(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527440(P2015-527440A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(54)【発明の名称】高構造カーボンブラック
(51)【国際特許分類】
C09C 1/48 20060101AFI20150821BHJP
C09D 11/324 20140101ALI20150821BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20150821BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20150821BHJP
C09C 1/50 20060101ALI20150821BHJP
C09C 3/00 20060101ALI20150821BHJP
【FI】
C09C1/48
C09D11/324
C09C3/06
C09C3/08
C09C1/50
C09C3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-521847(P2015-521847)
(86)(22)【出願日】2013年7月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2013050295
(87)【国際公開番号】WO2014012002
(87)【国際公開日】20140116
(31)【優先権主張番号】61/781,618
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/671,359
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ピー.ディカン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エフ.ルアネ
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー イー.クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ブルース イー.マッケイ
(72)【発明者】
【氏名】ダニー ピエール
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037BB15
4J037BB18
4J037BB21
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4J037FF05
4J037FF15
4J039BA04
4J039BC07
4J039BC12
4J039BC27
4J039BC54
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA03
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
高構造化カーボンブラック、合成および処理の方法、ならびにそれから作製された分散体およびインクジェットインク製剤が本明細書にて開示される。カーボンブラックは、以下の特性を有し得る:OAN≧170mL/100g、および160〜220m
2/gの範囲のSTSA。カーボンブラックはまた、以下の特性も有し得る:OAN≧170mL/100g、および0.7〜1の範囲のSTSA/BET表面積比。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特性:
OAN≧170mL/100g、および
160〜220m2/gの範囲のSTSA、
を有するカーボンブラック。
【請求項2】
以下の特性:
OAN≧170mL/100g、および
0.7〜1の範囲のSTSA/BET表面積比、
を有するカーボンブラック。
【請求項3】
前記OANが、170〜220m2/gの範囲である、請求項1または2に記載のカーボンブラック。
【請求項4】
前記OANが、170〜210m2/gの範囲である、請求項1または2に記載のカーボンブラック。
【請求項5】
前記カーボンブラックが、190〜275m2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項6】
前記BET表面積が、200〜270m2/gの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項7】
前記BET表面積が、200〜260m2/gの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項8】
前記カーボンブラックが、少なくとも120m2/gのCOANを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項9】
前記カーボンブラックが、少なくとも130m2/gのCOANを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項10】
前記カーボンブラックが、1.30〜1.50の範囲のOAN/COAN比を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項11】
前記カーボンブラックが、0.7〜1の範囲のSTSA/BET表面積比を有する、請求項1および3〜10のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項12】
前記カーボンブラックが、0.7〜0.9の範囲のSTSA/BET表面積比を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項13】
前記カーボンブラックが、ファーネスブラックである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項14】
前記カーボンブラックが、少なくとも1つの結合された有機基で修飾されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載のカーボンブラック。
【請求項15】
前記少なくとも1つの結合された有機基が、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、前記カーボンブラックと結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシル、アミン、およびエステル、アミド、ならびにこれらの塩から選択される、
請求項14に記載のカーボンブラック。
【請求項16】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−CO−、−OSO2−、−SO3−、−SO2−、−SO2C2H4−O−、−SO2C2H4S−、−SO2C2H4NR″−、−O−、−S−、−NR″−、−NR″CO−、−CONR″−、−NR″CO2−、−O2CNR″−、−NR″CONR″−、−N(COR″)CO−、−CON(COR″)−、−NR″COCH(CH2CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−NR″COCH2CH(CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−CH(CH2CO2R″)CONR″−およびそれからの環状イミド、−CH(CO2R″)CH2CONR″およびそれからの環状イミド、(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO2NR″−および−NR″SO2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基から選択されるスペーサーであり、ならびにR″は、同一であっても、もしくは異なっていてもよく、水素、置換および無置換C5−C20アリール基、および置換および無置換C1−C6アルキル基から選択される、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項17】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−O−、−NR″−、−NR″CO−もしくは−CONR″−、−SO2NR″−、−SO2CH2CH2NR″−、−SO2CH2CH2O−、および−SO2CH2CH2S−から選択されるスペーサーであり、ここで、R″は、HおよびC1−C6アルキル基から選択される、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項18】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、カルボン酸もしくはエステル、酸塩化物、塩化スルホニル、アシルアジド、イソシアネート、ケトン、アルデヒド、酸無水物、アミド、イミド、イミン、α,β−不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはスルホン、ハロゲン化アルキル、エポキシド、アルキルスルホネートもしくは(2−サルフェートエチル)−スルホン基などのサルフェート、アミン、ヒドラジン、アルコール、チオール、ヒドラジド、オキシム、トリアゼン、カルバニオン、芳香族化合物、ならびにこれらの塩および誘導体、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される反応性基を有する化合物から誘導されるスペーサーである、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項19】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、3−アミノベンジルアミン(3−ABA)、2−アミノベンジルアミン(2−ABA)、2−アミノフェニルエチルアミン、4−アミノフェニル−(2−スルファトエチル)−スルホン(APSES)、p−アミノ安息香酸(PABA)、4−アミノフタル酸(4−APA)、および5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸から選択される化合物から誘導されるスペーサーである、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項20】
前記少なくとも1つの結合された有機基が、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、前記カーボンブラックと結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキレンオキシド(例えば、エチレンまたはプロピレンオキシド)、カルボン酸エステル、およびグリコールから選択される、
請求項14に記載のカーボンブラック。
【請求項21】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−CO−、−OSO2−、−SO3−、−SO2−、−SO2C2H4−O−、−SO2C2H4S−、−SO2C2H4NR″−、−O−、−S−、−NR″−、−NR″CO−、−CONR″−、−NR″CO2−、−O2CNR″−、−NR″CONR″−、−N(COR″)CO−、−CON(COR″)−、−NR″COCH(CH2CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−NR″COCH2CH(CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−CH(CH2CO2R″)CONR″−およびそれからの環状イミド、−CH(CO2R″)CH2CONR″およびそれからの環状イミド、(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO2NR″−および−NR″SO2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基から選択されるスペーサーであり、ならびにR″は、同一であっても、もしくは異なっていてもよく、水素、置換および無置換C5−C20アリール基、および置換および無置換C1−C6アルキル基から選択される、請求項20に記載のカーボンブラック。
【請求項22】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−O−、−NR″−、−NR″CO−もしくは−CONR″−、−SO2NR″−、−SO2CH2CH2NR″−、−SO2CH2CH2O−、および−SO2CH2CH2S−から選択されるスペーサーであり、ここで、R″は、HおよびC1−C6アルキル基から選択される、請求項20記載のカーボンブラック。
【請求項23】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、カルボン酸もしくはエステル、酸塩化物、塩化スルホニル、アシルアジド、イソシアネート、ケトン、アルデヒド、酸無水物、アミド、イミド、イミン、α,β−不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはスルホン、ハロゲン化アルキル、エポキシド、(2−スルファトエチル)−スルホン基などのアルキルスルホネートもしくはサルフェート、アミン、ヒドラジン、アルコール、チオール、ヒドラジド、オキシム、トリアゼン、カルバニオン、芳香族化合物、ならびにこれらの塩および誘導体、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される反応性基を有する化合物から誘導されるスペーサーである、請求項20に記載のカーボンブラック。
