(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、アフィニティクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーおよび混合モードのクロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
プロテインAアフィニティクロマトグラフィーは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマー、孔径が制御されたガラスおよびアガロースからなる群から選択されるマトリックスに接続したプロテインAリガンドを使用する、請求項16に記載の方法。
工程(d)のフロースルー精製が、活性炭、アニオン交換クロマトグラフィー媒体およびカチオン交換クロマトグラフィー媒体から選択される2種類以上の媒体を使用する、請求項1に記載の方法。
プロテインA溶出物から標的分子を精製するためのフロースルー精製方法であって、溶出物を活性炭、アニオン交換媒体、カチオン交換媒体およびウイルス濾過媒体から選択される2種類以上の媒体と接触させることを含み、溶出物の流れが連続的である、方法。
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー装置が、少なくとも2つの分離ユニットを含み、それぞれのユニットが、同じクロマトグラフィー媒体を含み、2つの分離ユニットは、サンプルがユニットから次のユニットへ次から次へと流れることができるように接続している、請求項38に記載のシステム。
工程(d)のフロースルー精製は、活性炭デバイス、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイスから選択されるデバイスをさらに含む、請求項38に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、精製または生体分子、例えば、抗体のための産業で使用される典型的なテンプレート化された方法に関連する幾つかの欠陥を克服する方法およびシステムを提供する。
【0052】
上述のように、生体分子を精製するための典型的なテンプレート化された方法は、1つ以上のクロマトグラフィー工程を含む多くの異なる工程を含み、工程の間に保持槽または貯留槽の使用を必要とし、終了するのに数時間から数日間かかる。
【0053】
典型的なテンプレート化された方法から離れて移動するために幾つかの努力がはらわれてきた。例えば、PCT国際公開第2012/014183号は、2つ以上のクロマトグラフィー分離モードをタンデムで組み合わせたタンパク質を精製するための方法を記載する。さらに、米国特許公開第2008/0269468号は、連続的な灌流発酵システムと、連続的な粒子除去システムおよび連続的な精製システムの組み合わせを記載し、この方法全体の混合物の流速は実質的に一定に保たれる。
【0054】
さらに、PCT国際公開第2012/051147号は、タンパク質を精製するための方法を記載するが、連続的な方法または半連続的な方法は記載されていないようである。
【0055】
最後に、PCT国際公開第2012/078677号は、生体分子を製造する連続的な方法を記載するが、マルチバルブアレイの利用に依存するようである。さらに、上述のPCT公開は、本明細書に記載するすべての処理工程の使用も教示または示唆しない。例えば、フロースルー活性炭デバイス、フロースルーAEX媒体、フロースルーCEX媒体およびフロースルーウイルスフィルタの使用を含む複数のフロースルー工程を含むフロースルー精製操作の教示も示唆もないようである。実際に、PCT国際公開第2012/078677号は、フロースルーモードで行われるカチオン交換クロマトグラフィー工程を教示も示唆もしない。最後に、上述のPCTは、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を使用し、本明細書に記載の方法によって、最小限の介入で首尾良く行うことができる連続的な方法も記載できていない。
【0056】
従って、連続モードで行われる精製方法を含むことが望ましいと思われるが、幾つかの個々のユニット操作を接続することに関連する複雑さに起因し、最小限の介入によって、例えば、少ない溶液調整によって(例えば、pHおよび/または導電性の変更)、連続的または半連続的なモードで行うために効率的な連続方法を達成することが困難である。しかし、本発明は、これを実際に達成することができた。
【0057】
本発明は、さらに、今日、産業で使用される従来の方法に比べ、例えば、処理工程の数の減少、溶液調整のための処理工程の間の大きな貯留槽の使用必要性をなくすことといった他の利点も提供する。本明細書に記載する方法およびシステムの場合には、導電性を変えるために、大きな容積の希釈を行う必要がなく、これによって、処理工程間の大きな貯留槽の使用必要性がない。さらに、ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、当分野で使用される従来の方法と比較して、それぞれの1つの処理工程と典型的に関連する少ない制御/監視装置(「スキッド」とも呼ばれる。)を使用する。
【0058】
ある実施形態では、本発明は、さらに、プロテインAクロマトグラフィーの保持工程中に添加剤の含有を使用する方法も提供し、生成物の純度を犠牲にすることなく、保持工程から溶出工程までまっすぐに進むことによって、または保持工程と溶出工程の間の洗浄工程の数を減らすことによって、1つ以上の中間洗浄工程を減らすか、またはなくす。一方、米国特許公開第20130096284号は、プロテインAクロマトグラフィーカラムに保持されるサンプル中にアミノ酸または塩が含まれることを記載しており、上述の公開は、本明細書に記載するようなマルチカラムの連続モードまたは半連続モードのこのようなプロテインAクロマトグラフィー工程の使用を教示または示唆していないようである。その代わりに、このようなプロテインA工程をバッチの1つのカラムモードで行うことを記載している。
【0059】
本発明は、プロテインAクロマトグラフィー工程中に行われる洗浄工程をなくすか、または洗浄工程の数を減らしたときでさえ、生成物の純度を犠牲にすることなく、不純物、例えば、HCPのレベルの低下が観察されることを示す。
【0060】
本発明をより簡単に理解し得るために、特定の用語を最初に定義する。詳細な記載全体で、さらなる定義を記載する。
【0061】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、変動し得る特定の組成または処理工程に限定されないことを理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、この内容が他の意味であると明確に示されていない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」が、複数の対象物を含むことに留意されたい。従って、例えば、「1つのリガンド(a ligand)」に対する言及は、複数のリガンドを含み、「1つの抗体(an antibody)」に対する言及は、複数の抗体を含む、など。
【0062】
その他の定義がされていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0063】
以下の用語は、本明細書に記載するように、本発明の目的のために定義される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「標的分子」または「標的化合物」という用語は、本明細書に記載される方法およびシステムを用い、サンプル中の1種類以上の不純物から単離され、分離されるか、または精製される任意の分子、物質または化合物、またはこれらの混合物を指す。種々の実施形態では、標的分子は、生体分子、例えば、タンパク質、または2種類以上のタンパク質の混合物である。特定の実施形態では、標的分子は、Fc領域を含むタンパク質、例えば、抗体である。
【0065】
「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。典型的には、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる基本的な4種類のポリペプチド鎖構造を有し、この鎖は、例えば、鎖間のジスルフィド結合によって安定化される。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、モノマー形態またはポリマー形態で存在していてもよく、例えば、ペンタマー形態で存在するIgM抗体および/またはモノマー形態、ダイマー形態またはマルチマー形態で存在するIgA抗体であってもよい。抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびリガンド特異的な結合ドメインを保持しているか、またはリガンド特異的な結合ドメインを含むように修正されている限り、抗体フラグメントも含んでいてもよい。「フラグメント」という用語は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。フラグメントは、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的な処理によって得ることができる。フラグメントは、組み換え手段によっても得ることができる。組み換えによって作られる場合、フラグメントは、単独で発現してもよく、または融合タンパク質と呼ばれるより大きなタンパク質の一部として発現してもよい。例示的なフラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFvのフラグメントが挙げられる。
【0066】
ある実施形態では、Fc領域を含むタンパク質は、別のポリペプチドまたはこのフラグメントに融合した免疫グロブリンのFc領域を含む組み換えタンパク質である。例示的なポリペプチドとしては、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1抗トリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;ろ胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝血因子、例えば、VIIIC因子、IX因子、組織因子およびヴォン・ヴィレブランド因子、抗凝結因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿組織または組織型のプラスミノゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび腫瘍壊死因子−β;エンケファリナーゼ;RANTES(正常T細胞に発現し、分泌する活性化について制御);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンα鎖;リラキシンβ鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、β−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞毒性T−リンパ球関連抗原(CTLA)(例えば、CTLA−4);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、ウシ由来の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5またはニューロトロフィン−6(ΝT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)、または神経成長因子、例えば、NGF−β;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えば、αFGFおよびβFGF;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF−αおよびTGF−β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含む。);インスリン様成長因子−Iおよびインスリン様成長因子−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IFG−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34およびCD40;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−βおよびインターフェロン−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、OM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えば、CD1 Ia、CD1 Ib、CD1 Ic、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、HER2、HER3またはHER4受容体;および上に列挙したポリペプチドのフラグメントおよび/または改変体が挙げられる。これに加え、本明細書に記載する方法を用いて精製され得る抗体は、上に列挙した任意のポリペプチドに特異的に結合し得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、他の意味で述べられていない限り、「サンプル」という用語は、標的分子を含む任意の組成物または混合物を指す。サンプルは、生体源または他の供給源から誘導されてもよい。生体源としては、真核生物および原核生物、例えば、植物および動物の細胞、組織および臓器が挙げられる。サンプルは、希釈剤、バッファー、洗剤および混入する種、標的分子と混合して見出される破片なども含んでいてもよい。サンプルは、「部分的に精製されて」(即ち、1つ以上の精製工程、例えば、濾過工程を行って)いてもよく、または、標的分子を産生する宿主細胞または臓器から直接得られてもよい(例えば、サンプルは、収穫された細胞培養液を含んでいてもよい。)。ある実施形態では、サンプルは、細胞培養供給物である。
【0068】
「不純物」または「混入物質」という用語は、本明細書で使用する場合、生体高分子、例えば、DNA、RNA、1つ以上の宿主細胞タンパク質、内毒素、脂質および本発明の方法を用いた1種類以上の外来分子または良くない分子から分離される、標的分子を含むサンプル中に存在し得る1種類以上の添加剤を含む任意の外来分子または良くない分子を指す。さらに、このような不純物は、本発明の方法の前に起こり得る工程で使用される任意の試薬を含んでいてもよい。不純物は、可溶性または不溶性であってもよい。
【0069】
「不溶性不純物」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子を含むサンプル中に存在する任意の望ましくない部分または良くない部分を指し、この部分は、懸濁した粒子または固体である。例示的な不溶性不純物としては、全細胞、細胞フラグメントおよび細胞片が挙げられる。
【0070】
「可溶性不純物」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子を含むサンプル中に存在する任意の望ましくない部分または良くない部分であって、この部分が不溶性不純物ではない部分を指す。例示的な可溶性不純物としては、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、RNA、ウイルス、内毒素、細胞培地成分、脂質などが挙げられる。
【0071】
「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」および「CHOP」という用語は、相互に置き換え可能に用いられ、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物から誘導される宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指す。HCPまたはCHOPは、一般的に、標的分子、例えば、CHO細胞で発現する抗体またはイムノアドヘシンを含む細胞培地または溶解物(例えば、収穫した細胞培養液(「HCCF」))中に不純物として存在する。標的分子を含む混合物中に存在するCHOPの量は、標的分子の純度の指標を与える。HCPまたはCHOPとしては、限定されないが、宿主細胞、例えば、CHO宿主細胞によって発現する目的のタンパク質が挙げられる。典型的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の標的分子の量に対し、パーツパーミリオンであらわされる。宿主細胞が別の細胞種(例えば、CHO以外の哺乳動物細胞、大腸菌、酵母、昆虫細胞または植物細胞)である場合が理解される。HCPは、宿主細胞の溶解物中に見出される標的タンパク質以外のタンパク質を指す。
【0072】
「パーツパーミリオン」または「ppm」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、本明細書に記載する方法を用いて精製される標的分子の純度の指標を指す。ppmという単位は、ミリグラム/ミリリットルの標的分子あたりのナノグラム/ミリグラム単位でのHCPまたはCHOPの量を指し(即ち、(CHOPのng/mL)/(標的分子のmg/mL)、標的分子およびHCPが溶液状態である。
【0073】
「精製すること」、「精製」、「分離する」、「分離すること」、「分離」、「単離する」、「単離すること」または「単離」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルから標的分子の純度を上げることを指す。典型的には、標的分子の純度は、サンプルから少なくとも1種類の不純物を(完全に、または部分的に)除去することによって上げられる。
【0074】
「結合および溶出モード」および「結合および溶出の方法」という用語は、本明細書で使用する場合、サンプル中に含まれる少なくとも1種類の標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質)が、適切な樹脂または媒体(例えば、アフィニティクロマトグラフィー媒体またはカチオン交換クロマトグラフィー媒体)に結合し、その後溶出する分離技術を指す。
【0075】
「フロースルー方法」、「フロースルーモード」および「フロースルー操作」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、1種類以上の不純物とともに生物医薬の調製に含まれる少なくとも1種類の標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質または抗体)が、ある材料を流すことを意図しており、通常は1種類以上の不純物に結合し、標的分子は通常は結合しない(即ち、流れる。)分離技術を指す。
【0076】
「処理工程」または「ユニット操作」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、精製方法で特定の結果を達成するための1つ以上の方法またはデバイスの使用を指す。本明細書に記載する方法およびシステムで使用可能な処理工程またはユニット操作の例としては、限定されないが、浄化、結合および溶出のクロマトグラフィー、ウイルス不活性化、フロースルー精製(フロースルーモードでの活性炭、アニオン交換およびカチオン交換から選択される2種類以上の媒体の使用を含む。)および配合が挙げられる。それぞれの処理工程またはユニット操作が、処理工程またはユニット操作の意図した結果を達成するために、1つより多い工程または方法またはデバイスを使用してもよいことが理解される。例えば、ある実施形態では、浄化工程および/またはフロースルー精製操作は、本明細書で記載するように、処理工程またはユニット操作を達成するために、1つより多い工程または方法またはデバイスを使用してもよい。ある実施形態では、ある処理工程またはユニット操作を行うために使用される1つ以上のデバイスは、シングルユースのデバイスであり、方法の任意の他のデバイスを置き換える必要なく、またはある方法の実行を止めることさえなく、除去および/または置き換えてもよい。
【0077】
本明細書で使用する場合、「システム」という用語は、一般的に、全精製方法の物理的な形態を指し、本明細書に記載するように、処理工程またはユニット操作を行うための2つ以上のデバイスを含む。ある実施形態では、システムは、滅菌環境に囲まれている。
【0078】
本明細書で使用する場合、「分離ユニット」という用語は、結合および溶出のクロマトグラフィー分離またはフロースルー工程または濾過工程で使用可能な設備または装置を指す。例えば、分離ユニットは、適切な機能を有する媒体を含有する吸収マトリックスまたはクロマトグラフィーデバイスで満たされたクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィーカートリッジであってもよい。本明細書に記載の方法およびシステムの幾つかの実施形態では、2つ以上の分離ユニットを含む精製方法で、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を使用する。好ましい実施形態では、2つ以上の分離ユニットは、同じ媒体を含む。
【0079】
種々の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、貯留槽の必然的な使用の必要性が存在せず、これによって、精製方法を行うための全体的な時間およびこのシステムによって占められる全体的な物理的フットプリントが顕著に減る。従って、本発明の種々の実施形態では、1つの処理工程(またはユニット操作)からの出力が、この方法の次の工程(またはユニット操作)の入力であり、処理工程からの全体的な出力を集める必要はなく、次の処理工程(またはユニット操作)に直接的に、また連続的に流れる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「貯留槽」という用語は、一般的に、処理工程の間で用いられる任意の容器、入れ物、貯蔵器、槽または袋を指し、処理工程からの出力の全容積を集めることができる大きさ/容積を有する。貯留槽は、処理工程からの出力の全容積の溶液状態を保持または保存または操作するために用いられてもよい。本発明の種々の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、1つ以上の貯留槽の使用の必要性をなくす。
【0081】
ある実施形態では、本明細書で記載する方法およびシステムは、精製方法全体で1つ以上の調製槽を使用してもよい。
