(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-523680(P2015-523680A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】金属のナノ粒子とナノワイヤを含むインクを用いた導電パターンの形成
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20150717BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20150717BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20150717BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20150717BHJP
H05K 3/24 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
H01B13/00 503C
H01L21/88 B
H05K3/12 610B
H05K3/12 630Z
H05K3/24 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-512634(P2015-512634)
(86)(22)【出願日】2013年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】US2013030662
(87)【国際公開番号】WO2013172939
(87)【国際公開日】20131121
(31)【優先権主張番号】61/648,966
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507385800
【氏名又は名称】ユニピクセル ディスプレイズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダンリャン・ジン
【テーマコード(参考)】
5E343
5F033
【Fターム(参考)】
5E343AA03
5E343AA12
5E343BB16
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343BB72
5E343DD02
5E343DD33
5E343EE04
5E343ER08
5E343ER43
5E343FF02
5E343GG13
5F033HH07
5F033HH11
5F033HH13
5F033HH14
5F033PP26
5F033PP28
5F033QQ53
5F033XX33
5F033XX34
(57)【要約】
本願では、金属のナノ粒子とナノワイヤなどのナノ触媒を含むインクを用いて導電パターンを製造するためのシステムと方法を説明する。製品の最終目的に望まれる印刷パターンの配置形状、インク中のナノ粒子の含有量、導電率を単独あるいはこれらその他の要素と組み合わせて製造プロセスを支え、無電解めっきすることなく、あるいは硬化させることなく、あるいはめっきおよび/もしくは硬化手順を修正して導電パターンを形成することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法であって、
基板を洗浄する過程と、
インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程と、
第1パターンを硬化させる過程とを含み、
パターンが少なくとも1本の線を含み、線が幅1〜25ミクロンであり、インクが結合剤と、複数のナノ粒子と複数のナノワイヤの少なくとも一方を含有する複数のナノ触媒とを含み、形成された複数のナノ触媒がパラジウム−銅ナノ触媒、銀ナノ触媒、銅ナノ触媒のいずれかであり、インクが少なくとも50重量%のナノ触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、パターンの上に導電性材料を乗せることによって第1パターンをめっきする過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、金(Au)のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、複数のナノ粒子の各ナノ粒子が粒径3nm〜200nmであり、複数のナノワイヤの各ナノワイヤが幅1nm〜200nmであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2の方法であって、第1パターンをめっきする前に、第1パターンとは反対側の基板の第2面に第2パターンを印刷する過程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、第2パターンが複数のループと第2の複数の線の一方であり、第1パターンのめっきと同時に第2パターンをめっきする過程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、硬化の際に紫外線硬化と電子ビーム硬化の少なくとも一方を用いることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、硬化後、第1パターンが導電性をもち、硬化が一回の硬化であることを特徴とする方法。
【請求項8】
ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法であって、
基板を洗浄する過程と、
インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程と、
パターンをめっきする過程とを含み、
