(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528546(P2015-528546A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】拡張栓
(51)【国際特許分類】
F16B 13/12 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
F16B13/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-525773(P2015-525773)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2013002310
(87)【国際公開番号】WO2014023410
(87)【国際公開日】20140213
(31)【優先権主張番号】102012107235.3
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012111208.8
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アーロン デイリー
【テーマコード(参考)】
3J025
【Fターム(参考)】
3J025AA02
3J025BA23
3J025CA03
(57)【要約】
本発明は、拡張栓(1)であって、拡張栓長手方向に延在するウェブ(5)を有し、該ウェブ(5)から、拡開エレメント(6)が周方向で互いに逆向きに突出している拡張栓(1)に関する。本発明によれば、前記拡開エレメント(6)が、フック状に、かつ間隔(11)を置いて互いの間に入り組むように形成されていて、これにより、前記拡開エレメント(6)が、前記ウェブ(5)を、当該拡張栓(1)の曲げまたは捩れの後に、または前記ウェブ(5)の折れ曲りの後に有効になる形状接続により互いに結合していることが提案される。当該拡張栓(1)の屈曲剛性と、曲げ剛性と、捩れ剛性とが高められている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張栓であって、
当該拡張栓が、拡張栓長手方向に延在する少なくとも2つのウェブ(5)と、拡開エレメント(6)とを有し、該拡開エレメント(6)が、前記両ウェブ(5)から周方向で互いに逆向きに突出しており、
前記ウェブ(5)と前記拡開エレメント(6)とが、1つの中空室を取り囲んでおり、該中空室が拡張栓長手方向に延在し、かつ拡開通路(7)を形成しており、該拡開通路(7)内に、当該拡張栓(1)を拡開させるためのピン形の拡開手段が挿入可能である、
拡張栓において、
前記ウェブ(5)から周方向で互いに逆向きに突出した前記拡開エレメント(6)が、互いに間隔(11)を置いて互いに背後から係合していて、該拡開エレメント(6)が、前記ウェブ(5)を形状接続的に遊びを持って互いに連結しており、
前記拡開エレメント(6)が、当該拡張栓(1)の変形と、前記ウェブ(5)の互いに向かう方向での運動との後に、互いに当接し、この当接により、前記拡開エレメント(6)の間の形状接続が有効になることを特徴とする、拡張栓。
【請求項2】
前記拡開エレメント(6)が、前記間隔(11)を置いて互いの間に入り組んでいるフックの形状を有している、請求項1記載の拡張栓。
【請求項3】
前記ウェブ(5)が、外側に傾斜面(8)を有しており、該傾斜面(8)の斜面が、それぞれ当該拡張栓(1)の後端に向けられている、請求項1記載の拡張栓。
【請求項4】
当該拡張栓(1)内の前記拡開通路(7)の内法の幅は、前記拡開エレメント(6)の間で測定された内法の幅の方が、前記ウェブ(5)の間で測定された内法の幅よりも小さい、請求項1記載の拡張栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の特徴を有する拡張栓に関する。
【0002】
特にプラスチックから成る拡張栓は公知である。このような拡張栓は、主としてスリーブ状に形成されているので、拡張栓長手方向に延在する中空室を有し、この中空室は拡開通路を形成している。この拡開通路内には、拡張栓を拡開させるためのピン形の拡開手段が、穿設孔にアンカ固定するために挿入可能である。このピン形の拡開手段は、たとえば、拡張栓に打ち込まれて拡張栓を拡開させる釘またはスクリュ釘、または拡張栓にねじ込まれて拡張栓を拡開させるねじである。このような拡張栓の、特に拡開範囲における構成は、種々様々である。拡開範囲は、拡張栓の、拡開手段の挿入によって拡開させられる長手方向区分である。
