(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-525985(P2015-525985A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】拡声システム及び拡声システムの監視装置
(51)【国際特許分類】
H04R 27/00 20060101AFI20150811BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20150811BHJP
H04R 3/12 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
H04R27/00 C
H04R29/00 310
H04R3/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-502985(P2015-502985)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】JP2012004639
(87)【国際公開番号】WO2014013530
(87)【国際公開日】20140123
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA
(71)【出願人】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】如南 友博
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA12
(57)【要約】
【課題】分岐した信号伝送路を用いる拡声システムの放送の信頼性を向上させる。
【解決手段】拡声システム1は、主要伝送路4−1と主要伝送路4−1から分岐する一以上の分岐伝送路4−2とを含む伝送媒体4と、伝送媒体4に接続される複数のスピーカ3と、第1分岐監視装置10aと、第2分岐監視装置10bとを備える。第2分岐監視装置10bは、分岐伝送路4−2から第2分岐監視装置10bへの伝送信号S−1の伝送を検出しないときのみ、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ伝送信号S−2を伝送する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、伝送信号を伝送する伝送媒体と、
前記伝送媒体に接続される複数のスピーカと、
前記分岐伝送路の起点である第1分岐点で前記伝送媒体に接続される第1分岐監視装置と、
前記分岐伝送路の終点である第2分岐点で前記伝送媒体に接続される第2分岐監視装置と、
を備え、
前記第1分岐監視装置は、前記伝送信号を前記主要伝送路で伝送する間、前記主要伝送路から前記分岐伝送路に前記伝送信号を伝送し、
前記第2分岐監視装置は、前記伝送信号を前記主要伝送路で伝送する間、前記主要伝送路から前記分岐伝送路に前記伝送信号を伝送する、
拡声システム。
【請求項2】
前記第2分岐監視装置は、前記分岐伝送路から前記第2分岐監視装置への前記伝送信号の伝送を検出し、
前記第2分岐監視装置は、前記分岐伝送路から前記第2分岐監視装置への前記伝送信号の伝送を検出しないときのみ、前記伝送信号を前記主要伝送路から前記分岐伝送路へ伝送する、
請求項1に記載の拡声システム。
【請求項3】
前記第2分岐監視装置は、前記伝送信号を前記主要伝送路から前記分岐伝送路へ常時伝送させる、
請求項1に記載の拡声システム。
【請求項4】
伝送信号を伝送する伝送媒体と、前記伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む拡声システムに接続可能であって、前記伝送媒体は主要伝送路と前記主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含む、監視装置であって、
前記監視装置が前記分岐伝送路の終点である分岐点に配されているとき、前記分岐伝送路から前記監視装置への前記伝送信号の伝送を監視する分岐監視部と、
第1位置にあるときは前記伝送信号を前記主要伝送路から前記分岐伝送路へ通過させ、第2位置にあるときは前記伝送信号が前記主要伝送路から前記分岐伝送路へ通過しないようにするスイッチと、
を備え、
前記スイッチは、前記分岐監視部が前記伝送信号の伝送を検出しないとき、第2位置から第1位置へと切り換えられる、
監視装置。
【請求項5】
伝送信号を伝送する伝送媒体と、前記伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む拡声システムに接続可能であって、前記伝送媒体は、主要伝送路と前記主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、前記伝送信号は通信信号と音声信号とを含む監視装置であって、
前記分岐伝送路に接続可能であり、前記通信信号を減衰させることにより前記伝送信号をフィルタリングするフィルタと、
第1位置にあるときは前記伝送信号が前記フィルタによってフィルタリングされ、第2位置にあるときは前記伝送信号が前記フィルタによってフィルタリングされないように前記分岐伝送路を制御するスイッチと、
を備える、監視装置。
【請求項6】
通信信号と音声信号を含む伝送信号を、通信信号を通過させ音声信号を減衰させるようにフィルタするフィルタ部と、
前記フィルタ部を介して前記通信信号を受信し特定する制御部と、
を備え、
前記フィルタ部及び前記制御部は、前記スイッチに対して前記伝送媒体の上流側に配されている、
請求項4又は5に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピーカを有する拡声システムに関する。具体的には、本発明は、分岐した伝送媒体を含む拡声システム、および同拡声システムの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物や施設において公衆に対し情報を提供したり楽しませたりする音声放送システムとして、拡声システムが知られている。通常の拡声システムは、特許文献1に開示されているように、スピーカラインを介して増幅器に接続された複数のスピーカと、スピーカラインの接続を監視する各制御器とを有する。緊急時には、拡声システムは、建物や施設内の公衆に警告を出す。
【0003】
欧州で使用されている拡声システムは、欧州規格(EN:European Norm)60849を満たさなければならず、同規格は、増幅器からその端末まで延びるスピーカラインの接続や精度の監視を要件とする。EN60849は、緊急時に所定のエリア内にいる人々を保護するための放送を行うための、屋内外で使用される音声補強システムの性能要件を規定する。EN60849の基準は、ラインの断線があっても警告機能を保障する冗長システムを要件とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拡声システムは、スピーカラインに一以上の分岐を有するため信号が分岐して伝送される。今までは、分岐したスピーカラインを有する拡声システムの冗長性を保障する解決策はなかった。
【0005】
ここに開示された発明の一つの目的は、分岐した信号伝送路を用いる拡声システムの放送の信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、拡声システムを含む。拡声システムは、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカと、分岐伝送路の起点である第1分岐点で伝送媒体に接続される第1分岐監視装置と、分岐伝送路の終点である第2分岐点で伝送媒体に接続される第2分岐監視装置と、を備える。第1分岐監視装置は、伝送信号を主要伝送路で伝送する間、主要伝送路から分岐伝送路に伝送信号を伝送する。第2分岐監視装置は、伝送信号を主要伝送路で伝送する間、主要伝送路から分岐伝送路に伝送信号を伝送する。
【0007】
本発明の他の態様によれば、拡声システムに接続可能な監視装置が提供される。拡声システムは、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む。伝送媒体は、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含む。監視装置は分岐監視部とスイッチとを含む。分岐監視部は、監視装置が分岐伝送路の終点である分岐点に配されているとき、分岐伝送路から監視装置への伝送信号の伝送を監視する。スイッチは、第1位置にあるときは伝送信号を主要伝送路から分岐伝送路へ通過させ、第2位置にあるときは伝送信号が主要伝送路から分岐伝送路へ通過しないようにする。スイッチは、分岐監視部が伝送信号の伝送を検出しないとき、第2位置から第1位置へと切り換えられる。
【0008】
本発明の更に他の態様によれば、拡声システムに接続可能な監視装置が提供される。拡声システムは、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む。伝送媒体は、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、伝送信号は、通信信号と音声信号とを含む。監視装置は、フィルタとスイッチとを備える。フィルタは、分岐伝送路に接続可能であり、通信信号を減衰させることにより伝送信号をフィルタリングする。スイッチは、第1位置にあるときは伝送信号がフィルタによってフィルタリングされ、第2位置にあるときは伝送信号がフィルタによってフィルタリングされないように分岐伝送路を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、分岐した信号伝送路を用いる拡声システムの放送の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】分岐したスピーカラインで生じた断線状態の拡声システムの概略図
【
図5】
図4に示す監視装置のアイソレータ部の概略図
【
図6】
図4に示す制御装置による動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の選ばれた実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の本発明の実施形態の説明は例示のためであり、添付の特許請求の範囲やその均等物により定義される発明を限定するためのものでないことは、当業者は本開示から理解できる。
<実施形態1>
<拡声システム1>
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る拡声システム1(拡声システムの一例)を概略的に示す。拡声システム1は、大規模な施設や建物内において使用されるものである。本実施形態においては、
図1に示す拡声システム1の左側を「上流側」と呼び、スピーカライン4に沿って増幅器2に近い側とする。また、
図1に示す拡声システム1の右側を「下流側」と呼ぶ。
【0013】
拡声システム1は、増幅器2、複数のスピーカ3、スピーカライン4(伝送媒体の一例)、制御装置5、及び各スピーカ3に対応する複数の監視装置10を有する。
【0014】
増幅器2は、スピーカライン4に接続される。図示は省略するが、増幅器2は変圧器を介してスピーカライン4に接続される。
監視装置10は、スピーカライン4に直列接続される。スピーカ3は、スピーカライン4に並列接続される。制御装置5もまた、スピーカライン4に接続される。
【0015】
スピーカライン4は、
