(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528043(P2015-528043A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】分散アゾ染料、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C09B 43/42 20060101AFI20150828BHJP
C09B 67/22 20060101ALI20150828BHJP
D06P 1/18 20060101ALI20150828BHJP
D06P 3/54 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
C09B43/42CSP
C09B67/22 A
D06P1/18
D06P3/54 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-523473(P2015-523473)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2013063346
(87)【国際公開番号】WO2014016072
(87)【国際公開日】20140130
(31)【優先権主張番号】12178163.7
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
(71)【出願人】
【識別番号】300052420
【氏名又は名称】ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラウク,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】ノバック,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ペーターマン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ドライア,ロミオ
【テーマコード(参考)】
4H057
【Fターム(参考)】
4H057AA01
4H057AA02
4H057BA08
4H057BA24
4H057DA01
4H057DA17
(57)【要約】
【課題】
分散アゾ染料、その製造方法及びその使用を提供すること。
【解決手段】
本発明は式
【化1】
[式中、
R
1は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子により置換されたC
1−C
12アルキル基(該アルキル基は基
−O−、−S−、−NR
4−、−COO−又は−OOC−により1回以上中断されていて
もよい)を表し;
R
4は水素原子又はC
1−C
12アルキル基を表し;
R
2はシアノ基を表し且つR
3はハロゲン原子を表すか、又はR
2はハロゲン原子を表し
且つR
3はシアノ基を表し;そして
Arは炭素環式基又は複素環芳香族基を表す。]
で表されるアゾ染料、その製造方法、前記染料を含有する混合物、並びに半合成の及び特に合成の疎水性繊維材料、より特に織物材料の染色又は捺染におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、
R
1は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルコキシ基、C
1−C
12アルキルカルボニ
ル基、C
7−C
25アリールカルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハ
ロゲン原子により置換されたC
1−C
12アルキル基(該アルキル基は基−O−、−S−、
−NR
4−、−COO−又は−OOC−により1回以上中断されていてもよい)を表し;
R
4は水素原子又はC
1−C
12アルキル基を表し;
R
2はシアノ基を表し且つR
3はハロゲン原子を表すか、又はR
2はハロゲン原子を表し
且つR
3はシアノ基を表し;そして
Arは炭素環式基又は複素環芳香族基を表す。]
で表されるアゾ染料。
【請求項2】
R1が未置換のC1−C12アルキル基を表す、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項3】
R1がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基又はn−ブチル基を表す
、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項4】
R2がシアノ基を表し且つR3がブロモ原子を表す、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項5】
Arが式(2a)乃至式(2h)又は式(2i)
【化2】
【化3】
[式中
R
5は水素原子、クロロ原子、メチル基、メトキシ基、2−ヒドロキシエチル基又は−
COOR
19(R
19は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有する)を表
し;
R
6は水素原子、ヒドロキシ基、クロロ原子、トリフルオロメチル基、−OR
20、−O
CH
2COOR
20、−NH−CO−R
20又は−NH−SO
2−R
20(R
20は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有する)を表し;
R
7及びR
8はそれぞれ互いに独立して、請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味
の1つを有し;
