(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
本発明は、(2−((2−オキソエチル)チオ)エチル)カルバメート(eTEC)スペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含むeTEC結合グリココンジュゲート、そのようなグリココンジュゲートを含む免疫原性組成物、ならびにそのようなグリココンジュゲートおよび免疫原性組成物の調製および使用のための方法に関する。
(2−((2−オキソエチル)チオ)エチル)カルバメート(eTEC)スペーサーを介して担体タンパク質とコンジュゲートしている糖を含むグリココンジュゲートを作製する方法であって、
a)糖を、1,1’−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)(CDT)または1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)と、有機溶媒中で反応させて、活性化糖を生成するステップと、
b)前記活性化糖を、シスタミンもしくはシステアミンまたはその塩と反応させて、チオール化糖を生成するステップと、
c)前記チオール化糖を還元剤と反応させて、1つまたは複数の遊離スルフヒドリル残基を含む活性化チオール化糖を生成するステップと、
d)前記活性化チオール化糖を、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基を含む活性化担体タンパク質と反応させて、チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成するステップと、
e)前記チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを、(i)前記活性化担体タンパク質のコンジュゲートされていないα−ハロアセトアミド基をキャップすることができる第一のキャッピング試薬、および/または(ii)コンジュゲートされていない遊離スルフヒドリル残基をキャップすることができる第二のキャッピング試薬と反応させるステップと
を含み、それにより、eTEC結合グリココンジュゲートが生成される、方法。
前記キャッピングステップe)が、前記チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを、(i)第一のキャッピング試薬としてのN−アセチル−L−システイン、および/または(ii)第二のキャッピング試薬としてのヨードアセトアミドと反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
トリアゾールまたはイミダゾールとの反応によって前記糖を調合して、調合された糖を提供するステップをさらに含み、前記調合された糖は、ステップa)の前に、シェルフリーズされ、凍結乾燥され、有機溶媒中で再構成される、請求項1または2に記載の方法。
ステップc)における前記還元剤が、トリス(−2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)またはメルカプトエタノールである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
ステップa)における前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)およびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、またはそれらの混合物からなる群から選択される極性非プロトン性溶媒である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
前記莢膜多糖が、肺炎球菌(Pn)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
eTECスペーサーを介して担体タンパク質とコンジュゲートしている細菌莢膜多糖を含むグリココンジュゲートであって、前記多糖はカルバメート結合を介して前記eTECスペーサーと共有結合しており、前記担体タンパク質はアミド結合を介して前記eTECスペーサーと共有結合している、グリココンジュゲート。
前記莢膜多糖が、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される、請求項24に記載のグリココンジュゲート。
前記追加の抗原が、タンパク質抗原、または肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)に由来する莢膜多糖のグリココンジュゲートを含む、請求項49に記載の免疫原性組成物。
前記追加の抗原が、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖のグリココンジュゲートを含む、請求項50に記載の免疫原性組成物。
前記追加の抗原が、タンパク質抗原、または髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来する莢膜多糖のグリココンジュゲートを含む、請求項49に記載の免疫原性組成物。
前記アルミニウムベースのアジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項55に記載の免疫原性組成物。
対象において、細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させる方法であって、前記対象に、免疫学的に有効な量の請求項48から56のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を投与するステップを含む、方法。
前記感染症、疾患または状態が、肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)細菌に関連し、前記グリココンジュゲートが、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖を含む、請求項57に記載の方法。
前記感染症、疾患または状態が、髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌に関連し、前記グリココンジュゲートが、血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖を含む、請求項57に記載の方法。
対象において、保護免疫応答を誘導する方法であって、前記対象に、免疫学的に有効な量の請求項48から56のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を投与するステップを含む、方法。
前記細菌莢膜多糖が、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖である、請求項60に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい実施形態の下記の詳細な説明および本明細書に包含される実施例を参照することにより、本発明をより容易に理解することができる。特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において記述されているものと同様または同等である任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することができるが、ある特定の好ましい方法および材料が本明細書において記述されている。実施形態について記述し、本発明を特許請求する際には、ある特定の術語を、以下に提示する定義に従って使用する。
【0040】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別段の指示がない限り、複数の参照物を包含する。故に、例えば、「その方法」への言及は、1つもしくは複数の方法、および/または本明細書において記述されている種類のステップを包含し、「eTECスペーサー」への言及は、本開示を読んで当業者に明らかとなる通り、1つまたは複数のeTECスペーサーを指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「約」は、定められた濃度範囲、時間枠、分子量、温度またはpH等の値の、統計的に有意な範囲内であることを意味する。そのような範囲は、指示されている値または範囲の一桁以内、典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらにより典型的には5%以内であってよい。時に、そのような範囲は、所与の値または範囲の測定および/または決定に使用される標準的な方法に典型的な実験誤差以内であってよい。用語「約」によって網羅される許容偏差は、研究中の特定の系によって決まることになり、当業者であれば容易に分かり得る。本願内で範囲が記載されている場合にはいつでも、該範囲内のすべての整数も、本発明の実施形態として企図されている。
【0042】
本開示において、「含む(comprises)」、「含まれる」、「含む(comprising)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」等の用語は、米国特許法におけるものに帰属する意味を有し得、例えば、「包含する(includes)」、「包含される」、「包含する(including)」等を意味し得ることに留意されたい。そのような用語は、任意の他の原料を除外することなく、特定の原料または原料のセットの包含を指す。「から本質的になる(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」等の用語は、米国特許法におけるものに帰属する意味を有し、例えば、本発明の新規または基本的な特徴から逸脱しない追加の原料またはステップの包含を可能にする、すなわち、本発明の新規または基本的な特徴から逸脱する追加の列挙されていない原料またはステップを除外する。用語「からなる(consists of)」および「からなる(consisting of)」は、米国特許法におけるものに属する意味を有する、すなわち、これらの用語はクローズエンドである。したがって、これらの用語は、特定の原料または原料のセットの包含および他のすべての原料の除外を指す。
【0043】
用語「糖」は、本明細書において使用される場合、多糖、オリゴ糖または単糖を指し得る。高頻度で、糖への言及は、細菌莢膜多糖、特に、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitis)等の病原性細菌に由来する莢膜多糖を指す。
【0044】
用語「コンジュゲート」または「グリココンジュゲート」は、担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を指すために、本明細書において交換可能に使用されている。本発明のグリココンジュゲートは、時に、本明細書において「eTEC結合」グリココンジュゲートと称され、これは、少なくとも1つのeTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含む。本発明のeTEC結合グリココンジュゲートおよびそれらを含む免疫原性組成物は、若干量の遊離糖を含有し得る。
【0045】
用語「遊離糖」は、本明細書において使用される場合、担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしていない糖、または、高い糖/タンパク質比(>5:1)で付着している極めて少ない担体タンパク質と共有結合により付着しているが、それにもかかわらずグリココンジュゲート組成物中に存在する糖を意味する。遊離糖は、コンジュゲートしている糖−担体タンパク質グリココンジュゲートと、非共有結合により会合していてよい(すなわち、それと非共有結合している、それに吸着している、またはその中にもしくはそれとともに取り込まれている)。用語「遊離多糖」および「遊離莢膜多糖」は、本明細書において、糖がそれぞれ多糖または莢膜多糖であるグリココンジュゲートと同じ意味を伝えるために使用され得る。
【0046】
本明細書において使用される場合、「コンジュゲートさせること(to conjugate)」、「コンジュゲートしている」および「コンジュゲートさせること(conjugating)」は、糖、例えば細菌莢膜多糖が、担体分子または担体タンパク質と共有結合により付着するプロセスを指す。本発明の方法において、糖は、少なくとも1つのeTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている。コンジュゲーションは、以下に記述する方法に従って、または当技術分野において公知である他のプロセスによって実施することができる。担体タンパク質とのコンジュゲーションは、細菌莢膜多糖の免疫原性を強化する。
【0047】
グリココンジュゲート
本発明は、1つまたは複数のeTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含むグリココンジュゲートであって、糖はカルバメート結合を介してeTECスペーサーと共有結合によりコンジュゲートしており、担体タンパク質はアミド結合を介してeTECスペーサーと共有結合によりコンジュゲートしている、グリココンジュゲートに関する。
【0048】
1つまたは複数のeTECスペーサーの存在に加えて、本発明のグリココンジュゲートの新規特色は、糖および得られたeTEC結合グリココンジュゲートの分子量プロフィール、担体タンパク質当たりのコンジュゲートしているリジンとeTECスペーサーを介して多糖と共有結合しているリジンの数との比、糖の繰り返し単位の関数としての担体タンパク質と糖との間の共有結合の数、ならびに糖の総量と比較した遊離糖の相対量を包含する。
【0049】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートは、一般式(I):
【0051】
eTECスペーサーは、7個の線形原子(すなわち、−C(O)NH(CH
2)
2SCH
2C(O)−)を包含し、糖と担体タンパク質との間に安定なチオエーテルおよびアミド結合を提供する。eTEC結合グリココンジュゲートの合成は、糖とカルバメート結合を形成してチオール化糖を提供する、糖の活性化ヒドロキシル基とチオアルキルアミン試薬、例えば、シスタミンもしくはシステインアミンまたはその塩のアミノ基との反応を伴う。1つまたは複数の遊離スルフヒドリル基の発生は、還元剤との反応により活性化チオール化糖を提供することによって遂行される。活性化チオール化糖の遊離スルフヒドリル基と、アミン含有残基上に1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基を有する活性化担体タンパク質との反応は、チオエーテル結合を作り出してコンジュゲートを形成し、ここで、担体タンパク質は、アミド結合を介してeTECスペーサーと付着している。
【0052】
本発明のグリココンジュゲートにおいて、糖は、多糖、オリゴ糖または単糖であってよく、担体タンパク質は、本明細書においてさらに記述されるまたは当業者に公知の通りの任意の好適な担体から選択され得る。多くの実施形態において、糖は細菌莢膜多糖である。いくつかのそのような実施形態において、担体タンパク質はCRM
197である。
【0053】
いくつかのそのような実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)に由来するPn莢膜多糖を含む。特定の実施形態において、Pn莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。他の実施形態において、莢膜多糖は、Pn血清型10A、11A、22Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。1つのそのような実施形態において、莢膜多糖はPn−33F莢膜多糖である。別のそのような実施形態において、莢膜多糖はPn−22F莢膜多糖である。別のそのような実施形態において、莢膜多糖はPn−10A莢膜多糖である。また別のそのような実施形態において、莢膜多糖はPn−11A莢膜多糖である。
【0054】
他の実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来するMn莢膜多糖を含む。特定の実施形態において、Mn莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される。1つのそのような実施形態において、莢膜多糖はMn−A莢膜多糖である。別のそのような実施形態において、莢膜多糖はMn−C莢膜多糖である。別のそのような実施形態において、莢膜多糖はMn−W135莢膜多糖である。また別のそのような実施形態において、莢膜多糖はMn−Y莢膜多糖である。
【0055】
特に好ましい実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、eTECスペーサーを介してCRM