図1に示すように、2線式のワイヤ又はケーブルであってもよい。スピーカライン4は、主要伝送路4−1(主要伝送路の一例)と、主要伝送路4−1から分岐する分岐伝送路4−2(分岐伝送路の一例)とを有する。分岐伝送路4−2は複数のスピーカ3に接続される。分岐伝送路4−2は、スピーカライン4の下流側(
図1の右側)において主要伝送路4−1に合流する。スピーカライン4の主要伝送路4−1は、ループ状に配されている。
【0016】
スピーカライン4は、スピーカ3の電源供給ラインであってもよい。本実施形態における電源は直流電流(DC:Direct Current)電源である。
拡声システム1では、増幅器2は、拡声システム1で送信される音声信号を出力する。音声信号は、20kHz以下の周波数を有していてもよい。音声信号は、電源(図示省略)から供給される直流電流に重畳されてスピーカライン4を伝送される。制御装置5は、通信信号を生成し出力する。通信信号は、60kHz以上の周波数であってもよい。そして通信信号は、スピーカライン4を送信される音声信号及び直流電流に重畳される。音声信号と通信信号とを含む重畳信号(伝送信号の一例)は、スピーカライン4で送信される。
【0017】
監視装置10は、制御装置5によって間欠的又は連続的にポーリングされる。ポーリング信号は、通信信号の一例であって、制御装置5によって生成され、指定された監視装置10に送信される。ポーリング信号を受信した指定の監視装置10は、応答信号を生成し、スピーカライン4を介して制御装置5に送信する。応答信号が所定時間内に受信されない場合、指定された監視装置10が応答しないと考えられ、スピーカライン4のショート及び/又は断線による拡声システム1の障害や不通があると結論付けられる。
<<通常状態>>
【0018】
図1に示すように拡声システム1において障害や断線が検知されていない通常状態においては、増幅器2からの重畳信号S−1はスピーカライン4を下流側に伝送される。そして重畳信号S−1は、主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方によって伝送される。重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2を通過し監視装置10bに到達する。監視装置10aは、
図1及び
図2に示すように分岐伝送路4−2の起点である分岐点(第1分岐点の一例)に配されている。監視装置10aは、主要伝送路4−1から受信した重畳信号S−1を、主要伝送路4−1を通過させると同時に、分岐伝送路4−2に伝送する。
【0019】
別の監視装置10bは、
図1及び
図2に示すように、分岐伝送路4−2の終点である別の分岐点(第2分岐点の一例)に配される。監視装置10bは、重畳信号S−1に主要伝送路4−1を通過させつつ、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1を受信する。監視装置10bは、分岐伝送路4−2から受信した重畳信号S−1を監視する。
<<断線状態>>
【0020】
図2に示すように、障害や断線が分岐伝送路4−2で発生した場合、重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2から監視装置10bによって受信されなくなる。監視装置10bは、重畳信号S−1が分岐伝送路4−2から受信されるかどうかを検出する。監視装置10bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、監視装置10bは分岐伝送路4−2において何らかの障害や断線があると判定し、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2への重畳信号S−2の伝送を開始する。同時に、監視装置10bは、主要伝送路4−1を介して受信した重畳信号S−1を下流側に伝送する。
【0021】
よって、分岐伝送路4−2に断線や障害が生じて、分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する監視装置10aから受信する重畳信号S−1が分岐伝送路4−2を通過できなくなっても、分岐伝送路4−2における重畳信号の伝送は、分岐伝送路4−2の終点である他の分岐点に位置する他の監視装置10bにより回復可能となる。この結果、分岐伝送路4−2は拡声システム1の冗長性によって安全性が維持できる。
ここで、拡声システム1におけるスピーカライン4に接続される各装置について詳細に説明する。
<制御装置5>
【0022】
図3は、制御装置5の構成を概略的示す。制御装置5は、所定の通信プロトコルに従ってスピーカライン4上の通信制御を行う。制御装置5は、監視装置10全てに対しポーリングを行い、拡声システム1における障害や断線の発生をチェックする。ポーリングは、監視装置10、スピーカ3、及びスピーカライン4の動作状態をチェックするための自動的且つ連続的な検査である。簡略化のため、図面では、スピーカライン4は単一の線で示している。
【0023】
制御装置5は、フィルタ部51、受信部53と、送信部54と、A/D変換器55と、D/A変換器56と、CPU57(プロセッサの一例)とを有する。
フィルタ部51は、スピーカライン4に接続される。フィルタ部51は、応答信号を含む通信信号を通過させ、その他の信号を減衰させるように設計されているバンドパスフィルタを有する。
【0024】
受信部53及び送信部54は、CPU57からの指令に応じてスイッチ(図示省略)によりスピーカライン4に対し信号を送受信するように切り換えられる。受信部53は、通信信号、例えば、スピーカライン4に接続された各監視装置10からの応答信号をフィルタ部51を介して受信する。そして受信部53は、A/D変換器55を介してCPU57に通信信号を送信する。送信部54は、CPU57からD/A変換器56を介して受信した通信信号をスピーカライン4上の監視装置10に送信する。CPU57から受信する通信信号は、例えばポーリング信号である。
【0025】
A/D変換器55は、アナログ通信信号をCPU57で処理されるデジタル通信信号に変換する。D/A変換器56は、CPU57によって処理されたデジタル通信信号をアナログ通信信号に変換する。
【0026】
CPU57は、通信信号の送受信を制御する。CPU57はポーリング信号を生成し、スピーカライン4に接続された指定の監視装置10に送信する。ポーリング信号は、指定の監視装置10のアドレスデータを含む。CPU57はまた、指定の監視装置10から応答信号を受信する。
【0027】
CPU57は、各監視装置10に連続的にポーリング信号を送信してもよく、各指定された監視装置10から対応する応答信号を受信したかどうかを判定し、これにより拡声システム1の状態を検出する。そしてCPU57は、拡声システム1の状態に関する情報を出力する。例えば、CPU57は、拡声システム1の障害データや情報を、拡声システム1の動作を監視し管理する外部の管理システムにネットワークを介して出力する。CPU57は、メモリ(図示省略)から読み込んだプログラムに従って拡声システム1の上記動作を実行してもよい。
<監視装置10>
【0028】
図4は、監視装置10の構成を概略的に示す。本実施形態においては、
図4に示す監視装置10の左側が上流側であり、
図4に示す監視装置10の右側が下流側である。監視装置10は、分岐点にある監視装置10a又は監視装置10bとして機能し、これらは分岐点にない監視装置とは動作が異なる。監視装置10a(以下、第1分岐監視装置10aと呼ぶ)は、
図1及び
図2に示すように、重畳信号S−1が分岐伝送路4−2に伝送される開始分岐点に設けられる。監視装置10b(以下、第2分岐監視装置10bと呼ぶ)は、重畳信号S−1が主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方から受信される終点の分岐点に設けられる。
【0029】
監視装置10は、監視装置10を識別するための固有のアドレス(例えば、IPアドレス)又は識別情報を有する。監視装置10は、スピーカライン4に接続されたアイソレータ部11と、フィルタ部12(フィルタ部の一例)と、受信部13と、送信部14と、A/D変換器15と、D/A変換器16と、CPU(中央演算処理部)17(制御部の一例)と、主要監視部18aと、分岐監視部18bと、直流電源19とを有する。監視装置10はまた、分岐点40で主要スピーカライン4−1から分岐する分岐伝送路4−2に接続されるスイッチ20(スイッチの一例)を有する。監視装置10はまた、入力部60を有する。入力部60はユーザにより操作され、分岐監視部18bに対する選択信号を生成し出力する。分岐監視部18bは、後述するように入力部60からの選択信号に応じてスイッチ20を切り換える。
【0030】
アイソレータ部11はスピーカライン4上に設けられている。
図5に示すように、アイソレータ部11は、スイッチ111と、コンパレータ112と、リレー制御部113とを有する。通常状態では、スピーカライン4は連続的に直流電流を送る。コンパレータ112は、スイッチ111の両端の電圧を比較し、比較結果をリレー制御部113に出力する。スピーカライン4上の監視装置10間において障害や断線が発生した場合、電流が止まり、スイッチ111の両端間の電圧に差ができる。リレー制御部113は、同電圧の変化を監視し検出して、スピーカライン4の障害や断線の発生を判定する。リレー制御部113がスピーカライン4に障害や断線が発生したと判定すると、リレー制御部113がスイッチ111を開くことにより、監視装置10はスピーカライン4から分離される。この結果、分離された監視装置10は通信信号を送信できなくなり、制御装置5は、応答信号が受信されない監視装置10周辺で障害や断線が発生したことを判定できる。
【0031】
図4に示すフィルタ部12は、スピーカライン4に接続される。フィルタ部12は、通信信号を通過させその他の信号を減衰させるように設計されたバンドパスフィルタを有する。
【0032】
受信部13及び送信部14は、CPU17からの指令に応じてスイッチ(図示省略)によりスピーカライン4に対し信号を送受信するように切り換えられる。受信部13は、通信信号、例えば、制御装置5からのポーリング信号を受信する。そして受信部13は、A/D変換器15を介してCPU17に通信信号を送信する。送信部14は、CPU17からD/A変換器16を介して受信した通信信号、例えば応答信号を制御装置5に送信する。
【0033】
A/D変換器15は、アナログ通信信号をCPU17により処理されるデジタル通信信号に変換する。D/A変換器16は、CPU17に処理されたデジタル通信信号をアナログ通信信号に変換する。A/D変換器15及びD/A変換器16はCPU17からの指令に応じて切り換えられる。
【0034】
CPU17は、A/D変換器15及びD/A変換器16を介して受信部13及び送信部14に接続される。CPU17は、監視装置10のアドレスデータが受信した通信信号に含まれるデータと合致するかどうかを判定することにより、受信した通信信号が監視装置10自身に対するものであるかどうかを判定する。アドレスデータが自身のアドレスと合致すれば、CPU17は応答信号を生成し制御装置5に送信する。CPU17はまた、対応するスピーカ3を制御する。CPU17は、メモリ(図示省略)から読み出されたプログラムに従ってこれらの動作を実行してもよい。
【0035】
主要監視部18aはスピーカライン4の主要伝送路4−1に接続される。主要監視部18aは主要伝送路4−1を通過する重畳信号S−1を監視する。
【0036】
