(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-526434(P2015-526434A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(54)【発明の名称】ペプチド−デンドリマーコンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20150814BHJP
A61K 47/48 20060101ALI20150814BHJP
A61K 47/42 20060101ALI20150814BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20150814BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20150814BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20150814BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20150814BHJP
【FI】
C07K14/00ZNA
A61K47/48
A61K47/42
A61K45/00
A61P1/16
A61P25/00
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2015-526845(P2015-526845)
(86)(22)【出願日】2013年8月14日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】CA2013050621
(87)【国際公開番号】WO2014026283
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】61/682,991
(32)【優先日】2012年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514137791
【氏名又は名称】アンジオケム インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100169579
【弁理士】
【氏名又は名称】村林 望
(72)【発明者】
【氏名】デミュール,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ラロック,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ガオチエン
(72)【発明者】
【氏名】トリパシー,サスミタ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC16
4C076CC47
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4C076EE59
4C076FF31
4C084AA17
4C084NA13
4C084NA15
4C084ZA021
4C084ZA022
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4C084ZA662
4C084ZA751
4C084ZA752
4C085HH01
4C085JJ20
4C085LL05
4C085LL13
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA50
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、血液脳関門を横切って、LRP-1受容体を発現する細胞を含むある種の細胞型の中へ1つ以上の治療剤、診断薬又は造影剤を送達するための、複数の標的指向化ペプチド及びそのような作用物質にコンジュゲートしたデンドリマーに関する。標的指向化ペプチド及び治療剤、診断薬又は造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を作製する方法も記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
(式中、
Dは、第1の作用物質であり、
X
コアは、pの数の枝を有するデンドリマーのコア部分であり、pは、1から12までの整数であり、
X
枝は、前記デンドリマーの枝部分であり、各X
枝は、X
コアの枝又は別のX
枝の枝に結合し、各X
枝は、b個の枝を有し、bは、2から8までの整数であり、
lは、前記デンドリマーのX
枝枝の連続する層の数であり、2から10までの整数であり、
X
n番目は、前記デンドリマーのn個の表面の枝の1つであり、X
枝部分のあるb枝に結合し、n=p(b)
lであり、nは、≦512であり、
A
mは、X
n番目に結合した標的指向化ペプチドであり、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と実質的に同一のアミノ酸配列又はその機能的断片を含み、
mは、≦nの正の整数であり、
D'は、任意選択で存在する第2の作用物質であり、1つ以上のA
mに結合するか、又は1つ以上のA
mを置き換えて、1つ以上のX
n番目に直接結合し、化合物中のD'の数は、≦nであり、
D、D'及びA
mを除く前記デンドリマーの分子量は、≦500キロダルトンである)
を含む化合物。
【請求項2】
式:
【化2】
(式中、
pは、2から6の間の整数であり、
bは、2から4までの整数であり、
lは、2から5までの整数である)
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
【化3】
(式中、
Dは、第1の作用物質であり、
X
コアは、pの数の枝を有するデンドリマーのコア部分であり、pは、2から6までの整数であり、前記コア部分は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン、リジン及びプロピレンアミンからなる群から選択され、
X
枝は、前記デンドリマーの枝部分であり、各X
枝は、X
コアの枝又は別のX
枝の枝に結合し、各X
枝は、b個の枝を有し、bは、1から4までの整数であり、
lは、前記デンドリマーのX
枝枝の連続する層の数であり、0から4までの整数であり、
X
n番目は、前記デンドリマーのn個の表面の枝の1つであり、X
枝部分のあるb枝に結合し、n=p(b)
lであり、nは、≦256であり
A
mは、X
n番目に結合した標的指向化ペプチドであり、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と実質的に同一のアミノ酸配列又はその機能的断片を含み、
mは、≦nの正の整数であり、
D'は、任意選択で存在する第2の作用物質であり、1つ以上のA
mに結合するか、又は1つ以上のA
mを置き換えて、1つ以上のX
n番目に直接結合し、化合物中のD'の数は、≦nであり、
D、D'及びA
mを除く前記デンドリマーの分子量は、≦500キロダルトンである)
を含む化合物。
【請求項4】
【化4】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記nが、≦128である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記nが、≦64である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記nが、≦32である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記デンドリマーの前記分子量が、≦100キロダルトンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記デンドリマーの前記分子量が、≦50キロダルトンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記デンドリマーの前記分子量が、≦25キロダルトンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記コア部分が、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン及びプロピレンジアミンからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記デンドリマーが、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記コア部分が、リジン又はリジン類似体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記デンドリマーが、ポリリジンである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記コア部分が、プロピルアミンである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
前記デンドリマーが、ポリ(プロピレンイミン)(POPAM)である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記枝部分が、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、プロピルアミン、プロピレンイミン、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン及びリジンからなる群から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記枝部分が、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、プロピルアミン、プロピレンイミン、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン及びリジンのいずれか1つの誘導体である、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記デンドリマーの少なくとも2つの前記表面の枝に標的指向化ペプチドが結合している、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
前記デンドリマーの2つより多い表面の枝に標的指向化ペプチドが結合している、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記表面の枝の全てに標的指向化ペプチドが結合している、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記標的指向化ペプチドが、前記表面の枝に、リンカーを介して結合している、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記リンカーが、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー及びアセチレンからなる群から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記リンカーが、共有結合である、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
前記標的指向化ペプチドが、前記表面の枝に、切断可能な連結により結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
前記標的指向化ペプチドが、前記表面の枝に、切断可能でない連結により結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記連結が、エステル連結である、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
前記連結が、マレイミド連結である、請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
前記デンドリマーに結合している前記標的指向化ペプチドの少なくとも1つが、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一のアミノ酸配列又はその断片を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
前記デンドリマーに結合している前記標的指向化ペプチドの少なくとも1つが、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその断片を含む、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記デンドリマーに結合している前記標的指向化ペプチドの全てが、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその断片を含む、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
前記デンドリマーに結合している前記標的指向化ペプチドの少なくとも1つが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
前記標的指向化ペプチドの全てが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
前記標的指向化ペプチドが、Angiopep-2(An2)(配列番号97)である、請求項1から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
前記標的指向化ペプチドが、cys-Angiopep-2(CysAn2)(配列番号113)である、請求項1から34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
前記第1の作用物質が、前記デンドリマーに、反応性基により結合している、請求項1から35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
1つ以上の前記第2の作用物質が任意選択であり、存在する場合、1つ以上の前記Amに、反応性基により結合している、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
1つ以上の前記第2の作用物質が任意選択であり、存在する場合、1つ以上の前記Xn番目に、反応性基により結合している、請求項1から37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
前記反応性基が、マレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド及びアルコキシアミンからなる群から選択される、請求項36から38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
前記反応性基が、アジド基である、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
前記反応性基が、マレイミド基である、請求項39に記載の化合物。
【請求項42】
前記デンドリマーが、前記反応性基に、リンカーにより結合している、請求項1から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
前記反応性基が、前記Am又は前記Xn番目に、リンカーにより結合している、請求項37又は38に記載の化合物。
【請求項44】
前記リンカーが、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレン及び共有結合からなる群から選択される、請求項42又は43に記載の化合物。
【請求項45】
式:
【化5】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項46】
式:
【化6】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項47】
式:
【化7】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項48】
式:
【化8】
(式中、Malは、マレイミドである)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項49】
式:
【化9】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項50】
式:
【化10】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項51】
式:
【化11】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項52】
式:
【化12】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項53】
式:
【化13】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項54】
式:
【化14】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項55】
式:
【化15】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項56】
式:
【化16】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項57】
