特表2015-526513(P2015-526513A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-526513(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置または予防のための方法および薬剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-526513(P2015-526513A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(54)【発明の名称】(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置または予防のための方法および薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/417 20060101AFI20150814BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20150814BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20150814BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150814BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150814BHJP
【FI】
   A61K31/417
   A61P31/14
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-529749(P2015-529749)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】RU2013000751
(87)【国際公開番号】WO2014035297
(87)【国際公開日】20140306
(31)【優先権主張番号】2012137097
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】RU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515054815
【氏名又は名称】オブシェストヴォ・ス・オグラニチェンノイ・オトヴェトストヴェンノストジュ・“ファームエンタープライジーズ”
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・エフゲニエヴィチ・ネボルシン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ウラジミロヴィチ・ボリセヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ユーリエヴィチ・エゴロフ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA34
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、医薬に関し、グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量の使用を含む、(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための方法に関する。本発明は、グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量を含有する、(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬組成物にも関する。本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属の(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置において有効な新規薬剤を提供することによって課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与する工程を含む、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための方法。
【請求項2】
エンテロウイルス属に属するウイルスが、ライノウイルス、コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルス71型を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が、ライノウイルスによって引き起こされる喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎および嚢胞性線維症の悪化である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フラビウイルス属に属するウイルスが、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
グルタリルヒスタミンが、固体剤形で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の用量が、体重1kgあたり0.1から10mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グルタリルヒスタミンの用量が、100mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
グルタリルヒスタミン投与の期間が、5日から12カ月である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量を含む、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬組成物。
【請求項10】
グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量が、体重1kgあたり0.1から10mgである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
