(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-523235(P2015-523235A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】高精細導電パターンを製造するためのインク組成物
(51)【国際特許分類】
B41M 1/04 20060101AFI20150717BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20150717BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20150717BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20150717BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20150717BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
B41M1/04
C09D11/107
C09D11/101
B41M1/30 Z
H01Q7/00
H01Q1/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-511447(P2015-511447)
(86)(22)【出願日】2013年3月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月13日
(86)【国際出願番号】US2013030591
(87)【国際公開番号】WO2013169345
(87)【国際公開日】20131114
(31)【優先権主張番号】61/646,032
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507385800
【氏名又は名称】ユニピクセル ディスプレイズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エド・エス・ラマクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】ダンリャン・ジン
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
5J046
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA03
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5J046AA19
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5J046PA06
5J046PA09
(57)【要約】
基板の第1面に複数の線または第1のアンテナループアレイを含むパターンをフレキソ印刷するシステムと方法であって、第1のアンテナループアレイを印刷する過程においてインクと少なくとも1つのフレキソマスター版とを用いる。このインクは、アクリルモノマー樹脂と、濃度1重量%〜20重量%の有機金属の酢酸塩またはシュウ酸塩などの触媒とを含む。基板は片側の表面に1つのパターンを施すこともできるが、基板の各面に少なくとも1つのパターンが印刷された両面印刷基板とすることもできる。無電解めっきの前にインクを硬化させることでインク中の触媒を解離させるが、この工程は各面に1回の硬化プロセスを用いるか、全体で1回の硬化プロセスを用いるか、第1パターンに半硬化を実施した後に第2パターンを硬化させるかのいずれによって行うこともできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法であって、
アクリルモノマー樹脂と濃度1重量%〜20重量%の複数の有機金属粒子からなる触媒とを含むインクと、第1のフレキソマスター版とを用い、基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、
インク中の触媒を解離させることによって基板を硬化させる過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、基板の第2面に第2のアンテナループアレイを印刷する過程をさらに含み、この第2のアンテナループアレイを印刷する過程においてインクと第2のフレキソマスター版を用いることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、第1のアンテナループアレイが単一のアンテナループを含み、第2のアンテナループアレイが複数のアンテナループを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子が粒径10〜500nmであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、触媒が濃度1重量%〜5重量%であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子がパラジウムアセレート、ロジウムアセレート、白金アセレート、銅アセレート、ニッケルアセレート、これらの組み合わせのうちの1つを含む有機金属アセレートであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子がシュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つを含む有機金属シュウ酸塩であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、無電解めっきを用いて基板をめっきする過程をさらに含み、導電性材料が第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイ上に付着させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2の方法であって、第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイを同時に硬化させる過程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2の方法であって、第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイを同時に印刷することを特徴とする方法。
【請求項12】
RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法であって、
インクと第1のフレキソマスター版を用いて基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、
第1のアンテナループアレイを半硬化させる過程と、
インクと第2のフレキソマスター版を用いて基板の第2面に第2のアンテナループアレイを印刷する過程と、
第2のアンテナループアレイを完全に硬化させる過程とを含み、
