(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-525856(P2015-525856A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】非対称形の微細な湾曲構造を有する軸受を具えるクランクドライブ
(51)【国際特許分類】
F16C 9/02 20060101AFI20150811BHJP
F16C 3/06 20060101ALI20150811BHJP
F16C 9/04 20060101ALI20150811BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
F16C9/02
F16C3/06
F16C9/04
F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-519376(P2015-519376)
(86)(22)【出願日】2013年7月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月19日
(86)【国際出願番号】IB2013001421
(87)【国際公開番号】WO2014006481
(87)【国際公開日】20140109
(31)【優先権主張番号】12175369.3
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】509061922
【氏名又は名称】ティッセンクルップ メタルルジカ カンポ リンポ リミターダ
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Metalurgica Campo Limpo Ltda.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ ジ オリヴェイラ フェレイラ サレス,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】サントロ カルドソ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアルテ,ドゥルヴァル
【テーマコード(参考)】
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3J011AA06
3J011BA02
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA08
3J011MA04
3J011NA01
3J011PA02
3J011RA03
3J033AA02
3J033AA05
3J033BA01
3J033GA02
3J033GA11
(57)【要約】
本発明はクランクシャフト(10)と、少なくとも1の連結ロッド(11)と、少なくとも1のピストン(12)を有するクランクドライブ(1)に関し、特に内燃機関のクランクドライブ(1)において、前記クランクシャフト(10)が、クランクハウジング(14)内で前記クランクシャフト(10)を支持する少なくとも1のラジアル軸受(13)と、前記連結ロッド(11)を前記クランクシャフト(10)に連結する少なくとも1のラジアル軸受(15)と、少なくとも1のラジアル軸受(16)を有する前記連結ロッド(11)と前記ピストン(12)との連結部とを具え、これらの軸受(13、15、16)が、軸受の内面(17)および/または軸受の外面(18)を具える。本発明によると、少なくとも1の軸受の面(17、18)に複数の非対称形の微細な湾曲構造(19)が設けられ、当該微細な湾曲構造(19)は、前記軸受の面(17、18)と前記微細な湾曲構造(19)の底点(21)との間の第1の凹部区画(20)と、前記底点(21)と前記軸受の面(17、18)との間の第2の凹部区画(22)とを具え、前記複数の微細な湾曲構造(19)の間には、前記軸受の面(17、18)の部分が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(10)と、少なくとも1の連結ロッド(11)と、少なくとも1のピストン(12)を有するクランクドライブ(1)であって、特に内燃機関のクランクドライブ(1)において、前記クランクシャフト(10)が、クランクハウジング(14)内で前記クランクシャフト(10)を支持する少なくとも1のラジアル軸受(13)と、
前記連結ロッド(11)を前記クランクシャフト(10)に連結する少なくとも1のラジアル軸受(15)と、
少なくとも1のラジアル軸受(16)を有する前記連結ロッド(11)と前記ピストン(12)との連結部と、を具え、