197と共有結合によりコンジュゲートしている、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fもしくは33F莢膜多糖、またはMn血清型A、C、W135もしくはY莢膜多糖等の、PnまたはMn細菌莢膜多糖を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートは、eTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含み、糖は、10kDaから2,000kDaの間の分子量を有する。他のそのような実施形態において、糖は、50kDaから2,000kDaの間の分子量を有する。さらなるそのような実施形態において、糖は、50kDaから1,750kDaの間、50kDaから1,500kDaの間、50kDaから1,250kDaの間、50kDaから1,000kDaの間、50kDaから750kDaの間、50kDaから500kDaの間、100kDaから2,000kDaの間、100kDaから1,750kDaの間、100kDaから1,500kDaの間、100kDaから1,250kDaの間、100kDaから1,000kDaの間、100kDaから750kDaの間、100kDaから500kDaの間、200kDaから2,000kDaの間、200kDaから1,750kDaの間、200kDaから1,500kDaの間、200kDaから1,250kDaの間、200kDaから1,000kDaの間、200kDaから750kDaの間、または200kDaから500kDaの間の分子量を有する。いくつかのそのような実施形態において、糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fもしくは33F莢膜多糖、またはMn血清型A、C、W135もしくはY莢膜多糖等の細菌莢膜多糖であり、ここで、莢膜多糖は、記述されている通りの分子量範囲のいずれか内にある分子量を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートは、50kDaから20,000kDaの間の分子量を有する。他の実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、500kDaから10,000kDaの間の分子量を有する。他の実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、200kDaから10,000kDaの間の分子量を有する。さらに他の実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、1,000kDaから3,000kDaの間の分子量を有する。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートは、200kDaから20,000kDaの間、200kDaから15,000kDaの間、200kDaから10,000kDaの間、200kDaから7,500kDaの間、200kDaから5,000kDaの間、200kDaから3,000kDaの間、200kDaから1,000kDaの間、500kDaから20,000kDaの間、500kDaから15,000kDaの間、500kDaから12,500kDaの間、500kDaから10,000kDaの間、500kDaから7,500kDaの間、500kDaから6,000kDaの間、500kDaから5,000kDaの間、500kDaから4,000kDaの間、500kDaから3,000kDaの間、500kDaから2,000kDaの間、500kDaから1,500kDaの間、500kDaから1,000kDaの間、750kDaから20,000kDaの間、750kDから15,000kDaの間、750kDaから12,500kDaの間、750kDaから10,000kDaの間、750kDaから7,500kDaの間、750kDaから6,000kDaの間、750kDaから5,000kDaの間、750kDaから4,000kDaの間、750kDaから3,000kDaの間、750kDaから2,000kDaの間、750kDaから1,500kDaの間、1,000kDaから15,000kDaの間、1,000kDaから12,500kDaの間、1,000kDaから10,000kDaの間、1,000kDaから7,500kDaの間、1,000kDaから6,000kDaの間、1,000kDaから5,000kDaの間、1,000kDaから4,000kDaの間、1,000kDaから2,500kDaの間、2,000kDaから15,000kDaの間、2,000kDaから12,500kDaの間、2,000kDaから10,000kDaの間、2,000kDaから7,500kDaの間、2,000kDaから6,000kDaの間、2,000kDaから5,000kDaの間、2,000kDaから4,000kDaの間、または2,000kDaから3,000kDaの間の分子量を有する。
【0059】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを特徴付けるための別の手法は、eTECスペーサーを介して糖とコンジュゲートする、担体タンパク質中のリジン残基の数によるものであり、これは、コンジュゲートしているリジンの範囲として特徴付けることができる。
【0060】
多くの実施形態において、担体タンパク質は、担体タンパク質上のリジン残基の1つまたは複数のε−アミノ基とのアミド結合を介して、eTECスペーサーと共有結合によりコンジュゲートしている。いくつかのそのような実施形態において、担体タンパク質は、糖と共有結合によりコンジュゲートしている2から20個のリジン残基を含む。他のそのような実施形態において、担体タンパク質は、糖と共有結合によりコンジュゲートしている4から16個のリジン残基を含む。
【0061】
好ましい実施形態において、担体タンパク質はCRM
197を含み、これは39のリジン残基を含有する。いくつかのそのような実施形態において、CRM
197は、糖と共有結合している39個のうち、4から16個のリジン残基を含み得る。このパラメーターを表現するための別の手法は、CRM
197リジンの約10%から約41%が糖と共有結合していることである。別のそのような実施形態において、CRM
197は、糖と共有結合している39個のうち、2から20個のリジン残基を含み得る。このパラメーターを表現するための別の手法は、CRM
197リジンの約5%から約50%が糖と共有結合していることである。
【0062】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを、糖対担体タンパク質の比(重量/重量)によって特徴付けることもできる。いくつかの実施形態において、糖:担体タンパク質比(w/w)は、0.2から4の間である。他の実施形態において、糖:担体タンパク質比(w/w)は、1.0から2.5の間である。さらなる実施形態において、糖:担体タンパク質比(w/w)は、0.4から1.7の間である。いくつかのそのような実施形態において、糖は細菌莢膜多糖であり、かつ/または担体タンパク質はCRM
197である。
【0063】
グリココンジュゲートを、糖の繰り返し単位の関数としての、担体タンパク質と糖との間の共有結合の数によって特徴付けることもできる。一実施形態において、本発明のグリココンジュゲートは、多糖の4つの糖繰り返し単位ごとに、担体タンパク質と多糖との間に少なくとも1つの共有結合を含む。別の実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の10の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。別の実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の15の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。さらなる実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の25の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。
【0064】
多くの実施形態において、担体タンパク質はCRM
197であり、CRM
197と多糖との間のeTECスペーサーを経由する共有結合は、多糖の4、10、15または25の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。
【0065】
コンジュゲーション中に考慮すべき重要事項は、糖エピトープの一部を形成し得る、O−アシル、ホスフェートまたはグリセロールリン酸側鎖等の個々の成分の潜在的に感受性の高い非糖置換基官能基の保持を可能にする条件の開発である。
【0066】
一実施形態において、グリココンジュゲートは、10〜100%の間のO−アセチル化度を有する糖を含む。いくつかのそのような実施形態において、糖は、50〜100%の間のO−アセチル化度を有する。他のそのような実施形態において、糖は、75〜100%の間のO−アセチル化度を有する。さらなる実施形態において、糖は、70%以上(≧70%)のO−アセチル化度を有する。
【0067】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートおよび免疫原性組成物は、担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしていないが、それにもかかわらずグリココンジュゲート組成物中に存在する遊離糖を含有し得る。遊離糖は、グリココンジュゲートと、非共有結合により会合して(すなわち、非共有結合して、吸着して、またはその中にもしくはそれとともに取り込まれて)いてよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、糖の総量に対して、約45%未満の遊離糖、約40%未満の遊離糖、約35%未満の遊離糖、約30%未満の遊離糖、約25%未満の遊離糖、約20%未満の遊離糖、約15%未満の遊離糖、約10%未満の遊離糖、または約5%未満の遊離糖を含む。好ましくは、グリココンジュゲートは、15%未満の遊離糖、より好ましくは10%未満の遊離糖、なお一層好ましくは5%未満の遊離糖を含む。
【0069】
ある特定の好ましい実施形態において、本発明は、eTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている、莢膜多糖、好ましくはPnまたはMn莢膜多糖を含み、下記の特色の1つまたは複数を単独でまたは組み合わせて有する、eTEC結合グリココンジュゲートを提供する:多糖は50kDaから2,000kDaの間の分子量を有する;グリココンジュゲートは500kDaから10,000KDaの間の分子量を有する;担体タンパク質は糖と共有結合している2から20個のリジン残基を有する;糖:担体タンパク質比(w/w)は0.2から4の間である;グリココンジュゲートは、多糖の4、10、15または25の糖繰り返し単位ごとに、担体タンパク質と多糖との間に少なくとも1つの共有結合を含む;糖は、75〜100%の間のO−アセチル化度を有する;コンジュゲートは、全多糖に対して約15%未満の遊離多糖を含む;担体タンパク質はCRM
197である;莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fもしくは33F莢膜多糖から選択され、または莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135もしくはY莢膜多糖から選択される。
【0070】
eTEC結合グリココンジュゲートを、それらの分子サイズ分布(K
d)によって特徴付けることもできる。コンジュゲートの分子サイズは、高圧液体クロマトグラフィーシステム(HPLC:high pressure liquid chromatography system)を使用するセファロースCL−4B固定相サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:size exclusion chromatography)充填剤によって決定される。K
d決定のために、クロマトグラフィーカラムを最初に較正して、空隙容積または全排除容積を表すV
0、および、粒子間容積としても公知である、試料中の最小分子が溶離する容積、V
iを決定する。すべてのSEC分離は、V
0とV
iとの間で起こる。収集された各画分についてのK
d値は、下記の式K
d=(V
e−V
i)/(V
i−V
0)[式中、V
eは化合物の保持容積を表す]によって決定される。0.3以下を溶離する%画分(主要ピーク)は、コンジュゲートK
d(分子サイズ分布)を定義する。いくつかの実施形態において、本発明は、35%以上の分子サイズ分布(K
d)を有するeTEC結合グリココンジュゲートを提供する。他の実施形態において、本発明は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の分子サイズ分布(K
d)を有するeTEC結合グリココンジュゲートを提供する。
【0071】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートおよび免疫原性組成物は、遊離スルフヒドリル残基を含有し得る。いくつかの場合において、本明細書において提供されている方法によって形成された活性化チオール化糖は、多数の遊離スルフヒドリル残基を含有することになり、そのうちいくつかは、コンジュゲーションステップ中に担体タンパク質との共有結合によるコンジュゲーションを受けない場合がある。そのような残留遊離スルフヒドリル残基は、潜在的に反応性の官能基をキャップするために、チオール反応性キャッピング試薬、例えばヨードアセトアミド(IAA)との反応によりキャップされる。他のチオール反応性キャッピング試薬、例えばマレイミド含有試薬等も企図されている。
【0072】
加えて、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートおよび免疫原性組成物は、残留するコンジュゲートされていない担体タンパク質を含有していてよく、これは、キャッピングプロセスステップ中に修飾を受けた活性化担体タンパク質を包含し得る。
【0073】
本発明のグリココンジュゲートは、免疫原性組成物の生成において、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)または髄膜炎菌(N.meningitidis)等の病原性細菌による細菌感染症からレシピエントを保護するために使用され得る。故に、別の態様において、本発明は、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含み、グリココンジュゲートが、本明細書において記述されている通り、eTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含む、免疫原性組成物を提供する。
【0074】
多くの実施形態において、免疫原性組成物は、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含み、グリココンジュゲートは細菌莢膜多糖を含む。
【0075】
いくつかのそのような実施形態において、免疫原性組成物は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)に由来するPn莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む。いくつかの特定の実施形態において、Pn莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。
【0076】
他のそのような実施形態において、免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来するMn莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む。いくつかの特定の実施形態において、Mn莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される。
【0077】
特に好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、eTECスペーサーを介してCRM
197と共有結合によりコンジュゲートしている、PnまたはMn莢膜多糖等の細菌莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物はアジュバントを含む。いくつかのそのような実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウムベースのアジュバントである。一実施形態において、免疫原性組成物は、アジュバントリン酸アルミニウムを含む。
【0079】
本発明のeTEC結合グリココンジュゲートおよびそれらを含む免疫原性組成物は、若干量の遊離糖を含有し得る。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、多糖の総量と比較して、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満の遊離多糖を含む。好ましくは、免疫原性組成物は、15%未満の遊離糖、より好ましくは10%未満の遊離糖、なお一層好ましくは(preferable)5%未満の遊離糖を含む。
【0080】
別の態様において、本発明のグリココンジュゲートまたは免疫原性組成物を使用して、動物効能モデルにおいて細菌を死滅させることによってまたはオプソニン食作用死滅アッセイを経由してのいずれかで測定された際に機能的である抗体を生じさせることができる。細菌莢膜多糖を含む本発明のグリココンジュゲートは、そのような細菌莢膜多糖に対する抗体の生成において使用され得る。そのような抗体は、その後、細菌検出および血清型決定等の研究および臨床検査室アッセイにおいて使用され得る。そのような抗体は、対象に受動免疫を付与するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、細菌性多糖に対して生成された抗体は、動物効能モデルまたはオプソニン食作用死滅アッセイのいずれかにおいて機能的である。
【0081】
本明細書において記述されているeTEC結合グリココンジュゲートおよび免疫原性組成物は、対象において、細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させるための種々の治療的または予防的方法においても使用され得る。特に、病原性細菌由来の細菌莢膜多糖等の細菌性抗原を含むeTEC結合グリココンジュゲートは、病原性細菌によって引き起こされた、対象における細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させるために使用され得る。
【0082】
故に、一態様において、本発明は、対象において、細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させる方法であって、対象に、免疫学的に有効な量の本発明の免疫原性組成物を投与するステップを含み、前記免疫原性組成物が、細菌莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む、方法を提供する。
【0083】
一実施形態において、感染症、疾患または状態は、肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)細菌に関連し、グリココンジュゲートは、Pn莢膜多糖を含む。いくつかのそのような実施形態において、感染症、疾患または状態は、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎、菌血症、敗血症、膿胸、結膜炎、骨髄炎、敗血症性関節炎、心内膜炎、腹膜炎、心膜炎、乳様突起炎、蜂巣炎、軟部組織感染症および脳膿瘍からなる群から選択される。
【0084】
別の実施形態において、感染症、疾患または状態は、髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌に関連し、グリココンジュゲートは、Mn莢膜多糖を含む。いくつかのそのような実施形態において、感染症、疾患または状態は、髄膜炎、髄膜炎菌血症、菌血症および敗血症からなる群から選択される。
【0085】
別の態様において、本発明は、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を投与するステップを含み、グリココンジュゲートが細菌莢膜多糖を含む、方法を提供する。
【0086】
また別の態様において、本発明は、対象において、病原性細菌によって引き起こされた疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させるための方法であって、対象に、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を投与するステップを含み、グリココンジュゲートが細菌莢膜多糖を含む、方法を提供する。