インクがアクリルモノマー樹脂と触媒とを含み、触媒が濃度6%未満であり、触媒が複数の有機金属粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子の各粒子が粒径10nm〜500nmであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子がアセレートであり、パラジウムアセレート、ロジウムアセレート、白金アセレート、銅アセレート、ニッケルアセレート、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子がシュウ酸塩であり、シュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12の方法であって、無電解めっきを用いて基板をめっきし、印刷済みの第1パターンと印刷済みの第2パターンに導電性材料を付着させる過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、第1と第2のアンテナループアレイがめっき後、0.005マイクロオーム/スクエア〜約500オーム/スクエアの抵抗率を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
高精細導電パターンを印刷する方法であって、
第1のフレキソマスター版と、アクリルモノマー樹脂と触媒とを含むインクとを用いて、第1の基板に第1の複数の線を含む第1パターンをフレキソ印刷する過程と、
第2のフレキソマスター版とインクとを用いて第2の複数の線を含む第2パターンをフレキソ印刷する過程と、
第1パターンと第2パターンを硬化させる過程とを含み、第1の複数の線の各線と第2の複数の線の各線が幅1〜25ミクロンであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、第1パターンと第2パターンが硬化後、0.005マイクロオーム/スクエア〜約500オーム/スクエアの抵抗率を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18の方法であって、触媒がパラジウム、銅、有機金属アセレート、有機金属シュウ酸塩、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18の方法であって、触媒がインク中の濃度1重量%〜20重量%であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18の方法であって、触媒がインク中の濃度1重量%〜5重量%であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18の方法であって、触媒が有機金属シュウ酸塩であり、有機金属シュウ酸塩がシュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項18の方法であって、触媒が有機金属アセレートであり、有機金属アセレートがパラジウムアセレート、ロジウムアセレート、白金アセレート、銅アセレート、ニッケルアセレート、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項18の方法であって、印刷済みの第1パターンと印刷済みの第2パターンの上に導電性材料を付着させることによって無電解めっきする過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項18の方法であって、第2パターンをフレキソ印刷する過程において、第2の基板か、第1の基板の第1パターンと反対側の面か、第1の基板の第1パターンの隣のうちのいずれかに第2パターンをフレキソ印刷することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2012年5月11日に出願した米国特許仮出願第61/646032号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は概して高精細導電パターンの印刷に関するものであり、具体的には高精細導電パターンのロールツーロール式製造プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
エレクトロニクスなどの産業で用いることのできる透明な薄いフィルムアンテナなどの導電パターンを製造する従来の方法では、厚いフィルムと銅や銀の導電性ペーストとを用いたスクリーン印刷を行い、幅が広く(100μm超)高さの高い(10μm超)線を作る。高さが薄く幅の狭い特徴箇所にはフォトリソグラフィやエッチングのプロセスが用いられる。
【発明の概要】
【0004】
ひとつの実施例として、RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法は、インクと第1のフレキソマスター版とを用い基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、インク中の触媒を解離することによって基板を硬化させる過程とを含み、インクはアクリルモノマー樹脂と濃度1重量%〜20重量%の触媒とを含み、触媒は複数の有機金属粒子を含む。
【0005】
別の実施例として、RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法は、インクと第1のフレキソマスター版とを用いて基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、第1のアンテナループアレイを半硬化させる過程と、インクと第2のフレキソマスター版とを用いて基板の第2面に第2のアンテナループアレイを印刷する過程と、第2のアンテナループアレイを完全に硬化させる過程とを含み、インクは、アクリルモノマー樹脂と触媒とを含み、触媒は濃度6%未満であり、触媒は複数の有機金属粒子を含む。
【0006】
ひとつの実施例として、高精細導電パターンを印刷する別の方法は、フレキソ印刷プロセスを用いて、第1のフレキソマスター版と、アクリルモノマー樹脂と触媒とを含むインクとを用いて、第1の基板に第1の複数の線を含む第1パターンを印刷する過程と、フレキソ印刷プロセスを用いて、第2のフレキソマスター版とインクとを用いて、第2の複数の線を含む第2パターンを印刷する過程と、第1パターンと第2パターンを硬化させる過程とを含み、第1の複数の線の各線と第2の複数の線の各線は幅が1〜25ミクロンである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の例示的な実施例を詳細に説明するためにここで添付の図面を参照する。
【0008】
【
図1】本発明の実施例に沿ったフレキソ刷版の斜視図の説明図を示す。
【
図2A-2B】本発明の実施例に沿った透明な単一ループRFアンテナと複数ループRFアンテナの説明図である。
【
図3】基板に本発明の実施例に沿った高精細パターンを印刷する方法の説明図である。
【
図4】基板に本発明の実施例に沿った高精細パターンを印刷する方法のフローチャートである。
【
