(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527223(P2015-527223A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(54)【発明の名称】反射パネル
(51)【国際特許分類】
B32B 15/04 20060101AFI20150821BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20150821BHJP
【FI】
B32B15/04 Z
C03C17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-519031(P2015-519031)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月6日
(86)【国際出願番号】EP2013063180
(87)【国際公開番号】WO2014001275
(87)【国際公開日】20140103
(31)【優先権主張番号】BE2012/0435
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】BE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】マヒュー, スティン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
4F100AA12C
4F100AA13C
4F100AA17C
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4G059AA01
4G059AC05
4G059GA02
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4G059GA14
(57)【要約】
本発明は、外装パネル又は装飾パネルとして使用することができる反射性不透明パネルに関わる。本外装パネル又は装飾パネルは、順に、少なくとも(i)透明基板と、(ii)第1のクロム層と、(iii)第1のクロム層と直接接触する誘電体層と、(iv)誘電体層と直接接触する第2のクロム層とを含む積層で被覆された基板からなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に、少なくとも
i.透明基板と、
ii.第1のクロムベースの層と、
iii.前記第1のクロムベースの層と直接接触する誘電体層と、
iv.前記誘電体層と直接接触する第2のクロムベースの層とを含む積層で被覆された基板。
【請求項2】
前記クロムベースの層はクロムを主成分として含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆基板。
【請求項3】
前記誘電体層は550nmの波長において0.1未満の吸収係数kと550nmの波長において1.3〜2.8の屈折率を有する物質を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆基板。
【請求項4】
前記誘電体層は、酸化亜鉛、酸化錫、酸化亜鉛と酸化錫の混合物、酸化チタン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、窒化アルミニウム、窒化シリコン、及びそれらの少なくとも2つの混合物から選択される物質を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項5】
前記誘電体層は窒化シリコンを主成分として含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項6】
前記第1のクロムベースの層の幾何学的厚さは15〜50nmであり、好適には25〜40nmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項7】
前記第2のクロムベースの層の幾何学的厚さは少なくとも50nm、好適には少なくとも80nmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項8】
前記誘電体層の光学的厚さは100〜200nmであり、好適には120〜180nmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項9】
前記誘電体層の幾何学的厚さは50〜100nmであり、好適には60〜90nmであることを特徴とする請求項5に記載の被覆基板。
