特表2015-527987(P2015-527987A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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2015-527987薬物モニタリングのための抗トファシチニブ抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-527987(P2015-527987A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】薬物モニタリングのための抗トファシチニブ抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/765 20060101AFI20150828BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20150828BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150828BHJP
   C07K 14/795 20060101ALI20150828BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20150828BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20150828BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20150828BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20150828BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20150828BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
   C07K14/765
   C12N15/00 AZNA
   G01N33/53 G
   C07K14/795
   C07K16/44
   C12P21/08
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2015-519413(P2015-519413)
(86)(22)【出願日】2013年6月18日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月20日
(86)【国際出願番号】IB2013055008
(87)【国際公開番号】WO2014001967
(87)【国際公開日】20140103
(31)【優先権主張番号】61/665,361
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100137040
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ポール ガードナー II
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア ヤツム ウォング
【テーマコード(参考)】
4B024
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B024AA11
4B024BA53
4B024CA02
4B024CA09
4B024DA01
4B024DA02
4B024DA05
4B024DA11
4B024EA04
4B024GA11
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA51
4H045CA42
4H045DA70
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、選択的トファシチニブ抗体、トファシチニブに特異的な抗体を作製するための免疫原性分子として有用な免疫原性トファシチニブコンジュゲートと共に、試料中のトファシチニブの濃度を測定する方法、抗体を作製する方法、ならびに抗体を使用するためのアッセイおよびキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートであって、免疫原性担体が、キーホールリンペットヘモシアニンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質であり、さらに、
(a)免疫原性トファシチニブコンジュゲートが以下の構造を有する
【化1】
[式中、BSAはウシ血清アルブミンである]、または
(b)免疫原性トファシチニブコンジュゲートが以下の構造を有する
【化2】
[式中、KLHはキーホールリンペットヘモシアニンである]、
免疫原性トファシチニブコンジュゲート。
【請求項2】
(a)トファシチニブを含有すると推測される試料を提供するステップと、
(b)抗体とトファシチニブとの結合に適した条件下で試料または試料抽出物をトファシチニブに特異的な抗体と接触させて、アッセイ混合物を形成するステップと、
(c)抗体とトファシチニブとの結合を検出するステップと
を含む、試料中のトファシチニブの濃度を評価する方法。
【請求項3】
式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する単離抗体。
【化3】
【請求項4】
代謝物1または代謝物2に対する結合親和性の25、30、40、または50倍である、トファシチニブに対する結合親和性を有する、請求項3に記載の単離抗体。
【請求項5】
免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲート化合物を使用して得られる、請求項4に記載の単離抗体。
【請求項6】
(a)検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む既知量の標識された競合相手を提供するステップと、
(b)選択的抗トファシチニブ抗体を提供するステップと、
(c)試料、選択的抗トファシチニブ抗体、および標識された競合相手を合わせるステップであって、試料中のトファシチニブが、選択的抗トファシチニブ抗体との結合について標識された競合相手と競合する、ステップと、
(d)標識の検出によって抗体と結合していない標識された競合相手の量を測定することによって、試料中のトファシチニブの量を決定するステップと
を含む、試料中のトファシチニブの量を決定する方法。
【請求項7】
選択的抗トファシチニブ抗体が、式IIのトファシチニブ代謝物1に対するよりもトファシチニブに対して、
【化4】
および/または式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する、
【化5】
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗体が、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する、請求項7に記載の方法。
【化6】
【請求項9】
検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む標識された競合相手と、少なくとも1つの選択的抗トファシチニブ抗体と
を含み、標識された競合相手が、抗トファシチニブ抗体との結合について試料中のトファシチニブと競合する、試料中のトファシチニブの量を決定するためのキット。
【請求項10】
選択的抗トファシチニブ抗体が、式IIのトファシチニブ代謝物1
【化7】
および式IIIのトファシチニブ代謝物2
【化8】
からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
抗体が、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する、請求項10に記載のキット。
【化9】
【請求項12】
試料中のトファシチニブの濃度を決定するための競合的免疫アッセイキットであって、競合的免疫アッセイが、
(a)少なくとも1つの選択的抗トファシチニブ抗体と、
(b)検出可能な標識とコンジュゲートさせたトファシチニブ化合物と
を含み、コンジュゲートさせたトファシチニブ化合物が試料中のトファシチニブと競合して抗体と結合し、
試料中のトファシチニブが治療薬モニタリング濃度で存在する場合に、標識が試料中のトファシチニブの濃度の指標となるシグナルを提供する、キット。
【請求項13】
抗体が、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する、請求項12に記載のキット。
【化10】
【請求項14】
トファシチニブと結合するが、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物とは実質的に結合しない単離抗体。
【化11】
【請求項15】
式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2の両方とは実質的に結合しない、請求項14に記載の単離抗体。
【化12】
【請求項16】
試料中のトファシチニブを検出することができるが、試料中のトファシチニブ代謝物を実質的に検出せず、トファシチニブの量が、約5ng/mL〜1215ng/mL、約5ng/mL〜405ng/mL、または約15ng/mL〜1215ng/mLの範囲である、請求項3に記載の抗体。
【請求項17】
式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する単離抗体であって、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインが、
(a)配列番号13、配列番号19、配列番号30、および配列番号37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
(b)配列番号14、配列番号20、配列番号25、配列番号31、および配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、
(c)配列番号15、配列番号21、配列番号26、配列番号32、および配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3
からなる群から選択される3つの相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含み、軽鎖可変ドメインが、
(d)配列番号16、配列番号22、配列番号27、配列番号33、および配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
(e)配列番号17、配列番号23、配列番号28、および配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2、ならびに
(f)配列番号18、配列番号24、配列番号29、および配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3
からなる群から選択される3つのCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、単離抗体。
【請求項18】
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号29のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(d)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(e)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(g)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(h)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(j)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(k)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(l)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(m)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(n)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(o)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(p)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、ならびに
(q)配列番号3、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4、配列番号9および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
(a)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(c)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体、
(d)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体、ならびに
(e)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体
からなる群から選択される、請求項15に記載の抗体。
【請求項20】
約15ng/ml〜1215ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出することができる、請求項19(a)に記載の抗体。
【請求項21】
約5ng/ml〜405ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出することができる、請求項19(b)に記載の抗体。
【請求項22】
請求項19(a)に記載の抗体および請求項19(b)に記載の抗体を含み、約5ng/ml〜約1215ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出するために使用することができる、請求項11に記載のキット。
【請求項23】
請求項18に記載の抗体をコードしている核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項25】
抗体が産生される条件下で請求項24に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、請求項18に記載の抗体を製造する方法。
【請求項26】
