特表2015-528568(P2015-528568A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フンダシオ インスティトゥト ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ベイビジャ(イ デ イ ベ エ エレ エレ)の特許一覧

特表2015-528568移植拒絶の予防および/または治療のための方法および試薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528568(P2015-528568A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】移植拒絶の予防および/または治療のための方法および試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20150901BHJP
   G01N 33/564 20060101ALI20150901BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20150901BHJP
   C07K 16/44 20060101ALN20150901BHJP
【FI】
   G01N33/53 N
   G01N33/53 S
   G01N33/564 Z
   C12N5/00 202J
   C07K16/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2015-526956(P2015-526956)
(86)(22)【出願日】2013年8月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2013066825
(87)【国際公開番号】WO2014026950
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】12382325.4
(32)【優先日】2012年8月13日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515040737
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥト ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ベイビジャ(イ デ イ ベ エ エレ エレ)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO INSTITUT D’INVESTIGACIO BIOMEDICA DE BELLVITGE (IDIBELL)
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】マニェス メンディルセ、ラファエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA60
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA75
4H045EA22
(57)【要約】
本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、ヒアルロン酸に特異的な抗体のレベルを決定することに基づく、移植拒絶が起こる確率を決定するための方法に関する。本発明は、同様に、被検体からの抗ヒアルロン酸抗体の除去に基づき、移植拒絶を弱めるための方法および移植拒絶を予防するための組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植を受けた被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体において移植拒絶が起こる確率が高いとすることを含む、方法。
【請求項2】
(a)被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから1日後または2日後に行われる場合、リファレンス値と比較して前記抗体のレベルの低下は、前記被検体における超急性移植拒絶の確率が高いことの指標であり、
(b)被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから少なくとも3日後に行われる場合、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルの増加は、前記被検体における急性体液性拒絶の確率が高いことの指標であり、および/または
(c)被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから少なくとも2ヶ月後に行われる場合、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルの増加は、前記被検体における慢性移植拒絶の確率が高いことの指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
移植は、異種移植または同種移植である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
サンプルが、血液、血清および血漿からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
移植を受けた被検体は、ヒト、げっ歯類または非ヒト霊長類である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒアルロン酸が付着した生体適合性の固体支持体に付着するヒアルロン酸オリゴ糖を含む、免疫吸着組成物。
【請求項8】
ヒアルロン酸オリゴ糖は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、および/またはヒアルロン酸十糖からなる群から選択される、請求項7に記載の免疫吸着組成物。
【請求項9】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための請求項7または8に記載の免疫吸着組成物。
【請求項10】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法が、
(i)前記レシピエントから抗体含有体液を抜き取り;
(ii)抜き取られた体液から、免疫吸着組成物を介した体液の体外灌流によって、ヒアルロン酸に対する既存抗体(preformed antibody)を除去して、レシピエントに再導入するための灌流された体液を得る
ことを含む、請求項9に記載の使用のための免疫吸着組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸に対する抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である、請求項10に記載の使用のための免疫吸着組成物。
【請求項12】
体液が血液である、請求項10または11に記載の使用のための免疫吸着組成物。
【請求項13】
ポリマー骨格を形成する1つ以上のモノマー単位がヒアルロン酸オリゴ糖に接続する、ポリマー骨格を含むポリマー構造。
【請求項14】
ポリマー骨格が、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、多糖またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のポリマー構造。
【請求項15】
ヒアルロン酸オリゴ糖が、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、ヒアルロン酸十糖、またはこれらの1つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項13または14に記載のポリマー構造。
【請求項16】
移植の被検レシピエントにおいて抗体が介在する移植拒絶を弱める方法での使用のための請求項13〜15のいずれか一項に記載のポリマー構造またはヒアルロン酸オリゴ糖。
【請求項17】
ヒアルロン酸オリゴ糖が、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、ヒアルロン酸十糖、またはこれらの1つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の使用のためのヒアルロン酸オリゴ糖。
【請求項18】
外因性ヒアルロン酸オリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞集団。
【請求項19】
ヒアルロン酸オリゴ糖が、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、ヒアルロン酸十糖、またはこれらの1つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の細胞集団。
【請求項20】
細胞が赤血球である、請求項18または19に記載の細胞集団。
【請求項21】
赤血球がヒト由来である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項22】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための請求項18〜21のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項23】
血液または血漿が、ヒアルロン酸オリゴ糖に対する抗体を含まない、移植拒絶を弱めるために移植の被検レシピエントに灌流するのに有用な血液、血漿または血清。
【請求項24】
ヒアルロン酸オリゴ糖に対する抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である、請求項23に記載の血液、血漿または血清。
【請求項25】
前記血液または血漿は、ヒトまたは非ヒト霊長類に由来する、請求項23または24のいずれかに記載の血液、血漿または血清。
【請求項26】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための請求項23〜25のいずれか一項に記載の血液、血漿または血清。
【請求項27】
移植拒絶が急性体液性拒絶である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の使用のための免疫吸着組成物、請求項16に記載の使用のためのポリマー構造、請求項16または17に記載の使用のためのヒアルロン酸オリゴ糖、または請求項26に記載の使用のための血液、血漿または血清。
【請求項28】
移植拒絶が異種移植または同種移植である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の使用のための免疫吸着組成物、請求項16に記載の使用のためのポリマー構造、請求項16または17に記載の使用のためのヒアルロン酸オリゴ糖、または請求項26に記載の使用のための血液、血漿または血清。
【請求項29】
移植を受けた被検体は、ヒト、げっ歯類または非ヒト霊長類である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の使用のための免疫吸着組成物、請求項16に記載の使用のためのポリマー構造、請求項16または17に記載の使用のためのヒアルロン酸オリゴ糖、または請求項26に記載の使用のための血液、血漿または血清。
【請求項30】
被検体において全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)(SLE)を診断するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体はSLEと診断することを含む、方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgM抗体のレベルが、リファレンス値に対して減少している場合、前記被検体はSLEと診断する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgG抗体のレベルが、リファレンス値に対して増加している場合、前記被検体はSLEと診断する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
サンプルが、血液、血清および血漿からなる群から選択される、請求項30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
被検体がヒトである、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調整の分野に関し、さらに特定的には、移植拒絶が起こる確率を決定するための方法、移植拒絶を弱めるための方法、および移植拒絶を予防するための組成物に関し、これらはすべて、抗−ヒアルロン酸抗体のレベルが、移植拒絶を患う被検体において増加するという知見に基づく。
【背景技術】
【0002】
移植は、個体の罹患臓器を交換することができる複雑な医学的治療であり、個体の生活の質を向上させるか、または生存を可能にもする。
【0003】
移植拒絶は、移植の最も大きな課題の1つである。移植拒絶は、異物(すなわち、抗原)に対する免疫系の自然な応答の結果である。この複雑なプロセスは、主に、Tリンパ球が介在するが、外来抗原、抗体、Tリンパ球、マクロファージ、サイトカイン(リンホカインまたはインターロイキンとしても知られる)、接着分子(すなわち、共刺激分子)およびTリンパ球およびBリンパ球の結合を高める膜タンパク質の間の重大な相互作用を含む。
【0004】
免疫抑制治療の目標は、移植拒絶を防ぎ、治療することとともに、移植片を長持ちさせ、患者を生存させることである。しかし、免疫抑制剤の効能および薬物動態の個体間および個体内の変動に起因して、有害な反応を最低限にしつつ、十分な免疫抑制を維持するために、投薬量の個別化が必要である。水への溶解度が低く、バイオアベイラビリティが低いことが、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンおよびシロリムス)の複雑さの原因となっている。
【0005】
移植拒絶は、既存抗体(preformed antibody)によって引き起こされる超急性(移植後数時間以内、または間もない日)、Tリンパ球によって引き起こされる急性(間もない日または数ヶ月中)、または主に抗体によって引き起こされる慢性(数ヶ月後、または数年後のこともある)であってもよい。拒絶を予測および/または予防するための方法論の開発が、移植の成功率を高めるだろう。
【0006】
移植に利用可能なヒトの臓器が世界的に不足していることに起因して、異種移植(ある種から別の種への生存細胞、組織または臓器の移植)が、従来の同種移植(同じ種の移植)の代替として価値が高い。非ヒト霊長類は、ヒトへの有望な異種移植の臓器源として最初に考えられてきた。チンパンジーは、臓器が同様の大きさを有しており、ヒトへの適合性が良好な血液型を有するため、元々最良の選択肢であると考えられていた。しかし、チンパンジーは、絶滅危惧種に列挙されているため、他の有望なドナーが求められてきた。ヒヒは、もっと容易に入手可能であるが、有望なドナーとして現実的ではない。問題点としては、体が小さいこと、O型の血液型(万能供血者)が多くないこと、妊婦期間が長く、典型的には子孫の数が少ないことが挙げられる。それに加え、非ヒト霊長類を使用する主要な問題は、ヒトと非常に密接な関連性があるため、疾患を伝搬する危険性が高まることである。ブタは、臓器のドナーとして現時点で最良の候補であると考えられている。ヒトとの系統的距離が大きいため、異種間の疾患伝搬の危険性は低い。ブタは容易に入手可能であり、その臓器は、大きさが解剖学的に匹敵し、多くの世代にわたって家畜化されたことによってヒトと密接に接触してきたため、新しい感染体はなさそうである。
