(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-523418(P2015-523418A)
(43)【公表日】2015年8月13日
    (54)【発明の名称】農産工業残留物からカルボキシメチルセルロースを得る方法、カルボキシメチルセルロース、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08B  11/12        20060101AFI20150717BHJP        
   A61K  47/38        20060101ALI20150717BHJP        
   A23L   1/05        20060101ALI20150717BHJP        
   A23L   1/308       20060101ALI20150717BHJP        
   D21C   3/02        20060101ALI20150717BHJP        
【FI】
   C08B11/12
   A61K47/38
   A23L1/04
   A23L1/308
   D21C3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】17
      (21)【出願番号】特願2015-510581(P2015-510581)
(86)(22)【出願日】2013年5月9日
    (85)【翻訳文提出日】2015年1月6日
      (86)【国際出願番号】BR2013000159
    
      (87)【国際公開番号】WO2013166575
(87)【国際公開日】20131114
    
      (31)【優先権主張番号】61/644,856
(32)【優先日】2012年5月9日
(33)【優先権主張国】US
    (81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
    
      
        
          (71)【出願人】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE  S.A.
          (71)【出願人】
【識別番号】514287041
【氏名又は名称】ウニベルシダデ、フェデラル、ド、エスピリト、サント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE  FEDERAL  DO  ESPIRITO  SANTO
          (74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼  宏仁
          (74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村  行孝
          (74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野  真理
          (74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町  洋
          (74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田  満
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】レオニディオ、ステグミジェル
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ホセ、アントニオ、アルベス、エ、シルバ、レイス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】レイナルド、ワルミル、デ、ヘスス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】リリアン、デュランス、デ、モラエス、コスタ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】アントニオ、アルベルト、リベイロ、フェルナンデス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】エリカ、ドゥトラ、アルブケルケ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ジェファーソン、ダ、シルバ、コレア
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】マウリシオ、クスター、クンハ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】マーロン、クリスチャン、マリアネリ、バストス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】パトリシア、マシャード、ブエノ、フェルナンデス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ポリアナ、ベリサリオ、ゾルザル
              
            
        
      
    【テーマコード(参考)】
      4B018
      4B041
      4C076
      4C090
      4L055
    【Fターム(参考)】
      4B018MD35
      4B018MD48
      4B018ME14
      4B018MF01
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      4B041LH11
      4B041LK21
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      4C076EE32
      4C090AA02
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      4C090BA29
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      4C090DA27
      4C090DA28
      4L055AA05
      4L055AB04
      4L055AD00
      4L055AG07
      4L055AG16
      4L055AG34
      4L055AG37
      4L055AG46
    (57)【要約】
  本発明は、農産工業残留物からカルボキシメチルセルロース(CMC)を得るための有利で効果的な方法であって、a)原料が、洗浄され、乾燥され、粉砕され、再度洗浄されることにより、原料を準備する工程、b)工程a)から得た生成物を水酸化ナトリウムと反応させるパルプ化工程、c)パルプを粉砕すること、イソプロパノールおよび蒸留水の溶液を、撹拌しながら室温で加えること、NaOH水溶液を、混合物がアルカリ化するまで加えること、イソプロパノール中のモノクロロ酢酸を加えること、濾過すること、メタノール溶液中に懸濁させること、および酢酸で中和させることからなる合成工程を含んでなる、方法を記載する。本発明は、前記方法から得られる、幾つかの工業的製法に使用できるCMCにも関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  農産工業残留物からカルボキシメチルセルロースを得るための方法であって、以下の工程、
  a)原料が、洗浄され、乾燥され、粉砕され、および再度洗浄される、原料を準備する工程、
  b)工程a)から得られた生成物を水酸化ナトリウムと反応させる、パルプ化工程、
  c)パルプを粉砕すること、イソプロパノールおよび蒸留水の溶液を室温で撹拌しながら加えること、NaOH水溶液を混合物がアルカリ化するまで加えること、イソプロパノール中のモノクロロ酢酸を加えること、濾過すること、メタノール溶液中に懸濁させること、および酢酸で中和させることからなる合成工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
  工程a)が、炉中30〜120℃で4〜72時間乾燥させること、18〜140メッシュ(1.00〜0.105mm)の篩を通して篩分けること、沈殿物を炉中30〜120℃で4〜72時間乾燥させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
  工程b)が、水酸化ナトリウムの濃度5〜25%(m/v)の溶液を、1:10の比で、10〜100分間、加えることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
  反応混合物を撹拌した後、10〜100分間、温度111〜143℃で、圧力0.5〜3.0Kgf/cm2をかける、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
  イソプロパノール溶液が濃度1:15〜1:30であり、蒸留水が加えられ、NaOH水溶液が濃度25〜55%(w/v)で、比1:15の乾燥パルプに加えられ、モノクロロ酢酸溶液が、イソプロパノール1:1〜1:5中、濃度1:1.5〜1:3.5にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
  パルプ化工程b)の後、材料が漂白工程に付される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
  農産工業残留物がココナツ繊維である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られる、カルボキシメチルセルロース。
【請求項9】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、鉱石ペレット製造におけるバインダーとしての使用。
【請求項10】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、食品産業における食品添加物としての使用。
【請求項11】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、製薬工業における添加物としての使用。
【請求項12】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、製紙工業における添加物としての使用。
【請求項13】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、繊維工業における添加物としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本願は、ここにその全文を参考文献として含める「農業関連産業残留物に由来する天然繊維を基材とするバインダー、および天然繊維を基材とするバインダーを得る方法」と題する米国特許出願公開第61/644,856号、2012年5月9日提出、の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
  本発明は、農業関連産業残留物に由来する繊維を基材とするバインダーを得る方法、および前記方法により製造されたカルボキシメチルセルロースに関するものである。
 