抗体を単離するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの既知の代謝物よりもトファシチニブと選択的に結合する、トファシチニブに特異的な抗体に関する。抗トファシチニブ抗体の選択性により、これらは免疫アッセイにおいて特に有用となる。本発明はさらに、トファシチニブに特異的な抗体が含まれる免疫アッセイまたはキットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、たとえば薬物の血液レベルをモニタリングするためのアッセイ方法およびアッセイキットにおいて有用な、トファシチニブに特異的な抗体に関する。
【0003】
トファシチニブは、関節リウマチ(RA)、乾癬、炎症性腸疾患、および他の免疫学的疾患の処置、ならびに臓器移植片拒絶の防止のための、開発中の強力な免疫抑制剤である。トファシチニブは、リンパ球の生存、増殖、分化およびアポトーシスを支配するサイトカインシグナル伝達において中心的役割を有するヤヌス活性化キナーゼ3(JAK3)を特異的に阻害する。
【0004】
特定の状況下では、ヒトにおいて腎臓、心臓、肺、骨髄、および肝臓などの臓器を移植した際、身体が移植された組織を拒絶する場合がある。臓器移植片拒絶の1つの処置は、トファシチニブなどの免疫抑制薬を用いた、調節された様式での免疫系の抑制を含む。免疫抑制薬は、外来(すなわち非自己)組織の拒絶を防止するために、移植レシピエントに注意深く投与する。免疫抑制薬を用いた処置の成功には、薬物濃度の測定、続いて、毒性を最小限にする一方で有効性を最大限にする用量調節が必要である。したがって、トファシチニブで処置した患者におけるトファシチニブの血液レベルのモニタリングは、用量を制御するために非常に望ましい。適切な用量は、副作用の過度な危険性を回避する一方で、薬理学的活性に十分な最小薬物活性レベルを維持するであろう。したがって、医薬品としてのトファシチニブの開発の一部として臨床場面において素早く容易に行うことができる、患者におけるトファシチニブレベルを測定するための、高感度かつ信頼性のあるアッセイの必要性が存在する。
【0005】
臨床場面におけるトファシチニブの使用、特に臓器移植片拒絶の防止における使用を支援するために、治療的レベルが維持されていることを確実にするため、および用量の調節を必要に応じて適時に導くために、多くの患者におけるトファシチニブの血漿レベルをモニタリングすることが長年にわたって必要とされている。この取り組みは、しばしば治療薬モニタリング(TDM)と呼ばれる。TDMは、臨床医が免疫抑制薬の血液および血漿レベルをそのそれぞれの治療的範囲内に維持することを助けるのに主要な役割を果たす。狭い治療的範囲の外へと濃度が変動した場合は、有害な臨床転帰をもたらし得る。TDMは、薬物の濃度が高すぎず低すぎないことを確実にすることによって、それぞれ毒性または拒絶の危険性を低下させる。免疫抑制薬の治療的モニタリングは、一般に、特定の薬物に適切なアッセイおよび生体液(すなわち、全血、血漿)のいくつかの選択肢に基づいている。
【0006】
信頼性のある液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS/MS)に基づくアッセイが、トファシチニブの治療的レベルをモニタリングするために利用可能である。残念ながら、全国および全世界のほとんどの臨床現場は、LC−MS/MSアッセイを院内(in house)で日常的に行うように設定されていない。臨床現場は、典型的には、そのTDM努力を効率的にするために比較的迅速、安価、かつ実行が容易なアッセイを好む。したがって、患者の血液、血清、血漿、および/または他の生体液もしくは試料中のトファシチニブを検出するように構成されている免疫アッセイを有することは有利であろう。さらに、抗トファシチニブ抗体の製造に使用するためのトファシチニブに基づく免疫原を有することは有利であろう。
【0007】
さらに、トファシチニブと結合するが、トファシチニブの少なくとも1つの代謝物とは実質的に結合しない、特異的抗トファシチニブ抗体が有利となるであろう。そのような抗体は、とりわけ、トファシチニブを患者に投与する治療を受けている患者からの、臨床的に意味のある濃度の試料中のトファシチニブを検出するために有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トファシチニブを認識するモノクローナル抗体は以前に報告されていない。トファシチニブは免疫原性でなく、それ自体が免疫抑制性であるため、トファシチニブに対するモノクローナル抗体の作製には特有の困難が存在する。さらに、トファシチニブの代謝物は文献において十分に特徴づけられていないため、トファシチニブとその代謝物とを識別することができるモノクローナル抗体を同定することは困難である。活性トファシチニブを検出するがその不活性代謝物を検出しない、正確なアッセイの必要性が存在する。本発明はその必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規な免疫原性トファシチニブコンジュゲート、および標識したトファシチニブ競合相手を対象とする。また、本発明は、免疫原性トファシチニブコンジュゲートを使用して生成したポリクローナルおよびモノクローナル抗体も対象とする。これらの抗体、コンジュゲート、および競合相手は、とりわけ、試料中のトファシチニブを検出するための免疫アッセイにおいて有用である。
【0010】
本発明には、免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートであって、免疫原性担体が、キーホールリンペットヘモシアニンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質であり、さらに、
(a)免疫原性トファシチニブコンジュゲートが以下の構造を有する
【0011】
【化1】
[式中、BSAはウシ血清アルブミンである]、または
(b)免疫原性トファシチニブコンジュゲートが以下の構造を有する
【0012】
【化2】
[式中、KLHはキーホールリンペットヘモシアニンである]、
免疫原性トファシチニブコンジュゲートが含まれる。
【0013】
本発明には、試料中のトファシチニブの濃度を評価する方法が含まれる。この方法は、
(a)トファシチニブを含有すると推測される試料を提供するステップと、
(b)抗体とトファシチニブとの結合に適した条件下で試料または試料抽出物をトファシチニブに特異的な抗体と接触させて、アッセイ混合物を形成するステップと、
(c)抗体とトファシチニブとの結合を検出するステップと
を含む。
【0014】
本発明には、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する単離抗体が含まれる。
【0015】
【化3】
【0016】
一態様では、単離抗体は、代謝物1または代謝物2に対する結合親和性の25、30、40、または50倍である、トファシチニブに対する結合親和性を有する。
【0017】
別の態様では、抗体は、免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲート化合物を使用して得られる。
【0018】
本発明には、試料中のトファシチニブの量を決定する方法が含まれる。この方法は、
検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む既知量の標識された競合相手を提供するステップと、
選択的抗トファシチニブ抗体を提供するステップと、
試料、選択的抗トファシチニブ抗体、および標識された競合相手を合わせるステップであって、試料中のトファシチニブが、選択的抗トファシチニブ抗体との結合について標識された競合相手と競合する、ステップと、
標識の検出によって抗体と結合していない標識された競合相手の量を測定することによって、試料中のトファシチニブの量を決定するステップと
を含む。
【0019】
一態様では、選択的抗トファシチニブ抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1に対するよりもトファシチニブに対して、
【0020】
【化4】
および/または式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する。
【0021】
【化5】
【0022】
一態様では、抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する。
【0023】
【化6】
【0024】
本発明には、試料中のトファシチニブの量を決定するためのキットが含まれる。
【0025】
キットは、検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む標識された競合相手と、少なくとも1つの選択的抗トファシチニブ抗体とを含み、標識された競合相手は、抗トファシチニブ抗体との結合について試料中のトファシチニブと競合する。
【0026】
一態様では、選択的抗トファシチニブ抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1
【0027】
【化7】
および式IIIのトファシチニブ代謝物2
【0028】
【化8】
からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する。
【0029】
別の態様では、抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する。
【0030】
【化9】
【0031】
別の態様では、キットは、約5ng/ml〜約1215ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出するために使用することができ、
(a)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、および/または
(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体
を含む。
【0032】
本発明には、試料中のトファシチニブの濃度を決定するための競合的免疫アッセイキットが含まれる。競合的免疫アッセイは、少なくとも1つの選択的抗トファシチニブ抗体と、検出可能な標識とコンジュゲートさせたトファシチニブ化合物とを含み、コンジュゲートさせたトファシチニブ化合物は、試料中のトファシチニブと競合して抗体と結合し、試料中のトファシチニブが治療薬モニタリング濃度で存在する場合に、標識は試料中のトファシチニブの濃度の指標となるシグナルを提供する。
【0033】
一態様では、抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する。
【0034】
【化10】
【0035】
本発明には、トファシチニブと結合するが、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物とは実質的に結合しない単離抗体が含まれる。
【0036】
【化11】
【0037】
一態様では、単離抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2の両方とは実質的に結合しない。
【0038】
【化12】
【0039】
別の態様では、抗体は、試料中のトファシチニブを検出することができるが、試料中のトファシチニブ代謝物を実質的に検出せず、トファシチニブの量は、約5ng/mL〜1215ng/mL、約5ng/mL〜405ng/mL、または約15ng/mL〜1215ng/mLの範囲である。
【0040】
本発明には、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2からなる群から選択される少なくとも1つのトファシチニブ代謝物に対するよりもトファシチニブに対して高い結合親和性を有する単離抗体が含まれる。抗体は重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、
(a)配列番号13、配列番号19、配列番号30、および配列番号37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
(b)配列番号14、配列番号20、配列番号25、配列番号31、および配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、
(c)配列番号15、配列番号21、配列番号26、配列番号32、および配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3
からなる群から選択される3つの相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含み、軽鎖可変ドメインは、
(d)配列番号16、配列番号22、配列番号27、配列番号33、および配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
(e)配列番号17、配列番号23、配列番号28、および配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2、ならびに
(f)配列番号18、配列番号24、配列番号29、および配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3
からなる群から選択される3つのCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0041】
一態様では、抗体は、
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号29のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(d)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(e)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(g)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む、
(h)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(j)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(k)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(l)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(m)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(n)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(o)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(p)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、ならびに