式:
【化17】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項58】
式:
【化18】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項59】
式:
【化19】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項60】
式:
【化20】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項61】
式:
【化21】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項62】
式:
【化22】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項63】
式:
【化23】
(式中、Cysは、システインであり、Ahxは、アジドヘキサン酸である)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項64】
式:
【化24】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項65】
式:
【化25】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項66】
前記第1の作用物質が、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択される、請求項1から65のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項67】
前記第2の作用物質が、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択される、請求項1から66のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項68】
前記第1の作用物質と前記第2の作用物質とが異なる、請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項69】
前記第1の作用物質と前記第2の作用物質とが同じである、請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項70】
内皮細胞に侵入できるか、又はLRP-1受容体を発現する細胞に侵入できる、請求項1から69のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項71】
LRP-1受容体を発現する前記細胞が、肝臓、腎臓及び脾臓細胞からなる群から選択される、請求項70に記載の化合物。
【請求項72】
血液脳関門を横切ることができる、請求項1から71のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項73】
請求項1から72のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法であって、
(a)少なくとも2つの標的指向化ペプチドを、リンカーを介してデンドリマーに結合させて、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体を形成することと、
(b)1つ以上の第1の作用物質を、リンカーを介して前記デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合させることと、
(c)任意選択で、1つ以上の第2の作用物質を、リンカーを介してステップ(b)で形成した複合体に結合させることと
を含む方法。
【請求項74】
請求項1から72のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法であって、
(a)少なくとも1つの第1の作用物質を、リンカーを介してデンドリマーに結合させて、デンドリマー-第1の作用物質の複合体を形成することと、
(b)少なくとも2つの標的指向化ペプチドを、リンカーを介して前記デンドリマー-第1の作用物質の複合体に結合させることと、
(c)任意選択で、1つ以上の第2の作用物質を、リンカーを介してステップ(b)で形成した複合体に結合させることと
を含む方法。
【請求項75】
前記標的指向化ペプチドのそれぞれが、前記デンドリマーの表面の枝に結合する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の作用物質が、前記デンドリマーのコア部分に結合する、請求項73から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記第2の作用物質が、前記標的指向化ペプチドの少なくとも1つ又は前記表面の枝の少なくとも1つに結合する、請求項73から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記リンカーが、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレン、切断可能なリンカー及び切断可能でないリンカーからなる群から選択される、請求項73から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記リンカーが、共有結合である、請求項73から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記標的指向化ペプチドが前記リンカーに結合する前に、1つ以上のリンカーが前記デンドリマーの前記表面の枝に結合する、請求項73から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の作用物質が前記リンカーに結合する前に、1つ以上のリンカーが前記デンドリマーのコア部分に結合する、請求項73から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の作用物質が前記リンカーに結合する前に、1つ以上のリンカーが前記標的指向化ペプチドに結合する、請求項73から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記第2の作用物質が前記リンカーに結合する前に、リンカーが前記表面の枝に結合する、請求項73から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記標的指向化ペプチドを結合させることが、前記デンドリマーをN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネートと反応させ、その後に、得られた生成物をシステイン残基含有標的指向化ペプチドと反応させることを含む、請求項73から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記標的指向化ペプチドを結合させることが、前記デンドリマーをN-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテートと反応させ、その後に、得られた生成物を前記標的指向化ペプチドのマレイミド誘導体と反応させることを含む、請求項73から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記標的指向化ペプチドの前記マレイミド誘導体が、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An2)(配列番号97)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記標的指向化ペプチドが、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその断片を含む、請求項73から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記標的指向化ペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An2)(配列番号97)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記標的指向化ペプチドが、cys-Angiopep-2(CysAn2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
2つより多い標的指向化ペプチドが、前記デンドリマーに結合する、請求項73から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記第1の作用物質が、前記デンドリマーのコア部分に、反応性基を介して結合する、請求項73から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
1つ以上の前記第2の作用物質が、1つ以上の前記標的指向化ペプチドに、反応性基により結合する、請求項73から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
1つ以上の前記第2の作用物質が、前記デンドリマーの1つ以上の前記表面の枝に、反応性基により結合する、請求項73から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記反応性基が、マレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド及びアルコキシアミンからなる群から選択される、請求項73から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記反応性基が、アジド基である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記反応性基が、マレイミド基である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記デンドリマーが、リンカーにより前記反応性基から分離される、請求項73から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記反応性基が、リンカーにより前記表面の枝又は前記標的指向化ペプチドから分離される、請求項93又は94に記載の方法。
【請求項99】
前記反応性基が、前記コア部分に結合したリンカー上に存在する、請求項91に記載の方法。
【請求項100】
前記リンカーが、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレン、切断可能なリンカー及び切断可能でないリンカーからなる群から選択される、請求項97から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記第1の作用物質が、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択される、請求項73から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記第2の作用物質が、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択される、請求項73から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記第1の作用物質と前記第2の作用物質とが異なる、請求項73から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記第1の作用物質と前記第2の作用物質とが同一である、請求項73から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
請求項1から72のいずれか一項に記載の化合物の薬学的に許容される塩を合成することをさらに含む、請求項73から104のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年8月14日に出願された米国出願第61/682,991号の利益を主張するものであり、この内容は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、標的指向化ペプチド及び1つ以上の治療剤、診断薬又は造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物、並びにそのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脳は、2つの関門系、血液脳関門(BBB)及び血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在により、毒性の可能性がある物質に対して保護されている。BBBは、その表面積がBCSFBの面積のおよそ5000倍大きいので、血清リガンドの取り込みのための主要な経路であると考えられている。BBBを構成する脳の内皮は、多くのCNS障害に対する可能性のある薬物の使用に対する大きな障害となる。一般的な規則として、小さい親油性分子だけがBBBを横断でき、すなわち全身循環血液から脳へと通過できる。CNS障害を処置するための動物研究において見込みのある結果を示す多くの薬物は、サイズがより大きいか又は疎水性がより高い。よって、治療薬として用いられるもののようなペプチド及びタンパク質作用物質は、これらの作用物質に対する脳毛細血管内皮壁の透過性がごくわずかであるので、血液から脳までの輸送から概して排除される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳の疾患の治療は、治療剤のようなその他の場合では効果的な作用物質がBBBを横切ることができないことにより損なわれ得る。よって、高い効率で脳の中へ作用物質を輸送するための新しい方策が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
我々は、今回、複数の標的指向化ペプチドにコンジュゲートされたデンドリマーを含む化合物を開発した。これらの化合物は、高い効率で血液脳関門(BBB)を横切ることができるか又は特定の細胞型(例えば肝臓、肺、脾臓、腎臓及び筋肉)に侵入できる。これらの化合物が1つ以上の作用物質(例えば治療剤又は診断薬)につながれた(例えばコンジュゲートされた)場合に、BBBを横切るか又は特定の細胞型の中への作用物質の輸送の効率は、標的指向化ペプチドに直接連結された作用物質の輸送と比較して増加する。本発明は、このような化合物を生成する方法及び疾患の処置におけるこのような化合物の使用も特徴とする。
【0006】
第1の態様では、本発明は、式:
【化1】
(式中、Dは、第1の作用物質であり、X
コアは、pの数の枝を有するデンドリマーのコア部分であり、pは、1から12までの整数であり(例えば1、2、3、4、6、8、10及び12個の枝)、X
枝は、前記デンドリマーの枝部分であり、各X
枝は、X
コアの枝又は別のX
枝の枝に結合し、各X
枝は、b個の枝を有し、bは、2から8までの整数であり(例えば2、4、6及び8つの枝)、lは、前記デンドリマーのX
枝枝の連続する層の数であり、2から10までの整数であり(例えば2、4、6、8及び10)、X
n番目は、前記デンドリマーのn個の表面の枝の1つであり、X
枝部分のあるb枝に結合し、n=p(b)
lであり、nは、≦512であり(例えば≦500、≦400、≦300、≦200、≦50、≦10又は≦8つの枝)、A
mは、X
n番目に結合した標的指向化ペプチドであり、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と実質的に同一のアミノ酸配列若しくはその機能的断片を含むか、又は式Ia、Ib、IIa、IIb及びIIcからなる群から選択される式を有するペプチドであり、mは、≦nの正の整数であり、D'は、任意選択で存在する第2の作用物質であり、1つ以上のA
mに結合するか、又は1つ以上のA
mを置き換えて(に取って代わり)、1つ以上のX
n番目に直接結合でき、化合物中のD'の数は、≦nであり、D、D'及びA
mを除くデンドリマーの分子量は、≦500キロダルトンである(例えば≦500、≦400、≦300、≦200、≦100、≦50、≦20キロダルトン))を含む化合物を特徴とする。
【0007】
化合物は、式:
【化2】
も含んでよく、ここで、該化合物は、pが、2から6の間の整数であり(例えば2、3、4又は6つの枝)、bが、2から4までの整数であり(例えば2、3又は4つの枝)、lが、2から5までの整数である(例えば2、3、4又は5つの枝)以外は、上記の式と全ての特性を共有する。
【0008】
別の態様では、本発明は、式:
【化3】
(式中、Dは、第1の作用物質であり、X
コアは、pの数の枝を有するデンドリマーのコア部分であり、pは、2から6までの整数であり(例えば2、3、4又は6つの枝)、コア部分は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン、リジン及びプロピレンアミンからなる群から選択され、X
枝は、デンドリマーの枝部分であり、各X
枝は、X
コアの枝又は別のX
枝の枝に結合し、各X
枝は、b個の枝を有し、bは、1から4までの整数であり(例えば1、2、3又は4つの枝)、lは、デンドリマーのX
枝枝の連続する層の数であり、0から4までの整数であり(例えば0、1、2、3又は4つの枝)、X
n番目は、デンドリマーのn個の表面の枝の1つであり、X
枝部分のあるb枝に結合し、n=p(b)
lであり、nは、≦256であり(例えば≦256、≦200、≦50、≦10又は≦8つの枝)、A
