(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527957(P2015-527957A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】車両ルーフ
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20150828BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20150828BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 L
B32B17/10
B60J1/00 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-517677(P2015-517677)
(86)(22)【出願日】2013年6月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月13日
(86)【国際出願番号】EP2013062116
(87)【国際公開番号】WO2013189798
(87)【国際公開日】20131227
(31)【優先権主張番号】2012/0412
(32)【優先日】2012年6月19日
(33)【優先権主張国】BE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ルグラン, ドゥニ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, ミシェル
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA20E
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4G061AA20
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4G061BA02
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、可変性の光透過率を有しかつ温度に関して快適性が改善された、合わせガラスサンルーフであって、熱可塑性中間シートによって接合された2枚のガラス板、すなわち外ガラス板および内ガラス板と、2枚のガラス板間で積層品に組み込まれる、光透過率を制御するための懸濁粒子デバイス(SPD)フィルム組み立て品と、位置4に配置された低放射層のシステムとを含む、合わせガラスサンルーフに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変性の光透過率を有しかつ熱的快適性が改善された、積層されたガラス張りの自動車車両ルーフであって、熱可塑性中間層シートによって接合される2枚のガラス板、外ガラス板および内ガラス板と、前記2枚のガラス板間で積層品に組み込まれる、光透過率を調整するためのSPD(懸濁粒子デバイス)フィルムタイプの組み立て品と、前記ガラスユニットの面4に配置された低放射層のシステムとを含む、ルーフ。
【請求項2】
前記低放射層のシステムが、0.3以下、好ましくは0.2以下、特に好ましい方法では、0.1以下の放射率を有する、請求項1に記載のルーフ。
【請求項3】
前記低放射層のシステムが少なくとも1つのドープ酸化スズの層を含む、請求項1または2に記載のルーフ。
【請求項4】
前記酸化スズ層は、フッ素でドープされ、かつ200nm以上の厚さを有する、請求項3に記載のルーフ。
【請求項5】
前記低放射層のシステムが、前記酸化スズ層の下に、シリカまたはシリコンオキシカーバイドをベースとする層を含む、請求項3または4に記載のルーフ。
【請求項6】
前記シリコンオキシカーバイド層の厚さが、可視波長の反射を最小にするようにされている、請求項5に記載のルーフ。
【請求項7】
赤外線を選択的に反射する層のシステムを含み、前記システムは、前記外ガラスと前記SPDフィルムとの間に配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項8】
前記赤外線フィルターが、薄い銀ベースの層と誘電体層との組み立て品からなり、選択性を高める、請求項7に記載のルーフ。
【請求項9】
前記層のシステムが、誘電体層によって互いに分離された少なくとも3つの銀層を含む、請求項8に記載のルーフ。
【請求項10】
前記赤外線を選択的に反射する前記層のシステムが、前記外ガラス板の面2に適用される、請求項7〜9のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項11】