図5】基板に本発明の実施例に沿った高精細パターンを印刷する別の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、高精細導電パターンをロールツーロール式で印刷する方法に関する。この方法では、概して、ポリマーインクを用いてパターンを成形し、このパターンをその後無電解めっきする。UV硬化性などのポリマーインクは、フレキソ印刷製造プロセスの一部として用いることもできる。本明細書で扱うのは、フレキソ印刷等の印刷プロセスに用いられるポリマー樹脂インクに直接金属酢酸塩粒子を溶解するための方法とシステムである。ある特定の例として、インクはパラジウムまたは類似の触媒を酢酸塩またはシュウ酸塩として含有したものとする。ポリマーインクはアクリルインクまたはこれに類似するポリマーとすることができる。加えて、ある特定のインクには有機金属化合物を配合することもできる。ある特定の方法では、印刷において有機金属酢酸塩の粒子などの材料をポリマーインクに直接溶解させる際に超音波撹拌を用いる。この有機金属材料は印刷後すぐに無電解めっきができなくてもよく、硬化させる形態などの活性化が必要となることもある。このため、この有機金属化合物は、紫外光や熱などの手段で処理することにより、印刷されたパターンの中の触媒化合物を紫外線にさらして最後まで解離させ、元素金属の形態に換える。無電解めっきプロセスは、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、金(Au)、銀(Ag)などの金属塩系化学物質が存在する水性の化学浴で実施することもできる。
【0010】
本明細書にあるように、本発明の方法によれば、適当な基板の片面もしくは両面に印刷でき、均一性が高く、完成度が高く、印刷される線幅が約25ミクロン未満、好ましくは5ミクロン未満となる超小型回路を製造できる。さらに本発明では汚染物の供給源となりうる化学エッチングなどの除去技術を用いることなく超小型印刷回路を製造することができる。
【0011】
ロールツーロール式製造プロセス
フレキソ印刷は、印刷シリンダに両面接着などで凸版を取り付けた回転ウェブ凸版印刷の一形態である。この凸版(マスター版あるいはフレキソ刷版とも呼ぶ)は、速乾・低粘度の溶媒と、アニロックスなどの2個のローラーを備えるインク供給システムから供給されるインクとともに用いることができる。アニロックスロールは、インクの量を測り取って刷版に与えるために用いるシリンダとすることもできる。インクは、例えば、水性インクあるいは紫外線(UV)硬化性インクとすることもできる。ひとつの例として、インクパンあるいは計量システムから第1のローラーで計量ローラーすなわちアニロックスロールにインクを転移させる。このインクはアニロックスローラーから版胴に転移するときに均一な厚さに測り取られる。ロールツーロール搬送システムによって基板が版胴から圧胴まで移動すると圧胴が版胴に圧力をかけ、版胴によって凸版プレートの画像が基板に転写される。実施例によっては、版胴の代わりにファウンテンローラーを設けることもでき、またドクターブレードを用いてローラー表面へのインクの分散を改善することもできる。
【0012】
フレキソ刷版は、例えば、UV感光性ポリマーとも呼ばれるプラスチック、ゴム、または感光性樹脂から作製することができる。プレートは、レーザー彫刻、写真製版、または光化学的な方法で作製することができる。プレートは購入するか、何らかの既知の方法によって作製することができる。好ましいフレキソ印刷プロセスは、1つ以上のスタックの印刷設備がプレス機のフレームの両側に垂直に配列され、かつ各スタックが1種類のインクを用いて印刷するそれ自体の版胴を備えたスタック型として設定することもでき、この設定は、基板の片面か両面に印刷することを可能にすることができる。別の実施例として、プレス機のフレームで取り付けられた単一の圧胴を用いる中央圧胴を用いることもできる。基板がプレス機に入ると、それは圧胴と接触し、適切なパターンが印刷される。あるいは、印刷設備が水平線で配列され、かつ共通ライン軸によって駆動されるインラインフレキソ印刷プロセスを用いることもできる。この例では、印刷設備は、硬化設備、切断機、折り機などの印刷後の加工設備に連結することもできる。フレキソ印刷プロセスの他の構成も同様に用いることもできる。
【0013】
ひとつの実施例として、フレキソ刷版のスリーブは、例えば、円筒(ITR)画像形成プロセスで用いることもできる。平らな刷版を印刷シリンダ(従来の版胴とも呼ぶ)に取り付ける上述の方法とは対照的に、ITRプロセスではプレス機に搭載されるスリーブ上で感光性樹脂プレート材料が加工される。フレキソ印刷スリーブは、レーザーアブレーションマスクコーティングが表面に配設された感光性樹脂の連続的スリーブとすることもできる。別の例として、個々の感光性樹脂は、テープで基材となるスリーブに取り付けられ、次に上述のレーザーアブレーションマスクを使用してスリーブと同様に画像形成と加工を行うこともできる。フレキソ印刷スリーブは、例えば、支持ロールの表面に取り付けられた画像形成され平面状のプレートの支持ロールとして、または画像を直接彫り込んだ(円筒)スリーブ表面として、いくつかの方法で用いることもできる。スリーブが単に支持体としての役割を果たす例では、画像が彫り込まれた刷版は、スリーブに取り付けることもでき、その後、シリンダ上の印刷設備の中に取り付けられる。これらのあらかじめ取り付けられたプレートは、スリーブがスリーブに既に取り付けられたプレートで格納することもできるため、切り替え時間を減らすことができる。スリーブは熱可塑性複合材料、熱硬化性複合材料、ニッケルなど様々な材料で作られるが、亀裂や分裂に耐えられるよう繊維で補強してもしなくてもよい。非常に高い品質の印刷には発泡体や緩衝材からなる基材を組み込んだ長期的に再利用可能なスリーブが用いられる。実施例によっては、発泡体または緩衝材がない使い捨ての「薄い」スリーブが用いることもできる。フレキソ印刷プロセスは、インクが凝集または不鮮明さがない透明の均一な特徴箇所を有する所望のパターンを印刷するよう、インクを計量する手段としてインク転移のためのアニロックスロールを用いることもできる。
【0014】
高精細導電パターン回路は、ロールツーロール式の製造プロセスで製造することもできる。このプロセスは、ポリマーインク中に含有された無電解めっき触媒を活性化することを含むことができる。これは、1ミクロンと同じくらいの線幅の印刷されたパターンの紫外線イオン化放射線硬化または熱処理によって達成することもできる。このプロセスは、超音波撹拌動作を用いて、複数の電子用途に必要とされる高精細導電性電極を印刷するために用いられたアクリル系ポリマーインクに直接、金属酢酸塩粒子を溶解する。インク作製プロセスは、超音波撹拌を用いて、アクリル系ポリマーインクなどの結合樹脂に直接、金属酢酸塩粒子を溶解する。これらのインクは、RFアンテナ構造、RFアンテナアレイなどの複数の電子的用途に必要となる高精細導電性電極を印刷したり、容量式・抵抗式タッチスクリーンセンサなどのタッチスクリーンに用いられる微細な高精細パターンを印刷したりするために用いられる。
【0015】