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
  ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)で製造されたバインダーの幾つかは、技術的に公知である。以下に、そのようなバインダーおよびそれらの対応する製造方法の例を示す。
【0004】
  ブラジル国特許第PI0,801,555−4号には、鉄鉱石をペレット化するためのバインダーが記載されている。このバインダーは、細かく粉砕した鉄鉱石の結合に使用する、ベントナイトおよび多糖を含む。この発明は、また、バインダーとして多糖およびベントナイトを含んでなる組成物を使用する、鉄鉱石のペレットを提供する方法に関するものである。
【0005】
  米国特許第4,410,694号には、反応容器に詰めたセルロース繊維を通して、均質なアルカリ性反応液を、該セルロース繊維1kgあたり10L/分を超える該反応液の流量で、該セルロース繊維をカルボキシメチルセルロース繊維に実質的に完全に転化させるのに十分な時間連続的に循環させることを含んでなる、カルボキシメチルセルロース繊維の製造方法が記載されており、そのセルロース繊維は、天然セルロース繊維および再生セルロース繊維からなる群から選択され、該反応液は、有効量の、モノクロロ酢酸およびその塩からなる群から選択されたエーテル化剤を含んでなり、そのエーテル化剤は、実質的にエタノールおよび水からなる均質なアルカリ性溶剤に溶解している。
【0006】
  米国特許第3,900,463号には、置換度の一様な分布を有するアルカリカルボキシメチルセルロースの製造方法であって、アルカリモノクロロアセテートおよび低級アルキルモノクロロアセテートからなる群から選択されたエーテル化剤でセルロースを、少なくとも一種の有機溶剤および水からなる溶剤系の存在下で、セルロース中にエーテル化剤が一様に分布するまで処理し、エーテル化剤は、無水セルロースグルコース単位1個あたり0.4〜2.0モルで使用され、得られた混合物にアルカリを加え、アルカリは、アルカリモノクロロアセテートに対して等モル以上又は低級アルキルモノクロロアセテートに対して2倍モル以上の量で使用され、続いて室温から環流温度までの温度でエーテル化が完了するまで処理する、方法が記載されている。
【0007】
  米国特許第4,401,813号には、塩化カルシウム水溶液中で優れたレオロジーおよび流体損失特性を示すカルボキシメチルセルロースの製造方法が記載されており、該方法は、酸素の非存在下で、350℃未満の温度で、86.9±2重量%イソプロパノールを含む水溶液中で、イソプロパノール−水溶液とセルロースの重量比2:1〜7.5:1で、その後に続くアルカリセルロースのエーテル化の際の水酸化アルカリ金属とモノクロロ酢酸のモル比が2.00:1より大きくなるような十分な水酸化アルカリ金属の存在下で、高分子量セルロースの導電性苛性化を行うことを含んでなり、使用するモノクロロ酢酸が約2重量%未満のジクロロ酢酸を含む。
【0008】
  鉱業で使用される、より具体的には鉱石のバインダーとして使用される、CMCは、鉱石粒子を凝集させる役割がある。ペレット形成は、ペレット化工程の最も重要な段階の一つであり、幾つかのファクターにより影響され、最終製品の品質に直接関わる。
【0009】
  加国特許第1,336,641号には、10%〜90%の水溶性ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび10%〜90%の炭酸ナトリウムを含む、水の存在下における鉄鉱石用バインダーが記載されている。この特許は、鉱石中におけるバインダーの使用方法も記載している。
【0010】
  加国特許第1,247,306号には、水の存在下でヒドロキシエチルセルロースおよび炭酸ナトリウムからなるバインダーを使用する、鉄鉱石粒子の結合方法が記載されている。
【0011】
  米国特許第4,288,245号には、アルカリ金属塩およびカルボキシメチルセルロースを少なくとも0.01%の量で、アルカリ金属および酸に由来する一種以上の塩との組合せで含むペーストの存在下における、金属鉱石のペレット化方法が記載されている。
【0012】
  米国特許第4,486,335号には、鉄を含む鉱石のバインダーを製造する方法およびその方法の製品が記載されている。この発明は、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースを基剤とするバインダーを記載しているが、このバインダーは、水溶液中のアルミニウムイオンに結合した時に、ゲルを形成する。
【0013】