mは、X
n番目に結合した標的指向化ペプチドであり、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と実質的に同一のアミノ酸配列若しくはその機能的断片を含むか、又は式Ia、Ib、IIa、IIb及びIIcからなる群から選択される式を有するペプチドであり、mは、≦nの正の整数であり、D'は、任意選択で存在する第2の作用物質であり、1つ以上のA
mに結合するか、又は1つ以上のA
mを置き換えて(に取って代わり)、1つ以上のX
n番目に直接結合でき、化合物中のD'の数は、≦nであり、D、D'及びA
mを除くデンドリマーの分子量は、≦500キロダルトンである(例えば≦500、≦400、≦300、≦200、≦100、≦50、≦20キロダルトン))を含む化合物を特徴とする。
【0009】
化合物は、式:
【化4】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)を含んでよい。
【0010】
一実施形態では、表面の枝の数であるnは、≦128であり得る(例えば≦64又は≦32又は≦16又は≦8)。別の実施形態では、第1及び第2の作用物質並びに標的指向化ペプチドを除く本発明の化合物のデンドリマー部分は、≦100キロダルトンの分子量を有し得る(例えば≦50キロダルトン、≦25キロダルトン又は≦10キロダルトン)。
【0011】
化合物のデンドリマー部分は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン及びプロピレンジアミンからなる群から選択されるコア部分を含んでよい。これらのコアは、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーを合成するために典型的に用いられる。リジンをコア部分として用いてポリリジンデンドリマーを合成することもできる。代わりに、化合物は、プロピレンイミンを含んで、POPAMデンドリマーを合成できる。
【0012】
本発明の化合物は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、プロピルアミン、プロピレンイミン、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン及びリジンからなる群から選択される枝部分を有することができる。代わりに、枝部分は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、プロピルアミン、プロピレンイミン、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン及びリジンのいずれか1つの誘導体であり得る。
【0013】
デンドリマーの表面上の1つ以上の末端の枝を官能化して、様々な数の標的指向化ペプチド(例えば2、4、6、8、12、16、32又は64個の標的指向化ペプチド)を結合させることができる。デンドリマーのいくつか又は全ての表面の枝には、標的指向化ペプチドが結合できる。標的指向化ペプチドとの間の連結は、切断可能な連結(例えばチオエステル連結)又は切断可能でない連結(例えばマレイミド連結)であり得る。標的指向化ペプチドは、デンドリマーの表面の枝に、本明細書に記載するリンカーを介して結合できる。
【0014】
デンドリマーに結合する標的指向化ペプチドは、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一のアミノ酸配列又はその断片を有することができる。例えば、標的ペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An
2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn
2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。代わりに、標的指向化ペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An
2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn
2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。
【0015】
化合物は、反応性基(例えばマレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド又はアルコキシアミン)を介してデンドリマーに結合した第1の作用物質D(例えばタンパク質、ペプチド、核酸又は小分子)も含む。第1の作用物質は、リンカー、例えばピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレンリンカー、切断可能なリンカー、切断可能でないリンカー又は共有結合を介してデンドリマーに結合できる。第1の作用物質は、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択できる。
【0016】
化合物は、反応性基(例えばマレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド又はアルコキシアミン)を介してデンドリマーに結合した、任意選択の第2の作用物質D'(例えばタンパク質、ペプチド、核酸又は小分子)も含む。第2の作用物質は、リンカー、例えばピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレンリンカー、切断可能なリンカー、切断可能でないリンカー又は共有結合を介してデンドリマーに結合できる。第2の作用物質は、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択できる。第2の作用物質は、存在する場合、1つ以上のA
mペプチドに結合できるか、又はX
n番目枝の1つ以上に結合する。第1及び第2の作用物質は、同一であってよいか、又は異なる型の分子であってよい。
【0017】
本発明は、標的指向化ペプチド、第1の作用物質及び第2の作用物質をデンドリマーに結合させるために用いる1つ以上のリンカーを含んでよい化合物であって、反応性基が、リンカー上に存在する化合物を含む。
【0018】
本発明の化合物は、
【化5】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化6】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化7】
(式中、Malは、マレイミドである)、
【化8】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化9】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化10】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化11】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化12】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化13】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化14】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化15】
(式中、Cysは、システインであり、Cysに隣接する「SS」は、システインの硫黄原子を含むジスルフィド結合を表す)、
【化16】
(式中、Cysは、システインであり、Ahxは、アジドヘキサン酸である)、
【化17】
を含む。
【0019】
本発明の化合物は、内皮細胞に侵入できるか、又はLRP-1受容体を発現する細胞、例えば肝臓、腎臓及び脾臓細胞に侵入できる。本発明の化合物は、BBBを横切ることもできる。
【0020】
本発明は、少なくとも2つ以上の標的指向化ペプチドを、リンカーを介してデンドリマーに結合させて、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体を形成することと、1つ以上の第1の作用物質を、リンカーを介してデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合させることと、その後、任意選択で、1つ以上の第2の作用物質を、リンカーを介してこの複合体に結合させることとを含む、化合物を合成する方法も特徴とする。代わりに、方法は、少なくとも1つの第1の作用物質を反応性基(例えばマレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド又はアルコキシアミン)を介してデンドリマーに、リンカーを介してまず結合させてデンドリマー-第1の作用物質の複合体を形成することと、少なくとも2つの標的指向化ペプチドを、リンカーを介してデンドリマー-第1の作用物質の複合体に結合させることと、その後、任意選択で、1つ以上の第2の作用物質を、リンカーを介してこの複合体に結合させることとを含むことができる。
【0021】
方法は、リンカーを結合させるためのステップ、例えば標的指向化ペプチドが結合する前に1つ以上のリンカー(例えばピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、アセチレン、切断可能なリンカー、切断可能でないリンカー又は共有結合)をデンドリマーに結合させるステップ、及び/又は1つ以上の第1又は第2の作用物質が結合する前に1つ以上のリンカーを前記デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合させるステップを任意選択で含むことができる。1つ以上の第1若しくは第2の作用物質が結合する前に、リンカーをデンドリマーに結合させることもできるか、又は標的指向化ペプチドが結合する前にリンカーをデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合させることができる。
【0022】
表面の枝を官能化し、標的指向化ペプチドを官能化された表面の枝に結合させるためにいくつかの方法を用いることができる。例えば、ある方法は、デンドリマーをN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネートと反応させ、その後に、システイン残基含有標的指向化ペプチドと反応させることを含む。代わりに、標的指向化ペプチドは、デンドリマーをN-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテートと反応させ、その後に、前記標的指向化ペプチドのマレイミド誘導体と反応させることにより結合できる。
【0023】
デンドリマーに結合した標的指向化ペプチドは、配列番号1〜105及び107〜117からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一のアミノ酸配列又はその断片を有することができる。例えば、標的指向化ペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An
2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn
2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。代わりに、標的指向化ペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(An
2)(配列番号97)、cys-Angiopep-2(CysAn
2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)及び逆向きAngiopep-2(配列番号117)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。
【0024】
方法は、第1の作用物質Dをデンドリマーに反応性基を介して結合させることを含む。第1の作用物質は、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択できる。
【0025】
方法は、任意選択の第2の作用物質D'をデンドリマー又は標的指向化ペプチドに反応性基を介して結合させることも含む。第2の作用物質は、タンパク質、小分子、核酸、診断薬、造影剤及び治療剤からなる群から選択できる。第2の作用物質は、存在する場合、1つ以上のA
mペプチドに結合できるか、又は1つ以上のX
n番目の枝に結合できる。第1及び第2の作用物質は、同一であってよいか、又は異なるタイプの分子であってよい。D及びD'の付加には、任意選択で、上記の1つ以上のリンカーが関わってよい。
【0026】
方法は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩の合成も含む。
【0027】
「デンドリマー」とは、コア部分から放射状に伸びる1つ以上の枝を有する合成分子を意味する。枝は、1つ以上の標的指向化ペプチド及び/又は1つ以上の作用物質をデンドリマーに結合させるための官能基を含む。本明細書で用いる場合、「デンドリマー」との用語は、標的指向化ペプチド又は治療剤を含まない。例示的なデンドリマーは、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)及びポリ(プロピレンアミン)(POPAM)を含む。
【0028】
「コア部分」とは、対称的又は非対称的に配置された少なくとも3つの官能基を有する分子を意味する。1つ以上の枝部分、1つ以上の標的指向化ペプチド及び1つ以上の作用物質が、コア部分に官能基を介して結合できる。例示的なコア部分は、プロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン、リジン及びプロピレンアミンを含む。
【0029】
「枝部分」とは、コア部分又は別の枝部分に結合でき、対称的又は非対称的に配置された少なくとも3つの官能基(例えばカルボキシル又はアミン基)を有する分子を意味する。さらなる枝部分又は標的指向化ペプチド若しくは作用物質のような他の分子は、これらの官能基を介して結合できる。枝部分は、コア部分分子と同じ若しくはコア部分の誘導体であることができるか、又はコア部分とは完全に異なる。
【0030】
「表面の枝」とは、デンドリマーの表面層の末端枝部分を意味する。表面の枝は、ペプチド又は別の分子(例えば生体分子又はリンカー)が結合できる1つ以上の官能基(例えばカルボキシル又はアミン基)を有する。
【0031】
「断片」とは、全長アミノ酸(例えば本明細書に記載する任意の配列)の一部分を意味する。断片は、全長タンパク質の少なくとも1つの生物活性を保持してよい。
【0032】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸と少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%又は99%さえの同一性を有するポリペプチドを意味する。ポリペプチドについて、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも4(例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50又は100)アミノ酸である。元のポリペプチドのアミノ酸と同一又は類似する配列のアミノ酸間にギャップを見出すことがあることが本明細書において理解される。ギャップは、アミノ酸を含まないか、元のポリペプチドと同一ではないか又は類似しない1つ以上のアミノ酸を含むことがある。パーセント同一性は、例えばデフォルトギャップ重みを用いる、ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージリリース(Wisconsin Genetics Software Package Release)7.0中のアルゴリズムGAP、BESTFIT又はFASTAを用いて決定してよい。
【0033】
「血液脳関門」(BBB)とは、必須の代謝機能を可能にしながら血液中の化学物質から脳を保護する膜構造を意味する。BBBは、脳毛細血管中で非常に密に束ねられている内皮細胞で構成される。BBBは、血液網膜関門を含む。
【0034】
「標的指向化ペプチド」とは、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓又は筋肉)の中に又はBBBを横切って輸送できる化合物又はポリペプチドのような分子を意味する。ペプチドは、作用物質にデンドリマーを介して結合(共有的又は非共有的)又はコンジュゲートさせてよく、そのことにより、作用物質を特定の細胞型の中又はBBBを横切って輸送できる。標的指向化ペプチドは、癌細胞又は脳内皮細胞上に存在する受容体に結合してよく、そのことにより、経細胞輸送により癌細胞の中又はBBBを横切って標的指向化ペプチドを輸送できる。標的指向化ペプチドは、細胞又はBBBの完全性に影響することなく高いレベルの経内皮輸送を得ることができる分子であってよい。標的指向化ペプチドは、ペプチドであってよく、自然に存在するか又は化学合成若しくは組換え遺伝子技術により生成されてよい。
【0035】
「治療剤」とは、疾患又は状態の処置又は予防的処置において用いることができる分子を意味する。
【0036】
「連結」とは、2つの分子を接続する、例えばデンドリマーを標的指向化ペプチドに又はデンドリマーを第1若しくは第2の作用物質に接続する共有結合又は架橋部分を意味する。例示的な連結は、チオエーテル連結を含む。