【請求項10】
前記積層はさらに、前記積層の最終層を経由して、炭素を主成分として含む保護層を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項11】
炭素を主成分として含む前記保護層は1〜10nmの幾何学的厚さを有することを特徴とする請求項10に記載の被覆基板。
【請求項12】
少なくとも40%のガラス側光反射率を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の被覆基板。
【請求項13】
熱強化可能であり、熱処理前の前記被覆基板と比較し、熱処理後5未満、好適には3未満のガラス側ΔEcmc(1.35:1.2)を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の被覆基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に積層により被覆された基板からなる反射パネルに関する。より具体的には、本発明は、熱強化されることができる(すなわち、最終製品の性質の顕著な劣化無しに熱強化、曲げ、焼なましなどの熱処理に耐えることができる)反射性及び不透明面の積層を含むガラスユニット(glazing unit)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による反射パネルは様々な用途を有し得る。本反射パネルは、反射性装飾又は被覆パネルとして、棚、食器戸棚、ドア、壁塗装、天井、スタンド、ガラス張りテーブル、壁灯、隔壁、店正面、前面パネル、出窓の要素などの内装又は外装用途において、家具、ワードローブ又は浴室において、スイミングプール又は温泉場において、メーキャップケース又はコンパクト内に、又は例えば車両バックミラーとして自動車業界において使用され得る。このような用途は、安全性の理由のためと、曲げ強度と耐衝撃性を増すために熱強化ガラスユニットを必要とすることがある。
【0003】
通常、これらの用途のうちのかなり多くでは、使用されるのは銀ベースのミラー(しばしば湿式化学処理により作製される)である。これらの処理では、銀層がアンモニア性硝酸銀液の還元反応により平坦又は湾曲板ガラス上に蒸着される。次に、この銀層は保護銅層により覆われる又はパッシベーション液により処理される。次に、1つ又は複数のペイントの被膜が最終ミラーを作製するために蒸着される。これらの様々な要素は、ミラーが許容可能に老朽化し満足な機械的強さ及び耐食性を有することを保証する。このようなミラーは例えば仏国特許第2719839号明細書に記載されている。強化ミラーを必要とする用途に関しては、設定サイズの既に強化されたガラス板に対し湿式蒸着が行われなければならない。
【0004】
欧州特許第962429号明細書では、熱処理に耐えることができ、陰極スパッタにより蒸着される反射性金属面の積層を含むガラスユニットについて記載している。このガラスユニットは、誘電体ベースの(SiO
2、Al
2O
3、SiON、Si
3N
4又はAlNで作られた)層と、高反射性で実質的に金属の(Cr、Cr含有合金又はAl含有合金に基づく)層と、誘電体(Si
3N
4、AlN)で作られた外部被覆層とを含む。欧州特許第962429号明細書によるガラスユニットは50%より高いガラス側光反射率(RL
V)と2〜15%、好適には4〜10%の光透過率(TL)を有する。出窓の要素として使用される不透明なガラスユニットを製造するために、欧州特許第962429号明細書は、上記積層上に追加の有色層(例えば、エナメルで作られた)を貼り付けることを教示する。
【発明の概要】
【0005】
一態様によると、本発明の主題は、請求項1に請求され従属請求項で好ましい実施形態を定義するような被覆基板である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、順に、少なくとも(i)透明基板と、(ii)第1のクロムベースの層と、(iii)第1のクロムベースの層と直接接触する誘電体層と、(iv)誘電体層と直接接触する第2のクロムベースの層とを含む積層で被覆された基板に関する。
【0007】
このような被覆基板は、この特定のクロム/誘電体/クロム層のトリオのおかげで、
・ガラス側光反射率RL
V>40%、好適には>50%を有する反射性であり、
・光透過率TL<2%、好適には<1%、より好適には<0.5%を有する不透明性であり、
・熱処理と後熱処理の両方を受けることなく使用することができ、