Xはエチレン基、トリメチレン基又はオキシエチレン基を表し;
R
9はビニル基、アリル基、ベンジル基を表すか、又は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
10はヒドロキシ基又はフェニルアミノ基を表し;
R
11は水素原子、−COOR
21又は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルキル基、
C
1−C
12アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子にに
より置換されたC
6−C
24アリール基を表し;
R
21は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
12は水素原子又は−SO
2−NHR
22(R
22は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有する)を表し;
R
13は水素原子又はヒドロキシ基を表し;
R
14はC
1−C
12アルキル基又はトリフルオロメチル基を表し:
R
15はシアノ基又は−CONH
2を表し;
R
16は請求項1に記載のR
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
23及びR
24はそれぞれ互いに独立して、水素原子、ビニル基、アリル基又は未置換の又はシアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C
1−C
6アルコキシ基、C
2−C
8アルコキシアルコキシ基若しくはC
6−C
24アリール基により置換されたC
1−C
6アルキル基を表
し;そして
R
18は水素原子、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシ基又は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子により置換されたC
6−C
24アリール基を表す]で表される基
である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項6】
Arが式(2a)(式中、R6は−NH−CO−R20を表す)で表される基である、請
求項5に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項7】
Arが式(2a)(式中、R7及びR8はそれぞれ互いに独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、アリル基、ベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、2−フェニルエチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル基又は2−ヒドロキシ−3−i−プロポキシプロピル基を表す)で表される基である、請求項5に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項8】
Arが式(2a)(式中、R5は水素原子、メチル基又はメトキシ基を表す)で表され
る基である、請求項5に記載の式(1)で表されるアゾ染料。
【請求項9】
式(3)
【化4】
(式中、R
1及びArは請求項1に定義された通りであり、そしてHalはハロゲン原子
を表す)で表されるアゾ染料を、少なくとも1種のアルカリ金属シアン化物と少なくとも1種の重金属シアン化物との混合物と反応させることを含み、ここで、シアン化物の総量0.5モル−1.5モルが式(3)で表される染料1モル当り使用される、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料の製造方法。
【請求項10】
式(1)
【化5】
で表されるアゾ染料、
式(3)
【化6】
で表されるアゾ染料、及び
式(4)
【化7】
で表されるアゾ染料
(式中、R
1及びArは請求項1に定義された通りであり、そしてHalはハロゲン原子
を表す)
を含む混合物。
【請求項11】
(A)10−90質量%、好ましくは20−80質量%の、上記で定義した式(1)で表される染料、及び
(B)10−90質量%、好ましくは20−80質量%の、成分(A)に記載の染料と構造的に異なる上記で定義した式(1)で表される染料
を含む染料混合物。
【請求項12】
少なくとも1種の、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料及び少なくとも1種の、さらなる分散染料を含む二色性又は三色性染料混合物。
【請求項13】
半合成の又は合成の疎水性繊維材料を染色又は捺染する方法であり、当該方法において請求項1に記載の式(1)で表される染料を前記材料に塗布するか又は前記材料中に混入する、方法。
【請求項14】
半合成の及び特に合成の疎水性繊維材料、より特に織物材料の染色又は捺染における請求項1に記載の式(1)で表される染料の使用。
【請求項15】