ロールツーロール式の製造プロセスを開始するにあたり、任意の既知のロールツーロール搬送方式で巻き出しロールから第1の洗浄設備まで透明な可撓性基板を搬送することができる。透明な可撓性基板の厚さは、伸長による寸法変化をもたらす印刷プロセス中に過度の張力を避けるために線速度および圧力などの複数のプロセスパラメータと組み合わせて選択することもできることを理解できよう。温度によって誘発された寸法変化は、温度に対する任意のこのような変化が印刷された寸法に対する変化をもたらすため、同様に考慮することもできる。
【0016】
透明な高精細導電パターンの整列状態と印刷状態は、最終製品の性能に影響を与えることがある。この実施例では、位置合わせケーブルを用いて透明な可撓性基板の整列状態を維持し、基板を第1の洗浄設備で第1の洗浄に誘導することもできる。第1の洗浄設備は透明な可撓性基板から油やグリスなどの不純物を除去するために用いられる高電場オゾン生成器を備えている。透明な可撓性基板は、次に、ウェブ洗浄器などの第2の洗浄設備で第2の洗浄を受けることもできる。
【0017】
第2の洗浄設備での第2の洗浄後、透明な可撓性基板は第1の印刷設備に通して高精細導電パターン(HRCP)を印刷することもできる。透明な可撓性基板の第1表面の高精細導電パターンは、例えば、タッチスクリーン回路用の複数の線や、透明な平面ダイポール型の単一ループアンテナ用の回路とすることができる。第1のマスター版から透明な可撓性基板に転移させるインクの量は、高精度の計量システムによって調節することもでき、プロセスの速度、インクの組成、高精細パターン(HRP)の形状・寸法によって変えることもできる。
【0018】
第1の印刷設備で印刷されるパターンは、例えば、単一のアンテナループとすることができる。従来、第1の印刷設備でパターンが印刷された後、後述のめっきプロセス前に、インクを活性化するための硬化ステップが何回か必要となることもある。触媒が露光不足であると、有機金属触媒の解離が不完全となり、めっきプロセスが正常に働かない。しかし、基板が露光過度であると、完成品の完成度が脆化し損なわれたり、基板がさらなる加工に適さないものになったりすることもある。実施例によっては、126nm、172nm、193nmのいずれかでレーザー照射を行っても同様の効果を得ることができるが、結果として生じるめっき層では所望の表面品質を得ることができない。
【0019】
別の実施例として、第1の印刷設備で印刷されたパターンが平面ダイポール型低視認性の単一アンテナ回路である場合、第2の平面ダイポール型低視認性の複数ループのアンテナ回路パターンは、透明な可撓性基板の下面に第2の印刷設備で印刷することもできる。透明な可撓性基板の下面は第2のマスター版によって行われる第2の印刷設備に通すこともでき、そこでは酢酸パラジウムインクを用いて透明な可撓性基板の下面に複数ループのアンテナ回路を印刷することができる。第2のマスター版から透明な可撓性基板の下面に転移されるインクの量も、第2の高精度の計量システムで調節することができる。実施例によっては、第1と第2の印刷設備のうちの少なくとも一方で複数のフレキソ刷版を用いることもできる。この実施例では、第1と第2の印刷設備で印刷するパターンの形状と配置形状によっては、複数あるフレキソ刷版のそれぞれに対し複数のインクを用いることもできる。
【0020】
第2の印刷設備で下面に印刷した後には、第2の硬化設備を続けることもできる。第2の硬化設備では上述のものと同様に第2の紫外線放射硬化を行うことができ、目標の強度はほぼ同じとし、波長もほぼ同じとすることができる。インク中の触媒が露光不足であるとめっきプロセスが妨害されることがあるため、第2の硬化設備はインク中の触媒がとならないようにするために用いることができる。加えて、第2の硬化設備は、約20℃〜約85℃の範囲内の温度で加熱する第2のオーブン加熱モジュールを用いることもできる。
【0021】
無電解めっき
基板の上面と下面(または第1面と第2面)に印刷される第1パターンと第2パターンは、透明な可撓性基板の上側(第1)の表面には単一ループのアンテナ回路を印刷し、および基板の下側(第2)の表面にはアンテナ回路の複数のループを印刷することもできる。ひとつの例として、この両パターンは酢酸パラジウム(Pd)などの触媒系インクで印刷することもできる。他にも、例えばパラジウム、ロジウム、白金、銅、またはニッケルの酢酸塩もしくはシュウ酸塩などの有機金属を用いることもできる。このインクは、第1と第2の印刷設備で印刷された導電パターン回路パターンを形成するために用いるめっき触媒を含有したものとすることができる。次に、両パターンを含む基板全体にめっき設備で無電解めっきを施すことができる。めっき中、核となる触媒が受容体として働くことによって、めっきコーティングの厚さが所望の厚さないし所望の範囲内の厚さとなるまでめっき金属(銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、銀、金など)が成長できるようになる。実施例によっては、酢酸Pdまたはシュウ酸Pd等の有機金属材料はすぐにめっきできないこともあり、印刷されたパターンの中にある化合物を金属の形態に換える処理をさらに行うこともできる。このさらなる処理を行うこともできるのは、インクが活性化するということはパラジウムが非金属形態から金属形態に解離されることを意味するためである。このさらなる処理は、広いスペクトルで紫外線放射を照射することによって化合物を解離させることを含むことができ、用いる波長は約365nm〜約435nmに維持することもできる。上述のように、触媒が露光不足である、すなわち、十分に解離されていない場合、無電解めっきプロセスは正常に機能しない可能性があり、パターンは、適切に、均一に、または完全にめっきされない可能性がある。
【0022】
インクの組成によっては活性化プロセスはパターンの完成度を維持できない可能性があるため、印刷後のパターンとめっき後のパターンは同じ寸法とならない可能性がある。これは印刷されたパターンの寸法が小さい場合に顕著となることのある問題である。しかし、有機金属の濃度が1重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜5重量%であるときや、有機金属インクを用いる場合でも第1の硬化ステップに用いるパラメータで印刷後のパターンを十分硬化させることができるときには、後続の硬化プロセスは必要でないこともある。硬化パラメータは基板特性に合わせて適合させることもできることを理解できよう。例えば、一つまたは複数のパターンをあまりにも長い時間かけて硬化させる場合や、1つのパターンを印刷・硬化し第2パターンを印刷・硬化する場合には、2回の完全な硬化サイクルないしプロセスで同じ基板を2回硬化させることもできる。結果として、基板は脆化したり変色を受けたりし、ひいては可撓性、透明性、強度など、必要な特性を維持することができなくなる。硬化時間はインク中の有機金属の含有量(重量%)に応じて様々とすることができる。有機金属の割合が大きいと、有機金属を解離するより強い硬化をもたらすことがある。このシナリオでは、紫外線硬化に加えて、有機金属を熱硬化によって解離させることもできる。この解離は、有機金属化合物の活性化と呼ばれることで生じ得る。酢酸Pd等の有機金属が化合物形態から金属形態に解離されるときに活性化し、金属形態は、めっきのために(かつそれによってめっきに反応して)導電性をもつ。インクが解離しても、この解離はインクの内部で生じるため、印刷後のインクは寸法の歪みを受けず、めっきプロセスのために印刷された状態のパターンの寸法と均一性を維持することを理解できよう。
