特表2015-522049(P2015-522049A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-522049(P2015-522049A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】ジクロフェナク製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20150707BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20150707BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150707BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150707BHJP
【FI】
   A61K31/196
   A61K9/06
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K47/02
   A61K47/14
   A61K47/18
   A61K45/00
   A61P29/00
   A61P19/00
   A61P21/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P15/08
   A61P17/02
   A61P25/06
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P3/10
   A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-520915(P2015-520915)
(86)(22)【出願日】2013年7月4日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2013064123
(87)【国際公開番号】WO2014009241
(87)【国際公開日】20140116
(31)【優先権主張番号】12176115.9
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500297535
【氏名又は名称】フェリング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グルニエ,アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】カラーラ,ダリオ,エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC05
4C076DD24S
4C076DD37A
4C076DD38A
4C076DD39A
4C076DD45S
4C076DD49S
4C076EE32P
4C076FF31
4C076FF32
4C084AA19
4C084MA56
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA081
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZB351
4C084ZC351
4C084ZC751
4C206AA02
4C206AA10
4C206FA44
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA76
4C206MA83
4C206NA11
4C206NA12
4C206ZA08
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZB26
4C206ZB35
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、改良されたジクロフェナクゲル製剤を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも3重量%のジクロフェナク、
−C〜Cアルカノール、
−多価アルコール、
−ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、および
−少なくとも3重量%の脂肪族アルコール
を含む経皮または経粘膜製剤。
【請求項2】
ゲル化剤、酸化防止剤、および溶媒のうち少なくとも1種、またはこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1に記載の経皮または経粘膜製剤。
【請求項3】
前記アルカノールが約5〜60重量%の量で存在し、前記多価アルコールが約1〜30重量%の量で存在し、前記ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルが約0.2〜25重量%の量で存在し、前記脂肪族アルコールが約3〜5重量%の量で存在し、前記ゲル化剤が約0.05〜5重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が約0.025〜2.0重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記アルカノールが、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタン−1−オールおよびブタン−2−オールからなる群の1つ以上から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記アルカノールがエタノールである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記エタノールが約45.0重量%の量で存在する、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールからなる群の1つ以上から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記多価アルコールがプロピレングリコールである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記多価アルコールが、約20.0重量%の量で存在するプロピレングリコールである、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルとして、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルの一方または両方が存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記ジエチレングリコールモノエチルエーテルが5.0重量%の量で存在する、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記脂肪族アルコールが、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコールからなる群の1つ以上から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記脂肪族アルコールがミリスチルアルコールである、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記ゲル化剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項2に記載の製剤。