【0087】
別の態様において、本発明は、病原性細菌による感染症によって引き起こされた、疾患または状態の少なくとも1つの症状の重症度を低減させるための方法であって、対象に、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を投与するステップを含み、グリココンジュゲートが、細菌莢膜多糖、例えばPnまたはMn莢膜多糖を含む、方法を提供する。
【0088】
別の態様において、本発明は、本明細書においてさらに記述される通り、対象において保護免疫応答を生じさせるために、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を対象に投与する方法を提供する。
【0089】
また別の態様において、本発明は、細菌感染症、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)または髄膜炎菌(N.meningitidis)による感染症の予防、治療または改善において使用するための、本明細書において記述されている通りの、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。
【0090】
別の態様において、本発明は、細菌感染症、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)または髄膜炎菌(N.meningitidis)による感染症の予防、治療または改善用の薬剤の調製のための、本明細書において記述されている通りの、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを含む免疫原性組成物の使用を提供する。
【0091】
上述した治療的および/または予防的方法および使用において、免疫原性組成物は、高頻度で、eTECスペーサーを介して担体タンパク質と共有結合している細菌莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む。方法の、および本明細書において記述されている多くの実施形態において、細菌莢膜多糖はPn莢膜多糖またはMn莢膜多糖である。いくつかのそのような実施形態において、莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。他のそのような実施形態において、莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される。
【0092】
ある特定の好ましい実施形態において、担体タンパク質はCRM
197である。特に好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、eTECスペーサーを介してCRM
197と共有結合によりコンジュゲートしている、PnまたはMn莢膜多糖等の細菌莢膜多糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む。
【0093】
加えて、本発明は、対象において、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌に対する免疫応答を誘導するための方法、対象において、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌によって引き起こされた感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させるための方法、ならびに、対象において、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)による感染症によって引き起こされた、感染症、疾患または状態の少なくとも1つの症状の重症度を低減させるための方法であって、各々の場合において、対象に、eTEC結合グリココンジュゲートと、薬学的に許容できる添加剤、担体または賦形剤とを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を投与することによるものであり、グリココンジュゲートが、それぞれ肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来する細菌莢膜多糖を含む、方法を提供する。
【0094】
糖
糖は、多糖、オリゴ糖および単糖を包含し得る。多くの実施形態において、糖は、多糖、特に細菌莢膜多糖である。莢膜多糖は、当業者に公知である標準的な技術によって調製される。
【0095】
本発明において、莢膜多糖は、例えば、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)のPn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33Fから調製され得る。一実施形態において、各肺炎球菌多糖血清型を、大豆ベースの培地中で成長させてよい。個々の多糖は、遠心分離、沈殿、限外濾過、および/またはカラムクロマトグラフィーを介して精製される。精製された多糖を活性化させて、eTECスペーサーと反応できるようにし、次いで、本明細書においてさらに記述される通り、本発明のグリココンジュゲートに組み込むことができる。
【0096】
莢膜多糖の分子量は、免疫原性組成物における使用のために考慮すべき事項である。高分子量莢膜多糖は、抗原表面上に存在するエピトープのより高い価数により、ある特定の抗体免疫応答を誘導することができる。高分子量莢膜多糖の単離および精製は、本発明のコンジュゲート、組成物および方法における使用のために企図されている。
【0097】
いくつかの実施形態において、糖は、10kDaから2,000kDaの間の分子量を有する。他のそのような実施形態において、糖は、50kDaから2,000kDaの間の分子量を有する。さらなるそのような実施形態において、糖は、50kDaから1,750kDaの間、50kDaから1,500kDaの間、50kDaから1,250kDaの間、50kDaから1,000kDaの間、50kDaから750kDaの間、50kDaから500kDaの間、100kDaから2,000kDaの間、100kDaから1,750kDaの間、100kDaから1,500kDaの間、100kDaから1,250kDaの間、100kDaから1,000kDaの間、100kDaから750kDaの間、100kDaから500kDaの間、200kDaから2,000kDaの間、200kDaから1,750kDaの間、200kDaから1,500kDaの間、200kDaから1,250kDaの間、200kDaから1,000kDaの間、200kDaから750kDaの間、または200kDaから500kDaの間の分子量を有する。いくつかのそのような実施形態において、糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fもしくは33F莢膜多糖、またはMn血清型A、C、W135もしくはY莢膜多糖等の細菌莢膜多糖であり、莢膜多糖は、記述されている通りの分子量範囲の1つ内にある分子量を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の糖は、O−アセチルされている。いくつかの実施形態において、グリココンジュゲートは、10〜100%の間、20〜100%の間、30〜100%の間、40〜100%の間、50〜100%の間、60〜100%の間、70〜100%の間、75〜100%の間、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%のO〜アセチル化度を有する糖を含む。他の実施形態において、O−アセチル化度は、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、もしくは90%以上、または約100%である。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の莢膜多糖、グリココンジュゲートまたは免疫原性組成物は、動物効能モデルにおける細菌の死滅、または抗体が細菌を死滅させることを実証するオプソニン食作用死滅アッセイによって測定された際に機能的である抗体を生じさせるために使用される。
【0100】
莢膜多糖は、当業者に公知である単離手順を使用して、細菌から直接的に取得され得る。例えば、それぞれが参照によりその全体が説明されているのと同様に本明細書に組み込まれる、Fournierら(1984)、上記;Fournierら(1987)Ann.Inst.Pasteur/Microbiol.138:561〜567;米国特許出願公開第2007/0141077号;および国際特許出願公開第WO00/56357号を参照されたい。加えて、莢膜多糖は、合成プロトコールを使用して生成され得る。その上、莢膜多糖は、同じく当業者に公知である遺伝子工学的手順を使用して、組換え技術によって生成され得る(それぞれが参照によりその全体が説明されているのと同様に本明細書に組み込まれる、Sauら(1997)Microbiology 143:2395〜2405;および米国特許第6,027,925号を参照)。
【0101】
本発明のグリココンジュゲートにおいて使用されるそれぞれの多糖を作製するために使用される肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)の細菌株は、確立された培養株保存または臨床検体から取得され得る。
【0102】
担体タンパク質
本発明のグリココンジュゲートのもう1つの成分は、糖がコンジュゲートされる担体タンパク質である。用語「タンパク質担体」または「担体タンパク質」または「担体」は、本明細書において交換可能に使用され得る。担体タンパク質は、好ましくは、非毒性かつ非反応原性(non−reactogenic)であり、十分な量および純度で取得可能なタンパク質である。担体タンパク質は、標準的なコンジュゲーション手順に対して修正可能でなくてはならない。本発明の新規グリココンジュゲートにおいて、担体タンパク質は、eTECスペーサーを介して糖と共有結合している。
【0103】
担体とのコンジュゲーションは、抗原、例えば細菌莢膜多糖等の細菌性抗原の免疫原性を強化することができる。抗原に好ましいタンパク質担体は、毒素、トキソイド、または破傷風、ジフテリア、百日咳、シュードモナス属(Pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)およびレンサ球菌属(Streptococcus)由来の毒素の任意の変異体交差反応性材料(CRM:cross−reactive material)である。一実施形態において、特に好ましい担体は、CRM
197タンパク質を生成するジフテリア菌(C.diphtheriae)株C7(β197)に由来するジフテリアトキソイドCRM
197のものである。この株は、ATCC受託番号53281を有する。CRM
197を生成するための方法は、米国特許第5,614,382号において記述されており、これは、参照によりその全体が説明されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0104】
代替として、タンパク質担体または他の免疫原性タンパク質のフラグメントまたはエピトープを使用してよい。例えば、ハプテン性抗原を、細菌毒素、トキソイドまたはCRMのT細胞エピトープとカップリングしてよい。例えば、参照によりその全体が説明されているのと同様に本明細書に組み込まれる、1988年2月1日に出願された米国特許出願第150,688号、表題「Synthetic Peptides Representing a T−Cell Epitope as a Carrier Molecule For Conjugate Vaccines」を参照されたい。他の好適な担体タンパク質は、コレラトキソイド(例えば、国際特許出願第WO2004/083251号において記述されている通り)、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来の外毒素A等の不活性化細菌毒素を包含する。外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、肺炎球菌溶血素、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌付着タンパク質(PsaA)またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)タンパク質D等の細菌外膜タンパク質を使用してもよい。オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)等の他のタンパク質も、担体タンパク質として使用され得る。
【0105】
したがって、多くの実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートは、担体タンパク質としてCRM
197を含み、莢膜多糖は、カルバメート結合を経由してeTECスペーサーと共有結合しており、CRM
197は、タンパク質の活性化アミノ酸残基によって形成されたアミド結合を経由して、典型的には1つまたは複数のリジン残基のε−アミン基を介してeTECスペーサーと共有結合している。
【0106】
糖とコンジュゲートされる担体タンパク質中のリジン残基の数は、コンジュゲートしているリジンの範囲として特徴付けることができる。例えば、免疫原性組成物のいくつかの実施形態において、CRM
197は、糖と共有結合している39個のうち、4から16個のリジン残基を含み得る。このパラメーターを表現するための別の手法は、CRM
197リジンの約10%から約41%が糖と共有結合していることである。他の実施形態において、CRM
197は、糖と共有結合している39個のうち、2から20個のリジン残基を含み得る。このパラメーターを表現するための別の手法は、CRM
197リジンの約5%から約50%が糖と共有結合していることである。
【0107】
糖鎖と担体タンパク質上のリジンとの付着の頻度は、本発明のグリココンジュゲートを特徴付けるための別のパラメーターである。例えば、いくつかの実施形態において、多糖の4つの糖繰り返し単位ごとに、担体タンパク質と多糖との間に少なくとも1つの共有結合が出現する。別の実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の10の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。別の実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の15の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。さらなる実施形態において、担体タンパク質と多糖との間の共有結合は、多糖の25の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。
【0108】
多くの実施形態において、担体タンパク質はCRM
197であり、CRM
197と多糖との間のeTECスペーサーを経由する共有結合は、多糖の4、10、15または25の糖繰り返し単位ごとに少なくとも1回出現する。いくつかのそのような実施形態において、多糖は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来する細菌莢膜多糖である。
【0109】
他の実施形態において、コンジュゲートは、5から10の糖繰り返し単位ごとに、2から7つの糖繰り返し単位ごとに、3から8つの糖繰り返し単位ごとに、4から9つの糖繰り返し単位ごとに、6から11の糖繰り返し単位ごとに、7から12の糖繰り返し単位ごとに、8から13の糖繰り返し単位ごとに、9から14の糖繰り返し単位ごとに、10から15の糖繰り返し単位ごとに、2から6つの糖繰り返し単位ごとに、3から7つの糖繰り返し単位ごとに、4から8つの糖繰り返し単位ごとに、6から10の糖繰り返し単位ごとに、7から11の糖繰り返し単位ごとに、8から12の糖繰り返し単位ごとに、9から13の糖繰り返し単位ごとに、10から14の糖繰り返し単位ごとに、10から20の糖繰り返し単位ごとに、または4から25の糖繰り返し単位ごとに、担体タンパク質と糖との間に少なくとも1つの共有結合を含む。
【0110】
別の実施形態において、担体タンパク質と糖との間の少なくとも1つの結合は、多糖の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25の糖繰り返し単位ごとに出現する。
【0111】
eTEC結合グリココンジュゲートを作製するための方法
本発明は、(2−((2−オキソエチル)チオ)エチル)カルバメート(eTEC)スペーサーを介して担体タンパク質と共有結合によりコンジュゲートしている糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを作製する方法を提供する。eTECスペーサーは、安定なチオエーテルおよびアミド結合を含む7個の線形原子(すなわち、−C(O)NH(CH
2)
2SCH
2C(O)−)を含有し、糖と担体タンパク質とを共有結合させる役割を担う。eTECスペーサーの一端は、カルバメート結合を介して糖のヒドロキシル基と共有結合している。eTECスペーサーの他端は、アミド結合を介して、担体タンパク質のアミノ含有残基、典型的にはε−リジン残基と共有結合している。
【0112】
活性化担体タンパク質CRM
197とコンジュゲートしている多糖を含む本発明のグリココンジュゲートの調製への代表的な経路を、
図1に示す。eTECスペーサープロセスを使用する潜在的な修飾部位を有する、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)に由来する代表的な細菌莢膜多糖、肺炎球菌血清型33F、10A、11Aおよび22F多糖の化学構造を、それぞれ
図2、
図3、
図4および
図5に示す。
【0113】
eTECリンカー化学を使用してCRM
197と共有結合によりコンジュゲートしている肺炎球菌血清型33F多糖を含む、本発明の代表的なeTEC結合グリココンジュゲートの構造を、
図6(A)に示す。潜在的なキャップされたおよびキャップされていない遊離スルフヒドリル部位を、例証目的のために
図6(B)に示す。多糖は、典型的には、多数のヒドロキシル基、およびカルバメート結合を経由してeTECスペーサーが多糖繰り返し単位内の特定のヒドロキシルに付着している部位を含有し、したがって、変動し得る。
【0114】