【0023】
透明な可撓性基板に上側パターンと場合によっては下側パターンも印刷した後、パターン、例えば、アンテナパターンは、第1の印刷設備における基板の上面に印刷され得る単一ループアンテナ回路、および印刷設備における基板の下面に印刷されたアンテナ回路の複数のループを、銅などの導電性材料を含有するめっき設備における無電解めっき槽の中に浸すことによってめっきすることもできる。めっきされたパターンの厚さは、用途によって異なることのあるめっき溶液の温度とウェブの速度によって変わることもある。めっき設備での無電解めっきは電流を流す必要がなく、紫外電離放射線照射による硬化よってあらかじめ活性化されためっき触媒を含有するパターン形成済み領域のみがめっきされる。これは熱的手段による熱硬化で達成できるものよりも高速となることもある。めっきの厚さは、電流がないため電気めっきと比較してより均一となることもある。無電解めっきは、印刷される透明なアンテナパターン回路に含まれるものなど、配置形状の複雑な部分や特徴箇所の多い部分によく適することがある。
【0024】
無電解めっき後、両パターンが施された可撓性基板は、RFアンテナ回路を、室温またはより高温(70℃未満)で脱イオン化水を含有する洗浄槽の中に浸すことを含む洗浄プロセスを通過することができる。RFアンテナ回路は、室温またはより高温(70℃未満)で空気を加えることによって乾燥設備で続いて乾燥させることもできる。RFアンテナ回路の導電性材料を腐食から保護するために、基板を不動態化するために不動態化設備を用いることもできる。不動態化設備は噴霧を含んでもよく、導電性材料と水分、有機蒸気等の環境における汚染物質とのあらゆる望ましくない反応を防ぐように乾燥させた後、不動態化する化学物質中の浸漬が加えることもできる。
【0025】
図1は、本発明のひとつの実施例に沿ったフレキソマスター版の斜視図を表している。
図1はフレキソマスターパターン102、106を説明している。ひとつの実施例として、上側のフレキソマスター版102は、ロール124上に取り付けられ、
図2Aに描いたような可撓性基板の上面に透明な単一ループアンテナ回路114を印刷するために印刷システム、例えば、計量された印刷システムとともに用いられる。下側のフレキソマスター版106は、透明な複数ループのアンテナ回路122を印刷するために用いられ、これは、第2または下側パターンとも呼ぶこともでき、透明な可撓性基板の下面に複数のループを備える。本明細書の用語「上」「下」の使用は、基板の2つの異なる側面を反映することであり、「第1」「第2」と同じ意味で用いることもでき、基板または最終製品の配向に関連して必ずしも用いられないことを理解できよう。ひとつの実施例として、この回路122は、
図2Bに後述の回路パターンに類似していてもよい。ひとつの実施例として、フレキソマスター版102とフレキソマスター版106はフレキソ印刷ブランクに別々にパターン形成したものとし、それぞれ異なるロールに取り付ける。
【0026】
この実施例では、ローラー124などの複数のローラーを直列に配置し、114によって作られた第1パターンを回路の上面に印刷し、複数ループのアンテナ回路パターン122を第1パターン114とは反対側の下面に印刷する。別の実施例として、2本の異なるロールの2枚の異なるフレキソマスター版によって第1パターン114を1枚の基板の上面(第1面)、第2パターン122を下面(第2面)に印刷できるように複数のローラーを配置することもできる。ここではRFアンテナの例を挙げているが、この方法はまた、一枚または複数の基板で印刷、組み立てを行うことのあるタッチスクリーンセンサなどの高精細導電パターンの製造にも適用することができる。この例では、印刷は同時並行で行うことも、あるいはインラインプロセスの一部として順番に行うこともできる。別の例として、上側パターンと下側パターンのうちの少なくとも一方を、複数のロールに取り付けた複数のフレキソ刷版で形成する。これを行う理由は、例えば、所望の端部パターンが様々な移行部、寸法、配置形状で設計されており2種類以上のインクを用いるのが適切になることがあるためであり、これは次に、2つ以上のロールを用いることもできることを意味する。別の例として、パターンの配置形状、移行部、または寸法が段階的かつより均一に印刷されるため、1つのパターンを生成するために複数のロールを用いることもできる。
【0027】
透明な単一ループアンテナ回路114および透明な複数ループのアンテナ回路122の両方における印刷された導電線の高さは、100nm〜数ミクロン〜7ミクロンと様々とすることができるが、各対の導電線間の距離は、10ミクロン〜5mmと様々とすることができる。本明細書でいう高さは、基板と印刷されたパターンの上面との間の距離を指している。上側のフレキソマスター版102と下側のフレキソマスター版106に使用するマスター版を作るのに用いる材料の層の厚さは0.5mm〜3.00mmの範囲とすることができる。実施例によっては、フレキソマスター版106は片面を0.1mmの薄さの金属張りで補強したオフセットフレキソマスター版とすることもできる。
【0028】
図2Aと
図2Bは、本発明の実施例に沿った平面ダイポール型の透明なRFアンテナ構造の上面図の説明である。
図2Aでは、平面ダイポール型の透明なRFアンテナ構造200は、通信用途で必要とされるように、無線電磁信号を放射または受信するために設計することもできる。RFアンテナ構造200は、透明な可撓性基板204に配設された平面ダイポール型の透明な単一ループの矩形アンテナ202を備えることができる。この種のアンテナの設計は、約1ミクロン〜約30ミクロンと様々な導電線幅を示し、ユーザからの距離に依存して肉眼に透けて見える効果をもたらし得る寸法範囲を表す。印刷された透明な単一ループの矩形アンテナ202を構成する微小電極(一本以上の線)は、約60%、あるいは90%以上の光透過効率を示すものとすることができる。導電性電極は金めっきした銅、銀めっきした銅、ニッケルめっきした銅のいずれかで構成することにより銅を不動態化して耐食性をもたせ、化学エッチングを不要とすることもできる。
【0029】
印刷された透明な単一ループの矩形アンテナ202上の電極の抵抗率は約0.005マイクロオーム/スクエア〜約500オーム/スクエアの範囲とすることができるが、印刷された電極の長さは約125KHz〜約25GHzと様々な周波数の範囲によって約0.01m〜約1mの様々な長さとすることができる。透明なRFアンテナ構造200は、所望の用途によっては全方向性放射を示すパターンとすることもできる。RFアンテナのインピーダンスは、アンテナの形状、用いられている材料の種類、環境の変化によって決まる。
【0030】
一般的に、透明な可撓性基板102に用いることのできる材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート、およびポリマーが挙げられる。具体的には、透明な可撓性基板102のための好ましい材料としてはDuPont/Teijin Melinex 454やDuPont/Teijin Melinex ST505を挙げることができるが、この後者は熱処理が関わり、かつ寸法変更がプロセスに許容されない、プロセスに特別に設計された熱安定化されたフィルムである。透明な可撓性基板102は5〜500ミクロンの厚さをもったものとすることができ、100ミクロン〜200ミクロンの厚さが好ましい。ロールツーロール式のプロセスを用いて透明なアンテナ回路を製造する詳細な方法を