分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2が主要伝送路4−1から分岐する分岐点40でスピーカライン4の分岐伝送路4−2に接続される。分岐監視部18bは、監視装置10が第2分岐監視装置10bとして設定されたときのみ動作する。分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2からスイッチ20への重畳信号S−1の通過を監視する。重畳信号S−1の伝送は、例えば電圧シフトをモニタリングすることによって検出されてもよい。分岐監視部18bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、分岐監視部18bは信号を生成し、スイッチ20をONに切り換える。
【0037】
直流電源19はスピーカライン4から受信される直流信号を受信する。直流信号は整流されて監視装置10に電力を供給する。
スイッチ20は、ON(第1位置の一例)であるとき、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させる。スイッチ20がOFF(第2位置の一例)にあるとき、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2への重畳信号S−1の通過は遮られる。ON及びOFFは逆に適用されてもよい。監視装置10が第1分岐監視装置10aである場合、スイッチ20はONであることにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させる。監視装置10が第2分岐監視装置10bである場合、スイッチ20は最初OFFであることにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させない。
【0038】
第2分岐監視装置10bにおいては、分岐監視部18bは分岐伝送路4−2からスイッチ20への重畳信号S−1の通過を監視するよう動作する。分岐監視部18bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しないと、分岐伝送路4−2における断線や障害の発生を示していることになる。そして分岐監視部18bはスイッチ20をONに切り換える信号を送信し、これにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1が伝送される。監視装置10が第1分岐監視装置10aでも第2分岐監視装置10bでもない場合(以下、非分岐監視装置10と呼ぶ)、スイッチ20はOFFに切り換えられる。
【0039】
第2分岐監視装置10bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、検出信号を生成し主要伝送路4−1を介して制御装置5に送信する。制御装置5は、検出信号を第2分岐監視装置10bから受信すると、当該分岐監視装置10bに接続された分岐伝送路4−2で断線又は障害が発生したことが分かる。よって、制御装置5は、第2分岐監視装置10bから送信される検出信号に含まれるアドレスデータに基づいて、どの分岐路に断線又は障害があるのかを特定することができる。
【0040】
入力部60は手動等の手段により操作される。入力部60はユーザによって操作され、選択信号を生成し分岐監視部18bに出力する。スイッチ20は、分岐監視部18bからの選択信号に応じてON又はOFFに切り換えられる。これにより、監視装置10は、第1分岐監視装置10a、第2分岐監視装置10b、非分岐監視装置10のいずれかに設定される。
【0041】
選択信号は以下のいずれかである。
(i)監視装置10が分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する第1分岐監視装置10aとして設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をONに維持する信号
【0042】
(ii)監視装置10が分岐伝送路4−2の終点である分岐点に位置する第2分岐監視装置10bとして設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をOFFに維持する信号、又は
【0043】
(iii)監視装置10が分岐点に位置しない非分岐監視装置10として設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をOFFのままとする信号
監視装置10は入力部60の設定に応じて動作する。
<拡声システム1の動作>
【0044】
拡声システム1の動作時において、音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は増幅器2及び制御装置5から送信される。重畳信号S−1は主要伝送路4−1を伝送される。第1分岐監視装置10aにおいて、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2に伝送されると同時に、主要伝送路4−1を伝送される。重畳信号S−1はそして、分岐伝送路4−2を介して第2分岐監視装置10bに伝送される。
【0045】
分岐監視装置10bの分岐監視部18bが、分岐伝送路4−2で発生した断線や障害により重畳信号S−2の伝送を検出しなくなると、分岐監視装置10bの分岐監視部18bによりスイッチ20がONに切り換えられる。そして、主要伝送路4−1を介して伝送された重畳信号S−1から分流する重畳信号S−2が、分岐監視装置10bによって分岐伝送路4−2に伝送される。そして重畳信号S−2は分岐伝送路4−2を介して第1分岐監視装置10a、そして主要伝送路4−1に伝送される。
<監視装置10の動作>
【0046】
図6は、
図4に示す実施形態1に係る分岐監視装置10bによって実行させる処理のフローチャートである。
監視装置10が第2分岐監視装置10bとして設定されている場合、ステップS101〜S105の処理が実行される。以下では説明していないが、各監視装置10の主要監視部18aは、当該監視装置10が分岐監視装置であるかどうかに関わらず、常に伝送路を監視している。
【0047】
ステップS101:監視装置10が第2分岐監視装置10bである場合、ステップS102に進む。
ステップS102:音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2から分岐監視装置10bによって受信される。このステップでは、スイッチ20はOFFであるため、重畳信号S−1はスイッチ20を通過できない。またこのステップでは、分岐監視部18bは分岐伝送路4−2を監視する。
【0048】
ステップS103:分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2を介した重畳信号S−1の伝送を検出したかどうかを判定する。重畳信号S−1の伝送が検出されない場合、ステップS104に進む。
【0049】
ステップS104:分岐監視部18bはスイッチ20をONに切り換える。これにより重畳信号S−2がスイッチ20を介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ通過できるようになる。
【0050】
ステップS105:検出信号が生成され、主要伝送路4−1を介して制御装置5に送信される。
なお、第1分岐監視装置10aが重畳信号S−1に含まれる通信信号であるポーリング信号を受信し、ポーリング信号がアドレスデータに基づいて第1分岐監視装置10aを宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1にも分岐伝送路4−2にも送信されない。ポーリング信号が第1分岐監視装置10a以外の監視装置を宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方に送信される。
【0051】
同様に、第2分岐監視装置10bがポーリング信号を受信し、ポーリング信号が第2分岐監視装置10bを宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は第2分岐監視装置10bの下流側の主要伝送路4−1に送信されない。ポーリング信号が第2分岐監視装置10b以外の監視装置を宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1に送信される。
<実施形態1の効果>
【0052】
上記実施形態の拡声システム1によれば、第2分岐監視装置10bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合のみ、重畳信号S−2を分岐伝送路4−2に伝送することを許可する。このため、分岐伝送路4−2において断線や障害が発生して重畳信号S−1が分岐伝送路4−2を通過できなくなっても、重畳信号S−1の分岐伝送路4−2の伝送は他の監視装置10bによって回復できる。この結果、拡声システム1の分岐伝送路4−2は冗長性を利用したり安全性を確保できる。
【0053】
更に、分岐監視装置10bにはスイッチ20が設けられ、通常状態において重畳信号S−1の分岐伝送路4−2から主要伝送路4−1への通過を遮るようにOFFにするため、通信信号が主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方を介して下流側の監視装置10に送信されることを防ぐことができる。
【0054】
動作においては、実施形態1の拡声システム1は以下のように動作する。
通常状態においては、
図1に示すように拡声システム1では障害や断線は検出されない。この通常状態において、第1分岐監視装置10aは、スイッチ20をONにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方への通過を許可する。分岐監視装置10bは、スイッチ20をOFFにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1の通過を許可しつつ、重畳信号S−1の分岐伝送路4−2から分岐監視装置10bへの伝送を監視する。非分岐監視装置10は、スイッチ20をOFFにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1の通過を許可する。この通常状態においては、重畳信号S−1は、各監視装置10及び対応するスピーカ3に到達することができる。よって、主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2に接続されたスピーカ3は全て、重畳信号S−1に含まれる音声信号に基づく音声を出力できる。
【0055】
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の例えば監視装置10−2と監視装置10−3との間のポイントで障害や断線が生じた不通状態では、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2を介して分岐監視装置10bに到達しない。分岐監視装置10bの分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、分岐監視部18bはスイッチ20をOFFからONに切り換える。これにより、重畳信号S−2がスイッチ20を介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に伝送されるようになる。このとき、