一態様において、方法は、a)糖を、1,1’−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)(CDT)または1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)等の炭酸誘導体と、有機溶媒中で反応させて、活性化糖を生成するステップと、b)活性化糖を、シスタミンもしくはシステアミンまたはその塩と反応させて、チオール化糖を生成するステップと、c)チオール化糖を還元剤と反応させて、1つまたは複数の遊離スルフヒドリル残基を含む活性化チオール化糖を生成するステップと、d)活性化チオール化糖を、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基を含む活性化担体タンパク質と反応させて、チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成するステップと、e)チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを、(i)活性化担体タンパク質のコンジュゲートされていないα−ハロアセトアミド基をキャップすることができる第一のキャッピング試薬、および/または(ii)活性化チオール化糖のコンジュゲートされていない遊離スルフヒドリル残基をキャップすることができる第二のキャッピング試薬と反応させるステップとを含み、それにより、eTEC結合グリココンジュゲートが生成される。
【0115】
特に好ましい実施形態において、方法は、a)Pn−33F莢膜多糖を、CDTまたはCDIと、有機溶媒中で反応させて、活性化Pn−33F多糖を生成するステップと、b)活性化Pn−33F多糖を、シスタミンもしくはシステインアミンまたはその塩と反応させて、チオール化Pn−33F多糖を生成するステップと、c)チオール化Pn−33F多糖を還元剤と反応させて、1つまたは複数の遊離スルフヒドリル残基を含む活性化チオール化Pn−33F多糖を生成するステップと、d)活性化チオール化Pn−33F多糖を、1つまたは複数のα−ブロモアセトアミド基を含む活性化CRM
197担体タンパク質と反応させて、チオール化Pn−33F多糖−CRM
197コンジュゲートを生成するステップと、e)チオール化Pn−33F多糖−CRM
197コンジュゲートを、(i)活性化担体タンパク質のコンジュゲートされていないα−ブロモアセトアミド基をキャップすることができる第一のキャッピング試薬としてのN−アセチル−L−システイン、および(ii)活性化チオール化Pn−33F多糖のコンジュゲートされていない遊離スルフヒドリル残基をキャップすることができる第二のキャッピング試薬としてのヨードアセトアミドと反応させるステップとを含み、それにより、eTEC結合Pn−33F多糖−CRM
197グリココンジュゲートが生成される。
【0116】
多くの実施形態において、炭酸誘導体はCDTまたはCDIである。好ましくは、炭酸誘導体はCDTであり、有機溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性非プロトン性溶媒である。活性化糖の凍結乾燥は、チオール化および/またはコンジュゲーションステップの前には必要とされない。
【0117】
好ましい実施形態において、チオール化糖は、活性化糖と、二官能性対称チオアルキルアミン試薬シスタミン、またはその塩との反応によって生成される。この試薬の潜在的な利点は、対称なシスタミンリンカーが、活性化糖の2つの分子と反応して、ジスルフィド結合を低減させながらシスタミンの分子当たり2個のチオール化糖の分子を形成できることである。代替として、チオール化糖は、活性化糖と、システアミン、またはその塩との反応によって形成され得る。本発明の方法によって生成されたeTEC結合グリココンジュゲートは、一般式(I)によって表され得る。
【0118】
ステップc)は、活性化糖が、遊離スルフヒドリル残基を含有するシステアミンまたはその塩と反応する場合は任意選択のものであることが、当業者には理解されるであろう。実際問題として、システアミンを含むチオール化糖を、ステップc)において還元剤と常法に従って反応させて、反応中に形成され得るあらゆる酸化ジスルフィド副産物を還元する。
【0119】
この態様のいくつかの実施形態において、ステップd)は、活性化チオール化糖を活性化担体タンパク質と反応させて、チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成する前に、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基を含む活性化担体タンパク質を提供することをさらに含む。多くの実施形態において、活性化担体タンパク質は、1つまたは複数のα−ブロモアセトアミド基を含む。
【0120】
チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートは、反応混合物中に存在する残留活性化反応基と反応することができる1つまたは複数のキャッピング試薬で処理され得る。そのような残留反応性基は、不完全なコンジュゲーションにより、または反応混合物中の成分の1つの過剰の存在から、未反応の糖または担体タンパク質成分上に存在し得る。その場合、キャッピングは、グリココンジュゲートの精製または単離を補助し得る。いくつかの事例において、残留活性化反応基は、グリココンジュゲート中に存在し得る。
【0121】
例えば、活性化担体タンパク質上の過剰なα−ハロアセトアミド基は、N−アセチル−L−システイン等の低分子量チオールとの反応によってキャップすることができ、これは、完全なキャッピングを確実にするために過剰に使用され得る。N−アセチル−L−システインによるキャッピングも、キャップされた部位におけるシステイン残基からの独自のアミノ酸S−カルボキシメチルシステイン(CMC)の検出によってコンジュゲーション効率の確認を可能にし、これは、コンジュゲーション生成物の酸加水分解およびアミノ酸分析によって決定することができる。このアミノ酸の検出は、反応性ブロモアセトアミド基のキャッピング成功を確認するものであり、故に、それらの基はあらゆる望まない化学反応に利用不可能となる。共有原子価およびキャッピングの許容できるレベルは、CMCA/Lysについては約1〜15、CMC/Lysについては約0〜5の間である。同様に、過剰な遊離スルフヒドリル残基は、ヨードアセトアミド等の低分子量求電子試薬との反応によってキャップすることができる。CMCAの一部は、担体タンパク質のハロアシル基とのコンジュゲーションに関与しなかったヨードアセトアミドによって直接的にキャップされた多糖チオールに由来するものであってよい。したがって、コンジュゲーション反応後試料(ヨードアセトアミドによるキャッピングの前)を、アミノ酸分析(CMCA)によって検査して、コンジュゲーションに直接的に関与したチオールの正確なレベルを決定する必要がある。10〜12個のチオールを含有するチオール化糖について、典型的には5〜6個のチオールが、多糖チオールとブロモアセチル化タンパク質との間のコンジュゲーションに直接的に関与すると決定され、4〜5個のチオールがヨードアセトアミドによってキャップされる。
【0122】
好ましい実施形態において、第一のキャッピング試薬はN−アセチル−L−システインであり、これは、担体タンパク質上のコンジュゲートされていないα−ハロアセトアミド基と反応する。他の実施形態において、第二のキャッピング試薬はヨードアセトアミド(IAA)であり、これは、活性化チオール化糖のコンジュゲートされていない遊離スルフヒドリル基と反応する。高頻度で、ステップe)は、第一のキャッピング試薬としてのN−アセチル−L−システインおよび第二のキャッピング試薬としてのIAAでキャップすることを含む。いくつかの実施形態において、キャッピングステップe)は、第一および/または第二のキャッピング試薬との反応の後に、還元剤、例えば、DTT、TCEPまたはメルカプトエタノールとの反応をさらに含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、限外濾過/透析濾過によって、eTEC結合グリココンジュゲートを精製するステップをさらに含む。
【0124】
好ましい実施形態において、二官能性対称チオアルキルアミン試薬はシスタミンであるか、またはその塩が活性化糖と反応して、ジスルフィド部分を含有するチオール化糖またはその塩を提供する。
【0125】
そのようなチオール化糖誘導体と還元剤との反応は、1つまたは複数の遊離スルフヒドリル残基を含む活性化チオール化多糖を生成する。そのような活性化チオール化糖は、例えば、限外濾過/透析濾過によって単離および精製され得る。代替として、活性化チオール化糖は、例えば、標準的なサイズ排除クロマトグラフ(SEC)法、または当技術分野において公知であるDEAE等のイオン交換クロマトグラフ法によって、単離および精製され得る。
【0126】
シスタミンに由来するチオール化糖の事例において、還元剤との反応は、ジスルフィド結合を切断して、1つまたは複数の遊離スルフヒドリル残基を含む活性化チオール化糖を提供する。システアミンに由来するチオール化糖の事例において、還元剤との反応は任意選択であり、試薬または生成物の酸化によって形成されたジスルフィド結合を還元するために使用され得る。
【0127】
本発明の方法において使用される還元剤は、例えば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)またはメルカプトエタノールを包含する。しかしながら、任意の好適なジスルフィド還元剤を使用してよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、方法は、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基、好ましくは1つまたは複数のα−ブロモアセトアミド基を含む活性化担体タンパク質を提供するステップをさらに含む。
【0129】
活性化チオール化糖と、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド部分を含む活性化担体タンパク質との反応は、活性化チオール化糖の1つまたは複数の遊離スルフヒドリル基による活性化担体タンパク質のα−ハロ基の求核置換をもたらし、eTECスペーサーのチオエーテル結合を形成する。
【0130】
担体タンパク質のα−ハロアセチル化アミノ酸残基は、典型的には、担体タンパク質の1つまたは複数のリジン残基のε−アミノ基と付着している。多くの実施形態において、担体タンパク質は、1つまたは複数のα−ブロモアセチル化アミノ酸残基を含有する。一実施形態において、担体タンパク質は、ブロモ酢酸のN−ヒドロキシコハク酸イミドエステル(BAANS)等のブロモ酢酸試薬により活性化される。
【0131】
一実施形態において、方法は、1つまたは複数のα−ハロアセトアミド基を含む活性化担体タンパク質を提供するステップと、活性化チオール化多糖を活性化担体タンパク質と反応させて、チオール化多糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成するステップとを包含し、それにより、eTECスペーサーを介して担体タンパク質とコンジュゲートしている多糖を含むグリココンジュゲートが生成される。
【0132】
本明細書における方法のいくつかの好ましい実施形態において、細菌莢膜多糖は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)に由来するPn莢膜多糖である。いくつかのそのような実施形態において、Pn莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態において、担体タンパク質はCRM
197であり、Pn莢膜多糖は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される。
【0133】
本明細書において提供されている方法の他の好ましい実施形態において、細菌莢膜多糖は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来するMn莢膜多糖である。いくつかのそのような実施形態において、Mn莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態において、担体タンパク質はCRM
197であり、莢膜多糖は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される。
【0134】
本明細書において提供されている方法のそれぞれのいくつかの実施形態において、糖を、イミダゾールまたはトリアゾールと調合し、次いで、CDT等の炭酸誘導体と、約0.2%w/vの水を含有する有機溶媒(例えば、DMSO)中で反応させて、活性化糖を生成した。活性化ステップにおける調合された糖の使用は、有機溶媒への糖の溶解性を増大させる。典型的には、糖を、多糖1グラム当たり10グラムの1,2,4−トリアゾール添加剤と調合し、続いて周囲温度で混合して、調合された糖を生成した。
【0135】
故に、ある特定の実施形態において、方法は、活性化ステップa)の前に、糖をトリアゾールまたはイミダゾールと調合して、調合された糖を得るステップをさらに含む。いくつかのそのような実施形態において、調合された糖は、シェルフリーズされ、凍結乾燥され、有機溶媒(DMSO等)中で再構成され、炭酸誘導体、例えばCDTによる活性化の前に約0.2%w/vの水が添加される。
【0136】
一実施形態において、チオール化糖反応混合物を、N−アセチル−リジンメチルエステルで処理して、任意の未反応の活性化糖をキャップしてもよい。いくつかのそのような実施形態において、キャップされたチオール化糖混合物を、限外濾過/透析濾過によって精製する。
【0137】
多くの実施形態において、チオール化糖を還元剤と反応させて、活性化チオール化糖を生成する。いくつかのそのような実施形態において、還元剤は、トリス(−2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)またはメルカプトエタノールである。いくつかのそのような実施形態において、活性化チオール化糖を、限外濾過/透析濾過によって精製する。
【0138】
一実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートを生成する方法は、活性化チオール化糖および担体タンパク質の反応混合物のpHを、約5℃で約20時間にわたって、約8から約9のpHに調整し維持するステップを含む。
【0139】
一実施形態において、本発明のグリココンジュゲートを生成する方法は、チオール化糖−担体タンパク質コンジュゲートを、それが生成された後に単離するステップを含む。多くの実施形態において、グリココンジュゲートを、限外濾過/透析濾過によって単離する。
【0140】
別の実施形態において、本発明のeTEC結合グリココンジュゲートを生成する方法は、単離された糖−担体タンパク質コンジュゲートを、それが生成された後に単離するステップを含む。多くの実施形態において、グリココンジュゲートを、限外濾過/透析濾過によって単離する。
【0141】
また別の実施形態において、活性化糖を生成する方法は、有機溶媒中の糖およびCDTを含む反応混合物の水濃度を、約0.1から0.4%の間に調整するステップを含む。一実施形態において、有機溶媒中の糖およびCDTを含む反応混合物の水濃度を、約0.2%に調整する。
【0142】
一実施形態において、糖を活性化するステップは、多糖を、莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する多糖の量の約5モル過剰である量のCDTと、有機溶媒中で反応させるステップを含む。
【0143】
別の実施形態において、本発明のグリココンジュゲートを生成する方法は、糖を含む反応混合物の水濃度を決定するステップを含む。1つのそのような実施形態において、糖を活性化するために反応混合物に添加されるCDTの量は、大まかに、有機溶媒中の糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量と等モルであるCDTの量で提供される。
【0144】
別の実施形態において、糖を活性化するために反応混合物に添加されるCDTの量は、大まかに、有機溶媒中の糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量と比較して、約0.5:1のモル比であるCDTの量で提供される。一実施形態において、糖を活性化するために反応混合物に添加されるCDTの量は、大まかに、有機溶媒中の糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量と比較して、0.75:1のモル比であるCDTの量で提供される。
【0145】
一実施形態において、方法は、チオール化多糖を透析濾過によって単離するステップを含む。別の実施形態において、方法は、活性化チオール化多糖を透析濾過によって単離するステップを含む。
【0146】
一実施形態において、単離されたPn莢膜多糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成する方法において使用される担体タンパク質は、CRM
197を含む。別の実施形態において、単離されたMn莢膜多糖−担体タンパク質コンジュゲートを生成する方法において使用される担体タンパク質は、CRM
197を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、糖:活性化担体タンパク質比(w/w)は、0.2から4の間である。他の実施形態において、糖:活性化担体タンパク質比(w/w)は、1.0から2.5の間である。さらなる実施形態において、糖:活性化担体タンパク質比(w/w)は、0.4から1.7の間である。他の実施形態において、糖:活性化担体タンパク質比(w/w)は、約1:1である。いくつかのそのような実施形態において、糖は細菌莢膜多糖であり、活性化担体タンパク質は、CRM
197の活性化(ブロモアセチル化)によって生じる。
【0148】
別の実施形態において、活性化糖を生成する方法は、有機溶媒の使用を含む。多くの実施形態において、有機溶媒は極性非プロトン性溶媒である。いくつかのそのような実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)およびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、またはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態において、有機溶媒はDMSOである。
【0149】
多くの実施形態において、eTEC結合グリココンジュゲートの単離は、限外濾過/透析濾過のステップを含む。
【0150】
一実施形態において、本発明のグリココンジュゲートを生成する方法において使用される糖は、約10kDaから約2,000kDaの間の分子量を有する。別の実施形態において、本発明のグリココンジュゲートを生成する方法において使用される糖は、約50kDaから約2,000kDaの間の分子量を有する。
【0151】
一実施形態において、莢膜多糖−担体タンパク質グリココンジュゲートを生成する方法において生成されたグリココンジュゲートは、約50kDaから約20,000kDaの間のサイズを有する。別の実施形態において、莢膜多糖−担体タンパク質グリココンジュゲートを生成する方法において生成されたグリココンジュゲートは、約500kDaから約10,000kDaの間のサイズを有する。一実施形態において、莢膜多糖−担体タンパク質グリココンジュゲートを生成する方法において生成されたグリココンジュゲートは、約1,000kDaから約3,000kDaの間のサイズを有する。