請求項13に記載の方法により染色又は捺染された、半合成の又は特に合成の疎水性繊維材料、より特に織物材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアゾ化成分として、アミノフタルイミドに基づく分散アゾ染料、そのような染料の製造方法、並びに半合成の及び特に合成の疎水性繊維材料、より特に織物材料の染色又は捺染におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアゾ化成分として、アミノフタルイミドに基づくアゾ染料は、例えば、米国特許第3,980,634号明細書から知られている。しかしながら、現在知られている染料を使用して得られた染料物又は捺染物はあらゆる場合において、今日の要求、特に耐光性及び洗濯堅牢度に関して満足させるものではない。従って、特に良好な洗濯堅牢度特性を有する新しい染料に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,980,634号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、我々は特定のハロゲン−及びシアノ置換されたフタルイミドに基づくアゾ染料がとても良好な耐光性及び優れた洗濯堅牢度結果を示すことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)
【化1】
[式中、
R
1は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルコキシ基、C
1−C
12アルキルカルボニ
ル基、C
7−C
25アリールカルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハ
ロゲン原子により置換されたC
1−C
12アルキル基(該アルキル基は基−O−、−S−、
−NR
4−、−COO−又は−OOC−により1回以上中断されていてもよい)を表し;
R
4は水素原子又はC
1−C
12アルキル基を表し;
R
2はシアノ基を表し且つR
3はハロゲン原子を表すか、又はR
2はハロゲン原子を表し
且つR
3はシアノ基を表し;そして
Arは炭素環式基又は複素環芳香族基を表す。]
で表されるアゾ染料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
アルキル基を意味するいかなる基も直鎖の又は分岐したアルキル基であり得る。
【0007】
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、
n−デシル基及びn−ドデシル基が挙げられる。
【0008】
C
1−C
12アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イ
ソプロポキシ基、、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−オクトキシ基、i−オクトキシ基、n−デコキシ基又はn−ドデコキシ基であり得る。
【0009】
ハロゲンを意味するいかなる基もフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり得、特に塩素原子又は臭素原子であり得る。
【0010】
アゾ染料の製造に関して、炭素環式の又は複素環芳香族のカップリング成分Ar−Hは当業者によく知られている。
【0011】
適した基Arはベンゼン、ナフタレン、ピラゾロン、チオフェン、チアゾール、キノリン又は6−ヒドロキシピリドン−(2)系のカップリング成分の基である。
【0012】
好ましいものは、R
1が未置換のC
1−C
12アルキル基を表す、式(1)で表されるアゾ染料である。
【0013】
R
1がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基又はn−ブチル基を表す
、式(1)で表されるアゾ染料が特に好ましい。
【0014】
式(1)で表される、最も好ましいアゾ染料において、R
1はエチル基である。
【0015】
Arは好ましくは式(2a)乃至式(2h)又は式(2i)
【化2】
【化3】
[式中
R
5は水素原子、クロロ原子、メチル基、メトキシ基、2−ヒドロキシエチル基又は−
COOR
19(R
19は上記R
1に対して与えられた意味の1つを有する)を表し;
R
6は水素原子、ヒドロキシ基、クロロ原子、トリフルオロメチル基、−OR
20、−O
CH
2COOR
20、−NH−CO−R
20又は−NH−SO
2−R
20(R
20は上記R
1に対し
て与えられた意味の1つを有する)を表し;
R
7及びR
8はそれぞれ互いに独立して、上記R
1に対して与えられた意味の1つを有し
;
Xはエチレン基、トリメチレン基又はオキシエチレン基を表し;
R
9はビニル基、アリル基、ベンジル基を表すか、又は上記R
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
10はヒドロキシ基又はフェニルアミノ基を表し;
R
11は水素原子、−COOR
21又は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルキル基、
C
1−C
12アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子にに
より置換されたC
6−C
24アリール基を表し;
R
21は上記R
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
12は水素原子又は−SO
2−NHR
22(R
22は上記R
1に対して与えられた意味の1つを有する)を表し;
R
13は水素原子又はヒドロキシ基を表し;
R
14はC
1−C
12アルキル基又はトリフルオロメチル基を表し:
R
15はシアノ基又は−CONH
2を表し;
R
16は上記R
1に対して与えられた意味の1つを有し;
R
23及びR
24はそれぞれ互いに独立して、水素原子、ビニル基、アリル基又は未置換の又はシアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C
1−C
6アルコキシ基、C
2−C
8アルコキシアルコキシ基若しくはC
6−C
24アリール基により置換されたC
1−C
6アルキル基を表
し;そして
R