【0037】
「リンカー」とは、デンドリマーを標的指向化ペプチドに又はデンドリマーを第1若しくは第2の作用物質に接続できる1つ以上の官能基を有する分子を意味する。例示的なリンカーは、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、NHSエステル、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー及びアセチレンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1Aは、PAMAMにコンジュゲートしたAngiopep-2及びAngiopep-2マルチマーの脳への輸送を示すグラフである。
図1Bは、脳、毛細血管及び実質でのAngiopep-2-PAMAMマルチマーの分布を示す棒グラフである。
【
図2】
図2は、ベータ-メルカプトエタノール(BME)を用いる処理の前後の放射性標識された切断可能なAn2-PAMAMデンドリマーコンジュゲートの泳動を示すゲルの画像である。An2は、PAMAMデンドリマーにチオールエステルを介して結合しており、チオールエステルは、BMEにより切断されて放射性標識されたAngiopep-2ペプチドを遊離する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、高い効率でBBBを横切ることができるか又は特定の細胞型(例えば肝臓、脾臓、腎臓、筋肉及び卵巣)の中に侵入できる標的指向化ペプチドにコンジュゲートしたデンドリマーに関する。デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体は、1つ以上の作用物質(例えば治療剤、診断薬、造影剤、小分子、タンパク質及び核酸)にコンジュゲートしている場合、単量体標的指向化ペプチドに直接コンジュゲートした作用物質と比較して増加した効率でBBBを横切って又は特定の細胞型(例えばLRP-1受容体を発現する細胞)に作用物質を輸送できる。本発明のある利点は、デンドリマーが標的指向化ペプチド及び作用物質の結合のための複数の部位を提供することであり、このことは、BBBを横切るか又は特定の細胞型の中への輸送効率を増加する助けとなる。この輸送の効率の増加により、コンジュゲートしていない作用物質又は単量体の形の標的指向化ペプチドにコンジュゲートした作用物質のいずれと比較しても、作用物質の投与量をより低くできることがある。このことは、治療剤及び診断薬の場合に役に立つ特性であり得る。他の場合では、作用物質をその標的組織により効率的に向けることにより、より大きい標的指向効率が副作用を低減できるので、本発明の化合物は、コンジュゲートしていない作用物質又は単量体の形の標的指向化ペプチドにコンジュゲートした作用物質のいずれよりも高い投与量で投与できることがある。このようなデンドリマーを含む化合物並びに疾患の診断及び処置におけるこれらの使用について、以下に詳細に記載する。
【0040】
デンドリマー
デンドリマーは、少なくとも3つの官能基を有するコア部分を有する分岐鎖状巨大分子である。デンドリマーは、コア部分に結合した複数の枝部分を有することができ、表面の枝部分は、様々な分子(例えば標的指向化ペプチド)の結合のために官能化できる。デンドリマーを用いることのある利点は、複数の分子(例えば標的指向化ペプチド)をコンジュゲートできる複数の表面官能基を利用できることである。
【化18】
【0041】
デンドリマーのコア部分は、PAMAMデンドリマーの場合にプロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン及びプロピレンジアミンからなる群から選択されるものを含む、当該技術において知られるいずれでもあり得る。コア部分は、プロピレネイム(propyleneime)であることもでき、この場合、デンドリマーは、ポリ(プロピレンアミン)(POPAM)である。代わりに、コア部分は、リジンであることができ、この場合、デンドリマーは、ポリリジンである。典型的に、コア部分は、1〜12個の枝(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の枝)を有することができる。コア部分を官能化して、枝部分の付加のための反応性基を形成する(例えばアクリル酸メチルと反応させることにより)。枝部分の1つは、コア部分に官能基を介して結合させることができる。標的指向化ペプチド及び作用物質も、コア部分に、リンカーを用いて又は用いずに、官能基を介して結合させることができる。
【0042】
枝部分は、コア部分の周りに連続的な層を形成し、当該技術において「世代」ともよばれる。コア部分のある枝に結合した各枝部分は、2〜8つの枝(2、3、4、5、6、7又は8つの枝)を有することができる。枝部分は、コア部分と同じであることができるか、コア部分の誘導体であることができるか、又はプロパルギルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、アジド-プロピル(アルキル)アミン、ヒドロキシエチル(アルキル)アミン、テトラフェニルメタン、トリメソイルクロリド、ジアミノヘキサン、ジアミノブタン、シスタミン、プロピレンジアミン、プロプリレンアミン(proplyleneamine)及びリジンからなる群から選択できる。
【0043】
デンドリマーは、表面の枝ともいう最も外部の枝部分で終結する2〜10層(2、3、4、5、6、7、8、9又は10層)の枝を有することができる。表面の枝は、複数の化学的実体(例えば標的指向化ペプチド)の結合のために官能化できる。表面の枝の数は、式n=p(b)
l(式中、n=表面の枝の数、b=各枝部分が有する枝の数及びl=デンドリマーの枝の連続する層の数)により計算される。デンドリマーは、複数の標的指向化ペプチド及び1つ以上の作用物質に結合するので、デンドリマーは、これらの積み荷の結合を収容する範囲のサイズであることが望ましい。例えば、望ましいデンドリマーの分子量は、500キロダルトン未満(例えば10、50、100、200、300又は500キロダルトン)である。
【0044】
PAMAMは、おそらく最もよく知られたデンドリマーである。PAMAMのコアはジアミン(一般的にエチレンジアミン)であり、これは、アクリル酸メチルと反応し、次いで別のエチレンジアミンと反応して、世代0(G-0)のPAMAMを作製する。連続的な反応により、異なる特性を持つ傾向があるより高い世代が創出される。より低い世代は、認識できる内部領域を有さない概して柔軟な分子であるが、中程度のサイズ(G-3又はG-4)は、デンドリマーの外殻から本質的に分離された内部空間を有する。非常に大きい(G-7以上)デンドリマーは、一般的に、それらの外殻の構造のために非常に密な表面を有する固体の粒子により近い。
【0045】
デンドリマーの合成
デンドリマーを合成する方法は、本明細書に記載するように当該技術において公知であり、デンドリマーの分岐部分(X
コア及びX
枝部分)は、様々な数の枝の層で商業的な供給業者から購入することもできる。デンドリマー合成のために用いられる2つの一般的な方法、分岐的合成及び集束的合成がある。分岐的合成(以下に示す)では、デンドリマーは、多官能性コアから組み立てられ、一連の反応、一般的にはマイケル反応により外側に伸長する。反応の各ステップは、トレイリング世代(いくつかの枝が他のものよりも短い)の原因になり得るデンドリマー中の誤りを妨げるために完了するまで一般的に行われる。このような不純物は、デンドリマーの機能性及び対称性に影響を与えることができるが、完全なデンドリマーと不完全なデンドリマーとの間の相対的サイズの差は非常に小さいので、精製して除くことは非常に困難である。
【化19】
【0046】
集束的合成(以下に示す)では、デンドリマーは、結局は球の表面になる小分子から構築され、反応は内向きに進んで、最後に結合する最も内側の分子がコアに結合する。この方法は、不純物及びより短い枝を途中で除くことがより容易であるので、最終的なデンドリマーは、より単分散である。しかし、このようにして作製したデンドリマーは、コアに沿った立体効果による密集により制限されるので、分岐的方法により作製されたものほど大きくない。
【化20】
【0047】
代わりに、デンドリマーは、ディールス-アルダー反応、チオール-イン反応及びアジド-アルキン反応を採用するクリックケミストリーにより合成することもできる。
【0048】
デンドリマーは、コア及び枝の中に異なる官能基を有して、溶解性、熱安定性及び特定の用途のための化合物の結合のような特性を制御するように合成できる。合成プロセスは、サイズ、枝の数、コアからの枝の層の数及び様々な反応性基の結合のための末端の枝の官能基を厳密に制御することもできる。
【0049】
デンドリマーの例示的な合成を実施例1に示し、ここでは、プロパルギルアミンコアがまずアクリル酸メチルと反応した後にエチレンジアミンと反応して、枝が結合する。アクリル酸メチル及びエチレンジアミンの連続的な反応により、エチレンジアミン枝のさらなる層が結合することとなる。
【0050】
デンドリマーの表面の枝への標的指向化ペプチドのコンジュゲーション
デンドリマーの表面の枝は、適当な反応性基を用いて誘導体化した標的指向化ペプチドのコンジュゲーションのために官能化できる。例えば、表面の枝は、化合物、例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)(SPDP)と反応させて、デンドリマー-ピリジル-ジスルフィド中間体を作製し、これを次いでシステイン残基を含有する標的指向化ペプチドと反応させることができる。代わりに、デンドリマーの表面の枝は、N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート(SATA)と反応させて、デンドリマー-スルフヒドリル中間体を形成し、これをマレイミドで誘導体化した標的指向化ペプチドと反応させることができる。SATAは、アミンに対して反応性であり、保護されたスルフヒドリル基を付加する)、及びBMOE(ビス-マレイミドエタン)。リンカーは、標的指向化ペプチドをデンドリマーの表面の官能基にコンジュゲートするために用いることができ、以下に記載する。
【0051】
デンドリマーコンジュゲーション
細胞傷害性薬剤、リンカー及びポリペプチドを含む所定のコンジュゲートの各部分は、独立して選択できる。つまり、相互作用する化学置換基が互いに適合する限り、本明細書に記載する任意のリンカーを用いて、記載するポリペプチド及び細胞傷害性薬剤のいずれもコンジュゲートできる。コンジュゲートを、次いで、CNS癌又はその他の癌の処置のために患者に細胞傷害性薬剤を送達するために用いることができる。検出可能なマーカーを含めると、本発明のコンジュゲートは、造影剤として用いることもでき、細胞傷害性薬剤が結合する標的及び/又はポリペプチドが親和性を有する受容体の分布をマッピングする手段を提供できる。
【0052】
具体的な構成は以下でさらに論じるが、我々は、所定のタンパク質コンジュゲートが各細胞傷害性薬剤に対して1つ以上のポリペプチド(例えばコンジュゲート内の各細胞傷害性薬剤に対して1〜2のポリペプチド)、そしてポリペプチドに対して1つ以上の細胞傷害性薬剤(例えばポリペプチドあたり1〜3の細胞傷害性薬剤)を含むことができることを記載する。上記のように、所定のタンパク質コンジュゲートは、単一の細胞傷害性薬剤を含む可能性があるが、互いに同一又は互いに異なる2つ以上(例えば2、3又は4)を含むことがある。異なる場合、細胞傷害性薬剤は、同じ標的又は異なる標的と特異的に結合してよい。本発明のコンジュゲートの構成部分は、様々な様式で構成できる。全般的に、コンジュゲートは、細胞傷害性薬剤が少なくとも1つのポリペプチドに連結し、これが次いで少なくとも1つの細胞傷害性薬剤に連結している本質的に直鎖状の形であると仮定できる。代わりに、コンジュゲートは、1つ以上の枝が細胞傷害性薬剤(D)からある点にて伸びているデンドリマーにおいて見られるような分岐鎖状の構成を有することができる。本発明のコンジュゲートが分岐部分を含む場合、我々は、細胞傷害性薬剤を含めることにより完全な対称デンドリマー形が可能でないことを理解しつつ、コンジュゲートを「デンドリマーコンジュゲート」ということがある。デンドリマー状コンジュゲートは、式I:
【化21】
(Dは、デンドリマーコンジュゲートのコア部分(X
コア)に直接的(例えば細胞傷害性薬剤とX
コアとの間の結合により)又は間接的(例えば細胞傷害性薬剤部分をX
コアにつなげる2官能性リンカーにより)に連結する細胞傷害性薬剤である)として構築できる。X
コア及びX
分岐はともにコンジュゲートのある部分を別の部分につなげるので、我々は、これらの部分をより単純に「リンカー」ということもある。コア部分の複雑さは変動でき、利用可能な伸長点pの数は、2から6(両端を含む)までで変動する。各伸長点pは、X
コアと同様に様々な複雑さを有する枝部分X
枝(各X
枝は2から4つの枝bを有する)で終結すること(およびそれにつなぐこと)ができる。X
n番目は、n個の表面の枝の1つであり、l(1から5まで(両端を含む)の整数である)は、X
枝部分の連続層の数である。lが1である場合、各X
枝は、X
コアに結合する。lが1より大きい場合、第1のX
枝から離れた各X
枝は、別のX
枝に結合する。表面の枝に関して、X
n番目は、デンドリマーのn個の表面の枝の1つである。n=p(b)
l、nは典型的に≦512(例えば≦500、≦400、≦300、≦200、≦50、≦10又は≦8の枝)である。説明すると、以下のとおりである。伸長点pが2つあり、lが1であり、各X
枝から2つの枝bがある場合、X
n番目は4である。伸長点pが3つあり、lが1であり、各X
枝から3つの枝bがある場合、X
n番目は9である、などである。A
mは、表面の枝X
n番目に結合している本明細書に記載するポリペプチドである。ポリペプチドA
mの数は、表面の枝の数以下である。なぜなら、各表面の枝をポリペプチドにつなぐことができ、いくつかの表面の枝は、いずれのさらなる成分も有さないか、又は細胞傷害性薬剤D'に直接つなぐことができる(すなわち、いくつかの表面の枝では、A
mで表されるポリペプチドは存在しない)からである。細胞傷害性薬剤D'は、1つ以上のA
mに結合するか、又は上記のように、1つ以上のX
n番目と直接結合して1つ以上(しかし全てではない)のA
mを置き換えることがある。デンドリマーコンジュゲート中のD'の数は、3つまでの細胞傷害性薬剤を各ポリペプチドにつなぐことができるので、ポリペプチドの数の3倍までであり得る。D、D'及びA
mを除くデンドリマーの分子量は、≦500キロダルトン(例えば≦500、≦400、≦300、≦200、≦100、≦50又は≦20キロダルトン)である。
【0053】
X
コア又はX
枝として採用されるリンカーは、同じ又は異なることができ、X
コア又はX
枝として2官能性リンカーを採用することにより、複雑さがより少ないデンドリマーコンジュゲートを作製できる。X
コアが2官能性リンカーである場合、pは1であり、X
コアから複数の伸長により生じるはずの複雑さがない。この配置を以下の式に示し、コンジュゲートの残りの部分については上記のとおりである。
【化22】
【0054】
この構成のバリアントでは、X
コアは存在せず、この場合、細胞傷害性薬剤は、X
枝に直接つながれる。X
コアよりもむしろX
枝が2官能性リンカーである場合、bは1であり、X
枝からの複数の伸長により生じるはずの複雑さがない。この配置を以下の式に示し、コンジュゲートの残りの部分については上記のとおりである。
【化23】
【0055】
デンドリマー状コンジュゲートのある利点は、複数のポリペプチド及び/又は細胞毒がコンジュゲートできる複数の表面官能基が含まれることである。デンドリマー状コンジュゲートの複雑さを変更できることにより、タンパク質コンジュゲートの様々な構成部分を許容できる。X
コア及びX
枝がともに2官能性リンカーである場合、コンジュゲートは、直鎖状であり、デンドリマー状でない。
【0056】
リンカー
標的指向化ペプチドは、様々な連結基(リンカー)、例えばスルフヒドリル基、アミノ基(アミン)又は任意の適当な反応性基によりコンジュゲートできる。リンカーは、共有結合であり得る。ホモ2官能性及びヘテロ2官能性クロスリンカー(コンジュゲーション剤)は、多くの商業的な供給源から入手可能である。架橋のために利用可能な部位は、標的指向化ペプチド上で見出すことができる。リンカー基は、柔軟なアーム、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15の炭素原子を含んでよい。例示的なリンカーは、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー及びアセチレンを含む。代わりに、用いることができるその他のリンカーは、BS
3[ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート](これは、近づくことができる1級アミンを標的にするホモ2官能性N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(NHS/EDCは、1級アミン基とカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド(スルホ-EMCSは、スルフヒドリル及びアミノ基に対して反応性があるヘテロ2官能性反応性基である)、ヒドラジド(ほとんどのタンパク質は、露出した炭水化物を含有し、ヒドラジドは、カルボキシル基と1級アミンとを連結するために有用な試薬である)を含む。
【0057】
