(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527911(P2015-527911A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】鋸、鋸刃、および連結機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/14 20060101AFI20150828BHJP
B23D 57/00 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
A61B17/14
B23D57/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-521706(P2015-521706)
(86)(22)【出願日】2013年7月9日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】US2013049632
(87)【国際公開番号】WO2014011577
(87)【国際公開日】20140116
(31)【優先権主張番号】61/670,914
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/692,869
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】513164565
【氏名又は名称】シンセス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Synthes GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】モーティエン・アザゲン
(72)【発明者】
【氏名】エルゾーク・ダニエル
【テーマコード(参考)】
3C040
4C160
【Fターム(参考)】
3C040LL00
4C160LL01
(57)【要約】
本開示は、モータ駆動装置110と、第1の刃220の表面によって画定される平面に垂直な軸線を中心に振動するように構成された第1の刃220と、第1の刃220とは反対方向に、前記平面に垂直な軸線を中心に振動するように構成された第2の刃240とを備え、刃の振動の速度を低減するために、モータ駆動装置110と、第1の刃220および第2の刃240との間に、歯車装置120、140が設けられている、動力鋸100に関する。また、鋸刃、刃を鋸に連結するための連結機構、および関連する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸であって、
駆動装置と、
第1の刃であって、前記刃の表面によって画定された平面に対して垂直な軸線を中心に振動するように構成された、第1の刃と、
前記第1の刃とは反対方向に、前記平面に対して垂直な軸線を中心に振動するように構成された第2の刃と、
前記駆動装置と前記第1の刃および前記第2の刃との間に配置され、前記駆動装置から前記刃に伝達される速度を低減するように構成された歯車装置とを備える、鋸。
【請求項2】
前記駆動装置に回転可能に連結された偏心駆動シャフトをさらに備え、前記偏心駆動シャフトが、前記第1の刃および前記第2の刃を振動させるように作用する、請求項1に記載の鋸。
【請求項3】
前記偏心駆動シャフトが、前記第1の刃および前記第2の刃の各々の前記平面に垂直である、請求項2に記載の鋸。
【請求項4】
前記歯車装置が、遊星歯車変速装置、または90度の歯車変速装置を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋸。
【請求項5】
前記駆動装置が前記平面とほぼ平行になるように、前記歯車装置が、90度の歯車変速装置を含む、請求項4に記載の鋸。
【請求項6】
前記歯車装置が、約1:1.5の歯車比を提供する、請求項4または5に記載の鋸。
【請求項7】
前記歯車装置が、前記90度の歯車変速装置を含み、前記90度の歯車変速装置が、駆動装置に結合されるように構成された第1の傘歯車と、前記偏心駆動シャフトに結合された第2の傘歯車とを含み、前記第1の傘歯車の歯が、前記第2の傘歯車よりも少ない、請求項5に記載の鋸。
【請求項8】
前記90度の歯車変速装置が、1:1.3846の歯車比を提供する、請求項6に記載の鋸。
【請求項9】
前記歯車装置が、前記駆動装置と前記90度の歯車変速装置との間に配置された前記遊星歯車変速装置をさらに備える、請求項5〜8のいずれか1項に記載の鋸。
【請求項10】