グルタリルヒスタミンの用量が、1日1回投与される場合、100mgである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
エンテロウイルス属に属するウイルスが、ライノウイルス、コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルス71型を含む群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
フラビウイルス属に属するウイルスが、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスを含む群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
疾患が、ライノウイルスによって引き起こされる喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎および嚢胞性線維症の悪化である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一項に記載の組成物およびその使用のための説明書を含む、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のためのキット。
【請求項16】
エンテロウイルス属に属するウイルスが、ライノウイルス、コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルス71型を含む群から選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
フラビウイルス属に属するウイルスが、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスを含む群から選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
疾患が、ライノウイルスによって引き起こされる喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎および嚢胞性線維症の悪化である、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬組成物を製造するためのグルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項20】
エンテロウイルス属に属するウイルスが、ライノウイルス、コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルス71型を含む群から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
フラビウイルス属に属するウイルスが、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスを含む群から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
疾患が、ライノウイルスによって引き起こされる喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎および嚢胞性線維症の悪化である、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬、具体的にはグルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染は重大な健康問題である。今日、有害で極めて危険なウイルス感染の大部分に対する抗ウイルス薬は未だ開発、公認されておらず、既存のものはしばしばヒトに毒性であるかまたは効果が十分ではない。既存または開発中の薬物の大部分は、特定のウイルス性タンパク質との特異的相互作用を通じて作用する。そのような薬物は限定的な作用スペクトルを有することから、耐性ウイルス変種の早期の発生を助長する。ボルチモアウイルス分類系のクラスIVは、1本鎖(+)RNA((+)ssRNA)を含有するウイルスを含む。このクラスは、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属およびフラビウイルス科のフラビウイルス属に属するウイルスを含む。
【0003】
これらのウイルスは、細胞性抗ウイルスプログラムを阻害する有効な戦略を発達させている。このような細胞性抗ウイルス防御の系を阻害する攻撃的戦略は、上記群のウイルスの高い伝染性および病原性の原因となり、これは、エンテロウイルス属に属するウイルス(灰白髄炎、ウイルス性鼻炎(ライノウイルス感冒)およびエンテロウイルス71感染)ならびにフラビウイルス属に属するウイルス(黄熱、西ナイル熱、デング熱、ダニ媒介脳炎、セントルイス脳炎およびマレー渓谷脳炎)によって引き起こされる疾患の一覧によって確認される。
【0004】
ヒトライノウイルスは、今日、エンテロウイルス属のウイルスの中で最も大きな課題である。ライノウイルスは、鼻咽頭粘膜細胞で増殖することから上気道疾患の原因となる。ライノウイルスは、感冒関連疾患の少なくとも80%の原因病原体である。莫大な経済的損失(米国で1年間に2000万人時)に加えて、ライノウイルス感染は副鼻腔炎および中耳炎などの多数の合併症を引き起こし、肺炎を有する小児のウイルス学的アッセイにおいて頻繁に検出される。喘息児では、ライノウイルス感染は80%の場合において増悪(acerbation)の原因にもなる。成人では、ライノウイルスは喘息および慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、および嚢胞性線維症を悪化させる場合があり、これらのウイルスは免疫不全状態で肺炎を罹患している患者においても単離された。
【0005】