【0007】
異種移植後の超急性拒絶を克服するために、異種移植に使用するために動物の臓器/組織が加工されてきた。異種細胞の拒絶を避けるための代替的な戦略は、EP 0661980号に開示されており、レシピエントの血液からの異種抗体の除去および/またはin vivoでの異種抗体の阻害を含む。
【0008】
移植拒絶を予測するという価値を有する異なるマーカーが、当該技術分野で記載されてきた。WO2011/119980号は、複数のバイオマーカー(同種移植を受けた被検体からのサンプルのCD44、EMOD、PEDF)のレベルを評価することを含む、同種移植を受けた被検体が急性拒絶を起こすかどうかを決定する方法を開示する。US2003175811A1号は、タンパク質(例えば、MLC2、TPM1トロポニンCまたはアクチン)、または急性拒絶の診断および/または予後のためのマーカーとしてこれらに対する抗体の使用を開示する。Johnson LBらは、血清ヒアルロン酸(HA)が、拒絶、早期機能不全または血管内血栓を患う患者において、肝臓移植後の内皮細胞の機能不全を検出することができることを示し、このことは、血清HAが、初期移植機能について非侵襲性の測定値を与え得ることを示す(Johnson LBら、2008 American Journal of Transplantation 3(Suppl 5):378)。Fabrega Eらは、血中循環付着分子の放出は、肝臓での拒絶の最初の事象と同時に起こる顕著な特徴であり、ヒアルロナンのレベルは、肝臓移植の術後期の肝臓内皮細胞の機能の高感度マーカーであり得ることを示す(Fabrega Eら、2000 Transplantation 69:569−573)。
【0009】
従って、移植拒絶に関連する問題を克服し、移植を受けた患者の全体的な生存率を高めるために、同種移植拒絶および/または異種移植拒絶の信頼性の高い代替マーカーおよび/または予測因子を特定することが、当該技術分野で必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、抗−ヒアルロン酸抗体のレベルに基づき、被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法、移植拒絶を弱めるための組成物、既存抗体を除去するための免疫吸着組成物、および移植の被検レシピエントに灌流される血液に関する。
【0011】
第1の態様において、本発明は、移植を受けた被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体において移植拒絶が起こる確率が高いとすることを含む、方法に関する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、ヒアルロン酸が付着した生体適合性の固体支持体に付着するヒアルロン酸オリゴ糖を含む、免疫吸着組成物に関する。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための上述の免疫吸着組成物に関する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、ポリマー骨格を形成する1つ以上のモノマー単位がヒアルロン酸オリゴ糖に接続する、ポリマー骨格を含むポリマー構造に関する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法に使用するための上述のポリマー構造に関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、外因性ヒアルロン酸オリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞集団に関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法に使用するための上述の細胞集団に関する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法に使用するためのヒアルロン酸オリゴ糖に関する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、血液または血漿が、ヒアルロン酸オリゴ糖に対する抗体を含まない、移植拒絶を弱めるために移植の被検レシピエントに灌流するのに有用な血液、血漿または血清に関する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法に使用するための上述の血液、血漿または血清に関する。
【0021】
最後の態様において、本発明は、被検体において全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)(SLE)を診断するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体はSLEと診断することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ブタ臓器を異種移植する前(A)または急性体液性異種移植拒絶(AHXR)のとき(B)の非ヒト霊長類において、グリカンアレイに結合した抗−炭水化物抗体のレベルを示す。結果は、5回の実験の平均および標準偏差(S.D.)をあらわす。
図2図2は、ブタの赤血球(PRBC)曝露前(A)およびPBRC曝露から1週間後または13日後(B)の非ヒト霊長類において、グリカンアレイに結合した抗−炭水化物抗体のレベルを示す。結果は、4回の実験の平均および標準偏差(S.D.)をあらわす。
図3図3は、ブタ臓器の異種移植前およびAHXRのときの非ヒト霊長類からの個々の血清のグリコアレイ分析を示す。
図4-1】図4は、PRBC曝露前、およびPRBC曝露後の異なる時間点(最後のPRBC曝露から1週間後のD29、E19およびE7;PRBC曝露の2日目および最後のPRBC曝露から13日後または23日後のC63)の非ヒト霊長類からの個々の血清のグリコアレイ分析を示す。
図4-2】図4は、PRBC曝露前、およびPRBC曝露後の異なる時間点(最後のPRBC曝露から1週間後のD29、E19およびE7;PRBC曝露の2日目および最後のPRBC曝露から13日後または23日後のC63)の非ヒト霊長類からの個々の血清のグリコアレイ分析を示す。
図5-1】図5は、ランダムに選択された3種類のヒト血清サンプルにおいて、IgMおよびIgGの抗−ヒアルロン酸(抗−HA)二糖、四糖および十糖の既存抗体のレベルを示す。
図5-2】図5は、ランダムに選択された3種類のヒト血清サンプルにおいて、IgMおよびIgGの抗−ヒアルロン酸(抗−HA)二糖、四糖および十糖の既存抗体のレベルを示す。
図6-1】図6は、PRBCおよびハムスターの血液に曝露する前および後のラットにおいて、IgM抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下のとおりであった。1ccを3回注射(0日目、2日目および4日目)および抗体分析のために5日目に血液を抜き取った。
図6-2】図6は、PRBCおよびハムスターの血液に曝露する前および後のラットにおいて、IgM抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下のとおりであった。1ccを3回注射(0日目、2日目および4日目)および抗体分析のために5日目に血液を抜き取った。
図7-1】図7は、PRBCに曝露前および曝露後のラットにおいて、IgMおよびIgGの抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下の通りであった。1ccを3回注射(0日目、14日目および28日目)および抗体分析のために40日目に血液を抜き取った。
図7-2】図7は、PRBCに曝露前および曝露後のラットにおいて、IgMおよびIgGの抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下の通りであった。1ccを3回注射(0日目、14日目および28日目)および抗体分析のために40日目に血液を抜き取った。
図8-1】図8は、ハムスターの血液に曝露前および曝露後のラットにおいて、IgMおよびIgGの抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下の通りであった。1ccを3回注射(0日目、14日目および28日目)および抗体分析のために40日目に血液を抜き取った。
図8-2】図8は、ハムスターの血液に曝露前および曝露後のラットにおいて、IgMおよびIgGの抗−HA二糖、四糖および十糖の抗体のレベルを示す。免疫付与プロトコルは、以下の通りであった。1ccを3回注射(0日目、14日目および28日目)および抗体分析のために40日目に血液を抜き取った。
図9-1】図9は、Streptomyces由来ヒアルロニダーゼで前処理したヒト内皮細胞(HMEC)に対する非ヒト霊長類由来のIgG抗体(A)およびIgM抗体(B)の結合を示す。ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)をコントロールとして使用した(C)。ヒストグラムあたり、3つのグラフが示されている。グラフ1は、血清を含まない抗体のみに対応し、グラフ2は、HMEC細胞で免疫化された被検体の血清中の抗体に対応し、この細胞は、ヒアルロニダーゼで処理されておらず、グラフ3は、HMEC細胞で免疫化された被検体の血清中の抗体に対応し、この細胞は、ヒアルロニダーゼで前処理されている。
図9-2】図9は、Streptomyces由来ヒアルロニダーゼで前処理したヒト内皮細胞(HMEC)に対する非ヒト霊長類由来のIgG抗体(A)およびIgM抗体(B)の結合を示す。ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)をコントロールとして使用した(C)。ヒストグラムあたり、3つのグラフが示されている。グラフ1は、血清を含まない抗体のみに対応し、グラフ2は、HMEC細胞で免疫化された被検体の血清中の抗体に対応し、この細胞は、ヒアルロニダーゼで処理されておらず、グラフ3は、HMEC細胞で免疫化された被検体の血清中の抗体に対応し、この細胞は、ヒアルロニダーゼで前処理されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明者らは、406種類のグリカンを含む一連のグリカンを用い、ブタ臓器の異種移植を受けたか、またはブタ赤血球(PRBC)に曝露された非ヒト霊長類モデルの抗−炭水化物抗体のパターンを分析した。本願発明者らは、異種移植に対する急性体液性拒絶の結果として、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体の血清レベルの顕著な変化を観察した。ブタ赤血球の注射は、ヒアルロン酸を発現しないが、これも抗−HA二糖抗体のレベルを増加させ、ヒアルロン酸抗原が宿主起源であることを示す。ヒトおよび非ヒト霊長類における天然抗−HA二糖抗体の存在は、これらの抗体が例えばラット、マウスおよびウサギなどのモデルにはみられないため、特に関係がある。
【0024】
ヒトおよび非ヒト霊長類は、ヒアルロン酸(HA)に対する天然抗体(既存抗体)を有する。本願発明者らは、ヒトにおいて、抗−HA二糖既存抗体、抗−HA四糖既存抗体および抗−HA十糖既存抗体の存在を検出し、PRBCで免疫化されたラットや、ハムスターの血液において、抗−HA IgM抗体の存在を検出した。
【0025】
本願発明者らは、異種抗体の反応性に含まれる抗原としてHA四糖およびHA六糖も特定した。
【0026】
最後に、本願発明者らは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者が、ヒアルロン酸二糖に対するIgM抗体のレベル低下と、ヒアルロン酸二糖に対するIgM抗体のレベル上昇を示すことも示した。
【0027】
定義
「抗体」、「免疫グロブリン」などの用語は、検体(抗原)に特異的に結合し、認識する、1種類以上の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチド、またはそのフラグメントを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロンおよびミューの定常領域遺伝子、およびミリアド免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはエプシロンに分類され、それぞれ、免疫グロブリン分類IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、2対のポリペプチド鎖で構成され、それぞれの対が、1個の「軽」鎖(約25kD)と1個の「重」鎖(約50〜70kD)とを有する。それぞれの鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110またはそれより多いアミノ酸を含む可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。それぞれの重鎖のC末端は、互いにジスルフィド結合しており、抗体の定常領域を形成する。これらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体を異なる「分類」に割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5分類の主な抗体が存在し、これらのいくつかは、さらに「サブ分類」(アイソタイプ)、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分けられてもよい。(約25kDaまたは約214アミノ酸)の全長免疫グロブリン「軽鎖」は、NH2末端に約110アミノ酸の可変領域と、COOH末端にカッパ定常領域またはラムダ定常領域とを含む。(約50kDaまたは約446アミノ酸の)全長免疫グロブリン「重鎖」は、同様に、可変領域(約116アミノ酸)と、上述の重鎖定常領域または分類のいずれか、例えば、ガンマ(約330アミノ酸)とを含む。異なる分類の免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は、よく知られている。
【0028】
本発明の内容において、抗体によって認識され、標的にされ得る抗原は、炭水化物(特に、ヒアルロン酸オリゴ糖)であり、この抗体は、ヒアルロン酸に特異的に結合する抗−ヒアルロン酸抗体である。本発明の好ましい実施形態において、抗体は、ヒアルロン酸を含む抗−ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体である。本発明のさらに好ましい実施形態において、抗−ヒアルロン酸抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖に特異的な抗体である。本明細書で使用する場合、「抗体が〜を標的とする」という表現は、特定の抗原に対する抗体の特異的な認識および結合を指す。本明細書で使用する場合、「〜に特異的に結合する」という表現は、ヒアルロン酸に特異的に結合し、他の炭水化物には特異的に結合しない抗体の能力を指す。
【0029】
HAオリゴ糖」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つのヒアルロナンの二糖単位を含む任意のオリゴ糖を指す。ヒアルロナンの二糖単位は、以下の式(式I)を有する。
【0030】
【化1】
【0031】
