特表2015-523229(P2015-523229A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-523229(P2015-523229A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】切削工具組立体
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/22 20060101AFI20150717BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
   B23C5/22
   B23B27/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-525370(P2015-525370)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月30日
(86)【国際出願番号】KR2013007075
(87)【国際公開番号】WO2014025187
(87)【国際公開日】20140213
(31)【優先権主張番号】10-2012-0086927
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0090238
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508151781
【氏名又は名称】デグテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンギュ
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022MM05
3C046EE01
(57)【要約】
カッター本体と、クランプピンと、切削インサートと、セットスクリュとを有する。前記クランプピンは、前記カッター本体に挿入されて前記切削インサートをインサートポケットに固定する。前記セットスクリュは、前記カッター本体のネジ孔に締結されて前記クランプピンを前記インサートポケット側に加圧する。前記切削インサートの側面は第一の接触部で前記インサートポケットと接触する。前記クランプピンのヘッドは第二の接触部で前記切削インサートのボアの内周面と接触する。前記第一及び第二の接触部は、モーメントが前記切削インサートで前記第一の接触部を中心に前記インサートポケットの底壁に向かい作用するように位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、2個以上の側壁と、前記側壁間のコーナー部とを有するインサートポケットと、前記底壁から傾斜して延長するクランプピンホールと、前記クランプピンホールに対して傾斜しており、内側端部で前記クランプピンホールの下側と会うネジ孔とを備えるカッター本体と、
前記クランプピンホールに挿入されて長手方向に延長する中心軸(C1)を有するピンボディと、前記中心軸(C1)に対して角度(α)をなす中心軸(C2)に沿って延長して前記インサートポケットのコーナー部に向かう加圧面を有するヘッドと、前記ピンボディの下側に形成されるノッチとをを備えるクランプピンと、
上面と、下面と、前記上面と前記下面との間に位置して前記インサートポケットの側壁と接触する側面と、前記ヘッドの前記加圧面が接触する内周面を有するボアとを備える切削インサートと、
前記ネジ孔に締結され、前記クランプピンの前記ノッチと係わり合って前記クランプピンのヘッドを前記インサートポケットの前記底壁側に加圧するセットスクリュと、
を含み、
前記切削インサートの前記側面が前記インサートポケットの前記側壁と接触する第一の接触部(P3)及び前記ヘッドの前記加圧面が前記ボアの前記内周面と接触する第二の接触部(P4)は、モーメントが前記第一の接触部(P3)を中心に前記インサートポケットの前記底壁に向かって前記切削インサートに作用するように位置する、切削工具組立体。
【請求項2】
前記底壁からの前記第一の接触部(P3)の高さは前記第二の接触部(P4)の前記底壁からの高さより大きい、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項3】
前記ヘッドは前記コーナー部に向かうように前記中心軸(C2)を中心に角度(γ)程捩れている、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項4】
前記角度(γ)は0〜90度の範囲である、請求項3に記載の切削工具組立体。
【請求項5】