18は水素原子、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシ基又は未置換の又は1つ以上の、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子により置換されたC
6−C
24アリール基を表す]で表される基
である。
【0016】
特に好ましいものはArが式(2a)で表される基を表す、上記に定義された式(1)で表される染料である。
【0017】
さらに好ましいものは、Arが式(2a)(式中、R
6は−NH−CO−R
20を表し且
つR
20は上記に定義された通りである)で表される基を表す、式(1)で表される染料である。
【0018】
式(2a)において、R
7及びR
8はそれぞれ互いに独立して、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、アリル基、ベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−ヒドロキシエチル基、2−アセトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、2−フェニルエチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−i−プロポキシプロピル基又は式
【化4】
で表される基である。
【0019】
さらに、好ましいものはArが式(2a)(式中、R
5は水素原子、メチル基又はメト
キシ基を表す)で表される基を表す、式(1)で表されるアゾ染料である。
【0020】
本発明はまた、式(3)
【化5】
(式中、R
1及びArは上記に定義された通りであり、そしてHalはハロゲン原子を表
す)で表されるアゾ染料を、少なくとも1種のアルカリ金属シアン化物と少なくとも1種の重金属シアン化物との混合物と反応させることを含み、ここで、シアン化物の総量0.30モル−1.25モルが式(3)で表される染料1モル当り使用される、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料の製造方法に関する。
【0021】
式(3)で表される染料は、例えば米国特許第3,980,634号明細書から知られているか、又は既知の方法に従って製造できる。
【0022】
式(1)で表される請求項に記載の染料をもたらすジブロモ化合物のハロゲン/シアノ交換は同じく、例えば国際公開第2002/068539号からそれ自体知られている。
予想外に、アルカリ金属シアン化物と重金属シアン化物との混合物の使用は部分的なシアノ置換に対する反応の制限を可能する;すなわち、ごく少量のジシアノ化合物だけが生じる。
【0023】
この反応は好ましくは、DMF、DMAc、NMP、NEP、DMSO、テトラメチル尿素、スルホラン、HMPT、ピリジン、ピリジン誘導体のような、非プロトン性極性溶媒、および2種以上の非プロトン性極性溶媒の混合物中で実施される。
【0024】
シアノ化剤はNaCN又はKCNのような、少なくとも1種のアルカリ金属シアン化物と、CuCNのような、少なくとも1種の重金属シアン化物との混合物である。モル比 アルカリシアン化物/重金属シアン化物は好ましくは1:20乃至1:1であり、特に1:15乃至1:5である。
【0025】
シアン化物の総量が式(3)で表される染料1モル当り、0.25−1.25モル、好ましくは0.4−1.0モルであるような量で、シアン化物の混合物は合目的に使用される。
【0026】
ジハロゲン化合物(3)の反応性により、反応温度は広範囲内で変化し得る。好ましくは、反応は0℃乃至150℃、より好ましくは室温(RT)乃至130℃及び特に室温(RT)乃至60℃の温度で実施される。
【0027】
式(3)で表される染料とシアン化物混合物との反応で得られる反応生成物は主な生成物として式(1)で表される染料と、反応条件[溶媒、反応時間、温度、遊離体の割合]にもよるが、少量の、式(1b)で表される異性体の染料および式(3)で表される遊離体と、式(4)で表されるジシアノ化合物とを含む。
【化6】
【0028】
織物繊維への染料塗布について、他の染料から主な生成物(1a)を分離する必要はない、なぜなら原産物として得られる染料混合物は同じく、とても良好なビルドアップ性を有し且つ高い繊維−水平度(fibre−levelness)と表面−平坦性(surface−levelness)を示すポリエステルを染色するからである。
【0029】
したがって、発明はまた
式(1)
【化7】
で表されるアゾ染料、
式(3)
【化8】
で表されるアゾ染料、及び
式(4)
【化9】
で表されるアゾ染料
(式中、R
1及びArは請求項1に定義された通りであり、そしてHalはハロゲン原子
、特にブロモ原子を表す)
を含む混合物に関する。
【0030】
特定の色調(色合い)を調整するために、2種以上の異なる、式(1)で表される染料を組み合わせるのが良い。
したがって、発明はさらに、
(A)10−90質量%、好ましくは20−80質量%の、上記で定義した式(1)で表される染料、及び
(B)10−90質量%、好ましくは20−80質量%の、成分(A)に記載の染料と構造的に異なる上記で定義した式(1)で表される染料
を含む染料混合物に関する。
【0031】
本発明によるアゾ染料及び染料混合物もまた、他の染料と一緒に、混合された色調の調整に十分に使用できる。
【0032】
