(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-525904(P2015-525904A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】外科訓練のための模擬ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20150811BHJP
A61B 17/072 20060101ALI20150811BHJP
A61B 17/3211 20060101ALI20150811BHJP
A61B 18/04 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
A61B17/10 310
A61B17/32 310
A61B17/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-525637(P2015-525637)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月27日
(86)【国際出願番号】US2013053497
(87)【国際公開番号】WO2014022815
(87)【国際公開日】20140206
(31)【優先権主張番号】61/679,494
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC23
4C160CC32
4C160DD02
4C160FF01
4C160KK04
4C160KK47
4C160NN02
(57)【要約】
【課題】外科ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮器具および処置の使用に際して練習者を訓練するための安価で実用的な外科訓練システムを提供する。
【解決手段】外科訓練システムは、固定アンビルと、模擬組織構造上で閉鎖されるように寸法決めされ、構成された対向した可動ジョーとを有するリニア外科ステープリング装置のような変更または模擬外科器具を含む。しるし付けまたはインク付け要素が、ステープリング装置と関連しており、ジョーとアンビルの間に配置された模擬組織の面上に所定の可視的なパターンを付けるように構成されている。外科閉塞を模するためにアンビルとジョーの間での圧縮時に賦活される感圧接着材或いはその他の接着材が、模擬組織の内面と関連している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科訓練システムであって、該外科訓練システムは、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造と、
第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具と、を含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されており、前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有し、前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されており、前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されており、前記外科訓練器具は、前記模擬組織構造に切断線を形成するために前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造の少なくとも一部を切断するように構成されたブレードを有し、
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方は、前記開放位置から前記閉鎖位置で前記模擬組織構造に接触するように移動されるときに、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された模擬組織構造の一部上にしるしを付けるように構成されたしるし付け要素を含む、ことを特徴とする外科訓練システム。
【請求項2】
前記しるしは、前記切断線の両側の外科ステープルの少なくとも1つの列に似ている、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項3】
前記しるし付け要素は、しるし付け配合物を担持し、前記模擬組織構造の前記外面に接触したときに所定のパターンで前記しるし付け配合物を放出するように構成された面を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項4】
前記しるし付け要素は、前記第1のジョーまたは前記第2のジョーを受け入れるように構成された管腔を有するスリーブ状構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項5】
前記しるし付け要素は、インク、染料、或いはその他のしるし付け配合物を収容している、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項6】
容器をさらに含み、該容器は、インク付け要素を収容する第1の部分と、前記インク付け要素への処理すべき面の提供を容易にする好適な配向で前記外科訓練器具を受け入れるように構成された第2の部分と、該容器をシールするように構成された第3の部分と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項7】
前記模擬組織構造の前記第1の内面および前記第2の内面の少なくとも一方は、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間で模擬組織構造が圧縮されるときに前記第1の内面を前記第2の内面に接着するように構成された接着材を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項8】
前記接着材は、感圧接着材、両面テープ、または触圧接着材 である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項9】
前記しるしは、前記しるし付け要素から模擬組織構造の前記外面に転写されるインク、染料、またはその他のしるし付け配合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項10】
前記しるしは、3次元表面模様またはエンボス加工部である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項11】
前記第1の内面および前記第2の内面の少なくとも一方上に接着材をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練システム。
【請求項12】
外科訓練システムであって、該外科訓練システムは、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造と、
第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具と、を含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されており、前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有し、前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されており、前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されており、前記外科訓練器具は、前記模擬組織構造に切断線を形成するために前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造の少なくとも一部を切断するように構成されたブレードを有し、
前記第1の内面の一部が、模擬組織構造に、幅と長さを有する所定の経路を形成するように前記第2の内面の一部に接合される、ことを特徴とする外科訓練システム。
【請求項13】
前記模擬組織構造は、管腔を備え、前記所定の経路は、前記管腔を2つの管腔部分に分割する、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練システム。