ヒアルロン酸」、「ヒアルロナン」または「ヒアルロネート」または「HA」という用語は、二糖繰り返し単位のポリマーであるアニオン性の非硫酸化グルコサミノグリカンに関するものであり、それ自体が、交互にβ−1,4およびβ−1,3グリコシド結合によって接続しているD−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミン(GlcAβ1−3GlcNAcβ)からなる。ヒアルロナンは、二糖繰り返し25,000個分の長さであってもよい。ヒアルロナンのポリマーは、in vivoでの大きさが5,000〜20,000,000Daの範囲であってもよい。ヒト滑液での平均分子量は、3〜400万Daであり、ヒト臍帯から精製したヒアルロナンは、3,140,000Daである。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、HAオリゴ糖は、上の式Iのオリゴ糖であり、2≦n≦20である。好ましい実施形態において、HAオリゴ糖は、二糖(n=1)、四糖(n=2)、六糖(n=3)および十糖(n=5)である。本発明の抗−ヒアルロン酸抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。好ましい実施形態において、本発明の抗−ヒアルロネート抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0033】
ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、異なる組成を有するオリゴ糖への特異的な結合を示すことなく、所与のHAオリゴ糖(例えば、HA二糖)に特異的に結合することができる抗体を指す。
【0034】
「診断」という用語は、本明細書で使用する場合、被検体においてあり得る疾患を決定および/または特定しようとするプロセス(すなわち、診断手順)、およびこのプロセスによって到達する意見(すなわち、診断意見)を指す。このように、なされるべき治療および予後に関する医学的な決定を可能にする、個々の状態を別個の固有のカテゴリーに分類しようとする試みであるとも考えることができる。当業者なら理解するように、このような診断は、診断される被検体100%について正しいとは言えない場合があるが、好ましくは、100%正しい。しかし、この用語は、このような病理(この場合には、SLE)を患う被検体の統計的に有意な割合を特定可能であることを必要とする。当業者は、よく知られている異なる統計学的評価を用い、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、Student検定、Mann−Whitneyなどによって、ある群が統計学的に有意であるか否かを決定してもよい(DowdyおよびWearden、1983を参照)。好ましい信頼区間は、少なくとも、50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0.05、0.025、0.001またはそれより小さい。「非ヒト霊長類」という用語は、ヒト以外の任意の霊長類を指し、限定されないが、サル、例えば、クモザル、リスザル、マーモセット、ヒヒおよび同分類の動物および類人猿、例えば、ゴリラ、オランウータン、テナガザル、フクロテナガザル、チンパンジーおよび同分類の動物が含まれる。
【0035】
予測」という用語は、本明細書で使用する場合、移植が必要な被検体および移植を受けた被検体が、移植後の拒絶を発生する可能性を決定することを指す。
【0036】
拒絶」という用語は、細胞/組織/臓器の移植という観点で本発明で用いられ、移植した細胞、組織および/または臓器がレシピエントの免疫系によって拒絶され、移植した細胞、組織および/または臓器を破壊するプロセスに関連する。超急性拒絶(HAR、促進型体液性拒絶またはACHRとしても知られる)、急性拒絶(細胞性拒絶としても知られる)および慢性拒絶といった異なるカテゴリーの拒絶を区別することができる。
【0037】
超急性拒絶(HAR)または促進型体液性拒絶(ACHR)は、血液供給の吻合から数分以内に発症し、血中を循環する抗体によって引き起こされ、腎臓は柔らかく、糸球体毛細血管での血行停止、部分的な血栓症、壊死、糸球体係蹄におけるフィブリン性血栓、間質性出血、白血球増加症およびPMNおよび血小板の凝集、赤血球の停滞、糸球体間質細胞の膨潤、動脈壁へのIgG、IgM、C3の沈着を伴うチアノーゼを生じる。この拒絶は、移植から数分以内または数時間以内に起こり、移植の要素に関する既存抗体に起因して、既存の体液性免疫によって開始する。この拒絶は、典型的には、異種移植後に観察され、まれに(例えば、ABO不適合)、同種移植の後に観察される。組織が移植により残される場合、全身性炎症反応症候群が起こる。本発明の内容において、超急性拒絶は、移植から少なくとも1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、1日後または2日後に起こると考えられる。
【0038】
体液性拒絶(本明細書では「抗体関連型拒絶」またはABMRとも呼ばれる)は、超急性拒絶(HAR)を含み、血中に循環するドナーに特異的な抗体の検出および移植片の中の補体要素の沈着による、強力な抗T細胞治療に耐性のある急性同種移植片の損傷を特徴とする拒絶型である。急性拒絶症例の20〜30%に発生する血中循環同種抗体の増加および補体の活性化を伴うABMRは、細胞性拒絶よりも予後が悪い。
【0039】
急性拒絶は、移植から2〜60日後に発生し、間質性の血管内皮細胞の膨潤、リンパ球、形質細胞、免疫芽細胞、マクロファージ、好中球の間質性蓄積;好中球尿細管上皮の浮腫/壊死を伴う管の分離;内皮細胞の膨潤および空胞形成、血管の浮腫、出血および炎症、腎尿細管の壊死、硬化した糸球体、管の「甲状腺化」、クレアチニンクリアランス、倦怠感、発熱、HTN、尿量減少を特徴とする。急性拒絶は、免疫抑制(通常は薬物による)が達成されない限り、一卵性双生児間の移植を除き、すべての移植である程度発生する。急性拒絶は、移植から1週間程度の早期に開始し、最初の3週間の危険性が最も高いが、数ヶ月後から数年後に起こることもある。特に、血管組織(例えば、腎臓または肝臓)が、特に、血管内壁の内皮細胞で、最も早期の徴候を呈することが多いが、最終的に、腎臓移植のほぼ10〜30%、肝臓移植の50〜60%で起こる。一般的に、急性拒絶は、例えば、ラパマイシン、シクロスポリンA、抗−CD40Lモノクローナル抗体などの免疫抑制薬で阻害または抑制することができる。本発明の内容において、急性拒絶は、移植から少なくとも3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後または6ヶ月後に起こると考えられる。
【0040】
慢性拒絶は、後期に、多くは、移植から60日を超えてから発生し、平滑筋の増殖および半月体形成を伴う糸球体間質細胞の増加;メサンギウム増殖性糸球体腎炎および間質性線維症を併発する急性変化を頻繁に伴い、一般的に、コルチコステロイドに対する応答が悪い。急性拒絶をうまく免疫抑制できた場合であっても、慢性拒絶は、移植から数ヶ月〜数年以内にヒトで発生する。線維症は、あらゆる種類の臓器移植の慢性拒絶で一般的な要素である。慢性拒絶は、一般的に、特定の臓器に特徴的な所定範囲の特定の障害によって記述することができる。例えば、肺移植において、このような障害としては、気道の繊維増殖性の破壊(閉塞性細気管支炎)が挙げられ、心臓移植または心臓組織の移植(例えば、弁置換)において、このような障害としては、線維性アテローム性動脈硬化症が挙げられ、腎臓移植において、このような障害としては、閉塞性腎疾患、腎硬化症、尿細管間質性腎炎が挙げられ、肝臓移植において、このような障害としては、胆管消失症候群が挙げられる。慢性拒絶は、虚血性障害、移植した組織の脱神経、脂質異常症および免疫抑制薬に関連する高血圧も特徴とする場合がある。本発明の内容において、慢性拒絶は、移植から数ヶ月後に発生すると考えられる。本発明の好ましい実施形態において、慢性拒絶は、移植から少なくとも2ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、少なくとも4ヶ月後、少なくとも5ヶ月後、または少なくとも6ヶ月後に発生すると考えられる。
【0041】
げっ歯類」という用語は、げっ歯目の任意の哺乳動物を指すために用いられ、限定されないが、以下の種が挙げられる。マウス、ラット、リス、シマリス、ホリネズミ、ヤマアラシ、ビーバー、ハムスター、アレチネズミ、モルモット、デグー、チンチラ、プレーリードッグおよびウッドチャック。
【0042】
サンプル」という用語は、本明細書で使用する場合、被検体から得ることができる生体液サンプルに関する。本発明の好ましい実施形態において、生体液は、抗体を含む任意の体液である。本発明のさらに好ましい実施形態において、生体液は、血液(例えば、末梢血液)、血清または血漿から選択される。本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、サンプルは、血清または血漿である。血液サンプルは、典型的には、通常は、肘の内側部分の血管から、または手の裏側から動脈穿刺または静脈穿刺することによって抽出され、血液サンプルは、気密バイアルまたは気密シリンジに集められる。微量法によって分析するために、通常は、かかとまたは指の末節骨での毛管穿刺を行うことができる。血清は、抗凝固剤非存在下、サンプルを10分間放置して沈降させ、その結果、血清(上澄み)から細胞(沈殿物)を分離させるために、凝集させ、その後、1,500rpmで10分間遠心分離処理することによって、全血液サンプルから得ることができる。次に、血漿サンプルを得るために、全血液を抗凝固剤と接触させ、3,000rpmで20分間遠心分離処理する。遠心分離の沈殿物は、生成した要素に対応し、上澄みは、血漿に対応する。本発明の方法によるサンプル分析のために、得られた血清または血漿を保存管に移すことができる。
【0043】
本発明の内容において、「移植拒絶」(transplant rejection)という用語は、超急性、急性および慢性の移植拒絶を含む。本発明の好ましい実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。
【0044】
被検体」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」という用語は、診断、予後または治療が望ましい任意の被検体、特に、哺乳動物の被検体を意味する。哺乳動物の被検体としては、ヒト、飼育動物、家畜および動物園の動物、スポーツ用動物または愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、被検体は、哺乳動物である。本発明のさらに好ましい実施形態において、被検体は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。本発明によれば、移植のドナーおよび/またはレシピエントは、哺乳動物である。一実施形態において、少なくともレシピエントはヒトである。ドナーは、移植片を除去するときに生きていてもよく、死んでいてもよい。
【0045】
「全身性エリテマトーデス」(systemic lupus erythematosus)すなわちSLEは、本明細書で使用する場合、典型的には、皮膚、関節、腎臓および脳に害を及ぼす免疫系疾患に関する。
【0046】
移植」(transplantation)という用語は、提供被検体から受容被検体へと、または同じ被検体の体内のある部分から別の部分へと細胞、組織または臓器を移す外科手術を指す。「提供被験者」は、輸血または臓器移植によって、別の被検体に血液、細胞、組織または臓器を与える被検体である。本発明の内容において、提供被検体は、細胞、組織および/または臓器を受容被検体に与える。本発明によれば、提供被検体は、ヒトまたは別の哺乳動物である。「受容被検体」は、輸血または臓器移植によって別の被検体から血液、細胞、組織または臓器を受ける被検体である。本発明の内容において、受容被検体は、提供被検体から組織および/または臓器を受ける。本発明によれば、受容被検体は、ヒトまたは別の哺乳動物である。移植される組織は、限定されないが、骨組織、腱、角膜組織、心臓弁、血管および骨髄を含む。移植される臓器は、限定されないが、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓および腸を含む。提供被検体および受容被検体が同じ種の遺伝的に同一ではない者である移植の特定の外科手術は、同種移植として知られている。従って、同種移植(allotransplant)(allograft、allogeneic transplantまたはhomograftとしても知られる)は、レシピエントとして同じ種の遺伝的に同一ではない者に由来する細胞、組織または臓器の移植に関する。「同種移植可能な」という用語は、比較的多く、または日常的に移植される臓器または組織を指す。同種移植可能な臓器の例としては、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓および腸が挙げられる。提供被検体および受容被検体が異なる種の者である移植の特定の外科手術は、異種移植として知られている。従って、異種移植(xenotransplant)(xenograft、xenogeneic tranplantまたはheterograftとしても知られる)は、ドナーおよびレシピエントが異なる種の者であるドナーに由来する細胞、組織または臓器のレシピエントへの移植に関する。
【0047】
移植拒絶が起こる確率を決定するための方法(本発明の第1の方法)
第1の態様において、本発明は、移植を受けた被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体において移植拒絶が起こる確率が高いとすることを含む、方法に関する。
【0048】
第1の工程において、本発明の第1の方法は、移植を受けた被検体からのサンプル中、少なくともヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルの決定を含む。
【0049】
少なくともヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、当業者に既知の望ましい特異性を有する抗体のレベルまたは抗体の力価を決定するのに適した任意の方法によって決定することができ、限定されないが、免疫化学アッセイ、例えば、ELISA(酵素免疫吸着アッセイ)、免疫染色、免疫化学アッセイ、免疫蛍光、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学アッセイおよび免疫沈降が挙げられる。非限定的な例として、抗−ヒアルロネート抗体のレベルは、抗−ヒアルロネート抗体(またはそのフラグメント)に特異的に結合する能力を有する二次抗体によって、その後、得られた抗−ヒアルロネート抗体−二次抗体の錯体の定量化によって定量化することができる。このようなアッセイに使用される抗体は、例えば、ポリクローナル血清、ハイブリドーマの上澄みまたはモノクローナル抗体、抗体フラグメント、Fv、Fab、Fab’ y F(ab’)2、ScFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体およびヒト化抗体であってもよい。同時に、抗体を標識してもよく、または標識しなくてもよい。使用可能なマーカーの具体的で非排他的な例としては、放射性同位体、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、酵素基質または補因子、酵素阻害剤、粒子、着色剤などが挙げられる。標識されていない抗体(一次抗体)および標識された抗体(二次抗体)を使用する本発明で使用可能な多種多様なよく知られたアッセイが存在し、これらの技術の中には、ウエスタンブロットまたはウエスタン転移、ELISA(酵素免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(酵素イムノアッセイ)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学技術および免疫組織化学技術、特異的な抗体を含むバイオチップまたはマイクロアレイの使用に基づく技術、またはフォーマット(例えば、ディップスティック)でのコロイド状沈殿に基づくアッセイが挙げられる。抗−ヒアルロネート抗体を検出し、定量化する他の様式としては、アフィニティクロマトグラフィー、結合リガンドアッセイなどの技術が挙げられる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、ELISAまたは免疫組織化学によって、移植を受けた被検体からのサンプルにおいて決定される。ELISAにおいて、プレートを、限定されないが、HA二糖、HA四糖、HA六糖および/またはHA十糖を含むヒアルロン酸オリゴ糖でコーティングする。HAオリゴ糖を、タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンに接続してもよく、またはポリアクリルアミドまたはセファロースに接合してもよい。または、ヒアルロン酸オリゴ糖(限定されないが、二糖、四糖、六糖および十糖を含む)に対して特異的な抗体を用いる。ヒアルロン酸抗体は、市販されているか、または、限定されないが、Abcam社製のヒトおよびマウスのHAのためのポリクローナル抗−HA ab53842抗体、MyBioSource社製のポリクローナルヒツジ抗−ヒトHA MBS220936抗体、Acris Antibodies社製のヒツジ抗−ヒトHA BP549抗体が挙げられる。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の第1の方法に従って決定される少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの1つ以上からなる群から選択される。別の実施形態において、検出される抗体は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2アイソタイプの1つ以上に属するIgG抗体である。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明の方法で決定される抗体は、HA二糖に対するIgM抗体、HA四糖に対するIgM抗体、HA六糖に対するIgM抗体、HA十糖に対するIgM抗体、HA二糖に対するIgG抗体、HA四糖に対するIgG抗体、HA六糖に対するIgG抗体および/またはHA十糖に対するIgG抗体からなる群から選択される。
【0053】
移植を受けた被検体からのサンプルにおいて、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、移植後の異なる時間点で決定することができる。本発明の一実施形態において、このレベルは、移植から1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、1日後または2日後に決定することができる。本発明の別の実施形態において、このレベルは、移植から3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後または13日後に決定することができる。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、移植から2週間後、3週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後または6ヶ月後に決定することができる。
【0054】
第2の工程において、本発明の第1の方法は、第1の工程で決定した少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルをリファレンス値と比較し、サンプル中の少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、移植を受けた被検体において移植拒絶が起こる確率が高い。
【0055】
「変化して」または「実質的に変化して」という用語は、リファレンス値と比較したときに、移植を受けた被検体からのサンプルにおいて、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが増加または減少していることを指す。
【0056】
特に、リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体が、少なくとも1.1倍、1.5倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはもっと多く増加するとき、レベルが「上昇した」と考える。一方、リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体が、少なくとも0.9倍、0.75倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、0.025倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍、またはもっと小さく減少しているとき、レベルが「減少した」と考える。リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルに「変化がない」という用語は、リファレンス値に対して実質的に変わらないレベルを指す。例えば、レベルの差が0.1%より小さく、0.2%より小さく、0.3%より小さく、0.4%より小さく、0.5%より小さく、0.6%より小さく、0.7%より小さく、0.8%より小さく、0.9%より小さく、1%より小さく、2%より小さく、3%より小さく、4%より小さく、5%より小さく、6%より小さく、7%より小さく、8%より小さく、9%より小さく、10%より小さく、またはこの決定で用いられる実験方法に関連する誤差と同じ割合値より大きくないとき、試験中のサンプルにおいて、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体に変化がないと考えられる。
【0057】
特定の実施形態において、移植を受けた被検体において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、移植から3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後または10日後に得られた被検体からのサンプルにおいて決定される。本発明の好ましい実施形態において、移植を受けた被検体において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、移植から3日後、4日後、5日後または6日後に得られた被検体からのサンプルにおいて決定される。
【0058】
「リファレンス値」という用語は、移植を将来受ける被検体からのサンプル中の少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルに関し、このサンプルは、移植を受ける前の被検体から得られる。少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが抗−ヒアルロネート抗体のリファレンス値として決定されるサンプルを、被検体が移植を受ける1時間前、2時間前、5時間前、12時間前、1日前、2日前、5日前、10日前、20日前、1ヶ月前、2ヶ月前、6ヶ月前または1年前に得ることができる。好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが抗−ヒアルロネート抗体のリファレンス値として決定されるサンプルは、被検体が移植を受ける1時間前、2時間前、5時間前、12時間前、1日前または2日前に得られる。
【0059】
このリファレンス値が確立されたら、移植を受けた被検体における少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルをこのリファレンス値と比較し、これによって、このリファレンス値を下回った場合には、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「低い」または「減少した」と割り当て、またはリファレンス値より高い場合には、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「高い」または「上昇した」と割り当てることができる。
【0060】
特に、リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、少なくとも1.1倍、1.5倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはもっと多く増加するとき、抗−ヒアルロン酸抗体のレベルが「上昇した」と考える。一方、リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、少なくとも0.9倍、0.75倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、0.025倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍、またはもっと小さく減少しているとき、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「減少した」と考える。
【0061】
移植を受けた被検体からのサンプルにおける少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルと、リファレンス値とを比較したら、本発明の第1の方法によって、被検体において移植拒絶が起こる確率を決定することができ、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、被検体において移植拒絶が起こる確率が高い。
【0062】
本発明の特定の実施形態において、被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから1日後または2日後に行われる場合、リファレンス値と比較して前記抗体のレベルの低下は、被検体における超急性移植拒絶の確率が高いことの指標である。
【0063】
本発明の別の特定の実施形態において、被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから少なくとも3日後に行われる場合、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルの増加は、被検体における急性体液性拒絶の確率が高いことの指標である。
【0064】
別の特定の実施形態において、被検体からのサンプル中のヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベル決定が、移植を受けてから少なくとも2ヶ月後に行われる場合、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルの増加は、被検体における慢性移植拒絶の確率が高いことの指標である。
【0065】
本発明の第1の方法によれば、抗−ヒアルロン酸抗体のレベルは、移植を受けた被検体のサンプルにおいて決定される。
【0066】
特定の実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。
【0067】
特定の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0068】
特定の実施形態において、サンプルは、血液、血清および血漿からなる群から選択される。好ましい実施形態において、サンプルは、血液サンプルである。
【0069】
特定の実施形態において、移植を受けた被検体は、哺乳動物である。別の実施形態において、哺乳動物は、霊長類である。好ましい実施形態において、霊長類は、ヒトではないまたはヒト霊長類である。本発明の別の好ましい実施形態において、移植を受けた被検体は、免疫抑制治療を受ける。免疫抑制治療を、移植前に、治療後に、治療前と治療後の両方に、移植を受ける被検体に投与することができる。移植において治療に一般的に使用される免疫抑制剤としては、限定されないが、モノクローナル抗体、例えば、バシリキシマブ(Simulect(商標))、ダクリズマブ(Zenapax(商標))またはムロモナブ−CD3(Orthoclone OKT3(商標))、ポリクローナル抗体、例えば、ウサギの抗胸腺細胞免疫グロブリン(Thymoglobulin(商標))またはウマの抗胸腺細胞免疫グロブリン(ATGAM(商標)、Lymphoglobulin(商標))、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾンまたはプレドニゾロン、カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリン(Neoral(商標)、Sandimmune(商標))またはタクロリムス(Prograf(商標))、mTOR阻害剤、例えば、シロリムス(Rapamune(商標))またはエベロリムス(Certican(商標))、抗増殖剤、例えば、アゼチオプリン(Imuran(商標))、プリン合成阻害剤、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(商標))またはミコフェノール酸ナトリウム(Myfortic(商標))、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、ニトロ尿素または白金化合物、葉酸類似体、例えば、メトトレキサート、プリン類似体、例えば、アゼチオプリンまたはメルカプトプリン、ピリミジン類似体、タンパク質合成阻害剤および細胞毒性抗生物質、例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシンまたはミトラマイシンが挙げられる。免疫抑制治療を、移植前に、治療後に、治療前と治療後の両方に、移植を受ける被検体に投与することができる。本発明の別の好ましい実施形態において、移植を受けた被検体は、抗−αGal(Galα1−3Galβ1−4GlcNAc)抗体を失わせるための治療を受ける。抗−αGal抗体を失わせるための治療を、移植前に、治療後に、治療前と治療後の両方に、移植を受ける被検体に投与することができる。抗−αGal抗体を失わせるための薬剤としては、限定されないが、αGal類似体GAS914が挙げられる。
【0070】
拒絶を弱めるための本発明の免疫吸着組成物およびその使用
さらなる態様において、本発明は、ヒアルロン酸が付着した生体適合性の固体支持体を含む、移植の被検レシピエントの体液から抗体を除去し、レシピエントによる移植拒絶を弱めるのに有用な免疫吸着組成物に関する。
【0071】
ヒアルロン酸オリゴ酸が付着する支持体は、シートまたは粒子の形態であってもよい。多様な生体適合性の固体支持体材料が当該技術分野で知られている。その非限定的な例は、シリカ、合成シリケート、例えば、多孔性ガラス、生物起源のシリケート、例えば、珪藻土、シリケート含有鉱物、例えば、カオリナイトおよび合成ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンおよび多糖である。
【0072】
好ましい実施形態において、免疫吸着組成物の一部を形成するヒアルロン酸オリゴ糖は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、および/またはヒアルロン酸十糖からなる群から選択される。
【0073】