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の監視装置10−1及び10−2は分岐監視装置10aから重畳信号S−1を受信し、分岐伝送路4−2上の監視装置10−3及び10−4は分岐監視装置10bから重畳信号S−2を受信する。このため、分岐伝送路4−2で断線が発生しても、分岐伝送路4−2を介した音声放送を継続することができる。
【0056】
よって、拡声システム1では、分岐した信号伝送路を用いた放送の信頼性を向上させることができる。
<実施形態1の変形例>
【0057】
監視装置10は分岐監視部18bを有していなくともよい。代わりに、CPU17がスイッチ20に接続され、スイッチ20に作動信号を送信してもよい。CPU17は制御装置5から指令信号(通信信号の一例)を受信すると、作動信号によりスイッチ20をONに切り換える。本例では、入力部60はユーザによって操作されスイッチ20に接続される。入力部60が選択信号を生成し、スイッチ20に出力することにより、上記実施形態1と同様に、監視装置10は第1分岐監視装置10a、第2分岐監視装置10b、或いは非分岐監視装置10に設定される。
【0058】
本例では、制御装置5は監視装置10自身を識別する識別情報だけでなく、監視装置10が分岐伝送路4−2にあるかどうかを識別する識別情報を保存する。
制御装置5は識別情報に基づき各監視装置10にポーリングする。例えば、
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の監視装置10−2と監視装置10−3との間のポイントで障害や断線が生じたとき、制御装置5は監視装置10−2からは応答信号を受信するが、監視装置10−3からは受信できない。監視装置10−3からの応答を検出しないと、制御装置5は識別情報に基づき分岐伝送路4−2上に監視装置10−3があるかどうかを判定する。制御装置5はポーリングされた監視装置10−3より応答信号を受信できず、そのポーリングされた監視装置10−3が分岐伝送路4−2上にあると判定した場合は、分岐伝送路4−2は監視装置10−3の近辺で障害又は断線があると判定できる。
【0059】
そして制御装置5は、指令信号を生成し、主要伝送路4−1を介して分岐伝送路4−2の終点である分岐点に接続された分岐監視装置10bに送信する。制御装置5から指令信号を受信すると、分岐監視装置10bのCPU17はスイッチ20に作動信号を送信し、ONに切り換える。この結果、スイッチ20により重畳信号S−2が分岐監視装置10bを介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に通過できるようになる。
<実施形態2>
<拡声システム201>
【0060】
図7は、実施形態2に係る拡声システム201を概略的に示す。実施形態1と同様の機能を有する部材については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態においては、第2分岐監視装置210bは、分岐伝送路4−2において障害や断線が検出されたかどうかにかかわらず、常に主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に重畳信号を伝送する。
<監視装置210>
【0062】
図8は、実施形態2に係る監視装置210を概略的に示す。監視装置210は、構成上実施形態1の監視装置10と異なり、分岐伝送路4−2に接続されるフィルタ225(フィルタの一例)とスイッチ227(スイッチの一例)とを有する。フィルタ225は、重畳信号S−1に含まれる通信信号を減衰させるように設計されている。スイッチ227はフィルタ225の作動及び非作動を行う。フィルタ225の作動時、重畳信号S−1はフィルタ225のある伝送路4−2Rを通過する。フィルタ225の非作動時、重畳信号S−1はフィルタ25のない伝送路4−2Fを通過する。
【0063】
入力部260はユーザにより操作され、スイッチ227に選択信号を出力する。入力部260からの選択信号に応じて、スイッチ227はON又はOFFに切り換えられ、監視装置10が第1分岐監視装置210a、第2分岐監視装置210b、非分岐監視装置210のいずれかに設定される。
選択信号は以下のいずれかである。
【0064】
(i)監視装置210が分岐伝送路4−2の終点である分岐点に位置する第2分岐監視装置210bとして設定されている場合、フィルタ225を作動させるためスイッチ227をON(第1位置の一例)に維持する信号
【0065】
(ii)監視装置10が分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する第1分岐監視装置210aとして設定されている場合、フィルタ225を非作動にするためスイッチ227をOFF(第2位置の一例)に維持する信号、又は
【0066】
(iii)監視装置10が分岐点に位置しない非分岐監視装置10として設定される場合、スイッチ227をOFFのままとする信号
【0067】
ONとOFFは逆に適用されてもよい。
本例では、重畳信号は常時分岐伝送路4−2を双方向に伝送されるため、実施形態1のように監視装置210に信号伝送を監視する分岐監視部18bやスイッチ20を設けなくともよい。
<拡声システム201の動作>
【0068】
拡声システム1の動作時において、音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は増幅器2及び制御装置5から送信される。実施形態1と同様に、重畳信号S−1は主要伝送路4−1を伝送される。第1分岐監視装置210aにおいて、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2に伝送されると同時に、主要伝送路4−1を伝送される。重畳信号S−1は、事前にスイッチ227を用いて設定されている、フィルタのない伝送路4−2Fを通過する。そして重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2によって第2分岐監視装置210bに伝送される。第2分岐監視装置210bにおいては、重畳信号S−1は、事前にスイッチ227を用いて設定されている、フィルタ225が設けられた伝送路4−2Rを通過する。同時に第2分岐監視装置210bは、重畳信号S−1を主要伝送路4−1に通過させる。
【0069】
フィルタされた伝送信号S−2(伝送信号の一例)は、フィルタ225によって重畳信号S−1をフィルタリングしたものであって、第1分岐監視装置210bにより分岐伝送路4−2に伝送される。第2分岐監視装置210bにおいて、重畳信号S−1はフィルタ225を含む伝送路4−2Rを通過する。フィルタ225は重畳信号S−1に含まれる通信信号を減衰させる。残りの信号(つまり、通信信号以外)は、主に音声信号であるが、フィルタされた伝送信号S−2として第2分岐監視装置210bを通過する。そしてフィルタされた伝送信号S−2は分岐伝送路4−2を通過し第1分岐監視装置210aに向かう。第1分岐監視装置210aにおいては、フィルタされた伝送信号S−2はフィルタのない伝送路4−2Fを通過する。
【0070】
拡声システム201では、分岐伝送路4−2に接続された各監視装置210(例えば、
図7に示す監視装置210−1から210−4)は、重畳信号S−1に含まれるポーリング信号の応答信号を制御装置5に送信する。フィルタされた伝送信号S−2は通信信号を含まないため、フィルタされた伝送信号S−2に対する応答信号は生成されない。換言すると、制御装置5は重畳信号S−1に対する応答信号のみ受信する。よって制御装置5は分岐伝送路4−2の障害や断線を適切に検出することができる。
【0071】
監視装置10bが重畳信号S−2をフィルタ225のない伝送路4−2Fを通過させ分岐伝送路4−2上の全ての監視装置210−1から210−4が重畳信号S−1とS−2に含まれるポーリング信号を受信するとする。監視装置210−1から210−4は、重畳信号S−1及びS−2それぞれの応答信号を制御装置5に送信することになる。この場合、分岐伝送路4−2に障害や断線が生じて制御装置5が重畳信号S−1に対する応答信号を受信できなくなっても、制御装置5は重畳信号S−2の応答信号を受信できる。よって、この場合、制御装置5は障害や断線を適切に検出できなくなる。
<実施形態2の効果>
【0072】
実施形態2によれば、実施形態1の効果に加え、第2分岐監視装置210bは分岐伝送路4−2から第2分岐監視装置210bへの重畳信号S−1の伝送を監視又は検出する必要がない。よって、拡声システム1は実施形態1よりも簡単な動作で冗長な分岐伝送路を利用できる。
【0073】
動作において、実施形態2に係る拡声システム201は次のように動作する。
通常状態において、
図7に示すように、拡声システム201において障害や断線は検出されない。この通常状態においては、スイッチ227がOFFに維持されフィルタ225が非作動である第1分岐監視装置210aは、重畳信号S−1を主要伝送路4−1と分岐伝送路4−2の双方に通過させる。スイッチ227がONに維持されフィルタ225が作動する分岐監視装置210bは、作動されたフィルタ225のみ重畳信号S−1を通過させる。同時に、第2分岐監視装置210bは重畳信号S−1に主要伝送路4−1を通過させる。フィルタ225は、主要伝送路4−1から受信した重畳信号にS−1に含まれる通信信号を減衰させ、主に音声信号である残りの信号は、フィルタされた伝送信号S−2として第2分岐監視装置210bを通過する。この通常状態では、重畳信号S−1は各監視装置10及び対応するスピーカ3に到達することができる。よって、主要伝送路4−1と分岐伝送路4−2に接続された全てのスピーカ3は、重畳信号S−1に含まれる音声信号に基づく音声を出力することができる。更に、ポーリング信号は重畳信号S−1のみに含まれている。
図7に示す分岐伝送路4−2に接続された監視装置210−1、210−2、210−3、210−4は、第1分岐監視装置210aから送信される重畳信号S−1に含まれる通信信号によりポーリングされると、通信信号に対する応答信号を生成し送信する。
【0074】
図7に示す分岐伝送路4−2上の例えば監視装置210−2と監視装置210−3間のポイントにおいて障害や断線が生じた断線状態においては、監視装置210−3及び210−4は重畳信号S−1を受信できないため、応答信号を生成し送信しない。ポーリングされた監視装置210−3や210−4から応答信号を受信しなかった場合、制御装置5は、監視装置210−3や210−4の上流側の分岐伝送路4−2に断線や障害が生じたものと判断する。この断線状態においても、監視装置210−3や210−4は第2分岐監視装置210bから伝送信号S−2を受信できる。よって、監視装置210−3及び210−4に接続されたスピーカ3は、伝送信号S−2によって伝送される音声信号に基づき音声を出力できる。このため、分岐伝送路4−2を介した音声放送は、分岐伝送路4−2に障害や断線が生じても維持される。
<その他実施形態>
【0075】
上記実施形態は、二以上の分岐を有するスピーカラインを有する拡声システムに適用できる。例えば、分岐伝送路4−2(
図1)が更に一以上の分岐伝送路に分岐していてもよく、この場合、分岐伝送路4−2は分岐伝送路4−2から分岐する分岐伝送路に対しては主要伝送路となる。
【0076】
主要監視部18a又は分岐監視部18bは監視装置に含まれていなくてもよく、単独或いはその他の装置と共にスピーカライン4に接続されていてもよい。
【0077】
直流電流の代わりに交流電流をスピーカライン4に供給してもよい。
拡声システム1にはデジタル音声信号を適用してもよい。この場合、音声信号はデジタルからアナログ変換され、変調されてスピーカライン4上の直流電流に重畳される。変調された音声信号は一以上の監視装置10のアドレスデータを含み、一以上の指定された監視装置10に送信される。