これらの軸受(13、15、16)が、軸受の内面(17)および/または軸受の外面(18)を具え、
前記軸受の面(17、18)の少なくとも一方に複数の非対称形の微細な湾曲構造(19)が設けられ、当該微細な湾曲構造(19)は、
前記軸受の面(17、18)と前記微細な湾曲構造(19)の底点(21)との間の第1の凹部区画(20)と、
前記底点(21)と前記軸受の面(17、18)との間の第2の凹部区画(22)とを具え、
前記複数の微細な湾曲構造(19)の間には、前記軸受の面(17、18)の部分が設けられていることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランクドライブ(1)において、
前記第1の凹部区画(20)が、向かい合う軸受パートナー(24、25)の回転方向に関して、前記第2の凹部区画(22)の長さ(L2)よりも短いことを特徴とするクランクドライブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクランクドライブ(1)において、
前記微細な湾曲構造(19)の前記軸受の面(17、18)より下の底点(21)の深さ(26)が、
前記第1(20)および第2の凹部区画(22)の合計の長さ(L1、L2)の、少なくとも50分の1、好適には100分の1、より好適には500分の1、最も好適には1000分の1であることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクランクドライブ(1)において、
前記軸受パートナー(24、25)の間にクリアランス(z)が設けられており、前記微細な湾曲構造(19)の深さ(26)が、前記クリアランス(z)の1%から50%であり、好適には2.5%から20%であることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクランクドライブ(1)において、
前記微細な湾曲構造(19)の深さ(26)が、約1μmから8μmであり、好適には4μmであることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクランクドライブ(1)において、
隣接する複数の微細な湾曲構造(19)の間の前記軸受の面(17、18)の長さ(L3)が、前記第1(20)および第2の凹部区画(22)の合計の長さ(L1、L2)よりも、20%短いか長く、好適には10%短いか長く、または前記第1(20)および第2(22)の凹部区画の長さ(L1、L2)の合計の長さと同じであることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のクランクドライブ(1)において、
前記第1(20)および第2の凹部区画(22)合計の長さ(L1、L2)が、約1mmから7mmであり、好適には2mmから5mmであり、最も好適には2.7mmであることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクランクドライブ(1)において、
前記ラジアル軸受(13、15、16)が、回転方向(23)に対して垂直の軸方向の長さ(27)を具え、前記微細な湾曲構造(19)が、前記ラジアル軸受(13、15、16)の軸方向の長さ(27)よりも短い軸方向の幅(28)を具えることを特徴とするクランクドライブ。
【請求項9】
クランクドライブ(1)用、特に内燃機関のクランクドライブ(1)用のクランクシャフト(10)が、
クランクハウジング(14)内で前記クランクシャフト(10)を支持する、少なくとも1のラジアル軸受(13)の内側の軸受パートナー(24)と、
連結ロッド(11)を前記クランクシャフト(10)に連結する、少なくとも1のラジアル軸受(15)の内側の軸受パートナー(24)と、を具え、
これらの前記内側の軸受パートナー(24)は、複数の非対称形の微細な湾曲構造(19)が設けられた軸受の外面(18)を有し、前記微細な湾曲構造(19)は、
前記軸受の外面(18)と前記微細な湾曲構造(19)の底点(21)との間の第1の凹部区画(20)と、
前記底点(21)と前記軸受の外面(18)との間の第2の凹部区画(22)と、を具え、
前記複数の微細な湾曲構造(19)の間には、前記軸受の外面(18)の部分が設けられていることを特徴とするクランクシャフト。
【請求項10】
クランクドライブ(1)またはクランクシャフト(10)、少なくとも1の連結ロッド(11)、および/または少なくとも1のピストン(12)、特に内燃機関のクランクドライブ(1)に用いるラジアル軸受(13、15、16)において、前記軸受(13、15、16)が、