【請求項15】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが1.50重量%の量で存在する、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記酸化防止剤が、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、エデト酸四ナトリウムまたはこれらの組合せである、請求項2に記載の製剤。
【請求項17】
前記酸化防止剤が約0.025〜0.10重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムである、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記酸化防止剤が、約0.05重量%以下の量の没食子酸プロピルである、請求項16に記載の製剤。
【請求項19】
前記酸化防止剤が約0.05重量%以下の量のエデト酸四ナトリウムである、請求項16に記載の製剤。
【請求項20】
前記酸化防止剤が、約0.025〜0.10重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムおよび約0.05重量%以下の量の没食子酸プロピルである、請求項16に記載の製剤。
【請求項21】
前記酸化防止剤が、約0.025〜0.10重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムおよび約0.05重量%以下の量のエデト酸四ナトリウムである、請求項16に記載の製剤。
【請求項22】
前記溶媒が水である、請求項2に記載の製剤。
【請求項23】
3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび3重量%のミリスチルアルコールを含む、請求項1に記載の経皮または経粘膜製剤。
【請求項24】
3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、3重量%のミリスチルアルコール、1.50重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および水を含む、請求項1に記載の経皮または経粘膜製剤。
【請求項25】
前記製剤が、ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、スプレー剤、エアゾール剤、軟膏剤、乳剤、懸濁剤、リポソーム系、ラッカー剤、貼付剤、包帯、バッカル錠、カシェ剤、舌下錠、坐剤、腟用剤形または閉鎖包帯の形態である、請求項1から24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
前記製剤がゲル剤の形態である、請求項1から25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
前記製剤が、1日に1回から4回の投薬から選択される周期性を有するスケジュールに従って、経皮または経粘膜投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
ジクロフェナクを、これを必要とする哺乳動物に投与する方法であって、前記方法は、哺乳動物の皮膚または粘膜に請求項1から27のいずれか一項に記載の製剤を経皮投与することを含む方法。
【請求項29】
疼痛;腱、靱帯、筋肉および/または関節の外傷後炎症;局在性形態の軟部組織リウマチ;局在性形態の変性リウマチ;炎症性障害;月経困難症;日光への過剰曝露に起因する日光角化症;急性片頭痛;女性乳がん;骨転移に関連する疼痛;悪性リンパ肉芽腫症(ホジキンリンパ腫)による発熱;多剤耐性大腸菌(E. coli);シャイ・ドレーガー症候群;および糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、哺乳動物の皮膚または粘膜に請求項1から27のいずれか一項に記載の製剤を経皮投与することを含む方法。
【請求項30】
前記炎症性障害が変形性関節症である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記製剤が別の治療と組み合わせて投与される、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から27のいずれか一項に記載の製剤を含む少なくとも1つの容器およびその使用説明書を含むキット。
【請求項33】
前記容器が、計量した所定量の前記製剤を調剤するためのものである、請求項32に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮ジクロフェナク製剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚または粘膜を通した活性薬の送達は、簡便、無痛、非侵襲的であり、「初回通過効果」に関連する問題を回避する。かかる経皮的または局所的な薬物送達は、一般に、低分子量薬物、および角質層に浸透することが可能な特定の親油性/親水性バランスを備えた薬物に限定される。
【0003】
経皮薬物送達系は、皮膚のバリア性の化学修飾を可能にして、有効かつ効率的に薬物を浸透させる。経皮送達系の既知の欠点は、たとえば、浸透に必要な時間が長く、投与計画が頻繁であり、十分な治療量の活性薬を経皮送達するために必要な経皮組成物の容積が大きいことである。
【0004】
ジクロフェナク(2−(2,6−ジクロルアニリノ)フェニル酢酸)は、炎症を低減するために使用され、鎮痛薬として疼痛を低減するために使用される、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。これは、ナトリウム、カリウム、エポラミンまたはジエチルアミン塩の形態で、多種の剤形(経口錠剤、経口シロップ剤、局所用ゲル剤、パップ剤、点眼剤、坐剤など)で利用可能である。
