特表2015-527063(P2015-527063A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオカーティス エヌ ヴイの特許一覧

<>
  • 特表2015527063-生物サンプルをろ過するための方法 図000003
  • 特表2015527063-生物サンプルをろ過するための方法 図000004
  • 特表2015527063-生物サンプルをろ過するための方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527063(P2015-527063A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(54)【発明の名称】生物サンプルをろ過するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/02 20060101AFI20150821BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20150821BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20150821BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20150821BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20150821BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20150821BHJP
【FI】
   C12N1/02
   C12N1/20 Z
   C12Q1/68 A
   C12M1/26
   G01N1/10 B
   G01N33/48 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-520885(P2015-520885)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月5日
(86)【国際出願番号】EP2013063333
(87)【国際公開番号】WO2014009151
(87)【国際公開日】20140116
(31)【優先権主張番号】12175581.3
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514281751
【氏名又は名称】バイオカーティス エヌ ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ペンテルマン,ローエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン メールベーゲン,バート
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045BA01
2G045BB02
2G045BB05
2G045BB15
2G045CA25
2G045DA13
2G045DA14
2G052AA30
2G052AB18
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052EA03
2G052FD09
4B029AA09
4B029BB02
4B029CC01
4B029FA05
4B029HA06
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QS10
4B065AA01X
4B065AA42X
4B065BA22
4B065CA46
(57)【要約】
以下のステップ:(a)真核細胞を有し、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプルを提供するステップ;(b)前記真核細胞の選択的溶解を行い、溶解されたサンプルを得るステップ;(c)前記微生物を保持するように配置されたフィルタを通して、ステップ(b)において得られた前記溶解されたサンプルをろ過するステップ;(d)該溶解されたサンプルをろ過する追加のステップ(c)を可能にするために、前記フィルタを、洗剤系洗浄バッファーで洗浄して、前記フィルタにより保持された前記真核細胞由来のタンパクを選択的に可溶化して、前記洗剤系洗浄バッファーを前記フィルタに通過させることにより、前記タンパク目詰まりを前記フィルタから除去するステップ、を含む、サンプルをろ過するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a)真核細胞を有し、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプルを提供するステップ;
(b)前記真核細胞の選択的溶解を行い、溶解されたサンプルを得るステップ;
(c)前記微生物を保持するように配置されたフィルタを通して、ステップ(b)において得られた前記溶解されたサンプルをろ過するステップ;