パターンが少なくとも1本の線を含み、線が幅1〜25ミクロンであり、インクが結合剤と複数のナノ触媒とを含み、形成された複数のナノ触媒がエチレングリコール銀ナノ触媒とグルコース銀ナノ触媒の少なくとも一方であり、インクが少なくとも50重量%のナノ触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、パターンの上に導電性材料を乗せることによってパターンをめっきする過程をさらに含み、導電性材料が銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、金(Au)のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8の方法であって、パターンをめっきする前に、パターンを硬化させる過程をさらに含み、硬化の際に紫外線硬化と電子ビーム硬化の少なくとも一方を用いることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、硬化後、第1パターンが導電性をもち、硬化が一回の硬化であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8の方法であって、インクが50重量%〜70重量%のナノ触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8の方法であって、印刷パターンの抵抗率が0.0015マイクロオーム〜10キロオームであることを特徴とする方法。
【請求項14】
ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法であって、
基板を洗浄する過程と、
インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程とを含み、
パターンが少なくとも1本の線を含み、線が幅1〜25ミクロンであり、インクが結合剤と複数のナノ触媒を含み、形成された複数のナノ触媒がエチレングリコール銅ナノ触媒とグルコース銅ナノ触媒の少なくとも一方であり、インクが少なくとも50重量%のナノ触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、パターンを硬化させる過程をさらに含み、硬化後、第1パターンが導電性をもち、硬化が一回の硬化であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14の方法であって、インクが50重量%〜70重量%のナノ触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14の方法であって、印刷パターンの抵抗率が0.0015マイクロオーム〜10キロオームであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14の方法であって、パターンをめっきする過程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、パターンをめっきする過程がパターンの上に導電性材料を乗せる過程を含み、導電性材料が銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、金(Au)のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18の方法であって、パターンをめっきする前に、パターンを硬化させる過程をさらに含み、硬化の際に紫外線硬化と電子ビーム硬化の少なくとも一方を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2012年5月18日に出願した「METHOD OF PRINTING PATTERNS ONTO A SUBSTRATE USING METAL NANOPARTICLES AND NANOWIRES, WHEREIN THE PRINTED PATTERNS DO NOT REQUIRE ACTIVATION PROCESS FOR PLATING」という名称の米国特許仮出願第61/648966号に基づく優先権を主張するものであり、これを本明細書に参照援用する。
【0002】
本発明は、概して、フレキシブルプリンテッドエレクトロニクス(FPE)に関するものである。より具体的には、本発明は、可撓性基板フィルム上に微細導電パターンを製造する方法に関するものであり、この方法により可撓性で透明な印刷されるパターンはめっき前に活性化する必要がない。
【背景技術】
【0003】
RFアンテナや抵抗性、容量性のタッチスクリーン技術を使用する装置には、透明でかつ導電性のある材料を用いることがある。このような製品を使用する装置およびシステムの需要は伸びつつあるため、これらの部品を製造する効率的で信頼性の高い経済的なシステムや方法がますます望まれている。導電性は機能性に寄与するが、透明性はユーザ体験に寄与し、タッチスクリーンを備える装置のユーザは画面に表示された情報は見ることができるが導電パターンからの反射は見えないようになる。インジウムスズ酸化物(ITO)は光学的に透明であり導電性であるため、従来、タッチスクリーンセンサ向けの金属酸化物として使用されている。ITOは、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、ソーラーパネル、航空機のフロントガラス用の透明な導電性コーティングを作製するために用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7070406号
【特許文献2】米国特許第6245249号
【特許文献3】米国特許出願第2006/0134562号
【特許文献4】米国特許第6632342号
【特許文献5】米国特許出願第2009/0020215号
【特許文献6】米国特許第7973997号
【特許文献7】米国特許出願第2002/0142143号
【特許文献8】米国特許第5759473号
【発明の概要】
【0005】
ひとつの実施例として、ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法は、基板を洗浄する過程と、インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程と、第1パターンを硬化させる過程とを含み、パターンは少なくとも1本の線を含み、線は幅1〜25ミクロンであり、インクは結合剤と、複数のナノ粒子、複数のナノワイヤの少なくとも一方からなる複数のナノ触媒とを含み、形成された複数のナノ触媒はパラジウム−銅ナノ触媒、銀ナノ触媒、銅ナノ触媒のいずれかであり、インクは少なくとも50重量%のナノ触媒を含む。
【0006】