(用語解釈全般)
【0078】
本開示の範囲を理解するのに、ここで使用される「備える」の用語やその派生語は、説明した特徴、要素、部材、群、整数、及び/又はステップを特定する制限のない用語であることを意図し、説明していない他の特徴、要素、部材、群、整数、及び/又はステップがあることを排除するものではない。これはまた、同様の意味を有する「含む」、「有する」、及びその派生語に対しても同様である。
【0079】
装置の部材、区分、部分を説明するためにここで使用する「構成する」の用語は、所望の機能を実行するために構成された及び/又はプログラムされた、ハードウエア及び/又はソフトウエアを含む。
【0080】
本発明を例示するため一部の実施形態のみを選択したが、添付の特許請求の範囲で定義される発明の範囲を逸脱しない限り多様な変更や変形が可能であることは、当業者であれば本開示から理解されるものである。例えば、各部材の大きさ、形状、位置、或いは向きは、必要及び/又は希望に応じて変更が可能である。互いが直接接続し或いは当接しているように示された部材は、間に仲介する構造が存在する場合もある。一つの要素の複数の機能は二つのものによって実行されてもよいし、その逆であってもよい。一つの実施形態の構成及び機能は他の実施形態に適用することもできる。フローチャートにおけるステップの一部は順序を変えて実行してもよい。効果の全てが特定の実施形態に同時に存在する必要はない。先行技術とは異なる各特徴はまた、単独或いは組み合わせにより、かかる特徴によって具体化された構成上及び/又は機能上の概念を含む出願人による更なる発明をそれぞれ記載するものと考えられるべきである。よって、本発明に係る上記実施形態の説明は、例示であって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される発明を限定するためのものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、大規模施設や建物に使用される拡声システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 拡声システム
2 増幅器
3 スピーカ
4 スピーカライン(伝送媒体の一例)
5 制御装置
10 監視装置
10a 第1分岐監視装置(第1分岐監視装置の一例)
10b 第2分岐監視装置(第2分岐監視装置の一例)
11 アイソレータ部
12 フィルタ部(フィルタ部の一例)
13 受信部
14 送信部
15 A/D変換器
16 D/A変換器
17 CPU(制御部の一例)
18a 主要監視部
18b 分岐監視部
19 直流電源
20 スイッチ(スイッチの一例)
40 分岐点
51 フィルタ部
53 受信部
54 送信部
55 A/D変換器
56 D/A変換器
57 CPU
60 入力部
201 拡声システム
210 監視装置
225 フィルタ
227 スイッチ
260 入力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0063755号明細書
【手続補正書】
【提出日】2015年1月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピーカを有する拡声システムに関する。具体的には、本発明は、分岐した伝送媒体を含む拡声システム、および同拡声システムの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物や施設において公衆に対し情報を提供したり楽しませたりする音声放送システムとして、拡声システムが知られている。通常の拡声システムは、特許文献1に開示されているように、スピーカラインを介して増幅器に接続された複数のスピーカと、スピーカラインの接続を監視する各制御器とを有する。緊急時には、拡声システムは、建物や施設内の公衆に警告を出す。
【0003】
欧州で使用されている拡声システムは、欧州規格(EN:European Norm)60849を満たさなければならず、同規格は、増幅器からその端末まで延びるスピーカラインの接続や精度の監視を要件とする。EN60849は、緊急時に所定のエリア内にいる人々を保護するための放送を行うための、屋内外で使用される音声補強システムの性能要件を規定する。EN60849の基準は、ラインの断線があっても警告機能を保障する冗長システムを要件とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拡声システムは、スピーカラインに一以上の分岐を有するため信号が分岐して伝送される。今までは、分岐したスピーカラインを有する拡声システムの冗長性を保障する解決策はなかった。
【0005】
ここに開示された発明の一つの目的は、分岐した信号伝送路を用いる拡声システムの放送の信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、拡声システムを含む。拡声システムは、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカと、分岐伝送路の起点である第1分岐点で伝送媒体に接続される第1分岐監視装置と、分岐伝送路の終点である第2分岐点で伝送媒体に接続される第2分岐監視装置と、を備える。第1分岐監視装置は、伝送信号を主要伝送路で伝送する間、主要伝送路から分岐伝送路に伝送信号を伝送する。第2分岐監視装置は、伝送信号を主要伝送路で伝送する間、主要伝送路から分岐伝送路に伝送信号を伝送する。
【0007】
本発明の他の態様によれば、拡声システムに接続可能な監視装置が提供される。拡声システムは、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む。伝送媒体は、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含む。監視装置は分岐監視部とスイッチとを含む。分岐監視部は、監視装置が分岐伝送路の終点である分岐点に配されているとき、分岐伝送路から監視装置への伝送信号の伝送を監視する。スイッチは、第1位置にあるときは伝送信号を主要伝送路から分岐伝送路へ通過させ、第2位置にあるときは伝送信号が主要伝送路から分岐伝送路へ通過しないようにする。スイッチは、分岐監視部が伝送信号の伝送を検出しないとき、第2位置から第1位置へと切り換えられる。
【0008】
本発明の更に他の態様によれば、拡声システムに接続可能な監視装置が提供される。拡声システムは、伝送信号を伝送する伝送媒体と、伝送媒体に接続される複数のスピーカとを含む。伝送媒体は、主要伝送路と主要伝送路から分岐する一以上の分岐伝送路とを含み、伝送信号は、通信信号と音声信号とを含む。監視装置は、フィルタとスイッチとを備える。フィルタは、分岐伝送路に接続可能であり、通信信号を減衰させることにより伝送信号をフィルタリングする。スイッチは、第1位置にあるときは伝送信号がフィルタによってフィルタリングされ、第2位置にあるときは伝送信号がフィルタによってフィルタリングされないように分岐伝送路を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、分岐した信号伝送路を用いる拡声システムの放送の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】分岐したスピーカラインで生じた断線状態の拡声システムの概略図
【
図5】
図4に示す監視装置のアイソレータ部の概略図
【
図6】
図4に示す制御装置による動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の選ばれた実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の本発明の実施形態の説明は例示のためであり、添付の特許請求の範囲やその均等物により定義される発明を限定するためのものでないことは、当業者は本開示から理解できる。
<実施形態1>
<拡声システム1>
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る拡声システム1(拡声システムの一例)を概略的に示す。拡声システム1は、大規模な施設や建物内において使用されるものである。本実施形態においては、
図1に示す拡声システム1の左側を「上流側」と呼び、スピーカライン4に沿って増幅器2に近い側とする。また、
図1に示す拡声システム1の右側を「下流側」と呼ぶ。
【0013】
拡声システム1は、増幅器2、複数のスピーカ3、スピーカライン4(伝送媒体の一例)、制御装置5、及び各スピーカ3に対応する複数の監視装置10を有する。
【0014】
増幅器2は、スピーカライン4に接続される。図示は省略するが、増幅器2は変圧器を介してスピーカライン4に接続される。
監視装置10は、スピーカライン4に直列接続される。スピーカ3は、スピーカライン4に並列接続される。制御装置5もまた、スピーカライン4に接続される。
【0015】
スピーカライン4は、
図1に示すように、2線式のワイヤ又はケーブルであってもよい。スピーカライン4は、主要伝送路4−1(主要伝送路の一例)と、主要伝送路4−1から分岐する分岐伝送路4−2(分岐伝送路の一例)とを有する。分岐伝送路4−2は複数のスピーカ3に接続される。分岐伝送路4−2は、スピーカライン4の下流側(
図1の右側)において主要伝送路4−1に合流する。スピーカライン4の主要伝送路4−1は、ループ状に配されている。
【0016】
スピーカライン4は、スピーカ3の電源供給ラインであってもよい。本実施形態における電源は直流電流(DC:Direct Current)電源である。
拡声システム1では、増幅器2は、拡声システム1で送信される音声信号を出力する。音声信号は、20kHz以下の周波数を有していてもよい。音声信号は、電源(図示省略)から供給される直流電流に重畳されてスピーカライン4を伝送される。制御装置5は、通信信号を生成し出力する。通信信号は、60kHz以上の周波数であってもよい。そして通信信号は、スピーカライン4上で送信される音声信号及び直流電流に重畳される。音声信号と通信信号とを含む重畳信号(伝送信号の一例)は、スピーカライン4で送信される。
【0017】
監視装置10は、制御装置5によって間欠的又は連続的にポーリングされる。ポーリング信号は、通信信号の一例であって、制御装置5によって生成され、指定された監視装置10に送信される。ポーリング信号を受信した指定の監視装置10は、応答信号を生成し、スピーカライン4を介して制御装置5に送信する。応答信号が所定時間内に受信されない場合、指定された監視装置10が応答しないと考えられ、スピーカライン4のショート及び/又は断線による拡声システム1の障害や不通があると結論付けられる。
<<通常状態>>
【0018】
図1に示すように拡声システム1において障害や断線が検知されていない通常状態においては、増幅器2からの重畳信号S−1はスピーカライン4を下流側に伝送される。そして重畳信号S−1は、主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方によって伝送される。重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2を通過し監視装置10bに到達する。監視装置10aは、
図1及び
図2に示すように分岐伝送路4−2の起点である分岐点(第1分岐点の一例)に配されている。監視装置10aは、主要伝送路4−1から受信した重畳信号S−1を、主要伝送路4−1を通過させると同時に、分岐伝送路4−2に伝送する。