抗原が結合する固体支持体は、連続した大きな表面の形態または粒子の形態であってもよい。多様な生体適合性の固体支持体材料が当該技術分野で知られている。その例は、シリカ、合成シリケート、例えば、多孔性ガラス、生物起源のシリケート、例えば、珪藻土、シリケート含有鉱物、例えば、カオリナイトおよび合成ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンおよび多糖である。好ましい支持体は、米国特許出願第07/270,950号に記載されている。
【0074】
抗原は、固体支持体に共有結合しているか、または、非共有結合によって(受動的に)吸着する。共有結合は、支持体の官能基と抗体の適合するリンカーアーム部との反応による結合であってもよい。間接的な結合に用いられる接続部分は、好ましくは、固体支持体表面から抗原を単純に離すのに役立つ適切な長さ(少なくとも1つの炭素原子)の有機二官能分子である。
【0075】
多くのアグリコン接続アームが当該技術分野で知られている。例えば、パラ−ニトロフェニル基を含む接続アーム(すなわち、−YR=−OCpNO)は、Ekbergら(1982 Carbohydr Res 110:55−67)によって開示されている。合成中の適切な時間に、ニトロ基をアミノ基に還元し、これをN−トリフルオロアセトアミドとして保護することができる。支持体にカップリングする前に、トリフルオロアセトアミド基を除去することによって、アミノ基を脱保護する。
【0076】
硫黄を含有する接続アームは、Dahmenら(1983 Carbohydr Res 118:292−301)によって開示される。具体的に、接続アームは、2−ブロモエチル基からチオ求核試薬との置換反応で誘導され、例えば、−OCHCHSCHCOCHおよび−OCHCHSC−pNHといった種々の末端官能基を有する接続アームが導かれることを示している。
【0077】
Ranaら(1981 Carbohydr Res 91:149−157)は、トリフルオロアセトアミド保護基を除去し、カップリングに使用する一級アミノ酸を脱保護する6−トリフルオロアセトアミド−ヘキシル接続アーム(−O−(CH−NHCOCF)を開示する。
【0078】
既知の接続アームの他の例示としては、7−メトキシカルボニル−3,6,ジオキサヘプチル接続アーム(−OCH−CHOCHCOCH)(Amvam−Zolloら、1986 Carbohydr Res 150:199−212);2−(4−メトキシカルボニルブタンカルボキサミド)エチル(−OCHCHNHC(O)(CHCOCH)(Paulsenら、1982 Carbohydr Res 104:195−219);適切なモノマーとのラジカル共重合によってコポリマーが得られるアリル接続アーム(−OCHCH=CH)(Chernyakら、1984 Carbohydr Res 128:269−282);他のアリル接続アーム[−O(CHCHO)CHCH=CH](Fernandez−Santanaら、1989 Carbohydr Res 8:531−537)が知られている。さらに、アリル接続アームは、2−アミノエタンチオール存在下、誘導体化され、接続アーム−OCHCHCHSCHCHNHを得ることができる(Leeら、1974 Carbohydr Res 37:193、以下参照)。他の適切な接続アームは、米国特許第4137401号、4238473号、4362720号およびDahmenら(1984 Carbohyd Res 127:15−25)およびGareggら(1985 Carbohydr Res 136:207−213)に開示される。
【0079】
さらに、Ratcliffeら(米国特許出願第07/278,106号)に示されるように、R基は、還元糖末端に接続アームを含むさらなる糖またはオリゴ糖であってもよい。
【0080】
好ましくは、グリコン部分は、疎水性基であり、最も好ましくは、アグリコン部分は、−(CHCOOCH、−(CHOCHCH=CHおよび−(CHCHOHからなる群から選択される疎水性基である。
【0081】
次いで、ヒアルロン酸抗原の官能性接続アームを使用し、この抗原を生体適合性の固体支持体に付着する。このような付着は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国特許出願第07/887,746号に開示される。
【0082】
ヒアルロン酸が結合した2つ以上のオリゴ糖の組み合わせを含む固体支持体を使用し、生体液から抗−ヒアルロネート抗体を除去してもよい。または、生体液を、一連の固体支持体に連続して通してもよく、それぞれが、結合した1つ以上の異なるヒアルロン酸抗原を有しており、異なる特異性を有する抗−ヒアルロネート抗体を除去する。
【0083】
別の態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための本発明の免疫吸着組成物に関する。別の態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて抗体が介在する移植拒絶を弱めるための方法であって、
(a)前記レシピエントから抗体含有体液を抜き取り;
(b)抜き取られた体液から、免疫吸着組成物を介した体液の体外灌流によって、ヒアルロン酸に対する既存抗体を除去して、レシピエントに再導入するための灌流された体液を得ることを含む、方法に関する。
【0084】
本発明の免疫吸着組成物の使用という観点で、流体は、抗体を含む任意の体液である。さらに好ましい実施形態において、体液は、血液(例えば、末梢血液)、血清または血漿から選択される。さらに好ましい実施形態において、体液は、血液である。血液は、当業者に既知の従来の技術によって移植の被検レシピエントから得られる。抗凝固剤(限定されないが、ヘパリンまたはクエン酸塩)を加え、凝固を防ぐ。所望な場合、抗−ヒアルロネート抗体を失わせる前に、血液から細胞を除去してもよい。
【0085】
被検体からの体液の抜き取りは、限定されないが、デバイス、例えば、カテーテル、シリンジ、カニューレ、またはUS7048724号に開示される患者から流体を排出させる装置;および方法、例えば、胸腔穿刺(胸腔から流体を除去するための侵襲的手技)、穿刺(体腔、通常は、腹腔から流体を排出させるための医学的手技)、心膜腔穿刺(囲心嚢領域から流体を除去する)および透析(血液透析、腹膜透析、血液濾過、腸透析)を含む当業者に既知の方法およびデバイスによって行うことができる。本発明の特定の実施形態において、被検体の体内から抜き取られる体液は、血液である。本発明の好ましい実施形態において、血液は、血液灌流によって被検体の体内から抜き取られる。血液は、従来の技術によって抜き取られ、典型的には、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、クエン酸塩)が凝固を防ぐために加えられる。所望な場合、異種抗体を失わせる前に、血液から細胞を除去してもよい。
【0086】
1つ以上の抗原が結合した固体支持体に血液を灌流させることによって、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体を失わせる。本発明において、ヒアルロン酸抗原が結合した固体支持体に血液を灌流させることによって、ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体を失わせる。ヒアルロン酸抗原は、限定されないが、ヒアルロン酸(特に、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖)を含むオリゴ糖を含む。
【0087】
支持体に結合した抗原(ヒアルロン酸オリゴ糖)と、生体液に存在する相補的な抗−ヒアルロネート抗体との結合を促進する条件で、体液を固体支持体と接触させる。体外血液灌流を実行するための好ましい装置および技術は、米国特許出願第07/270,950号に記載される。35℃〜40℃の範囲の接触温度が好ましく用いられる。接触時間は、典型的には、1〜6時間の範囲であろう。次いで、生体液(すなわち、抗−ヒアルロネート抗体が失われた血液、血漿または血清)の未結合部分を、患者に再導入するために集め、または連続的な原理に基づき再導入してもよい。レシピエントの生体液からの抗体の除去は、移植の前に行われてもよく、または、被検体が移植されると(典型的には、移植前に1日に1回、8回まで繰り返される)、抗体が実質的に存在しない状態で、または、抗体が比較的低い力価で存在するときに移植片が導入される。レシピエントの抗体の力価を、イムノアッセイによって監視してもよい。このような条件での移植片の挿入によって、抗体が介在する超急性拒絶の可能性を減らし(抗体の力価がその後増加したとしても)、移植片の生存率を高める。この現象は、「順応」、「適応」または「アネルギー」といったさまざまな用語で呼ばれる。抗体の除去は、必要な場合、移植後に継続されてもよい。
【0088】
非特異的な免疫抑制剤(例えば、すでに述べられているもの)を使用する従来の薬理学的免疫抑制計画を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
特定の実施形態において、ヒアルロン酸に対する既存抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。さらに特定の実施形態において、ヒアルロン酸オリゴ糖に対する既存抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0090】
特定の実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。
【0091】
特定の実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。
【0092】
特定の実施形態において、移植の被検レシピエントは、ヒトまたは非ヒト霊長類である。
【0093】
ポリマー構造およびその使用
別の実施形態において、本発明は、ポリマー骨格を形成する1つ以上のモノマー単位がヒアルロン酸オリゴ糖に接続する、ポリマー骨格を含むポリマー構造に関する。
【0094】
本発明のポリマー構造のポリマー部分は、直鎖または分枝鎖の様式で、環(例えば、大環)の形態で、星形(デンドリマー)の形態で、または球状(例えば、フラーレン)の形態で接続した、少なくとも2つの同一または異なるモノマー単位で構成され、分子量の不均一性を示してもよい。本発明の化合物は、少なくともある程度まで親水性であるため、そのポリマー部分は、少なくともある程度まで親水性であるはずである。当業者は、本発明に使用可能な多数の親水性ポリマーを容易に認識するだろう。本発明のポリマー構造をin vivoで使用する場合、生分解性であり、生理学的に忍容性であり、生理学的に分解可能であるべきである。このような場合には、ポリマーは、生理学的に忍容性であるために多くの要求を満たさなければならない。つまり、(i)使用する被検体において免疫応答を誘発せず、(ii)細網内皮系(RES)における非特異的な相互作用および蓄積を避けなければならない。in vivoでの使用に適したポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリアミノ酸(ポリリジンを含む)、ポリホスファゼンおよび多糖が挙げられる。好ましいポリマーとしては、ポリアミノ酸、ポリエステル、ポリアミドまたは酸無水物として接続するポリヒドロキシ−カルボン酸、または多糖、好ましくは、分子量が約70kDまでのものが挙げられる。ポリマーは、血中で十分な半減期を達成するために、好ましくは、分子量が少なくとも約2kdである。
【0095】
in vivoでの使用に特に好ましい適切なポリマーとしては、ポリアスパラギン酸アミド、ポリコハク酸イミド、ポリグルタメートおよびポリアミノ酸に属するポリリジン−フマル酸アミド、ポリエステル、ポリアミドまたはポリ酸無水物の形態のリンゴ酸、酒石酸またはクエン酸に基づくポリヒドロキシカルボン酸に属する官能性ポリヒドロキシカルボン酸、および置換キトサン、ヘパリン、ヒアルロン酸またはデンプン誘導体が挙げられる。当業者は、他の適切なポリマーを容易に認識するだろう。
【0096】
本発明のポリマー構造のヒアルロン酸オリゴ糖を形成する部分は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、ヒアルロン酸十糖、またはこれらの1つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0097】
(スペーサーを介して)炭素骨格部分を有するポリマー骨格の保持量の程度は、一般的に、約0.5〜約50%、好ましくは、約2〜約25%である。保持量の程度は、望ましい機能によって変わる。ポリマーは、スペーサーを介して複数のヒアルロン酸オリゴ糖を有していてもよく、または、たった1つのスペーサーに接続したヒアルロン酸オリゴ糖を有していてもよい。複数のヒアルロン酸オリゴ糖が存在する場合、これらは同じであってもよく、または異なっていてもよい。ポリマーに保有されるヒアルロン酸オリゴ糖またはスペーサー−ヒアルロン酸オリゴ糖の絶対数も、特定のヒアルロン酸オリゴ糖(二糖、四糖、六糖または十糖)および意図する用途によって変わるだろう。さらに、有利には、複数の炭水化物含有ポリマーを一緒に接続してもよい。
【0098】
スペーサーは、ヒアルロン酸オリゴ糖部分とポリマー部分とに接続し、これらを空間的に分離する部分である。この空間的な分離は、ヒアルロン酸オリゴ糖とポリマーとの立体的な相互作用を防ぐのに必要な場合があり、これにより、ヒアルロン酸オリゴ糖部分の最適な立体的な接近可能性を確保する。スペーサーは、天然に存在する分子または天然に存在しない合成分子であってもよい。
【0099】
ヒアルロン酸オリゴ糖およびポリマー部分へのスペーサーのカップリングを容易にするために、スペーサーは、有利には、二官能である。二官能スペーサーは、2個の反応性官能基を有するスペーサーであり、この反応性官能基を使用し、共有結合生成によって、一方ではポリマー部分の活性化された基のスペーサーに接続し、他方ではヒアルロン酸オリゴ糖部分の別の活性化された基に接続する。
【0100】
「反応性基」は、供与基として作用する官能基、好ましくは、OH、NHまたはSH官能基であり、「活性化された基」と反応して共有結合を生成する。特に好ましくは、この観点でNH基またはOH基である。ポリマーが、反応性基を含有するモノマーで構成される場合、反応性基は、実際に、ポリマーの要素である。
【0101】
「活性化された基」は、受容基として作用し、「反応性基」と反応して共有結合を生成する官能基である。好ましくは、ブロミド、ヨージド、活性エステルが使用され、特に好ましくは、p−ニトロフェニルまたはN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体が使用される。カルボニルクロリドおよびカルボン酸イミダゾリド、混合カルボン酸無水物およびフェニルラジカルも好ましい。好ましくは、アルデヒド、アクリル酸エステル、アクリルアミド、マロンイミド、スクシンイミド、2−ビニルピリジン、ヨード酢酸エステル、イソチオシアネートおよび/またはイソシアネートが使用される。最も好ましいのは、N−ヒドロキシスクシンイミド活性基、マレイミド、スクシンイミド、アクリルアミド、アルデヒドまたはイソシアネートである。活性化された基は、ポリマーの一部として存在するか、または、ポリマーにすでにある部分である反応性基から当業者に既知のプロセスによって調製されてもよい。R.C.Larock、COMPREHENSIVE ORGANIC TRANSFORMATIONS、VCK−Verlagsgesellschaft、Weinheim/Germany(1989)。