ひとつの実施例として、ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法は、基板を洗浄する過程と、インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程と、パターンをめっきする過程とを含んでおり、パターンは少なくとも1本の線を含み、線は幅1〜25ミクロンであり、インクは結合剤と複数のナノ触媒を含み、形成された複数のナノ触媒はエチレングリコール銀ナノ触媒とグルコース銀ナノ触媒の少なくとも一方であり、インクは少なくとも50重量%のナノ触媒を含む。
【0007】
ひとつの実施例として、ナノ触媒インクを用いたフレキソ印刷によって導電パターンを形成する方法は、基板を洗浄する過程と、インクを用いて基板の第1面にパターンを印刷する過程とを含み、パターンは少なくとも1本の線を含み、線は幅1〜25ミクロンであり、インクは結合剤と複数のナノ触媒を含み、形成された複数のナノ触媒はエチレングリコール銅ナノ触媒またはグルコース銅ナノ触媒の少なくとも一方であり、インクは少なくとも50重量%のナノ触媒を含む。
【0008】
上記では、後述する発明を実施するための形態をより良く理解できるように本発明の特徴をかなり広範に説明した。特許請求の範囲の主題を形成するさらなる特徴および特質が以下に記載される。したがって、本明細書に記載する実施例は、ある特定の先行のシステムや方法に関連した様々な欠点に対処するように意図された特徴と特質との組み合わせを含む。上述の様々な特質および特徴ならびに他のものは、例示的な実施例の以下の発明を実施するための形態を読み、かつ添付の図面を参照することにより当業者には容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の例示的な実施例を詳細に説明するため、ここで添付の図面を参照する。
【0010】
【
図1】本発明のひとつの実施例に沿った高精細導電パターン(HRCP)を製造するためのシステムの図である。
【
図2】本発明のひとつの実施例に沿った高精細導電パターン(HRCP)を製造するための代替システムの図である。
【
図3】本発明のひとつの実施例に沿った高精細導電パターンを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の開示内容を参照援用する。米国特許第7070406号の「Apparatus for embossing a flexible substrate with a pattern carried by an optically transparent compliant media」、米国特許第6245249号の「Micro-structure and manufacturing method and apparatus」、米国特許出願第2006/0134562号の「Method of forming micro-pattern」、米国特許第6632342号の「Methods of fabricating a microstructure array」、米国特許出願第2009/0020215号の「Optical Coatings with Narrow Conductive Lines」、米国特許第7973997号の「Transparent structures」、米国特許出願第2002/0142143号の「Laser engraved embossing roll」、米国特許第5759473号の「Method for producing an Embossing roll」。
【0012】
本発明は、ポリマー結合剤と、めっき前に活性化プロセスを必要としない懸濁状態の金属ナノ粒子とナノワイヤとを含むインク組成物を用いて可撓性の透明な基板に高精細導電線パターンを印刷する方法に関する。従来、タッチスクリーンなどの高精細導電パターンにはITOフィルムが使用されている。抵抗性タッチスクリーンでは、ユーザが指やスタイラスで画面に触れると、ITOフィルムがITOガラスと接触して電圧信号を生成し、プロセッサが接触の起きた座標(XとY)を計算し、接触点に対する適切な応答を処理できるようにする。ITOには利用性(調達性)と費用に懸念がある場合もあり、また他の材料に対して電気伝導度が平均的であることや、フィルムが脆いことなど、小さな問題もある。より具体的に言えば、インジウムは中国内でほぼ独占的に採掘・生産される希土類金属であるため、限度のある供給量がさらに悪化する。このため、商品化のための輸出は中国政府によって管理されて、価格が割高になる。加えて、ITOは蒸着製造法で製造すると脆く比較的硬質なフィルムができ、銅と比較して電気伝導が劣る。蒸着製造法は費用がかかるうえに扱いにくいため、タッチスクリーンデバイスの製造においてITOは徐々に人気のない選択肢になってきている。最後に、ITO部品の限界に加えて、ITOを用いたタッチセンサ内の電極パターンは、ある一定の寸法または精細度でしか印刷できず、具体的に言えば従来の印刷技術では幅25ミクロンを超える特徴箇所のある電極パターン構造しか対応できない。
【0013】
ここで説明する方法によれば、タッチセンサフィルムの他、RFアンテナアレイなどの高精細導電パターンの製造プロセスを単純化し、最適なものにすることができる。高精細導電線パターンの印刷に懸濁状態の金属ナノ粒子とナノワイヤを含有するインク組成物を用いることにより、従来の製品プロセスから1つの硬化工程を縮小させたり無くしたりすることができ、これによって時間が節約でき、関連コストの節約となる。実施例によっては、幅25ミクロン未満の線が印刷されるフレキソ印刷プロセスなどのプロセスに用いるインク中の金属のナノ粒子とナノワイヤの重量濃度を導電性を達成するのに十分な程度に高くすることもでき、この理由で例えば限定しないが硬化または無電解めっきなどのいくつかの処理工程を縮小したり無くしたりすることができるようになる。より具体的に言えば、本発明は、UV硬化性インク組成物中のパラジウム化合物の使用量を減らしたり無くしたりすることに関するものである。こうして酢酸パラジウム等のパラジウム化合物の使用を減らしたりなくしたりすれば、製造の工程数を削減し製造速度を上げることもできる。いくつかの用途では複数の硬化工程と印刷されたパターンのめっきを含む製造プロセスが適切なこともあるが、他の状況では、プロセスに必要な製造工程数を削減したり、硬化およびめっきなどの工程を行うために必要な時間を切り詰めたりしたほうが、安全、環境、コストの視点から賢明なこともある。