【請求項24】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、3−アミノベンジルアミン(3−ABA)、2−アミノベンジルアミン(2−ABA)、2−アミノフェニルエチルアミン、4−アミノフェニル−(2−スルファトエチル)−スルホン(APSES)、p−アミノ安息香酸(PABA)、4−アミノフタル酸(4−APA)、および5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸から選択される化合物から誘導されるスペーサーである、請求項20に記載のカーボンブラック。
【請求項25】
前記少なくとも1つの結合された有機基が、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、前記カーボンブラックと結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、ポリマーから選択される、
請求項14に記載のカーボンブラック。
【請求項26】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−CO−、−OSO2−、−SO3−、−SO2−、−SO2C2H4−O−、−SO2C2H4S−、−SO2C2H4NR″−、−O−、−S−、−NR″−、−NR″CO−、−CONR″−、−NR″CO2−、−O2CNR″−、−NR″CONR″−、−N(COR″)CO−、−CON(COR″)−、−NR″COCH(CH2CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−NR″COCH2CH(CO2R″)−およびそれからの環状イミド、−CH(CH2CO2R″)CONR″−およびそれからの環状イミド、−CH(CO2R″)CH2CONR″およびそれからの環状イミド(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO2NR″−および−NR″SO2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基から選択されるスペーサーであり、ならびにR″は、同一であっても、もしくは異なっていてもよく、水素、置換および無置換C5−C20アリール基、および置換および無置換C1−C6アルキル基から選択される、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項27】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、−CO2−、−O2C−、−O−、−NR″−、−NR″CO−もしくは−CONR″−、−SO2NR″−、−SO2CH2CH2NR″−、−SO2CH2CH2O−、および−SO2CH2CH2S−から選択されるスペーサーであり、ここで、R″は、HおよびC1−C6アルキル基から選択される、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項28】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、カルボン酸もしくはエステル、酸塩化物、塩化スルホニル、アシルアジド、イソシアネート、ケトン、アルデヒド、酸無水物、アミド、イミド、イミン、α,β−不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはスルホン、ハロゲン化アルキル、エポキシド、(2−スルファトエチル)−スルホン基などのアルキルスルホネートもしくはサルフェート、アミン、ヒドラジン、アルコール、チオール、ヒドラジド、オキシム、トリアゼン、カルバニオン、芳香族化合物、ならびにこれらの塩および誘導体、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される反応性基を有する化合物から誘導されるスペーサーである、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項29】
Rが、式R′−Spを含み、式中、R′は、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびにSpは、4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、3−アミノベンジルアミン(3−ABA)、2−アミノベンジルアミン(2−ABA)、2−アミノフェニルエチルアミン、4−アミノフェニル−(2−スルファトエチル)−スルホン(APSES)、p−アミノ安息香酸(PABA)、4−アミノフタル酸(4−APA)、および5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸から選択される化合物から誘導されるスペーサーである、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項30】
前記ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレイン酸およびフマル酸ジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、酢酸ビニル、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、ビニルエーテル、ならびにスチレンから選択されるモノマーから誘導される、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項31】
前記ポリマーが、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(EMA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、およびこれらの誘導体から選択されるモノマーから誘導される、請求項25に記載のカーボンブラック。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項に記載のカーボンブラックを酸化することによって作製される酸化カーボンブラック。
【請求項33】
前記酸化カーボンブラックが、フェノール、ラクトン、カルボニル、カルボキシル、酸無水物、エーテル、およびキノンから選択される少なくとも1つの基を含む表面を有する、請求項32に記載の酸化カーボンブラック。
【請求項34】
以下の特性:
OAN≧170mL/100g、
BET表面積≧150m2/g、および
少なくとも130m2/gのCOAN、
を有するカーボンブラック。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のカーボンブラックを含む分散体。
【請求項36】
前記カーボンブラックが、0.1〜0.18μmの範囲の平均体積を有する、請求項35に記載の分散体。
【請求項37】
前記カーボンブラックが、0.05〜0.1μmの範囲のD10を有する、請求項35または36に記載の分散体。
【請求項38】
前記カーボンブラックが、0.06〜0.1μmの範囲のD10を有する、請求項35または36に記載の分散体。
【請求項39】
前記カーボンブラックが、0.07〜0.1μmの範囲のD10を有する、請求項35または36に記載の分散体。
【請求項40】
前記カーボンブラックが、0.1〜0.16μmの範囲のD50を有する、請求項35〜39のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項41】
前記カーボンブラックが、0.18〜0.25μmの範囲のD90を有する、請求項35〜40のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項42】
前記カーボンブラックが、0.15〜0.24μmの範囲のD90を有する、請求項35〜40のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項43】
前記カーボンブラックが、0.18〜0.24μmの範囲のD90を有する、請求項35〜40のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項44】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のカーボンブラックを含むインクジェットインク組成物。
【請求項45】
請求項35〜43のいずれか1項に記載の分散体を含むインクジェットインク組成物。
【請求項46】
顔料を含む水性分散体に、前記水性分散体のpHを少なくとも8.5に維持しながらオゾンを添加することを含む、顔料を酸化する方法。
【請求項47】
前記維持が、前記pHレベルが8.5未満のレベルまで低下した場合に、前記水性分散体に塩基を添加することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記水性分散体のpHが、少なくとも9.0に維持され、ここで、前記維持が、前記pHレベルが9.0未満のレベルまで低下した場合に、前記水性分散体に塩基を添加することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記水性懸濁体が、ベンチュリ管を通る循環流として送られ、および前記添加が、前記ベンチュリ管の入り口部へオゾンを導入することを含み、ここで、前記入り口部は、前記ベンチュリ管の絞り領域に、または絞り領域の上流に配置される、請求項46〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記顔料が、カーボンブラックである、請求項46〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
顔料を酸化するためのオゾン反応器アセンブリーであって、循環経路を有し、
顔料を含む分散体を含有し、撹拌するためのタンクであって、前記水性分散体は、pHプローブと前記分散体に塩基を供給するための第一のポンプとに流体連結されている、タンク、
第一の配管を通ってベンチュリ管へ水性分散体を引き出し、供給するための、前記タンクと流体連結された第二のポンプであって、前記水性分散体は、前記ベンチュリ管の絞り領域を通って送られる、第二のポンプ、
前記絞り領域に、または前記絞り領域の上流にある入り口部を介して前記ベンチュリ管と気体連結されているオゾン源であって、オゾンは、前記絞り領域を通って送られる間に前記顔料と接触する、オゾン源、ならびに、
オゾンおよび前記水性分散体を含む混合物を前記タンクへ運ぶための第二の配管、
を含む、オゾン反応器アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高構造カーボンブラック、その作製の方法、およびその表面処理が本明細書にて開示される。そのようなブラックを含む分散体およびインクジェットインク組成物も開示される。
【背景技術】
【0002】
数多くの用途における性能を高めるための新しいカーボンブラック材料が継続して求められている。例えば、インクジェットインク印刷において、特に、新しい種類の紙およびプリンターが開発されていることから、製造業者は、印刷品の光学密度の改善を模索している。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、および
160〜220m
2/gの範囲のSTSA
【0004】
別の実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、および
0.7〜1の範囲のSTSA/BET比
【0005】
別の実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、
160〜220m
2/gの範囲のSTSA、および
190〜275m
2/gの範囲のBET表面積
【0006】
別の実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、
BET表面積≧150m
2/g、および
少なくとも130m
2/gのCOAN
【0007】
別の実施形態は、顔料を含む水性分散体に、その水性分散体を少なくとも8.5のpHに維持しながらオゾンを添加することを含む、顔料を酸化する方法を提供する。
【0008】
別の実施形態は、顔料を酸化するための、循環経路を有するオゾン反応器アセンブリーを提供し、それは、
顔料を含む分散体を含有し、それを撹拌するためのタンクであって、水性分散体は、pHプローブと分散体に塩基を供給するための第一のポンプとに流体連結されている、タンク、
第一の配管を通ってベンチュリ管へ水性分散体を引き出し、供給するための、タンクと流体連結された第二のポンプであって、水性分散体は、ベンチュリ管の絞り領域を通って送られる、第二のポンプ、
絞り領域の、またはその上流の入り口部を介してベンチュリ管と気体連結されているオゾン源であって、オゾンは、絞り領域を通って送られる間に顔料と接触する、オゾン源、ならびに、
オゾンおよび水性分散体を含む混合物をタンクへ運ぶための第二の配管、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、二段カーボンブラック反応器の前端部の概略断面図である。