ライノウイルスの100を超える抗原型があることから、有効なワクチンを開発することは不可能である(Palmenberg, A.C、Spiro, D、Kuzmickas, R、Wang, S、Djikeng, A、Rathe, JA、Fraser-Liggett, CM、Liggett, SB (2009).「Sequencing and Analyses of All Known Human rhinovirus Genomes Reveals Structure and Evolution」. Science 324 (5923): 55〜9. doi:10.1126/science.1165557. PMID 19213880)。加えて、ライノウイルス感染の処置のために有効な化学療法剤はない。
【0006】
エンテロウイルス71型(EV71)は、1970年から1972年にかけてカルフォルニアで無菌性髄膜炎を有する患者および脳炎を有する患者から最初に単離された。重症例ではウイルスが髄膜炎、麻痺および脳炎などの神経障害を引き起こすことは注目されるべきである。ウイルスは、非衛生的条件下で拡散する。ウイルスEV71での感染後、体温が上昇し、皮疹が手および足、手掌および足裏に現れ、四肢が腫大し、潰瘍が口腔に現れる。エンテロウイルスの重症型は致死性である場合がある。エンテロウイルス71は、すべてのヒトエンテロウイルスの内で最も「重篤」であると報告されている。このウイルスは、致死的転帰を有して大規模な流行を引き起こす場合がある。過去40年間にわたり、この感染症の3回の大流行、すなわち1969年から1978年にかけて米国、オーストラリア、ブルガリア、日本において;1985年から1991年にかけて香港、ブラジル、台湾において;ならびに1996年から2006年にかけてマレーシア、カナダ、中国、ベトナムおよび日本において記録されている。例えば1998年に台湾において、エンテロウイルス71によって引き起こされた疾患およそ150万例が記録されており、その78例は致死性であった。2006年から2007年には、インド、タイ、中国、マレーシア、ブルネイおよび日本においてエンテロウイルス71の大流行および個別症例が発生した。エンテロウイルス71に対するワクチンはなく、非特異的治療はまだ開発されていない。
【0007】
コクサッキーウイルス感染(HCXV)は、明白な臨床多型によって特徴付けられる大きな疾患群である。コクサッキーウイルス感染は、髄膜炎、麻痺、急性呼吸障害、肺炎、出血性結膜炎、心筋炎、肝炎、糖尿病および他の症候群によって明らかになる場合がある。ウイルスの現在の分類により、エンテロウイルス属に属するヒトエンテロウイルスは5種に分けられる(14):1)ポリオウイルス;2)ヒトエンテロウイルスA;3)ヒトエンテロウイルスB;4)ヒトエンテロウイルスC;および5)ヒトエンテロウイルスD。コクサッキーウイルスの種々の血清型は次のエンテロウイルス種に属する:ヒトエンテロウイルスA(コクサッキーウイルスA2〜8、10、12、14および16);ヒトエンテロウイルスB(コクサッキーウイルスA9、B1〜6);ならびにヒトエンテロウイルスC(コクサッキーウイルスA1、11、13、15、17〜22および24)。
【0008】
コクサッキーウイルスは、他のヒトエンテロウイルスと同様に、世界中に広範に分布している。温帯の国々では、それらの最大循環は夏から秋にかけてである。ウイルスは、高い侵襲性によって特徴付けられ、人類での急速な拡散を引き起こす。しばしばコクサッキーウイルスは、組織化された小児集団および病院における「突発的」大流行の原因であり、感染の家族内拡散も確認されている。ウイルスゲノムの高い変異性は、コクサッキーウイルスおよび他のエンテロウイルス感染の疫学において重要な役割を果たす。この重要性は特定の環境において異なる病態を引き起こす種々の血清型の能力である。一方、同じ臨床症候群が異なる血清型および異なるエンテロウイルス種によって引き起こされる場合もある。改変ウイルスの遺伝子的多様性、選択および急速な拡散は疾患の大流行をもたらし、その病因論にはこれらのウイルスは以前は含まれておらず、またそれらの循環は長い間理解されていなかった。
【0009】
コクサッキーウイルスの初代複製は、上咽頭および腸管関連のリンパ組織において生じる。それにより、ARD、ヘルパンギーナ、咽頭炎などの症状によって顕在化する局所的病変が生じる。咽頭ではウイルスは7日目まで検出され、3〜4週間(免疫不全の場合は数年間)大便に排出される。ウイルスの初代複製のあとに、ウイルスが標的器官に侵入するウイルス血症が発症する。コクサッキーウイルスの場合、標的器官は、脳および脊髄、髄膜、上気道、肺、心臓、肝臓、皮膚などを含む。コクサッキーウイルスBは、新生児においては重度の全身性の病理学的経過を引き起こす場合があり、心臓、脳および脊髄、肝臓、ならびに腎臓において壊死を引き起こす。ウイルスは、次の臨床症候群を引き起こす:漿液性髄膜炎(コクサッキーウイルスA2、3、4、6、7、9、10およびB1〜6);心筋炎および髄膜脳炎を有する小児における急性全身性疾患(コクサッキーウイルスB1〜5);麻痺(コクサッキーウイルスA1、2、5、7、8、9、21およびB2〜5);ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルスA2、3、4、5、6、8および10);急性咽頭炎(コクサッキーウイルスA10、21);伝染性鼻炎(コクサッキーウイルスA21、24);上気道の損傷および肺炎(コクサッキーウイルスA9、16およびB2〜5)(16);心膜炎、心筋炎(コクサッキーウイルスB1〜5);肝炎(コクサッキーウイルスA4、9、20およびB5);新生児および乳児の下痢(コクサッキーウイルスA18、20、21、24);急性出血性結膜炎(コクサッキーウイルスA24);手足口病様の疾患(foot and mouth like disease)(コクサッキーウイルスA5、10、16);発疹(コクサッキーウイルスA4、5、6、9、16);胸膜炎(コクサッキーウイルスB3、5);皮疹(コクサッキーウイルスB5);ならびに発熱(コクサッキーウイルスB1〜5)。コクサッキーウイルス感染の処置に対して特異的な化学療法剤はない。病因および対症療法が疾患の臨床形態に応じて使用される。
【0010】
フラビウイルス属は、100種を超えるウイルスを含み、その3分の2はヒトに対して病原性である節足動物媒介ウイルスである。これらのウイルスは種々の疾患、流行熱から出血熱および脳炎を引き起こす。
【0011】