・中間色面(neutral aspect)(光源D65下で−5<a
*<5、好適には−3<a
*<3、−5<b
*<5、好適には−3<b
*<3)の、
・相互混合可能であり−これらの被覆基板のガラス側色が熱処理中に変化しない(ガラス側ΔE
cmcは5未満、好適には3未満)ので熱的未処理バージョンと熱的処理済みバージョンが混合可能であり、
・通常の化学的耐久性試験(キャス(CASS)試験、中性塩水噴霧試験、凝集試験、環境室試験、クリーブランド(Cleveland)試験)に対して耐性があり、
・より環境にやさしい処理(湿式処理と比較して陰極スパッタ処理)により得られ、
・一般的に高価なペイント又はエナメルの層を必要としなく、ミラーに使用されるペイント中に従来から存在する鉛の使用を避ける、パネルを提供するという利点を有する。
【0008】
本発明による透明基板は好適には、ガラス基板、例えば、通常は2〜10mm厚を場合によっては有するフロートガラス、ソーダ石灰、澄んだ、有色の、又は極澄んだ(すなわち、Fe含有率が低くTL含有率が高い)基板である。しかし、本発明はまた、例えばPMMAで作られたプラスチック基板に適用され得る。このようなパネルが使用される場合、光は一回目に基板を通過し、本発明による積層により反射され次に二回目に基板を通過するので基板は透明である必要がある。したがって、本発明による反射パネル内に自身の像を見るユーザはパネルの「基板」側に面し積層は基板の他面(すなわち、ユーザの反対側)に配置される。
【0009】
表現「クロムベースの層」は、少なくとも50重量%、好適には少なくとも60重量%、少なくとも70重量%又は少なくとも80重量%、さらに好適には少なくとも90重量%または少なくとも95重量%ものクロムを含む層を意味するように理解される。有利には、クロムベースの層はクロムを主成分として含む。すなわち、クロムベースの層は、それにもかかわらず、基本組成の本質的な性質に影響を与えないという条件で他の微量成分を含み得るクロムからなる。
【0010】
有利には、本発明による誘電体層は、550nmの波長において0.1未満の吸収係数kと550nmの波長において1.3〜2.8の屈折率nとを有する物質を含む又はより好適には主成分として含む。好適には、誘電体層は、酸化亜鉛、酸化錫、酸化亜鉛と酸化錫混合物、酸化チタン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、窒化アルミニウム、窒化シリコン、及びそれらの少なくとも2つの混合物から選択される物質を含む又は主成分として含む。シリコン又はアルミニウムの酸化物又は窒化物は通常、熱処理に対する特別の耐性のために好まれる。より好適には、誘電体層は窒化シリコンを主成分として含む。表現「窒化シリコンを主成分として含む層」もまた、少なくとも1つの他の元素でドープされ、最大約10重量%のこの少なくとも1つの他の元素を含む層であって、実際には純粋シリコン窒化物層と全く異ならない誘電体特性を有するドープ層(例えば、最大10重量%のアルミニウムを含むシリコンターゲットを使用して陰極スパッタ処理により蒸着される層)を意味すると理解される。本発明による誘電体層はさらに、上記材料を含む又は主成分として含む複数の個々の層からなり得る。
【0011】
第1のクロムベースの層の幾何学的厚さは、好適には少なくとも15nm又は少なくとも20nm、より好適には少なくとも25nm、好適には最大50nm又は最大45nm、より好適には最大40nmである。第1のクロムベースの層の主機能は反射であり、このような厚さは、本発明によるパネルの他の特性を満足させることに加えてこの機能に特によく適する。
【0012】
誘電体層の光学的厚さは、好適には少なくとも100nm又は少なくとも110nm、より好適には少なくとも120nm、好適には最大で200nm又は最大で190nm、より好適には最大で180nmである。層の光学的厚さは、層の幾何学的厚さと層を形成する材料の屈折率との積であるということが想起されることになる。誘電体層の主機能は、第1のクロムベースの層により既に得られた反射を増加することと、したがって中間色(neutrality)を調整することであり、このような厚さは、本発明によるパネルの他の特性を満足させることに加えてこの機能に特によく適する。誘電体層が複数の副層からなれば、誘電体層の厚さはこれらの個々の層の厚さの合計に等しい。窒化シリコンを主成分として含む誘電体層の好ましいケースでは、後者の幾何学的厚さは好適には50〜100nm、より好適には60〜90nmである。
【0013】