【0010】
【
図2】
図2は、オゾン反応器アセンブリーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高構造カーボンブラックが本明細書にて開示される。
【0012】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、チャネルブラック、ファーネスブラック、およびランプブラックである。1つの実施形態では、本明細書で開示されるカーボンブラックは、ファーネスブラックである。1つの実施形態では、ファーネスカーボンブラックブラックを作製するための反応器は、多段反応器であり、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,829,057号または米国特許出願公開第2007/0104636号に記載のものなどである。本明細書で用いられる場合、「多段反応器」は、2つ以上の供給原料注入位置を備えており、2つ目以降の(1もしくは複数の)注入位置は、第一の注入位置の下流に配置されている。
【0013】
図1は、カーボンブラック反応器2の前端部の概略断面図である。反応器2は、燃焼チャンバー10を含み、その中では、燃焼ガス(液体または気体燃料)が酸化剤(例えば酸素、空気を含む)と混合され、本技術分野にて公知のいずれかの方法で点火される。点火されたガスは、直径を収束させるための円錐台形状移行ゾーン11を通って、いくつかの管状セクションを含む概略トンネル状ゾーン12へと流れる。供給原料注入ポートは、ゾーン12の前部および後部管状セクション14Aおよび14B内に位置しており、ここで、後部セクション14Bは、セクション14Aの下流に位置している。通常、14Aおよび14Bの各セクションに対して、2つ以上の注入入り口ポートが円周方向に配列されている。前部および後部管状セクション14Aおよび14Bの間には、1つ以上のスペーサー移行管が存在し、
図1は、2つのスペーサー管セクション16Aおよび16Bを示しているが、所望されるカーボンブラック特性に応じて、1つのスペーサー管、または3つ以上のスペーサー管が用いられてよい。
【0014】
図1の構成では、燃料は、燃焼チャンバー10で点火され、得られた流れは、トンネル状ゾーン12へと向けられ、そこで、燃料は、前部管セクション14Aにて、供給原料注入の第一の注入と接触する。続いて、スペーサー管16Aおよび16Bを通る流れにより、シードカーボンブラック粒子の形成が可能となり、次にこれが、管セクション14Bで導入される供給原料の第二のチャージと接触する。このガス/カーボンブラック粒子混合物は、次に、耐熱部18で急冷される。この急冷は、通常、急冷位置20での水の噴霧によって行われ、そのゾーン12からの距離は変更可能である。スペーサー管の数および寸法などのこの構成によって、より小さいシードまたはカーボンブラック前駆体粒子を介して、高構造、高分岐状カーボンブラック粒子を作製することができる。
【0015】
1つの実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、および
160〜220m
2/gの範囲のSTSA
【0016】
別の実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する。
OAN≧170mL/100g、および
0.7〜1の範囲のSTSA/BET比
【0017】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、例えばインクジェットインク組成物中の顔料として有用である。印刷用途において、紙などの基材上に付着された場合に高い光学密度(O.D.)を持つ印刷品を作製する顔料およびインク製剤を開発することが継続的に求められている。多くの場合、高いO.D.は、大サイズの粒子に伴うものであり、それは、これらの紙の細孔中に浸透する傾向がより低いからである。しかし、大サイズ粒子は、一般的に、沈澱性能が悪化する方向であり、これは、カートリッジ中を例とするインクジェットインク製剤の長期間の保存にとって不利な特性である。より大きいオイル吸収量(OAN)およびSTSA値(例:BET表面積値の範囲内)の組み合わせによって、O.D.と沈澱性との間の妥協点を得ることができることが見出された。
【0018】
1つの実施形態では、OANは、170〜220m
2/gの範囲であり、例えば、170〜210m
2/g、180〜220m
2/g、180〜210m
2/g、190〜220m
2/g、または190〜210m
2/gの範囲である。OANは、ASTM−D2414に従って特定することができる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、開示されるOAN値は、高い光学密度値の達成において重要な因子であり得ると考えられる。
【0019】
1つの実施形態では、STSAは、160〜220m
2/gの範囲であり、例えば、160〜210m
2/gであり、特定の用途では、STSAは、170〜220m
2/g、170〜210m
2/g、180〜220m
2/g、または180〜220m
2/gの範囲である。
【0020】
別の実施形態は、以下の特性を有するカーボンブラックを提供する:
OAN≧170mL/100g、および
160〜220m
2/gの範囲のSTSA、および
190〜275m
2/gの範囲のBET表面積
【0021】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、高いSTSA値、および特定の範囲のBET表面積により、より低い沈澱率(%、実施例6の方法によって特定される)によって示されるように、良好な沈澱性能が達成されると考えられる。1つの実施形態では、BET表面積は、200〜270m
2/gの範囲であり、200〜260m
2/gの範囲の表面積などである。BET表面積は、ASTM−D6556に従って特定することができる。
【0022】
別の実施形態は、良好な印刷および沈澱性能が、0.7〜1の範囲のSTSA/BET比によって特定される低い内部体積を持つカーボンブラックで達成可能であるという発見を含む。STSA/BET比が1であることは、カーボンブラックが実質的に内部多孔度を持たない限界を表す。別の実施形態では、STSA/BET比のこの範囲は、導電性カーボンブラックを組み込む用途に有用であり得る。
【0023】
1つの実施形態では、STSA/BET比は、0.7〜0.9の範囲であり、またはSTSA/BET比は、0.7〜0.8の範囲である。別の実施形態では、STSA/BET比は、0.8〜1、または0.9〜1の範囲である。1つの実施形態では、0.7〜1の範囲のSTSA/BET比は、カーボンブラック形成の過程でのエッチングを最小限に抑えることによって達成される。1つの実施形態では、カーボンブラックは、本明細書で開示されるSTSAおよび/またはBET値を有し得る。
【0024】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、少なくとも120m
2/gの圧縮OAN(COAN)、例えば少なくとも125m
2/g、少なくとも130m
2/g、少なくとも135m
2/g、または120〜145m
2/gの範囲のCOANを有する。
【0025】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、1.30〜1.50の範囲のOAN/COAN比を有し、例えば1.30〜1.45である。
【0026】
本明細書で開示されるカーボンブラックは、商業的インクジェット印刷(大型または幅広フォーマット印刷、工業的印刷)などの用途に有用であり得る。オフィスプリンターとは対照的に、商業的プリンターは、数フィートまたは数メートルの範囲の全体寸法を有する。これらのプリンターの一部は、分散体を安定化するためのスターラーアセンブリーを有するインクカートリッジを用いている場合がある。そのようなカートリッジでは、固形分の沈澱率は、オフィスプリンターの場合ほど重要な因子ではない。従って、別の実施形態は、高いOANおよびCOAN値を有する高構造カーボンブラックを提供する。1つの実施形態では、カーボンブラックは、以下の特性を有する。
OAN≧170mL/100g、
BET表面積≧150m
2/g、および
少なくとも130m
2/gのCOAN
【0027】
別の実施形態では、カーボンブラックは、以下の特性を有する。
OAN≧170mL/100g、
BET表面積≧150m
2/g、および
130〜145m
2/gの範囲のCOAN
【0028】
1つの実施形態では、OANは、180〜220m
2/g、180〜210m
2/g、190〜220m
2/g、または190〜210m
2/gの範囲である。1つの実施形態では、BET表面積は、150m
2/g〜260m
2/g、150m
2/g〜220m
2/g、160m
2/g〜260m
2/g、160m
2/g〜220m
2/g、170m
2/g〜260m
2/g、170m
2/g〜220m
2/g、180m
2/g〜260m
2/g、または180m
2/g〜220m
2/gの範囲である。1つの実施形態では、OAN/COAN比は、1.30〜1.50の範囲であり、例えば、1.30〜1.45である。1つの実施形態では、STSAは、130m
2/g〜220m
2/gの範囲であり、例えば、130m
2/g〜200m
2/gである。
【0029】
別の実施形態は、本明細書で開示されるカーボンブラックを含む分散体に関する。この分散体は、水性または非水性であってよい。1つの実施形態では、カーボンブラックは、それを自己分散性とするために処理される。例えば、カーボンブラックは、酸化カーボンブラックであってよく、例えば、本技術分野で公知の方法(例:元素分析)によって特定することができる酸素含有量が、3%以上である。
【0030】
一般的に、酸化ブラックは、フェノール、ラクトン、カルボニル、カルボキシル(例:カルボン酸)、酸無水物、エーテル、およびキノンのうちの1つ以上など、イオン性またはイオン化可能酸素含有基を有する表面を特徴とする。カーボンブラックの酸化の程度によって、そのようなイオン性またはイオン化可能基の表面濃度を決定することができる。本明細書で開示されるカーボンブラックは、本技術分野で公知の種々の酸化剤によって酸化することができる。カーボンブラックのための代表的な酸化剤としては、酸素ガス、オゾン、NO
2(NO
2と空気との混合物を含む)、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムなどの過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、もしくは過ハロゲン酸塩(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、もしくは過塩素酸ナトリウムなど)、硝酸などの酸化酸、ならびに過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤、ならびにこれらの混合物、例えば、酸素およびオゾンなどの気体酸化剤の混合物が挙げられる。1つの実施形態では、本明細書で開示されるカーボンブラックは、オゾン酸化を介して酸化される。
【0031】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、少なくとも1つの有機基で修飾される。1つの実施形態では、有機基は、カーボンブラックに結合されており、ここで、「結合されている」有機基は、数時間(例:少なくとも4、6、8、12、または24時間)のソックスレー抽出ではその結合されている基が顔料(例:カーボンブラック)から除去されないという点で、吸着された基と区別することができる。別の実施形態では、有機処理出発物質は溶解することができるが処理された顔料は分散することができない溶媒または溶媒混合物で繰り返し洗浄(例:2、3、4、5回、またはそれ以上の回数の洗浄)した後にも有機基を除去することができない場合、その有機基は、顔料(例:カーボンブラック)に結合されている。なお別の実施形態では、「結合された」とは、共有結合などの結合を意味し、例えば、顔料(例:カーボンブラック)は、有機基と結合、または共有結合している。
【0032】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、原料、酸化ブラック、または修飾ブラック(例:結合された有機基を有する)であれ、粉末、ペレット、顆粒、またはケーキなどの乾燥形態で提供することができる。1つの実施形態では、「乾燥」とは、実質的に水分を含まず、所望される場合は揮発性物質も含まない物質を意味する。1つの実施形態では、乾燥形態は、約50%以上の揮発性溶媒など、揮発性物質を含む。
【0033】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、例えば固体もしくは半固体形態(水性および/または非水性の物質/溶媒を含有)のペーストもしくはパティである堅ろう性を持つ形態として、カーボンブラックが水性もしくは非水性分散体として提供されるスラリーとして、または自由流動性もしくは粘着性粉末であってよいバルク粉末として提供される。
【0034】