前記遊星歯車変速装置が、1:3.9474の歯車比を規定し、これによって、前記駆動装置から前記第1の刃および前記第2の刃への方向に沿った速度の低減を規定する、請求項9に記載の鋸。
【請求項11】
前記第1の刃および前記第2の刃が、同一の軸線を中心に振動する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の鋸。
【請求項12】
前記第1の刃および前記第2の刃が、前記鋸に取り外し可能に取り付けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の鋸。
【請求項13】
鋸刃であって、
遠位端にある刃先と、
前記鋸刃の近位端にあって、前記鋸刃を鋸に連結するように構成された取付部と、
前記鋸刃から延びる突起であって、前記突起が前記鋸刃の表面から離れる方向に延びた位置に、弾性的に付勢された、突起とを備える、鋸刃。
【請求項14】
鋸刃を鋸に連結する連結機構であって、
受け面および隆起部を画定する装着部と、
開口部を画定する刃とを備え、
前記刃の表面が、摺動して前記受け面と係合でき、前記隆起部が、前記刃の平面において、前記刃の前記開口部内に受けられる、連結機構。
【請求項15】
前記第1の刃および前記第2の刃が、請求項13に記載の刃を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の鋸。
【請求項16】
請求項14に記載の連結機構をさらに備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の鋸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年7月12日に出願された米国特許仮出願第61/670914号、および2012年8月24日に出願された米国特許仮出願第61/692869号の利益を主張するものであり、各出願のすべての開示が、あらゆる目的のための参照として、本明細書に援用されている。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、鋸刃、鋸刃を鋸に連結するための連結機構、鋸、切断方法、および鋸刃を鋸から取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動力鋸が、外科手術、特に骨切り術において、しばしば使用される。切断術中は、切断の精度を向上させ、施術にかかる時間を短縮するために、鋸の刃によって、骨に高トルクが加えられることが望ましい。また、切断効率は、鋸刃の振動周波数の影響を受ける場合があり、鋸の周波数が、骨の振動周波数と類似していると、切断性能はゼロになる。米国特許第5,846,244号明細書に、振動を相殺する鋸が開示されているが、これは、鋸の機械的振動や、回転運動および直線運動を低減するために、1枚の刃から発生した運動量が、その刃に対応する切刃から発生した運動量で相殺されるものである。
【0004】
外科手術用の鋸の刃は、無菌環境で使用されることが多い。鋸全体を滅菌する経費や時間を省いて、鋸を再使用できるように、使い捨ての刃や、鋸本体とは別に処理して再使用できる刃を提供できれば、有用である。しかし、切断術中に刃が緩むという、非常に好ましくない結果とならないように、使用中はすべての刃がハンドピースにしっかりと固定されていることが重要である。したがって、鋸から容易に取り外して処理でき、同時に、使用中にしっかりと鋸に連結できる、独立した刃が提供されることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、高トルクを使用して切断でき、切断対象物が鋸と共振するのを防止するように改良された鋸、および鋸本体から独立しているが、鋸本体にしっかりと連結できる刃を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様において、遠位端に刃先を有する鋸刃が提供される。この鋸刃は、刃の近位端で刃を鋸に連結するように構成された取付部と、刃から延びる突起であって、刃の表面から離れる方向に延びた位置に弾性的に付勢される突起とを有することができる。鋸刃は、骨を切断するように構成され得る。取付部および突起は、刃が鋸に取り外し可能に連結されるように、相乗的に作用することができる。突起は、刃の近位端の側に配置され得る。突起は、刃と一体化され得る。あるいは、突起は、刃に固定された、別の構成部品であってもよい。一実施形態において、取付部は、スパナ形状の頭部を備えている。取付部は、互いに対してほぼ平行な、一対のアームも備えることができる。スパナ形状の頭部、および一対のアームは、刃の平面に対し、約45〜約75度の角度に沿って延びる内面を画定することができる。例示的な実施形態において、この角度は約60度とすることができる。取付部がこのように構成されると、刃の取付部は、相補的に角度を付けられた表面に連結され、この表面と噛み合う。