【0082】
「調整槽」という用語は、本明細書で使用する場合、処理工程の間または1つの処理工程の中で使用される任意の容器または入れ物または袋を指し(例えば、1つの方法操作が1つより多い工程を含むとき)、1つの工程からの出力は、調整槽を通って次の工程へと流れる。従って、調整槽は、ある工程からの出力の全容積を保持するか、または集めることを意図しておらず、その代わりに、ある工程から次の工程への出力の連続的な流れを可能にするという点で、貯留槽とは異なる。ある実施形態では、本明細書で記載する2つの処理工程の間、またはある方法操作(例えば、フロースルー精製操作)の中で使用する調整槽の容積は、処理工程からの出力の全容積の25%以下である。別の実施形態では、調整槽の容積は、処理工程からの出力の全容積の10%以下である。ある他の実施形態では、調整槽の容積は、標的分子を精製する出発物質を構成するバイオリアクターの細胞培養物の全容積の35%未満、または30%未満、または25%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満である。
【0083】
「連続方法」という用語は、本明細書で使用する場合、次の処理工程を行う前に、妨害することなく、および/またはある処理工程からの出力の全容積を集める必要なく、2つ以上の処理工程(またはユニット操作)を含み、この結果、ある処理工程からの出力が、この方法の次の処理工程に直接流れる、標的分子を精製するための方法を指す。好ましい実施形態では、2つ以上の処理工程を、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行ってもよい。言い換えると、連続方法の場合、本明細書に記載するように、次の処理工程を開始する前に、ある処理工程を完結させる必要はないが、サンプルの一部は、処理工程を常に移動している。「連続方法」という用語は、ある処理操作の中の工程にも適用され、この場合、複数の工程を含む処理工程の性能中に、サンプルは、処理工程を行うのに必要な複数の工程を通って連続的に流れる。本明細書に記載するこのような方法操作の一例は、連続的な様式で行われる複数の工程を含み、フロースルー活性炭、フロースルーAEX媒体、フロースルーCEX媒体およびフロースルーウイルス濾過のうち、2つ以上を使用するフロースルー精製操作である。一実施形態では、フロースルー精製操作は、活性炭の後、AEX媒体、その後、CEX媒体、その後、ウイルス濾過の順で行われる。しかし、活性炭、AEX媒体およびCEX媒体を任意の順序で使用してもよいことも理解される。従って、ある実施形態では、AEXの後、活性炭、その後、CEX媒体であり、または、CEXの後、活性炭、その後、AEX媒体である。さらに他の実施形態では、活性炭の後、CEX媒体、その後、AEX媒体である。さらに他の実施形態では、AEX媒体の後、CEX媒体、その後、活性炭であり、または、CEX媒体の後、AEX媒体、その後、活性炭である。
【0084】
連続方法は、本明細書で記載するように、任意の1つの処理工程の流体の入力または出力が不連続であるか、または中断している方法も含む。このような方法は、「半連続」方法と呼ばれてもよい。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、ある処理工程(例えば、結合および溶出のクロマトグラフィー工程)での入力は、連続的に入れられてもよいが、出力は、中断した状態で集められてもよく、精製方法中の他の処理工程が連続である。従って、ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、中断した様式で操作される少なくとも1つのユニット操作を含み、この方法またはシステムの他のユニット操作は、連続した様式で操作されてもよい。
【0085】
「接続した方法」という用語は、2つ以上の処理工程(またはユニット操作)を含み、互いに直接的に流体連結するように互いに接続し、この結果、流体材料が、この方法の処理工程全体を連続的に流れ、この方法の通常の操作中に、2つ以上の処理工程と同時に接触する、標的分子を精製するための方法を指す。同時に、この方法中の少なくとも1つの処理工程を、例えば、閉じた位置の弁のような障壁によって、他の処理工程から一時的に単離してもよいことが理解される。例えば、この方法の開始または停止中、または個々のユニット操作の除去/置き換えの間に、この個々の処理工程の一時的な単離が必要な場合がある。「接続した方法」という用語は、例えば、ある方法操作が、操作の意図した結果を達成するために行われる幾つかの工程を必要とするとき(例えば、本明細書に記載する方法で使用されるフロースルー精製操作)、互いに流体連結するように接続した処理操作内の工程にも適用される。
【0086】
「流体連結」という用語は、本明細書で使用する場合、2つの処理工程間の流体材料の流れ、または、ある処理操作の処理工程間の流体材料の流れを指し、処理工程は、任意の適切な手段(例えば、接続ラインまたは調整槽)によって接続し、これによって、流体の流れを、ある処理工程から別の処理工程へと可能にする。ある実施形態では、2つのユニット操作の間の接続ラインは、接続ラインを通る流体の流れを制御するために、1つ以上のバルブで中断していてもよい。接続ラインは、管、ホース、パイプ、経路、または2つの処理工程の間の流体の流れを可能にする幾つかの他の手段の形態であってもよい。
【0087】
「浄化する」、「浄化」および「浄化工程」という用語は、本明細書で使用する場合、懸濁した粒子および/またはコロイドを除去するための処理工程を指し、これによって、NTU(比濁分析による濁度単位)で測定する場合、標的分子を含有する溶液の濁度が小さくなる。浄化は、遠心分離または濾過を含む種々の手段によって達成することができる。遠心分離は、バッチモードまたは連続モードで行うことができ、一方、濾過は、通常の流れ(例えば、デプス濾過)または接線流のモードで行うことができる。今日、産業で使用される方法では、遠心分離の後に、典型的には、遠心分離によって除去されなかった不溶性不純物を除去するためにデプス濾過が行われる。さらに、浄化効率を高めるための方法、例えば、沈殿を使用することができる。不純物の沈殿は、凝集、pH調整(酸の沈殿)、温度の変化、刺激応答性ポリマーまたは低分子に起因する相変化、またはこれらの方法の任意の組み合わせのような種々の手段によって行うことができる。本明細書に記載される幾つかの実施形態では、浄化は、遠心分離、濾過、デプス濾過および沈殿のうち、2つ以上の任意の組み合わせを含む。ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムは、遠心分離の必要がない。
【0088】
「沈殿する」、「沈殿すること」または「沈殿」という用語は、本明細書で使用する場合、可溶性の標的分子からより簡単に分離することができるように望ましくない不純物の特性が変えられる、浄化に使用される方法を指す。このことは、典型的には、望ましくない不純物を含む大きな凝集粒子および/または不溶性複合体を作成することによって達成される。これらの粒子は、例えば、濾過または遠心分離によって、可溶性標的分子を含む液相からより簡単に分離することができる特性(例えば、密度または大きさ)を有する。ある場合には、相変化が起こり、この結果、望ましくない不純物は、可溶性の標的分子からより簡単に分離することができる。相変化による沈殿は、沈殿性薬剤(例えば、ポリマーまたは低分子)の添加によって達成することができる。特定の実施形態では、沈殿剤は、刺激応答性ポリマーであり、スマートポリマーとも呼ばれる。本明細書に記載される幾つかの実施形態では、沈殿剤または沈殿性薬剤は、凝集剤である。凝集剤は、本明細書で使用する場合、典型的には、性能が使用する凝集剤の濃度に依存する、沈殿を起こす一様式である(「容量依存性」)。典型的な凝集剤は、反対の電荷の不純物と複合体を形成する高分子電解質、例えば、ポリカチオンである。
【0089】
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、浄化は、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルへの沈殿剤の添加を使用する。ある場合には、例えば、刺激応答性ポリマーの場合には、溶液状態(例えば、温度、pH、塩度)の変化を使用し、沈殿を開始させてもよい。1種類以上の不純物および沈殿性薬剤を含む沈殿した材料を続いて除去し、これによって液相の標的分子を回収し、次いで、この液体に対し、典型的には、標的分子をさらに精製するために、さらなる処理工程を行う。
【0090】
沈殿は、精製される標的分子を発現する細胞培養物を含むバイオリアクター内で直接行われてもよく、この場合、沈殿剤をバイオリアクターに直接加える。または、沈殿剤は、別個の容器内の典型的には標的分子を含む細胞培養物に加えられてもよい。
【0091】
ある実施形態では、スタティックミキサを用い、沈殿剤を加える。沈殿剤が刺激応答性ポリマーである場合、ポリマーと、このポリマーが応答性である刺激とを、スタティックミキサを用いて加えてもよい。
【0092】
沈殿した材料を除去するための当業者が既知の多くの様式、例えば、遠心分離、濾過または沈降、またはこれら任意の組み合わせが存在する。
【0093】
「沈降」という用語は、本明細書で使用する場合、沈殿した材料が、重力の影響下で容器の底部に移動する沈殿方法を指す。沈降の後、液相または上澄みのデカンテーションまたは濾過を行ってもよい。
【0094】
「刺激」または「刺激の」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる場合、刺激応答性ポリマーによる応答を生じる環境の物理的変化または化学的変化を指すことを意味する。従って、このようなポリマーは、刺激に応答性であり、この刺激によって、ポリマーの溶解度が変化する。本明細書で使用する1種類以上のポリマーが応答性である刺激の例は、限定されないが、例えば、温度変化、導電性の変化および/またはpHの変化が挙げられる。ある実施形態では、刺激は、サンプルに対する錯化剤または複合体を形成する塩の添加を含む。種々の実施形態では、刺激は、一般的に、サンプルにポリマーを添加した後に加えられる。しかし、刺激は、サンプルにポリマーを加えている間、または加える前に加えられてもよい。
【0095】
「刺激応答性ポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、刺激を加えた後、物理特性および/または化学特性の変化を示すポリマーまたはコポリマーを指す。典型的な刺激応答は、ポリマーの溶解度の変化である。例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ポリマーは、約35℃未満の温度で水溶性であるが、約35℃の温度の水中では不溶性になる。特定の実施形態では、刺激応答性ポリマーは、多価イオンの刺激(例えば、ホスフェート刺激)に応答性の改質されたポリアリルアミン(PAA)ポリマーである。このポリマーに関するさらなる詳細は、例えば、この全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許公開第20110313066号に見出すことができる。
【0096】
ある実施形態では、細胞培養物に対し、デプスフィルタによって1種類以上の不純物を除去する。
【0097】
「デプスフィルタ」または「デプス濾過」という用語は、本明細書で使用する場合、フィルタ表面だけではなく、フィルタ媒体全体の粒状物質を保持することができるフィルタを指す。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、1つ以上のデプスフィルタを浄化処理工程で使用する。
【0098】
ある実施形態では、浄化によって、後で精製方法の処理工程で使用するフィルタまたはデバイスの汚れを生じ得るようなサンプル中の可溶性および/または不溶性の不純物を除去し、これにより、全体的な精製方法がより経済的になる。
【0099】
本明細書に記載する種々の実施形態では、1つ以上のクロマトグラフィー工程が、タンパク質精製方法に含まれる。
【0100】
「クロマトグラフィー」という用語は、媒体上にある異なる吸収剤によって、目的の検体(例えば、標的分子)を混合物中に存在する他の分子から分離する任意の種類の技術を指す。通常は、標的分子を、混合物の個々の分子が、移動相の影響を受け、固定媒体を移動するような差の結果、または結合および溶出方法で、他の分子から分離する。
【0101】
「マトリックス」という用語は、本明細書で使用する場合、通常は、接続する官能基またはリガンドを有する任意の種類の粒状吸収剤、ビーズ、樹脂または他の固体相(例えば、膜、不織布、モノリスなど)を指す。接続するリガンドまたは官能基を有するマトリックスは、「媒体」とも呼ばれ、分離方法では、標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質、例えば、免疫グロブリン)を混合物中に存在する他の分子(例えば、1種類以上の不純物)から分離するための吸収剤として作用するか、または、粒径に基づいて分子を分離するためのふるいとして作用する(例えば、ウイルス濾過膜の場合)。
【0102】
マトリックスを形成する材料の例としては、多糖(例えば、アガロースおよびセルロース);および他の機械的に安定な物質、例えば、シリカ(例えば、孔径が制御されたガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子および上述の任意の誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーがマトリックスとして用いられる。
【0103】
特定の媒体は、リガンドを含んでいなくてもよい。リガンドを含まない本明細書に記載する方法で使用可能な媒体の例としては、限定されないが、活性炭、ヒドロキシアパタイト、シリカなどが挙げられる。
【0104】
「リガンド」という用語は、本明細書で使用する場合、マトリックスに接続し、媒体の結合特性を決定づける官能基を指す。「リガンド」の例としては、限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオ親和性相互作用基、金属親和性基、親和性基、バイオ親和性基および混合態様の基(上述の組み合わせ)が挙げられる。使用可能な他の例示的なリガンドとしては、限定されないが、強カチオン交換基、例えば、スルホプロピル、スルホン酸;強アニオン交換基、例えば、トリメチルアンモニウムクロリド:弱カチオン交換基、例えば、カルボン酸;弱アニオン交換基、例えば、N,NジエチルアミノまたはDBAE;疎水性相互作用基、例えば、フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシル;および親和性基、例えば、プロテインA、プロテインGおよびプロテインLが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムで使用されるリガンドは、プロテインAドメインのB、ZまたはCドメインの野生型マルチマー形態またはこのマルチマー改変体(例えば、B、ZまたはCドメインペンタマー)に基づくリガンドに関する米国特許公開第201002218442号および20130046056号(本明細書に参考として組み込まれる。)に記載されるように、1つ以上のプロテインAドメインまたはこの機能的改変体またはフラグメントを含む。ここに記載されるリガンドは、Fab結合の低下も示す。
【0105】
「アフィニティクロマトグラフィー」という用語は、標的分子(例えば、目的のFc領域を含有するタンパク質または抗体)が、標的分子に特異的なリガンドに特異的に結合するタンパク質分離技術に関する。このようなリガンドは、一般的に、適切なクロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合し、溶液がクロマトグラフィー媒体と接触すると、溶液中の標的分子に接近可能になる。特定の実施形態では、リガンドは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに固定されたプロテインAまたはこの機能的改変体である。標的分子は、一般的に、クロマトグラフィー工程中、リガンドに対して特異的な結合親和性を保持しており、一方、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質は、リガンドに感知できるほどに、または特異的に結合しない。固定化されたリガンドに対する標的分子の結合によって、混入しているタンパク質および不純物は、クロマトグラフィーマトリックスを通過することができ、一方、標的分子は、固相材料に固定されたリガンドに特異的に結合したままである。次いで、特異的に結合した標的分子は、適切な条件下(例えば、低いpH、高いpH、高い塩度、競争リガンドなど)、固定化されたリガンドから活性形態で除去され、溶出バッファーとともにクロマトグラフィーカラムを通り抜け、混入しているタンパク質および不純物を実質的に含まないものが、カラムをより早く通り抜けることができる。それぞれの特定の結合タンパク質、例えば、抗体を精製するために、適切な任意のリガンドを使用してもよいことが理解される。
【0106】
本発明の幾つかの実施形態では、プロテインAを、Fc領域を含有する標的タンパク質を精製するためのリガンドとして使用する。標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質)のリガンド(例えば、プロテインAに基づく)から溶出させるための条件は、当業者なら簡単に決定することができる。ある実施形態では、プロテインGまたはプロテインL、またはこれらの機能性改変体をリガンドとして使用してもよい。ある実施形態では、プロテインAのようなリガンドを使用する方法は、Fc領域を含有するタンパク質に結合させるために、5から9の範囲のpHを用い、その後、リガンド/標的分子接合体を洗浄または再平衡化し、次いで、その後、少なくとも1種類の塩を含む約4以下のpHを有するバッファーで溶出させる。
【0107】
「プロテインA」および「Prot A」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、天然源から回収したプロテインA、合成的に(例えば、ペプチド合成または組み換え技術によって)作られたプロテインA、およびCH
2/CH
3領域、例えば、Fc領域を有するタンパク質に結合する能力を保持した改変体を包含する。プロテインAは、Repligen、GEまたはFermatechから商業的に購入することができる。プロテインAは、一般的に、クロマトグラフィーマトリックスに固定される。本発明の方法およびシステムで使用されるプロテインAの機能的誘導体、フラグメントまたは改変体は、マウスIgG2aまたはヒトIgG1のFc領域に対する結合定数が少なくともK=10
8Mであり、好ましくは、K=10
9Mであることによって特徴づけられてもよい。このような結合定数の値と一致する相互作用は、本文では「高親和性結合」と呼ばれる。ある実施形態では、このようなプロテインAの機能的誘導体または改変体は、天然ドメインE、D、A、B、C、またはこの遺伝子操作された変異体から選択され、IgG結合機能を保持している野生型プロテインAの機能的IgG結合ドメインの少なくとも一部を含む。
【0108】
さらに、固体支持体に1個の接合点を可能にするように操作されたプロテインA誘導体または改変体を、請求する方法のアフィニティクロマトグラフィー工程で使用してもよい。
【0109】
1個の接合点は、一般的に、タンパク質部分が、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーのクロマトグラフィー支持材料に1個の共有結合によって結合することを意味する。このような1個の接合点は、露出したアミノ酸位置に、つまり、N末端またはC末端、またはプロテインの折り畳み部分の外側周辺に近いループに配置される適切な反応性残基の使用によっても起こり得る。適切な反応性基は、例えば、スルフヒドリルまたはアミノ官能基である。
【0110】
ある実施形態では、改変体のプロテインA誘導体は、適切なクロマトグラフィーマトリックスへの複数点での接続によって接続する。
【0111】
「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」という用語は、本明細書で使用する場合、アフィニティクロマトグラフィーに適したリガンドを保有するクロマトグラフィーマトリックスを指す。典型的には、リガンド(例えば、プロテインAまたはこの機能的改変体またはフラグメント)は、クロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合し、溶液とクロマトグラフィー媒体が接触すると、溶液中の標的分子に接近可能である。アフィニティクロマトグラフィー媒体の一例は、プロテインA媒体である。アフィニティクロマトグラフィー媒体は、典型的には、鍵/鍵穴機構(例えば、抗原/抗体または酵素/受容体の結合)に基づき高い特異性で標的分子に結合する。プロテインAリガンドを保有するアフィニティ媒体の例としては、プロテインA SEPHAROSE(商標)およびPROSEP(登録商標)−Aが挙げられる。本明細書に記載する方法およびシステムでは、全精製方法において、アフィニティクロマトグラフィー工程を、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程として使用してもよい。特定の実施形態では、プロテインAに由来するリガンドは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに接続する。他の実施形態では、このようなリガンドを、アガロースまたは孔径が制御されたガラスに接続する。
【0112】
「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、本明細書で使用する場合、混合物中の目的の溶質または検体(例えば、精製される標的分子)が、固相イオン交換材料に(例えば、共有結合によって)接続した帯電化合物と相互作用し、この結果、目的の溶質または検体が、混合物中の溶質の不純物または混入物質とほぼ同等に、帯電化合物と非特異的に相互作用するクロマトグラフィー方法を指す。混合物中に混入している溶質は、イオン交換材料のカラムから、目的の溶質とほぼ同程度の速度で溶出するか、または、目的の溶質に対し、樹脂に結合するか、または樹脂から除外される。
【0113】