前記側壁のうち前記第一の接触部(P3)を除いた部分の全部または一部が前記側面に対して角度(ε、ε´)程離隔されている、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項6】
前記角度(ε)は1度以下である、請求項5に記載の切削工具組立体。
【請求項7】
前記ボアの前記内周面は前記ボアの中心軸(C3)に対して角度(δ)に傾斜している、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項8】
前記角度(δ)は10〜60度の範囲である、請求項7に記載の切削工具組立体。
【請求項9】
前記角度(δ)は15〜30度の範囲である、請求項8に記載の切削工具組立体。
【請求項10】
前記角度(α)は30〜60度の範囲である、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項11】
前記角度(α)は40〜45度の範囲である、請求項10に記載の切削工具組立体。
【請求項12】
前記ヘッドの前記加圧面と前記ボアの前記内周面との間の接触角(β)は60〜150度の範囲である、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項13】
前記ヘッドの前記加圧面は前記ボアの前記内周面と前記接触角(β)の範囲内において少なくとも部分的に接する、請求項12に記載の切削工具組立体。
【請求項14】
前記クランプピンホールの閉鎖端部と前記ピンボディの下端部との間に配置されるスプリングをさらに含む、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項15】
前記ピンボディは前記ノッチの反対側で前記ピンボディから突出して前記ピンボディの長手方向に沿って延長する位置決め用リッジを含む、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項16】
前記ピンボディは前記ノッチの反対側で前記ピンボディから突出するストッパ突起を含む、請求項1に記載の切削工具組立体。
【請求項17】
前記ストッパ突起は前記ピンボディの長手方向において前記ノッチの谷部より上側に位置する、請求項16に記載の切削工具組立体。
【請求項18】
前記クランプピンホールと前記ピンボディは楕円形または競走トラック形状の横断面を有する、請求項1に記載の切削工具組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削インサートをカッター本体に固定するクランプピンを備える切削工具組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋削加工またはミリング加工などに用いられる切削工具は工具ヘッドまたはカッター本体に交換可能に装着される切削インサートを有する。図1は米国特許公報第3,316,616号に開示された従来技術の切削工具を示す。図1を参照すると、切削工具30は、工具ヘッド31と、切削インサート32と、チルトピン装置と、クランプ36とを有する。チルトピン装置はチルトピン33と、中間部34と、スクリュ35とを備える。スクリュ35が工具ヘッド31に締結されることによって、中間部34がチルトピン33側に押されるようになり、これによりチルトピン33が切削インサート32をシート37側に加圧する。クランプ36がチップブレーカ38を通じて切削インサート32を押し、切削インサート32を工具ヘッド31に固定する。
【0003】
図2は他の従来技術であってミリングカッターを示す。図2を参照すると、ミリングカッター40はカッター本体41と、切削インサート42と、クランプスタッド43と、セットスクリュ44(set screw)とを有する。クランプスタッド43はボディ43aと、ヘッド43bとを有する。切削インサート42がカッター本体41に形成されたインサートポケット41aに置かれた後、クランプスタッド43のボディ43aが切削インサート42を貫通してカッター本体41に形成されたホール41bに挿入される。その後に、セットスクリュ44がクランプスタッド43のボディ43aと係わり合いクランプスタッド43をホール41bに沿って下方に移動させる。従って、ヘッド43bが切削インサート42をカッター本体41に向かって加圧し、切削インサート42をカッター本体41に固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示した切削工具30において、切削インサート32を工具ヘッド31から分離するためには、クランプ36及びチップブレーカ38がまず除去されなければならない。従って、切削インサート32の交換が面倒で切削インサート32を交換するのにかなりの時間が要される。また、図1の切削工具にはポジティブ逃げ角を有する切削インサートが装着され得るが、中間部34がチルトピン33を過度に圧迫すると、ポジティブ逃げ角の切削インサートが上方に移動し、シート37から離隔され得る。従って、切削インサート32と工具ヘッド31間のクランピング力が弱くなり得る。
