmの厚さを有している。
【0018】
熱可塑性層は好適には、少なくとも1つの第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとから形成されていて、これらフィルムの間には、光起電性の層システムが配置されている。この場合、各熱可塑性フィルムは好適には、0.25mm〜1mmの、特に好適には0.45mm〜0.85mmの厚さを有している。第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとは同じ、又は異なる材料から成っている。
【0019】
しかしながら熱可塑性層は2つ以上のフィルムから成っていても良い。別のフィルムは例えば、ルーフパネルの製造前に光起電性の層システムの保護層又は支持層として使用することができる。
【0020】
例えば3mm〜50mmの幅の、熱可塑性層の環状の縁部領域には、好適には光起電性の層システムが設けられていない。この縁部領域において、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとは好適には互いに直接に、又は例えば別のポリマ層のような別の層を介して接合されている。これにより光起電性の層構造は、持続的に安定的であって、外的環境に接触することなく熱可塑性層の内部に埋め込まれており、好適には外的影響、特に腐食や機械的損傷から保護されている。
【0021】
本発明によるルーフパネルは、任意の3次元的な形状を有することができる。ルーフパネルは扁平であって良く、又は僅かに又は多分に、空間の1つの方向又は複数の方向に曲げられていて良い。曲げられたルーフパネルの曲率半径は例えば、50mm〜1200mmであって良い。曲率半径は、ルーフパネル全体にわたって一定である必要はない。著しく曲げられた領域と僅かに曲げられた領域とが存在していて良い。扁平な領域と曲げられた領域とが存在していても良い。光起電力モジュールが組み込まれた従来のルーフパネルでは、曲率半径は典型的には700mm〜1000mmである。これに対して、本発明による熱可塑性層内に埋め込まれた光起電性の層システムと本発明によるポリマ基板とによっては、少なくとも所定の領域で600mm〜900mmの、好適には600mm〜650mmの曲率半径を有するルーフパネルを実現することができる。
【0022】
本発明によるルーフパネルの面積は様々に変更可能であり、特に個別のケースの必要に合わせて適合させることができる。ルーフパネルの面積は例えば100cm
2〜5m
2であって良く、好適には0.5m
2〜2m
2である。
【0023】
ルーフパネルではしばしば、内室への直接的な太陽光の入射を避けるために、可視光の透過を減じることが所望される。透過率は例えば50%よりも小さく、又は20%よりも小さく、又は10%よりも小さくて良い。このことは典型的には、ティンテッド加工された及び/又は着色された外側パネル及び/又は内側パネルによって、又は複合体の内側におけるティンテッドフィルムによって得られる。ルーフパネルの内側に大面積で配置されている光吸収性の光起電性の層システムによって、可視光によるルーフパネルの透過は好適には減じられるので、外側パネル、基板、熱可塑性層は透明かつクリアに形成することができる。このような透明な外側パネル、基板、熱可塑性層は簡単かつ安価に製造することができ、例えば外側パネル上に塗布される機能的なコーティングによって腐食の危険を減じることができる。光起電性の層システムの領域における可視光によるルーフパネルの透過率は好適には50%よりも小さい。
【0024】
光起電性の層システムは、放射エネルギを電気エネルギに変換するために必要な電荷担体分離を起こさせる。光起電性の層システム好適には薄膜システムである。これは数マイクロメータのみの厚さを有する層システムを意味する。特別な利点は、本発明による熱可塑性層の僅かな厚さと大きな柔軟性にある。熱可塑性層の大きな柔軟性は特に、著しい湾曲を有するルーフパネルを形成することができるという利点を有している。
【0025】
光起電性の層システムは好適には少なくとも1つの光起電に関して活性の吸収層を、前側電極層と背側電極層との間に有している。この場合、前側電極層は、吸収層の、外側パネル側の面上に配置されている。背側電極層は、吸収層の基板側の面上に配置されている。
【0026】
光起電に関して活性の吸収層は好適には少なくとも1つのp型の半導体層を有している。p型の半導体層は例えば、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、又は多結晶シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化カドミウム(CdSe)、ガリウムヒ素(GaAs)、又は半導体の有機ポリマ又はオリゴマを含んでいて良い。
【0027】