【0014】
従来、タッチスクリーンを備える携帯デバイスに用いられる部品にITO層を使わないようにするため、ロールツーロール式の製造方法を用いることがある。基板は、集積回路を印刷する基材として用いることのできる任意の材料とすることができる。ここでいう「透明」という用語は、約24インチ未満の距離から肉眼で容易に検出できない幅50μm未満、好ましくは1μm〜25μm、さらなる例として幅約10μm未満の構造を指すことができる。この用語はまた、光伝送効率が50%超の材料を指すこともできる。
【0015】
前述のように、このロールツーロール式の製造方法と構成は、具体的にはコストの面で従来のITOフィルムの製造技術を超える改善策である。しかし、本発明ではこの方法をさらに改善して製造プロセスを高速にし、製造コストを下げ、製造量を増やすことができるようにするため、ロールツーロール式製造のための方法とシステムの修正点と改良点を説明する。ロールツーロール式搬送プロセスで用いられるインクは、めっきのための触媒としての機能を果たすパラジウム系成分を含むものとすることができる。ここで開示しているとおり、製造する製品は導電性をもったものであるという意図があるが、その意図は特定の用途に対し可能な限り最も信頼性が高く、効率的で、安全で、費用効果の高い方法によって導電パターンを製造することであるという認識である。場合によっては、パラジウムは高価だったり供給不足や供給の信頼性が低かったりすることもあるため、所望のパターンの導電率を達成するには、プロセスに余分な硬化工程を入れたり、めっきプロセスを用いたりすることとなる場合もある。あるプロセスに含まれる硬化工程は、基板と印刷パターン自体のため、用途によって異なることがあり、1つ以上の処理を含むことのある硬化プロセスの時間と強度の両方が、基板と印刷パターンの両方に関して製品品質全体に悪影響を及ぼすこともある。例えば、1つ以上の硬化処理で硬化しすぎると、基板が脆くなるなど、その後の処理や最終用途に適さなくなることもある。印刷パターンについても、硬化中に印刷パターンが過度に露光されると、その後のめっきに必要な触媒としての性質を失ってしまうこともある。パラジウム硬化は、パラジウムを含有する材料を蒸着することによって実施することもできる。しかし、蒸着の初期段階では、パラジウムが分子状領域の形態で析出して3方向に同時に成長し、成長が制御不能になる。これにより蒸着のその後の段階で粗い面が形成されることがある。したがって、本明細書で提示する1つ以上の態様では、別の触媒または金属のナノ粒子とナノワイヤを配合したインクを用いてインク中のパラジウム含有量を減少または無くすプロセスを使用している。このようにインクの組成を変えることにより、インクの組成によっては硬化要件やめっき要件を軽減できることもある。ここでいうインクは、基板表面に少しずつ塗付される液体状態のモノマー、オリゴマー、またはポリマーと、金属元素、金属元素錯体、または有機金属との混合物を指していることもある。また、ここでいうインクは、印刷に用いられるような表面ないし基板に付着させることのできる材料であればいかなるものを指すこともできる。インクは、限定はないが、混合物、懸濁液、またはコロイド等のあらゆる液体の状態を指していることがある。ある特定の例では、インクは、表面に付着させる固体または液体のエアロゾルを指すこともある。ここでいう無電解めっきという用語は、所定の表面に導電性材料の層を積層するために用いられる、触媒で活性化する化学的技術を指していることがある。本明細書に記載しているインク配合によれば、UV硬化性インク組成物中の酢酸パラジウムの量が部分的または全体的に減少するため、材料コストを軽減することができる。実施例によっては、微細構造のロールツーロール製造方法においてある特定の工程を無くすと、電子ビーム硬化設備を用いてインク組成中のポリマー成分の硬化時間の改善を容易にすることにより、高精細導電パターンの高速大量生産を可能にすることができる。
【0016】
ひとつの実施例として、ロールツーロール搬送プロセスの巻き出しロール上に細長く透明な可撓性の薄い基板が設置される。実施例によっては、印刷されるパターンが基板に正確かつ完全に転写されるように、可撓性基板とロールツーロールプロセスとの間に正確にまっすぐな状態を確立・維持するための直線化方法を用いることもできる。ひとつの例として、直線化ガイドまたは位置矯正ケーブルなどの直線化方法を用いてプロセスに対する基板の正しくまっすぐな状態を維持し、正確に特徴箇所を作製できるようにすることもできる。薄い可撓性基板はロールツーロール搬送方法によって巻き出しロールからコロナ処理設備まで搬送し、基板の第1面にある小さな粒子、油、グリスを除去することもできる。コロナ処理設備はまた、基板の表面エネルギーを増加させて十分な濡れ性と接着性を得るために用いることもできる。コロナ処理設備では基板の第1表面に向けて高周波電荷を放出させて端部と自由原子価を作り出す。この自由原子価は、次に、電子放出によって作り出されたオゾン由来の原子を用いてカルボニル基を形成することができ、これにより接着性が向上する。一般に、電力あるいは電子数が大きく、鎖が短く、接着点が多いほど、表面エネルギーが高くなることがある。基板がPETフィルムである場合、コロナ処理設備の強度レベルを約1W/分/m
2〜約50W/分/m
2の範囲とすることができ、表面エネルギーを約20ダイン/cm〜約95ダイン/cmの範囲とすることができる。実施例によっては、基板は、ウェブクリーナーなどの第2の洗浄設備を経ることができる。ここでいうウェブクリーナーは、ウェブ製造においてウェブないし基板から粒子を除去するために用いられる任意の装置を指すことができる。洗浄後、基板は、印刷設備において、フレキソ印刷マスター版とUV硬化性インクとを用いて複数の線を含むパターンを第1面に印刷することもできる。マスター版は、フレキソマスター版、あるいはフレキソ刷版と呼ぶこともできるが、基板に印刷するための複数の線を含むあらかじめ決められたパターンを備えている。ここでいうアニロックスロールは、インクの量を測って刷版に与えるために用いられる円柱体を指すことができる。あるいは、この用語は、フレキソ刷版にインクを転移させるための凹みまたはパターンが表面にある任意のローラーを指すために用いることもできる。一般的に、ここでいう「アニロックスローラー」という用語は、「マスター版」という用語とともに用い、周面に凹みないし窪みのある任意の金属、ポリマー、または複合体でできたフレキソ印刷に用いる概ね円柱形のドラムを指すこともできる。この場合には、アニロックスローラーは、パターンを備えたもの、すなわちロールに凹みを形成する壁と穴が刻み込まれたものとすることができる。この刻み込まれたアニロックスロールは次に、印刷プロセス中、パターンを基板自体に印刷するのではなく、インクを転移させるために用ることもできる。