【0102】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱めるときに本発明のポリマー構造を使用してもよい。従って、別の態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための本発明のポリマー構造の使用に関する。または、本発明は、本発明のポリマー構造を、その抗原に対するレシピエントの抗体を阻害するのに十分な量で投与することを含む、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱めるための方法に関する。
【0103】
「抗体が介在する移植拒絶を弱める」という用語は、抗体が介在する移植体液性拒絶の軽減または低下を指す。
【0104】
好ましい実施形態において、ポリマー構造は、その抗原に対するレシピエントの抗体を阻害するのに十分な量で、レシピエントに非経口投与される。
【0105】
「非経口投与」という用語は、限定されないが、静脈内、動脈内、筋肉内、脳内、脳室内および皮下を含む投与を指す。
【0106】
「既存抗体」という用語は、移植を受けていない被検体および/または移植前の被検体に存在する、ヒアルロン酸から誘導されるオリゴ糖を標的とする抗体に関する。
【0107】
本発明の非経口投与可能な組成物は、適切な単位投薬形態で滅菌した溶液、懸濁物または凍結乾燥した製品に適合するように調整されてもよい。限定されないが、以下のものを含む十分な賦形剤を使用してもよい。
−抗菌性防腐剤、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン(prophylparaben)など。
−酸化防止剤、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピルなど。
−安定化剤および懸濁剤、例えば、可溶性または膨潤性に改変されたセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aquasorb社、Blanose、Nymcel)。
−等張化剤、例えば、塩化ナトリウム。
−可溶化剤、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール。
【0108】
上述の製剤は、標準的な方法、例えば、スペイン国および米国の薬局方および同様の参考文書に記載されるか、または参照されている方法を用いて調製されるだろう。
【0109】
投与されるポリマー構造の量は、前記抗原に対する受容体の抗体を阻害するのに必要な量である。この量は、医師によって決定されるべきである。特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。さらに特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0110】
組成物は、免疫抑制剤も伴っていてもよい。
【0111】
特定の実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。
【0112】
別の実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。
【0113】
別の実施形態において、移植を受けた被検体は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。
【0114】
HAオリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞およびその使用
別の実施形態において、本発明は、その表面にHAオリゴ糖を安定に組み込んだ細胞に関する。これらの細胞は、外部で調製した合成分子構築物の細胞膜への挿入または組み込みによって得られ、細胞によって発現される細胞表面抗原の量的および質的な変化に影響を及ぼす。
【0115】
当該技術分野で既知の任意の脂質アンカーを用いて細胞を改質することができる。一実施形態において、WO9905255号に記載されるように、GPI接続タンパク質が、脂質の尾部を介して細胞膜に自然に固定される能力を発揮するような方法によって、細胞を改質することができ、生体源から単離されるGPI接続タンパク質の膜への挿入を含む方法を記載する。単離されたGPIが固定されたタンパク質は、細胞表面の膜に再び組み込まれるという独特の能力を有すると述べられている。細胞表面への抗原の局在化は、膜アンカーとして糖脂質を使用することによっても達成されるだろう。例えば、WO2003/034074号は、制御された量の糖脂質を膜に挿入する工程を含む、目的の分子で細胞表面を修飾するための方法を記載する。挿入される糖脂質の量によって、望ましい抗原発現度を有する細胞を与えるように制御する。さらに、WO2003087346号は、「膜アンカー」として改質された脂質を膜に挿入する工程を含む方法を記載する。改質された糖脂質は、細胞または多細胞構造の表面に抗原を局在化させる。これにより、新しい特徴が細胞または多細胞構造に付与されるだろう。
【0116】
好ましい実施形態において、ヒアルロン酸オリゴ糖を安定に組み込んだ細胞は、細胞と、構造F−S1−S2−Lを有し、FがHAオリゴ糖であり、S−Sが、LにFを接続するスペーサーであり、Lが、細胞の脂質二重層に組み入れられる脂質であり、ジアシル糖脂質およびジアルキル糖脂質からなる群から選択され、ジアシル糖脂質およびジアルキル糖脂質から誘導されるグリセロリン脂質およびスフィンゴシンを含む(セラミドを含む)合成膜アンカーとを接触させることによって得られる。好ましくは、Lは、ジアシル糖脂質およびジアルキル糖脂質(グリセロリン脂質を含む)からなる群から選択される脂質である。さらに好ましくは、Lは、ジアシル糖脂質、ホスファチデート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、およびtrans−3−ヘキサデセン酸、cis−5−ヘキサデセン酸、cis−7−ヘキサデセン酸、cis−9−ヘキサデセン酸、cis−6−オクタデセン酸、cis−9−オクタデセン酸、trans−9−オクタデセン酸、trans−11−オクタデセン酸、cis−11−オクタデセン酸、cis−11−エイコセン酸またはcis−13−ドコセン酸のうち1つ以上から誘導されるジホスファチジルグリセロールからなる群から選択される。さらに好ましくは、脂質は、1つ以上のcis−不飽和脂肪酸から誘導される。最も好ましくは、Lは、1,2−O−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−O−ジステアリル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびrac−1,2−ジオレオイルグリセロール(DOG)からなる群から選択される。
【0117】
特定の実施形態において、ヒアルロン酸オリゴ糖は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖からなる群から選択される。
【0118】
外因性HAオリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞は、通常は、細胞または多細胞構造と糖脂質アンカーとを接触させることによって得られる。好ましくは、懸濁物中の水溶性合成膜アンカーまたは合成分子構築物の濃度は、0.1〜10mg/mLの範囲である。好ましくは、温度は、2〜37℃の範囲である。さらに好ましくは、温度は、2〜25℃の範囲である。最も好ましくは、温度は、2〜4℃の範囲である。好ましい実施形態において、細胞は赤血球である。
【0119】
移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱めるときに、本発明の外因性HAオリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞を使用することができる。従って、別の態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法で使用するための、HAオリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞集団に関する。または、本発明は、HAオリゴ糖を表面に安定に組み込んだ細胞集団を、前記抗原に対するレシピエントの抗原を阻害するのに十分な量で投与することを含む、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱めるための方法に関する。
【0120】
「抗体が介在する移植拒絶を弱める」という用語は、抗体が介在する移植体液性拒絶の軽減または低下を指す。
【0121】
好ましい実施形態において、細胞集団は、前記抗原に対するレシピエントの抗原を阻害するのに十分な量でレシピエントに非経口投与される。
【0122】
「非経口投与」という用語は、限定されないが、静脈内、動脈内、筋肉内、脳内、脳室内および皮下を含む投与を指す。
【0123】
「既存抗体」という用語は、移植を受けていない被検体および/または移植前の被検体に存在する、ヒアルロン酸から誘導されるオリゴ糖を標的とする抗体に関する。
【0124】
本発明の非経口投与可能な組成物は、適切な単位投薬形態で滅菌した溶液、懸濁物または凍結乾燥した製品に適合するように調整されてもよい。限定されないが、以下のものを含む十分な賦形剤を使用してもよい。
− 抗菌性防腐剤、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン(prophylparaben)など。
− 酸化防止剤、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピルなど。
− 安定化剤および懸濁剤、例えば、可溶性または膨潤性に改変されたセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aquasorb社、Blanose、Nymcel)。
− 等張化剤、例えば、塩化ナトリウム。
− 可溶化剤、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール。
【0125】
上述の製剤は、標準的な方法、例えば、スペイン国および米国の薬局方および同様の参考文書に記載されるか、または参照されている方法を用いて調製されるだろう。
【0126】
投与される細胞集団の量は、前記抗原に対する受容体の抗体を阻害するのに必要な量である。この量は、医師によって決定されるべきである。特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。さらに特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0127】
組成物は、免疫抑制剤も伴っていてもよい。
【0128】
特定の実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。
【0129】
別の実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。
【0130】
別の実施形態において、移植を受けた被検体は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。
【0131】
本発明の抗原の使用/移植拒絶を弱めるための方法
本発明は、移植レシピエントにヒアルロン酸抗原を非経口で導入することも想定する。血中に導入すると、これらの抗原は、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な既存抗体に結合し、この抗体の活性を中和するだろう。
【0132】
従って、別の態様において、本発明は、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱めるときに使用するためのヒアルロン酸オリゴ糖に関する。または、本発明は、その抗原に対するレシピエントの抗体を阻害するのに十分な量のヒアルロン酸オリゴ糖を投与することを含む、移植の被検レシピエントにおいて、抗体が介在する移植拒絶を弱める方法に関する。
【0133】
「抗体が介在する移植拒絶を弱める」という用語は、抗体が介在する移植体液性拒絶の軽減または低下を指す。
【0134】
好ましい実施形態において、ヒアルロン酸オリゴ糖は、その抗原に対するレシピエントの抗体を阻害するのに十分な量でレシピエントに非経口投与される。
【0135】
「非経口投与」という用語は、限定されないが、静脈内、動脈内、筋肉内、脳内、脳室内および皮下を含む投与を指す。
【0136】
「既存抗体」という用語は、移植を受けていない被検体および/または移植前の被検体に存在する、ヒアルロン酸から誘導されるオリゴ糖を標的とする抗体に関する。
【0137】
本発明の非経口投与可能な組成物は、適切な単位投薬形態で滅菌した溶液、懸濁物または凍結乾燥した製品に適合するように調整されてもよい。限定されないが、以下のものを含む十分な賦形剤を使用してもよい。
− 抗菌性防腐剤、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン(prophylparaben)など。
− 酸化防止剤、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピルなど。
− 安定化剤および懸濁剤、例えば、可溶性または膨潤性に改変されたセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aquasorb社、Blanose、Nymcel)。
− 等張化剤、例えば、塩化ナトリウム。
− 可溶化剤、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール。
【0138】
上述の製剤は、標準的な方法、例えば、スペイン国および米国の薬局方および同様の参考文書に記載されるか、または参照されている方法を用いて調製されるだろう。
【0139】
投与されるヒアルロン酸抗原の量は、前記抗原に対する受容体の抗体を阻害するのに必要な量である。この量は、医師によって決定されるべきである。特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。さらに特定の実施形態において、レシピエントの抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0140】
抗−ヒアルロネート抗体除去技術に使用したのと同じヒアルロン酸抗原をこの阻害技術に使用してもよい。これらのヒアルロン酸抗原またはその医薬的に許容され得る誘導体(例えば、エステル)のうち1つ以上を、従来の医薬的に許容され得る注射可能なビヒクル(例えば、注射用の水)中で注射可能なように配合する。配合は、典型的には、抗原とビヒクルとを混合し、発熱物質を除去する混合物を超濾過または滅菌濾過することによって混合物の発熱物質を除去することを含む。混合物は、貯蔵のために凍結乾燥され、所望な場合、滅菌ビヒクル中で再構築されてもよい。注射可能な製剤は、断続的なボーラス注射によって、または静脈内持続投与によって投与されてもよい。投与は、典型的には、移植片の血管再建の前に開始され、移植後も所定時間続けられるだろう。特定の投薬量および投与の計画は、移植の種類、レシピエントおよびドナーの年齢、体重および病歴、抗原の薬物動態によって変わるだろう。典型的には、抗原は、約100mg/hr〜1000mg/hrの範囲の投薬量で1〜20日間連続して投与されるだろう。これに伴う薬理学的免疫抑制が好ましい。すでに述べたような抗体の体外除去を、抗原の非経口投与と組み合わせて使用してもよい。
【0141】
組成物は、免疫抑制剤も伴っていてもよい。
【0142】
特定の実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。
【0143】