「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的には、カチオン交換、アニオン交換および混合モードのイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、カチオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合し、その後、(例えば、カチオン交換する結合および溶出のクロマトグラフィーまたは「CEX」を用いて)溶出させることができ、または、標的分子をカラムから「フロースルー」しつつ、不純物を優先的に結合させることができる(カチオン交換フロースルークロマトグラフィーFT−CEX)。
【0114】
アニオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合し、その後、溶出させることができ、または、標的分子をカラムから「フロースルー」しつつ、不純物を優先的に結合させることができる(ネガティブクロマトグラフィーとも呼ばれる。)。ある実施形態では、本明細書に記載する実施例に示されるように、アニオン交換クロマトグラフィー工程は、フロースルーモードで行われる。
【0115】
「イオン交換媒体」という用語は、負に帯電した媒体(即ち、カチオン交換媒体)、または正に帯電した媒体(即ち、アニオン交換媒体)を指す。マトリックスに、例えば、共有結合によって、1つ以上の帯電したリガンドを接続することによって電荷を与えてもよい。または、またはこれに加え、電荷は、マトリックス固有の特性であってもよい(例えば、全体的に負の電荷を有するシリカの場合のように)。
【0116】
「アニオン交換媒体」という用語は、本明細書では、正に帯電した、例えば、マトリックスに接続した1つ以上の正に帯電したリガンド(例えば、四級アミノ基)を有する媒体を指すために用いられる。市販のアニオン交換媒体としては、DEAEセルロース、QAE SEPHADEX(商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標)(GE Healthcare)が挙げられる。本明細書に記載の方法およびシステムで使用可能な他の例示的な材料は、Fractogel(登録商標)EMD TMAE、Fractogel(登録商標)EMD TMAE highcap、Eshmuno(登録商標)QおよびFractogel(登録商標)EMD DEAE(EMD Millipore)である。
【0117】
「カチオン交換媒体」という用語は、負に帯電した、媒体の固相に接触した水溶液中のカチオンと交換するための遊離カチオンを含む媒体を指す。固相に接続し、カチオン交換媒体を形成する負に帯電したリガンドは、例えば、カルボキシレートまたはスルホネートであってもよい。市販のカチオン交換媒体としては、カルボキシメチルセルロース、アガロースに固定されたスルホプロピル(SP)(例えば、GE Healthcare製のSP−SEPHAROSE FAST FLOW(商標)またはSP−SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標))およびアガロースに固定されたスルホニル(例えば、GE Healthcare製のS−SEPHAROSE FAST FLOW(商標))が挙げられる。好ましくは、Fractogel(登録商標)EMD SO
3、Fractogel(登録商標)EMD SE Highcap、Eshmuno(登録商標)SおよびFractogel(登録商標)EMD COO(EMD Millipore)である。
【0118】
「混合モードのクロマトグラフィー」または「マルチモードのクロマトグラフィー」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも2種類の固有の種類の官能基を有し、それぞれが、目的の分子と相互作用可能なクロマトグラフィー固定相を使用する方法を指す。混合モードのクロマトグラフィーは、一般的に、標的タンパク質および/または不純物と1種類より多い相互作用態様を有するリガンドを使用する。リガンドは、典型的には、少なくとも2種類の異なる部位ではあるが、結合する物質と協働して相互作用する部位を含む。例えば、これらの部位の1つは、目的の物質と電荷−電荷型の相互作用を有していてもよく、一方、他の部位は、目的の物質と、電気受容体−供与体型の相互作用および/または疎水性および/または親水性の相互作用を有していてもよい。電気供与体−受容体型の相互作用としては、水素結合、π−π、カチオン−π、電荷移動、双極子−双極子および誘導される双極子相互作用が挙げられる。一般的に、相互作用の合計の違いに基づき、標的タンパク質と1種類以上の不純物は、さまざまな条件下で分離され得る。
【0119】
「混合モードのイオン交換媒体」または「混合モードの媒体」という用語は、カチオン性部分および/またはアニオン性部分と、疎水性部分とで共有結合によって改質された媒体を指す。市販の混合モードのイオン交換媒体は、シリカゲルの固相支持マトリックスに接続した弱カチオン交換基、低濃度のアニオン交換基および疎水性リガンドを含むBAKERBOND ABX(商標)(J.T.Baker、Phiilipsburg、N.J.)である。混合モードのカチオン交換材料は、典型的には、カチオン交換部分と疎水性部分とを有する。適切な混合モードのカチオン交換材料は、Capto(登録商標)MMC(GE Healthcare)およびEshmuno(登録商標)HCX(EMD millipore)が挙げられる。
【0120】
混合モードのアニオン交換材料は、典型的には、アニオン交換部分と、疎水性部分とを有する。適切な混合モードのアニオン交換材料は、Capto(登録商標)Adhere(GE Healthcare)である。
【0121】
「疎水性相互作用クロマトグラフィー」または「HIC」という用語は、本明細書で使用する場合、この疎水性(即ち、水溶液から疎水性表面に吸着する能力)に基づいて分子を分離するための方法を指す。HICは、通常は、典型的には低い疎水性を有するか、または逆相(RP)樹脂と比較して疎水性リガンドの密度が低い特定的に設計されたHIC樹脂によって、逆相クロマトグラフィーとは異なる。
【0122】
HICクロマトグラフィーは、典型的には、溶質分子の表面にある疎水性基の違いによる。これらの疎水性基は、不溶性マトリックス表面の疎水性基に結合する傾向がある。HICが、逆相液体クロマトグラフィーよりも極性が大きく、変性が少ない環境を使用するため、多くはイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィーと組み合わせて、タンパク質精製について人気が高まっている。
【0123】
「通過」という用語は、本明細書で使用する場合、標的分子が、最初に、カラムまたは分離ユニットから出力したときに、充填されたクロマトグラフィーカラムまたは分離ユニットに標的分子を含むサンプルを保有している間の時間点を指す。言い換えると、「通過」という用語は、標的分子の消失が始まった時間点である。
【0124】
「バッファー」は、酸−塩基接合成分の作用によってpHの変化に抵抗する溶液である。例えば、バッファーの望ましいpHに依存して使用可能な種々のバッファーは、Buffers、A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems、Gueffroy、D編集、Calbiochem Corporation(1975)に記載される。バッファーの非限定例としては、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸およびアンモニウムのバッファーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0125】
適切な媒体を含むデバイスまたはカラムまたは分離ユニットにサンプルを「保持する」とき、バッファーを使用し、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを、デバイスまたはカラムまたは分離ユニットに保持する。結合および溶出のモードでは、バッファーは、標的分子が媒体に結合し、理想的には、すべての不純物が結合せずにカラムを流れるような導電性および/またはpHを有する。一方、フロースルーモードでは、バッファーを使用し、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを、カラムまたはデバイスまたは分離ユニットに保持し、一方、バッファーは、標的分子が媒体に結合せずに流れ、理想的には、不純物のすべてまたはほとんどが媒体に結合するような導電性および/またはpHを有する。
【0126】
「添加剤」という用語は、本明細書で使用する場合、サンプルをクロマトグラフィーマトリックスに保持する前、または保持工程の間に標的タンパク質を含むサンプルに加えられる任意の薬剤を指し、薬剤の添加によって、1つ以上の洗浄工程をなくし、または、保持工程の後、標的タンパク質を溶出させる前に使用すべき不純物除去のために他の手段で設計された洗浄工程の数を減らす。1種類の薬剤を、保持前、または保持中に、サンプルに加えてもよく、または、薬剤の数が、1種類より多くてもよい。例示的な添加剤としては、限定されないが、塩、ポリマー、界面活性剤または洗剤、溶媒、カオトロピック剤および任意のこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、このような添加剤は、塩化ナトリウム塩である。
【0127】
特定の実施形態では、浄化工程からの出力と、添加剤とを接触させるためにスタティックミキサを使用し、スタティックミキサの使用により、時間が顕著に短くなり、このため、浄化工程からプロテインAクロマトグラフィー工程への単純化された接続が可能になる。
【0128】
「再平衡化」という用語は、標的分子を保持させる前に、媒体を再調整するためのバッファーの使用を指す。保持に使用されるのと同じバッファーを再平衡化に使用してもよい。
【0129】
クロマトグラフィー媒体を「洗浄」または「洗浄すること」という用語は、適切な液体、例えばバッファーを媒体中または媒体上に通すことを指す。典型的には、洗浄を使用し、標的分子を溶出させる前に、媒体から、弱く結合した混入物質を除去し、および/または、保持の後に、結合していない標的分子または弱く結合した標的分子を除去する。ある実施形態では、洗浄バッファーは、保持バッファーとは異なる。他の実施形態では、洗浄バッファーと保持バッファーは同じである。特定の実施形態では、サンプルの保持条件を変えることによって、精製方法で洗浄工程が省かれるか、または洗浄工程の数が減る。
【0130】
ある実施形態では、本明細書に記載する方法で用いられる洗浄工程は、導電性が20mS/cm以下のバッファーを使用し、従って、典型的には導電性が20mS/cmより大きい、典型的には不純物除去のために用いられるバッファーとは異なる。
【0131】
「導電性」という用語は、水溶液が2つの電極間に電流を流す能力を指す。溶液中、電流は、イオンの移動によって流れる。従って、水溶液中に存在するイオンの量を増やすと、溶液は、より高い導電性を有するだろう。導電性を測定するための単位は、ミリジーメンス/センチメートル(mS/cmまたはmS)であり、市販の導電性測定器(例えば、Orionにより販売)を用いて測定することができる。溶液の導電性は、この中のイオン濃度を変えることによって変わり得る。例えば、溶液中のバッファー剤の濃度および/または塩(例えば、NaClまたはKCl)の濃度は、望ましい導電性を達成するために、変えられてもよい。ある実施形態では、種々のバッファーの塩濃度は、望ましい導電性を達成するために変えられる。ある実施形態では、1種類以上の添加剤がサンプル保持に加えられる方法において、1つ以上の洗浄工程をその後に使用する場合、このような洗浄工程は、導電性が約20mS/cm以下のバッファーを使用する。
【0132】
「溶出物」または「溶出する」または「溶出」という用語は、特定の溶液条件を用いるか、または特定の溶液条件を変えることによる、クロマトグラフィー媒体からの分子(例えば、目的のポリペプチドまたは不純物)の除去を指し、これによって、バッファー(「溶出バッファー」と呼ばれる。)が、クロマトグラフィー樹脂のリガンド部位で目的の分子と競争する。非限定例は、イオン交換材料の周囲にあるバッファーのイオン強度を変え、バッファーが、イオン交換材料の帯電部位で分子と競走することによって、イオン交換樹脂から分子を溶出することである。
【0133】
ある実施形態では、溶出バッファーは、低いpHを有し(例えば、約2から約5、または約3から約4の範囲のpHを有し)、リガンド(例えば、プロテインA)と標的タンパク質との相互作用を破壊する。例示的な溶出バッファーとしては、リン酸、酢酸、クエン酸およびアンモニウムのバッファーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、高いpH(例えば、約9以上のpH)を有する溶出バッファーを使用してもよい。溶出バッファーは、溶出を促進するために、さらなる化合物、例えば、MgCl
2(2mM)も含んでいてもよい。
【0134】
ウイルス不活性化(VI)が望ましい場合には、標的分子を溶出させる前に、ウイルス不活性化バッファーを使用し、特定のウイルスを不活性化してもよい。このような場合には、典型的には、ウイルス不活性化バッファーは、洗剤/複数の洗剤を含んでいてもよく、または異なる特性(pH/導電性/塩およびこの量)を含んでいてもよいため、保持バッファーとは異なる。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程の前に、ウイルス不活性化が行われる。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程の間、または結合および溶出のクロマトグラフィー工程から溶出させた後に、ウイルス不活性化が行われる。ある実施形態では、ウイルス不活性化は、スタティックミキサを用いてライン内で行われる。他の実施形態では、ウイルス不活性化は、1つ以上の調整槽の使用を利用する。
【0135】
「バイオリアクター」という用語は、本明細書で使用する場合、生物学的に活性な環境を支える任意の製造または操作されたデバイスまたはシステムを指す。ある場合には、バイオリアクターは、細胞培養方法が行われる容器である。このような方法は、好気性または嫌気性のいずれかであってもよい。一般的に用いられるバイオリアクターは、典型的には、大きさが数リットルから数立方メートルの範囲の円筒形であり、多くは、ステンレス鋼から作られる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、バイオリアクターは、鋼鉄以外の材料から作られ、使い捨てまたはシングルユースである。バイオリアクターの総容積は、特定の方法に依存して、100mLから10,000リットルまたはこれより大きな範囲の任意の容積であってもよいと考えられる。本明細書に記載する方法およびシステムの幾つかの実施形態では、バイオリアクターを、ユニット操作、例えば、デプスフィルタに接続する。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、細胞培養および沈殿にバイオリアクターを使用し、この場合、沈殿剤を、バイオリアクターに直接加え、これによって、1種類以上の不純物を沈殿させてもよい。
【0136】
「活性炭」または「活性化された炭素」という用語は、本明細書で相互に置き換え可能に使用される場合、孔構造を高めるための方法を行った炭素系材料を指す。活性炭は、表面積が非常に大きい多孔性固体である。活性炭は、石炭、木材、ココナツの殻、木の実の殻および泥炭を含む種々の供給源から誘導されてもよい。活性炭は、強酸、塩基または酸化剤を用い、制御された雰囲気での加熱を含む物理的な活性化または化学的な活性化を用い、これらの材料から製造することができる。活性化方法は、高い表面積を有する多孔性構造を生成し、不純物除去のための高い能力を活性炭に与える。活性化方法は、表面の酸性を制御するように変えることができる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、活性炭をフロースルー精製工程で使用し、典型的には、その後に、結合および溶出のクロマトグラフィー工程またはウイルス不活性化工程が続き、ウイルス不活性化工程は、その後に、結合および溶出のクロマトグラフィー工程が続く。ある実施形態では、活性炭を、例えば、カラムまたは幾つかの他の適切なデバイスの中のセルロース媒体に組み込む。
【0137】
「スタティックミキサ」という用語は、2種類の流体材料、典型的には、液体を混合するためのデバイスを指す。このデバイスは、一般的に、円筒形(管)の筐体に含まれる混合要素からなる。システムの全体的な設計は、スタティックミキサに2つの流体の流れを運ぶための方法を組み込んでいる。流れがミキサ全体を移動するにつれて、移動しない要素は、連続的に材料をブレンドする。完全な混合は、流体の特性、管の内径、ミキサの要素の数およびこれらの設計などを含む多くの変数によって変わる。本明細書に記載する幾つかの実施形態では、精製方法または生成システム全体で1つ以上のスタティックミキサを使用する。特定の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力と、ウイルス不活性化剤(例えば、酸または任意の他の適切なウイルス不活性化剤)とを接触させるためにスタティックミキサを使用し、スタティックミキサの使用により、時間が顕著に短くなるが、効果的なウイルス不活性化を達成するのに必要である。
【0138】
本発明の方法
上述のように、本発明は、標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプル(例えば、細胞培養供給物)から標的分子を精製するための新規で改良された方法を提供する。本明細書に記載する方法は、当分野で使用する既存の方法と比較して、方法の実施に必要な全体的な時間フレームを短くし(数日間に対し、12から24時間)、ほとんどの従来法と比較して、工程が少なく、ユニット操作が少ないという観点で方法全体の物理的なフットプリントが減り、従来の方法よりも実行が容易であるという点で、非常に改良されたものである。さらに、ある実施形態では、本発明の方法は、使い捨てであってもよいデバイスを使用する。
【0139】
本発明の方法は、望ましい結果を達成することを意図した幾つかの処理工程またはユニット操作を含み、処理工程(またはユニット操作)は、互いに流体連結し、さらに、2つ以上の処理工程を、それぞれの処理工程の経過時間の少なくとも一部で同時に行うことができるように接続する。言い換えると、ユーザは、この方法の次の処理工程を実行する前に、処理工程が終了するのを待つ必要がないが、ユーザは、標的分子を含む液体サンプルが、処理工程を連続的または半連続的に流れ、精製した標的分子が得られるように、方法を進めることができる。従って、標的分子を含むサンプルを、典型的には、所与の時間に、この方法の1つより多い処理工程またはユニット操作と接触させる。
【0140】
それぞれの処理工程(またはユニット操作)は、処理工程を達成するために、1つ以上のデバイスまたは方法の使用を含んでいてもよい。
【0141】
本明細書に記載する方法は、出力について、次の処理工程を行う前に、処理工程からの出力を保持し、希釈し、操作し、あるときには保存するために貯留槽を使用する必要がないという点で、産業で使用される従来の方法とは異なる。対照的に、本明細書で記載する方法は、サンプルをライン内で(例えば、スタティックミキサを用いて)操作することができ、または、(例えば、方法操作が、1つより多い方法またはデバイスを使用する場合)処理工程の間で、または時には、方法操作の中で、調整槽(通常は処理工程からの出力の合計容積の10%または20%または25%以下である調整槽)の使用を利用し、これによって、方法を行うための合計時間が顕著に短くなり、この方法を行うための全体的なシステムの物理的なフットプリントが顕著に小さくなる。好ましい実施形態では、本明細書に記載する方法は、貯留槽を使用しないだけではなく、前の工程からの出力の容積の25%未満、好ましくは10%未満の調整槽のみを必要とする。
【0142】
本明細書に記載する方法は、浄化、結合および溶出のクロマトグラフィーおよびフロースルー精製の少なくとも3つの処理工程を含む。典型的には、浄化が第1の工程であり、その後、結合および溶出のクロマトグラフィー、その後、フロースルー精製操作である。この方法は、限定されないが、ウイルス不活性化および配合を含むさらなる処理工程を含んでいてもよい。本明細書に記載する方法の重要な態様は、工程の数にかかわらず、この方法が、たった1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程を含むことである。
【0143】
種々の処理工程は、本明細書に記載されるように、連続的な様式または半連続的な様式で行われる。以下は、本明細書に記載されるように、連続的または半連続的な方法で使用可能な処理工程の例である。以下に示す処理工程の任意の組み合わせを使用してもよいことが理解される。言い換えると、以下の表Iの工程1の任意の処理工程を、工程2の任意の処理工程および/または工程3の任意の処理工程などと合わせてもよい。本明細書で他の箇所に記載するさらなる処理工程を、以下の表Iに記載の1つ以上の処理工程と合わせ、または、これらの処理工程の代わりに使用してもよいことも理解される。
【0145】
種々の処理工程(またはユニット操作)を以下に詳細に記載する。
【0146】
精製方法のための出発物質は、通常は、精製される標的分子を含むサンプルである。典型的には、標的分子を産生する細胞培養物を使用する。しかし、細胞培養物以外のサンプルを使用してもよい。例示的なサンプルとしては、限定されないが、トランスジェニック哺乳動物細胞培養物、非トランスジェニック哺乳動物細胞培養物、細菌細胞培養物、組織培養物、微生物発酵バッチ、植物抽出物、バイオ燃料、海水培養物、淡水培養物、廃棄水培養物、処理された下水、未処理の下水、牛乳、血液およびこれらの組み合わせが挙げられる。一般的に、サンプルは、標的分子に加え、種々の不純物を含有する。このような不純物としては、媒体成分、細胞、細胞片、核酸、宿主細胞タンパク質、ウイルス、内毒素などが挙げられる。
【0147】
浄化
本明細書に記載する方法およびシステムの第1の処理工程(またはユニット操作)の1つは、典型的には、浄化である。浄化は、標的分子から1種類以上の可溶性および/または不溶性の不純物を分離することを意図している。ある実施形態では、細胞および細胞片のような不溶性不純物は、サンプルから除去され、溶液中に標的分子を含む浄化された流体および他の可溶性不純物が得られる。浄化は、典型的には、望ましい標的分子の捕捉を含む工程の前に行われる。浄化の別の鍵となる態様は、後に精製方法の滅菌フィルタの汚染が生じ得るサンプル中の可溶性および/または不溶性不純物の除去であり、これによって、全体的な精製方法をより経済的にする。