クランクハウジング(14)内で前記クランクシャフト(10)を支持する少なくとも1のラジアル軸受(13)を構成し、および/または、
前記連結ロッド(11)を前記クランクシャフト(10)に連結する少なくとも1のラジアル軸受(15)を構成し、および/または、
前記連結ロッド(11)を前記ピストン(12)に連結する少なくとも1のラジアル軸受(16)を構成し、
これらの軸受(13、15、16)が、軸受の内面(17)および/または軸受の外面(18)を具え、
これらの軸受の面(17、18)の少なくとも一方に複数の非対称形の微細な湾曲構造(19)が設けられ、当該微細な湾曲構造は、
前記軸受の面(17、18)と前記微細な湾曲構造(19)の底点(21)との間の第1の凹部区画(20)と、
前記底点(21)と前記軸受の面(17、18)との間の第2の凹部区画(22)とを具え、
前記複数の微細な湾曲構造(19)の間には、前記軸受の面(17、18)の部分が設けられていることを特徴とするラジアル軸受。
【請求項11】
請求項10に記載のラジアル軸受(13、15、16)において、請求項1乃至8のいずれか1項にかかるクランクドライブ(1)に用いることを特徴とするラジアル軸受。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか1項にかかるクランクドライブ(1)に用いられる軸受(13、15、16)のうちの少なくとも1つを構成することを特徴とする軸受要素(29)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトと、少なくとも1の連結ロッドと、少なくとも1のピストンとを有するクランクドライブに関し、特に、内燃機関のクランクドライブに関するものであり、クランクシャフトは、クランクハウジング内でクランクシャフトを支持する少なくとも1のラジアル軸受と、連結ロッドをクランクシャフトに連結する少なくとも1のラジアル軸受と、少なくとも1のラジアル軸受を有する連結ロッドとピストンとの連結部と、を具え、これらの軸受が、軸受の内面および/または軸受の外面を具えることを特徴とする。さらに本発明は、クランクドライブのクランクシャフト、このようなクランクドライブのラジアル軸受、およびラジアル軸受それ自体に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間において、一般的に、滑り軸受の分野では数多くの研究がなされてきた。ほとんどの研究が、ラジアル軸受のパートナーの少なくとも1の面における、「微細な溝」または「微細な湾曲」と呼ばれる分野で行われてきた。実際の動作条件下での性能を向上させるため、これには流体軸受の面に微細な形状の変更を加えることが含まれる。しかし、負荷方向と負荷の条件が連続して変化することによる、困難な動作条件下で動作するクランクドライブ用のラジアル軸受の特殊な分野においては、ラジアル滑り軸受を改良する深い研究は行われていない。
【0003】
〔先行技術文献〕
文献US5725314Aは、内壁および外壁を有する円筒体と、内壁に沿った複数の溝と、溝と流体を受けるよう接続している複数のくさび形の凹部を有する流体軸受について言及している。したがって、くさび形の凹部と溝は、軸受の1の面に多数の微細な溝を形成する。くさび型の凹部は内壁の円周にそって幅広部を有しているが、どの実施例も軸受の内面または外面に微細な構造を具えてはおらず、軸受面に部分的に適用されているだけであり、示されている溝と微細な溝が最大の機械的負荷の低減をもたらすことになる。
【0004】
文献US4747705Aは、軸受の内面にあって湾曲した形状の先端を形成する複数のパッドを有する、別の流体軸受を開示している。この軸受は、高速回転する部品を支持するために、特別なジャーナル軸受を必要とする高速ターボマシン用に最適化されている。流体軸受は、流体力学の発生の原理のもとに動作し、圧力が軸受面と回転部品との間のクリアランスに発生し、このような圧力がネット負荷容量と薄膜の剛性を作り出す。ここに開示された流体軸受は、特別な高速アプリケーションに実施されるものであり、低い回転速度を許容せず、約40000rpm回転に最適化されている。したがって、ここに開示されているような軸受の面に湾曲を有する軸受は、軸受が十分な機械的負荷を提供するようには作動しないため、クランクドライブや、特にクランクハウジング内でのクランクシャフトの支持の用途には適用できない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、クランクドライブおよび特にクランクシャフトに適用することができる、負荷反応が改良されたラジアル軸受を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明の請求項1にかかるクランクドライブと、請求項9にかかるクランクシャフトと、請求項10にかかるラジアル軸受と、請求項12にかかる軸受要素とによって達成される。本発明の好ましい実施例は、従属項によって規定される。
