(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-525664(P2015-525664A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】注射ボタンを備えるばね荷重式注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20150811BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
A61M5/315 502
A61M5/315 550N
A61M5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-527886(P2015-527886)
(86)(22)【出願日】2013年8月19日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2013067256
(87)【国際公開番号】WO2014029745
(87)【国際公開日】20140227
(31)【優先権主張番号】12181035.2
(32)【優先日】2012年8月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/691,347
(32)【優先日】2012年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】メランデル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アヴルンド, ミケル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE06
4C066HH12
4C066QQ32
(57)【要約】
本発明は、注射ボタン(10)を有し、設定された投与量の薬剤を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置に関する。当該注射装置は、注射される投与量サイズを設定するときに注射ばねをひずませるための投与量設定部材(20)を有するハウジング、及び、設定された投与量を吐出するために、ひずまされた注射ばねを解放するための解放素子(30)を備える。注射ボタン(10)は戻しばね(1)の付勢に反して遠位方向に移動可能であり、戻しばね(1)の力によって近位方向に移動可能である。さらに、注射ボタン(10)は第1の位置から第2の位置へと解放素子と共に移動する。解放素子(30)はさらに、複数のフィンガ(31、15)によって注射ボタン(10)に連結され、複数のフィンガ(31、15)は、第1の位置では注射ボタン(10)が解放素子(30)から独立して軸方向の距離を移動できるように、及び、第2の位置では注射ボタン(10)と解放素子(30)とが共に軸方向に移動できるように、第1の位置で注射ボタン(10)を解放素子(30)から係合解除し、第2の位置で注射ボタン(10)を解放素子(30)と係合させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戻しばね(1)の付勢に反して遠位方向に移動可能であり前記戻しばね(1)の力によって近位方向に移動可能である注射ボタン(10)を有する、設定された投与量の薬剤を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置であって、前記ばね荷重式医療用注射装置は、
前記注射ボタン(10)を担持する近位端と対向する遠位端とを有するハウジング、
注射される投与量のサイズを設定するときに注射ばねをひずませるための、前記ハウジングに連結される回転可能な投与量設定部材(20)、
駆動部を駆動してこれにより前記設定された投与量を吐出するために、前記ひずまされた注射ばねを解放するための、軸方向に移動可能な解放素子(30)であって、前記注射ボタン(10)によって第1の位置から第2の位置へと軸方向に移動可能であり前記戻しばね(1)の力によって第2の位置から第1の位置へと戻るように移動可能である、解放素子(30)、
前記注射ボタン(10)と前記解放素子(30)とを解放可能に連結する、複数の半径方向に移動可能なフィンガ(31、15)であって、前記注射ボタン(10)と一体に設けられる又は前記解放素子(30)と一体に設けられる、フィンガ(31、15)、
をさらに備え、
前記第1の位置にある前記フィンガ(31)は、半径方向の係合解除位置にあり、ここで前記注射ボタン(10)が前記解放素子(30)から係合解除され、前記注射ボタン(10)を前記解放素子(30)から独立して軸方向に移動させ、
前記第2の位置にある前記フィンガ(31)は、半径方向の係合位置にあり、ここで、前記注射ボタン(10)が前記解放素子(30)と共に軸方向に移動するように、前記注射ボタン(10)は前記解放素子(30)と係合する、
ばね荷重式医療用注射装置。
【請求項2】
前記解放素子(30)の少なくとも一部と前記注射ボタン(10)の少なくとも一部とが、内径を有するチャネル(21)内で軸方向に誘導される、請求項1に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項3】