【0148】
今日、産業で使用されるように、浄化は、一般的に、細胞および/または細胞片の除去を含み、典型的には、第1の工程として遠心分離を含み、その後にデプス濾過を含む。例えば、Shukla et al.,J.Chromatography B,848(2007):28−39;Liu et al.,MAbs.2(5):480−499(2010)を参照。
【0149】
本明細書に記載される幾つかの好ましい実施形態では、浄化は、遠心分離の使用を必要としない。
【0150】
例えば、ある実施形態では、バイオリアクター中の細胞培養物サンプルの出発時の容積は、2000リットル未満、または1000リットル未満、または500リットル未満であり、遠心分離の必要性がなく、細胞培養物サンプルについて、デプス濾過を単独で行ってもよく、または、沈降およびデプス濾過を行ってもよい。
【0151】
ある好ましい実施形態では、デプス濾過前に沈殿を使用すると、スループットが増加し、従って、遠心分離の必要がなく、処理され得るサンプルの容積の量も増加する。言い換えると、ある場合には、100リットルのサンプルを、デプス濾過のみで処理してもよく、沈殿と組み合わせて処理してもよく、ユーザは、ほぼ倍の量(即ち、2000リットル)を処理することができ得る。
【0152】
典型的には、1種類以上の不溶性不純物を除去するために、デプスフィルタが用いられる。デプスフィルタは、媒体表面にのみではなく、媒体全体に粒子を保持するための多孔性濾過媒体を使用するフィルタである。
【0153】
ある好ましい実施形態では、浄化のためにデプスフィルタを使用し、粒度分布が約0.5μmから約200μm、流速が約10リットル/m
2/hrから約100リットル/m
2/hrの細胞片および粒状物質を濾過することができる。
【0154】
多孔性デプスフィルタが異方性である場合(即ち、孔径が徐々に小さくなる。)、粒状不純物の一次除去で特に良好な結果を達成することができることがわかっている。ある好ましい実施形態では、孔は、名目上の孔径が約25μmより大きい。ある好ましい実施形態では、デプスフィルタは、不織繊維の少なくとも2つの段階的な層を含み、段階的な層は、合計厚みが約0.3cmから約3cmである。
【0155】
ある実施形態では、デプスフィルタは、膜圧(TMP)が20psiに到達するまで、粒度分布が約0.5μmから200μm、流速が約10リットル/m
2/hrから約100リットル/m
2/hrの粒子を含む高固体供給物を濾過することができるデバイスの構成である。
【0156】
ある実施形態では、デプスフィルタは、不織繊維、セルロースおよび珪藻土の段階的な層のコンポジットを含む。不織繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンまたはこれらの混合物を含む。
【0157】
例示的なデプスフィルタおよびこれを使用する方法は、米国特許公開第2013001.2689号に記載されてもよく、本明細書に参考として組み込まれ、粒度分布が約0.5μmから200μmの粒子を含む濾過サンプルに特に有用である。従って、ある実施形態では、浄化工程で用いられるデプスフィルタとしては、解放された段階的な層が挙げられ、供給流中の大きな粒子が、フィルタの深さ方向に浸透していくことができ、表面に集めるのではなく、フィルタの孔の中に捕捉される。段階的なデプスフィルタの解法された上部層は、大きな粒子を捕捉することができるが、底部層は、より小さな残留した凝集粒子を捕捉することができる。段階的なデプスフィルタの種々の利点は、大きな固体のスループット保持率が高いこと、ケーキの生成といった問題がないことが挙げられる。
【0158】
上述のように、ある実施形態では、浄化は、デプス濾過の使用、その後、沈殿の使用を含む。沈殿は、酸の沈殿、刺激応答性ポリマーの使用、凝集または沈降および沈殿を達成するための任意の他の適切な手段/薬剤を使用してもよい。従って、ある実施形態では、沈殿剤、例えば、刺激応答性ポリマーを、サンプルに加え、デプス濾過前に、1種類以上の可溶性および/または不溶性不純物を沈殿させる。
【0159】
他の沈殿手段としては、限定されないが、短鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸)の使用、凝集剤の使用、溶液状態の変化(例えば、温度、pH、塩度)および酸の沈殿が挙げられる。例えば、中程度に酸性の条件で、短鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸)の添加は、典型的には、IgGが沈殿していない状態で、非IgGタンパク質が沈殿することが報告される。
【0160】
凝集は、本明細書で使用される場合、沈殿が、典型的には使用する凝集剤の濃度に依存する(即ち、「容量依存性」である。)沈殿を行う1つの様式である。典型的な凝集剤は、反対の電荷の不純物と複合体を生成する高分子電解質、例えば、ポリカチオンである。
【0161】
凝集剤は、一般的に、細胞/タンパク質の電荷と、ポリマー(例えば、高分子電解質)の電荷との間の相互作用に起因して、細胞、細胞片およびタンパク質を沈殿させることによって、不溶性の複合体を生成する。
【0162】
凝集に高分子電解質ポリマーを使用し、タンパク質を精製することは、当分野で十分に確立されている(例えば、本明細書に参考として組み込まれる国際PCT公開第WO2008/091740号を参照)。凝集剤による沈殿は、広範囲のポリマーを用いて達成することができ、唯一の必要な一般的な特徴は、ポリマーが、目的の種(例えば、標的分子または不純物)とある程度の相互作用度を有していなければならないことである。例示的な凝集剤としては、キトサンおよび多糖のようなポリマーが挙げられる。
【0163】
凝集は、pHの変化を生じる化学処理によって、または界面活性剤の添加によっても達成されてもよい。
【0164】
沈殿した材料を除去するための当業者が既知の多くの様式、例えば、遠心分離、デプス濾過、濾過または沈降、またはこれらの任意の組み合わせが存在する。沈降の後、液相または上澄みのデカンテーションまたは濾過を行ってもよい。
【0165】
ある好ましい実施形態では、1種類以上の不純物を沈殿させるために、刺激応答性ポリマーを使用する。このような刺激応答性ポリマーの例は、例えば、米国特許公開第20090036651号、同第20100267933号および同第20110313006号に見出すことができ、それぞれ、この全体が本明細書に参考として組み込まれる。刺激応答性ポリマーは、一般的に、特定の処理条件のセット(例えば、pH、温度および/または塩の濃度)で水系溶媒に可溶性であり、1つ以上のこのような条件が変化すると不溶性になり、その後、析出する。例示的な刺激応答性ポリマーとしては、限定されないが、ポリアリルアミン、ベンジル基で修飾されたポリアリルアミン、またはポリビニルアミンおよびベンジル基で修飾されたポリビニルアミンが挙げられ、刺激は、ホスフェートまたはシトレートである。
【0166】
ある実施形態では、スタティックミキサを用い、刺激応答性ポリマーを連続して加える。他の実施形態では、ポリマーと、このポリマーが応答性である刺激とを、スタティックミキサを用いて加える。
【0167】
ある実施形態では、1種類以上の不純物、特に不溶性不純物を沈殿させるために低分子を使用する。
【0168】
ある実施形態では、本明細書に記載する方法に使用される低分子は、例えば、本明細書に参考として組み込まれるPCT国際公開第2013028334号に記載されるように、非極性でカチオン性である。浄化に使用可能な例示的な低分子としては、限定されないが、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(非限定例としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルアリールトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアミンクロリドまたはブロミド、ドデシルアミンまたはクロリドおよびセチルジメチルエチルアンモニウムブロミドまたはクロリドが挙げられる。)、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(非限定例としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドおよびベンゼトニウムクロリドが挙げられる。)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(非限定例としては、ドミフェンブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物(ブロミドおよびクロリド塩)およびオクチルドデシルジメチルアンモニウムクロリドまたはブロミドが挙げられる。)、ヘテロ芳香族アンモニウム塩(非限定例としては、セチルピリジウムハロゲン化物(クロリドまたはブロミド塩)およびヘキサデシルピリジニウムブロミドまたはクロリド、cis異性体の1−[3−クロロアリル]−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、アルキル−イソキノリニウムブロミドおよびアルキルジメチルナフチルメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。)、多置換された四級アンモニウム塩(非限定例としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネートおよびアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムシクロヘキシルスルファメートが挙げられる。)およびビス−四級アンモニウム塩(非限定例としては、1,10−ビス(2−メチル−4−アミノキノリニウムクロリド)デカン、1,6−ビス{1−メチル−3−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−プロピルジメチルアンモニウムクロリドヘキサンまたはトリクロビスオニウムクロリドおよびBuckman BrochuresによるCDQと呼ばれるビス−クアットが挙げられる。)が挙げられる。
【0169】
特定の好ましい実施形態では、低分子は、ベンゼトニウムクロリド(BZC)である。
【0170】
ある実施形態では、浄化は、バイオリアクター内で直接行われる。言い換えると、沈殿剤、例えば、刺激応答性ポリマーを、標的分子を発現する細胞培養物を含むバイオリアクターに直接加え、これによって、細胞および細胞片を沈殿させてもよく、標的分子は、沈殿の結果として得られる液相内に保持される。ある好ましい実施形態では、液相を、さらにデプス濾過する。液相に対し、遠心分離、濾過、沈降またはこれらの組み合わせを行ってもよい。
【0171】
他の実施形態では、刺激応答性ポリマーを、細胞培養物を含む容器に加え、バイオリアクターから分離する。従って、本明細書で使用する場合、「容器」という用語は、細胞を培養するために使用するバイオリアクターとは別個の容器を指す。
【0172】
ある実施形態では、遠心分離の前に、刺激応答性ポリマーをサンプルに加え、遠心分離の後にデプス濾過を行う。このような方法では、遠心分離の後に必要となり得るデプス濾過の大きさ/容積は、刺激応答性ポリマーが存在しないときに必要な量よりも少ない。
【0173】
ある実施形態では、宿主細胞タンパク質(HCP)を除去するためのフルオロカーボン組成物(CFC)改質された膜を記載するPCT国際出願第PCT/US2013/32768号(2013年3月18日に出願した国内番号MCA−1303PCT)に記載されるように、浄化された細胞培養供給物を、さらに、帯電したCFCにさらし、さらに、HCPを除去する。精製方法の他の処理工程の後に、例えば、フロースルー精製処理工程の一部であるプロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程の後、またはフロースルー精製処理工程の後、またはアニオン交換クロマトグラフィー工程の後に、CFC改質された膜を使用することもできる。
【0174】
浄化されたサンプルに対し、典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィー工程を行う。
【0175】
結合および溶出のクロマトグラフィー
本明細書に記載する種々の実施形態では、方法およびシステムは、捕捉のためにたった1つの結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程を含み、典型的には、浄化の後に行う。結合および溶出のクロマトグラフィーは、標的分子に結合することを意図しており、一方、1種類以上の不純物は、流れる(「捕捉工程」とも呼ばれる。)。結合した標的分子は、その後、溶出し、溶出物または結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力に、さらに精製工程を行ってもよい。
【0176】
結合および溶出のクロマトグラフィーは、1つの分離ユニットまたは2または3以上の分離ユニットを使用してもよい。
【0177】
本明細書に記載する種々の実施形態では、使用される結合および溶出のクロマトグラフィーは、アフィニティの結合および溶出のクロマトグラフィー、またはカチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィーまたは混合モードの結合および溶出のクロマトグラフィーである。典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィーは、標的分子に結合することを意図した媒体の使用を利用する。
【0178】
ある好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、アフィニティクロマトグラフィーである。アフィニティクロマトグラフィーに使用可能な適切なクロマトグラフィー媒体としては、限定されないが、プロテインA、プロテインGまたはプロテインIを含む媒体が挙げられる。官能基(例えば、ProSep(登録商標)High Capacity(EMD Millipore)、ProSep(登録商標)Ultra Plus(EMD Millipore)、Poros(登録商標)MabCapture(商標)A(Life Technologies)、AbSolute(登録商標)(NovaSep)、Protein A Ceramic Hyper D(登録商標)(Pall Corporation)、Toyopearl AF−rProtein A−650F(Tosoh)、MabSelect(登録商標)Sure(GE Healthcare))。適切な媒体は、通常は、クロマトグラフィーカラムまたはデバイスに充填される。
【0179】
特定の実施形態では、アフィニティクロマトグラフィー媒体は、親水性硬質ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに接続したプロテインAに由来するリガンドを含む。
【0180】
本発明の幾つかの実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィー方法は、連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMCとも呼ばれる。)を使用する。
【0181】
連続的なクロマトグラフィーでは、方法の要求に依存して、直列および/または並列でカラムを操作することができるような配置で、幾つかの同一のカラムを典型的には接続する。従って、すべてのカラムを同時に動かしてもよく、または、この操作で断続的に重ね合わせてもよい。それぞれのカラムは、典型的には、方法を実施する間に、数回保持し、溶出し、再精製する。従来のクロマトグラフィーと比較して、1つのクロマトグラフィーサイクルは、保持、洗浄、溶出および再生といった幾つかの連続した工程に基づく。複数の同一のカラムに基づく連続的なクロマトグラフィーの場合には、すべてのこれらの工程を異なるカラムで行ってもよい。従って、連続的なクロマトグラフィー操作によって、クロマトグラフィー樹脂をよりよく利用し、バッファーの要求を減らし得、方法に経済的な利点を与える。
【0182】
連続的な結合および溶出のクロマトグラフィーは、模倣された移動床(SMB)のクロマトグラフィーも含む。
【0183】
ある好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、2つの分離ユニットを使用するCMCを使用する。ある他の好ましい実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーは、2つまたは3つ以上の多いユニットを使用するCMCを使用する。CMCの場合には、サンプルの保持は、通常は連続的であるが、溶出は、断続的または非連続である(即ち、CMCは、半連続的な性質を有する。)。
【0184】
ある好ましい実施形態では、CMCは、3つの分離ユニットを使用し、それぞれが同じクロマトグラフィー媒体を含み、分離ユニットは、液体が、ある分離ユニットから次の分離ユニットへと、また、最後の分離ユニットから最初の分離ユニットへと流れることができるように接続しており、サンプルは、分離ユニットに対する標的分子の結合を可能にするpHおよび導電性で、第1の分離ユニットに保持され、保持時間の経過時間の少なくとも一部が、連続した分離ユニットの保持と重なりあっており、2つの分離ユニットは、流体連結しており、この結果、第1の分離ユニットに結合しない任意の標的分子を保持し、次の分離ユニットに結合することができる。
【0185】
異なる分離ユニットは、所与の時間に方法の異なる段階であってもよく、即ち、ある分離ユニットが保持される間に、次の分離ユニットで、洗浄、溶出、再平衡化などを行ってもよい。さらに、第1の分離ユニットで洗浄、溶出、再平衡化工程を行っている間に、連続した分離ユニットで、保持工程などを行い、この結果、サンプルは、分離ユニット全体に連続して流れ、800cm/hを超える速度を有し、分離ユニットのクロマトグラフィー媒体は、直径が40から200μmであり、孔の直径が50nmから200nmの粒子を含む。
【0186】
ある実施形態では、それぞれの分離ユニットは、アフィニティクロマトグラフィー媒体、例えば、プロテインAに由来する媒体を含む。他の実施形態では、それぞれの分離ユニットは、イオン交換媒体(例えば、カチオン交換クロマトグラフィー媒体)または混合モードのクロマトグラフィー媒体を含む。
【0187】
例示的な連続的なクロマトグラフィー方法は、結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程で使用されてもよく、本明細書で記載するように、例えば、欧州特許出願第EP11008021.5号およびEP12002828.7号に見出すことができ、両方とも本明細書に参考として組み込まれる。
【0188】
ある実施形態では、分離ユニットを、円形の様式で接続する(模倣された移動床とも呼ばれる。)。例えば、特定の場合に、少なくとも3つの分離ユニットを、円形に接続し、例えば、本明細書に参考として組み込まれる欧州特許第2040811号に記載されるように、サンプルの保持を、ある分離ユニットから次の分離ユニットへと次々と移動する。
【0189】
従来の方法で用いられる容積の90%までによって半連続モードまたは連続モードで結合および溶出のクロマトグラフィーを行うと、少ない容積のアフィニティ媒体を用いて実行可能であることがわかった。さらに、バッチ方法と比較して3分の1および5分の1の小さな直径を有する分離ユニットを使用することができる。分離ユニットは、標的分子の特定のバッチの処理の中で、例えば、治療候補物質である標的分子のバッチ製造中、複数回再利用することができる。
【0190】
ある実施形態では、サンプルが保持される分離ユニットは、保持時間の経過時間全体にわたって、別の分離ユニットと流体連結する。
【0191】
他の実施形態では、保持される分離ユニットは、保持時間の経過時間のわずか一部で、別の分離ユニットと流体連結状態である。ある実施形態では、2つの分離ユニットは、保持時間の経過時間の後半でのみ流体連結状態である。
【0192】
バッチクロマトグラフィーモードで、典型的には、過剰な標的分子が分離ユニットに飽和する前に、分離ユニット(例えば、クロマトグラフィーカラム)の保持を止める。対照的に、CMCの結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程の場合には、本明細書に記載する方法およびシステムで使用する場合、2つの分離ユニットの間が流体接続しているので、ある分離ユニットに結合しない標的分子は、次の分離ユニットに移動するため、分離ユニットの保持は、止める必要はなく、ある分離ユニットの出口は、第2の分離ユニットなどの入口と接続している。保持工程のときに、当業者は、簡単に決定することができることが理解され、保持された分離ユニットに結合しない標的分子の量は、顕著に多く、この結果、保持される分離ユニットの出口は、別の分離ユニットの入口に接続する必要がある。この実施形態は、分離ユニットが、40から200μmの粒径を有し、50から200nmの孔径を有する媒体を含む場合に特に有効であることがわかっている。このような媒体を用い、保持供給を800cm/hを超える速度で連続して行うことができる。さらなる詳細は、2012年4月23日に出願されたEP12002828.7に見出すことができる。ある実施形態では、洗浄される分離ユニットまたは複数の分離ユニットの出口は、この洗浄によって除去される標的分子が失われず、前の分離ユニットに保持されているように、前の分離ユニットと流体連結している。
【0193】
標的分子を含む溶出プール中に最終的に入る不純物(例えば、HCP)のレベルが、結合および溶出のクロマトグラフィー中にサンプル保持に特定の添加剤を使用すると顕著に下げることができることがわかっている。実際に、サンプルの保持の前、またはサンプルを保持している間に、サンプルに特定の添加剤を添加すると、典型的には、不純物のクリアランスを高めるように設計された特定の洗浄工程を使用する必要がなくなり得る。言い換えると、典型的に使用される洗浄工程の数は、サンプルの保持の前、またはサンプルを保持している間、特定の添加剤を含むことによって減る。
【0194】