  米国特許第4,597,797号には、水の存在下における鉱石のバインダーおよびバインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が記載されている。この組成物は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩およびアルカリ金属および弱酸に由来する一種以上の塩を含んでなる。弱酸のアルカリ塩は、好ましくは酢酸、安息香酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、亜硝酸、ホウ酸および炭酸に由来する。
【0014】
  米国特許第4,863,512号は、水の存在下における濃縮された鉱石材料を結合するのに有用な、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩およびトリポリリン酸ナトリウムを含んでなるバインダー、濃縮された鉱石材料をそのようなペーストで結合する方法、およびそのような方法から得られる結合された製品に関する。
【0015】
  米国特許第4,919,711号には、水の存在下で濃縮された鉱石材料を結合させるのに有用な、カルボキシメチルセルロース又はカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースのアルカリ金属塩およびトリポリリン酸ナトリウムから選択された水溶性重合体を含んでなる、バインダーが開示されている。この生成物に加えて、この特許は、濃縮された鉱石材料をそのようなペーストで結合させる方法、およびそのような方法から得られる結合された製品を記載している。
【0016】
  米国特許第6,497,746号は、粒子を結合する(例えばペレット化する)ための方法、およびそのような方法により製造された製品(即ちペレット)を記載している。これは粒子状材料を結合する方法であり、有効量の濡らすための水、結合するのに有効量のデンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、アルギン酸塩、ペクチンおよびそれらの混合物から選択された重合体、および結合するのに有効な量の、混合物を製造するための弱酸の塩を含んでなる。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
  ブラジルは、農産工業廃棄物の最大発生国の一つである。これらの廃棄物は、前処理を全く行わずに環境中に放出され、幾つかの損害を与えている。
【0018】
  農産工業繊維残留物として、ココナツは、この点で突出しており、大規模生産されている。ブラジルにおけるココナツの年間生産量は、15億ユニットを超え、28ヘクタールを超える面積で収穫されている。ココナツ生産活動の処理は、ココナツ水およびココナツを得るために重要な固体胚乳を取った後の廃棄物であり、繊維状外果皮、中果皮および内果皮によって代表される残りの部分は、果実の成分の約45%を構成する。そのような残留物は、廃棄するのが困難であり、ゴミ捨て場や埋め立て地に送られ、これらの場所に輸送するために工業コストを増加させる。  
【0019】
  上記の問題に対して、本発明は、農産工業廃棄物を使用してカルボキシメチルセルロースを得るための、持続可能な代替方法に関するものである。
【0020】
  本発明により提案される方法により、およそ200万トンにもなるココナツ繊維中果皮の、膨大な量の上記廃棄物を、カルボキシメチルセルロースの製造用原料として使用することができる。
【0021】
発明の概要
  上記の問題およびまだ対処されていないニーズに鑑みて、本発明は、農産工業残留物からカルボキシメチルセルロース(CMC)を得るための有利で効果的な方法であって、a)原料が、洗浄され、乾燥され、粉砕され、再度洗浄される、原料を準備する工程、b)工程a)から得られた生成物を水酸化ナトリウムと反応させるパルプ化工程、c)パルプを粉砕すること、イソプロパノールおよび蒸留水の溶液を、室温で撹拌しながら加えること、NaOH水溶液を混合物がアルカリ化するまで加えること、イソプロパノール中のモノクロロ酢酸を加えること、濾過すること、メタノール溶液中に懸濁させること、および酢酸で中和させることからなる合成工程を含んでなる、方法を記載するものである。
【0022】
  本発明は、また、幾つかの工業的方法に使用されうる前記方法から得られたCMCに関するものである。
【0023】
  本発明によるこれら態様のさらなる優位性および新規な特徴は、下記の説明に一部記載され、一部は、後述の実施例により、又は本発明を実践することにより、当業者にはより明らかになる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な説明
  システムおよび方法の様々な例態様を、以下の図面を参照しながら詳細に説明するが、これらに限定されない。
【
図1】
図1は、CMCを基剤とする市販のバインダーの走査顕微鏡写真である。
 