【0017】
UV硬化性インクに用いることのできる材料としては、アクリル、ウレタン、ポリマー、架橋性ポリマーを組み合わせたものを挙げることができる。マスター版から基板に転移させるインクの量は高精度の計量システムによって調節し、プロセスの速度、インクの組成、パターンの形状と寸法によって変えることもできる。機械の速度は、インクの組成、硬化に必要な時間、高精細線の幅の許容範囲などの要素によって変えることもできる。
【0018】
従来、基板の第1面に第1パターンを印刷した後、硬化設備においてUV光で基板を硬化させることもあるが、そこではUV光源でインク組成中のアクリル基の重合を開始し、従来酢酸パラジウムとしているめっき触媒を活性化している。本明細書で扱う硬化とは、基板にあらかじめ施された何らかのコーティングまたはインク画像を乾燥、あるいは凝固、あるいは固定するプロセスを指すこともできる。さらに、ここでいう硬化は、放射線を当てて材料の少なくとも1つの物理的または化学的な特性を変化させる行為を指すこともできる。さらに、硬化は、照射されている間のインクなどの流体の化学的または物理的な変化のプロセスを指すこともできる。「めっき触媒」という用語は、めっきプロセスにおいて化学反応を起こすことのできる任意の物質を指すことができる。組成によっては、この物質を印刷インクの中に含有させることもできる。UV硬化性インクの組成中のアクリル成分の硬化速度は、高精細の印刷された線の均一性に影響を及ぼすことがある。すなわち、UV硬化性インクを基板全体に分散させないために、アクリル成分の硬化を非常に短時間で行うこともある。第1のUV光源は、UVAまたはUVB紫外光源とすることができるが、約0.1秒〜約2.0秒ほどの非常に短時間でアクリル成分を硬化させたい場合は工業用グレードのUVAまたはUVB光源とするのが好ましい。UV硬化性インク組成物中のめっき触媒は第1のUV硬化設備で活性化し始めることもあるが、このUVの露光時間と強度は酢酸パラジウム成分が完全に活性化ないし還元するのに十分でないこともある。酢酸パラジウム触媒は2+の正電荷を示すが、めっき前にこれを0の中性状態まで還元することができる。結果として、実施例によっては、第1のUV硬化設備後に別の硬化設備を利用することもできる。第1面に微細パターンが印刷された可撓性の透明な基板は、第2のUV硬化設備に通して第2のUV光源で酸化還元反応を起こし、2個の電子(2−)を酢酸パラジウム成分に移して酸化状態を2+から0の中性状態まで還元することもできる。第2のUV光源の強度は第1のUV光源より高く設定することもできる。別の構成として、第2のUV硬化設備は、熱を加える熱的加熱設備に置き換えることもできる。実施例によっては、炉内での加熱後処理を用いて同じ効果を達成することもできる。
【0019】
酢酸パラジウムを化学的に還元した後、第1面に印刷微細パターンが施された状態の基板は、無電解めっき浴にさらすことで微細パターンの上に導電性材料の層を乗せることもできる。この無電解めっきプロセスは電流を流す必要がなく、あらかじめ印刷し硬化プロセスでUV線に露光して活性化しておいためっき触媒を含有するパターン形成領域のみをめっきできる。めっき浴は銅とすることができ、さらにその中にめっきを生じさせるホルムアルデヒドや水素化ホウ素などの強還元剤を含有させることもできる。めっきの厚さは、電場が存在しないため電気めっきと比較して均一にできる。無電解めっきは電解めっきより時間がかかることがあるが、配置形状が複雑であったり、微細な特徴箇所が多かったりする部品にはよく適合することがある。めっき工程を経ると、導電性をもっためっき電極パターン構造が可撓性の透明な基板の第1面に形成される。実施例によっては、めっき後、基板を室温の水で洗浄し、空気で乾燥させることもできる。最後に、洗浄と乾燥の後、電極パターンがめっきされた透明な可撓性基板は、巻き取りロールによって回収される。場合によっては、コスト、環境への影響、設備の稼働率、量、製品の設計によって、高精細導電パターンを形成するために用いるプロセスに上に述べた従来の工程をすべて含ませる必要はなく、実際には硬化工程やめっき工程など、工程数を減らしたり切り詰めたりして進めることもできる。これらの場合のいくつかでは、導電性をもつために必要な硬化やめっきが少ない、あるいは全く必要としないようにインクの配合を選択することによってこの修正した処理経路を達成できることもある。
【0020】
UV硬化性インク組成物中にめっきの核として振る舞うことができかつ触媒金属の活性化工程をなくすことができるような金属のナノ粒子とナノワイヤを形成する方法をいくつかここで説明する。用途によっては、コスト、量、利用可能な設備に応じて、基板上にひとつ以上の導電パターンを製造する際の硬化またはめっき等の1つ以上の加工工程を無くしたり軽減したりすることが望ましいこともある。この場合には、従来の処理で見られるような第2のUV硬化設備などの熱活性化を用いる必要のない方法を用いることもできる。具体的には、UV硬化性インク組成物には結合剤と呼ぶこともできるポリマー溶液を含有させることができる。この結合剤は、既に還元されているかあるいは中性状態となっている懸濁状態の金属のナノ粒子とナノワイヤを含有していることもあるため、製造プロセスにUVや熱による活性化が必要ないこともある。実施例によっては、3通りの方法のそれぞれにおけるインク組成中の金属のナノ粒子とナノワイヤの重量濃度は、約0.2重量%〜約70重量%と様々とすることができる。
【0021】