外部の方への可視光の反射が、前記SPDがその透明状態にあるかまたは暗状態にあるかに関わらず、前記入射光の20%以下、好ましくは15%以下であるように、前記構成要素が選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項12】
前記SPDがその暗状態にあるときのエネルギー伝達が10%以下、好ましくは5%以下であるように、前記構成要素が選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項13】
前記透明状態での前記エネルギー伝達が20%以下、好ましくは15%以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項14】
前記暗状態において、前記光透過率が3%以下、好ましくは2%以下、および特に好ましい方法では1%以下であるように、前記構成要素が選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項15】
前記透明状態において、前記光透過率が50%以下、好ましくは40%未満であるように、前記構成要素が選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項16】
前記ガラス板および中間層が、一緒に、少なくとも20%の吸収率を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のルーフ。
【請求項17】
前記SPDがその透明状態にあるか、または暗状態にあるかに関わらず、CIE Labの色座標によって定義された前記反射色が:
−8<a*<3
−7<b*<3
および好ましくは
−7<a*<2
−2<b*<1
の間隔に含まれるように、前記構成要素が選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部はガラスユニットから形成された車両のルーフに関する。より正確には、本発明は、ガラスユニットが領域の大部分を、または領域の全てをも覆うルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスルーフは、次第に、車体の一部である伝統的なルーフの代わりとなってきている。これらのルーフの選択は、製造業者が顧客にこのオプションを提案したことの結果であり、これにより、コンバーチブルの欠点がない状態で、コンバーチブルのように外部へ開いているような状態に車両を見えるようにし、これらのルーフは、伝統的なセダンの快適度を維持する。そうするために、ガラスルーフは、多くの条件を満たす必要がある。まず安全条件を満たすことを勧める。ガラスルーフは、事故発生時の放出抵抗を確立する規定を満たす必要がある。具体的には、規則「R43」として知られている規則を満たす必要がある。乗員放出抵抗は、特に、積層すなわち合わせガラスユニットの使用を必要とする。
【0003】
合わせガラスユニットの存在は、重量を制限する必要性を除去しない。このため、使用される積層ルーフの厚さも、薄く保つ必要がある。実際には、これらのルーフのガラスユニットは、厚さが8mm以下、好ましくは7.5mm以下である。
【0004】
ガラスルーフの選択の目的は、上述の通り、乗員室の明るさを増大することである。この明るさの増大は、乗員の快適性および特に乗員の熱的快適性を保証する他の特性を犠牲にしてまで得られる必要はない。この明るさの増大を動機としたガラスルーフの存在はまた、外部との熱交換を高める。これは、車両が強い太陽放射に曝されるときの温室効果機構によって観察される。しかしながら、ルーフはまた、ルーフが冷たいときに乗員室の温度の維持に貢献する必要がある。
【0005】
高選択性ガラスユニットの使用を含む様々な手段を用いて、熱的条件を制御する。これらの条件は、使用されるガラスの選択(ほとんどの場合ミネラルガラスであるが、有機ガラスの可能性もある)から生じる。これらのガラスユニットに載置される追加的なフィルター、特に赤外線を選択的に反射する層のシステムからなるフィルターがまた、この条件に関係がある。これらの条件に対処する解決法は、従来技術から分かっている。これは、特に、欧州特許第1200256号明細書の場合である。
【0006】
ガラスルーフの選択はまた、追加的な機能性、例えば様々な車両システムを動作させるために必要な発電に貢献する太陽光発電システムの組み込みを高めることができるようにする。そのようなシステムの実装は、多くの文献、特に欧州特許第1171294号明細書の主題である。
【0007】