【0005】
周知の経皮ジクロフェナク製剤の一例には、1%のジクロフェナクナトリウムを含むボルタレン(登録商標)ゲル1%がある。ボルタレン(登録商標)は、米国では、膝および手など、局所的な治療が適用できる関節の、変形性関節症による疼痛の軽減用に指定されている。4g以下のボルタレン(登録商標)ゲルを、1日4回下肢(膝、足首および足を含む)に塗布することができ、下肢のいずれの関節にも1日16g以下のボルタレン(登録商標)ゲル1%が塗布されるようにする。2g以下のボルタレン(登録商標)Gel1%を1日4回上肢(肘、手首および手を含む)にも塗布することができ、上肢のいずれの関節にも1日8g以下のボルタレン(登録商標)ゲル1%が塗布されるようにする。全体で、ボルタレン(登録商標)ゲル1%の合計用量は、すべての患部関節にわたって1日32gを超えてはならない。患者の立場からすれば、合計量(1日32g以下)も塗布の頻度(1日4回)も満足のいくものではない。
【0006】
US7,335,379は、アルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、および脂肪族アルコール含量が2%以下の脂肪族アルコールを含有する、ジクロフェナクなどの活性薬の、経皮または経粘膜投与用製剤を開示している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、皮膚を通したジクロフェナク送達が改良された、改良されたジクロフェナク製剤を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、投与頻度の低減を可能にする改良されたジクロフェナク製剤を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、局所性および全身性の双方の状態の治療において使用するための改良されたジクロフェナク製剤を提供することである。
【0010】
本発明は、
−少なくとも3重量%のジクロフェナク、
−C〜Cアルカノール、
−多価アルコール、および
−ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ならびに
−少なくとも3重量%の脂肪族アルコール
を含む経皮または経粘膜製剤を提供する。
【0011】
本発明は、3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび3重量%のミリスチルアルコールを含む、経皮または経粘膜製剤をさらに提供する。
【0012】
本発明は、3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、3重量%のミリスチルアルコール、1.50重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および水を含む、経皮または経粘膜製剤をさらに提供する。
【0013】
本発明は、ジクロフェナクを、これを必要とする哺乳動物に投与する方法であって、哺乳動物の皮膚または粘膜に本発明の製剤を経皮投与することを含む方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、疼痛;腱、靱帯、筋肉および/または関節の外傷後炎症;局在性形態の軟部組織リウマチ;局在性形態の変性リウマチ;炎症性障害;月経困難症;日光への過剰曝露に起因する日光角化症;急性片頭痛;女性乳がん;骨転移に関連する疼痛;悪性リンパ肉芽腫症(ホジキンリンパ腫)による発熱;多剤耐性大腸菌(E. coli);シャイ・ドレーガー症候群;および糖尿病を治療する方法であって、哺乳動物の皮膚または粘膜に本発明の製剤を経皮投与することを含む方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、本発明の製剤を含む少なくとも1つの容器およびその使用説明書を含むキットをさらに提供する。
【0016】
本発明を理解し、それをいかに実現させることができるかを見極めるために、ここで非限定的な例のみを用いて、添付の図面を参照しながら実施形態を説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のジクロフェナクゲル製剤の調製のフローチャートを示す図である。
図2】ボルタレン(登録商標)ならびにジクロフェナク製剤AおよびBの絶対浸透プロファイル(単位μg/cm)を示す図である(実施例2を参照)。
図3】ボルタレン(登録商標)ならびにジクロフェナク製剤AおよびBの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例2を参照)。
図4】ジクロフェナク製剤C、DおよびEの絶対浸透プロファイル(単位μg/cm)を示す図である(実施例3を参照)。
図5】ジクロフェナク製剤C、DおよびEの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例3を参照)。
図6】ジクロフェナク製剤F、GおよびHの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例4を参照)。
図7】ジクロフェナク製剤I、JおよびKの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例5を参照)。
図8】ジクロフェナク製剤L、MおよびNの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例6を参照)。
図9】ジクロフェナク製剤O、PおよびQの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例7を参照)。
図10】ジクロフェナク製剤R、SおよびTの相対浸透プロファイル(単位%)を示す図である(実施例8を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、
−少なくとも3重量%のジクロフェナク、
−C〜Cアルカノール、
−多価アルコール、および
−ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ならびに
−少なくとも3重量%の脂肪族アルコール
を含む経皮または経粘膜製剤を提供する。
【0019】
一実施形態において、経皮または経粘膜製剤は、ゲル化剤、酸化防止剤、および溶媒のうち少なくとも1種、またはこれらの任意の組合せをさらに含む。
【0020】