ひとつの実施例として、ロールツーロール式の微細構造製造方法に用いるUV硬化性インク中の酢酸パラジウムの濃度を、比1:1(すなわち50%)のパラジウム−銅(Pd−Cu)合金で減らすことができる。ここでいう微細構造パターンとは、基板表面にパターン形成、めっき、成膜、印刷された導電性材料または非導電性材料であれば何でもよい。ここでいうパターン形成材料からなる複数の線の各線とは、幅、すなわち基板表面の平面で横方向にとった測定値が約1μm〜50μm未満のものである。この方法は、パラジウムの量を元の方法の半分に減らすことができる。しかし、硬化工程と無電解めっき浴の一方あるいは両方を依然としてプロセスの一部に用いることもできる。この例では、分子量40000のポリビニルピロリドン(PVP)が存在する中で2−エトキシエタノールに酢酸パラジウムと酢酸銅水和物とを入れた混合物を加熱して還流させることによって金属パラジウム−銅ナノ粒子を作製する。この加熱は約135℃の温度で約2時間行う。50/50のPd/Cuコロイドを作製するひとつの例として、銅と酢酸パラジウムそれぞれ75mmolとPVP1.66gとを含有する2−エトキシエタノール30mLを約2時間還流させる。得られた暗褐色の溶液は0.2μmのテフロン(登録商標)フィルタを通して濾過し、窒素中で保管した。得られた金属パラジウム−銅ナノ粒子の粒径は約4nmとなる。別の実施例として、このナノ粒子の粒径は3nm〜200nmの範囲とすることもできる。
【0022】
また、銀のナノ粒子を様々な供給業者から購入するか、製造することもできる。ナノ粒子を合成する場合のひとつの実施例として、基板全体に微細な特徴箇所があるようなパターンを印刷する場合に用いるUV硬化性インクは、銀のナノ粒子とナノワイヤを液体ポリマー溶液中に懸濁させたものとする。実施例によっては、UV硬化性インク組成物中の酢酸パラジウムの使用量を減らして0%とすることもできる。しかし、インク組成物中の金属銀のナノ粒子とナノワイヤの重量濃度が導電率を達成するのに十分に高くない場合には、やはり無電解めっき浴を用いることもできる。この実施例では、ある合成手法を用いてポリマー溶液に銀(Ag)ナノ粒子を作製することができる。具体的には、還元剤としてエチレングリコールとグルコースを用いる一工程の合成方法によって、二種類の形態の銀ナノ粒子のコロイドを作製できる。硝酸銀(AgNO3)を大気圧で約50℃〜約70℃の範囲内の温度で還元することによって均一な銀ナノ粒子を得る。合成中、ポリビニルピロリドン(PVP)を安定剤として用いることもできる。エチレングリコール銀ナノ粒子は、99.9%のエチレングリコール100ml中にAgNO3を157mgとPVPを5g溶解させることによって合成できる。グルコース銀ナノ粒子を作製するには、100mlの40%(w/w)のグルコースシロップ中にAgNO3を157mgとPVPを5gを溶解させる。実施例によっては、試料に塩化ナトリウム(NaCl)を5ml添加することで、反応の完了を促進するとともに、イオン状態の銀がすべて確実にナノ粒子に変わるようにする。反応液中に濁りがあるのはイオン状態の銀が存在することを示しているが、溶液が透明であれば反応が完了したことを確認できる。ナノ粒子の溶液は、3ヶ月間紫外可視(「uv−vis」)スペクトルを確認できれば安定している。得られる金属銀ナノ粒子の粒径は約10nm〜約100nmの範囲とし、粒径約50nmの粒子が最も多くなるようにすることもできる。
【0023】
これに代わる実施例として、基板全体にわたって微細パターンを印刷する場合に用いるUV硬化性インク中、酢酸パラジウム触媒を、活性化や硬化の必要がない銅(Cu)のナノ粒子とナノワイヤに置き換え、これにより製造プロセスの一部を削減するか、あるいは製造プロセスからなくすこともできる。上で銀ナノ粒子に関して述べたように、金属銅のナノ粒子とナノワイヤを用いると、インク組成中に酢酸パラジウムを含める必要が完全になくなる。しかし、インク組成物中の金属銅のナノ粒子とナノワイヤの重量濃度が導電率を達成できる程度に高くない場合には、やはり無電解めっき浴を利用することもできる。ひとつの実施例として、金属銅(Cu)ナノ粒子は、保護剤のポリビニルピロリドン(PVP)が存在する状態で、低圧Hgアークランプで253.7nmの光を照射することによって形成することもできる。具体的には、濃度0.5重量%内のPVPと濃度1×10−4mol/dm3のベンゾフェノン(BP)とを含有する濃度1×10−4mol/dm3の硫酸銅(CuSO4)の脱気水溶液を、寸法114cmの長方形の石英キュベット内に入れた。253.7nmのUV光の電力強度は、周囲温度で低圧Hgランプ(Rayonet Photochemical Reactor)を用いて約200Wとする。このセルを反応器内に配置し、光分解のために4〜4.5mlの溶液を中に入れる。金属銅粒子の形成過程における光増感剤BPの役割を研究した。金属銅ナノ粒子は吸収極大値と透過電子顕微鏡写真に特徴が出る。得られた金属銅ナノ粒子の粒径は約15nm〜約100nmの範囲とすることができる。
【0024】
図1は、本発明のひとつの実施例に沿った高精細導電パターン(HRCP)を製造するためのシステムの図である。
図1に描いたシステムの速度は20FPM〜750FPMと様々とすることができるが、大部分の用途では50FPM〜200FPMが好ましいこともある。インクに導入されるナノサイズの多数の固体は、ナノ粒子あるいはナノワイヤとして同じ意味で説明することができ、総称してナノ触媒と呼ぶこともできることを理解できよう。ナノ粒子は寸法がいずれも1nm〜200nmであるような粒子であり、ナノ粒子は大きさが均一でも不均一でもよい。ナノワイヤは、直径が1nm〜200nmであるが、ワイヤの長さに制限がないような粒子である。このようにUV硬化性インクに金属のナノ粒子とナノワイヤを特別に配合すれば、金属のナノ粒子とナノワイヤが既に還元されているか金属状態であるため、活性化する必要がない。基板102は巻き出しロール104に取り付け、実施例によっては、基板102の向きをまっすぐにするための向き調整設備106を用いることもできる。一般的に、可撓性の透明な基板に用いることのできる材料としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート等のプラスチックフィルムが挙げられる。具体的には、可撓性の透明な基板の好ましい材料としては、DuPont/Teijin Melinex 454と、Dupont/Teijin Melinex ST505とを挙げることができる、後者は、熱処理が関わるプロセスに特別に設計された熱安定化フィルムである。実施例によっては、基板の厚さは5〜500ミクロンとすることができ、好ましい厚さは100ミクロン〜200ミクロンである。高精細用途の場合、可撓性のある透明基板の表面は肉眼でわからない程度に平坦なものとすることができ、厚さを1ミクロン〜1ミリメートルの範囲とする。