本明細書で開示される酸化もしくは修飾されたカーボンブラックは、分散体として存在する場合、有用な特性を提供することができる。1つの実施形態では、分散体中のカーボンブラックは、0.07〜0.18μmの範囲の平均体積(mV)を有し、例えば、0.1〜0.18μmである。別の実施形態では、カーボンブラックは、0.05〜0.1μmを例とする0.03〜0.1μmの範囲のD10を有し、0.06〜0.1μmまたは0.07〜0.1μmの範囲のD10などである。1つの実施形態では、カーボンブラックは、0.1〜0.16μmを例とする0.07〜0.16μmの範囲のD50を有する。別の実施形態では、カーボンブラックは、0.18〜0.25μmを例とする0.15〜0.24μmの範囲のD90を有し、0.15〜0.24μmの範囲のD90、または0.18〜0.24μmの範囲のD90などである。
【0035】
分散体は、本技術分野で公知のいかなる方法を用いることで作製されてもよい。例えば、乾燥形態の修飾顔料を、撹拌しながら液体媒体と混合することによって、安定な分散体が作製されてよい。媒体ミルもしくはボールミル、またはその他の高せん断混合装置など、本技術分野で公知のいかなる装置が用いられてもよく、種々の従来のミリング媒体も用いられてよい。分散体を形成するためのその他の方法は、当業者に公知である。
【0036】
1つの実施形態では、分散体は、本明細書で開示されるカーボンブラック(例:酸化カーボンブラック、または少なくとも1つの結合された有機基を有するカーボンブラック)などの顔料、および水性または非水性媒体を例とする液体媒体を含む。1つの実施形態では、媒体は、水を含有し、例えば、媒体は、水溶液を含む。1つの実施形態では、水溶液は、50重量%超の水を含有し、例えば、水、または水とアルコールなどの水混和性溶媒との混合物であってよい。1つの実施形態では、分散体中に存在する顔料の量は、様々であってよいが、典型的には、分散体の総重量に対して、0.1%〜30%の範囲の量であり、例えば、1%〜25%、1%〜20%、3%〜20%、3%〜15%である。
【0037】
別の実施形態は、本明細書で開示される分散体を含むインクジェットインク組成物を提供する。このインクジェットインク組成物で用いられる修飾顔料の量は、様々であってよいが、典型的には、インクジェットインクの性能に有害な影響を与えることなく所望される画質(例えば、光学密度)を提供するのに有効な量である。1つの実施形態では、本明細書で開示されるカーボンブラックなどの顔料(例:酸化カーボンブラック、または少なくとも1つの結合された有機基を有するカーボンブラック)は、インクジェットインク組成物の総重量に対して0.1%〜20%の範囲の量でインクジェットインク組成物中に存在し、例えば、1%〜20%、1%〜10%、または3%〜8%である。
【0038】
インクジェットインク組成物は、最小限の追加の成分(添加剤および/または共溶媒)および処理工程で形成することができる。しかし、組成物の安定性は維持した状態で、いくつかの所望される特性を付与するために、適切な添加剤がこれらのインクジェットインク組成物中に組み込まれてもよい。例えば、組成物のコロイド安定性をさらに高めるために、界面活性剤が添加されてよい。その他の添加剤は、本技術分野にて公知であり、湿潤剤、殺生物剤および殺菌剤、ポリマーバインダーなどのバインダー、pH制御剤、乾燥促進剤、浸透剤などが挙げられる。特定の添加剤の量は、様々な因子に応じて変動するが、一般的には、インクジェットインク組成物の重量に対して0%〜40%の範囲の量で存在する。加えて、本発明のインクジェットインク組成物は、さらに、カラーバランスを改変し、光学密度を調整するために、染料を含んでいてもよい。そのような染料としては、食用色素、FD&C染料、酸染料、直接染料、反応性染料、銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩を含むフタロシアニンスルホン酸の誘導体が挙げられる。分散体およびインクジェットインク組成物に関するさらなる詳細を、以下に提供する。
【0039】
オゾン酸化
本明細書で開示されるカーボンブラックは、本技術分野にて公知のいかなる方法によって酸化されてもよいが(本明細書で述べるように)、別の実施形態は、本明細書で開示されるカーボンブラックなどの顔料を酸化する方法を提供する。別の選択肢として、開示されるオゾン酸化法は、本明細書で開示されるカーボンブラックに限定されず、その他のカーボンブラックまたは有機顔料を例とするいかなる顔料の酸化にも用いることができる。1つの実施形態は、顔料を含む水性分散体へ、水性分散体のpHを少なくとも8.5に維持した状態でオゾンを添加することを含む、顔料を酸化する方法を提供する。1つの実施形態では、pHは、少なくとも8.6、少なくとも8.7、少なくとも8.8、少なくとも8.9、少なくとも9.0、少なくとも9.1、少なくとも9.2、少なくとも9.3、少なくとも9.4、または少なくとも9.5の値で維持される。1つの実施形態では、混合物のpHは、8.5〜10、8.5〜9.5、8.6〜10、8.6〜9.5、8.7〜10、8.7〜9.5、8.8〜10、8.8〜9.5、8.9〜10、8.9〜9.5、9.0〜10、または9.0〜9.5の範囲の値で維持される。1つの実施形態では、酸化および維持は、水性分散体が循環経路を流れている状態で実施される。
【0040】
1つの実施形態では、維持は、pHレベルが8.5より低いレベル(すなわち、8.5未満)、例えば8.6未満、8.7未満、8.8未満、8.9未満、9.0未満、9.1未満、9.2未満、9.3未満、9.4未満、または9.5未満まで低下した場合に、塩基を水性分散体に添加することを含む。例えば、pHレベルが、少なくとも8.5または少なくとも9.0(例:9.0〜10.0)の値で維持されることが所望される場合、維持は、pHプローブおよび塩基ポンプで達成することができ、この場合、pHプローブは、酸化が進行する際の混合物のpHレベルの8.5未満(または9.0未満)への低下を検出する。それに応じて、塩基ポンプは、pHレベルを8.5より上、または9.0より上、または本明細書で開示されるいずれかの値へ上昇させるのに充分な量の塩基(例:NaOH、KOH)を自動的に添加する。1つの実施形態では、水性分散体は、ベンチュリ管を通る循環流として送られ、添加は、オゾンをベンチュリ管の入り口部へ導入することを含み、ここで、入り口部は、ベンチュリ管の絞り領域に、またはその上流に配置される。
【0041】
オゾン酸化法を行うための1つの実施形態は、循環経路を有するオゾン反応器アセンブリーを含む。1つの実施形態では、オゾン反応器アセンブリーは、
顔料を含む分散体を含有し、それを撹拌するためのタンクであって、水性分散体は、pHプローブと分散体に塩基を供給するための第一のポンプとに流体連結されている、タンク、
第一の配管を通ってベンチュリ管へ水性分散体を引き出し、供給するための、タンクと流体連結された第二のポンプであって、ここで、水性分散体は、ベンチュリ管の絞り領域を通って送られる、第二のポンプ、
絞り領域の、またはその上流の入り口部を介してベンチュリ管と気体連結されているオゾン源であって、ここで、オゾンは、絞り領域を通って送られる間に顔料と接触する、オゾン源、ならびに、
オゾンおよび水性分散体を含む混合物をタンクへ運ぶための第二の配管、
を含む。
【0042】
図2は、オゾン反応器アセンブリーの実施形態を概略的に示す。反応器50は、少なくとも顔料および溶媒を含む混合物54を含有するためのタンク52を有する。1つの実施形態では、この混合物は、本明細書で開示されるカーボンブラックを含有する分散体であるが、その他のカーボンブラックまたは有機顔料も、このアセンブリーで酸化することができる。この混合物は、本技術分野にて公知のいかなる方法によって撹拌されてもよく、かき混ぜ、回転、振動などである。
図2は、スターラーアセンブリー56を示す。コンポーネント58は、混合物54と流体連結されており、混合物54へ、その塩基性を維持するために塩基を導入するための塩基ポンプ、および溶液のpHをモニタリングするためのpHプローブを含む。塩基ポンプおよびpHプローブは、別々のコンポーネントとして、または一体化されたコンポーネントとして提供されてよい。1つの実施形態では、コンポーネント58は、pHレベルをモニタリングし、混合物のpHを、少なくとも8.5、または少なくとも9.0、または本明細書で開示されるいずれかの値に維持する。
【0043】
混合物54と流体連結されている流体ポンプ60は、タンク52から混合物を引き出し、タンク52から配管62を通って矢印64で示される方向へ向かう混合物54の流れを発生させる。次に、混合物54は、入り口部ポート65にてベンチュリ管70に入る。
図2に概略的に示されるように、ベンチュリ管70の直径は、セクション72で減少し、絞り径領域74で最小となっている。絞り径領域74へ繋がり、それを含むセクション72の直径の減少は、円錐形の様式で示されるが、直線状、円形状、コイル状、S字状、または蛇行状経路中の段階的もしくは連続的を例とするいくつかの構成によって達成されてよい。絞り径領域74は、別の入り口部69と接続され、そこを通って、オゾンが配管68を介して導入される。オゾンは、ガス源66(例:乾燥酸素を含有するガスタンク)からの酸素ガスをコロナ発生器67へ送ることによって作製することができる。コロナ発生器は、通常、酸素分子を開裂させることができる放電を発生させる。形成された酸素ラジカルは、酸素分子と反応して、オゾンを得ることができる。その他のオゾン発生システムも、反応器アセンブリー50に適用することができる。形成されたオゾンが、入り口部69にてベンチュリ管に、そして絞り径領域74に入ると、それは、最大濃縮顔料含有領域にて顔料と接触する。さらに、絞り径領域74を通る流れは、せん断力を最大化し、それによって、オゾンと顔料との間の反応条件が最適化される。1つの実施形態では、これらの利点は、オゾンが絞り径領域74の上流に導入される場合でも実現することができ、この場合、得られた混合物は、続いて、さらなる混合および反応のために、この領域を通って送られる。
【0044】
得られた混合物54(分散体/オゾン)は、最終的には、絞り径領域74と比較して拡大された直径を有する領域76を介して、絞り径領域74から排出される。ベンチュリ管70を出ると、混合物54は、第二の配管セット80を通って運ばれ、タンク52へ戻って再度導入される。このアセンブリーでは、顔料は、反応体オゾンへの暴露を追加で行うために、ベンチュリ管70を通して複数回再循環されてよい。
【0045】
本明細書で開示されるカーボンブラックは、以下で述べるように、いくつかの別の選択肢としての表面処理を受け、様々な分散体製剤中に組み込まれてよい。
【0046】
有機基
1つの実施形態では、カーボンブラックは、少なくとも1つの結合された有機基を持つ修飾カーボンブラックである。
【0047】
有機基は、脂肪族基、環状有機基、または脂肪族部分および環状部分を持つ有機化合物であってよい。1つの実施形態では、有機基は、一過性であってもジアゾニウム塩を形成することができる一級アミンから誘導されるジアゾニウム塩を介して結合される。結合の他の方法は、以下に記載される。有機基は、置換もしくは無置換、分岐鎖もしくは非分岐鎖であってよい。脂肪族基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、および炭水化物から誘導される基が挙げられる。環状有機基としては、これらに限定されないが、脂環式炭化水素基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、ヘテロ環式炭化水素基(例えば、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、モルホリニルなど)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル)、ならびにヘテロアリール基(イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、インドリル、ならびに1,2,4−トリアゾリルおよび1,2,3−トリアゾリルなどのトリアゾリル)が挙げられる。
【0048】
1つの実施形態では、少なくとも1つの結合された有機基は、少なくとも1つのイオン性基、イオン化可能基、またはイオン性基とイオン化可能基との組み合わせを含む。イオン性基は、アニオン性またはカチオン性であってよく、無機もしくは有機対イオンを含む反対電荷の対イオンを伴っていてよく、Na
+、K
+、Li
+、NH
4+、NR′
4+、アセテート、NO
3-、SO
42-、R′SO
3-、R′OSO
3-、OH
-、もしくはCl
-などであり、ここで、R′は、水素、または置換もしくは無置換のアリールまたはアルキル基などの有機基を表す。イオン化可能基は、用いられる媒体中でイオン性基を形成することができる基である。アニオン性基は、酸性置換基など、アニオンを形成することができるイオン化可能置換基(アニオン化可能基)を持つ基から生成することができる負電荷イオン性基である。カチオン性基は、プロトン化アミンなど、カチオンを形成することができるイオン化可能置換基(カチオン化可能基)から生成することができる正電荷有機イオン性基である。アニオン性基の具体的な例としては、−COO
-、−SO
3-、−OSO
3-、−HPO
3-、−OPO
32-、または−PO
32-が挙げられ、アニオン化可能基の具体的な例としては、−COOH、−SO
3H、−PO
3H
2、−R′SH、または−R′OHを挙げることができ、ここで、R′は、水素、または置換もしくは無置換のアリールまたはアルキル基などの有機基を表す。また、カチオン性もしくはカチオン化可能基の具体的な例としては、アルキルまたはアリールアミンが挙げられ、これらは、酸性媒体中にてプロトン化されて、アンモニウム基−NR′