【0005】
図2に示したミリングカッター40において、切削インサート42をカッター本体41から分離するためには、クランプスタッド43がカッター本体41のホール41bから完全に分離されなければならない。これも切削インサート42の交換を面倒にし、切削インサート42の交換にかなりの時間が要される。
【0006】
本発明は従来技術の前述した問題を解決するためのものである。本発明は切削インサートのタイプ(例えば、ネガティブ型切削インサート、ポジティブ型切削インサート、両面型切削インサート)に関係なくクランプピンを通じて切削インサートをカッター本体に確実に固定可能な切削工具組立体を提供する。
【0007】
本発明はまた使用利便性を提供するためのものである。本発明はクランプピンをカッター本体から完全に分離しなくても切削インサートの方向を変えたり切削インサートを交換可能な切削工具組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な実施例において、切削工具組立体は、カッターボディと、クランプピンと、切削インサートと、セットスクリュとを含む。カッターボディは、底壁と、2個以上の側壁と、側壁間のコーナー部とを有するインサートポケットと、底壁から傾斜して延長するクランプピンホールと、クランプピンホールに対して傾斜していて内側端部でクランプピンホールの下側と会うネジ孔と、を備える。クランプピンは、クランプピンホールに挿入されて長手方向に延長する中心軸C1を有するピンボディと、中心軸C1に対して角度αをなす中心軸C2に沿って延長してインサートポケットのコーナー部に向かう加圧面を有するヘッドと、ボディの下側に形成されるノッチとを備える。切削インサートは、上面と、下面と、上面と下面との間に位置してインサートポケットの側壁と接触する側面と、ヘッドの加圧面が接触する内周面を有するボアと、を備える。 セットスクリュは、ネジ孔に締結され、クランプピンのノッチと係わり合ってクランプピンのヘッドをインサートポケットの底壁側に加圧する。切削インサートの側面がインサートポケットの側壁と接触する第一の接触部P3及びヘッドの加圧面がボアの内周面と接触する第二の接触部P4は、モーメントが第一の接触部P3を中心にインサートポケットの底壁に向かい切削インサートに作用するように位置する。
【0009】
本発明の実施例において、第一の接触部P3は、第二の接触部P4より底壁からさらに高い。
【0010】
本発明の実施例において、ヘッドはコーナー部に向かうように中心軸C2を中心に角度γ程捩れている。角度γは0〜90度の範囲でもよい。
【0011】
本発明の実施例において、側壁のうち第一の接触部P3を除いた部分の少なくとも一部が側面に対し角度ε、ε´程離隔されている。角度εは1度以下でもよい。
【0012】
本発明の実施例において、ボアの内周面はボアの中心軸C3に対して角度δをなすように傾斜している。角度δは10〜60度の範囲でもよく、望ましくは15〜30度の範囲でもよい。
【0013】
本発明の実施例において、角度αは30〜60度の範囲でもよく、望ましくは40〜45度の範囲でもよい。
【0014】
本発明の実施例において、ヘッドの加圧面とボアの内周面との間の接触角βは60〜150度の範囲である。ヘッドの加圧面はボアの内周面と角度βの範囲内で少なくとも部分的に接する。
【0015】
本発明の実施例において、切削工具組立体はクランプピンホールの閉鎖端部とピンボディの下端部との間に配置されるスプリングとをさらに含む。
【0016】
本発明の実施例において、ピンボディはノッチの反対側においてピンボディの外周面から突出してピンボディの長手方向に沿って延長する位置決め用リッジを含む。
【0017】
本発明の実施例において、ピンボディはノッチの反対側においてピンボディから突出するストッパ突起を含む。ストッパ突起はピンボディの長手方向においてノッチの谷部より上側である。
【0018】
本発明の実施例において、クランプピンホールとピンボディは楕円形または競走トラック形状の横断面を有する。
【発明の効果】
【0019】