本発明による式(1)で表される染料と有利に混合可能な、さらに適した染料は、例えば、C.I.ディスパースバイオレット(Disperse Violet)107、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)60、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)284、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)295、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)337、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)354、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)365、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)368、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)378、C.I.ディスパースブルー(Disperse Blue)380および国際公開2009/013122号に開示されたブルー染料である。
【0033】
本発明によるアゾ染料及び染料混合物は、二色性の又は三色性の染色方法又は捺染技術において、特に適した成分として使用できる。
【0034】
したがって、本発明はさらに、少なくとも1種の、請求項1に記載の式(1)で表されるアゾ染料及び少なくとも1種の、さらなる分散染料を含む二色性又は三色性染料混合物に関する。
【0035】
本発明による染料及び染料混合物は、半合成の及び特に合成の疎水性繊維材料、より特に織物材料の染色又は捺染に使用することができる。このような半合成の又は合成の疎水性繊維材料を含む混紡織物でできている織物材料もまた、本発明による染料を使用して染色又は捺染することができる。
【0036】
考慮される半合成繊維材料は、特に、2・1/2−酢酸セルロース及び三酢酸セルロースである。
【0037】
合成疎水性繊維材料は特に直線状の、芳香族ポリエステル類、例えばテレフタル酸とグリコール類、特にエチレングリコールの芳香族ポリエステル類、又はテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの縮合生成物;ポリカーボネート類、例えばα,α−ジメチル−4,4−ジヒドロキシ−ジフェニルメタンとホスゲンのポリカーボネート類、及びポリ塩化ビニル又はポリアミドに基づく繊維からなる。
【0038】
本発明による染料及び染料混合物の繊維材料への適用は、既知の染色方法に従ってもたらされる。例えば、ポリエステル繊維材料は慣用のアニオン性又は非イオン性分散剤及び、所望により、慣用の膨張剤(担体)の存在下において、80乃至140℃の温度で、水性分散液からの吸尽法で染色される。2・1/2酢酸セルロースは好ましくは65乃至85℃で染色され、三酢酸セルロースは好ましくは65乃至115℃で染色される。
【0039】
本発明による染料及び染料混合物は染浴中で同時に存在している羊毛及び綿を着色しないか又はそのような材料を(非常に適した条件にて)ほんのわずかしか着色しないため、従って、染料及び染料混合物もまた、ポリエステル/ウールやポリエステル/セルロース繊維の混紡織物の染色に十分に使用できる。
【0040】
本発明による染料及び染料混合物はサーモゾル法に従う染色、吸尽法での染色及び捺染方法に適している。
【0041】
このような方法では、前記繊維材料は様々な加工形態、例えば繊維、糸若しく不織布の形態、織物又は編物の形態であり得る。
【0042】
本発明による染料及び染料混合物を、使用前に染料調合剤へ変えることは有利である。その目的のために、染料はその粒子径が平均0.1乃至10ミクロンであるように粉砕する。粉砕は分散剤の存在下で実施できる。例えば、乾燥した染料は分散剤と一緒に粉砕されるか又は分散剤と一緒にペースト状に練られるかして、そして真空で又は噴霧で乾燥される。このようにして得られた調合剤は、水を添加した後、捺染ペースト又は染浴を調製するために使用できる。
【0043】
捺染のために、慣用の増粘剤、例えば、変性の又は非変性の天然物、例えば、アルギン酸塩類、ブリティッシュガム、アラビアゴム、結晶ゴム、ローカストビーン粉、トラガカント、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん又は合成製品、例えばポリアクリルアミド類、ポリアクリル酸若しくはそのコポリマー類、又はポリビニルアルコール類が使用される。
【0044】
本発明による式(1)で表される染料はまた、記録システム用の着色剤として適している。そのような記録システムは、例えば、紙若しくは織物への印刷のための市販のインクジェットプリンター、又は万年筆若しくはボールペンなどの筆記具、及び特にインクジェットプリンターである。その目的のために、本発明による染料は最初に記録システム用に適した形態にさせられる。適した形態は、例えば、水性インクであって、着色剤として本発明による染料を含む。インクは所望量の水中で、必要に応じて適切な分散剤を組み合わせて、個々の成分を一緒に混合することによる慣用の方法で製造できる。
【0045】
本発明による染料及び染料混合物は、前記材料、特にポリエステル材料に、特に、良好な耐光堅牢度、良好な熱固着堅牢度(fastness to heat setting)、良好なプリーツ堅牢度、良好な塩素堅牢度、並びに良好な湿潤堅牢度、例えば、水、汗及び洗濯に対する堅牢度などの非常に良好な使用中の堅牢度特性を有するムラのない色合いを与え;染色が終わった染め物はまた、非常に良好な摩擦堅牢度によって特徴付け
られる。汗及び、特に、洗濯に関して得られた染め物の良好な堅牢度特性が特に重視されるべきである。
【0046】
また、本発明による染料及び染料混合物は、超臨界CO