【請求項14】
前記第1の内面の前記一部は、前記所定の経路を形成するように前記第2の内面の一部に接着材で接合される、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練システム。
【請求項15】
前記模擬組織構造は、胃に似るように構成されており、前記所定の経路は、前記胃を2つの腔に分割する、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練システム。
【請求項16】
外科訓練方法であって、該外科訓練方法は、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造であって、前記第1の内面の一部が、模擬組織構造に、幅と長さを有する所定の経路を形成するように前記第2の内面の一部に接合される、模擬組織構造を準備する段階と、
ブレードを有する外科訓練器具を準備する段階と、
前記所定の経路の幅内に前記外科訓練器具の前記ブレードを配置する段階と、
前記所定の経路の幅内で前記長さに沿って前記外科訓練装置で前記模擬組織構造を切断する段階と、を含む、ことを特徴とする外科訓練方法。
【請求項17】
シミュレータまたは腹腔鏡訓練器を準備する段階と、
前記シミュレータまたは前記腹腔鏡訓練器内に前記模擬組織構造を配置する段階と、を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の外科訓練方法。
【請求項18】
前記外科訓練器具で前記模擬外科構造の外面にしるしで跡を付ける段階をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の外科訓練方法。
【請求項19】
外科訓練システムであって、該外科訓練システムは、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造と、
第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具と、を含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されており、前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有し、前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されており、前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されており、
前記第1の内面および前記第2の内面の少なくとも一方は、接着材を含み、前記模擬組織構造は、該模擬組織構造の外科閉塞を模擬訓練するために、前記前記接着材の位置で前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に位置決めされた前記模擬組織構造上の前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの前記閉鎖位置が、前記第1の内面と前記第2の内面を互いに圧縮し、それによって、前記第1の内面の一部を前記第2の面の一部に接着するように構成されている、ことを特徴とする外科訓練システム。
【請求項20】
前記外科訓練器具は、前記模擬組織構造に切断線を形成するために前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造の少なくとも一部を切断するように構成されたブレードを有する、ことを特徴とする請求項19に記載の外科訓練システム。
【請求項21】
前記模擬組織構造は、管腔を含み、前記第1の内面および前記第2の内面は、前記管腔の内面上に位置している、ことを特徴とする請求項19に記載の外科訓練システム。
【請求項22】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョー模擬組織の少なくとも一方は、しるし付け要素を含み、前記しるし付け要素は、開放位置から閉鎖位置に前記模擬組織構造に接触するように移動されるときに、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造の外面の一部上にしるしを付けるように構成されている、ことを特徴とする請求項19に記載の外科訓練システム。
【請求項23】
前記接着材は、触圧接着材、感圧接着材、または両面テープ である、ことを特徴とする請求項19に記載の外科訓練システム。
【請求項24】
外科訓練方法であって、該外科訓練方法は、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造であって、前記第1の内面および前記第2の内面の少なくとも一方の一領域が、接着材を含む、模擬組織構造を準備する段階と、
第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具であって、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されており、前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有し、前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されており、前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されている、外科訓練器具を準備する段階と、
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記開放位置にあるときに、前記外科訓練器具の前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に、接着材を含む前記第1の内面および前記第2の内面の前記少なくとも一方の前記一領域を配置する段階と、
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを、前記開放位置から前記閉鎖位置に接着材を含む前記一領域上に移動させる段階と、
接着材を含む前記一領域において、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間で前記模擬組織構造を圧縮する段階と、
前記第1のジョーと前記第2のジョーの間で前記模擬組織構造を圧縮することによって前記第1の内面を前記第2の内面に接着する段階と、
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを、前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させる段階と、を含む、ことを特徴とする外科訓練方法。
【請求項25】
前記模擬組織構造に切断線を形成するために前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置される前記模擬組織構造の少なくとも一部を切断するように構成されたブレードを有する外科訓練器具を準備する段階と、
接着材を含む前記一領域で、第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造を前記外科訓練器具で切断する段階と、をさらに含む、ことを特徴とする請求項24に記載の外科訓練方法。
【請求項26】
模擬訓練器または腹腔鏡訓練器を準備する段階と、
前記模擬訓練器または腹腔鏡訓練器内に前記模擬組織構造を配置する段階と、を含む、ことを特徴とする請求項24に記載の外科訓練方法。
【請求項27】
前記模擬組織構造の前記外面に前記外科訓練器具でしるしを付ける段階をさらに含む、ことを特徴とする請求項24に記載の外科訓練方法。
【請求項28】
内面を有する対象組織と、
固定アンビルと、前記対象組織上で閉鎖されるように寸法決めされ、構成された対向した可動ジョーと、を有する変更または模擬リニア外科ステープリング装置と、
前記アンビルおよびジョー内で前記対象組織の面上に可視的なパターンを付けるように構成された前記模擬リニア外科ステープリング装置の前記アンビルおよびジョーと関連したしるし付けまたはインク付け要素と、
前記対象組織の前記内面と関連した感圧接着材と、を含む、ことを特徴とする外科訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスレファレンス
本願は、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる2012年8月3日に出願された「外科訓練のための模擬ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮」と題する米国仮特許出願第61/679494号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、使用者に、生の外科処置に実在する状況を模した視覚的、触覚的、および技術的道具立て(properties)を提供する医療訓練および模擬システムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかのタイプの外科装置が、切開中或いは切開後、出血または漏れを制御するために組織を切断し、または閉塞するのに一般に使用される。これらには、外科ステープラ、電気外科結紮器、電気焼灼器具、ブレード、フック、ハサミ、およびハーモニックスカルペルのような高周波振動結紮器が含まれる。
【0004】
特に、リニア外科ステープラは、大変有用であり、普及している。リニア外科ステープラは、一般的には、アンビルを含み、このアンビルに向けて、対向配置されたカートリッジからステープルが発射される。組織が、ジョー状アンビルとカートリッジの間の間隙に捕獲される。千鳥状に平行列に配置された複数のステープルが組織内へ発射され、ブレードが作動して2組のステープル列の間の組織を切断する。一般的に、ステープラは、1回発射装置であり、使用中にステープルカートリッジを再装填しなければならない。たいていの外科処置は、多数のカートリッジの使用を必要とする。ステープラは、新しいステープルカートリッジが所定位置にあるときにだけ作動するように設計されており、新しいステープルカートリッジが存在しない場合にはブレードの作動を防止する安全ロックを有している。個々のステープルカートリッジは高価である。費用は、実際の手術に使用されるためには正当化されるが、訓練または練習の場合には禁止的である。
【0005】
エネルギーに基づく外科器具の例には、電気外科ブレード、プローブ、ハサミ、グラスパー(grasper)、切開器、電気焼灼器具等がある。一般的には、電気外科手術は、交流電源に接続された電気外科発電機、および、1つまたはそれ以上の電極を含む器具を使用して行われる。電圧は発電機によって提供され、高周波電流が、組織を切断し、凝固させ、乾燥させ、或いは、破壊するための手段として、器具またはハンドピースを通して生物学的組織に送出される。電流が送出されるとき、電流は組織を通過し、組織を加熱して所望の臨床効果を創出する。別の例として、電流は、器具を加熱するのに使用され、電気焼灼のように、加熱された器具が組織に適用されるときに臨床効果が実現される。さらには、多くの処置が、超音波装置としても知られている高周波音に基づくエネルギー装置を使用する。これらのまたは他のエネルギーに基づく器具は、有利には、外科医に、正確でかつほとんど労力のいらない切断や、血液損失を制限するほとんど瞬時の熱止血を伴う組織の切断を行う能力を提供する。かかる器具は、外科コミュニティ内では標準となり、種々の処置で標準的に使用されている。
【0006】
電気外科および他のエネルギーに基づく器具および処置の効果の故に、エネルギーに基づく器具および処置の使用において臨床家を訓練することは重要である。既存の訓練または模擬モジュールの多くは、動物または解剖用死体からの生の組織を使用する。実際の生の組織は、高価であり、入手が難しいことがあり、冷凍を使用した保存を必要とし、焼灼されるときに煙流と臭気を発する。実際の組織では、接地板が電気外科発電機に取り付けられ、接地板は、電流が組織内により深く侵入するように患者の下に置かれる。一般的に、実際の組織を使用した電気外科技術の練習は、付加的な安全に対する考慮を必要とする。エネルギーに基づく結紮の場合には、装置は、導電性組織上でのみ作動するように設計されるので、訓練または練習プログラムにおいて生の組織または解剖用死体を使用することは必ずしも実用的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、外科ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮のような切断および閉塞処置の使用において操作者を訓練する安価で実用的な方法を提供する必要性が存在する。また、人工エラストマー組織モデル上で使用されるときに、ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮をまねた外科訓練器具を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点によれば、外科ステープリングおよびエネルギーに基づく結紮処置の使用に際して操作者を訓練するための安価で実用的な外科訓練システムが提供される。この外科訓練システムは、固定アンビルと、対象組織上で閉鎖されるように寸法決めされ、構成された対向した可動ジョーと、を有する変更または模擬リニア外科ステープリング装置を含む。しるし付けまたはインク付け要素が、前記模擬リニア外科ステープリング装置の前記アンビルおよびジョーと関連しており、アンビルおよびジョー内で対象組織の面上に可視的なパターンを付けるように構成されている。外科閉塞を模するためにアンビルとジョーの間での圧縮時に賦活される感圧接着材或いはその他の接着材が、模擬組織の内面と関連している。
【0009】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練システムが提供される。この外科訓練システムは、外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造を含む。この外科訓練システムは、第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具をさらに含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されている。前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有する。前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されている。前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されている。前記外科訓練器具は、前記模擬組織構造に切断線を形成するために前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された前記模擬組織構造の少なくとも一部を切断するように構成されたブレードを有する。前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方は、前記開放位置から前記閉鎖位置で前記模擬組織構造に接触するように移動されるときに、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に配置された模擬組織構造の一部上にしるしを付けるように構成されたしるし付け要素を含む。
【0010】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練システムが提供される。この外科訓練システムは、外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造を含む。この外科訓練システムは、第1のジョーおよび第2のジョーを有する外科訓練器具をさらに含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されている。前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有する。前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されている。前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されている。前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方は、接着材を含み、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方から分離されている。前記模擬組織構造は、該模擬組織構造の外科閉塞を模するために、前記前記接着材の位置で前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に位置決めされた前記模擬組織構造上の前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの前記閉鎖位置が、前記第1の内面と前記第2の内面を互いに圧縮し、それによって、前記第1の内面の一部を前記第2の面の一部に接着するように構成されている。