なお、本発明の製剤中に存在するジクロフェナク以外の成分の種類および量の選択はいくつかの要因に基づいており、その要因には、とりわけ、本発明の製剤のジクロフェナクが皮膚浸透するための電位、製造の容易性、本発明の製剤の種々の成分間の適合性、および本発明の製剤の安定性が含まれる。さらには、本明細書において定義する浸透増強系の成分は、皮膚表面または粘膜表面を介した構成要素ジクロフェナクの浸透を増強するのに十分な量で存在する。
【0021】
特に明記しない限り、「含む」という用語は、本願の内容において、明示的に述べられた構成要素に加えて、さらなる構成要素が任意に存在してもよいことを示すために使用される。しかし、「含む」という用語が、明示的に述べられたもの以外には構成要素が存在しないという可能性を包含することが、本発明の特定の実施形態として企図される。換言すれば、この特定の実施形態の目的においては、「含む」という用語は「からなる」の意味を有するものと理解されることになる。
【0022】
以下の詳細な説明は、本発明の個々の特徴の特定のかつ/または好ましい変形を開示するものである。本発明はさらに、本発明の2つ以上の特徴について記載された2つ以上の特定のかつ/または好ましい変形を組み合わせることによって得られる実施形態を、本発明の特に好ましい実施形態として包含するものと企図するものである。
【0023】
特に明記しない限り、本願における相対量の表示はすべて、重量/重量ベースでなされている。総称で記載された成分の相対量の表示は、前記総称に包含されるすべての特定の変形体または構成要素の合計量を指すものである。総称で定義されたある成分が、ある相対量または量の範囲で存在すると明記されている場合、かつ本発明の実施形態が、この成分を、その総称に包含される特定の変形体または構成要素を含むものとさらに特徴づけている場合、その総称に包含される他の変形体または構成要素は、その総称に包含されるすべての成分の合計相対量が、明記された相対量を超えないような量でのみ、存在することができるものとする。かかる場合、その総称に包含される他の変形体または構成要素は全く存在しないのが好ましい。
【0024】
一般に、「x重量%」の原料を含む製剤について言及する場合、かかる製剤は、前記原料の±10%の重量%での薬学的に許容される差異を許容するものと理解されるべきである。たとえば、「3重量%のジクロフェナク」を含む製剤について言及する場合、かかる製剤は、ジクロフェナクの±10%の重量%での薬学的に許容される差異、すなわち2.7重量%〜3.3重量%を許容するものと理解されるべきである。
【0025】
「経皮製剤」または「経粘膜製剤」という用語は、本発明の製剤を投与した哺乳動物に、皮膚または粘膜組織(または粘膜)を通してジクロフェナクを浸透させることによってジクロフェナクを送達することが可能な前記製剤を包含するものと理解されるべきであり、前記製剤は局所的に塗布され、標的組織(たとえば関節の滑液)中に浸透し、最終的に前記哺乳動物の血流中に入る。
【0026】
「経皮送達」とは、本明細書で使用する場合、経皮(transdermal)投与、経皮(percutaneous)投与および経粘膜投与、すなわち皮膚または粘膜組織を通して血流中へ薬物を通過/浸透させることによる送達を包含するものと理解されるべきである。
【0027】
「皮膚」または「皮膚組織」もしくは「皮膚膜」という用語は、本明細書で交換可能に使用する場合、任意の皮膚の膜(皮膚膜の表皮または真皮層のいずれも含む)を包含し、有毛または無毛の皮膚の膜をいずれも含むものと理解されるべきである。
【0028】
「粘膜(mucosa)」または「粘膜組織」もしくは「粘膜(mucosal membrane)」という用語は、本明細書で交換可能に使用する場合、嚥下せずに浸透することができる、哺乳動物の解剖学的な任意の湿性の膜または表面を包含するものと理解されるべきであり、たとえば口、頬側、耳介、腟、直腸、鼻または眼の各表面などがある。
【0029】
「局所的な」または「局所的に」という用語は、本明細書では、本発明の製剤が、皮膚膜または粘膜のいずれの部分も含む哺乳動物の表面部位に直接接触することを指すものとして使用される。
【0030】
「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用する場合、いずれの哺乳動物も包含するものと理解されるべきである。一実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0031】
ジクロフェナクについて言及する場合、2−(2,6−ジクロルアニリノ)フェニル酢酸(CAS登録番号15307−86−5)という名称のNSAID、そのナトリウム塩、そのカリウム塩、そのエポラミン塩、そのジエチルアミン塩、および/または他の任意の薬学的に許容されるこれらの塩のうち任意の1種以上を指すものと理解されるべきである。
【0032】
たとえば、一実施形態において、本発明の経皮または経粘膜製剤は、3重量%のジクロフェナク、C〜Cアルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよび脂肪族アルコールを含む。別の実施形態では、本発明の経皮または経粘膜製剤は、3重量%のジクロフェナク、C〜Cアルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、脂肪族アルコールおよびゲル化剤を含む。さらなる実施形態では、本発明の経皮または経粘膜製剤は、3重量%のジクロフェナク、C〜Cアルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、脂肪族アルコール、ゲル化剤および酸化防止剤を含む。さらに別の実施形態では、本発明の経皮または経粘膜製剤は、3重量%のジクロフェナク、C〜Cアルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、脂肪族アルコール、ゲル化剤、酸化防止剤および溶媒を含む。
【0033】
本発明の製剤は、C〜Cアルカノールを約5〜60重量%(たとえば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60重量%)の量で、多価アルコールを約1〜30重量%(たとえば約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30重量%)の量で、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルを約0.2〜25重量%(たとえば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、15、20、25重量%)の量で、脂肪族アルコールを約3〜5重量%(たとえば3.0、3.5、4.0、4.5、5.0重量%)の量で含むことが想定される。本発明の製剤は、たとえば、ゲル化剤を約0.05〜5重量%(たとえば約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5重量%)の量で、および/または酸化防止剤を約0.025〜0.2重量%(たとえば約0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1%、0.2重量%)の量で、さらに任意に含んでもよい。