【
図2】
図2は、市販の純粋CMCの走査顕微鏡写真である。
 
【
図3】
図3は、本発明の漂白段階を含まない工程から得られたCMCの走査顕微鏡写真である。
 
【
図4】
図4は、本発明の漂白段階を含む工程から得られたCMCの走査顕微鏡写真である。
 
【
図5】
図5は、漂白されたパルプの赤外スペクトルである。
 
【
図6】
図6は、ココナツ繊維から得られたCMCの赤外スペクトルである。
 
【
図7】
図7は、市販の純粋CMCの赤外スペクトルである。
 
【
図8】
図8は、CMCを基剤とする市販のバインダーの赤外スペクトルである。
 
【
図9】
図9は、(a)CMCを基剤とする市販のバインダー、(b)未漂白天然繊維を基剤とする組成物、および(c)漂白天然繊維を基剤とする組成物を使用する鉄鉱石のペレットを示す。
 
 
【0025】
発明の詳細な説明
  以下の詳細な記述は、本発明の範囲、応用性又は形態を一切制限するものではない。より正確には、以下の記述は、代表的な態様を実行するために必要な理解を与えるものである。ここで与えられる開示を使用する時、当業者は、本発明の範囲を推定することなく、使用できる好適な代替案を理解することができる。
 
【0026】
  本発明は、農業関連産業残留物に由来する天然CMC成分を得るための方法、より具体的にはココナツ繊維に由来する天然CMCを得るための方法、に関するものである。
 
【0027】
  さらに具体的には、本発明は、天然CMC成分を得るための方法であって、以下の工程、すなわち
a)原料を準備すること、
b)パルプ化工程、
c)CMCの合成
を含んでなるものである。
 
【0028】
  工程a)では、農産工業繊維残留物、例えばココナツ繊維、を水で洗浄し、大まかな不純物を除去する。そのような洗浄の後、繊維を、炉中、30〜120℃で4〜72時間乾燥させる。
 
【0029】
  繊維を粉砕機で粉砕し、18〜140メッシュ(1.00〜0.105mm)の篩を通して篩分ける。
 
【0030】
  粉砕された後、生成物は蒸留水で洗浄され、次いで濾過される。沈殿物を炉中30〜120℃で4〜72時間乾燥させる。
 
【0031】
  得られた生成物からリグニンを除去するために、工程b)(パルプ化工程)では、工程a)で得られた、粉砕され、洗浄された繊維の塊を、水酸化ナトリウム5〜25%(m/v)と1:10の比で10〜100分間混合し、撹拌しながら反応させる。
 