【0019】
別の監視装置10bは、
図1及び
図2に示すように、分岐伝送路4−2の終点である別の分岐点(第2分岐点の一例)に配される。監視装置10bは、重畳信号S−1に主要伝送路4−1を通過させつつ、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1を受信する。監視装置10bは、分岐伝送路4−2から受信した重畳信号S−1を監視する。
<<断線状態>>
【0020】
図2に示すように、障害や断線が分岐伝送路4−2で発生した場合、重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2から監視装置10bによって受信されなくなる。監視装置10bは、重畳信号S−1が分岐伝送路4−2から受信されるかどうかを検出する。監視装置10bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、監視装置10bは分岐伝送路4−2において何らかの障害や断線があると判定し、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2への重畳信号S−2の伝送を開始する。同時に、監視装置10bは、主要伝送路4−1を介して受信した重畳信号S−1を下流側に伝送する。
【0021】
よって、分岐伝送路4−2に断線や障害が生じて、分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する監視装置10aから受信する重畳信号S−1が分岐伝送路4−2を通過できなくなっても、分岐伝送路4−2における重畳信号の伝送は、分岐伝送路4−2の終点である他の分岐点に位置する他の監視装置10bにより回復可能となる。この結果、分岐伝送路4−2は拡声システム1の冗長性によって安全性が維持できる。
ここで、拡声システム1におけるスピーカライン4に接続される各装置について詳細に説明する。
<制御装置5>
【0022】
図3は、制御装置5の構成を概略的示す。制御装置5は、所定の通信プロトコルに従ってスピーカライン4上の通信制御を行う。制御装置5は、監視装置10全てに対しポーリングを行い、拡声システム1における障害や断線の発生をチェックする。ポーリングは、監視装置10、スピーカ3、及びスピーカライン4の動作状態をチェックするための自動的且つ連続的な検査である。簡略化のため、図面では、スピーカライン4は単一の線で示している。
【0023】
制御装置5は、フィルタ部51、受信部53と、送信部54と、A/D変換器55と、D/A変換器56と、CPU57(プロセッサの一例)とを有する。
フィルタ部51は、スピーカライン4に接続される。フィルタ部51は、応答信号を含む通信信号を通過させ、その他の信号を減衰させるように設計されているバンドパスフィルタを有する。
【0024】
受信部53及び送信部54は、CPU57からの指令に応じてスイッチ(図示省略)によりスピーカライン4に対し信号を送受信するように切り換えられる。受信部53は、通信信号、例えば、スピーカライン4に接続された各監視装置10からの応答信号をフィルタ部51を介して受信する。そして受信部53は、A/D変換器55を介してCPU57に通信信号を送信する。送信部54は、CPU57からD/A変換器56を介して受信した通信信号をスピーカライン4上の監視装置10に送信する。CPU57から受信する通信信号は、例えばポーリング信号である。
【0025】
A/D変換器55は、アナログ通信信号をCPU57で処理されるデジタル通信信号に変換する。D/A変換器56は、CPU57によって処理されたデジタル通信信号をアナログ通信信号に変換する。
【0026】
CPU57は、通信信号の送受信を制御する。CPU57はポーリング信号を生成し、スピーカライン4に接続された指定の監視装置10に送信する。ポーリング信号は、指定の監視装置10のアドレスデータを含む。CPU57はまた、指定の監視装置10から応答信号を受信する。
【0027】
CPU57は、各監視装置10に連続的にポーリング信号を送信してもよく、各指定された監視装置10から対応する応答信号を受信したかどうかを判定し、これにより拡声システム1の状態を検出する。そしてCPU57は、拡声システム1の状態に関する情報を出力する。例えば、CPU57は、拡声システム1の障害データや情報を、拡声システム1の動作を監視し管理する外部の管理システムにネットワークを介して出力する。CPU57は、メモリ(図示省略)から読み込んだプログラムに従って拡声システム1の上記動作を実行してもよい。
<監視装置10>
【0028】
図4は、監視装置10の構成を概略的に示す。本実施形態においては、
図4に示す監視装置10の左側が上流側であり、
図4に示す監視装置10の右側が下流側である。監視装置10は、分岐点にある監視装置10a又は監視装置10bとして機能し、これらは分岐点にない監視装置とは動作が異なる。監視装置10a(以下、第1分岐監視装置10aと呼ぶ)は、
図1及び
図2に示すように、重畳信号S−1が分岐伝送路4−2に伝送される開始分岐点に設けられる。監視装置10b(以下、第2分岐監視装置10bと呼ぶ)は、重畳信号S−1が主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方から受信される終点の分岐点に設けられる。
【0029】
監視装置10は、監視装置10を識別するための固有のアドレス(例えば、IPアドレス)又は識別情報を有する。監視装置10は、スピーカライン4に接続されたアイソレータ部11と、フィルタ部12(フィルタ部の一例)と、受信部13と、送信部14と、A/D変換器15と、D/A変換器16と、CPU(中央演算処理部)17(制御部の一例)と、主要監視部18aと、分岐監視部18bと、直流電源19とを有する。監視装置10はまた、分岐点40で主要
伝送路4−1から分岐する分岐伝送路4−2に接続されるスイッチ20(スイッチの一例)を有する。監視装置10はまた、入力部60を有する。入力部60はユーザにより操作され、分岐監視部18bに対する選択信号を生成し出力する。分岐監視部18bは、後述するように入力部60からの選択信号に応じてスイッチ20を切り換える。
【0030】
アイソレータ部11はスピーカライン4上に設けられている。
図5に示すように、アイソレータ部11は、スイッチ111と、コンパレータ112と、リレー制御部113とを有する。通常状態では、スピーカライン4は連続的に直流電流を送る。コンパレータ112は、スイッチ111の両端の電圧を比較し、比較結果をリレー制御部113に出力する。スピーカライン4上の監視装置10間において障害や断線が発生した場合、電流が止まり、スイッチ111の両端間の電圧に差ができる。リレー制御部113は、同電圧の変化を監視し検出して、スピーカライン4の障害や断線の発生を判定する。リレー制御部113がスピーカライン4に障害や断線が発生したと判定すると、リレー制御部113がスイッチ111を開くことにより、監視装置10はスピーカライン4から分離される。この結果、分離された監視装置10は通信信号を送信できなくなり、制御装置5は、応答信号が受信されない監視装置10周辺で障害や断線が発生したことを判定できる。
【0031】
図4に示すフィルタ部12は、スピーカライン4に接続される。フィルタ部12は、通信信号を通過させその他の信号を減衰させるように設計されたバンドパスフィルタを有する。
【0032】
受信部13及び送信部14は、CPU17からの指令に応じてスイッチ(図示省略)によりスピーカライン4に対し信号を送受信するように切り換えられる。受信部13は、通信信号、例えば、制御装置5からのポーリング信号を受信する。そして受信部13は、A/D変換器15を介してCPU17に通信信号を送信する。送信部14は、CPU17からD/A変換器16を介して受信した通信信号、例えば応答信号を制御装置5に送信する。
【0033】
A/D変換器15は、アナログ通信信号をCPU17により処理されるデジタル通信信号に変換する。D/A変換器16は、CPU17に処理されたデジタル通信信号をアナログ通信信号に変換する。A/D変換器15及びD/A変換器16はCPU17からの指令に応じて切り換えられる。
【0034】
CPU17は、A/D変換器15及びD/A変換器16を介して受信部13及び送信部14に接続される。CPU17は、監視装置10のアドレスデータが受信した通信信号に含まれるデータと合致するかどうかを判定することにより、受信した通信信号が監視装置10自身に対するものであるかどうかを判定する。アドレスデータが自身のアドレスと合致すれば、CPU17は応答信号を生成し制御装置5に送信する。CPU17はまた、対応するスピーカ3を制御する。CPU17は、メモリ(図示省略)から読み出されたプログラムに従ってこれらの動作を実行してもよい。
【0035】
主要監視部18aはスピーカライン4の主要伝送路4−1に接続される。主要監視部18aは主要伝送路4−1を通過する重畳信号S−1を監視する。
【0036】
分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2が主要伝送路4−1から分岐する分岐点40でスピーカライン4の分岐伝送路4−2に接続される。分岐監視部18bは、監視装置10が第2分岐監視装置10bとして設定されたときのみ動作する。分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2からスイッチ20への重畳信号S−1の通過を監視する。重畳信号S−1の伝送は、例えば電圧変化をモニタリングすることによって検出されてもよい。分岐監視部18bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、分岐監視部18bは信号を生成し、スイッチ20をONに切り換える。
【0037】
直流電源19はスピーカライン4から受信される直流信号を受信する。直流信号は整流されて監視装置10に電力を供給する。
スイッチ20は、ON(第1位置の一例)であるとき、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させる。スイッチ20がOFF(第2位置の一例)にあるとき、主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2への重畳信号S−1の通過は遮られる。ON及びOFFは逆に適用されてもよい。監視装置10が第1分岐監視装置10aである場合、スイッチ20はONであることにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させる。監視装置10が第2分岐監視装置10bである場合、スイッチ20は最初OFFであることにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−1を通過させない。
【0038】
第2分岐監視装置10bにおいては、分岐監視部18bは分岐伝送路4−2からスイッチ20への重畳信号S−1の通過を監視するよう動作する。分岐監視部18bが分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しないと、分岐伝送路4−2における断線や障害の発生を示していることになる。そして分岐監視部18bはスイッチ20をONに切り換える信号を送信し、これにより主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ重畳信号S−
2が伝送される。監視装置10が第1分岐監視装置10aでも第2分岐監視装置10bでもない場合(以下、非分岐監視装置10と呼ぶ)、スイッチ20はOFFに切り換えられる。