(q)配列番号3、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4、配列番号9および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0042】
別の態様では、抗体は、
(a)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(c)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体、
(d)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体、ならびに
(e)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体
からなる群から選択される。
【0043】
一態様では、抗体は、約15ng/ml〜1215ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出することができる。
【0044】
別の態様では、抗体は、約5ng/ml〜405ng/mlの範囲の濃度の試料中のトファシチニブを検出することができる。
【0045】
さらに別の態様では、本発明には、
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号29のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(d)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(e)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(g)配列番号37のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号39のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む抗体、
(h)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む抗体、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(j)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(k)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(l)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(m)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(n)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(o)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、
(p)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体、ならびに
(q)配列番号3、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4、配列番号9および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体
をコードしている核酸が含まれる。
【0046】
一態様では、本発明には、核酸を含む宿主細胞が含まれる。
【0047】
別の態様では、本発明には、抗体を製造する方法が含まれる。この方法は、抗体が産生される条件下で宿主細胞を培養するステップを含む。さらなる一態様では、この方法は抗体を単離するステップを含む。
【0048】
開示した主題は、本明細書の末尾の特許請求の範囲中で具体的に指摘され、明確に特許請求されている。開示した実施形態の前述および他の目的、特長、および利点は、添付の図面と併せた以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】固相ELISAによって決定した、血清抗体と実施例2のトファシチニブ−BSAのコンジュゲートとの結合を示すグラフである。
図2】ELISAによって決定した、選択された抗トファシチニブ抗体とビオチン化されたトファシチニブとの結合を示すグラフである。
図3】ELISAによって決定した、選択された抗トファシチニブ抗体の代謝物1に対する交差反応性を示すグラフである。
図4】ELISAによって決定した、本発明の選択されたモノクローナル抗体の最適希釈範囲を示すグラフである。
図5】ELISAによって決定した、本発明の選択されたモノクローナル抗体の最適希釈範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む新規な免疫原性トファシチニブコンジュゲート、および標識したトファシチニブ競合相手を提供する。また、本発明は、免疫原性トファシチニブコンジュゲートを使用して生成したポリクローナルおよびモノクローナル抗体も対象とする。
【0051】
また、本発明は、トファシチニブに特異的なポリクローナルおよびモノクローナル抗体も提供する。一部の実施形態では、本発明の抗体は、免疫原性担体と連結させたトファシチニブを含む新規な免疫原性トファシチニブコンジュゲートを用いた接種に応答して産生される。
【0052】
これらの抗体、コンジュゲート、および競合相手は、生体液中のトファシチニブを検出するための免疫アッセイにおいて有用である。これらの抗体、コンジュゲートおよび競合相手を含むアッセイキットは、臨床場面における使用に十分に適しており、以前に可能であったよりもはるかに正確かつ再現性のある結果を提供する。また、抗体はトファシチニブの精製および単離においても有用である。
【0053】
本明細書中で言及する用語「抗体」には、全抗体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはその単鎖が含まれる。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって互いに接続された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分をいう。また、「抗体」とは、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM抗体サブタイプもいう。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書中でVと略記)および重鎖定常領域(C)からなる。重鎖定常領域は、典型的には3つのドメイン、すなわちCH1、CH2およびCH3からなる。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書中でVと略記)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、すなわちCからなる。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに再分類することができる。それぞれのVおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主の組織または因子との結合を媒介し得る。
【0054】
可変ドメインの「CDR」とは、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触、および/もしくはコンホメーション定義、または当技術分野で周知の任意のCDR決定方法の定義に従って同定される、可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として同定され得る。たとえば、Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、ワシントンD.C.を参照されたい。また、CDRの位置は、Chothiaらによって最初に説明された構造的ループ構造としても同定され得る。たとえばChothiaら、1989、Nature、342:877〜883を参照されたい。CDR同定のための他の手法には、「IMGT定義」(Lefranc,M.−P.ら、1999、Nucleic Acids Res.、27:209〜212)、および、KabatとChothiaとの間の歩み寄りであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在はAccelrys(登録商標))を使用して誘導される「AbM定義」、または、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732〜745に記載の、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が含まれる。本明細書中でCDRの「コンホメーション定義」と呼ぶ別の手法では、CDRの位置は、抗原結合に対してエンタルピー的寄与を行う残基として同定され得る。たとえばMakabeら、2008、J.Biol.Chem.、283:1156〜1166を参照されたい。さらに他のCDR境界定義は、上記手法のうちの1つに厳密に従わない場合があるが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複する。ただし、これらは、特定の残基や残基の群、またはCDR全体さえもが、抗原結合に顕著な影響を与えないという予測または実験的発見に鑑みて、短縮または伸長されている場合がある。本明細書中で使用するCDRとは、手法の組合せを含めた、当技術分野で知られている任意の手法によって定義されたCDRを言及し得る。本明細書中で使用する方法は、これらの手法のうちの任意のものに従って定義されたCDRを利用し得る。複数のCDRを含有する任意の所定の実施形態において、CDRは、Kabat、Chothia、伸長、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義のうちの任意のものに従って定義され得る。
【0055】
本明細書中で使用する用語、抗体の「抗原結合部分」もしくは「抗原結合断片」(または単純に「抗体部分」)とは、抗原(たとえばトファシチニブ)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片をいう。抗体の抗原結合機能を、完全長抗体の断片によって行うことができることが示されている。用語、抗体の「抗原結合部分」によって包含される結合断片の例には、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFv断片、(v)1つのVドメインからなるdAb断片(Wardら、1989、Nature、341:544〜546)、ならびに(vi)単離した相補性決定領域が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え方法を使用して、VおよびV領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られ、たとえば、Birdら、1988、Science、242:423〜426およびHustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883を参照)としてこれらを作製することを可能にする合成リンカーによって、接続することができる。また、そのような単鎖抗体も用語、抗体の「抗原結合部分」内に包含されることを意図する。これらの抗体断片は当技術分野の技術者に知られている慣用技術を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングする。
【0056】
本明細書中で使用する「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことを意図する(たとえば、トファシチニブと特異的に結合する単離抗体は、トファシチニブ以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0057】
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0058】
本明細書中で使用する用語「組換え抗体」には、(a)抗体を発現するように形質転換させた宿主細胞から単離した抗体、(b)組換えのコンビナトリアル抗体ライブラリから単離した抗体、および(c)免疫グロブリン遺伝子配列から他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作出、または単離した抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作出、または単離されたすべての抗体が含まれる。そのような組換え抗体は、フレームワークおよびCDR領域がマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を含む。しかし、特定の実施形態では、そのような組換えマウス抗体をin vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合はin vivo体性突然変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、マウス生殖系列VおよびV配列に由来し、それに関連する配列である一方で、in vivoでマウス抗体生殖系列レパートリー内に天然で存在し得ない配列である。
【0059】
本明細書中で使用する「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされている抗体クラス(たとえばIgMまたはIgG)をいう。
【0060】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書中で用語「抗原と特異的に結合する抗体」と互換性があるように使用される。
【0061】
用語「抗体誘導体」とは、抗体の任意の改変体、たとえば抗体と別の薬剤または抗体とのコンジュゲートをいう。
【0062】
用語「ヒト化抗体」とは、マウスなどの非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体をいうことを意図する。フレームワーク領域のさらなる改変がヒトフレームワーク配列内に行われていてもよい。
【0063】
用語「キメラ抗体」とは、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、たとえば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体をいうことを意図する。また、キメラ抗体には、VドメインおよびCドメインが、どちらも同じ種由来であっても2つの異なる供給源にそれぞれ由来する抗体も含まれることができる。
【0064】
