(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
サーモトロピック液晶性ポリマーと、特定のタイプの流動性改良剤の組み合わせとを含む熱可塑性組成物が提供される。さらに詳細には、組成物中に使用される1つのタイプの流動性改良剤は、ポリマーの主鎖と反応することができる官能性化合物(例えば、ヒドロキシ官能性化合物やカルボキシ官能性化合物等)である。例えば、特定のケースでは、官能性化合物は、ポリマーの鎖切断を開始させることができ、このため分子量が低下し、従ってせん断力下でのポリマーの溶融粘度が低下する。さらに、機械的特性に大きな影響を及ぼすことなく溶融粘度を所望の“超低”レベルに低下させるのに役立つよう、追加の非官能性化合物も使用される。より具体的に言えば、非官能性化合物は、鎖切断を全く引き起こすことなく、従ってせん断力下でのポリマーマトリックスの全体的な粘度さらに低下させることなく、分子間のポリマー鎖相互作用を変えることができる芳香族アミドオリゴマーである。
サーモトロピック液晶性ポリマー;芳香族アミドオリゴマー;およびヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、もしくはこれらの組み合わせを含む官能性化合物;を含み、ASTM試験番号1238-70に従った1000秒-1のせん断速度および350℃の温度での測定にて約0.1〜約80Pa・sの溶融粘度を有する熱可塑性組成物。
ビフェニルヒドロキシ官能性化合物が熱可塑性組成物の約0.01重量%〜約1重量%を構成し、金属水酸化物が熱可塑性組成物の約0.02重量%〜約2重量%を構成する、請求項10に記載の熱可塑性組成物。
熱可塑性組成物が、少なくとも1種のヒドロキシ官能性化合物と少なくとも1種のカルボキシ官能性化合物を含有し、ヒドロキシ官能性化合物対カルボキシ官能性化合物の重量比が約5〜約20である、請求項1〜18のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
液晶性ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノン、4,4'-ビフェノール、アセトアミノフェノン、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、またはこれらの組み合わせから誘導されるモノマー単位を含む、請求項1〜26のいずれかに記載の熱可塑性組成物。
接続ピンを受け取るよう間に通路が画定されている対向壁体を含む電気コネクターであって、該壁体の少なくとも一方が請求項30に記載の成形品を含む上記電気コネクター。
導電素子が、共振アンテナ素子、逆Fアンテナ構造物、クローズドスロットアンテナ構造物、オープンスロットアンテナ構造物、ループアンテナ構造物、モノポール、ダイポール、平板逆Fアンテナ構造物、またはこれらの組み合わせである、請求項33に記載の成形品。
電子部品が、携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、小型のポータブルコンピュータ、リストウォッチ型デバイス、ペンダント型デバイス、ヘッドフォン型デバイス、イヤホン型デバイス、無線通信能力を有するメディアプレイヤー、ハンドヘルドコンピュータ、遠隔制御装置、全地球測位システムデバイス、ハンドヘルドゲーミングデバイス、蓄電池カバー、スピーカー、集積回路、電気コネクター、カメラモジュール、またはこれらの組み合わせである、請求項37に記載の電子部品。
押出機内で熱可塑性組成物を製造する方法であって、該押出機が、バレル内に少なくとも1つの回転可能なスクリューを含み、該スクリューが、ある全長とある直径を有し、供給セクションと該供給セクションより下流に位置する溶融セクションが該スクリューの長さに沿って画定されており、ベースポリマー組成物を、サーモトロピック液晶性ポリマーと芳香族アミドオリゴマーを含む押出機の供給セクションに供給する工程;繊維を、ベースポリマー組成物より下流の場所にて押出機に供給する工程;ヒドロキシ官能性化合物、カルボキシ官能性化合物、またはこれらの組み合わせを含む官能性化合物を、ベースポリマー組成物より下流の場所にて押出機に供給する工程;ならびに、官能性化合物、繊維、およびベースポリマー組成物を押出機内でブレンドして熱可塑性組成物を製造する工程;を含む上記製造方法。
押出機内で熱可塑性組成物を製造する方法であって、該押出機が、バレル内に少なくとも1つの回転可能なスクリューを含み、該スクリューが、ある全長とある直径を有し、供給セクションと該供給セクションより下流に位置する溶融セクションが該スクリューの長さに沿って画定されており、ベースポリマー組成物を、サーモトロピック液晶性ポリマーを含む押出機の供給セクションに供給する工程;繊維を、ベースポリマー組成物より下流の場所にて押出機に供給する工程;ヒドロキシ官能性化合物、カルボキシ官能性化合物、またはこれらの組み合わせを含む官能性化合物と芳香族アミドオリゴマーとを、ベースポリマー組成物より下流の場所にて押出機に供給する工程;ならびに、芳香族アミドオリゴマー、官能性化合物、繊維、および液晶性ポリマーを押出機内でブレンドして熱可塑性組成物を製造する工程;を含む上記製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0012]当業者が理解しておかねばならないことは、ここでの説明は、代表的な実施態様のみについての説明であり、本発明のより広い態様を制限することを意図していない、という点である。
【0009】
[0013]一般的に言えば、本発明は、サーモトロピック液晶性ポリマーと特定のタイプの流動性改良剤(flow modifier)を含む熱可塑性組成物に関する。さらに詳細には、組成物中に使用される流動性改良剤の1つのタイプが、ポリマーの主鎖と反応することができる官能性化合物(例えば、ヒドロキシ官能性やカルボキシ官能性等)である。例えば特定のケースでは、官能性化合物は、ポリマーの分子鎖切断を開始することができ、このことが分子量を、従ってせん断力下でのポリマーの溶融粘度を低下させる。効果的である上に、このような化合物が溶融粘度を低下させる能力は、一般にはポリマー分子量の低下に相関づけられる。しかしながら、分子量の低下が大きすぎると、機械的特性に悪影響を及ぼすことがあるので、官能性化合物を使用して達成できる溶融粘度レベルは、実際には制限される。この点について、機械的特性に大きな影響を及ぼすことなく溶融粘度を所望する“超低”レベルに低下させるのに役立つよう、追加の非官能性化合物も流動性改良剤として使用することができる、ということを本発明者らは見出した。さらに詳細に言えば、非官能性化合物は、分子鎖切断をそれほど引き起こすことなく分子間ポリマー鎖相互作用を変えることができ、これによってせん断力下でのポリマーマトリックスの全体的な粘度を低下させる芳香族アミドオリゴマーである。驚くべきことに、このような低溶融粘度は、プロセス安定性(例えば、成形プロセス時のスクリュー回復時間や充填圧力)に悪影響を及ぼすことなく、流動性改良剤のこうしたユニークな組み合わせを使用して達成することができる。
【0010】
[0014]こうした発見の結果、超低溶融粘度値(例えば、1000秒
-1のせん断速度での測定にて約0.1〜約80Pa・s、実施態様によっては約0.5〜約50Pa・s、そして実施態様によっては約1〜約25Pa・s)を有する熱可塑性組成物を作製することができる、ということを本発明者らは見出した。溶融粘度は、350℃の温度にてASTM試験番号1238-70に従って測定することができる。特に、粘度がこのように超低粘度であると、熱可塑性組成物は、小さな寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流れ込むことができる。従来、このような超低粘度を有する熱可塑性組成物は、特定のタイプの用途での使用を可能にするための、充分に良好な熱的・機械的特性を有することができない、と考えられていた。しかしながら、従来の考え方に反して、本発明の熱可塑性組成物は、優れた熱的・機械的特性を有することが分かった。例えば、本発明の組成物は高い衝撃強さ(小さい部品を作製する際に有用である)を有する。例えば、本発明の組成物は、約4kJ/m
2超〔23℃の温度でのISO試験番号179-1(技術的にASTM D256のメソッドBと同等)に従った測定にて、実施態様によっては約5〜約40kJ/m
2、そして実施態様によっては約6〜約30kJ/m
2〕のノッチ付シャルピー衝撃強さを有する。
【0011】
[0015]本発明の熱可塑性組成物は、引張特性と曲げ特性も良好である。例えば、熱可塑性組成物は、約20〜約500MPa(実施態様によっては約50〜約400MPa、そして実施態様によっては約100〜約350MPa)の引張強さ;約0.5%以上(実施態様によっては約0.6%〜約10%、そして実施態様によっては約0.8%〜約3.5%)の引張破断ひずみ;及び/又は、約5,000MPa〜約20,000MPa(実施態様によっては約8,000MPa〜約20,000MPa、そして実施態様によっては約10,000MPa〜約15,000MPa)の引張モジュラス;を示すことがある。引張特性は、23℃にてISO試験番号527(技術的にASTM D638と同等)に従って測定することができる。熱可塑性組成物はさらに、約20〜約500MPa(実施態様によっては約50〜約400MPa、そして実施態様によっては約100〜約350MPa)の曲げ強度;約0.5%以上(実施態様によっては約0.6%〜約10%、そして実施態様によっては約0.8%〜約3.5%)の曲げ破断ひずみ;及び/又は、約5,000MPa〜約20,000MPa(実施態様によっては約8,000MPa〜約20,000MPa、そして実施態様によっては約10,000MPa〜約15,000MPa)の曲げモジュラス;を示すことがある。曲げ特性は、23℃にてISO試験番号178(技術的にASTM D790と同等)に従って測定することができる。
【0012】
[0016]同様に、組成物の融解温度は約250℃〜約400℃(実施態様によっては約270℃〜約380℃、そして実施態様によっては約300℃〜約360℃)であってよい。
当業界によく知られているように、融解温度は、示差走査熱量測定法(“DSC”)を使用して測定(例えば、ISO試験番号11357によって測定)することができる。このような融解温度においてさえも、荷重たわみ温度(“DTUL”)(短期耐熱性の尺度)対融解温度の比は、引き続き比較的高いままであってよい。例えば、この比は、約0.65〜約1.00(実施態様によっては約0.66〜約0.95、そして実施態様によっては約0.67〜約0.85)の範囲であってよい。例えば、特定のDTUL値は、約200℃〜約300℃(実施態様によっては約210℃〜約280℃、そして実施態様によっては約220℃〜約260℃)の範囲であってよい。DTUL値がこのように高いと、特に、寸法許容差の小さい部品の製造時にしばしば使用される高速プロセスが利用できるようになる。
【0013】
[0017]本発明の種々の実施態様を、以下により詳細に説明する。
【0014】
I.液晶性ポリマー
[0018]サーモトロピック液晶性ポリマーは一般に、金型の小さなスペースを効率的に充填することを可能にする高度の結晶性を有する。このような液晶性ポリマーの量は、熱可塑性組成物の総重量を基準として一般には約20重量%〜約90重量%であり、実施態様によっては約30重量%〜約80重量%であり、そして実施態様によっては約40重量%〜約75重量%である。好適なサーモトロピック液晶性ポリマーは、芳香族ポリエステル、芳香族ポリ(エステルアミド)、芳香族ポリ(エステルカーボネート)、または芳香族ポリアミド等を含んでよく、同様に、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族アミン、および芳香族ジアミン等、ならびにこれらの組み合わせから形成される反復構造単位を含有してよい。
【0015】