前記チャネル(21)は、前記投与量設定部材(20)内に又は前記ハウジング内に設けられる、請求項2に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項4】
前記複数のフィンガ(15、31)の半径方向の外縁(16、32)は、前記チャネル(21)の内径よりも大きい直径を画定する、請求項2又は3のいずれか一項に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項5】
前記複数のフィンガ(31)は前記解放素子(30)と一体に設けられる、請求項2から4のいずれか一項に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項6】
前記フィンガ(31)は、前記フィンガ(31)の前記係合位置で前記注射ボタン(10)に設けられるリッジ(12)の後部で係合する、内向きに突出する手段(34)を備える、請求項5に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項7】
前記複数のフィンガ(15)は前記注射ボタン(10)と一体に設けられる、請求項2から4のいずれか一項に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項8】
前記フィンガ(15)は、前記フィンガ(15)の前記係合位置で、前記解放素子(30)に設けられるリッジ又はトラック(35)の後部で係合する、内向きに突出する手段(17)を備える、請求項7に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項9】
前記注射ボタン(10)を遠位方向に促す前記戻しばね(1)は、ポリマー製ばねである、請求項1から8のいずれか一項に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【請求項10】
前記ポリマー製ばね(1)は、前記投与量設定部材(20)の一体部分として成型される、又は、前記注射ボタン(10)の一体部分として成型される、請求項9に記載の、設定された投与量を自動的に吐出するためのばね荷重式医療用注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ばね駆動式注射装置の解放機構に関する。本発明は、特に注射ボタンの解放素子への連結に関し、より詳細には、注射ボタンにその軸方向の位置に応じて解放素子を係合させる及び係合解除させる機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ばね駆動式注射装置が、国際出願第2006/076921号に開示されている。
図10は、管状の解放部材が、近位に位置する注射ボタンに連結される一実施形態を示し、ユーザは指先でこの注射ボタンを、ハウジングと注射ボタンとの間に包含される戻しばねの付勢に反して遠位方向に押すことができる。吐出される投与量サイズを設定するための回転式投与量設定ボタンは、ハウジングに連結される。投与量サイズの設定時、ユーザはさらに、注射ばねをねじってひずませる。設定された投与量は、近位に位置する注射ボタンの動作によって吐出されることができる。ユーザが注射ボタンを遠位方向に押すとき、解放管の遠位端は、注射ばねが自由になりピストンロッドを前方に駆動してこれにより設定投与量を吐出するために、ハウジングとの係合を解除するように駆動部材を移動させる。ユーザが指を注射ボタンから離すと、ハウジングと注射ボタンとの間に包含される戻しばねは注射ボタンと解放管とを近位方向に持ち上げ、これにより、駆動部材はハウジングを再係合し、注射ばねがカートリッジからさらなる薬剤を吐出することを防止する。
【0003】
手動注射装置の注射ボタンが、欧州特許第594,357号に記載されている。この注射ボタンは、ユーザが注射ボタンから指を離すと注射ボタンが初期位置に再度持ち上げられるように、注射ボタンのその他の部分と一体成型された複数の弾性脚部を有する。
【0004】
さらに、米国特許第5,928,202号では、医療用シリンジ内の押圧ロッド及びピストンのための連結システムが開示されている。このシステムでは、複数の弾性フィンガがチャネル内へと移動されるとき、当該弾性フィンガが内向きに偏向される。
【0005】
国際出願第2007/071080号及び国際出願第2008/031235号は、国際出願第2006/076921号の開示に類似した解決策を示しており、ユーザが注射ボタンから指を離すと戻しばねが注射ボタンを近位方向に促す。
【0006】
国際出願第2006/076921号の
図10に示す実施形態で、ユーザが注射ボタンから指を離すとき、さらなる注射を防ぐために駆動部材がハウジングと素早く再係合することが重要である。
【0007】