さらに、時折乗員室の明るさを増すことのみが望ましいとし得る。使用者は、使う瞬間に依存して、あまり明るくないことを好む場合もある、または単に、乗員室が外部から見られないようにする「プライバシー」の側面を維持したい場合もある。
【0008】
使用条件に適合するようにガラスユニットの光透過率を修正できるようにする解決法は、既に開発されてきている。特にエレクトロクロミック手段を含み、ガラスユニットに含有される組成中の着色イオンの状態を修正することによって、変化が得られるガラスユニットなど「電気的に制御された」ガラスユニットと称されるものに関する問題であってもよい。また、ガラスユニットに、SPD(懸濁粒子デバイス:suspended particle devices)と称されるシステムなどのように、電圧の印加次第で整えられたりまたは整えられなかったりする懸濁粒子の層を含む問題があり得る。
【0009】
ガラスルーフの発展は、他の問題を提起し、かつ新規の製品への道を開く。いくつかの機能は、これらのルーフの特殊性のために修正されてもよく、または修正される必要がある。本発明の1つの目的は、それらの性能およびそれらの使いやすさに関して製造業者の要望を満たす役割をより果たす、上述の機能性を有するガラスルーフを利用することである。
【0010】
ガラスルーフの光透過率は体系的に低いが、一方では、「プライバシー」の側面に適し得るものを提供するために、および他方では、可視領域の波長から分離できないエネルギー移動を制限するために、そのようなルーフのほとんどにおいて、これらの透過率は、シート状のガラスおよび中間層、および特定の特性を与える層の選択によって制御される。
【0011】
それゆえ、従来、ガラスルーフの光透過率は50%未満であり、それよりも低いことが多く、例えば入射光の約15〜20%以下である(EN 410に従って測定)。
【0012】
光透過率を変化させることができる制御手段を使用することはまた、これらの従来の手段、すなわち特性を修正する吸収ガラス板および層と組み合わせらることが多い。これらの従来の手段は、ルーフの光エネルギー(opto−energetic)特性を制御するのを助け得るだけでなく、任意選択的に、その反射または透過における色を調整し得る。
【0013】
SPDによって光透過率が修正されるルーフは、制御信号に対する応答が非常に速いため、特に有利である。これらのSPDによって得られた、2つの「透明」および「暗」状態間での光透過率の変化は、選択されるシステムに依存する。従来のこのタイプの製品では、これら2つの状態間の透過率の変化は、40%以上に達することがあり、暗状態では、透過率は極めて低いとし得る。さらに、これらのシステムの存在はまた、透明状態にあるかまたは暗状態にあるかとは無関係に、エネルギー伝達を非常に低くする。このエネルギー伝達の低下は、特に、これらのシステムの機能要素、すなわち方向付け可能な粒子が、大幅すぎる温度上昇を受けないようにするためにとられる措置に関する。
【0014】
機能性SPDフィルムの使用は、従来技術の文献、特に国際公開第2005/102688号パンフレットの主題であり、これは、一定の運転条件を特定する。
【0015】
選択されるSPDフィルムおよび電気的制御条件はまた、必要があれば、光透過率の変化の程度を設定できるようにする。ルーフの適用例では、本発明によれば、暗状態の透過率は可能な限り低く、特に3%未満、好ましくは2%未満、および特に好ましい方法では1%未満であることが有利である。そのような透過率は、フィルムの厚さが著しく薄くても、市販のSPDフィルムを用いて得ることができる。製造業者の要望を満たすために、対照的に、透明状態の透過率は好ましくはかなりであるが、SPDフィルムのないガラスルーフに関しては、好ましくは、50%未満、およびさらには40%未満、およびほとんどの場合30%未満である。
【0016】
透明状態と暗状態との間のシフトは、SPDフィルムの動作の効果のみによるものであり、ガラス板および色付き中間層の存在は、任意選択的に、光透過率を制御する手段を補うとし得る。必要があれば、これらの組み合わせの効果によって、透明状態の透過率を、例えば15%未満にまで低下させる。しかしながら、前述の通り、シート状のガラスおよび中間層の役割の1つはまた、透過および反射における色を設定することである。
【0017】