【0039】
第2分岐監視装置10bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、検出信号を生成し主要伝送路4−1を介して制御装置5に送信する。制御装置5は、検出信号を第2分岐監視装置10bから受信すると、当該分岐監視装置10bに接続された分岐伝送路4−2で断線又は障害が発生したことが分かる。よって、制御装置5は、第2分岐監視装置10bから送信される検出信号に含まれるアドレスデータに基づいて、どの分岐路に断線又は障害があるのかを特定することができる。
【0040】
入力部60は手動等の手段により操作される。入力部60はユーザによって操作され、選択信号を生成し分岐監視部18bに出力する。スイッチ20は、分岐監視部18bからの選択信号に応じてON又はOFFに切り換えられる。これにより、監視装置10は、第1分岐監視装置10a、第2分岐監視装置10b、非分岐監視装置10のいずれかに設定される。
【0041】
選択信号は以下のいずれかである。
(i)監視装置10が分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する第1分岐監視装置10aとして設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をONに維持する信号
【0042】
(ii)監視装置10が分岐伝送路4−2の終点である分岐点に位置する第2分岐監視装置10bとして設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をOFFに維持する信号、又は
【0043】
(iii)監視装置10が分岐点に位置しない非分岐監視装置10として設定される場合、分岐監視部18bを作動させてスイッチ20をOFFのままとする信号
監視装置10は入力部60の設定に応じて動作する。
<拡声システム1の動作>
【0044】
拡声システム1の動作時において、音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は増幅器2及び制御装置5から送信される。重畳信号S−1は主要伝送路4−1を伝送される。第1分岐監視装置10aにおいて、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2に伝送されると同時に、主要伝送路4−1を伝送される。重畳信号S−1はそして、分岐伝送路4−2を介して第2分岐監視装置10bに伝送される。
【0045】
分岐監視装置10bの分岐監視部18bが、分岐伝送路4−2で発生した断線や障害により重畳信号S−2の伝送を検出しなくなると、分岐監視装置10bの分岐監視部18bによりスイッチ20がONに切り換えられる。そして、主要伝送路4−1を介して伝送された重畳信号S−1から分流する重畳信号S−2が、分岐監視装置10bによって分岐伝送路4−2に伝送される。そして重畳信号S−2は分岐伝送路4−2を介して第1分岐監視装置10a、そして主要伝送路4−1に伝送される。
<監視装置10の動作>
【0046】
図6は、
図4に示す実施形態1に係る分岐監視装置10bによって実行させる処理のフローチャートである。
監視装置10が第2分岐監視装置10bとして設定されている場合、ステップS101〜S105の処理が実行される。以下では説明していないが、各監視装置10の主要監視部18aは、当該監視装置10が分岐監視装置であるかどうかに関わらず、常に伝送路を監視している。
【0047】
ステップS101:監視装置10が第2分岐監視装置10bである場合、ステップS102に進む。
ステップS102:音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2から分岐監視装置10bによって受信される。このステップでは、スイッチ20はOFFであるため、重畳信号S−1はスイッチ20を通過できない。またこのステップでは、分岐監視部18bは分岐伝送路4−2を監視する。
【0048】
ステップS103:分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2を介した重畳信号S−1の伝送を検出したかどうかを判定する。重畳信号S−1の伝送が検出されない場合、ステップS104に進む。
【0049】
ステップS104:分岐監視部18bはスイッチ20をONに切り換える。これにより重畳信号S−2がスイッチ20を介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2へ通過できるようになる。
【0050】
ステップS105:検出信号が生成され、主要伝送路4−1を介して制御装置5に送信される。
なお、第1分岐監視装置10aが重畳信号S−1に含まれる通信信号であるポーリング信号を受信し、ポーリング信号がアドレスデータに基づいて第1分岐監視装置10aを宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1にも分岐伝送路4−2にも送信されない。ポーリング信号が第1分岐監視装置10a以外の監視装置を宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方に送信される。
【0051】
同様に、第2分岐監視装置10bがポーリング信号を受信し、ポーリング信号が第2分岐監視装置10bを宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は第2分岐監視装置10bの下流側の主要伝送路4−1に送信されない。ポーリング信号が第2分岐監視装置10b以外の監視装置を宛て先とするものと判定されると、ポーリング信号は下流側の主要伝送路4−1に送信される。
<実施形態1の効果>
【0052】
上記実施形態の拡声システム1によれば、第2分岐監視装置10bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合のみ、重畳信号S−2を分岐伝送路4−2に伝送することを許可する。このため、分岐伝送路4−2において断線や障害が発生して重畳信号S−1が分岐伝送路4−2を通過できなくなっても、重畳信号S−1の分岐伝送路4−2の伝送は他の監視装置10bによって回復できる。この結果、拡声システム1の分岐伝送路4−2は冗長性を利用したり安全性を確保できる。
【0053】
更に、分岐監視装置10bにはスイッチ20が設けられ、通常状態において重畳信号S−1の分岐伝送路4−2から主要伝送路4−1への通過を遮るようにOFFにするため、通信信号が主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方を介して下流側の監視装置10に送信されることを防ぐことができる。
【0054】
動作においては、実施形態1の拡声システム1は以下のように動作する。
通常状態においては、
図1に示すように拡声システム1では障害や断線は検出されない。この通常状態において、第1分岐監視装置10aは、スイッチ20をONにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2の双方への通過を許可する。分岐監視装置10bは、スイッチ20をOFFにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1の通過を許可しつつ、重畳信号S−1の分岐伝送路4−2から分岐監視装置10bへの伝送を監視する。非分岐監視装置10は、スイッチ20をOFFにしており、重畳信号S−1の主要伝送路4−1の通過を許可する。この通常状態においては、重畳信号S−1は、各監視装置10及び対応するスピーカ3に到達することができる。よって、主要伝送路4−1及び分岐伝送路4−2に接続されたスピーカ3は全て、重畳信号S−1に含まれる音声信号に基づく音声を出力できる。
【0055】
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の例えば監視装置10−2と監視装置10−3との間のポイントで障害や断線が生じた不通状態では、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2を介して分岐監視装置10bに到達しない。分岐監視装置10bの分岐監視部18bは、分岐伝送路4−2からの重畳信号S−1の伝送を検出しない場合、分岐監視部18bはスイッチ20をOFFからONに切り換える。これにより、重畳信号S−2がスイッチ20を介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に伝送されるようになる。このとき、
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の監視装置10−1及び10−2は分岐監視装置10aから重畳信号S−1を受信し、分岐伝送路4−2上の監視装置10−3及び10−4は分岐監視装置10bから重畳信号S−2を受信する。このため、分岐伝送路4−2で断線が発生しても、分岐伝送路4−2を介した音声放送を継続することができる。
【0056】
よって、拡声システム1では、分岐した信号伝送路を用いた放送の信頼性を向上させることができる。
<実施形態1の変形例>
【0057】
監視装置10は分岐監視部18bを有していなくともよい。代わりに、CPU17がスイッチ20に接続され、スイッチ20に作動信号を送信してもよい。CPU17は制御装置5から指令信号(通信信号の一例)を受信すると、作動信号によりスイッチ20をONに切り換える。本例では、入力部60はユーザによって操作されスイッチ20に接続される。入力部60が選択信号を生成し、スイッチ20に出力することにより、上記実施形態1と同様に、監視装置10は第1分岐監視装置10a、第2分岐監視装置10b、或いは非分岐監視装置10に設定される。
【0058】
本例では、制御装置5は監視装置10自身を識別する識別情報だけでなく、監視装置10が分岐伝送路4−2にあるかどうかを識別する識別情報を保存する。
制御装置5は識別情報に基づき各監視装置10にポーリングする。例えば、
図2に示すように、分岐伝送路4−2上の監視装置10−2と監視装置10−3との間のポイントで障害や断線が生じたとき、制御装置5は監視装置10−2からは応答信号を受信するが、監視装置10−3からは受信できない。監視装置10−3からの応答を検出しないと、制御装置5は識別情報に基づき分岐伝送路4−2上に監視装置10−3があるかどうかを判定する。制御装置5はポーリングされた監視装置10−3より応答信号を受信できず、そのポーリングされた監視装置10−3が分岐伝送路4−2上にあると判定した場合は、分岐伝送路4−2は監視装置10−3の近辺で障害又は断線があると判定できる。
【0059】
そして制御装置5は、指令信号を生成し、主要伝送路4−1を介して分岐伝送路4−2の終点である分岐点に接続された分岐監視装置10bに送信する。制御装置5から指令信号を受信すると、分岐監視装置10bのCPU17はスイッチ20に作動信号を送信し、ONに切り換える。この結果、スイッチ20により重畳信号S−2が分岐監視装置10bを介して主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に通過できるようになる。
<実施形態2>
<拡声システム201>
【0060】
図7は、実施形態2に係る拡声システム201を概略的に示す。実施形態1と同様の機能を有する部材については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態においては、第2分岐監視装置210bは、分岐伝送路4−2において障害や断線が検出されたかどうかにかかわらず、常に主要伝送路4−1から分岐伝送路4−2に重畳信号を伝送する。