【0025】
基板102は、第1の洗浄設備108でウェブ洗浄し、第1の印刷設備114での印刷前に乾燥設備110で乾燥させることができる。しかし、第1のUV硬化設備116は、アクリルモノマー成分を硬化し、かつ基板102にわたってUV硬化性インクを分散することを避けるためにさらに用いることのできる。ひとつの実施例として、UV硬化性インクは粘度200cps〜15000cpsのものとすることができる。実施例によっては、UV硬化性インクは、濃度20〜99重量%のアクリルモノマーまたはポリマー成分(サルトマー社(Sartomer)、ラドキュア社(Radcuer)、ダブルボンド社(Double Bond)などの提供業者から入手可能)と、チバガイギー社(Ciba Geigy)製の濃度1〜10重量%の光開始剤または熱開始剤成分と、動作範囲3〜5%、濃度0.1〜15重量%の範囲の酢酸パラジウム成分からなるものとすることができる。架橋を起こすメカニズムがある場合には、光開始剤などの活性化剤を用いないこともできる。ひとつの実施例として、インク中の酢酸パラジウムの含有量を減少させるために、UV硬化性インクは、光開始剤(必要な場合)と液体状態のモノマーとを含むUV硬化性樹脂溶液中に金属ナノ粒子とナノワイヤを懸濁させた配合とする。第1の印刷設備114では複数の線を含むパターンを印刷することができる。印刷パターンの複数の線の各線は、幅1ミクロン〜20ミクロン、厚さ50〜2000nmのものとすることができる。第1のUV硬化設備116からの第1のUV光源118がUV硬化性樹脂に入射すると、光開始剤がUV光を吸収して分解し、モノマー成分と反応する遊離基を生成し、結果として重合を引き起こしてUV硬化性インクを凝固させる。好ましくは、第1のUV光源は、波長が約280nm〜約480nmで、目標の強度が約0.5mW/cm
2〜約50mW/cm
2の範囲である。第1のUV硬化設備116でUV硬化の代わりに、あるいはUV硬化に加えて熱硬化を用いる場合、この硬化は金属触媒を活性化させるため約20℃〜約85℃の範囲内の温度で実施することもできる。
【0026】
重合後、金属ナノ粒子とナノワイヤを含有する凝固したUV硬化性インクは、さらなる活性化の必要なくすぐにめっきする準備ができる。硬化前後の処理工程の残りは、上述のように進むことができ、金属導電率の濃度により、めっき設備124で無電解めっき浴を含む。めっき設備124では、導電性材料は、約20℃〜約90℃、あるいは40℃〜50℃の範囲の温度で液体状態で特定の金属イオンから生産される。成長速度は、ウェブの速度に応じて、また用途の仕様に従って、毎分10〜150ナノメートルおよび厚さ約0.001ミクロン〜約100ミクロンの範囲内とすることができる。めっき後、基板102上のめっきされたパターン126は、室温で水によって別の洗浄設備128で洗浄され、巻き取りロール130に巻き取りあるいは取り込みされる前に、毎分約20フィートの流速かつ室温または高温における空気によってブロック132で乾燥させることもできる。従来のプロセスの実施例によっては、パターン噴霧における室温20℃〜30℃で不動態化工程は、銅と水または酸素とのあらゆる所望されない化学反応を防ぐ乾燥設備132後に追加することもできる。
【0027】
図2は、本発明のひとつの実施例に沿った高精細導電パターン(HRCP)を製造するための代替システムの図である。
図2では、システム200のすべての処理工程は、硬化を除いて
図1のシステム100に用いられたものと同じとすることができる。
図2に描いた構成は、金属のナノ粒子とナノワイヤ、例えば、それぞれ銀ナノ粒子と銅ナノ粒子を含有するインク組成物とともに用いることもできるが、
図1に描いた構成は、パラジウム触媒を含有するインク組成物に用いることもできる。システム200は、
図1について述べたものと同様に動作する巻き出しロール104と、基板102と、直線化設備108と、洗浄設備108と、乾燥設備110と、マスター版114とを備える。電子ビーム硬化設備302における電子ビーム硬化は、
図1に上述のように、めっきされたパターン126を形成するようにめっき設備124におけるめっき前に上述のように行うこともできる。めっき後、基板102上のめっきされたパターン126は、室温で水によって別の洗浄設備128で洗浄され、巻き取りロール130に巻き取りあるいは取り込みされる前に、毎分約20フィートの流速かつ室温または高温における空気によってブロック132の乾燥を行うこともできる。
【0028】
図2を参照すると、金属ナノ粒子とナノワイヤのいずれかを含有するインク組成物を用いて、マスター版114によって透明な可撓性基板102に微細パターン112が刻印される。電子ビーム硬化設備302で用いる電子ビーム硬化性インクは、光開始剤を必要とせず、むしろ銀(Ag)または銅(Cu)の金属ナノ粒子とナノワイヤを含有するアクリルモノマー溶液を含むインクの成分を用いる。電子ビーム硬化設備302では、インク中のアクリルモノマーと反応する電子放射を照射し、電子ビーム硬化性インクの重合を引き起こす遊離基を形成し、全部または一部において印刷された微細パターン112を凝固させる。電子ビーム硬化設備302で照射された電子放射は、上述の金属銀(Ag)や金属銅(Cu)のナノ粒子とナノワイヤはすでに還元状態ないし金属状態を示しており全く電子を捕獲することができないため、アクリルモノマー溶液中に懸濁した金属銀(Ag)や金属銅(Cu)のナノ粒子とナノワイヤに影響を及ぼすことはない。硬化設備302において印刷された微細パターン112に照射される電子ビームの線量は、約0.01秒〜約2秒の非常に短時間、約0.5MRad〜約5MRadの範囲とすることができる。電子硬化設備302を用いた硬化速度は、第1のUV硬化設備116より200FPMと比較して500FPMそれぞれ、著しく速い。より速い硬化の結果として、