(d)該溶解されたサンプルをろ過する追加のステップ(c)を可能にするために、前記フィルタを、洗剤系洗浄バッファーで洗浄して、前記フィルタにより保持された前記微生物以外の物質を選択的に可溶化して、前記洗剤系洗浄バッファーを前記フィルタに通過させることにより、前記微生物以外の前記物質からなる目詰まりを前記フィルタから除去するステップ;
(e)ステップ(c)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む、サンプルをろ過するための方法。
【請求項2】
前記微生物以外の前記物質が、前記真核細胞由来のタンパクである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗剤洗浄バッファーが、5より大きく9より小さいpHを有する、リン酸緩衝食塩水であり、前記洗剤として界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、前記洗剤洗浄バッファーが、約0.2体積%〜約0.5体積%の、好ましくは、約0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該溶解されたサンプルをろ過する前記ステップ(c)の間に、前記フィルタの目詰まりを検出するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタを洗浄する前記ステップ(d)を、前記フィルタの目詰まりが検出された場合に行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、真核細胞の選択的溶解の前記ステップ(b)が、以下のステップ:
(b1)溶解洗剤およびアルカリ性バッファーを、該サンプルに添加するステップ、これに続いて、
(b2)前記真核細胞を選択的に溶解するのに十分に長い時間、前記サンプルをインキュベートするステップ、
を含む、方法。
【請求項8】
該サンプルが、哺乳動物の血液サンプルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液サンプルが、全身性炎症反応症候群(SIRS)または心内膜炎を患う患者由来である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該微生物を溶解するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物を検出するための核酸分子アッセイをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下:
− 真核細胞を有し、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプルを受容するための、および前記真核細胞の選択的溶解を行い、溶解されたサンプルを得るための溶解チャンバ、
− 前記選択的溶解後に前記溶解されたサンプルをろ過するために、前記溶解チャンバに連結されたフィルタであって、該フィルタは、前記フィルタ上に該微生物を保持するように配置されたフィルタ、および
− 前記フィルタに連結し、洗剤系洗浄バッファーを含み、前記フィルタにより保持された前記微生物以外の物質を選択的に可溶化して、前記微生物以外の前記物質からなる目詰まりを前記フィルタから除去する貯蔵タンク、
を含む、サンプルのろ過のためのデバイス。
【請求項13】
前記洗剤洗浄バッファーが、5より大きく9より小さいpHを有する、リン酸緩衝食塩水であり、約0.2体積%〜約0.5体積%の、好ましくは、約0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記フィルタの目詰まりを測定するように配置されたセンサをさらに含む、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
核酸分子アッセイを行い、前記微生物を検出するための検出チャンバをさらに含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的なやり方での、大量の他の細胞を含むサンプル中の低濃度の微生物の検出に関し、より特には、病原体をフィルタ上に選択的に保持する一方で例えば、DNAおよびタンパクなどの血液細胞材料を除去するための、血液細胞の選択的溶解後の血液サンプルのろ過の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子診断法は、例えば、血液などのサンプル中の微量の病原体(典型的には、バクテリア)の迅速検出を目標とする。しかしながら、血液は、複合マトリックスであり、適応免疫系のための白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))、酸素輸送のための赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))、および創傷治癒のための血小板(platelet)(血小板(thrombocyte))を含む。この組成物は、例えば、全血などのサンプル中の病原体の直接検出を複雑にし、前記全血は、例えば、DNAおよびタンパクなどの、多量の細胞材料を含む。