【0152】
別の態様において、本発明は、本明細書において開示されている方法のいずれかによって生成された、eTECスペーサーを介して担体タンパク質とコンジュゲートしている糖を含むeTEC結合グリココンジュゲートを提供する。
【0153】
別の態様において、本発明は、本明細書において記述されている方法のいずれかによって生成された、eTEC結合グリココンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。
【0154】
糖のO−アセチル化度は、当技術分野において公知である任意の方法によって、例えば、プロトンNMRによって決定することができる(LemercinierおよびJones(1996)Carbohydrate Research 296;83〜96、JonesおよびLemercinier(2002)J.Pharmaceutical and Biomedical Analysis 30;1233〜1247、WO05/033148またはWO00/56357)。別の一般に使用される方法は、Hestrin(1949)J.Biol.Chem.180;249〜261によって記述されている。また別の方法は、HPLC−イオン排除クロマトグラフィーに基づくものである。O−アセチル化度は、試料中に存在する遊離アセテートの量を評定し、その値を、弱塩基加水分解後の放出アセテートの量と比較することによって決定される。アセテートは、試料の他の成分から分割され、210nmの紫外線(UV)検出で定量化される。別の方法は、HPLC−イオン排除クロマトグラフィーに基づくものである。O−アセチルは、試料中に存在する遊離アセテートの量を評定し、その値を、弱塩基加水分解後の放出アセテートの量と比較することによって決定される。アセテートは、試料の他の成分から分割され、210nmの紫外線(UV)検出で定量化される。
【0155】
コンジュゲーション度は、アミノ酸分析によって決定した
ブロモアセチル活性化化学を使用して作り出した「IAAキャップ前」コンジュゲート試料の酸加水分解は、コンジュゲートしている部位におけるシスタミンからの酸に安定なS−カルボキシメチルシステアミン(CMCA)、およびキャップされた部位におけるシステインからの酸に安定なS−カルボキシメチルシステイン(CMC)の形成をもたらした。ブロモアセチル活性化化学を使用して作り出した「IAAキャップ後」コンジュゲート(最終)の酸加水分解は、コンジュゲートしている部位およびIAAキャップされた部位におけるシスタミンからの酸に安定なS−カルボキシメチルシステアミン(CMCA)、ならびにキャップされた部位におけるシステインからの酸に安定なS−カルボキシメチルシステイン(CMC)の形成をもたらした。コンジュゲートされていないおよびキャップされていないリジンはすべて元のリジンに変換され、そのまま検出された。他のすべてのアミノ酸は、トリプトファンおよびシステインが加水分解条件によって破壊された以外は、元の遊離アミノ酸に加水分解された。アスパラギンおよびグルタミンは、それぞれアスパラギン酸およびグルタミン酸に変換された。
【0156】
各加水分解された試料および対照のアミノ酸を、イオン交換クロマトグラフィー、続いてBeckmanニンヒドリンNinRX溶液との反応を使用して、135℃で分離した。次いで、誘導体化されたアミノ酸を、可視範囲内、570nmおよび440nmで検出した(表1を参照)。500ピコモルの各アミノ酸を含有するアミノ酸の標準セット[Pierceアミノ酸標準物質H]を、分析の各セットについて試料および対照とともに実行した。S−カルボキシメチルシステイン[Sigma−Aldrich]を標準物質に添加した。
【0158】
リジンを、システインおよびシステアミンとのその共有結合による付着、ならびに予測される同様の加水分解に基づく評価のために選択した。次いで、得られたアミノ酸のモル数を、タンパク質のアミノ酸組成と比較し、CMCおよびCMCAについての値とともに報告した。CMCA値をコンジュゲーション度の評価に直接使用し、CMC値をキャッピング度の評価に直接使用した。
【0159】
一実施形態において、グリココンジュゲートは、その分子サイズ分布(K
d)によって特徴付けられる。コンジュゲートの分子サイズは、高圧液体クロマトグラフィーシステム(HPLC)を使用するセファロースCL−4B固定相サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)充填剤によって決定される。K
d決定のために、クロマトグラフィーカラムを最初に較正して、空隙容積または全排除容積を表すV
0、および、粒子間容積としても公知である、試料中の最小分子が溶離する容積、V
iを決定する。すべてのSEC分離は、V
0とV
iとの間で起こる。収集された各画分についてのK
d値は、下記の式K
d=(V
e−V
i)/(V
i−V
0)[式中、V
eは化合物の保持容積を表す]によって決定される。0.3以下を溶離する%画分(主要ピーク)は、コンジュゲートK
d(分子サイズ分布)を定義する。
【0160】
免疫原性組成物
用語「免疫原性組成物」は、対象において免疫応答を引き出すために使用され得る抗原(例えば、微生物またはその成分)を含有する任意の医薬組成物に関する。
【0161】
本明細書において使用される場合、「免疫原性」は、細菌莢膜多糖、または細菌莢膜多糖を含むグリココンジュゲートもしくは免疫原性組成物等の抗原(または抗原のエピトープ)の、体液によってもしくは細胞によってのいずれかで、または両方によって媒介される、哺乳動物等の宿主対象において免疫応答を引き出す能力を意味する。
【0162】
グリココンジュゲートは、細胞表面においてMHC分子と会合している抗原の提示によって宿主を感作する役割を担い得る。加えて、抗原特異的T細胞または抗体を生じさせ、免疫化宿主の将来の保護を可能にすることができる。故に、グリココンジュゲートは、細菌による感染症に関連する1つまたは複数の病状から宿主を保護することができる、または莢膜多糖に関連する細菌の感染症による死から宿主を保護し得る。グリココンジュゲートを使用してポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作り出すこともでき、これを使用して対象に受動免疫を付与することができる。グリココンジュゲートを使用して、動物効能モデルにおいて細菌を死滅させることによってまたはオプソニン食作用死滅アッセイを経由してのいずれかで測定された際に機能的である抗体を作り出すこともできる。
【0163】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的と特異的結合することができる、免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、文脈上別段の指示がない限り、該用語は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、改変抗体(例えば、キメラ、エフェクター機能、安定性および他の生物学的活性を変更するようにヒト化および/または誘導体化されたもの)およびそのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv等)、一本鎖(ScFv)ならびにサメおよびラクダ抗体を包含するドメイン抗体、ならびに抗体部分を含む融合タンパク質、多価抗体、多特異性抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、二重特異性抗体)、および本明細書において記述されている通りの抗体フラグメント、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された配置も網羅することが意図されている。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはそのサブクラス)等の任意のクラスの抗体を包含し、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、ヒトにおいては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれている。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置が周知である。
【0164】
「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の一部のみを含み、該部分は、好ましくは、無傷の抗体中に存在する場合、該部分と通常関連する機能の少なくとも1つ、好ましくはほとんどまたはすべてを保持している。
【0165】
用語「抗原」は、概して、免疫原性組成物中の生体分子、通常はタンパク質、ペプチド、多糖もしくはコンジュゲート、または、対象に注入もしくは吸収される組成物を包含する、対象において、抗体もしくはT細胞応答または両方の生成を刺激することができる免疫原性物質を指す。免疫応答は、全分子に対して、または分子の種々の部分(例えば、エピトープまたはハプテン)に対して発生し得る。該用語は、個々の分子、または抗原分子の均一もしくは不均一集団を指すために使用され得る。抗原は、抗体、T細胞受容体、または具体的な体液性および/もしくは細胞性免疫の他の要素によって認識される。「抗原」は、すべての関連抗原エピトープも包含する。所与の抗原のエピトープは、当技術分野において周知であるいくつものエピトープマッピング技術を使用して同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻(Glenn E.Morris編、1996)Humana Press、Totowa、N.J.を参照されたい。例えば、直鎖状エピトープは、例えば、固体支持体上の多数のペプチド、タンパク質分子の部分に対応するペプチドを同時に合成し、ペプチドが支持体に付着しているままで、ペプチドを抗体と反応させることによって、決定することができる。そのような技術は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998〜4002;Geysenら(1986)Molec.Immunol.23:709〜715において記述されており、そのそれぞれは、参照によりその全体が説明されているのと同様に本明細書に組み込まれる。同様に、立体構造エピトープは、例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴によって等、アミノ酸の空間的立体構造を決定することによって同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols、上記を参照されたい。さらに、本発明の目的のために、「抗原」は、タンパク質が免疫学的応答を引き出す能力を維持する限り、欠失、付加および置換等の天然配列への修飾を包含するタンパク質(概して自然界では保存的であるが、非保存的であってよい)を指すためにも使用され得る。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発を介して、もしくは特定の合成手順を介して、もしくは遺伝子工学的アプローチを介してのように意図的であってよく、または抗原を生成する宿主の突然変異を介して等、偶発的であってもよい。さらに、抗原は、微生物、例えば細菌から誘導、取得または単離されてもよいし、全生物であってもよい。同様に、核酸免疫化用途において等、抗原を発現しているオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、定義に包含される。合成抗原、例えば、ポリエピトープ、隣接エピトープ、および他の組換えまたは合成的に誘導された抗原も包含される(Bergmannら(1993)Eur.J.Immunol.23:2777 2781;Bergmannら(1996)J.Immunol.157:3242〜3249;Suhrbier(1997)Immunol.Cell Biol.75:402 408;Gardnerら(1998)第12回World AIDS Conference、Geneva、Switzerland、1998年6月28日から7月3日)。
【0166】
「保護」免疫応答は、体液もしくは細胞のいずれかまたは両方で媒介されて、対象を感染症から保護する役割を担う、免疫応答を引き出す免疫原性組成物の能力を指す。提供される保護は、絶対的である必要はない、すなわち、対象の対照集団、例えばワクチンも免疫原性組成物も投与されていない感染動物と比較して統計的に有意な改善があれば、感染症は完全に予防または根絶される必要はない。保護は、感染症の症状の重症度またはその発症の速さを減じることに限定され得る。概して、「保護免疫応答」は、各抗原に対する若干レベルの測定可能な機能的抗体応答を包含する、対象の少なくとも50%における特定の抗原に特異的な抗体レベルにおける増大の誘導を包含するであろう。特定の状況において、「保護免疫応答」は、抗体レベルにおける2倍の増大、または、各抗原に対する若干レベルの測定可能な機能的抗体応答を包含する、対象の少なくとも50%における特定の抗原に特異的な抗体レベルにおける4倍の増大の誘導を包含し得る。ある特定の実施形態において、抗体をオプソニン化することは保護免疫応答と相関している。故に、保護免疫応答は、オプソニン化貪食作用アッセイ、例えば以下に記述するものにおいて細菌計数の減少パーセントを測定することによってアッセイされ得る。好ましくは、少なくとも10%、25%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の細菌計数の減少がある。
【0167】
用語「免疫原性量」および「免疫学的に有効な量」は、本明細書において交換可能に使用され、細胞性(T細胞)もしくは体液性(B細胞または抗体)応答、または両方であってよい免疫応答を引き出すのに十分な抗原または免疫原性組成物の量を指し、ここで、そのような免疫応答は、当業者に公知である標準的なアッセイによって測定され得る。典型的には、免疫学的に有効な量は、対象において保護免疫応答を引き出すことになる。
【0168】
本発明の免疫原性組成物は、全身、皮膚もしくは粘膜経路を経由して免疫原性組成物を投与することを利用して、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumonia)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌による細菌感染症の影響を受けやすい対象を保護するもしくは治療するために、予防的にもしくは治療的に使用され得るか、または別の対象に受動免疫を付与するために使用され得るポリクローナルもしくはモノクローナル抗体調製物を作り出すために使用され得る。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路を経由する;または、経口/消化、呼吸もしくは尿生殖路への粘膜投与を経由する注射を包含し得る。免疫原性組成物を使用して、動物効能モデルにおいて細菌を死滅させることによってまたはオプソニン食作用死滅アッセイを経由してのいずれかで測定された際に機能的である抗体を作り出すこともできる。
【0169】
特定の免疫原性組成物に最適な成分の量は、対象における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な研究によって解明することができる。初回接種の後、対象は、適度に間隔をおいて1または数回のブースター免疫化を受けることができる。
【0170】
ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、1つまたは複数のアジュバントを含むことになる。本明細書において定義されている通り、「アジュバント」は、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を強化する役割を担う物質である。故に、アジュバントは、多くの場合、免疫応答をブーストするために与えられ、当業者に周知である。組成物の有効性を強化するために好適なアジュバントは:
(1)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩(ミョウバン);
(2)水中油型エマルション製剤(ムラミルペプチド(以下で定義する)または細菌細胞壁成分等の他の特定の免疫刺激剤を加えたまたは加えないもの)、例えば、
(a)モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、Mass.)等のマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化された、5%スクアレン、0.5%ツイン80、および0.5%スパン85(種々の量のMTP−PEを含有していてもよい(必要ではないが、以下を参照))を含有するMF59(PCT公開第WO90/14837号)、
(b)10%スクアレン、0.4%ツイン80、5%プルロニックブロックポリマーLl21、およびthr−MDP(以下を参照)を含有し、サブミクロンエマルションに微小流動化したか、またはより大きい粒径のエマルションを作り出すためにボルテックスしたかいずれかのSAF、および
(c)2%スクアレン、0.2%ツイン80、ならびに、米国特許第4,912,094号(Corixa)において記述されている3−O−脱アシル化モノホスホリルリピッドA(MPL(商標))、トレハロースジミコール酸(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標)からなる群からの1つまたは複数の細菌細胞壁成分を含有する、Ribi(商標)アジュバントシステム(RAS)(Corixa、Hamilton、Mont.)
等;
(3)Quil AまたはSTIMULON(商標)QS−21(Antigenics、Framingham.Mass.)(米国特許第5,057,540号)等のサポニンアジュバントを使用してよい、またはそれらからISCOM(免疫刺激複合体)等の粒子を作り出してよい;
(4)Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号において記述されている、アミノアルキルグルコサミンリン酸化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体等の細菌性リポ多糖、合成脂質A類似体;1つのそのようなAGPは、529としても公知(以前はRC529として公知)であり、水性形態としてまたは安定なエマルションとして製剤化される2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−b−D−グルコピラノシド、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド等の合成ポリヌクレオチドである(米国特許第6,207,646号);