[0019]芳香族ポリエステルは、例えば、(1)2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸;(2)少なくとも1種の芳香族ヒドロキシカルボン酸、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、および少なくとも1種の芳香族ジオール;及び/又は(3)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と少なくとも1種の芳香族ジオール;を重合させることによって得ることができる。好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸の例としては、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4'-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;および4'-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸等;ならびにこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体;などがある。好適な芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;2,6-ナフタレンジカルボン酸;ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸;1,6-ナフタレンジカルボン酸;2,7-ナフタレンジカルボン酸;4,4'-ジカルボキシビフェニル;ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル;ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン;ビス(4-カルボキシフェニル)エタン;ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル;およびビス(3-カルボキシフェニル)エタン等;ならびにこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体;などがある。好適な芳香族ジオールの例としては、ヒドロキノン;レゾルシノール;2,6-ジヒドロキシナフタレン;2,7-ジヒドロキシナフタレン;1,6-ジヒドロキシナフタレン;4,4'-ジヒドロキシビフェニル;3,3'-ジヒドロキシビフェニル;3,4'-ジヒドロキシビフェニル;4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテル;およびビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等;ならびにこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体;などがある。これらの芳香族ポリエステルおよび他の芳香族ポリエステルの合成と構造は、米国特許第4,161,470号;第4,473,682号;第5,522,974号;第4,375,530号;第4,318,841号;第4,256,624号;第4,219,461号;第4,083,829号;第4,184,996号;第4,279,803号;第4,337,190号;第4,355,134号;第4,429,105号;第4,393,191号;第4,421,908号;第4,434,262号;および第5,541,240号;においてさらに詳細に説明されている。
【0016】
[0020]同様に、液晶性ポリエステルアミドは、(1)少なくとも1種の芳香族ヒドロキシカルボン酸と少なくとも1種の芳香族アミノカルボン酸;(2)少なくとも1種の芳香族ヒドロキシカルボン酸、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、ならびに、必要に応じてフェノール性ヒドロキシ基を有する少なくとも1種の芳香族アミン及び/又は芳香族ジアミン;および(3)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、ならびに、必要に応じてフェノール性ヒドロキシ基を有する少なくとも1種の芳香族アミン及び/又は芳香族ジアミン;を重合させることによって得ることができる。好適な芳香族アミンと芳香族ジアミンとしては、例えば、3-アミノフェノール;4-アミノフェノール;1,4-フェニレンジアミン;および1,3-フェニレンジアミン等;ならびにこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体;などがある。1つの特定の実施態様では、芳香族ポリエステルアミドは、2,6-ヒドロキシナフトエ酸、テレフタル酸、および4-アミノフェノールから誘導されるモノマー単位を含有する。他の実施態様では、芳香族ポリエステルアミドは、2,6-ヒドロキシナフトエ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、および4-アミノフェノール、ならびに他の任意のモノマー(例えば、4,4'-ジヒドロキシビフェニル及び/又はテレフタル酸)から誘導されるモノマー単位を含有する。これらの芳香族ポリ(エステルアミド)および他の芳香族ポリ(エステルアミド)の合成と構造が、米国特許第4,339,375号;第4,355,132号;第4,351,917号;第4,330,457号;第4,351,918号;および第5,204,443号;においてより詳細に説明されている。
【0017】
[0021]必要であれば、本発明の液晶性ポリマーは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸とナフテン系ジカルボン酸〔例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(“NDA”)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(“HNA”)、またはこれらの組み合わせ〕から誘導される反復構造単位をできるだけ少ない量にて含有するという程度に“低ナフテン系”ポリマーであってよい。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及び/又はナフテン系ジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される反復構造単位の合計量は、ポリマーの総重量を基準として約10モル%以下〔実施態様によっては約8モル%以下、そして実施態様によっては0モル%〜約5モル%(例えば0モル%)〕であってよい。高レベルの従来のナフテン酸が存在しないにもかかわらず、得られる“低ナフテン系”ポリマーは、前述のように、依然として良好な熱的・機械的特性を示すことができる、と考えられている。
【0018】
[0022]1つの特定の実施態様では、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、ならびにテレフタル酸(“TA”)及び/又はイソフタル酸(“IA”)から誘導されるモノマー反復単位を含有する“低ナフテン系”芳香族ポリエステルを製造することができる。4-ヒドロキシ安息香酸(“HBA”)から誘導されるモノマー単位が、ポリマーの総重量を基準として約40モル%〜約95モル%(実施態様によっては約45モル%〜約90モル%、そして実施態様によっては約50モル%〜約80モル%)を構成してよく、そしてテレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導されるモノマー反復単位が、ポリマーの総重量を基準としてそれぞれ約1モル%〜約30モル%(実施態様によっては約2モル%〜約25モル%、そして実施態様によっては約3モル%〜約20モル%)を構成してよい。必要に応じて、芳香族ジオール(例えば、4,4'-ビフェノールやヒドロキノンなど)等の他のモノマー単位を使用することができる。例えば、ヒドロキノン(“HQ”)、4,4'-ビフェノール(“BP”)、及び/又はアセトアミノフェン(“APAP”)が使用される場合にはそれぞれ、約1モル%〜約30モル%(実施態様によっては約2モル%〜約25モル%、そして実施態様によっては約3モル%〜約20モル%)を構成してよい。必要であれば、ポリマーはさらに、少量の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(“HNA”)を上記範囲内にて含有してよい。
【0019】
[0023]液晶性ポリマーは、適切なモノマー(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミン、芳香族ジアミン等)を反応容器中に導入して重縮合反応を開始させることによって製造することができる。このような反応において使用される特定の条件とステップはよく知られており、
Calundannによる米国特許第4,161,470号;
Linstid,IIIらによる米国特許第5,616,680号;
Linstid,IIIらによる米国特許第6,114,492号;
Shepherdらによる米国特許第6,514,611号;および
Waggonerによる国際特許出願第2004/058851号;において詳細に説明されている。反応のために使用される容器は特に制限されないが、一般には、高粘度フルイドの反応において通常使用される容器を使用するのが望ましい。このような反応容器の例は、可変的に形成された撹拌翼(例えば、アンカー型、多段型、スパイラル-リボン型、スクリューシャフト型等、またはこれらの修正形状型)を含む攪拌機を有する撹拌タンク型装置を含んでよい。このような反応容器のさらなる例は、樹脂の混練に通常使用される混合装置(例えば、ニーダー、練りロール機、バンバリーミキサー等)を含んでよい。
【0020】
[0024]必要に応じて、反応は、上記のような(当業界に公知の)モノマーのアセチル化を介して進行してよい。アセチル化は、モノマーにアセチル化剤(例えば無水酢酸)を加えることによって果たすことができる。アセチル化は一般に、約90℃の温度にて開始される。アセチル化の初期段階時に、還流を使用して気相の温度を、酢酸副生物と無水酢酸が蒸留し始める温度未満に保持することができる。アセチル化時の温度は、一般には90℃〜150℃の範囲であり、実施態様によっては約110℃〜約150℃の範囲である。還流が使用される場合、気相の温度は、一般には酢酸の沸点よりは高いものの、無水酢酸を残留状態に保持する上で充分に低いままである。例えば、無水酢酸は約140℃の温度で気化する。したがって、反応器に約110℃〜約130℃の温度での気相還流をもたらすことが特に望ましい。実質的に完全な反応を確実に果たすために、過剰量の無水酢酸を使用することができる。過剰な無水物の量は、還流を行うか否かを含めた、使用される特定のアセチル化条件に応じて変わる。存在する反応物ヒドロキシル基の総モル数を基準として約1〜10モル%過剰の無水酢酸を使用することも珍しいことではない。
【0021】
[0025]アセチル化は、別個の反応容器において行うこともできるし、あるいは重合反応容器内にてその場で行うこともできる。別個の反応容器が使用される場合は、モノマーの1種以上をアセチル化反応器中に導入し、その後に重合反応器に移送することができる。同様に、モノマーの1種以上を、予備アセチル化にかけることなく直接反応容器に導入することもできる
[0026]モノマーや任意のアセチル化剤のほかに、重合を容易に進みやすくするために、反応混合物中に他の成分を組み込むこともできる。例えば、金属塩〔例えば、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(I)、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等〕や有機化合物触媒(例えばN-メチルイミダゾール)等の触媒を、必要に応じて使用することができる。このような触媒は通常、繰り返し単位前駆体(recurring unit precursors)の総重量を基準として約50〜500パーツ・パー・ミリオンの量にて使用される。別個の反応器が使用される場合、通常は触媒を、重合反応器ではなくアセチル化反応器に加えるのが望ましい(決して必要条件ではないが)。
【0022】