西ナイル熱(西ナイル脳炎、脳炎ニリ・オクシデンタリス(Encephalitis Nili occidentalis)(ラテン語))は、発熱、髄膜炎、粘膜およびリンパ節の全身性病変によって特徴付けられるウイルス性疾患である。感染は、吸血昆虫、好ましくはイエカ属(アカイエカ(Culex pipiens))の蚊の咬傷を通じてヒトに伝染する。西ナイル熱は北アフリカ、地中海諸国ならびにインドおよびインドネシアにおいて蔓延している。熱病の自然病巣(Natural foci)は、アゼルバイジャン、アルメニア、カザフスタン、モルドバ、トルクメニスタン、タジキスタンおよびアストラカンならびにロシアのボルゴグラード領域に存在する。フラビウイルスは、好ましくは節足動物(ダニおよび蚊)によって伝染されるウイルスの属である。1999年から、熱病は合衆国全体に拡散している。疾患管理予防センター(CDC)によれば、2012年8月21日に38州で1118例の感染が観察され、41名が死亡し、その内ダラスおよびその郊外だけでも200例および10の致死例が記録された。
【0012】
デング熱(同義語:ブレイクボーンフィーバー、関節熱、キリン熱、五日熱、七日熱、デイト病(date disease)、デングアウン(dengue-awn)(ドイツ、フランス、スペイン(Isp.));ダンジイ熱(dangy-fever)、ブレイクボーンフィーバー(ラテン語);デングエロ(denguero)(イタリア))は、熱帯および亜熱帯領域において蔓延しているウイルス性疾患である。時には温帯領域において発生する。それにより疾患の深刻な大流行が1922年にテキサスで、さらには1927年にギリシャで記録された。最後の流行は1940年代半ばに米国において記録された。デング熱は、感染後5〜6日で症候性になる。それは、5〜7日間続く急な体温上昇、頭痛、筋肉および関節の激痛、時に皮疹を特徴とする。これに少なくとも一週間続く肉体疲労および抑うつの期間が続く。デングウイルス病原体は、黄熱ウイルスに非常に類似しており、黄熱ウイルスと同様に同じ種の蚊(主にネッタイシマカ(Aedes aegypti))によってほぼ普遍的に伝染される。4種の類似するデング血清型が同定されている。これらそれぞれでの感染は、十分強力な免疫応答をもたらすが、免疫は特に他の血清型にまでは広がらない。1950年代に東南アジアで、疾患の2つの非常に重度の形態であるデング出血熱およびデングショック症候群が記録された。幼児では、衰弱および死の原因となり、致死例数は極めて多かった。疾患のそのような重度の進行についての原因は未だ明らかではない。デングウイルスのいくつかの株の変異が、さらに病原性の形態の生成を引き起こしていると考えられる。他のウイルス血清型での再感染が短期間で生じる場合があり、それが免疫機構の破壊をもたらすと考えられる。デング熱の処置のための特異的な薬剤はない。副腎皮質ステロイドおよび抗生物質が出血熱およびショック症候群に使用されているが、それらの有効性は証明されていない。ショック症候群の場合には、身体の水分バランスを維持すること、および血漿容量増量剤を投与することが推奨されている。デング熱に対するワクチンは未だ開発中であるが、明確な結果はない。さらに、重度の出血性およびショック症候群の発症が免疫系の感作(感受性の増大)によって引き起こされるという示唆が証明されれば、免疫ワクチン接種の妥当性が疑問視される。
【0013】
ダニ媒介脳炎(春夏、春季、ロシア、木こり脳炎、オカリナ脳炎(Encephalitis ocarina)(ラテン語))は、中枢神経系の顕著な損傷を特徴とする自然病巣から伝染する(ダニ伝染)ウイルス感染である。疾患の潜伏期間は7から14日間続き、それより長い場合もある。通常、疾患は発熱で始まり、筋肉痛が2から4日間続く。この期間は、ウイルス血症に対応すると示唆される。次いで数日間続く短い寛解後に発熱の第二波が来て髄膜症状が現れる。疾患のこのステージの臨床所見の範囲は、比較的若い人々に特有の深刻な髄膜炎から、昏睡、てんかん、振戦および移動障害を伴う脳炎の最も重度の形態まで極めて広く、7〜10日間続く。脊髄および延髄における病変は、呼吸筋および肩帯の麻痺の危険を生じる。大部分の患者は回復するが、時には重度の神経学的異常が残る。この感染の原因療法処置は存在しない。ダニ媒介脳炎に対する有効な不活化ワクチンは、アジュバントとしてアルミニウム塩を含んで生産されている。オーストリアで生産されるダニ媒介脳炎ワクチンは、0.5から3カ月間以内に2回投与された場合に抗ウイルス免疫をもたらす。他のワクチンも同程度の有効性しかない。稀にワクチン接種はギランバレー症候群を合併することから、自然病巣内に住んでいる人々または春と夏にそこを訪れる人々に対してだけ推奨される。自然病巣では、感染したマダニが0.2から4.0%形成され、そのためマダニが人に付着していることが見つかったら、緊急免疫処置が実際に行われる。ダニ媒介脳炎に対する免疫グロブリンが直ちに投与される場合があるが、多くの人々がアレルギー反応のために禁忌である。
【0014】
セントルイス脳炎(アメリカ脳炎(Encephalitis Americana)(ラテン語))は、米国、メキシコ、アルゼンチン、スリナム、カリブ、コロンビアおよび南カナダの大部分の領域において風土性である。大発生の際に数百から数千の人々がこの疾患に罹患し、死亡率は15〜30%であった。北アメリカでは、自然病巣は、野鳥およびイエカ属の蚊によって維持されている。疾患は突然現れ、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、髄膜症候群を伴い、運動失調、発語障害、尿失禁、錯乱および振戦が続く。その進行は劇症である。症例の5%においてCNSでの残存変化が発症する。疾患に特異的な処置および予防は現在まで開発されていない。ワクチンを開発する試みはうまくいっていない。したがって、感染マウス脳から作られたワクチン製剤の使用は、ワクチン接種した人々に短期間の免疫しかもたらさない。病因および対症療法用薬剤だけが使用されている。
【0015】