連続的なクロマトグラフィーの観点で、保持工程が終了し、次のゾーンに移動するプロテインAカラムは、カラムが新しい保持溶液(例えば、本明細書に記載されるもの)を受け入れる準備ができるように、予想される時間フレーム内ですべての必要な工程を終了させる必要があり、欧州特許出願第EP11008021.5およびEP12002828.7に見出すことができ、これらは両方とも、本明細書に参考として組み込まれる。すべての必要な工程を終了させるのに必要な時間は、カラムが再び保持の準備ができるようにしなければならない工程またはゾーンの数によって変わる。工程(例えば、中間洗浄)を減らすか、またはなくすことによって、より高い力価(標的タンパク質濃度)で、連続的なクロマトグラフィーの適用が可能であり、保持相は、短くなると予想され、連続的なクロマトグラフィー中、すべての力価条件で必要な時期が単純になる。
【0195】
1つ以上の中間洗浄工程を減らすか、またはなくすために使用可能な例示的な添加剤としては、限定されないが、塩、ポリマー、界面活性剤または洗剤、溶媒、カオトロピック剤および任意のこれらの組み合わせが挙げられる。「塩」は、酸および塩基の相互作用によって作られる化合物である。塩の例としては、塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩および/またはクエン酸塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムのうち、任意のものおよびすべてのものが挙げられる。特定の実施形態では、塩は、NaClである(例えば、最終濃度が0.5M NaClになるように加える。)。「疎水性塩」という用語は、疎水性成分との特定の種類の塩、例えば、アルキルアミン、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリドおよびテトラブチルアンモニウムクロリドを指す。本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、2つ以上のモノマーの共有結合によって作られる分子であり、モノマーは、アミノ酸残基ではない。ポリマーの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールおよびエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマーは、PEGである。
【0196】
「洗剤」という用語は、イオン系および非イオン系の両方の界面活性剤を指し、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−またはステアリル−スルホベタインである(より多くの洗剤について、US6870034B2を参照)。特定の実施形態では、洗剤は、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20(Tween 20)である。
【0197】
「溶媒」という用語は、1つ以上の他の物質を溶解または分散させることができ、溶液を与える液体物質を指す。ある実施形態では、溶媒は、有機非極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールおよび2,2−チオジグリコールである。「カオトロピック塩」という用語は、分子間の水構造を破壊することが知られている塩を指す。このような塩の例は、尿素およびグアニジニウムHClである。
【0198】
ある実施形態では、1つ以上のスタティックミキサを用い、1種類以上の添加剤を、浄化された細胞培養物と連続的に混合する。従って、ある実施形態では、タンパク質精製方法において、浄化された細胞培養物サンプルを、プロテインAクロマトグラフィー工程に連続的に流し、1種類以上の添加剤を、本明細書で記載するように、プロテインAクロマトグラフィーマトリックスに保持する前に、浄化された細胞培養物と連続的に混合する。
【0199】
ウイルス不活性化
本明細書に記載する方法およびシステムの幾つかの実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーの後に、ウイルス不活性化(VI)を行う。ウイルス不活性化は、必ずしも行われなくてもよいが、任意であると考えられると理解される。
【0200】
好ましくは、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力または溶出物に対し、ウイルス不活性化を行う。ウイルス不活性化によって、ウイルスが不活性化し、または、感染できなくなり、特に、標的分子が治療用途を意図している場合に、重要である。
【0201】
多くのウイルスは、化学改変によって不活性化することができる脂質またはタンパク質のコーティングを含む。単純にウイルスを不活性化するのではなく、あるウイルス不活性化方法は、ウイルスを完全に変性することができる。ウイルスを不活性化するための方法は、当業者には周知である。より広く用いられるウイルス不活性化方法の幾つかは、例えば、溶媒/洗剤の不活性化(例えば、Triton X100を用いる。);低温殺菌(加熱);酸性pHでの不活性化;および紫外線(UV)の不活性化のうち、1つ以上の使用を含む。これらの方法の2つ以上を合わせることができ、例えば、高温で酸性pHによる不活性化を行う。
【0202】
完全で効果的なウイルス不活性化を確保するために、ウイルス不活性化は、ウイルス不活性化剤とサンプルとを適切に混合するために、一定速度で攪拌しつつ、長期間にわたって行われることが多い。例えば、今日、産業で使用される多くの大規模な方法において、捕捉工程からの出力または溶出物を貯留槽に集め、長時間にわたってウイルス不活性化を行う(例えば、1時間より長く2時間まで、多くは、その後に一晩保存)。
【0203】
本明細書に記載する種々の実施形態では、ウイルス不活性化に必要な時間は、ウイルス不活性化をライン内で行うことによって、またはこの工程のために、貯留槽の変わりに調整槽を使用することによって、顕著に短くなる。
【0204】
本明細書に記載する方法で使用可能なウイルス不活性化技術の例は、例えば、PCT特許出願第PCT/US2013/45677(内部参照番号P12/098PCT)に見出すことができる。
【0205】
ある好ましい実施形態では、ウイルス不活性化は、酸性pHの使用を利用し、結合および溶出のクロマトグラフィー工程からの出力を、ウイルス不活性化のために酸性pHにライン内でさらす。ウイルス不活性化のために用いられるpHは、典型的には、5.0未満、または好ましくは、3.0から4.0である。ある実施形態では、pHは、約3.6以下である。ライン内での方法を用いたウイルス不活性化のために用いられる経過時間は、10分以下、5分以下、3分以下、2分以下から、約1分以下までの範囲であってもよい。調整槽の場合、不活性化に必要な時間は、典型的には、1時間未満、または好ましくは、30分未満である。
【0206】
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、適切なウイルス不活性化剤は、結合および溶出のクロマトグラフィーと、この方法の次のユニット操作(例えば、フロースルー精製)との間の管または接続ラインにライン内で導入され、好ましくは、管または接続ラインは、出力がこの次のユニット操作に向かう前に、結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程からの出力と、ウイルス不活性化剤とを適切に混合するスタティックミキサを含む。典型的には、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力が、特定の流速でスタティックミキサを通って流れ、ウイルス不活性化剤との最小の接触時間を確保する。接触時間は、特定の長さおよび/または直径のスタティックミキサを用いることによって調節することができる。
【0207】
ある実施形態では、一定の経過時間、酸にさらした後、塩基または適切なバッファーを、管または接続ラインにさらに導入し、これによって、サンプルのpHを次の工程に適したpHにし、このpHは、標的分子に有害ではない。従って、ある好ましい実施形態では、低いpHおよび塩基性バッファーにさらすことは、スタティックミキサを介して混合しつつ、ライン内で達成される。
【0208】
ある実施形態では、ライン内のスタティックミキサに代えて、または、ライン内のスタティックミキサに加え、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力を、ウイルス不活性化剤で処理するために調整槽を用い、調整槽の容積は、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力の合計容積の25%を超えず、または15%を超えず、または10%を超えない。調整槽の容積が、典型的な貯留槽の容積よりも顕著に小さいため、サンプルとウイルス不活性化剤とのより効果的な混合を達成することができる。
【0209】
ある実施形態では、ウイルス不活性化は、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力のpHを変えるのではなく、結合および溶出のクロマトグラフィーの間に溶出バッファーのpHを変えることによって達成することができる。
【0210】
本明細書に記載する幾つかの実施形態では、サンプルについて、ウイルス不活性化の後に、フロースルー精製方法を行う。ある実施形態では、ウイルス不活性化の後、フロースルー精製の前に、濾過工程が含まれていてもよい。特に、ウイルス不活性化の後にサンプルの濁度を観察する場合、このような工程が望ましいものであり得る。このような濾過工程は、微小孔フィルタまたはデプスフィルタを使用してもよい。
【0211】
しかし、ウイルス不活性化工程が任意である方法では、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力について、フロースルー精製を直接行ってもよい。
【0212】
フロースルー精製
本明細書に記載する種々の実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力に対し、フロースルー精製操作を直接行うか、または、ウイルス不活性化の後に行う。ある実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムに使用されるフロースルー精製操作は、ウイルス不活性化を用いるか、または用いずに、結合および溶出のクロマトグラフィーからの出力で存在する1種類以上の不純物を除去することを意図した、フロースルー精製を達成するための2つ以上の処理工程またはデバイスまたは方法を使用する。
【0213】
ある好ましい実施形態では、フロースルー精製操作は、本明細書で記載するように、活性炭;アニオン交換クロマトグラフィー;カチオン交換クロマトグラフィー、混合モードのクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびウイルス濾過、またはこれらの組み合わせといった、フロースルーモードで行われる工程のうち、1つ以上を含む。ある実施形態では、溶液状態を変えるために、1つ以上のバルブ、ライン内スタティックミキサおよび/または調整槽を、これらの工程の2つ以上の間で使用してもよい。
【0214】
種々の工程、フロースルー精製を達成するために使用可能な1つ以上の工程を以下にさらに詳細に記載する。
【0215】
本明細書で記載するように、ある実施形態では、ある好ましい実施形態では、フロースルー精製は、少なくとも1つのフロースルーアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程を使用し、標的分子を含むサンプル中にまだ残存している1種類以上の不純物は、アニオン交換クロマトグラフィー媒体と結合し、一方、標的分子は、流れる。
【0216】
ある実施形態では、フロースルー混合モードのクロマトグラフィーまたはフロースルー疎水性相互作用クロマトグラフィーを、フロースルーアニオン交換クロマトグラフィーの代わりに使用してもよく、または、これに加えて使用してもよい。
【0217】
AEXクロマトグラフィーに使用可能な例示的なアニオン交換媒体としては、限定されないが、例えば、四級アンモニウムイオンに由来するもの、および弱アニオン交換剤、例えば、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンに由来するものが挙げられる。適切なアニオン交換媒体のさらなる例は、GE Healthcare Bio−Sciences ABから入手可能なQ Sepharose(登録商標)、EMD Chemicalsから入手可能なFractogel TMAEおよびEshmuno Q、Pall Corp.から入手可能なMustang(登録商標)Q、Sartorius Stedimから入手可能なSartobind(登録商標)QおよびEMD Milliporeから入手可能なChromaSorb(商標)デバイスである。
【0218】
媒体は、粒子、膜、多孔性材料またはモノリス材料の形態であってもよい。好ましい実施形態では、媒体は、膜に由来するマトリックスであり、膜吸着剤とも呼ばれる。膜吸着剤は、好ましくは、当分野で周知の相分離方法によって作られる多孔性膜シートである。例えば、Zeman I.J,Zydney A L、Microfiltration and Ultrafiltration:Principles and Applications、New York:Marcel Dekker、1996を参照。中空繊維および管状の膜も許容されるマトリックスである。膜吸着剤は、典型的には、床の高さが0.5から5mmである。
【0219】
膜は、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリルなどを含め、当分野で既知の広範囲のポリマー材料から製造することができる。
【0220】
アニオン交換特性を付与するために、膜の表面を、通常は、適切なモノマーおよび/またはポリマーを用いたコーティング、グラフト接合、吸着およびプラズマによって開始する改質によって改質する。
【0221】
ある実施形態では、フロースルーアニオン交換のために用いられるアニオン交換媒体は、一級アミン基(例えば、ポリアリルアミンまたはプロトン化されたポリアリルアミン)が接続した架橋したポリマーでコーティングされた表面を有する膜に由来する媒体である。
【0222】
さらなる適切な媒体は、例えば、米国特許第8,137,561号(本明細書に参考として組み込まれる。)に見出すことができ、多孔性の自己支持性基材に作られた多孔性ポリマーコーティングを有する多孔性クロマトグラフィー媒体または吸着媒体およびこのような媒体を含むアニオン交換剤およびこのような媒体を用いて標的分子を精製する使用方法を記載する。このような媒体は、既存の下流の精製方法に十分に組み込まれた様式で製造された標的分子(例えば、モノクローナル抗体)から低レベルの不純物の著しい除去に特に適している。典型的な不純物としては、DNA、内毒素、HCPおよびウイルスが挙げられる。このような媒体は、高い塩濃度および高い導電性(高い親和性)で十分に機能し、このような条件でさえウイルスを効果的に除去する。デバイスの透過性を犠牲にすることなく、高い結合能力が達成される。実際に、コーティングの特性に依存して、約5mg/mLより大きく、または約25mg/mLより大きく、または約35から40mg/mLより大きい核酸結合能力が達成され得る。アニオン交換吸収剤の量は、匹敵するビーズ系の方法のために使用される量よりもかなり少ない。
【0223】
ある実施形態では、アニオン交換機能を有する膜は、適切な多層デバイスに包まれ、膜の積み重ね全体に均一な流れを与える。このデバイスは、使い捨てまたは再使用可能であってもよく、膜製造業者によってあらかじめ組み立てられていてもよく、または末端ユーザによって組み立てられてもよい。デバイスの筐体材料としては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンなど;熱硬化性樹脂、例えば、アクリル樹脂、シリコーンおよびエポキシ樹脂;および金属、例えば、ステンレス鋼が挙げられる。膜は、例えば、接着剤または熱による結合を用いることによって、デバイスの筐体に永久的に結合していてもよく、または圧縮および注意深く配置されたガスケットによって所定の位置に保持されてもよい。
【0224】
ある好ましい実施形態では、アニオン交換吸着デバイスを、標的タンパク質の等電位点よりも少なくとも0.5から1.0単位低い溶液pH値で使用する。アニオン交換吸着デバイスの好ましいpH範囲は、約6から約8である。塩濃度の適切な範囲は、0から500mMであり、さらに好ましくは、10から200mMである。
【0225】
ある実施形態では、フロースルー精製は、さらなる工程を使用してもよい。例えば、好ましい実施形態では、1つ以上のさらなるフロースルー工程を、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)に加えて使用する。さらなるフロースルー工程としては、例えば、混合モードのクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、活性炭、サイズ排除、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0226】
フロースルー精製に含まれてもよいさらなる工程としては、例えば、アニオン交換クロマトグラフィーの前またはアニオン交換クロマトグラフィーの後の活性炭(および/または1つ以上の混合モードおよびHIC)の使用を含む。ある実施形態では、活性炭を、例えば、カラムまたはデバイス内のセルロース媒体に組み込む。または、活性炭を、アニオン交換媒体(例えば、カラムまたはカートリッジ中)と合わせてもよく、これによって、標的分子を含むサンプルから1種類以上の不純物をさらに除去する。カラムまたはカートリッジも、使い捨てであってもよい(例えば、Millistak(登録商標)Pod)。媒体は、粒子、膜、繊維状多孔性材料またはモノリス材料の形態であってもよい。活性炭の場合には、多孔性材料、例えば、多孔性繊維状材料に含浸されていてもよい。
【0227】
フロースルーアニオン交換クロマトグラフィーの前のフロースルー活性炭工程は、宿主細胞のタンパク質および濾過されたプロテインAを除去するのに特に適していることがわかっている。細胞培地からの潜在的な不純物(例えば、ホルモン、界面活性剤、抗生物質および消泡性化合物)をかなりの量除去することもできる。これに加え、活性炭を含有するデバイスは、例えば、プロテインA溶出フラクションのpHを挙げている間に生じるサンプル中の濁度を下げることがわかっている。
【0228】
炭素系材料、活性炭およびフロースルー精製方法でのこれらの使用に関するさらなる詳細は、PCT国際番号第WO2013/028330号に見出すことができ、本明細書に参考として組み込まれる。
【0229】
上述のように、本明細書に記載する方法およびシステムで使用されるフロースルー精製操作は、1つより多いフロースルー工程を含んでいてもよい。
【0230】
好ましい実施形態では、フロースルー精製は、1つ以上のさらなるフロースルー工程、例えば、凝集物の除去およびウイルス濾過のための工程をさらに含む。ある実施形態では、サンプルは、凝集物除去のために、吸着性のデプスフィルタを通過するか、または、通常のフロー濾過モードの操作で帯電しているか、または改質された微細孔の層を通過する。凝集物除去に使用可能なフロースルー工程の例は、例えば、米国特許第7,118,675号および第7,465,397号に見出すことができ、本明細書に参考として組み込まれる。従って、ある実施形態では、タンパク質凝集物およびウイルス粒子を除去するための2工程の濾過方法を使用してもよく、サンプルを第1に、吸着性デプスフィルタ、帯電しているか、または表面改質された多孔性膜、またはクロマトグラフィー媒体の小さな床のうち、1つ以上の層によって濾過し、タンパク質凝集物を含まないサンプルを得る。以下にさらに詳細に記載するように、その後、ウイルスを濾過するために超濾過膜を使用してもよい。ウイルス濾過に用いられる超濾過膜は、典型的には、ナノ濾過膜と呼ばれる。
【0231】
ある実施形態では、さらなるフロースルー工程は、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)媒体を使用する。カチオン交換フロースルーデバイスおよびフロースルー精製方法でのこれらの使用に関するさらなる詳細は、本明細書に参考として組み込まれる米国特許出願第13/783,941(内部参照番号MCA−1423)に見出すことができる。従って、ある実施形態では、アニオン交換クロマトグラフィー工程の後に用いられるカチオン交換クロマトグラフィー媒体は、1つ以上のカチオン交換結合基を1から30mMの密度で含む固体支持体を使用する。このような固体支持体は、モノマーと比較して、選択的に約10より多く、タンパク質凝集物を結合することができる。
【0232】
ある実施形態では、タンパク質凝集物の除去に、例えば、負に帯電した、重合した架橋アクリルアミドアルキルコーティングでコーティングされ、化学重合遊離ラジカル開始剤が存在しない状態で、電子線をあてると、基材表面で系中で重合する多孔性基材を含む負に帯電した濾過媒体を使用してもよく、コーティングは、1つ以上の負に帯電した側鎖基を含む重合可能なアクリルアミドアルキルモノマーと、アクリルアミド架橋剤とから作られる。このような濾過媒体に関するさらなる詳細は、PCT公開第WO2010/098867号に見出すことができ、本明細書に参考として組み込まれる。
【0233】
フロースルーカチオン交換工程(CEX)の使用は、不純物(例えば、抗体凝集物)への親和性および能力を高めるために溶液pHを下げることを必要とし得る。このようなpHの低下は、3方向バルブ、T型コネクタ、スタティックミキサ、または当分野で周知の他の適切なデバイスを用い、適切な酸を含有する溶液を単純にライン内に添加することによって行うことができる。これに加え、小さな調整容器を使用し、さらなる混合を与え、サンプリングしてもよい。袋、容器または槽の形態であってもよい調整容器の容積は、通常は、フロースルー設定を用いて処理される流体の容積よりもかなり小さく、例えば、この流体の容積の10%以下である。
【0234】
ある実施形態では、カチオン交換媒体は、タンパク質、凝集物を除去し、および/またはウイルス濾過膜のプレフィルタとして作用し、このプレフィルタは、典型的には、カチオン交換クロマトグラフィーの後に用いられる。
【0235】
別の実施形態では、タンパク質凝集物は、リン酸カルシウム塩を含むコンポジットフィルタ材料を用いて除去することができる。適切なリン酸カルシウム塩は、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム無水物、リン酸三カルシウムおよびリン酸四カルシウムである。別の実施形態では、リン酸カルシウム塩は、ヒドロキシアパタイトである。溶液状態は、典型的には、このようなデバイスにサンプルを保持する前に調節される(特に、リン酸イオンの濃度およびイオン強度)。リン酸カルシウム塩を含むコンポジットフィルタ材料をフロースルーモードで用いたタンパク質凝集物の除去に関するさらなる詳細は、WO2011156073A1に見出すことができ、本明細書に参考として組み込まれる。