2H
+を形成してよく、ここで、R′は、置換もしくは無置換のアリールまたはアルキル基などの有機基を表す。有機イオン性基としては、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,698,016号に記載のものが挙げられる。
【0049】
例えば、結合された基は、ベンゼンカルボン酸基(−C
6H
4−COOH基)、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基、ベンゼンスルホン酸基(−C
6H
4−SO
3H基)、またはこれらの塩などの有機基であってよい。1つの実施形態では、塩素化およびスルホニル化など、イオン性またはイオン化可能基を顔料表面に導入するための表面修飾が用いられてもよい。
【0050】
1つの実施形態では、有機基は、直接(カーボンブラック由来原子への結合)または中間もしくはスペーサー基を介して間接的に結合されていてよい。1つの実施形態では、中間もしくはスペーサー基は、置換および無置換のC
1−C
12アルキル、C
5−C
20アリール、C
6−C
24アルカリールおよびアラルキルから選択され、ここで、「アルキル」は、所望に応じて、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子を含有する基を途中に含んでいてよく、「アリール」は、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子を含有する基で所望に応じて置き換えられてよい環炭素原子を含む。通常、結合される基は、顔料表面に存在する。
【0051】
有機基は、置換されていても、または無置換であってもよい。1つの実施形態では、有機基は、エステル、アミド、エーテル、カルボキシル、アリール、アルキル、ハライド、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、カルボキシレート、OR″、COR″、CO
2R″、OCOR″、CN、NR″
2、SO
2、CO、SO
3、SO
3H、OSO
2、OSO
3、SO
3NR″、R″NSO
2、NR″(COR″)、NR″CO、CONR″
2、NO
2、NO
3、CONR″、NR″CO
2、O
2CNR″、NR″CONR″、S、NR″、SO
2C
2H
4、上記で定める通りのアリーレン、上記で定める通りのアルキレンから選択される少なくとも1つの官能基で置換されており、ここで、R″は、同一であっても、または異なっていてもよく、水素、本明細書で定める通りのアリール、およびアルキルなどの有機基を表す。
【0052】
代表的な有機基のさらなる例は、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,571,311号、同第5,630,868号、同第5,707,432号、同第5,955,232号、同第5,922,118号、同第5,900,029号、同第5,895,522号、同第5,885,335号、同第5,851,280号、同第5,837,045号、同第5,713,988号、および同第5,803,959号、国際公開第96/18688号、ならびに国際公開第96/18690号に記載される。
【0053】
1つの実施形態では、有機基は、少なくとも2つの環ヘテロ原子を含む5員環ヘテロ芳香族基を含み、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/143533号に開示されるものなどである。1つの実施形態では、例えば、有機基は、式(Ib)または(IIb)を有し得る。
【化1】
Ibにおいて、Xは、O、N(R
a)、またはSであってよく、R
1は、H、C
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、C
3−C
20シクロアルキル、C
3−C
20シクロアルケニル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、OR
b、COOR
b、OC(O)R
b、C(O)R
b、C(O)NR
bR
c、SO
3R
c、NR
bR
c、またはN
+(R
bR
cR
d)Yであってよく、ここで、R
a、R
b、R
c、およびR
dの各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
3−C
20シクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであってよく、およびYは、アニオンであってよい。一般的に、Yは、クロリド、ブロミド、ヨージド、サルフェート、ナイトレート、ホスフェート、シトレート、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、アセテート、マレート、トシレート、タータレート、フマレート、グルタメート、グルクロネート、ラクテート、グルタレート、またはマレエートなどの適切ないかなるアニオンであってもよい。IIbにおいては、Xは、O、N(R
a)、またはSであり、R
1およびR
2の各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、C
3−C
20シクロアルキル、C
3−C
20シクロアルケニル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、OR
b、COOR
b、OC(O)R
b、C(O)R
b、C(O)NR
bR
c、SO
3R
c、NR
bR
c、またはN
+(R
bR
cR
d)Yであり、R
a、R
b、R
c、およびR
dの各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
3−C
20シクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、およびYは、アニオンであるが、但し、R
1およびR
2の少なくとも一方はHではない。
【0054】
1つの実施形態では、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、カーボンブラックに結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシル、アミン、およびエステル、アミド、ならびにこれらの塩から選択される。
【0055】
別の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、カーボンブラックに結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキレンオキシド(例:エチレンまたはプロピレンオキシド)、カルボン酸エステル、およびグリコールから選択される。
【0056】
別の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中、
Rは、カーボンブラックに結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、ならびに、
Aは、ポリマーから選択される。
【0057】
アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンは、無置換であっても、または例えば上記で挙げた官能基の1つ以上によって置換されていてもよい。代表的なアリーレンとしては、フェニレン、ナフチレン、およびビフェニレンが挙げられ、代表的なヘテロアリーレンとしては、環炭素が1つ以上の酸素または窒素原子で置換されたフェニレン、ナフチレン、およびビフェニレンが挙げられる。1つの実施形態では、アリーレンは、C
5−C
20アリーレンである。ヘテロアリーレンは、1つ以上の環炭素原子が、N、O、およびSを例とするヘテロ原子で置換された本明細書で定める通りのアリーレンであってよい。ヘテロ原子は、環原子であるのに加えて、その他の基にも結合されていてよい。代表的なアリーレンとしては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニルが挙げられ、代表的なヘテロアリーレンとしては、ピリジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、チアゾリル、フリル、トリアジニル、インドリル、ベンゾチアジアゾリル、およびベンゾチアゾリルが挙げられる。アルキレンは、分岐鎖または非分岐鎖であってよい。アルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレンなどのC
1−C
12アルキレンであってよく、所望に応じてヘテロ原子が挿入されていてもよい。
【0058】
1つの実施形態では、Rは、置換Rであり、Aと結合した少なくとも1つのスペーサー基で置換されたアリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンを含む。1つの実施形態では、置換Rは、R′−Spを含み、ここで、R′は、上記で定める通りのアリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキレンから選択され、Spは、R′およびAの両方と結合することができる上記で挙げた官能基から選択されるスペーサーである。別の実施形態では、Spは、−CO
2−、−O
2C−、−CO−、−OSO
2−、−SO
3−、−SO
2−、−SO
2C
2H
4−O−、−SO
2C
2H
4S−、−SO
2C
2H
4NR″−、−O−、−S−、−NR″−、−NR″CO−、−CONR″−、−NR″CO
2−、−O
2CNR″−、−NR″CONR″−、−N(COR″)CO−、−CON(COR″)−、−NR″COCH(CH
2CO
2R″)−およびそれからの環状イミド、−NR″COCH
2CH(CO
2R″)−およびそれからの環状イミド、−CH(CH
2CO
2R″)CONR″−およびそれからの環状イミド、−CH(CO
2R″)CH
2CONR″およびそれからの環状イミド、(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO
2NR″−および−NR″SO
2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基から選択される。R″は、同一であっても、もしくは異なっていてもよく、上記で定める通りであるか、または、水素、または置換もしくは無置換のアリールもしくはアルキル基などの有機基を表し、例えば、C
5−C
20アリール基、ならびに置換および無置換C
1−C
6アルキル基である。1つの実施形態では、Spは、−CO
2−、−O
2C−、−O−、−NR″−、−NR″CO−、−CONR″−、−SO
2NR″−、−SO
2CH
2CH
2NR″−、−SO
2CH
2CH
2O−、または−SO
2CH
2CH
2S−から選択され、ここで、R″は、上記で定める通りであり、例えば、HおよびC
1−C
6アルキル基から選択される。
【0059】
別の実施形態では、Spは、カルボン酸もしくはエステル、酸塩化物、塩化スルホニル、アシルアジド、イソシアネート、ケトン、アルデヒド、酸無水物、アミド、イミド、イミン、α,β−不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはスルホン、ハロゲン化アルキル、エポキシド、アルキルスルホネートもしくは(2−スルファトエチル)−スルホン基などのサルフェート、アミン、ヒドラジン、アルコール、チオール、ヒドラジド、オキシム、トリアゼン、カルバニオン、芳香族化合物、これらの塩もしくは誘導体、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される反応性基を有する化合物から誘導される。そのような化合物の例としては、アミノ官能化芳香族化合物が挙げられ、4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、3−アミノベンジルアミン(3−ABA)、2−アミノベンジルアミン(2−ABA)、2−アミノフェニルエチルアミン、4−アミノフェニル−(2−スルファトエチル)−スルホン(APSES)、p−アミノ安息香酸(PABA)、4−アミノフタル酸(4−APA)、および5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸などである。
【0060】
1つの実施形態では、少なくとも1つの有機基は、カルシウムを結合する能力を有し(例:定められたカルシウム指数値を有する)、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/053564号に記載の有機基を含む。例えば、有機基は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含み、例えば、式−CQ(PO
3H
2)
2を有する基、その部分エステル、またはその塩であり、ここで、Qは、ジェミナル位に結合しており、H、R、OR、SR、またはNR
2であってよく、ここで、R″は、同一であっても、または異なっていてもよく、上記で定める通りであるか、またはH、C
1−C
18飽和もしくは不飽和、分岐鎖もしくは非分岐鎖アルキル基、C
1−C