【0007】
本開示の第2の態様において、鋸刃を鋸に連結するための、連結機構が提供される。連結機構には、装着部材、例えば、受け面および隆起部を画定する装着部が含まれ得る。刃は、刃を貫通して延びる開口部を画定することができる。刃は、摺動して受け面と係合できる表面を画定し得る。隆起部は、刃の開口部によって受けられ得る。開口部と隆起部との係合によって、望ましくない、鋸に対して相対的な、軸線方向の動き、すなわち、刃の長手方向の動きを防止することができる。このようにして、刃は、部品を追加することなしに、装着部の隆起部にしっかりと連結されるように構成される。一実施形態において、刃は、開口部を画定する内面を画定することができる。さらに、隆起部は、外面を画定することができる。開口部の内面、および隆起部の外面は、刃と、装着部の隆起部とが噛み合うように、相補的に角度が付けられ得る。この噛み合いによって、相対的に軸線方向、すなわち長手方向の刃の動きを防止でき、この動きによって複数の刃の表面同士の間に振動が生じた場合でも(例えば、2枚の刃の使用時に)、刃を鋸と摺接した状態にする。一実施形態において、開口部の内面は、刃の平面に対して、45〜75度の角度で延び得る。刃の平面に対する、開口部の内面の角度は、約60度である。上述のように、刃は、開口部を少なくとも部分的に画定する、2本の互いにほぼ平行なアームを備え得る。アームのこの構成によって、刃が鋸と容易に摺接することが可能になる。刃は、刃が鋸の装着部から外れるのを防止するために、装着部の係止面内に延びる、係止用の突起も備え得る。係止用の突起は、刃の平面から離れる方向に延びている位置に、弾性的に付勢され得る。結果として、係止用の突起は、係止面内に延びる位置に滑り込むことができる。このように、刃が摺動して受け面と係合すると、装着部にしっかりと固定され得る。本開示の第2の態様による刃は、本開示の第1の態様による鋸刃であり得る。鋸は、モータ駆動鋸、空気圧駆動鋸、または手動で駆動する鋸であってもよい。
【0008】
本開示の第3の態様において、駆動装置と、刃の表面で画定された平面に垂直な軸線を中心に振動するように構成された、第1の刃を備えた鋸とが提供される。この鋸は、第1の刃とは反対方向に、前記の平面に垂直な軸線を中心に振動するように構成された、第2の刃を備えることができる。これらの軸線は、同一であってもよいし、または、各軸線を異なるものとすることもできる。歯車装置が、駆動装置と、第1の刃および第2の刃との間に配置されて、各軸線を中心とする刃の振動の速度を低減するように構成される。この複数の軸線は、類似していてもよい。このようにして、鋸は、駆動装置から刃に伝達されるトルクを大きくするように構成される。刃において増加したトルク出力は、切断を行うよう作用し、その間、複数の刃が互いに反対方向に振動して逆トルクを低減し、切断対象物が鋸と共振するのを防止することができる。鋸は、駆動装置に回転可能に連結された偏心駆動シャフトをさらに備えることができ、偏心駆動シャフトは、第1の刃および第2の刃を、振動させるように作用する。偏心駆動シャフトは、各刃の平面に対して垂直に配置され得る。偏心駆動シャフトのこの構成によって、鋸の対称設計が可能になる。歯車装置は、例えば、90度の歯車変速装置、または遊星歯車等の、少なくとも1つの歯車を含み得る。90度歯車によって、駆動装置を刃の平面と平行に配置することが可能になる。90度の歯車変速装置は、1:1.5の歯車比を提供することができる。歯車の具体的な種類や数に関わらず、刃の振動の速度は、7000〜10000rpm、または8000〜10000rpmとなり得る。例示的な一実施形態において、刃の振動の速度は、約7000rpmである。鋸は、例えば2000〜3000rpm等の低い速度でも機能し得るが、外科医の間では、鋸を用いて骨にかなりの圧力を加える傾向がある。鋸の速度が低くなると、鋸の性能が、この傾向によって制限される。振動速度7000rpmで鋸を作動させることによって、この傾向が補償される。代替となる一実施形態において、歯車装置は、遊星歯車または傘歯車を含み得る。遊星歯車または傘歯車は、駆動装置から刃へ、低速度で高トルクをもたらすために、効果的に作用する。この実施形態において、90度の歯車変速装置は、1:1.3846の歯車比を提供し得る。歯車装置は、1:3.9474の歯車比を提供でき、刃の振動の速度は、2000〜3000rpmであってもよい。歯車装置は、より低速での刃の作動を可能にすることによって、発熱性を低くする。駆動装置は、モータ駆動とすることができる。さらに、鋸は、例えば、駆動装置を少なくとも部分的に支持するように構成された、駆動部を備えることができる。