【0011】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練方法が提供される。この外科訓練方法は、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造を準備する段階を含む。前記第1の内面の一部が、模擬組織構造に、所定の経路を形成するように前記第2の内面の一部に接合される。この所定の経路は、幅と長さを有する。この外科訓練方法は、ブレードを有する外科訓練器具を準備する段階を含む。前記外科訓練器具の前記ブレードを、前記所定の経路の幅内に前記外科訓練器具のブレードを配置する。前記所定の経路の幅内で前記長さに沿って前記外科訓練装置で前記模擬組織構造を切断する。
【0012】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練方法が提供される。この外科訓練方法は、
外面と、第1の内面と、該第1の内面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面した第2の内面とを含む模擬組織構造を準備する段階を含む。前記第1の内面および前記第2の内面の少なくとも一方の一領域が、接着材を含む。外科訓練器具を準備する。この外科訓練器具は、第1のジョーおよび第2のジョーを有し、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方が、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの他方に対して開放位置と閉鎖位置との間で移動可能であるように細長いシャフトに連結されている。前記第1のジョーは第1の対向面を有し、前記第2のジョーは第2の対向面を有する。前記細長いシャフトは、前記外科訓練器具の近位端でハンドルに連結されている。前記ハンドルは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの少なくとも一方を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するように構成されている。前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記開放位置にあるときに、前記外科訓練器具の前記第1のジョーと前記第2のジョーの間に、接着材を含む前記第1の内面および前記第2の内面の前記少なくとも一方の前記一領域を配置する。前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを、前記開放位置から前記閉鎖位置に接着材を含む前記一領域上に移動させる。接着材を含む前記一領域において、前記第1のジョーと前記第2のジョーの間で前記模擬組織構造を圧縮する。前記第1のジョーと前記第2のジョーの間で前記模擬組織構造を圧縮することによって、前記第1の内面を前記第2の内面に接着する。前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを、前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるジョーが閉鎖配向にある外科訓練器具の平面斜視図である。
【
図2】本発明によるジョーが開放配向にある外科訓練器具の平面斜視図である。
【
図3】本発明によるジョーが閉鎖配向にある外科訓練器具の平面部分斜視図である。
【
図4】本発明によるジョーが開放配向にある外科訓練器具の平面部分斜視図である。
【
図5】本発明による2つのしるし付け要素を備え、ジョーが開放配向にある外科訓練器具の平面部分斜視図である。
【
図6】発明による開放配向にあるジョー上に置かれた2つのしるし付け要素を備えた本外科訓練器具の平面部分斜視図である。
【
図7】本発明による接着材を備えた模擬組織構造の横断面図である。
【
図8】本発明による圧縮構成にある模擬組織構造の横断面図である。
【
図9】本発明による開放構成にある模擬組織構造および外科訓練器具の横断面図である。
【
図10】本発明による閉鎖構成にある外科訓練器具内で圧縮された模擬組織構造の横断面図である。
【
図11】本発明による圧縮された模擬組織構造および開放構成にある外科訓練器具の横断面図である。
【
図12】本発明による病変部の一方の側に位置決めされた外科訓練器具のジョーの間の模擬組織構造の平面斜視図である。
【
図13】本発明による病変部の一方の側で切断された模擬組織構造および病変部のもう一方の側に位置決めされた外科訓練器具のジョーの平面斜視図である。
【
図14】本発明による外科訓練器具および模擬組織構造と共に使用される腹腔鏡訓練器の平面斜視図である。
【
図15】本発明による外科訓練器具で切断された後のシールされた、一方の端にしるしを備えた模擬組織構造の平面斜視図である。
【
図16】本発明による接着材が塗布される模擬組織構造の平面斜視図である。
【
図17】本発明による接着材が塗布される模擬組織構造の平面斜視図である。
【
図18】本発明による所定の通路を備えた模擬組織構造の平面斜視図である。
【
図19】本発明による模擬組織構造上に位置決めされた外科訓練器具の斜視図である。
【
図20】本発明による切断部およびしるしを備えた模擬組織構造の斜視図である。
【
図21】本発明による予め形成された切断部の前方の模擬組織構造上に配置された外科訓練器具の斜視図である。
【
図22】本発明によるより長い切断部およびしるしを備えた模擬組織構造の斜視図である。
【
図23】本発明による予め形成された切断部の前方の模擬組織構造上に配置された外科訓練器具の斜視図である。
【
図24】本発明によるしるしを備えた切断された模擬組織構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2を参照すると、本発明による外科訓練器具(simulated surgical training instrument)10が示されている。外科訓練器具は、近位端に設けられたハンドル12と、遠位端に設けられた2つの細長いジョー状部材、すなわち、上側ジョー14および下側ジョー16とを含むリニア外科ステープラ10である。細長いシャフト18が、ハンドル12と、ジョー14、16との間で延びている。細長いシャフト18は、アクチュエータシャフト(図示せず)を収容しており、このアクチュエータシャフトは、トリガー20の移動により細長いシャフト18内でアクチュエータシャフトが遠位方向および近位方向に移動されるように近位端でハウジング12にギアにより機械的に連結されている。かかるアクチュエータシャフトの前後の移動により、アクチュエータシャフトの遠位端が、ジョー状部材14、16の一方に設けられた長手方向スロット22に出入りすることが可能になる。長手方向スロット22は、上側ジョー14にあるように示されており、アクチュエータシャフトの遠位端を長手方向スロット22内へ前進させることにより、上側ジョー14は、下側ジョー16に対して閉鎖配向へ関節運動される。長手方向スロット22は、T字形を有する。トリガー20を解放すると、アクチュエータシャフトは、長手方向スロット22から引っ込められて、上側ジョー14を開放させる。上側ジョー14は、ばねにより開放位置に付勢される。使用者は、ジョー14、16が閉じられて所望の位置で模擬組織を捕獲するまで、トリガー20を引いたり、解放したりすることによってジョー14,16を閉じたり、開いたりすることができる。ジョー14、16が閉鎖配向にあるときに、レバー24を前進させると、アクチュエータシャフトは長手方向スロット22に沿ってジョー14、16の遠位端まで押される。下側ジョー16には、相補的な長手方向スロット26が形成されており、アクチュエータシャフトの遠位端は、長さに沿ってジョー14、16の長手方向スロット22、26内で摺動する。下側ジョー16の長手方向スロット26は、T字形である。ジョー14、16が閉鎖された状態で、長手方向スロット22、26は、アクチュエータシャフトの遠位端のI字形ビームと形状が相補的なI字形を形成する。この形状は、ジョー14、16を閉鎖構成に維持するのを助ける。アクチュエータシャフトの遠位端は、アクチュエータシャフトが遠位方向に移動されるときにジョー14、16の長手方向軸線に沿って模擬組織を切断する切断要素すなわちブレード(図示せず)を含む。1つの変形例では、レバー24を遠位方向に押してブレードを作動させる代わりに、トリガー20は、トリガー20が障害なしにずっと近位方向に引かれることができるように、安全ボタンを解放した後にアクチュエータを遠位方向に移動させるように構成されている。レバー24は、レバー24を近位方向に引くことによってブレードを引っ込めるのにも使用される。