光透過率の変化は、SPDフィルムの選択において重要な要因であるが、SPDフィルムはまた、それらが組み込まれるガラスユニットのエネルギー伝達において重要な役割を果たす。暗状態では、エネルギー伝達は、吸収ガラス板または中間層の存在とは無関係に、通常、10%未満であり、有利には5%未満である。暗状態は、通常、限定されるものではないが、停車中の車両の状態であり、それゆえ、エネルギー伝達が非常に低いことが特に望ましい。透明状態では、可視光線は同様にエネルギーを伝達するため、エネルギー伝達は実質的にそれよりも大きい。それにもかかわらず、SPDフィルムは、エネルギーのかなりのシェアを吸収する。有利には、ガラスユニット、SPDフィルム、ガラス板、および赤外線を反射する層を含む要素は、太陽エネルギーの伝達が可能な限り低くなるように、選択される。SPDフィルム単独での太陽エネルギーの伝達は、30%未満、好ましくは25%未満である。完全なガラスユニットの太陽エネルギーの伝達は、有利には20%未満、好ましくは15%未満である。
【0018】
上述の条件を満たす本発明によるルーフはまた、そこからの反射の大きさに関する、およびそれらの反射および透過における色に関する条件を満たす必要がある。
【0019】
これらのルーフは、それらが透明状態にあるかまたは暗状態にあるかに関わらず、審美的理由だけでなく安全性の理由で、可視領域において過度の反射を有してはならない。好ましくは20%未満、有利には15%未満、特に好ましい方法では10%未満である。
【0020】
製造業者はまた、今回は審美的理由のために、反射が比較的無彩色であることを要求する、換言すると、製造業者は、ルーフの観察された色が強調されすぎないことを要求する。特に、紫色に薄く色が付けられることは避ける必要がある。青みがかったニュアンスは、自動車の最も一般的な薄い色合いとブレンドされ得る。
【0021】
暗状態および透明状態の双方における、反射における色のCIE Labの色座標(10°での光源D65)は、好ましくは以下の限界値内にある:
−8<a
*<3、および好ましくは−7<a
*<2
−7<b
*<3、および好ましくは−2<b
*<1。
【0022】
実質的な透明状態において、透過における色も制御する必要がある。暗状態では、透過率は非常に低いため、色は、遥かに感知されにくい。透明状態における透過率は、好ましくは:
−10<a
*<0、および好ましくは−8<a
*<0
−2<b
*<14、および好ましくは−0<b
*<10
である。
【0023】
SPDフィルムの使用は、光透過率を修正する能力に関するもの以外の、いくつかの条件が与えられる。第1に、機能性フィルムを機械的および化学的に保護するだけでなく、熱的に保護することを勧める。
【0024】
SPDフィルムでは、ポリマーマトリクスに組み込まれる方向付け可能な粒子は、温度が過度に上昇することによって、劣化され得る。それほどではないにせよ、フィルムが低すぎる温度、例えば−40℃に曝される場合、フィルムの特性は、不可逆的に修正され得る。外部温度の変化へ曝すことは、本発明に従って想定される位置によって強められる。太陽放射、および特に赤外線は、ルーフの温度を大幅に上昇させ得る。
【0025】
フィルムの劣化を防止するために、特に上記では、SPDフィルムを保護するための赤外線フィルターを提供する。
【0026】
SPDを紫外線から保護することも望ましい。積層品を形成しかつ電池を包み込むために使用される材料は、通常、それら自体がUVスクリーンである製品である。これは、特に、これらのルーフの積層構造を生成するために前述した、ポリビニルブチラール(PVB)、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)のポリマーなどの材料の場合である。そのような化合物が存在することにより、実質的に完全なUVフィルターを形成する。それゆえ、追加的な要素を提供する必要はない。
【0027】
光透過率を制御するために使用したフィルムは、電力を供給される必要がある。必然的に、ガラスユニットの縁部を介して、車両の一般的な電力供給装置に接続される。電気ケーブルの接続部は、通常、透明ではない。ガラスユニットの透明性をさらに限定することを妨げないようにするために、通常、特に不規則な接着接合部のマークをマスキングすることを意図した不透明なエナメル部分を含むガラスユニットの辺縁ゾーンにおいて、これらのケーブルを隠すために注意を要する。
【0028】
ガラスルーフが存在することによって、車両の占有者が感じる熱的快適性の条件が修正される。車両が太陽に曝されるときの熱は、エネルギー伝達を可能な限り低下させるために上述の条件を求めるが、ガラスルーフが存在することによってまた、乗員は、「冷え」とみなされる感覚を経験する可能性があり、この感覚は、外部の温度が快適な室温よりも低いときの、乗員室からの熱損失に起因する。
【0029】
実際には、乗員の快適度を回復するために、製造業者は、実質的に、ガラスユニットの内部表面全体を覆うことができるスクリーンを使用する。スクリーンおよびそれに関連付けられる要素、特にその展開を自動化するために使用される要素は、高価であり、かつ車両の重量を増加させる。