マレー渓谷脳炎(オーストラリア脳炎(Encephalitis Avstralia)(ラテン語))は、オーストラリア、ニュージーランドおよび周辺領域において風土性である。季節性大流行の際に死亡率は20〜50%に達する。オーストラリアでは、自然病巣は野鳥(サギ)およびイエカ属の蚊によって維持されている。疾患は、発熱、頭痛、髄膜症候群およびしばしば麻痺を伴う。疾患に特異的な処置および予防は現在まで開発されていない。病因および対症療法用薬剤だけが使用されている。
【0016】
(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる感染においていくらかの有益な効果を発揮する唯一の化学療法剤がリバビリンであることは注目されるべきである。しかしリバビリンは比較的毒性の薬物であり、しばしば貧血を生じる。その主な特質は、赤血球における長期保持である。結果としてリバビリンの痕跡は、治療終了の6カ月後でも検出される。リバビリンの催奇性についての言及もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Palmenberg, A.C、Spiro, D、Kuzmickas, R、Wang, S、Djikeng, A、Rathe, JA、Fraser-Liggett, CM、Liggett, SB (2009).「Sequencing and Analyses of All Known Human rhinovirus Genomes Reveals Structure and Evolution」. Science 324 (5923): 55〜9. doi:10.1126/science.1165557. PMID 19213880
【発明の概要】
【0018】
本発明者らは、これだけに限らないがエンテロウイルスおよびフラビウイルス属に属するウイルスによって引き起こされる感染に対する無毒性抗ウイルス薬剤としてグルタリルヒスタミンが使用できることを予想外に見出した。
【0019】
上記から、本発明はエンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置および/または予防のための薬剤に関し、本薬剤は次の式のグルタリルヒスタミンである:
【0020】
【化1】
【0021】
本発明によるグルタリルヒスタミンは、固体剤形で投与される。
【0022】
本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の予防および処置のための方法にも関し、本方法は、グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与する工程を含む。
【0023】
エンテロウイルス属に属するウイルスは、ライノウイルス、コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルス71型を含む群から選択されてもよい。フラビウイルス属に属するウイルスは、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスを含む群から選択されてもよい。グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、患者の体重1kgあたり0.1から30mgであってもよい。グルタリルヒスタミンの単回用量は、約100mgであってもよい。グルタリルヒスタミンの投与の好ましい期間は、5日から12カ月であってもよい。本発明の一実施形態は、ライノウイルスによって引き起こされる喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎および嚢胞性線維症の悪化の予防または処置に関する。
【0024】
さらに本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置のための医薬組成物に関し、本組成物は、グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量を含む。グルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の有効量は、好ましくは患者の体重1kgあたり0.1から30mgである。グルタリルヒスタミンの用量は、1日1回の投与で、100mgであってもよい。
【0025】
本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置のためのキットにも関し、本キットは、本発明による組成物およびその使用のための説明書を含む。
【0026】
加えて、本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置のための医薬組成物を調製するためのグルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。本発明は、エンテロウイルス属またはフラビウイルス属に属する(+)RNA含有ウイルスによって引き起こされる疾患の処置のためのグルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩の使用にも関する。
【0027】
本発明によるグルタリルヒスタミンの薬学的に許容される塩は、そのアルカリまたはアルカリ土類金属塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩であってもよい。
【0028】
グルタリルヒスタミンまたはその塩は、所望の治療結果をもたらす有効量で投与される。
【0029】
グルタリルヒスタミンまたはその塩は、ヒト体重1kgあたり0.1から30mgの用量で、好ましくは1kgあたり0.3から1.5mgの用量で、1日1回または複数回患者に投与されてもよい。
【0030】
具体的な各患者に対する具体的な用量が、患者の年齢、体重、性別、一般的健康状態および食事;薬剤投与のスケジュールおよび経路ならびに身体からの排出速度;ならびに処置される患者での疾患重症度などの多数の要因に依存することに留意すべきである。
【0031】