図3に示し、本明細書に記載する。
【0031】
透明なRFアンテナ構造200のパターンの配置形状、すなわちアンテナパターンの配列はどのように設計することもでき、配列されるアンテナパターンは個々に調節することで通信目的で必要な地上波放送や衛星放送、無線信号を送受信する種々の周波数またはチャネルに適合させることもできる。別の実施例として、透明なRFアンテナ構造200は、放射パターンの指向性を増加させるため反射部品を併せて用いることもできる。
【0032】
図2Bは、本発明の実施例に沿ったマルチループアンテナの構造の説明図である。マルチループアンテナ構造206は複数のループ210を含むパターン208を備えている。ひとつの実施例として、この複数のループはループアレイとも呼ぶこともでき、この特徴箇所は、一本の連続した線で形成される場合であっても同心円であるとして説明することもできる。ひとつの実施例として、この特徴箇所は矩形形状とすることもできる。別の実施例として、この特徴箇所は円形、正方形、三角形、あるいはこれらを組み合わせたものとすることができ、この特徴箇所は、配置形状や用いられる独立した線の本数にかかわらずループと呼ぶこともできる。このパターン208は、基板204の下面(第2面)に印刷することもできる。別の実施例として、パターン208は接触し合う線を含んでいてもよい。
【0033】
図3は、本発明の実施例に沿った高精細導電パターンを製造するために用いるシステムのひとつの実施例である。
図4は、本発明の実施例に沿った高精細導電パターンを製造する方法のフローチャートである。このシステム300(ここではプロセスに沿って側面図として描いている)では、ロールツーロール搬送プロセスの巻き出しロール304に透明な可撓性基板302が設置されている。ここでいう透明という用語は、印刷される電極の光透過の量が約60%を超えるような構造を指すこともでき、また基板はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)など、集積回路を印刷するための基材として用いることのできる任意の材料とすることができる。透明な可撓性基板のための材料としてはDu Pont/Teijin Melinex 454やDu Pont/Teijin Melinex ST505を挙げることができるが、この後者は、熱処理が関わるプロセス用に特別に設計された熱安定化されたフィルムである。この可撓性基板は5〜500ミクロンの厚さをもったものとすることができるが、50ミクロン〜200ミクロンの厚さが好ましい。プロセスに用いる機械の速度は、約20ft/m〜約750ft/mと様々な速度とすることができる。実施例によっては、約50ft/m〜約200ft/mの速度が好ましいこともある。実施例によっては、インラインプロセスに対する基板302の向きを確実に適切にまっすぐに直すことのできる向き調節機構308を用いる。基板302は、高電場オゾン発生器やコロナプラズマモジュールなどを備える第1の洗浄設備306でブロック402の洗浄を行って、透明な可撓性基板から油やグリスなどの不純物を除去することもできる。実施例によっては、透明な可撓性基板は、次に、第2の洗浄設備312で第2の洗浄を行うことができ、この第2の洗浄設備は接着テープなどをを用いたウェブ洗浄器とすることができる。次に、第1面(上面)と第2面(下面)のある基板302に対し、印刷設備316で第1面にブロック404の印刷を行うことができる。この第1の印刷設備116ではブロック404の印刷を行い、粘度約200センチポアズ(cps)〜約2000センチポアズ(cps)の紫外線硬化性ポリマーインクのそばで第1のマスター版を用いて高精細印刷パターン(HRP)を印刷する。実施例によっては、この高精細導電パターンは、パターンの複数の線それぞれの線幅が約1ミクロン〜約30ミクロンであるような単一ループまたは複数ループの導電性電極と同じ形にすることもできる。この構造は光透過率が約60%超〜約90%である場合には透明であるとみなすこともできる。
【0034】
第1の印刷設備で用いるインクは、アクリルモノマー樹脂材料に酢酸パラジウムを添加したものとすることができる。酢酸パラジウムのアクリルモノマー樹脂中での濃度は例えば約1重量%〜約20重量%、好ましくは1重量%〜5重量%とし、第1の硬化設備318で行われるブロック406の電離放射線硬化によって活性化されるめっき触媒として機能させることもできる。硬化設備318でのブロック406の硬化は、目標の強度が約0.5mW/cm2〜200mW/cm2以上の広いスペクトルの紫外線硬化とすることもできる。
図4はブロック406で基板の硬化を行うことを示しているが、このブロック406の硬化は1つの設備を用いた1種類の硬化とすることも複数の工程で実施される何種類かの硬化とすることもでき、この複数の工程は各パターンを印刷した後でも以下で詳細に述べるように両パターンを印刷した後でも行うことができることは理解できよう。UV線の波長は約250〜600nmとすることもでき、好ましくは365nm〜約435nmとすることもできる。このUV照射によってアクリル樹脂が硬化(重合)する過程と酢酸パラジウムがパラジウムの金属ナノ粒子に解離する過程の二つが同時に起き、CuやNiなどの金属で無電解めっきを行うためのシード層が形成される。実施例によっては、このプロセスでは、UVに加えて加熱モジュールを用い、印刷したパターンのインク組成と寸法に応じて約20℃〜約130℃の範囲内の温度で加熱することもできる。
【0035】
実施例によっては、第2の印刷設備324においてブロック404の第2パターンの印刷を行う。第2の硬化設備326では、第1の硬化設備318での第1の硬化と同様に第2パターンを硬化させることができる。この第2パターンは基板302の第2面に印刷することも、第1面の第1パターンに隣接して印刷することも、基板302以外の基板に印刷することもできる。印刷設備316、324はいずれも様々な構成とすることができることを理解できよう。ブロック404では、両方の印刷設備316、324を用いて両パターンを同時に印刷することもできる。あるいは、
図4には示していないが、
図3には示しているとおり、第1の印刷設備316で第1パターンを印刷し第1の硬化318で硬化した後に、第2の印刷設備324で第2パターンの印刷を行う。
【0036】
ひとつの実施例として、316または324で印刷するパターンの配置形状が様々な寸法、移行部、複雑性を含む場合、第1パターン、第2パターン、あるいはこの両方について、印刷プロセスを調節して一方または両方のパターンのこれらの特性を実現できるようにすることもできる。別の実施例として、2つの印刷設備316、324は、第1パターンを基板302の第1表面に印刷し、これと同時に、あるいはインラインプロセス内で順番に第2パターンを基板302の下面に作ることのできるような配置とすることもできる。この例では1枚の基板に2つのパターンが施されるが、これらは配置形状が異なっていてもよく、異なるインクで印刷することもできる。別の実施例として、2つの印刷設備316、324は、第1パターンを基板302の第1面に印刷し第2パターンを基板302の第1面の第1パターンの隣に印刷できるような配置とすることもできる。別の実施例として、第1の印刷設備316と第2の印刷設備324のうちの少なくとも一方で、