【0030】
スクリーンを使用する必要性をなくすことを可能にするために、本発明は、熱損失を最小にするルーフを提供する。この結果を達成するために、本発明は、乗員室の方へ向けられたガラスユニットの面にlow−E層(低放射層)を適用することを提案する。合わせガラスユニットの面を指定するために使用される従来の命名を保つときには、位置4の問題である。面は、外部雰囲気に曝される面から始まって符号が付される。問題の層は、外部から内部への可視領域の光線の透過を実質的に妨害するものを形成せずに、乗員室によって放射された赤外線を選択的に反射するフィルターとして機能する。
【0031】
位置4において、層は、劣化、特に機械的劣化から保護されないという事実にもかかわらず、この位置に薄い層を配置するように選択される。機械的および化学的に十分に抵抗性を有するlow−E層を選択することが可能である。
【0032】
有利には、「硬質」層と称される、良好な機械抵抗を備えるコーティングを得ることがいかに重要であるかゆえに、PECVD、CVDまたは熱分解技術によって生成される層が選択される。しかしながら、low−Eシステムはまた、得られるシステムが十分な抵抗性のある層で構成されることを条件として、真空陰極スパッタリング技術を使用して生成され得る。
【0033】
本発明によれば、低放射層のシステムを使用することが好ましく、その放射率は、0.3未満、好ましくは0.2未満、特に好ましい方法では0.1未満である。
【0034】
最もありきたりな熱分解low−E(低放射)システムは、反射において色を中和する役割を有する、第1の層に堆積されたドープ酸化スズの層を含む。ガラスに接触する層は、通常、シリカまたはシリコンオキシカーバイドの層であり、任意選択的に添加剤によって修正される。酸化スズ層は、陰極スパッタリングによって堆積されたシステムの層と比較して、比較的厚みがあり、すなわち厚さが200nm超、場合によっては450nm超である。これらの厚い層は、機械的および/または化学的攻撃への暴露に耐える十分な抵抗性がある。
【0035】
本発明によるルーフの構成要素の全ては、様々な程度で、所望の特性の達成に関与する。特に、ガラス板および中間層シートは、光の透過およびエネルギーの伝達ならびに光およびエネルギーの反射を変調させ得る。
【0036】
積層ガラスユニットを形成するために使用されるガラス板は、同じ構成、および場合によっては同じ厚さを有してもよく、これにより、ガラス板を事前に付形することを簡単にし、2枚のガラス板は、例えば同時に曲げられ得る。ほとんどの場合、ガラス板は、異なる構成および/または厚さを有し、およびこの場合、それらは好ましくは別個に付形される。
【0037】
ガラス板は、好ましくは、透過光がちょうど反射光のように、可能な限り無彩色であるように、選択される。概して、ガラスユニットは、灰色、またはわずかに青みがかった色を有する。
【0038】
おそらく存在する色付き中間層は、光の吸収に関与する。それらの使用は、特定の色を確立するためのガラス板の貢献に対する少なくとも部分的な代替品として想定され得る。この状況は、例えば、光起電力素子をガラスユニットに組み込むときに、少なくとも外ガラス板が吸収性の劣るガラス板、またはさらには、必要以上に透明なガラス板であるときに、生じ得る。この場合を除いて、ほとんどの場合、外ガラス板はまた、吸収ガラス板であるため、色付き中間層は必要ない。
【0039】
乗員室の方へ向けられたガラス板はまた、特別に、透明なガラスで作製され得る。ほとんどの場合、吸収性があり、かつエネルギー伝達の総体的な低下に貢献する。その透過および伝達が制限されるとき、ガラスユニットに存在する透明性のない要素が、少なくとも部分的に乗員の視界からマスキングされるようにできる。
【0040】
透過および反射における色はまた、シート状のガラスおよび中間層の選択において重要である。
【0041】
透過および伝達を制御可能に変化させる手段を含む、本発明によるルーフでは、ガラス板および任意選択的に中間層による吸収は、非常に低いとし得る。ガラス板および任意選択的に中間層による吸収は、主に、前述の通り、SPDフィルムが透明状態にあるときの透過率を変調させることを可能にする。
【0042】
ガラス板および中間層に固有の吸収は著しいとし得る。好ましくは少なくとも20%であり、および40%以上の高さとし得る。問題の吸収は、デバイスがその透明状態にあるかまたは暗状態にあるかにおける、吸収である。透明状態では、デバイスは、エネルギーの伝達および光の透過を低下させることに貢献し、おそらく、ガラスユニットに含まれる要素のマスキングに関与する。
【0043】