【0032】
  所望により、反応混合物を撹拌した後、圧力0.5〜3.0Kgf/cm
2を、10〜100分間、温度111〜143℃で加えることができる。
 
【0033】
  反応混合物を中性pHで水洗し、その沈殿物を炉中、約12〜18時間、30〜120℃で処理する。
 
【0034】
  工程b)から得られた生成物は、CMC合成(工程c)のために制御された撹拌および温度によって処理される。最初に、乾燥させたパルプが粉砕され、次いでイソプロパノール(1:15〜1:30)および蒸留水(1:0.5〜1:3)  の溶液が加えられる。この系を、室温で10〜30分間撹拌のもとで保持する。その後、NaOH水溶液25〜55%(w/v)を、1:15の比の乾燥パルプに加える。水酸化ナトリウム溶液を、室温で撹拌しながら、30分間かけて滴下して加え、加えた後、混合物を室温で60分間撹拌する。
 
【0035】
  セルロースのアルカリ化の直後、イソプロパノール(1:1〜1:5)にモノクロロ酢酸(1:1.5〜1:3.5)を入れた溶液が加えられる。そのような溶液は、室温で撹拌しながら、10〜40分間かけて滴下して加える。次いで、温度を40〜70℃に上げ、反応を2〜5時間進行させる。
 
【0036】
  合成後、生成物が濾過され、次いで70〜90%メタノール溶液(v/v)中に懸濁され、酢酸で中和され、5〜20分間撹拌される。これが濾過され、60〜90%メタノールで2回、P.A.メタノールで2回洗浄され、最後にCMCは乾燥される。
 
【0037】
  所望により、パルプ化工程b)の後、材料を漂白することができる。この工程を行うか、否かは、最終結果、すなわち最終材料が漂白されうるか否かによって決まる。
 
【0038】
  パルプ化工程b)で得られた、蒸留水(1:40の比で)を含む粗製パルプは、撹拌され、温度60℃に維持される。熱平衡に達した後、氷酢酸(1:0.125〜1:1)および亜塩素酸ナトリウム(1:0.5〜1:4)が加えられる。反応混合物は一定撹拌下に0.5〜1.5時間維持され、次いで氷浴中で10℃未満に冷却される。次いで、混合物は、濾液が中性pHで無色になるまで濾過される。その後、室温で90分間撹拌のもとで、水酸化ナトリウム0.1mol/Lの溶液で分離が行われるその後、そのパルプは再度濾過され、炉液が中性pHに達するまで蒸留水で洗浄される。
 
【0039】
  本発明のカルボキシメチルセルロースを得る方法により、公知技術より穏やかなアルカリ処理(パルプ化)を使用して、約80%のリグニンを農産工業残留物から除去することができ、初期工程における節約となる。
 
【0040】
  さらに、本発明の所望により行う化学的漂白工程により、ポリフェノール95〜100%除去を達成することができ、その工程の際、反応時間の調整および環流の使用が、高品質の製品を得るのに極めて重要であることが明らかになった。
 
【0041】
  得られた天然CMCは、幾つかの工業の工程に使用できる。得られた天然CMCは、鉱業で、天然繊維基材のバインダーとして使用でき、その天然繊維基材のバインダーは、材料の混合物を含んでなり、最終製品のバインダーとして優位性を発揮する。
 
【0042】
  例えば、鉱石粒子を結合するには、バインダー組成物は、種類、供給源および鉱石組成により、様々である。
 
【0043】
  これらの成分は、以下となりうる。
−農産工業繊維残留物からのCMC40〜65%、
−炭酸ナトリウム15〜40%、
−亜塩素酸ナトリウム5〜30%、
−その他0〜20%、これはクエン酸ナトリウム、ナトリウムグルコラートおよび水酸化ナトリウム等である。水酸化ナトリウムは、ペレット化方法における活性化および効率増加にも使用されうる。
 