【0236】
フロースルー精製操作全体(本明細書に記載するように、アニオン交換クロマトグラフィー工程および1つ以上のさらなる工程を含む。)が、フロースルー処理工程の間に貯留槽を使用することなく、連続して行われる。
【0237】
ある実施形態では、フロースルー精製方法は、さらに、ウイルス濾過を含む。しかし、ウイルス濾過は、任意であり、必ずしも常に使用しなければならないわけではない。
【0238】
ある実施形態では、ウイルス濾過は、サイズ排除に基づく濾過(ふるい分けとも呼ばれる。)を含む。
【0239】
ウイルス除去のために、サンプルを、典型的には、標的分子は通過するが、ウイルスは保持されるような超濾過フィルタに通す。IUPACによれば、超濾過は、「0.1μmより小さく、約2nmより大きな粒子および溶解した高分子が除かれる、加圧により誘導される膜による分離方法」である(IUPAC、「Terminology for membranes and membrane processes」、Pure Appl.Chem.発行、1996,68,1479)。この工程で使用される超濾過膜は、通常は、ウイルスを除去するように特定的に設計されている。タンパク質の濃縮およびバッファーの交換に使用される超濾過膜とは対照的に、これらの膜は、通常は、分子量のカットオフを特徴とせず、むしろ、典型的なウイルス粒子の保持を特徴とする。ウイルスの保持は、対数保持値(LRV)であらわされ、標準化された試験で、単純に、供給物および濾液中のウイルス粒子の比率のLog
10である。精製方法でのウイルス濾過の使用は、例えば、Meltzer,T.およびJornitz.M.編集、「Filtration and Purification in the Biopharmaceutical Industry」、第2版、Informa Healthcare、2008.Chapter 20に見出すことができる。
【0240】
ウイルス保持膜は、平坦なシートの形態で、例えば、EMD Millipore Corporation製のViresolve(登録商標)Pro、Pall Corporation製のUltipor(登録商標)VF Grade DV20、Sartorius Stedim Biotech製のVirosart(登録商標)CPV、または中空繊維の形態で、例えば、Asahi Kasei Medical Co.製のPlanova(商標)20Nとして製造することができる。これらは、単一層または複数層の製品であってもよく、当分野で既知の多くの膜製造方法のいずれかによって製造することができる。本明細書に参考として組み込まれる米国公開第20120076934 A1に記載されるように、非対称なコンポジットウイルス保持膜のために、スループット保持の特に有利な組み合わせを達成することができる。
【0241】
特定の実施形態では、フロースルー精製操作は、活性炭工程、アニオン交換クロマトグラフィー工程、カチオン交換クロマトグラフィー工程およびウイルス濾過工程を少なくとも含む。
【0242】
ウイルス濾過の後、標的分子を含むサンプルについて、1つ以上のさらなる配合/濃縮工程を行なってもよい。
【0243】
さらなる処理工程
上述のように、ある実施形態では、サンプルについて、ウイルス濾過の後に、1つ以上のさらなる処理工程を行う。
【0244】
ある実施形態では、1つ以上のさらなる工程は、配合を含み、透析濾過/濃縮の後に、滅菌濾過を使用してもよい。
【0245】
ある実施形態では、ウイルス濾過の後、標的分子を含むサンプルに対し、透析濾過を行い、典型的には、Tangential Flow Filtration(TFF)モードで超濾過膜の使用を利用する。Tangential Flow Filtration(TFF)の場合、流体を、濾過媒体表面に沿って接線方向に圧送する。加えられた圧力は、流体の一部を濾過媒体を通って濾液側に移動させるのに役立つ。
【0246】
透析濾過によって、標的分子を含む流体が、標的分子を配合するのに望ましいバッファーと置き換えられる。透析濾過は、典型的には、その後に、同じ膜を用いて行われる、標的分子を濃縮する工程を行う。
【0247】
別の実施形態では、濃縮/透析濾過に、シングルパスタンジェンシャルフロー濾過(SPT FF)を使用することができる。SPTFFモジュールは、直列に接続した複数の超濾過デバイスを含む。保持ループおよびポンプを必要とすることなく、連続的な操作が可能なSPTFFモジュールを1回通した後に、標的タンパク質は、十分に濃縮/透析濾過される。さらなる情報は、2011年春のAmerican Chemical Society会議でのHerb Lutzらによる「Single pass TFF」という名称のプレゼンテーションに見出すことができる。
【0248】
透析濾過/濃縮の後に、サンプルに対し、貯蔵または任意の他の使用のために、滅菌濾過工程を行う。
【0249】
滅菌濾過は、典型的には、Normal Flow Filtration(NFF)を用いて行われ、流体の流れ方向は、圧力が加えられた状態で、濾過媒体(例えば、膜)に垂直な方向である。
【0250】
本発明のシステム
本発明は、さらに、標的分子を精製するためのシステムも提供し、このシステムは、互いに流体連結するように接続し、この結果、連続的な様式または半連続的な様式で標的分子を精製するための方法を行うように、2つ以上のユニット操作を含む。それぞれのユニット操作は、ユニット操作の意図した目的を達成するために1つ以上のデバイスを使用してもよい。従って、ある実施形態では、本明細書に記載するシステムは、連続的な様式または半連続的な様式で精製方法を行うことができるように接続した幾つかのデバイスを含む。
【0251】
理論によって束縛されることを望まないが、システムが、閉じた滅菌環境に囲まれていてもよく、これによって、精製方法全体を滅菌様式で行うことができることが想定される。
【0252】
種々の実施形態では、システムの最初のデバイスは、出発物質(例えば、精製されるタンパク質を発現する培養細胞)を含むバイオリアクターである。バイオリアクターは、バッチ型または供給バッチ型バイオリアクター、または連続灌流発酵バイオリアクターのような連続型バイオリアクターのような任意の型のバイオリアクターであってもよい。バイオリアクターは、任意の適切な材料から作ることができ、任意の大きさであってもよい。典型的な材料は、ステンレス鋼またはプラスチックである。好ましい実施形態では、バイオリアクターは、使い捨てのバイオリアクターであり、例えば、シングルユースのために設計された可とう性の折り畳み可能な袋の形態である。
【0253】
浄化は、バイオリアクター内で直接行われてもよく、または、バイオリアクターは、単に、細胞を培養するために使用することができ、浄化は、異なる容器で行われる。さらに別の実施形態では、1種類以上の不純物を除去するためにデプス濾過デバイスを通し、細胞培養物を単に解凍する。従って、ある好ましい実施形態では、バイオリアクターは、デプス濾過を行うためのデバイスと流体連結する。
【0254】
浄化を行うためのデバイス(例えば、デプス濾過デバイス)は、一般的に、結合および溶出のクロマトグラフィーを用い、捕捉を行うためのデバイス(例えば、2つ以上の分離ユニットを含む連続的なマルチカラムクロマトグラフィーデバイス)と流体連結するように接続する。ある実施形態では、結合および溶出のクロマトグラフィーのためのデバイスは、フロースルー精製を行うためのユニット操作と流体連結するように接続し、1つより多いデバイス/工程を含んでいてもよい。ある実施形態では、ライン内のスタティックミキサまたは調整槽は、結合および溶出のクロマトグラフィーのためのデバイスと、フロースルー精製のために使用される第1のデバイスとの間に含まれる。
【0255】
ある実施形態では、フロースルー精製操作は、1つより多いデバイス、例えば、活性炭デバイスの後に、AEXクロマトグラフィーデバイス、その後に、ライン内スタティックミキサおよび/またはpHを変えるための調整層、その後、CEXクロマトグラフィーデバイス、その後に、ウイルス濾過デバイスを含む。デバイスは、一般的に、任意の適切な形態、例えば、円柱またはカートリッジの形態であってもよい。
【0256】
システム内の最後のユニット操作は、配合を達成するための1つ以上のデバイスを含んでいてもよく、透析濾過/濃縮および滅菌濾過を含む。
【0257】
典型的には、それぞれのデバイスは、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、これによって、あるデバイスからの出力が、システムの連続したデバイスの入口と流体連結することができる。
【0258】
今日、産業で使用されるほとんどの方法およびシステムでは、精製方法で使用されるそれぞれのデバイスは、処理装置ユニット(「スキッド」とも呼ばれる。)を使用し、典型的には、必要なポンプ、バルブ、センサおよびデバイスホルダを含む。典型的には、少なくとも1つのスキッドは、それぞれのデバイスに関連している。本明細書に記載の幾つかの実施形態では、精製方法全体で用いられるスキッドの数は、少なくなる。例えば、ある実施形態では、たった1個のスキッドを使用し、フロースルー精製操作全体を行い、複数のデバイス、例えば、溶液状態を変えるために必要な任意の装置とともに、活性炭デバイス、アニオン交換クロマトグラフィーデバイス、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイスを含んでいてもよい。従って、ある実施形態では、フロースルー精製の上のすべての工程のために、1個のスキッドを使用してもよい。
【0259】
ある実施形態では、種々のデバイスの間の流体連結は、連続的であり、流体は、中断されることなく、すべてのデバイス全体を直接流れる。他の実施形態では、1つ以上のバルブ、センサ、検出器、調整槽および任意のライン内溶液を変えるための装置は、種々のデバイスの間に含まれていてもよく、これによって、必要な場合、例えば、特定のデバイスを置き換える/除去するために、システムを通る流体の流れを一時的に中断させる。
【0260】
ある実施形態では、1つ以上の調整槽は、種々のデバイスの間に含まれる。ある実施形態では、3個以下、2個以下の調整槽がシステム全体に存在する。異なるデバイス間に配置される調整槽は、2つのデバイスのうち、最初のものからの出力の全容積の25%以下、好ましくは、10%以下の容積を有する。
【0261】
ある好ましい実施形態では、本明細書に記載されるシステムは、バッファーの交換および/またはライン内での希釈のために1つ以上のスタティックミキサを含む。
【0262】
ある実施形態では、システムは、さらに、システム内部の1つ以上の処理パラメータ、例えば、温度、圧力、pH、導電性、溶解した酸素(DO)、溶解した二酸化炭素(DCO
2)、混合速度、流速、生成物パラメータを制御および/または監視するための1つ以上のセンサおよび/またはプローブを含む。センサは、ある場合には、光学センサであってもよい。
【0263】
ある実施形態では、方法の制御は、システムの無菌状態を犠牲にしない様式で達成されてもよい。
【0264】
ある実施形態では、センサおよび/またはプローブをセンサ電子モジュールに接続してもよく、この出力は、端子盤および/またはリレーボックスに送ることができる。検知操作の結果を、種々のパラメータ(例えば、温度および重量/容積の測定値、純度)を計算し制御するために、また、ディスプレイおよびユーザインターフェースのために、コンピュータによって実行される制御システム(例えば、コンピュータ)に入力してもよい。このような制御システムは、処理パラメータを制御するための電子システム、機械システムおよび/または圧縮空気システムの組み合わせを含んでいてもよい。制御システムは、他の機能を発揮してもよく、本発明は、任意の特定の機能または一連の機能を有するものに限定されないことが理解されるべきである。
【0265】
限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。本明細書全体で引用されるすべての参考文献、特許および公開された特許明細書の内容および図面は、本明細書に参考として組み込まれる。
【実施例】
【0266】
[実施例1]
モノクローナル抗体を精製するための方法
この代表的な実施例では、モノクローナル抗体の精製は、精製方法を連続的な様式で用いて達成され、種々のユニット操作は、連続して操作する様式で接続する。例示的な方法を
図2に示す。
【0267】
以下に記載する代表的な実施例は、列挙した順序で行われる以下の工程を含む。デプス濾過を用いた浄化;溶液状態を変えるための1つ以上のライン内スタティックミキサの使用;2つの分離ユニットを使用する連続的なマルチカラムクロマトグラフィーを用いたプロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー;1つ以上のスタティックミキサを用いた出力のpH調整;およびデプス濾過を使用するフロースルー精製、その後、活性炭、その後、アニオン交換クロマトグラフィー、その後、スタティックミキサを用いたpH調整、その後、カチオン交換クロマトグラフィー、その後、ウイルス濾過。
【0268】
この実施例では、CHO系モノクローナル抗体(MAb05)を供給バッチバイオリアクター内で製造する。約5.5Lの細胞培養物を、0.054m
2のD0HC(EMD Millipore)の第1のデプスフィルタで処理し、次いで、さらに、0.054m
2のX0HC(EMD Millipore)の第2のデプスフィルタで浄化し、両方とも、10LMHの流れで処理し、約100L/m
2の保持量を得た。
【0269】
デプス濾過からの溶出物を、5M NaCl溶液と比率1:10で接触させ、次いで、スタティックミキサによって混合し、その後、滅菌フィルタを通す。それぞれのデプスフィルタの前および滅菌フィルタの後で圧力を監視する(
図3)。スタティックミキサの後、溶液を、最終保持量が3200L/m
2になるようにSHC滅菌フィルタ(EMD Millipore)に通す。滅菌フィルタからの溶出液を調整槽に向かわせ、保持セルを用いて監視し、濾過された量を決定する。プロテインAの連続的なマルチカラムクロマトグラフィー(CMC)でのそれぞれの保持サイクルの直前に、1mLのサンプルを集める(
図4)。約70mlの細胞培養物を処理し、調整槽に集めた後、浄化された溶液をプロテインA捕捉のための次の工程のために同時に保持する。
【0270】
プロテインAの捕捉は、改変されたAkta Explorer 100で動く2つのプロテインAカラムからなる。プロテインAカラムは、内径1.6cmのVantage−L(EMD Millipore)クロマトグラフィーカラムに、床の高さが10.25cmおよび10.85cmになるように充填された10mLのProSep Ultra Plus Protein A媒体を含む。5カラム容積について、カラムを1×PBS、0.5M NaClで平衡化する(すべてのカラム容積は、最も小さなカラムに基づく)。操作全体で、保持流速は、保持滞留時間が約1分になるように設定される。初期の保持中に、両方のカラムを直列に配置し、特定の保持容積に達するまで、第1のカラムの溶出物を第2のカラムに直接入れる。特定の保持容積がカラムに流れた後、供給を止め、2カラム容積(CV)の平衡バッファーを、第1のカラムを通し、第2のカラムに流す。次いで、第1のカラムを、洗浄、溶出、クリーニングおよび再平衡化を行うために配置し、一方、第2のカラムを第1のカラムとして保持する。第1のカラムの再平衡化の後、次いで、カラムを第2の位置に移動し、現時点の第1のカラムと直列にする。元々の第1の位置のカラムを、設定容積になるまで保持させた後、この一連の事象を、第1の位置に置いたそれぞれのカラムについて繰り返す。第1のカラムを、合計3回保持し、第2のカラムを2回保持する。それぞれのカラムからの溶出物を、混合しつつビーカーに集め、UVトリガーを用い、溶出の開始時と終了時を制御する。
【0271】
最初の2つの溶出物を集め、プールした後、この溶液を調整槽に圧送し、2Mのトリス溶液と混合し、2つのスタティックミキサによって処理し、pHをpH8.0まで上げ、得られた溶液のpHを、スタティックミキサの直後で測定する。次いで、pHを調整した溶液をA1HCデプスフィルタ(EMD Millipore)を通して処理し、その後、内径1cmの活性炭を充填したOmnifitカラムを通した。次いで、活性炭カラムからの溶出物を、ChromaSorb(商標)のMAb/L保持量が4kgになるように、アニオン交換クロマトグラフィーデバイス(例えば、ChromaSorb(商標))(EMD Millipore)を通して連続的に流す。次いで、ChromaSorb(商標)アニオン交換剤からの溶出物を1M酢酸と混合し、次いで、スタティックミキサを通し、pHをpH5.5まで下げる。次いで、スタティックミキサからのpH調整した溶液を、プレフィルタとして使用するカチオン交換クロマトグラフィーデバイスに流し、その後、Viresolve(登録商標)Pro膜(EMD Millipore)を用い、ウイルス濾過に流す。ウイルスフィルタからの溶出物を貯留槽に向かわせ、サンプリングする。
【0272】
この精製方法は、すべての精製目標を満たす最終的な溶液を提供し、具体的には、方法全体でHCP<1ppm、凝集物<1%、mAb05回収量>60%である。
【0273】
[実施例2]
モノクローナル抗体を精製するための方法
この代表的な実施例では、モノクローナル抗体の精製は、精製方法を用いて達成され、種々のユニット操作は、以下に記載する配列で接続する。
【0274】
以下に記載する代表的な実施例は、列挙した順序で行われる以下の工程を含む。刺激応答性ポリマーを用いた浄化、その後、遠心分離;上澄みを塩と接触;2つの分離ユニットを使用する連続的なマルチカラムクロマトグラフィーを用いたプロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー;1つ以上のスタティックミキサを用いた出力のpH調整;およびデプス濾過を使用するフロースルー精製、その後、活性炭、その後、アニオン交換クロマトグラフィー、その後、スタティックミキサを用いたpH調整、その後、カチオン交換クロマトグラフィー、その後、ウイルス濾過。
【0275】
この実施例では、CHO系モノクローナル抗体(MAb05)を供給バッチバイオリアクター内で製造する。合計で7リットルの細胞培養物を、最終ポリマー濃度が0.2%(v/v)になるまで、刺激応答性ポリマーの溶液(塩の添加に応答して、改質されたポリアリルアミン)と接触させる。細胞培養物を、刺激応答性ポリマー溶液と約10分間混合する。約1.75mLの2M K
2HPO
4溶液を加え、細胞培養物をさらに10分間混合する。次いで、2Mトリス塩基を加え、15分間混合することによってpHを7.0に上げる。次いで、溶液を2Lに小分けし、4,500×gで10分間遠心分離し、上澄みをデカンテーションし、放置する。固体を廃棄する。細胞培養物の上澄みをプールし、次いで、連続的に攪拌しつつ、バッチモードで5M NaClと比率1:10で混合する。溶液の最終的な導電性をこの時点で測定し、55±5mS/cmである。得られた溶液を、0.22μmのExpress SHCフィルタ(EMD Millipore)を通して滅菌濾過する。滅菌濾過した溶液は、プロテインAクロマトグラフィーのための保持材料である。
【0276】
プロテインA捕捉工程は、改変されたAkta Explorer 100で動く2つのプロテインAカラムからなる。プロテインAカラムは、内径1.6cmのVantage−L(EMD Millipore)クロマトグラフィーカラムに、床の高さが10.25cmおよび10.85cmになるように充填された10mLのProSep Ultra Plus Protein A媒体を含む。5カラム容積(CV)について、カラムを1×TBS、0.5M NaClで平衡化する(すべてのカラム容積は、最も小さなカラムに基づく)。操作全体で、保持流速は、保持滞留時間が約1分になるように設定される。
【0277】
初期の保持中に、両方のカラムを直列に配置し、特定の保持容積に達するまで、第1のカラムの溶出物を第2のカラムに直接入れる。特定の保持容積がカラムに流れた後、供給を止め、2CVの平衡バッファーを、第1のカラムを通し、第2のカラムに流す。次いで、第1のカラムを、洗浄、溶出、クリーニングおよび再平衡化を行うために配置し、一方、第2のカラムを第1のカラムとして保持する。第1のカラムの再平衡化の後、次いで、カラムを第2の位置に移動し、現時点の第1のカラムと直列にする。元々の第1の位置のカラムを、設定容積になるまで保持させた後、この一連の事象を、第1の位置に置いたそれぞれのカラムについて繰り返す。それぞれのカラムを、合計7回保持する。それぞれのカラムからの溶出物を、フラクション収集器に集め、UVトリガーを用い、溶出の開始時を制御し、約3.5CVの一定容積になるまで集める。
【0278】
フロースルー精製は、6個の主要な工程で構成される。デプスフィルタ;活性炭;アニオン交換クロマトグラフィー;ライン内でのpH調整;カチオン交換クロマトグラフィー;およびウイルス濾過。
【0279】
図5は、これらの工程を接続する順序を示す。必要なポンプおよびセンサ、例えば、圧力、導電性およびUVのためのセンサも模式図に示される。
【0280】
すべてのデバイスを異なるステーションで個々に濡らし、次いで、
図5に示すように並べる。デバイスを濡らし、製造業者のプロトコルに従って、本明細書に記載するように前処理する。簡単に言うと、デプスフィルタ(AIHC)に100L/m
2の水を流し、その後、5容積の平衡バッファー1(EB1;1Mトリス塩基(pH11)を含む、pH7.5に調整したプロテインA溶出バッファー)を流す。10mLの活性炭を内径2.5cmのOmnifitカラムに充填する。カラムに10CVの水を流し、次いで、pHがpH7.5で安定化するまで、EB1で平衡化する。1.2mLのアニオン交換膜(7層)を、直径47mmのSwinexデバイスに積み重ねる。このデバイスを12.5CV/分で、水を用いて少なくとも10分間濡らし、その後、5デバイス容積(DV)のEB1で濡らす。使い捨てのらせん型スタティックミキサ(Koflo Corporation、Cary、IL)と、12要素とを使用し、ライン内でpH調整を行う。3層カチオン交換クロマトグラフィーデバイス(0.12mLの膜容積)を10DVの水で濡らし、その後、5DVの平衡バッファー2(EB2:1M酢酸を用いてpH5.0に調整したEB1)で濡らす。このデバイスを、5DVのEB2+1M NaClでさらに処理し、次いで、5DVのBB2で平衡化する。3.1cm