【0015】
次に、
図3−4を参照すると、模擬リニアステープラ10、またはエネルギーに基づく模擬結紮ツールのような外科訓練器具10に切断要素すなわちブレートを組み込むための別の変形例が示されている。
図3−4の模擬ツールまたはステープラ28は、
図1−2に示されたジョー14、16と同様な可動ジョー30、32を含む。対向ジョー30、32の各々は、それぞれ、対向面34、36を含む。これらの対向面34、36は平らであり、ジョー30、32が閉鎖配向にあるときに、ジョー30、32の間に捕獲された模擬組織材料上に共に圧縮力を提供する。切断要素38が、ジョー30、32の一方に含まれており、
図4では、下側ジョー32と関連するように示されている。切断要素38は、模擬組織材料を十分に切断することができるブレードまたは他の突出部である。切断要素38は、対向面36から上方に突出し、下側ジョー32の中央線に沿って長手方向に延びている。切断要素38の真向いの上側ジョー30の対向面34にスロット40が含まれている。スロット40は、上側ジョー30の中央線に沿って長手方向に延びており、切断要素38の少なくとも一部を受け入れるように寸法決めされ、構成されている。切断要素38およびスロット40は、ジョー30、32の間で圧縮された材料が、ジョー30、32を圧縮または閉鎖したときに切断されるように構成されている。ハンドルとアクチュエータを含むツール28の近位端は
図3−4に示されていないが、
図1−2に関して説明されている。ジョーを開閉させ、ジョー14、16内に捕獲された模擬組織材料を係止し、切断するための当業者に知られた他の変形例は、本発明の範囲内にある。
【0016】
再び
図1−2を参照し、また、続けて
図3−4を参照すると、ジョー状部材14、16、30、32は、互いに対して関節運動して開閉し、ジョー状部材14、16、30、32の間に模擬組織材料のような材料を捕獲する。使用者は、ハンドル12から装置10を制御してジョー状部材14、16、30、32を開閉し、全体的に、装置10を操作し、制御する。実際の外科ステープラでは、ジョー部材の一方は、2列またはそれ以上の列に配置されたステープルを収容する使い捨てカートリッジを担持している。ジョー部材の他方は、アンビルを含み、このアンビルに向けて、ステープルを駆動してステープル脚を変形させる。ステープルは、カートリッジから各々のステープルを個々に押し出す複数の横方向に位置決めされたプッシャに向けて長手方向に移動するカム面またはスライダによってカートリッジの外へ駆動される。外科ステープラは、代表的には、2列またはそれ以上の列の送出されたステープルの間の組織を切断するようにカム面に従うブレードを含む。
【0017】
本発明では、ステープルカートリッジが高価であるために、リニアステープラの形態の外科訓練器具は、ステープルを担持していない。代わりに、上側ジョー14は、実際のステープラのアンビル面に似せた平らな対向面15を含む。実際のリニア外科ステープラでは、アンビル面は、ステープルカートリッジの開口から出るステープルを正しく変形させるように構成されている。下側ジョー16は、ステープルカートリッジに似た平らな対向面17を含み、ステープルを備えない実際のリニアステープラからの本物のステープルカートリッジを含んでもよい。本発明の外科訓練器具はすべて訓練目的に適合した変更(modified)または模擬(simulated)外科器具である。下側ジョー16の平らな対向面17は、上側ジョー14の対向面15の向かい側にある。上側ジョー14の対向面15は、複数のステープルポケットを有するアンビル面の多数の列の外観および位置を複製する(replicate)ようにしるし付け(marked)、表面模様付け(textured)、或いはエンボス加工(embossed)されている。対向面15には、凹状くぼみを備える複製ステープルポケットが設けられている。1つの変形例では、模擬組織構造の1つまたはそれ以上の側上にステープル配備の本物のようなしるしを創出するために、インクまたはその他のしるし(markings)を持ち上げかつ/または担持し、かつ転写するように構成された凸状突起を備える。実際のステープルカートリッジは、複数のステープルを収容し、下側ジョーの対向面に出口開口を含む。本発明の模擬ステープラでは、下側ジョー16の対向面17は、ステープルを排出し、カートリッジからの出口を形成する開口を複製した小さな開口を含む。別の変形例では、対向面17は、実際のステープル出口開口の位置に、模擬組織構造の他方の側にしるしを付与するように構成された持ち上げ部分を含み、そのため、インク或いはその他のしるし付け配合物(marking compound)を持ち上げかつ/または担持し、かつ転写するように構成されている。代表的には、長手方向スロット26の両側の下側ジョーの対向面17に、開口の形態または突出部の形態であれ、1つまたはそれ以上の列の複製出口開口42が設けられている。
図2、
図5、および
図6では、長手方向スロット26の両側に、3列の複製出口開口42が示されている。一般的には、模写出口開口42の列は、隣接した列に対して千鳥状に配置されている。上側ジョー14の対向面15は、
図5で見える複製(replicated)アンビルポケット44を含む。複製アンビルポケット44は、上側ジョー14の長手方向スロット22の両側で少なくとも1列に配置されている。代表的には、複製アンビルポケット44は、模写出口開口42の真向いに整合されており、隣接した列に対して千鳥状に配置される列に形成さいる。
図5では、長手方向スロット22の両側に3列の複製アンビルポケット44が示されている。対向面15、17の少なくとも一方は、表面模様またはエンボス加工部を含み、この表面模様またはエンボス加工部は、複製出口開口42および/または複製アンビルポケット44の位置の表面模様またはエンボス加工部が、平らな対向面15、17から持ち上げられ、または、くぼませられるように、プラスチック、金属、ゴム、或いはその他の材料で形成されている。
【0018】
閉鎖されたときに、上側対向面15および下側対向面17は、ジョー14、16、30、32の間で、材料、代表的には、シリコーン、熱可塑性エラストマー、或いはその他の材料のような組織を模した材料を圧縮するように構成されている。対向面15、17の1つまたはそれ以上の上の表面模様またはエンボス加工部は、模擬組織材料に、使用者に見える模擬組織材料内に送出された実際のステープル列をまねた3次元の跡を残す。さらに、これらの持ち上げ位置は、転写可能な色を有するインク、染料、或いはその他の材料或いはしるし付け配合物を備えてもよい。上側および下側ジョー14、16、30、32のそれぞれの対向面15、17、34、36の少なくとも1つは、模擬組織材料と接触する前に、インク付けパッド上に圧縮されるのがよい。この動作により、しるし付け要素を含む表面模様付き面15、17、34、36上にしるし付け流体、インク、染料、ペースト、或いは粉末が付着され、ジョー14、16、30、32が模擬組織材料上に閉鎖されるときに、しるしは、模擬組織材料に転写されて、本物のステープルのような跡を残す。インクパッドが、染料、インク、或いはその他のしるし付け配合物用の担持器(carrier)を収容するジョー14、16、30、32の少なくとも1つの内部に一体的に形成されてもよい。例えば、担持器は、インクカートリッジ、スポンジ、或いはインク付けパッドであってよい。しるし付け要素は、