<監視装置210>
【0062】
図8は、実施形態2に係る監視装置210を概略的に示す。監視装置210は、構成上実施形態1の監視装置10と異なり、分岐伝送路4−2に接続されるフィルタ225(フィルタの一例)とスイッチ227(スイッチの一例)とを有する。フィルタ225は、重畳信号S−1に含まれる通信信号を減衰させるように設計されている。スイッチ227はフィルタ225の作動及び非作動を行う。フィルタ225の作動時、重畳信号S−1はフィルタ225のある伝送路4−2Rを通過する。フィルタ225の非作動時、重畳信号S−1はフィルタ
225のない伝送路4−2Fを通過する。
【0063】
入力部260はユーザにより操作され、スイッチ227に選択信号を出力する。入力部260からの選択信号に応じて、スイッチ227はON又はOFFに切り換えられ、監視装置
210が第1分岐監視装置210a、第2分岐監視装置210b、非分岐監視装置210のいずれかに設定される。
選択信号は以下のいずれかである。
【0064】
(i)監視装置210が分岐伝送路4−2の終点である分岐点に位置する第2分岐監視装置210bとして設定されている場合、フィルタ225を作動させるためスイッチ227をON(第1位置の一例)に維持する信号
【0065】
(ii)監視装置
210が分岐伝送路4−2の起点である分岐点に位置する第1分岐監視装置210aとして設定されている場合、フィルタ225を非作動にするためスイッチ227をOFF(第2位置の一例)に維持する信号、又は
【0066】
(iii)監視装置
210が分岐点に位置しない非分岐監視装置
210として設定される場合、スイッチ227をOFFのままとする信号
【0067】
ONとOFFは逆に適用されてもよい。
本例では、重畳信号は常時分岐伝送路4−2を双方向に伝送されるため、実施形態1のように監視装置210に信号伝送を監視する分岐監視部18bやスイッチ20を設けなくともよい。
<拡声システム201の動作>
【0068】
拡声システム1の動作時において、音声信号及び通信信号を含む重畳信号S−1は増幅器2及び制御装置5から送信される。実施形態1と同様に、重畳信号S−1は主要伝送路4−1を伝送される。第1分岐監視装置210aにおいて、重畳信号S−1は分岐伝送路4−2に伝送されると同時に、主要伝送路4−1を伝送される。重畳信号S−1は、事前にスイッチ227を用いて設定されている、フィルタのない伝送路4−2Fを通過する。そして重畳信号S−1は、分岐伝送路4−2によって第2分岐監視装置210bに伝送される。第2分岐監視装置210bにおいては、重畳信号S−1は、事前にスイッチ227を用いて設定されている、フィルタ225が設けられた伝送路4−2Rを通過する。同時に第2分岐監視装置210bは、重畳信号S−1を主要伝送路4−1に通過させる。
【0069】
フィルタされた伝送信号S−2(伝送信号の一例)は、フィルタ225によって重畳信号S−1をフィルタリングしたものであって、第2分岐監視装置210bにより分岐伝送路4−2に伝送される。第2分岐監視装置210bにおいて、重畳信号S−1はフィルタ225を含む伝送路4−2Rを通過する。フィルタ225は重畳信号S−1に含まれる通信信号を減衰させる。残りの信号(つまり、通信信号以外)は、主に音声信号であるが、フィルタされた伝送信号S−2として第2分岐監視装置210bを通過する。そしてフィルタされた伝送信号S−2は分岐伝送路4−2を通過し第1分岐監視装置210aに向かう。第1分岐監視装置210aにおいては、フィルタされた伝送信号S−2はフィルタのない伝送路4−2Fを通過する。
【0070】
拡声システム201では、分岐伝送路4−2に接続された各監視装置210(例えば、
図7に示す監視装置210−1から210−4)は、重畳信号S−1に含まれるポーリング信号の応答信号を制御装置5に送信する。フィルタされた伝送信号S−2は通信信号を含まないため、フィルタされた伝送信号S−2に対する応答信号は生成されない。換言すると、制御装置5は重畳信号S−1に対する応答信号のみ受信する。よって制御装置5は分岐伝送路4−2の障害や断線を適切に検出することができる。
【0071】
監視装置
210bが重畳信号S−2をフィルタ225のない伝送路4−2Fを通過させ分岐伝送路4−2上の全ての監視装置210−1から210−4が重畳信号S−1とS−2に含まれるポーリング信号を受信するとする。監視装置210−1から210−4は、重畳信号S−1及びS−2それぞれの応答信号を制御装置5に送信することになる。この場合、分岐伝送路4−2に障害や断線が生じて制御装置5が重畳信号S−1に対する応答信号を受信できなくなっても、制御装置5は重畳信号S−2の応答信号を受信できる。よって、この場合、制御装置5は障害や断線を適切に検出できなくなる。
<実施形態2の効果>
【0072】
実施形態2によれば、実施形態1の効果に加え、第2分岐監視装置210bは分岐伝送路4−2から第2分岐監視装置210bへの重畳信号S−1の伝送を監視又は検出する必要がない。よって、拡声システム
201は実施形態1よりも簡単な動作で冗長な分岐伝送路を利用できる。
【0073】
動作において、実施形態2に係る拡声システム201は次のように動作する。
通常状態において、
図7に示すように、拡声システム201において障害や断線は検出されない。この通常状態においては、スイッチ227がOFFに維持されフィルタ225が非作動である第1分岐監視装置210aは、重畳信号S−1を主要伝送路4−1と分岐伝送路4−2の双方に通過させる。スイッチ227がONに維持されフィルタ225が作動する分岐監視装置210bは、作動されたフィルタ225のみ重畳信号S−1を通過させる。同時に、第2分岐監視装置210bは重畳信号S−1に主要伝送路4−1を通過させる。フィルタ225は、主要伝送路4−1から受信した重畳信号にS−1に含まれる通信信号を減衰させ、主に音声信号である残りの信号は、フィルタされた伝送信号S−2として第2分岐監視装置210bを通過する。この通常状態では、重畳信号S−1は各監視装置
210及び対応するスピーカ3に到達することができる。よって、主要伝送路4−1と分岐伝送路4−2に接続された全てのスピーカ3は、重畳信号S−1に含まれる音声信号に基づく音声を出力することができる。更に、ポーリング信号は重畳信号S−1のみに含まれている。
図7に示す分岐伝送路4−2に接続された監視装置210−1、210−2、210−3、210−4は、第1分岐監視装置210aから送信される重畳信号S−1に含まれる通信信号によりポーリングされると、通信信号に対する応答信号を生成し送信する。
【0074】
図7に示す分岐伝送路4−2上の例えば監視装置210−2と監視装置210−3間のポイントにおいて障害や断線が生じた断線状態においては、監視装置210−3及び210−4は重畳信号S−1を受信できないため、応答信号を生成し送信しない。ポーリングされた監視装置210−3や210−4から応答信号を受信しなかった場合、制御装置5は、監視装置210−3や210−4の上流側の分岐伝送路4−2に断線や障害が生じたものと判断する。この断線状態においても、監視装置210−3や210−4は第2分岐監視装置210bから伝送信号S−2を受信できる。よって、監視装置210−3及び210−4に接続されたスピーカ3は、伝送信号S−2によって伝送される音声信号に基づき音声を出力できる。このため、分岐伝送路4−2を介した音声放送は、分岐伝送路4−2に障害や断線が生じても維持される。
<その他実施形態>
【0075】
上記実施形態は、二以上の分岐を有するスピーカラインを有する拡声システムに適用できる。例えば、分岐伝送路4−2(
図1)が更に一以上の分岐伝送路に分岐していてもよく、この場合、分岐伝送路4−2は分岐伝送路4−2から分岐する分岐伝送路に対しては主要伝送路となる。
【0076】
主要監視部18a又は分岐監視部18bは監視装置に含まれていなくてもよく、単独或いはその他の装置と共にスピーカライン4に接続されていてもよい。
【0077】
直流電流の代わりに交流電流をスピーカライン4に供給してもよい。
拡声システム1
又は201にはデジタル音声信号を適用してもよい。この場合、音声信号はデジタルからアナログ変換され、変調されてスピーカライン4上の直流電流に重畳される。変調された音声信号は一以上の監視装置10
又は210のアドレスデータを含み、一以上の指定された監視装置10
又は210に送信される。
(用語解釈全般)
【0078】
本開示の範囲を理解するのに、ここで使用される「備える」の用語やその派生語は、説明した特徴、要素、部材、群、整数、及び/又はステップを特定する制限のない用語であることを意図し、説明していない他の特徴、要素、部材、群、整数、及び/又はステップがあることを排除するものではない。これはまた、同様の意味を有する「含む」、「有する」、及びその派生語に対しても同様である。
【0079】
装置の部材、区分、部分を説明するためにここで使用する「構成する」の用語は、所望の機能を実行するために構成された及び/又はプログラムされた、ハードウエア及び/又はソフトウエアを含む。
【0080】
本発明を例示するため一部の実施形態のみを選択したが、添付の特許請求の範囲で定義される発明の範囲を逸脱しない限り多様な変更や変形が可能であることは、当業者であれば本開示から理解されるものである。例えば、各部材の大きさ、形状、位置、或いは向きは、必要及び/又は希望に応じて変更が可能である。互いが直接接続し或いは当接しているように示された部材は、間に仲介する構造が存在する場合もある。一つの要素の複数の機能は二つのものによって実行されてもよいし、その逆であってもよい。一つの実施形態の構成及び機能は他の実施形態に適用することもできる。フローチャートにおけるステップの一部は順序を変えて実行してもよい。効果の全てが特定の実施形態に同時に存在する必要はない。先行技術とは異なる各特徴はまた、単独或いは組み合わせにより、かかる特徴によって具体化された構成上及び/又は機能上の概念を含む出願人による更なる発明をそれぞれ記載するものと考えられるべきである。よって、本発明に係る上記実施形態の説明は、例示であって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される発明を限定するためのものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、大規模施設や建物に使用される拡声システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 拡声システム
2 増幅器
3 スピーカ
4 スピーカライン(伝送媒体の一例)
5 制御装置
10 監視装置
10a 第1分岐監視装置(第1分岐監視装置の一例)
10b 第2分岐監視装置(第2分岐監視装置の一例)
11 アイソレータ部
12 フィルタ部(フィルタ部の一例)
13 受信部
14 送信部
15 A/D変換器
16 D/A変換器
17 CPU(制御部の一例)
18a 主要監視部
18b 分岐監視部
19 直流電源
20 スイッチ(スイッチの一例)
40 分岐点
51 フィルタ部
53 受信部
54 送信部
55 A/D変換器
56 D/A変換器
57 CPU
60 入力部
201 拡声システム
210 監視装置
225 フィルタ
227 スイッチ
260 入力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0063755号明細書
【国際調査報告】