2のViresolve(登録商標)Proウイルス濾過デバイスを、30psiで加圧した水で少なくとも10分間濡らす。次いで、流速が連続した3分間で一定に維持されるまで、流速を1分ごとに監視する。すべてのデバイスを濡らし、平衡化した後、
図5に示すように接続する。
【0281】
すべての圧力の読みおよびpHの読みが安定化するまで、EB1をシステム全体に流す。平衡化した後、供給物(即ち、pH7.5に調整されたプロテインA溶出物)に対し、フロースルー精製を行う。操作中、サンプルを調整槽の前およびViresolve(登録商標)Proの後で集め、MAb濃度および不純物(例えば、HCP、DNA、濾過されたプロテインAおよび凝集物)のレベルを監視する。供給物を処理した後、システムに3デバイス容積のEB1を流し、種々のデバイスおよびデバイス間の接続ラインの中にまだ残留するMAbを回収する。
【0282】
図6は、フロースルー精製におけるデプスフィルタ、活性炭およびViresolve(登録商標)Proの後の圧力の読みを示す。一般的に、圧力の高まりは、フィルタカラムの汚れを示す。特に、活性炭カラムは、活性炭の前に用いられるデプスフィルタに起因して、沈殿からかなり保護されたままである。Viresolve(登録商標)Proの圧力は、時間経過とともにゆっくりと上がるが、操作の最大限界(50psi)より十分に下である。
【0283】
アニオン交換クロマトグラフィーデバイスの後に測定した場合、時間の関数としてのHCPの通過は、目標の10ppmより下である。Viresolve(登録商標)Proプールの最終的なHCPは、1ppm未満である(表1)。溶出フラクション中の濾過された平均プロテインAは、32ppmである。Viresolve(登録商標)Proプール中の濾過されたプロテインAは、4ppmである。凝集物は、1%から0.4%まで減る。
【0284】
実験からの結果を以下の表IIにまとめている。
【0285】
【表2】
【0286】
[実施例3]
バッチプロテインAクロマトグラフィーの後のフロースルー精製方法
この代表的な実験では、バッチプロテインAによってすでに精製されたモノクローナル抗体溶液を、最終的な純度および収率の目的を満たすように、フロースルー精製を用いてさらに精製する。これは、以下の工程をフロースルー様式で行うことによって行われる。活性炭:アニオン交換クロマトグラフィー;ライン内のpH変化;カチオン交換クロマトグラフィーおよびウイルス濾過。
【0287】
設定、平衡化および操作は、幾つかの小さな改変以外は、実施例2と同様である。出発物質は、バッチプロテインA方法からのプロテインA溶出物である。具体的には、この操作のために処理されたMAb供給物は、13.5mg/mlの102mLである。流速0.6mL/分でのMAb05。フロースルー精製を行う前に、滅菌0.22μmのフィルタを通して供給物を濾過するため、この試験では、デプスフィルタを使用しない。保持量0.55kg/Lに対応する2.5mLの活性炭カラムを使用する。2つのアニオン交換クロマトグラフィーデバイス(0.2mLおよび0.12mL)を直列に接続し、保持量4.3kg/Lを得る。凝集物を取り扱うために、2つの1.2mlのカチオン交換クロマトグラフィーデバイス(それぞれのデバイスに7層の膜)を平行に接続する。カチオン交換クロマトグラフィーデバイスのMAb保持量は、約570mg/mLである。3.1cm
2のViresolve(登録商標)Proデバイスをウイルス濾過に使用する。
【0288】
アニオン交換クロマトグラフィーデバイスの後に、保持量の関数としてのHCPの通過は、目標の10ppmより下である(
図7)。Viresolve(登録商標)Proプールの最終的なHCPは、1ppm未満である(表2)。凝集物は、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスによって5%から1.1%まで減る(
図8)。
【0289】
実験からの結果を以下の表IIIにまとめている。
【0290】
【表3】
【0291】
図9は、活性炭およびViresolve(登録商標)Proの前の圧力の読みを示す。一般的に、圧力を高くすると、フィルタが汚れることが暗示される。この場合には、活性炭の場合には、中程度(約5psi)の圧力の増加が存在する。Viresolve(登録商標)Proの圧力は、時間経過とともにゆっくりと上がるが、操作の最大限界(50psi)より十分に下である。
【0292】
図10に示されるように、調整後のpHは、スタートアップ中を除き、目標設定点のpH4.9のままである。ライン内のpH調整の後、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスに圧送する前に調整槽を用いることによって、pHの上昇を抑えることができる。
【0293】
[実施例4]
プロテインAクロマトグラフィーに接続する浄化
この代表的な実施例では、浄化を、連続的な様式でプロテインAクロマトグラフィーに接続する。
【0294】
この実験では、デプス濾過に使用される流速は、デプス濾過の後に行うプロテインAクロマトグラフィーに使用される滞留時間によって決定される。この代表的な実施例で使用される流速は、従来のデプス濾過で使用される流速より遅く、プロテインAクロマトグラフィーの後に回収された出力で、より多いHCPが除去される。
【0295】
モノクローナル抗体(MAb04)細胞培養供給物が得られ、3つの等しい部分に分ける。第1の部分(表IVのサンプル番号1)を、D0HCおよびX0HC Millistak+(登録商標)の第1および第2のデプスフィルタ(EMD Millipore)をフィルタ面積比1:1で用い、標準的な浄化方法で用いられる典型的な流れである流速100リットル/m
2/時間(LMH)で浄化する。MAb濃度およびHCP量について、流出物を試験する。細胞培養供給物の第2の部分(サンプル番号2)も、同じ種類および同じ比率のフィルタを用い、しかし、流速10LMHで浄化される。この流速は、浄化の後に行うプロテインAクロマトグラフィーカラムの6分の滞留時間に基づく。両方の場合に、約100L/m
2のスループットに対応する同じ量の材料を処理し、2つのサンプルを同じ様式で処理する。
【0296】
両方の浄化された細胞培養物の流体について、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィーを行い、表IVのサンプル番号3および4を得て、浄化およびプロテインAクロマトグラフィーを別個に行う(即ち、接続しない。)。サンプル番号4は、ゆっくりした流速に関連し、失われ、従って、分析することができない。
【0297】
細胞培養供給物の第3の部分(サンプル番号5)を、プロテインAクロマトグラフィーカラムに連続的に保持される2つのデプスフィルタの溶出液を有するアセンブリを介して処理する(即ち、浄化およびプロテインAクロマトグラフィーが接続されている。)。上と同じクロマトグラフィー条件を使用する。すべてのプロテインA溶出物を、MAb濃度およびHCP量について試験する。サンプル番号5の場合、プロテインAクロマトグラフィーの6分の滞留時間は、約10LMHの浄化のための流速を決定づける。
【0298】
すべての結果を表IVに示す。この結果は、HCPレベルが、ゆっくりとした浄化の後に2分の1に低いことを示す(即ち、サンプル番号1に対し、サンプル番号2)。プロテインAクロマトグラフィーの後の対応するサンプルの直接比較は、サンプルが失われたため、報告しない(即ち、サンプル番号4)。サンプル番号3に対し、サンプル番号5に関連する結果の比較は、連続的な接続した様式の性能の浄化およびプロテインAクロマトグラフィーが、浄化とプロテインAクロマトグラフィーを別個に行ったときの純度に比較して、MAb純度が8倍向上することを示唆する。概算されたLRV値を比較し、差を示す。
【0299】
【表4】
【0300】
[実施例5]
刺激応答性ポリマーを用いた浄化
この代表的な実験では、2つの異なる方法を用い、刺激応答性ポリマーを用いて浄化を行う。
【0301】
ある方法では、刺激応答性ポリマーを、標的分子を発現する細胞培養物を含むバイオリアクター(シングルユースまたは使い捨てのバイオリアクターであってもよい。)に直接加える。第2の方法では、細胞培養物をバイオリアクターから圧送し、1つ以上のライン内スタティックミキサを用い、刺激応答性ポリマーと接触させる。
【0302】
バイオリアクターで直接浄化を行うことに関連する方法の場合、60mLの10重量%の刺激応答性ポリマーを、細胞培養物を含む3Lの使い捨てバイオリアクターに加え、少なくとも5分間混合する。75mLの2M K
2HPO
4をバイオリアクターに加え、少なくとも5分間混合する。pHを7から7.3に上げるために、混合しつつ、2Mのトリス塩基をバイオリアクターに加える(約50から100mL)。溶液を少なくとも1分間混合し、次いで、バイオリアクターから圧送し、100LMHの速度でデプスフィルタに直接入れ、沈殿を除去する。
【0303】
ライン内でのスタティックミキサの使用に関連する方法の場合、細胞培養物をバイオリアクターから93.5LMWの速度で、バルブまたはコネクタに圧送し、1.9LMHの流速で流れる刺激応答性ポリマーの流れと接触させる。次いで、合わせた流れを、効果的な混合を与えるのに適切な大きさのライン内のスタティックミキサに流す。次いで、この流れを、第2のバルブまたはコネクタに流し、2.3LMHの速度で流れるポリマーのための刺激と接触させる。合わせた流れを、効果的な混合を与えるのに適切な大きさの第2のスタティックミキサに流す。次いで、この流れを第3のバルブまたはコネクタに流し、約2.3LMHの速度で流れる2Mトリス塩基の流れと接触させる(トリスの流れを、合わせた流れのpHを7から7.3に維持するように調整する。)。合わせた流れを、効果的な混合を与えるのに適切な大きさの第3のスタティックミキサに流す。次いで、この流れを、沈殿を除去するために、1つ以上のデプスフィルタに直接入れる。
【0304】
異なる供給物は、pHにより感受性な場合があり、または、刺激応答性ポリマーと異なる状態で相互作用してもよいことに留意されたい。バイオリアクター、ライン内、またはこれら2つの組み合わせのいずれかで供給物を処理する能力を使用し得ることによって、収率を最大にすることができる。
【0305】
本明細書に記載されるように、刺激応答性ポリマーを使用すると、浄化工程の後に行う結合および溶出のクロマトグラフィー処理工程(例えば、プロテインAクロマトグラフィー工程)で良好な性能が得られる。さらに、この代表的な実施例に記載される方法は、刺激応答性ポリマーの使用を含まない浄化スキームと比較して、次の結合および溶出のクロマトグラフィー工程のクロマトグラフィーサイクルの数を増加させることが観察される。最後に、結合および溶出のクロマトグラフィー工程の後に得られる溶出物は、刺激応答性ポリマーを結合および溶出のクロマトグラフィー工程の上流で使用するとき、pHが変化すると、低い濁度の生成を示すようである。
【0306】
[実施例6]
プロテインAクロマトグラフィーの溶出性能に対する、沈殿を用いた浄化の効果
この代表的な実験では、プロテインAクロマトグラフィーの溶出性能に対する、MAb04を産生するCHO系細胞培養物で行われる浄化の種類の効果を観察する。
【0307】
1バッチの細胞培養物を3等分に均一に分ける。1つの均等分に対し、カプリン酸を用いた浄化を行い、別の均等分に対し、刺激応答性ポリマー(即ち、改質されたポリアリルアミン)を用いた浄化を行い、第3の均等分は未処理のままである。
【0308】
カプリン酸または刺激応答性ポリマーを用いた沈殿の後、遠心分離を用いて固体を除去する。未処理の細胞培養物も、2つの処理した培養物と同じ時間混合した後に、遠心分離する。すべて、使用前に滅菌濾過する。
【0309】
それぞれの浄化された溶液について、溶液の導電性を測定し、導電性が約54mS/cmに達するまで、5M NaClを用いて調整する。加えられたNaClの平均濃度は、すべての溶液について約0.5Mである。高い導電性の細胞培養物溶液を、別個のプロテインAクロマトグラフィーカラムに保持させる前に、滅菌濾過する。
【0310】
それぞれの供給溶液についてプロテインAクロマトグラフィーを行うために、3つのカラムをProSep Ultra Plus媒体で充填し、1つのカラムには、4mLの充填した媒体を含み、他の2つには、両方とも、内径が10mmのOmniFitカラムに4.24mLの充填した媒体を含む。カラムの床の高さは、それぞれ、4mLおよび4.24mLのカラムについて、5.1cmおよび5.4cmである。
【0311】
すべてのクロマトグラフィー実験を、Akta Explorer 100(カプリン酸と、処理された刺激応答性ポリマー)またはAkta Avant 25(未処理)で行う。1回目の保持の前に、それぞれのカラムを、少なくとも5カラム容積(CV)の0.15Mリン酸で洗浄する。すべてのクロマトグラフィーを同じ塩基性手順を用いて行う。カラムを5CVの1×TBS+0.5M NaClで平衡化し、次いで、充填した媒体1リットルあたり、約30gのMAb04を保持させる。保持溶液を2CVの平行バッファーで流し、その後、25mMのトリス(pH7.0)を含む4CVで流す。カラムを洗浄した後、生成物(MAb04)を、25mMのグリシンHCl、25mMの酢酸(pH2.5)の5CVを用い、カラムから溶出させる。システムのフラクション収集器を用いて溶出液を集め、UVトリガーを用いて収集を開始し、4CVの一定容積で集める。4CVの0.15Mリン酸を用いてカラムを洗浄し、その後、平衡バッファーを用い、10CVの再平衡化工程を行う。
【0312】
12(未処理)および9(カプリン酸と、処理された刺激応答性ポリマー)の連続したサイクルについて、異なる浄化されたサンプルのプロテインA精製を行う。
【0313】
図11、12および13は、すべての実験について、重ね合わされたクロマトグラムを示し、それぞれの場合に、保持量、溶出および洗浄ピークを順に示す。刺激応答性ポリマー処理を行わない溶出ピークは、刺激応答性ポリマーで処理した細胞培養物からの溶出ピークと比較したとき、目に見える顕著な立下がりピークを有することが明らかであり、このことは、刺激応答性ポリマーを使用しないとき、非効率な溶出を示唆している。
【0314】
さらに、保持溶液の吸光度は、未処理の細胞培養物と比較して、刺激応答性ポリマーで処理した細胞培養物について、顕著に低く、吸光度は、0.4から0.5吸光単位(AU)まで低下し、カラムに対し、低い不純物という挑戦を示唆する。
【0315】
溶出後、両方のサンプルセットについてpHを5.0まで上げ、次いで、pHをさらに7.5まで上げる。pH5.0で、溶液の目に見える濁度は存在しない。しかし、pH7.5で、すべての溶出サンプルは、未処理のサンプルで顕著に高いレベル(99から644NTU)の濁度の増加を示し、一方、刺激応答性ポリマーで処理した溶出プールの濁度は、69.5から151NTUの範囲であり、未処理のサンプルに対し、顕著に低い。
【0316】
[実施例7]
活性炭を用いたアフィニティ捕捉溶出物からの可溶性および不溶性の不純物の同時除去
この代表的な実験では、活性炭は、セルロース媒体に充填されると、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程(即ち、捕捉工程)からの溶出物から得た不溶性(即ち、粒状)および可溶性の不純物を除去することができることを示した。
【0317】
今日、産業で使用される多くの従来の方法では、プロテインAアフィニティ捕捉工程の後、多くは、デプスフィルタを使用し、典型的にはカチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィー工程である次の工程の前に不溶性不純物(即ち、粒状物)を除去する。
【0318】
本明細書に記載する方法では、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィーの後のデプスフィルタの使用が必要ない。顕著なことに、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程の後に活性炭を用いることによって、カチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィー工程の必要性がなくなるだけではなく、デプスフィルタを使用する必要性もなくなる。このことは、例えば、典型的に使用される工程を省くため、全体的な費用の低下、処理時間および全体的な物理的なフットプリントの低下を含む多くの利点を与える。
【0319】
本明細書に示すように、活性炭の使用によって、可溶性の不純物(例えば、HCP)および不溶性の不純物(例えば、粒状物)の両方を同時に除去する。
【0320】
モノクローナル抗体MAb04の細胞培養物に対し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを行い、本方法の次の工程に適した溶液状態を変えるために、1.0Mトリス塩基を滴下し、溶出プールのpHを4.8から7.5に調整する。しかし、溶液のpHを上げると、濁度が上がり、この場合には、28.7NTUであると測定される。この溶液は、以下、MAb04プロテインA溶出物と呼ぶ。
【0321】
直径が5/8インチ、厚みが5mmの活性炭−セルロース媒体のシートの円板部分を切断し、注意深く、直径が15mmのOmnifit(登録商標)Chromatography Columns(SKU:006BCC−25−15−AF.Diba Industries.Inc.、Danbury、CT06810 USA)にのせ、カラム容積0.89mLを得る。カラムに、25mMトリス(pH7)を流す。約40mLの濁ったMAb04プロテインA溶出物を流速0.20mL/分でカラムに流し、滞留時間4.5分を得る。4つの10mLのフラクションを集める。それぞれの個々のフラクションと、すべての4つのフラクションで構成される合わせたプールについて、濁度を評価し、HCPおよびMAbの濃度を分析する。Cygnus Technologies、Southport.NC.USAから市販されるカタログ番号F550のELISAキットを用い、キット製造業者のプロトコルに従ってHCP分析を行う。Poros(登録商標)A Protein A分析カラムを取り付けたAgilent HPLCシステムを用い、MAb濃度を測定する。結果を表Vにまとめている。
【0322】
この結果は、活性炭が、予想できないことに、プロテインA溶出物からの不溶性不純物(即ち、粒状物質)および可溶性不純物(即ち、HCP)の両方の同時除去に有効であることを示す。プロテインA溶出物の濁度は、28.7NTUから9.9NTUに低下し、一方、HCPの濃度は、758ppmから104ppmまで低下する。
【0323】
この結果は、活性炭が、セルロース媒体に充填されたとき、可溶性不純物および不溶性不純物の両方を除去するために使用することができることを示す。
【0324】
【表5】
【0325】
[実施例8]
活性炭によって除去される不純物に対する滞留時間の効果
この代表的な実験では、活性炭を連続方法で使用するとき、本明細書で記載するように、連続的な様式で使用しないときと比較して、不純物を大きく除去することを示す。特に、活性炭を連続方法で使用するとき、本明細書で記載するように、通常は、上流のプロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程と、下流のアニオン交換クロマトグラフィー媒体とを流体連結し、活性炭を単独操作で別個に使用したときと比較して、ゆっくりとした(即ち、長い滞留時間を有する。)流速でサンプルを活性炭に流す。
【0326】
この実施例では、プロテインAによって精製されたMAb04溶出物に、さらに、活性炭(AC)およびアニオン交換クロマトグラフィー膜デバイス(例えば、ChromaSorb(商標)デバイス)を直列の構造で使用し、4種類の異なる流速でフロースルー精製工程を行う。供給物の抗体濃度は、7.5g/Lであると決定され、HCP濃度は、296ppmであると決定される。実験をpH7.0で行う。Nuchar HDグレードの活性炭をMead West Vacoから得る。ガラスOmnifitカラムに、床容積が0.8mLになるように充填する。膜容積が0.08mLのアニオン交換クロマトグラフィーデバイスを直列でACカラムに接続する。ACでの滞留時間(RT)が1分、2分、4分または10分になるように、流速を選択する。ACおよびアニオン交換クロマトグラフィーデバイスでのMAb保持量は、それぞれ、4回の異なる実施について、0.5kg/Lおよび5kg/Lで一定に維持される(即ち、上述の4つの異なる滞留時間を有する。)。
【0327】
アニオン交換クロマトグラフィーデバイスの通過から得られるサンプルを集め、MAb濃度およびHCP濃度を分析する。上述のACで4種類の異なる滞留時間で、アニオン交換クロマトグラフィーデバイスでのMAb保持量の関数としてのHCPの通過を
図14に示す。
【0328】
図14に示すように、ACで流速をゆっくりにする(即ち、滞留時間を長くする。)と、同じMAb保持量で良好な純度が得られる。または、小さな容積のACと、ゆっくりとした流速でのアニオン交換クロマトグラフィーデバイスで、同じ純度を達成することができる。例えば、約1ppmのHCPの目標純度は、アニオン交換クロマトグラフィーデバイスで、2kg/Lの保持量(およびACで0.2kg/L)を用い、1分の滞留時間で操作し、達成することができる。特に、アニオン交換クロマトグラフィーデバイスで、10分の長い滞留時間(即ち、ゆっくりとした流速)と、5kg/Lの顕著に高い保持量(およびACで0.5kg/L)で操作しつつ、同じ純度を達成することができる。この知見は、流速を小さくしたときに同じ純度を達成するために、消費可能な精製材料を少なく用いることに、潜在的な経済的利点を強調する。
【0329】
[実施例9]
フロースルー精製処理の工程で調整槽を用いる利点
この代表的な実験では、本明細書に記載するように、フロースルー精製処理工程で調整槽を用いる1つ以上の利点を示す。
【0330】
典型的には、カチオン交換フロースルークロマトグラフィーは、サンプルのpHを約5にすることが必要である。従って、フロースルー精製を行うとき、アニオン交換クロマトグラフィー工程からカチオン交換クロマトグラフィー工程へと流れるため、サンプルのpHは、ほぼ中性のpHから約5.0のpHに変えなければならない。
【0331】
ライン内スタティックミキサを用いることによってpHの変化を達成することができるが、この実施例は、調整槽をさらに使用することが有利であることを示す。従って、サンプルの流れは、以下のとおりである。アニオン交換クロマトグラフィー工程からライン内スタティックミキサ、調整槽からカチオン交換クロマトグラフィー工程。