本発明による医薬組成物は、所望の結果を実現するのに有効な量でグルタリルヒスタミンまたはその薬学的に許容される塩を含み、活性剤としてグルタリルヒスタミンまたはその塩を筋肉内、静脈内、経口、舌下、吸入、鼻腔内、直腸内および経皮投与に適した担体または賦形剤との混合物として含む単位剤形に(例えば、固体、半固体または液体の形態で)調製されてもよい。活性剤は、溶液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ペレット剤、坐剤、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、ゲル、パッチおよびあらゆる他の剤形の製造に好適な従来の無毒性の薬学的に許容される担体と共に組成物に加えられてもよい。
【0032】
賦形剤として、糖類、例えばグルコース、ラクトースまたはショ糖;マンニトールまたはソルビトール;セルロース誘導体;ならびに/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムまたはカルシウムハイドロホスフェートなどの種々の化合物が使用されてもよい。次の化合物は、結合剤として使用されてもよい:デンプンペースト、例えばコーン、コムギ、イネまたはジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン。崩壊剤、例えば前述のデンプンおよびカルボキシメチルデンプン、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩なども場合により使用されてよい。
【0033】
流量調節剤および潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸およびその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、ならびに/またはプロピレングリコールなどの任意選択の添加剤も使用されてもよい。
【0034】
安定化剤、増粘剤、着色剤および香味剤も添加剤として使用されてもよい。
【0035】
軟膏基剤は、白色ワセリンおよび黄色ワセリン(それぞれワセリナムアルバム(Vaselinum album)およびワセリナムフラバム(Vaselinum flavum))、ワセリン油(オレウムワセリニ(Oleum Vaselini))などの炭化水素軟膏基剤、ならびに白色軟膏および液体軟膏(それぞれウングエンタムアルバム(Unguentum album)およびウングエンタムフラバム(Unguentum flavum))から選択でき、増粘添加剤として固形パラフィンおよびワックスが使用されてもよい。親水性ワセリン(ワセリナムヒドロフィリカム(Vaselinum hydrophylicum))、ラノリン(ラノリナム(Lanolinum))およびコールドクリーム(ウングエンタムレニエンス(Unguentum leniens))などの吸収性軟膏基剤;親水性軟膏(ウングエンタムヒドロフィルム(Unguentum hydrophylum))などの水除去性(water-removable)軟膏基剤;ならびにポリエチレングリコール軟膏(ウングエンタムグリコリスポリアエチレニ(Unguentum Glycolis Polyaethyleni))などの水溶性軟膏基剤;ベントナイト基剤;なども好適である。
【0036】
メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、オキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドおよびカーボポールは、ゲル用の基剤として有用である。
【0037】
ココアバターなどの水不溶性基剤;ゼラチングリセロールもしくはポリエチレンオキシド基剤などの水溶性または水混和性基剤;および複合基剤(グリセリン石鹸)は、坐剤用の基剤として有用である。
【0038】
単位剤形において、担体との組合せで使用される活性剤の量は、処置される患者および治療剤の投与の具体的な経路に応じて変更できる。
【0039】
例えばグルタリルヒスタミンまたはその塩が注射用溶液の形態で使用される場合、溶液中の活性剤は0.1から5%の量である。好適な希釈剤は0.9%塩化ナトリウム溶液、蒸留水、注射用ノボカイン(Novocain)溶液、リンゲル液、グルコース溶液および特異的可溶化添加剤である。グルタリルヒスタミンまたはその塩が錠剤または坐剤の形態で投与される場合、その量は単位剤形あたり10から300mgの範囲である。
【0040】
本発明による剤形は、調合、顆粒化、ペレット形成、溶解および凍結乾燥などの標準的方法によって産生される。
【0041】
注目すべきことに、治療用量または治療用量よりも一桁多い用量でグルタリルヒスタミンまたはその塩を長期間投与したところ、副作用は記録されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例は、本発明による疾患の予防および処置のためのグルタリルヒスタミンの有効性を実証するために本発明をより詳細に開示するものであり、開示される実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0043】
in vivo実験モデルでのヒトライノウイルスに対するグルタリルヒスタミンの抗ウイルス活性
試験は、マウス肺に前もって適用して増殖させたヒトライノウイルス株(HRV 1B)で実施した。
【0044】
「AmpliSense」社によって製造された「Ribo-sorb」キットを使用することによって、HRV感染マウスの肺および気管の懸濁物から得たRNAに特異的なプライマーでのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR(AmpliSense、ロシア)および2ラウンドPCRによってHRVの特異性を制御した。
【0045】
体重8から10gの白色Balb/c雄マウスの鼻腔内に、短いエーテル麻酔下でマウス1匹あたり0.05mlの量のウイルス含有材料を感染させた。
【0046】
マウスは、the Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って扱った。研究の前に動物を5日間検疫した。
【0047】
動物は、標準的給餌を与え同じ条件下に保った。マウスを各10匹の群に分けた。
【0048】
HRVでのマウス感染の12時間後に開始して、グルタリルヒスタミンを1日1回3日間経口投与した。対照群のマウスは通常の生理食塩水を同じ条件下で投与した。
【0049】