実施例の切削工具組立体において、インサートポケットの側壁が切削インサートの側面と接する第一の接触部及びヘッドの加圧面がボアの内周面と接する第二の接触部は、モーメントが第一の接触部を中心にインサートポケットの底壁に向かい、切削インサートに作用するように位置する。また、底壁からの第一の接触部の高さは底壁からの第二の接触部の高さより大きい。従って、クランプピンのヘッドは切削インサートの側面をインサートポケットの側壁に向かい圧迫すると同時に切削インサートをインサートポケットの底壁に向かって圧迫する。従って、クランプピンは切削インサートのタイプに関係なく切削インサートをインサートポケットに堅固に固定できる。
【0020】
実施例の切削工具組立体によれば、クランプピンがカッター本体に挿入された状態で切削インサートが装着されたり分離され得る。従って、作業者はクランプピンをカッター本体から完全に分離しなくても切削インサートの方向を変えたり切削インサートを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術の切削工具を示した断面図である。
図2】他の従来技術の切削工具を示した断面図である。
図3】本発明の一実施例による切削工具組立体を示した分解斜視図である。
図4図3のインサートポケットを示した拡大斜視図である。
図5図3のクランプピンを示した斜視図である。
図6図3のクランプピンの他の方向からの斜視図である。
図7図3のクランプピンを示した側面図である。
図8図3のクランプピンを示した平面図である。
図9図5の9-9線に沿って取った断面図である。
図10図3の切削インサートを示した斜視図である。
図11図10の11-11線に沿って取った断面図である。
図12】切削インサートがインサートポケットに装着されている切削工具組立体の部分平面図である。
図13】切削インサートの装着例及び分離例を示した断面図である。
図14図12の14-14線に沿って取った断面図である。
図15】第一の側壁の他の例を示した断面図である。
図16】本発明の他の実施例による切削工具組立体のクランプピンを示した側面図である。
図17図16の17-17線に沿って取った断面図である。
図18図16のクランプピンがカッター本体に装着されているものを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付した図面を参照して切削工具組立体の実施例を説明する。図面中同一または対応する部分には同一の参照符号が付与されている。
【0023】
ここに開示された実施例による切削工具組立体は被削材の底面及び接線方向面を切削するミリングカッターとして用いられる。実施例による切削工具組立体の適用例がこのようなミリングカッターに限定されるわけではない。実施例による切削工具組立体は多様な金属切削加工の工具として用いられる。
【0024】
図3図15を参照して一実施例による切削工具組立体を説明する。図3を参照すると、切削工具組立体100はカッター本体110と、クランプピン120と、切削インサート130と、セットスクリュ140と、スプリング150とを含む。
【0025】
カッター本体110は例えばミリングマシンの回転軸に装着される。カッター本体110は複数のインサートポケット111と、各インサートポケットに関連したクランプピンホール112と、各インサートポケットに関連したネジ孔113とを含む。
【0026】
各インサートポケット111は切削インサート130を収容するように構成される。図4を参照すると、インサートポケット111は扁平な底壁111aと、第一の側壁111bと、第二の側壁111cと、コーナー部111dとを備える。切削インサート130の上面131に位置する切削エッジが被削材を切削するように切削インサート130がインサートポケット111に装着されれば、底壁111aは切削インサート130の下面132と接し、第一及び第二の側壁111b、111cは切削インサート130の側面133と接する。インサートポケット111は底壁111aと第一の側壁111bとの間に形成される第一の逃げ溝111eと、底壁111aと第二の側壁111cとの間に形成される第二の逃げ溝111fを有する。
【0027】
第一及び第二の側壁111b、111cは底壁111aに対し所定の角に傾斜している。底壁111aと第一及び第二の側壁111b、111cとの間の角度は切削インサート130の下面132と側面133との間の角度により決定される。例えば、切削インサート130がポジティブ逃げ角を有する場合(即ち、切削インサート130の上面131と側面133が鋭角をなす場合)、第一及び第二の側壁111b、111cは底壁111aに対して鈍角に傾斜する。第一の側壁111bと第二の側壁111cはこれらの間に所定の角度をなしている。第一の側壁111bと第二の側壁111cとの間の角度は切削インサート130の上面131または下面132の平面形状によって決定される。例えば、上面131または下面132が四角形の平面形状を有する場合、第一の側壁111bと第二の側壁111cはこれらの間に直角をなす。コーナー部111dは、第一の側壁111bと第二の側壁111cとの間に位置する。