図5−6に示されたものに限定されず、外科訓練器具と一体的な、或いは一体的でない、しるし付け配合物を担持し、模擬組織構造の外面と接触したときに所定のパターンでしるし付け配合物を放出するように構成された任意の面であってよい。エンボス加工部は、模擬組織材料上に3次元の跡を残すだろうけれども、本発明は、そのように限定されず、エンボス加工部、特に、いずれかの、或いは両方の対向面15、17、34、36の持ち上げ部分は、模擬組織材料を物理的に変形させることなく、2次元のインク或いはその他のしるし付け配合物の付着物を模擬組織材料上に残すように構成されている。もちろん、模擬組織材料の外面上の3次元のしるしおよび色つき跡、染料転写物等が本発明の範囲内である。
【0019】
本発明のもう1つの観点によれば、インク付けパッドまたはスポンジが提供される。このインク付けパッドまたはスポンジは、外科訓練器具10を受け入れ、差し向けるように寸法決めされ、構成された不透過性容器内に収容される。この不透過性容器は、パッドまたはスポンジのようなインク付け要素を収容する第1の部分を含む。容器の第2の部分が、インク付け要素への処理すべき面の提供を容易にする好適な配向で器具を受け入れるように構成されている。第3の部分が、容器が使用されていないときに容器をシールする。第1の部分は、第2の部分に比べて概して拡大されており、インク付け要素が平らな配向で保持されるようにほぼ平らである。第2の部分は、第2の部分内に挿入された器具が、インク付けすべき表面がインク付け要素の平らな整合した状態でインク付け要素に接近するように構成されている。第2の部分は、挿入される外科訓練器具が、しるし付け構造がインク付け要素への提供のためにわずかに分離された状態で挿入されるように構成されている。例えば、リニアステープラは、ジョーが開放したまたはわずかに開放した状態で第1の部分内に挿入され、それに続いて、インク付け要素がインク、染料、或いはその他のしるし付け配合物をジョーに転写するときにジョーが閉じるときに第1の部分内に移動される。両方のジョーをインク付けしようとする場合には、インクバッドまたはスポンジは、ジョーがインクパッド上に閉じられたときに、一方の面が第1のジョーに接触し、他方の面が第2のジョーに接触して、インクを両側に配置された2つの面から転写する両面パッドまたはスポンジである。第3の部分は、ジップロック(zip lock)、フックアンドループ型ファスナ、或いはその他の閉鎖要素のような任意の数の閉鎖要素である。キットが、少なくとも1つの外科訓練器具およびインクパッドを備える。キットはさらに、本発明による接着材を備える、或いは備えない少なくとも1つの模擬組織構造を備えてもよい。
【0020】
図5を参照すると、第1のしるし付け要素46が提供される。第1のしるし付け要素46は、下側ジョー16上を摺動するように形状決めされ、構成されている。第1のしるし付け要素46は、スリーブ状であり、下側ジョー16を受け入れる内側管腔48を有する。第1のしるし付け要素46は、第1のしるし付け要素46、上側ジョー14の対向面15、下側ジョー16の対向面17、或いは第2のインク付け要素54が使用される場合には、第2のインク付け要素54の第2の平らな面52上に配置された特定の領域を通してしるし付け配合物を排出する平らな面50を含む。第2のしるし付け要素54が、
図5に示されているような第1のしるし付け要素46と同じスリーブ状で管腔56を備え、上側ジョー14上で摺動し、上側ジョー14上に嵌合するように構成されている。第2のしるし付け要素54もまた、特定の領域を通して排出されるしるし付け配合物を備えてもよい。かかる特定の領域は、しるし付け要素54、下側ジョー16の対向面17、上側ジョー14の対向面15、或いは第1のしるし付け要素46が使用される場合には、第1のしるし付け要素46の平らな面50上に配置されてよい。ジョー14、16の少なくとも一方がしるし付け要素を備えるのは明らかである。
図6は、上側ジョー14および下側ジョー16上にそれぞれ配置された2つのしるし付け要素46、54を示している。しるし付け要素46、54は、実際の外科リニアステープラにおけるステープルカートリッジの交換の模擬訓練をするときには、取り外して、交換することができる。上述したように、組織のより大きな部分を切断するためには、多数のステープルカートリッジが必要になることがあり、続けて発射をするためには、使用済みのステープルカートリッジを取り外して、新しいステープルカートリッジに交換しなければならなくなる。本発明は、有利には、模擬外科ステープラ10を使用する練習者に、実際のリニア外科ステープラを使用する際に必要されるのと同じ動作を提供する。特に、ステープルカートリッジを模した下側ジョー16上に配置される第1のしるし付け要素46が、取り外され、交換されるしるし付け要素46となるであろう。1つの変形例では、そのしるし付け要素46は、インク担持要素となるであろう。しるし付け要素46、54は、赤或いはその他の色付きしるし付け配合物の使用を含めて、使用者に対して、手術部位の実際の結果を色、表面模様、および視覚的印象でまねた模擬組織または器官における視覚的印象を創出するように構成されている。
【0021】
本発明はさらに、リニアステープラ或いはその他の模擬ツール、結紮、閉塞、または切断器具10のような外科訓練器具10と共に機能するように構成された模擬組織材料および構造を含む。模擬組織材料および構造には、シリコーンのようなエラストマー材料、ビニル、ポリウレタン、或いはその他のポリマーでできた任意の隣接組織表面、身体導管、動脈、静脈、および中空器官が含まれる。隣接組織表面、身体導管、動脈、静脈、および中空器官のいくつかは、その他の材料を含んでもよく、或いは、ナイロン、ポリエステル、或いは綿等のようなその他の材料単独でできている。本発明の模擬組織構造の1つの変形例では、内側表面或いは内側表面の部分、または、導管、動脈、静脈、或いは中空器官のような模擬組織構造の隣接表面のような他の表面の部分に、感圧接着材、或いは触圧接着材のような接着材が供給され、または、塗布される。一般的には、模擬組織構造は、外面と、第1の内面と、第2の内面とを含む。第2の表面は、第1の表面に隣接しかつ少なくとも部分的に対面している。接着材は、第1の内面および第2の内面の少なくとも一方に接着されたままであり、他方の内面には接着されないままである。第1の内面と第2の内面の間の模擬組織構造の腔または間隙は、接着材を備える領域に作用されるまで閉じられない。特に、ジョーが、内面上の接着材領域の位置で外面上に閉鎖されるときに、接着材は、賦活されて、第1の内面を第2の内面に接着する。ジョーは内面を互いに合わせ、これらを圧縮し、圧縮および接着模擬外科閉塞位置で第1の表面を第2の表面に接着する。模擬組織構造が管腔を構成する場合には、第1の内面および第2の内面は管腔の内面上に位置する。
【0022】
外科訓練器具10、或いはその他の外科訓練ツールのジョー14、16が、所望の模擬組織位置上に配置され、ジョー14、16が模擬組織上に閉鎖されるときに、模擬組織は、対向面15、17の間で圧縮される。模擬組織または模擬組織構造の隣接対向面の少なくとも一部は、特に、模擬ツールの少なくとも所望の外科配置位置において、感圧接着材、両面テープ、または、触圧接着材のような接着材を備える。例えば、互いに対面する導管、動脈、静脈、および中空器官の内面、または内面の一部は、内面の少なくとも一方上で感圧接着材、両面テープ、または、触圧接着材のような接着材が供給され、または、塗布される。中空の模擬組織構造は、1つの内面と、向かい合うもう1つの内面とを含む。これらの内面の少なくとも一方に、これらの他方の面に取り付ける目的で接着材が塗布されている。使用において、中空の模擬外科組織が外科訓練装置10のジョー14、16の間で圧縮されるときに、リニア外科ステープラ、エネルギーに基づく結紮器具、或いはその他の外科装置によってステープリングされ、または溶接された組織で起こるように、接着材が供給された内面が強制的に閉塞されて、互いに接着される。別の例では、模擬組織構造は、接着に基づく要素ではなく、引き合う要素(attractive elements)を備える。引き合う要素の例には、模擬組織構造の壁に取り付けられるVELCRO(登録商標)のようなフックアンドループ型ファスナ、磁石等が含まれる。
【0023】