グルタリルヒスタミンは用量15および30mg/kgで投与した。
【0050】
感染48および72時間後でのマウス気管および肺の懸濁液におけるHRV感染力価を、各マウスから得た10%懸濁物の10倍希釈系列でのHela細胞培養物に対する個別分析によって決定した。結果を33℃での2時間のインキュベーション後にPCRによって評価した。
【0051】
検査プローブの各希釈物をプレートのウエル4個で評価し、得られた値を平均値を算出するために使用した。PCRによってウイルス性RNAが検出された感染培養上清の最大希釈をウイルス力価とした。力価は、HRV RNAが決定されたウイルス希釈の逆数値として表した(lg/mlは平均値として表した:lg±m)。
【0052】
結果の統計分析をMicrosoft社のエクセルソフトウェアを使用して実施した。
【0053】
グルタリルヒスタミンの有効性を、HRV感染48および72時間後の肺におけるウイルス複製の抑制によって評価した。
【0054】
in vivoにおけるグルタリルヒスタミン有効性の基準は、Hela細胞培養物中の感染力価、および直接的にマウス肺の懸濁物中の感染力価に基づいてPCR法により決定された肺におけるウイルス蓄積の低減であった。
【0055】
Hela細胞培養物でのマウス肺の懸濁物中のHVRの感染活性の決定結果をTable 1(表1)に示す。
【0056】
HVR感染マウスの肺懸濁物の力価測定(titration)は、対照群で48時間において最大値4.1lgおよび72時間で3.2lgに達した肺におけるウイルスの増殖を示した。グルタリルヒスタミンの使用は、HRVの感染活性の極めて明白な低減、具体的には、使用したグルタリルヒスタミンの用量30mg/kgでそれぞれ2.6および2.2lgを導いた。
【0057】
同じ結果をマウスにおけるHVR感染に対するグルタリルヒスタミンの有効性を、PCR法によって直接肺においてウイルスの抑制および活性を研究することによって得た。リアルタイムPCRは、対照群と比較してグルタリルヒスタミンを投与されたマウス群における感染48および72時間後でのウイルス性RNAコピー量の顕著な、すなわち10から100倍の低減を実証した。
【0058】
したがって本実施例は、ヒトライノウイルスの複製を特異的に減少させる有効な抗ウイルス薬剤としてグルタリルヒスタミンを使用する可能性を示す。
【0059】
【表1】
【実施例2】
【0060】
西ナイル熱(WNF)の実験型に対するグルタリルヒスタミンの有効性の研究
実験では西ナイルウイルスEg101株を使用した。感染動物を21日間モニターした。それらの死を管理し、白色マウスの平均生存期間を実験群および対照群において算出した。
【0061】
in vivoにおける有効性の主な基準は、実験動物の死からの防御率およびその群の動物の平均生存期間であった。
【0062】
グルタリルヒスタミンの有効性を推定するために、白色マウスを10LD50の用量で皮下で感染させた。グルタリルヒスタミンを次の計画に従って経口投与した:予防用-用量5mg/kg、感染前1日1回4日間、および感染前1時間;用量30mg/kg、1週間に1回;処置用-用量5mg/kg、感染後24、次いで7日間;用量30mg/kg、1日1回、感染24および48時間後、次いで72、96および120時間に15mg/kgの単回用量。
【0063】
Table 2(表2)に示す有効性の評価結果から、グルタリルヒスタミンは、予防および処置計画に従い用量5mg/kgで投与される場合、感染マウスを死から防御することが実証される。死からの防御は、それぞれ42.9%および37.8%であった。加えて、その群の動物の平均生存期間も顕著に増大した(それぞれ4.2および2.8日間)。
【0064】
【表2】
【0065】
第二の治療計画(Table 3(表3))では、感染前144時間での単回投与における白色マウスでの西ナイル熱の実験モデルについてのグルタリルヒスタミン用量30mg/kgの防御有効性は、40.0%であり、動物の平均生存期間における増大は3.7日間であった。
【0066】
【表3】
【0067】
Table 4(表4)に示す有効性の評価結果から、薬剤は、処置計画に従い投与される場合(30mg/kg、1日1回2日間、次いで15mg/kg、1日1回3日間)、感染マウスを死から有効に防御することが実証される。死からの防御は50.0%であり、その群の動物の平均生存期間は3.5日間まで増大した。参照薬物であるリバビリンは、用量20mg/kgの予防計画に従い投与した場合、動物の50%を死から防御した。処置計画による投与でのリバビリンの防御有効性が10.0%であったことは注目されるべきである。
【0068】
したがって、西ナイル熱(WNF)の実験型では、グルタリルヒスタミンは感染動物を死から有効に防御した。
【0069】
【表4】
【実施例3】
【0070】
ダニ媒介脳炎ウイルス(TBE)の実験モデルについてのグルタリルヒスタミン有効性の研究
グルタリルヒスタミン有効性を、TBEの実験モデルについてTBEウイルスSof'in株、用量30LD50で皮下感染させた体重9から10gの白色マウスにおいて研究した。グルタリルヒスタミンを、用量5mg/kgで予防計画に従い(感染5日前、1日1回);予防/処置計画に従い(感染5日前および感染後7日間、1日1回);処置計画に従い(感染24時間後、次いで7日間、1日1回);同様に用量30mg/mlで、予防計画に従い(1週間に1回);処置計画に従い(感染24および48時間後、1日1回、次いで15mg/kgの単回用量、72、96および120時間)で経口投与した。
【0071】
リバビリンを、緊急の予防計画に従い用量20mg/kgで参照薬物として使用した。
【0072】
Table 5(表5)に示す研究結果から、グルタリルヒスタミンは、予防および予防/処置計画によって投与される場合、グルタリルヒスタミンの最大の抗ウイルス有効性が観察されたことが実証される。死からの防御が40%であり、平均生存期間における増大が4.2日間であったことが示された。予防および予防/処置計画による投与においてグルタリルヒスタミンの防御有効性は35%であった。
【0073】
【表5】
【0074】
