(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-526846(P2015-526846A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(54)【発明の名称】燃料セル電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20060101AFI20150814BHJP
【FI】
H01M8/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-521585(P2015-521585)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月4日
(86)【国際出願番号】US2012046042
(87)【国際公開番号】WO2014011153
(87)【国際公開日】20140116
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA
(71)【出願人】
【識別番号】504229022
【氏名又は名称】バラード パワー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシノ,トーマス エフ.ジュニアー
【テーマコード(参考)】
5H026
【Fターム(参考)】
5H026AA06
5H026BB01
5H026BB02
5H026BB03
5H026EE18
5H026HH03
5H026HH08
(57)【要約】
一例の燃料セル電極アセンブリが、膜を含む。第1の電極が膜の第1の側にある。第2の電極が膜の第2の側にある。第1のガス拡散層が、第1の電極に隣接する。第1のガス拡散層の少なくとも一部が第1のプラスチック材料によって少なくとも部分的に含浸され、第1のプラスチック材料は、その第1のガス拡散層の一部を第1の電極に接着させる。第2のガス拡散層が、第2の電極に隣接する。第2のガス拡散層の少なくとも一部が第2のプラスチック材料によって少なくとも部分的に含浸され、第2のプラスチック材料は、その第2のガス拡散層を第2の電極に接着させる。第1のガス拡散層を第2のガス拡散層から電気的に絶縁するように、それらのガス拡散層のうちの少なくとも一方と、その隣接する電極と、の間に第3のプラスチック材料が配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料セル電極アセンブリであって、
膜と、
前記膜の第1の側における第1の電極と、
前記膜の第2の側における第2の電極と、
前記第1の電極に隣接する第1のガス拡散層であって、その第1のガス拡散層の少なくとも一部を前記第1の電極に接着させる第1のプラスチック材料によって、前記少なくとも一部が少なくとも部分的に含浸された、第1のガス拡散層と、
前記第2の電極に隣接する第2のガス拡散層であって、その第2のガス拡散層を前記第2の電極に接着させる第2のプラスチック材料によって、前記第2のガス拡散層の少なくとも一部が少なくとも部分的に含浸された、第2のガス拡散層と、
前記第1のガス拡散層を前記第2のガス拡散層から電気的に絶縁するように、前記2つのガス拡散層のうちの少なくとも一方と、その隣接する電極と、の間に配置された第3のプラスチック材料と、
を備えた燃料セル電極アセンブリ。
【請求項2】
前記第3のプラスチック材料が、前記第1および第2のプラスチック材料とは異なることを特徴とする請求項1に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2のプラスチック材料が、融解温度を有し、
前記第3のプラスチック材料が、前記第1および第2のプラスチック材料の融解温度よりも高い融解温度を有することを特徴とする請求項2に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項4】
前記第1および第2のプラスチック材料が、低密度ポリエチレンを備え、
前記第3のプラスチック材料が、鎖状低密度ポリエチレンを備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項5】
前記第3のプラスチック材料が、前記第1のプラスチック材料または前記第2のプラスチック材料の少なくとも一方に少なくとも部分的に封入されることを特徴とする請求項1に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第3のプラスチック材料が、前記第2のガス拡散層と前記第2の電極との間に配置され、
前記第2の電極の一部が、前記第2のガス拡散層の平面に沿った方向に幅を有し、