図2に描いた微細構造のロールツーロール製造方法100はまた、
図3に示す微細構造のロールツーロール製造方法100の構成より著しく速くてもよい。
【0029】
ひとつの実施例として、例えば、
図1と
図2に示す方法を用いて、濃度約50%〜約70重量%の銀または金属銅ナノ粒子とナノワイヤを含み得るインクは、印刷設備114における印刷プロセスに用いられる。濃度50重量%超の高濃度の銀または金属銅ナノ粒子とナノワイヤの使用は、無電解めっき浴124の必要を軽減あるいは無くすことによって
図1と
図2に記載される方法をさらに最適化することができる。ひとつの例として、濃度50%超の銀または金属銅ナノ粒子とナノワイヤを含有するインク組成物を用いて可撓性の透明な基板102に印刷される微細パターン112は、十分な導電率を示してもよく、無電解めっき浴124を必要としなくてもよい。濃度50%超の金属の銀または銅のナノ粒子とナノワイヤを含んだインクを用いて印刷された微細パターン112の抵抗率は、インク組成と処理に応じて約0.0015マイクロオーム〜最大10キロオームまで様々とすることができる。
【0030】
上述のようなアクリル溶液中の銀(Ag)ナノ粒子とナノワイヤを作製する際には、これに代わる合成手法を用いることもできる。この例では、PVPが存在する状態で254nmのUV光で硝酸銀(AgNO3)を光還元することによって複数の金属銀のナノ粒子とナノワイヤを作製することができる。PVPの濃度は粒径に影響を及ぼすことがあり、この影響はuv−vis吸収ピークや光還元プロセスの速度を確認することによって観測することができる。ひとつの実施例として、金属銀ナノ粒子の平均粒径、あるいはナノワイヤの平均径は約1nm〜200nmの範囲とすることができ、対応するuv−vis吸収ピーク位置はPVP0.25重量%〜1.0重量%で404〜418nmとすることができる。溶剤の沸点が高いと粒径が小さくなることを理解できよう。光還元プロセスの速度はPVPの濃度とともに増加するであろう。X線光電子分光研究によって観測されているように、ポリマーは>C=O基の酸素原子を通じて金属銀のナノ粒子とナノワイヤと相互作用する。
【0031】
別の実施例として、上述のアクリル溶液中に銀(Ag)のナノ粒子とナノワイヤの作製には別の合成手法を用いることもできる。この手順では、均一な反応混合物を得るため50mlのPyrex(登録商標)フラスコ内で4mlのエタノールまたはエトキシエタノール中にPVPを2.5×10〜6molとAgNO3を3.0×10〜4mol溶解させることによって金属銀のナノ粒子とナノワイヤを作製することができる。この実施例では、PVPが存在する状態で130oCの無水エトキシエタノール中に還流させることによって達成することもできる。
【0032】
図3を参照すると、
図3は、本発明のひとつの実施例に沿った、高精細導電パターンを製造する方法のフローチャートである。ブロック402では、複数のパラジウム−銅、あるいは銀、あるいは銅のナノワイヤもしくはナノ粒子を含むインクが形成される。ブロック402で形成されたインクは、基板が洗浄されるブロック404で開始するロールツーロール製造プロセス前に形成され、その後、ブロック406で乾燥させることもできることを理解できよう。ブロック408aでは、第1パターンが基板に印刷され、ブロック408bでは、第2パターンが基板に印刷することもできる。
図1と
図2には描いていないが、印刷設備114は、基板の両面にパターンまたは後で組み立てられる基板の片面に2つのパターンを印刷するために用いられた複数の印刷ローラーおよびフレキソマスター版を備えることができる。別の実施例として、印刷設備114は、基板が後で組み立てられる2つの異なる基板にパターンを印刷することができる。ブロック408a、408bの印刷を行ったパターンには、フレキソ印刷プロセスにおける複数のナノ粒子を含むインクを用いて印刷することもできる。第1パターンや第2パターンを含む複数の線の各線は幅25ミクロン未満であり、幅1〜25ミクロンの範囲とすることができる。上述のように、インク中のナノ粒子含有量(重量%)によって、パターンは印刷された状態で導電性をもったものとなることがある。ブロック410では、単数または複数の導電パターンが印刷することによって形成される場合、基板は次にブロック412の不動態化を行うこともできる。
【0033】
ひとつの実施例として、ブロック410では、導電パターンが形成されない場合、パターンは紫外光または電子ビームによってブロック414で硬化させることもできる。ひとつの実施例として、硬化ブロック414は、さらなる硬化工程がブロック408a、408bで印刷された単数または複数のパターンの所望の導電率を達成するために用いられない、単一硬化である。この実施例は、単一硬化と呼ぶこともでき、ブロック414における第1の硬化がブロック408aおよび/または408bで形成された単数または複数のパターンを十分に硬化しない場合に用いることのできる複数の硬化プロセスに対照的である。このプロセスは、ブロック414における後続の硬化または必要に応じて他の処理を含むことができる。ブロック418では、導電パターンが硬化後に形成されない場合、パターンは、ブロック420のめっきを行うこともでき、その後、ブロック412で不動態化することもできる。ブロック418では、パターンが硬化後に導電性をもったものとなる場合、パターンは、ブロック412の不動態化を行うこともできる。上述のように、プロセス内の様々な段階におけるパターンの導電率は、用いたインクの種類、インク中のナノ粒子の含有量(重量%)、パターンの寸法、ならびに所望の導電率および/または最終用途によって一部変わることがある。
【0034】
本発明の例示的な実施例を図示し説明したが、当業者は本発明の趣旨と教示から逸脱することなくその修正を行うことができる。本明細書で説明した実施例と本明細書に挙げた例は例示にすぎず、限定する意図はない。本明細書で説明した例は本発明の範囲内で多くの変形と修正が可能である。したがって、保護の範囲は、以上に述べた説明によって限定されるのではなく、別記の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の対照のあらゆる等価物を含む。
【国際調査報告】