一般的に、本発明によるルーフの生成に関して、ガラスユニットを付形しかつ組み立てるために使用される処理に耐える構成要素の能力を心に留めることを勧める。車両のルーフは、一般的に、おそらくこれらのガラスユニットの縁部を除いて、比較的強められない曲率を有する。ミネラルガラス板の付形は、少なくともそれらの一方に関し、およびほとんどの場合双方に関し、高温(650〜700℃)に曝されることを必要とする処理を含み、これはガラスを軟化させる。
【0044】
1つの代替例は、比較的厚い湾曲したシートと、厚みのあるシートの曲率に機械的に密接に従うようにされたより薄い平坦なシートとを関連付けることによって、合わせガラスユニットを形成することにある。必要な曲率が、特にガラス板が絶えることができる応力ゆえに、比較的小さいままである場合に限り、この技術を実施することを想定する。このタイプの組み立ては、例えば特許出願BE2011/0415号明細書(2011年7月4日出願)に、またはさらには特許出願BE2012/0036号明細書(2012年1月16日出願)に説明されているようなものである。このタイプの組み立ての場合、層のシステムは、比較的壊れやすいときでも、平坦なシートに配置されることを条件として、積層品の組み立てを完了するオートクレーブ焼成の温度にのみ曝される。
【0045】
この組み立て態様では、平坦なガラス板は、化学的に強化されたガラス板であることが有利である。
【0046】
SPDフィルムの挿入は、好ましくは、1つ以上の中間層シートに設置することによって、容易にされる。この態様は、国際公開第2005/102688号パンフレットに説明されている。
【0047】
車両にガラスルーフを配置することは、少なくとも一部には、機能性と同等に本来美的でもあることを目的とする。このため、これらのルーフに関連付けられた手段全てが、この目的の達成に貢献することが好ましい。
【0048】
SPDは、単にスイッチによって制御され得る。ガラスルーフ自体にスイッチを配置することが望まれる場合、ガラスルーフの選択の理由に関し、透明性を妨害しないことが望まれる。
【0049】
本発明は、同様に実質的に透明であるSPDを制御する手段を使用することを提案する。このようにするために、本発明は、スイッチの使用を提案し、スイッチの動作は、電気量に関連付けられるパルスによって作動されるリレーによってトリガされる。好ましくは、使用されるスイッチは容量性スイッチである。この態様は、ルーフに含まれた要素の実際の構造を、最適にできるようにする。
【0050】
説明として、容量センサーは、完全密着型センサー(direct contact sensor)とし得る。高感度素子は、例えば、乗員室の方へ向けられた面に配置されたlow−E層に規定されたゾーンである。low−E層は導電性であるため、これら層を、スイッチリレーを制御するためのセンサーとして使用し得る。完全密着型センサーの利点は、接触によって誘発された容量変化が比較的大きいため、スイッチが切り替わる閾値を、寄生トリガ(parasitic triggering)のリスクを全て防止するのに十分な高い値に設定し得ることである。
【0051】
感度レベルを設定するとき、スイッチがトリガする閾値が、例えば外ガラス板の水の存在に対応する閾値よりも確実に高くなるようにすることが、特に薦められる。差し挟まれた層は、寄生効果を防止できるようにする。SPDフィルムの電極は、実際、外部に起因する影響に対するスクリーンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面に示す例を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0053】
【
図1】本発明によるガラスユニットの要素の分解斜視図を示す。
【
図4】SPD組み立て品を保護するための要素を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1の要素の組み立て品は、本発明による一実施形態である。要素を、組み立て前の状態で示す。
図2は、組み立てられた後の、
図1の要素に対応する構造の断面を示す。
【0055】
図1に示すシートは、明瞭にするために、湾曲していない。実際には、ルーフの曲率は、ガラス張りにされていても、されていなくても、隣接する要素間の良好な表面の連続性に対応して、その「設計」、空気力学およびその「平坦な」外観のために選択され、通常、車体と接合するのに適した箇所であるそれらの縁部において、より強調されている。
【0056】
図1のガラスユニットは、2枚のガラス板、外ガラス板1および内ガラス板2を含む。最も多くは、これら2枚のガラス板は、吸収性の高い色ガラスで作製され、光透過率が、これらの2枚のガラス板の効果のみによって、例えば50%未満にまで、およびこのタイプの構成では、好ましくは30%未満にまで制限される。