【0009】
上述したように、本開示の第3の態様によれば、第1の刃および第2の刃は同一の軸線を中心に振動する。さらに、第1の刃および第2の刃は、鋸に取り外し可能に取り付けられ得る。鋸は、骨を切断するように設計されている。また、刃は、本開示の第1の態様の刃を含む、第1の刃および第2の刃を含むことができる。鋸は、本開示の第2の態様による連結機構をさらに備え得る。
【0010】
本開示の第4の態様において、第1の刃および第2の刃を、互いに対して反対の方向に振動させるために、駆動装置から第1の刃および第2の刃に、トルクを伝達するステップを含む、切断方法が提供される。この方法は、第1の刃および第2の刃の振動の速度を低減するために、歯車装置を経由して、駆動装置の運動を伝達するステップを含む。歯車装置は、駆動装置から刃へのトルク出力を増加させて、刃の切断性能を向上させる。第1の刃および第2の刃を反対方向に振動させることによって、切断対象物が、刃と共振するのを防止することができる。この方法は、駆動装置から、第1の刃および第2の刃を振動させる偏心駆動シャフトに、トルクを伝達するステップを含み得る。この方法は、駆動装置と、第1の刃および第2の刃との間で、90度の歯車変速装置を経由して、運動を伝達するステップをさらに含み得る。この方法は、駆動装置と刃との間に配置された遊星歯車を経由して、運動を伝達するステップも含み得る。駆動装置は、モータ駆動、空気圧駆動、または手動による駆動としてもよい。この方法は、骨を切断するステップを含むことができる。本開示の第4の態様による方法は、本開示の第1の態様による刃と、本開示の第2の態様による連結機構と、本開示の第3の態様による鋸とを含むことができる。
【0011】
本開示の第5の態様において、鋸から鋸刃を取り外す方法が提供される。この方法は、弾性的に付勢された刃の係止部材を、鋸の装着部材と係合している第1の位置から、装着部材と係合しない第2の位置まで移動させるステップと、刃を装着部材から軸線方向に取り外すステップとを含む。係止部材が係止位置から移動した状態で、装着部材との係合部分から刃を滑らせて引き抜くことによって、刃を鋸から容易に取り外すことができる。本開示の第5の態様による方法は、本開示の第1の態様による刃、本開示の第2の態様による連結機構、および/または本開示の第3の態様による鋸を含むことができる。
【0012】
本開示の第6の態様は、骨を切断する手順における、上述のような鋸の使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記の要約、並びに、本願の装置および方法の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことにより、より良く理解されよう。本願の装置および方法を説明する目的で、図面に例示的な実施形態が示されている。しかしながら、本願は、示された厳密な構成と機器に限定されないことを理解されたい。図面は以下の通りである。
【
図1A】本開示の一実施形態による、動力鋸の破断斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示した動力鋸と同様であるが、代替となる一実施形態によって構成された、動力鋸の側断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、鋸刃の近位端の斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、装着部材の斜視図である。
【
図4A】本開示の一実施形態による連結機構の破断斜視図であり、
図2に示した刃が、
図3に示した連結機構と係合している状態を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、連結機構の一部の断面斜視図である。
【
図6】
図2に示した、鋸刃の近位端の底面図である。
【
図7】
図6のB−Bの線に沿って切断した、鋸刃の近位端の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aを参照すると、動力鋸100は、モータ駆動装置110を支持するように構成された、駆動部を有する。モータ駆動装置110は、歯車装置を介して、偏心シャフト140に作動可能に連結されている。動力鋸100は、
図1Aに示すように、例えば、駆動部に、モータ駆動装置110を含むことができる。または、駆動部は、レセプタクル111(