本明細書中で使用する、「トファシチニブと特異的に結合する」抗体または「選択的トファシチニブ抗体」とは、トファシチニブと結合するが、トファシチニブの代謝物とは実質的に結合しない抗体をいう。抗体は、式IIのトファシチニブ代謝物1および/もしくは式IIIのトファシチニブ代謝物2と検出可能に結合しない、またはそのような代謝物とはるかに低い程度でしか結合しない場合に、トファシチニブと特異的に結合する。たとえば、代謝物は、たとえば競合的結合アッセイによって測定して、抗体との結合についてトファシチニブと実質的に競合しない。選択的トファシチニブ抗体は、式IIの代謝物1または式IIIの代謝物2に対するその親和性よりも5、10、15、25、30、40、または50倍高い親和性でトファシチニブと結合する。
【0065】
本明細書中で使用する用語「対象」には任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非哺乳動物、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。
【0066】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクション中にさらに詳述されている。
【0067】
抗体の「可変領域」とは、単独または組み合わせたいずれかの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域をいう。当技術分野で知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域は、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からそれぞれなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。対象可変領域の変異体、特にCDR領域外(すなわちフレームワーク領域内)のアミノ酸残基の置換を用いたものが望まれる場合は、適切なアミノ酸置換、好ましくは、保存的アミノ酸置換は、対象可変領域を、対象可変領域と同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2の配列を含有する他の抗体の可変領域と比較することによって同定することができる(ChothiaおよびLesk、J Mol Biol、196(4):901〜917、1987)。対象CDRに隣接するFRを選択する際、たとえば抗体をヒト化または最適化する際は、同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2の配列を含有する抗体からのFRが好ましい。
【0068】
可変ドメインの「CDR」とは、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触、および/もしくはコンホメーション定義、または当技術分野で周知の任意のCDR決定方法の定義に従って同定される、可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として同定され得る。たとえばKabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、ワシントンD.C.を参照されたい。また、CDRの位置は、Chothiaらによって最初に説明された構造的ループ構造としても同定され得る。たとえばChothiaら、1989、Nature、342:877〜883を参照されたい。CDR同定のための他の手法には、「IMGT定義」(Lefranc,M.−P.ら、Nucleic Acids Res.、27、209〜212(1999))、および、KabatとChothiaとの間の歩み寄りであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在はAccelrys(登録商標))を使用して誘導される「AbM定義」、または、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732〜745に記載の、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が含まれる。本明細書中でCDRの「コンホメーション定義」と呼ぶ別の手法では、CDRの位置は、抗原結合に対してエンタルピー的寄与を行う残基として同定され得る。たとえばMakabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156〜1166を参照されたい。さらに他のCDR境界定義は、上記手法のうちの1つに厳密に従わない場合があるが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複する。ただし、これらは、特定の残基や残基の群、またはCDR全体さえもが、抗原結合に顕著な影響を与えないという予測または実験的発見に鑑みて、短縮または伸長されている場合がある。本明細書中で使用するCDRとは、手法の組合せを含めた、当技術分野で知られている任意の手法によって定義されたCDRを言及し得る。本明細書中で使用する方法は、これらの手法のうちの任意のものに従って定義されたCDRを利用し得る。複数のCDRを含有する任意の所定の実施形態において、CDRは、Kabat、Chothia、伸長、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義のうちの任意のものに従って定義され得る。
【0069】
用語「モノクローナル抗体」(Mab)とは、単一のコピー、または、たとえば任意の真核、原核、もしくはファージクローンを含めたクローンに由来する抗体をいい、それを製造する方法ではない。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、均一または実質的に均一の集団で存在する。
【0070】
本発明の抗体は、当技術分野で周知の技法、たとえば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、もしくはそのような技術の組合せ、または当技術分野で容易に知られている他の技術を使用して製造することができる(たとえば、Jayasena,S.D.、1999、Clin.Chem.、45:1628〜1650およびFellouseら、2007、J.Mol.Biol.、373(4):924〜940を参照)。
【0071】
本明細書中で使用する用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、または「特異的に結合する」とは、非標的化合物に対するよりも高い親和性で標的化合物またはエピトープと結合する能力をいう。例示的な一例では、トファシチニブと特異的に結合する抗体は、トファシチニブの代謝物、たとえば式IIの代謝物1および式IIIの代謝物2に対するよりもトファシチニブに対して高い親和性を有する。一部の実施形態では、「特異的に結合する」または「選択的に結合する」とは、非標的に対する親和性よりも少なくとも5、10、15、20、25、30、50、100、500、1000倍またはそれ以上高い親和性で標的化合物と結合することをいう。
【0072】
用語「エピトープ」とは、抗体の抗原結合領域のうちの1つまたは複数で、抗体によって認識および結合されることができる分子の部分をいう。エピトープはしばしばアミノ酸または糖側鎖などの化学活性のある表面の分子基からなり、特定の三次元の構造的特徴および特定の荷電特徴を有する。本明細書中で使用する用語「抗原エピトープ」とは、当技術分野で周知の任意の方法、たとえば慣用の免疫アッセイによって決定して、抗体が特異的に結合することができるポリペプチドの一部分として定義される。「非線形エピトープ」または「コンホメーションエピトープ」は、エピトープに特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内の非連続的なポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。
【0073】
本明細書中で使用する用語「免疫原」および「免疫原性」とは、生物において免疫応答を発生または生成させることができる物質をいうことを意味する。免疫原は抗原であることもできる。通常、免疫原は比較的高い分子量を有しており(たとえば10,000より高い)、したがって、タンパク質、リポタンパク質、多糖、一部の核酸、およびタイコ酸のうちの特定のものなどの、様々な巨大分子が免疫原であることができる。
【0074】
「ハプテン」とは部分的または不完全な抗原である。これらは通常、一般に抗体形成を刺激することはできないが、抗体と反応することはできる、ほとんどが低分子量の無タンパク質の物質である。ハプテンに対する抗体は、ハプテンを高分子量の抗原性担体(たとえば免疫原)とカップリングさせ、その後、このカップリングさせた生成物、すなわち免疫原性コンジュゲートをヒトまたは動物対象内に注射することによって生成され得る。たとえば、トファシチニブはハプテンである。
【0075】
本明細書中で使用する用語としての「担体」または「免疫原性担体」とは、ハプテンと接続することができ、それによって、ハプテンが免疫応答を誘導することを可能にし、抗原(ハプテン)と特異的に結合することができる抗体の産生を誘発する、免疫原性物質、一般的にはタンパク質である。担体物質には、外来として認識され、したがって宿主から免疫応答を誘発させる、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖、粒子、および核酸が含まれる。様々なタンパク質をポリペプチド免疫原性担体として用い得る。これらのタンパク質には、アルブミンおよび血清タンパク質、たとえば、グロブリン、眼球レンズタンパク質、リポタンパク質などが含まれる。例示的なタンパク質には、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、卵白アルブミン、ウシガンマ−グロブリン(BGG)などが含まれる。あるいは、合成ポリペプチドを使用し得る。また、免疫原性担体は、たとえば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、アラビアコムなどの炭水化物ゴム、寒天などの多糖であることもできる。また、多糖は、ポリペプチド残基および/または脂質残基を含有することもできる。また、免疫原性担体は、ポリヌクレオチド単独、または上述のポリペプチドもしくは多糖のうちの1つとコンジュゲートしたポリヌクレオチドであることもできる。
【0076】
本明細書中で使用する用語「免疫原性」とは、免疫応答を誘導する分子の能力をいうことを意味し、注射した分子の固有の化学構造および宿主動物の免疫系が化合物を認識するかどうかの両方によって決定し得る。抗原の構造中の小さな変化は化合物の免疫原性を大きく変えることができ、特によく保存された抗原に対する抗体を産生させる確率を上昇させるための一般手順として大規模に使用されている。たとえば、これらの改変技法は、より良好なT細胞結合部位を提供するため、またはB細胞結合のために新しいエピトープを曝露させるために、免疫原の領域を変更する。
【0077】
本明細書中で使用する用語「標識」とは、検出可能なシグナルを生じる、または生じるように誘導することができる任意の分子をいう。標識を分析物、免疫原、および/または抗体とコンジュゲートさせることができる。標識の非限定的な例には、放射性同位元素、酵素、酵素断片、酵素基質、酵素阻害剤、補酵素、触媒、蛍光体、色素、化学発光剤、発光剤、増感剤、非磁気または磁気粒子、固体支持体、リポソーム、リガンド、受容体、およびハプテン放射性同位元素が含まれる。
【0078】
特異的抗体または標識された競合相手に関して、用語「標識した」には、検出可能な物質を抗体または標識された競合相手とカップリング(すなわち物理的に連結)させることによる直接標識、および、直接標識された別の試薬とカップリングさせることによる、抗体または標識された競合相手の間接標識が含まれる。間接標識の一例には、蛍光標識した二次抗体を使用した一次抗体の検出が含まれる。本発明の抗原を検出するためのin vitro技法には、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が含まれる。
【0079】
また、本明細書中に記載の抗体、標識された競合相手、および潜在的な治療化合物は、様々な検出系を用いたいくつかの他の均一および不均一免疫アッセイのうちの任意のものと共に使用するためにも適している。
【0080】
本明細書中で使用する用語「抗原性化合物」とは、免疫応答を生じさせるために使用する化合物をいう。例として、抗原性化合物は、免疫原性担体と連結させたハプテン、たとえばトファシチニブである。抗原性化合物を使用して所望の抗体を生成させる。
【0081】
本明細書中で使用する用語「標識された競合相手」とは、検出可能な標識またはトレーサーと連結されている、トファシチニブに対して特異性を有する抗体との特異的結合が可能な分子である。例として、分子はトファシチニブまたはその誘導体もしくは分析物である。
【0082】
用語「生体試料」には、それだけには限定されないが、生きた対象または以前は生きていた対象から単離したまたはそれに由来する、任意の量の物質が含まれる。この用語は、対象から単離した組織、細胞、および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および体液が含まれることを意図する。対象には、それだけには限定されないが、ニワトリ、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウマ、ラクダ、および他の動物が含まれる。そのような物質には、それだけには限定されないが、血液、血漿、血清、精液、尿、涙、唾液、細胞、臓器、組織、骨、骨髄、リンパ、リンパ節、滑膜組織または滑液、軟骨細胞、滑膜マクロファージ、内皮細胞、および皮膚が含まれる。
【0083】
一態様では、本開示は、トファシチニブのレベルを測定するためのトファシチニブに特異的な抗体の作製のための免疫原性分子として有用な、トファシチニブの誘導体を提供する。
【0084】
別の態様では、本開示は、試料中のトファシチニブを選択的に検出するための方法およびキットを提供する。
【0085】
トファシチニブ(式I)は、経口利用が可能な、関節リウマチ(RA)および炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎などの他の自己免疫障害の処置、ならびに移植片拒絶の防止に関して開発中である、JAK3の強力な選択的阻害剤である。
【0086】
【化13】
【0087】
トファシチニブは、少なくとも2つの既知の代謝物、すなわち「代謝物I」(式II)および「代謝物II」(式III)を有する。
【0088】
【化14】
【0089】
トファシチニブなどの低分子を検出するための免疫アッセイの実行は困難な場合がある。一部の事例では、低分子は抗原性を欠き、それらに対する抗体を作製することが困難となる。トファシチニブは非常に強力な免疫抑制性特性を有するため、この課題はトファシチニブでは度合が高められている。低分子の免疫原性を増加させるために、それだけには限定されないが、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンなどを含めた、より大きな免疫原性化合物を、薬物とカップリングさせることができる。試料中の薬物の検出は、一般に、抗体、トファシチニブ、またはトファシチニブ類似体とコンジュゲートさせた、検出可能な標識の使用を必要とする。