【0057】
このガラス板に使用されたガラスは、例えばFR2738238号明細書または欧州特許第1680371号明細書に説明されているような灰色のガラス、または欧州特許第887320号明細書に説明されているような薄い緑色の付いた灰色のガラス、または欧州特許第1140718号明細書に説明されているような、薄い青色の付いたガラスである。
【0058】
一例では、ガラス板1および2の厚さは、それぞれ1.6mmおよび2.6mmである。ガラス板1は、緑色ガラスで作製され、その光学特性は、厚さ4mmで、および光源A下で:
TL A4 27.3%;TE4 14.8%;λ
D 486nm;およびP 18、
(λ
Dは主波長であり、およびPは刺激純度である)
である。
【0059】
ガラス板2は、灰色のガラスで作製され、その特性は:
TL A4 17%;TE4 15%;λ
D 490nm;およびP 1.8
である。
【0060】
図1では、ガラスユニットの縁部をマスキングするために従来使用されているエナメルパターンのない状態のガラス板が示されている。このタイプのエナメルは、例えばガラス板1の内側面、それゆえ位置2に配置されて、ガラスユニットの縁部の接着接合部および局所的な接続部を全て隠すことができた。マスキングエナメルはまた、位置4、換言すると、乗員室の内部に露出するガラスユニットの面に配置してもよい。しかしながら、この位置では、車両の外部からの観察に関して、積層品に含まれる要素をマスキングしない。
図5に示されるように位置2および位置4にマスクを配置することもできる。
【0061】
ガラス板間には熱可塑性の中間層シート(3、3’および13)が配置されて、積層品を接合する。
【0062】
SPDフィルム12を概略的に示す。SPDフィルムはガラスユニットを全体的には覆っていない。SPDフィルムの縁部は、特に活性粒子を水分から守るために、外部雰囲気と接触してはいけない。外部雰囲気との接触を全て防止するために、SPDフィルム12は全体的に、様々な中間層シートに包まれている。フィルム12をその周辺で包むために、SPDフィルムと同様の厚さの中間層シート13は、フィルムを挟む好適な切込みを含むことが有利である。
【0063】
図1は、孔が形成されている一体構造のシート13を示す。この一体シートを、フィルム12を囲む1組の並列バンドで置き換えることが可能であり、これらの部分は、焼成中に融解する。
【0064】
シート13が存在することによって、SPDフィルムを隔離し、かつ同時に、その組み立て中にガラスユニットの構成要素に加えられた圧力が、確実に均一に分配される。シート13は、中間層3および3’と同じ性質であっても、そうでなくてもよい。
【0065】
一実施形態では、シートはPVB製であり、およびそれぞれ厚さが0.38mmである。
【0066】
図3に、特許出願国際公開第2005/102688号パンフレットに説明されているSPDタイプのフィルムの構造を、概略的に示す。この構造は、電圧の印加に対して感受性のある方向付け可能な粒子を含有するポリマーからなる中心要素15を含む。この中心要素15の両側に、中心要素の両面のそれぞれにわたって延在する、2つの電極16によって、要素15を制御するために必要な電圧が適用される。公知の通り、電極16は、薄い導電層で被覆された実質的に透明なシートからなることが有利である。これら電極は、ほとんどの場合、数十ミクロンの厚さのポリエチレングリコールテレフタレート(PET)のシートからなり、良好な透明性と高い機械抵抗とを組み合わせる。これらのシート上の導電層は、ITO(インジウムスズ酸化物)の層などのTCO(薄膜導電性酸化物)層であることが有利である。
【0067】
再度、一例では、SPDフィルムは、日立(Hitachi)が販売するLCF−1103HDAフィルムである。フィルムの厚さ全体は、2つの電極を含めて、0.35mmである。
【0068】
前述の通り、SPDフィルムの構成要素、および特に本来有機である粒子は、特に熱の影響下でエージングに感受性がある。それらに所望の寿命を与えるために、フィルムは、通常、太陽放射に曝される外ガラス板1とSPDフィルム15との間に差し挟まれるフィルターによって保護される。
【0069】
赤外線フィルターは、多くの適用例において、日射制御(solar−control)ガラスユニットまたはlow−Eガラスユニットにおいて使用される。赤外線フィルターは、一般的に、薄い導電性酸化物層からなり、またはさらに良いのは、それらフィルターが遥かにより良い性能であるために、実質的に透明となるように十分に薄い金属層からなる。これらのフィルターでは、金属層は、同様に薄くて透明な誘電体層に関連付けられ、これら誘電体層は、組み立て品に必要な選択性を提供する。ほとんどの場合、可能な限り無彩色にする必要がある反射を伴うこの選択性を高めるために、フィルターは、ほとんどの場合、銀をベースとする複数の金属層を含む。