しかしながら、注射ボタンと解放管との間の結合には通常、公差が存在する。さらに、ばねにも公差が存在し得る。これらの公差の結果、戻しばねが最も圧縮され(すなわち注射中)、ユーザが注射ボタンから指を離すとき、ばねの初期力は、まず注射ボタンを持ち上げることに使用され、次いで注射ボタンは当該一連の公差の終端で解放管を係合して持ち上げ、これにより駆動部を再係合するために使用される。結果として、且つ公差に応じて、限られたばね力のみが解放管を持ち上げるのに利用可能となり、さらなる吐出を防ぐために駆動部材をハウジングと再係合させるのは解放管の持ち上げであるので、このことは主な欠点である。ユーザが、例えば適切に注射を中断するために、注射ボタンから指が離されるとすぐに再係合が速やか且つ正確に行われることが非常に重要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、設定投与量の複数の自動注射のためのばね駆動式注射装置を提供することであり、駆動部材の適切な再係合が公差から独立して保証されるように、注射ボタン及び解放素子を戻すばね力が分配され、これにより、例えば、予張力のない例えばポリマー製ばねのような戻しばねを利用できるようにする。
【0009】
本発明は請求項1において定義される。
【0010】
したがって、本発明の一態様によれば、液体薬剤のばね駆動式注射のための注射装置が提供され、当該注射装置は下記を備える:
外側シェルを構成するハウジング。ハウジングは通常、薬剤を包含するカートリッジ、並びに、投与量設定機構と注射機構とを構成する機械的コンポーネントを保持する。
ハウジングに連結される投与量設定部材であって、この部材によって、ユーザは注射ばねをひずませることができ、注射ばねはねじりばねであってもよく、トルクは、軸方向の圧縮なしに又はごく限られた軸方向圧縮のみを伴い蓄積される、投与量設定部材。
注射ボタンであって、通常、注射中にユーザがボタンに軸方向の圧力を印加することにより、当該注射ボタンの作動によって注射が実施されることができ、印加される圧力がない場合、戻しばねは注射ボタンを初期位置に戻す、注射ボタン。
【0011】
さらに、第1の位置と第2の位置との間で動作可能な解放素子が提供される。
【0012】
解放素子は、複数の半径方向に働くフィンガを介して、注射ボタンに解放可能に連結される。フィンガは、解放素子と一体に又は注射ボタンと一体に設けられる。
【0013】
第1の位置で、フィンガは係合解除位置にあり、投与量設定ボタンは解放素子から係合解除される。したがって、投与量設定ボタンは解放素子から独立して軸方向の距離を移動できる。
【0014】
第2の位置で、フィンガは、注射ボタンを解放部材に連結する係合位置に移動される。第2の位置は、好ましくは、戻しばねが投与量設定ボタン及び解放素子を共に近位方向に促す位置である。
【0015】
解放素子は、例えば国際出願第2006/076921号に示されるような、注射を実施するために注射ばねを直接的に又は非直接的に解放する機械的構成における素子であり、当該出願は参照により本願に組み込まれる。
【0016】
解放素子は必ずしも注射ばねに直接的に連結されなくてもよく、解放素子の起動時に注射ばねを解放する機構を介して、注射ばねに連結されてもよい。
【0017】
本発明の1つの機能は、注射ボタンが、第1の位置では、解放素子から独立して軸方向の距離を移動できるということ、及び、第2の位置では、注射ボタンと解放素子とが共に軸方向に移動できることである。
【0018】
この方式で、最も圧縮されるときの戻しばねの最大の力が、まず、解放機構を再係合させるために使用され、その後、ばね力のより小さい部分は、戻しばねが最も伸ばされた状態に近づくにつれて、解放機構からは独立して、注射ボタンを持ち上げるためだけに使用されることが保証される。この方式で、注射を停止または中断するとき、最大の力が、解放素子をハウジングと再係合させるために利用可能である。
【0019】
解放素子の一部分と注射ボタンの一部分とは、固定された直径を有するチャネル内で誘導される。チャネルは、好ましくは、投与量設定部材又はハウジングのいずれかに設けられる。
【0020】
2つの素子のうちの1つ、すなわち解放素子又は注射ボタンは、複数のフィンガを備える。これらのフィンガの外縁により形成される外径は、フィンガがチャネル内で軸方向に移動すると半径方向に圧迫されるように、好ましくは、チャネルの直径よりも大きい。
【0021】
フィンガのこの半径方向の移動は、第1の位置と第2の位置との間の境界を画定する。フィンガがチャネルの外側にある第1の位置では、フィンガは係合解除位置にある一方、フィンガがチャネル内で圧迫されるとき、解放素子はその第2位置にある。
【0022】
したがって、第2の位置で、解放素子と注射ボタンとは強固に連結して共に軸方向に移動する一方、第1の位置では、これら2つの素子は連結解除される。
【0023】
フィンガは、好ましくは、注射ボタンに設けられたリッジの後部で係合する、内向きに突出する手段を備え、これにより注射ボタンを第2の位置で係合させるが、フィンガが注射ボタンに設けられる場合は、リッジ又はトラックが解放素子自体に設けられてもよい。
【0024】
戻しばねは、通常は予めひずまされないことが好ましいがこれに限定するものではなく、適切なポリマー材料で作製され、注射ボタン又は投与量設定部材の一体部分として(又は代替的にハウジングの一部として)成型されることができる。しかしながら、代替的に、通常の金属圧縮ばねも利用可能である。
【0025】
さらに、本発明によれば、注射ボタンの解放時の戻しばねの初動が、解放素子を持ち上げるために直接的に伝動されるので、戻しばねは注射ボタンと物理的に当接する必要はないことに留意されたい。
【0026】
定義:
「注射ペン」は、典型的には、筆記用のペンのような縦長の又は細長い形状を有する注射器具である。そのようなペンは、通常、管状の断面を有し、それらは容易に、三角形、長方形もしくは正方形、又はこれらの形状の任意の変形例などの異なる断面を有することができる。
【0027】
本書で使用する場合、「薬剤(drug)」という用語は、制御された様態で中空針カニューレなどの送達手段を通過することができる、例えば、液体、溶液、ジェル又は微細懸濁液といった、任意の薬剤含有流動可能薬物を包含することが意図されている。代表的な薬剤は、ペプチド、タンパク質(例えば、インシュリン、インシュリン類似体、及びCペプチド)、及びホルモン、生物学的な由来の又は生物学的に活性な化学物質、ホルモン剤、及び遺伝子に基づく化学物質、栄養処方物、並びに固体(調剤されたもの)若しくは液体の両方の形をとる他の物質などの薬を含む。
【0028】
「カートリッジ」は、薬剤を内包する容器を説明するために使用される用語である。カートリッジは通常、ガラスで作られるが、任意の適切なポリマーから成形されることもありうる。カートリッジ又はアンプルは、好ましくは、「隔壁」と称される突き通し可能な膜によって一端部で密封され、「隔壁」は、例えば、注射針カニューレの患者側ではない端部によって刺通される。反対側の端部は、一般的に、ゴム又は適切な高分子化合物から作られるプランジャ又はピストンによって閉じられる。プランジャ又はピストンは、カートリッジの内側で摺動可能に動かされる。刺通可能な膜と可動性プランジャの間の空間は、薬剤を保持する空間の容積をプランジャが減少させることによって押し出される薬剤を保持する。しかし、任意の種類の容器が、剛性でも可撓性でも、薬剤を内包するために使用されうる。
【0029】
「自動」という用語の注射装置と併せての使用は、注射装置のユーザが、薬剤の吐出に必要な力を送達せずに、注射装置が注射を実施できることを意味する。力は、典型的には、電気モータによって又は本明細書に記載するようなばねによって伝達され、当該ばねは通常、投与量設定中にユーザによってひずまされる。このようなばねは通常、極めて少量の投与量を送達することの問題を回避するために、ある特定の力で予めひずまされる。代替的に、ばねは、幾つかの数の投与を通じて薬剤カートリッジを空にするのに十分な予荷重で、製造者によって予め負荷をかけられることができる。典型的には、注射を実施するときユーザは、注射装置のラッチ又はボタンを起動してばねの中に蓄積された力を解放する。
【0030】
出版物、特許出願、及び特許を含む、本明細書で引用するすべての参照文献は、それら全体で、並びに、各参照文献が個別にかつ具体的に参照によって組み込まれることが示され本明細書においてその全体が記載されている場合と同程度まで、参照により組み込まれる。
全ての表題及び副題は、本書において便宜のためにのみ使用され、いかなる方法においても発明を限定するものとして構成されるべきではない。
任意の及び全ての実施例の使用、又は本書において提供される例示的な文言(例えば「など」)の使用は、単に発明の理解を容易にすることを企図するものであり、特許請求の範囲で主張されない限り、発明の範囲に限定を課するものではない。明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素が、発明の実施にとって不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
本書における特許文献の引用及び組み合わせは、便宜のためにのみ行われるものであり、かかる特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使可能性についてのいかなる見解も反映しない。
この発明は、適用法令によって認められるように、本書に添付された特許請求の範囲の中で挙げられている主題の、全ての変形例及び等価物を含むものとする。
【0031】
発明は、好適な実施形態に関連して、以下の図面を参照しつつ、より完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】圧力が加えられていない解放機構の断面図を示す。
【
図2】注射の開始時における解放機構の断面図を示す。
【
図3】解放管が投与量設定ボタンと係合しているときの解放機構の断面図を示す。
【
図4】注射ボタンが完全に押圧された解放機構の断面図を示す。
【0033】
図面は、明瞭にするために概略化且つ単純化されており、それらは発明の理解にとって必要不可欠な詳細のみを示し、他の詳細部分は除外されている。全体を通じて、同一部分又は対応する部分に対して同じ参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下において、「上部」及び「下部」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」、「時計回り」並びに「反時計回り」という用語、又は類似の関連表現が使用される場合、それらは添付の図面にのみ言及するものであり、実際の使用状況に言及するものではない。示される図面は概略的な表示であり、このため種々の構造の構成及びそれらの相対的な寸法は、例示目的のみを意図している。
【0035】
その文脈において、