2から親水性繊維材料を染色す
るのに非常に適している。
【0047】
本発明は本発明による染料の上述の使用、および半合成の又は合成の疎水性繊維材料、特に織物材料を染色又は捺染する方法であり、当該方法において本発明による染料を前記材料に塗布するか又は前記材料中に混入する、方法に関する。前記疎水性繊維材料は好ましくは織物ポリエステル材料である。本発明による方法及び好ましい工程条件によって処理できるさらなる基材は、本発明による染料の使用のより詳細な説明である上文に見出すことができる。
【0048】
インクジェット印刷法の場合では、インクの個々の液滴は制御された方法でノズルから基材上に吹き付けられる。その方法は主に、その目的のために使用される連続的なインクジェット法及びドロップ・オン・デマンド法である。連続的なインクジェット法の場合では、液滴は連続的に作り出され、印刷工程に必要でない液滴は容器内に排出されて、再利用される。一方、ドロップ・オン・デマンド法の場合では、液滴は要求時に作り出されて印刷に使用される;すなわち、液滴は印刷操作に必要な時にのみ作り出される。液滴の生成は、例えば、圧電インクジェットヘッドによって又は熱エネルギー(バブルジェット)によって、達成できる。圧電インクジェットヘッドによる印刷及び連続的なインクジェット法による印刷が好ましい。
【0049】
その結果、本発明はまた、本発明による式(1)で表される染料を含む水性インク、並びに様々な基材、特に織物繊維材料を印刷するインクジェット印刷方法におけるそのようなインクの使用に関し、上述の定義及び好ましいものが染料、インク及び基材に適用される。
【0050】
本発明はまた、前記方法によって染色又は捺染された疎水性繊維材料、好ましくはポリエステル織物材料に関する。
本発明による染料は、さらに、最新の再生方法、例えば熱転写捺染に適している。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は発明を説明する役割を果たす。別段の指示がない限り、本明細書において、部は質量部であり、パーセントは質量パーセントである。温度はセ氏温度で示す。質量部と体積部との関係はグラムと立法センチメートルとの関係と同じである。
【0052】
I.製造例
I.1 式(101)で表される染料
【化10】
【0053】
米国特許第3,980,634号明細書に記載された通り製造した式(101a)
【化11】
で表される染料8.48g(0.015mol)をピリジン120mL中、RT(室温)で撹拌しながら溶解した。微粉末状のNaCN0.147g(0.003mol)及び微粉末状のCuCN1.343g(0.003mol)をピリジン100mLに加え、激しく撹拌しながら懸濁した。このようにして得られた懸濁液を室温で、式(201)で表される染料の溶液に4時間以内にゆっくりと滴下した。反応混合物を一晩撹拌し、そしてピリジン150mLで希釈した。青色の沈殿物をろ別して水で洗浄し;乾燥後、粗生成物2gを得た。
【0054】
HPLC分析によれば、原産物は3種の異なる染料の混合物、すなわち、従来のクロマトグラフィー法によって分離された、約30%の遊離体(201)、50%の式(101)で表される染料及び20%の式(202)で表されるジシアン化合物のみから実質的になる。
【0055】
【化12】
【0056】
m.p.(融点)=156−158℃
λ
max=472nm(λ
max=吸収極大波長)
元素分析: 理論値 実測値
C 46.70% 46.65%
H 4.10% 4.15%
N 12.39% 12.30%
Br 28.27% 28.05%
【0057】
【化13】
【0058】
m.p.=204−208℃
λ
max=586nm
元素分析: 理論値 実測値
C 54.02% 53.87%
H 4.53% 4.80%
N 15.63% 19.12%
Br 18.44% 16.90%
【0059】
1H−NMR(DMSO−d
6,250MHz):δ=9.39(s,broad,−NH),8.17(s,broad,1H),8.06(d,broad,J=2.0,1H),8.03(s,1H),6.53(d,broad,J=4.0,1H),3.79(q,J=3.0,2H),3.57(q,J=3.0,4H),2.22(s,3H),1.23−1.35(m,9H).
【0060】
【化14】
【0061】
m.p.=128−131℃
λ
max=608nm
元素分析: 理論値 実測値
C 63.00% 62.80%
H 5.07% 5.20%
N 21.44% 22.60%
Br 0.00% 0.10%
【0062】
下記の表1及び表2に記載されている式(102)−(457)で表される染料は、上述の方法に準じて製造できる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
【表14】
【0077】
【表15】
【0078】
II.適用例
II.1:ポリエステルの染色
製造例I.1で製造された式(101)で表される染料1質量部を、市販の分散剤4部
及び水15部と一緒に粉砕した。その製剤を用いながら、1%染色(染料及び基材に基づく)が135℃で高温吸尽法により織ったポリエステル上に為された。
試験結果:染め物の耐光堅牢度は優れており、またAATCC 61試験及びISO 105試験での結果も優れていた。染料のビルドアップ特性は非常に良好であった。
【0079】
II.2:ポリエステルの染色
式(101)で表される染料の代わりに、式(102)−(186)で表される染料を使用して、適用例II.1を繰り返した。染料のビルドアップ特性は非常に良好であり、染め物は良好な耐光性を示し、またAATCC 61試験及びISO 105試験においても、良好な結果を示した。
【国際調査報告】