図1で扱ったとおり2本以上のロールに2枚以上のフレキソ刷版を取り付ける。このようにする理由は、例えば、所望の端部パターンが様々な移行部、寸法、配置形状を用いて設計されており2種類以上のインクを用いるのが適切なこともあり、この場合2本以上のロールを用いることとなるためである。別の例として、1つのパターンを形成するのに複数のロールを使用することもできる。これは、パターンの配置形状、移行部、または寸法が段階的により均一に印刷されるため、またはパターンにつき複数のロールプロセスがインラインプロセスのためにより高速の運転速度を可能にすることができるためである。
【0037】
印刷後、316と324で印刷されたパターンは、例えば、無電解めっき408によってめっきされる。めっき設備330での無電解めっき408は、印刷された透明なアンテナパターン回路に含まれるものなど、配置形状の複雑な部分や特徴箇所の多い部分によく適することがある。めっき設備330での無電解めっきにより、パターン上に銅(Cu)などの導電性材料が設けられる。実施例によっては、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)など、他の導電性材料を用いることもできる。このめっきは、約20℃〜約90℃の温度範囲で導電性材料を含む液状媒体中で行う。ひとつの実施例として、316と324で印刷されたパターンに対し同じ導電性材料を用いることもできるが、別の実施例として、異なる導電性材料を用いることもできる。活性化後のパターンは導電性材料を引き付けて高精細導電パターン(HRCP)を形成する。ある特定の例では、液状媒体は、中の金属にもよるが、例えば約80℃とする。ひとつの例として、銅の場合は35℃〜45℃の温度とすることができ、別の実施例として、ニッケルの場合は65℃〜80℃とすることもできる。成長速度は毎分約10nm〜約200nmとし、最終的に厚さ約10nm〜5000nm(0.001ミクロン〜5ミクロン)を達成できるようにすることもできる。別の例として、めっきによって達成される最終的な厚さを約10000nm〜100000nm(10ミクロン〜100ミクロン)とすることもできる。パターン上のめっきの厚さ(めっきされたパターンの厚さと呼ぶこともある)は、目的によって異なるめっき溶液の温度とウェブの速度によって変わることもある。めっき設備での無電解めっきは電流を流す必要がなく、紫外電離放射線照射による硬化によってあらかじめ活性化されためっき触媒を含有するパターン形成済みの領域のみがめっきされる。めっきの厚さは、電場がないことにより電気めっきと比較してより容易に制御可能であり、ひいてはより均一となることもある。
【0038】
無電解めっき後、両パターンは、浸漬または噴霧(図示せず)などによる洗浄設備332で洗浄プロセス(もうひとつの洗浄410と呼ぶこともできる)に通すことができる。浸漬による洗浄設備332では、めっき設備330でめっきされたパターンを室温の水が入った洗浄槽に浸す。続いてこのパターンは乾燥設備412(図示せず)で室温の空気を当てることによって乾燥させることもできる。実施例によっては、RFアンテナ回路の導電性材料を腐食から保護するために、基板を不動態化する414ために不動態化設備(
図3に示さず)を用いることもでき、導電性材料と水とのあらゆる望ましくない反応を防ぐように乾燥させた後に追加されたパターン噴霧とすることもできる。
【0039】
図5は、本発明の実施例に沿った、高精細導電パターンを製造する方法のフローチャート。この実施例では、基板は、ブロック402で
図4に記載されるものと同様にブロック502で洗浄される。
図5の方法は、
図3に開示し、上述の設備と同種の設備を用いて実施することもできることを理解できよう。
【0040】
次に、ブロック504では、第1の単一または複数のアンテナループアレイなどの第1パターンが基板の第1面に印刷される。次に、この第1パターンをUV硬化などによってブロック506で硬化する。ブロック506での硬化は、ブロック508で基板の第2面に第2パターンを印刷している間、第1パターンを基板の第1面の一定の位置に保持できる程度の凝固、硬化、触媒の解離を行う半硬化とするのが好ましい。ひとつの実施例として、基板の硬化範囲全体(UVエネルギーと呼ぶこともある)は、硬化源への露光時間に電力密度を乗じたものに等しい。完全に硬化させるためのUVエネルギーは、1mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲とすることができる。半硬化は、同じ用途において完全な硬化をどの程度とするかに応じて、この範囲の1%〜99.99%で実施する硬化とすることができる。第2パターンにブロック508の印刷を行った後は、第2パターンにブロック510の硬化を行う。このブロック510の硬化段階は、第1パターンと第2パターンの両方を硬化させるのに十分なこともあるが、UV硬化を単一の段階で行うか複数の段階で行うかにかかわらず、UV硬化ではインク中の基材樹脂は90%しか硬化(解離)させることができない。この実施例では、熱硬化を用いるか、あるいはUV硬化されたパターンを室温で18〜24時間かけてねかせることによって残り10%の硬化を達成することもできる。この段階的な硬化は、基板が過剰に硬化されないように行うことができる。硬化が過剰であると基板が脆化したりして劣化につながり、部品に不良が出たり、プロセス中に廃棄物が出たり、この両方が起きたりすることがあるためである。この実施例では、硬化設備318で「軽度」ないし「不完全」な硬化を実施することにより第1パターンを一定の位置に保持して第2パターンを印刷できるようにし、第2パターンの印刷後、インク中の有機金属などの触媒化合物の解離が完了するまで両パターンを硬化させる。硬化後、基板は、上述の
図4のブロック408の無電解めっきと同様に、ブロック512のめっきを行うこともできる。めっきされた基板は次にブロック514の別の洗浄、ブロック516の乾燥、ブロック518の不動態化を行うが、これらは
図4のブロック410、412、414と同様のものとすることもできる。
【0041】
本発明の例示的な実施例を図示し説明したが、当業者であれば本発明の趣旨や教示から逸脱することなくその修正を行うこともできる。本明細書で説明した実施例と本明細書に挙げた例は例示にすぎず、限定する意図はない。本明細書に記載している例には本発明の範囲内で多くの変形や修正が可能である。したがって、保護の範囲は、上で述べた説明によって限定されることなく別記の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の対象のあらゆる均等物を含む。
【手続補正書】
【提出日】2013年8月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法であって、