p型の半導体は本発明の特に好適な実施態様では、銅−インジウム−硫黄/セレン(CIS)のグループから成る化合物、例えば銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe2)、又は銅−インジウム−ガリウム−硫黄/セレン(CIGS)のグループから成る化合物、例えばCu(InGa)(SSe)
2のようなカルコパイライト型半導体を含む。CI(G)Sベースの半導体層は、太陽光のスペクトルに合わせられたバンドギャップに基づき、特に高い吸収率により優れている。これは、光起電性の層システムの出力に関して特に好適である。さらに、CI(G)Sベースの吸収層により、彩色することなしにルーフパネルの均一な暗色の印象を得ることができる。吸収層は金属で、好適にはナトリウムでドーピングされている。光起電に関して活性の吸収層は好適には500nm〜5μmの、特に好適には1μm〜3μmの層厚さを有している。
【0028】
本発明の特に好適な選択的な実施態様では、吸収層は半導体の有機ポリマ又はオリゴマを含んでいる。このような層システムでは透過率を好適には調節することができ、特に活性の吸収層の層厚さ及び材料の選択並びに背側電極の材料の選択により調節することができる。即ち、このような層システムにより、好適な暗い外観を実現することもできる。
【0029】
背側電極層は例えば少なくとも1種の金属を含んでいて良く、好適には、モリブデン、チタン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム及び/又はタンタルを含んでいて良い。背側電極層は好適には、300nm〜600nmの層厚さを有している。
【0030】
前側電極層は、吸収層が反応するスペクトル範囲で透過性である。前側電極層は例えばn型の半導体を含んでいて良く、好適にはアルミニウムドーピングされた酸化亜鉛又はインジウム−酸化スズを含んでいて良い。前側電極層は好適には、500nm〜2μmの層厚さを有している。
【0031】
電極層は、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、酸化スズ、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び/又はこれらの組み合わせ及び混合物を含んでいても良い。
【0032】
電極層は様々な個別層の積層体を有していても良い。このような積層体は例えば、光起電に関して活性の吸収層内へのイオンの拡散を阻止する、例えば窒化ケイ素から成る拡散遮断層を含むことができる。
【0033】
光起電性の層システムは勿論、当業者に公知の別の個別層を含んでいても良く、例えば、吸収層と電極層との間の電子的特性を適合させるための緩衝層を含むことができる。
【0034】
光起電性の層システムは本発明の好適な構成では、背側電極層、吸収層、前側電極層の適当な公知の構造化及び接続により、個別の光起電に関して活性の領域、いわゆる太陽電池に分割することができる。このように分割された光起電性の層システムは、例えば欧州特許出願公開2200097号明細書により公知である。分割は、レーザ書き込みや、例えばドロッシング(Drossing)又はスクラッチングによる機械加工といった適当な構造化技術を用いて裁断することにより行われる。個別の太陽電池は、背側電極層の領域を介して組み込まれた形で互いに直列に接続されている。
【0035】
熱可塑性層は、光起電性の層システムに電気的に接触するために、好適には公知の集合導体、いわゆるバスバーを含んでいる。バスバーは、前側電極層及び/又は背側電極層に導電的に接続されている。バスバーは、好適には帯材若しくはストリップとして形成されている。バスバーは好適には少なくとも1種の金属又は金属合金を含んでいる、又は金属又は金属合金から成っている。原則的にはフィルムとなるように加工することができるあらゆる導電性材料をバスバーのために使用することができる。バスバーにとって特に適当な材料は例えば、アルミニウム、銅、スズ引き銅、金、銀、スズ、及びこれらの合金である。バスバーは例えば0.03mm〜0.3mmの厚さと、2mm〜16mmの幅とを有している。バスバーを、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの間に、これらが熱可塑性層を成すように接合される前に、挿入することができる。バスバーはフィルムの接着により所定の位置に保持される。選択的には、バスバーと各電極層との間の導電的な接続を、溶接、ボンディング、ろう接、クランプ、又は導電性の接着剤による接着によって行うことができる。
【0036】
バスバーは、熱可塑性層の側縁を越えて延在していて良く、熱可塑性層の外側で適当なケーブルを介して電気的に接触させることができる。選択的にはバスバーの電気的接触は、適当なケーブル、好適にはフィルム導体のような平形導体によって、熱可塑性層の内側で行うことができる。このためにはケーブルは、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの接合前にバスバーに接続されるので、ケーブルは熱可塑性層の内部のバスバーから、熱可塑性層の側縁部を越えて延在している。