【0003】
したがって、病原体を濃縮する一方で、血液サンプルから血液細胞材料を除去するための方法が必要とされている。
【0004】
既知の方法では、血液細胞の選択的溶解後、大容量の血液サンプルのろ過により、病原体をフィルタ上に収集する。
【0005】
前記ろ過ステップでは、例えば、DNAまたはタンパクなどの阻害構成成分を除く一方で、前記病原体を、前記フィルタ上に保持する。
【0006】
国際公開第2011/070507号(A)は、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプル内での真核細胞の選択的溶解のための方法を開示し、ここで、洗剤およびバッファーを該サンプルに添加して溶液を得て、前記溶液を、前記真核細胞を溶解するのに十分長い時間、さらにインキュベートする。この方法では、前記サンプル中の前記白血球および赤血球を溶解することにより、5〜10mlのオーダーの体積を有する血液サンプルをプロセシングすることが可能となり、前記白血球DNAを分解する一方で、前記微生物の実質的部分(すなわち、20%、40%、60%、80%、90%より多い、または95%よりなお多い)が生存したままであり、あるいは、前記処理により破壊された場合には、前記細胞壁内に前記バクテリアDNAをなお含む。例えば、DNAまたはタンパクなどの阻害構成成分を除去するために、該微生物を、続いてろ過ステップにより濃縮することができる一方で、前記病原体を、前記細胞壁内のそれらのバクテリアDNAと共に前記フィルタ上に保持する。
【0007】
サンプルの全ての利用可能な体積をろ過して、前記フィルタ上に最大量の微生物を収集することが重要である。しかしながら、前記方法を適用する場合には、前記フィルタは、通常、前記サンプルが完全にろ過される前に目詰まりし、これは、例えば、前記フィルタによりまた保持される前記サンプル中のタンパクの存在による。この目詰まりにより、前記ろ過の失敗をもたらし、これにより、プロセシング全体を停止させる。したがって、前記従来の方法は、フィルタ上でプロセスされ得るサンプルの量を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/070507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のこれらの欠点を解決することを目標とし、サンプルの体積を制限するリスクなく、真核細胞を有するサンプルをろ過するための方法を、最初に提案するものであり、これにより、前記方法の感度は、従来の方法と比較して増加する。かかるろ過方法を、タンパクおよび/または核酸の高いバックグラウンドを含む複合サンプル中の微生物を検出する一般的方法に使用してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目標を念頭に置いて、本発明の第1側面は、以下のステップ:
(a)真核細胞を有し、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプルを提供するステップ;
(b)前記真核細胞の選択的溶解を行い、溶解されたサンプルを得るステップ;
(c)前記微生物を保持するように配置されたフィルタを通して、ステップ(b)において得られた前記溶解されたサンプルをろ過するステップ;
(d)該溶解されたサンプルをろ過する追加のステップ(c)を可能にするために、前記フィルタを、洗剤系洗浄バッファーで洗浄して、前記フィルタにより保持された前記微生物以外の物質を選択的に可溶化して、前記洗剤系洗浄バッファーを前記フィルタに通過させることにより、前記微生物以外の前記物質からなる目詰まりを前記フィルタから除去するステップ;
(e)ステップ(c)を少なくとも1回繰り返すステップ、
を含む、サンプルをろ過するための方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、前記サンプルマトリックスまたは真核細胞に由来する物質による前記フィルタの目詰まりを、前記フィルタを洗浄して前記フィルタから前記目詰まりを除去する前記ステップにより回避し、これにより、前記フィルタの透過性の有意な減少により停止することなく、前記溶解されたサンプルを全面的にろ過し得る。前記目詰まりの前記選択的除去を、洗剤を含む前記洗浄バッファー溶液により行い、これにより、前記微生物以外の前記物質のみが前記フィルタから除去される。前記フィルタ上に蓄積された前記微生物は、このバッファー洗浄溶液により、除去または分解されず、これにより、検出または分析されるために、それらは前記フィルタ上にさらなるプロセシングのために残留する。
【0012】
有利には、前記微生物以外の前記物質は、前記真核細胞に由来するタンパクである。前記真核細胞に由来するタンパクは、前記フィルタにより容易に保持され、後者(the latter)を目詰まりさせることが認識され、これにより、本発明の前記方法は、前記フィルタからこれらのタンパク目詰まりの選択的除去を行うのに役立つ。