【0003】
欧州特許出願公開第0964169号明細書に開示されている拡張栓は、互いに反対の側に配置されて拡張栓長手方向に延在する2つのウェブを有する。これらのウェブからは両長辺側に沿って複数の拡開エレメントが拡張栓の周方向に突出している。拡張栓の側面図で見て、拡開エレメントは、三角形に形成されており、この場合、拡開エレメントの一方の辺は、拡張栓の半径方向平面に延在しており、拡開エレメントの他方の辺は、拡張栓に対して斜めに延在している。これらの拡開エレメントは、両ウェブから周方向で互いに逆向きに延在しているので、これらの拡開エレメントは隙間なく互いに内外にぴたりと噛み合っている。拡開ねじが拡張栓にねじ込まれると、公知の拡張栓の拡開エレメントは、ウェブの長辺側に沿って拡張栓長手方向に延びる、すなわち拡張栓に対して軸平行に延びる旋回軸線を中心にして外側へ旋回する。拡開エレメントの旋回可能性は、プラスチックから成る拡張栓の変形可能性により与えられている。
【0004】
独国特許第3208347号明細書には、同じくプラスチックから製造されたスリーブ状の拡張栓が開示されている。この拡張栓は、2つのウェブを有し、両ウェブは互いに反対の側に位置するように配置されていて、拡張栓長手方向に延在している。両ウェブの長辺側からは、拡張栓の周方向で互いに逆向きに複数の歯が突出しており、この場合、両ウェブの歯は、それぞれ交互に互いの間に入り込んで係合している。拡張栓の側面図で見て、前記歯は矩形の形状を有している。各2つの歯が、拡張栓長手方向に延在する結合体によって互いに結合されている。それぞれ次の歯に対して結合は存在せず、結合体以外に拡張栓の前記歯の間には隙間が存在する。前記歯と前記結合体とを介して拡張栓のウェブは互いに結合されており、この場合、これらの結合は、拡張栓長手方向においてウェブの相互ずれを防止すると同時に、周方向においてウェブの互いに離れる方向での運動を阻止するためにも有効である。プラスチックから成る拡張栓の弾性に基づいて、ウェブの向かい合う方向での運動可能性が与えられている。前記歯と前記結合体とによる両ウェブの結合によって、拡張栓の曲げ剛性と、屈曲剛性と、捩れ剛性とが高められている。
【0005】
独国特許出願公開第102009044356号明細書には、プラスチックから成る拡張栓が開示されており、この拡張栓は、互いに間隔を置いて配置され、かつ拡張栓長手方向に延在する2つのウェブを有する。両ウェブからは、ディスク状の複数の拡開エレメントが拡張栓の半径方向平面で突出している。両ウェブのディスク状の拡開エレメントは、コーム状に、かつぴたりと互いに内外に係合しており、拡張栓が拡開されていない状態では、拡開エレメントの間に間隔は存在しない。拡張栓の側面図で見て、拡開エレメントは、この拡開エレメントが突設されているそれぞれ一方のウェブから、反対の側の他方のウェブに向かって先細りになった鐘形状を有している。拡開のためには、拡開エレメントが平らな矩形の孔を有しており、これらの孔は部分的にのみ重なり合っている。これらの孔はそれぞれ、各拡開エレメントが突設されているウェブに向かってずらされている。拡開時には、これらの孔が互いに整合するように位置調整され、これにより拡開エレメントは半径方向で互いに離れる方向に移動し、ウェブを互いに離れる方向に向かって押圧する。すなわち、拡開エレメントは拡張栓を拡開する。
【0006】
本発明の課題は、穿設孔への挿入時の屈曲に抗する高い剛性を有する拡張栓を提案することにある。
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴部に記載の特徴によって解決される。請求項1の特徴部に記載の特徴を有する本発明による拡張栓は、拡張栓長手方向に延在する少なくとも2つのウェブを有している。「拡張栓長手方向に延在する」とは、軸平行に真っ直ぐに延在することだけを意味するわけではない。すなわち、ウェブは、たとえば螺旋形状または波形状を成して延在していてもよい。
【0008】
ウェブからは、拡張栓の周方向で互いに逆向きに拡開エレメントが突出している。この場合、拡開エレメントは、必ずしも半径方向平面に延在する必要はなく、斜めに延在してもよい。ウェブと拡開エレメントとは1つの中空室を取り囲んでおり、この中空室は拡張栓長手方向に延在し、かつ拡開通路を形成しており、この拡開通路内には、拡張栓を拡開させるためのピン形の拡開手段が挿入可能である。このピン形の拡開手段は、たとえば、釘、スクリュ釘またはねじである(拡張栓の拡開エレメントと混同してはならない)。