18飽和もしくは不飽和、分岐鎖もしくは非分岐鎖アシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基であってよい。加えて、米国特許第5,672,198号、同第5,922,118号、同第6,042,643号、および同第6,641,656号には、ホスホン酸基を含む種々の結合された基を有する修飾顔料が開示されており、その開示事項は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
カルシウムを結合する能力を有するその他の有機基としては、少なくとも1つのヒドロキサム酸もしくはその塩(例:式−N(OH)−CO−を有する少なくとも1つの基またはその塩)、少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基もしくはその塩(例:ピリジニル基もしくはキノリニル基などの窒素含有ヘテロアリール基、および有機基は、ヒドロキシピリジニル基もしくはヒドロキシルキノリニル基であり、ここで、ヒドロキシ基は、それがヘテロ原子に対してオルソ位であるなどヘテロ原子に対して幾何的に近接するように、ヘテロアリール基上の位置に存在し、または互いにオルソ位にある2つのOH基を有するヘテロアリールである)、少なくとも1つのホスホン酸基もしくはその塩、および少なくとも1つの第二のイオン性、イオン化可能、もしくは塩基性基(塩基性基は、ホスホン酸基に対してジェミナルであってよいOH基もしくはアミノ基などのルイス塩基である)、少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその塩を有する少なくとも1つのヘテロアリール基(例:少なくとも2もしくは3つのカルボン酸基、互いにオルソもしくはメタ位にある少なくとも2つのカルボン酸基など)、少なくとも1つのニトロソ基および少なくとも1つのOH基(例:互いにオルソ位)を有するアリール基、もしくはその塩、少なくとも2つのOH基、少なくとも2つのNH
2基、もしくは少なくとも1つのOH基および少なくとも1つのNH
2基(例:少なくとも2つのOH基、少なくとも2つのNH
2基、もしくは少なくとも1つのOH基および少なくとも1つのNH
2基)を有するアゾアレーン基が挙げられ、式Ar
1−N=N−Ar
2を有し、ここで、Ar
1およびAr
2は、同一であっても、または異なっていてもよく、アリーレン基またはアリール基であり、Ar
1またはAr
2のうちの少なくとも一方は、アリーレン基である(例:OHおよび/またはNH
2基は、アゾ基に対してオルソ位に位置している)。その他の基は、国際公開第2007/053564号に開示されている。
【0062】
1つの実施形態では、結合された有機基は、ポリマーを含む。1つの実施形態では、ポリマーは、少なくとも1つの非イオン性基を含む。例としては、約1〜約12炭素のアルキレンオキシド基およびポリオールが挙げられ、−CH
2−CH
2−O−基、−CH(CH
3)−CH
2−O−基、−CH
2−CH(CH
3)−O−基、−CH
2CH
2CH
2−O−基、またはこれらの組み合わせなどである。これらの非イオン性基は、本明細書で開示される少なくとも1つのイオン性またはイオン化可能基をさらに含んでよい。
【0063】
結合されるポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってよく、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレエートおよびフマレートジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、酢酸ビニル、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、ビニルエーテル、ならびにスチレンから選択されるモノマーから誘導されてもよい。ビニルエーテルとしては、カチオン重合によって作製することができるものが挙げられ、一般構造CH
2=CH(OR)を持つものなどであり、ここで、Rは、アルキル、アラルキル、アルカリール、もしくはアリール基であるか、または1つ以上のアルキレンオキシド基を含む基である。ビニルケトンとしては、アルキル基のβ−炭素原子が水素原子を持たないものが挙げられ、両方のβ−炭素がC
1−C
4アルキル基、ハロゲンなどを持つビニルケトン、またはフェニル基が1〜5個のC
1−C
6アルキル基および/またはハロゲン原子で置換されていてよいビニルフェニルケトンなどである。スチレンとしては、ビニル基が、α−炭素原子などにおいてC
1−C
6アルキル基で置換されているもの、ならびに/またはフェニル基が、C
1−C
6アルキル、アルケニル(ビニルを含む)、もしくはアルキニル(アセチレニルを含む)基、フェニル基、ハロアルキル基、ならびにC
1−C
6アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ、スルホネート、C
1−C
6アルコキシカルボニル、ヒドロキシ(C
1−C
6アシル基で保護されたものを含む)、およびシアノ基などの官能基を含む1〜5個の置換基で置換されているものが挙げられる。具体的な例としては、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(EMA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0064】
ポリマーは、1つ以上の重合性モノマーのカチオンまたはアニオン重合によって作製されてよい。例えば、ポリビニルエーテルは、一般構造CH
2=CH(OR)を持つものなどのモノマーのカチオン重合によって作製されてよく、ここで、Rは、アルキル、アラルキル、アルカリール、もしくはアリール基であるか、または1つ以上のアルキレンオキシド基を含む基である。その他のカチオンまたはアニオン重合性モノマーも含まれてよい。
【0065】
ポリマーは、縮合重合技術によって作製されてもよい。例えば、ポリマーは、上述の官能基を持つポリエステルまたはポリウレタンであってよい。ポリウレタンの場合、適切な方法の例としては、イソシアネート基と非反応性である低沸点溶媒(アセトンなど)中においてイソシアネート末端プレポリマーを作製すること、ジアミンもしくはポリオールなどの親水性基をその中へ導入すること、水で希釈することによって相変化を引き起こすこと、および溶媒を留去してポリウレタン分散体を得ること、を含む溶液法が挙げられる。別の適切な方法は、親水性基が導入されたイソシアネート基末端プレポリマーを作製すること、水中に分散すること、およびアミンで鎖延長することを含む。
【0066】
ポリウレタンは、プレポリマー法によって作製されてよく、その場合、低分子量を有するポリヒドロキシ化合物が用いられてよい。低分子量を有するポリヒドロキシ化合物の例としては、グリコールおよびアルキレンオキシドなどのポリエステルジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンなどの三価アルコールが挙げられる。
【0067】
1つの実施形態では、ポリマーは、低酸価を有する。1つの実施形態では、ポリマーは、約150以下、約110以下、または約100以下など、約200以下の酸価を有する酸基含有ポリマーであってよい。別の実施形態では、ポリマーの酸価は、約30以上である。従って、ポリマーは、約30〜約110、約110〜約150、または約150〜約200など、約30〜約200の酸価を有する酸基含有ポリマーであってよい。
【0068】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、ジアゾニウム処理を介して、少なくとも1つの有機基で修飾されるものであり、その詳細は、例えば、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる以下の特許に記載されている。米国特許第5,554,739号、同第5,630,868号、同第5,672,198号、同第5,707,432号、同第5,851,280号、同第5,885,335号、同第5,895,522号、同第5,900,029号、同第5,922,118号、同第6,042,643号、同第6,534,569号、同第6,398,858号および同第6,494,943号(高せん断条件) 同第6,372,820号、同第6,368,239号、同第6,350,519号、同第6,337,358号、同第6,103,380号、同第7,173,078号、同第7,056,962号、同第6,942,724号、同第6,929,889号、同第6,911,073号、同第6,478,863号、同第6,472,471号、ならびに国際公開第2011/143533号。1つの実施形態では、結合は、ジアゾニウム反応を介して提供され、この場合、少なくとも1つの有機基は、ジアゾニウム塩置換基を有する。別の実施形態では、直接の結合は、例えば、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,068,688号、同第6,337,358号、同第6,368,239号、同第6,551,393号、同第6,852,158号に記載のジアゾニウムおよび安定フリーラジカル法を用いて形成されてよく、これは、少なくとも1つのラジカルと少なくとも1つの粒子との反応を利用するものであり、ここで、ラジカルは、ラジカル補足能を有する1つ以上の粒子などの存在下、少なくとも1つの遷移金属化合物と少なくとも1つの有機ハロゲン化化合物との相互作用から生成される。なお別の実施形態では、少なくとも1つのカーボンブラックの修飾は(例:官能基の結合)、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,837,045号、同第6,660,075号、および国際公開第2009/048564号(少なくとも1つの置換基で活性化されたC−C二重結合または三重結合を含有する有機化合物)、または米国特許出願公開第2004/0171725号、米国特許第6,664,312号、同第6,831,194号(酸無水物成分との反応)、同第6,936,097号、米国特許出願公開第2001/0036994号、同第2003/0101901号(−N=N−N−基を有する有機基との反応)、カナダ特許第2,351,162号、欧州特許第1394221号、および国際公開第01/51566号(少なくとも1つの求電子剤と少なくとも1つの求核剤との間の反応)、国際公開第04/63289号、国際公開第2010/141071号(H2N−A−Yによる反応であり、ここで、Aは、ヘテロ原子である)、および国際公開第99/23174号の方法を用いることで行われてよい。
【0069】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、−O−C−結合を介して有機基と結合されており、ここで、−O−C−結合は、フェノレート、ナフトレート、エステル、およびエーテル結合の1つ以上を形成し、ここで、−O−C−結合、およびその置換基の炭素原子は、修飾前のカーボンブラックに由来するものではない。1つの実施形態では、カーボンブラックは、フェノレートまたはナフトレート結合を介して有機基と結合されており、この場合、フェノレートまたはナフトレートの芳香族基は、カーボンブラックに由来するものである。1つの実施形態では、これらの結合は、国際出願番号PCT/US2013/39381に開示されるように、光延反応を介して行うことができ、ここで、pKa<15を有するプロトン化された求核剤を含む第一の反応体が、ヒドロキシル含有有機基を含む第二の反応体と反応される。カーボンブラックは、第一または第二の反応体のいずれと結合されてもよい。
【0070】
結合されたポリマー基を有するものを含む修飾顔料を作製するための他の方法も、例えば、国際公開第01/51566号に記載されており、これは、第一の化学基および第二の化学基を反応させて結合された第三の化学基を有する顔料を形成することによって修飾顔料を作製する方法を開示している。国際公開第2007/053563号は、定められたカルシウム指数値を持つ少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む少なくとも1つのポリマー基が結合された修飾着色剤を開示している。少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含む有機基などの有機基の具体的な実施形態が記載されている。
【0071】
ポリマー修飾顔料品を作製するためのその他の方法も、開発されている。例えば、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,056,962号、同第6,478,863号、同第6,432,194号、同第6,336,965号、米国特許出願公開第2006/0189717号、および国際公開第2008/091653号には、ジアゾニウム塩の使用によって顔料へポリマーを結合させるための方法が記載されている。その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,173,078号、同第6,916,367号、同第6,911,073号、同第6,723,783号、同第6,699,319号、同第6,472,471号、および同第6,110,994号には、ポリマーと結合された反応性基を有する顔料とを反応させることによるポリマー修飾顔料を作製する方法が開示されている。結合されたポリマー基を有する修飾顔料は、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0177003号にも開示されており、これは溶融物の形態のポリマーを用いるものである。