【0090】
本発明以前では、免疫原性担体とコンジュゲートさせることによってトファシチニブをより免疫原性にできることは予想されていなかった。したがって、驚くべきことに、一態様では、本開示は、免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートを提供し、免疫原性担体は、免疫化した動物によって外来として認識され、その結果免疫応答をもたらす、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖、または核酸である。例示的な一例では、免疫原性担体はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)からなる群から選択されるタンパク質である。
【0091】
一実施形態では、本開示は、以下の構造を有する式Vの免疫原性トファシチニブコンジュゲートを提供する:
【0092】
【化15】
[式中、BSAはウシ血清アルブミンである]。
【0093】
別の実施形態では、本開示は、以下の構造を有する式VIの免疫原性トファシチニブコンジュゲートを提供する:
【0094】
【化16】
[式中、KLHはキーホールリンペットヘモシアニンである]。
【0095】
本発明の免疫原性トファシチニブコンジュゲートを使用して、既知の抗体製造およびスクリーニング手順を使用して抗体を誘発させることができる。免疫原性トファシチニブコンジュゲートを適切な動物宿主内に注射して、抗体の産生を刺激することができる。そのようにして産生された抗体は、トファシチニブを検出するために構成された免疫アッセイにおいて直接使用するために収集することができる。一部の事例では、トファシチニブに特異的であり、トファシチニブ代謝物よりもトファシチニブと選択的に結合するモノクローナル抗体を有することが望ましい。一部の実施形態では、抗体は、代謝物1または代謝物2に対する結合親和性の約25、30、40、または50倍である、トファシチニブに対する結合親和性を有する。一部の実施形態では、抗体は、トファシチニブに対する結合親和性の約5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満である親和性で、代謝物1または代謝物2と結合する。
【0096】
選択的抗トファシチニブ抗体
本発明の抗体は、トファシチニブ(式I)と特異的に結合するが、既知のトファシチニブ代謝物である「式IIの代謝物1」および「式IIIの代謝物2」の一方または両方とは実質的に結合しないこと、ならびにこれらの抗トファシチニブ抗体を作製および使用する方法によって特徴づけられている。選択的トファシチニブ抗体は、式IIの代謝物1または式IIIの代謝物2に対するその親和性よりも5、10、15、25、30、40、または50倍高い親和性でトファシチニブと結合する。
【0097】
トファシチニブおよびその代謝物に対する抗体の結合能力を評価するための標準のアッセイは当技術分野で知られており、たとえば、ELISA、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、およびフローサイトメトリー分析が含まれる。適切なアッセイは実施例中に詳述されている。また、抗体の結合動力学(たとえば結合親和性)も、Biacore SPR分析およびOctet分析などの当技術分野で知られている標準のアッセイによって評価することができる。
【0098】
本発明の抗体には、マウスモノクローナル抗体5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6が含まれる。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のVアミノ酸配列は表2中に示されており、それぞれ配列番号1、3、5、7、8、10および12に記載されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のVアミノ酸配列は表2中に示されており、それぞれ配列番号2、4、6、4、9、11および4に記載されている。
【0099】
およびV配列を「ミックス&マッチ」して、本発明の他の選択的トファシチニブ結合分子を作出し得る。そのようなミックス&マッチ抗体のトファシチニブ結合、ならびに抗体と代謝物1および2の一方または両方との結合は、上記および実施例中に記載されている結合アッセイを使用して試験することができる。任意選択で、VおよびV鎖をミックス&マッチする場合、特定のV/V対合からのV配列は構造的に類似のV配列で置き換える。同様に、任意選択で、特定のV/V対合からのV配列は構造的に類似のV配列で置き換える。
【0100】
したがって、一態様では、本発明は、
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインをさらに含む、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(d)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(e)配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(f)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(g)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(h)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
(i)配列番号3、配列番号7および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、ならびに
(j)配列番号3、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号4、配列番号9および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、
単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0101】
別の態様では、本発明は、5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6の重鎖および/もしくは軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはその組合せを含む抗体を提供する。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR1のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13、19、19、30、19、19、および37に示されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR2のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14、20、25、31、20、20、および38に示されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号15、21、26、32、21、21、および39に示されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR1のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号16、22、27、22、33、34、および22に示されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR2のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17、23、28、23、17、35および23に示されている。5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のV CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号18、24、29、24、18、36、および24に示されている。CDR領域はKabatシステムを使用して描写されている(Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH出版第91−3242号(1991))。
【0102】
抗体5A3.E5の重鎖および軽鎖CDRは配列番号13、14、15、16、17、18を含む。抗体10A6.C5の重鎖および軽鎖CDRは配列番号19、20、21、22、23、および24を含む。抗体10F10.H5の重鎖および軽鎖CDRは配列番号19、25、26、27、28、および29を含む。抗体6D9.A5の重鎖および軽鎖CDRは配列番号30、31、32、22、23、および24を含む。抗体12H4.G2の重鎖および軽鎖CDRは配列番号19、20、21、33、17、および18を含む。抗体16F10.E6の重鎖および軽鎖CDRは配列番号19、20、21、34、35、および36を含む。抗体12D4.G6の重鎖および軽鎖CDRは配列番号37、38、39、22、23、および24を含む。
【0103】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書中で既に記載した抗体のアミノ酸配列に相同的なアミノ酸配列を含む、重鎖および軽鎖可変領域ならびに/または重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、抗体は、本発明の選択的抗トファシチニブ抗体の所望の機能的特性を保持している。
【0104】
様々な実施形態では、抗体は、たとえば、マウス抗体、ヒト化抗体、またはマウス抗トファシチニブ抗体に由来するキメラ抗体であることができる。他の実施形態では、Vおよび/またはVアミノ酸配列は、上記記載した配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同的であり得る。本明細書中で使用する、2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性は、2つの配列間のパーセント同一性に等しい。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0105】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖および軽鎖可変領域ならびに/または重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、これらの配列のうちの1つまたは複数は、本明細書中に記載の抗体に基づく指定されたアミノ酸配列、またはその保存的改変体を含み、抗体は、本発明の抗トファシチニブ抗体の所望の機能的特性を保持している。
【0106】
代替実施形態では、抗体は、たとえば、マウス抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であることができる。
【0107】
本明細書中で使用する用語「保存的配列改変」とは、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に顕著な影響を与えない、またはそれを顕著に変更しないアミノ酸改変をいうことを意図する。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発などの当技術分野で知られている標準の技法によって本発明の抗体内に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝状側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変更された抗体を、本明細書中に記載の機能的アッセイを使用して、保持された機能について試験することができる。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抗トファシチニブ抗体と同じトファシチニブ上のエピトープと結合する抗体(すなわち、トファシチニブとの結合について本発明の抗体と競合する能力を有する抗体)を提供する。代替実施形態では、競合研究のための参照抗体は、モノクローナル抗体5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6であることができる。そのような競合抗体は、標準の結合アッセイにおいて、トファシチニブの結合について5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、または12D4.G6と競合するその能力に基づいて同定することができる。たとえば、Biacore分析、Octect分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーを使用して、本発明の抗体との交差競合を実証し得る。たとえば5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、または12D4.G6と、トファシチニブとの結合を阻害する試験抗体であって、代謝物1および/または代謝物2と実質的に結合しない試験抗体の能力は、試験抗体がトファシチニブとの結合について5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6と競合することができ、したがって、5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6と同じトファシチニブ上のエピトープと結合し得ることを実証している。さらなる実施形態では、5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6と同じトファシチニブ上のエピトープと結合する抗体はマウスモノクローナル抗体である。そのようなモノクローナル抗体は、実施例中に記載のように、または当技術分野で周知の多種多様の方法によって調製および単離することができる。他の実施形態では、前記抗体と競合する抗体はヒト、ヒト化、またはマウス抗体である。
【0109】
本発明の抗体は、本明細書中に開示したVおよび/またはV配列のうちの少なくとも1つを含む抗体を出発物質として使用し、出発抗体とは異なる特性を有し得るが、出発物質抗体と同じまたは実質的に同じエピトープと結合し得る改変抗体を遺伝子工学的に改変して、調製することができる。抗体は、可変領域(すなわちVおよび/またはV)の一方または両方内、たとえば1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することによって遺伝子工学的に改変することができる。それに加えて、またはその代わりに、抗体は、たとえば抗体のエフェクター機能(複数可)を変更するために、定常領域(複数可)内の残基を改変することによって遺伝子工学的に改変することができる。