【0034】
「浸透増強系」とは、本明細書で使用する場合、C〜Cアルカノール、多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよび脂肪族アルコールを含み、それとともに、本発明の製剤で治療した哺乳動物の皮膚または粘膜を通して前記製剤のジクロフェナクの吸収および/または浸透を質的および/または量的に高める(前記浸透増強系を使用しないジクロフェナクの経皮送達と比較して)ものと理解されるべきである。
【0035】
「C〜Cアルカノール」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒドロキシ基(−OH)で置換された1種以上のC〜Cアルカンを意味するものと理解されるべきである。
【0036】
一実施形態において、本発明の製剤に利用されるアルカノールは、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタン−1−オールおよびブタン−2−オールからなる群から選択される1つ以上である。別の実施形態では、前記アルカノールはエタノールである。さらなる実施形態では、前記アルカノールは、本発明の製剤中に約40.0〜50.0重量%の量で存在するエタノールである。さらなる実施形態では、前記アルカノールは、本発明の製剤中に約45.0重量%の量で存在するエタノールである。
【0037】
一部の実施形態において、アルカノール(たとえばエタノールなど)は、さらに、ジクロフェナクの一次溶媒として本発明の製剤に利用される。アルカノールの量は、少なくとも完全にジクロフェナクを溶解するのに十分な量とすべきである。さらに、エタノールなどのアルカノールは、角質層の極性脂質を抽出することによって作用し、その結果、多数の薬物物質の分配を増加させる、有効な皮膚浸透増強剤であることが知られている。
【0038】
一部の実施形態において、本発明の製剤は、水との水アルコール混合物中にアルカノールを含む。
【0039】
本発明に関連して、「多価アルコール」という用語は、本明細書で使用する場合、2個以上のヒドロキシ基で置換された、C〜CアルカンまたはC〜Cアルケンの1種以上を意味するものと理解されるべきである。
【0040】
一部の実施形態において、本発明の製剤中に含まれる多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールからなる群から選択される1つ以上である。一実施形態において、本発明の製剤中に含まれる多価アルコールはプロピレングリコールである。別の実施形態では、本発明の製剤は、プロピレングリコールを約20.0重量%の量で含む。
【0041】
「ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル」という用語は、本明細書で使用する場合、C〜Cアルキルエーテルで置換された1種以上のジエチレングリコールを意味するものと理解されるべきである。
【0042】
一実施形態において、本発明の製剤中に含まれるジエチレングリコールのモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)およびジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGMM)の一方または両方である。別の実施形態では、本発明の製剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを約5.0重量%の量で含む。
【0043】
「脂肪族アルコール」という用語は、本明細書で使用する場合、炭素原子数が12個以上の分枝または直鎖の炭素体を有する脂肪族アルコールを意味するものと理解されるべきである。
【0044】
一実施形態において、本発明の製剤中に含まれる脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコールからなる群から選択される、1つ以上である。一実施形態において、本発明の製剤中に含まれる脂肪族アルコールはミリスチルアルコールである。別の実施形態では、本発明の製剤は、ミリスチルアルコールを約3重量%の量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、ミリスチルアルコールを約3重量%を超える量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、ミリスチルアルコールを約3〜5重量%の量で含む。
【0045】
別の実施形態では、本発明の製剤は、炭素原子数が12個以上の分枝または直鎖の酸部分を有する、または炭素原子数が12個以上の分枝または直鎖のアルコール部分を有する脂肪酸エステルを含んでもよい。
【0046】
「ゲル化剤」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物をゲルに変換することが可能な任意の作用剤を意味するものと理解されるべきである。本発明の製剤中に使用するゲル化剤は、以下を含む群から選択される1種ま以上とすることができる。カルボマー(別称はカルボキシエチレンまたはポリアクリル酸)、たとえばカルボマー(CARBOPOL(商標))980NFもしくは940NF、981もしくは941NF、1382もしくは1342NF、5984もしくは934NF、ETD2020、934PNF、971PNF、974PNF、71GNF、Ultrez10NF、PemulenTR−1NFまたはTR−2NF、およびNoveonAA−1USP、セルロース誘導体、たとえばエチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Klucelの種々のグレード)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(Natrosolの各グレード)、HPMCP55、およびMethocelの各グレード、天然ガム、たとえばアラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、およびアルギネート、ポリビニルピロリドン誘導体、たとえばKollidonの各グレード、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、たとえばLutrol Fのグレード68および127、キトサン、ポリビニルアルコール、ペクチン、ならびにビーガム(veegum)の各グレード。系を増粘し中和するために、第三級アミン、たとえばトリエタノールアミン、トロラミン、トロメタミン、アミノメチルプロパノール、ジイソプロパノールアミンまたはジエチルアミンを含むことができる。