前記第3のプラスチック材料が、前記方向に前記第2のガス拡散層の前記一部の幅よりも小さい幅を有することを特徴とする請求項5に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第1のプラスチック材料が、前記第1の電極と、前記第1のガス拡散層の前記一部と、の境界面を密封し、
前記第1のプラスチック材料が、前記第1のガス拡散層の外周に亘る流体の移動を阻止するように、前記第1のガス拡散層の前記外周に沿ったバリアを構築し、
前記第2のプラスチック材料が、前記第2の電極と、前記第2のガス拡散層の前記一部と、の境界面を密封し、
前記第2のプラスチック材料が、前記第2のガス拡散層の外周に亘る流体の移動を阻止するように、前記第2のガス拡散層の前記外周に沿ったバリアを構築することを特徴とする請求項1に記載の燃料セル電極アセンブリ。
【請求項8】
燃料セル電極アセンブリの製造方法であって、
第1のガス拡散層と、第1の電極と、の間に第1のプラスチック材料を位置決めするステップと、
第2のガス拡散層と、第2の電極と、の間に第2のプラスチック材料を位置決めするステップと、
少なくとも前記第2のガス拡散層と、前記第2の電極と、の間に第3のプラスチック材料を位置決めするステップと、
前記第1のプラスチック材料を前記第1のガス拡散層の一部に少なくとも部分的に含浸させて前記第1のガス拡散層を前記第1の電極に固定するように、前記第1のプラスチック材料を融解させるステップと、
前記第2のガス拡散層を前記第1のガス拡散層から電気的に絶縁させるように前記第2の電極と前記第2のガス拡散層との間に前記第3のプラスチック材料を配置した状態で、前記第2のプラスチック材料を前記第2のガス拡散層の一部に少なくとも部分的に含浸させて前記第2のガス拡散層を前記第2の電極に固定するように、前記第2のプラスチック材料を融解させるステップと、
を備えた燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項9】
プレス内に、前記プラスチック材料と、前記ガス拡散層と、前記電極と、を位置決めするステップと、
前記プレス内で、少なくとも前記プラスチック材料および前記ガス拡散層に押圧を印加するステップと、
前記プラスチック材料が前記押圧を受けている間に前記第1および第2のプラスチック材料を少なくとも部分的に融解させるように、それらのプラスチック材料を十分に加熱するステップと、
前記プラスチック材料が前記押圧を受けている間に、前記加熱ステップに続いて前記プラスチック材料を冷却するステップと、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項10】
少なくとも前記第1および第2のプラスチック材料の融解温度であり、かつ、前記第3のプラスチック材料の融解温度よりも低い温度に、それらのプラスチック材料を加熱するステップを備えることを特徴とする請求項9に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項11】
前記第3のプラスチック材料を融解させることなく軟化させるステップを備えることを特徴とする請求項10に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項12】
前記ガス拡散層、前記プラスチック材料、および前記電極を層状に重ねるステップであって、
前記第1のプラスチック材料を備えた少なくとも一つの第1のフィルムを、前記第1のガス拡散層に対して位置決めし、
前記第1の電極を、前記第1のフィルムに対して位置決めし、
前記第2のプラスチック材料を備えた少なくとも一つの第2のフィルムを、前記第2の電極に対して位置決めし、
前記第3のプラスチック材料を備えた少なくとも一つの第3のフィルムを、前記第2のフィルムに対して位置決めし、
前記第2のプラスチック材料を備えた少なくとも一つの第4のフィルムを、前記第3のフィルムに対して位置決めし、
前記第2のガス拡散層を、前記第4のフィルムに対して位置決めする、
ように前記ガス拡散層、前記プラスチック材料、および前記電極を層状に重ねるステップと、
前記層状に重ねられた前記ガス拡散層、前記プラスチック材料、および前記電極を前記プレス内に配置するステップと、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項13】
前記第3のプラスチック材料が、前記第1および第2のプラスチック材料とは異なることを特徴とする請求項8に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項14】
前記第1および第2のプラスチック材料が、融解温度を有し、
前記第3のプラスチック材料が、前記第1および第2のプラスチック材料の融解温度よりも高い融解温度を有することを特徴とする請求項13に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項15】