【0007】
開示する本発明は、少なくとも1の軸受の面に複数の非対称形の微細な湾曲構造が設けられ、当該微細な湾曲構造は、前記軸受の面と前記微細な湾曲構造の底点との間の第1の凹部区画と、前記底点と前記軸受の面との間の第2の凹部区画とを有し、前記複数の微細な湾曲構造の間には、前記軸受の面の部分が設けられていることを特徴とする。
【0008】
クランクドライブにおける様々な種類の微細な湾曲構造のシミュレーションとテストは、本発明にかかる微細な湾曲構造を具えたときに、流体ラジアル軸受の動作パラメータに極めて高い改善を示した。すべての軸受の動作パラメータ、すなわち低減された最大油膜圧力、最大化された最小油膜厚、最大化された軸方向の油流量、および最小化された摩擦による動力損失は、上述のような形状を有する微細な湾曲構造を、ラジアル流体軸受の内面または外面に具えることにより改善される。したがって、これらの微細な湾曲構造を流体ラジアル軸受の摺動面に具えることが、実際に性能を大幅に改善することを明確に示している。
【0009】
さらに、シミュレーション結果で示された極めて高い改善を考慮して、実際のテストは、前記軸受面と前記微細な湾曲構造の底点との間の第1の凹部区画と、前記底点と前記軸受面との間の第2の凹部区画とを有する適切に設計された複数の非対称の微細な湾曲構造、およびこれらの間にある基本的な軸受面の部分が、クランクドライブに極めて高く適した軸受をもたらすことを示す。このような軸受は、クランクハウジング内のクランクシャフトの支持や、連結ロッドをクランクシャフトに連結させるためのクランクジャーナルとして、または例えば連結ロッドとピストンピンとの間に適用することができる。
【0010】
軸受のパラメータが改善する主な理由は、いわゆるくさび効果のプラスの影響である。上述のような微細な湾曲構造を有する流体ラジアル軸受の改善された負荷容量は、主に、軸受ジャーナルと軸受ハウジングとの間の収束領域内のくさび形機構に基づくものであり、ジャーナルのハウジング内での偏心位による。本発明によると、各々の微細な湾曲構造の間には、従来の基本的な軸受面が設けてあり、各々の微細な湾曲は、後に続く空洞のない基本的な軸受面の前に単一のくさび形領域を形成する。このようにして、内側の軸受パートナーと外側の軸受パートナーとの間の隙間における油圧は、微細な湾曲領域において増加し、基本的な軸受面においては保たれ、または、それぞれにおいて少なくとも大きな偏差を有さない。
【0011】
結果として、従来の基本的な軸受面の領域の前に複数の微細な湾曲を有する軸受は、極めて高い負荷容量が得られ、クランクドライブに良好に適用できるが、これはクランクドライブにおいて連続的に方向を変える高くてピークに近い負荷は、クランクドライブの軸受にストレスを与えるが、本発明にかかる設計の軸受は優れた方法でピークの負荷に耐えることができるからである。
【0012】
本発明によると、少なくとも1の軸受の面に、例えば軸受の内面および/または軸受の外面に非対称のデザインの微細な湾曲構造が設けられている。非対称のデザインは、第1の凹部区画と第2の凹部区画との異なる形状に基づく。この非対称形は、向かい合う軸受パートナーの回転方向に対して形成される。凹部の区画の形状は、四分円、少なくとも変形した円、または楕円による形状で、第1の凹部区画は第2の凹部区画と長さが異なり、底点は、微細な湾曲構造における、それぞれの最下の点または線を示す。この点または線が、第1の凹部区画から第2の凹部区画への分岐点を構成する。概して、微細な湾曲を形成する非対称の領域のデザインは、幾何学的にまたは数学的に、凹面形状、直線と多項式関数またはスプライン関数との組み合わせ、とりわけこれらの組み合わせとして規定することができる。
【0013】
さらなる改善のために、第1の凹部区画の長さは第2の凹部区画の長さより短いが、特に両方の区画が存在するためゼロよりは大きい。この長さは軸受パートナーの回転方向に対して決められる。第1の凹部区画の長さが第2の凹部区画の長さよりも短いときは、底点は回転方向に対して微細な湾曲の始点のより近くに設けられる。この結果、第1の凹部区画は底点に達するまで広がる(diverging)領域をもたらし、これに続く第2の凹部区画は底点の始点から軸受の基本面への微細な湾曲の終点まで収束する(converging)領域をもたらす。第2の凹部区画がくさび形の湾曲を形成し、このくさび効果はラジアル軸受の形状に固有のものである。このように、長い第2の凹部区画を使用することで、くさび効果は増大する。本発明では、微細な湾曲の使用により、微細な湾曲のない軸受と比較して、同じ油膜の厚みで負荷容量が増大し、あるいは特定の負荷容量での油膜の最小限の厚みが増大する。