本発明で使用される接着材の例は、感受性粘着性面を作り出すロジン(rosin)或いはその他の粘着付与剤を含有するスチレンブロックコポリマ(SBC)である。他の代替材料は、圧縮されたときに自身でくっつくように配合された材料である。例えば、シリコーンゴムは、或る条件の圧力下で融着するように配合することができる。追加的材料選択として、非粘着性外部コーティングまたは外部表面を含むまたは含まないKRATON(登録商標)のような自然粘着性材料等がある。
【0024】
図7−8を参照すると、中空器官または管状導管の形状の模擬組織構造60が示されている。模擬組織構造60は、内面68および外面70を有する壁62を有するエラストマーおよび/またはファブリック構造である。模擬組織構造60は、管腔64を含む。内面すなわち第1の内面22の少なくとも一部上には、模擬組織構造60の長さの一部に沿って閉塞性接着性要素66が設けられている。
図8で、模擬組織構造60は、線72に沿って対向する隣接表面の接着を示す模擬外科ステープリングまたはエネルギーに基づく処置後の圧縮構成で示されている。
図8の圧縮構成は、ジョー14、16、30、32を模擬組織構造60上に配置し、ジョー14、16、30、32を開放位置から閉鎖位置に移動させて、管腔64を押しつぶし閉鎖させて自身にシール係合させることによって達成される。
【0025】
図9−11を参照すると、エネルギーに基づく模擬グラスパーのような本発明による外科訓練装置10が、管腔64を構成する横断面で示された模擬組織構造60に隣接して示されている。模擬組織構造60は、形状が管状であり、動脈又は静脈のような身体導管、或いはその他の中空器官に似た円形横断面を有している。模擬組織構造60の内面68は、内面68の一部に接着材66を備える。
図9は、内面のまわりに円周方向に配置された接着材66を示す。
図9−11には、外科訓練器具10の遠位端が示されている。外科訓練器具10は、上述したように、1対の対向ジョー14、16、30、32を含む。ジョー14、16、30、32は、開放されて、模擬組織構造60の外科的に望ましい位置に隣接している。一旦正しく位置決めされると、ハンドル12を操作して模擬組織構造60上にジョー14,16、30、32を閉鎖し、
図10に示されているように、ジョー14、16、30、32の間で擬組織構造60を圧縮する。模擬外科器具10が切断要素すなわちブレードを含む場合には、切断要素すなわちブレードを作動させて、所望の位置で模擬組織構造を切断する。模擬組織構造10は、管腔64内に感圧接着材のような接着材66を有しており、それによって、圧縮および切断時に、切断端部が、インクまたはその他を基材とするしるしが、模擬組織構造60の表面に付与されて、エネルギーに基づく電気外科または電気焼灼装置等で処理されたように現れる。次いで、ハンドル12でジョー14、16、30、32を開放配向へ操作し、
図11に示されているように、器具10から切断された模擬組織構造10を取り出す。実際の閉鎖外科器具から生じるように閉鎖された管腔64を創出する接着材を担持した少なくとも1つの面を有する隣接した対向面を圧縮または並置したときに接着材が賦活されるため、模擬外科構造60は、圧縮されたままである。
【0026】
図12−13を参照すると、除去すべき病変部74を有する管状の身体導管の形状の模擬組織構造60が示されている。導管は、細長く、管腔64を構成しており、導管の内面の少なくとも一部は、上述したように接着材を備える。接着材は、選択的に、例えば、腫瘍74のいずれかの側、或いは、管腔の内側全体に亘って配置されることができる。
図12では、
図12では、ステープラのような外科訓練器具10が、ジョー14、16が導管60の少なくとも一部上に閉じた状態で示されている。模擬ステープラ10は、トリガー20を引くことによってステープルの模擬発射を行い、或いは、レバー24を前進させてブレードを前進させるように作動される。
図3−4の外科訓練器具10を使用する場合には、ジョー30、32は、切断要素38が模擬組織60を切断しない第1の閉鎖位置に閉じられ、次いで、必要とされるように、所望の位置に再位置決めされる。ステープリングまたは切断を模するために、ジョー30、32は、模擬組織が、一方のジョーの切断要素38を向かい側のジョーに押し当てて係合させるようにジョーを互いに十分に近づけることによって切断される第2の閉鎖位置に移動される。模擬ステープリング、切断、閉塞、または、結紮後、ジョーが開放されて、模擬器具10が取り外されると、実際のステープルに似た所定のしるしのパターンをなす複数の模擬ステープル列76、78が残される。このしるしのパターンは、外科訓練器具10によって担持され、
図13に示されているように、模擬組織構造60の外面上に付けられ、または、転写されたインク、染料、或いはその他のしるし付け配合物によるものである。両方のジョーがインク付けされていると、模擬組織構造60の両側がしるし付けされる。別の場合として、上側ジョーのような一方のジョーだけがインク付けされていると、使用者に面した側だけがしるし付けされる。
図13には、切断部80の一方の側の3列76と他方の側の3列78からなる6列のしるしが示されている。しるしは、模擬組織構造60上のカラーインク配置だけでなく、外科ステープルの実際の配備の持ち上げおよびくぼませ領域をまねた模擬組織構造60上の3次元の跡またはエンボス加工部を含んでもよい。模擬ステープラ10が導管60から取り外されるときに、新しい実際のステープルカートリッジの再装填を模するには、しるし46、54の少なくとも一方が除去され、再配置される。別の例として、しるし46、54を使用しない場合には、ジョーは、インクパッド上に圧縮されてインクをジョーの少なくとも一方に転写することによってインク付けされる。次いで、模擬ステープラ10を腹腔鏡訓練器のような練習領域に再導入し、ジョー14、16を、病変部74の他方の側の第2の位置に配置する。トリガー20を引くことによって、ジョーを閉鎖し、ステープルの発射をまねるように模擬ステープラ10を作動させると、模擬組織60は第2の位置で切断されて、模擬組織60上に上述したのと同様なインクのパターンが残る。2つの切断部の間にあり、病変部74を含む模擬組織構造60を除去する。ジョーの間の模擬組織構造60を圧縮することにより、切断部80の両側のしるし76、78の位置で開放管腔64は閉鎖されてシールされ、また、病変部74の他方の側で第2の切断部につき同様なことが行われる。
【0027】
任意の模擬外科処置を行うために、模擬組織構造60を、
図14に示されており、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる、Paravongたちによって出願され、Applied Medical resources Corporationに譲渡され、米国特許出願公報第2012/0082970号として刊行された「持ち運び可能な腹腔鏡訓練器」と題する同時係属米国特許出願第13/248,449号に記載されている腹腔鏡訓練器のような腹腔鏡訓練器82の内部に配置することができる。その他のシミュレータおよび/または訓練器を本発明の外科訓練器具および模擬組織構造と共に使用することができる。
【0028】
腹腔鏡訓練器82は、複数の脚88によってベース86に連結された頂部カバー84を含み、複数の脚88は、ベース86から間隔をへだてて頂部カバー84を配置する。腹腔鏡訓練器82は、腹部領域のような患者の胴体をまねるように構成されている。頂部カバー84は、患者の前面を代表し、頂部カバー84とベース86の間に構成された空間は、器官がある患者の内部すなわち体腔を代表する。腹腔鏡訓練器82は、患者を模するに際して、種々の外科処置およびそれに関連する器具を教え、練習し、実地説明する(demonstrating)ための有用なツールである。種々の外科技術を練習するために、本発明による外科訓練器具10のような外科器具が、頂部カバー84に設けられた予め作られた孔92を通して腹腔鏡訓練器82の腔90内に挿入される。これらの予め作られた孔92は、トロカールを模したシールを備えてもよく、或いは、患者の皮膚や腹壁部分を模した模擬組織を含んでもよい。頂部カバー84とベース86の間に配置された本発明による模擬組織構造60上で模擬処置を行うために、頂部カバー84を貫通する種々のツールを使用することができる。細長い導管60が、