図1B参照)を画定することができる。レセプタクル111は、モータ駆動装置等の駆動装置を、例えば取り外し可能に、受けるように構成される。動力鋸100は、ハンドル部すなわちハンドピース102と、ハンドル部102から、長手方向Lに沿って離れた位置にある切断部104とを備えることができる。動力鋸100は、モータ駆動装置110および歯車装置の少なくとも一部を保持するための、ハウジング107を備えることができる。ハウジング107は、少なくとも部分的に、レセプタクル111を画定する。
【0015】
動力鋸100、または切断部104は、第1の刃220と、第2の刃240とを含むことができる。第1の刃220および第2の刃240は、近位端252および352と、遠位端254および354とをそれぞれ有する。近位端252および352は、それぞれ鋸に取り付けられるように構成されており(以下で詳述)、遠位端254および354は、刃が動力鋸100に取り付けられたときの長手方向Lに沿って、近位端252および352から離れた位置にある。各刃の近位端は、各刃の取付部を画定することができる。第1の刃220は、第1の表面すなわち上面256、および第2の表面すなわち下面258を有する。第2の表面258は、短手方向Tに沿って、第1の表面256から離れた位置にある。短手方向Tは、動力鋸100の長手方向Lに対して、ほぼ垂直とすることができる。刃220、240は、長手方向Lに沿って延びることができ、短手方向の成分を有することができる。さらに、第2の刃240は、第1の表面すなわち上面356、および第2の表面すなわち下面358を有する。第2の表面358は、短手方向Tに沿って、第1の表面356から離れた位置にある。各刃の表面は、刃220、240の、近位端252、352と、遠位端254、354との間で延びることができ、長手方向Lに沿って延びる各平面を画定することができる。刃220、240は、遠位端254、354に配置された切断部221、241をそれぞれ備え、切断部221、241は、刃が動力鋸100に連結されたときの長手方向Lに沿って、刃取付具320、340から遠位に位置する。第1の刃220および第2の刃240は、物体を切断するために、同様の軸線、または異なる軸線を中心に振動するように、動力鋸100に取り付けられる構成である。例えば、第1の刃220および第2の刃240が振動方向Oで振動するように、刃は、各刃の各表面のいずれかによって画定される平面に対して、垂直な軸線を中心に振動することができる。以下でさらに詳しく説明するように、第1の刃220および第2の刃240は、互いに反対方向に振動する。
【0016】
刃220、240は、刃取付具320、340によって、動力鋸100に取り外し可能に連結することができる。刃取付具320、340は、刃220、240を、長手方向Lに沿って延びる、互いに平行な平面に保持するように構成されている。刃取付具320は、第1の組のアーム320aおよび320bを有し、刃取付具340は、第2の組のアーム340aおよび340b(
図1Cおよび
図4B)を有し、これらは、偏心シャフト140(
図1C参照)を囲んでいる。偏心シャフト140は、刃220、240、および刃取付具320、340に対して垂直な、短手方向Tに沿って配置されている。刃220、240の振動速度を低減するために、駆動部と、第1の刃220および第2の刃240との間に、歯車装置が設けられている。歯車装置は、遊星歯車120および90度の歯車変速装置130のいずれか1つ、またはその両方を含むことができる。
【0017】
使用時には、モータ駆動装置110から、遊星歯車120および90度の歯車変速装置130を経由して、トルクが伝達され、偏心シャフト140を、シャフトの中心軸線140aを中心に回転させる。偏心シャフト140が回転すると、モータ駆動装置110の回転運動が、刃取付具320および340を経由して、刃220、240の振動に変換される。刃取付具320および340は、シャフトの中心軸線140aから離れた位置にある中心軸線329および339をそれぞれ画定し、中心軸線329および339は、シャフトの中心軸線140aが、中心軸線329と中心軸線339との間に配置されるように、相互に対して反対側に配置され得る。偏心シャフト140は、回転時に、連結機構の第1の組のアーム320aおよび320bと、第2の組のアーム340aおよび340bを反対方向に動かし、これによって、複数の刃を、互いに対して反対のO方向に振動させる。偏心シャフト140は、中心部150、第1のオフセット部152、および第2のオフセット部154を有する。中心部150は、シャフトの中心軸線140aに沿って延びている。第1のオフセット部152、および第2のオフセット部154は、中心軸線339、および329のそれぞれと同一平面内にある、それぞれの中心からのオフセット軸線(図示せず)に沿って延びている。