[0027]反応物の溶融重縮合を開始させるために、一般には反応混合物を、重合反応容器内にて高温に加熱する。重縮合は、例えば、約210℃〜約400℃の温度範囲内にて、そして実施態様によっては約250℃〜約350℃の温度範囲内にて行うことができる。例えば、芳香族ポリエステルを製造する1つの適切な方法は、前駆体モノマー(例えば、4-ヒドロキシ安息香酸や2,6-ヒドロキシナフトエ酸)と無水酢酸を反応器中に装入する工程;この混合物を約90℃〜約150℃の温度に加熱して、モノマーのヒドロキシル基をアセチル化する(例えばアセトキシを形成させる)工程;次いで温度を約210℃〜約400℃に上げて溶融重縮合を行う工程;を含んでよい。最終的な重合温度に近づいたら、所望する分子量が容易に得られるように、反応の揮発性副生物(例えば酢酸)を除去することができる。良好な熱移動と物質移動を確実に果たすために、従って良好な材料均一性を確実に得るために、一般には、重合反応時に反応混合物を撹拌する。攪拌機の回転速度は、反応の進行時に変わってよいが、一般には1分当たり約10〜100回転(“rpm”)の範囲であり、実施態様によっては約20〜80rpmの範囲である。溶融状態にて分子量をつくり上げるために、重合反応を減圧下で行うこともでき、このことが、重縮合の最終段階時に形成される揮発性成分の除去を容易にする。減圧は、吸引圧力(a suctional pressure)〔例えば、1平方インチ当たり約5〜30ポンド(“psi”)の、そして実施態様によっては約10〜20psiの範囲内の吸引圧力〕を加えることによってつくり出すことができる。
【0023】
[0028]溶融重合の後に、溶融ポリマーを、一般には所望の形状のダイを取り付けた押出オリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、そして採集する。通常は、有孔ダイを通して溶融物を排出してストランドにし、これを水浴中に送り込み、ペレットにし、そして乾燥する。樹脂はさらに、ストランド、グラニュール、または粉末の形態であってもよい。不必要ではあるが、その後に固相重合を行って分子量をさらに増大させることができる、という点も理解しておかねばならない。溶融重合によって得られたポリマーに対して固相重合を行う場合は、一般には、溶融重合によって得られたポリマーを固化させ、次いでこれを粉砕して粉末状もしくはフレーク状のポリマーとし、その後に固体重合法〔例えば、不活性雰囲気下(例えば窒素)にて200℃〜350℃の温度範囲で熱処理〕を行う、という方法を選ぶのが望ましい。
【0024】
[0029]使用する特定の方法にかかわらず、得られる液晶性ポリマーは一般に、約2,000g/モル以上の、実施態様によっては約4,000g/モル以上の、そして実施態様によっては約5,000〜30,000g/モルの高い数平均分子量(M
n)を有する。当然ながら、本発明の方法を使用して、より低い分子量(例えば約2,000g/モル未満)を有するポリマーを製造することもできる。ポリマーの固有粘度(一般には分子量に比例する)も比較的高い。例えば、固有粘度は、1グラム当たり約4デシリットル(“dL/g”)以上、実施態様によっては約5dL/g以上、実施態様によっては約6〜20dL/g、そして実施態様によっては約7〜15dL/gであってよい。固有粘度は、ペンタフルオロフェノールとヘキサフルオロイソプロパノールの50/50(v/v)混合物を使用して、ISO-1628-5に従って測定することができる。
【0025】
II.流動性改良剤
A.官能性化合物
[0030]ここで使用される官能性化合物は、単官能性、二官能性、または三官能性等であってよい。好適な官能基は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基(例えば、第一もしくは第二アミン基)等、ならびにこれらの組み合わせを含んでよい。1つの特定の実施態様では、例えばヒドロキシ官能性化合物が本発明の熱可塑性組成物中に使用される。“ヒドロキシ官能性”という用語は一般に、該化合物が、少なくとも1つのヒドロキシ官能基を含有するか、あるいはこのような官能基を溶媒の存在下にて有することができる、ということを意味している。特定の理論で拘束されるつもりはないが、該化合物のヒドロキシル基は、サーモトロピック液晶性ポリマー(例えば、ポリエステルやポリエステルアミド)の電子不足カルボニル炭素原子を攻撃して、ポリマーの分子鎖切断を開始させることができる、と考えられる。このため分子量が低下し、その結果、せん断力下でのポリマーの溶融粘度が低下する。
【0026】
[0031]ヒドロキシ官能性化合物の全分子量は、該化合物が、ポリマー組成物のため動助剤として効果的に作用できるように、比較的低い。ヒドロキシ官能性化合物は一般に、約2,000g/モル以下の、実施態様によっては約25〜1,000g/モルの、実施態様によっては約50〜500g/モルの、そして実施態様によっては約100〜約400g/モルの分子量を有する。ヒドロキシ官能性化合物はさらに、液晶性ポリマーの芳香族成分と性質が類似した1種以上の芳香環(ヘテロ芳香環を含む)から形成される核を含んでよい。このような芳香族化合物は、下記の式(I)
【0028】
(式中、
環Cは、1〜3個の環炭素原子が窒素または酸素で置き換えられていてもよい6員の芳香環であって、各窒素が酸化されていてもよく、環Cは、5員もしくは員のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルに縮合あるいは結合していてもよく;
R
12は、アシル、アシルオキシ(例えばアセチルオキシ)、アシルアミノ(例えばアセチルアミノ)、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
aは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1であり;そして
eは1〜3であり、実施態様によっては1〜2である。該化合物が金属塩の形態をとっている場合、好適な金属対イオンは、遷移金属対イオン(例えば、銅イオンや鉄イオン等)、アルカリ金属対イオン(例えば、カリウムイオンやナトリウムイオン等)、アルカリ土類金属対イオン(例えば、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等)、及び/又は主族金属対イオン(例えばアルミニウムイオン)を含んでよい)
の一般構造またはその金属塩で示される一般構造を有してよい。
【0029】
[0032]1つの実施態様では、式(I)において、eが1であって、Cがフェニルであり、したがってヒドロキシ官能性化合物は、下記の式(II)
【0031】
(式中、
R
12は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ヒドロキシル、ハロ、またはハロアルキルであり;
aは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1である)
を有するフェノール類またはその金属塩である。このようなヒドロキシ官能性フェノール化合物の特定の例としては、例えば、フェノール(aが0);ナトリウムフェノキシド(aが0);ヒドロキノン(R
12がOHで、aが1);レソルシノール(R
12がOHで、aが1);および4-ヒドロキシ安息香酸(R
12がC(O)OHで、aが1);などがある。
【0032】
[0033]他の実施態様では、式(I)において、Cがフェニルであり、aが1であり、そしてR
12がフェニルであり、したがってヒドロキシ官能性化合物は、下記の式(III)
【0034】
(式中、
R
15は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
fは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、そして実施態様によっては0〜1である)
を有するビフェニルまたはその金属塩である。このようなビフェニル化合物の特定の例としては、例えば、4,4'-ビフェノール(R
15がOHで、fが1);3,3'-ビフェノール(R
15がOHで、fが1);3,4'-ビフェノール(R
15がOHで、fが1);4-フェニルフェノール(fが0);ナトリウム4-フェニルフェノキシド(fが0);ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(R
15がC
2(OH)
2フェノールで、fが1);トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(R
15がC(CH
3)ビフェノールで、fが1);4-ヒドロキシ-4'-ビフェニルカルボン酸(R
15がC(O)OHで、fが1);4'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸(R
15がC(O)OHで、fが1);3'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸(R
15がC(O)OHで、fが1);および4'-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸(R
15がC(O)OHで、fが1);等がある。
【0035】
[0034]さらに他の実施態様では、上記式(I)におけるCがナフテニルであり、したがってヒドロキシ官能性化合物は、下記の式(IV)
【0037】
(式中、
R
12は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
aは0〜4、実施態様によっては0〜2、そして実施態様によっては0〜1である)
を有するナフトールまたはその金属塩である。このようなナフトール化合物の特定の例としては、例えば、2-ヒドロキシ-ナフタレン(aが0);ナトリウム2-ナフトキシド(qが0);2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(R
12がC(O)OHで、aが1);2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸(R
12がC(O)OHで、aが1);3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(R
12がC(O)OHで、aが1);2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸(R
12がC(O)OHで、aが1);2,6-ジヒドロキシナフタレン(R
12がOHで、aが1);2,7-ジヒドロキシナフタレン(R
12がOHで、aが1);および1,6-ジヒドロキシナフタレン(R
12がOHで、aが1);などがある。
【0038】
[0035]他の種類のヒドロキシ官能性化合物も、単独または上記ヒドロキシ官能性化合物と組み合わせて本発明に使用することができる。例えば、特定の実施態様では、水も好適なヒドロキシ官能性化合物であり、単独または他のヒドロキシ官能性化合物と組み合わせて使用することができる。ある化合物を、プロセス条件下にて水を生成する形態で加えることもできる。例えば、プロセス条件(例えば高温)下にて水を効果的に“失う”水酸化物を使用することができる。このような化合物の1つ例は、一般式M(OH)
s〔式中、sは酸化状態(通常は1〜3)であり、Mは金属(例えば、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または主族金属)である〕を有する金属水酸化物化合物である。好適な金属水酸化物の例は、水酸化銅(II)〔Cu(OH)
2〕、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化マグネシウム〔Mg(OH)
2〕水酸化カルシウム〔Ca(OH)
2〕、および水酸化アルミニウム〔Al(OH)
3〕等を含んでよい。溶媒(例えば水)の存在下でヒドロキシル官能基を形成することができる金属アルコキシド化合物も好適である。このような化合物は、一般式M(OR)
s〔式中、sは酸化状態(通常は1〜3)であり、Mは金属であり、Rはアルキルである〕を有してよい。このような金属アルコキシドの例は、銅(II)エトキシド〔Cu
2+(CH
3CH
2O
-)
2〕、カリウムエトキシド〔K
+(CH
3CH
2O
-)〕、ナトリウムエトキシド〔Na
+(CH
3CH
2O
-)〕、マグネシウムエトキシド〔Mg
2+(CH
3CH
2O
-)
2〕、カルシウムエトキシド〔Ca
2+(CH
3CH
2O
-)
2〕、およびアルミニウムエトキシド〔Al
3+(CH
3CH
2O
-)
3〕等を含んでよい。
【0039】