【0110】
本発明は、本発明のトファシチニブ特異的抗体をコードしている核酸を提供する。本発明の抗体をコードしている核酸は、当技術分野で知られている方法によって作製することができる。また、当業者には理解されるように、核酸コードの縮重のために、幅広い核酸配列が本発明の抗体のアミノ酸配列をコードすることができる。
【0111】
行うことができる可変領域の遺伝子工学的改変の一種はCDR移植である。抗体は、6個の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を主に介して標的抗原と相互作用する。そのため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間でCDRの外の配列よりも多様である。CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用を司っているため、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列上に移植したものが含まれる発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(たとえば、Riechmannら、1998、Nature、332:323〜327、Jonesら、1986、Nature、321:522〜525、Queenら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86:10029〜10033、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照)。
【0112】
したがって、本発明の別の実施形態は、それぞれ配列番号13、19、30、および37、配列番号14、20、25、31、および38、ならびに配列番号15、21、26、32、および39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、ならびにCDR3配列を含む重鎖可変領域と、それぞれ配列番号16、22、27、33、および34、配列番号17、23、28、および35、ならびに配列番号18、24、29、および36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、ならびにCDR3配列を含む軽鎖可変領域とを含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。そのような抗体は、抗体とは異なるフレームワーク配列を含有し得るモノクローナル抗体5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6のVおよびV CDR配列を含有する。そのようなフレームワーク配列は、公開DNAデータベースまたは生殖系列抗体遺伝子配列が含まれる公開参考文献から得ることができる。
【0113】
別の種類の可変領域の改変は、Vおよび/またはVのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させることによって、目的抗体の1つまたは複数の結合特性(たとえば親和性)を改善させることである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発を行って突然変異(複数可)を導入して、抗体結合または他の目的の機能特性に対する効果を、本明細書中に記載し、実施例中に提供したin vitroまたはin vivoアッセイにおいて評価することができる。任意選択で、保存的改変(上述)を導入する。突然変異はアミノ酸の置換、付加、または欠失であり得る。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4または5個を超えない残基のみを変更する。
【0114】
さらに別の実施形態では、本発明は、
(a)配列番号13、19、30、および37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR1領域、または配列番号13、19、30、および37と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列、(b)配列番号14、20、25、31、および38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR2領域、または配列番号14、20、25、31、および38と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列、(c)配列番号15、21、26、32、および39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR3領域、または配列番号15、21、26、32、および39と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列、(d)配列番号16、22、27、33、および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR1領域、または配列番号16、22、27、33、および34と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列、(e)配列番号17、23、28、および35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR2領域、または配列番号17、23、28、および35と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列、ならびに(f)配列番号18、24、29、および36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むV CDR3領域、または配列番号18、24、29、および36と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、単離抗ホスホ−タウモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0115】
本発明の遺伝子工学的に改変した抗体には、たとえば抗体の特性を改善させるために、Vおよび/またはV内のフレームワーク残基に改変を行ったものが含まれる。典型的には、そのようなフレームワークの改変は抗体の免疫原性を減少させるために行う。たとえば、一手法は、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列へと「逆突然変異」させることである(「生殖系列化」とも呼ばれる)。より詳細には、体細胞突然変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。
【0116】
別の種類のフレームワークの改変は、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を突然変異させてT細胞エピトープを除去することによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法は「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公開第2003/0153043号にさらに詳述されている。フレームワークまたはCDR領域内に行った改変に加えて、またはその代わりに、典型的には血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性の細胞毒性などの抗体の1つまたは複数の機能特性を変更させるために、Fc領域内に改変が含まれるように本発明の抗体を遺伝子工学的に改変し得る。さらに、本発明の抗体を化学修飾し得る(たとえば、1つもしくは複数の化学部分を抗体に付着させることができる)、またはそのグリコシル化を変更するために改変し得る。
【0117】
本発明によって企図される、本明細書中の抗体の別の改変はPEG化である。抗体は、たとえば、抗体の生物学的(たとえば血清)半減期を増加させるためにPEG化することができる。抗体をPEG化するために、典型的には、抗体またはその断片を、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)が含まれるポリマーと、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片と付着される条件下で反応させる。あるいは、反応性PEG分子(または類似の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介してPEG化を実施する。本明細書中で使用する用語「ポリエチレングリコール」とは、(C1〜C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のうちの任意のものを包含することを意図する。特定の実施形態では、PEG化する抗体は脱グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化する方法は当技術分野で知られており、本発明の抗体に適用することができる。
【0118】
抗体を遺伝子工学的に改変する方法
上述のように、本明細書中に開示したVおよびV配列を有する選択的抗トファシチニブ抗体を使用して、Vおよび/もしくはV配列、またはそれに付着した定常領域(複数可)を改変させることによって新しい抗トファシチニブ抗体を作出することができる。したがって、本発明の別の態様では、本発明の抗トファシチニブ抗体の構造的特徴を使用して、トファシチニブと結合するが代謝物1および/または代謝物2とは実質的に結合しないなどの、本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する構造的に関連する抗トファシチニブ抗体を作出する。たとえば、5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5、12H4.G2、16F10.E6、および/もしくは12D4.G6の1つもしくは複数のCDR領域、またはその突然変異体を、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換えによって組み合わせて、上述のように、追加の、組換えによって遺伝子工学的に改変した抗トファシチニブ抗体を作出することができる。他の種類の改変には、以前のセクションに記載したものが含まれる。遺伝子工学的改変のための出発物質は、本明細書中に提供するVおよび/もしくはV配列のうちの1つもしくは複数、またはその1つもしくは複数のCDR領域である。遺伝子工学的に改変した抗体を作出するために、本明細書中に提供するVおよび/もしくはV配列のうちの1つもしくは複数、またはその1つもしくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわちタンパク質を発現させる)ことは必要ではない。そうではなく、配列(複数可)中に含有される情報を、元の配列(複数可)に由来する「第二世代」配列(複数可)を作出するための出発物質として使用し、その後、「第二世代」配列(複数可)を調製し、タンパク質として発現させる。
【0119】
標準の分子生物学技法を使用して変更された抗体配列を調製および発現させることができる。
【0120】
任意選択で、変更された抗体配列(複数可)によってコードされている抗体は、本明細書に記載の抗トファシチニブ抗体の機能特性のうちの1つ、一部、またはすべてを保持するものであり、機能特性には、それだけには限定されないが、
(i)式IIのトファシチニブ代謝物1と実質的に結合しないこと、および/または
(ii)式IIIのトファシチニブ代謝物2と実質的に結合しないこと
が含まれる。
【0121】
変更された抗体の機能特性は、当技術分野で利用可能および/または本明細書中に記載の標準のアッセイ、ならびに当技術分野で知られているものまたは将来発見されるものを使用して評価することができる。
【0122】
本発明の抗体を遺伝子工学的に改変する方法の特定の実施形態では、突然変異は、抗トファシチニブ抗体コード配列の全体または一部に沿ってランダムにまたは選択的に導入することができ、その結果生じる改変抗トファシチニブ抗体を、結合活性および/または本明細書中に記載の他の機能特性についてスクリーニングすることができる。突然変異方法は当技術分野で周知である。
【0123】
本発明のモノクローナル抗体の製造
本発明のモノクローナル抗体(mAbs)は、慣用のモノクローナル抗体方法を含めた様々な技法によって製造することができる。また、本発明のマウス、ラット、ウサギ、ラクダおよびヒトモノクローナル抗体は、これらまたは多くの他の種から免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して調製することができる。抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ方法は当技術分野で確立されており、免疫化した動物もしくはヒトまたは元の出発物質が免疫化した動物に由来しないナイーブファージディスプレイライブラリから調製したファージディスプレイライブラリが包含される。ファージディスプレイは当技術分野で周知であり、たとえば、米国特許第5,223,409号、WO91/17271号、WO92/20791号、およびWO92/15679号に記載されている。
【0124】
また、本発明のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体をコードしている核酸を含む宿主細胞を適切な条件下で培養し、前記抗体またはその抗原結合部分を回収することによって調製することができる。そのような宿主細胞培養方法は当技術分野で周知である。
【0125】
使用方法
本開示は、トファシチニブを含有すると推測される試料を提供するステップと、抗体とトファシチニブとの結合に適した条件下で試料または試料抽出物をトファシチニブに特異的な抗体と接触させて、アッセイ混合物を形成するステップと、抗体とトファシチニブとの結合を検出するステップとを含む、試料中のトファシチニブの存在または濃度を評価する方法をさらに提供する。
【0126】
別の実施形態では、本開示は、試料中のトファシチニブの濃度を決定する方法を提供する。この方法は、検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む標識された競合相手を提供するステップと、トファシチニブと結合するが代謝物1および/または2とは結合しない選択的抗トファシチニブ抗体を提供するステップと、試料、選択的抗トファシチニブ抗体、および標識された競合相手を合わせるステップであって、試料中のトファシチニブが、選択的抗トファシチニブ抗体との結合について標識された競合相手と競合する、ステップと、標識の検出によって抗体と結合していない標識された競合相手の量を測定することによって試料中のトファシチニブの濃度を決定するステップとを含む。例示的な一実施形態では、標識された競合相手(トファシチニブ)の量を、トファシチニブを含有しない試料中で検出し、試料中で検出された標識の量を、トファシチニブが存在し得る場合に存在する標識の量と比較する。トファシチニブの非存在で検出された標識の量と、トファシチニブを含有すると推測される試料中の標識の量との間の差を測定する。