【0028】
図4図13及び図14を参照すると、クランプピンホール112はインサートポケット111の底壁111aからカッター本体110の内側に傾斜して延長する。クランプピンホール112はクランプピン120のピンボディ121を収容する。クランプピンホール112にはクランプピン120のリッジ123が嵌められる位置決め用溝112aが備えられる。ネジ孔113はカッター本体110の外周面からカッター本体110の内側に傾斜して延長する。また、ネジ孔113はクランプピンホール112に対して所定の角度に傾斜している。ネジ孔113はクランプピンホール112の下側でクランプピンホール112と会う。
【0029】
図5図8を参照すると、クランプピン120はピンボディ121と、ヘッド122と、リッジ123と、ノッチ124とを含む。ピンボディ121は略円形の横断面を有する棒の形状を有し、クランプピンホール112に挿入される。ピンボディ121は下端にスプリングガイド121aを備える。スプリングガイド121aの直径はピンボディ121の直径より小さい。
【0030】
図12及び図14に示された通り、ヘッド122は切削インサート130のボア134の内周面134aとその少なくとも一部で接触して切削インサート130をインサートポケット111のコーナー部111dに向かって加圧しながらインサートポケット111の底壁111aにも加圧する。ヘッド122はピンボディ121の上端から傾斜して延長する。即ち、図7に示された通り、ヘッド122の中心軸C2はピンボディ121の中心軸C1に対して所定の角度αをなす。望ましくは、角度αは30〜60度の範囲でもよい。角度αが30度未満の場合には、クランプピン120を固定するためのセットスクリュ140を配置するための空間確保が難しくなる。この場合、セットスクリュ140は短い長さに設計されなければならず、これによってクランプピン120とセットスクリュ140の間の締結力が弱くなることがある。また、この場合に、切削加工中セットスクリュ140がネジ孔113から容易に緩くなるか分離され得る。角度αが60度超の場合には、クランプピンホール112とインサートポケット111の底壁111aがなす角度が小さくなり、インサートポケット111の底壁111a付近でカッター本体110の強度が弱くなることがある。また、この場合に、クランプピン120が切削インサート130に加える加圧力が側面133側に偏るようになって、インサートポケット111の底壁111aと切削インサート130の下面132を離隔させることがある。さらに望ましくは、角度αは40〜45度の範囲である。角度αが40〜45度の範囲である場合、インサートポケット111の底壁111aと切削インサート130の底壁111aとの間の密着力が最大となる。また、セットスクリュ140の配置のための空間確保にも有利である。
【0031】
ヘッド122はボア134の内周面134aと接触する加圧面122aを有する。加圧面122aは中心角(または接触角)β(図8参照)を有する円弧状の加圧面122aを有する。望ましくは、中心角βは60〜150度の範囲でもよい。中心角βが60度未満の場合に、ヘッド122とボア134の内周面134aとの間の接触部分(例えば、線または面)の長さが短くなって、ヘッド122により切削インサート130に第一及び第二の側壁111b、111cに向かって加えられる加圧力が小さくなる。また、中心角βが過度に小さくなれば、ヘッド122により切削インサート130に第一の側壁111b及び第二の側壁111cに向かって加えられる加圧力中、少なくとも1つが存在しないこともある。従って、クランプピン120と切削インサート130との間のクランピング力が弱くなることがある。中心角βが大きくなるほど、ヘッド122とボア134の内周面134aとの間の接触部分が長くなり、切削インサート130をインサートポケット111にクランピングする力が大きくなる。しかし、中心角βが150度を超える場合、ヘッド122の大きさがボア134の内径より大きくなって、クランプピン120をクランプピンホール112から分離しなくては切削インサート130をインサートポケット111に装着したりそれから分離するのが難しくなる。
【0032】
一例とし、加圧面122aは部分的な球面を含んでもよい。即ち、加圧面122aは側面から見た時、曲率半径R1で湾曲していて(図7参照)、上側から見た時にも曲率半径R2で湾曲している(図8参照)。このような例の加圧面122aはボア134の内周面134aと線接触し、当該線接触は円弧状をとる。