[0036]ヒドロキシル官能性化合物が使用される場合、該化合物は一般に、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.05重量%〜約4重量%を、実施態様によっては約0.1重量%〜約2重量%を、そして実施態様によっては約0.2重量%〜約1重量%を構成する。特定の実施態様では、熱可塑性組成物は、異なるヒドロキシ官能性化合物の組み合わせを使用する。例えばビフェニルヒドロキシ官能性化合物(例えば4,4'-ビフェノール)は、金属水酸化物(例えば水酸化アルミニウム)と組み合わせて使用することができる。実際、ヒドロキシ官能性化合物のこの特定の組み合わせが、溶融粘度を低下させることを、そして機械的特性に悪影響を及ぼすことなく流動性を向上させることを促進する、ということを本発明者らは見出した。一般には、金属水酸化物対ビフェニルヒドロキシ官能性化合物の重量比は約0.5〜約8であり、実施態様によっては約0.8〜約5であり、そして実施態様によっては約1〜約5である。例えば、ビフェニル化合物は、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.01重量%〜約1重量%を、実施態様によっては約0.05重量%〜約0.4重量%を構成してよく、そして金属水酸化物は、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.02重量%〜約2重量%を、実施態様によっては約0.05重量%〜約1重量%を構成してよい。
【0040】
[0037]上記化合物に加えて、あるいは上記化合物の代わりに、カルボキシ官能性化合物も、本発明において流動性改良剤として使用することができる。“カルボキシ官能性”という用語は一般に、該化合物が少なくとも1つのカルボキシル官能基を含有するか、あるいは溶媒の存在下でこのような官能基を有することができる、ということを意味する。カルボキシ官能性化合物は一般に、約2,000g/モル以下の、実施態様によっては約25〜1,000g/モルの、実施態様によっては約50〜500g/モルの、そして実施態様によっては約100〜400g/モルの分子量を有する。カルボキシ官能性化合物はさらに、液晶性ポリマーの芳香族成分と性質が類似した1種以上の芳香環(ヘテロ芳香環を含む)から形成される核を含んでよい。
このような芳香族化合物は、下記の式(V)
【0042】
(式中:
環Dは、1〜3個の環炭素原子が窒素または酸素で置き換えられていてもよい6員の芳香環であって、各窒素が酸化されていてもよく、環Dは、5員もしくは員のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルに縮合あるいは結合していてもよく;
R
13は、アシル、アシルオキシ(例えばアセチルオキシ)、アシルアミノ(例えばアセチルアミノ)、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
bは1〜3であり、実施態様によっては1〜2であり;そして
cは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1である。該化合物が金属塩の形態をとっている場合、好適な金属対イオンは、遷移金属対イオン(例えば、銅イオンや鉄イオン等)、アルカリ金属対イオン(例えば、カリウムイオンやナトリウムイオン等)、アルカリ土類金属対イオン(例えば、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等)、及び/又は主族金属対イオン(例えばアルミニウムイオン)を含んでよい)
またはその金属塩で示される一般構造を有してよい。
【0043】
[0038]1つの実施態様では、例えば、式(V)においてbが1であってDがフェニルであり、したがってカルボキシ官能性化合物は、式(VI)
【0045】
(式中、R
13は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ヒドロキシル、ハロ、またはハロアルキルであり;cは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1である)を有するフェノール酸またはその金属塩である。このようなフェノール酸化合物の特定の例としては、例えば、安息香酸(cが0);安息香酸ナトリウム(cが0);3-ヒドロキシ安息香酸(R
13がOHで、cが1);および4-ヒドロキシ安息香酸(R
13がOHで、cが1);等がある。
【0046】
[0039]他の実施態様では、上記式(V)においてDがフェニルであり、cが1であり、そしてR
13がフェニルであり、したがってカルボキシ官能性化合物は、下記式(VII)
【0048】
(式中、
R
14は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
dは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1である)を有するジフェノール酸化合物またはその金属塩である。このようなジフェノール酸化合物の特定の例としては、例えば、テレフタル酸(R
14がOHで、dが1)やイソフタル酸(R
14がOHで、dが1)などがある。
【0049】
[0040]さらに他の実施態様では、上記式(V)においてDがナフテニルであり、したがってヒドロキシ官能性化合物は、下記式(VIII)
【0051】
(式中、
R
13は、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシ、アルケニル、アルキル、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリル、またはヘテロサイクリルオキシであり;
cは0〜4であり、実施態様によっては0〜2であり、実施態様によっては0〜1である)
を有するナフテン酸またはその金属塩である。このようなナフテン酸化合物の特定の例としては、例えば、1-ナフトエ酸(cが0);2-ナフトエ酸(cが0);2,6-ナフタレンジカルボン酸(cが1で、R
13がCOOH);2,3-ナフタレンジカルボン酸(cが1で、R
13がCOOH);等がある。
【0052】
[0041]カルボキシ官能性化合物が使用される場合、該化合物は一般に、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.001重量%〜約0.5重量%を、実施態様によっては約0.005重量%〜約0.1重量%を構成する。特定の実施態様では、熱可塑性組成物は、カルボキシ官能性化合物とヒドロキシ官能性組成物との組み合わせを使用してよい。実際、特定の理論で拘束されるつもりはないが、このようなカルボキシ官能性化合物は、ヒドロキシ官能性化合物によって切断された後により短鎖のポリマーと化合できる、と考えられる。このため、組成物の溶融粘度が低下した後でも、組成物の機械的特性が保持されやすくなる。例えば、1つの特定の実施態様では、ナフテン酸(例えば2,6-ナフタレンジカルボン酸)を、ビフェニルヒドロキシ官能性化合物(例えば4,4'-ビフェノール)及び/又は金属水酸化物(例えば水酸化アルミニウム)と組み合わせて使用することができる。望ましい特性を得られやすくするために、組成物中におけるヒドロキシ官能性化合物(例えば、4,4'-ビフェノールや水酸化アルミニウム等)対カルボキシ官能性化合物(例えば2,6-ナフタレンジカルボン酸)の重量比が、一般には約1〜約30であり、実施態様によっては約2〜約25であり、そして実施態様によっては約5〜約20である。
【0053】
B.芳香族アミドオリゴマー
[0042]上記したように、芳香族アミドオリゴマーも、本発明の熱可塑性組成物における流動性改良剤として使用される。このようなオリゴマーは、分子間のポリマー鎖相互作用を変えることによって(これによりせん断力下でのポリマーマトリックスの全体的な粘度を低下させることによって)、“流動助剤”として作用することができる。しかしながら、上記の官能性化合物とは違って、芳香族アミドオリゴマーは一般に、液晶性ポリマーのポリマー主鎖とは全く反応しない。オリゴマーのもう一つのメリットは、容易に気化もしくは分解されない、という点である。このことにより、オリゴマーがまだ比較的高温である間に、オリゴマーを反応混合物に加えることが可能となる。特定の理論で拘束されるつもりはないが、アミド官能基の活性水素原子が、液晶性ポリエステルまたは液晶性ポリエステルアミドの主鎖と水素結合を形成することができる、と考えられる。このような水素結合は、液晶性ポリマーへのオリゴマーの連結を強め、したがってオリゴマーが気化する可能性が最小限に抑えられる。
【0054】
[0043]芳香族アミドオリゴマーは一般に、ポリマー組成物のための流動助剤として効果的に作用できるように、比較的低い分子量を有する。例えば、オリゴマーは通常、約3,000g/モル以下の、実施態様によっては約50〜2,000g/モルの、実施態様によっては約100〜1,500g/モルの、そして実施態様によっては約200〜1,200g/モルの分子量を有する。オリゴマーはさらに、比較的低い分子量を有することに加えて一般には高いアミド官能価を有し、したがって液晶性ポリマーとの充分な程度の水素結合を受けることができる。任意の分子に対するアミド官能価の程度は、“アミド当量”(1分子のアミド官能基を含有する化合物の量を表わす)で特徴づけることができ、該化合物の分子量を分子中のアミド基の数で除することによって算出することができる。例えば、芳香族アミドオリゴマーは、1分子当たり1〜15の、実施態様によっては約2〜10の、そして実施態様によっては2〜8のアミド官能基を含有してよい。同様に、アミド当量は、約10〜1,000g/モル以下、実施態様によっては約50〜500g/モル、そして実施態様によっては約100〜300g/モルであってよい。
【0055】
[0044]前述したように、アミドオリゴマーは、液晶性ポリマー主鎖との共有結合を形成しないよう、一般には非反応性であるのが望ましい。反応性をより低くするために、オリゴマーは通常、1種以上の芳香環(ヘテロ芳香環を含む)から形成される核を含有する。オリゴマーはさらに、1種以上の芳香環から形成される末端基を含有してよい。したがってこのような“芳香族”オリゴマーは、ベースの液晶性ポリマーとの反応性を−たとえ有するとしても−ほとんどもたない。例えば、このような芳香族アミドオリゴマーの1つの実施態様は、下記の式(IX)
【0057】
(式中、
環Bは、1〜3個の環炭素原子が窒素または酸素で置き換えられていてもよい6員の芳香環であって、各窒素が酸化されていてもよく、環Cは、5員もしくは員のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルに縮合あるいは結合していてもよく;
R
5は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルであり;
mは0〜4であり;
X
1とX
2は、独立してC(O)HNまたはNHC(O)であり;そして
R
1とR
2は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから独立して選ばれる)
によってもたらされる。
【0058】
[0045]特定の実施態様では、環Bは、
【0060】
(式中、
mは0、1、2、3、または4であり、実施態様によっては、mは0、1、または2であり、実施態様によっては、mは0であり;そして
R
5は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルである)
から選ぶことができる。環Bは、フェニルであるのが好ましい。
【0061】
[0046]特定の実施態様では、オリゴマーは、環Bが2つだけのアミド基〔例えば、C(O)HNまたはNHC(O)〕に直接結合しているという点で二官能性化合物である。このような実施態様では、式(IX)中のmは0であるのが好ましい。当然ながら、特定の実施態様では、環Bは、3つ以上のアミド基に直接結合してよい。例えば、このような化合物の1つの実施態様は、一般式(X)
【0063】
(式中、
環B、R
5、X
1、X
2、R
1、およびR
2は、上記したとおりであり;
mは0〜3であり;
X
3はC(O)HNまたはNHC(O)であり;そして
R
3は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから選ばれる)によってもたらされる。
【0064】
[0047]このような化合物の他の実施態様は、一般式(XI)
【0066】
(式中、
環B、R
5、X
1、X
2、X
3、R
1、R