前記第1および第2のプラスチック材料が、低密度ポリエチレンを備え、
前記第3のプラスチック材料が、鎖状低密度ポリエチレンを備えることを特徴とする請求項13に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項16】
前記第2のプラスチック材料に、前記第3のプラスチック材料を少なくとも部分的に封入させるステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項17】
前記第2の電極の一部が、前記第2のガス拡散層の平面に沿った方向に幅を有し、
前記第3のプラスチック材料が、前記方向に前記第2のガス拡散層の前記一部の幅よりも小さい幅を有することを特徴とする請求項8に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【請求項18】
前記第1の電極と、前記第1のガス拡散層の前記一部と、の境界面を、前記第1のプラスチック材料で密封し、
前記第1のガス拡散層の外周に亘る流体の移動を阻止するように、前記第1のプラスチック材料を備えたバリアを、前記第1のガス拡散層の前記外周に沿って構築し、
前記第2の電極と、前記第2のガス拡散層の前記一部と、の境界面を、前記第2のプラスチック材料で密封し、
前記第2のガス拡散層の外周に亘る流体の移動を阻止するように、前記第2のプラスチック材料を備えたバリアを、前記第2のガス拡散層の前記外周に沿って構築する、ステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料セル電極アセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料セルは、電気を発生させるのに有用である。燃料セルは、水素および酸素といった、反応物間の電気化学反応を促進する。電極アセンブリを含んだ燃料セル内には様々なコンポーネントが存在する。
【背景技術】
【0002】
一例の電極アセンブリは、両側に電極を有する膜を含む。電極のうちの一方は、カソードとしての機能を果たし、他方はアノードとしての機能を果たす。一部の燃料セル設計では、それらの電極と反応物分流板との間にガス拡散層が設けられ、それにより反応物の膜への案内を容易にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
燃料セル内における様々なコンポーネントの適切なアラインメントの実現を含む、燃料セルの組み立てに関連する様々な課題が存在する。一般的な組み立て工程は相対的に多大な時間を必要とするとともに多大な労働力を要し、それにより余分な費用が嵩む傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一例の燃料セル電極アセンブリが、膜を含む。第1の電極が膜の第1の側にある。第2の電極が膜の第2の側にある。第1のガス拡散層が、第1の電極に隣接する。第1のガス拡散層の少なくとも一部が第1のプラスチック材料によって少なくとも部分的に含浸され、第1のプラスチック材料は、その第1のガス拡散層の一部を第1の電極に接着させる。第2のガス拡散層が、第2の電極に隣接する。第2のガス拡散層の少なくとも一部が第2のプラスチック材料によって少なくとも部分的に含浸され、第2のプラスチック材料は、その第2のガス拡散層を第2の電極に接着させる。第1のガス拡散層を第2のガス拡散層から電気的に絶縁するように、それらのガス拡散層のうちの少なくとも一方と、その隣接する電極と、の間に第3のプラスチック材料が配置される。
【0005】
一例の燃料セル電極アセンブリの製造方法が、第1のガス拡散層と、第1の電極と、の間に第1のプラスチック材料を位置決めすることを含む。第2のプラスチック材料が、第2のガス拡散層と、第2の電極と、の間に位置決めされる。第3のプラスチック材料が、第2のガス拡散層と、第2の電極と、の間に位置決めされる。第1のプラスチック材料を第1のガス拡散層の一部に少なくとも部分的に含浸させるように第1のプラスチック材料が融解される。融解した第1のプラスチック材料はまた、第1のガス拡散層を第1の電極に固定する。第2のプラスチック材料を第2のガス拡散層の一部に少なくとも部分的に含浸させるように第2のプラスチック材料が融解される。第2のガス拡散層を第1のガス拡散層から電気的に絶縁させるように、第2の電極と第2のガス拡散層との間に第3のプラスチック材料を配置した状態で、第2のプラスチック材料が、第2のガス拡散層を第2の電極に固定する。
【0006】
開示の実施例の様々な特徴および利点が以下の詳細な説明から当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例に従って設計された一例の電極アセンブリの概略図。
【
図2】
図1の実施例のような電極アセンブリの製造工程時に用いられる複数の層を示す図。