【0037】
光起電性の層システムは、物理的に互いに分離された複数のサブセクションに分割することができる。これは、光起電性の層システムの個別層のいずれを介しても互いに直接、即ち別の接続エレメントを使用することなく接続されていないサブセクションを意味する。このようなサブセクションは好適には、100mm〜2000mmの、特に好適には500mm〜1000mmの長さ及び幅を有している。互いに隣接する2つのサブセクションの間の間隔は、好適には1mm〜100mm、特に好適には10mm〜50mmである。サブセクションは例えば矩形の面を有していて良く、互いに平行な列の形で配置されていて良い。個々のサブセクションは好適には導電的な接続エレメントを介して、使用目的に応じて、互いに並列にかつ/又は直列に接続させることができる。導電性の接続エレメントは例えば、少なくとも1種の金属又は金属合金を含む帯材又はストリップとして形成されている。導電性の接続エレメントは好適には少なくとも、アルミニウム、銅、スズ引き銅、金、銀、スズ、及びこれらの合金を含む。導電性の接続エレメントは好適には0.03mm〜0.3mmの厚さを有している。光起電性の層システムのサブセクションは複数のグループに分けることもでき、それぞれ1つのグループのサブセクションは互いに直列接続され、この場合、これらのグループは互いに並列に接続されていて、例えば共通のバスバーへの接続により互いに接続されている。
【0038】
光起電性の層システムの面積は、本発明によるルーフパネルの面積の好適には50%〜100%であって、例えば50%〜90%である。これは、組み込まれた光起電力モジュール並びにルーフパネルの統一的な外観に関して特に好適である。光起電性の層システムの面積は例えば0.1cm
2〜5m
2であって良く、好適には0.5m
2〜2m
2である。
【0039】
組み込まれた光起電力モジュールは、好適な構成では10W/m
2〜300W/m
2の、特に好適には、50W/m
2〜150W/m
2の最大得られる電力密度P
MPPを有している。この場合、出力は光起電力モジュールのための通常の標準テスト条件下で測定されている(放射照度1000W/m
2、温度25℃、放射スペクトルAM1.5g)。
【0040】
本発明の課題はさらに、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルを製造する方法により解決され、この場合、少なくとも
(a)光起電性の層システムを熱可塑性層内に設けるステップと、
(b)前記熱可塑性層を、少なくとも1種のポリマを含む基板と外側パネルとの間に層状に配置するステップと、
(c)前記基板を前記外側パネルに前記熱可塑性層を介して、加熱作用下で、かつ/又は真空作用下で、かつ/又は圧力作用下で接合させるステップと、を含んでいる。
【0041】
熱可塑性層は好適には、少なくとも1つの第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとから形成されていて、この場合、光起電性のシステムは、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの間に層状に取り付けられている。
【0042】
光起電性の層システムは第1の熱可塑性フィルムの表面と第2の熱可塑性フィルムの表面とに直接、析出させることができる。光起電性の層システムは選択的に例えば、支持フィルムの上に析出させることができ、これを次いで、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの間に挿入する。第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとの間には別の層、例えば、接着促進性の層又は別の支持フィルムを配置することができる。
【0043】
例えば、第1の熱可塑性フィルム又は第2の熱可塑性フィルム又は支持フィルムの表面への光起電性の層システムの析出は、好適には陰極スパッタリング、蒸着、化学気相蒸着(chemical vapour deposition, CVD)によって行われる。
【0044】
本発明による方法の実施態様ではまず、基板又は外側パネルを準備する。少なくとも第1の熱可塑性フィルムを基板若しくは外側パネルの表面上に配置する。支持フィルム上に光起電性の層システムを設ける場合には、この支持フィルムを第1の熱可塑性フィルム上に層状に配置する。次いで、少なくとも第2の熱可塑性フィルムを第1の熱可塑性フィルム若しくは支持フィルム上に層状に配置する。方法ステップ(b)では、この実施態様で、外側パネル若しくは基板を、第2の熱可塑性フィルム上に配置し、これにより、光起電性の層システムを備えた熱可塑性層が基板と外側パネルとの間に配置される。