共有結合を形成するために、ヒドロキシル部分がペプチドを改変するために要求されるレベルにて生理的に許容される場合、化学的反応性基として、広く多様な活性カルボキシル基(例えばエステル)を用いることができる。具体的な作用剤は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、ガンマ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)及びマレイミドウンデカン酸(MUA)を含む。
【0058】
1級アミンは、NHSエステルの主な標的である。近づくことができるα-アミン基は、タンパク質のN末端に存在し、リジンのε-アミンは、NHSエステルと反応する。よって、本発明の化合物は、ペプチドのN末端アミノ又はリジンのε-アミンにコンジュゲートしたNHSエステルを有するリンカーを含むことができる。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲーション反応が1級アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する場合に形成される。反応性基を含有するこれらのスクシンイミドを、本明細書においてスクシンイミジル基という。本発明のある種の実施形態では、タンパク質上の官能基は、チオール基であり、化学的反応性基は、ガンマ-マレイミド-ブトリルアミド(butrylamide)(GMBA又はMPA)のようなマレイミド含有基である。このようなマレイミド含有基は、本明細書においてマレイド(maleido)基ということがある。
【0059】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4である場合に、ペプチド上のスルフヒドリル基について最も選択的である。pH7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば血清アルブミン又はIgGのようなタンパク質上のチオール基)との反応の速度は、アミンとの反応速度よりも1000倍速い。よって、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル連結を形成できる。したがって、本発明の化合物は、標的指向化ペプチドのスルフヒドリル基にコンジュゲートしたマレイミド基を有するリンカーを含むことができる。
【0060】
アミンからアミンへのリンカーは、NHSエステル及びイミドエステルを含む。例示的なNHSエステルは、DSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、BS
3(ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート)、TSAT(トリス-スクシンイミジルアミノトリアセテート)、BS(PEG)
n(ここで、nは1〜20である(例えばBS(PEG)
5及びBS(PEG)
9))のような、ポリエチレングリコールスペーサを含むビス-スクシンイミドエステル活性化化合物のバリアント、DSP(ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート])、DTSSP(3,3'-ジチオビス[スルホスクシンイミジルプロピオネート])、DST(ジスクシンイミジルタルタレート)、BSOCOES(ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、EGS(エチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート])及びスルホ-EGS(エチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート])である。イミドエステルは、DMA(ジメチルアジプイミデート・2HCl)、DMP(ジメチルピメルイミデート・2HCl)、DMS(ジメチルスベルイミデート・2HCl)及びDTBP(ジメチル3,3'-ジチオビスプロピオンイミデート・2HCl)を含む。その他のアミンからアミンへのリンカーは、DFDNB(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)及びTHPP(β-[トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィノ]プロピオン酸(ベタイン))を含む。
【0061】
リンカーは、スルフヒドリルからスルフヒドリルへのリンカーであってよい。このようなリンカーは、マレイミド及びピリジルジチオールを含む。例示的なマレイミドは、BMOE(ビス-マレイミドエタン)、BMB(1,4-ビスマレイミドブタン)、BMH(ビスマレイミドヘキサン)、TMEA(トリス[2-マレイミドエチル]アミン)、BM(PEG)2 1,8-ビス-マレイミドジエチレングリコール)又はBM(PEG)
n(ここで、nは、1〜20(例えば2又は3)である)、BMDB(1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン)及びDTME(ジチオ-ビスマレイミドエタン)を含む。例示的なピリジルジチオールは、DPDPB(1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン)を含む。その他のスルフヒドリルリンカーは、HBVS(1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホン)を含む。
【0062】
リンカーは、NHSエステル/マリエミド(maliemide)化合物を含む、アミンからスルフヒドリルへのリンカーであってよい。これらの化合物の例は、AMAS(N-(α-マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル)、BMPS(N-[β-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル)、GMBS(N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル)、スルホ-GMBS(N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スルホ-MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル)、SMCC(スクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、EMCS([N-ε-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル)、スルホ-EMCS([N-ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、SMPB(スクシンイミジル4-[p-マレイミドフェニル]ブチレート)、スルホ-SMPB(スルホスクシンイミジル4-[p-マレイミドフェニル]ブチレート)、SMPH(スクシンイミジル-6-[β-マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート)、LC-SMCC(スクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロエート])、スルホ-KMUS(N-[κ-マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、SM(PEG)
n(スクシンイミジル-([N-マレイミドプロピオンアミド-ポリエチレングリコール)エステル)、(ここで、nは、1〜30(例えば2、4、6、8、12又は24)である)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート)、LC-SPDP(スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6-(3'-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルエン)、スルホ-LC-SMPT(4-スルホスクシンイミジル-6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート)、SIA(N-スクシンイミジルヨードアセテート)、SBAP(スクシンイミジル3-[ブロモアセトアミド]プロピオネート)、SIAB(N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート)、及びスルホ-SIAB(N-スルホスクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート)である。
【0063】
リンカーは、アミノから非選択的な基へのリンカーであることができる。このようなリンカーの例は、NHSエステル/アリールアジド及びNHSエステル/ジアジリンリンカーを含む。NHSエステル/アリールアジドリンカーは、NHS-ASA(N-ヒドロキシスクシンイミジル-4-アジドサリチル酸)、ANB-NOS(N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド)、スルホ-HSAB(N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート)、スルホ-NHS-LC-ASA(スルホスクシンイミジル[4-アジドサリチルアミド]ヘキサノエート)、SANPAH(N-スクシンイミジル-6-(4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート)、スルホ-SANPAH(N-スルホスクシンイミジル-6-(4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート)、スルホ-SFAD(スルホスクシンイミジル-(ペルフルオロアジドベンズアミド)-エチル-1,3'-ジチオプロプリオネート)、スルホ-SAND(スルホスクシンイミジル-2-(m-アジド-o-ニトロベンズアミド)-エチル-1,3'-プロプリオネート)、及びスルホ-SAED(スルホスクシンイミジル2-[7-アミノ-4-メチルクマリン-3-アセトアミド]エチル-1,3'ジチオプロピオネート)を含む。NHSエステル/ジアジリンリンカーは、SDA(スクシンイミジル4,4'-アジペンタノエート)、LC-SDA(スクシンイミジル6-(4,4'-アジペンタンアミド)ヘキサノエート)、SDAD(スクシンイミジル2-([4,4'-アジペンタンアミド]エチル)-1,3'-ジチオプロピオネート)、スルホ-SDA(スルホスクシンイミジル4,4'-アジペンタノエート)、スルホ-LC-SDA(スルホスクシンイミジル6-(4,4'-アジペンタンアミド)ヘキサノエート)及びスルホ-SDAD(スルホスクシンイミジル2-([4,4'-アジペンタンアミド]エチル)-1,3'-ジチオプロピオネート)を含む。
【0064】
例示的なアミンからカルボキシルへのリンカーは、カルボジイミド化合物(例えばDCC(N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド)及びEDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド))を含む。例示的なスルフヒドリルから非選択的な基へのリンカーは、ピリジルジチオール/アリールアジド化合物(例えばAPDP((N-[4-(p-アジドサリチルアミド)ブチル]-3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド))を含む。例示的なスルフヒドリルから炭水化物へのリンカーは、マレイミド/ヒドラジド化合物(例えばBMPH(N-[β-マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド)、EMCH([N-ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)、MPBH4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)及びKMUH(N-[κ-マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド))及びピリジルジチオール/ヒドラジド化合物(例えばPDPH(3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド))を含む。例示的な炭水化物から非選択的な基へのリンカーは、ヒドラジド/アリールアジド化合物(例えばABH(p-アジドベンゾイルヒドラジド))を含む。例示的なヒドロキシルからスルフヒドリルへのリンカーは、イソシアネート/マレイミド化合物(例えば(N-[p-マレイミドフェニル]イソシアネート))を含む。例示的なアミンからDNAへのリンカーは、NHSエステル/ソラレン化合物(例えばSPB(スクシンイミジル-[4-(ソラレン-8-イルオキシ)]-ブチレート))を含む。
【0065】
リンカーは、3官能性、4官能性以上の連結剤であることもできる。例示的な3官能性リンカーは、TMEA、THPP、TSAT、LC-TSAT(トリス-スクシンイミジル(6-アミノカプロイル)アミノトリアセテート)、トリス-スクシンイミジル-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、MDSI(マレイミド-3,5-ジスクシンイミジルイソフタレート)、SDMB(スクシンイミジル-3,5-ジマレイミドフェニルベンゾエート、Mal-4(テトラキス-(3-マレイミドプロピル)ペンタエリスリトール、NHS-4(テトラキス-(N-スクシンイミジルカルボキシプロピル)ペンタエリスリトール))を含む。
【0066】
TMEAは、構造:
【化24】
を有する。
【0067】
そのマレイミド基にも関わらず、TMEAは、スルフヒドリル基(例えばシステインアミノ酸側鎖により)と反応できる。
【0068】
THPPは、構造:
【化25】
を有する。
【0069】
THPPのヒドロキシル基及びカルボキシ基は、1級又は2級アミンと反応できる。
【0070】
式Y=C=N-Q-A-C(O)-Z(式中、Qは、ホモ芳香族又はヘテロ芳香族環系であり、Aは、単結合又は非置換若しくは置換された2価のC
1〜30橋かけ基であり、Yは、O又はSであり、Zは、Cl、Br、I、N
3、N-スクシンイミジルオキシ、イミダゾリル、1-ベンゾトリアゾールイルオキシ、OAr(ここで、Arは、電子欠損活性化アリール基である)又はOC(O)R(ここで、Rは、-A-Q-N=C=Y又はC
4〜20の3級アルキルである)である)を有するリンカーは、米国特許第4,680,338号にも記載されている。
【0071】
リンカーは、米国特許第5,306,809号にも記載されており、これは、式
【化26】
(式中、R
1は、H、C
1〜6アルキル、C
2〜6アルケニル、C
6〜12アリール若しくはアラルキル又は2価の有機-O-、-S-若しくは
【化27】
(ここで、R'は、C
1〜6アルキルである)連結部分とカップリングしたものであり、R
2は、H、C
1〜12アルキル、C
6〜12アリール又はC
6〜12アラルキルであり、R
3は、
【化28】
又は隣接窒素の孤立電子対を非局在化させることができる別の化学構造であり、R
4は、R
3をペプチドベクター又は作用物質に連結させることができるペンダント反応性基である)を有するリンカーについて記載している。
【0072】
リンカーは、少なくとも1つのアミノ酸を含んでよい(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40又は50アミノ酸のペプチド)。例えば、リンカーは、単一アミノ酸(例えばCysのような任意の自然に存在するアミノ酸)である。米国特許第7,271,149号に記載される配列[Gly-ly-Gly-Gly-Ser]
n(ここで、nは、1、2、3、4、5又は6である)を有するペプチドのようなグリシンリッチペプチド又は米国特許第5,525,491号に記載されるようなセリンリッチペプチドリンカーを用いることができる。セリンリッチペプチドリンカーは、式[X-X-X-X-Gly]
y(ここで、2つまでのXは、Thrであり、残りのXは、Serであり、yは、1〜5である)(例えばSer-Ser-Ser-Ser-Gly(ここで、yは1より大きい))のものを含む。
【0073】
いくつかの場合では、リンカーは、単一アミノ酸である(例えばGly又はCysのような任意のアミノ酸)。いくつかの場合では、リンカーは、マルチアミノ酸又はマルチペプチドリンカーであり得る。アミノ酸リンカー及びマルチペプチドリンカーは、柔軟性(例えば柔軟又は剛直)について選択できるか、又は電荷(例えば正、負又は中性)に基づいて選択してよい。柔軟なリンカーは、典型的に、Gly残基を有するものを含む(例えば[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]
n(ここで、nは、1、2、3、4、5又は6である))。その他のリンカーは、剛直なリンカー(例えばPAPAP及び(PT)
nP(ここで、nは、2、3、4、5、6又は7である))及びαヘリックスリンカー(例えばA(EAAAK)
nA(ここで、nは、1、2、3、4又は5である))を含む。
【0074】