(5)インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18等)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7−1およびB7−2等のサイトカイン;
(6)例えば、国際特許出願公開第WO00/18434号に従って(WO02/098368およびWO02/098369も参照)、アミノ酸29位のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくはヒスチジンによって置きかえられている、野生型もしくは突然変異型のいずれかのコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)、特にLT−K63、LT−R72、CT−S109、PT−K9/G129(例えば、WO93/13302およびWO92/19265を参照)等の、細菌性ADPリボシル化毒素の解毒変異体;ならびに
(7)組成物の有効性を強化するための免疫刺激剤として作用する他の物質
を包含するがこれらに限定されない。
【0171】
ムラミルペプチドは、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等を包含するがこれらに限定されない。
【0172】
ある特定の実施形態において、アジュバントは、アルミニウム塩等のアルミニウムベースのアジュバントである。特定の実施形態において、アルミニウムベースのアジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される。特定の実施形態において、アジュバントはリン酸アルミニウムである。
【0173】
免疫原性組成物は、薬学的に許容できる担体を含んでいてもよい。薬学的に許容できる担体は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を包含する対象において使用するための、連邦、州政府の規制機関もしくは他の規制機関によって承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方において収載されている担体を包含する。担体という用語は、医薬組成物とともに投与される賦形剤、添加剤またはビヒクルを指すために使用され得る。水、生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、特に注射溶液のための液体担体として用いられ得る。好適な医薬担体の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、E.W.Martin著において記述されている。製剤は、投与モードに適合すべきである。
【0174】
本発明の免疫原性組成物は、複数の莢膜多糖−タンパク質コンジュゲートに加えて、1つまたは複数の保存剤をさらに含み得る。FDAは、複数回用量(多回用量)バイアル内の生物学的製品が、わずかな例外を除いて保存剤を含有することを求めている。保存剤を含有するワクチン製品は、塩化ベンゼトニウム(炭疽)、2−フェノキシエタノール(DTaP、HepA、ライム、ポリオ(非経口))、フェノール(肺炎、腸チフス(非経口)、牛痘)およびチメロサール(DTaP、DT、Td、HepB、Hib、インフルエンザ、JE、髄膜炎(Mening)、肺炎、狂犬病)を含有するワクチンを包含する。注射薬における使用が承認されている保存剤は、例えば、クロロブタノール、m−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、2−フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、フェノール、チメロサールおよび硝酸フェニル水銀を包含する。
【0175】
ある特定の実施形態において、非経口投与に適合する本発明の製剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート−80(ツイン80)、ポリソルベート−60(ツイン60)、ポリソルベート−40(ツイン40)およびポリソルベート−20(ツイン20)、Brij58、Brij35、ならびにトリトンX−100、トリトンX−114、NP40、スパン85およびプルロニックシリーズの非イオン性界面活性剤(例えば、プルロニック121)等の他のものを包含するがこれらに限定されないポリオキシエチレンアルキルエーテルを包含するがこれらに限定されない1つまたは複数の非イオン性界面活性剤を含み、好ましい成分は、約0.001%から約2%までの濃度(最大約0.25%が好ましい)のポリソルベート−80、または約0.001%から1%までの濃度(最大約0.5%が好ましい)のポリソルベート−40である。
【0176】
包装および投薬形態
本発明の免疫原性組成物の対象への直接送達は、非経口投与によって(筋肉内に、腹腔内に、皮内に、皮下に、静脈内に、または組織の間質腔へ);または、経口/消化、呼吸もしくは尿生殖路への粘膜投与を経由して;または、局所、経皮、鼻腔内、眼内、耳内、経肺もしくは他の粘膜投与によって遂行され得る。
【0177】
一実施形態において、非経口投与は、例えば、対象の大腿部または上腕への筋肉内注射によるものである。注射は、針(例えば、皮下注射針)を経由するものであってよいが、無針注射も代替として使用され得る。典型的な筋肉内用量は0.5mLである。別の実施形態において、鼻腔内投与は、肺炎または中耳炎の治療に使用される(肺炎球菌(pneumococci)の鼻咽頭保菌はより有効に予防され得るため、感染症をその最初期段階で軽減する)。
【0178】
本発明の組成物は、種々の形で、例えば注射用に液体の液剤または懸濁剤のいずれかとして、調製され得る。ある特定の実施形態において、組成物は、経肺投与用の散剤またはスプレー剤として、例えば吸入器内に調製され得る。他の実施形態において、組成物は、坐剤もしくはペッサリーとして、または経鼻、耳内もしくは眼内投与用に、例えばスプレー剤、点滴薬、ゲル剤もしくは散剤として調製され得る。
【0179】
各免疫原性組成物用量中のグリココンジュゲートの量は、有意な有害作用なしに免疫保護応答を誘導する量として選択される。そのような量は、グリココンジュゲート中に存在する細菌の血清型に応じて変動し得る。概して、各用量は、0.1から100μg、特に0.1から10μg、より詳細には1から5μgの多糖を含むことになる。
【0180】
本発明の特定の実施形態において、免疫原性組成物は、eTECリンカーを経由してCRM
197と個々にコンジュゲートしているPnまたはMn莢膜多糖の無菌液体製剤であり、ここで、各0.5mLの用量は、0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバントをさらに含有していてよい1〜5μgの多糖;ならびに添加剤として塩化ナトリウムおよびコハク酸ナトリウム緩衝液を含有するように製剤化される。
【0181】
特定の免疫原性組成物に最適な成分の量は、対象における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な研究によって解明することができる。初回接種の後、対象は、適度に間隔をおいて1または数回のブースター免疫化を受けることができる。
【0182】
本発明の免疫原性組成物を、単位用量または多回用量形態(例えば、2回用量、4回用量、またはそれ以上)で包装してよい。多回用量形態では、バイアルは、典型的にはプレフィルドシリンジよりも好ましいが、必ずしもそうとは限らない。好適な多回用量フォーマットは、用量当たり0.1から2mLで容器当たり2から10回用量を包含するがこれに限定されない。ある特定の実施形態において、用量は0.5mL用量である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願第WO2007/127668号を参照されたい。
【0183】
組成物は、バイアルもしくは他の好適な貯蔵容器で提示されてもよいし、またはプレフィルド送達デバイス、例えば、針が同梱されていてもいなくてもよい、単一もしくは多重成分シリンジで提示されてもよい。シリンジは、典型的には単回用量の本発明の保存剤含有免疫原性組成物を含有するが必ずしもそうとは限らず、多回用量のプレフィルドシリンジも想定されている。同様に、バイアルは単回用量を包含し得るが、代替として複数回用量を包含してもよい。
【0184】
有効な投薬量体積は常法に従って確立され得るが、注射用の組成物の典型的な用量は、0.5mLの体積を有する。ある特定の実施形態において、用量は、ヒト対象への投与用に製剤化される。ある特定の実施形態において、用量は、成人、未成年、青年、幼児、または乳児(すなわち、1歳未満)ヒト対象への投与用に製剤化され、好ましい実施形態において、注射によって投与され得る。
【0185】
本発明の液体免疫原性組成物は、凍結乾燥形態で提示される他の免疫原性組成物を再構成するのにも好適である。免疫原性組成物がそのような即時再構成に使用される場合、本発明は、2つ以上のバイアル、2つ以上の充填済みシリンジ、またはそれぞれの1つもしくは複数を加えたキットを提供し、シリンジの内容物は、注射の前にバイアルの内容物を再構成するために使用されるか、またはその逆である。
【0186】
また別の実施形態において、多回用量フォーマットの容器は、一般的な実験室用ガラス製品、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、管、パイプ、バッグ、ジャー、バイアル、バイアルクロージャー(例えば、ゴム栓、ネジ式キャップ)、アンプル、シリンジ、デュアルまたはマルチチャンバーシリンジ、シリンジ栓、シリンジプランジャー、ゴムクロージャー、プラスチッククロージャー、ガラスクロージャー、カートリッジおよび使い捨てペン等からなるがこれらに限定されない群の1つまたは複数から選択される。本発明の容器は、製造材料によって限定されず、ガラス、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等)およびポリマー(例えば、熱可塑性プラスチック、エラストマー、熱可塑性エラストマー)等の材料を包含する。特定の実施形態において、該フォーマットの容器は、ブチル栓付きの5mLのSchottタイプ1ガラスバイアルである。当業者であれば、上記で説明したフォーマットは決して包括的なリストではなく、本発明に利用可能な様々なフォーマットに関する当業者への指針としての役割を担っているに過ぎないことが分かるであろう。本発明における使用が企図されている追加のフォーマットは、United States Plastic Corp.(Lima、OH)、VWR等の実験機器販売業者および製造業者からの出版カタログにおいて見つけることができる。
【0187】
免疫応答を誘導し、感染症から保護するための方法
本発明は、eTEC結合グリココンジュゲートおよびそれらを含む免疫原性組成物を、予防的にまたは治療的にのいずれかで使用するための方法も包含する。例えば、本発明の一態様は、病原性細菌、例えば肺炎球菌または髄膜炎菌細菌に対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に、病原性細菌に由来する細菌莢膜多糖等の細菌性抗原を含む免疫学的に有効な量の本明細書において記述されている免疫原性組成物のいずれかを投与するステップを含む、方法を提供する。本発明の一実施形態は、病原性細菌による感染症から対象を保護する方法、または、病原性細菌に関連する感染症疾患または状態を予防する、治療するもしくは改善させる方法、または、病原性細菌によって引き起こされた感染症に関連する少なくとも1つの症状の重症度を低減させる、もしくはその発症を遅延させる方法であって、各々の場合において、対象に、病原性細菌に由来する細菌莢膜多糖等の細菌性抗原を含む免疫学的に有効な量の本明細書において記述されている免疫原性組成物のいずれかを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0188】
本発明の一実施形態は、対象において、細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させる方法であって、対象に、免疫学的に有効な量の本発明の免疫原性組成物を投与するステップを含み、前記免疫原性組成物が、細菌莢膜多糖等の細菌性抗原を含むeTEC結合グリココンジュゲートを含む、方法を提供する。
【0189】
いくつかの実施形態において、細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させる方法は、ヒト、獣医学、動物、または農業的治療を含む。別の実施形態は、対象において、病原性細菌に関連する細菌性の感染症、疾患または状態を予防する、治療するまたは改善させる方法であって、本明細書において記述されている免疫原性組成物からポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を作り出すステップと、前記抗体調製物を使用して、対象に受動免疫を付与するステップとを含む、方法を提供する。本発明の一実施形態は、外科手術手技を受けている対象において細菌感染症を予防する方法であって、予防有効量の本明細書において記述されている免疫原性組成物を、外科手術手技の前に対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0190】
前述の方法のそれぞれの好ましい実施形態において、病原性細菌は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitis)細菌等の肺炎球菌または髄膜炎菌細菌である。いくつかのそのような実施形態において、細菌性抗原は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖である。他のそのような実施形態において、細菌性抗原は、Mn血清型A、C、W135およびY莢膜多糖からなる群から選択される莢膜多糖である。
【0191】
抗原または免疫原性組成物に対する免疫応答は、対象における、関心対象の抗原または免疫原性組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞媒介性免疫応答の発達によって特徴付けられる。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」は抗体媒介性免疫応答であり、本発明の免疫原性組成物中の抗原に対して若干の親和性で認識および結合する抗体の誘導および発生を伴うのに対し、「細胞媒介性免疫応答」はT細胞および/または他の白血球によって媒介されるものである。「細胞媒介性免疫応答」は、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC:major histocompatibility complex)、CD1または他の非古典的なMHC様分子のクラスIまたはクラスII分子と会合している抗原エピトープの提示によって引き出される。これは、抗原特異的CD4+ヘルパーT細胞またはCD8+細胞毒性Tリンパ球細胞(「CTL」:cytotoxic T lymphocyte cell)を活性化する。CTLは、古典的または非古典的なMHCによってコードされ、細胞の表面に発現されているタンパク質と会合して提示されているペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を、誘導し促進するのを支援する。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を伴う。ヘルパーT細胞は、機能を刺激し、ペプチドを表示している細胞またはそれらの表面上の古典的もしくは非古典的なMHC分子と会合している他の抗原に対する非特異的エフェクター細胞の活性に焦点を合わせるのを支援するように作用する。「細胞媒介性免疫応答」は、サイトカイン、ケモカイン、ならびに活性化T細胞および/またはCD4+およびCD8+T細胞に由来するものを包含する他の白血球によって生成された他のそのような分子の生成も指す。細胞媒介性免疫学的応答を刺激する特定の抗原または組成物の能力は、リンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞毒性細胞アッセイによって、感作された対象における抗原に特異的なTリンパ球についてアッセイすることによって、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定によって等、若干数のアッセイによって決定され得る。そのようなアッセイは、当技術分野において周知である。例えば、Ericksonら(1993)J.Immunol.151:4189〜4199;およびDoeら(1994)Eur.J.Immunol.24:2369〜2376を参照されたい。
【0192】
本発明の免疫原性組成物および方法は、下記の1つまたは複数に有用となり得る:(i)慣習的なワクチンのような感染もしくは再感染の予防、(ii)重症度の低減もしくは病状の解消、および/または(iii)問題の病原体もしくは障害の実質的なもしくは完全な解消。それ故、治療は、予防的に(感染前)または治療的に(感染後)実行され得る。本発明において、予防的治療は好ましいモードである。本発明の特定の実施形態によれば、宿主対象を、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)による細菌感染症に対して予防的にかつ/または治療的に免疫化することを包含し、治療する組成物および方法が提供される。本発明の方法は、対象に予防的および/または治療的免疫を付与するために有用である。本発明の方法は、対象において、生物医学研究用途のためにも実践され得る。
【0193】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物を意味する。より詳細には、対象は、ヒト、家庭内動物および家畜、ならびに研究、動物園、スポーツ用および家庭用ペット等のペットコンパニオンアニマル、ならびにウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ等を包含するがこれらに限定されない他の家畜化された動物を包含する、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましいコンパニオンアニマルは、イヌおよびネコである。好ましくは、対象はヒトである。
【0194】
組成物中の特定のコンジュゲートの量は、概して、そのコンジュゲートに対してコンジュゲートしているものおよびコンジュゲートしていないもの両方の多糖の総量に基づいて算出される。例えば、20%の遊離多糖を持つコンジュゲートは、100μgの多糖用量中に、約80μgのコンジュゲートしている多糖および約20μgのコンジュゲートしていない多糖を有することになる。コンジュゲートへのタンパク質貢献は、コンジュゲートの用量を算出する際には通常考慮されない。コンジュゲートまたは免疫原性組成物の免疫原性量は、細菌の血清型に応じて変動し得る。概して、各用量は、0.1から100μg、特に0.1から10μg、より詳細には1から10μgの多糖を含むことになる。免疫原性組成物中の異なる多糖成分の免疫原性量は多岐にわたっていてよく、それぞれが、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、または約100μgの任意の特定の多糖抗原を含み得る。