【0014】
さらに、本発明の軸受をクランクドライブに用いたときに、流体動圧のピーク低減と、エンジンのパワーロスの低減がもたらされ、これは、より小さな流体力学的抵抗による流体摩擦の低減と、より小さな流体剪断応力によると考えられる。
【0015】
微細な湾曲でのくさび効果は、微細な湾曲内の流体通路によって説明される。各々の微細な湾曲において、第2の凹部区画とそれに続く軸受面との間には、段階的な容積の減少がある。この段階的な容積の減少は、微細な湾曲の最深部と、ジャーナルおよび/またはハウジングの主なまたは基本的な直径との間に生じる。流体は、第2の凹部区画からそれに続く軸受面への流れを制限され、大きな容積から小さな容積の領域に一定量の流体が引っ張られて、微細な湾曲の内部の流体圧力が増加する。
【0016】
後に続く軸受面により形成される領域は、流体力学的安定を作り出し、レイノルズ係数を低減させ、次の微細な湾曲への流体の流入が整えられる。
【0017】
本発明の微細な湾曲構造の他の実施例によると、前記軸受の面の下の前記底点の深さが、第1の凹部区画と第2の凹部区画との合計の長さの、少なくとも50分の1、好適には100分の1、より好適には200分の1、最も好適には500から1000分の1であることを特徴とする。微細な湾曲全体の長さと微細な湾曲の深さとの間をこのアスペクト比とすると、非常に平坦な形状の構造をもたらし、微細な湾曲により形成される溝の中では、潤滑剤の大きな凝集は回避され、潤滑剤の中に気泡は生じない。
【0018】
さらに他の実施例によると、前記軸受パートナーとの間に半径方向のクリアランスが設けられ、前記微細な湾曲構造の深さは、前記クリアランスの1%から50%であり、好適には2.5%から20%である。微細な湾曲構造の深さの有利な量は、とくにクリアランスの長さが約40μmのときは、約1μmから8μmであり、好適には4μmにすることができる。これは、微細な湾曲構造の深さは、クリアランスの値の約5%から20%であり、好適には10%にすることができることを意味する。
【0019】
さらに本発明の別の改良例は、前記複数の微細な湾曲構造の間の軸受の面によって形成され、当該軸受の面の長さが、前記第1および第2の凹部区画の合計の長さよりも、20%短いか長く、好適には10%短いか長く、または最も好適には前記第1および第2の凹部区画の合計の長さと同じであることを特徴とする。前記第1および第2の凹部区画の合計の長さは、例えば軸受パートナーの内径または外径が約69mmであるときは、約1mmから7mmであり、好適には2mmから5mmであり、最も好適には2.7mmである。したがって、中間の軸受の面の長さもまた、約2mmから5mmであり、好適には2.7mmである。
【0020】
本発明のさらに別の改良例によると、前記ラジアル軸受が、回転方向に垂直の軸方向の長さを具え、前記微細な湾曲構造が、前記ラジアル軸受の軸方向の長さよりも短い軸方向の幅を具えることを特徴とする。軸方向の長さは、軸方向で軸受パートナーと接する長さで測定される。したがって、微細な湾曲構造は軸受の軸方向の長さ全体にわたっては延在しておらず、微細な湾曲構造の脇の軸受の面は、全周にわたって連続的に形成されている。これは、微細な湾曲構造内に収容される潤滑剤が、軸方向に横から漏れることはなく、微細な湾曲構造内の潤滑剤の最大圧力が高い値で維持される、といったプラスの効果をもたらす。有利なことに、微細な湾曲構造は回転方向に対して垂直に横長に延びており、したがって微細な湾曲構造は軸受の軸方向に、すなわちシャフト軸に平行または同軸に延在する。
【0021】
本発明はまたクランクドライブ用の、特に内燃機関のクランクドライブ用のクランクシャフトにも関し、当該クランクシャフトが、クランクハウジング内で前記クランクシャフトを支持する、少なくとも1のラジアル軸受の内側の軸受パートナーと、連結ロッドを前記クランクシャフトに連結する、少なくとも1のラジアル軸受の内側の軸受パートナーと、を具え、これらの内側の軸受パートナーが軸受の外面を具えることを特徴とする。本発明によると、前記軸受の外面に複数の非対称形の微細な湾曲構造が設けられ、当該微細な湾曲構造は、前記軸受の外面と前記微細な湾曲構造の底点との間の第1の凹部区画と、前記底点と前記軸受の外面との間の第2の凹部区画とを有し、前記複数の微細な湾曲構造の間には前記軸受の外面の部分が設けられていることを特徴とする。クランクドライブに関連して開示されている上述の特徴と利点はまた、本書でクランクシャフトの開示においても組み込まれる。