第二予防計画(Table 6(表6))では、白色マウスにおけるダニ媒介脳炎の実験モデルにおける用量30mg/kgの感染144時間前の単回投与でのグルタリルヒスタミンの防御有効性は30.0%であり、動物の平均生存期間における増大は3.1日間であった。
【0075】
【表6】
【0076】
Table 7(表7)に示す有効性の評価結果から、グルタリルヒスタミンは、処置計画(30mg/kg、1日1回2日間、次いで15mg/kg、1日1回3日間)に従い投与される場合、感染マウスを死から有効に防御することが実証される。死からの防御は40.0%であり、その群の動物の平均生存期間は3.2日間まで増大した。処置計画によって投与された場合にリバビリンの防御有効性が15.0%であったことは注目されるべきである。
【0077】
したがって、ダニ媒介脳炎の実験モデルでは、グルタリルヒスタミンは感染動物を死に対して有効に防御する。
【0078】
【表7】
【実施例4】
【0079】
デング熱の実験型におけるグルタリルヒスタミンの有効性の研究
抗ウイルス活性を決定するために、白色マウス脳内にデング熱ウイルスを感染させた。グルタリルヒスタミンを次の計画に従って経口投与した:予防用-用量5mg/kg、1日1回感染前に4日間および感染前1時間;用量30mg/kg、1週間に1回;処置用-用量5mg/kg、感染後24およびそれに次ぐ7日間;用量30mg/kg、1日1回24および48時間、次いで用量15mg/kg、1日1回感染後72、96および120時間。感染動物を21日間モニターした。生物学的試料を感染5日後に評価した。
【0080】
Table 8(表8)に示す有効性の評価結果から、グルタリルヒスタミンは、予防および処置計画に従い用量5mg/kgで投与される場合、マウス血液中のデング出血熱ウイルスの増殖を有効に阻害することが実証される。ウイルス蓄積の阻害のレベルは95.5%であった。
【0081】
【表8】
【0082】
Table 9(表9)に示す有効性の評価結果から、グルタリルヒスタミンは、処置計画(30mg/kg、1日1回2日間、次いで15mg/kg、1日1回3日間)に従い投与される場合、白色マウスの血液中のデング出血熱ウイルスの増殖を有効に阻害することが実証される。ウイルス蓄積の阻害のレベルは99.6%であった。処置計画ではリバビリンで処置された動物の血液中のウイルス蓄積の阻害レベルが83.4%だけであったことは注目されるべきである。
【0083】
したがってデング出血熱の場合には、グルタリルヒスタミンは感染動物においてウイルス複製を有効に阻害する。
【0084】
【表9】
【実施例5】
【0085】
コクサッキーウイルスに対するグルタリルヒスタミンの抗ウイルス効果
この研究では、コクサッキーウイルス感染マウスに前もって適用して死をもたらしたトリプシン依存性株HCXVを使用した。
【0086】
実験は、体重6から7gの白色マウスで行った。
【0087】
マウス1匹あたり用量0.1mlで、動物の筋肉内に感染させた。実験で使用された用量はマウスで70〜80%の致死を生じる10LD50であった。
【0088】
グルタリルヒスタミンの治療能力を、未処置マウス群と比較した検査群中のHCXVウイルス感染マウスにおける死亡率によって評価した。
【0089】
検査薬物およびプラセボを処置計画によって経口投与した。プラセボとして通常の生理食塩水溶液をマウスに投与した。実験動物と同じ条件下で別々の部屋に保った無処置動物14匹を陰性対照として使用した。
【0090】
実験は、動物14匹の4群で行った。第一、第二および第三の動物群にそれぞれ体重1kgあたり用量30mg、3mgおよび0.3mgでグルタリルヒスタミンを投与し、第四の対照群の動物は通常の生理食塩水溶液を受けた。薬物を1日1回5日間経口投与した(第一回投与-感染24時間後)。動物を20日間モニターし、その際動物の体重を毎日量り、死亡率を記録した。
【0091】
HCXVウイルス感染動物におけるグルタリルヒスタミン有効性の研究の際に、無処置動物の対照群において記録された非特異的致死例はなかった。
【0092】
【表10】
【0093】
研究結果は、グルタリルヒスタミンを投与されなかったウイルス感染マウス群における最初の致死例が感染7日後に記録され、9日目までにマウスの78.6%が死んだことを実証する。対照群における平均生存期間は10.0日間であった。
【0094】
グルタリルヒスタミンは、動物における死亡率の減少および動物の平均生存期間の増大で表される、コクサッキーウイルスでの感染で実験モデルに対する統計的に有意な防御効果を実証する。
【0095】
本実施例に記載のグルタリルヒスタミンの高い抗ウイルス活性は、この薬物がHCXVエンテロウイルス感染の処置において有効な薬物として有用であることを証明する。
【実施例6】
【0096】
グルタリルヒスタミンの剤形の製造
本発明により使用されるグルタリルヒスタミンの剤形は、例えば、混合、顆粒化、丸剤形成、溶解および凍結乾燥の工程などの標準的方法によって調製される。
【0097】
錠剤の形態
錠剤の形態は、次の成分を使用することによって調製される:
【0098】
【表11】
【0099】
成分を混合し、質量300mgの錠剤を形成するために圧縮する。
【0100】
ゼラチンカプセル剤
【0101】
【表12】
【0102】
上記成分を混合、顆粒化し、得られた顆粒を固体ゼラチンカプセルに220mgの量で入れる。
【0103】
坐剤
坐剤の配合例
【0104】
【表13】
【0105】
直腸内、経膣および尿道内坐剤は、場合によりそれに対応する賦形剤を使用して調製することもできる。
【0106】
注射用溶液
注射用溶液の配合例1:
【0107】
【表14】
【0108】
注射用溶液は、0.9%塩化ナトリウム溶液、蒸留水およびノボカイン溶液を希釈剤として使用して調製することができる。医薬用形態としては、アンプル、フラスコ、シリンジチューブおよび「インサート」が挙げられる。
【0109】
注射用溶液の配合1:
【0110】
【表15】
【0111】
注射用溶液は、0.9%塩化ナトリウム溶液、等張リン酸緩衝液またはHEPESを希釈剤として使用することによって調製することもできる。医薬用形態としては、アンプル、フラスコ、シリンジチューブおよび「インサート」が挙げられる。
【0112】
注射用製剤は、滅菌溶液、滅菌粉末および錠剤などの種々の投与量単位で調製することもできる。
【国際調査報告】