【0009】
本発明によれば、ウェブから周方向で互いに逆向きに突出した拡開エレメントが、互いに間隔を置いて互いに背後から係合しているので、これらの拡開エレメントはウェブを遊びを持って形状接続的に互いに連結している。これらの拡開エレメントの間の遊びは、ウェブを互いに向かって運動させる拡張栓の変形により取り除かれる。拡張栓のこのような変形と、この変形により生ぜしめられるウェブの、互いに向かう方向での運動とによって、拡開エレメントは互いに当接する。これにより、拡開エレメントの間の相互の凹凸部の係合による形状接続が有効になり、引き続きウェブが互いに向かって運動することを阻止し、これにより拡張栓のこれ以上の著しい変形を阻止する。ウェブの互いに向かい合う方向でのこれ以上の運動および拡張栓のこれ以上の著しい変形は、互いに接触した拡開エレメントを変形させかつ/または互いに向かって運動させることによってしか可能にならない。両者によって、拡張栓を変形させるために必要な力と、拡張栓の剛性、特に曲げ、屈曲、捩れに抗する剛性およびウェブの折れ曲りに抗する剛性が高められる。
【0010】
本発明は、拡張栓の制限された変形を可能とし、この変形の際には、拡張栓を変形させために必要な力は、ウェブの剛性によって決定されている。ウェブの剛性は比較的小さいので、たとえ穿設孔が正確には真っ直ぐ延びていなくても、本発明による拡張栓は、容易に穿設孔内に挿入され得る。本発明による拡張栓は、その初期の変形可能性に基づいて、穿設孔の壁に良好に適合する。拡張栓が過度に大きく変形して破折しないようにするために、拡張栓のウェブの結合は、拡張栓長手方向における拡張栓の制限された初期の変形の後の、拡開エレメントの間の形状接続もしくは拡開エレメントの相互の当接によって、拡張栓長手方向におけるウェブの相互ずれに抗して、かつ/または、拡張栓に対して直交する横方向においてウェブの相互離間運動に抗して作用する。この結合は、拡張栓長手方向においても、拡張栓に対して直交する横方向においても作用するので有利である。本発明によって、本発明による拡張栓の剛性は、制限された初期の変形の後に、特に曲げ、屈曲、捩れおよび/またはウェブの折れ曲りに対して高められる。本発明によれば、穿設孔内への打ち込み時に、拡張栓が穿設孔内に少しだけ突入した際に、拡張栓が屈曲し、かつウェブが折れ曲がることが阻止される。折れ曲りとは、拡張栓に対して直交する横方向における互いに離れる方向でのウェブの運動であり、この場合、ウェブは屈曲する。屈曲の危険は、拡張栓がピン形の拡開手段と共に穿設孔に打ち込まれる場合で、しかも拡開手段が打ち込み時に拡張栓の後方の範囲に収容されており、かつ打ち込み時に拡張栓の後端から突出している場合に、高められている。なぜならば、拡開手段によって、拡張栓を屈曲させるてこ腕が延長されるからである。本発明による拡張栓の、拡張栓の後端にすでに少しだけ挿入されているピン形の拡開手段と共に穿設孔内に打ち込むための適性は、改善されている。
【0011】
本発明の有利な構成では、拡張栓の一方の側から見て、拡開エレメントが、互いに内外に係合したフックの形状を有している。拡開エレメントのフック形状によって、互いに間隔を有する前述の拡開エレメントの背後からの係合と、これにより生ぜしめられる、遊びを有するウェブの形状接続的な連結とは、簡単に実現され得る。
【0012】
さらに本発明の構成では、傾斜面がウェブの外側に設けられており、この傾斜面の斜面は、それぞれ拡張栓の後端に向いている。この拡張栓のこの後端を通じて、ピン形の拡開手段が拡張栓内に挿入されるが、ただし、この拡張栓の後端は、拡張栓が規定通りに穿設孔に挿入されている場合に、作業者にとって手の届く位置にある。比較的軟質の材料、たとえば気泡コンクリート内では、前記傾斜面が、穿設孔からの拡張栓の引抜きに対する抵抗を、引抜きの際に有効となる面接触によって高めている。穿設孔における拡張栓のアンカ固定は改善されている。特に、拡張栓のウェブのアンカ固定作用は高められており、それにより亀裂発生時における拡張栓の機能性は、亀裂に対する拡張栓の向きとは無関係に、つまり向きの影響をほとんど受けることなしに達成され得る。「亀裂」とは、穿設孔を貫通する、アンカ止め基礎における亀裂を意味し、これにより穿設孔が亀裂に対して直交する横方向に拡がる恐れがある。
【0013】