【0033】
もう1つの例とし、加圧面122aは側面から見た時、直線であり、上側から見た時、曲率半径R2で湾曲してもよい。このような例の加圧面はボア134の内周面134aと面接触するようになり、当該面接触は円錐の斜面の形状をとる。
【0034】
ヘッド122はピンボディ121の中心軸C1に対して角度αを有する中心軸C2を持つ。ヘッド122は中心軸C2を中心にピンボディ121に対して所定の角度γ程捩れている。図8を参照すると、ヘッド122の上端面の二等分線Lはピンボディ121の中心軸C1に対して角度γをなす。または、ヘッド122はピンボディ121の中心軸C1に対して図8に示された捩れ方向の反対方向に角度γで捩れていてもよい。角度γは0〜90度の範囲でもよい。ピンボディ121がクランプピンホール112に挿入されてヘッド122が切削インサート130のボア134に挿入された時(図12参照)、加圧面122aはインサートポケット111のコーナー部111dに向かう。セットスクリュ140がネジ孔113に締結されることによって、ヘッド122は切削インサート130の側面133をインサートポケット111の第一及び第二の側壁111b、111cに向かって押圧する。従って、切削インサート130の側面133と第一及び第二の側壁111b、111cとの間の確実な接触が維持され得る。
【0035】
リッジ123はピンボディ121の長手方向にピンボディ121の全長にわたり延長する。また、リッジ123はピンボディ121から放射状に突出する(図9参照)。リッジ123はクランプピンホール112の位置決め用溝112aに挿入されてクランプピン120がクランプピンホール112に対して回転しないようにクランプピン120の位置を決定する。ピンボディ121の強度がノッチ124によって減少し得るが、リッジ123がピンボディ121の強度を高めることができる。
【0036】
図6及び図7に示された通り、ノッチ124はピンボディ121の下側付近でリッジ123の反対側に位置する。ノッチ124は略V字状にピンボディ121において切欠された部分である。リッジ123は2つの傾斜面124a、124bと、2つの傾斜面124a、124bとの間の谷部124cとを有する。ノッチ124は傾斜面124a、124b間でセットスクリュ140の一部を収容する。セットスクリュ140はその端部でノッチ124と係わり合う。セットスクリュ140はその端面140aでノッチ124の傾斜面124aと接触する。
【0037】
図10及び図11を参照すると、切削インサート130は四角形の上面131と、四角形の下面132と、上面131と下面132との間に位置する側面133と、上面131と下面132を貫通するボア134とを備える。上面131と側面133との間には切削エッジ135が形成されている。下面132はインサートポケット111の底壁111aと接する。側面133は、第一及び第二の側壁111b、111cと接する。ボア134の横断面形状は円形、多角形、または角がラウンドされた多角形を含んでもよい。
【0038】
図11に示された通り、側面133は上面131と鋭角をなし、下面132と鈍角をなす。ボア134の内周面134aはボア134の中心軸C3に対し所定の角度δをなす。角度δは10〜60度の範囲でもよい。角度δが10度未満の場合に、加圧面122aとボア134の内周面134aが接する部分からインサートポケット111の底壁111aに作用する力は第一及び第二の側壁111b、111cに作用する力に比べて小さくなる。従って、クランプピン120のヘッド122による切削インサート130をインサートポケット111の底壁111aに向かって加圧する加圧力が弱くなることがある。角度δが60度超の場合に、加圧面122aとボア134の内周面134aが接する部分からインサートポケット111の第一及び第二の側壁111b、111cに作用する力は、インサートポケット111の底壁111aに作用する力に比べて小さくなる。従って、クランプピン120のヘッド122による切削インサート130をインサートポケット111の第一及び第二の側壁111b、111cに向かって加圧する力が弱くなることがある。
【0039】
この実施例は略四角形の上面及び下面を有する切削インサート130を含む。他の実施例の切削工具組立体は三角形や五角形のような多角形の切削インサートを含んでもよい。また、実施例による切削工具組立体に採用されるクランプピンは、切削インサートをスクリュによりカッター本体に固定する従来技術の切削工具に適用され得る。
【0040】