別の実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。
【0144】
別の実施形態において、移植を受けた被検体は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。
【0145】
ヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体を失った血液、血漿または血清
別の態様において、本発明は、血液または血漿が、ヒアルロン酸オリゴ糖に対する既存抗体を含まない、移植拒絶を弱めるために移植の被検レシピエントに灌流するのに有用な血液、血漿または血清に関する。
【0146】
この血液、血漿または血清は、すでに記載したように、本発明の免疫吸着組成物を用いて得ることができる。
【0147】
既存抗体は、ヒアルロン酸を含むオリゴ糖を標的とする抗体である。特に、既存抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0148】
好ましい実施形態において、移植拒絶は、急性体液性拒絶である。別の好ましい実施形態において、移植は、異種移植または同種移植である。さらに別の好ましい実施形態において、移植の被検レシピエントは、ヒトまたは非ヒト霊長類である。
【0149】
被検体のSLEを診断するための方法
本願発明者らは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者が、IgM抗−HA二糖抗体の低下およびIgG抗−HA二糖抗体の増強を示すことを観察し、この抗HA抗体の変化が、HA分子全体の免疫原性ではなく、特定のHAオリゴ糖の免疫原性に関連し得ることを示唆した。
【0150】
従って、別の態様において、本発明は、被検体において全身性エリテマトーデス(SLE)を診断するための方法であって、前記被検体からのサンプル中の、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定し、前記少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、前記被検体はSLEと診断することを含む、方法に関する。
【0151】
第1の態様において、本発明のSLEを診断する方法は、被検体からのサンプル中、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定することを含む。少なくともヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルを決定するための適切な方法は、被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法という観点で上に記載している。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルは、被検体からのサンプル中、ELISAまたは免疫組織化学法によって決定される。
【0152】
特定の実施形態において、本発明の診断方法に従って決定される少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの1つ以上からなる群から選択される。好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、IgGまたはIgMの1つ以上からなる群から決定される。好ましい実施形態において、本発明の方法で決定される抗体は、HA二糖に対するIgM抗体、HA四糖に対するIgM抗体、HA六糖に対するIgM抗体、HA十糖に対するIgM抗体、HA二糖に対するIgG抗体、HA四糖に対するIgG抗体、HA六糖に対するIgG抗体および/またはHA十糖に対するIgG抗体からなる群から選択される。
【0153】
第2の工程において、本発明のSLE診断方法は、第1の工程で決定した少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルをリファレンス値と比較し、サンプル中の少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、被検体はSLEと診断する。
【0154】
「変化して」または「実質的に変化して」という用語は、被検体において移植拒絶が起こる確率を決定するための方法という観点で上に記載している。
【0155】
本発明のSLE診断方法という観点で、「リファレンス値」という用語は、健康な被検体またはSLEと診断されていない被検体からのサンプルにおける少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルに関する。
【0156】
このリファレンス値が確立されたら、移植を受ける被検体における少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルをこのリファレンス値と比較し、これによって、このリファレンス値を下回った場合には、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「低い」または「減少した」と割り当て、リファレンス値より高い場合には、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「高い」または「上昇した」と割り当てることができる。
【0157】
特に、リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体が、少なくとも1.1倍、1.5倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはもっと多く増加するとき、抗ヒアルロン酸抗体のレベルが「上昇した」と考える。リファレンス値と比較して、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体が、少なくとも0.9倍、0.75倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、0.025倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍、またはもっと小さく減少しているとき、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが「減少した」と考える。
【0158】
SLEと診断する被検体からのサンプルにおける少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルと、リファレンス値とを比較したら、本発明の方法によって診断を決定することができ、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体のレベルが、リファレンス値に対して変化している場合、被検体はSLEと診断する。
【0159】
特定の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、IgGまたはIgMの1つ以上からなる群から決定される。
【0160】
特定の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgM抗体のレベルは、SLEと診断され得る被検体からのサンプルで決定され、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgM抗体のレベルが、リファレンス値に対して減少している場合、前記被検体はSLEと診断する。
【0161】
別の特定の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgG抗体のレベルは、SLEと診断され得る被検体からのサンプルで決定され、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的なIgG抗体のレベルが、リファレンス値に対して増加している場合、前記被検体はSLEと診断する。
【0162】
特定の実施形態において、少なくとも1つのヒアルロン酸オリゴ糖に特異的な抗体は、ヒアルロン酸二糖、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖および/またはヒアルロン酸十糖を標的とする抗体である。
【0163】
特定の実施形態において、サンプルは、血液、血清および血漿からなる群から選択される。好ましい実施形態において、サンプルは、血液サンプルである。
【0164】
特定の実施形態において、SLEであると診断され得る被検体は、哺乳動物である。好ましい実施形態において、被検体は、ヒトである。
【0165】
本発明を以下の実施例を用いて以下に詳細に記載するが、これらの実施例は、単に具体例であると解釈すべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0166】
動物、材料および方法
動物
生存状態での試験をJuan Canalejo Medical Centerで行った。この試験には、合計9匹のヒヒ(Papio anubis)(Consort Bioservices社、Steyming、英国)が含まれていた。5匹の動物が、ブタ臓器の異種移植を受け(4匹が心臓、1匹が腎臓)、一方、他の4匹は、ブタの赤血球(PRBC)に曝露された。体重が10〜20kgのヒト補体制御タンパク質DAF(hDAF)のためのブタトランスジェニック動物(Imutran、ケンブリッジ、英国によって提供)および非トランスジェニック動物を、Galicia Department of Agricultureによって承認され、認可された設備に入れた。この試験は、Research Committee of Juan Canalejo Medical Centerによって承認され、モニタリングされた。
【0167】
抗−炭水化物抗体分析のための移植手順および血液サンプル
すでに記載されているように、異所性のブタの心臓および腎臓を、ヒヒの腹腔に配置した(Schmoeckel Mら、1998 Transplantation 65:1570−1577;Cozzi E et al. 1997 Transplantation.64:1383−1392)。抗−炭水化物抗体分析のための血液サンプルは、移植前の動物および急性体液性異種移植拒絶(AHXR)のときの動物それぞれから得た。
【0168】
抗−炭水化物抗体分析のためのPRBC免疫付与および血液サンプル
3匹の動物(D29、E19およびE7)を、5立方センチメートル(cc)のPRBCを週に1回、3回注射し、抗−炭水化物抗体の血液サンプルを最後の注射から1週間経過時に分析した。別の動物は、抗−ブタ溶血性抗体(APHA)のレベルの増強が観察されるまで、5ccのPRBCを1日に1回、7回注射され(C63)、1回目のPRBC注射から2日目、20日目および30日目に血液サンプルを分析した。
【0169】
GAS914治療
5例の移植レシピエントのうち4例は、抗−αGal抗体(4)を失わせるために、GAS 914(Novartis Pharma A.G.社、バーゼル、スイス)を受けた。投薬量は、−17日目、−14日目、−11日目に5mg/kg/d;−5日目〜0日目まで1mg/kg/d;移植から拒絶が起こるまで1mg/kg/12hであった。PRBCに曝露した1種類(E19)を除くすべての動物に対し、1mg/kg/日のGAS914を1回目の注射に対して−5日目から、最後の注射から10日後まで皮下注射した。その後、1回目のPRBC注射から30日目まで、1日おきに、これらの動物を1mg/kgのGAS914で治療した。
【0170】
免疫抑制:
誘発のみのためのシクロホスファミド(CyP)、シクロスポリン(CyA)、ミコフェノール酸ナトリウム(MPS、Novartis Pharma A.G.社、バーゼル、スイス)およびステロイドからなる移植実験の免疫抑制。40mg/kgのCyPを−1日目に静脈投与し、20mg/kgのCyPを0日目、2日目および4日目に投与し、総白血球数に従って最後の投薬量を調節した(下限は2×10/L)。−1日目にCyAを100mg/kg/12時間の投薬量で経口投与し始めた。移植後、ヒヒにおいて十分な目標とされる1,000〜1,500ng/mlの血中トラフ濃度が維持されるようにCyAの投薬量を調節した。−1日目に35mg/kg/12時間の投薬量でMPSの経口投与を開始した。移植後、ミコフェノール酸のトラフ濃度が4〜6μ/mlに維持されるように、レシピエントの臨床症状に従って、MPSの投薬量を調節した。1mg/kgのメチルプレドニゾロンを0日目、1日目および2日目に静脈投与し、0.2mg/kgの維持投薬量に達するまで0.05mg/kg/dayずつ減らした。生検診断によるブタ心臓の拒絶および15%を超えるAPHAの増加は、15mg/kgのメチルプレドニゾロンを1日に1回、3日間にわたって3回断続的に治療した。
【0171】
PRBCに曝露した1種類のヒヒ(C63)を、200mg/kgのシクロホスファミド(CyP)を用い、20日から4日にわたって治療した。成熟免疫系の大部分が失われ、造血前駆体が無傷で残ったまま、抗体および自己抗体のレベルが大きく低下したため、CyPの投薬が選択された。残念なことに、この動物は、CyP治療の副作用により、31日目に死亡した。
【0172】
組織病理学的試験
すべての移植において、再灌流から30分後に、切開による異種移植片の生検が得られ、さらに、AHXR後の剖検が得られた。組織サンプルを、10%の緩衝化ホルマリンで少なくとも24時間固定し、脱水し、パラフィンに埋め込んだ。厚みが4μmの試験片をヘマトキシンおよびエオジンで染色した。パラフィンに埋め込まれた材料について、IgGおよびIgMの免疫組織化学試験を行った。レバミゾールを用いて内在性アルカリホスファターゼを10分間阻害した後、アルカリホスファターゼが接合したヤギ抗−ヒトIgGおよびIgM(Sigma−Aldrich社)とともに、希釈率1:50で30分間、サンプルをインキュベートした。製品の推奨内容に従って、EnVisionTMG|2、Rabbit/Mouse(LINK)(Dako)とともに組織サンプルをインキュベートした。この試薬は、デキストランポリマーであり、ウサギおよびマウスの免疫グロブリンに対する抗体も含む。最後に、アルカリホスファターゼで標識された増幅ポリマーを加える。この反応を、これもキットに含まれているPermanent Red Chromogenによって視覚化する。抗原としてのヒアルロナンの役割の可能性を観察するために、いくつかの組織片を50u/mLのStreptomycesヒアルロニダーゼ(Sigma−Aldrich社)を用いて37℃で2時間前処理し、このヒアルロニダーゼは、他のヒアルロニダーゼとは異なり、ヒアルロナンに特異的である。
【0173】
グリカンスクリーニング
406種類のグリカンで構成されるグリカンアレイv4.1(Consortium for Functional Glycomics、Protein−Glycan Interaction Core−H)(http://www.functionalglycomics.org)について、ブタ臓器の異種移植後またはPRBC曝露後に得られたヒヒ血清の炭水化物結合特異性を観察した。Consortium for Functional Glycomicsプロジェクト番号1313および1577の2種類の異なる試験を行った。20日目のC63を除き、それぞれの動物からの免疫付与前および免疫付与後のサンプルを同じグリコアレイ試験で分析し、20日目のC63は、番号1577の試験で行い、この動物からの他のサンプルは、番号1313の試験で分析した。異なるグリコアレイ試験の潜在的効果を評価するために、従属変数としてそのlog表現を用い、独立変数として、サンプルの種類(免疫付与前または免疫付与後)および試験(番号1313または番号1577)を用い、繰り返し測定した線形混合モデルをそれぞれの炭水化物についてフィッティングした。