【0013】
有利には、前記洗剤洗浄バッファーは、5より大きく9より小さいpHを有する、リン酸緩衝食塩水であり、前記洗剤として界面活性剤を含む。前記微生物以外の前記物質の選択的洗浄が達成される。
【0014】
有利には、前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、前記洗剤洗浄バッファーは、約0.2体積%〜約0.5体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。好ましくは、前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、前記洗剤洗浄バッファーは、約0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。ドデシル硫酸ナトリウムのこの特定の濃度により、例えば、前記真核細胞に由来するタンパクなどの、前記微生物以外の前記物質のみの前記選択的溶解が達成される。理想的には、SDSの濃度は、0.2体積%〜0.5体積%であり、好ましくは、0.25体積%〜0.35体積%であり、より好ましくは、0.27体積%〜0.33体積%である。この洗剤は、タンパクに顕著な効果を有することが知られているので、前記洗剤は、SDSである。前記タンパクと相互作用し、前記タンパクを変性させて、スルフィド結合を還元し、前記タンパクの質量に応じて、最終的な正味の負の電荷をもたらすであろう。カギは、前記洗剤の濃度であり:前記フィルタを開くのに、効率的に役立つものでなければならないが、既に収集された前記病原体の溶解をもたらし得ないものである。
【0015】
本発明の好ましい態様において、前記方法は、該溶解されたサンプルをろ過する前記ステップ(c)の間に、前記フィルタの目詰まりを検出するステップを含む。前記方法は、前記フィルタの前記目詰まりをモニタし、これにより、前記フィルタの前記目詰まりに関して、適切な措置を取ることができる。
【0016】
理想的には、前記フィルタを洗浄する前記ステップ(d)を、前記フィルタの目詰まりが、例えば、前記フィルタチャンバでの昇圧を測定することなどにより検出された場合に行う。前記フィルタが目詰まりした場合に前記ろ過が危うくなるので、目詰まりが検出された場合には前記洗浄ステップを行い、これにより、前記プロセスは、いかなる不要な洗浄操作も含まず;前記洗浄は、前記フィルタが目詰まりした場合にのみ行われる。
【0017】
有利には、真核細胞の選択的溶解の前記ステップ(b)は、以下のステップ:
(b1)溶解洗剤およびアルカリ性バッファーを、該サンプルに添加するステップ、これに続いて、
(b2)前記真核細胞を選択的に溶解して、同時に前記真核DNAを分解するのに十分に長い時間、前記サンプルをインキュベートするステップ、
を含む。この方法は、前記微生物の完全性を全く分解することなく、前記真核細胞の前記膜の物理的完全性の好適な破壊を保証する。
【0018】
一態様において、該サンプルは、哺乳動物の血液サンプルである。前記サンプルが、前記フィルタにより保持される前記溶解された血液細胞を効率的に洗浄した(with an effective washing of the lysed blood cells)血液サンプルの場合には、前記方法は、前記ろ過を強化する。
【0019】
一態様において、前記血液サンプルは、全血である。
【0020】
前記血液サンプルが、全身性炎症反応症候群(SIRS)を患う患者由来のものである場合には、本発明の前記方法により、良好な結果が得られる。前記血液凝集カスケードが、前記血液サンプルをプロセシングする前に活性化された場合であっても、SIRSを患う患者由来のかかる血液サンプルを、本発明の前記方法でろ過することができた。
【0021】
本発明の一態様において、前記ろ過ステップ(c)を、第1所定時間の間に行い、前記洗浄ステップ(d)を、第2所定時間の間に行う。この態様は、前記ろ過を決定された第1時間に制限し、これにより、前記フィルタの前記目詰まりが前記ろ過を制限せず、前記洗浄ステップを決定された第2時間に制限し、これにより、前記洗浄されたフィルタが、別のステップのろ過を可能にする。前記フィルタを、前記溶解されたサンプルの前記ろ過の間に一定の間隔で洗浄し、前記ろ過および洗浄ステップが、あらゆる目詰まりの前に連続モードでなされ、これにより、前記フィルタは、より長い時間開いたままで、より多くの体積をプロセスすることができる。
【0022】
有利には、前記第1所定時間は、20〜80秒の、好ましくは、50〜70秒の、およびより好ましくは、55〜65秒の範囲であり、前記第2所定時間は、5〜25秒の、好ましくは、5〜20秒の、およびより好ましくは、5〜15秒の範囲である。これらの期間は、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS)または心内膜炎を患う患者などの患者由来の血液サンプルの、効率的なろ過を可能にする。
【0023】