セットスクリュ140はネジ孔113とネジ結合してクランプピン120をカッター本体110に固定する。セットスクリュ140がネジ孔113から完全に分離されなくても、クランプピン120はクランプピンホール112に沿って、ある程度上方に移動が可能である。従って、作業者はセットスクリュ140を少しだけ緩めて切削インサート130を速やかに交換することができる。
【0041】
スプリング150はクランプピンホール112の閉鎖端部に位置する。スプリング150にはスプリングガイド121aが挿入される。クランプピン120がスプリング150により弾力的に支持されてクランプピンホール112に位置するので、切削インサート130の装着及び分離時にクランプピン120をクランプピンホール112に対して固定する必要がない。従って、作業者は切削インサート130を容易に装着し分離できる。この実施例はクランプピン120を弾力的に支持する要素としてスプリング150を含むが、他の実施例はスプリング150の代わりにゴムのような弾性部材を含んでもよい。
【0042】
図13及び図14を参照し、切削インサートの装着例及び分離例について説明する。
【0043】
図13に示された通り、クランプピン120がクランプピンホール112に挿入され、スプリングガイド121aがスプリング150に挿入される。その後に、セットスクリュ140がネジ孔113に締結されてセットスクリュ140の端面140aがノッチ124と係わり合う。そうすると、クランプピン120はスプリング150により弾力的に支持され、セットスクリュ140によりクランプピンホール112から離脱しない。切削インサート130は切削インサート130のボア134にヘッド122が挿入されながらインサートポケット111の底壁111aに載置される。その後、セットスクリュ140がネジ孔113に、更に締結されることによって、クランプピン120はセットスクリュ140との係わり合いによりクランプピンホール112に沿って下方に移動する。当該下方移動時に、スプリング150が圧縮される。また、切削インサート130の側面133がインサートポケット111の第一及び第二の側壁111b、111cと接触するようになり、ヘッド122の加圧面122aがボア134の内周面134aと接触するようになる。セットスクリュ140がネジ孔113により更に締結されれば、ヘッド122が切削インサート130をコーナー部111d、底壁111a及び第一及び第二の側壁111b、111cに向かって圧迫する。その結果、切削インサート130はクランプピン120によりインサートポケット111に図14に示された通り固定される。
【0044】
図14に示した状態から切削インサート130を回転させたり交換するためには、作業者はセットスクリュ140を若干緩めさえすればよい。セットスクリュ140が緩むと、クランプピン120はスプリング150の弾性復元力により上方にクランプピンホール112に沿って移動する。この状態で、作業者は切削インサート130を回転させたり新たな切削インサートに交換した後、前述した手続に従って切削インサート130を装着できる。
【0045】
切削インサートがインサートポケットにクランプピンにより固定された状態でのクランプピン及び切削インサートに作用する力について図14及び図15を参照して説明する。
【0046】
ネジ孔113の中心軸C4はピンボディ121の中心軸C1に対して所定の角度に傾斜している。セットスクリュ140がクランプピン120をネジ孔113の傾斜した方向に押圧すると、ピンボディ121は、第一の地点P1及び第二の地点P2でクランプピンホール112と接触する。また、切削インサート130の側面133がインサートポケット111の第一の側壁111bと第一の接触部P3で接触し、ヘッド122の加圧面122aがボア134の内周面134aと第二の接触部P4で接触する。側面133は、第一の接触部P3で第一の側壁111bと線接触または面接触する。加圧面122aは、第二の接触部P4で内周面134aと線接触または面接触する。第一の接触部P3及び第二の接触部P4はモーメントが切削インサート130で第一の接触部P3を中心にインサートポケット111の底壁111aに向かって(図14に示された例で、時計方向に)作用するように位置する。例えば、図14に示された通り、モーメントは第二の接触部P4で矢印方向へ作用する。当該矢印方向は第一の接触部P3を円心にし、第一の接触部P3と第二の接触部P4との間の距離を半径にする仮想円において第二の接触部P4で接線方向を指す。望ましくは、第一の接触部P3は、第二の接触部P4より底壁111aからさらに高く位置する。このために、第一及び第二の側壁111b、111cの底壁111aからの高さは切削インサート130の高さより小さくなければならない。底壁111aからの第一の接触部P3及び第二の接触部P4の高さの差が大きくなるほど切削インサート130に作用するモーメントが強くなる。従って、前記高さの差が大きい場合、切削インサート130の下面132がインサートポケット111の底壁111aに密着し、クランプピン120によるクランピング力が増加する。