適切なアミノ酸リンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu及びAsp又はGly-Lysのようなジペプチドである。リンカーがコハク酸である場合、その一方のカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してよく、その他方のカルボキシル基は、例えば、ペプチド又は置換基のアミノ基とアミド結合を形成してよい。リンカーがLys、Glu又はAspである場合、そのカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してよく、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成してよい。Lysをリンカーとして用いる場合、Lysのε-アミノ基と置換基との間にさらなるリンカーを挿入してよい。さらなるリンカーは、コハク酸であってよく、これは、Lysのε-アミノ基及び置換基中に存在するアミノ基とアミド結合を形成できる。一実施形態では、さらなるリンカーは、Glu又はAsp(例えばLysのε-アミノ基とアミド結合を、そして置換基中に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成するもの)であり、つまり、置換基は、N
ε-アシル化リジン残基である。
【0075】
ペプチドリンカーは、分岐鎖状ポリペプチドであってもよい。例示的な分岐鎖状ペプチドリンカーは、米国特許第6,759,509号に記載されている。このようなリンカーは、次式のものを含む:
【化29】
(式中、Aは、チオール受容体であり、Wは、橋かけ部分であり、cは、0から1の整数であり、aは、2から12の整数であり、Qは、O、NH又はN-低級アルキルであり、pは、0又は1の整数であり、dは、0又は1の整数であり、Eは、多価原子であり、それぞれのbは、1から10の整数であり、それぞれのXは、次式のものである:
【化30】
(式中、Yは、L形の2つのアミノ酸残基であり、Zは、1又は2つのアミノ酸残基であり、mは、0又は1の整数であり、Gは、自己犠牲スペーサであり、nは、0又は1の整数であるが、但し、nが0であるならば、-Y-Z
mは、Ala-Leu-Ala-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyである)か、又はそれぞれのXは、次式のものである:
【化31】
(式中、それぞれのX
1は、式-CO-Y-Z
m-G
n(ここで、Y、Z、Q、E、G、m、d、p、a、b及びnは、上で定義したとおりであり、又はそれぞれのX
1は、次式のものである:
【化32】
(式中、それぞれのX
2は、式-CO-Y-Z
m-G
n(ここで、Y、Z、G、Q、E、m、d、p、a、b及びnは、上で定義したとおりである)か、又はそれぞれのX
2は、次式のものである:
【化33】
(式中、それぞれのX
3は、式-CO-Y-Z
m-G
n(ここで、Y、Z、G、Q、E、m、d、p、a、b及びnは、上で定義したとおりである)か、又はそれぞれのX
3は、次式のものである:
【化34】
(式中、それぞれのX
4は、式-CO-Y-Z
m-G
n(ここで、Y、Z、G、Q、E、m、d、p、a、b及びnは、上で定義したとおりである))))))。
【0076】
分岐鎖状リンカーは、中間自己犠牲スペーサ部分(G)を採用してよく、これは、作用物質又はペプチドベクターと分岐鎖状ペプチドリンカーとを一緒に共有的に連結する。自己犠牲スペーサは、2つの化学的部分を一緒に共有的に連結でき、前記間隔をあけた化学的部分の一方を、トリパータイト分子から酵素による切断により遊離させることができる2官能性化学的部分であり得る(例えば本明細書に記載する任意の適当なリンカー)。ある種の実施形態では、Gは、間隔をあけ、作用物質又はペプチドベクターとペプチドリンカーとを一緒に共有的に連結する自己犠牲スペーサ部分(ここで、スペーサは、T部分を介して(以下の式で用いるように、「T」は、作用物質又はペプチドベクター中にすでに含有される求核原子である)ペプチドベクター又は作用物質に連結する)であり、これは、
【化35】
(ここで、Tは、O、N又はSである)、-HN-R
1-COT(ここで、Tは、O、N又はSであり、R
1は、C
1〜5アルキルである)、
【化36】
(ここで、Tは、O、N又はSであり、R
2は、H又はC
1〜5アルキルである)、
【化37】
(ここで、Tは、O、N又はSである)又は
【化38】
(ここで、Tは、O、N又はSである)
で表すことができる。好ましいGは、PABC(p-アミノベンジル-カルバモイル)、GABA(γ-アミノ酪酸)、α,α-ジメチルGABA及びβ,β-ジメチルGABAを含む。
【0077】
分岐鎖状リンカーでは、チオール受容体「A」は、ペプチドベクター又は作用物質と、ペプチドベクター又は作用物質に由来する硫黄原子により連結する。チオール受容体は、例えば、α-置換アセチル基であり得る。このような基は、式:
【化39】
(式中、Yは、Cl、Br、I、メシレート、トシレートなどのような脱離基である)を有する。チオール受容体がアルファ-置換アセチル基であるならば、リガンドとの連結後のチオール付加物は、結合-S-CH
2-を形成する。好ましくは、チオール受容体は、マイケル付加受容体である。本発明の代表的なマイケル付加受容体は、式
【化40】
を有する。リガンドのチオール基の連結後に、マイケル付加受容体は、マイケル付加物、例えば
【化41】
(ここで、Lは、作用物質又はペプチドベクターである)になる。
【0078】
橋かけ基「W」は、間隔をあけた2つの化学的部分を一緒に共有的に連結して安定なトリパータイト分子を形成できる2官能性化学的部分である。橋かけ基の例は、S. S. Wong、Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking. CRC Press、Florida、(1991);並びにG. E. Means及びR. E. Feeney、Bioconiugate Chemistry、第1巻、2〜12頁(1990)(これらの開示は、本明細書に参照により組み込まれている)に記載されている。Wは、チオール受容体をケト部分に共有的に連結できる。例示的な橋かけ基は、式-(CH
2)
f-(Z)
g-(CH
2)
h-(式中、fは、0から10であり、hは、0から10であり、gは、0又は1であり(但し、gが0であるならば、f+hは、1から10である)、Zは、S、O、NH、SO
2、フェニル、ナフチル、ポリエチレングリコール、3から10の炭素原子を含有する脂環式炭化水素環又は3から6つの炭素原子とO、N若しくはSから選択される1若しくは2つのヘテロ原子とを含有するヘテロ芳香族炭化水素環である)を有する。好ましい脂環式部分は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。好ましいヘテロ芳香族部分は、ピリジル、ポリエチレングリコール(1〜20の反復単位)、フラニル、ピラニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ピロリル、チアゾリル、モルホリニルなどを含む。橋かけ基では、gが0である場合、f+hは、2から6の整数(例えば2から4、例えば2)であることが好ましい。gが1である場合、fは、0、1又は2であり、hは、0、1又は2であることが好ましい。チオール受容体とカップリングした好ましい橋かけ基は、PierceカタログE-12、E-13、E-14、E-15、E-16及びE-17頁(1992)に示されている。
【0079】
標的指向化ペプチドとデンドリマーとの間のリンカーは、切断可能なリンカー(例えばチオールエステルリンカー)又は切断可能でないリンカーであり得る。
【0080】
標的指向化ペプチド
本発明の標的指向化ペプチドは、デンドリマーに結合して、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体を形成できる。標的指向化ペプチドは、表1中の任意の配列と実質的に同一のポリペプチド又はその断片であり得る。標的指向化ペプチドは、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、Angiopep-3(配列番号107)、Angiopep-4a(配列番号108)、Angiopep-4b(配列番号109)、Angiopep-5(配列番号110)、Angiopep-6(配列番号111)、Angiopep-7(配列番号112)又は逆向きAngiopep-2(配列番号117))の配列を有してよい。本発明の標的指向化ペプチド又は化合物は、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓及び筋肉のいずれか1、2、3、4又は5つ)の中に効率的に輸送できるか、又は哺乳動物BBBを効率的に横切ることができる(例えばAngiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、-5及び-6)。標的指向化ペプチド又は化合物は、特定の細胞型(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓及び筋肉のいずれか1、2、3、4又は5つ)の中に侵入できるが、BBBを効率的に横切らない(例えばAngiopep-7を含むコンジュゲート)。標的指向化ペプチドは、任意の長さ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200若しくは500アミノ酸又はこれらの数の間の任意の範囲のものであってよい。標的指向化ペプチドは、10〜50アミノ酸の長さであり、組換え遺伝子技術又は化学合成により生成できる。
【表1】
【0081】
ポリペプチド番号5、67、76及び91は、それぞれ配列番号5、67、76及び91の配列を含み、C末端にてアミド化されている。
【0082】
ポリペプチド番号107、109及び110は、それぞれ配列番号97、109及び110の配列を含み、N末端にてアセチル化されている。
【0083】
標的指向化ペプチドは、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
(式中、X1〜X19はそれぞれ(例えばX1〜X6、X8、X9、X11〜X14及びX16〜X19)独立して、任意のアミノ酸(例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValのような自然に存在するアミノ酸)であるか又は存在せず、X1、X10及びX15の少なくとも1つ(例えば2又は3つ)は、アルギニンである)を有するアミノ酸配列を含んでよい。X7は、Ser若しくはCysであり得るか、又はX10及びX15はそれぞれ、独立してArg若しくはLysである。X1からX19まで(両端含む)の残基は、配列番号1〜105及び107〜117(例えばAngiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、Angiopep-7及び逆向きAngiopep-2)のいずれか1つのアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であり得る。X1〜X19からの少なくとも1つ(例えば2、3、4又は5つ)のアミノ酸は、Argである。ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端又はその両方にて1つ以上のさらなるシステイン残基を有することができる。例えば、標的指向化ペプチドは、cys-Angiopep-2(CysAn
2)(配列番号113)、Angiopep-2-cys(配列番号114)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。
【0084】
標的指向化ペプチドは、改変でき、例えばアミド化、アセチル化又はその両方を行うことができる。このような改変は、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシ末端であってよい。ペプチド又はポリペプチドは、本明細書に記載するポリペプチドのいずれかのペプチド模倣物(例えば本明細書に記載するもの)も含んでよい。
【0085】
標的指向化ペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の置換)、挿入若しくは欠失を有する本明細書に記載するアミノ酸配列を有することができるか、又は本明細書に記載するアミノ酸配列と実質的に同一である。ペプチド又はポリペプチドは、例えば、1から12、1から10、1から5又は1から3のアミノ酸置換、例えば、1から10(例えば9、8、7、6、5、4、3、2まで)のアミノ酸置換を含有してよい。アミノ酸置換は、保存的又は非保存的であってよい。例えば、標的指向化ペプチドは、配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、Angiopep-7及び逆向きAngiopep-2のいずれかのアミノ酸配列の1位、10位及び15位に相当する位置の1、2又は3つにてアルギニンを有してよい。
【0086】
本発明は、これらのポリペプチドの断片(例えば機能的断片)も特徴とする。ポリペプチドの短縮は、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端又はそれらの組み合わせのいずれかからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のアミノ酸であってよい。その他の断片は、ポリペプチドの内部の部分が欠失した配列を含む。
【0087】
本発明の標的指向化ペプチドは、式:
Lys-Arg-X3-X4-X5-Lys (式Ia)
(式中、
X3は、Asn又はGlnであり、
X4は、Asn又はGlnであり、
X5は、Phe、Tyr又はTrpである)
を有することもできる。
【0088】
本発明の標的指向化ペプチドは、式:
Z1-Lys-Arg-X3-X4-X5-Lys-Z2 (式Ib)
(式中、
X3は、Asn又はGlnであり、
X4は、Asn又はGlnであり、
X5は、Phe、Tyr又はTrpであり、
Z1は、存在しないか、Cys、Gly、Cys-Gly、Arg-Gly、Cys-Arg-Gly、Ser-Arg-Gly、Cys-Ser-Arg-Gly、Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Gly-Ser-Arg-Gly、Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Thr-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、又はCys-Thr-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Glyであり、
Z2は、存在しないか、Cys、Tyr、Tyr-Cys、Cys-Tyr、Thr-Glu-Glu-Tyr又はThr-Glu-Glu-Tyr-Cysである)
を有することもできる。
【0089】
式(Ia)及び(Ib)の標的指向化ペプチドは、アミノ酸配列Lys-Arg-Asn-Asn-Phe-Lys及び保存的置換を含む。アミノ酸及びペプチドの保存的置換及び誘導体は、当該技術において公知であり、任意の有用な方法(例えば置換行列又は本明細書に記載する任意のその他の方法)により決定できる。標的指向化ペプチドの誘導体は、以下の群又はこれらの群の部分集合から選択される1つ以上の保存的置換を含有する標的指向化部分を含む:Ser、Thr及びCys、Leu、Ile及びVal、Glu及びAsp、Lys及びArg、Phe、Tyr及びTrp(例えばPhe及びTyr)、並びにGln、Asn、Glu、Asp及びHis(例えばGln及びAsn)。保存的置換は、BLAST(ベーシックローカルアラインメントサーチツール(Basic Local Alignment Search Tool))アルゴリズム、BLOSUM置換行列(例えばBLOSUM 62行列)及びPAM置換行列(例えばPAM 250行列)のような他の方法により決定してもよい。
【0090】
標的指向化ペプチドは、式(Ia)又は(Ib)の1つ以上のアミノ酸残基が対応するD-異性体で置換される1つ以上のD-アミノ酸置換を有するものも含むことができる。D-アミノ酸置換は、消化酵素(例えばペプシン及び/又はトリプシン)による切断に対する耐性が増加したペプチドをもたらすことができる。例えば、ペプシン又はトリプシンにより切断される可能性がある部位を有する式(Ia)又は(Ib)中のアミノ酸の1つ以上を、そのアミノ酸のD-異性体で置換できる。式(Ia)又は(Ib)中のペプシン及びトリプシンによる例示的な切断部位は、1位のLys、2位のArg、5位のX5(これは、Phe、Tyr又はTrpである)及び6位のLysに対してN末端又はC末端である結合を含む。したがって、本発明のポリペプチドは、式(Ia)又は(Ib)の1位、2位、5位及び/又は6位に記載するアミノ酸のD-異性体を1つ以上有するものも含む。
【0091】
本発明の標的指向化ペプチドは、式:
X1-X2-Asn-Asn-X5-X6 (式IIa)
(式中、
X1は、Lys又はD-Lysであり、
X2は、Arg又はD-Argであり、
X5は、Phe又はD-Pheであり、
X6は、Lys又はD-Lysであり、
X1、X2、X5又はX6の少なくとも1つは、D-アミノ酸である)
を有することもできる。
【0092】
本発明の標的指向化ペプチドは、式:
X1-X2-Asn-Asn-X5-X6-X7 (式IIb)
(式中、
X1は、Lys又はD-Lysであり、
X2は、Arg又はD-Argであり、
X5は、Phe又はD-Pheであり、
X6は、Lys又はD-Lysであり、
X7は、Tyr又はD-Tyrであり、