図14に示された腹腔鏡訓練器82の腔90内に配置されて示されている。腹腔鏡訓練器82の腔90内に配置されているときに、模擬組織構造60は、使用者の透視界からは全体的に隠されており、そこで、使用者は、ビデオモニター94上に表示されたビデオフィードを介して手術部位を間接的に見ることによって腹腔鏡術的に外科処置を行う練習をすることができる。ビデオ表示モニター94は、頂部カバー84にヒンジ連結されており、
図14では、閉鎖配向で示されている。ビデオモニター94は、モニター94に映像を送出する種々の視覚システム(visual systems)に接続可能である。例えば、予め作られた孔92の1つを通して挿入された腹腔鏡や、腔90内に配置され、模擬処置を観察するのに使用されるウェブカメラを、ビデオモニター94および/または使用者に映像を提供するモバイルコンピューティングデバイスに接続することができる。
【0029】
図15は、例えば、腹腔鏡訓練器82或いはその他のシミュレータ内で行われた
図12−13に示された処置で説明されたリニアステープラ10によってステープリングされた効果を有し、取り出された模擬組織構造60の部分の最終状態を示す。外科効果には、2つの隣接した壁部分62A、62Bがジョーの閉鎖によって緊密に接近された位置の圧縮された管腔64が含まれる。導管60の管腔64は、接着材によって閉鎖され、シールされている。本発明の場合には、最終状態は、実際のステープルを使用することなしに複製または模され、インクまたは染料によるしるしおよび/またはジョー14、16の圧縮によるエンボス加工部(embossments)若しくは表面模様(texturing)が残る。
図15に示されているように、3列のステープルに似た3列のしるし78が切断線に隣接している。
【0030】
本発明の模擬組織60は、有利には、正しいステープリン或いは結紮が生じていることを確保するための漏れ試験の実施を可能にする。漏れ試験は、一方の端で空気または他の気体を導管60内に圧送し、次いで、水、または食塩水のようなその他の液体を切断線におよびしるし78に沿って適用し、何らかの泡が形成されるかどうかを観察することによって行われる。泡が見える場合には、実施者は、導管が、結紮またはステープリング器具によって正しくシールされなかったことを知る。これに関連して、管腔の内側に適用される接着材を選択的に適用して、漏れ試験の所望の合否(the desired passing or falling)を創作(create)することができる。
【0031】
エラストマー材料が、身体管腔、すなわち管腔64を有する模擬組織構造60として使用される。導管60の管腔64内に、感圧、蝕圧接着材のような接着材が、エラストマー製管腔64が圧縮されるときに、接着材が完全に閉塞または賦活されるように付着または供給される。模擬導管60の対向壁62A、62Bが、実際の外科ステープル或いはその他の閉塞装置を用いたリニアステープラで達成したように見える仕方で圧縮され、シールされ、およびしるし付けされ、それによって、外科処置を模する。
【0032】
図16−17を参照すると、感圧触圧接着材または要素が、模擬身体導管60内に配置される。感圧触圧接着材または要素は、接着材アプリケータ96を使用して内面68上に付着されるのがよく、或いは、管腔64内に配置された両面材料のウエハまたはストリップ層98であってもよい。
【0033】
図18−24を参照すると、模擬胃バイパス処置のような外科処置を練習する目的のために構成された胃に似た模擬器官100が示されている。模擬胃バイパス処置では、胃100の一部102が体腔から切断され、除去される。胃100が示されているけれども、胃100は、同様な切断処置が実施されるその他の器官を代表する。処置は、一般的に、リニアステープラを使用して所定の経路104に沿って行われる。本発明による模擬処置の場合には、合成エラストマーおよび/またはファブリック製胃100が、例えば接着材または接着材状材料からできた閉塞性および接着性内面を備える。模擬リニアステープラ10が、所定の経路104に沿って合成胃100を圧縮し、切断するように構成されている。
図19は、模擬胃100上に位置決めされた模擬リニアステープラを示している。作動されるときに、模擬ステープラ10の上側および下側ジョー14、16は閉鎖して材料を圧縮し、中央を移動するブレードが、圧縮された材料を切断して、
図20に示されているような切断部106および模擬ステープル配備のしるしの列76、78を残す。次いで、部位からステープラ10が取り外され、例えば、しるし付け要素46、54が使用される場合には、しるし付け要素46、54の1つまたはそれ以上を除去し、交換することによって、または、ジョーをインクパッド上に圧縮することによって対向面15、17、34、36、50、52の少なくとも1つ上にインク吸収性材料を再インク付けすることによって、ステープルカートリッジの模擬再装填が行われる。ステープラ10は、シミュレータまたは腹腔鏡訓練器82内に再び導入され、
図21に示されているようにすでに形成されている切断部106の手前の胃100上に配置される。動作が、
図22−23に示されているように繰り返されると、遂には、
図24に示されているように、胃が完全に分割されて、切断された胃100の長さに沿ってしるし76、78が付いた2つのシールされた側面が残る。中空器官100は、互いに接触される2つの隣接した模擬組織面を含み、接着材または接着性材料があるときには、隣接面はのり付けされる。接着材、接着性材料がないときには、圧縮された隣接面は、接着されない。接着材は、2つの隣接面の一方またはそれ以上に選択的に配置され、接着材は、切断が所望される位置に配置されるが、外科経路が不要であるか、或いは、外科的に正しくない位置には配置されない。それに対して、ジョーを中空器官100上で閉鎖すると、2つの隣接面は、接着材の位置で、並置され、接触され、圧縮され、接着され、2つの隣接面は、模擬処置において所望の臨床結果を達成するために、練習者が辿る最も望ましい所定の経路に沿って予め付着されているのがよい。予め接着された隣接した内面は、模擬訓練器具10を適用する前に、特に、2つの隣接面の位置でジョーを模擬組織器具10上に閉鎖する前に、互いにのり付けされる。そのような場合には、外科訓練器具10は、2つの隣接面を接着するのに役割を果たさず、予め接着された面を切断するだけである。模擬組織構造には、所定の経路に沿って配置された予め接着された部分が形成される。予め接着された隣接面は、練習者が辿るべき所定の経路104を構成する。特定の処置のために外科的に或いは臨床的に重要である所定の経路の存在は、練習者にどこで切断或いはステープリングを行うべきかを示す有用な訓練ツールである。1つの変形例では、予め接着された隣接面の所定の経路は、使用に見える。別の変形例では、予め接着された隣接面の所定の経路は、使用者にわずかにしか見えない。さらに別の変形例では、予め接着された隣接面の所定の経路は、使用者に見えない。予め接着された隣接面の可視性のこれらの変形例は、使用者の経験レベルにとって適当な困難レベルを有する模擬組織構造の選択を可能にする。例えば、所定の経路が使用者に見える模擬組織構造は、初心者のために選択されるのがよく、見えない、或いはわずかに見える所定の経路を有する組織モデルは、経験を有する練習者のために選択されるのがよい。1つの変形例では、所定の経路は、模擬組織構造に直接成型される。所定の経路は、長さと幅を有する。所定の経路の幅は、ジョーが所定の経路上に配置され、ジョーが閉鎖され、ブレードが作動されて模擬組織に切断線を創出し、模擬組織が有利には切断線の両側でシールされたままになるように、少なくともジョーと同じ広さを有する。模擬組織構造が管腔を含む場合には、所定の経路は、管腔を2つの部分に分割する。模擬組織構造が胃として構成される場合には、所定の経路は、胃を2つの腔に分割する。
【0034】
概念の精神および範囲から逸脱することなく種々の開示されている実施例に対して多くの変更を行うことができる。例えば、種々の寸法の外科装置が考えられ、および、種々のタイプの構造および材料が考えられる。部分の構成およびそれらの相互作用に対して多くの変更を行うことができることも明らかであろう。これらの理由により、上記の記載は、本発明を限定するものとして解釈すべきではなく、好ましい実施例の単なる例として解釈されるべきである。当業者は、本発明の範囲および精神内で他の変更を考えるであろう。
【符号の説明】
【0035】
10 外科訓練器具
38 切断要素
46、54 しるし付け要素
60 模擬組織構造
【国際調査報告】