第2のクロムベースの層の幾何学的厚さは、好適には少なくとも50nm又は少なくとも80nm、より好適には少なくとも100nmである。パネルの不透明性はこの層の主機能である。このような厚さは、本発明によるパネルの他の特性を満足させることに加えてこの不透明性と化学的及び機械的耐久性とを保証するのに特によく適する。150nmを越える厚さは、これらの点に関する真の有利性を提供しなく、対照的にコストを高め蒸着速度を下げるので有利ではない。
【0014】
本発明のいくつかの形式では、積層はさらに、積層の最終層(基板の反対側)を経由して、好適には1〜10nmの幾何学的厚さを有する炭素を主成分として含む保護層を含む。この層は、熱処理の前に被覆パネルに追加の機械的保護を与え、熱処理中に焼成することを目的とする。
【0015】
本発明の他の実施形態では、以下の層が本発明の前述の特性を劣化させないという条件で、他の層が、基板上、本発明による積層(例えば、反射防止層)を担持する面の対向面上に、又は基板と第1のクロムベースの層との間(例えば、障壁層)に、又は第2のクロム層(例えば、引っ掻き抵抗性を改善する層)の上ですら存在し得る。
【0016】
本発明による被覆基板は、任意選択的な熱処理の前後で、少なくとも40%又は少なくとも45%、好適には少なくとも50%、さらには、少なくとも52%又は少なくとも54%のガラス側光反射率(RL
V(D65)2°)を有する。それらの光透過率(TL−D65)はまた、任意選択的熱処理の前後で、2%又は1%未満、好適には0.5%未満である。
【0017】
本発明による被覆基板はさらに、ガラス側からの反射時に調べられると中間色相を有する、すなわち、それらのa
*およびb
*値(CIELAB L
*a
*b
*値D65−10°)は、−5<a
*<5と−5<b
*<5、好適には−3<a
*<3と−3<b
*<3になるようにされる。さらに、この色相は熱処理後ほぼ同じである。具体的には、熱処理前の被覆基板と熱処理後の同じ被覆基板との間のガラス側ΔE
cmc(英国染料染色学会(Society of Dyes and Colourists of Great Britain)の色測定委員会(Colour Measurement Committee)による)は、5未満、好適には3未満である(すなわち、肉眼に目に見えない)。本明細書で報告されるすべてのΔE
cmcは光源D65、観察者:10°,l=1.35、c=1.2を使用することにより測定され計算された。
【0018】
本発明による被覆基板は通常の化学的耐久性試験に耐性があり、したがって、本発明による被覆基板は任意選択的熱処理前と後の両方で以下の試験に耐える:
・好適には少なくとも5日間の規格ISO9227−2006によるキャス試験、
・好適には少なくとも20日間の規格EN1096−2:2001による中性塩噴霧(NSS:neutral salt spray)試験、
・好適には少なくとも20日間の規格EN1036−2008による凝集試験、
・好適には少なくとも21日間の規格EN1036−2008による環境室試験、
・好適には少なくとも15日間の規格ISO6270−1:1998によるクリーブランド試験。
【0019】
好適には、本発明による被覆基板は、以下に述べられる水槽試験により測定されるように、任意選択的熱処理前と後の両方で、パネルを支持体に固定するために慣習的に使用される接着剤(例えば、アルコキシ接着剤と酢酸接着剤)と適合し、したがって接着剤に対する化学的耐性がある。好適には、本発明による被覆基板はまた、以下に述べられるけん引試験に耐える。
【0020】
有利には、本発明による被覆基板はまた、良好な機械的耐久性を有し、任意選択的熱処理前と後の両方で、
・以下に述べられる好適には少なくとも1000サイクルの自動湿式摩擦試験(AWRT:automatic wet rub test)、
・好適には少なくとも1000サイクルの規格ASTM D2486−00(試験法「A」)による乾式ブラシ試験(DBT:dry brush test)、
・好適には少なくとも500サイクルの規格EN1096−2:2001によるフェルト試験に耐える。
【0021】
本発明による層は有利には、物理的気相成長(PVD:physical vapor deposition)により(例えばマグネトロンリアクタンス真空陰極スパッタにより)基板上に蒸着される。
【0022】
自動湿式摩擦試験(AWRT)