2、およびR
3は上記したとおりであり;
X
4はC(O)HNまたはNHC(O)であり;そして
R
4は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから選ばれる)
によってもたらされる。
【0067】
[0048]実施態様によっては、上記構造中のR
1、R
2、R
3、及び/又はR
4は、
【0069】
(式中、
nは0、1、2、3、4、または5であり、実施態様によっては、nは0、1、または2であり、実施態様によっては、nは0または1であり;そして
R
6は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロサイクリルである)
から選ぶことができる。
【0070】
[0049]1つの特定の実施態様では、芳香族アミドオリゴマーは、下記の一般式(XII)
【0072】
(式中、
X
1とX
2は、独立してC(O)HNまたはNHC(O)であり;
R
5、R
7、およびR
8は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから独立して選ばれ;
mは0〜4であり;そしてpとqは、独立して0〜5である)
を有する。
【0073】
[0050]他の実施態様では、芳香族アミドオリゴマーは、下記の一般式(XIII)
【0075】
(式中、
X
1、X
2、R
5、R
7、R
8、m、p、およびqは上記したとおりである)
を有する。
【0076】
[0051]例えば、式(XII)と(XIII)中のm、p、およびqは0であってよく、したがってこの場合は核と末端芳香族基が未置換である。他の実施態様では、mが0であってよく、そしてpとqが1〜5であってよい。このような実施態様では、例えば、R
7及び/又はR
8はハロ(例えばフッ素)であってよい。他の実施態様では、R
7及び/又はR
8は、アリール(例えばフェニル)または構造-C(O)R
22N-または-NR
23C(O)-(式中、R
22とR
23は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから独立して選ばれる)を有するアミド基で置換されたアリールであってよい。1つの特定の実施態様では、例えば、R
6及び/又はR
7は、-C(O)HN-または-NHC(O)-で置換されたフェニルである。さらに他の実施態様では、R
7及び/又はR
8はヘテロアリール(例えばピリジニル)であってよい。
【0077】
[0052]さらに他の実施態様では、芳香族アミドオリゴマーは、下記の一般式(XIII)
【0079】
(式中、
X
1、X
2、およびX
3は、独立してC(O)HNまたはNHC(O)であり;
R
5、R
7、R
8は、およびR
9は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから独立して選ばれ;
mは0〜3であり;そして
p、q、およびrは、独立して0〜5である)
を有する。
【0080】
[0053]さらに他の実施態様では、芳香族アミドオリゴマーは、下記の一般式(XIV)
【0082】
(式中、
X
1、X
2、X
3、R
5、R
7、R
8、R
9、m、p、q、およびrは、上記したとおりである)
を有する。
【0083】
[0054]例えば、特定の実施態様では、式(XIII)と(XIV)中のm、p、q、およびrは0であってよく、したがって核と末端芳香族基が未置換である。他の実施態様では、mが0であってよく、p、q、およびrが1〜5であってよい。このような実施態様では、例えば、R
7、R
8、及び/又はR
9はハロ(例えばフッ素)であってよい。他の実施態様では、R
7、R
8、及び/又はR
9は、アリール(例えばフェニル)または構造-C(O)R
22N-または-NR
23C(O)-(式中、R
22とR
23は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロサイクリルから独立して選ばれる)を有するアミド基で置換されたアリールであってよい。1つの特定の実施態様では、例えば、R
7、R
8、及び/又はR
9は、-C(O)HN-または-NHC(O)-で置換されたフェニルである。さらに他の実施態様では、R
7、R
8、及び/又はR
9がヘテロアリール(例えばピリジニル)であってよい。
【0084】
[0055]さらに、本発明の芳香族アミドオリゴマーの特定の実施態様を下記の表に示す。
【0089】
[0056]組成物中の液晶性ポリマーと芳香族アミドオリゴマーの相対的比率は、粘度と機械的特性との間のバランスを達成しやすくするように選定することができる。さらに詳細に言えば、オリゴマーの含量が高いと粘度が低くなるが、含量が高すぎると、オリゴマーがポリマーの溶融強度に悪影響を及ぼす程度にまで粘度を低下させることがある。ほとんどの実施態様では、例えば、芳香族アミドオリゴマーまたはこれらの混合物は、液晶性ポリマー100重量部に対して約0.1〜5重量部の量にて、実施態様によっては約0.2〜4重量部の量にて、そして実施態様によっては約0.3〜1.5重量部の量にて使用することができる。芳香族アミドオリゴマーは、例えば、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.1〜5重量%を、実施態様によっては約0.2〜4重量%を、そして実施態様によっては約0.3〜1.5重量%を構成してよい。
【0090】
III.他の添加剤
[0057]上記成分のほかに、必要に応じて、他の種々の添加剤も熱可塑性組成物中に組み込むことができる。例えば、熱可塑性組成物中に繊維を使用して機械的特性を改良することができる。このような繊維は一般に、その質量の割には高度の引張強さを有する。例えば、繊維の極限引張強さ(ASTM D2101に従って測定)は通常、約1,000〜15,000メガパスカル(“MPa”)であり、実施態様によっては約2,000MPa〜約10,000MPaであり、そして実施態様によっては約3,000MPa〜約6,000MPaである。絶縁特性(電子部品において使用するのに望ましい場合が多い)を保持しやすくするために、一般には絶縁性である材料〔例えば、ガラス、セラミックス(例えば、アルミナやシリカ)、アラミド(例えば、デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemoursから市販のKevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステル等、およびこれらの混合物〕から高強度繊維を製造することができる。ガラス繊維が特に適しており、例えば、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラス等、およびこれらの混合物がある。
【0091】
[0058]繊維の体積平均長さは、約50〜400マイクロメートルであり、実施態様によっては約80〜250マイクロメートルであり、実施態様によっては約100〜200マイクロメートルであり、そして実施態様によっては約110〜180マイクロメートルである。繊維はさらに、狭い長さ分布を有してよい。すなわち、繊維の少なくとも約70容量%が、実施態様によっては繊維の少なくとも約80容量%が、そして実施態様によっては繊維の少なくとも約90容量%が、約50〜400マイクロメートルの範囲内の、実施態様によっては約80〜250マイクロメートルの範囲内の、実施態様によっては約100〜200マイクロメートルの範囲内の、そして実施態様によっては約110〜180マイクロメートルの範囲内の長さを有する。このような重量平均長さと狭い長さ分布が、強度と流動性との望ましい組み合わせをさらに達成しやすくし、このため、寸法許容差の小さい成形品に対して繊維が特異的に適したものとなりうる。
【0092】
[0059]上記の長さ特性を有することに加えて、繊維はさらに、得られる熱可塑性組成物の機械的特性を改良しやすくするために比較的高いアスペクト比(平均長さを公称直径で除して得られる値)を有してよい。例えば、繊維は、約2〜約50の、実施態様によっては約4〜約40の、そして実施態様によっては約5〜約20のアスペクト比を有してよく、約5〜20のアスペクト比が特に有利である。繊維は、例えば、約10〜35マイクロメートルの、そして実施態様によっては約15〜30マイクロメートルの公称直径を有してよい。
【0093】
[0060]さらに、熱可塑性組成物中の繊維の相対量を選択的に調節して、組成物の他の特性(例えばその流動性)に悪影響を及ぼすことなく、所望の機械的特性を達成しやすくすることができる。例えば、繊維は一般に、熱可塑性組成物の総重量を基準として約2〜40重量%を、実施態様によっては約5〜35重量%を、そして実施態様によっては約6〜30重量%を構成する。繊維は、上記の範囲内で使用することができるけれども、本発明の1つの特に有利で且つ驚くべき態様は、わずかな繊維含量を使用しつつも、所望の機械的特性を達成している、という態様である。特定の理論で拘束されるつもりはないが、繊維の長さ分布はが狭いと、優れた機械的特性を達成しやすくすることができ、したがってよ少ない量の繊維の使用を可能にする、と考えられる。例えば、繊維は、約2〜20重量%、実施態様によっては約5〜16重量%、そして実施態様によっては約6〜12重量%等の少量にて使用することができる。
【0094】
[0061]組成物中に組み込むことができるさらに他の添加剤は、例えば、抗菌剤、充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、固体溶剤、および特性と加工性を高めるために加えられる物質を含んでよい。例えば、無機充填剤を熱可塑性組成物中に使用して、所望する機械的特性及び/又は外観を達成しやすくすることができる。このような無機充填剤が使用される場合、該充填剤は一般に、熱可塑性組成物の総重量を基準として約1重量%〜約40重量%を、実施態様によっては約2重量%〜約35重量%を、そして実施態様によっては約5重量%〜約30重量%を構成する。粘土鉱物は、本発明において使用するのに特に適しているであろう。このような粘土鉱物の例としては、例えば、タルク(Mg
3Si
4O
10(OH)
2)、ハロイサイト(Al
2Si
2O
5(OH)
4)、カオリナイト(Al
2Si
2O
5(OH)
4)、イライト((K,H
3O)(Al,Mg,Fe)
2(Si,Al)
4O
10[(OH)
2,(H
2O)])、モンモリロナイト((Na,Ca)
0.33(Al,Mg)
2Si
4O
10(OH)
2・nH
2O)、バーミキュライト((MgFe,Al)
3(Al,Si)
4O
10(OH)
2・4H
2O)、パリゴルスカイト((Mg,Al)
2Si
4O
10(OH)・4(H
2O))、パイロフィライト(Al
2Si
4O
10(OH)
2)等、およびこれらの組み合わせがある。粘度鉱物の代わりに、あるいは粘土鉱物に加えて、さらに他の無機充填剤も使用することができる。例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、および珪灰石等の、他の適切なケイ酸塩充填剤も使用することができる。例えば、マイカが特に好適である。地質学的産出状態がかなり相違する化学的に異なったマイカ種が数種存在するが、いずれも本質的に同じ結晶構造を有する。本明細書で使用している“マイカ”という用語は、一般には、これらマイカ種の全て〔例えば、白雲母(KAl
2(AlSi
3)O
10(OH)
2)、黒雲母(K(Mg,Fe)
3(AlSi
3)O
10(OH)
2)、金雲母(KMg
3(AlSi
3)O
10(OH)
2)、リチア雲母(K(Li,Al)
2-3(AlSi
3)O
10(OH)
2、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)
2(Si,Al)
4O
10(OH)
2)等、およびこれらの組み合わせ〕を含むように意図されている。
【0095】