本発明のさらに別の構成では、拡張栓の内部における、拡開エレメントの間の拡開通路の内法の幅は、ウェブの間よりも小さい。すなわち、拡開通路は、円形の横断面ではなく、平たい、または平たく変形させられた横断面を有している。拡開エレメントの間の内法の幅はより小さいので、拡開エレメントは、相互の間に挿入された拡開手段によって、ウェブよりもさらに大きく拡開させられる。それによって、拡開エレメントのアンカ固定力は高められる。
【0014】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に図示した拡張栓の拡開範囲における変形状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に図示した拡張栓の拡開範囲における別の変形状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に図示した拡張栓の拡開範囲におけるさらに別の変形状態を示す斜視図である。
【0016】
図1に示した本発明による拡張栓1は、たとえば射出成形によってプラスチックから製造されている。拡張栓1はスリーブ状に形成されていて、後方の範囲に周方向で閉じられた管状の中空シャンク2を有している。この中空シャンク2の後方の範囲は、拡張栓1の後端部に中空円錐状のフランジ3を有している。挿入方向前方では、中空シャンク2に拡開範囲4が続いている。「挿入方向」とは、拡張栓1が、規定通りに穿設孔内に挿入される方向である。拡開範囲4にわたって2つのウェブ5が、拡張栓長手方向に、拡張栓1の前端部まで延びている。両ウェブ5は、この前端部ならびに拡開範囲4の後方において、中空シャンク2への移行部で、互いに一体的に結合されている。ウェブ5は、拡張栓1の周面に互いに対向して位置するように配置されている。
【0017】
ウェブ5の長辺側からは複数の拡開エレメント6が、拡張栓1の周方向で互いに逆向きに突出している。拡開エレメント6はそれぞれ、一方のウェブ5と他方のウェブ5とから交互に突出しているので、これらの拡開エレメント6は、歯列またはファスナの務歯に類似して、ただし互いに間隔を置いて互いの間に入り組んでいる。拡開エレメント6はフック状である。すなわち、拡開エレメント6はウェブ5から斜め後方に向かって突出していて、ウェブ5の間の拡張栓1の中心平面で折り曲げられた後に、斜め前方に向いている。択一的には、拡開エレメント6が逆に、ウェブ5から斜め前方に突出して、折り曲げられた後に斜め後方に向けられていてもよい(図示しない)。拡張栓1が変形されていない場合、拡開エレメント6は互いに接触しておらず、前述のように相互間には間隔10が存在している。拡開エレメント6のフック形状に基づき、互いの間に入り組んでいる拡開エレメント6は、互いに背後から係合していて、ウェブ5を(拡開エレメント6の間の間隔10により)遊びを持って形状接続的に互いに連結している。
【0018】
拡張栓1の拡開範囲4の初期の変形によって、ウェブ5が互いに向かって移動して、拡開エレメント6の間の相互間隔10が取り除かれ、そして拡開エレメント6が互いに接触して係合すると形状接続は有効になる(
図2〜
図4参照)。背後からの係合および拡開エレメント6の間の形状接続は、拡張栓長手方向においても、拡張栓1の周方向もしくは横方向においても作用する。拡張栓1が著しく変形させられて、拡開エレメント6が互いに接触するまで互いに向かって移動すると、拡開エレメント6は、ウェブ5が引き続き互いに向かって移動することを阻止し、これにより拡開範囲4における拡張栓1のこれ以上の著しい変形を阻止する。これによって、これ以上の著しい変形に抗する拡張栓1の剛性が高まり、可能な変形は制限される。拡張栓1のこれ以上の変形は、拡開エレメント6における変形、または互いに接触した拡開エレメント6の相互ずれ(拡開エレメント6のフック形状にもかかわらず可能となるならば)によってのみ可能である。拡開エレメント6が拡張栓1の変形時に互いに接触すると、拡開エレメント6は、拡張栓長手方向におけるウェブ5の相互ずれに抗しても、ウェブ5の互いに離れる方向での運動に抗しても、両ウェブ5を互いに結合する。拡張栓長手方向におけるウェブ5の相互ずれの可能性を制限することは、拡張栓1の拡開範囲4の曲げ剛性と、屈曲剛性と、捩れ剛性とを高め、ウェブ5の互いに離れる方向での運動可能性を制限することは、拡張栓1の拡開範囲4の屈曲剛性と捩れ剛性とを高め、ウェブ5の折れ曲りを阻止し、すなわち、ウェブ5の互いに離れる方向での運動と外側への屈曲とを阻止する。拡開エレメント6の間に間隔10が設けられているので、形状接続は、ウェブ5が互いに向かって移動して、拡開エレメント6の間の間隔10が取り除かれた後でしか有効にならない。これにより、拡張栓1の拡開が容易にされている。