湿った状態に保たれた湿った綿布により覆われたピストンが評価対象の層に接触されその表面上で前後に移動される。ピストンは直径17mmのフィンガに33Nの力を印加するように重量を担う。被覆面上の綿の摩擦は一定数のサイクル後に層を損傷(除去)する。本試験は、層が変色し(層が部分的に除去され)引っ掻きが現われる限界を規定するために使用される。本試験は、サンプル上の様々な位置において10、50、100、250、500、1000サイクル間行われる。サンプルは、サンプルの変色又はスクラッチが反射時に見えるかどうかを判断するために人工空下で観測される。AWRT結果は、劣化無し又は僅かの劣化(サンプルから80cmの距離において一様な人工空下で肉眼で見えない)を生じるサイクル数を示す。
【0023】
水槽試験
約5cmの直径を有する粘着性パッドが10×10cmのサンプルの裏面(積層側)に蒸着される。接着剤厚さは2mmに設定される。試験されるサンプルは接着剤の塗布直後に水槽内に浸漬される。水槽内の水の温度は35℃に設定される。一群の接着剤毎に、別々の水槽が使用される。試験は20日続く。この試験の結果は4つのカテゴリにより評価される:
−許容不可:サンプルが日光下で観測されると霞変異が顕著である、
−ボーダーライン:サンプルが散乱光下の暗室内で観測されると霞変異が顕著である、
−許容可:サンプルが直射日光下の暗室内で観測されると霞変異が顕著である、
−OK:霞変異は顕著ではない。
【0024】
けん引試験
2つのサンプルが約2cmの直径を有する粘着性パッドにより(積層被覆面を介し)互いに接着接合され、乾燥される。接着剤の厚さは2mmに設定される。次に、この集合体はサンプルを互いに分離するように働く引張力に付される。凝集破断を介しサンプルを分離するのに必要な印可力の値、すなわち接着剤内破断が(接着剤破断(すなわち接着剤と層との分離)とは対照的に)顕著である。後者は好適には3kg/cm
2以上である。
【0025】
次に一例として本発明の特定の実施形態について説明する。特性は光源D65下で測定された。
【実施例】
【0026】
実施例1
産業用真空被覆ライン上で、厚さ約4mmのソーダ石灰フロートガラス基板が、マグネトロン陰極スパッタにより、積層で被覆され、以下の構造を有する被覆基板を形成した。
ガラス/Cr[33nm]/Si
3N
4[74nm]/Cr[110nm]
(角括弧で記載された厚さは幾何学的厚さである)。
【0027】
被覆基板は、L
*=79.1、a
*=−2、b
*=−1.8により特徴付けられるガラス側で55%のRL
Vと反射時の色とを示した。さらに、色は角度的に安定していた、すなわちパネルの観測角度とともに変化しなかった(表Iを参照)。
【0028】
【表1】
【0029】
反射時のガラス側の色は670℃の様々な熱処理後様々な時間の間に変化しなかった。表IIは、熱処理前と後のパネルのガラス側のRL
V、L
*、a
*、b
*、ΔE
cmcの変動を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
さらに、熱処理後の色もまた角度的に安定していた。表IIIは、670℃における9分の長い熱処理後のサンプルの観測角度に応じた変動を示す(サンプルはもともと室温に置かれ、次に670℃の炉内に9分間置かれる−熱強化を概して模擬する処理)。
【0032】
【表3】
【0033】
この被覆基板のサンプル(そのいくつかは熱処理に付されなく、その他のものは熱処理に付された)すべては上述の様々な機械的試験及び化学的耐久性試験に合格した:
・キャス試験、5日、
・中性塩水噴霧試験、20日、
・凝集試験、20日、
・環境室試験、21日、
・クリーブランド試験、15日、
・適合性OK、アルコキシ接着剤と酢酸接着剤によりけん引抵抗(≧3kg/cm
2)、
・AWRT試験、1000サイクル:劣化無し又は僅かの劣化(サンプルから80cmの距離で一様な人工空下の肉眼に対して)、
・乾式ブラシ試験(DBT)、1000サイクル:劣化無し又は僅かの劣化(サンプルから80cmの距離で一様な人工空下の肉眼に対して)、
・フェルト試験、500サイクル。
【0034】
実施例2〜5
誘電体層が複数の異なる副層で形成される他の積層が4mmのガラス板上で模擬された。これらの積層もまた良好な反射率と良好な中性状態を示した(表IV)。
(ZSO
5=酸化亜鉛と酸化錫の混合物、50:50重量%の比)
【0035】
【表4】
【0036】
実施例6
実施例1によるガラスユニットは、第2のクロム層の上に5nmの厚さの追加のカーボン層で被覆された。このガラスユニットは、AWRT及びDBT試験に対しカーボン層無しのものより高い耐性を示し、1000サイクル後に劣化は観測されなかった(サンプルから80cmの距離で一様な人工空下の肉眼に対して)。
【国際調査報告】