[0062]本発明の熱可塑性組成物中には、実質的な分解を起こすことなく液晶性ポリマーのプロセシング条件に耐えることのできる滑剤も使用することができる。このような滑剤の例としては、脂肪酸エステル、該脂肪酸エステルの塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、およびエンジニアリングプラスチック材料のプロセシングにて滑剤として通常使用されるタイプの炭化水素ワックス(これらの混合物を含む)などがある。好適な脂肪酸は一般に、約12〜60個の炭素原子を含む主鎖炭素鎖を有し、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸(octadecinic acid)、およびパリナリン酸(parinric acid)等がある。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、および複合エステル等がある。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第一アミド、脂肪酸第二アミド、メチレンビスアミド、エチンビスアミド、およびアルカノールアミド(例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、およびN,N'-エチレンビスステアルアミド等がある。脂肪酸の金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸マグネシウム等);ならびに、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、およびミクロクリスタリンワックスを含めた炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、またはステアリン酸アミド(例えば、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール、ステアリン酸カルシウム、またはN,N'-エチレンビスステアルアミド)である。滑剤が使用される場合、該滑剤は通常、熱可塑性組成物の総重量を基準として約0.05重量%〜約1.5重量%を、そして実施態様によっては約0.1重量%〜約0.5重量%を構成する。
【0096】
IV.プロセシング方法
[0063]当業界に公知のように、流動性改良剤と液晶性ポリマーとを組み合わせるやり方は種々変わってよい。例えば、芳香族アミドオリゴマーは、ポリマーの主鎖と全く反応しないので、一般には、プロセシングのどの段階(液晶性ポリマーの製造時及び/又は製造後を含む)においても加えることができる。1つの実施態様では、例えば、芳香族アミドオリゴマーは、液晶性ポリマーの1つ以上の重合段階(例えば、アセチル化、溶融重合、または固体状態重合等)時に供給することができる。例えば、芳香族アミドオリゴマーは、溶融重合装置に加えることができる。芳香族アミドオリゴマーはどの時点でも導入できるが、一般には、溶融重合が開始された後に、そして通常は、液晶性ポリマーに対する前駆体モノマーと同時に加えるのが望ましい。当然ながら、他の実施態様では、芳香族アミドオリゴマーは、液晶性ポリマーと単純に溶融ブレンドすることができる。
【0097】
[0064]芳香族アミドオリゴマーとは対照的に、官能性化合物は、液晶性ポリマーの主鎖との広範囲に及ぶ反応を受けることができ、しばしば鎖の開裂を引き起こす。このため一般には、官能性化合物は、液晶性ポリマーが形成された後にだけ液晶性ポリマーとブレンドするのが望ましい。熱可塑性組成物を製造するために、溶融ブレンディングは、例えば、約200℃〜約450℃の温度範囲内にて、実施態様によっては約220℃〜約400℃の温度範囲内にて、そして実施態様によっては約250℃〜約350℃の温度範囲内にて行ってよい。種々の溶融ブレンディング法のいずれも、一般には本発明において使用することができる。例えば、成分(例えば、液晶性ポリマーや流動性改良剤等)は、回転できるように据え付けられ、且つバレル(例えばシリンダー状バレル)内に収容された少なくとも1つのスクリューを含んでいて、供給セクションと、スクリューの長さに沿って供給セクションより下流に位置する溶融セクションとを画定している押出機に別々に供給することもできるし、あるいは組み合わせて供給することもできる
[0065]押出機は、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機であってよい。例えば、
図3を参照すると、ハウジングもしくはバレル114と、適切なドライブ124(通常は、モーターとギヤボックスを含む)により一方の端部にて回転可能できるように駆動されるスクリュー120とを含む一軸スクリュー押出機の1つの実施態様が示されている。必要に応じて、2つの別個のスクリューを含む二軸スクリュー押出機を使用することができる。スクリューの形状は本発明にとって特に重要なことではなく、当業界に公知のように、スクリューは、いかなる数及び/又は配向のねじ山とチャンネルを含んでもよい。
図3に示すように、例えば、スクリュー120は、スクリュー120のコアの周りに半径方向に広がった一般にはらせん形のチャンネルを形成するねじ山を含む。ベースの液晶性ポリマー組成物(必要に応じて芳香族アミドオリゴマーを含む)をバレル114中の開口を通して供給セクション132に供給するためのホッパー40が、ドライブ124に隣接して設置されている。ドライブ124と向かい合っているのが押出機80の排出端144であり、ここで押出されるプラスチックはさらなる加工を施すためのアウトプットである。
【0098】
[0066]供給セクション132と溶融セクション134は、スクリュー120の長さに沿って画定されている。供給セクション132はバレル114のインプット部分であり、ここでベースの液晶性ポリマーが加えられる。溶融セクション134は、液晶性ポリマーが固体から液体に変わる相変化セクションである。押出物が製造されるときの、これらセクションについての正確に示された描写はないが、供給セクション132と、固体から液体への相変化が起こりつつある溶融セクション134を確実に識別することは、当業者にはよく知られているとおりである。必ずしも必要ではないが、押出機80はさらに、バレル114の排出端に隣接していて、溶融セクション134の下流に設置される混合セクション136を有してよい。必要に応じて、押出機の混合セクション及び/又は溶融セクション内に、1つ以上の分配混合エレメント及び/又は分散混合エレメントを使用することができる。好適な一軸スクリュー押出機用分配ミキサーとしては、例えば、Saxonミキサー、Dulmageミキサー、およびCavity Transferミキサー等がある。同様に、好適な分散ミキサーとしては、Blisterリングミキサー、Leroy/Maddockミキサー、およびCRDミキサー等がある。当業界によく知られているように、ミキシングは、ポリマーメルトのフォールディングと再配向(reorientation)をつくり出すピンをバレル中に使用することによってさらに改良することができる(例えば、Buss Kneader押出機、Cavity Transferミキサー、およびVortex Intermeshing Pinミキサーにおいて使用されているピン)。
【0099】
[0067]流動助剤(例えば、非官能性化合物及び/又は官能性化合物)は、押出機のどのセクションでも加えることができる(例えば、ホッパー40、供給セクション132、溶融セクション134、及び/又は混合セクション136)。1つの実施態様では、例えば、流動助剤は、液晶性ポリマーより下流にて加えることができる(例えば、溶融セクション134及び/又は混合セクション136に)。
【0100】
[0068]繊維が使用される場合、繊維は、ホッパー40に加えることもできるし、あるいはそれより下流の場所にて加えることもできる。1つの特定の実施態様では、繊維は、液晶性ポリマーが供給される箇所より下流の場所にて加えることができるが、それでもなお溶融セクションより前である。同様に、流動性改良剤は、繊維の付加より下流にて加えるのが望ましい。
図3には、例えば、押出機80の供給セクション132のゾーン内に設置されるホッパー42が示されている。ホッパー42に供給される繊維は、最初は比較的長くてよい(例えば、約1,000〜5,000マイクロメートルの、実施態様によっては約2,000〜4,500マイクロメートルの、そして実施態様によっては約3,000〜4,000マイクロメートルの体積平均長さを有する)。それにもかかわらず、液晶性ポリマーがまだ固体状態となっている場所においてこれらの長い繊維を供給することによって、該ポリマーは、繊維のサイズを、上記したような体積平均長さと長さ分布に低下させるための研磨剤として作用することができる。
【0101】
[0069]必要に応じて、スクリューの長さ(“L”)対直径(“D”)の比は、押出量と繊維長の低下との間の最適なバランスを達成するように選ぶことができる。L/D値は、例えば約15〜約50、実施態様によっては約20〜約45、そして実施態様によっては約25〜約40であってよい。スクリューの長さは、例えば約0.1〜5メートル、実施態様によっては約0.4〜4メートル、そして実施態様によっては約0.5〜2メートルであってよい。同様に、スクリューの直径は、約5〜150ミリメートル、実施態様によっては約10〜120ミリメートル、そして実施態様によっては約20〜80ミリメートルであってよい。繊維が供給される箇所後のスクリューのL/D比も、特定の範囲内で調整することができる。例えば、スクリューは、繊維が押出機に供給される箇所からスクリューの末端まで画定されるブレンディング長(blending length)(“L
B”)を有し、このブレンディング長は、スクリューの全長よりは短い。上記したように、液晶性ポリマーが溶融する前に繊維を加えるのが望ましいと考えられ、このことは、L
B/D比が比較的高いということを意味する。しかしながら、L
B/D比が高すぎると、ポリマーの分解が起こることがある。したがって、繊維が供給される箇所後のスクリューのL
B/D比は、一般には約4〜約20であり、実施態様によっては約5〜約15であり、そして実施態様によっては約6〜約10である。
【0102】
[0070]長さと直径に加えて、押出機の他の面も、所望の繊維長を達成しやすくなるように選ぶことができる。例えば、スクリューの速度は、所望の滞留時間、せん断速度、または溶融プロセシング温度等を達成するように選ぶことができる。一般には、摩擦エネルギーの増大は、押出機内の材料に対する、回転するスクリューによって及ぼされるせん断に起因し、繊維が使用される場合は、繊維の破断をもたらす。破断の程度は、少なくともある程度はスクリュー速度に依存するであろう。例えば、スクリュー速度は、約50〜200回転/分(“rpm”)の範囲であってよく、実施態様によっては約70〜150rpmの範囲であってよく、そして実施態様によっては約80〜120rpmの範囲であってよい。
さらに、溶融ブレンディング時の見掛けのせん断速度は、約100秒
-1〜約10,000秒
-1の範囲であってよく、実施態様によっては約500秒
-1〜約5000秒
-1の範囲であってよく、そして実施態様によっては約800秒
-1〜約1200秒
-1の範囲であってよい。見掛けのせん断速度は4Q/πR
3に等しく、ここでQは、ポリマーメルトの体積流量(“m
3/s”)であり、Rは、溶融ポリマーが流れるキャピラリー(例えば押出機ダイ)の半径(“m”)である。
【0103】
[0071]上記の実施態様では、押出機内にて繊維の長さが低下する。しかしながら、理解しておかねばならないことは、このことは決して本発明の要件ではない、という点である。例えば、繊維は、所望の長さにて押出機に単純に供給することができる。このような実施態様では、繊維は、例えば、押出機の混合セクション及び/又は溶融セクションに供給することもできるし、あるいは液晶性ポリマーと同時に供給セクションにでも供給することができる。さらに他の実施態様では、繊維が全く使用されない場合がある。
【0104】
[0072]いったん作製されると、熱可塑性組成物は、当業界に公知の方法を使用して、あらゆる種類の異なる成形品に成形することができる。例えば、成形品は、乾燥・予熱した可塑性顆粒を金型中に射出する、という一成分射出成形法を使用して成形することができる。使用する成形法にかかわらず、本発明の熱可塑性組成物(高い流動性と優れた機械的特性とのユニークな組み合わせを有する)は、寸法許容差の小さい部品用に特によく適している。このような部品は、例えば、一般には少なくとも1つのマイクロサイズの寸法(例えば、厚さ、幅、および高さ等)を有する(例えば、約500マイクロメートル以下、実施態様によっては約100〜450マイクロメートル、そして実施態様によっては約200〜400マイクロメートル)。
【0105】