本発明の別の態様において、前記方法は、該微生物を溶解するステップおよび前記微生物を検出するための核酸分子アッセイ(nucleic acid based molecular assay)をさらに含む。
【0024】
本発明はまた、以下:
− 真核細胞を有し、微生物を含むかまたは含むことが疑われるサンプルを受容するための、および前記真核細胞の選択的溶解を行い、溶解されたサンプルを得るための溶解チャンバ、
− 前記選択的溶解後に前記溶解されたサンプルをろ過するために、前記溶解チャンバに連結されたフィルタであって、該フィルタは、前記フィルタ上に前記微生物を保持するように配置されたフィルタ、および
− 前記フィルタに連結し、洗剤系洗浄バッファーを含み、前記フィルタにより保持された前記微生物以外の物質を選択的に可溶化して、前記微生物以外の前記物質からなる目詰まりを前記フィルタから除去する貯蔵タンク、
を含む、サンプルのろ過のためのデバイスに関する。
【0025】
本発明の前記デバイスは、ろ過中に目詰まりした場合に、前記フィルタを洗浄する方法を提供する。実際に、前記洗剤系洗浄バッファーを選択して、例えば、前記真核細胞に由来する前記タンパクなどの前記微生物以外の前記物質のみを溶解し、前記洗剤系洗浄バッファーを含む前記貯蔵タンクを前記フィルタに連結して、前記フィルタの洗浄を可能にする。タンパクによっては前記フィルタを目詰まりさせる場合であっても、前記洗剤系洗浄バッファーにより溶解されていない微生物のいかなる損失もなく、前記ろ過を操作することができる。
【0026】
一態様において、前記溶解チャンバは、40mlまたはそれより小さい容積を提示する。
【0027】
有利には、前記洗剤洗浄バッファーは、5より大きく9より小さいpHを有する、リン酸緩衝食塩水であり、約0.2体積%〜約0.5体積%の、好ましくは、約0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。
【0028】
有利には、前記デバイスは、前記フィルタの目詰まりを測定するように配置されたセンサをさらに含む。理想的には、前記センサは、圧力センサである。代替として、前記センサは、前記デバイスのポンプの偏向(deflection)を測定し、前記デバイスに一体化された、光学センサであってもよい。有利には、上述したポンプを、固定圧力で操作することができる。
【0029】
有利には、前記デバイスは、核酸分子アッセイを行い、前記微生物を検出するための検出チャンバをさらに含む。
【0030】
定義
本発明の意味における「血液細胞」は、血中に存在する哺乳動物細胞に関し、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))、白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))および血小板(platelet)(血小板(thrombocyte))を含む。
【0031】
本発明の意味における「全血」は、血漿および細胞を含む、プロセスされていない血液に関し、抗凝血剤で処理される。
【0032】
「サンプル」は、細胞材料を含む水性懸濁液に関し、例えば、リンパ、脳脊髄液、血液(全血および血漿)、唾液などの体液を含むが、また、例えば、筋肉、脳、肝臓または他の組織などの、例えば、均質化された懸濁液の水性画分などを含む。
【0033】
本発明における「真核」は、菌類を除く、例えば、動物などの、特に、血液を含む動物などのあらゆるタイプの真核生物に関し、例えば、甲殻類などの無脊椎動物および脊椎動物を含む。脊椎動物は、冷血動物(魚類、爬虫類、両生類)および温血動物(鳥類および哺乳類)を含む。哺乳類は、特に霊長類を、より特にはヒトを含む。
【0034】
(例えば、血液などの)サンプル中で、そのサンプル中の無傷のままの微生物細胞のパーセンテージが、前記血液サンプルが無傷のまま収集されたものからの前記生物からの前記真核細胞のパーセンテージと比較してかなり高い(2、5、10、20、50、100、250、500、または1000倍より高い)場合には、本発明において使用される「選択的溶解」を得る。例えば、この特定の方法に限定されず、真核細胞の選択的溶解を、文書、国際公開第2011/070507号(A)に開示された前記方法により行ってもよい。
【0035】
本発明において使用される「微生物」は、バクテリア(グラム陽性およびグラム陰性細菌ならびに細菌胞子)ならびに酵母およびカビなどの単細胞菌類に関し、これらは、典型的には、サンプルが病原体として収集された、前記生物中に存在する。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の特定の非限定的な例の以下の詳細な説明からより明らかとなり、以下の添付の図面により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の前記方法を適用した血液サンプルおよび適用しない血液サンプルをろ過した比較結果を表し;
図2a図2aは、病原体P. aeruginosaについての、本発明の前記方法を適用した病原体および適用しない病原体の検出の比較結果を表し;