【0047】
第一の側壁111bのうち、第一の接触部P3を除いた少なくとも一部が切削インサート130の側面133に対し角度ε、ε´程離隔されている。一実施例において、図14に示された通り、第一の側壁111bは単一面で形成されて側面133と線接触する。この例において、角度εは、第一の接触部P3を中心とする第一の側壁111bと側面133との間の夾角である。他の実施例において、図15に示された通り、第一の側壁111b´は、第一の上側側壁111ba´と第一の下側側壁111bb´を含む。第一の側壁111b´の第一の上側側壁111ba´が側面133と面接触する。この例において、角度ε´は、第一の接触部P3の最も低い地点P3´を中心とする第一の下側側壁111bb´と側面133との間の夾角である。図15に示された通り、側面133が第一の側壁111b´と部分的に面接触する場合に、前記地点P3´が第二の接触部P4のどの地点よりも高く位置すべきである。上述した角度ε、ε´によって、第一の接触部P3または地点P3´を中心としてインサートポケット111の底壁111aに向かって切削インサート130に作用するモーメントがより強くなる。従って、切削インサート130の下面132がインサートポケット111の底壁111aに、そして切削インサート130の側面133が第一及び第二の側壁111b、111cに、より一層密着することができる。前記角度εはインサートポケット111及び切削インサート130の許容公差を考慮して1度以下になり得る。
【0048】
図16図18を参照して切削工具組立体の他の実施例を説明する。
【0049】
図16図17は、他の実施例による切削工具組立体のクランプピン220を示す。クランプピン220はピンボディ221と、ヘッド122と、ストッパ突起223と、ノッチ124とを含む。この実施例のクランプピン220のヘッド122及びノッチ124は図3図15に示された実施例のクランプピン120のヘッド122及びノッチ124と同一の構成を有する。
【0050】
インサートポケット111のクランプピンホール212に挿入されるピンボディ221は楕円形、競走トラック形状などの横断面を有する(図17参照)。また、クランプピンホール212もピンボディ221の横断面形状に対応する横断面を有する。ここで、競走トラック形状は四角形の向かい合う両辺のそれぞれに半円がつながる形状をいう。ピンボディ221とクランプピンホール212が楕円形または競走トラック形状の横断面形状を有するので、ピンボディ221がクランプピンホール212に挿入されれば、クランプピン220はクランプピンホール212に対して回転できなくなる。また、楕円形または競走トラック形状の横断面形状によって、ノッチ124によって脆弱になるピンボディ221の強度が補強され得る。
【0051】
ストッパ突起223はノッチ124の反対側に位置してピンボディ221の外周面から突出する。ピンボディ221の長手方向においてストッパ突起223の長さはピンボディ221の全長に比べて比較的短い。ストッパ突起223はピンボディ221の長手方向においてノッチ124の谷部124cより上側に位置する。図18に示された通り、カッター本体110のクランプピンホール212にはストッパ突起223を収容するためのリセス212aが形成されている。切削加工途中ピンボディ221はノッチ124付近で破断され得て、ノッチ124の上方の破断されたピンボディ221の一部がクランプピンホール212から抜け出すことがある。しかし、このようにピンボディ221が破断されても、ピンボディ221の破断された一部に位置するストッパ突起223がクランプピンホール212のリセス212aにかかるようになるので、前記ピンボディ221の破断された一部はクランプピンホール212から抜け出すことができない。
【0052】
以上で本発明を添付の図面に示された前述した実施例を参照して説明したが、本発明がこれに限定されるわけではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であることは本発明の属する分野で通常の知識を有する者において明白なことである。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図11
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【国際調査報告】