【0047】
一実施形態において、本発明の製剤中に含まれるゲル化剤はカルボマーである。カルボマーは、数種の多価アルコールアリルエーテルのいずれかと架橋されている高分子量のアクリル酸のホモポリマーの部類に関する。カルボマーの非限定的な例は、カルボマー940、カルボマー971P、カルボマー973、カルボマー974P、カルボマー980NF、およびカルボマーC981NF(数字はポリマー鎖の平均分子量を示す)である。
【0048】
一実施形態において、本発明の製剤中に含まれるゲル化剤はヒドロキシプロピルセルロースである。別の実施形態では、本発明の製剤は、ヒドロキシプロピルセルロースを約1.50重量%の量で含む。
【0049】
「酸化防止剤」または「安定化剤」という用語は、本明細書で交換可能に使用する場合、製剤中で、酸素、過酸化物またはフリーラジカルによって促進される酸化または反応を防止することが可能な任意の物質を意味するものと理解されるべきである。本発明の製剤中に使用可能な酸化防止剤は、トコフェロールおよび誘導体、アスコルビン酸および誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ならびにこれらの誘導体を含む群から選択される、1つ以上とすることができる。一実施形態において、本発明の製剤中に含まれる酸化防止剤はメタ重亜硫酸ナトリウムである。別の実施形態では、本発明の製剤中に含まれる酸化防止剤は没食子酸プロピルである。さらに別の実施形態では、酸化防止剤はエデト酸四ナトリウムである。別の実施形態では、本発明の製剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムを約0.025重量%〜約0.10重量%の量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、没食子酸プロピルを約0.05重量%以下の量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、エデト酸四ナトリウムを約0.05重量%以下の量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムを約0.025重量%〜約0.10重量%の量で、かつ没食子酸プロピルを約0.05重量%以下の量で含む。さらに別の実施形態では、本発明の製剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムを約0.025重量%〜約0.10重量%の量で、かつエデト酸四ナトリウムを約0.05重量%以下の量で含む。
【0050】
本明細書で使用する場合、「溶媒」という用語は、本明細書で上記に詳述したとおり、本発明の経皮または経粘膜製剤中に使用するのに好適な任意の種類の溶媒を包含することができる。一実施形態において、本発明の製剤中に含まれる溶媒は水である。
【0051】
本発明は、3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび3重量%のミリスチルアルコールを含む、経皮または経粘膜製剤を提供する。
【0052】
本発明は、3重量%のジクロフェナク、45.0重量%のエタノール、20.0重量%のプロピレングリコール、5.0重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、3重量%のミリスチルアルコール、1.50重量%のヒドロキシプロピルセルロース、および水を含む、経皮または経粘膜製剤をさらに提供する。
【0053】
本発明は、したがって、水性ゲルマトリックス中に包埋した、揮発性溶媒(たとえばエタノール)および非揮発性共溶媒(たとえばプロピレングリコールおよびたとえばジエチレングリコールモノエチルエーテル)ならびに脂肪族アルコール(たとえばミリスチルアルコール)の組合せを含む、高度化した経皮浸透増強系を提供する。
【0054】
一部の実施形態において、本発明の製剤は、緩衝剤、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、中和剤、キレート剤、皮膚軟化剤または緩衝剤のうち少なくとも1種をさらに含む。
【0055】
一部の実施形態において、本発明の製剤は、ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、スプレー剤、エアゾール剤、軟膏剤、乳剤、懸濁剤、リポソーム系、ラッカー剤、貼付剤、包帯、バッカル錠、カシェ剤(wafer)、舌下錠、坐剤、腟用剤形または閉鎖包帯の形態である。特定の実施形態では、製剤はゲル剤である。
【0056】
別の実施形態において、本発明の製剤は、次のうち少なくとも1種の形態である。透明な(透き通った)製剤、水洗性製剤、接触冷感の製剤、速乾性製剤、塗りのばし可能な製剤およびべとつかない製剤。
【0057】
一部の実施形態において、前記製剤はゲル剤の形態である。別の実施形態において、前記製剤は透明で透き通ったゲル剤の形態である。
【0058】
一部の実施形態において、本発明の製剤は、たとえばゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤として皮膚に直接的に、または貼付剤、包帯または他の閉鎖包帯によって間接的に塗布される。
【0059】
本発明の製剤は、患者の状態に依って1日1回または1日複数回塗布することができる。一部の実施形態において、前記製剤は、1日1回、2回、3回または4回、経皮または経粘膜投与される。
【0060】
本発明は、ジクロフェナクを、これを必要とする哺乳動物に投与する方法であって、哺乳動物の皮膚または粘膜に本発明の製剤を経皮投与することを含む方法をさらに提供する。
【0061】
本発明の製剤は、局所性または全身性の双方の障害の治療に使用することができる。これに関して、本発明は、以下の治療において使用するための本発明の経皮または経粘膜製剤を提供する。疼痛(たとえば、歯痛、軽度から中等度の術後痛または外傷後痛、炎症を伴う軽度から中等度の術後痛または外傷後痛、月経痛、子宮内膜症、腎石および胆石に起因する疼痛、がんに関連する慢性疼痛、炎症を伴う、がんに関連する慢性疼痛);腱、靱帯、筋肉および/または関節の外傷後炎症(たとえば捻挫、挫傷および打撲傷による);局在性形態の軟部組織リウマチ(たとえば腱鞘炎、滑液包炎、肩手症候群および関節周囲症(periarthropathy));局在性形態の変性リウマチ(たとえば脊柱の末梢関節の骨関節症);炎症性障害(たとえば、関節炎、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、変形性関節症、顎関節障害、脊椎関節炎、強直性脊椎炎および痛風発作);月経困難症;日光への過剰曝露に起因する日光角化症;急性片頭痛;女性乳がん;骨転移に関連する疼痛;悪性リンパ肉芽腫症(ホジキンリンパ腫)による発熱;多剤耐性大腸菌(E. coli);シャイ・ドレーガー症候群;ならびに糖尿病。