【0045】
選択的な実施態様では、熱可塑性フィルムの一方が基板若しくは外側パネル上に配置されるよりもさらに前に、光起電性の層システムを、少なくとも第1の熱可塑性フィルムと、第2の熱可塑性フィルムとの間に配置する。第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムとは光起電性の層システムを介して大面積で、1つの予め貼り合わせられた熱可塑性層となるように接合される。この接合は、好適には熱、圧力、及び/又は真空の作用下で行われる。方法ステップ(b)では、埋め込まれた光起電性の層システムを備えた予め製造された予備貼合わせ体が基板とルーフパネルとの間に配置される。
【0046】
このような予備貼合わせ体の利点は、本発明によるルーフパネルの簡単かつ安価な製造にある。予備貼合わせ体は、基板を外側パネルに接合する前に準備することができる。これによりルーフパネルを製造するための従来の方法を使用することができ、この場合、従来は基板を外側パネルに接着するのを仲介していた熱可塑性の中間層が、この予備貼合わせ体に置き換えられる。さらに、光起電性の層システムは予備貼合わせ体の内部で好適には損傷から、特に腐食から保護されている。従って予備貼合わせ体は、ルーフパネルを実際に製造するずっと前に、多数であっても準備することができ、このことは経済的観点からも望ましいことであり得る。予備貼合わせ体は、直接、又は別の熱可塑性フィルムを介して基板及び外側パネルに接合することができる。
【0047】
好適には、背側電極層及び/又は前側電極層は電気的コンタクトのために、光起電性の層システムを取り付けた後に、第1の熱可塑性フィルムと第2の熱可塑性フィルムの接合前に、例えばバスバー及び/又はフィルム導体に導電接続される。
【0048】
基板が剛性的なパネルとして形成されている場合、基板は外側パネルに熱可塑性層を介して、複合パネルを製造する公知の方法によって接合される。例えばいわゆるオートクレーブ法を、約10bar〜15barの高められた圧力、130℃〜145℃の温度で約2時間以上行うことができる。公知の真空バッグ法又は真空リング法は例えば、約200mbar、130℃〜145℃で行われる。
【0049】
外側パネルと、熱可塑性層と、基板とは、カレンダ成形機において、少なくとも1つのロール対の間で、本発明によるルーフパネルとなるように加圧することもできる。このような形式の装置は複合グレージングを製造するために公知であり、プレスユニットの上流側に通常少なくとも1つの加熱トンネルを有している。プレス過程中の温度は例えば40℃〜150℃である。カレンダ成形法とオートクレーブ法の組み合わせが実際に特に有利であることがわかっている。
【0050】
選択的には真空ラミネータを使用することができる。真空ラミネータは、単数又は複数の加熱可能かつ真空引き可能な室から成っていて、この室内で外側パネルと基板とを、例えば約60分以内で、0.01mbar〜800mbarの減じられた圧力及び80℃〜170℃の温度で貼り合わせることができる。
【0051】
基板がフレキシブルなフィルムとして形成されている場合、基板は外側パネルに熱可塑性層を介して、特に好適な実施態様では以下に記載するように接合される。方法ステップ(b)よりも時間的に前に、又は後に、又は同時に、かつ方法ステップ(c)よりも前に、基板の、外側パネルとは反対の表面上に分離フィルムを配置し、該分離フィルムの、基板とは反対の表面上に支持パネルを配置する。支持パネルは好適には剛性的なパネルであって、好適にはガラス、特に好適にはフラットガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又はソーダ石灰ガラス、又はプラスチック、好適にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及び/又はこれらの混合物を含有している。支持パネルの厚さは、好適には1.0mm〜25mm、特に好適には1.4mm〜5mmである。支持パネルの、基板に面した表面はこの場合、外側パネルの、基板に面した表面と同じ湾曲を有しているのが望ましい。支持パネルは即ち、大きさ及び形状に関して、外側パネルに接合されて1つの複合パネルを成すのに原則的に適しているように選択される。分離フィルムは、支持パネルと基板との間の持続的な付着を阻止するのに適した材料から製造されている。分離フィルムは好適には少なくとも1種のポリテトラハロゲンエチレン(polytetrahalogen ethylene)、特に好適には少なくともポリテトラフルオロエチレン、及び/又はポリクロロトリフルオロエチレンを含む。この材料は、分離フィルムの付着阻止特性に関して特に好適である。分離フィルムは好適には、0.01mm〜10mmの、特に好適には0.1mm〜2.5mmの、例えば0.1mm〜1mmの厚さを有している。