【0019】
図2には、拡張栓1の変形された拡開範囲4が、曲げられた状態で図示されている。曲げによって、拡張栓1のウェブ5は、拡張栓長手方向において相対的にずれ、拡張栓1の一方のウェブ5から突出した各1つのフック状の拡開エレメント6の外側または外側コーナ部が、拡張栓1の他方のウェブ5から突出した各1つの別の拡開エレメント6の内側または内側コーナ部に当接する。フック状の拡開エレメント6が拡張栓1の曲げによって互いに接触する際の接触箇所11は、それぞれ太線で描かれている。フック状の拡開エレメント6が接触箇所11で互いに接触することによって、拡張栓1のこれ以上の著しい曲げに対して、より高い抵抗が付与され、拡張栓1の拡開範囲4の曲げ剛性が高められている。接触箇所11以外の箇所において、フック状の拡開エレメント6の間の間隔10は、拡張栓1の曲げによって拡大し得る。
【0020】
図3には、拡張栓1が捩られた場合の状態が図示されている。この場合、ウェブ5の螺旋形状の変形によって、拡張栓1の一方のウェブ5から突出したフック状の拡開エレメント6の外側または外側コーナ部は、拡張栓1の他方のウェブ5から突出した次のフック状の拡開エレメント6の内側または内側コーナ部に当接する。拡張栓1の他方のウェブ5から突出したそれぞれ次のフック状の拡開エレメント6の外側または外側コーナ部は、やはり拡張栓1の一方のウェブ5から突出したそれぞれ次のフック状の拡開エレメント6の内側または内側コーナ部に接触していく。接触箇所11は、
図2と同様に太線で描かれている。拡張栓1のこれ以上の捩れに対する抵抗、ひいては拡張栓1の捩れ剛性が高められている。
【0021】
図4には、本発明における、間隔を置いて互いの間に入り組んで、かつ互いに背後から係合しているフック状の拡開エレメント6が、拡張栓1のウェブ5の折れ曲りをどのようにして阻止するかが示されている。拡張栓1を拡張栓長手方向で圧縮することによって、ウェブ5は互いに離れる方向に曲がり、これによって、フック状の拡開エレメント6は互いに当接する。接触箇所11は、
図2および
図3と同様に、太線で描かれている。フック状の拡開エレメント6の背後からの互いの係合によって、ウェブ5の間のこれ以上の離間が阻止され、ひいてはウェブ5の折れ曲りが阻止される。
【0022】
ウェブ5と拡開エレメント6とは、拡開通路7を形成する中空室を取り囲んでおり(
図5)、この拡開通路7内には、拡張栓1を拡開させるために、ねじ(図示しない)が拡開手段としてねじ込まれる。ねじによって、拡開エレメント6もウェブ5も互いに離れる方向に、かつ外側に向かって押圧される。すなわち、ねじは拡張栓1を拡開する。
図5から判るように、拡開通路7は、拡開範囲4において楕円形に形成されており、拡開エレメント6の間の拡開通路7の内法の幅は、ウェブ5の間の拡開通路7の内法の幅よりも小さい。これにより、拡開エレメント6はウェブ5よりも大きく拡開させられる。中空シャンク2において、拡開通路7はより大きな直径を有しており、円形に形成されている(図示しない)。
【0023】
図1から判るように、ウェブ5は、一種のクリスマスツリー(モミの木)のプロファイルを成す傾斜面8を有している。傾斜面8の斜面は、それぞれ拡張栓1の後端に向けられている。傾斜面8は、面状の接触によって、柔らかいアンカ止め基礎、たとえば気泡コンクリート内での拡張栓1のアンカ固定力を高めている。
【0024】
拡張栓長手方向に延在するリブ9は、拡開手段として用いられるねじのねじ込み時に拡張栓1が一緒に回転することを阻止する。拡張栓1の互いに対して直角を成す2つの軸方向平面内でのウェブ5と拡開エレメント6との拡開によって、亀裂発生時における拡張栓1の機能性は、穿設孔内での拡張栓1の角度位置の影響をほとんど受けなくなる。すなわち、拡張栓1がアンカ固定されている穿設孔が、アンカ止め基礎における亀裂の形成によって穿設孔の横方向に拡がったとしても、穿設孔における拡開された拡張栓1のアンカ固定は、亀裂に対する拡張栓1の角度位置の影響をほとんど受けない。
【符号の説明】
【0025】
1 拡張栓
2 中空シャンク
3 フランジ
4 拡開範囲
5 ウェブ
6 拡開エレメント
7 拡開通路
8 傾斜面
9 リブ
10 間隔
11 接触箇所
【国際調査報告】