【0044】
  これらの成分の混合物は、固体−固体混合物又は固体−液体分散液として存在することができ、どちらの場合も、CMCは固体部分であり、添加物は固体又は液体でよい。
 
【0045】
  農産工業繊維残留物に由来する天然繊維を基材とする組成物は、鉱石のバインダーとして使用される場合、鉱石粒子を凝集させる役割を果たす。ペレット形成は、ペレット化工程の最も重要な段階の一つであり、幾つかのファクターにより影響され、最終製品の品質に直接的な結果をもたらす。天然繊維を基材とする組成物の品質は、ペレット形成に最も重要な必要条件の一つであり、好適な特性を確保する。
 
【0046】
  さらに、ここに記載する工程により得られるCMCは、食品工業で、粘度改良剤又は増粘剤として、アイスクリームを包む様々な製品でエマルションを安定化させるのに使用される。また、CMCは、多くの非食品製品、例えばパーソナル潤滑剤、歯磨きペースト、下剤、ダイエットピル、水性塗料、洗剤、織物のり付け、および各種紙製品、の構成物質でもある。CMCは、高い粘度を有し、非毒性であり、低アレルギー性なので、第一に使用される。
 
【0047】
  例1−形態学的分析
  本発明により提案する処理の後、繊維の構造を分析するために、形態学的分析走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して行う。
 
【0048】
  CMCを基材とする市販のバインダー、市販の純粋なCMC、および本発明の方法から得たCMCをSEMにより比較する。
 
【0049】
  SEMによる形態学的分析により、CMCを基材とする市販のバインダーが、Na
2CO
3を含むことがわかった(
図1)。さらに、米国特許第4,948,430号は、その組成物中にNa
2CO
3を含むカルボキシメチルセルロースおよびそのようなバインダーの使用方法も記載している。しかし、市販の純粋なCMC中にはナトリウム塩は存在しない(
図2)。
 
【0050】
  図3および
図4は、本発明の方法から得られた生成物のSEM画像を示すものである。
図3は、ココナツ繊維から得られた、漂白段階を経ていないCMCの顕微鏡写真を示し、
図4は、ココナツ繊維から得た、漂白段階を経たCMCの画像を示し、得られた繊維構造が、市販の製品に見出される繊維と似ていることを立証している。
 
【0051】
  例2−赤外分析
  赤外分析(IR)の主目的は、エーテル化反応が実際にあったのか、それぞれの分子の振動に対応するバンドの特性を通して、確認することである。
 
【0052】
  赤外分析は、漂白されたパルプ、ココナツ繊維から得られたCMC、市販の純粋なCMC、およびCMCを基剤とする市販のバインダーの各試料に行われた。
 
【0053】
  漂白されたパルプのIR分析(
図5)の目的は、セルロースの化学構造を確認することである。赤外スペクトルは、官能基O−H基(3500cm
−1付近のバンド)およびアルキル基(2900cm
−1付近のバンド)のバンドを示した。
 
【0054】
  ココナツ繊維(
図6)および市販の純粋なCMC(
図7)から得られたCMCスペクトルを比較することにより、我々は、カルボン酸ナトリウムのカルボニル基の軸方向変形の振動に対応する、1647〜1664cmcm
−1における類似の振動数を有する、カルボニル(C−O)基の軸方向変形のピークにおける類似性を観察した。全ての赤外スペクトルは類似した特徴を示すが、ココナツ繊維から製造した試料におけるバンドの変位があり、そのような事実は、セルロースを得る際に、又はセルロースの分解により、他の化合物が生じたことにより説明される。
 
【0055】
  ココナツ繊維および市販の純粋なCMCおよびCMCを基剤とする市販のバインダーから得たCMC(
図8)を比較することにより、赤外スペクトルに幾つかの違いを観察することができる。顕著な違いは、1770cm
−1におけるバンドがより強く存在し、1660〜1640cm
−1における吸収振動のバンドが存在しないことであり、そのようなバンドの変位は、ある量のNa
2CO
3がCMCに加わったことに起因し、前者は、さらに、より酸性の特徴をCMCに与えるので、カルボキシメチル基が、カルボン酸およびカルボキシラートエステルの形態で、より大きな量であることが表される。CMCを基剤とする市販のバインダーの赤外スペクトルに現れる、他のピークと異なった、もう一つのピークは、1448cm
−1における強いピークの存在であり、これは、カーボナートカルボニル基のC−O変形によるものである。
 