【0052】
外側パネルと、熱可塑性層と、基板と、分離フィルムと、支持パネルとから成る積層体には、簡単に、複合パネルを製造する公知の方法を、例えば上述したように実行することができる。これにより、熱可塑性層を介した外側パネルと基板との間の安定的な接合が形成される。分離フィルムの付着阻止効果に基づき、支持パネルは続いて簡単に除去することができる。
【0053】
本発明の別の側面は、陸上交通、航空交通、水上交通における乗り物での、好適には、列車、市街電車、船、自動車、例えばバス、トラック、特に乗用車での、本発明によるルーフパネルの使用を含んでいる。組み込まれた光起電力モジュールにより得られる電気エネルギにより、例えば電気自動車のバッテリを冷却することができ、駐車中の車室を冷やすことができ、車両の二次バッテリを充電することができ、駐車中に加熱可能な窓を作動させることができる。
【0054】
本発明を図面及び実施態様につき詳しく説明する。図面は概略図であって、正確な寸法ではない。図面は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明による光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルの実施態様を示す横断面図である。
【
図3】本発明によるルーフパネルを製造する前の基板、熱可塑性層、外側パネル、分離フィルム、支持パネルの横断面図である。
【
図4】本発明による方法の実施例をフローチャートで示した図である。
【0056】
図1及び
図2には、本発明による光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルのそれぞれ1つの詳細が示されている。ルーフパネルは、基板1と外側パネル2とを有しており、これら基板1と外側パネル2とは熱可塑性層3を介して互いに接合されている。ルーフパネルは自動車のルーフパネルである。外側パネル2は、熱的に予負荷されたソーダ石灰ガラスから成っており、3mmの厚さを有している。基板1はポリフッ化ビニル(デュポン社のテドラー(Tedlar 商標名))から成っており、0.8mmの厚さを有している。外側パネル2と基板1の互いに反対側の表面が、ルーフパネルの外面を成している。この場合、外側パネル2の、基板1とは反対の側の表面は、組み込み位置で外部の環境に面しており、基板1の、外側パネル2とは反対側の表面は車両内室に面している。ルーフパネルは、自動車のルーフパネルにとって通常であるように湾曲されて成形されている。ルーフパネルは、110cmの幅と130cmの長さとを有している。
【0057】
熱可塑性層3は、第1の熱可塑性フィルム4と第2の熱可塑性フィルム5とから成っている。第1の熱可塑性フィルム4と第2の熱可塑性フィルム5とは、エチレンビニルアセテート(EVA)から成っていてそれぞれ約0.7mmの厚さを有している。熱可塑性フィルム4,5は明瞭にするために概略的に示されている。ルーフパネルの貼り合わせ後は、熱可塑性フィルム4,5が同じ材料から成っている場合には特に、熱可塑性フィルム4,5の間の移行部が明確な境界として見えてはならない。第1の熱可塑性フィルム4と第2の熱可塑性フィルム5との間には、光起電性の層システム6が配置されている。光起電性の層システム6は熱可塑性層3の側縁部までは延びていない。約50mmの幅を有する熱可塑性層3の環状の縁部領域には、光起電性の層システム6は設けられていない。この縁部領域において、第1の熱可塑性フィルム4と第2の熱可塑性フィルム5とは互いに直接接合されている。従って、光起電性の層システム6は熱可塑性層3の内部で好適に環境的影響から、特に腐食から保護されている。光起電性の層システム6は全体で約1.2m
2の面積を有している。従って、光起電性の層システム6の面積は、ルーフパネル面積の約84%である。
【0058】
光起電性の層システム6は、モリブデンを含む背側電極層10を有していて、その層厚さは約300nmである。光起電性の層システム6はさらに光起電に関して活性の吸収層11を有しており、この吸収層11は、ナトリウムをドーピングされたCu(InGa)(SSe)
2を含有し、約2μmの層厚さを有している。光起電性の層システム6はさらに、前側電極層12を有しており、この前側電極層12は、アルミニウムをドーピングされた酸化スズ(AZO)を含有し、約1μmの層厚さを有している。前側電極層12と吸収層11との間には、緩衝層(図示せず)が配置されており、この緩衝層は、単層の硫化カドミウム(CdS)と単層の真性(intrinsisch)の酸化亜鉛(i-ZnO)とを有している。緩衝層は、吸収層11と前側電極層12との間における電気的な適合を生ぜしめる。
【0059】