【0127】
別の実施形態では、本開示は、試料中のトファシチニブの存在または非存在を決定するための競合的免疫アッセイキットを提供する。酵素連結免疫アッセイ(ELISA)などの例示的な競合的免疫アッセイキットは、トファシチニブと特異的に結合することができる抗体と、検出可能な標識とコンジュゲートさせたトファシチニブ化合物とを含み、コンジュゲートさせたトファシチニブ化合物は、試料中のトファシチニブと競合して抗体と結合するように構成されており、試料中のトファシチニブが治療薬モニタリング濃度で存在する場合に、標識は試料中のトファシチニブの濃度の指標となるシグナルを提供する。
【0128】
一実施形態では、本開示は、トファシチニブの治療的範囲内の薬物濃度で試料中のトファシチニブの存在を決定するための競合的免疫アッセイを提供する。しかし、これは、より広い範囲にわたる情報を提供するために有用な場合があり、免疫アッセイ範囲は治療的範囲よりも一般に広いことを理解されたい。したがって、治療薬の濃度をモニタリングする免疫アッセイは、より広い範囲のトファシチニブ濃度にわたる感度を提供し得る。一態様では、競合的免疫アッセイは、約0〜約1500ng/mlの範囲の濃度で試料中のトファシチニブの存在をモニタリングするために適している。別の態様では、競合的免疫アッセイは、約5〜約1215ng/mlの範囲の濃度で試料中のトファシチニブの存在をモニタリングするために適している。別の態様では、競合的免疫アッセイは、約5〜約500ng/mlの範囲の濃度で試料中のトファシチニブの存在をモニタリングするために適している。別の態様では、競合的免疫アッセイは、約5〜約405ng/mlの範囲の濃度で試料中のトファシチニブの存在をモニタリングするために適している。別の態様では、競合的免疫アッセイは、約15〜約1215ng/mlの範囲の濃度で試料中のトファシチニブの存在をモニタリングするために適している。
【0129】
1つの競合的免疫アッセイでは、標識された競合相手は、免疫原性トファシチニブコンジュゲートと同じまたは類似の連結を使用して、トファシチニブから誘導し得る。一部の競合的免疫アッセイでは、トファシチニブが抗トファシチニブ抗体と結合するよりも低い特異性で抗トファシチニブ抗体と結合し、トファシチニブの存在下では標識された競合相手がより容易に置換されることを可能にする標識された競合相手が望ましい。
【0130】
また、本明細書中に記載した抗体、免疫原性トファシチニブコンジュゲート、標識された競合相手および/または他のコンジュゲートは、様々な検出系を用いたいくつかの他の均一および不均一免疫アッセイのうちの任意のものと共に使用するためにも適している。本明細書中に提示した例は限定することを意図しない。
【0131】
したがって、本発明は、トファシチニブを検出するための免疫アッセイで使用するための免疫原およびコンジュゲートの調製に有用な、トファシチニブコンジュゲートを提供する。本発明によるトファシチニブ類似体を免疫原性担体物質とカップリングさせることによって、トファシチニブを検出するための免疫アッセイの有用な試薬であるポリクローナルまたはモノクローナル抗体を製造および単離することができる。カップリングは、標識または担体を結合させる任意の化学反応によって達成することができる。
【0132】
例示的なトファシチニブ免疫アッセイは、ポリクローナルまたはモノクローナルのどちらかであることができる抗トファシチニブ抗体を用いる。例示的な競合的免疫アッセイでは、使用する抗体調製物は本明細書中に記載の免疫原によって誘導し、緩衝液などの水溶液中で配合する、またはアジュバントもしくは類似の組成物中で提供する。誘導された抗体は、トファシチニブに対する特異性を決定するために試験することができる。
【0133】
また、本明細書中に記載した抗体および標識された競合相手は、様々な検出系を用いたいくつかの他の均一および不均一免疫アッセイのうちの任意のものと共に使用するためにも適している。
【0134】
キット
本発明は、少なくとも1つの選択的抗トファシチニブ抗体を含む、試料中のトファシチニブの濃度を決定するためのキットを提供する。一態様では、キットは、検出可能な標識とカップリングさせたトファシチニブを含む標識された競合相手をさらに含む。別の実施形態では、標識された競合相手は、抗トファシチニブ抗体との結合について試料中のトファシチニブと競合する。別の態様では、選択的抗トファシチニブ抗体は、免疫原性担体とカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートを使用して製造する。また、キットにはアプリケーターおよび/またはキットを使用するための取扱説明資料も含まれ得る。
【0135】
別の実施形態では、本発明には、トファシチニブと結合するが、式IIのトファシチニブ代謝物1および式IIIのトファシチニブ代謝物2からなる群から選択される少なくとも1つの代謝物とは実質的に結合しない、少なくとも1つの選択的トファシチニブ抗体を含む、試料中のトファシチニブの濃度を決定するためのキットが含まれる。一態様では、キットは、トファシチニブと結合するが、式IIのトファシチニブ代謝物1とは実質的に結合しないかつ式IIIのトファシチニブ代謝物2と実質的に結合しない、少なくとも1つの選択的トファシチニブ抗体を含む。一態様では、キットはアプリケーターをさらに含む。別の態様では、キットは、キットを使用するための取扱説明資料を含む。
【0136】
一態様では、キットは、5ng/ml〜1215ng/mlの範囲の濃度のトファシチニブを検出することができる。別の態様では、キットは、5ng/ml〜405ng/mlの範囲の濃度のトファシチニブを検出することができる。さらに別の態様では、キットは、15ng/ml〜1215ng/mlの範囲の濃度のトファシチニブを検出することができる。
【0137】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきでない、以下の実施例によってさらに例示される。本出願全体にわたって引用するすべての図ならびにすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容は、明白に本明細書中に参考として組み込まれている。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
トファシチニブとコハク酸とのコンジュゲーション
40mgのコハク酸無水物および0.2mlのTEA(50mMのトリエタノールアミン、50mMのKCl、20mMのMgCl、pH7.5)を、0.8mlのアセトニトリル中に47mgのトファシチニブの溶液に加えた。反応混合物を60℃の温度で1時間振盪した。1時間で、さらに50mgのコハク酸無水物を反応混合物に加え、次いで60℃で振盪しながら追加の1時間のインキュベーションを行った。0〜30%のアセトニトリル(ACNN)の移動相勾配中のHPLC精製の後に精製された物質が得られ、25.2mgの式IVのトファシチニブヘミスクシネート中間体が得られた。
【0139】
【化17】
【0140】
(実施例2)
BSAとカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートの合成
1.5mgの式IVの化合物を2mlの1−エチル−3−[3−ジメチルアミノ−プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)コンジュゲーション緩衝液(0.1MのMES、0.9MのNaCl、0.02%のNaN、pH4.7)に溶かした。8mgのBSA(Pierce#77601から入手したImject BSA)を0.8mlの水に溶かし、その後、式IV溶液と混合した。次に、10mgのEDCを0.1mlのHOに溶かし、その後、すぐにBSA、式IVの混合物に加えた。混合物を2時間、室温で穏やかに振盪した。混合物を遠心処理し、トファシチニブ−BSAのコンジュゲート(式V)を含有する上清を、当業者に知られている標準の脱塩方法による脱塩によって精製した。トファシチニブとBSAとのコンジュゲーションは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)によって確認した。
【0141】
【化18】
【0142】
(実施例3)
KLHとカップリングさせたトファシチニブを含む免疫原性トファシチニブコンジュゲートの合成
1.5mgの式IVの化合物を1.5mlのEDCコンジュゲーション緩衝液に溶かした。10mgのEDCを0.2mlの水に溶かし、すぐに式IV溶液に加えた。式IV/EDC混合物を0.6mlの海洋養殖キーホールリンペットヘモシアニン(Mariculture Keyhole Limpet Hemocyanin)(mcKLH、Pierce#77601から入手)溶液(水中に10mg/ml)に加えた。反応混合物を室温で2時間、穏やかに振盪した。混合物を遠心処理し、トファシチニブ−KLHのコンジュゲート(式VI)を含有する上清を、当業者に知られている標準の脱塩方法による脱塩によって精製した。
【0143】
【化19】
【0144】
(実施例4)
トファシチニブ標識された競合相手の合成
トファシチニブ標識された競合相手の例示的な一例は、式VIIのビオチン化されたトファシチニブ誘導体である。式VIIのビオチン化されたトファシチニブ誘導体は以下のように製造した。
【0145】
18mgの式IVの化合物および20mgのEDCを1mlのEDCコンジュゲーション緩衝液に溶かした。化合物の溶解を助けるために0.1mlのアセトニトリルを加えた。10μlの5MのNaOHを加えることで溶液のpHを5.5に調節した。その後、23mgのアミン−PEG3−ビオチンを加えた。混合物を室温で終夜振盪した。終夜のインキュベーション後、ビオチン化されたトファシチニブ(式VII)を0〜30%のACNの移動相勾配中のHPLCによって精製し、14mgの精製化合物が得られた。
【0146】
【化20】
【0147】
(実施例5)
抗トファシチニブ抗体の製造。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を、慣用技術を使用して、本質的にKohlerおよびMilstein、Nature、256:495〜497(1975)に記載されているように製造した。3匹の雌のBalb/Cマウスを、腹腔内(ip)注射によって投与した、完全フロイントアジュバント中に100μgの実施例3の免疫原性トファシチニブ−KLHのコンジュゲートで免疫化した。不完全フロイントアジュバント中に50μg/マウスの免疫原性トファシチニブ−KLHのコンジュゲートを含む3回の連続的な注射を、初回注射後の10、20、および30日目にip投与した。血清を37日目に採取し、抗原に対して反応性のある抗体の存在を、以下に記載のように固相ELISAによって、実施例2の免疫原性トファシチニブ−BSAのコンジュゲートに対して決定した。
【0148】
固相ELISA: 実施例2の免疫原性トファシチニブ−BSAのコンジュゲートをマイクロタイタープレートのウェルに固定した。具体的には、マイクロタイタープレートを、コーティング緩衝液(0.2Mの炭酸緩衝液(BuPH炭酸−炭酸水素緩衝液パック、Pierceアイテム#28382)中の2〜10μg/mlのトファシチニブ−BSAのコンジュゲートを用いて、1〜2時間、室温で、または終夜、4℃でコーティングし、その後、遮断緩衝液(1%(w/v)のBSAを含有するPBS)を用いて、1時間、室温で、または終夜、4℃で飽和させ、洗浄緩衝液(0.5%(v/v)のTween 20を含有するPBS)で3回洗浄した。スクリーニングする抗体試料(すなわちマウス血清またはハイブリドーマ上清)を希釈剤(PBS中に0.1%のBSAの溶液)で希釈した。希釈した抗体試料をマイクロタイタープレートに加え、プレートを1〜2時間、室温でインキュベーションした。すべての未結合の物質を洗浄緩衝液で洗い流した後、結合した抗トファシチニブ抗体のレベルを、推奨されるまたは実験によって誘導した希釈率(通常は1/1000〜1/10,000)の、希釈剤中のウサギまたはヤギ抗マウスペルオキシダーゼとコンジュゲートさせた二次抗体(IgG特異的)を使用して決定した。30分間、室温でインキュベーションし、洗浄緩衝液で3回洗浄した後、発色基質であるOPD(o−フェニレンジアミン)を加え、その後、20分間色展開し、50μlの2N硫酸を加えることによって停止させた。490nmでの吸光度を測定した。図1は、固相ELISAによって決定した、血清抗体と実施例2のトファシチニブ−BSAのコンジュゲートとの結合を示すグラフである。図1中に実証されるように、抗原に対して反応性のある抗体がマウス1、2および3のそれぞれに存在していた。マウス3が最も高い力価(50%最大シグナルでの血清の希釈率として定義)を有していたため、このマウスをハイブリドーマ作製用に選択した。
【0149】
ハイブリドーマの作製:最も高い血清抗体価(50%最大シグナルでの血清の希釈率として定義)を実証するマウスであるマウス3に、25μgの抗原を含むブースト注射を与えた。3日後、マウスを屠殺し、その脾細胞を単離し、標準の融合プロトコルに従ってNS1骨髄腫細胞と融合させた。融合の10日後に、親クローンと呼ばれるこれらのクローン混合物を免疫原性トファシチニブ−BSAに対する固相ELISA(上述)によってスクリーニングして、トファシチニブと結合することができる抗体を分泌した親クローンを同定した。陽性親クローンをさらなる分析のために選択した。
【0150】
融合体から生じたこれらの陽性親クローンを96ウェルプレートから24ウェルプレートへと拡大し、クローンが依然として抗体を産生していることを確実にするために、3日後に再スクリーニングした。再スクリーニングから、陽性ハイブリドーマ(すなわち、免疫原性トファシチニブ−BSAのコンジュゲートと結合することができ、代謝物1−BSA、代謝物2−BSAとは結合しない抗体を分泌したハイブリドーマ)を含む選択されたウェルを将来使用するために凍結し、サブクローニングして陽性細胞系を単離した。
【0151】
免疫原性トファシチニブ−BSAのコンジュゲートと結合することができる抗体を分泌した選択された陽性親クローンを、限界希釈によってサブクローニングして、モノクローナルハイブリドーマ細胞系を得た。サブクローニングの約10日後、小量の培地をウェルから取り出し、固相ELISAによってスクリーニングして、抗体産生クローンを同定した。選択された陽性クローンを拡大し、クローンが依然として抗体を産生していることを確実にし、特異性を確認するために再スクリーニングした。クローン6D9.A5および12D4.G6を含めた、1つの親系列あたり2個のまでの陽性クローンを拡大して、それぞれ2個のバイアルを凍結した。また、1mlの上清も試験のために採取した。
【0152】
実施例5に上述した直接固相ELISAに加えて、実験試料中のトファシチニブを検出するための競合的免疫アッセイ様式を含めた代替の免疫アッセイ様式を開発した。例示的な競合的免疫アッセイプロトコルを以下に提供する。