【0072】
ポリマー修飾顔料はまた、顔料からモノマーの重合によって作製されてもよい。例えば、ポリマー修飾顔料は、ラジカル重合、制御重合法、原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル(SFR)重合、および可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)など、グループ移動重合(GTP)などのイオン重合(アニオンまたはカチオン)、ならびに縮合重合によって作製されてよい。また、ポリマー修飾顔料は、例えば、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,372,820号、同第6,350,519号、同第6,551,393号、もしくは同第6,368,239号、または国際公開第2006/086599号および同2006/086660号に記載の方法を用いて作製されてもよい。ポリマーによって被覆された顔料を含む修飾顔料の場合、このような修飾顔料は、本技術分野にて公知のいかなる方法を用いて作製されてもよく、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,085,698号、同第5,998,501号、同第6,074,467号、同第6,852,777号、および同第7,074,843号、ならびに国際公開第2004/111,140号、国際公開第2005/061087号、および国際公開第2006/064193号に記載のものなどである。
【0073】
ポリマーおよびプレポリマーによるカーボンブラックの表面グラフト化は、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれるN. Tsubokawa, in Prog. Polym. Sci., 17, 417, 1992およびJ. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed. Vol. 20, 1943-1946 (1982)に記載されている。N. Tsubokawa in Reactive & Functional Polymers 27 (1995) 75-81に開示されるように、末端ヒドロキシルまたはアミノ基を持つポリマーは、カーボンブラックの表面カルボキシル基へグラフトさせることができる。
【0074】
少なくとも1つのポリマー基が結合された修飾顔料は、さらに第二の有機基を含んでよく、これは、上述のポリマー基とは異なる。これらとしては、例えば、その開示事項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,630,868号に記載の基が挙げられる。例えば、修飾顔料は、少なくとも1つのイオン性基、少なくとも1つのイオン化可能基、またはこれらの組み合わせを含んでよい第二の結合された有機基をさらに含んでよい。好ましくは、イオン性またはイオン化可能基は、アニオン性またはアニオン化可能基である。本発明の修飾顔料の顔料に関して上述したイオン性またはイオン化可能基、特にアニオン性またはアニオン化可能基のいずれも、第二の有機基であってよい。さらに、第二の有機基は、ポリマーを含むポリマー基であってよい。上述のポリマー基のいずれもまた、第二の結合された有機基として用いられてもよい。
【0075】
結合された有機基の量は、様々であってよく、修飾カーボンブラックの所望される用途、および結合される基の種類に応じて異なる。例えば、有機基の総量は、窒素吸着法(BET法)によって測定される顔料の表面積1m
2あたり約0.01〜約10.0マイクロモルの基であってよく、約0.5〜約5.0マイクロモル/m
2、約1〜約3マイクロモル/m
2、または約2〜約2.5マイクロモル/m
2を含む。本発明の種々の実施形態で述べるものとは異なる追加の結合された有機基も存在してよい。
【0076】
分散体およびインクジェットインク組成物
組成物のコロイド安定性をさらに高めるために、またはインクと印刷紙などの印刷基材との、もしくはインクプリントヘッドとの相互作用を改変するために、分散剤(界面活性剤および/または分散剤)が添加されてよい。種々のアニオン性、カチオン性、および非イオン性分散剤が、本発明のインク組成物と合わせて用いられてよく、これらは、未希釈で、または水溶液として用いられてよい。
【0077】
アニオン性分散剤または界面活性剤の代表例としては、これらに限定されないが、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホスクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホネート、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートが挙げられ、ヒドロキシル化またはアミノ化誘導体を含む。例えば、スチレンスルホネート塩、無置換および置換ナフタレンスルホネート塩(例:アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含む無置換アルキルアルデヒド誘導体)、マレイン酸塩、およびこれらの混合物のポリマーならびにコポリマーが、アニオン性酸分散剤として用いられてよい。塩としては、例えば、Na
+、Li
+、K
+、Cs
+、Rb
+、ならびに置換および無置換アンモニウムカチオンが挙げられる。カチオン性界面活性剤の代表例としては、脂肪族アミン、四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0078】
本発明のインクジェットインクに用いられてよい非イオン性分散剤または界面活性剤の代表的例としては、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシル化アセチレン系ジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合タイプのエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、およびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドが挙げられる。例えば、エトキシル化モノアルキルまたはジアルキルフェノールも用いられてよい。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独で用いられても、または前述のアニオン性およびカチオン性分散剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0079】
分散剤は、天然ポリマーまたは合成ポリマー分散剤であってもよい。天然ポリマー分散剤の具体的な例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、およびアルブミンなどのタンパク質;アラビアガムおよびトラガカントガムなどの天然ゴム;サポニンなどのグルコシド;アルギン酸、ならびにプロピレングリコールアルギネート、トリエタノールアミンアルギネート、およびアンモニウムアルギネートなどのアルギン酸誘導体;ならびに、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびエチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられる。合成ポリマー分散剤を含むポリマー分散剤の具体的な例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、(メタ)アクリル酸カリウム−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル−(メタ)アクリレートエステルコポリマー、および(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマーなどのアクリルまたはメタクリル樹脂(「(メタ)アクリル」と記される場合が多い);スチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマーなどのスチレン−アクリルもしくはメタクリル樹脂;スチレン−マレイン酸コポリマー;スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン−アクリルもしくはメタクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー;ならびに酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、および酢酸ビニル−アクリル酸コポリマーなどの酢酸ビニルコポリマー;ならびにこれらの塩が挙げられる。
【0080】
湿潤剤および水溶性有機化合物も、特に、ノズルの詰まりを防止する目的で、ならびに紙浸透性(浸透剤)、乾燥の改善(乾燥促進剤)、および耐コックリング性を提供するために、本発明のインクジェットインク組成物に添加されてよい。用いられてよい湿潤剤およびその他の水溶性化合物の具体的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、およびジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール;1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコールなど、ならびにエチレンオキシドを含み、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物などの約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、ならびにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびこれらの混合物を含むアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物を含む約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体;ネオペンチルグリコール、(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、ならびに広範囲の分子量を持つ物質を形成するいずれかの望ましいモル比でのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリスリトール、ならびにエタノール、プロパノール、イソ−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールおよびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトンおよびジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトアルコール;テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテルなどのセロソルブ;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのカルビトール;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタムなどのラクタム;ウレアおよびウレア誘導体;ベタインなどの分子内塩;1−ブタンチオール;t−ブタンチオール 1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−もしくはジチオ−ジエチレングリコールなどを含む前述の物質のチオ(硫黄)誘導体;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなどを含むヒドロキシアミド誘導体;アルキレンオキシドとの前述の物質の反応生成物;ならびにこれらの混合物が挙げられる。さらなる例としては、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、およびマルトースなどのサッカリド;トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタンなどの多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなどのジアルキルスルフィド(対称および非対称スルホキシド)を含む約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;ならびに、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなどの約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称スルホン)が挙げられる。そのような物質は、単独で、または組み合わせて用いられてよい。
【0081】
殺生物剤および/または殺真菌剤も、本発明のインクジェットインク組成物に添加されてよい。殺生物剤は、細菌がインクノズルよりも大きい場合が多く、詰まり、ならびにその他の印刷不具合を引き起こしかねないことから、細菌繁殖の防止に重要である。有用な殺生物剤の例としては、これらに限定されないが、ベンゾエートまたはソルベート塩、およびイソチアゾリノンが挙げられる。