第1の組のアーム320aおよび320bは、オフセット部154に取り付けられており、第2の組のアーム340aおよび340bは、オフセット部152に取り付けられている。刃220、240は、同一の軸線、例えば、短手方向Tに沿って延びる、シャフトの中心軸線140aを中心に振動するように、鋸に取り付けられる。例えば、シャフトの中心軸線140aは、短手方向Tに沿って延びることができ、第1の刃の表面256および258にほぼ垂直、かつ/または第2の刃の表面356および358にほぼ垂直である。刃220、240は、上述のように、駆動装置から刃220および240にトルクが伝達されるように、刃取付具320、340にしっかりと連結される。
【0018】
遊星歯車120は、刃に伝達される駆動速度の低減を達成することができ、逆に、トルクを増加させることができる。遊星歯車による、モータ駆動装置110から刃220、240の方向への減速比は、1:3.9474であるが、遊星歯車による減速は、例えば、1:1.1〜1:10の間で、所望されるように構成できることが理解されるべきである。90度の歯車変速装置130は、第1の歯車すなわち入力歯車131と、第2の歯車すなわち出力歯車133とを含む。第1の歯車131は、傘歯車とすることができ、第2の歯車133は、第1の歯車131と噛み合う傘歯車とすることができる。遊星歯車120は、駆動部(すなわちモータ駆動装置110)と、90度の歯車変速装置130との間に配置することができる。90度の歯車変速装置は、遊星歯車120と、偏心シャフト140との間に配置することができる。
【0019】
作動中は、第1の歯車131が、第1の回転軸線331(
図1A)周りを回転し、第2の歯車133が、第1の回転軸線331に対して、例えば、ほぼ90度に角度オフセットされた、第2の回転軸線333を中心に回転する。第1の歯車131は、モータ駆動装置110に連結される。第1の歯車131は、モータ駆動装置110によって、第1の回転軸線に沿って回転駆動するように構成され、第2の歯車133は、第2の回転軸線と平行であるか、または一致する、対応する回転軸線を中心にシャフトを回転駆動させるために、偏心シャフト140に連結されている。したがって、第1の歯車131は、第2の歯車133と、モータ駆動装置110との間に配置され、第2の歯車133は、偏心シャフト140と、第1の歯車131との間に配置される。第2の歯車133が、偏心シャフト140を回転駆動するように構成されることによって、刃220、240の往復振動がもたらされる。第1の歯車131は、第2の歯車133よりも小さくしてもよく、したがって、歯が第2の歯車133よりも少なくてもよい。したがって、第2の歯車133は、第1の歯車131よりも低い速度で回転し、比例して、第1の歯車131よりも大きいトルクで回転する。一実施形態によれば、歯車比は、例えば、1:1.1〜1:2と、所望のようにすることができる。例示された実施形態によれば、歯車比は1:1.3846とすることができる。90度の歯車変速装置の歯車減速は、歯車比と等しい、対応する減速をもたらし、トルク出力については、歯車比と等しい、対応する増加をもたらす。遊星歯車の減速比が、1:3.9474で、90度の歯車変速装置の減速比が1:1.3846であるとき、動力鋸100は、モータ駆動装置110から、偏心シャフト140まで、1:5.4656の減速比を生じさせる。遊星歯車が例示されているが、その場所で傘歯車を使用することも可能であろう。
【0020】
遊星歯車120は、刃220、240に、低速で高トルクをもたらすように作用する。このようにして、低速であるが高トルクで、刃を作動させることができる。刃は、速度ではなくトルクで切断するので、骨へ伝達される熱が小さくなる。さらに、切断は、反対方向に、同一の軸線、例えばシャフトの中心軸線140aを中心に振動している2枚の刃で行われるので、結果として生じる骨の振動や、ハンドピース102に伝わる逆トルクが、発生してもわずかなものとなる。そのため、本機器の取り扱いがより容易になり、その結果、より正確な切断が可能になる。鋸刃の進入速度は、2000〜3000rpmである。
【0021】
鋸の、代替となる一実施形態においては、90度の歯車変速装置130と、刃220、240との間に直接駆動をもたらすために、遊星歯車または傘歯車を省略してもよい。例えば、
図1Bを参照すると、動力鋸100は、駆動部を設けることができる、レセプタクル111を画定している。レセプタクル111は、駆動部において、モータ駆動装置等の駆動装置を受けるように構成され、駆動装置は、所望の速度で回転し、対応するトルク出力を生じるように作動可能である。動力鋸100は、モータ駆動装置の速度およびトルク出力が、90度の歯車変速装置130の、第1の歯車131に伝達されるように、