【
図3】実施例の電極アセンブリの製造工程の一部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一体型電極アセンブリ(UEA)を想定した燃料セル電極アセンブリ20を概略的に示す。図示の一体型電極アセンブリ20は、膜24と、膜24の一方の側の第1の電極26と、膜24の反対側の第2の電極28と、を含む。電極26,28のうちの一方がアノード電極としての機能を果たすように構成される一方、他方の電極26,28がカソード電極としての機能を果たすように構成される。
【0009】
第1のガス拡散層30が、第1の電極26に隣接するとともに、少なくともその第1のガス拡散層30の外周に沿って、第1の電極26に固定される。第2のガス拡散層32は、少なくともその第2のガス拡散層32の外周に沿って、第2の電極28に固定される。電気絶縁性プラスチック層34が、第2のガス拡散層32と、第2の電極28と、の間に位置している。電気絶縁性プラスチック層34は、第1のガス拡散層30を第2のガス拡散層32から電気的に絶縁する。この層34は、ガス拡散層の任意の繊維が、一体型膜電極アセンブリ20へと浸透するのを防ぐとともに、他方のガス拡散層に接触するのを防ぐ。
【0010】
図2は、一例の電極アセンブリ20の製造に用いられる複数の層を概略的に示す。第1のプラスチック材料層40が第1のガス拡散層30と第1の電極26との間に位置決めされる。この実施例では、第1のプラスチック材料層40は、2つのプラスチックフィルム40A,40Bを備える。第1のプラスチック材料の単一のプラスチックフィルムを用いることも可能である。図からも分かるように、プラスチックフィルム40A,40Bは、第1のガス拡散層30の外周の縁部に対応する、概ね矩形の外周の4つの側に沿った幅を有する。
【0011】
第2のプラスチック材料を備えたフィルムの少なくとも一つの層が第2のガス拡散層32と、第2の電極28との間に位置決めされる。この例では、第2のプラスチック材料の層が、2つのフィルム層44,46を含む。フィルム層44は、第2の電極28にすぐ隣接するように位置決めされ、フィルム層46は、第2のガス拡散層32にすぐ隣接するように位置決めされる。
【0012】
電気絶縁性プラスチック層34はこの例では第3のプラスチック材料を備える。第3のプラスチック材料のフィルムがプラスチックフィルム44とプラスチックフィルム46との間に位置決めされる。このプラスチックフィルム44は、第3のプラスチック材料34の、第2の電極28への接着を容易にする。プラスチックフィルム46,44は、第2のガス拡散層32の外周に少なくとも部分的に含浸され、第2のガス拡散層32の、第2の電極28への接着を容易にする。
【0013】
図3は、対向するプレスプレートを備えたプレス50を概略的に示す。解放フィルム層52が、それぞれ、プレスプレートと、ガス拡散層30,32と、の間に位置決めされる。解放フィルム層52は、組み立て工程が完了したときの完成した電極アセンブリの、プレス50からの取り外しを容易にする。
【0014】
図3の例では、第1のプラスチック材料を単一の層すなわちフィルム40として示し、このフィルムは、
図2に概略的に示す2つ以上のフィルムを含んでもよい。
【0015】
図3は、様々なプラスチックフィルム層のそれぞれの幅を示すが、それらは必ずしも縮尺どおりに示されていない。
図2,3からも分かるように、第3のプラスチック材料を備えたフィルム34の概ね直線状のセグメントの幅は、第2のプラスチック材料のフィルム層44,46のセグメントの幅よりも小さい。第3のプラスチック材料の層34のより小さい幅により、組み立て工程の結果、第3のプラスチック材料が、第2のプラスチック材料内に少なくとも部分的に封入されるのを容易にする。
図4からも分かるように、ひとたび第2のプラスチック材料が融解すると、この第2のプラスチック材料が第2のガス拡散層32の一部64に少なくとも部分的に含浸されて、第2の電極28と、第3のプラスチック材料の層34との間にボンディング層を提供し、第3のプラスチック材料34を少なくとも部分的に封入する。組み立て工程の終了時にこうした配置の第2のプラスチック材料を有することにより、第2の電極28と第2のガス拡散層32との間に第3のプラスチック材料34さえも有する流体密封のシールを、第2のガス拡散層32および第2の電極28の外周の境界面に保証する。
【0016】
図3からも分かるように、これらのガス拡散層、プラスチック材料、および電極が層状に重ねられて、第1のプラスチック材料層40が第1のガス拡散層に対して位置決めされ、第1の電極26が第1のプラスチック材料層40に対して位置決めされ、第2のプラスチック材料の層44が第2の電極28に対して位置決めされ、第3のプラスチック材料の層34が第2のプラスチック材料の層44に対して位置決めされ、第2のプラスチック材料の層46が第3のプラスチック材料の層34に対して位置決めされ、第2のガス拡散層32が第2のプラスチック材料の層46に対して位置決めされる。これらの層のすべてがプレス50内に位置決めされる。一部の例では、