[0073]1つのこのような部品はファインピッチ電気コネクターである。さらに詳細に言えば、このような電気コネクターは、中央演算処理装置(“CPU”)をプリント回路基板に着脱可能な形で取り付けるために使用されることが多い。コネクターは、接続ピンを受け取るように形づくられた挿入通路を有してよい。これらの通路は、対向する壁体(熱可塑性樹脂から製造される)によって画定される。所望の電気性能を達成しやすくするために、所定のスペース内に必要とされる多くの接続ピンを収容できるよう、これらのピンのピッチは、一般には小さい。これにより、その結果として、ピン挿入通路のピッチおよびそれらの通路を仕切る対向壁体の幅も小さい、ということが求められる。例えば、壁体は、約500マイクロメートル以下の、実施態様によっては約100〜450マイクロメートルの、そして実施態様によっては約200〜400マイクロメートルの幅を有してよい。これまで、このような薄い幅の金型を熱可塑性樹脂でうまく充填することはしばしば困難であった。しかしながら、そのユニークな特性により、本発明の熱可塑性組成物は、ファインピッチコネクター壁体を製造するのに特によく適している。
【0106】
[0074]1つの特に適したファインピッチ電気コネクターを
図1に示す。基板側部(board-side portion)C2を回路基板Pの表面上に据え付けることができる電気コネクター200を示す。電気コネクター200はさらに、基板側部コネクター(board-side connector)C2に連結されることによって、個別のワイヤー3を回路基板Pに接続するように構築された配線材料側部(wiring material-side portion)C1を含んでよい。基板側部C2は、配線材料側部コネクター(wiring material-side connector)C1がはめ込まれる適合凹部10aと、ハウジング10の幅方向にて細くて長い構造とを有する第1のハウジング10を含んでよい。同様に、配線材料側部C1は、ハウジング20の幅方向にて細くて長い第2のハウジング20を含んでよい。第2のハウジング20において、上方と下方の端子受入キャビティ22を含む二段配列をつくり出すよう、複数の端子受入キャビティ22を、幅方向にて平行に設けることができる。端子5(個別ワイヤー3の遠位端に取り付けられる)が、端子受入キャビティ22のそれぞれ内に収容される。必要に応じて、ハウジング20の上に、基板側部コネクターC2上の接続部材(図示せず)に相当するロッキング部28(かみ合い部)を設けることもできる。
【0107】
[0075]上記したように、第1のハウジング10及び/又は第2のハウジング20の内側壁体は比較的小さい幅寸法を有してよく、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる。壁体を、例えば、
図2により詳細に示す。図示のように、挿入通路またはスペース225が、接続ピンを収容できる対向壁体224間に画定されている。壁体224は、上記の範囲内である幅“w”を有する。繊維(例えば成分400)を含有する熱可塑性組成物から壁体224が製造される場合、このような繊維は、壁体の幅と最良の形で適合するよう、ある特定の範囲内の体積平均長さと狭い長さ分布を有してよい。例えば、[壁体の少なくとも1つの幅]対[繊維の体積平均長さ]の比は、約0.8〜3.2であり、実施態様によっては約1.0〜3.0であり、そして実施態様によっては約1.2〜2.9である。
【0108】
[0076]壁体に加えて、あるいは壁体の代わりに、ハウジング他のいかなる部分も、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる、ということを理解しておくべきである。例えば、コネクターはさらに、ハウジングを封入するシールドを含んでよい。シールドの一部もしくは全部を、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる。例えば、ハウジングとシールドはそれぞれ、本発明の熱可塑性組成物から単一成形される一個構成構造物であってよい。同様に、シールドは、第1のシェルと第2のシェル(これらのそれぞれは、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる)を含む二個構成構造物であってよい。
【0109】
[0077]言うまでもなく、本発明の熱可塑性組成物はさらに、寸法許容差の小さいさまざまな他の部品において使用することができる。例えば、本発明の熱可塑性組成物は、電子部品において使用するための平面基板に成形することができる。基板は薄くてよく、例えば、約500マイクロメートル以下の、実施態様によっては約100〜450マイクロメートルの、そして実施態様によっては約200〜400マイクロメートルの厚さを有する。このような基板を使用してよい電子部品の例としては、例えば、携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、小型のポータブルコンピュータ(例えば、ウルトラポータブルコンピュータ、ネットブックコンピュータ、およびタブレットコンピュータ)、リストウォッチ型デバイス、ペンダント型デバイス、ヘッドフォン型デバイス、イヤホン型デバイス、無線通信能力を有するメディアプレイヤー、ハンドヘルドコンピュータ(携帯情報端末と呼ばれることもある)、遠隔制御装置、全地球測位システム(GPS)デバイス、ハンドヘルドゲーミングデバイス、蓄電池カバー、スピーカー、および集積回路(例えばSIMカード)等がある。
【0110】
[0078]例えば、1つの実施態様では、種々の公知の方法(例えば、レーザー・ダイレクト・ストラクチャリングや電気メッキ等)を使用して、平面基板を1つ以上の導電素子とともに利用することができる。導電素子は、種々の異なる目的を果たす。例えば、1つの実施態様では、導電素子は集積回路(例えば、SIMカードに使用される集積回路)を形成する。他の実施態様では、導電素子は、種々の異なるタイプのアンテナ(例えば、パッチアンテナ構造物、逆Fアンテナ構造物、クローズドスロットアンテナ構造物、オープンスロットアンテナ構造物、ループアンテナ構造物、モノポール、ダイポール、平板逆Fアンテナ構造物、およびこれら設計物の混成物等)を形成する。得られるアンテナ構造物は、得られる内部スペースが割合小さい比較的コンパクトなポータブル電子部品(例えば上記のようなもの)のハウジング中に組み込むことができる。
【0111】
[0079]
図4〜5に示すアンテナ構造物を含む1つの特に好適な電子部品は、携帯電話能力を有するハンドヘルドデバイス410である。
図4に示すように、デバイス410は、プラスチック材料、金属材料、他の適切な誘電材料、他の適切な導電材料、またはこのような材料の組み合わせから製造されるハウジング412を有してよい。デバイス410の前面上にディスプレイ414(例えばタッチスクリーンディスプレイ)を設けることができる。デバイス410はさらに、スピーカーポート440と他のインプット-アウトプットポートを有してよい。ユーザーインプットを集約するために、1つ以上のボタン438と他のユーザーインプットデバイスを使用することができる。
図5に示すように、デバイス410の裏面442上に、さらにアンテナ構造物426が設けられているが、アンテナ構造物は通常、デバイスの任意の所望場所に配置することができる、ということを理解しておくべきである。上記したように、アンテナ構造物426は、本発明の熱可塑性組成物から製造される平面基板を含んでよい。アンテナ構造物は、さまざまな公知の方法のいずれかを使用して、電子デバイス内の他の成分に電気的に接続することができる。例えば、ハウジング412またはハウジング412の一部は、アンテナ構造物426のための導電性接地平面として作用してよい。
【0112】
[0080]本発明の熱可塑性組成物から製造される平面基板はさらに、他の用途でも使用することができる。例えば、1つの実施態様では、平面基板を使用してコンパクトカメラモジュール(“CCM”)のベース〔一般には無線通信デバイス(例えば携帯電話)に使用される〕を製造することができる。例えば、
図6〜7を参照すると、コンパクトカメラモジュール500の1つの特定の実施態様が詳細に示されている。図示のように、コンパクトカメラモジュール500は、ベース506の上に横たわるレンズ集成体504を含む。そして次に、ベース506が任意のメイン基板508上に横たわる。比較的薄いという特質を有することから、ベース506及び/又はメイン基板508は、上記の本発明の熱可塑性組成物から製造するのが特に適している。レンズ集成体504は、当業界に公知のさまざまな構成のいずれを有してもよく、固定焦点型レンズ及び/又は自動焦点型レンズを含んでよい。例えば1つの実施態様では、レンズ集成体504は、レンズ604を収容する中空バレルの形態をとっており、レンズ604は、メイン基板508上に配置されていて、回路601によって制御されるイメージセンサ602と連通している。バレルは、さまざまな形状(矩形や円筒形等)のいずれを有してもよい。特定の実施態様では、バレルも本発明の熱可塑性組成物から製造することができ、バレルは上記した範囲内の壁体厚さを有してよい。理解しておかねばならないことは、カメラモジュールの他の部分も、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる、という点である。例えば、図示のように、ポリマーフィルム510(例えばポリエステルフィルム)及び/又は断熱キャップ502がレンズ集成体504を保護する。実施態様によっては、フィルム510及び/又はキャップ502も、本発明の熱可塑性組成物から製造することができる。
【0113】
[0081]以下の実施例を参照することで、本発明をよりよく理解することができる。
【0114】
試験法
[0082]溶融粘度: 溶融粘度(Pa-s)は、ISO試験番号11443に従って350℃で、およびDynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して1000秒
-1のせん断速度にて測定した。レオメーターオリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、および180°の入口角を有した。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0115】
[0083]融解温度: 融解温度(“T
m”)は、当業界に公知の示差走査熱量測定法(“DSC”)によって測定した。融解温度は、ISO試験番号11357に従って測定される、示差走査熱量測定法(DSC)のピーク溶融温度である。TA Q2000機器に対して行われたDSC測定値を使用して、DSC手順に従ってサンプルを、ISO標準10350に記載のように、20℃/分にて加熱・冷却した。
【0116】
[0084]荷重撓み温度(“DTUL”): 荷重下での撓み温度を、ISO試験番号75-2(技術的にASTM D648-07に相当する)に従って測定した。さらに詳細には、80mmの長さと10mmの厚さと4mmの幅を有する試験ストリップサンプルを、規定荷重(最大外側繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点曲げ試験に付した。試験片を下げてシリコーンオイル浴中に入れ、そこで試験片が0.25mm(ISO試験番号75-2の場合は0.32mm)撓むまで温度を2℃/分にて上昇させた。
【0117】
[0085]引張モジュラス、引張応力、および引張伸び: 引張特性は、ISO試験番号527(技術的はASTM D638に相当する)に従って試験する。モジュラスと強度の測定は、80mmの長さと10mmの厚さと4mmの幅を有する同じ試験ストリップサンプルに対して行う。試験温度は23℃、試験速度は1mm/分または5mm/分である。
【0118】
[0086]曲げモジュラス、曲げ応力、および曲げ歪: 曲げ特性は、ISO試験番号178(技術的にASTM D790に相当する)に従って試験する。この試験は、64mmのサポートスパン(support span)に対して行う。試験は、カットされていないISO3167多目的バーの中央部分に対して行う。試験温度は23℃、試験速度は2mm/分である。
【0119】
[0087]ノッチ付シャルピー衝撃強さ: ノッチ付シャルピー特性は、ISO試験番号179-1(技術的にASTM D256、方法Bに相当する)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチ(0.25mmのベース半径)とタイプ1試験片サイズ(80mmの長さ、10mmの幅、および4mmの厚さ)を使用して行う。試験片は、単一歯のフライス盤を使用して、多目的バーの中央部分からカットする。試験温度は23℃である。