【0332】
アニオン交換フロースルークロマトグラフィー工程からカチオン交換フロースルークロマトグラフィー工程の間でpH条件を変えるためにライン内スタティックミキサのみを使用する場合、pHプローブを用いて測定すると、急な増加(即ち、上昇)が見られることが観察される。サンプルの組成と、pHを変えるために加えられるバッファーの組成の化学的な差に起因してpHの上昇が観察されることが理解される。このpH上昇は、最適な結果のために必要とされるよりも大きなpHで、所定の滞留時間サンプルが処理されるため、望ましくない。この実施例は、
図15に示されるように、ライン内スタティックミキサの後、サンプルをカチオン交換クロマトグラフィー工程と接触させる前に、このpH上昇を、調整槽の使用によって低下するか、またはなくすことができることを示す。
【0333】
図15に示されるように、調整槽を使用しないと、pH約6.5のpH上昇が観察される。しかし、調整槽を使用すると、本明細書に記載するように、pHは、5.3より小さな値まで下がり、この値は、後のカチオン交換クロマトグラフィー工程に望ましいpHに近い。
【0334】
[実施例10]
連続的な様式でフロースルー精製処理工程を行うことが、生成物の純度に悪影響を与えない
この代表的な実験では、連続的な様式でフロースルー精製方法を行うことが、生成物の純度に悪影響を与えないことを示す。言い換えると、連続的な様式で行うフロースルー精製処理工程からの生成物の純度と、個々の工程を別個に行う場合とを比較することによって、生成物の純度に悪影響がないことを示す。
【0335】
この実施例は、
活性炭とアニオン交換クロマトグラフィーデバイス(例えば、ChromaSorb(商標))を、ウイルスプレフィルタおよびウイルス濾過デバイスとして作用するカチオン交換クロマトグラフィーデバイスに直列で接続し、全体的なフロースルー精製処理工程を連続的に操作することによって、活性炭とアニオン交換クロマトグラフィーデバイスをカチオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイスと切り離したときと比較して、同様の能力のウイルスフィルタが得られることを示す。
【0336】
この実験での実験の設定を
図16に示す。
図16のオプション1は、連続方法を指し、調整槽(アニオン交換クロマトグラフィーデバイスの後に存在する。)からのサンプルを、カチオン交換クロマトグラフィーデバイス、その後、ウイルス濾過デバイスに直接供給する。
図16のオプション2は、バッチ方法を指し、活性炭およびアニオン交換クロマトグラフィーデバイスの後にサンプルをプールし、所定の経過時間の後、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイスを通して処理する。
【0337】
この実験では、開始時のサンプルは、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー溶出物であり、HCP濃度は250ppmである。活性炭およびアニオン交換クロマトグラフィーデバイスの後に、HCPレベルが約4ppmまで下がることが観察される。
【0338】
バッチ方法(オプション2)の場合、ウイルス濾過の後の最終的なHCP濃度は、ほぼ1ppmであると観察され、一方、連続方法(オプション1)の場合、ウイルス濾過の後のHCP濃度は、約2ppmであり、両方とも、当分野で既知の方法および本明細書に記載される方法(例えば、実施例7に記載のアッセイ)を用いて定量可能な下端に近い。
【0339】
この結果は、すべての工程を連続様式でフロースルー精製処理工程で行うことによって、1つ以上の工程を単独の操作として行うときに匹敵する生成物純度が得られることを暗示する。
【0340】
さらに、2つの方法の圧力プロフィールも、
図17に示すように非常に似ていることに留意されたい。
【0341】
[実施例11]
ウイルス濾過膜の性能に対する滞留時間の効果
この代表的な実験では、ウイルス濾過の性能に対する滞留時間の効果を観察する。フロースルー精製処理工程中、カチオン交換クロマトグラフィー工程およびウイルス濾過工程を通る流速を遅くすると、ウイルスフィルタの高いスループットが得られることが観察される。
【0342】
米国特許出願第13/783,941(内部参照番号MCA−1423)に記載されるように、膜面積が3.1cm
2、膜容積が0.12mLの3層カチオン交換クロマトグラフィーデバイスを、膜面積が3.1cm
2のウイルス濾過デバイスと直列で接続する。20mMの酢酸ナトリウム(pH5.0バッファー)中の約3mg/mLのポリクローナルヒトIgG(Seracare)を、この2つの接続したデバイスで処理する。この実験を、100LMHおよび200LMHの2つの別個の流速で行う。0.22μmの滅菌フィルタを、カチオン交換クロマトグラフィーデバイスとウイルス濾過デバイスとの間に配置する。
【0343】
異なる流速でアセンブリを通る圧力を測定するために、圧力センサを使用する。通常は、約50psiの圧力が、ウイルス濾過膜の汚れまたは詰まりの指標である。
図18に示すように、この実験を低い流速(即ち、100LMH)で行う場合、高い流速(即ち、200LMH)でサンプルを処理するときと比較して、より多くのサンプル容積をウイルス濾過膜に通して処理することができる(即ち、高いスループット)。これは、カチオン交換クロマトグラフィーデバイス中でサンプルの滞留時間が長いことに起因していると思われ、高分子量IgG凝集物の結合が向上し、これによって、ウイルスフィルタの早い時期の詰まりを防ぎ得る。
【0344】
[実施例12]
AMPS/DMAMグラフト接合コポリマーで改質された強カチオン交換(CEX)樹脂を用いた、MAb供給物からの種々の滞留時間での凝集物の除去
250mLのガラス瓶に、Toyopearl HW75−Fクロマトグラフィー樹脂の64mlの濡れたケーキを加えた。次に、115gの5M水酸化ナトリウム、18.75gの硫酸ナトリウム、4mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)を、樹脂の入った瓶に加えた。次いで、中程度の速度で回転させつつ、この瓶をハイブリダイザーに50℃で一晩入れた。次の日に、焼結ガラスフィルタアセンブリ(EMD Millipore Corporation.Billerica、MA)に、樹脂をフィルタから排出させ、濡れたケーキをメタノールで洗浄し、次いで、脱イオン水ですすいだ。ガラスバイアルに、AGE活性化樹脂の10mLの濡れたケーキを加えた。このガラスバイアルに、0.2gの過硫酸アンモニウム、0.3gのAMPS、1.2gのDMAMおよび48gの脱イオン水を加え、このバイアルを16時間で60℃まで加熱した。次の日に、焼結ガラスフィルタアセンブリ(EMD Millipore Corporation.Billerica、MA)に、樹脂をフィルタから排出させ、濡れたケーキを、メタノールと脱イオン水の溶液で洗浄し、この樹脂をロット番号1712とラベル付けした。
【0345】
ロット番号1712とラベル付けした樹脂を、内径6.6mmのOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに、床の高さが3cmになるように充填し、約1mLの充填された樹脂床が得られた。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を取り付け、フロースルークロマトグラフィーのためにこれらのカラムをふるい分けするのに適したバッファーを用い、平衡状態にした。樹脂サンプルを含むクロマトグラフィーカラムを、平衡バッファーを含むクロマトグラフィーシステムに入れた。原料は、ProSep(登録商標)Ultra Plus Affinity Chromatography Mediaを用いて精製され、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(MAbS)原料であった。プロテインAプールの最終濃度を、5.5%の凝集した生成物を含む4mg/mLに希釈し、導電性は約3.2mS/cmであった。樹脂を、滞留時間1分、3分または6分、保持密度144mg/mLになるように入れた。3分の滞留時間でのストリップピークフラクションは、95.6%の凝集物を含んでおり、凝集した種の選択性が高レベルであることを示す。この結果を以下の表VIに示す。
【0346】
表VIは、pH5.0、滞留時間6分、3分または1分で、MAb5を含むロット番号1712について、モノマーおよび凝集物の保持を示す。表VIに示すように、平均で、モノマー種を、試験したすべての滞留時間で、凝集した種と比較して、比較的初期に、供給濃度に近い濃度で集めることができ、選択性は、流速に比較的感受性ではないことを示唆する。
【0347】
【表6】
【0348】
図19に示されるように、生成物の大部分は、フロースルーで集められ、タンパク質のUV痕跡量が比較的すばやく通過することによって示される。ストリップピークの大きさは、一般的に、条件および保持される合計質量に基づいて変わるが、保持材料では凝集物がたった5.5%であるのと比較して、凝集した種が95.6%と比較的豊富に含む。
【0349】
[実施例13]
AMPS/DMAMグラフト接合コポリマーで改質された翼状部を有するカチオン交換(CEX)繊維を用いた、MAb供給物からの凝集物の除去
この代表的な実験では、翼状部を有するカチオン交換繊維を固体支持体として使用した。
【0350】
1Lのガラス瓶に、20gの多葉状または翼状の乾燥ナイロン繊維を、400gの4M水酸化ナトリウム、24gの硫酸ナトリウムおよび160mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)と合わせた。次いで、中程度の速度で回転させつつ、この瓶をハイブリダイザーに50℃で一晩入れた。次の日に、焼結ガラスフィルタアセンブリで繊維を濾過し、次いで、繊維をメタノールで洗浄し、Milli−Q水ですすいだ。後の日に、繊維を水で洗浄し、次いでメタノールで洗浄し、その後に水で再び洗浄し、乾燥ケーキになるまで吸引し、減圧乾燥器で、50度で1日間乾燥させた。得られたサンプルにサンプル番号1635とラベル付けした。3つの別個のガラスバイアルに、2グラムのサンプル番号1635の乾燥ケーキ、AGE活性炭を秤量し、グラフト接合によるさらなる改変のためにガラスバイアルに加えた。このガラスバイアルに、過硫酸アンモニウム、AMPS、DMAMおよび脱イオン水を表VIIに特定した量で加え、連続的に回転させつつ、このバイアルを16時間で60℃まで加熱した。次の日に、焼結ガラスフィルタアセンブリで繊維サンプルを濾過し、濡れたケーキを脱イオン水溶液で洗浄した。繊維を含むバイアルに、ロット番号1635−1、1635−2および1635−5とラベル付けした。次いで、ロット番号1635−5について、小イオン能について滴定し、約28μmol/mLであることがわかった。次いで、サンプル番号1635−1および番号1635−2も、28μmol/mL未満の小イオン能を有することが推定された。
【0351】
【表7】
【0352】
得られた改質された翼状の繊維ロット番号1635−1、番号1635−2、番号1635−5を、内径が6.6mm、床の高さが3cmのOmnifit(登録商標)クロマトグラフィーカラムに充填し、約1mLの充填した繊維床を得た。AKTA Explorer 100(クロマトグラフィーシステム)を取り付け、フロースルークロマトグラフィーのためにこれらのカラムをふるい分けするのに適したバッファーを用い、平衡状態にした。翼状の繊維サンプルを含むクロマトグラフィーカラムを、平衡バッファーを含むクロマトグラフィーシステムに入れた。原料は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製され、2Mトリス塩基でpH5.0に調整したIgG1(MAb5)原料であった。プロテインAプールの最終濃度は、4mg/mLであり、5.5%の凝集した生成物またはHMW生成物を含んでいた。これは、実施例12で使用した原料と同じである。ロット番号1635−1および1635−2の繊維を充填したカラムに、質量保持量64mg/mLを入れ、繊維ロット番号1635−5を充填したカラムに、質量保持量80mg/mLを入れた。結果を以下のVIIIに示す。
【0353】
【表8】
【0354】
[実施例14]
プロテインA溶出プールの純度に対する、刺激応答性ポリマーの浄化と、浄化した細胞培養物へのNaClの添加を合わせた効果
この代表的な実験では、MAb04細胞培養液を、デプス濾過または沈殿工程を用い、具体的には、刺激応答性ポリマー(即ち、改質されたポリアリルアミン)を用いて浄化する。得られた浄化された溶液を、ProSep(登録商標)Ultra Plus樹脂を含むカラムに入れるか、または、カラムに入れる前に、最終濃度が0.5M NaClになるようにNaClを加える。NaClを加えない状態で、保持前にカラムを1×TBSで平衡化し、一方、NaClを加えた状態で、平衡バッファーは、1×TBS、0.5M NaClである。すべてのカラムに、樹脂1リットルあたり、約30gのMAb04を入れ、次いで、2CVの平衡バッファーで洗浄し、次いで、25mMのトリス(pH7.0)を含む3CVで洗浄する。結合したMAb04を、25mMグリシンHCl、25mM酢酸(pH2.5)溶液で溶出させ、次いで、適切な平衡バッファーで再平衡化させる前に、5CVの0.15Mリン酸(pH1.6)で洗浄する。
【0355】
図20は、溶出および洗浄ピークの重なり合いを示し、刺激応答性ポリマーで処理した細胞培養物から生成した溶出ピークは、鋭敏なテールと低下した洗浄ピークを示す。NaCl存在下、刺激応答性ポリマーで処理した細胞培養物とともに保持する間、洗浄ピークがさらに低下し、これによって、樹脂の上に強く結合した不純物のレベルが低くなることを示す。
【0356】
[実施例15]
中間洗浄工程中の異なるNaCl濃度の効果と、保持溶液中に存在する0.5M NaClの効果との比較
この代表的な実験では、プロテインAクロマトグラフィーによって達成されたモノクローナル抗体(MAb)溶出プールの純度に対する中間洗浄工程中の異なるNaCl濃度の影響を、プロテインAクロマトグラフィーカラムに入れたサンプル中の0.5M NaClの影響と直接比較する。
【0357】
ProSep(登録商標)Ultra Plus Protein A媒体の5mLカラムをプレ充填したカラムとして得る。すべてのクロマトグラフィーの操作を、すべての工程について、流速1.7mL/分(約3分の滞留時間)でAKTA Explorerクロマトグラフィーシステムを用いて行う。すべての実験で同じカラムを使用する。第1のセットの実験では、NaClが中間洗浄に存在し、クロマトグラフィー工程は、1×TBSを用い、5カラム容積の平衡状態を使用し、その後、約0.57g/Lの濃度で標的タンパク質(MAb05と呼ばれる。)を含む浄化された細胞培養物300mLを保持させた。細胞培養物を保持させた後、カラムに10mLの平衡バッファーを流し、結合していない生成物、不純物および他の細胞培養成分を除去する。次いで、カラムを、0.5M NaClも含む5カラム容積の25mMのトリス(pH7.0)で洗浄する。その後、カラムを、NaClを含まない5カラム容積の25mMのトリス(pH7.0)で洗浄する。生成物のタンパク質(MAb05)を、25mM酢酸および25mMグリシンHCl(pH2.5)を含むバッファーを用い、5カラム容積でカラムから溶出させる。その後、カラムを5カラム容積の0.15Mリン酸で洗浄し、その後、平衡バッファーを用いた10カラム容積の再生工程を行う。平衡操作を行い、第1の洗浄中のNaCl濃度は0.15から2Mの範囲で変化する。
【0358】
同じカラムを用い、プロトコルを以下のように変え、次の実験を行う。保持される細胞培養物サンプルを、浄化された細胞培養物中の最終的なNaCl濃度が0.5M NaClになるような容積の5M NaClと混合する。平衡バッファーを、1×TBS溶液中に0.5M NaClを含むように変える。標的タンパク質(MAb05)の一定の質量保持量を維持するため、カラムに、0.5M NaClが存在する333mLの浄化された細胞培養物を保持させる。すでに記載したように中間洗浄を行い、合計で10カラム容積の25mMのトリス(pH7.0)を全体で使用する。溶出および洗浄の工程およびバッファーは、上述のものと同一のままである。表IXは、それぞれの実験で行われる工程の簡略化したまとめを与え、潜在的な変化がなされたそれぞれの工程で使用されるバッファーおよび容積を特定する。
【0359】
【表9】
【0360】
保持培養物および溶出プールのサンプルについて、MAb05濃度およびHCP濃度を測定する。
図21は、中間洗浄または保持工程で使用されるNaCl濃度の関数としてのHCP LRVを示す。この図は、種々の濃度で中間洗浄工程にNaClを加えたときと比較し、保持相中に平衡バッファーおよび浄化された細胞培養物中に0.5M NaClが存在する場合に、改良されたレベルのHCP除去(精製)を示す。この結果は、さらに、MAb05 1グラムあたり、HCPのng数を基準としてパーツパーミリオン(ppm)での測定されたHCP濃度を与え、対応する棒の中に数として示される。さらに、
図22は、保持される質量と比較したとき、溶出プールに回収されたMAb05の%を示し、中間洗浄工程中に2M NaClが存在することが明らかに観察され、生成物の顕著な消失が実現している。
【0361】
[実施例16]
添加剤が含まれる間、プロテインA精製工程に基づいて達成される生成物の精製の比較
この代表的な実験では、中間洗浄のみに存在する添加剤を含むプロテインAクロマトグラフィーによって達成される精製と、平衡バッファーおよび保持される細胞培養物サンプル中の添加剤を用いて達成された精製との直接的な比較を行う。
【0362】
ProSep(登録商標)Ultra Plus Protein A媒体の5mLカラムを、プレ充填したカラムとして得る。すべてのクロマトグラフィーの操作を、すべての工程について、流速1.7mL/分(約3分の滞留時間)でAkta Avantクロマトグラフィーシステムを用いて行う。すべての実験で同じカラムを使用する。すべての洗浄実験について、上の実施例15に記載される方法を、NaClを所定の濃度で特定の添加剤と置き換えて適用する。使用する添加剤および濃度を表Xに与える。
【0363】
【表10】
【0364】
図23は、第1の中間洗浄工程または平衡バッファーおよび細胞培養物サンプルに存在する状態で、使用されるそれぞれの添加剤について生成物溶出プールに残るHCPの濃度を示す。異なる塩(NaCl、硫酸アンモニウムまたはTMAC)を加えると、保持相に塩が存在するとき、最も低いHCPレベルを示す。
【0365】
図24は、使用する添加剤およびこの添加剤を使用する間の精製工程の関数としてのHCPのLRV(保持するHCP濃度に対する。)を示す。この図も、HCP濃度を小さくすると(即ち、HCP LRVを大きくすると)、塩が最も効果的であることを示す。示されているように、保持溶液中の添加剤の存在は、中間洗浄にのみ同じ添加剤が存在するのと比較したとき、改良された純度クリアランスを示す。表XIおよびXIIは、
図23および24に示す数値結果をまとめており、表XIは、添加剤が保持工程に存在するときのデータを示し、表XIIは、中間洗浄の間にのみ添加剤が存在するときのデータを示す。
【0366】
【表11】
【0367】
【表12】
【0368】
図25は、添加剤が含まれる間に、添加剤の属性とクロマトグラフィー工程に依存した、相対的な溶出プールの容積の例を示す。この図は、コントロールの溶出プールの容積(即ち、添加剤が存在しない。)に対する添加剤の溶出プールの容積の比率が100%より大きい場合、添加剤の溶出プールの容積が、コントロールの溶出容積を超えることを示す。逆に、100%より小さい値は、コントロールの溶出プールの容積と比較して、添加剤の溶出プールの容積が小さいことを示す。この図は、さらに、溶出プールの容積に対する添加剤の影響を示す。100%未満の値が好ましい。
図23、24および25に与えられる情報と、表XIおよびXIIの数値データとを合わせると、最も良い実施条件の順序は、保持でのTMAC>洗浄でのTMAC>保持での硫酸アンモニウム>保持でのNaCl>洗浄での硫酸アンモニウムである。ここに与えられる順序は、1番の重要性についてHCP LRVに基づき、その後に、生成物の回収が続く。ppm単位でのHCP濃度が1番の重要性を有する場合、この順序は、わずかに変わり、保持でのTMAC>洗浄でのTMAC>保持でのNaCl>保持での硫酸アンモニウム>洗浄での硫酸アンモニウムである。
【0369】
本明細書は、本明細書に参考として組み込まれる本明細書の中に引用される参考文献の教示という観点で、ほとんど十分に理解される。本明細書の中の実施形態は、本発明の実施形態の説明を与え、この範囲を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が、本発明に包含されることを簡単に理解する。すべての刊行物および発明は、全体的に参考として組み込まれる。参考として組み込まれる物質が、本明細書と矛盾するか、または一致しない程度まで、本明細書は、任意のこのような材料に優先する。本明細書の任意の参考文献の引用は、このような参考文献が本発明の従来技術であるとの承認ではない。
【0370】
特に指示のない限り、特許請求の範囲を含む明細書に使用される成分、細胞培養物、処理条件などの量をあらわすすべての数は、すべての場合に「約」という用語によって修正されていると理解されるべきである。従って、特に矛盾することが示されていない限り、数値パラメータは概算値であり、本発明によって得られることが求められる望ましい特性に基づいて変わってもよい。特に指示のない限り、一連の要素の前にある「少なくとも」という用語は、この一連のそれぞれの要素を指すことが理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を理解するか、または、通常の実験を超えない実験によって確認することができるだろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0371】
当業者には明らかなように、本発明の多くの改変および変形を、この精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書に記載する具体的な実施形態は、単なる例によって与えられ、いかなる様式にも限定することを意味していない。明細書および例は、単なる例と考えられ、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。