図3に示される異なる層の順序を確立するように、個々の層がそれぞれプレス内に位置決めされる。他の例では、それらの個々の層が互いに層状配置に位置決めされ、次いでその層状配置全体がプレス50内に配置される。
【0017】
一旦、全ての層がプレス50内に適切に位置決めされると、プレスプレートを互いに向かって強く促す方向に第1の押圧が印加される。一例では、第1の押圧は約1500ポンドである。プレス50内の全ての層が、第1の選択温度に達するまで加熱される。一例では、第1の選択温度は、約240°Fである。プレス50の中身が第1の選択温度にある状態で、第2の押圧が印加される。第2の押圧は、一例では約7000ポンドである。
【0018】
プレス50の中身を加熱し続けながら、選択された時間、一例では5分間、第2の押圧が印加される。一例では、第2の押圧を印加しながら、電極アセンブリの種々の層が約250°Fの温度に到達する。選択時間の経過後、加熱が停止され、プレス50の中身が冷却される。組み立て工程における冷却部分の間、第2の押圧が印加される。一例では、第2の押圧が解放される前にプレス50の中身が110°F未満の温度に到達するまで、プレス50の中身が冷却される。
【0019】
第2の押圧の解放後、プレス50が開放され、完成した電極アセンブリ20が取り外される。
【0020】
図4からも明らかなように、プレス50の中身の加熱は、第1のプラスチック材料が第1のガス拡散層30の一部60に少なくとも部分的に含浸されるように、第1のプラスチック材料を融解させるのに十分である。第2のプラスチック材料が第2のガス拡散層32の一部64に少なくとも部分的に含浸されるように、第2のプラスチック材料を少なくとも部分的に融解させるには、同じ温度で十分である。一例では、第1のプラスチック材料および第2のプラスチック材料は同一である。一例では、第1のプラスチック材料および第2のプラスチック材料として低密度ポリエチレンを含む。一部の例では、第1のプラスチック材料および第2のプラスチック材料の両方のプラスチック材料が、各々のガス拡散層の一部に含浸され、かつ、それらの部分を隣接する電極に固定させるのに十分であるように、それぞれ、少なくとも部分的に融解されるべく十分に低い融解温度を有する場合に限り、第1のプラスチック材料および第2のプラスチック材料は異なっていてもよい。
【0021】
層34の第3のプラスチック材料の融解温度は第1および第2のプラスチック材料の融解温度よりも高い。こうしたより高い融解温度により、組み立て工程時に第3のプラスチック材料の層34が融解するのを防ぐ。一例では、第1および第2のプラスチック材料の融解に用いられる温度に曝されたとき、第3の材料は少なくとも部分的に軟化する。
図4は、加熱および押圧の印加前のプラスチック層34と同じ形状にプラスチック層34が概ね保持されていることを概略的に示す。
図4の配置は、必ずしも縮尺どおりに示されていないが、種々のプラスチック材料と、電極アセンブリの複数の層との関係を示すことを意図している。一例では、第3のプラスチック材料は、第1のガス拡散層30を第2のガス拡散層32から電気的に絶縁するのに有効な鎖状低密度ポリエチレンを備える。
【0022】
実施例の特徴の一つは、単一のボンディング工程を通じての電極アセンブリ20の組み立てを可能にすることである。ガス拡散層をそれぞれ電極に固定する接着は、プレス50内での単一の工程時に確立される。同一の工程により、ガス拡散層におけるプラスチックの含浸部分の構築が可能となり、それによりそれらの部分と電極の各々との間の境界部に流体密封のシールを構築する。同時に、ガス拡散層のプラスチックが含浸された外周部がバリアを備え、このバリアは、ガス拡散層の平面に対して平行な方向(例えば、
図3および
図4の右側または左側)への、ガス拡散層の縁部に亘る流体の移動を阻止する。
【0023】
電極アセンブリ20の種々のシールを確立するとともに種々の層を互いに固定する、プレス内での単一の工程の利用を可能にすることにより、組立て時間、労働力、および費用を低減する。したがって、開示の実施例により、燃料セル電極アセンブリを製造するための多段組み立て工程に比較して、経済性が高められる。
【0024】
上記の記載は本質的に限定的なものではなく例示に過ぎない。本発明の真意を逸脱することなく開示の実施例に対する種々の変形や修正が当業者にとって明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は付記の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定される。
【国際調査報告】