図1に示すように、添付図面における「遠位端」という用語は通常は注射針を担持する注射装置の端部を表すことが意図されるのに対し、「近位端」という用語は、注射針から離れる方向を向く、注射ボタンを担持する反対の端部を表すよう意図されると定義することは、都合がよいかもしれない。
【0036】
図1〜
図6は、自動ばね駆動式注射装置の解放機構を開示する。
【0037】
図1〜5に示す実施形態は、解放機構を示す。注射ボタン10が注射装置の近位端に設けられる。国際出願第2006/076921号の
図10に示すのと同様に、注射ボタン10は、ハウジングに回転可能に連結される投与量設定ボタン20によって軸方向に誘導される。
【0038】
解放管30は注射装置の中央に位置する。この解放管30はその遠位端で、設定された投与量を駆動部を介して吐出するために、注射ばねを解放する機構を動作させる。国際出願第2006/076921号の
図10に、そのような機構の例が開示されている。
【0039】
戻しばね1は投与量設定ボタン10と注射ボタン20との間に包含され、注射ボタン10を近位方向に促す。戻しばね1は、好ましくは、ポリマー材料から成型される。
【0040】
第1の実施形態(
図1〜5)で、注射ボタン10は、中央に位置する突起11を内部に備え、突起11はその遠位端に半径方向リッジ12を有する。
【0041】
解放管30は、複数のフィンガ31を備える。実際には、これらフィンガ31のうち1つのみが可撓性である必要があり、その他のフィンガ31は剛性の支持構造として形成されてもよい。これらのフィンガ31は、投与量設定ボタン20内に設けられるチャネル21を通って伸びる。しかしながら、チャネル21は代替的に、ハウジング内又は任意適切な他の場所に設けられてもよい。フィンガ31は、外側に突出する延長部を近位に備え、延長部は、壁22によって画定されるチャネル21の内径よりも大きい直径を有する外縁32を画定する。
【0042】
図2に示すように、注射時、ユーザが軸方向の圧力(P)を注射ボタン10に加えると、注射ボタン10はまず、解放管30の最近位端33に係合するまで、遠位に移動する。その後、
図3に示すように、解放管30は注射ボタン10と共に遠位方向に移動する。
【0043】
解放管30が遠位に移動すると、フィンガ31の外縁32はチャネル21の内壁22に当接し、したがってフィンガ31は
図4に示すように内向きに偏向される。
【0044】
内部では、解放管30は幾つかの半径方向内側に突出するノブ34を備え、ノブは、突起11と解放管30とがチャネル21内へと遠位方向に移動するにつれて、注射ボタン10の、半径方向リッジ12の近位にある突起11と係合する。
【0045】
圧力が加わらないようにユーザが指を注射ボタン10から離すと、
図4の矢印Lで示すように、戻しばね1は注射ボタン10を持ち上げ始める。この位置にある注射ボタン10は、リッジ12とノブ34との間の係合によって解放管30にロックされているので、最も圧縮されているときの戻しばね1の最大の力は、駆動部材とハウジングとの間の再係合が確保されるように、解放管30に伝達される。
【0046】
解放機構が解放されると、外縁32はチャネル21の開口の上部の位置に到達しており(
図3に示すように)、戻しばね1の残留する力は、解放管30から独立して注射ボタン10をその初期位置まで到達させるまで移動させるために使用される。
【0047】
この方式の最後の部分で、戻しばね1の最後の力が注射ボタン10を持ち上げるために不十分であっても、解放管30は既に持ち上げられているので解放機構には影響しない。
【0048】
図6に示す実施形態は、基本的に第1の実施形態と同じ方式で動作する。ここでは注射ボタン10が、前の実施形態におけるフィンガ31のように機能する複数の可撓性アーム15をさらに備える。アーム15は、アーム15の外縁16がチャネル21の内壁22と接触するとアーム15が内側に偏向されるように、チャネル21の内径よりも大きい直径を画定する外縁16を有する。内側に押されると、これらアーム15の内側突出部17は、解放管30内のリッジ又はトラック35の後部で係合する。
【0049】
戻しばね1が解放されると、ばね力はまず、注射ボタン10を解放管30と共に近位方向に、駆動部材がハウジングを再係合するまで移動させ、その後、残留ばね力は、注射ボタン10をその初期位置に移動させるためにのみ使用される。
【0050】
図6で、戻しばね1は成型されたポリマーばね要素として示されているが、当然ながら通常の金属製の圧縮ばねであってもよい。本発明によれば、注射ボタン10の解放時の戻しばね1の初動は、解放素子30を持ち上げるために直接的に伝動されるので、戻しばね1は注射ボタン10と物理的に当接する必要はないことに留意されたい。
【0051】
さらに、
図6に示すように、投与量設定ボタン20は、投与量設定部材20をハウジングに回転可能に連結するために、ハウジングの同様のリッジ(図示せず)と係合する、内部トラック23を備える。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態が上記に示されたが、発明はこれらに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義される主題の範囲内で、他の方法においても具現化され得るということが、強調されるべきである。
【国際調査報告】