【0153】
トファシチニブが強力な免疫抑制剤であることから考えると、トファシチニブに対する抗体の生成は驚くべきことであった。さらに驚くべきは、以下に示すように、これらがトファシチニブとその2つの代謝物とを識別し、トファシチニブと選択的に結合したが代謝物のどちらか一方または両方とは実質的に結合しなかったという、これらの抗体の精巧な選択性である。
【0154】
競合的抗トファシチニブ免疫アッセイ−1
実施例5に上述した直接固相ELISAを競合的ELISAに変え、ここでは、定義された量のモノクローナル抗体を免疫血清試料またはハイブリドーマ上清で置き換え、その後、競合相手(すなわち、トファシチニブ、トファシチニブ代謝物)をモノクローナル抗体溶液に加え、競合相手の存在および非存在下でのモノクローナル抗体とトファシチニブ−BSAのコンジュゲートとの結合を測定した。
【0155】
競合的抗トファシチニブ免疫アッセイ−2
マイクロタイタープレートを、コーティング緩衝液中の100μl/ウェルの1μg/mlの精製抗トファシチニブ抗体を用いて3時間、室温コーティングし、その後、300μl/ウェルの遮断緩衝液(1%の脱脂粉乳を含有するPBS)で30分間、室温で置き換え、洗浄緩衝液(0.5%のTween 20を含有するPBS)で3回洗浄した。ビオチン化されたトファシチニブ(0.03μg/ml)、トファシチニブ(1.0〜0.001μg/ml)、代謝物1または代謝物2などの非標識の競合相手、およびストレプトアビジン−HRP(1:16,000の希釈率、ロットに応じて変動し得る)の、100μl/ウェルの混合物を加え、2時間、室温でインキュベーションした。3回洗浄した後、100μlのOPD基質を加え、その後、20分間色展開し、50μlの2N硫酸を加えることによって反応を停止させた。450nmでの吸光度を測定した。
【0156】
競合的抗トファシチニブ免疫アッセイ−3
抗トファシチニブMAb(1/100〜1/1638400の希釈率)、ビオチン化されたトファシチニブ(1ng/ml)、およびトファシチニブ(1000〜0.001ng/ml)、代謝物1(400〜0.097ng/ml)または代謝物2などの非標識競合相手を含有する200μl/ウェルの混合物を、ヤギ抗マウスIgGで事前にコーティングしたプレートに加え、1〜2時間、室温でインキュベーションした。プレートを洗浄した後、200μlのストレプトアビジン−HRP(50ng/ml)を加え、その後、プレートを0.5〜1時間、室温でインキュベーションした。プレートを再度洗浄した後、200μlのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質を加え、その後、30分間色展開し、50μlの2N硫酸を加えることによって反応を停止させた。450nmでの吸光度を測定した。
【0157】
(実施例6)
抗トファシチニブモノクローナル抗体とビオチン化されたトファシチニブとの結合
選択された抗体を、トファシチニブとの結合について、標準のELISAによってさらに試験した。手短に述べると、合計34個のクローンを、ビオチン化されたトファシチニブとの結合についてスクリーニングした。ELISAの様式は以下のとおりであった。ビオチン化されたトファシチニブ(1ng/mL)を、1:100〜1:1,638,400の範囲の抗体希釈液と共に、事前にコーティングしたヤギ抗マウスIgGプレート上で1時間インキュベーションした。すべての未結合の物質を洗い流した後、ストレプトアビジン−HRPおよび関連する発色基質TMBを加え、その後、既知の方法に従ってビオチン化されたトファシチニブと抗体との結合を測定した。
【0158】
図2は、ELISAによって決定した、選択された抗トファシチニブ抗体とビオチン化されたトファシチニブとの結合を示すグラフである。11個の抗体が濃度依存性の様式でビオチン化されたトファシチニブと結合することが見出された。これらの抗体のうちの10個のデータを図2中に示し、抗体8B5.F2のデータは示されていない。
【0159】
これら11個のクローンをさらなる分析用に選択した。具体的には、これら11個のクローンを、トファシチニブ代謝物1との交差反応性について評価した。
【0160】
(実施例7)
抗トファシチニブモノクローナル抗体と代謝物1との結合
トファシチニブ代謝物を競合相手とした上述の競合的免疫アッセイ−3を使用して交差反応性を測定することによって、トファシチニブまたはその代謝物と結合するものとして抗体をさらに特徴づけた。
【0161】
本実施例では、競合的免疫アッセイを使用して、11個の抗トファシチニブモノクローナル抗体を、代謝物1との交差反応性についてスクリーニングした。抗トファシチニブMAb(1/100〜1/1638400の希釈率)、ビオチン化されたトファシチニブ(1ng/ml)、および代謝物1(400〜0.097ng/ml)を含有する200μl/ウェルの混合物を、ヤギ抗マウスIgGで事前にコーティングしたプレートに加え、1〜2時間、室温でインキュベーションした。プレートを洗浄した後、200μlのストレプトアビジン−HRP(50ng/ml)を加え、その後、0.5〜1時間、室温でインキュベーションした。プレートを再度洗浄した後、200μlのTMB基質を加え、その後、30分間展開し、50μlの2N硫酸を加えることによって停止させた。450nmでの吸光度を測定した。
【0162】
図3は、競合的免疫アッセイを使用して決定した、選択された抗トファシチニブ抗体の代謝物1に対する交差反応性を示すグラフである。図3中に実証されるように、4個の抗体が濃度依存性の様式で代謝物1と交差反応性を実証した(たとえば、クローン7C10.C11、1B2.B9、11G10.F12、および8B5.F2)。7個のクローン、たとえば、5A3.E5、10A6.C5、10F10.H5、6D9.A5(または6D9.A8)、12H4.G2、16F10.E6、および12D4.G6が、トファシチニブと結合したが、代謝物1とは検出可能に結合しなかったという点で選択的であった。7個のクローンのこれらのプロットは、図3中に示すグラフの上部をほぼまっすぐに横切る線として示されている。より詳細には、図3中に示すグラフを作成するために使用したデータは以下のとおりである。
【0163】
【表1】
【0164】
代謝物1と交差反応性を示さなかった7個のクローンを、親薬物を用いた阻害についてさらに試験した。
【0165】
代謝物1との交差反応性を示さなかった7個のモノクローナル抗体クローンの重鎖および軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を以下の表2中に提供する。
【0166】
【表2-1】
【0167】
【表2-2】
【0168】
(実施例8)
抗原の競合
本実施例では、競合的免疫アッセイ様式を使用して、トファシチニブが、代謝物1と交差反応しなかった選択された抗体クローンの、ビオチン化されたトファシチニブと結合する能力を阻害したかどうかを決定した。代謝物1と交差反応しなかった選択された抗体クローンを、初期抗体滴定から決定されたそのEC50希釈率でアッセイした(図2を参照)。抗トファシチニブMAb(1/100〜1/1638400の希釈率)、ビオチン化されたトファシチニブ(1ng/ml)、および非標識のトファシチニブ(1000〜0.001ng/ml)を含有する200μl/ウェルの混合物を、ヤギ抗マウスIgGで事前にコーティングしたプレートに加え、1〜2時間、室温でインキュベーションした。プレートを洗浄した後、200μlのストレプトアビジン−HRP(50ng/ml)を加え、その後、0.5〜1時間、室温でインキュベーションした。プレートを再度洗浄した後、200μlのTMB基質を加え、その後、30分間展開し、50μlの2N硫酸を加えることによって停止させた。450nmでの吸光度を測定した。
【0169】
以下の表3中に実証されるように、クローン6D9.A8および12D4.G6で競合が見られた。具体的には、非標識のトファシチニブによるビオチン化されたトファシチニブとの結合の阻害がクローン6D9.A8および12D4.G6で観察され、ED50はそれぞれ202ng/mLおよび104ng/mLであった。以下の表3は本実験のED20、ED50およびED80を示す。
【0170】
【表3】
【0171】
(実施例9)
抗トファシチニブモノクローナル抗体と代謝物1および代謝物2との結合:
2つのクローン6D9.A8および12D4.G6を、代謝物1および2に対する交差反応性について試験した。本実験では、代謝物を200,000〜200ng/mlの濃度で調製し、抗体クローンを表1中に示すそのEC50希釈率で調製した。代謝物を、ビオチン化されたトファシチニブ(1ng/mL)および抗体と共に、事前にコーティングしたヤギ抗マウスIgGプレート上で1時間インキュベーションした。すべての未結合の物質を洗い流した後、ストレプトアビジン−HRPおよび関連する発色基質TMBを加え、その後、既知の方法に従ってビオチン化されたトファシチニブと抗体との結合を測定した。
【0172】
以下の表4は、代謝物1および代謝物2に対するクローン6D9.A8および12D4.G6の交差反応性を要約している。
【0173】
【表4】
【0174】
表4中に示すように、クローン6D9.A8は代謝物1および2に対してそれぞれ3.68%および0.38%の交差反応性を示し、クローン12D4.G6は代謝物1および2に対してそれぞれ4.17%および0.15%の交差反応性を示した。これらのデータは、これらの抗体が代謝物1および2と実質的に結合しないことを実証している。
【0175】
(実施例10)
トファシチニブを用いた検量線
本実施例では、選択された抗体のトファシチニブに対する相対的親和性を、既知濃度の標識したトファシチニブ(たとえば0.001〜1000ng/ml)を含有する溶液を使用して決定した。図4は、ELISAによって決定した、本発明の選択されたモノクローナル抗体の最適希釈範囲、たとえば、6D9.A8(白丸)および12D4.G6(白四角)を示すグラフである。表5はELISAのアッセイ条件および結果を要約している。表6は、図5中に示すグラフを作成するために使用したデータの値を示す。
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
図4および表5中に実証されるように、クローン12D4.G6は5〜405ng/mlの標準範囲を示し(図4)、これは、このモノクローナル抗体が5ng/mlと低いレベルのトファシチニブを検出できることを実証している。また、図4は、6D9.A8の標準範囲が15〜1215ng/mlであることも示した。したがって、これら2つの抗体の併用は、約5ng/ml〜約1215ng/mlの用量範囲の試料中のトファシチニブの検出を提供する。
【0179】
(実施例11)
ヘパリン処理したヒト血漿におけるスパイクおよび回収率
本実施例では、トファシチニブを市販のヘパリンヒト血漿内にスパイクして、ヒト血漿試料におけるトファシチニブの直線性および回収率に対する希釈の効果を決定した。トファシチニブを4864ng/mlの濃度でヘパリン−血漿(ヒト)内にスパイクし、2倍に連続希釈して、血漿に対する耐用を試験アッセイした。パーセント希釈の直線性およびパーセント回収率は、実施例5に記載のELISAアッセイによって計算した。
【0180】
【表7】
【0181】
表7に実証されるように、市販供給源から入手し、アッセイ緩衝液中で少なくとも1:8に希釈した血漿試料は、許容される希釈の直線性および回収率を有していた。2倍および4倍に希釈した試料は予想よりも低い吸光度値を返し、これは、これらの低い希釈率での試料マトリクス干渉を示している。これらのデータは、本発明の抗体が、それだけには限定されないが血漿などの複合生体試料においてさえも、トファシチニブの存在および濃度を正確に検出できることを実証している。
【0182】
(実施例12)
クローン6D9.A5の特徴づけ
本実施例では、抗体クローン6D9.A5、6D9.A8、または12D4.G6を使用して、トファシチニブ用量応答曲線(0.001〜1000ng/ml)をアッセイにおいて実行した。結果を表8および図5中に示す。さらに、図5中に示すグラフを作成するために使用したデータは、以下の表9中に記載されている。本明細書中に開示したデータは、6D9.A5が6D9.A8と同じ標準範囲(15〜1215ng/ml)を有しており、また、約15ng/mlと低い濃度および約1215ng/mlと高い濃度の試料中のトファシチニブを検出できることを示している。
【0183】
【表8】
【0184】
【表9】
【0185】
したがって、置き換えたサブクローン抗体6D9.A5(6D9.A8を置き換える)は、サブクローン抗体6D9.A8と比較して、親薬物と類似の用量応答活性を実証した。さらに、本明細書中に開示したデータは、6D9.A5および6D9.A8抗体が同様に、抗体12D4.G6と比較して親薬物のより強力な結合剤であることを実証している。
【0186】
トファシチニブ代謝物を競合相手として使用した競合的免疫アッセイ−3、またはマイクロタイタープレートをトファシチニブ−BSAのコンジュゲートでコーティングした実施例5中で言及した直接ELISAアッセイを使用して、代謝物に対する交差反応性を測定することによって、6D9.A5抗体をさらに特徴づけた。表10中に示すデータは、クローン6D9.A5が、クローン6D9.A8およびクローン12D4.G6で観察されたものと類似の、代謝物に対する交差反応性有していたことを実証している。すなわち、12D4.G6と同様、6D9.A5は代謝物1または2と実質的に結合しなかった。
【0187】
【表10】
【0188】
開示した教示を様々な応用、方法、キット、および組成物に言及して記載したが、本明細書および以下の特許請求した発明の教示から逸脱せずに様々な変化および改変を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示した教示をより良好に例示するために提供し、本明細書中に提示した教示の範囲を限定することを意図しない。本教示をこれらの例示的な実施形態に関して記載したが、当業者には、必要以上の実験を行わずに、これらの例示的な実施形態の数々の変形および改変が可能であることを容易に理解されるであろう。すべてのそのような変形および改変が本教示の範囲内にある。
【0189】
特許、特許出願、論文、教科書などの本明細書中で引用したすべての参考文献、およびその中に引用されている参考文献は、既にそうでない限り、本明細書中にその全体で参考として組み込まれている。それだけには限定されないが、定義された用語、用語の使用、記載した技法などを含めて、組み込まれている文献および類似の試料のうちの1つまたは複数が本出願と異なるまたは矛盾する場合は、本出願が支配する。
【0190】
前述の説明および実施例は、本発明の特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の形態を説明する。しかし、前述したものが文字上でいかに詳細であるように見え得る場合でも、本発明を多くの方法で実施することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2015527987000001.app
【国際調査報告】