【0195】
用語「侵襲性疾患」は、疾患に関連する臨床兆候/症状がある場合の、通常無菌の部位からの細菌の単離を指す。通常無菌の身体部位は、血液、CSF、胸膜液、心膜液、腹水、関節/滑液、骨、体内部位(リンパ節、脳、心臓、肝臓、脾臓、硝子体液、腎臓、膵臓、卵巣)または他の通常無菌の部位を包含する。侵襲性疾患を特徴付ける臨床状態は、菌血症、肺炎、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、敗血性ショック他を包含する。
【0196】
免疫原としての抗原の有効性は、増殖アッセイによって、T細胞のその特異的な標的細胞を溶解させる能力を測定するためのクロム放出アッセイ等の細胞溶解アッセイによって、または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによりB細胞活性のレベルを測定することによってのいずれかで、測定され得る。免疫応答は、抗原の投与後に誘導された抗原特異的抗体の血清レベルを測定することによって、より具体的には、そのようにして誘導された抗体の、特定の白血球のオプソニン食作用能力を強化する能力を、本明細書において記述されている通りに測定することによっても検出され得る。免疫応答の保護のレベルは、免疫化宿主に、投与された抗原を接種することによって測定され得る。例えば、免疫応答が所望される抗原が細菌であれば、免疫原性量の抗原によって誘導された保護のレベルは、動物への細菌細胞の接種後の生存率または死亡率を検出することによって測定される。一実施形態において、保護の量は、細菌感染症に関連する少なくとも1つの症状、例えば感染症に関連する発熱を測定することによって測定され得る。多抗原もしくは多成分ワクチンまたは免疫原性組成物中の抗原のそれぞれの量は、他の成分のそれぞれについて変動することになり、当業者に公知の方法によって決定され得る。そのような方法は、免疫原性および/またはインビボ効能を測定するための手順を包含するであろう。
【0197】
別の態様において、本発明は、本発明の莢膜多糖またはグリココンジュゲートと特異的にかつ選択的に結合する抗体および抗体組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本発明は、Pn血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23Fもしくは33F莢膜多糖またはそれらを含むグリココンジュゲートと特異的にかつ選択的に結合する抗体および抗体組成物を提供する。他のそのような実施形態において、本発明は、Mn血清型A、C、W135もしくはY莢膜多糖またはそれらを含むグリココンジュゲートと特異的にかつ選択的に結合する抗体および抗体組成物を提供する。いくつかの実施形態において、抗体は、本発明の莢膜多糖またはグリココンジュゲートの対象への投与時に生じる。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の莢膜多糖またはグリココンジュゲートの1つまたは複数に対する精製または単離された抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、動物効能モデルにおいて細菌を死滅させることによってまたはオプソニン食作用死滅アッセイを経由してのいずれかで測定された際に機能的である。本発明の抗体または抗体組成物は、対象において、病原性細菌、例えば肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌に関連する細菌性の感染症、疾患または状態を、治療するまたは予防する方法であって、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を作り出すステップと、前記抗体または抗体組成物を使用して、対象に受動免疫を付与するステップとを含む、方法において使用され得る。本発明の抗体は、診断法、例えば、莢膜多糖またはそのグリココンジュゲートの存在を検出するまたはそのレベルを定量化するためにも有用となり得る。例えば、本発明の抗体は、PnもしくはMn莢膜多糖またはそのグリココンジュゲートの存在を検出するまたはそのレベルを定量化するためにも有用となり得、ここで、グリココンジュゲートは、eTECスペーサーを介して担体タンパク質とコンジュゲートしている細菌莢膜多糖を含む。
【0198】
当技術分野において公知である数種のアッセイおよび動物モデルを使用して、本明細書において記述されている免疫原性組成物のいずれか1つの効能を評定してよい。例えば、Chiavoliniら(Clin.Microbiol.Rev.(2008)、21(4):666〜685)は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)疾患の動物モデルについて記述している。Gorringeら、METHODS IN MOLECULAR MEDICINE、第66巻(2001)、第17章、PollardおよびMaiden編(Humana Press Inc.)は、髄膜炎菌性疾患の動物モデルについて記述している。
【0199】
オプソニン食作用活性(OPA:Opsonophagocytic activity)アッセイ
OPAアッセイ手順は、Huら(Clin.Diagn.Lab.Immunol.2005;12(2):287〜95)によって既に記述された方法に基づき、下記の修正を加えたものであった。加熱不活性化した血清を、緩衝液中で2.5倍に連続希釈した。標的細菌をアッセイプレートに添加し、シェーカー上、25℃で30分間インキュベートした。次いで、仔ウサギ相補体(3から4週齢、Pel−Freez、12.5%最終濃度)および分化したHL−60細胞を、各ウェルに、およそ200:1のエフェクター対標的比で添加した。アッセイプレートを、シェーカー上、37℃で45分間インキュベートした。反応を終了させるために、80μLの0.9%NaClをすべてのウェルに添加し、混合し、10−μLアリコートを、200μLの水を含有するMillipore、マルチスクリーンHTS HVフィルタープレートのウェルに移した。液体を、真空下でプレートを介して濾過し、150μLのハイソイ(HySoy)培地を各ウェルに添加し、濾過した。次いで、フィルタープレートを、37℃、5%CO
2で終夜インキュベートし、次いで脱染溶液(Bio−Rad)で固定した。次いで、プレートをクマシーブルーで染色し、一度脱染した。コロニーを、Cellular Technology Limited(CTL)ImmunoSpot Analyzer(登録商標)で撮像し列挙した。OPA抗体力価を、免疫血清を含有しない対照ウェルと比較した場合の細菌コロニーの数における50%低減点を網羅する2つの血清希釈物の逆数から補間した。
【0200】
上記の開示は本発明について概して記述するものである。より完全な理解は、下記の具体例の参照によって得ることができる。これらの例は、例証目的でのみ記述され、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0201】
(実施例1)
eTEC結合グリココンジュゲートの調製の一般的プロセス
糖の活性化およびシスタミン二塩酸塩によるチオール化
糖を無水ジメチルスルホキシド(DMSO:dimethylsulfoxide)中で再構成する。溶液の水分含有量をカールフィッシャー(KF)分析によって決定し、0.1から0.4%、典型的には0.2%の水分含有量に到達するように調整する。
【0202】
活性化を開始するために、1,1’−カルボニル−ジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)または1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)の溶液をDMSO中100mg/mLの濃度で新たに調製する。糖を種々の量のCDT/CDI(1〜10モル当量)で活性化し、反応を23±2℃で1時間進めさせる。活性化レベルはHPLCによって決定することができる。シスタミン二塩酸塩を、無水DMSO中、50mg/mLの濃度で新たに調製する。活性化糖を1モル当量のシスタミン二塩酸塩と反応させる。代替として、活性化糖を1モル当量のシステアミン塩酸塩と反応させる。チオール化反応を23±2℃で21±2時間進めさせて、チオール化糖を生成する。チオール化レベルは添加されたCDT/CDIの量によって決定される。
【0203】
活性化反応溶液中の残留CDT/CDIを、100mM四ホウ酸ナトリウム、pH9.0溶液の添加によってクエンチする。添加された四ホウ酸塩の量を決定するためおよび最終水分含有量を全水溶液の最大1〜2%に調整するために算出を実施する。
【0204】
活性化チオール化糖の還元および精製
チオール化糖反応混合物を、0.9%生理食塩水中の予冷した5mMコハク酸ナトリウム、pH6.0への添加によって10倍希釈し、5μmのフィルターに通して濾過する。チオール化糖の透析濾過(dialfiltration)を、40倍ダイアボリューム(diavolume)のWFIに対して実施する。10%体積の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0による希釈後、残余分に、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の溶液、1〜5モル当量を添加する。この還元反応を5±3℃で20±2時間進めさせる。活性化チオール化糖の精製は、好ましくは、予冷した10mMリン酸ナトリウム一塩基、pH4.3に対する限外濾過/透析濾過によって実施する。代替として、チオール化糖は標準的なサイズ排除クロマトグラフ(SEC)手順またはイオン交換クロマトグラフ法によって精製される。活性化チオール化糖残余分のアリコートを取り出して、糖濃度およびチオール含有物(Ellman)アッセイを決定する。
【0205】
活性化チオール化糖の代替的な還元および精製
上述した精製手順の代替として、活性化チオール化糖を以下の通りにも精製した。
【0206】
チオール化糖反応混合物に、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の溶液、5〜10モル当量を添加し、23±2℃で3±1時間進めさせた。次いで、反応混合物を、0.9%生理食塩水中の予冷した5mMコハク酸ナトリウム、pH6.0への添加によって5倍希釈し、5μmのフィルターに通して濾過した。チオール化糖の透析濾過は、40倍ダイアボリュームの予冷した10mMリン酸ナトリウム一塩基、pH4.3を使用して実施した。活性化チオール化糖残余分のアリコートを取り出して、糖濃度およびチオール含有物(Ellman)アッセイを決定した。
【0207】
ブロモアセチル化担体タンパク質の活性化および精製
担体タンパク質の遊離アミノ基を、ブロモ酢酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル(BAANS)、ブロモアセチルブロミド、または別の好適な試薬等のブロモアセチル化剤との反応によってブロモアセチル化する(bromoacteylate)。
【0208】
担体タンパク質(0.1Mリン酸ナトリウム中、pH8.0±0.2)を、活性化前、最初、8±3℃、約pH7で保つ。タンパク質溶液に、ブロモ酢酸のN−ヒドロキシコハク酸イミドエステル(BAANS)をストックジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(20mg/mL)として0.25〜0.5 BAANS:タンパク質(w/w)の比で添加する。反応物を5±3℃で30〜60分間穏やかに混合する。得られたブロモアセチル化(活性化)タンパク質を、例えば、10mMリン酸(pH7.0)緩衝液を使用し、10kDa MWCO膜を使用する限外濾過/透析濾過によって精製する。精製後、ブロモアセチル化担体タンパク質のタンパク質濃度を、ローリータンパク質アッセイによって推定する。
【0209】
活性化の程度は、抑制された電導度検出と併用したイオン交換液体クロマトグラフィー(イオンクロマトグラフィー)による全臭化物アッセイによって決定する。活性化ブロモアセチル化タンパク質上の結合した臭化物を、アッセイ試料調製物中のタンパク質から切断し、存在し得る任意の遊離臭化物とともに定量化する。タンパク質上の任意の残りの共有結合している臭化物を、アルカリ性2−メルカプトエタノール中で試料を加熱することによるイオン性臭化物への変換によって放出する。
【0210】
ブロモアセチル化CRM
197の活性化および精製
CRM
197を、10mMリン酸緩衝0.9%NaCl pH7(PBS)で5mg/mLに希釈し、次いで、1Mストック溶液を使用して0.1M NaHCO
3 pH7.0を作製した。20mg/mL DMSOのBAANSストック溶液を使用して、BAANSをCRM
197:BAANS比1:0.35(w:w)で添加した。反応混合物を、3℃から11℃の間で30分〜1時間インキュベートし、次いで、10K MWCO膜および10mMリン酸ナトリウム/0.9%NaCl、pH7.0を使用する限外濾過/透析濾過によって精製した。精製した活性化CRM
197を、ローリーアッセイによってアッセイしてタンパク質濃度を決定し、次いで、PBSで5mg/mLに希釈した。スクロースを5%wt/体積まで抗凍結剤として添加し、活性化タンパク質を冷凍し、コンジュゲーションに必要となるまで−25℃で貯蔵した。
【0211】
CRM
197のリジン残基のブロモアセチル化は非常に一貫性があり、利用可能な39個のリジンのうち15から25個のリジンの活性化をもたらした。反応は、高収率の活性化タンパク質を生成した。
【0212】
活性化チオール化糖とブロモアセチル化担体タンパク質とのコンジュゲーション
コンジュゲーション反応を開始する前に、反応ベッセルを5℃に予め冷却する。その後、ブロモアセチル化担体タンパク質および活性化チオール化糖を添加し、150〜200rpmの撹拌速度で混合する。糖/タンパク質投入比は0.9±0.1である。反応物のpHを1M NaOH溶液で8.0±0.1に調整する。コンジュゲーション反応を5℃で20±2時間進めさせる。
【0213】
残留反応性官能基のキャッピング
担体タンパク質上の未反応のブロモアセチル化残基を、キャッピング試薬としての2モル当量のN−アセチル−L−システインと、5℃で3時間反応させることによってクエンチする。残留遊離スルフヒドリル基を、4モル当量のヨードアセトアミド(IAA)により、5℃で20時間キャップする。
【0214】
eTEC結合グリココンジュゲートの精製
コンジュゲーション反応(IAAキャップ後)混合物を、0.45μmのフィルターに通して濾過する。グリココンジュゲートの限外濾過/透析濾過を、5mMスクシネート−0.9%生理食塩水、pH6.0に対して実施する。次いで、グリココンジュゲート残余分を0.2μmのフィルターに通して濾過する。グリココンジュゲートのアリコートをアッセイのために取り出す。残りのグリココンジュゲートを5℃で貯蔵する。
【0215】
(実施例2)
Pn−33F eTECコンジュゲートの精製
活性化プロセス
Pn33F多糖の活性化
Pn−33F多糖を500mMの1,2,4−トリアゾール(WFI中)と調合して、多糖1グラム当たり10グラムのトリアゾールを取得した。混合物をドライアイス−エタノール浴中でシェルフリーズし、次いで凍結乾燥乾固した。凍結乾燥した33F多糖を無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中で再構成した。凍結乾燥した33F/DMSO溶液の水分含有量をカールフィッシャー(KF)分析によって決定した。WFIを33F/DMSO溶液に添加することによって水分含有量を調整して、0.2%の水分含有量に到達させた。
【0216】
活性化を開始するために、1,1’−カルボニル−ジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)を、DMSO溶液中100mg/mLとして新たに調製した。チオール化ステップの前に、Pn33F多糖を種々の量のCDTで活性化させた。CDT活性化を23±2℃で1時間行った。活性化レベルをHPLC(A220/A205)によって決定した。四ホウ酸ナトリウム、100mM、pH9.0溶液を添加して、活性化反応溶液中のあらゆる残留CDTをクエンチした。添加された四ホウ酸塩の量を決定するためおよび最終水分含有量を全水溶液の1.2%にするために算出を実施する。反応を23±2℃で1時間進めさせた。
【0217】
活性化Pn−33F多糖のチオール化
シスタミン−二塩酸塩を無水DMSO中で新たに調製し、1モル当量のシスタミン二塩酸塩を、活性化多糖反応溶液に添加した。反応を23±2℃で21±2時間進めさせた。チオール化糖溶液を、0.9%生理食塩水中の予冷した5mMコハク酸ナトリウム、pH6.0への添加によって10倍希釈した。希釈した反応溶液を、5μmのフィルターに通して濾過した。チオール化Pn−33F多糖の透析濾過は、注射用水(WFI:Water for Injection)を使用する100K MWCO限外濾過膜カセットを用いて行った。
【0218】
CDTのモル当量の関数としての活性化Pn−33F多糖のチオール化レベルを、
図8に示す。
【0219】
活性化チオール化Pn−33F多糖の低減および精製
残余分に、10%体積の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0による希釈後、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の溶液、5モル当量を添加した。この還元反応を、23±2℃で2±1時間進めさせた。チオール化33F多糖の透析濾過は、100K MWCO限外濾過膜カセットを用いて行った。透析濾過を、予冷した10mMリン酸ナトリウム、pH4.3に対して実施した。チオール化33F多糖残余分を、糖濃度およびチオール(Ellman)アッセイ両方のために取り出した。
【0220】
活性化チオール化Pn−33F多糖の代替的な低減および精製
上述した精製手順の代替として、33F活性化チオール化糖を以下の通りにも精製した。
【0221】
チオール化糖反応混合物に、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の溶液、5モル当量を添加し、23±2℃で3±1時間進めさせた。次いで、反応混合物を、0.9%生理食塩水中の予冷した5mMコハク酸ナトリウム、pH6.0への添加によって5倍希釈し、5μmのフィルターに通して濾過した。チオール化糖の透析濾過は、40倍ダイアボリュームの予冷した10mMリン酸ナトリウム一塩基、pH4.3を100K MWCO限外濾過膜カセットとともに使用して実施した。チオール化33F多糖残余分を、糖濃度およびチオール(Ellman)アッセイ両方のために取り出した。活性化プロセスのフロー図を