【0062】
一実施形態において、本発明は、変形性関節症の治療において使用するために、本発明の経皮または経粘膜製剤を提供する。
【0063】
本発明の製剤は、他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、本発明の製剤を含む少なくとも1つの容器およびその使用説明書を含むキットを提供する。
【0065】
一部の実施形態において、本発明のキットは、計量した所定量の前記製剤を調剤するための容器を含む。
【実施例】
【0066】
以下の実施例において本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、請求項に記載した本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例1】
【0067】
ジクロフェナクゲル製剤の調製
以下の実施例に記載する3重量%および5重量%のジクロフェナク製剤を、図1に概略で示したとおり、当技術分野において公知の方法で調製した。ベンチ規模(10グラム〜1000グラムのバッチサイズ)でアンバーガラス瓶中で調製した。混合および均質化を、磁気撹拌によって、または撹拌用プロペラ(marine propeller)を使用して確実に行った。調製は、さらに、より大きなバッチ規模(たとえば6kg以上、たとえば6〜10kg)で、温度制御しながら連続的な減圧下および窒素封入下の制御環境で、ステンレス鋼プラネタリーミキサーに入れて実施した。
【実施例2】
【0068】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料
・ボルタレン(登録商標)ゲル1重量%
・2重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤A)
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤B)
【0069】
これらのゲル製剤の組成を表1および表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
ヒトの腹部の凍結皮膚(ドナー1名に由来)で試験を行った。ボルタレン(登録商標)試験製剤を4回反復して試験し、ジクロフェナク試験製剤をそれぞれ5回反復して試験した(合計14回の反復、すなわちスライスした皮膚試料)。各試料の厚さをマイクロメーターで測定した。試料を、結果的に、レセプター区画が約7.0mL、ドナー区画が3.0mL、拡散領域が1.77cmの垂直型ガラス製フランツ拡散セルに載せた。
【0073】
2%w/vのオレス−20、すなわちポリオキシエチレン(20)オレイルエーテルを添加したリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4をレセプター溶液として使用し、試験全体を通して32.5℃に保持し、600rpmで撹拌した。試験は、Microette(登録商標)Plusオートサンプラーを使用して実施した。
【0074】
皮膚試料をレセプター溶液とともに2時間プレインキュベーションし、蒸発測定によって完全性を評価してから、約10mgのジクロフェナクナトリウムゲル製剤をプラスチックのシリンジプランジャーの先端で塗布し、1.77cmの拡散表面にわたって静かにのばした(これによりゲルの添加が5.6mg/cmになった)。薬物を非閉塞条件で24時間拡散させた。
【0075】
レセプター溶液試料(1.0mL)を、9時間後、14時間後、19時間後および24時間後(1.5mLのレセプター区画のプライミング後)に自動的に除去した。試料を、セプタム付きクリンプキャップで予め封止した、トリフルオロ酢酸(TFA)10%溶液10μLを予め充填した2mLのHPLCアンバーガラスバイアル中に回収した。次いで、試料をEppendorfマイクロチューブ中に移し、13500rpmで5分間遠心分離した。各上清(0.8mL)を2mLのHPLCアンバーガラスバイアル中に移した。試料の分析をHPLCによって実施した。
【0076】
試験全体は、制御した室温(通常20℃〜25℃の間で実施した。
【0077】
【表3】
【0078】
結果
3重量%のジクロフェナクナトリウムゲル製剤中のミリスチルアルコール含量を2重量%から3重量%に増加すると(すなわち50%増)、24時間後に、平均累積ジクロフェナク送達量が線形に1.5倍増加した(絶対量で4.7μg/cmから7.1μg/cmに、または相対量で2.9%から4.3%に)。
【実施例3】
【0079】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル5重量%(以下、製剤C)
・2重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル5重量%(以下、製剤D)
・2重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤E)。
【0080】
これらのゲル製剤の組成を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0083】
【表5】
【0084】
結果
ジクロフェナク5%ゲル製剤において、ミリスチルアルコール含量を2%から3%に増加すると(すなわち50%増)、24時間後に、皮膚を通して送達された平均累積ジクロフェナク量がやはり線形に1.5倍増加した(絶対量で3.1μg/cmから4.7μg/cmに、または相対量で1.2%から1.8%に)。
【実施例4】
【0085】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤F)
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクカリウムゲル3.15重量%(ジクロフェナクナトリウム3重量%に相当)(以下、製剤G)
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクエポラミンゲル3.88重量%(ジクロフェナクナトリウム3重量%に相当)(以下、製剤H)。