【0120】
[0088]繊維長: 体積平均繊維長は、最初に幾つかのペレットサンプル(例えば7または8個)を420℃にてマッフル炉中に一晩静置することによって測定する。得られた灰を、グリセロール界面活性剤を含有する水溶液中に浸漬して、ガラス繊維を分散させる。次いでこの水溶液をスライドガラス上に置き、画像解析システムによって画像を収集する。ImagePro(商標)ソフトウェアによって、画像からガラス繊維が選択的に選ばれ、ソフトウェアが、選択されたガラス繊維の長さを、較正長さに基づいて自動的に測定する。少なくとも500ガラス繊維がカウントされるまで測定を続ける。次いで、体積平均繊維長と体積平均分布を算出する。
【0121】
[0089]ウェルドライン強度: ウェルドライン強度は、最初に、当業界によく知られている熱可塑性組成物サンプルから射出成形ライングリッドアレイ(“LGA”)コネクター(49mm×39mm×1mmのサイズ)を作製することによって測定される。LGAコネクターが作製されたら、これをサンプルホルダー上に配置する。次いで、コネクターの中央部を、5.08mm/分の速度で移動するロッドによる引張力に付す。ピーク応力を、ウェルドライン強度の推定値として記録する。
【0122】
N1,N4-ジフェニルテレフタルアミド化合物Aの合成
[0090]塩化テレフタロイルとアニリンからの化合物Aの合成は、下記のスキームに従って行うことができる。
【0124】
[0091]実験のシステム構成は、オーバーヘッドメカニカルスターラーを連結したガラスロッドスターラーを装備した2Lガラスビーカーからなっていてよい。ジメチルアセトアミド(“DMAC”)(3L)をビーカーに加え、このビーカーを氷浴中に浸漬して、システムを10〜15℃に冷却することができる。次いで、絶えず撹拌しながら、溶媒にアニリン(481.6g)を加えることができ、得られた混合物を10〜15℃に冷却することができる。塩化テレフタロイル(300g)を、反応混合物の温度が30℃未満に保持されるように、冷却された撹拌混合物に徐々に加えることができる。酸塩化物を1〜2時間で加えることができ、その後に混合物を、10〜15℃にてさらに3時間、次いで室温にて一晩撹拌することができる。反応混合物は乳白色であり(生成物の溶媒中微細懸濁液)、濾紙とブフナー漏斗を使用して減圧濾過することができる。粗生成物をアセトン(2L)で、次いで温水(2L)で洗浄することができる。生成物を室温で一晩風乾し、次いで減圧オーブーン中にて150℃で4〜6時間乾燥することができる。生成物(464.2g)は高結晶質の白色固体である。融点は346〜348℃である〔示差走査熱量法(“DSC”)によって測定〕。
【0125】
N1,N4-ジフェニルイソテレフタナリド化合物Bの合成
[0092]塩化イソフタロイルとアニリンからの化合物Bの合成は、下記のスキームに従って行うことができる。
【0127】
[0093]実験のシステム構成は、オーバーヘッドメカニカルスターラーを連結したガラスロッドスターラーを装備した2Lガラスビーカーからなっていてよい。DMAc(1.5L)をビーカーに加え、このビーカーを氷浴中に浸漬して溶媒を10〜15℃に冷却することができる。絶えず撹拌しながら、溶媒にアニリン(561.9g)を加えることができ、得られる混合物を10〜15℃に冷却することができる。塩化イソフタロイル(350gを200gのDMAc中に溶解)を、反応混合物の温度が30℃未満に保持されるように、冷却された撹拌混合物に徐々に加えることができる。酸塩化物を1時間で加え、その後に混合物を、10〜15℃にてさらに3時間、次いで室温にて一晩撹拌した。反応混合物は、外観が乳白色であった。1.5Lの蒸留水を加えて沈殿させ、次いで濾紙とブフナー漏斗を使用して減圧濾過することによって生成物を回収した。粗生成物をアセトン(2L)で、次いで温水(2L)で洗浄した。生成物を室温で一晩風乾し、次いで減圧オーブーン中にて150℃で4〜6時間乾燥した。生成物(522g)は白色固体であった。融点は290℃であった(DSCにより測定)。
【0128】
N1,N3,N5-トリフェニルベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド化合物Jの合成
[0094]化合物Jは、塩化トリメソイルとアニリンから下記のスキームに従って合成することができる。
【0130】
[0095]実験のシステム構成は、オーバーヘッドメカニカルスターラーを連結したガラスロッドスターラーを装備した2Lガラスビーカーからなっていてよい。塩化トリメソイル(200g)をジメチルアセトアミド(“DMAc”)(1L)中に溶解し、氷浴によって10〜20℃に冷却することができる。酸塩化物の撹拌溶液にアニリン(421g)を1.5〜2時間にて滴下することができる。アミンの添加が完了した後、反応混合物をさらに45分撹拌することができ、その後に温度を約1時間で90℃に上げる。混合物を室温で一晩静置する。1.5Lの蒸留水を加えることにより沈殿させ、次いで濾紙とブフナー漏斗を使用して減圧濾過することによって生成物を回収することができる。粗生成物をアセトン(2L)で、次いで温水(2L)で洗浄することができる。生成物を室温で一晩風乾し、次いで減圧オーブーン中にて150℃で4〜6時間乾燥することができる。生成物(250g)は白色固体であり、319.6℃の融点〔示差走査熱量法(“DSC”)により測定〕を有する。
【0131】
1,3-ベンゼンジカルボキサミド,N1,N3-ジシクロヘキシル化合物K1の合成
[0096]塩化イソフタロイルとシクロヘキシルアミンからの化合物K1の合成は、下記のスキームに従って行うことができる。
【0133】
実験のシステム構成は、オーバーヘッドメカニカルスターラーを連結したガラスロッドスターラーを装備した1Lガラスビーカーからなった。ジメチルアセトアミド(1L)(代わりにN-メチルピロリドンも使用できる)とトリエチルアミン(250g)中に、室温にてシクロヘキシルアミン(306g)を混合した。次いで、このアミン溶液に塩化イソフタロイル(250g)を、絶えず撹拌しながら1.5〜2時間で徐々に加えた。酸塩化物の添加速度を、反応温度が60℃未満に保持されるように維持した。塩化ベンゾイルの添加完了後、反応混合物を85〜90℃に徐々に加温し、次いで約45〜50℃に自然冷却した。混合物を室温で一晩(少なくとも3時間)静置した。1.5Lの蒸留水を加えることにより沈殿させ、次いで濾紙とブフナー漏斗を使用して減圧濾過することによって生成物を回収した。粗生成物をアセトン(250ml)で、次いで温水(500ml)で洗浄した。生成物(収率:約90%)を室温で一晩風乾し、次いで減圧オーブーン中にて150℃で4〜6時間乾燥した。生成物は白色固体であった。プロトンNMRによる特性決定は以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz d
6-DMSO):8.3(s,2H,CONH),8.22(s,1H,Ar),7.9(d,2H,Ar),7.5(s,1H,Ar),3.7(ブロードs,2H,シクロヘキシル),1.95-1.74 ブロードs,4H,シクロヘキシル)及び1.34-1.14(m,6H,シクロヘキシル)。
【実施例】
【0134】
実施例1
[0097]液晶性ポリマーは、下記のプロセスに従って製造される。最初に、300リットルのHastalloy C反応器に、4-ヒドロキシ安息香酸(65.9ポンド)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(7.2ポンド)、テレフタル酸(2.8ポンド)、4,4'-ビフェノール(18.8ポンド)、4-ヒドロキシアセトアニリド(5.8ポンド)、および3.4gの酢酸カリウムを装入する。さらに化合物Aを、それが得られるポリマーの2.0重量%または2.8重量%を構成するような量にて加える。
【0135】
[0098]反応器に、パドル形メカニカルスターラー、熱電対、気体入口、および蒸留ヘッドを取り付ける。ゆっくりした窒素パージの下で、無水酢酸(99.7%灰、76.1ポンド)を加える。乳白色のスラリーを120rpmで撹拌し、130分のうちに190℃に加熱する。この時間中に、約42ポンドの酢酸を反応器から蒸留する。次いで混合物をステンレス鋼製反応器に移し、1℃/分にて245℃に加熱する。この時点で、副生物である酢酸の安定した還流を確立し、加熱速度を約0.5℃/分に落とす。反応混合物の温度が305℃に達したら、還流を止め、バッチを約1℃/分の速度で加熱する。加熱の間に、混合物が、次第に黄色でやや高粘度になり、副生物酢酸の蒸留が終わりになるにつれて、蒸気の温度が徐々に100℃未満に低下する。バッチが350℃のターゲット温度に達するまで、加熱を続ける。窒素パージを止め、減圧を加えて、45分で圧力を5mm未満にゆっくり低下させる。減圧下の時間が進むにつれて、酢酸の最後の痕跡量が除去され、バッチはより高粘度になる。充分な減圧(<5mm)下での30分後、系に窒素を導入し、溶融ポリマーを反応器から、3孔ダイプレートを通して3PSIGの圧力にて押出す。ポリマーストランドを冷却し、水浴を通過させることによって、次いでペレットに細断することによって固化させる。
【0136】
[0099]こうして得られるポリマーは、325.6℃のT
m、および350℃の温度でのキャピラリーレオロジーによる測定にて、100秒
-1のせん断速度で5.0Pa-sの溶融粘度を有する。
【0137】
実施例2
[00100]液晶性ポリマー、アルミニウム三水和物(“ATH”)、4,4'-ビフェノール(“BP”)、2,6-ナフタルジカルボキシ酸(2,6-naphthal dicarboxy acid)(“NDA”)、ガラス繊維、およびタルクの種々の組み合わせを配合することによってサンプルを作製する。サンプル2とサンプル4〜6においては、実施例1のポリマーを使用する。サンプル7では、作製時に化合物Aが加えられないで、代わりに下記のような他の成分が配合される、という点を除いて、実施例1と同様の仕方で製造されるポリマーが使用される。2つの比較用サンプルも作製する。さらに詳細には、サンプル1は、実施例1のポリマーを含有するが、ATH/BP/NDAの添加はない。同様に、サンプル3は、ATH/BP/NDAを含有するが、化合物Aの添加はない。
【0138】
[00101]個々の成分にかかわりなく、サンプル組成は一般に、下記のように形成される。液晶性ポリマーのペレットを150℃にて一晩乾燥する。その後、ポリマーとGlycolube(商標)Pをブレンドし、互いに完全にかみ合っていて共回転するZSK-25WLE二軸スクリュー押出機(スクリューの長さは750mm、スクリューの直径は25mm、およびL/D比は30である)の供給口に供給する。押出機は温度ゾーン1〜9を有し、それぞれ330℃、330℃、310℃、310℃、310℃、310℃、320℃、320℃、および320℃に設定することができる。スクリューの設計は、溶融がゾーン4にて始まるように選択する。ポリマーは、定量フィーダーによって供給口に供給する。ガラス繊維とタルクを、それぞれゾーン4とゾーン6に供給する。いったん溶融ブレンドされたら、サンプルをストランドダイを通して押出し、水浴を通過させて冷却し、そしてペレット化させた。
【0139】
[00102]サンプルの特性を表1に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
[00103]サンプル1〜7から部品を射出成形し、それらの熱的・機械的特性に関して試験する。結果を表2に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
[00104]本発明のこれらの改良形と変形、および他の改良形と変形は、当業者であれば、本発明の要旨を逸脱することなく実施することができる。さらに、理解しておかねばならないことは、種々の実施態様の態様は、全体的にも、または部分的にも置き換えることができる、という点である。さらに、当業者には言うまでもないことであるが、上記の説明は例として記載しただけであって、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている本発明を限定することを意図していない。