図7(A)において提供する。
【0222】
コンジュゲーションプロセス
チオール化Pn33F多糖とブロモアセチル化CRM
197とのコンジュゲーション
CRM
197担体タンパク質を、実施例1において記述されている通り、ブロモアセチル化によって別個に活性化させ、次いで、コンジュゲーション反応のために活性化Pn−33F多糖と反応させた。コンジュゲーション反応を開始する前に、反応ベッセルを0℃に予め冷却した。ブロモアセチル化CRM
197およびチオール化33F多糖を、反応ベッセル内、150〜200rpmの撹拌速度で一緒に混合した。糖/タンパク質投入比は0.9±0.1であった。反応物のpHを8.0〜9.0に調整した。コンジュゲーション反応を、5℃で20±2時間進めさせた。
【0223】
ブロモアセチル化CRM
197およびチオール化Pn33F多糖上の反応性基のキャッピング
CRM
197タンパク質上の未反応のブロモアセチル化残基を、2モル当量のN−アセチル−L−システインと5℃で3時間反応させることによってキャップし、続いて、チオール化33F−多糖の任意の残留遊離スルフヒドリル基を、4モル当量のヨードアセトアミド(IAA)により、5℃で20時間キャップした。
【0224】
eTEC結合Pn−33Fグリココンジュゲートの精製
コンジュゲーション溶液を、0.45μmまたは5μmのフィルターに通して濾過した。33Fグリココンジュゲートの透析濾過は、300K MWCO限外濾過膜カセットを用いて行った。透析濾過を、5mMスクシネート−0.9%生理食塩水、pH6.0に対して実施した。次いで、Pn−33Fグリココンジュゲート300K残余分を0.22μmのフィルターに通して濾過し、5℃で貯蔵した。
【0225】
コンジュゲーションプロセスのフロー図を
図7(B)において提供する。
【0226】
結果
Pn−33F eTECグリココンジュゲートの数個のバッチについての反応パラメーターおよび特徴付けデータを、表2に示す。シスタミン二塩酸塩によるCDT活性化−チオール化は、63から90%の糖収率および1%未満から13%の遊離糖を有するグリココンジュゲートを作り出した。
【0227】
【表2】
【0228】
CRM
197とのPn−33F eTECグリココンジュゲートのOPA力価
マウスにおけるPn−33F OPA力価を、標準的な条件下で決定した。4および7週間でのOPA力価(95%CIでのGMT)を表3に示し、これは、血清型33F Pnグリココンジュゲートがネズミ免疫原性モデルにおいてOPA力価を引き出したことを実証している。
【0229】
【表3】
【0230】
(実施例3)
Pn−22F eTECコンジュゲートの調製
活性化プロセス
Pn−22F多糖の活性化
Pn−22F多糖を500mMの1,2,4−トリアゾール(WFI中)と調合して、多糖1グラム当たり10グラムのトリアゾールを取得した。混合物をドライアイス−エタノール浴中でシェルフリーズし、次いで凍結乾燥乾固した。凍結乾燥した22F多糖を無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中で再構成した。凍結乾燥した22F/DMSO溶液の水分含有量をカールフィッシャー(KF)分析によって決定した。WFIをPn−22F/DMSO溶液に添加することによって水分含有量を調整して、0.2%の水分含有量に到達させた。
【0231】
活性化を開始するために、1,1’−カルボニル−ジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)を、DMSO溶液中100mg/mLとして新たに調製した。Pn−22F多糖を種々の量のCDTで活性化させ、続いて1モル当量のシスタミン二塩酸塩でチオール化した。CDT活性化を23±2℃で1時間行った。活性化レベルをHPLC(A220/A205)によって決定した。四ホウ酸ナトリウム、100mM、pH9.0溶液を添加して、活性化反応溶液中のあらゆる残留CDTをクエンチした。添加された四ホウ酸塩の量を決定するためおよび最終水分含有量を全水溶液の1.2%にするために算出を実施する。反応を23±2℃で1時間進めさせた。
【0232】
活性化Pn−22F多糖のチオール化
シスタミン−二塩酸塩を無水DMSO中で新たに調製し、反応溶液に添加した。反応を23±2℃で21±2時間進めさせた。チオール化糖溶液を、0.9%生理食塩水中の予冷した5mMコハク酸ナトリウム、pH6.0への添加によって10倍希釈した。希釈した反応溶液を、5μmのフィルターに通して濾過した。チオール化Pn−22F多糖の透析濾過は、注射用水(WFI)を使用する100K MWCO限外濾過膜カセットを用いて行った。
【0233】
活性化チオール化Pn−22F多糖の還元および精製
残余分に、10%体積の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0による希釈後、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の溶液、5〜10モル当量を添加した。この還元反応を、23±2℃で2±1時間進めさせた。チオール化22F多糖の透析濾過は、100K MWCO限外濾過膜カセットを用いて行った。透析濾過を、予冷した10mMリン酸ナトリウム、pH4.3に対して実施した。チオール化22F多糖残余分を、糖濃度およびチオール(Ellman)アッセイ両方のために取り出した。
【0234】
Pn−22F eTECグリココンジュゲートのコンジュゲーション、キャッピングおよび精製
活性化チオール化Pn22F多糖と活性化CRM
197とのコンジュゲーション、キャッピング、およびPn−22F eTECグリココンジュゲートの精製は、実施例2において記述されているプロセスに従って実施した。
【0235】
結果
CRM
197との代表的なPn−22F eTECグリココンジュゲートについての特徴付けおよびプロセスデータを、表4において提供する。
【0236】
【表4】
【0237】
(実施例4)
CRM
197とのPn−10A eTECコンジュゲートの調製
Pn−10A eTECグリココンジュゲートの調製
eTECスペーサーを介してCRM
197とコンジュゲートしている肺炎球菌莢膜多糖血清型10A(Pn−10A)を含むグリココンジュゲートは、実施例2において記述されているプロセスに従って調製した。
【0238】
Pn−10A eTECグリココンジュゲートの特徴付け
CRM
197との代表的なPn−10A eTECグリココンジュゲートについての特徴付けおよびプロセスデータを、表5において提供する。
【0239】
【表5】
【0240】
Pn−10A OPA力価
マウスにおけるCRM
197とのPn−10A eTECコンジュゲートに対するOPA力価を、標準的な条件下で決定した。用量の関数としてのOPA力価を、表6に示す。OPA力価は、コンジュゲートについて、コンジュゲートされていない血清型10A多糖と比べて有意に高かった。
【0241】
【表6】
【0242】
(実施例5)
CRM
197とのPn−11A eTECコンジュゲートの調製
Pn−11A eTECグリココンジュゲートの調製
eTECスペーサーを介してCRM
197とコンジュゲートしている肺炎球菌莢膜多糖血清型11A(Pn−11A)を含むグリココンジュゲートは、実施例2において記述されているプロセスに従って調製した。
【0243】
Pn−11A eTECグリココンジュゲートの特徴付け
CRM
197との代表的なPn−11A eTECグリココンジュゲートについての特徴付けおよびプロセスデータを、表7において提供する。
【0244】
【表7】
【0245】
Pn−11A OPA力価
マウスにおけるCRM
197とのPn−11A eTECコンジュゲートに対するOPA力価を、標準的な条件下で決定した。用量の関数としてのOPA力価を、表8に示す。
【0246】
【表8】
【0247】
(実施例6)
CRM
197とのPn−33F RAC/水性コンジュゲートの調製
Pn−33F RAC/水性グリココンジュゲートの調製
Pn−33Fグリココンジュゲートは、水相中での還元的アミノ化(RAC/水溶液)を使用して調製され、これは肺炎球菌コンジュゲートワクチンを生成するために成功裏に適用された(例えば、WO2006/110381を参照)。このアプローチは、2つのステップを包含する。第一のステップは、隣接ジオールからアルデヒド官能基を作り出すための多糖の酸化である。第二のステップは、活性化多糖をCRM
197のリジン(Lys)残基とコンジュゲートさせることである。
【0248】
簡潔に述べると、冷凍した多糖を解凍し、pH6.0のリン酸ナトリウム緩衝液中、異なる量の過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)の添加によって酸化を行った。活性化多糖の濃縮および透析濾過を行い、精製した活性化多糖を4℃で貯蔵した。活性化多糖をCRM
197タンパク質と調合した。多糖およびCRM
197を徹底的に混合した後、ボトルをドライアイス/エタノール浴に入れ、続いて多糖/CRM
197混合物の凍結乾燥を行った。凍結乾燥した混合物を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中で再構成した。1.5モル当量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムの添加、ならびに23℃で20時間および37℃で追加で44時間のインキュベーションによって、コンジュゲーション反応を開始させた。反応物を1倍体積の0.9%生理食塩水で希釈し、2M当量の水素化ホウ素ナトリウムを使用して、23℃で3時間キャップした。反応混合物を1倍体積の0.9%生理食塩水で希釈し、次いで、0.45μmのフィルターに通して濾過した後、精製した。コンジュゲートの濃縮および透析濾過は、100K MWCOUF膜カセットを使用して行った。
【0249】
数種のコンジュゲートは、上述したプロセスを使用し、異なるパラメーター(例えば、pH、反応温度および多糖の濃度)を変動させることによって取得した。
【0250】
典型的な多糖収率は、これらのコンジュゲートおよび2000〜3500kDaの範囲内のコンジュゲート分子量を持つ遊離糖の15%について、およそ50%であった。
【0251】
しかしながら、野生型血清型33F多糖は、5−ガラクトフラノシル残基のそのC2上にO−アセチル基を担持し、アセチル官能基の約80%は、水相中での還元的アミノ化を使用するコンジュゲーションプロセス全体を通じて除去されることが分かった。5員環構造(5−ガラクトフラノシド)上のO−アセチル基は、水相プロセスにおける還元的アミノ化化学を使用して、容易に移動し除去され得ることが観察された。
【0252】
Pn−33F RAC/水性グリココンジュゲート安定性の評価
上記のプロセスによって調製した代表的なRAC/水性コンジュゲートのアリコートを、ポリプロピレンチューブ内に分注した。これらのチューブを25℃または37℃のいずれかで貯蔵し、安定性を最大3.5か月間モニターした。各安定性時点において、%遊離糖レベルを評価した。両方の温度における安定性データを、表9にまとめる。表9に示す通り、%遊離糖レベルは、25℃および37℃において有意に増大した。貯蔵中の%遊離糖レベルの増大は、コンジュゲート中の多糖分解についての潜在的なインジケーターである。
【0253】
【表9】
【0254】
血清型33F多糖は、過ヨウ素酸ナトリウムとの反応により成功裏に活性化され、その後、水性還元的アミノ化化学を活用してCRM
197とコンジュゲートしたが、コンジュゲーション中にアセチル官能基(免疫原性のための重要な多糖エピトープ)を保存できないことと組み合わせた加速条件下での%遊離糖安定性結果は、RAC/水性プロセスが血清型33Fコンジュゲーション(conjugaton)に最適なプロセスではないことを示唆するものであった。
【0255】
(実施例7)
CRM
197とのPn−33F RAC/DMSOコンジュゲートの調製
Pn−33F RAC/DMSOグリココンジュゲートの調製
RAC/水性プロセスと比較すると、DMSO中での還元的アミノ化(RAC/DMSO)を介して行われるコンジュゲーションは、概して、脱O−アセチル化の可能性が有意に低い。実施例6において記述されている、RAC/水性プロセスを使用するO−アセチル官能基の保存に関連する接種の観点から、肺炎球菌コンジュゲートワクチンを生成するために成功裏に適用されたRAC/DMSO溶媒を使用する代替的なアプローチ(例えば、WO2006/110381を参照)が評価された。
【0256】
活性化多糖を、活性化多糖1グラム当たり25グラムのスクロースの比で使用して、スクロース(WFI中50%w/v)と調合した。成分をよく混合した後、ドライアイス/エタノール浴中でシェルフリーズした。次いで、調合された混合物のシェルフリーズしたボトルを、凍結乾燥乾固した。
【0257】
凍結乾燥した活性化多糖をジメチルスルホキシド(DMSO)中で再構成した。DMSOを、凍結乾燥したCRM
197に再構成のために添加した。再構成された活性化多糖を、再構成されたCRM
197と、反応ベッセル内で合わせた。NaCNBH3を反応混合物に添加することによってコンジュゲーションを開始させた。反応物を23℃で20時間インキュベートした。コンジュゲーション(キャッピング)反応の終了は、NaBH4を添加することによって達成し、反応をもう3時間続けた。反応混合物を、4倍体積の5mMスクシネート−0.9%生理食塩水、pH6.0緩衝液で希釈し、次いで、5μmのフィルターに通して濾過した後、精製した。コンジュゲートの濃縮および透析濾過は、100K MWCO膜を使用して行った。透析濾過を、40倍ダイアボリュームの5mMスクシネート−0.9%生理食塩水、pH6.0緩衝液に対して実施した。残余分を0.45および0.22μmのフィルターに通して濾過し、分析した。
【0258】
数種のコンジュゲートは、上述したプロセスを使用し、異なるパラメーター(例えば、糖−タンパク質投入比、反応濃度、シアノ水素化ホウ素ナトリウムのM当量、および水分含有量)を変動させることによって取得した。RAC/DMSOプロセスによって調製されたコンジュゲートから発生した全体的なデータは、RAC/水性プロセスと比較して優れていることが実証され、良好なコンジュゲーション収率、低い%遊離糖(5%未満)およびより高いコンジュゲーション度を持つコンジュゲート(コンジュゲートしているリジン)を調製することが可能となった。加えて、RAC/DMSOコンジュゲーションプロセス全体を通じてアセチル官能基の80%超を保存することが可能であった。
【0259】
Pn−33F RAC/DMSOグリココンジュゲート安定性の評価
上記のプロセスによって調製した代表的なRAC/DMSOコンジュゲートのアリコートを、ポリプロピレンチューブ内に分注し、これらを4℃または25℃のいずれかで貯蔵し、遊離糖について安定性を3か月間モニターした。表10に示す通り、4℃で貯蔵した試料は、3か月で4.8%の遊離糖増大を示した。しかしながら、25℃で貯蔵した試料は、3か月での%遊離糖において15.4%の増大を示した。RACコンジュゲート中の%遊離糖の増大は、特に25℃では、コンジュゲートの分解(degaradation)に起因する。
【0260】
【表10】
【0261】
RAC/DMSOコンジュゲートの別のロットの安定性も、4℃、25℃および37℃で研究した。アリコートをポリプロピレンチューブ内に分注し、%遊離糖における潜在的傾向についてモニターした。表11に示す通り、4℃で貯蔵した試料は、2か月での%遊離糖において4.7%の増大を示した。遊離糖における増大は、25℃および37℃で有意に高くなり、コンジュゲートの潜在的な分解を指示していた。
【0262】
【表11】
【0263】
RAC/DMSOプロセスによって作り出されたコンジュゲートがO−アセチル基を保存したとしても、特に25℃以上で観察される%遊離糖の増大は、この経路を使用する潜在的な不安定さを指示するものであった。このRAC/DMSOコンジュゲートの潜在的な不安定さの観察を考慮すると、RAC/DMSOは血清型33Fコンジュゲーションに最適であるとは見られず、より安定なコンジュゲート(eTECコンジュゲート)を作り出すために代替的な化学経路が開発された。
【0264】
(実施例8)
追加のPn−33F eTECコンジュゲートの調製
追加のPn−33F eTECコンジュゲートは、実施例2において記述されているプロセスを使用して作り出した。Pn−33F eTECグリココンジュゲートのこれらの追加のバッチについての反応パラメーターおよび特徴付けデータを、表12に示す。
【0265】
【表12】
【0266】
上記および表12に示す通り、数種のPn33Fコンジュゲートは、上記のeTECコンジュゲーションを使用して取得した。eTEC化学は、高い収率、低い%遊離糖および高いコンジュゲーション度を持つコンジュゲート(コンジュゲートしているリジン)の調製を可能にした。加えて、eTECコンジュゲーションプロセスを使用して、アセチル官能基の80%超を保存することが可能であった。
【0267】
(実施例9)
Pn−33F eTECグリココンジュゲート安定性の評価:%遊離糖傾向
コンジュゲートバッチ33F−2B(表2を参照)のアリコートをポリプロピレンチューブ内に分注し、4℃、25℃および37℃でそれぞれ貯蔵し、%遊離糖における傾向についてモニターした。データ(%遊離糖)を表13に示す。この表に示す通り、%遊離糖における有意な変化はなかった。
【0268】
【表13】
【0269】
別のコンジュゲートロット(バッチ33F−3C)の安定性加速を、37℃で最大1か月行った。表14に示す通り、37℃で最大1か月、%遊離糖への有意な変化はなかった。
【0270】
【表14】
【0271】
eTECコンジュゲートの安定性をさらに確認するために、4℃で貯蔵した追加のコンジュゲートバッチ(33F−3Cおよび33F−5E(表2および表12を参照))を、%遊離糖における潜在的傾向について最大およそ1年間モニターした。表15に示す通り、最大およそ1年間の長期間にわたって、4℃で貯蔵したコンジュゲートについて%遊離糖レベルにおける有意な変化はなかった。
【0272】
【表15】
【0273】
RAC/水性およびRAC/DMSOコンジュゲートとは対照的に、33F eTEC化学によって作り出された血清型33Fコンジュゲートは、種々の温度における遊離糖傾向(リアルタイムおよび加速)によってモニターした際に、顕著な分解なしに有意により安定であることが実証された。
【0274】
本明細書において言及されているすべての刊行物および特許出願は、本発明が関係する技術分野の当業者のレベルを指示している。すべての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が、具体的にかつ個々に参照により組み込まれることが指示されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0275】
前述の発明につて、理解の明確さを目的とした説明および例として多少詳しく記述してきたが、ある特定の変更および修正を添付の請求項の範囲内で実践してよい。