X1、X2、X5、X6又はX7の少なくとも1つは、D-アミノ酸である)
を有することもできる。
【0093】
本発明の標的指向化ペプチドは、式:
Z1-X1-X2-Asn-Asn-X5-X6-X7-Z2 (式IIc)
(式中、
X1は、Lys又はD-Lysであり、
X2は、Arg又はD-Argであり、
X5は、Phe又はD-Pheであり、
X6は、Lys又はD-Lysであり、
X7は、Tyr又はD-Tyrであり、
Z1は、存在しないか、Cys、Gly、Cys-Gly、Arg-Gly、Cys-Arg-Gly、Ser-Arg-Gly、Cys-Ser-Arg-Gly、Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Gly-Ser-Arg-Gly、Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Cys-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、Thr-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Gly、又はCys-Thr-Phe-Phe-Tyr-Gly-Gly-Ser-Arg-Glyであり、Z2は、存在しないか、Cys、Tyr、Tyr-Cys、Cys-Tyr、Thr-Glu-Glu-Tyr又はThr-Glu-Glu-Tyr-Cysであり、X1、X2、X5、X6又はX7の少なくとも1つは、D-アミノ酸であり、ポリペプチドは、任意選択で、Z1又はZ2に記載するアミノ酸のD-異性体を1つ以上含む)
を有することもできる。
【0094】
本発明の標的指向化ペプチドは、Lys-Arg-X3-X4-X5-Lys (式Ia)(式中、X3〜X5は、上で定義するとおりである)の式、X1-X2-Asn-Asn-X5-X6及びX1-X2-Asn-Asn-X5-X6-X7(それぞれ式IIa及びIIb)(式中、X1、X2、X5、X6及びX7は、上で定義するとおりである)の式、又は本明細書に記載する3D-An2のより長いポリペプチドに対してアミノ酸の付加及び欠失を含む。欠失又は付加は、Lys-Arg-X3-X4-X5-Lys、X1-X2-Asn-Asn-X5-X6、X1-X2-Asn-Asn-X5-X6-X7、Lys-Arg-Asn-Asn-Phe-Lys、D-Lys-D-Arg-Asn-Asn-D-Phe-D-Lys若しくはD-Lys-D-Arg-Asn-Asn-D-Phe-D-Lys-D-Tyrの式又はより長い配列3D-An2の任意の部分を含むことができる。1、2、3、4又は5アミノ酸の欠失又は付加は、標的指向化部分のコンセンサス配列から作製してよい。標的指向化ペプチドの所望の生物活性(例えばBBBを横切る能力又はアゴニスト活性)を著しく破壊しない任意の有用な置換、付加及び欠失を作製できる。改変は、コンセンサス配列又は元のポリペプチドの生物活性を低減するか(例えば少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%又は95%)、生物活性に影響しないか、又は生物活性を増加することがある(例えば少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%又は1000%)。
【0095】
特に、D-アミノ酸の置換又は付加を標的指向化ペプチド内で作製できる。このような置換又は付加は、酵素による切断に対する耐性が増加したペプチドをもたらすことができ、ここで、切断部位の1つ以上のアミノ酸をそのD-異性体で置換できる。例示的な酵素は、ペプシン、トリプシン、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、キモトリプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、LysCリジルエンドペプチダーゼ、LysNペプチジル-Lysメタロエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK及びサーモリシンを含み、これらの酵素についての例示的な切断部位は、本明細書に記載する。
【0096】
さらに、置換、付加及び欠失は、電荷(例えば正又は負電荷)、親水性、疎水性、in vivo安定性、バイオアベイラビリティ、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性及びコンジュゲーション特性のような標的指向化ペプチドの特徴を有するか又は該特徴を最適化してよい。例えば、塩基性/正荷電でない(一般的な側鎖特性に基づいて以下に記載されるように)又は正電荷がより低い(例えばpKaにより決定されるように)1つ以上のアミノ酸(例えば1から3までのアミノ酸)を欠失することにより正電荷を促進できる。別の例では、塩基性/正荷電であるか又は正電荷がより高い(例えばpKaにより決定されるように)1つ以上のアミノ酸(例えば1から3までのアミノ酸)を挿入することにより正電荷を促進できる。
【0097】
作用物質及びデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体への作用物質のコンジュゲーション
任意の作用物質を、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に化学的にコンジュゲートしてよい。このような作用物質は、小分子薬物、抗生物質、抗癌剤、造影剤(例えば放射性造影剤)、診断薬、治療剤、レポーター分子、RNAi剤、並びにペプチド及びポリペプチド治療薬を含む。作用物質は、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体上に存在する官能基によりコンジュゲートする。官能基は、限定することなく、マレイミド、ヒドラジド、アジド、ハロアセトアミド及びアルコキシアミンを含むことができる。さらに、上記の任意のリンカーも、作用物質をデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体にコンジュゲートするために用いることができる。
【0098】
本発明の化合物は、ある場所にてデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合した第1の作用物質を有することができ、例えば第1の作用物質は、コア部分に結合できる。本発明の化合物は、第2の場所にてデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体に結合した、任意選択の第2の作用物質、例えば1つ以上の標的指向化ペプチド又は1つ以上の表面の枝に結合した1つ以上の第2の作用物質を有することもできる。第2の作用物質は、標的指向化ペプチド又は表面の枝にリンカーを介して結合してよい。第2の作用物質は、存在する場合、作用物質と同じであるか、又は第1の作用物質と比較して異なるタイプの作用物質であってよく、例えば第1の作用物質は、ある細胞傷害性薬剤であり、第2の作用物質は、第2の細胞傷害性薬剤であり、細胞傷害性薬剤の組み合わせは、疾患のための併用療法である。
【0099】
本発明の化合物の製造
本発明は、デンドリマー、標的指向化ペプチド及び1つ以上の作用物質の複合体を含む化合物を合成するための方法を特徴とする。多様なコア部分及び枝部分を有し、かつ異なる数の表面の枝及び反応性基を有するデンドリマーが、商業的に入手可能である。デンドリマーは、表面の枝上の反応性基を介して複数のAngiopepペプチドにコンジュゲートできる。例えば、このことは、デンドリマーがN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネートと反応してデンドリマー-ピリジル-ジスルフィド中間体を形成し、次いで、デンドリマー-ピリジル-ジスルフィド中間体が、システイン残基を含有する標的指向化ペプチドと反応して、標的指向化ペプチドが表面の枝のそれぞれに結合することにより行うことができる。代わりに、デンドリマーがN-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテートと反応してデンドリマー-スルフヒドリル中間体を形成した後に、標的指向化ペプチドのマレイミド誘導体と反応して、デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体を形成できる。
【0100】
デンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体は、次いで、上記の第1の作用物質と反応し、得られたデンドリマー-標的指向化ペプチド-第1の作用物質の複合体は、薬学的に許容される形(例えば薬学的に許容される塩)で生成できる。
【0101】
代わりに、デンドリマーは、まず、第1の作用物質と官能基(例えばアジド)を介して反応し、得られたデンドリマー-第1の作用物質の複合体の表面の枝を官能化して、表面の枝が結合できる。
【0102】
本発明の化合物を製造する方法は、標的指向化ペプチド又は第1の作用物質が結合する前に、上記の任意のリンカーがデンドリマーに結合することをさらに含んでよい。
【0103】
本発明の化合物を製造する方法は、第1の作用物質とは異なる場所にて1つ以上の第2の作用物質が化合物に結合することを任意選択で含んでよい。例えば1つ以上の第2の作用物質は、標的指向化ペプチドの1つ以上に結合できる。代わりに、1つ以上の第2の作用物質は、デンドリマーの表面の枝の1つ以上に結合できる。これらの場所のそれぞれでは、第2の作用物質の結合は、上記のリンカーの使用を伴うことができる。
【0104】
本発明の化合物の組織での蓄積を決定するためのアッセイ
本発明の化合物の組織での蓄積を決定するためのアッセイを行って、デンドリマーに結合した複数の標的指向化ペプチドの輸送能力を評価してよい。標識化合物を動物に投与して、異なる器官における蓄積を測定できる。例えば、検出可能標識(例えばCy5.5のような近IR蛍光分光法標識)にコンジュゲートしたデンドリマー-標的指向化ペプチドの複合体は、ライブでのin vivo視覚化を可能にする。このような化合物を動物に投与し、器官におけるポリペプチドの存在を検出できるので、所望の器官におけるポリペプチドの蓄積の速度及び量を決定することが可能になる。化合物は、放射活性同位体(例えば
125I)で標識することもできる。化合物を次いで動物に投与する。ある期間の後に、動物を犠牲にし、器官を抽出する。各器官における放射性同位体の量を、次いで、当該技術において既知の任意の手段を用いて測定できる。特定の器官における標識候補化合物の量を標識対照化合物の量と比べて比較することにより、候補化合物が特定の組織に入って蓄積する能力を確かめることができる。本発明の一態様では、BBBを横切る複数のAngiopepペプチド(例えばAngiopep-2)の輸送を、単一Angiopepペプチド(例えばAngiopep-2)の輸送と比較する。
【0105】
本発明の化合物の投与及び投与量
本発明は、治療有効量の本発明の化合物を含有する医薬組成物も特徴とする。組成物は、様々な薬物送達系において用いるために処方できる。1種以上の生理的に許容される賦形剤又は担体も、適当な処方のために組成物中に含めることができる。本発明において用いるために適切な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版、1985で見出される。薬物送達のための方法の簡単なレビューのために、例えばLanger(Science 249:1527〜1533頁、1990)を参照されたい。
【0106】
医薬組成物は、予防的及び/又は治療的処置のための、経皮的手段によるような非経口、鼻内、外用、経口又は局所投与を意図する。医薬組成物は、非経口的に(例えば静脈内、筋内又は皮下注射により)、又は経口摂取により、又は血管若しくは癌の状態に罹患した領域での外用塗布若しくは関節内注射により投与できる。さらなる投与経路は、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜外内部並びに経鼻、点眼、強膜内、眼窩内、直腸、外用又はエアロソル吸入投与を含む。デポー注射又は侵食性インプラント若しくは成分のような手段による持続放出投与も本発明に特に含まれる。よって、本発明は、許容できる担体、好ましくは水性担体、例えば水、緩衝水、生理食塩水、PBSなどに溶解又は懸濁された上記の作用物質を含む非経口投与用の組成物を提供する。組成物は、pH調節及び緩衝剤、等張性調節剤、湿潤剤、洗浄剤などのような生理的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される佐剤を含有してよい。本発明は、経口送達用の組成物も提供し、これは、錠剤、カプセル剤などの処方のための結合剤又は充填剤のような不活性成分を含有してよい。さらに、本発明は、局所投与用の組成物を提供し、これは、クリーム、軟膏剤などの処方のための溶剤又は乳化剤のような不活性成分を含有してよい。
【0107】
これらの組成物は、従来の滅菌技術により滅菌されるか、又は滅菌ろ過されてよい。得られる水溶液は、そのまま用いるために包装されるか又は凍結乾燥されてよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。調製物のpHは、典型的に、3から11の間、より好ましくは5から9の間又は6から8の間、最も好ましくは7から8の間、例えば7から7.5である。固体の形で得られる組成物は、錠剤又はカプセル剤の密閉包装中でのように複数の単回用量単位(それぞれが一定量の上記の作用物質を含有する)で包装できる。固体の形の組成物は、外用塗布クリーム又は軟膏剤のために設計された絞ることができるチューブのような融通のきく量のための容器に包装することもできる。
【0108】
有効量を含有する組成物は、予防的又は治療的処置のために投与できる。本発明の組成物は、対象(例えばヒト)に、臨床疾患の発症を遅らせるか、低減するか又は好ましくは妨げるために十分な量で投与できる。治療的用途において、組成物は、疾患にすでに罹患している対象(例えばヒト)に、状態及びその合併症の症状を治癒又は少なくとも部分的に停止するために十分な量で投与される。この目的を達成するために適当な量を、「治療有効量」、疾患又は医療状態に関連するいくらかの症状を実質的に改善するために十分な化合物の量と定義する。例えば、神経変性疾患(例えば本明細書に記載するもの)の処置において、疾患又は状態の任意の症状を低減するか、妨げるか、遅らせるか、抑制するか又は停止する作用物質又は化合物は、治療的に有効である。作用物質又は化合物の治療有効量は、疾患又は状態を治癒させることは必要とされないが、疾患又は状態の発症が遅れ、邪魔され、又は妨げられるか、或いは疾患又は状態の症状が改善されるか、或いは疾患又は状態の期間が変更されるか又は例えば重症度が低くなるか、或いは個体における回復が加速するような疾患又は状態のための処置をもたらす。
【0109】
この使用のために有効な量は、疾患又は状態の重症度並びに対象の体重及び全身状態に依存し得るが、一般的に、対象あたり1回の投与あたり約0.05μgから約1000μgまで(例えば0.5〜100μg)に等しい量の作用物質の範囲である。初回投与及び追加投与のための適切な管理様式は、典型的に、初回投与と、1回以上の毎時、毎日、毎週又は毎月の間隔でその後投与する、その後の反復用量である。本発明の組成物中に存在する作用物質の全有効量は、急速投与として若しくは比較的短い期間にわたる注入により単回用量として哺乳動物に投与できるか、又はより長い期間にわたって複数回用量が投与される分割処置プロトコールを用いて投与できる(例えば4〜6、8〜12、14〜16若しくは18〜24時間ごと、又は2〜4日、1〜2週間若しくは1ヶ月に1回の投与)。代わりに、血中の治療有効濃度を維持するために十分な連続静脈内注入が企図される。
【0110】
本発明の組成物内に存在し、本発明の方法において用いて哺乳動物(例えばヒト)に施与される1つ以上の作用物質の治療有効量は、哺乳動物の年齢、体重及び状態における個別の差を考慮して当業者が決定できる。本発明のある種の化合物は、BBBを横切る能力が増進しているので、本発明の化合物の投与量は、コンジュゲートしていないアゴニストの治療効果のために必要な量と同等の用量より低い(例えば約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.1%以下)ことが可能である。本発明の作用物質は、対象(例えばヒトのような哺乳動物)に有効量で投与され、該有効量は、処置される対象において所望の結果(例えばニューロンの保護、新しいニューロンの成長)を生じる量である。治療有効量は、当業者が経験的に決定することもできる。
【0111】
有効量を含む本発明の組成物の単回又は複数回投与は、処置する医師が選択した用量レベル及びパターンで行うことができる。用量及び投与計画は、対象の疾患又は状態の重症度(これは、臨床家又はその他の本明細書に記載する者が一般的に行う方法に従って処置の経過中にわたってモニタリングできる)に基づいて決定及び調節できる。
【0112】
本発明の化合物は、従来の処置若しくは治療の方法のいずれかと組み合わせて用いることができるか、又は従来の処置若しくは治療の方法から分離して用いることができる。
【0113】
本発明の化合物を他の作用物質とともに併用療法において投与する場合、これらは、個体に逐次的又は同時に投与してよい。代わりに、本発明による医薬組成物は、本明細書に記載するように薬学的に許容される賦形剤とともに本発明の化合物と、当該技術において知られる別の治療剤若しくは予防剤との組み合わせで構成されてよい。
【実施例】
【0114】
[実施例1]