【0082】
1つの実施形態では、インクジェットインク組成物は、共溶媒を含む。1つの実施形態では、共溶媒は、少なくとも10重量%の濃度で水溶性または水混和性であり、水性加水分解条件(例:例えばエステルおよびラクトンの加水分解を含む、熱老化条件下における水との反応)に対して化学的に安定でもある。1つの実施形態では、共溶媒は、水よりも低い誘電率を有し、20℃において約10〜約78の範囲の誘電率などである。適切な共溶媒の例としては、低分子量グリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなど);アルコール(エタノール、プロパノール、イソ−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールおよびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノールなど);約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール(1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコール、ならびにエチレンオキシドを含み、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物など);約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール(グリセリン(グリセロール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、ならびにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびこれらの混合物を含むアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物など);ポリオール(ペンタエリスリトールなど);アミド(ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミドなど);ケトンまたはケトアルコール(アセトンおよびジアセトンアルコールなど);エーテル(テトラヒドロフランおよびジオキサンなど);ラクタム(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタムなど):ウレアまたはウレア誘導体(ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン(ダンタコール(dantacol))および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど);分子内塩(ベタインなど);ならびにヒドロキシアミド誘導体(アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミン、ならびにアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物など)が挙げられる。さらなる例としては、サッカリド(マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、およびマルトースなど);約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体(対称および非対称)(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、およびアルキルフェニルスルホキシドなど);ならびに約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称スルホン)(ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、およびジメチルスルホランなど)が挙げられる。これらの共溶媒は、単独で、または組み合わせて用いられてよい。
【0083】
共溶媒の量は、共溶媒の特性(溶解性および/または誘電率)、修飾顔料の種類、ならびに得られるインクジェットインク組成物の所望される性能を含む様々な因子に応じて変動し得る。特に、所望に応じて含有されてよい共溶媒は、約30%以下および約20%以下を含む、インクジェットインク組成物の総重量に対して約40重量%以下の量で用いられてよい。また、用いられる場合、所望に応じて含有されてよい共溶媒の量は、約5重量%以上および約10重量%以上を含む、インクジェットインク組成物の総重量に対して約2重量%以上である。
【実施例】
【0084】
実施例1:カーボンブラックの作製
カーボンブラックは、
図1に示される多段反応器の1つの実施形態に従うパイロットプラントで作製した。反応器寸法の概略を以下の表1に示す。
【表1】
【0085】
サンプルA〜Hのためのプロセス条件の概略を、以下の表2に示す。
【表2】
【0086】
これらの条件下で作製された原料カーボンブラックの特性の概略を以下の表3に示す。
【表3】
【0087】
類似の運転条件下にて同じ装置から作製することができるその他の高構造カーボンブラックの特性を、以下の表4に挙げる。
【表4】
【0088】
実施例2:オゾンによる酸化
この実施例では、ベンチュリ管を備えた
図2のオゾン反応器アセンブリーを用いることによる実施例1のカーボンブラックサンプルA〜Gのオゾン化について記載する。
【0089】
実施例1からのカーボンブラックの分量(300g)を、水(6L)と混合し、この混合物を、ローター−ステーターにより、8000〜10000rpmにて3〜5分間ホモジナイズした。得られたスラリーを、オゾン反応器アセンブリーのタンクに添加し、ここで、タンクのpHは、9.0に維持した。再循環ポンプを70〜90L/分の速度で運転して、スラリーを反応器全体に循環させた。オゾンガス(3〜5重量%)を、ベンチュリ管にある入り口部を介して、6〜10L/分のガス流速でスラリーへ導入した。オゾン化は、30〜40℃の反応温度にて、9時間にわたって実施した。
【0090】
別の選択肢として、実施例1からのカーボンブラックの分量(300〜600g)を、水(4〜7L)と混合し、この混合物を、ローター−ステーターにより、8000〜10000rpmにて3〜5分間ホモジナイズした。得られたスラリーを、オゾン反応器アセンブリーのタンクに添加し、ここで、タンクのpHは、9.0に維持した。再循環ポンプを70〜90L/分の速度で運転して、スラリーを反応器全体に循環させた。オゾンガス(2〜5重量%)を、ベンチュリ管にある入り口部を介して、6〜10L/分のガス流速でスラリーへ導入した。オゾン化は、30〜40℃の反応温度にて、7〜9時間にわたって実施した。
【0091】
実施例3:4−アミノ安息香酸による修飾
この実施例では、4−アミノ安息香酸(pABA)による実施例1のカーボンブラックサンプルA〜Fの修飾について記載する。この修飾は原料カーボンブラックに対して実施したが、同じ処理を、実施例2の酸化カーボンブラックに対して実施してもよい。
【0092】
実施例1からのカーボンブラックの分量(500g)、pABA(50〜75g)、および水(1〜2L)を含む混合物を、Processall反応器へ添加した。温度を55℃まで上げ、亜硝酸ナトリウム(20%、150〜220g)を、20分間かけてこの混合へ添加した。反応は、65℃にて1〜2時間実施した。
【0093】
実施例4:EBPによる修飾
この実施例では、2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ビスホスホン酸(EBP)による実施例1のカーボンブラックサンプルA〜Fの修飾について記載する。実施例1からのカーボンブラックの分量(500g)、EBP(50〜75g)、および水(1〜2L)を含む混合物を、Processall反応器へ添加した。温度を55℃まで上げ、亜硝酸ナトリウム(20%、150〜220g)を、20分間かけてこの混合へ添加した。反応は、65℃にて1〜2時間実施した。
【0094】
実施例5:分散体の作製
この実施例では、実施例2〜4の酸化/処理カーボンブラック材料を用いた分散体の作製について記載する。Pall Microza(登録商標)限外ろ過膜(SLP−1053)を用いて、15%の分散体固形分にて、150uS/cm未満の透過水導電率または1000uS/cm未満の濃縮水導電率までダイアフィルトレーションを実施した(G−O−SおよびG−O−Uサンプルの場合、ダイアフィルトレーション前に、得られた分散体に対して、分散体をマグネティックまたはオーバーヘッドスターラーで撹拌しながら少なくとも75℃まで2時間加熱する熱処理を施した)。次に、サンプルを5%固形分まで希釈し、Carr(登録商標)Powerfuge(登録商標)により、300または600mL/分の流速、13276RPMにて遠心分離を行った。サンプルを、Pall Microza(登録商標)限外ろ過膜(SLP−1053)を用いて固形分16%に再濃縮し、冷却管を取り付けた容器中、マグネティックスターラーで撹拌しながら、Misonix(登録商標)Labプローブソニケーターで超音波処理して、D50目標粒子サイズ140nmとした(比較のために、オゾン酸化カーボンブラックサンプルの第二のセットには、この超音波工程を施さなかった)。殺生物剤を添加し(0.2重量/重量% Proxel(登録商標))、0.3または0.5μmのPallデプスフィルターに通した。水を加えることで、サンプルを固形分15%に調節した。
【0095】
実施例2のオゾン酸化カーボンブラックサンプルから作製した分散体の特性を以下の表5に挙げる。「O」は、酸化処理を示し、「S」は、超音波処理分散体を示し、「U」は、超音波未処理分散体を示し、LPC=粗大粒子含有量である。
【表5】
【0096】
実施例3のpABA処理カーボンブラックサンプルを用いて作製した分散体の特性を以下の表6に挙げる。
【表6】
【0097】
実施例6:沈澱率
分散体の沈澱率は、ラフグラビティセディメンテーション手順(Rough Gravity Sedimentation procedure)によって得た。
・分散体を水で希釈して固形分3%とした、
・固形分3%の分散体の0.100mLを、メスフラスコで100mLに希釈した、
・この希釈分散体の吸光度を、UV−可視光分光光度計を用いて550nmで測定した(Abs
1)、
・固形分3%の分散体の7mLを、Beckman超遠心分離チューブに充填した、
・チューブをシールし、Beckman遠心分離機により、20700RPMで10分間(立ち上がり時間(ramp-up time)を含む)の遠心分離に掛けた、
・サンプルチューブからすべての上澄をバイアルへ回収した、
・回収した上澄の0.100mLを、メスフラスコで100mLに希釈した、そして
・この希釈分散体の吸光度を、UV−可視光分光光度計を用いて550nmの波長で測定する(Abs
2)。
【0098】
沈澱率は、以下の式に従い、Abs
1およびAbs
2の値から決定した。
沈澱%=100×((Abs
1−Abs
2)/Abs
1)
【0099】
実施例5の特定の分散体の沈澱率を、以下の表7に挙げる。
【表7】
【0100】
実施例7:インクジェットインク製剤
インクジェットインク製剤を、実施例5の分散体から作製し、その成分の比率(pph単位)を、以下の表8および9に挙げる。
【表8】
【表9】
【0101】
実施例8:光学密度
実施例7のインクジェット製剤AおよびBを、Xerox 4200およびHPMP紙に印刷した。製剤Aの印刷には、Epson C88+インクジェットプリンターを用い、製剤Bの印刷には、Canon iP 4000インクジェットプリンターを用いた。得られた光学密度値と共に以下の表10に挙げるように、ベストおよびノーマルモードで印刷を行った。「A」は、製剤Aを示し、「B」は、製剤Bを示す。
【表10】
【0102】
「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」の用語の使用は、本明細書にて特に断りのない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数および複数の両方を意味するものとして解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」の用語は、特に断りのない限り、非制限の用語として解釈されるべきである(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書にて特に断りのない限り、その範囲内に含まれる各個別の値を独立して言及する簡潔な方法として用いることを単に意図するものであり、各個別の値は、それが独立して本明細書にて列挙されているかのごとく、本明細書に組み込まれる。本明細書で述べる方法はすべて、本明細書にて特に断りのない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、適切ないかなる順序で実施されてもよい。本明細書で提供されるあらゆる実施例または例示的言語(exemplary language)(例:「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図するものであり、請求されていない限りにおいて、本発明の範囲に制限を与えるものではない。本明細書におけるいかなる言語も、請求されないいかなる要素をも本発明の実践に不可欠であると示すとして解釈されてはならない。
【国際調査報告】