光起電性の層システム6は複数のサブセクション7に分割されている。これらのサブセクション7は物理的に互いに分離されていて、即ち、光起電性の層システム6の個別層のいずれを介しても互いに直接結合されてはいない。光起電性の層システム6は全部で9個のこのようなサブセクション7を有しており、これら9個のサブセクションは、それぞれ3つのサブセクション7を有した互いに平行に位置する3つの列に配置されている。
図1にはこの列のうちの1つの横断面が示されている。この1つの列のサブセクション7はそれぞれ互いに直列に接続されている。接続は、それぞれ隣接するサブセクション7の電極層10,12の間の適当な電気的接続によって、導電性接続エレメント8を介して行われる。導電性接続エレメント8は、アルミニウムから成るストリップとして形成されていて、約0.2mmの厚さを有している。互いに隣接するサブセクション7の間の間隔は約5mmである。直列接続されたサブセクション7の図示した列の両外側のサブセクション7は、それぞれ1つのバスバー(図示せず)に接続されている。バスバーにはそれぞれ、フィルム導体(図示せず)が接続されており、このフィルム導体は熱可塑性層3の側縁部を越えて延在しており、外側の電気接続部として働く。互いに直列に接続されたサブセクション7の3つの列はそれぞれ同じバスバーに接続されていて、即ちこれらの列は並列に接続されている。
【0060】
光起電性の層システム6のサブセクション7はそれぞれ、薄膜光起電力モジュールを製造する公知の方法で、光起電に関して活性の個々の領域、いわゆる太陽電池9に分割されている。1つのサブセクション7の太陽電池9は、背側電極層10の領域と、背側電極層10へと戻し案内される前側電極層12の領域とを介して、一体的に統合された形で互いに直列に接続されている。
【0061】
図3には、本発明による方法の好適な実施態様によってルーフパネルに取り付ける前の本発明によるルーフパネルの構成部分の横断面図が示されている。基板1と、第1の熱可塑性フィルム4と光起電性の層システム6と第2の熱可塑性フィルム5とを有した熱可塑性層3と、外側パネル2とは層状に互いに重ねられて配置されている。熱可塑性フィルム4,5と光起電性の層システム6とは選択的に予め貼り合わせられた熱可塑性層3として設けられていても良い。基板1と、熱可塑性層3と、光起電性の層システム6と、外側パネル2とは、
図1のルーフパネルの場合と同様に構成されている。基板1の、外側パネル2とは反対の表面上には支持パネル14が配置されている。支持パネル14はソーダ石灰ガラスから成っていて、大きさ及び形状は外側パネル2と同様に形成されている。支持パネル14と基板1との間には分離フィルム13が配置されている。分離フィルム13は、ポリテトラフルオロエチレンから成っていて、1mmの厚さを有している。分離フィルム13は基板1の表面全体を覆っている。分離フィルム13の面積は少なくとも基板1の表面積と同じ大きさであるが、図示した例のように基板1よりも大きくても良く、基板1の側縁を越えて突出していても良い。
【0062】
基板1がフレキシブルなフィルムとして形成されているにもかかわらず、支持パネル14により本発明によるルーフパネルは簡単に製造することができる。基板1とルーフパネル2とを熱可塑性層3を介して接合するためには、複合ガラスを製造するための公知の方法で簡単に、支持パネル14と、分離フィルム13と、基板1と、熱可塑性層3と、外側パネル2とから積層体を形成することができる。これにより、外側パネル2と基板1との間の安定的な接合が熱可塑性層3を介して得られる。分離フィルム13は、支持パネル14と基板1との間の付着を阻止する。ルーフパネルの製造後は支持パネル14と分離フィルム13とは簡単に取り除くことができる。
【0063】
図4には、本発明による、光起電力モジュールが組み込まれたルーフパネルを製造する方法の実施態様の例が示されている。本発明によるポリマ基板1により、光起電力モジュールが組み込まれた従来のルーフパネルと比較して著しく減じられた重量でありながら、例えば自動車のルーフパネルとして使用することができるほど十分な堅牢性を備えたルーフパネルを実現することができることが示された。光起電性の層システム6を備えた熱可塑性層3の柔軟性により、大きな曲率半径を有したルーフパネルを実現することもできる。さらに、光起電性の層システム6は熱可塑性層3内に大面積で配置することができる。本発明のこのような利点は当業者には予期せぬことで驚きであった。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 外側パネル
3 熱可塑性層
4 第1の熱可塑性フィルム
5 第2の熱可塑性フィルム
6 光起電性の層システム
7 光起電性の層システム6のサブセクション
8 導電性接続エレメント
9 太陽電池
10 背側電極層
11 吸収層
12 前側電極層
13 分離フィルム
14 支持パネル
Z ルーフパネルの部分
【国際調査報告】