プロパギル(propagyl)-PAMAMデンドロンの合成。プロパギル-PAMAMデンドロン1-D0、1-D1、1-D2は、Leeら(Macromolecules 2006、39、2418〜2422頁(本明細書に参照により組み込まれている))に記載される合成プロトコールの改変バージョン(以下の模式図に示すとおり)を用いて調製した。
【化42】
【0115】
[実施例2]
アジド-PAMAMデンドロンの合成。アジド-PAMAMデンドロン2-D0、2-D1、2-D2は、Leeら(Tetrahedron 2006、62、9193〜9200頁(本明細書に参照により組み込まれている))に記載される合成プロトコールの改変バージョン(以下の模式図に示すとおり)を用いて調製した。
【化43】
【0116】
[実施例3]
アジド-PAMAM(0)-(SSPy)
2の合成。アジド-PAMAM 2-D0(66 mg、0.2 mmol)を、DMF(1.3 ml)に溶解した。SPDP(125 mg、0.4 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1時間撹拌し、水中の0.1% TFA(20 ml)で希釈した。得られた溶液をフェニル42 mlカラムに直ちに載せた。分取HPLC精製(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)により、65 mgの純粋なアジド-PAMAM(0)-SSPy、45%が得られた。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
29H
42N
10O
4S
4について算出値722.2273、実測値723.2184(M+1)。
【化44】
【0117】
[実施例4]
アジド-PAMAM(0)-(SSCysAn2)
2の合成。アジド-PAMAM(0)-SSPy(40 mg、55.5μmol)、An2Cys(240 mg、80μmol)及びNaHCO
3(30 mg、0.35 mmol)のDMSO(1.5 ml)及びDMF(1.5 ml)中の混合物を室温にてアルゴンの下で1時間撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(30 ml)で希釈し、精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せた(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。純粋な生成物アジド-PAMAM(0)-(SSAn2)
2(127 mg、43%)を、凍結乾燥の後に無色の粉末(power)として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
233H
340N
68O
68S
4について算出値5308.4187、実測値1327.8346(4+)、1062.6763(5+)、885.5691(6+)。
【化45】
【0118】
[実施例5]
プロパギル-PAMAM(1)-(SSPy)
4の合成。プロパギル-PAMAM 1-D1(45 mg、0.06mmol)をDMF(1.0 ml)に溶解した。SPDP(75 mg、0.24 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1時間撹拌し、水中の0.1% TFA(20 ml)で希釈した。得られた溶液を、HPLC精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せて(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)、プロパギル-PAMAM(1)-(SSPy)
4 50 mg、55%の純粋な生成物を得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
65H
93N
17O
10S
8について算出値1527.5057、実測値1528.4723(M+1)。
【化46】
【0119】
[実施例6]
プロパギル-PAMAM(1)-(SSCysAn2)
4の合成。プロパギル-PAMAM(1)-(SSPy)
4(20 mg、13μmol)、An2Cys(125 mg、52μmol)及びNaHCO
3(12 mg、0.14 mmol)のDMSO(0.8 ml)及びDMF(0.8 ml)中の混合物を室温にてアルゴンの下で2.5時間撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(15 ml)で希釈し、精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せた(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。純粋な生成物プロパギル-PAMAM(1)-(SSCysAn2)
4(91 mg、65%)を、凍結乾燥の後に無色の粉末として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
473H
689N
133O
138S
8について算出値10700.8918、実測値2675.6306(4+)、2140.7530(5+)、1529.4280(7+)。
【化47】
【0120】
[実施例7]
プロパギル-PAMAM(1)-(SAc)
4の合成。プロパギル-PAMAM 1-D1(111 mg、0.15 mmol)をDMF(2.0 ml)に溶解した。DMSO(1 ml)中のSATA(139 mg、0.6 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1.5時間撹拌し、水中の0.1% TFA(40 ml)で希釈した。得られた溶液を、HPLC精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せて(4% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む30% ACN/H
2O)、プロパギル-PAMAM(1)-(Sac)
472 mg、40%の純粋な生成物を得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
49H
81N
13O
14S
4について算出値1203.4909、実測値1204.4896(M+1)。
【化48】
【0121】
[実施例8]
プロパギル-PAMAM(1)-(SMal-An2)
4の合成。リン酸塩緩衝液pH7.2(1 ml)中のプロパギル-PAMAM(1)-(Sac)
4(17.4 mg、14.4μmol)の溶液に、NH
2OH.HCl(0.5 M、0.07 ml)を加えた。混合物を室温にて2時間撹拌した。次に、DMSO(1.5 ml)中のマレイミド-An2(78 mg、66μmol)を加え、反応混合物を室温にて1晩撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(40 ml)で希釈し、精製のためにC4 24 mlカラムに直ちに載せた(4% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。プロパギル-PAMAM(1)-(SMal-An2)
4(33 mg、21%)の純粋な生成物を、凍結乾燥の後に無色の粉末として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
505H
729N
133O
158S
4について算出値11317.2149、実測値2830.8163(4+)、2264.8163(5+)、1887.5322(6+)。
【化49】
【0122】
[実施例9]
アジド-PAMAM(1)-(SSPy)
4の合成。アジド-PAMAM 2-D1(86 mg、0.11 mmol)をDMF(2.0 ml)に溶解した。DMSO(1 ml)中のSPDP(137 mg、0.44 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1時間撹拌し、水中の0.1% TFA(30 ml)で希釈した。得られた溶液を、HPLC精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せて(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)、アジド-PAMAM(1)-SSPy 85 mg、49%の純粋な生成物を得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
65H
96N
20O
10S
8について算出値1572.5384、実測値1573.4874(M+1)。
【化50】
【0123】
[実施例10]
アジド-PAMAM(1)-(SSCysAn2)
4の合成。アジド-PAMAM(1)-(SSPy)
4(30 mg、19μmol)、An2Cys(183 mg、76μmol)及びNaHCO
3(18 mg、0.14 mmol)のDMSO(1.2 ml)及びDMF(1.2 ml)中の混合物を室温にてアルゴンの下で3時間撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(25 ml)で希釈し、精製のためにC4 24 mlカラムに直ちに載せた(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。アジド-PAMAM(1)-(SSCysAn2)
4(88 mg、43%)の純粋な生成物を、凍結乾燥の後に無色の粉末として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
473H
692N
136O
138S
8について算出値10745.9245、実測値1791.6586(6+)、1535.8257(7+)、1343.9730(8+)、1075.3835(10+)。
【化51】
【0124】
[実施例11]
アジド-PAMAM(1)-(SAc)
4の合成。アジド-PAMAM 2-D1(102 mg、0.13 mmol)をDMF(2.0 ml)に溶解した。DMSO(1.5 ml)中のSATA(120 mg、0.52 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1.5時間撹拌し、水中の0.1% TFA(30 ml)で希釈した。得られた溶液を、HPLC精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せて(4% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む30% ACN/H
2O)、アジド-PAMAM(1)-(Sac)
457 mg、35%の純粋な生成物を得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
49H
80N
16O
14S
4について算出値1248.5236、実測値1249.4825(M+1)。
【化52】
【0125】
[実施例12]
アジド-PAMAM(1)-(SMal-An2)
4の合成。リン酸塩緩衝液pH7.2(1.5 ml)中のアジド-PAMAM(1)-(Sac)
4(30 mg, 24μmol)の溶液に、NH
2OH.HCl(0.5 M、0.3 ml)を加えた。混合物を室温にて2時間撹拌した。DMSO(2 ml)中のマレオミド(Maleomide)-An2(160 mg、65μmol)を加え、反応混合物を室温にて2時間撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(30 ml)で希釈し、精製のためにC4 24 mlカラムに直ちに載せた(4% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。アジドール(azidol)-PAMAM(1)-(SMal-An2)
4(54 mg、20%)の純粋な生成物を、凍結乾燥の後に無色の粉末として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
505H
728N
136O
158S
4について算出値11358.2163、実測値2841.9829(4+)、2273.7718(5+)、1894.9193(6+)、1421.5047(8+)。
【化53】
【0126】
[実施例13]
プロパギル-PAMAM(2)-(SSPy)
8の合成。プロパギル-PAMAM 1-D2(84 mg、0.05 mmol)をDMF(1.2 ml)に溶解した。DMSO(8 ml)中のSPDP(129 mg、0.41 mmol)を次いで加えた。混合物を室温にて1時間撹拌し、水中の0.1% TFA(20 ml)で希釈した。得られた溶液を、HPLC精製のためにフェニル42 mlカラムに直ちに載せて(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)、プロパギル-PAMAM(2)-(SSPy)
836 mg、22%の純粋な生成物を得た。%。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
137H
201N
37O
22S
16について算出値3229.1312、実測値1616.5492(2+)、1077.7144(3+)。
【化54】
【0127】
[実施例14]
プロパギル-PAMAM(2)-(SSCysAn2)
8の合成。プロパギル-PAMAM(2)-(SSPy)
8(35 mg、11μmol)、An2Cys(200 mg、88μmol)及びNaHCO
3(22 mg、0.26 mmol)のDMSO(2 ml)及びDMF(2 ml)中の混合物を室温にてアルゴンの下で2時間撹拌した。0℃に冷却した後に、反応混合物を水中の0.1% TFA(25 ml)で希釈し、精製のためにC4 24 mlカラムに直ちに載せた(8% ACN/H
2Oから0.05% TFAを含む40% ACN/H
2O)。プロパギル-PAMAM(2)-(SSCysAn2)
8(70 mg、30%)の純粋な生成物を、凍結乾燥の後に無色の粉末として得た。UPLC純度、95%。HRMS(Microtof、ESI)m/z、C
953H
1393N
269O
278S
19について算出値21575.2346、実測値2397.8071(9+)、2158.0533(10+)、1962.0438(11+)。
【化55】
【0128】
[実施例15]
分岐鎖状リジンコアに基づくペプチドデンドリマーの合成。固相アプローチを用いて、分岐鎖状リジンコアに基づくデンドリマーを合成した。同じ不安定性保護基(Fmoc)でブロックしたα-及びε-アミノ基をともに有するLys残基を、予め樹脂に結合したリンカーとカップリングさせた(以下の模式図に示すとおり)。脱保護する際に、このLysカップリングを1回又は2回反復して、4つ又は8つのアミノ基を、さらなるカップリング反応のために利用可能にした。任意選択で、鎖あたり3つのGly残基を付加して、マトリクスのポリリジンコアと結合させるペプチドとの間の柔軟な連結をもたらすことができる。
【化56】
【0129】
ポリリジン-AN2マルチマー類似体の合成及び切断。全てのペプチドを、リンクアミドメチルベンズヒドリルアミン樹脂上に、Fmoc(N-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル)化学のためのHCTU-(2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート)活性化手順を用いる手動固相ペプチド合成を用いて集合させた。樹脂からのペプチドの切断は、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシラン及び水をスカベンジャーとして(95:2:3トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:水)用いて処理することにより達成した。反応は、室温(20〜23℃)にて2.0時間行った。トリフルオロ酢酸を次いで蒸発させ、ペプチドを氷冷エーテルで沈殿させ、ろ過し、20%酢酸/80% H
2Oに溶解して凍結乾燥した。粗ペプチドを、C4カラム上で45分間で20〜80%のBの勾配(緩衝液A:H
2O/0.1%トリフルオロ酢酸、緩衝液B:40% CH
3CN/60% H
2O/0.1%トリフルオロ酢酸)を用いて、溶離液を229にてモニタリングする逆相HPLCにより精製した。Waters Acquity UPLCをBruker Q-TOF質量分析検出とともに用いて、回収した画分の分子質量及び純度を確認し、所望のペプチドの正しい純度及び分子質量を示すものをプールして凍結乾燥した。
【0130】
アミノ酸側鎖保護基(Pbf基、Trt基又はtBu基)を含有する副生成物のデンドリマー混合物への混入を克服するために、合成及び脱保護ステップを最適化して、凍結乾燥した粗生成物ができる限り均質になるようにした。塩化2-クロロトリチル樹脂から得られた完全に保護されたAngiopep-2断片を用いて、欠失のない全体的によりよい質の生成物を達成できた。
【化57】
【0131】
代わりに、純粋なペプチドを、後工程での精製のために樹脂マトリクス上のポリリジンコアにコンジュゲートさせることができる。例えば、システイン含有Angiopep-2を、マレイミド又はSPDP活性化ポリリジンにカップリングして、混入副生成物が少ない生成物を得た。これは、Angiopep-2単量体がコンジュゲーションステップの前に精製されたことが主な原因であった。
【化58】
【国際調査報告】