【0174】
ラットにおける抗−炭水化物抗体の精製
ラットを、2種類のプロトコルに従ってPRBCおよびハムスターの血液のいずれかによって免疫付与し、主にIgM抗−炭水化物抗体またはIgG抗−炭水化物抗体を製造した。1日おきに1mlを3回注射し(0日目、2日目および4日目)、5日目に血液サンプルを抜き取り、これを使用してIgM抗体を観察し、2週間ごとに3回注射し、最後の注射から12日後に得た血液を使用し、IgGを観察した。
【0175】
HAオリゴ糖に特異的なELISA
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートを、Shemyakin−Ovchinnikov Institute of Biorganic Chemistry、Russian Academy of Science(モスクワ、ロシア)から得たポリアクリルアミドと接合したHAオリゴ糖(二糖、四糖および十糖)でコーティングした。この施設で二糖形態を合成し、一方、四糖分子および十糖分子は、Sigma(スペイン)から得られ、このセンターでポリアクリルアミドに結合させた。抗−HA抗体を決定するためのプロトコルは、他の抗−炭水化物抗体を決定するためにすでに記載されているELISAを最低限だけ改変したものに基づく(Manez Rら、2001 Xenotransplantation 8:15−23;Obukhova Pら、2007 Xenotransplantation 14:627−635)。
【0176】
結果
ヒヒに対するブタの臓器異種移植
ヒト補体制御タンパク質DAF(hDAF)のためのブタトランスジェニック動物からの臓器を用い、4例のヒヒへの心臓異種移植を行い、一方、腎臓異種移植を非トランスジェニック(野生)動物から行った(表1)。3匹のヒヒ(2匹の心臓レシピエントおよび腎臓レシピエント)において、移植前および移植後に抗−αGal抗体を失わせ、1匹を除き、すべての動物が、誘発のためにCyP、MPA、CyAおよびステロイドを用いた管理を含む複数薬剤による免疫抑制計画を受けた。AHXR後にすべての動物を安楽死させ、AHXRは、移植してから4日目〜60日目に起こり、4例において重篤であり(グレードIII)、1例で軽度であった(グレードI)(表1)。
【0177】
表1: ブタ、臓器の種類、免疫抑制プロトコル、この試験に含まれる個々の非ヒト霊長類の生存期間および最終的な異種移植片の組織構造
【0178】
【表1】
【0179】
PRBC免疫付与
ブタ血液の注射は、動物における副作用と関係はなかった。20日目に受けたCyP治療の副作用の結果として、1匹のみが1回目のPRBC注射から30日目に死亡した(C63)。
【0180】
(ブタ臓器の異種移植前またはPRBC曝露前の非ヒト霊長類における抗−炭水化物抗体)
ブタ臓器を受ける前またはPRBCに曝露する前の健康なヒヒの抗−炭水化物抗体の仕様を、それぞれ図1Aおよび図2Aに示す。両群でパターンが非常によく似ており、平均反応性で上位20種の15種が両群で同じであった。ヒアルロナン二糖に対する抗体(300番;GlcAβ1−3GlcNAcβ)の平均的なレベルは、PRBCに曝露前のヒヒにおいて最も高い反応性と、ブタ臓器の異種移植を受けたこれらの動物における2番目に高い反応性とを示した。このことは、Galに対する抗体(番号104)が除去されていない動物(A15、A14)またはGAS914(C63)を与える前に入手可能な血液サンプルについて妥当であり、正味の蛍光単位(NFU)の平均±S.D.は、抗−ヒアルロナン二糖抗体について18332±14201、抗−Gal抗体について3865±2892であった。
【0181】
ブタ臓器の異種移植後またはPRBC曝露後の非ヒト霊長類における抗−炭水化物抗体
ブタ臓器の異種移植後に49種類の炭水化物に対し、PRBC曝露後に144種類の炭水化物に対し、ベースラインサンプルと比較して、平均的な抗体結合が少なくとも1000NFU増加した(図1Bおよび2B)。ヒアルロナン二糖(HAd)に対する抗体は、ブタ臓器の異種移植後およびPRBC曝露後の両方で、上位20種類の中に存在した唯一の抗体であった(表2および表3)。
【0182】
表2: ベースラインサンプルと比較して、平均で異種移植後に増加した上位20種類
【0183】
【表2】
【0184】
表3: ベースラインのサンプルと比較して、平均がPRBC曝露後に増加した上位20種類
【0185】
【表3】
【0186】
それぞれの非ヒト霊長類について、移植前と比較して、ブタ臓器を異種移植した後の抗−炭水化物抗体の反応性を図3に示す。HA二糖に対する抗体は、AHXRでの抗−炭水化物抗体の上位20種類の増強の5のうち4に存在した唯一の抗体であった(図3)。抗−HA二糖抗体が中程度増強された2種類が存在した。一方は、軽度の拒絶(D10)であり、他方は、腎臓の異種移植(D17)であり、これらの抗体およびL−ラムノースに対する抗体(番号11)は、AHXRで増強された唯一の抗−炭水化物抗体であり、一方、その他はすべてほとんど変化がなかった。抗−HA二糖のもっと顕著な上昇は、重篤な拒絶の他の2例(A14およびD12)でみられた。例外は、A15の場合であり、抗−HA二糖の反応性の増強は、20種類の最も増加したものの中に存在しない唯一の例であった。対照的に、移植前と比較して、移植後に反応性が低下したのは、35種類の炭水化物の1つであり、最も大きな低下を示した。この例での異種移植は、なんら処理が用いられなかったため、最も生存日数が短かった(4日)。このことは、他の実施された抗体(例えば、抗−αGal)のときに起こるのと同様に、新しい抗体の生成が過剰な抗体を生成するまでは、移植後の過剰な抗原が抗体の初期の減少と関係があることを示唆している。しかし、抗−HA二糖の生成は、異種移植してから2日または3日以内に生じる抗−αGal抗体と比較して遅いように思われる。
【0187】
抗−HA二糖抗体は、すべての場合において、PRBC曝露後に増加した上位20種に存在する唯一の抗体であった(図4)。ノイラミン酸に対する抗体(番号14)は、上位20種の増強のうち、4例のうち3例でみられるが、抗−HA二糖が最も高いレベルを示したE19はほとんど変化せず、PRBC曝露後に、もっと高いレベルを示し、上昇する。興味深いことに、抗−HA二糖抗体の増強は、動物C63においてPRBC曝露中、2日目には存在せず、PRBC注射が終了してから2週間の20日目に現れた。このことは、C63において2日目に生じる多くの他の抗−炭水化物抗体と比較して、抗−HA二糖抗体の増強が遅いことを示唆しているだろう(図4)。一旦抗−HA二糖の増加が起こると、長期間維持される。C63の動物において、抗−炭水化物抗体のほとんどがCyP治療から30日目に減少した(図4)が、この状況でさえ、抗−HA二糖は、もっと高い抗−炭水化物抗体レベルを示していた。
【0188】
IgG抗体およびIgM抗体がAHXRでの異種移植片に蓄積することに対するヒアルロニダーゼの影響
AHXRにおけるHA抗原の潜在的な影響を観察するために、組織サンプル中のIgMおよびIgGの蓄積の存在を、HAに特異的なStreptomycesヒアルロニダーゼと先にインキュベートしたもの、インキュベートしていないものについて観察した。表4は、抗体の蓄積を等級付けするために半定量的なスコアを示す。
【0189】
表4: ヒアルロニダーゼ治療を行った/行わなかったときに、AHXRでの異種移植片へのIgM抗体およびIgG抗体の蓄積
【0190】
【表4】
【0191】
重篤なAHXRを有するすべての場合に、顕著なIgMの蓄積が示され、軽度AHXR(D10)で最小であり、一方、すべての場合にIgGの蓄積は存在しなかった。ヒアルロニダーゼを用いた組織サンプルの前処理は、3例(A15、A14およびD10)でのIgG蓄積の完全な消失および他の2例(D12およびD17)での顕著な低下と関係があった。IgM蓄積は、1例(D10)で消滅し、2例(A14およびD12)で顕著に低下し、他の2例(A15およびD17)では変化が示されなかった。このことは、AHXTRのとき、HA抗原が内皮細胞に存在することを示す。AHXRでの異種移植片に存在するIgGの蓄積は、主にHA抗原を標的としており、一方、IgMは、これらを標的とするが、他の抗原も標的とするだろう。A15の場合には、αGalは、IgM抗体に対して最も可能性が高い抗原であり、一方、D17では不明である。
【0192】
培養した内皮細胞株および内皮一次培養物でのHAの発現は、炎症性サイトカインおよび細菌のリポ多糖によって誘発することができる。この誘発性は、CD44の細胞表面での発現によって、大きな血管由来ではなく、微小血管から誘導される内皮細胞に厳格に制限されるようである。記載したHA合成および分解酵素のためのmRNAの変化は、初期にはみられず、このことは、炎症中に発生するHA細胞外オリゴ糖が保持されることを示唆している。しかし、内皮細胞が内皮ヒアルロナンシンターゼ2を増やすある種のストレス条件およびヒアルロナン合成よりも示されている(Maroski Jら、2011 Exp Physiol 96:977−986)。従って、AHXRでの抗−HA二糖抗体の増強によって、異種移植内皮細胞に免疫原性HAが存在する。このHAは、異種移植内皮細胞による炭水化物の産生またはこれらの細胞による細胞外HAの結合が原因であると思われ、この場合には、レシピエント由来である。しかし、PRBC曝露後に抗−HA二糖抗体を用いて観察された変化は、内皮細胞で起こることとは対照的に、RBCでのHA発現の証拠がないため、この反応性の原因となるHA抗原が内在性HAから作られることを示唆する。
【0193】
HA二糖、HA四糖およびHA十糖に対するヒト血清の既存抗体
HAは、二糖繰り返し単位から構築される。二糖繰り返し単位は、生きている身体のヒアルロン酸に10,000以上存在する。HAは、その分子量によって生体活性が変わる。高分子量ヒアルロン酸の生物学的特徴は、水の保持、細胞の管理、分化の制御である。低分子量HAおよびHAオリゴ糖は、高分子量HAが有していない種々の活性を有していることが知られている。これらは、細胞外マトリックスでの炎症および分解に関与するサイトカインおよびケモカインを誘発する。それに加え、低分子量HAが血管形成性を示す多くの報告があり、一方、高分子量HAは、血管形成およびサイトカインの産生を抑制する。
【0194】
ヒトは、HA二糖に対する既存抗体も有している(von Gunten Sら、2009 J Allergy Clin Immunol 123:1268−1276;Huflejt MEら、2009 Mol Immunol 46:3037−3049)。従って、本願発明者等は、特異的なELISASによって、HA二糖、四糖および十糖に対する既存抗体を観察するためにランダムに選択したヒト血清を使用した。さらに、HAオリゴ糖に対する抗体を、主にIgM抗体またはIgG抗体を生成する2つのプロトコルにしたがってPRBCおよびハムスターの血液のいずれかで免疫化したラットで観察した。
【0195】
ヒトは、HA二糖および四糖に対するIgM既存抗体を有しており、二糖に対する力価がはるかに低く、一方、IgG既存抗体は、HA二糖のみに対する抗体である(図5)。ラットは、ヒトと比較して、HA二糖、四糖および十糖に対する既存抗体のレベルが低く、多くの場合、検出することができなかった(図6)。しかし、PRBCまたはハムスター血液を1日おきに3回注射すると、HA二糖、四糖および十糖を標的とするIgM抗体が顕著に生成する(図6)。この免疫付与プロトコルでは、これらのHAオリゴ糖に対するIgG抗体は検出されなかった。対照的に、PRBC(図7)またはハムスターの血液(図8)を1週間おきに3回注射すると、抗−HA IgM抗体の産生変動は、ハムスター血液を用いたときに観察されたが、PRBCを用いたときには観察されず、両方の免疫プロトコルを用い、抗−HA二糖、四糖および十糖のIgG抗体の顕著な産生が観察された。
【0196】
ヒト内皮細胞をヒアルロニダーゼで前処理することは、ブタの血液を用いて免疫化した霊長類からの血清抗体の結合の強化と関係がある
本願発明者らは、ブタの血液を用いた非ヒト霊長類の免疫付与は、ヒト内皮細胞に対する異種抗体の交差反応性の生成と関係があることがすでに示されている。HA抗体がこの反応性に関与しているかどうかを観察するために、ヒト内皮細胞(HMEC)を、20U/mlのHAに特異的なStreptomyces由来ヒアルロニダーゼで1時間前処理した。このヒアルロニダーゼは、HAを4個の糖および6個の糖(四糖および六糖)のフラグメントに開裂させる。フローサイトメトリーの結果は、ヒアルロニダーゼで前処理したHMECに結合する非ヒト霊長類IgG抗体の強化を示し(図9A)、IgM抗体については観察されなかった(図9B)。このことは、HAの四糖および六糖の生成は、ブタの血液で免疫化された非ヒト霊長類からの血清に対するHMECの免疫原性を高める。HMEC細胞に対するHAのヒアルロニダーゼ前処理の影響を示すために、高分子量HAに結合するヒアルロナン結合タンパク質(HABP)をコントロールとして使用した(図9C)。この場合には、四糖および六糖のフラグメントがHABPによって結合しないため、ヒアルロニダーゼを用いたHMEC細胞の前処理は、ベースラインと比較して、HA発現の現象と関連がある。
【0197】
非ヒト霊長類に移植されたブタ臓器からの生検で得られた結果と合わせてこれらの結果を評価し、ヒアルロニダーゼで前処理するとIgG抗体の顕著な低下が示され、このことは、ほとんどの免疫原性HAオリゴ糖が少なくとも6個の炭水化物を含むことを示唆する。後者の場合に、免疫化された非ヒト霊長類の血清に曝露前に前処理を行ったHMEC試験とは対照的に、抗体がすでにHAに結合しているときにヒアルロニダーゼ前処理を行った。ヒアルロニダーゼは、四糖および六糖の両方のフラグメントで生成する。六糖は、同じヒアルロニダーゼによって四糖と二糖のフラグメントに開裂し得るが、四糖は、二糖のフラグメントには切断することができない。従って、HMECで観察される抗体IgG結合の増強と、異種移植拒絶のときのブタ組織サンプルでの低下は、HAの免疫原性六糖の生成でのみ説明することができる。
【0198】
全身性エリテマトーデス(SLE)患者における抗−HA二糖抗体の分析
HA二糖に対する抗体のレベルを、SLE患者のコホート群で評価した。その理由は、694種類の抗原を含む抗原マイクロアレイを用いたSLE患者の最近の研究で、疾患とともに増加した4種の抗体の1つとして抗−HA抗体を特定したからである。他の3種類は、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)およびEpstein−Barrウイルス(EBV)に対する抗体であった。
【0199】
この試験も、SLEが、IgM自然自己抗体の減少と関係があることを示していた。本願発明者らは、特異的ELISAによって、SLE患者の抗−HA二糖抗体および抗−DNA抗体(A群;n=17)、抗−DNA抗体をもたないSLE(B群;n=10)および血液バンクからのコントロール(C群;n=13)のレベルを分析した。IgM抗−HA二糖抗体の値は、A群で(平均±S.E.)が0.58±0.07、B群で0.71±0.13、C群で0.74±0.11であり、A群とB群またはC群とのANOVA比較において、p=0.1であった。IgGの場合、その値は、A群で0.37±0.08、B群で0.27±0.05、C群で0.27±0.03であり、A群とB群またはC群とのANOVA比較において、p=0.3であった。これらの結果は、SLE患者においてIgMの低下およびIgG抗−HA二糖抗体の増強を指摘し、このことから、観察される抗−HA抗体の変化が、HA分子全体ではなく、特定のHAオリゴ糖の免疫原性に関係し得ることが観察された。
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
【国際調査報告】