【0022】
さらに、本発明はまた、クランクドライブまたはクランクシャフト、少なくとも1の連結ロッド、および/または少なくとも1のピストン、特に内燃機関のクランクドライブに用いられるラジアル軸受において、前記軸受が、クランクハウジング内で前記クランクシャフトを支持する少なくとも1のラジアル軸受を構成し、および/または、前記連結ロッドを前記クランクシャフトに連結する少なくとも1のラジアル軸受を構成し、および/または、前記連結ロッドを前記ピストンに連結する少なくとも1のラジアル軸受を構成し、これらの軸受が、軸受の内面および/または軸受の外面を具えることを特徴とする。本発明によると、これらの軸受の面の少なくとも一方に複数の非対称形の微細な湾曲構造が設けられ、当該微細な湾曲構造は、前記軸受の面と前記微細な湾曲構造の底点との間の第1の凹部区画と、前記底点と前記軸受の面との間の第2の凹部区画とを有し、前記複数の微細な湾曲構造の間には、前記軸受の面の部分が設けられていることを特徴とする。クランクドライブに関連して開示されている上記の特徴と利点はまた、本書で軸受自身の開示においても組み込まれる。
【0023】
上記の構成要素は、特許請求の範囲の構成要素や、本発明の示された実施例について用いられた構成要素と同様に、大きさ、形、材料の選択、および技術概念に関して特別な例外はなく、当分野で知られている選択基準を制限無く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のさらなる詳細、特徴、および利点は従属クレームに開示されている。図面とこれに続く詳細な説明は、好ましい実施例を、添付図とともに本発明にかかる主題の例示的な方法で示す。
【0025】
【
図1】
図1は、クランクシャフトと、連結ロッドと、ピストンとを有するクランクドライブの実施例を示す。
【
図2】
図2は、クランクドライブの部分の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、軸受の挿入面を形成する軸受要素の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、内側と外側の軸受パートナーを有する軸受の断面図を示す。
【
図5】
図5は、微細な湾曲構造と、これに向かい合う軸受パートナーとの詳細図を示す。
【
図6】
図6は、巻かれずに延在している状態の軸受パートナーの微細な湾曲構造の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、クランクシャフト10と、連結ロッド11と、ピストン12とを具えるクランクドライブ1の実施例を示し、連結ロッド11とピストン12は単に例示的な方法で1の形態を示されており、クランクドライブ1は複数の連結ロッド11とピストン12とを具えてもよい。クランクシャフト10はシャフト軸30で回転することができ、クランクジャーナル32の突出位置で、連結ロッド11はクランクシャフト10に連結され、ピストン12は往復運動方向34内で上下に往復して動くことができる。
【0027】
連結ロッド11はラジアル軸受15によってクランクジャーナル32に連結され、ピストン12は、ラジアル軸受16を用いてピストンピン33によって連結ロッド11に連結されている。クランクシャフト10をクランクハウジング14内でシャフト軸10に回転可能に支持するため、いくつかのラジアル軸受13が設けられているが、図示されている軸受13の数は1のみである。
【0028】
各軸受13、15、および16が、少なくとも1の軸受の面に微細な湾曲構造を具え、この構造は以降の図により具体的に示されている。
【0029】
図2はクランクシャフト10の一部の斜視図を示す。クランクハウジング14内でクランクシャフト10を支持するためのラジアル軸受13のうちの2つが図示され、さらにクランクジャーナル32は、シャフト軸30から離れて突出した位置で示されている。各々の軸受13と15は、複数の微細な湾曲構造19を軸受の外面18に具えており、向かい合う軸受パートナーは図示されていない。
【0030】
図3は、軸受挿入面を形成する1対の軸受要素29を図示し、これは例えば、クランクシャフト10と連結ロッド11の大端部との間や、クランクシャフトとクランクハウジング14との間に適用することができる。軸受の内面17に複数の微細な湾曲構造19が適用され、例えば向かい合う軸受パートナーは、ラジアル軸受13またはラジアル軸受15で表すことができるが、軸受の1の面のみが微細な湾曲構造19を具えてもよい。