【0070】
赤外線をフィルタリングする層は、外ガラス板に適用されるか、またはポリマー、特にPETによって、中間層シートに挿入されるかのいずれかである。
図4は、このタイプの組み立ての詳細を示し、外ガラス板1の下側で、赤外線フィルターを載置するシート14が、2つの中間層シート3と20との間に配置されている。層のPET支持体自体がガラスに接着する性質ではない場合、2つの熱可塑性中間層シート間に接着剤を挿入する必要がある。支持体フィルムの使用は、壊れやすい層を高温に曝さないようにすることを可能にする。この場合、唯一の制約は、組み立てプロセスのオートクレーブの焼成温度である。下側には中間層シートを追加する必要があり、それにより、組み立て品の厚さを増す。
【0071】
本発明によれば、外ガラス板に直接堆積された層のシステムを用いることが好ましい。しかしながら、説明した通り、金属層を含むフィルターのような非常に高性能のフィルターを選択する場合、これらの層は陰極スパッタリング技術によって適用され、陰極スパッタリング技術は、平坦なシートで実施される。それゆえ、この解決法は、このガラス板を付形するとき、これらの層が熱処理を受けることを必要とする。
【0072】
選択された層のシステムは、複数の銀層を含むシステムであり、効果的なフィルターを得るようにし、かつ、特に反射において、色を制御できるようにすることが有利である。層の特に効果的な組み立て品が、特許出願、国際公開第2011/147875号パンフレットにおいて説明されている。この出願では、推薦されたシステムは3つの銀層および誘電体層を含み、組み立て品は、特に銀層の厚さ、反射における色が、観察されることが少なくても、満足のいくものとなるように選択される。
【0073】
図1の構成要素の組み立て品はまた、low−E層のシステム10を含み、このシステムは、内ガラス板2の、乗員室の方へ向けられた面に適用される。このシステムは、明瞭にするために、
図1では分離されているが、実際には、堆積されるシートから分離されない。
【0074】
所望の特性を有するlow−Eシステムの一例は、2at%のフッ素でドープされた、470nm厚さの酸化スズの層からなる。この層は、ガラスと接触する層に堆積され、前記層は75nmの厚さであり、かつシリコンオキシカーバイドで構成されている。この2つの層はCVDによって体積される。4mm厚さの透明ガラス板上において、このシステムは、約0.1の放射率を引き起こす。
【0075】
low−E層の他のシステムは、陰極スパッタリング技術を使用して生成される一方、満足の行く機械抵抗を保ち得る。このタイプのシステムは、例えば酸化物で構成され、特に、他の金属酸化物、特に酸化ジルコニウムと関連した、酸化チタンに基づいた層で構成されている。このタイプの層は、特に、特許出願、国際公開第2010/031808号パンフレットに説明されている。
【0076】
さらに別の例として、有効なシステムは、クロムとジルコニウムの合金の層を含む。陰極スパッタリングで堆積されたこの金属層を保護するために、この層は、窒化ケイ素の2つの層の間に挟まれる。この組み立て品も、光透過率を低下させて(10%に達し得る)、満足の行く放射率を生じ、問題の使用に関するその低下は、欠点に相当しない。
【0077】
これらのlow−Eシステムの使用は、寒候期に乗員室が快適であると感じる程度を大幅に改善し、かつ余分なスクリーンを活用し得る。
【0078】
図5に、その様々な構成要素が組み立てられた後の、本発明によるガラスユニットを概略的に示す。この図は、縮尺通りではない。特に、SPDフィルム、および導体素子を載置するフィルムの厚さは、かなり誇張している。
【0079】
図5では、赤外線をフィルタリングする層のシステムは、参照符号21を付して示す。このシステムは、面2でガラス板1に直接適用される。同様に、low−Eシステム10が面4でガラス板2に適用される。
【0080】
エナメルバンド22は、ガラスユニットの縁部にあることを示す。これらのエナメルバンドは、ガラス板が層によって被覆された後、スクリーン印刷技術によってガラス板に適用される。
図5において、エナメルバンドは、SPDフィルム15の境界部分を覆うように配置される。エナメルバンドは、外部からおよび車両の内部からの双方において、これらの境界部分を隠す。エナメルバンドはまた、SPDフィルムの電極に電力を供給する電気的接続(図示せず)をマスキングする働きをする。
【国際調査報告】