図1Aに示す遊星歯車を欠いていてもよい。したがって、第1の歯車131は、モータ駆動装置からの出力とほぼ同じトルクで、モータ駆動装置とほぼ同じ速度で回転駆動することができる。上述のように、第1の歯車131は、第2の歯車133よりも小さくしてもよく、したがって、歯数は、第2の歯車133よりも少なくてもよい。したがって、第2の歯車133は、第1の歯車131よりも低い速度で回転し、比例して、第1の歯車131よりも大きいトルクで回転する。一実施形態によれば、歯車比は、例えば、約1:1.3846、約1:1.5、または所望の任意適当な代替となる歯車比を含む、約1:1.1以上約1:5以下の範囲で、所望の比率とすることができる。90度の歯車変速装置130の歯車減速は、歯車比と等しい、対応する減速をもたらし、トルク出力については、歯車比と等しい、対応する増加をもたらす。さらに、
図1Bに例示された実施形態によれば、90度の歯車変速装置130の歯車比で歯車比を規定することができ、それによって、モータ駆動装置と刃との間の、速度低減およびトルク増加を規定することができる。
【0022】
刃220、240の振動の出力速度は、8000rpm〜10000rpmを含む、7000〜10000rpmとすることができる。動力鋸100の一実施形態によれば、刃の振動の速度は、7000rpmとすることができる。
【0023】
刃220、240、および対応する刃取付具320、340は、対称とし得る。したがって、2枚の同等の構成の刃を有し得る、動力鋸100が提供される。この刃は、必要に応じて、異なる構成を有し得ることが、理解されるべきである。第1の刃220および第2の刃240の構成を例示する目的で、刃220についてのみ、以下でさらに詳細に説明する。第1の刃220に関して、本明細書で説明される特徴は、第2の刃240にも適用できることが理解されるべきである。さらに、刃取付具320に関して、本明細書で説明される特徴は、刃取付具340にも適用可能である。
【0024】
図2、3、および6を参照すると、刃220の近位端252は、スパナ形状の頭部222である。スパナ形状の頭部222は、長手方向Lに沿って延びる開口部223を画定している。例えば、スパナ形状の頭部222は、互いから離れた位置にあり、互いに対してほぼ平行に延びる2本のアーム223aおよび223bを有する。アーム223aおよび223bは、開口部223を少なくとも部分的に画定し、開口部223を囲んでいる。刃220の近位端252は、刃220の表面258(または256)から、短手方向Tに沿って延びる突起227も含んでいる。突起227は、刃220から切り出され、弾性的に付勢されて、刃220の表面258から延びる位置に入るように、短手方向Tに沿って下向きに曲げられたラッチとすることができる。
【0025】
図3を参照すると、刃取付具320は、装着部材321、例えば、装着部321を含む。装着部321は、受け面322、および隆起部323を有する。隆起部は、例えば、受け面322に対して、短手方向Tに沿って隆起している部分である。隆起部323は、
図2に示す刃220の、開口部223の形状と合致するように構成される。したがって、刃220は、
図4に示すように、アーム223aおよび223bが、装着部321(
図4A)の隆起部323を囲むように、摺動して受け面322と係合することができる。
【0026】
図2、6、および7を参照すると、刃240は、開口部223を少なくとも部分的に画定する、内面225を画定することができる。内面225は、刃の上面256から刃の下面258まで延びており、離れた位置にあるアーム223aおよび223bに沿って延び、U字形を画定している。刃220のアーム223a、223bの内面225は、下面258、すなわち刃220の平面に対して、角度付けされている。一実施形態において、刃の平面に対する内面225の角度は、約60度である。
図3に見られるように、装着部321も、隆起部323から、受け面322まで延びる外面325を画定することができる。隆起部323の外面325は、隆起部323に対して角度付けされており、刃220の内面225に対して相補的な角度を画定している。したがって、
図4A〜
図4Bに示すように、刃の開口部223が、摺動して隆起部323と密接に係合するときに、隆起部323の外面325と、アーム223aおよび223bの内面225とが噛み合う。結果として、刃の表面に対する動きが効果的に防止され、2枚の刃の表面同士の間の振動が最小限となる。
【0027】
図2および