図2b図2bは、病原体C. albicansについての、本発明の前記方法を適用した病原体および適用しない病原体の検出の比較結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
実験1−ろ過の効果
図1は、本発明の前記洗浄ステップあり(サンプルA)およびなし(サンプルB)の、全身性炎症反応症候群(SIRS)を患う患者由来の5mlの血液サンプルをろ過した比較結果を表す。
【0039】
前記血液サンプルを全て(AおよびB)、1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む、1M HCO/CO2−バッファー(pH 10.0)からなる溶解バッファーの添加による、前記真核細胞の選択的溶解に供した。前記血液サンプルとの混合後、前記選択的溶解が生じ、前記pHを低下させる第3バッファーを使用して、3分後に停止させた。
【0040】
全ての血液サンプルを、微生物を保持するように配置されたフィルタを通過させてプロセスした。2組の6種の血液サンプルをろ過した:
− 前記選択的溶解後のろ過の間に前記フィルタを洗浄せずに標準法で調製された、6種の血液サンプル(血液サンプルA)、および
− 前記選択的溶解後のろ過の間の前記フィルタ洗浄ステップにより、本発明の方法で調製された、6種の血液サンプル(血液サンプルB)、である。これらのサンプルBについては、前記ろ過ステップを1分間継続し、前記洗浄ステップを10秒間継続し、前記ステップは連続モードでなされた。
【0041】
血液サンプルBについては、前記血液サンプルを、かかるフィルタに連結された溶解チャンバを備えた使い捨てカートリッジを使用して調製し、前記カートリッジは、前記フィルタに連結し、0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むリン酸緩衝食塩水の洗浄バッファーを含む追加の貯蔵タンクを有した。血液サンプルAを、直接前記ろ過操作にのみ供し、血液サンプルBを、1分間のろ過ステップに供し、0.3体積%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む前記リン酸緩衝食塩水で前記フィルタを洗浄する10秒間のステップにより中断し、その後、ろ過のさらなるステップが続いた。
【0042】
前記図1は、各サンプルについてろ過された液体の量を表す。前記血液サンプルAについては、5mlの1つの血液サンプルのみが完全にろ過され、2〜3mlの4つの血液サンプルが前記フィルタの目詰まり前にろ過され、1つの血液サンプルが全くろ過されず、前記フィルタは直ちに目詰まりした。前記6つの血液サンプルBは、全面的にろ過された。これは、前記フィルタの前記洗浄ステップにより、予め選択的溶解に供された5mlの血液サンプルの全体積の前記ろ過が可能となることを実証する。
【0043】
実験2−病原体の回収の比較結果
図2aは、本発明の前記方法を使用し、前記フィルタの洗浄をしない方法での結果と比較した、健常ドナーの血液サンプル中に含まれる特定の病原体P. aeruginosaの回収の結果を表す。血液サンプルAは、前記フィルタの洗浄をしない方法でのベースラインを表し、血液サンプルBを、本発明の前記ろ過中に洗浄するステップを導入して試験した。前記グラフは、前記血液からの病原体の回収において、前記フィルタを洗浄することの効果がないことを示す。
【0044】
図2bは、本発明の前記方法を使用し、前記フィルタの洗浄をしない方法での結果と比較した、血液サンプル中に含まれる特定の病原体C. albicansの回収の結果を表す。病原体C. albicansでのこの実験はまた、前記血液サンプルA(前記フィルタの洗浄ステップなしのベースライン)は、前記ろ過中に前記洗浄ステップを含んで試験された前記血液サンプルBと同様の結果を示すので、本発明の前記方法は、前記血液からの前記病原体の回収への有害効果を全く有さないという結論を導く。
【0045】
実験3−ろ過可能体積に対する効果
第3実験において、使い捨てカートリッジを、標準のフィルタサイズの4分の1の大きさであるフィルタサイズで設計した(1.75cm対7cm)。健常ドナー血液由来の5mlの血液サンプルを、(前記フィルタを洗浄するステップを有する)本発明の前記方法でろ過でき、これは、標準サイズフィルタを通してろ過された、20mlの血液サンプルと同様であった。これは、新たな洗浄をしない前記方法によって達成可能な、前記ろ過可能体積の少なくとも2倍である。
【0046】
添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の範囲において、当業者にとっての明らかな改善および/または変更が実施されてもよいことが理解される。特に、前記真核細胞の前記選択的溶解を、物理的、化学的または生物学的プロセスを使用する、あらゆる既知の方法で行ってもよい。
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】