【0056】
  例3−ココナツ繊維から得たCMCを使用する鉄鉱石ペレット化
  前に述べたように、本発明は、鉄鉱石粒子の凝集に有用であることが立証されている。この研究を補完するために、本発明の効果を立証するための試験を行った。
 
【0057】
  満足な結果が得られたペレット化と焼結ポットグレイトでのペレット化プラントの試験結果は
図9に示した通りである。
 
【0058】
  試験は、表1に示すように、漂白段階を経た、および経ていない、CMCの使用を、CMCを基剤とする市販のバインダーと比較して行った。
 
【0059】
  最後に、当然のことながらこれらの図等は、本発明の代表的な実施態様を示し、本発明の目的の実際の範囲は、請求項にのみ定義される。
 
【手続補正書】
【提出日】2014年7月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  農産工業残留物からカルボキシメチルセルロースを得るための方法であって、以下の工程、
  a)原料が、洗浄され、乾燥され、粉砕され、および再度洗浄される、原料を準備する工程、
  b)工程a)から得られた生成物を混合し、水酸化ナトリウムと撹拌反応させ、その後、圧力と温度を加える、パルプ化工程、
  c)工程b)から得られた生成物を漂白する、任意の漂白工程、
  d)パルプを粉砕すること、イソプロパノールおよび蒸留水の溶液を室温で撹拌しながら加えること、NaOH水溶液を混合物がアルカリ化するまで加えること、イソプロパノール中のモノクロロ酢酸を加えること、濾過すること、メタノール溶液中に懸濁させること、および酢酸で中和させることからなる合成工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
  工程a)が、水洗し、炉中30〜120℃で4〜72時間乾燥させること、粉砕し、18〜140メッシュ(1.00〜0.105mm)の篩を通して篩分けること、蒸留水で洗浄すること、濾過すること、沈殿物を炉中30〜120℃で4〜72時間乾燥させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
  工程b)が、水酸化ナトリウムの濃度5〜25%(m/v)の溶液を、1:10の比で、10〜100分間、加えることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
  工程b)の反応混合物を撹拌した後、10〜100分間、温度111〜143℃で、圧力0.5〜3.0Kgf/cm2をかける、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
  工程c)が、氷酢酸(1:0.125〜1:1)および亜塩素酸ナトリウム(1:0.5〜1:4)を反応混合物に加えること、一定撹拌下に0.5〜1.5時間維持し、次いで冷却すること、水酸化ナトリウム0.1mol/Lの溶液で分離させること、中和することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
  工程d)が、イソプロパノール溶液が濃度1:15〜1:30であり、蒸留水が加えられ、NaOH水溶液が濃度25〜55%(w/v)で、比1:15の乾燥パルプに加えられ、モノクロロ酢酸溶液が、イソプロパノール1:1〜1:5中、濃度1:1.5〜1:3.5にあることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
  パルプ化工程b)の後、材料が漂白工程に付される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
  農産工業残留物がココナツ繊維である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
  請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる、カルボキシメチルセルロース。
【請求項10】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、食品産業における食品添加物としての使用。
【請求項11】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、製薬工業における添加物としての使用。
【請求項12】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、製紙工業における添加物としての使用。
【請求項13】
  請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるカルボキシメチルセルロースの、繊維工業における添加物としての使用。
【請求項14】
  農産工業繊維残留物からのCMC40〜65%、炭酸ナトリウム15〜40%、亜塩素酸ナトリウム5〜30%、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグルコラートおよび水酸化ナトリウムであるその他0〜20%を含んでなるバインダー組成物。
【請求項15】
  請求項9に記載のバインダー組成物の鉱石ペレットの製造における使用。
【国際調査報告】