図3を参照すると、受け面322は、長手方向Lに沿って隆起部323の遠位側に配置された、穴327を有する。穴327は、突起227の、少なくとも一部を受けるように構成されている。刃220が
図4A〜
図4Bに示す位置に滑り込むと、穴327は、刃220の突起227が係止する、係止面として作用することができる。この位置からは、刃220は、装着部321との係合から離脱して、軸線方向、例えば、長手方向Lに沿う方向に、動くことはできない。係止用の突起227は、係止面の方に向かって、弾性的に付勢される。しかしながら、装着部321の反対側から受け面322まで通じている開口部(例えば、
図5の開口部349を参照)によって、穴327を通って係止用の突起227にアクセス可能である。結果として、係止用の突起227を、
図4Aおよび
図4Bに示すような、穴327内に弾性的に付勢された第1の位置から、突起227が係止面に係止されない、第2の位置へと解放することが可能である。突起が第2の位置にあるときは、刃220が、装着部321に対して軸線方向に動くのを阻止されることがなくなり、係合から外れることができる。したがって、刃220は、装着部材321との係合から、そして、動力鋸100から、容易に取り外すことができる。
図5に示すように、第2の刃240は、刃取付具340の穴347と係合できる、係止用の突起247を有することができる。
【0028】
本開示は、単に例として上述され、その細部の修正は、本開示の範囲内で実施できることが、当然理解されよう。
【0029】
〔実施の態様〕
(1) 鋸であって、
駆動装置と、
第1の刃であって、前記刃の表面によって画定された平面に対して垂直な軸線を中心に振動するように構成された、第1の刃と、
前記第1の刃とは反対方向に、前記平面に対して垂直な軸線を中心に振動するように構成された第2の刃と、
前記駆動装置と前記第1の刃および前記第2の刃との間に配置され、前記駆動装置から前記刃に伝達される速度を低減するように構成された歯車装置とを備える、鋸。
(2) 前記駆動装置に回転可能に連結された偏心駆動シャフトをさらに備え、前記偏心駆動シャフトが、前記第1の刃および前記第2の刃を振動させるように作用する、実施態様1に記載の鋸。
(3) 前記偏心駆動シャフトが、前記第1の刃および前記第2の刃の各々の前記平面に垂直である、実施態様2に記載の鋸。
(4) 前記歯車装置が、遊星歯車変速装置、または90度の歯車変速装置を含む、実施態様1〜3のいずれかに記載の鋸。
(5) 前記駆動装置が前記平面とほぼ平行になるように、前記歯車装置が、90度の歯車変速装置を含む、実施態様4に記載の鋸。
【0030】
(6) 前記歯車装置が、約1:1.5の歯車比を提供する、実施態様4または5に記載の鋸。
(7) 前記歯車装置が、前記90度の歯車変速装置を含み、前記90度の歯車変速装置が、駆動装置に結合されるように構成された第1の傘歯車と、前記偏心駆動シャフトに結合された第2の傘歯車とを含み、前記第1の傘歯車の歯が、前記第2の傘歯車よりも少ない、実施態様5に記載の鋸。
(8) 前記90度の歯車変速装置が、1:1.3846の歯車比を提供する、実施態様6に記載の鋸。
(9) 前記歯車装置が、前記駆動装置と前記90度の歯車変速装置との間に配置された前記遊星歯車変速装置をさらに備える、実施態様5〜8のいずれかに記載の鋸。
(10) 前記遊星歯車変速装置が、1:3.9474の歯車比を規定し、これによって、前記駆動装置から前記第1の刃および前記第2の刃への方向に沿った速度の低減を規定する、実施態様9に記載の鋸。
【0031】
(11) 前記第1の刃および前記第2の刃が、同一の軸線を中心に振動する、実施態様1〜10のいずれかに記載の鋸。
(12) 前記第1の刃および前記第2の刃が、前記鋸に取り外し可能に取り付けられている、実施態様1〜11のいずれかに記載の鋸。
(13) 鋸刃であって、
遠位端にある刃先と、
前記鋸刃の近位端にあって、前記鋸刃を鋸に連結するように構成された取付部と、
前記鋸刃から延びる突起であって、前記突起が前記鋸刃の表面から離れる方向に延びた位置に、弾性的に付勢された、突起とを備える、鋸刃。
(14) 鋸刃を鋸に連結する連結機構であって、
受け面および隆起部を画定する装着部と、
開口部を画定する刃とを備え、
前記刃の表面が、摺動して前記受け面と係合でき、前記隆起部が、前記刃の平面において、前記刃の前記開口部内に受けられる、連結機構。
(15) 前記第1の刃および前記第2の刃が、実施態様13に記載の刃を含む、実施態様1〜12のいずれかに記載の鋸。
【0032】
(16) 実施態様14に記載の連結機構をさらに備える、実施態様1〜12のいずれかに記載の鋸。
【国際調査報告】