アクリルモノマー樹脂と濃度1重量%〜20重量%の複数の有機金属粒子からなる触媒とを含むインクと、第1のフレキソマスター版とを用い、基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、
インク中の触媒を解離させることによって基板を硬化させる過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、基板の第2面に第2のアンテナループアレイを印刷する過程をさらに含み、この第2のアンテナループアレイを印刷する過程においてインクと第2のフレキソマスター版を用いることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、第1のアンテナループアレイが単一のアンテナループを含み、第2のアンテナループアレイが複数のアンテナループを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子が粒径10〜500nmであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、触媒が濃度1重量%〜5重量%であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子が酢酸パラジウム、酢酸ロジウム、酢酸白金、酢酸銅、酢酸ニッケル、これらの組み合わせのうちの1つを含む有機金属酢酸塩であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、複数の有機金属粒子がシュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つを含む有機金属シュウ酸塩であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、無電解めっきを用いて基板をめっきする過程をさらに含み、導電性材料が第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイ上に付着させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2の方法であって、第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイを同時に硬化させる過程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2の方法であって、第1のアンテナループアレイと第2のアンテナループアレイを同時に印刷することを特徴とする方法。
【請求項12】
RFIDアンテナをフレキソ印刷する方法であって、
インクと第1のフレキソマスター版を用いて基板の第1面に第1のアンテナループアレイを印刷する過程と、
第1のアンテナループアレイを半硬化させる過程と、
インクと第2のフレキソマスター版を用いて基板の第2面に第2のアンテナループアレイを印刷する過程と、
第2のアンテナループアレイを完全に硬化させる過程とを含み、
インクがアクリルモノマー樹脂と触媒とを含み、触媒が濃度6%未満であり、触媒が複数の有機金属粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子の各粒子が粒径10nm〜500nmであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子が酢酸塩であり、酢酸パラジウム、酢酸ロジウム、酢酸白金、酢酸銅、酢酸ニッケル、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12の方法であって、複数の有機金属粒子がシュウ酸塩であり、シュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12の方法であって、無電解めっきを用いて基板をめっきし、印刷済みの第1パターンと印刷済みの第2パターンに導電性材料を付着させる過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、第1と第2のアンテナループアレイがめっき後、0.005マイクロオーム/スクエア〜約500オーム/スクエアの抵抗率を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
高精細導電パターンを印刷する方法であって、
第1のフレキソマスター版と、アクリルモノマー樹脂と触媒とを含むインクとを用いて、第1の基板に第1の複数の線を含む第1パターンをフレキソ印刷する過程と、
第2のフレキソマスター版とインクとを用いて第2の複数の線を含む第2パターンをフレキソ印刷する過程と、
第1パターンと第2パターンを硬化させる過程とを含み、第1の複数の線の各線と第2の複数の線の各線が幅1〜25ミクロンであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、第1パターンと第2パターンが硬化後、0.005マイクロオーム/スクエア〜約500オーム/スクエアの抵抗率を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18の方法であって、触媒がパラジウム、銅、有機金属酢酸塩、有機金属シュウ酸塩、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18の方法であって、触媒がインク中の濃度1重量%〜20重量%であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18の方法であって、触媒がインク中の濃度1重量%〜5重量%であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18の方法であって、触媒が有機金属シュウ酸塩であり、有機金属シュウ酸塩がシュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸白金、シュウ酸銅、シュウ酸ニッケル、またはこれらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項18の方法であって、触媒が有機金属酢酸塩であり、有機金属酢酸塩が酢酸パラジウム、酢酸ロジウム、酢酸白金、酢酸銅、酢酸ニッケル、これらの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項18の方法であって、印刷済みの第1パターンと印刷済みの第2パターンの上に導電性材料を付着させることによって無電解めっきする過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、またはこれらの合金および組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項18の方法であって、第2パターンをフレキソ印刷する過程において、第2の基板か、第1の基板の第1パターンと反対側の面か、第1の基板の第1パターンの隣のうちのいずれかに第2パターンをフレキソ印刷することを特徴とする方法。
【国際調査報告】