【0031】
図4は、
図1に示す断面線A−Aに沿った断面図を示す。この断面図は、例えばクランクシャフト10のラジアル軸受13を形成する内側の軸受パートナー24と、例えばクランクハウジング14を形成する外側の軸受パートナー25とを示す。
【0032】
内側の軸受パートナー24は外径d1を具え、外側の軸受パートナー25は内径d2を具え、内径d2は外径d1よりも大きい。したがって、内径d2と外径d1との間にクリアランスzが形成され、クリアランスzは例えば油などの潤滑剤で満たされる空間を形成する。
【0033】
内側の軸受パートナー24の軸受の外面18は円形状を形成し、外側の軸受パートナー25の軸受の内面17は、複数の微細な湾曲構造19を具え、これは
図5および
図6でより具体的に示される。
【0034】
図5は、内側の軸受パートナー24と、外側の軸受パートナー25とを平らにした断面図を示し、内側の軸受パートナー24の軸受の外面18に微細な湾曲構造19が施されている。向かい合う軸受パートナー25は、内側の軸受パートナー24に対して回転方向23に動く。軸受パートナー24と25の間は、クリアランスzを形成する潤滑剤の隙間31が形成されている。別の実施例によると、微細な湾曲構造19を具える軸受パートナーは、
図4に示すように外側の軸受パートナー25にも形成することができる。
【0035】
軸受の外面18の微細な湾曲構造19は、回転方向23に対して非対称形であり、微細な湾曲構造19は、軸受の面18と湾曲構造19の底点21との間の第1の凹部区画20と、底点21と軸受の面18との間の第2の凹部区画22とを具える。複数の微細な湾曲構造19の間には、長さL3を有する軸受の面18の部分が設けられている。第1の凹部区画20の長さはL1で示され、第2の凹部区画22の長さはL2で示されている。
【0036】
凹部区画20は、軸受の面18から下に底点21まで広がり(diverge)、第2の凹部区画22は、底点21から上にクリアランスzに対する軸受の面18へと収束(converge)する。凹部区画20および22は、円形、または回転方向23に長く延びる長円形の形状を有する。底点21は、第1の凹形状20とこれに続く第2の凹形状22との間の分岐点を構成する。第1の凹部区画20の長さL1は、第2の凹部区画22の長さL2よりも短い。複数の微細な湾曲構造19の間の軸受の面18の長さL3は、微細な湾曲構造19の全体の長さL1+L2よりも短く図示されており、別の好適な実施例では、L1+L2=L3の等式を満たしてもよい。微細な湾曲構造19の深さ26は、第1および第2の凹部区画L1およびL2の合計の長さの、少なくとも50分の1、好適には100分の1、より好適には200分の1、最も好適には500から1000分の1の長さにすることができる。このように、図面は、実際には非常に小さい深さ26を有する微細な湾曲構造19の本当のスケールを示してはいない。
【0037】
最後に
図6は、内側の軸受パートナー24または外側の軸受パートナー25が、軸受の内面17または軸受の外面18を有する別の実施例が示されており、説明のために平面状に展開されている。他方の向かい合う軸受パートナーの回転方向23が矢印により示されている。この斜視図の軸受パートナー24または25は、軸方向の幅28を有する3つの微細な湾曲構造19を示し、この軸方向の幅28は、軸受パートナー24、25の軸方向の長さ27よりも短い。これは、微細な湾曲構造19に収容される油が、軸方向に横から漏れることがなく、微細な湾曲構造19内の油の最大圧力が高い値で維持される、といったプラスの効果をもたらす。
【0038】
本発明は上記の実施例に制限されるものではなく、これは例示のみとして示されており、添付された特許請求の範囲によって規定された保護範囲内において、様々な方法で変更することができる。
【0039】
1 クランクドライブ
10 クランクシャフト
11 連結ロッド
12 ピストン
13 ラジアル軸受
14 クランクハウジング
15 ラジアル軸受
16 ラジアル軸受
17 軸受の内面
18 軸受の外面
19 微細な湾曲構造
20 第1の凹部区画
21 底点
22 第2の凹部区画
23 回転方向
24 内側の軸受パートナー
25 外側の軸受パートナー
26 深さ
27 軸方向の長さ
28 軸方向の幅
29 軸受要素
30 シャフト軸
31 潤滑剤の隙間
32 クランクジャーナル
33 ピストンピン
34 往復運動方向
L1 第1の凹部区画の長さ
L2 第2の凹部区画の長さ
L3 軸受の面の長さ
d1 外径
d2 内径
z クリアランス
【国際調査報告】