【0086】
これらのゲル製剤の組成を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0089】
【表7】
【0090】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)再度試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
結果
3重量%のミリスチルアルコールの存在下で、ジクロフェナクの3種の塩、すなわちジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウムおよびジクロフェナクエポラミンのうちいずれか1種を使用すると、24時間後に、皮膚を通したジクロフェナク送達量が類似したものとなった。
【実施例5】
【0094】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤I)
・3重量%のミリスチルアルコールおよび0.1%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤J)
・3重量%のミリスチルアルコール、0.05%のメタ重亜硫酸塩および0.05%の没食子酸プロピルを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤K)。
【0095】
これらのゲル製剤の組成を表10に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)再度試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0098】
【表11】
【0099】
結果
0.1%のメタ重亜硫酸ナトリウムにより、ジクロフェナク送達が1.19μg/cmから1.77μg/cmに増加し、0.05%のメタ重亜硫酸ナトリウムと0.05%の没食子酸プロピルとの組合せにより、ジクロフェナク送達が2.07μg/cmまで増加した。
【0100】
このように、酸化防止剤の存在下において、ジクロフェナク送達量は少なくとも酸化防止剤不含での送達量に等しく、増加すらした。
【実施例6】
【0101】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・ジクロフェナクカリウムゲル3.15重量%、ジクロフェナクナトリウム3重量%に相当(以下、製剤L)
・2重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクカリウムゲル3.15重量%(以下、製剤M)
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクカリウムゲル3.15重量%(以下、製剤N)。
【0102】
これらのゲル製剤の組成を表12に示す。
【0103】
【表12】
【0104】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0105】
【表13】
【0106】
結果
3.15%のジクロフェナクカリウムを、3%のミリスチルアルコールとともに含有する製剤Nは、ジクロフェナク送達量が有意に多かった。
【実施例7】
【0107】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・2.7重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤O)
・3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤P)
・3.3重量%のミリスチルアルコールを含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤Q)。
【0108】
これらのゲル製剤の組成を表14に示す。
【0109】
【表14】
【0110】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0111】
【表15】
【0112】
結果
エタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびミリスチルアルコールを目標量の90%含有する製剤Oでは、24時間後に、皮膚を通した累積ジクロフェナク量が、統計的に有意ではない減少(3.11%から2.46%に)を示した。
【0113】
同様に、エタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびミリスチルアルコールを目標量の110%含有した製剤Qでは、24時間後に、皮膚を通した累積ジクロフェナク量が、統計的に有意ではない増加(3.11%から3.48%に)を示した。
【0114】
同様の観察を、定常流束に関しても行った。製剤Oについては、統計的に有意ではない0.24μg/cmhから0.21μg/cmhへの減少を示し、製剤Qについては、統計的に有意ではない0.24μg/cmhから0.29μg/cmhへの増加を示した。
【0115】
このように、±10%以内の差異があっても、皮膚を通したジクロフェナクの浸透性にごく限定的な影響しか及ぼさない。
【実施例8】
【0116】
In vitro皮膚浸透試験
試験試料:
・3重量%のミリスチルアルコールおよび1.35%のヒドロキシプロピルセルロース(7967cP相当)を含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤R)
・3重量%のミリスチルアルコールおよび1.5%のヒドロキシプロピルセルロース(10617cP相当)を含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤S)
・3重量%のミリスチルアルコールおよび1.65%のヒドロキシプロピルセルロース(13817cP相当)を含有するジクロフェナクナトリウムゲル3重量%(以下、製剤T)。
【0117】
これらのゲル製剤の組成を表16に示す。
【0118】
【表16】
【0119】
各試験製剤を、6回反復して(6匹の異なるブタの耳の新鮮皮膚ドナー)試験した(基本的に実施例2に記載したとおりに)。全体で、18個の十分な厚さの試料を使用した。
【0120】
【表17】
【0121】
結果
約8000cP(製剤R)から約14000cP(製剤T)に粘度を高めると、ジクロフェナク送達量の差異は15%以下、定常流束の差異は10%未満となる。
【0122】
ジクロフェナクの最適送達量は約10000cPで生じた。
図1
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図10
【国際調査報告】